ロボットの手首装置
【課題】モータの回転をフランジ(エンドエフェクタ取付部材)に減速して伝達する減速装置を対象として当該減速装置の密閉空間内の潤滑剤が外部に漏れ出ることを防止する。
【解決手段】手首回転部3のハウジング5の互いに90度異なる2面5a,5bに、フランジ4用の第1減速装置7と手首回転部3用の第2減速装置8を設け、フランジ4駆動用のモータ6を手首回転部3のハウジング5に設けたものにおいて、第1減速装置7の第1密閉空間32と第2減速装置8の第2密閉空間57との間を連通する連通路65を形成したので、第1密閉空間32の圧力が高くなると、第1密閉空間32内の空気が連通路65を通じて第2密閉空間57へと流れ、第1密閉空間32の異常な圧力上昇が防止される。
【解決手段】手首回転部3のハウジング5の互いに90度異なる2面5a,5bに、フランジ4用の第1減速装置7と手首回転部3用の第2減速装置8を設け、フランジ4駆動用のモータ6を手首回転部3のハウジング5に設けたものにおいて、第1減速装置7の第1密閉空間32と第2減速装置8の第2密閉空間57との間を連通する連通路65を形成したので、第1密閉空間32の圧力が高くなると、第1密閉空間32内の空気が連通路65を通じて第2密閉空間57へと流れ、第1密閉空間32の異常な圧力上昇が防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの手首装置に係り、特に、減速装置のケーシングの異常な内圧上昇を防止したロボットの手首装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの手首装置は、回転可能なエンドエフェクタ取付部材を備えた手首回転部を、腕の先端部に回転可能に取り付けて構成されている。手首回転部には、モータの回転を減速してエンドエフェクタ取付部材に伝達する減速装置が設けられており、その減速装置のケーシング内は密閉空間とされ、その密閉空間内には、減速機構の潤滑のために、適量の潤滑剤(グリース等)が収容されている。
【0003】
本発明とは直接の関係はないが、特許文献1では、手首回転部の密閉空間への水等の浸入を防止するために、手首回転部が取り付けられる腕を密閉構造にし、手首部の密閉空間と腕の内部とを狭い空気流路によって連通させ、腕の内部に外気の圧力よりも高い圧力の空気を供給するようにしている。これによれば、手首部の密閉空間が外気の圧力よりも高圧に保たれるので、シール部分から手首部の密閉空間に水等が浸入することを防止でき、また、腕の内部と狭い空気流路によって繋がれた手首部の密閉空間は、腕の内部空間と同じか若干低い圧力に保たれるので、手首部の密閉空間の潤滑剤が腕の内部に押し出されることも防止できる、とされる。
【特許文献1】特開平7−75992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、エンドエフェクタ取付部材を駆動するモータは腕の内部に設けられていて、その腕の内部に設けられたモータと手首回転部に設けられた減速装置とはベルト伝動機構によって連結されている。
エンドエフェクタ取付部材の駆動用モータを、腕にではなく、手首回転部に設ければ、回転伝達構成が簡素化される。しかし、手首回転部にモータを配置すると、モータの発熱によって減速装置のケーシングの密閉空間内の空気温度が高まり、その温度上昇によってケーシング内の空気圧力が上昇し、シーリング部材の耐用年数が越えているなど、想定された使用条件を超えるような悪条件と重なったような場合、密閉空間内の潤滑剤がシール部分から外部に漏れ出る恐れがある。
【0005】
特許文献1に開示された構成では、手首回転部の先端部内側に設けられた減速装置(モータの回転を減速してエンドエフェクタ取付部材に伝達する減速装置)の密閉空間内の圧力が外部の空気圧力よりも高く保たれているので、これに加えて、モータの熱によって空気が暖められることによる圧力上昇が生ずると、減速装置の密閉空間内の潤滑剤が減速機構の出力軸を外部に導出するための通し孔のシール部分から漏れ出る恐れがある。特に、小型ロボットでは、エンドエフェクタが扱う対象物は千差万別で、食品を扱う場合もあることを考慮すると、手首回転部の先端部分に設けられてエンドエフェクタ取付部材に回転を減速して伝える減速装置からの潤滑剤の漏れ防止を図ることは最も重要な課題である。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、手首回転部の先端部分に設けられてエンドエフェクタ取付部材に回転を伝達する減速装置を対象として当該減速装置の密閉空間内の潤滑剤が外部に漏れ出ることを防止できるロボットの手首装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1では、手首回転部のハウジングの互いに90度異なる2面に、エンドエフェクタ取付部材用の第1減速装置と手首回転部用の第2減速装置を設け、エンドエフェクタ取付部材を第1減速装置を介して駆動するモータを手首回転部のハウジングに設けたものにおいて、手首回転部のハウジングに第1減速装置の第1ケーシング内の第1密閉空間と第2減速装置の第2ケーシング内の第2密閉空間との間を連通する連通路を形成したので、第1密閉空間の圧力が高くなると、当該第1密閉空間内の空気が連通路を通じて第2密閉空間へと流れ、第1密閉空間の異常な圧力上昇が防止される。また、連通路の第1密閉空間への開口に自重によって開閉する2つの弁体を回動可能に設け、且つ、連通路の第2密閉空間への開口の位置を所定の条件を満たす位置に設定したので、第1密閉空間内および第2密閉空間内の潤滑剤が連通路を通じて相手側の密閉空間内に流れ入ることを極力防止できる。このため、第1密閉空間の空気を第2密閉空間に逃がして第1密閉空間内の異常な圧力上昇を防止できると同時に、潤滑剤が第1密閉空間および第2密閉空間のうちのいずれかの空間に偏ることを防止して残る空間が潤滑剤不足になることを防止し、以って第1減速装置および第2減速装置の焼付を防止するという優れた効果を得ることができる。
【0008】
請求項2では、2つの弁体は、少なくとも互いに隣接する側の縁部が回動中心側から先端に向かって回動中心と直交する方向の弁体の中心線に次第に近付く形状に形成されているので、2つの弁体が干渉し合って閉鎖不能になることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す要部の断面図
【図2】手首回転部の捻り回転角と弁体の開閉の関係を示す概略的な正面図
【図3】連通路の第1密閉空間への開口近くに取り付けた弁体の斜視図
【図4】単体で示す弁体の拡大斜視図
【図5】パイプの配置形態を示す斜視図
【図6】図2の各捻り回転角における両密閉空間と連通路との関係を示す概略的な縦断側面図
【図7】図6(a)の捻り回転角で手首回転部を上向きに回転させた状態における両密閉空間と連通路との関係を示す概略的な縦断側面図
【図8】図6(b)の捻り回転角で手首回転部を下向きに回動させた状態における図7相当図
【図9】図6(d)の捻り回転角で手首回転部を下向きに回動させた状態における図7相当図
【図10】本発明の第2の実施形態を示す図2相当図
【図11】本発明の第3の実施形態を示す図2相当図
【図12】本発明の第4の実施形態を示す図2相当図
【図13】本発明の第5の実施形態を示す図2相当図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1は、複数の腕を順次回転可能に連結してなるロボット本体の先端部分を示すもので、この図1において、腕1は、他の腕(図示せず)との協働により前後左右上下のあらゆる方向へ移動可能になっていると共に、捻り回転可能にもなっている。
腕1の主体であるフレーム2は複数分割型のもので、このフレーム2の先端部内側に手首回転部3が軸線Wを中心に回転可能に支持され、更に、この手首回転部3の先端部にフランジ4が回転中心軸線Fを中心に回転可能に支持されている。上記フランジ4はエンドエフェクタ取付部材であり、ハンドなどのエンドエフェクタが取り付けられる。
【0011】
上記手首回転部3とフランジ4の支持構造および回転駆動構成について説明するに、まず、手首回転部3は、内部を中空にしたハウジング5を主体とするもので、ハウジング5の中空内部にフランジ4を回転駆動するためのモータ6が配設されている。手首回転部3の回転中心軸線Wとフランジ4の回転中心軸線Fとは互いに直交しており、ハウジング5の互いに90度異なる2面、つまり回転中心軸線Fと直交する先端面5aと、回転中心軸線Wと直交する側面5bとに、フランジ4の回転中心軸線F上に位置する第1減速装置7と、フランジ4の回転中心軸線Fからフランジ4の径方向に離れて位置する第2減速装置8とが配設されている。ここで、上記の第1減速装置7がフランジ4の回転中心軸線F上に位置するとは、必ずしもフランジ4の回転中心軸線Fと同心という意味ではなく、フランジ4とモータ6との間に位置するという意味である。
【0012】
第1減速装置7および第2減速装置8は、第1ケーシング9内および第2ケーシング10内に第1減速機構11および第2減速機構12を収容(内蔵)してなるもので、第2減速装置8の方が第1減速装置7よりも大型に構成されている。第1減速機構11および第2減速機構12は共に波動歯車減速装置から構成され、入力部としての楕円形の第1剛性カム13および第2剛性カム14、可撓性を有する第1ウェーブベアリング15および第2ウェーブベアリング16、可撓性を有する円筒状の第1可撓性外歯歯車17および第2可撓性外歯歯車18、第1剛性内歯歯車19および第2剛性内歯歯車20を有している。
【0013】
第1減速装置7の第1ケーシング9は、第1剛性内歯歯車19および2個のケーシング要素21,22を3段に重ねてボルト(結合手段)23により結合して構成されている。2個のケーシング要素21,22は円筒状をなし、その内側に前記フランジ4がクロスローラベアリング24を介して回転可能に嵌合支持されている。そして、フランジ4とケーシング要素21との間はオイルシール(シール部材)25によって密封されている。
【0014】
第1剛性内歯歯車19は、ほぼ円筒状をなし、一端側の外周部に前記2個のケーシング要素21,22に結合された円環状の取付部19aが形成されている。第1剛性内歯歯車19は、内周面に内歯歯車部19bを形成した円形開口を有している。従って、第1ケーシング9は、一端面が第1剛性内歯歯車19の内歯歯車部19bの円形開口において開放され、他端面がフランジ4によって閉鎖された形態となっている。第1剛性内歯歯車19の内歯歯車部19bの円筒状外周面にはOリング溝26が形成されており、当該Oリング溝26内にOリング(シール部材)27が嵌め込まれている。
【0015】
このような第1ケーシング9に対し、手首回転部3のハウジング5の先端面5aには、筒状のケーシング受け(嵌合部)28が一体に形成されている。そして、第1ケーシング9は、第1剛性内歯歯車19をケーシング受け28の内側に嵌合させるようにしてハウジング5の先端面5aに配設され、ボルト(結合手段)29によってケーシング受け28に固定されている。この固定状態において、第1ケーシング9とケーシング受け28との間は、第1剛性内歯歯車19に装着された前記Oリング27によって密封されている。
【0016】
手首回転部3のハウジング5内に設けられたモータ6の回転軸30は、ハウジング5の先端面5aから第1ケーシング9内に突出している。本実施形態では、回転軸30の中心軸線は前記フランジ4の回転中心軸線Fと一致している。この回転軸30とハウジング5の先端面5aとの間は、ハウジング5の先端面5aに装着されたオイルシール(シール部材)31によって密封されている。なお、2個のケーシング要素21,22および第1剛性内歯歯車19との結合面間は、当該結合面に塗布されたシール剤(図示せず)によって密封されている。従って、第1ケーシング9の内部空間は密閉され、第1密閉空間32となっている。
【0017】
この第1密閉空間32内に収納された前記第1減速機構11において、その第1剛性カム13は、モータ6の回転軸30に嵌合されてねじ33により固定され、この第1剛性カム13に第1ウェーブベアリング15の可撓性内輪15aが嵌合されている。一方、第1可撓性外歯歯車17は、外歯歯車部17aを第1剛性内歯歯車19の内歯歯車部19bの内側に位置させた状態でボルト34によってフランジ4に固定されている。そして、第1ケーシング9をケーシング受け28に嵌合する際に、第1可撓性外歯歯車17の外歯歯車部17aを第1ウェーブベアリング15の可撓性外輪15bに嵌合することにより、外歯歯車部17aが楕円形に撓み、これにより、その外歯が第1剛性内歯歯車19の内歯歯車部19bの内歯に2箇所において噛み合うようになる。
【0018】
この第1減速機構11では、回転軸30が回転すると、周知のように、その回転が第1可撓性外歯歯車17の外歯と第1剛性内歯歯車19の内歯との噛み合いによって減速されてフランジ4に伝達され、フランジ4が回転する。この第1減速機構11の潤滑のために、第1ケーシング9内、即ち第1密閉空間32内には適量の潤滑油(潤滑剤)が貯溜されている。
【0019】
第2減速装置8の第2ケーシング10は、ほぼ円形の皿状をなす内ケーシング要素35に環状の補助内ケーシング要素36をボルト(結合手段)37により結合して構成した内ケーシング38と、外ケーシング要素39に第2剛性内歯歯車20をボルト(結合手段)40により結合して構成された外ケーシング41とからなり、内ケーシング38の外側に外ケーシング41がクロスローラベアリング42を介して回転可能に嵌合支持されている。
【0020】
この第2ケーシング10において、内ケーシング要素35と外ケーシング要素39との間はオイルシール(シール部材)43によって密封されている。また、外ケーシング要素39の第2剛性内歯歯車20との接合面および第2剛性内歯歯車20のハウジング5側面5bとの接合面には、それぞれOリング溝44,45が形成されており、外ケーシング要素39と第2剛性内歯歯車20との間は、一方のOリング溝44内に嵌め込まれたOリング(シール部材)46によって密封されている。
【0021】
手首回転部3のハウジング5の側面5bには、第2ケーシング10の位置決め用の短筒状のケーシング受け(嵌合部)47が一体に形成されている。また、ハウジング5の側面5bには、ケーシング受け47と中心に位置して軸部48が一体に突設されている。本実施形態では、軸部48の中心軸線は前記手首回転部3の回転中心軸線Wと一致している。この軸部48には、第2減速機構12の入力部としての入力軸49がボールベアリング50を介して回転可能に支持されている。
【0022】
第2ケーシング10は、外ケーシング要素39および第2剛性内歯歯車20をケーシング受け47内に嵌合するようにしてハウジング5の側面5bに配置され、ボルト51によってハウジング5に固定されている。このハウジング5の側面5bと第2剛性内歯歯車20との間は、第2剛性内歯歯車20のOリング溝45内に嵌め込まれたOリング52によって密封されている。
【0023】
第2ケーシング10をハウジング5に固定した状態において、入力軸49の先端部分は内ケーシング要素35から外方に突出されている。この入力軸49と内ケーシング要素35との間は、オイルシール(シール部材)53によって密封されている。また、内ケーシング要素35には、軸受ケース部54aを有した蓋体54がねじ55によって固定されている。このねじ55が螺合されるねじ孔(貫通孔)56は、内ケーシング要素35を貫通して形成されていて第2ケーシング10の内部を外部に開放した状態となっている。ねじ孔56にねじ55が螺着されると、ねじ孔56はねじ55によって密封された状態となる。
【0024】
このねじ55によるねじ孔56の密封、オイルシール43,53およびOリング46,52による各部の密封により、第2ケーシング10の内部空間は密閉された第2密閉空間57となる。なお、ねじ55にはシール剤を塗布しておくことが好ましい。
【0025】
蓋体54の軸受ケース部54aには、ボールベアリング58が装着されており、このボールベアリング58によって入力軸49の上端部が回転可能に支持されている。また、ボールベアリング58には、プーリ59が回転可能に支持されており、このプーリ59は入力軸49にボルト60によって連結されている。
【0026】
第2ケーシング10の内ケーシング要素35は、ボルト61によって腕1のフレーム2に固定されている。これにより、手首回転部3は、内ケーシング38に、ボールベアリング58、入力軸49およびボールベアリング50を介して回転中心軸線Wを中心に回転可能に片持ち支持された状態となる。
【0027】
図示はしないが、手首回転部3を駆動するモータは腕1内に配設されており、このモータはプーリ59とベルト62によって連結されている。従って、手首回転部3の駆動用モータが起動すると、その回転は、ベルト62によりプーリ59に伝えられ、プーリ59と入力軸49が一体的に回転する。
【0028】
第2ケーシング10内において、入力軸49には、第2減速機構8の第2剛性カム14がボルト63によって固定され、この第2剛性カム14に第2ウェーブベアリング16の可撓性内輪16aが嵌合されている。一方、第2可撓性外歯歯車18は、外歯歯車部18aを第2剛性内歯歯車20の内歯歯車部20aの内側に位置させた状態でボルト64によって内ケーシング要素35に固定されている。そして、第2ケーシング10をケーシング受け47に嵌合する際に、第2可撓性外歯歯車18の外歯歯車部18aを第2ウェーブベアリング16の可撓性外輪16bに嵌合することにより、外歯歯車部18aが楕円形に撓み、これにより、その外歯が第2剛性内歯歯車20の内歯歯車部20aの内歯に2箇所において噛み合うようになる。
【0029】
この第2減速機構12では、腕1内の図示しないモータが起動すると、その回転がベルト62を介して入力軸49に伝えられ、周知のように、その入力軸49の回転が第2可撓性外歯歯車18の外歯と第2剛性内歯歯車20の内歯との噛み合いによって減速されて当該第2剛性内歯歯車20が回転する。第2剛性内歯歯車20は、ハウジング5に固定されているため、第2剛性内歯歯車20が回転することにより、手首回転部3が回転中心軸線Wを中心に回転する。この第2減速機構12の潤滑のために、第2ケーシング10内、即ち第2密閉空間57内には所定量の潤滑油(潤滑剤)が貯溜されている。
【0030】
第1密閉空間32と第2密閉空間57とを連通するための連通路65が設けられている。この連通路65は、ハウジング5に形成された第1通路66と、第2剛性内歯歯車20に形成された第2通路67と、第2密閉空間57内に配設されたパイプ68とから構成されている。第1通路66は、一端がハウジング5の先端面5aにおいて開口し、他端がハウジング5の側面5bにおいて開口している。第2通路67は、第2剛性内歯歯車20を貫通しており、一端が第1通路66の他端開口に連通している。パイプ68は、一端が第2通路67の他端開口に連結され、先端(他端)が第2密閉空間57内において開口している。なお、この連通路65の内径は、空気は通るが、潤滑油は通り難くなるように、細くすることが好ましい。
【0031】
ここで、上記連通路65のハウジング5の先端面5aにおける一端開口65a(第1通路66の一端開口)の形成位置について説明する。まず、図2(a)〜(d)は、手首フランジ4の回転中心軸線Fを水平にして、腕1の捻り回転によって手首回転部3を回転中心軸線Fを中心にして90度ずつ回転させたときのハウジング5の先端面5aのケーシング受け28を、フランジ4の回転中心軸線Fに沿う前方向(図1の矢印J方向)から見た図である。このうち、図2(a)は、手首回転部3の回転中心軸線Wを水平にして第2減速装置8がハウジング5の左真横に位置したときの状態を示している。腕1は、この第2減速装置8がハウジング5の左真横に位置する状態を基準位置とし、この基準位置から時計回り方向に1回転、反時計回り方向にも1回転可能になっている。
【0032】
この図2(a)において、ケーシング受け28の図形中心Oを通って直交する任意の2本の直線L1,L2を引く。なお、説明の簡単化のために、このうちの1本の直線L1は手首回転部3の回転中心軸線Wと一致しているものとする。この2本の直線L1,L2により、ケーシング受け28の内側(ハウジング5の先端面5a)が4つの領域R1〜R4に分割されるが、連通路65の一端開口65aは、この4つの領域R1〜R4のうち、所望の1つの領域、例えば領域R1内の所望の位置に形成されている。
【0033】
連通路65が常時第1密閉空間32と第2密閉空間57とを連通した状態にあると、手首回転部3の姿勢によっては、第1密閉空間32内の潤滑油が連通路65を通って第2密閉空間57へと流れ出す場合が生ずる。この第1密閉空間32から第2密閉空間57への潤滑剤の流出を防止するために、図3にも示すように弁装置69が設けられている。
【0034】
弁装置69は、図3および図4に示すように、第1の支持基体70および第2の支持基体71に第1の支持軸72および第2の支持軸73により回動可能に支持された2個の第1の弁体74および第2の弁体75からなる。これら第1の弁体74および第2の弁体75は、一端側の回動中心軸線C1およびC2(一端側を支持する第1の支持軸72および第2の支持軸73の軸線)を中心にして90度の角度範囲で回動可能になっており、その回動は自重によって自然に行われるようになっている。なお、第1の弁体74および第2の弁体75は同一の支持構成であるので、図4では、第1の弁体74のみを図示し、第2の弁体75側については同一部分に符号だけを記載した。
【0035】
上記の第1の支持基体70および第2の支持基体71は、連通路65の一端開口65aと、当該一端開口65aが位置する領域R1の隣の2つの領域R2およびR4との間に位置した状態でハウジング5の先端面5aに固定されている。これにより、第1の弁体74および第2の弁体75は、それぞれ領域R1の隣の領域R2およびR4側から連通路65の一端開口65aを自重によって閉じ方向に回動することとなる。ここでも、説明の簡単化のために、第1の弁体74および第2の弁体75の回動中心軸線C1およびC2は、互いに直交し、且つそれぞれ2つの直線L2およびL1と平行になっているものとする。
【0036】
第1の弁体74および第2の弁体75は、先方部分の外縁の形状が回動中心軸線C1およびC2から先端に向かって回動中心軸線C1およびC2と直交する方向の第1の弁体74および第2の弁体75の中心線T1およびT2に次第に近付く形状、例えば半円弧状に形成されている。これにより、第1の弁体74および第2の弁体75が自重で共に連通路65の一端開口65aを閉鎖する方向に回動した場合、矩形状の場合には一方が相手の支えとなった状態で回動力が拮抗して途中で停止する恐れがあるが、半円弧状であれば、一方の弁体が他方の弁体の外縁を滑って一端開口65aを閉鎖する位置まで確実に回動することができるようになる。
【0037】
ここで、第1の弁体74および第2の弁体75の開閉動作を説明する。図2(a)〜(d)は前述の通りフランジ4の回動中心軸線Fを水平にした状態を示している。このうち図2(a)には、第1の弁体74および第2の弁体75が共に一端開口65aを開放した状態で示されている(手首回転部3が時計回り方向に回転して図2(a)の状態に至ったときには、第1の弁体74は一端開口65aを閉鎖している。)。この図2(a)の状態から手首回転部3が例えば反時計回り方向に回転すると、第1の弁体74の回動中心軸線C1が次第に一端開口65aの上方に傾斜して位置するようになるため、第1の弁体74が回動中心軸線C1から離れた位置にある重心に作用する自重によって当該回動中心軸線C1を中心に下方に回動し、一端開口65aを閉鎖する。第2の弁体75は、回動中心軸線C2が一端開口65aの下方に位置し続けて自重が開放方向のモーメントとして作用し続けるため、開放状態を保持し続ける。この第1の弁体74の閉、第2の弁体75の開の状態は図2(b)の状態になるまで保持される。
【0038】
図2(b)の状態から手首回転部3が反時計回り方向に回転すると、第2の弁体75の回動中心軸線C2が次第に一端開口65aの上方に傾斜して位置するようになるため、第2の弁体75が回動中心軸線C2から離れた位置にある重心に作用する自重によって当該回動中心軸線C2を中心に下方に回動し、既に一端開口65aを閉鎖している第1の弁体74の上に重なるようになる。第1の弁体74は、一端開口65aの上方に位置しているため、回動中心軸線C2から離れた位置にある重心に作用する自重によって閉鎖状態を維持する。この第1の弁体74および第2の弁体75の閉の状態は図2(c)の状態になるまで保持される。
【0039】
手首回転部3が図2(c)から反時計回り方向に回転すると、第1の弁体74の回動中心軸線C1が次第に一端開口65aの下方に傾斜して位置するようになるため、第1の弁体74が回動中心軸線C1から離れた位置にある重心に作用する自重によって当該回動中心軸線C2を中心に下方に回動して一端開口65aを開放しようとするが、当初は上に重なっている第2の弁体75の重さが作用しているため、閉鎖する位置に止まるか、或は第2の弁体75を押し開きつつ徐々に下方に回動してゆく。図2(c)の状態から45度以上反時計回り方向に回動すると、第1の弁体74が第2の弁体75を押し退けて完全に下方に回動し、一端開口65aを開放する。第1の弁体74の下方への回動により押し退けられた第2の弁体75は、その後、直ちに自重で下方に回動して再び一端開口65aを閉鎖する。この状態は、図2(d)の状態となるまで保持される。
【0040】
手首回転部3が図2(d)の状態から反時計回り方向に回転すると、第2の弁体75の回動中心軸線C2が次第に一端開口65aの下方へ傾斜して位置するようになるため、第2の弁体75が回動中心軸線C2から離れた位置にある重心に作用する自重によって下方に回動し、一端開口65aを開放する。第1の弁体74の回動中心軸線C1は、一端開口65aの下側にあって傾斜した状態から次第に直立となる状態に向かうが、図2(a)の状態になるまでは一端開口65aを開放した状態を保持する。
【0041】
以上は手首回転部3が反時計回り方向に回転する場合の第1の弁体74と第2の弁体75の開閉動作であるが、手首回転部3が時計回り方向に回動する場合も、上記説明から類推できるであろう。
【0042】
このような第1の弁体74と第2の弁体75によって開閉される連通路65の一端開口65aに対し、連通路65の第2密閉空間57内における他端開口65b(パイプ68の先端開口)の位置は、次のように定められている。即ち、第1通路66の他端は、図1に示すように、手首回転部3の回転中心軸線Wを挟んでフランジ4とは反対側となる位置であって第2可撓性外歯歯車18よりも外側となる位置において開口されている。この第1通路66の他端開口に連通する第2通路67は、手首回転部3の回転中心軸線Wと平行に形成されている。この第2通路67に接続されたパイプ68は、図5に示すように、第2通路67への連結端の近くで直角に曲げられ、そして、内ケーシング要素35の内周面に沿って回転中心軸線Wおよび回転中心軸線Fを含む平面よりも下方となるまで延長され、更に、そこから直角に曲げられて内ケーシング要素35の奥面35a近くに位置されている。なお、図5は第2減速装置8がフランジ4の回転中心軸線Fの左真横に位置した状態(図2(a))で示している。
【0043】
このパイプ68の先端開口、つまり連通路65の他端開口65bの位置をより正確に述べるために、手首回転部3の回転中心軸線Wと、フランジ4の回転中心軸線Fと、両回転中心軸線FおよびWの双方に直交する軸線Jを座標軸とする3次元座標により説明する。まず、軸線J方向の位置については、フランジ4の回転中心軸線Fを水平にし、第2減速装置8をフランジ4の回転中心軸線Fの左真横および右真横に位置させたときのうち、連通路65の一端開口65aがより低い位置となる側、本実施形態の場合は、右真横に位置させたとき(図2(c))、他端開口65bは、第2密閉空間57の最下部よりも所定高さ(第2の所定高さ)、本実施形態では、第2密閉空間57内の潤滑油の油面Gと同一または一定の高さ以上突出した位置となるように定められている(図6(c)参照)。
【0044】
フランジ4の回転中心軸線F方向の位置については、他端開口65bは、手首回転部3の回転中心軸線Wを挟んでフランジ4とは反対側にあって第2可撓性外歯歯車18の外周と内ケーシング要素35の内周との間にある。手首回転部3の回転中心軸線W方向の位置については、他端開口65bは、内ケーシング要素35の奥面近くで、ハウジング5の側面5bから所定距離離れた位置、具体的には、フランジ4の回転中心軸線Fを水平にし、図2(d)に示すように、第2減速装置8をフランジ4の回転中心軸線Fの直上に位置させて手首回転部3の回転中心軸線Wを鉛直の状態にしたときに、第2密閉空間57の最下部よりも所定高さ(第1の所定高さ)以上、本実施形態では、第2密閉空間57内の潤滑油の油面Gから一定の高さ以上突出した位置となるように定められている(図6(d)参照)。ここで、第1密閉空間32および第2密閉空間57内に貯溜された潤滑油は第1減速機構11および第2減速機構12にとって適量な所定の量、例えばそれぞれ第1密閉空間32および第2密閉空間57の内容積の60%の容積に相当する量だけ貯留されているものとする。
【0045】
次に上記構成において、手首回転部3のハウジング5への第1減速装置7および第2減速装置8の組み付け手順と併せて連通路65の作用を説明する。ハウジング5へは、第1減速装置7を組み付け、その後に第2減速装置8の組み付けを行う。つまり、2個のケーシング要素21,22の内側にクロスローラベアリング24を介してフランジ4を回転可能に支持するようにしながら、それらケーシング要素21,22および第1剛性内歯歯車19をボルト23で固定し、第1ケーシング9を組み立てる。このとき、ケーシング要素21,22および第1剛性内歯歯車19との結合面には、シール剤を塗布して結合面間を密封する。そして、フランジ4とケーシング要素21との間に、オイルシール25を嵌入する。また、第1可撓性外歯歯車17をフランジ4にボルト34によって固定する。そして、第1剛性内歯歯車19のOリング溝26にOリング27を嵌め込む。また、第1ケーシング9を上向き(第1剛性内歯歯車19側が上)にし、当該第1ケーシング9内に所定量、本実施形態では、第1密閉空間32の内容積の60%の潤滑油を注入する。
【0046】
一方、第1剛性カム13の外周に第1ウェーブベアリング15を嵌めこみ、その上で第1剛性カム13を回転軸30にねじ33によって固定する。この後、ハウジング5を下向き(回転軸30が下方に突出)にした状態にし、上向き状態にある第1ケーシング9の第1可撓性外歯歯車17の外歯歯車部17aを第1ウェーブベアリング15の可撓性外輪15bに嵌合しながら、第1剛性内歯歯車19をケーシング受け28内に挿入する。
【0047】
このとき、Oリング27がケーシング受け28内に挿入されると、第1ケーシング9(第1密閉空間32)内が密閉され、以後の第1剛性内歯歯車19のケーシング受け28内への挿入に伴って第1密閉空間32の内容積が縮小されるようになる。しかし、第1の弁体74および75は開放状態にあるので、第1密閉空間32の内容積が縮小に伴って第1密閉空間32内の空気は、連通路65の第1通路66を通って当該第1通路66の他端開口から外部に抜け出る。以上により、第1減速装置11のハウジング5への取り付けが終了する。
【0048】
次に、第2ケーシング10の内ケーシング要素35と補助内ケーシング要素36とをボルト37により結合して内ケーシング38を組み立てながら外ケーシング要素39をクロスローラベアリング42により回転可能に支持する。続いて、外ケーシング要素39のOリング溝44内にOリング46を嵌め込み、その上で、第2剛性内歯歯車20を外ケーシング要素39にボルト40によって固定し、外ケーシング41を組み立てる。
【0049】
以上により内ケーシング38に外ケーシング41を回転可能に配設してなる第2ケーシング10が組み立てられる。この第2ケーシング10の内ケーシング要素35と外ケーシング要素39との間にオイルシール43を嵌入する。また、第2ケーシング10の内ケーシング要素35に第2可撓性外歯歯車18をボルト64によって固定する。
【0050】
一方、第2ウェーブベアリング16を嵌合した第2剛性カム14を入力軸49にボルト63により固定し、その上で、入力軸49をハウジング5の軸部48にボールベアリング50を介して回転可能に取り付ける。そして、第2剛性内歯歯車20のOリング溝45内にOリング52を嵌め込んだ上で、第2可撓性外歯歯車18を第2ウェーブベアリング16の外周に嵌合するようにして第2ケーシング10をケーシング受け47に嵌め入れ、ボルト61によってハウジング5に固定する。これにより、第2ケーシング10の外ケーシング41がハウジング5に固定されたこととなる。
【0051】
次に、例えば、内ケーシング要素35と入力軸49との間の隙間から、第2ケーシング10内に所定量、例えば第2密閉空間57の内容積の60%の潤滑油を注入し、その後、内ケーシング要素35と入力軸49との間にオイルシール53を嵌め入れる。このとき、オイルシール53の嵌入によって第2ケーシング10の内容積が縮小されると、その縮小に伴って第2ケーシング10内の空気がねじ孔56から外部に逃げ出る。
【0052】
続いて、ボールベアリング58を装着した蓋体54を、ボールベアリング58を入力軸49に嵌合するようにして内ケーシング要素35上に配設する。次に、シール剤を塗布したねじ55をねじ孔56に螺合して蓋体54を内ケーシング要素35に固定する。これにより、第2ケーシング10(第2密閉空間57)が密閉状態になされる。その後、入力軸49にプーリ59をボルト60によって固定する。
【0053】
以上により、手首回転部3の先端面5aと側面5bに、それぞれ第1減速装置11と第2減速装置12が取り付けられたこととなる。この手首回転部3を、腕1のフレーム2の内部に配置し、第2ケーシング10の外ケーシング41をボルト61によってフレーム2に固定する。これにより、手首回転部3がフレーム2内に回転中心軸線Wを中心に回転可能に支持された状態となる。その後、ベルト62をプーリ59と図示しないモータのプーリとの間に掛け渡す。なお、フレーム2は複数分割することにより、手首回転部3をフレーム2内に配設できるようになっている。
【0054】
さて、ロボットの作業中、腕1は上下前後左右のあらゆる方向に移動され、手首回転部3は腕1内の図示しないモータによって回転中心軸線Wを中心に回転され、また、フランジ4はハウジング5内のモータ6の回転軸30によって回転中心軸線Fを中心に回転され、更に、腕1は捻り回転して手首回転部3を捻る。
【0055】
このロボット作業時において、モータ6は、フランジ4を回転させるべく通電されると、この通電に伴って熱を発する。このモータ6が発する熱によって第1ケーシング9および第2ケーシング10が加熱され、第1密閉空間32および第2密閉空間57内の空気温度が上昇し、第1密閉空間32および第2密閉空間57内の空気圧が上昇する。第2密閉空間57は、大気と連通した状態においてねじ55によるねじ孔56への螺着によって密封されるので、当初大気圧であり、且つ第1密閉空間32よりも内容積が大きいことからモータ6の熱による温度上昇程度は小さく、従って圧力上昇も少ない。これに対し、第1密閉空間32は、第2密閉空間57と同様に当初大気圧であるが、第2密閉空間57よりも小内容積であり、更に、回転軸30から第1剛性カム13への直接的な熱伝導もあるから、モータ6の発熱による空気温度の上昇、ひいては圧力上昇程度は比較的大きい。
【0056】
このため、ロボット作業中のモータ6の発熱により第1密閉空間32内の空気が暖められて圧力上昇すると、第1密閉空間32内の空気が連通路65を通って第2密閉空間57へと流れる。この第1密閉空間32から第2密閉空間57への空気の流れにより、第1密閉空間32内の圧力が異常に上昇することが防止され、第1密閉空間32を密閉するオイルシール25やOリング27が耐用年数を超えていたりした場合であっても、それらオイルシール25やOリング27による第1密閉空間32の密封部分から潤滑油が漏れ出るといった不具合の発生を極力防止することができる。
【0057】
一方、第2密閉空間57内の空気圧は、第1密閉空間32からの空気流入により上昇するが、第2密閉空間57の内容積(空気部分の容積)が比較的大きいことにより、第1密閉空間32から第2密閉空間57への空気の流入が停止したとき(第1密閉空間32と第2密閉空間57の空気圧が等しくなったとき)の圧力はそれ程高いものではないので、第2密閉空間57を密閉するオイルシール43,53やOリング46,52が耐用年数を超えていたりした場合であっても、それらオイルシール43,53やOリング46,52による第2密閉空間57の密封部分から潤滑油が漏れ出るといった不具合の発生を極力防止することができる。
【0058】
ところで、上述の第1密閉空間32から第2密閉空間57へと空気が流れるためには、連通路65の一端開口65aおよび他端開口65bが第1密閉空間32および第2密閉空間57内の油面Gよりも上の空気層中にあり、且つ第1の弁体74および第2の弁体75が共に開いた状態にあることが必要である。
このことに関し、ロボットは、フランジ4に設けられたハンドによってワークを把持して搬送したり、把持したワークを他のワークに組み付けたりする作業を行うが、その作業は、通常、手首回転部3を回転中心軸線Wを中心に図6で反時計回り方向に回転させてフランジ4を下向きにした状態で行われる。この状態では、例えば図9に示す通り、第1の弁体74および第2の弁体75は自重で開き、且つ、連通路65の一端開口65aおよび他端開口65bは空気層中にあるので、第1密閉空間32の空気が連通路65を通して第2密閉空間57へと流れる。
【0059】
もちろん、フランジ4に設けられるエンドエフェクタはハンドばかりではない。しかし、ハンド以外のエンドエフェクタを設けた場合であっても、通常のロボット作業の多くは、フランジ4を斜め下向きないし鉛直下向きにして行われるし、ロボット作業がフランジ4を下に向けた状態で行われなくとも、ロボットの1サイクルの動作中にフランジ4が下向きとなる姿勢を取る機会は必ずある。
【0060】
以上のようにして、連通路65の一体開口65aが開放されたとき、第1密閉空間32内の空気が第2密閉空間57内へと流れ出るので、第1密閉空間32内の異常な圧力上昇が防止されるのである。
【0061】
一方、第1の弁体74および第2の弁体75の機能は、連通路65の一端開口65aを閉じて第1密閉空間32内の潤滑油が第2密閉空間57へと流れないようにするところにある。フランジ4の回転中心軸線Fが水平の状態にあるとき、手首回転部3が図2(a)の状態と図2(b)の状態との間、図2(b)の状態と図2(c)の状態との間および図2(c)の状態と図2(d)の状態との間でそれぞれ90度捻り回転される際には、図6(b)、(c)、(d)に示すように、第1の弁体74および第2の弁体75のうち、いずれか一方の弁体が連通路65の一端開口65aを閉鎖している。このときには、第1密閉空間32から連通路65を通じて第2密閉空間57へと潤滑油が流れることはない。もちろん、フランジ4が上を向く姿勢となっても、第1密閉空間32から第2密閉空間57への潤滑油の流出は第1の弁体74または第2の弁体75によって防止される。
【0062】
ただ、例えば、図2(b)の場合のように、一端開口65aが閉鎖されていても、図2(b)に対応する状態を示す図6(b)の場合のように、第1密閉空間32内の潤滑油面Gが第2密閉空間57内の潤滑油面Gよりも高くなっている。このため、手首回転部3がフランジ4を下向きとするように回転した場合には、第1の弁体74および第2の弁体75が一端開口65aを若干開放する状態となるので、図8(a)に示すように、連通路65の全体が第1密閉空間32内の潤滑油面Gより下にあるときには、第1密閉空間32内の潤滑油が連通路65を通じて第2密閉空間57内へ流れる恐れがある。
【0063】
しかしながら、図8(b)に示すように、連通路65の一部が第1密閉空間32内の潤滑油面Gを上方に超える角度まで回転すると、第1密閉空間32から第2密閉空間57への潤滑油の流れは停止する。そして、図8(a)のように連通路65が第1密閉空間32内の潤滑油面Gより下にある状態は、ロボットの速い動きの中のほんの一瞬のことであるので、実際に潤滑油が第1密閉空間32から第2密閉空間57へと流れることはほとんどない。
【0064】
図2(a)の状態と図2(d)の状態との間(図6(a)と図6(d)との間に相当)では、第1の弁体74および第2の弁体75が共に一端開口65aを開放している。しかし、この場合には、第2密閉空間57が第1密閉空間32の真横ないし第1密閉空間32よりも上方にあるため、第1密閉空間32内の潤滑油が連通路65を通って第2密閉空間57へと流れることはない。ただ、この場合において、フランジ4が図7に示す以上に上を向く状態が長く続くようになると、第1密閉空間32内の潤滑油が連通路65を通って第2密閉空間57へと流れることが考えられる。ところが、この図7に示す状態よりもフランジ4が更に上向きとなることは、ロボット動作においてほとんどなく、あっても、ロボットの動きの中のほんの一瞬であるので、第1密閉空間32内の潤滑油が連通路65を通って第2密閉空間57へと流れることはほとんどない。
【0065】
第1の弁体74および第2の弁体75は一種の逆止弁であるから、第2密閉空間57から第1密閉空間32への潤滑油の流出を防止することはできない。しかし、この第2密閉空間57から第1密閉空間32への潤滑油の流出は、連通路65の他端開口65bの位置が前述したような所定の位置に定められていることにより防止される。即ち、第2密閉空間57から第1密閉空間32への潤滑油の流出は、第2密閉空間57内の潤滑油面Gが第1密閉空間32内の潤滑油面Gよりも上に位置するときに生ずる恐れがある。これには、図2(a)の状態と図2(d)の状態との間、図2(c)の状態と図2(d)の状態との間が相当する。
【0066】
しかしながら、図2(d)の状態では、図6(d)に示すように、連通路65の他端開口65bが第2密閉空間57内の潤滑油面Gよりも上にあるため、第2密閉空間57から第1密閉空間32への潤滑油の流出は防止される。この図2(d)の状態で、手首回転部3がフランジ4を下向きとするように回転しても、他端開口65bが手首回転部3の回転中心軸線Wよりもフランジ4とは反対側に位置していることから、図9に示すように、他端開口65bが潤滑油面Gから上に離れこそすれ、潤滑油中に浸漬されることはない。従って、第2密閉空間57から第1密閉空間32への潤滑油の流出は防止される。
【0067】
また、図2(a)と図2(c)の状態では、第1密閉空間32および第2密閉空間57の潤滑油量は内容積の60%であるから、それらの油面Gは、図6(a)および図6(c)に示すように、第1密閉空間32および第2密閉空間57を上下に二等分する線(この場合、水平の回転中心軸線F)よりも上方にあって、第2密閉空間57内の油面Gの方が第1密閉空間32内の油面Gよりもやや上位にある。しかしながら、図2(a)の状態では、図6(a)に示すように、一端開口65aが第2密閉空間57の油面Gよりも上方に位置し、図2(c)の状態では、図6(b)に示すように、他端開口65bが第2密閉空間57の油面Gよりも上方に位置しているため、第2密閉空間57から第1密閉空間32へとの潤滑油が流れることはない。
【0068】
また、手首回転部3が図2(a)の状態と図2(d)の状態との間で捻り回転する場合や、図2(c)の状態と図2(d)の状態との間で捻り回転する場合も、上述したと同様にして、第2密閉空間57内の潤滑油が第1密閉空間32へと流れ出ることが防止される。
【0069】
図2(a)の状態と図2(d)の状態との間、および図2(c)の状態と図2(d)の状態との間で、手首回転部3が回転中心軸線Wを中心にフランジ4が下向きとなる方向に回転した場合には、他端開口65bが手首回転部3の回転中心軸線Wよりもフランジ4とは反対側に位置していることから、連通路65の他端開口65b側の一部或は他端開口65bが第2密閉空間57内の潤滑油面Gから上に離れこそすれ、潤滑油面Gよりも下となることはない。従って、第2密閉空間57から第1密閉空間32への潤滑油の流出は防止される。
【0070】
以上のように本実施形態によれば、第1密閉空間32と第2密閉空間57との間で潤滑油が連通路65を通じて流出入することを極力防止しながら、第2密閉空間57はもちろんのこと、第1密閉空間32内の空気圧の異常上昇を防止でき、潤滑油が第1減速装置7から漏れ出ることを防止できる。
【0071】
また、第1密閉空間32と第2密閉空間57との間で潤滑油が連通路65を通じて流出入することが極力防止されるので、潤滑油が第1密閉空間32或は第2密閉空間57に偏在することがない。従って、第1密閉空間32および第2密閉空間57の潤滑油量をそれぞれ適量に維持でき、第1減速機構11および第2減速機構12の焼付を効果的に防止できる。
【0072】
もちろん、手首回転部3の姿勢によっては、第1密閉空間32と第2密閉空間57との間で潤滑油が連通路65を通じて流出入することはある。しかし、この第1密閉空間32と第2密閉空間57との間で潤滑油が流出入する姿勢は分かっているのであるから、ロボットの動作プログラムを作成する際、そのような姿勢をとることのないようにすることによって、より確実に第1密閉空間32と第2密閉空間57との間での潤滑油の流出入を防止することが可能となる。
【0073】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す第1の実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或は変更が可能である。
連通路65の一端開口65aを設ける位置は、図10に示す本発明の第2の実施形態のように、領域R2に設けるようにしても良く、また、図11に示す本発明の第3の実施形態のように、領域R3に設けても、図12に示す本発明の第4の実施形態のように、領域R4に設けても良い。更には、図13に示す本発明の第4の実施形態のように、L1はケーシング受け28を矢印J方向から見たとき、必ずしも手首回転部3の回転中心軸線Wに一致させる必要はなく、また、第1の弁体74および第2の弁体75の回動中心軸線C1,C2もL1,L2と平行である必要もない。
【0074】
第1ケーシング9とケーシング受け28との間を密封するOリング27は、ケーシング受け28側に装着するようにしても良い。
第2ケーシング10において、外ケーシング要素39とケーシング受け47との間にOリングを設けるようにすれば、第2剛性内歯歯車20の2個のOリング46,51は不要となる。
第2ケーシング10の貫通孔はねじ孔56に限られない。
第1減速機構11および第2減速機構12は、通常の歯車列からなるものであっても良い。
第1ケーシング9および第2ケーシング10の構成要素は、実施形態のものに限られない。
弁体74,75は台形状であっても良い。
【符号の説明】
【0075】
図面中、1は腕、2はフレーム、3は手首回転部、4はフランジ(エンドエフェクタ取付部材)、5はハウジング、6はモータ、7は第1減速装置、8は第2減速装置、9は第1ケーシング、10は第2ケーシング、11は第1減速機構、12は第2減速機構、25はオイルシール(シール部材)、27はOリング(シール部材)、28はケーシング受け(嵌合部)、32は第1密閉空間、43はオイルシール(シール部材)、46はOリング(シール部材)、47はケーシング受け、49は入力軸、52,53はOリング(シール部材)、54は蓋体、55はねじ、56はねじ(貫通孔)、57は第2密閉空間、65は連通路、65aおよび65bは連通路の一端開口および他端開口、68はパイプ、69は弁装置、74は第1の弁体、75は第2の弁体を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの手首装置に係り、特に、減速装置のケーシングの異常な内圧上昇を防止したロボットの手首装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの手首装置は、回転可能なエンドエフェクタ取付部材を備えた手首回転部を、腕の先端部に回転可能に取り付けて構成されている。手首回転部には、モータの回転を減速してエンドエフェクタ取付部材に伝達する減速装置が設けられており、その減速装置のケーシング内は密閉空間とされ、その密閉空間内には、減速機構の潤滑のために、適量の潤滑剤(グリース等)が収容されている。
【0003】
本発明とは直接の関係はないが、特許文献1では、手首回転部の密閉空間への水等の浸入を防止するために、手首回転部が取り付けられる腕を密閉構造にし、手首部の密閉空間と腕の内部とを狭い空気流路によって連通させ、腕の内部に外気の圧力よりも高い圧力の空気を供給するようにしている。これによれば、手首部の密閉空間が外気の圧力よりも高圧に保たれるので、シール部分から手首部の密閉空間に水等が浸入することを防止でき、また、腕の内部と狭い空気流路によって繋がれた手首部の密閉空間は、腕の内部空間と同じか若干低い圧力に保たれるので、手首部の密閉空間の潤滑剤が腕の内部に押し出されることも防止できる、とされる。
【特許文献1】特開平7−75992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、エンドエフェクタ取付部材を駆動するモータは腕の内部に設けられていて、その腕の内部に設けられたモータと手首回転部に設けられた減速装置とはベルト伝動機構によって連結されている。
エンドエフェクタ取付部材の駆動用モータを、腕にではなく、手首回転部に設ければ、回転伝達構成が簡素化される。しかし、手首回転部にモータを配置すると、モータの発熱によって減速装置のケーシングの密閉空間内の空気温度が高まり、その温度上昇によってケーシング内の空気圧力が上昇し、シーリング部材の耐用年数が越えているなど、想定された使用条件を超えるような悪条件と重なったような場合、密閉空間内の潤滑剤がシール部分から外部に漏れ出る恐れがある。
【0005】
特許文献1に開示された構成では、手首回転部の先端部内側に設けられた減速装置(モータの回転を減速してエンドエフェクタ取付部材に伝達する減速装置)の密閉空間内の圧力が外部の空気圧力よりも高く保たれているので、これに加えて、モータの熱によって空気が暖められることによる圧力上昇が生ずると、減速装置の密閉空間内の潤滑剤が減速機構の出力軸を外部に導出するための通し孔のシール部分から漏れ出る恐れがある。特に、小型ロボットでは、エンドエフェクタが扱う対象物は千差万別で、食品を扱う場合もあることを考慮すると、手首回転部の先端部分に設けられてエンドエフェクタ取付部材に回転を減速して伝える減速装置からの潤滑剤の漏れ防止を図ることは最も重要な課題である。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、手首回転部の先端部分に設けられてエンドエフェクタ取付部材に回転を伝達する減速装置を対象として当該減速装置の密閉空間内の潤滑剤が外部に漏れ出ることを防止できるロボットの手首装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1では、手首回転部のハウジングの互いに90度異なる2面に、エンドエフェクタ取付部材用の第1減速装置と手首回転部用の第2減速装置を設け、エンドエフェクタ取付部材を第1減速装置を介して駆動するモータを手首回転部のハウジングに設けたものにおいて、手首回転部のハウジングに第1減速装置の第1ケーシング内の第1密閉空間と第2減速装置の第2ケーシング内の第2密閉空間との間を連通する連通路を形成したので、第1密閉空間の圧力が高くなると、当該第1密閉空間内の空気が連通路を通じて第2密閉空間へと流れ、第1密閉空間の異常な圧力上昇が防止される。また、連通路の第1密閉空間への開口に自重によって開閉する2つの弁体を回動可能に設け、且つ、連通路の第2密閉空間への開口の位置を所定の条件を満たす位置に設定したので、第1密閉空間内および第2密閉空間内の潤滑剤が連通路を通じて相手側の密閉空間内に流れ入ることを極力防止できる。このため、第1密閉空間の空気を第2密閉空間に逃がして第1密閉空間内の異常な圧力上昇を防止できると同時に、潤滑剤が第1密閉空間および第2密閉空間のうちのいずれかの空間に偏ることを防止して残る空間が潤滑剤不足になることを防止し、以って第1減速装置および第2減速装置の焼付を防止するという優れた効果を得ることができる。
【0008】
請求項2では、2つの弁体は、少なくとも互いに隣接する側の縁部が回動中心側から先端に向かって回動中心と直交する方向の弁体の中心線に次第に近付く形状に形成されているので、2つの弁体が干渉し合って閉鎖不能になることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す要部の断面図
【図2】手首回転部の捻り回転角と弁体の開閉の関係を示す概略的な正面図
【図3】連通路の第1密閉空間への開口近くに取り付けた弁体の斜視図
【図4】単体で示す弁体の拡大斜視図
【図5】パイプの配置形態を示す斜視図
【図6】図2の各捻り回転角における両密閉空間と連通路との関係を示す概略的な縦断側面図
【図7】図6(a)の捻り回転角で手首回転部を上向きに回転させた状態における両密閉空間と連通路との関係を示す概略的な縦断側面図
【図8】図6(b)の捻り回転角で手首回転部を下向きに回動させた状態における図7相当図
【図9】図6(d)の捻り回転角で手首回転部を下向きに回動させた状態における図7相当図
【図10】本発明の第2の実施形態を示す図2相当図
【図11】本発明の第3の実施形態を示す図2相当図
【図12】本発明の第4の実施形態を示す図2相当図
【図13】本発明の第5の実施形態を示す図2相当図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1は、複数の腕を順次回転可能に連結してなるロボット本体の先端部分を示すもので、この図1において、腕1は、他の腕(図示せず)との協働により前後左右上下のあらゆる方向へ移動可能になっていると共に、捻り回転可能にもなっている。
腕1の主体であるフレーム2は複数分割型のもので、このフレーム2の先端部内側に手首回転部3が軸線Wを中心に回転可能に支持され、更に、この手首回転部3の先端部にフランジ4が回転中心軸線Fを中心に回転可能に支持されている。上記フランジ4はエンドエフェクタ取付部材であり、ハンドなどのエンドエフェクタが取り付けられる。
【0011】
上記手首回転部3とフランジ4の支持構造および回転駆動構成について説明するに、まず、手首回転部3は、内部を中空にしたハウジング5を主体とするもので、ハウジング5の中空内部にフランジ4を回転駆動するためのモータ6が配設されている。手首回転部3の回転中心軸線Wとフランジ4の回転中心軸線Fとは互いに直交しており、ハウジング5の互いに90度異なる2面、つまり回転中心軸線Fと直交する先端面5aと、回転中心軸線Wと直交する側面5bとに、フランジ4の回転中心軸線F上に位置する第1減速装置7と、フランジ4の回転中心軸線Fからフランジ4の径方向に離れて位置する第2減速装置8とが配設されている。ここで、上記の第1減速装置7がフランジ4の回転中心軸線F上に位置するとは、必ずしもフランジ4の回転中心軸線Fと同心という意味ではなく、フランジ4とモータ6との間に位置するという意味である。
【0012】
第1減速装置7および第2減速装置8は、第1ケーシング9内および第2ケーシング10内に第1減速機構11および第2減速機構12を収容(内蔵)してなるもので、第2減速装置8の方が第1減速装置7よりも大型に構成されている。第1減速機構11および第2減速機構12は共に波動歯車減速装置から構成され、入力部としての楕円形の第1剛性カム13および第2剛性カム14、可撓性を有する第1ウェーブベアリング15および第2ウェーブベアリング16、可撓性を有する円筒状の第1可撓性外歯歯車17および第2可撓性外歯歯車18、第1剛性内歯歯車19および第2剛性内歯歯車20を有している。
【0013】
第1減速装置7の第1ケーシング9は、第1剛性内歯歯車19および2個のケーシング要素21,22を3段に重ねてボルト(結合手段)23により結合して構成されている。2個のケーシング要素21,22は円筒状をなし、その内側に前記フランジ4がクロスローラベアリング24を介して回転可能に嵌合支持されている。そして、フランジ4とケーシング要素21との間はオイルシール(シール部材)25によって密封されている。
【0014】
第1剛性内歯歯車19は、ほぼ円筒状をなし、一端側の外周部に前記2個のケーシング要素21,22に結合された円環状の取付部19aが形成されている。第1剛性内歯歯車19は、内周面に内歯歯車部19bを形成した円形開口を有している。従って、第1ケーシング9は、一端面が第1剛性内歯歯車19の内歯歯車部19bの円形開口において開放され、他端面がフランジ4によって閉鎖された形態となっている。第1剛性内歯歯車19の内歯歯車部19bの円筒状外周面にはOリング溝26が形成されており、当該Oリング溝26内にOリング(シール部材)27が嵌め込まれている。
【0015】
このような第1ケーシング9に対し、手首回転部3のハウジング5の先端面5aには、筒状のケーシング受け(嵌合部)28が一体に形成されている。そして、第1ケーシング9は、第1剛性内歯歯車19をケーシング受け28の内側に嵌合させるようにしてハウジング5の先端面5aに配設され、ボルト(結合手段)29によってケーシング受け28に固定されている。この固定状態において、第1ケーシング9とケーシング受け28との間は、第1剛性内歯歯車19に装着された前記Oリング27によって密封されている。
【0016】
手首回転部3のハウジング5内に設けられたモータ6の回転軸30は、ハウジング5の先端面5aから第1ケーシング9内に突出している。本実施形態では、回転軸30の中心軸線は前記フランジ4の回転中心軸線Fと一致している。この回転軸30とハウジング5の先端面5aとの間は、ハウジング5の先端面5aに装着されたオイルシール(シール部材)31によって密封されている。なお、2個のケーシング要素21,22および第1剛性内歯歯車19との結合面間は、当該結合面に塗布されたシール剤(図示せず)によって密封されている。従って、第1ケーシング9の内部空間は密閉され、第1密閉空間32となっている。
【0017】
この第1密閉空間32内に収納された前記第1減速機構11において、その第1剛性カム13は、モータ6の回転軸30に嵌合されてねじ33により固定され、この第1剛性カム13に第1ウェーブベアリング15の可撓性内輪15aが嵌合されている。一方、第1可撓性外歯歯車17は、外歯歯車部17aを第1剛性内歯歯車19の内歯歯車部19bの内側に位置させた状態でボルト34によってフランジ4に固定されている。そして、第1ケーシング9をケーシング受け28に嵌合する際に、第1可撓性外歯歯車17の外歯歯車部17aを第1ウェーブベアリング15の可撓性外輪15bに嵌合することにより、外歯歯車部17aが楕円形に撓み、これにより、その外歯が第1剛性内歯歯車19の内歯歯車部19bの内歯に2箇所において噛み合うようになる。
【0018】
この第1減速機構11では、回転軸30が回転すると、周知のように、その回転が第1可撓性外歯歯車17の外歯と第1剛性内歯歯車19の内歯との噛み合いによって減速されてフランジ4に伝達され、フランジ4が回転する。この第1減速機構11の潤滑のために、第1ケーシング9内、即ち第1密閉空間32内には適量の潤滑油(潤滑剤)が貯溜されている。
【0019】
第2減速装置8の第2ケーシング10は、ほぼ円形の皿状をなす内ケーシング要素35に環状の補助内ケーシング要素36をボルト(結合手段)37により結合して構成した内ケーシング38と、外ケーシング要素39に第2剛性内歯歯車20をボルト(結合手段)40により結合して構成された外ケーシング41とからなり、内ケーシング38の外側に外ケーシング41がクロスローラベアリング42を介して回転可能に嵌合支持されている。
【0020】
この第2ケーシング10において、内ケーシング要素35と外ケーシング要素39との間はオイルシール(シール部材)43によって密封されている。また、外ケーシング要素39の第2剛性内歯歯車20との接合面および第2剛性内歯歯車20のハウジング5側面5bとの接合面には、それぞれOリング溝44,45が形成されており、外ケーシング要素39と第2剛性内歯歯車20との間は、一方のOリング溝44内に嵌め込まれたOリング(シール部材)46によって密封されている。
【0021】
手首回転部3のハウジング5の側面5bには、第2ケーシング10の位置決め用の短筒状のケーシング受け(嵌合部)47が一体に形成されている。また、ハウジング5の側面5bには、ケーシング受け47と中心に位置して軸部48が一体に突設されている。本実施形態では、軸部48の中心軸線は前記手首回転部3の回転中心軸線Wと一致している。この軸部48には、第2減速機構12の入力部としての入力軸49がボールベアリング50を介して回転可能に支持されている。
【0022】
第2ケーシング10は、外ケーシング要素39および第2剛性内歯歯車20をケーシング受け47内に嵌合するようにしてハウジング5の側面5bに配置され、ボルト51によってハウジング5に固定されている。このハウジング5の側面5bと第2剛性内歯歯車20との間は、第2剛性内歯歯車20のOリング溝45内に嵌め込まれたOリング52によって密封されている。
【0023】
第2ケーシング10をハウジング5に固定した状態において、入力軸49の先端部分は内ケーシング要素35から外方に突出されている。この入力軸49と内ケーシング要素35との間は、オイルシール(シール部材)53によって密封されている。また、内ケーシング要素35には、軸受ケース部54aを有した蓋体54がねじ55によって固定されている。このねじ55が螺合されるねじ孔(貫通孔)56は、内ケーシング要素35を貫通して形成されていて第2ケーシング10の内部を外部に開放した状態となっている。ねじ孔56にねじ55が螺着されると、ねじ孔56はねじ55によって密封された状態となる。
【0024】
このねじ55によるねじ孔56の密封、オイルシール43,53およびOリング46,52による各部の密封により、第2ケーシング10の内部空間は密閉された第2密閉空間57となる。なお、ねじ55にはシール剤を塗布しておくことが好ましい。
【0025】
蓋体54の軸受ケース部54aには、ボールベアリング58が装着されており、このボールベアリング58によって入力軸49の上端部が回転可能に支持されている。また、ボールベアリング58には、プーリ59が回転可能に支持されており、このプーリ59は入力軸49にボルト60によって連結されている。
【0026】
第2ケーシング10の内ケーシング要素35は、ボルト61によって腕1のフレーム2に固定されている。これにより、手首回転部3は、内ケーシング38に、ボールベアリング58、入力軸49およびボールベアリング50を介して回転中心軸線Wを中心に回転可能に片持ち支持された状態となる。
【0027】
図示はしないが、手首回転部3を駆動するモータは腕1内に配設されており、このモータはプーリ59とベルト62によって連結されている。従って、手首回転部3の駆動用モータが起動すると、その回転は、ベルト62によりプーリ59に伝えられ、プーリ59と入力軸49が一体的に回転する。
【0028】
第2ケーシング10内において、入力軸49には、第2減速機構8の第2剛性カム14がボルト63によって固定され、この第2剛性カム14に第2ウェーブベアリング16の可撓性内輪16aが嵌合されている。一方、第2可撓性外歯歯車18は、外歯歯車部18aを第2剛性内歯歯車20の内歯歯車部20aの内側に位置させた状態でボルト64によって内ケーシング要素35に固定されている。そして、第2ケーシング10をケーシング受け47に嵌合する際に、第2可撓性外歯歯車18の外歯歯車部18aを第2ウェーブベアリング16の可撓性外輪16bに嵌合することにより、外歯歯車部18aが楕円形に撓み、これにより、その外歯が第2剛性内歯歯車20の内歯歯車部20aの内歯に2箇所において噛み合うようになる。
【0029】
この第2減速機構12では、腕1内の図示しないモータが起動すると、その回転がベルト62を介して入力軸49に伝えられ、周知のように、その入力軸49の回転が第2可撓性外歯歯車18の外歯と第2剛性内歯歯車20の内歯との噛み合いによって減速されて当該第2剛性内歯歯車20が回転する。第2剛性内歯歯車20は、ハウジング5に固定されているため、第2剛性内歯歯車20が回転することにより、手首回転部3が回転中心軸線Wを中心に回転する。この第2減速機構12の潤滑のために、第2ケーシング10内、即ち第2密閉空間57内には所定量の潤滑油(潤滑剤)が貯溜されている。
【0030】
第1密閉空間32と第2密閉空間57とを連通するための連通路65が設けられている。この連通路65は、ハウジング5に形成された第1通路66と、第2剛性内歯歯車20に形成された第2通路67と、第2密閉空間57内に配設されたパイプ68とから構成されている。第1通路66は、一端がハウジング5の先端面5aにおいて開口し、他端がハウジング5の側面5bにおいて開口している。第2通路67は、第2剛性内歯歯車20を貫通しており、一端が第1通路66の他端開口に連通している。パイプ68は、一端が第2通路67の他端開口に連結され、先端(他端)が第2密閉空間57内において開口している。なお、この連通路65の内径は、空気は通るが、潤滑油は通り難くなるように、細くすることが好ましい。
【0031】
ここで、上記連通路65のハウジング5の先端面5aにおける一端開口65a(第1通路66の一端開口)の形成位置について説明する。まず、図2(a)〜(d)は、手首フランジ4の回転中心軸線Fを水平にして、腕1の捻り回転によって手首回転部3を回転中心軸線Fを中心にして90度ずつ回転させたときのハウジング5の先端面5aのケーシング受け28を、フランジ4の回転中心軸線Fに沿う前方向(図1の矢印J方向)から見た図である。このうち、図2(a)は、手首回転部3の回転中心軸線Wを水平にして第2減速装置8がハウジング5の左真横に位置したときの状態を示している。腕1は、この第2減速装置8がハウジング5の左真横に位置する状態を基準位置とし、この基準位置から時計回り方向に1回転、反時計回り方向にも1回転可能になっている。
【0032】
この図2(a)において、ケーシング受け28の図形中心Oを通って直交する任意の2本の直線L1,L2を引く。なお、説明の簡単化のために、このうちの1本の直線L1は手首回転部3の回転中心軸線Wと一致しているものとする。この2本の直線L1,L2により、ケーシング受け28の内側(ハウジング5の先端面5a)が4つの領域R1〜R4に分割されるが、連通路65の一端開口65aは、この4つの領域R1〜R4のうち、所望の1つの領域、例えば領域R1内の所望の位置に形成されている。
【0033】
連通路65が常時第1密閉空間32と第2密閉空間57とを連通した状態にあると、手首回転部3の姿勢によっては、第1密閉空間32内の潤滑油が連通路65を通って第2密閉空間57へと流れ出す場合が生ずる。この第1密閉空間32から第2密閉空間57への潤滑剤の流出を防止するために、図3にも示すように弁装置69が設けられている。
【0034】
弁装置69は、図3および図4に示すように、第1の支持基体70および第2の支持基体71に第1の支持軸72および第2の支持軸73により回動可能に支持された2個の第1の弁体74および第2の弁体75からなる。これら第1の弁体74および第2の弁体75は、一端側の回動中心軸線C1およびC2(一端側を支持する第1の支持軸72および第2の支持軸73の軸線)を中心にして90度の角度範囲で回動可能になっており、その回動は自重によって自然に行われるようになっている。なお、第1の弁体74および第2の弁体75は同一の支持構成であるので、図4では、第1の弁体74のみを図示し、第2の弁体75側については同一部分に符号だけを記載した。
【0035】
上記の第1の支持基体70および第2の支持基体71は、連通路65の一端開口65aと、当該一端開口65aが位置する領域R1の隣の2つの領域R2およびR4との間に位置した状態でハウジング5の先端面5aに固定されている。これにより、第1の弁体74および第2の弁体75は、それぞれ領域R1の隣の領域R2およびR4側から連通路65の一端開口65aを自重によって閉じ方向に回動することとなる。ここでも、説明の簡単化のために、第1の弁体74および第2の弁体75の回動中心軸線C1およびC2は、互いに直交し、且つそれぞれ2つの直線L2およびL1と平行になっているものとする。
【0036】
第1の弁体74および第2の弁体75は、先方部分の外縁の形状が回動中心軸線C1およびC2から先端に向かって回動中心軸線C1およびC2と直交する方向の第1の弁体74および第2の弁体75の中心線T1およびT2に次第に近付く形状、例えば半円弧状に形成されている。これにより、第1の弁体74および第2の弁体75が自重で共に連通路65の一端開口65aを閉鎖する方向に回動した場合、矩形状の場合には一方が相手の支えとなった状態で回動力が拮抗して途中で停止する恐れがあるが、半円弧状であれば、一方の弁体が他方の弁体の外縁を滑って一端開口65aを閉鎖する位置まで確実に回動することができるようになる。
【0037】
ここで、第1の弁体74および第2の弁体75の開閉動作を説明する。図2(a)〜(d)は前述の通りフランジ4の回動中心軸線Fを水平にした状態を示している。このうち図2(a)には、第1の弁体74および第2の弁体75が共に一端開口65aを開放した状態で示されている(手首回転部3が時計回り方向に回転して図2(a)の状態に至ったときには、第1の弁体74は一端開口65aを閉鎖している。)。この図2(a)の状態から手首回転部3が例えば反時計回り方向に回転すると、第1の弁体74の回動中心軸線C1が次第に一端開口65aの上方に傾斜して位置するようになるため、第1の弁体74が回動中心軸線C1から離れた位置にある重心に作用する自重によって当該回動中心軸線C1を中心に下方に回動し、一端開口65aを閉鎖する。第2の弁体75は、回動中心軸線C2が一端開口65aの下方に位置し続けて自重が開放方向のモーメントとして作用し続けるため、開放状態を保持し続ける。この第1の弁体74の閉、第2の弁体75の開の状態は図2(b)の状態になるまで保持される。
【0038】
図2(b)の状態から手首回転部3が反時計回り方向に回転すると、第2の弁体75の回動中心軸線C2が次第に一端開口65aの上方に傾斜して位置するようになるため、第2の弁体75が回動中心軸線C2から離れた位置にある重心に作用する自重によって当該回動中心軸線C2を中心に下方に回動し、既に一端開口65aを閉鎖している第1の弁体74の上に重なるようになる。第1の弁体74は、一端開口65aの上方に位置しているため、回動中心軸線C2から離れた位置にある重心に作用する自重によって閉鎖状態を維持する。この第1の弁体74および第2の弁体75の閉の状態は図2(c)の状態になるまで保持される。
【0039】
手首回転部3が図2(c)から反時計回り方向に回転すると、第1の弁体74の回動中心軸線C1が次第に一端開口65aの下方に傾斜して位置するようになるため、第1の弁体74が回動中心軸線C1から離れた位置にある重心に作用する自重によって当該回動中心軸線C2を中心に下方に回動して一端開口65aを開放しようとするが、当初は上に重なっている第2の弁体75の重さが作用しているため、閉鎖する位置に止まるか、或は第2の弁体75を押し開きつつ徐々に下方に回動してゆく。図2(c)の状態から45度以上反時計回り方向に回動すると、第1の弁体74が第2の弁体75を押し退けて完全に下方に回動し、一端開口65aを開放する。第1の弁体74の下方への回動により押し退けられた第2の弁体75は、その後、直ちに自重で下方に回動して再び一端開口65aを閉鎖する。この状態は、図2(d)の状態となるまで保持される。
【0040】
手首回転部3が図2(d)の状態から反時計回り方向に回転すると、第2の弁体75の回動中心軸線C2が次第に一端開口65aの下方へ傾斜して位置するようになるため、第2の弁体75が回動中心軸線C2から離れた位置にある重心に作用する自重によって下方に回動し、一端開口65aを開放する。第1の弁体74の回動中心軸線C1は、一端開口65aの下側にあって傾斜した状態から次第に直立となる状態に向かうが、図2(a)の状態になるまでは一端開口65aを開放した状態を保持する。
【0041】
以上は手首回転部3が反時計回り方向に回転する場合の第1の弁体74と第2の弁体75の開閉動作であるが、手首回転部3が時計回り方向に回動する場合も、上記説明から類推できるであろう。
【0042】
このような第1の弁体74と第2の弁体75によって開閉される連通路65の一端開口65aに対し、連通路65の第2密閉空間57内における他端開口65b(パイプ68の先端開口)の位置は、次のように定められている。即ち、第1通路66の他端は、図1に示すように、手首回転部3の回転中心軸線Wを挟んでフランジ4とは反対側となる位置であって第2可撓性外歯歯車18よりも外側となる位置において開口されている。この第1通路66の他端開口に連通する第2通路67は、手首回転部3の回転中心軸線Wと平行に形成されている。この第2通路67に接続されたパイプ68は、図5に示すように、第2通路67への連結端の近くで直角に曲げられ、そして、内ケーシング要素35の内周面に沿って回転中心軸線Wおよび回転中心軸線Fを含む平面よりも下方となるまで延長され、更に、そこから直角に曲げられて内ケーシング要素35の奥面35a近くに位置されている。なお、図5は第2減速装置8がフランジ4の回転中心軸線Fの左真横に位置した状態(図2(a))で示している。
【0043】
このパイプ68の先端開口、つまり連通路65の他端開口65bの位置をより正確に述べるために、手首回転部3の回転中心軸線Wと、フランジ4の回転中心軸線Fと、両回転中心軸線FおよびWの双方に直交する軸線Jを座標軸とする3次元座標により説明する。まず、軸線J方向の位置については、フランジ4の回転中心軸線Fを水平にし、第2減速装置8をフランジ4の回転中心軸線Fの左真横および右真横に位置させたときのうち、連通路65の一端開口65aがより低い位置となる側、本実施形態の場合は、右真横に位置させたとき(図2(c))、他端開口65bは、第2密閉空間57の最下部よりも所定高さ(第2の所定高さ)、本実施形態では、第2密閉空間57内の潤滑油の油面Gと同一または一定の高さ以上突出した位置となるように定められている(図6(c)参照)。
【0044】
フランジ4の回転中心軸線F方向の位置については、他端開口65bは、手首回転部3の回転中心軸線Wを挟んでフランジ4とは反対側にあって第2可撓性外歯歯車18の外周と内ケーシング要素35の内周との間にある。手首回転部3の回転中心軸線W方向の位置については、他端開口65bは、内ケーシング要素35の奥面近くで、ハウジング5の側面5bから所定距離離れた位置、具体的には、フランジ4の回転中心軸線Fを水平にし、図2(d)に示すように、第2減速装置8をフランジ4の回転中心軸線Fの直上に位置させて手首回転部3の回転中心軸線Wを鉛直の状態にしたときに、第2密閉空間57の最下部よりも所定高さ(第1の所定高さ)以上、本実施形態では、第2密閉空間57内の潤滑油の油面Gから一定の高さ以上突出した位置となるように定められている(図6(d)参照)。ここで、第1密閉空間32および第2密閉空間57内に貯溜された潤滑油は第1減速機構11および第2減速機構12にとって適量な所定の量、例えばそれぞれ第1密閉空間32および第2密閉空間57の内容積の60%の容積に相当する量だけ貯留されているものとする。
【0045】
次に上記構成において、手首回転部3のハウジング5への第1減速装置7および第2減速装置8の組み付け手順と併せて連通路65の作用を説明する。ハウジング5へは、第1減速装置7を組み付け、その後に第2減速装置8の組み付けを行う。つまり、2個のケーシング要素21,22の内側にクロスローラベアリング24を介してフランジ4を回転可能に支持するようにしながら、それらケーシング要素21,22および第1剛性内歯歯車19をボルト23で固定し、第1ケーシング9を組み立てる。このとき、ケーシング要素21,22および第1剛性内歯歯車19との結合面には、シール剤を塗布して結合面間を密封する。そして、フランジ4とケーシング要素21との間に、オイルシール25を嵌入する。また、第1可撓性外歯歯車17をフランジ4にボルト34によって固定する。そして、第1剛性内歯歯車19のOリング溝26にOリング27を嵌め込む。また、第1ケーシング9を上向き(第1剛性内歯歯車19側が上)にし、当該第1ケーシング9内に所定量、本実施形態では、第1密閉空間32の内容積の60%の潤滑油を注入する。
【0046】
一方、第1剛性カム13の外周に第1ウェーブベアリング15を嵌めこみ、その上で第1剛性カム13を回転軸30にねじ33によって固定する。この後、ハウジング5を下向き(回転軸30が下方に突出)にした状態にし、上向き状態にある第1ケーシング9の第1可撓性外歯歯車17の外歯歯車部17aを第1ウェーブベアリング15の可撓性外輪15bに嵌合しながら、第1剛性内歯歯車19をケーシング受け28内に挿入する。
【0047】
このとき、Oリング27がケーシング受け28内に挿入されると、第1ケーシング9(第1密閉空間32)内が密閉され、以後の第1剛性内歯歯車19のケーシング受け28内への挿入に伴って第1密閉空間32の内容積が縮小されるようになる。しかし、第1の弁体74および75は開放状態にあるので、第1密閉空間32の内容積が縮小に伴って第1密閉空間32内の空気は、連通路65の第1通路66を通って当該第1通路66の他端開口から外部に抜け出る。以上により、第1減速装置11のハウジング5への取り付けが終了する。
【0048】
次に、第2ケーシング10の内ケーシング要素35と補助内ケーシング要素36とをボルト37により結合して内ケーシング38を組み立てながら外ケーシング要素39をクロスローラベアリング42により回転可能に支持する。続いて、外ケーシング要素39のOリング溝44内にOリング46を嵌め込み、その上で、第2剛性内歯歯車20を外ケーシング要素39にボルト40によって固定し、外ケーシング41を組み立てる。
【0049】
以上により内ケーシング38に外ケーシング41を回転可能に配設してなる第2ケーシング10が組み立てられる。この第2ケーシング10の内ケーシング要素35と外ケーシング要素39との間にオイルシール43を嵌入する。また、第2ケーシング10の内ケーシング要素35に第2可撓性外歯歯車18をボルト64によって固定する。
【0050】
一方、第2ウェーブベアリング16を嵌合した第2剛性カム14を入力軸49にボルト63により固定し、その上で、入力軸49をハウジング5の軸部48にボールベアリング50を介して回転可能に取り付ける。そして、第2剛性内歯歯車20のOリング溝45内にOリング52を嵌め込んだ上で、第2可撓性外歯歯車18を第2ウェーブベアリング16の外周に嵌合するようにして第2ケーシング10をケーシング受け47に嵌め入れ、ボルト61によってハウジング5に固定する。これにより、第2ケーシング10の外ケーシング41がハウジング5に固定されたこととなる。
【0051】
次に、例えば、内ケーシング要素35と入力軸49との間の隙間から、第2ケーシング10内に所定量、例えば第2密閉空間57の内容積の60%の潤滑油を注入し、その後、内ケーシング要素35と入力軸49との間にオイルシール53を嵌め入れる。このとき、オイルシール53の嵌入によって第2ケーシング10の内容積が縮小されると、その縮小に伴って第2ケーシング10内の空気がねじ孔56から外部に逃げ出る。
【0052】
続いて、ボールベアリング58を装着した蓋体54を、ボールベアリング58を入力軸49に嵌合するようにして内ケーシング要素35上に配設する。次に、シール剤を塗布したねじ55をねじ孔56に螺合して蓋体54を内ケーシング要素35に固定する。これにより、第2ケーシング10(第2密閉空間57)が密閉状態になされる。その後、入力軸49にプーリ59をボルト60によって固定する。
【0053】
以上により、手首回転部3の先端面5aと側面5bに、それぞれ第1減速装置11と第2減速装置12が取り付けられたこととなる。この手首回転部3を、腕1のフレーム2の内部に配置し、第2ケーシング10の外ケーシング41をボルト61によってフレーム2に固定する。これにより、手首回転部3がフレーム2内に回転中心軸線Wを中心に回転可能に支持された状態となる。その後、ベルト62をプーリ59と図示しないモータのプーリとの間に掛け渡す。なお、フレーム2は複数分割することにより、手首回転部3をフレーム2内に配設できるようになっている。
【0054】
さて、ロボットの作業中、腕1は上下前後左右のあらゆる方向に移動され、手首回転部3は腕1内の図示しないモータによって回転中心軸線Wを中心に回転され、また、フランジ4はハウジング5内のモータ6の回転軸30によって回転中心軸線Fを中心に回転され、更に、腕1は捻り回転して手首回転部3を捻る。
【0055】
このロボット作業時において、モータ6は、フランジ4を回転させるべく通電されると、この通電に伴って熱を発する。このモータ6が発する熱によって第1ケーシング9および第2ケーシング10が加熱され、第1密閉空間32および第2密閉空間57内の空気温度が上昇し、第1密閉空間32および第2密閉空間57内の空気圧が上昇する。第2密閉空間57は、大気と連通した状態においてねじ55によるねじ孔56への螺着によって密封されるので、当初大気圧であり、且つ第1密閉空間32よりも内容積が大きいことからモータ6の熱による温度上昇程度は小さく、従って圧力上昇も少ない。これに対し、第1密閉空間32は、第2密閉空間57と同様に当初大気圧であるが、第2密閉空間57よりも小内容積であり、更に、回転軸30から第1剛性カム13への直接的な熱伝導もあるから、モータ6の発熱による空気温度の上昇、ひいては圧力上昇程度は比較的大きい。
【0056】
このため、ロボット作業中のモータ6の発熱により第1密閉空間32内の空気が暖められて圧力上昇すると、第1密閉空間32内の空気が連通路65を通って第2密閉空間57へと流れる。この第1密閉空間32から第2密閉空間57への空気の流れにより、第1密閉空間32内の圧力が異常に上昇することが防止され、第1密閉空間32を密閉するオイルシール25やOリング27が耐用年数を超えていたりした場合であっても、それらオイルシール25やOリング27による第1密閉空間32の密封部分から潤滑油が漏れ出るといった不具合の発生を極力防止することができる。
【0057】
一方、第2密閉空間57内の空気圧は、第1密閉空間32からの空気流入により上昇するが、第2密閉空間57の内容積(空気部分の容積)が比較的大きいことにより、第1密閉空間32から第2密閉空間57への空気の流入が停止したとき(第1密閉空間32と第2密閉空間57の空気圧が等しくなったとき)の圧力はそれ程高いものではないので、第2密閉空間57を密閉するオイルシール43,53やOリング46,52が耐用年数を超えていたりした場合であっても、それらオイルシール43,53やOリング46,52による第2密閉空間57の密封部分から潤滑油が漏れ出るといった不具合の発生を極力防止することができる。
【0058】
ところで、上述の第1密閉空間32から第2密閉空間57へと空気が流れるためには、連通路65の一端開口65aおよび他端開口65bが第1密閉空間32および第2密閉空間57内の油面Gよりも上の空気層中にあり、且つ第1の弁体74および第2の弁体75が共に開いた状態にあることが必要である。
このことに関し、ロボットは、フランジ4に設けられたハンドによってワークを把持して搬送したり、把持したワークを他のワークに組み付けたりする作業を行うが、その作業は、通常、手首回転部3を回転中心軸線Wを中心に図6で反時計回り方向に回転させてフランジ4を下向きにした状態で行われる。この状態では、例えば図9に示す通り、第1の弁体74および第2の弁体75は自重で開き、且つ、連通路65の一端開口65aおよび他端開口65bは空気層中にあるので、第1密閉空間32の空気が連通路65を通して第2密閉空間57へと流れる。
【0059】
もちろん、フランジ4に設けられるエンドエフェクタはハンドばかりではない。しかし、ハンド以外のエンドエフェクタを設けた場合であっても、通常のロボット作業の多くは、フランジ4を斜め下向きないし鉛直下向きにして行われるし、ロボット作業がフランジ4を下に向けた状態で行われなくとも、ロボットの1サイクルの動作中にフランジ4が下向きとなる姿勢を取る機会は必ずある。
【0060】
以上のようにして、連通路65の一体開口65aが開放されたとき、第1密閉空間32内の空気が第2密閉空間57内へと流れ出るので、第1密閉空間32内の異常な圧力上昇が防止されるのである。
【0061】
一方、第1の弁体74および第2の弁体75の機能は、連通路65の一端開口65aを閉じて第1密閉空間32内の潤滑油が第2密閉空間57へと流れないようにするところにある。フランジ4の回転中心軸線Fが水平の状態にあるとき、手首回転部3が図2(a)の状態と図2(b)の状態との間、図2(b)の状態と図2(c)の状態との間および図2(c)の状態と図2(d)の状態との間でそれぞれ90度捻り回転される際には、図6(b)、(c)、(d)に示すように、第1の弁体74および第2の弁体75のうち、いずれか一方の弁体が連通路65の一端開口65aを閉鎖している。このときには、第1密閉空間32から連通路65を通じて第2密閉空間57へと潤滑油が流れることはない。もちろん、フランジ4が上を向く姿勢となっても、第1密閉空間32から第2密閉空間57への潤滑油の流出は第1の弁体74または第2の弁体75によって防止される。
【0062】
ただ、例えば、図2(b)の場合のように、一端開口65aが閉鎖されていても、図2(b)に対応する状態を示す図6(b)の場合のように、第1密閉空間32内の潤滑油面Gが第2密閉空間57内の潤滑油面Gよりも高くなっている。このため、手首回転部3がフランジ4を下向きとするように回転した場合には、第1の弁体74および第2の弁体75が一端開口65aを若干開放する状態となるので、図8(a)に示すように、連通路65の全体が第1密閉空間32内の潤滑油面Gより下にあるときには、第1密閉空間32内の潤滑油が連通路65を通じて第2密閉空間57内へ流れる恐れがある。
【0063】
しかしながら、図8(b)に示すように、連通路65の一部が第1密閉空間32内の潤滑油面Gを上方に超える角度まで回転すると、第1密閉空間32から第2密閉空間57への潤滑油の流れは停止する。そして、図8(a)のように連通路65が第1密閉空間32内の潤滑油面Gより下にある状態は、ロボットの速い動きの中のほんの一瞬のことであるので、実際に潤滑油が第1密閉空間32から第2密閉空間57へと流れることはほとんどない。
【0064】
図2(a)の状態と図2(d)の状態との間(図6(a)と図6(d)との間に相当)では、第1の弁体74および第2の弁体75が共に一端開口65aを開放している。しかし、この場合には、第2密閉空間57が第1密閉空間32の真横ないし第1密閉空間32よりも上方にあるため、第1密閉空間32内の潤滑油が連通路65を通って第2密閉空間57へと流れることはない。ただ、この場合において、フランジ4が図7に示す以上に上を向く状態が長く続くようになると、第1密閉空間32内の潤滑油が連通路65を通って第2密閉空間57へと流れることが考えられる。ところが、この図7に示す状態よりもフランジ4が更に上向きとなることは、ロボット動作においてほとんどなく、あっても、ロボットの動きの中のほんの一瞬であるので、第1密閉空間32内の潤滑油が連通路65を通って第2密閉空間57へと流れることはほとんどない。
【0065】
第1の弁体74および第2の弁体75は一種の逆止弁であるから、第2密閉空間57から第1密閉空間32への潤滑油の流出を防止することはできない。しかし、この第2密閉空間57から第1密閉空間32への潤滑油の流出は、連通路65の他端開口65bの位置が前述したような所定の位置に定められていることにより防止される。即ち、第2密閉空間57から第1密閉空間32への潤滑油の流出は、第2密閉空間57内の潤滑油面Gが第1密閉空間32内の潤滑油面Gよりも上に位置するときに生ずる恐れがある。これには、図2(a)の状態と図2(d)の状態との間、図2(c)の状態と図2(d)の状態との間が相当する。
【0066】
しかしながら、図2(d)の状態では、図6(d)に示すように、連通路65の他端開口65bが第2密閉空間57内の潤滑油面Gよりも上にあるため、第2密閉空間57から第1密閉空間32への潤滑油の流出は防止される。この図2(d)の状態で、手首回転部3がフランジ4を下向きとするように回転しても、他端開口65bが手首回転部3の回転中心軸線Wよりもフランジ4とは反対側に位置していることから、図9に示すように、他端開口65bが潤滑油面Gから上に離れこそすれ、潤滑油中に浸漬されることはない。従って、第2密閉空間57から第1密閉空間32への潤滑油の流出は防止される。
【0067】
また、図2(a)と図2(c)の状態では、第1密閉空間32および第2密閉空間57の潤滑油量は内容積の60%であるから、それらの油面Gは、図6(a)および図6(c)に示すように、第1密閉空間32および第2密閉空間57を上下に二等分する線(この場合、水平の回転中心軸線F)よりも上方にあって、第2密閉空間57内の油面Gの方が第1密閉空間32内の油面Gよりもやや上位にある。しかしながら、図2(a)の状態では、図6(a)に示すように、一端開口65aが第2密閉空間57の油面Gよりも上方に位置し、図2(c)の状態では、図6(b)に示すように、他端開口65bが第2密閉空間57の油面Gよりも上方に位置しているため、第2密閉空間57から第1密閉空間32へとの潤滑油が流れることはない。
【0068】
また、手首回転部3が図2(a)の状態と図2(d)の状態との間で捻り回転する場合や、図2(c)の状態と図2(d)の状態との間で捻り回転する場合も、上述したと同様にして、第2密閉空間57内の潤滑油が第1密閉空間32へと流れ出ることが防止される。
【0069】
図2(a)の状態と図2(d)の状態との間、および図2(c)の状態と図2(d)の状態との間で、手首回転部3が回転中心軸線Wを中心にフランジ4が下向きとなる方向に回転した場合には、他端開口65bが手首回転部3の回転中心軸線Wよりもフランジ4とは反対側に位置していることから、連通路65の他端開口65b側の一部或は他端開口65bが第2密閉空間57内の潤滑油面Gから上に離れこそすれ、潤滑油面Gよりも下となることはない。従って、第2密閉空間57から第1密閉空間32への潤滑油の流出は防止される。
【0070】
以上のように本実施形態によれば、第1密閉空間32と第2密閉空間57との間で潤滑油が連通路65を通じて流出入することを極力防止しながら、第2密閉空間57はもちろんのこと、第1密閉空間32内の空気圧の異常上昇を防止でき、潤滑油が第1減速装置7から漏れ出ることを防止できる。
【0071】
また、第1密閉空間32と第2密閉空間57との間で潤滑油が連通路65を通じて流出入することが極力防止されるので、潤滑油が第1密閉空間32或は第2密閉空間57に偏在することがない。従って、第1密閉空間32および第2密閉空間57の潤滑油量をそれぞれ適量に維持でき、第1減速機構11および第2減速機構12の焼付を効果的に防止できる。
【0072】
もちろん、手首回転部3の姿勢によっては、第1密閉空間32と第2密閉空間57との間で潤滑油が連通路65を通じて流出入することはある。しかし、この第1密閉空間32と第2密閉空間57との間で潤滑油が流出入する姿勢は分かっているのであるから、ロボットの動作プログラムを作成する際、そのような姿勢をとることのないようにすることによって、より確実に第1密閉空間32と第2密閉空間57との間での潤滑油の流出入を防止することが可能となる。
【0073】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す第1の実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或は変更が可能である。
連通路65の一端開口65aを設ける位置は、図10に示す本発明の第2の実施形態のように、領域R2に設けるようにしても良く、また、図11に示す本発明の第3の実施形態のように、領域R3に設けても、図12に示す本発明の第4の実施形態のように、領域R4に設けても良い。更には、図13に示す本発明の第4の実施形態のように、L1はケーシング受け28を矢印J方向から見たとき、必ずしも手首回転部3の回転中心軸線Wに一致させる必要はなく、また、第1の弁体74および第2の弁体75の回動中心軸線C1,C2もL1,L2と平行である必要もない。
【0074】
第1ケーシング9とケーシング受け28との間を密封するOリング27は、ケーシング受け28側に装着するようにしても良い。
第2ケーシング10において、外ケーシング要素39とケーシング受け47との間にOリングを設けるようにすれば、第2剛性内歯歯車20の2個のOリング46,51は不要となる。
第2ケーシング10の貫通孔はねじ孔56に限られない。
第1減速機構11および第2減速機構12は、通常の歯車列からなるものであっても良い。
第1ケーシング9および第2ケーシング10の構成要素は、実施形態のものに限られない。
弁体74,75は台形状であっても良い。
【符号の説明】
【0075】
図面中、1は腕、2はフレーム、3は手首回転部、4はフランジ(エンドエフェクタ取付部材)、5はハウジング、6はモータ、7は第1減速装置、8は第2減速装置、9は第1ケーシング、10は第2ケーシング、11は第1減速機構、12は第2減速機構、25はオイルシール(シール部材)、27はOリング(シール部材)、28はケーシング受け(嵌合部)、32は第1密閉空間、43はオイルシール(シール部材)、46はOリング(シール部材)、47はケーシング受け、49は入力軸、52,53はOリング(シール部材)、54は蓋体、55はねじ、56はねじ(貫通孔)、57は第2密閉空間、65は連通路、65aおよび65bは連通路の一端開口および他端開口、68はパイプ、69は弁装置、74は第1の弁体、75は第2の弁体を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なエンドエフェクタ取付部材を備え、前記エンドエフェクタ取付部材を駆動するモータを内蔵した手首回転部を、前記手首回転部を駆動するモータを内蔵した腕の先端部に回転可能に取り付けるロボットの手首装置において、
前記手首回転部のハウジングの互いに90度異なる2面に、前記エンドエフェクタ取付部材の回転中心軸線上に位置する前記エンドエフェクタ取付部材用の第1減速装置と前記エンドエフェクタ取付部材の回転中心軸線から径方向に離れて位置する前記手首回転部用の第2減速装置を設け、
前記第1減速装置および前記第2減速装置は、それぞれ第1ケーシング内および第2ケーシング内に、前記手首回転部に内蔵された前記モータの回転を減速して前記エンドエフェクタ取付部材に伝達する第1減速機構および前記腕に内蔵された前記モータの回転を減速して前記手首回転部に伝達する第2減速機構を収容してなり、
前記第1ケーシングは、前記ハウジング側の一端面が開放され、前記ハウジングの前記互いに異なる外面のうち一方の外面に設けられた嵌合部に、当該嵌合部および前記第1ケーシングのうちの少なくとも一方に両者間をシールするシール部材を取り付けた状態で嵌合されることによって内部を第1密閉空間とし、
前記第2ケーシングは、内部を外部に連通させる貫通孔を有して前記ハウジングの前記互いに異なる外面のうち他方の外面に取り付けられ、前記ハウジングに取り付けられた後に前記貫通孔が塞がれることによって内部を第2密閉空間とし、
前記第1ケーシング内の前記第1密閉空間と前記第2ケーシング内の前記第2密閉空間との間を連通する連通路を設け、前記連通路の前記第1密閉空間内への開口を、前記嵌合部に、当該嵌合部を前記エンドエフェクタ取付部材の回転中心軸線方向から見たときの図形中心を通って直交する任意の2つの直線により4つの領域に分割したとき当該4つの領域のうちの一つの領域内に位置するように設け、且つ、前記第1密閉空間内への開口を開閉する弁体であって自重により閉じ方向および開き方向に回動する弁体を少なくとも2個、前記開口を設けた前記一つの領域に隣接する2つの領域側から閉じ方向に回動するように設け、
前記連通路の前記第2密閉空間内への開口を、前記手首回転部の回転中心軸線を挟んで前記エンドエフェクタ取付部材とは反対側で、且つ、前記エンドエフェクタ取付部材の回転中心軸線が水平の状態において、前記第2減速装置が前記エンドエフェクタ取付部材の回転中心軸線の真上に位置したとき、前記第2密閉空間の最下部よりも第1の所定高さ以上上で、前記第2減速装置が前記エンドエフェクタ取付部材の回転中心軸線の真横に位置したとき、前記第2密閉空間の最下部よりも第2の所定高さ以上上となる位置に設けたことを特徴とするロボットの手首装置。
【請求項2】
前記2つの弁体は、少なくとも互いに隣接する側の縁部が回動中心側から先端に向かって回動中心と直交する方向の前記弁体の中心線に次第に近付く形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のロボットの手首装置。
【請求項1】
回転可能なエンドエフェクタ取付部材を備え、前記エンドエフェクタ取付部材を駆動するモータを内蔵した手首回転部を、前記手首回転部を駆動するモータを内蔵した腕の先端部に回転可能に取り付けるロボットの手首装置において、
前記手首回転部のハウジングの互いに90度異なる2面に、前記エンドエフェクタ取付部材の回転中心軸線上に位置する前記エンドエフェクタ取付部材用の第1減速装置と前記エンドエフェクタ取付部材の回転中心軸線から径方向に離れて位置する前記手首回転部用の第2減速装置を設け、
前記第1減速装置および前記第2減速装置は、それぞれ第1ケーシング内および第2ケーシング内に、前記手首回転部に内蔵された前記モータの回転を減速して前記エンドエフェクタ取付部材に伝達する第1減速機構および前記腕に内蔵された前記モータの回転を減速して前記手首回転部に伝達する第2減速機構を収容してなり、
前記第1ケーシングは、前記ハウジング側の一端面が開放され、前記ハウジングの前記互いに異なる外面のうち一方の外面に設けられた嵌合部に、当該嵌合部および前記第1ケーシングのうちの少なくとも一方に両者間をシールするシール部材を取り付けた状態で嵌合されることによって内部を第1密閉空間とし、
前記第2ケーシングは、内部を外部に連通させる貫通孔を有して前記ハウジングの前記互いに異なる外面のうち他方の外面に取り付けられ、前記ハウジングに取り付けられた後に前記貫通孔が塞がれることによって内部を第2密閉空間とし、
前記第1ケーシング内の前記第1密閉空間と前記第2ケーシング内の前記第2密閉空間との間を連通する連通路を設け、前記連通路の前記第1密閉空間内への開口を、前記嵌合部に、当該嵌合部を前記エンドエフェクタ取付部材の回転中心軸線方向から見たときの図形中心を通って直交する任意の2つの直線により4つの領域に分割したとき当該4つの領域のうちの一つの領域内に位置するように設け、且つ、前記第1密閉空間内への開口を開閉する弁体であって自重により閉じ方向および開き方向に回動する弁体を少なくとも2個、前記開口を設けた前記一つの領域に隣接する2つの領域側から閉じ方向に回動するように設け、
前記連通路の前記第2密閉空間内への開口を、前記手首回転部の回転中心軸線を挟んで前記エンドエフェクタ取付部材とは反対側で、且つ、前記エンドエフェクタ取付部材の回転中心軸線が水平の状態において、前記第2減速装置が前記エンドエフェクタ取付部材の回転中心軸線の真上に位置したとき、前記第2密閉空間の最下部よりも第1の所定高さ以上上で、前記第2減速装置が前記エンドエフェクタ取付部材の回転中心軸線の真横に位置したとき、前記第2密閉空間の最下部よりも第2の所定高さ以上上となる位置に設けたことを特徴とするロボットの手首装置。
【請求項2】
前記2つの弁体は、少なくとも互いに隣接する側の縁部が回動中心側から先端に向かって回動中心と直交する方向の前記弁体の中心線に次第に近付く形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のロボットの手首装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−20219(P2011−20219A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167754(P2009−167754)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
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