説明

ロボットの制御方法及び制御装置

【課題】ロボット全体の動作を容易に、また、高速で制御可能な、ロボットの制御方法及びその装置を提供する。
【解決手段】ロボット(50)が取り得る姿勢から複数の姿勢(As〜Cs)が選択され、この複数の姿勢(As〜Cs)それぞれを特定する変数の組(A〜C)が座標(51a〜51c)と関連づけられてなる2次元マップ(51)から、任意に座標を読み出す座標読み出しステップと、読み出された座標に対応した変数の組(A〜C)で特定される姿勢(As〜Cs)をとるようロボット(50)に対して指示するステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの制御方法及び制御装置に係り、特に、人間型の多自由度を有するロボットを遠隔制御する制御方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間型ロボット、特に、二足歩行が可能な人間型ロボットは、極めて多くの自由度を有して人間の動作に相当する動作を実行可能なように構成されている。
このような多自由度ロボットを制御する場合、そのすべての自由度について、操作者が入力指示することは容易ではなく、特に、速い動作をリアルタイムで制御することは極めて難しい。
【0003】
そこで、多自由度ロボットにおける制御可能な操作変数のうち、操作者にとって操作が可能な数の操作変数を選択して組み合わせた制御モードをあらかじめ複数設定しておき、この複数の制御モードから操作可能な操作変数を操作すると、それ以外の操作変数は、その操作された操作変数の変化に応じて予めプログラムされた制御手法に基づいて間接的に制御されるようにして多自由度ロボットを遠隔制御する方法等が特許文献1により提案されている。
【特許文献1】特開2004−276123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この特許文献1に記載された技術では、制御モードの選択と、その選択した制御モードでの操作という2つの操作が必要になる。
そのため、意識的に制御したい部位を特定し、その部位に細かな動作を実行させる場合に好適であるが、多数の部位を同時に動かして、ロボット全体としての姿勢制御を実行させる場合には、操作が煩雑になって難しく、また、高速の動作を実行させ難いという課題があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ロボット全体の動作を容易に、また、高速で制御可能な、ロボットの制御方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本願発明は次の1)及び2)の手段を有する。
1) 複数の自由度を有するロボット(50)を制御するロボットの制御方法において、前記ロボット(50)が取り得る姿勢から複数の姿勢(As〜Cs)が選択され、この複数の姿勢(As〜Cs)それぞれを特定する前記複数の自由度に対応した変数の組(A〜C)が座標(51a〜51c)と関連づけられてなる2次元マップ(51)から、任意に座標を読み出す座標読み出しステップと、読み出された前記座標(51a〜51c)に対応した前記変数の組(A〜C)で特定される姿勢(As〜Cs)をとるよう前記ロボット(50)に対して指示するステップと、を有することを特徴とするロボットの制御方法である。
2) 複数の自由度を有するロボット(50)を制御するロボットの制御装置において、前記ロボット(50)が取り得る姿勢から選択された複数の姿勢(As〜Cs)それぞれを特定する前記複数の自由度に対応した変数の組(A〜C)と座標(51a〜51c)とが関連づけられた2次元マップ(51)を記憶する記憶部(13m)と、前記記憶部(13m)に記憶された前記2次元マップ(51)を表示する表示部(11)と、表示された前記2次元マップ(51)上の任意の座標を座標情報として入力する入力部(12)と、入力された前記座標情報に基づいて、該座標情報に関連づけられた前記変数の組(A〜C)を求め、求めた前記変数の組(A〜C)が特定する姿勢(As〜Cs)を前記ロボット(50)にとらせるよう指示する制御部(13b)と、を備えたことを特徴とするロボットの制御装置(60)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロボット全体の動作を容易に、また、高速で制御することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図5を用いて説明する。
図1は、本発明のロボットの制御方法の実施例における選択姿勢例を示す図である。
図2は、本発明のロボットの制御方法の実施例におけるマッピングについて説明する図である。
【0009】
図3は、本発明のロボットの制御方法の実施例におけるマッピングについて説明する他の図である。
図4は、本発明のロボットの制御装置の実施例を説明する図である。
【0010】
図5は、本発明のロボットの制御装置の実施例を説明するブロック図である。
この実施例において制御するロボットは、例えば関節自由度としてnの自由度を有する人間型ロボット(以下、単にロボットとも称する)である。
【0011】
このロボット50のある姿勢Eを特定するためには、
E={ a1,a2,a3,a4,…,an }
のようなn次元のデータ列が必要となる。
【0012】
そして、このロボット50にある一連の動作を実行させる際には、このn次元のデータ列を所定の制御周期毎にロボット50に指示してその動作を制御する。このデータは例えば関節角度データである。
【0013】
所定の動作が例えば時間tを要する場合、n×t次元のデータを予め用意し、これを時系列的にロボット50に指示すれば、ロボット50にその指示に応じた所定の動作を実行させることができる。このような場合は操作者が都度操作する必要はない。
【0014】
ここで、例えば、所定の動作以外の所謂アドリブ的な動作を実行させる場合、従来、操作者はn次元のデータ列を都度設定して指示しなければならなかった。
自由度nは通常30程度あるので、このような指示による操作は現実的なものではない。
【0015】
そこで、この実施例は、定常的動作に加えてこれに関連するアドリブ的な動作もリアルタイムで実行させることができるものであり、以下にその具体的な例について詳述する。
この実施例においては、ロボットが取り得る姿勢の内、代表的な複数の姿勢を予め選択し、その各姿勢を特定するn次元データそれぞれを2次元マップ上に独立してマッピングしておく。
【0016】
これにより、マッピングした各姿勢に対応する座標(以下、特定座標と称する)を選択することで、その姿勢をロボットに実行させることができる。
また、マッピングした各姿勢に対応する各特定座標間は、その各特定座標で特定されるロボットの異なる姿勢を滑らかにつなぐ姿勢を特定するn次元データが順次マッピングされている。
【0017】
従って、座標を入力するためのマウス等のポインタにより、例えば第1の特定座標をポイント入力すると、その第1の特定座標に対応づけられた第1のn次元データにより特定される第1の姿勢をロボットが示し、次いでポインタを第2の特定座標に向けて移動させると、その移動経路に沿う各座標に対応付けられたn次元データにより、第1の姿勢から第2の特定座標に対応づけられた第2の姿勢に至る滑らかな動作をロボットが実行する。
【0018】
このような制御方法において、予め特定座標に対応づける選択姿勢は、例えば、実行頻度の高い姿勢,一連の動作の区切りとなる姿勢(開始時姿勢,終了時姿勢,中断時姿勢等),あるいは、静止時間がある(長い)姿勢等がある。
【0019】
上述した制御方法の詳細を図1〜図5を用いて以下に説明する。ここでロボット50の自由度数nは20とする。
図1は、ロボット50が取り得る姿勢の中から選択された異なる第1〜第3の姿勢を示している。
【0020】
第1の姿勢Asは、図1(1)に示される姿勢であり、これはa1A〜a20Aまでの20の関節角度等のデータからなる第1のデータ例Aにより特定される姿勢である。
第2の姿勢Bsは、図1(2)に示される姿勢であり、これはa1B〜a20Bまでの20の関節角度等のデータからなる第2のデータ列Bにより特定される姿勢である。
【0021】
第3の姿勢Csは、図1(3)に示される姿勢であり、これはa1C〜a20
Cまでの20の関節角度等のデータからなる第3のデータ列Cにより特定される姿勢である。
【0022】
これらの選択された第1〜第3の姿勢As〜Csを、2次元マップ51にマッピングする。
この2次元マップ51は、図2に示されるように、n×n(n:正の整数)のマス51mで示され、各マス51mは、それぞれx,y(x=1〜n,y=1〜n)座標(x,y)と一対一対で対応し、座標により特定できる。以下の説明では理解容易のため、n=100として説明する。
【0023】
先に選択した第1〜第3の姿勢As〜Csを、この2次元マップのマス51mにそれぞれ独立してマッピングする。
図2においては、姿勢Asをマス51a(16,16)にマッピングし、姿勢Bsをマス51b(6,8)にマッピングし、姿勢Csをマス51c(17,6)にマッピングしてある。
【0024】
ある姿勢が他の姿勢と比べて違いが大きい程、両者のマッピング間隔を広く取るのが好ましい。
また、ある姿勢が他の2つの姿勢の概ね中間の姿勢である場合には、その姿勢を他の姿勢のマッピング位置の中間にマッピングさせるのがよい。
【0025】
この図2においては、100×100=10000個のマス51mの内の3つを特定座標51a〜51cとしてマッピングしたので、残りの(1000―10)個のマス51mには、隣接するマス51mで特定される姿勢に対して滑らかな姿勢変化となるように、新たな姿勢を設定しその姿勢を特定するデータ列が対応づけられる。
【0026】
従って、10000個のマス51mには、選択した3個の代表姿勢を含めて10000種類の姿勢がその姿勢を特定するデータ列を介して対応づけられる。
詳しくは、特定座標51a〜51c近傍のマス51mには、その特定座標51a〜51cにマッピングされた選択姿勢に近い姿勢がマッピングされており、特定座標51a〜51cから離れる程、選択姿勢から遠い姿勢がマッピングされている。
【0027】
また、例えば2つの特定座標51a,51b間のマスには、その2つの特定座標51a,51bにマッピングされた2つの選択姿勢を繋ぐ動作の途中の姿勢が順次マッピングされている。
【0028】
マッピングさせたデータ列の内の、一関節角度データa1について、2次元マップ51上での値をトレースすると、例えば図3のような等高線状の模様になる。
また、n次元データを2次元マップにマッピングする手法として、データ列のデータ毎に図3に示すような等高線を作成して入力したり、自己組織化マップ等の周知のマップ化技術を利用することができる。
【0029】
上述した制御方法でロボットを制御する制御装置の一例について図4及び図5(ブロック図)を用いて説明する。
この制御装置60は、表示装置である液晶表示装置11と、画面に表示されたカーソルを移動させ入力指示を行う入力装置であるマウス12と、液晶表示装置11とマウス12と接続され、通信部13aと制御部13bと記憶部13mとを備えた制御装置13とを有して構成されている。
【0030】
通信部13aは、ロボット50と制御部13bとの間の信号の送受信を無線等により実行する。
記憶部13mは、2次元マップ51の各マスの座標情報と各座標情報に対応づけられたデータ列とを予め記憶している。
【0031】
表示装置(液晶表示装置)11は、制御装置13から送出された画像信号により2次元マップ51を表示する
この制御装置60によれば、操作者は、入力装置(マウス)12を操作し、表示装置11の画面上に表示されるカーソル11aを移動して画面に表示された2次元マップ51の所望の座標のマス51m1に位置させ、その位置情報をクリックにより制御装置13に送出することができる。
【0032】
制御装置13の制御部13bは、入力装置12から送出された位置情報に基づいてそのマス51aに対応づけられたn次元データを記憶部13mから読み出し、その読み出したn次元データで特定される姿勢を取るように、通信部13aを介してロボット50に指示する。
【0033】
また、操作者は、入力装置12であるマウスを所謂ドラッグさせることで、カーソル11aを2次元マップ51上で移動可能である共にその移動軌跡51k上の複数のマスの座標を位置情報として連続的に制御部13に送出することができる。
【0034】
制御部13bは、この連続的な位置情報に基づいて、連続的な姿勢制御、すなわち、動作の制御をロボット50に対して指示する。
上述したマッピングは、別の言い方をするならば、予め設定した複数の姿勢を基準姿勢としてそれぞれ2次元マップにマッピングし、この基準姿勢に関連する関連姿勢のマップ位置を、両姿勢の関連度合いに応じて決定した基準姿勢のマップ位置からの距離と方向に対応する位置とすることで、2次元マップ全体のマッピングを行うものである。
【0035】
そして、この2次元マップの所望の座標を選択して制御装置に入力することで、選択した座標と関連づけられたデータ列に基づく姿勢をロボットに実行させるものである。
これにより、ロボットの多数の部位を同時に動かすことができ、ロボット全体の姿勢を制御することが容易となる。また、変化する姿勢も高速で指示できるので、静的動作ばかりでなく、動的な動作も容易に実行させることができる。
【0036】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
通信部13aは、無線あるいは有線に拘わらずインターネットを介してロボット50を遠隔制御できるものでもよい。
【0037】
ロボット50と制御部13bとは、双方向で信号の授受を行うものでももちろんよい。例えば、ロボット50にカメラを搭載し、ロボット50から送出された画像情報を表示装置11に2次元マップと共に表示して操作者が視認できるように構成してもよい。
【0038】
また、画像表示部11の画面に、2次元マップ51と共に、現在のロボット50の姿勢20や、カーソルが位置するマスでのロボット50の姿勢(図示せず)を表示してもよい。
【0039】
入力装置11は、マウスに限るものではなく、ジョイスティック等の周知の入力装置を用いてもよい。
2次元マップへの姿勢マッピングは、全身の姿勢に限るものではない。例えば、上半身と下半身とを分け、それぞれに独立した2次元マップを設けて独立的に制御可能としてもよい。
【0040】
ロボット50は、人間型に限るものではなく、動物型のペットロボットや、掃除ロボット等の機能ロボットであってもよい。
また、制御するロボット50は、実在のものでなくてもよい。実施例の制御方法や制御装置は、仮想の多自由度ロボットとしてインターネットゲーム等に登場するバーチャルロボットを制御する制御方法や制御装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のロボットの制御方法の実施例における選択姿勢例を示す図である。
【図2】本発明のロボットの制御方法の実施例におけるマッピングについて説明する図である。
【図3】本発明のロボットの制御方法の実施例におけるマッピングについて説明する他の図である。
【図4】本発明のロボットの制御装置の実施例を説明する図である。
【図5】本発明のロボットの制御装置の実施例を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0042】
11 表示装置
11a カーソル
12 入力装置(マウス)
13 制御装置
13a 通信部
13b 制御部
13m 記憶部
50 ロボット
51 2次元マップ
51a〜51c 特定座標
51k 移動軌跡
51m マス
60 制御装置
As〜Cs 第1〜第3の姿勢
A〜C 第1〜第3のデータ列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の自由度を有するロボットを制御するロボットの制御方法において、
前記ロボットが取り得る姿勢から複数の姿勢が選択され、この複数の姿勢それぞれを特定する前記複数の自由度に対応した変数の組が座標と関連づけられてなる2次元マップから、任意に座標を読み出す座標読み出しステップと、
読み出された前記座標に対応した前記変数の組で特定される姿勢をとるよう前記ロボットに対して指示するステップと、を有することを特徴とするロボットの制御方法。
【請求項2】
複数の自由度を有するロボットを制御するロボットの制御装置において、
前記ロボットが取り得る姿勢から選択された複数の姿勢それぞれを特定する前記複数の自由度に対応した変数の組と座標とが関連づけられた2次元マップを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記2次元マップを表示する表示部と、
表示された前記2次元マップ上の任意の座標を座標情報として入力する入力部と、
入力された前記座標情報に基づいて、該座標情報に関連づけられた前記変数の組を求め、求めた前記変数の組が特定する姿勢を前記ロボットにとらせるよう指示する制御部と、を備えたことを特徴とするロボットの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−118158(P2007−118158A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316610(P2005−316610)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】