説明

ロボット制御装置

【課題】作業者が教示点の位置・姿勢を修正するための手動操作を行う際に、安価かつ簡単な構成で、位置・姿勢情報を修正することができるとともに、作業者への負担を軽減することができるロボット制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ロボット制御装置3は、教示点の位置・姿勢を修正するための手動操作によるロボット4の動作速度を制御する動作速度制御部8と、手動操作に従って、ロボット4の動作を制御する動作制御部6とを備えている。動作速度制御部8は、ロボット本体のリンク上および作業ツール上に予め設定された特徴点と、特徴点の位置座標を表現するために設定された基準点との接近距離を算出するとともに、接近距離に基づいて、動作速度を決定する。動作制御部6は、決定された動作速度により、ロボット4を動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの位置および姿勢を変更するための教示再生方式のロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、教示再生方式のロボット制御装置は、作業プログラムに記録された情報に基づいて、作業者が指示した作業を行う。そして、作業プログラム内にロボットの位置・姿勢情報を記録する場合、作業者は、ティーチペンダント(以下、「TP」という。)と呼ばれる教示操作盤を手動操作することによって、ロボットの現在の位置・姿勢を所望の状態に変更する必要がある。
【0003】
ここで、近年、作業プログラムを再生するロボット制御装置を使用せずに、作業プログラムを作成する、いわゆるオフラインプログラミングシステムによって作業プログラムを作成する機会が増えている。このオフラインプログラミングシステムで作業プログラムを作成する場合、作業者が、オフラインプログラミングシステムで作成した作業プログラムを実機で低速で再生し、ロボット本体やロボットに取り付けた作業ツール(以下、「作業ツール」という。)と、作業対象物との衝突を確認しながら、作業プログラムに記録されたロボットの位置・姿勢情報を修正する必要がある。従って、この修正作業を行う際、作業者は手動操作にてロボットの位置・姿勢を作業に最適な状態に変更し、既存の作業プログラムに再記録する必要がある。
【0004】
また、作業プログラム内に記録されているロボットの位置・姿勢を修正するために、ロボット本体および作業ツールが作業対象物に接近した状態で、ロボットの現在の位置・姿勢を手動操作によって変更する場合、作業者は、ロボット本体および作業ツールと作業対象物が衝突しないように手動操作時におけるロボットの動作速度を頻繁に変更しながら、ロボットの現在の位置・姿勢を変更する必要がある。そして、手動操作時におけるロボットの動作速度を変更する際、作業者はTPを操作して手動操作時におけるロボットの動作速度をロボット制御装置に指示する必要があるが、熟練した作業者であっても、目視確認することなく、所望の動作速度を指示することは非常に困難である。このため、ロボットおよび作業ツールと作業対象物が衝突しないことを目視確認し、目線を変えてTPを操作して動作速度を変更し、再度、ロボット本体および作業ツールと作業対象物を目視確認しながらロボットの現在の位置・姿勢を変更するといった、負担の大きい作業を強いられている。また、この際、作業者による、ロボット制御装置に対する動作速度の指示を誤ると、ロボット本体および作業ツールが作業対象物に衝突してしまい、作業ツールや作業対象物が破損してしまう場合がある。
【0005】
そこで、これらの不都合を解消すべく、ロボット本体および作業ツールが作業対象物に接近した状態を判定する方法が提案されている。この方法としては、例えば、作業対象物やロボットの周辺装置の3次元情報を予め登録しておく方法が開示されている。より具体的には、作業対象物に関する3次元データを取得して出力する視覚センサと、視覚センサにより取得された3次元データを処理して、作業対象物の位置・姿勢を演算するデータ処理装置とを備え、データ処理装置から得られた情報に基づいて、作業対象物に対して所望の位置、および姿勢となるように、ロボットを動作させるロボット制御装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、ロボットに外界センサを取り付ける方法も開示されている。より具体的には、ロボットに装着され、作業対象物を撮像するカメラと、撮像された画像において、作業対象物上の任意の点を指定する手段と、撮像された画像における、指定された点の位置情報を取得する手段と、当該位置情報、およびカメラと作業対象物間の距離に基づいて、ロボットの移動方向と移動量を決定する手段と、当該移動方向と移動量に基づいて、ロボットを移動させる手段とを備えるロボットが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、作業ツールと作業対象物の接触の有無を判定するロボット制御装置が開示されている。より具体的には、当該ロボット制御手段は、作業ツールを、教示修正が必要な教示点に到達する前に停止させる手段と、作業ツールと作業対象物との接触の有無を判定する手段を備えている。そして、まず、ロボットの現在の位置・姿勢が、教示点に到達する前にロボットを自動的に停止させる。次いで、作業者が、当該停止位置から、オフラインティーチングによって作成した作業プログラムの教示内容を確認するジョグ送り(手動送り)操作によって、作業対象物に対して所望の位置、姿勢となるようにロボットを動かす。そして、作業ツールと作業対象物の接触と、作業対象物に対して作業ツールが所望の位置、姿勢になったことが確認されると、TPにより修正指示が入力され、所望の位置、姿勢を新たな教示位置として教示点を修正する。このような構成により、ロボットの教示修正作業を容易に行うことができると記載されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2005−1022号公報
【特許文献2】特開2005−74600号公報
【特許文献3】特開2004−280529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載のロボット制御装置においては、正確な3次元データをロボット制御装置に格納するためには、膨大なデータ、および当該データを格納するための記憶装置が必要となるため、コスト面の制約が厳しい産業用ロボットにおいて、採用することが困難であるという問題があった。また、上記特許文献2に記載のロボット制御装置においては、外界センサを別個に設ける必要があるため、コストアップになるという問題があった。
【0008】
また、上記特許文献3に記載のロボット制御装置においては、作業ツールと作業対象物との接触の有無を判定する手段を別個に設ける必要があるため、コストアップになるという問題があった。また、作業ツールと作業対象物との接触を前提としており、作業ツールと作業対象物とを接触させる際に、作業者が、ロボットと作業対象物との距離に応じて、ロボットの動作速度を調整しなければならないため、作業者への負担が大きいという問題があった。また、作業者の操作ミスにより、作業ツールが作業対象物に衝突する場合があり、作業ツールや作業対象物が破損してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、作業者が作成済みの作業プログラム内に記録されている教示点の位置・姿勢を修正するための手動操作を行う際に、安価かつ簡単な構成で、位置・姿勢情報を修正することができるとともに、作業者への負担を軽減することができるロボット制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ロボットの作業プログラム内に記録されている教示点の位置・姿勢の修正を行うロボット制御装置において、教示点の位置・姿勢を修正するための手動操作によるロボットの動作速度を制御する動作速度制御手段と、手動操作に従って、ロボットの動作を制御する動作制御手段と、を備え、動作速度制御手段は、ロボット本体のリンク上および作業ツール上に予め設定された特徴点と、特徴点の位置座標を表現するために設定された基準点との接近距離を算出するとともに、接近距離に基づいて、動作速度を決定し、動作制御手段は、決定された動作速度により、ロボットが、作業対象物に対して所望の位置、および姿勢となるように、ロボットを動作させることを特徴とする。
【0011】
同構成によれば、動作速度制御手段が、基準点と特徴点との接近距離を算出するため、作業対象物や周辺機器等の詳細な3次元データや、当該データを格納するための記憶装置、および外界センサ等のロボット周辺環境を識別するための特別な装置を使用しなくても、ロボットと作業対象物との接近状態を判定することが可能となる。その結果、安価かつ簡単な構成で、ロボットと作業対象物との接近状態を判定することが可能となる。
【0012】
また、作業者が教示点の位置・姿勢を修正するために手動操作を行う場合、特徴点と基準点との接近距離に応じて、自動的に手動操作におけるロボットの動作速度を制御できることになる。従って、手動操作を行う際に、作業者がロボットと作業対象物との接近距離に応じてロボットの動作速度を変更する必要がなくなるため、作業者への負担を軽減することができる。また、作業ツールと作業対象物との接触の有無を判定するための手段を別個に設ける必要がなくなるため、コストアップを抑制することが可能になる。さらに、ロボットと作業対象物が接近した状態にも関わらず、作業者の操作ミスによって、動作速度を高速側に設定し、かつ、ロボットが作業対象物に接近する方向に手動操作が指示されても、自動的に動作速度を制限することが可能になる。従って、作業者の操作ミスに基づく、ロボットと作業対象物の衝突を効果的に抑制して、ロボットや作業対象物の破損を効果的に回避することができ、万一、ロボットと作業対象物が衝突しても、双方が受けるダメージを低減することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロボット制御装置であって、動作速度制御手段は、接近距離と、予め設定された安全距離、および予め設定され、安全距離よりも小さい臨界距離とを比較し、比較の結果に応じて、動作速度を決定することを特徴とする。なお、ここでいう「安全距離」とは、ロボットと作業対象物との衝突が発生しない、基準点からの距離をいい、ロボットの動作速度の制限が不要な距離をいう。また、「臨界距離」とは、ロボットと作業対象物との衝突が発生し易い、基準点からの距離をいい、ロボットの動作速度の制限が必要な距離をいう。
【0014】
同構成によれば、手動操作におけるロボット4の動作速度を精度良く制御できることになる。従って、作業者の操作ミスに基づく、ロボットと作業対象物の衝突を一層効果的に抑制して、ロボットや作業対象物の破損を一層効果的に回避することが可能になる。また、手動操作時における、作業者への負担を一層軽減することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のロボット制御装置であって、動作速度制御手段は、予め設定された複数の速度レベルに対応する速度の中から動作速度を決定することを特徴とする。同構成によれば、動作速度の決定が迅速かつ簡略化されるため、作業者が作成済みの作業プログラム内に記録されている教示点の位置・姿勢を修正するために行う手動操作の時間を短縮化することが可能になる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のロボット制御装置であって、動作速度制御手段は、接近距離が、安全距離以上である場合は、複数の速度レベルのうち、作業者が選択した速度レベルに対応する速度をロボットの動作速度とし、接近距離が、臨界距離未満の場合は、複数の速度レベルのうち、最も低速な速度レベルに対応する速度をロボットの動作速度とし、接近距離が、臨界距離以上であり、かつ安全距離未満である場合は、複数の速度レベルのうち、接近距離の長さに応じた速度レベルを選択するとともに、接近距離の長さに応じて選択した速度レベルと、作業者が選択した速度レベルを比較し、より低速な速度レベルに対応する速度をロボットの動作速度とすることを特徴とする。
【0017】
同構成によれば、手動操作におけるロボットの動作速度を、接近距離、および作業者が選択した速度レベルに応じて、精度良く制御できることになる。従って、作業者の操作ミスに基づく、ロボットと作業対象物の衝突をより一層効果的に抑制して、ロボットや作業対象物の破損をより一層効果的に回避することが可能になる。また、手動操作における、作業者への負担をより一層軽減することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のロボット制御装置であって、基準点が、作業プログラム内に記録されている教示点であることを特徴とする。同構成によれば、教示点とは別個に、新たに基準点を設定する必要がなくなるため、ロボットの動作速度の制御が容易になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のロボット制御装置によれば、作業者が作成済みの作業プログラム内に記録されている教示点の位置・姿勢を修正するための手動操作を行う際に、安価かつ簡単な構成で、ロボットと作業対象物との接近状態を判定することできるとともに、位置・姿勢情報を修正することができる。また、手動操作を行う際の作業者への負担を軽減することができる。また、ロボットや作業対象物の破損を効果的に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の具体的な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るロボット制御装置が使用されるロボットシステムの構成を示すブロック図であり、図2は、本発明の実施形態に係るロボット制御装置を示すブロック図である。なお、本実施形態では、ロボットにより作業対象物に対してアーク溶接を行う作業プログラムの修正を例に挙げて、説明する。
【0021】
このロボットシステム1は、図1に示すように、教示点を入力する(ティーチングする)ための教示点入力手段2と、ロボット4の動作を制御するためのロボット制御装置3と、を備えている。教示点入力手段2としては、例えば、可搬型の教示操作盤であるTPを使用することができ、教示点の入力作業は、教示点入力手段2が具備する図示しないスイッチ等を作業者が操作することにより行われる。また、教示点入力手段2は、図示しないケーブルを介してロボット制御装置3と接続されている。ロボット制御装置3は、ロボット4の作業プログラム内に記録されている教示点の位置の修正を行う、教示再生方式の制御装置であり、図示しないケーブルを介してロボット4と接続されている。また、ロボット4は、例えば、複数の関節軸を有する多関節ロボットであり、ロボット本体4aと、アーク溶接用の作業ツール(アーク溶接トーチ)4bにより構成されている。そして、ロボット制御装置3が、図示しないサーボモータを制御することにより、各関節軸が駆動され、ロボット4(即ち、ロボット本体4aと作業ツール4b)の動作が制御される構成となっている。
【0022】
また、ロボット制御装置3は、図2に示すように、作業プログラムに記録された情報をロボット4の移動命令信号等に変換する情報変換部5と、当該情報変換部5に接続され、ロボット4のサーボモータの駆動を制御することにより、ロボット4の動作を制御する動作制御手段である動作制御部6と、当該動作制御部6に接続され、サーボモータの駆動を行うサーボドライバ7と、を備えている。そして、当該ロボット制御装置3は、作業プログラムに記録された情報に基づいて、作業者が指示した作業を行うように構成されており、作業者は、作業プログラムをジョグ送り操作にて再生し、作成された作業プログラムが、所望の通りに作成されているか否かを確認する。
【0023】
作成済みの作業プログラム内に記録されている教示点におけるロボットの位置・姿勢情報を修正するための作業を行う際には、まず、作業者が、ロボット制御装置3のモードを、動作モードから教示モードに設定する。この教示モードの設定は、例えば、教示点入力手段2に設けられたモード切り替えスイッチにより行うことができる。
【0024】
次いで、教示点入力手段2の画面に表示された作業プログラムのうち、作業者が確認を行う作業プログラムを選択するとともに、作業プログラム内に記録されている教示点のうち、位置修正を行う教示点を選択する。例えば、アーク溶接においては、アーク溶接しようとする溶接点の教示点が選択される。そうすると、ロボット制御装置3に設けられたプログラム記憶部13に記憶されている作業プログラムの中から、選択した作業プログラムが読み出され、当該作業プログラムが、プログラム記憶部13から情報変換部5に入力される。
【0025】
作業者が、教示点入力手段2にてジョグ送り操作を開始し、選択した作業プログラムの実行を指示すると、情報変換部5は、作業プログラムに記録された情報をロボット4の移動命令信号や作業ツール4bの制御信号に変換するとともに、これらの信号を出力し、当該信号が動作制御部6に入力される。なお、ロボット4の移動命令信号には、移動先となる目標点(即ち、選択された教示点)におけるロボット4の位置、および姿勢に関するデータ(以下、「教示点データ」という。)が含まれている。また、作業者によるジョグ送り操作は、例えば、教示点入力手段2に設けられたジョグ送りボタンを押すことにより行うことができる。
【0026】
次いで、動作制御部6は、入力された信号に基づいて、サーボモータを駆動させるための駆動信号を発生させ、当該駆動信号がサーボドライバ7に入力され、当該サーボドライバ7は、駆動信号に基づいて、サーボモータの駆動を行い、ロボット4が、上述の教示点に向かって移動する。そして、ロボット4が教示点に到達すると、作業者は、ジョグ送り操作を中断して、選択した作業プログラムの教示内容を確認するとともに、作業プログラムに記録されたロボット4の位置・姿勢情報を修正する必要がある場合は、作業対象物20に対して、当該ロボット4が、所望の位置、および姿勢となるように、手動操作で、ロボット4を動かす。そして、手動操作にてロボット4の位置・姿勢を作業に最適な状態(即ち、上述の所望の位置、および姿勢)に変更して記録操作を行うと、当該位置・姿勢が新たな教示位置として、既存の作業プログラムに再記録され、教示点が修正される。本実施形態においては、このように、作業プログラム内に記録されている各教示点におけるロボットの位置・姿勢情報が確認・修正される。
【0027】
なお、手動操作が行われる場合は、作業者が、教示点入力手段2にて手動操作を開始し、当該手動操作の実行を指示すると、教示点入力手段2から、手動操作を行うための情報が情報変換部5に入力される。そして、当該情報変換部5は、入力された情報をロボット4の移動命令信号や作業ツール4bの制御信号に変換するとともに、これらの信号を出力し、当該信号がロボット制御装置3に設けられ、情報変換部5に接続された手動操作実行部12に入力される。次いで、手動操作実行部12は、入力された信号に基づいて、ロボット4の移動位置を算出して、算出結果に基づく信号を出力し、当該信号が、手動操作実行部12に接続された動作制御部6に入力される。次いで、動作制御部6は、入力された信号に基づいて、サーボモータを駆動させるための駆動信号を発生させ、当該駆動信号がサーボドライバ7に入力され、当該サーボドライバ7は、駆動信号に基づいて、サーボモータの駆動を行い、ロボット4が、上述の所望の位置、および姿勢となるように移動する。
【0028】
ここで、本実施形態においては、教示点の位置・姿勢を修正するための手動操作を行う際の、手動操作速度(即ち、手動操作によるロボット4の動作速度)を制御するための手段が設けられている点に特徴がある。以下、本特徴について、図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図2に示すように、本実施形態におけるロボット制御装置3には、作業者が、作成済みの作業プログラム内に記録されている教示点の位置・姿勢を修正するための手動操作によるロボット4の動作速度を制御するための動作速度制御手段である動作速度制御部8が設けられている。この動作速度制御部8は、上述の教示点データを記憶する教示点データ記憶部9と、予めロボット本体4aのリンク上および作業ツール4b上に設定され、ロボット4と作業対象物20との距離を算出するために使用される特徴点(本実施形態においては、図1に示す、特徴点T1〜T3)を記憶する特徴点データ記憶部10と、作業者の手動操作によるロボット4の動作速度を監視する動作速度監視部11と、を備えている。
【0030】
次に、手動操作を行う際の、ロボット4の動作速度制御の手順について説明する。図3は、本発明の実施形態に係るロボット制御装置における、ロボットの動作速度を制御する手順を示すフローチャートである。まず、作業者によるジョグ送り操作が開始されると(ステップS1)、選択された作業プログラムに記録された情報に基づいて変換されたロボット4の移動命令信号や作業ツール4bの制御信号が動作制御部6に入力される際に、動作速度制御部8は、上述の教示点データを教示点データ記憶部9に記憶する(ステップS2)。
【0031】
次いで、動作制御部6は、作業者がジョグ送り操作において、どの段階でジョグ送り操作を中断したかを検知し(ステップS3)、検知内容に基づく検知信号が動作速度監視部11に入力される(ステップS4)。より具体的には、ロボット4が、移動目標となる上述の教示点に到達した状態で、作業者がジョグ送り操作を中断した場合は、動作制御部6は、教示点に到達した状態で、作業者がジョグ送り操作を中断した旨の検知信号を出力し、当該検知信号が動作速度監視部11に入力される。一方、ロボット4が、上述の教示点に到達する前に、作業者がジョグ送り操作を中断した場合(例えば、作業プログラムの再生中に、何らかの異常が発生した場合)は、動作制御部6は、教示点に到達する前に、作業者がジョグ送り操作を中断した旨の検知信号を出力し、当該検知信号が動作速度監視部11に入力される。
【0032】
次いで、動作速度監視部11は、ジョグ送り操作が中断された段階に応じて、上述の特徴点T1〜T3の位置座標を表現するために使用され、ロボット4と作業対象物20との距離を算出するための基準となる基準点を設定する(ステップS5)。より具体的には、図4に示すように、移動経路rにおいて、ロボット4の作業ツール4bが、作業者により選択された、位置修正が行われる最新の教示点A1に到達した状態で、作業者がジョグ送り操作を中断した場合は、動作速度監視部11は、教示点データ記憶部9に記憶された教示点データのうち、最新の教示点A1に対応する最新の教示点データD1を読み出し、当該教示点データD1に基づいて、ロボット4の動作速度を制御するための基準となる基準点B1を設定(即ち、最新の教示点A1を基準点B1に設定)する。なお、図4において、最新の教示点A1の1つ前の教示点を教示点A2として示している。一方、図5に示すように、移動経路rにおいて、ロボット4の作業ツール4bが、最新の教示点A1に到達する前に、作業者がジョグ送り操作を中断した場合は、動作速度監視部11は、教示点データ記憶部9に記憶された教示点データのうち、最新の教示点A1と最新の教示点A1の1つ前の教示点A2に対応する教示点データD1、D2を読み出し、当該教示点データD1、D2に基づいて、ロボット4の動作速度を制御するための基準となる基準点B1、B2を設定(即ち、最新の教示点A1を基準点B1に設定し、1つ前の教示点A2を基準点B2に設定)する。なお、図5において、最新の教示点A1の2つ前の教示点を教示点A3として示している。
【0033】
次いで、作業者が、ロボット4の位置・姿勢を、所望の位置、および姿勢に変更するために、手動動作を開始すると(ステップS6)、動作速度監視部11は、位置修正が行われる最新の教示点A1に到達した状態で、作業者がジョグ送り操作を中断した場合は、上述の基準点B1と、ロボット本体4aのリンク上、および作業ツール4b上に予め設定された各特徴点T1〜T3との接近距離E1〜E3を算出する。ここで、接近距離E1とは、基準点B1と特徴点T1との距離をいい、接近距離E2とは、基準点B1と特徴点T2との距離をいう。また、接近距離E3とは、基準点B1と特徴点T3との距離をいう。一方、最新の教示点A1に到達する前に、作業者がジョグ送り操作を中断した場合は、動作速度監視部11は、上述の基準点B1、B2と、ロボット本体4aのリンク上、および作業ツール4b上に予め設定された各特徴点T1〜T3との接近距離E1〜E6を算出する(ステップS7)。ここで、接近距離E4とは、基準点B2と特徴点T1との距離をいい、接近距離E5とは、基準点B2と特徴点T2との距離をいう。また、接近距離E6とは、基準点B2と特徴点T3との距離をいう。
【0034】
そして、動作速度監視部11は、最新の教示点A1に到達した状態で、作業者がジョグ送り操作を中断した場合は、上述の接近距離E1〜E3に基づいて、ロボット4の動作速度を決定し、最新の教示点A1に到達する前に、作業者がジョグ送り操作を中断した場合は、上述の接近距離E1〜E6に基づいて、ロボット4の動作速度を決定する(ステップS8)。より具体的には、最新の教示点A1に到達した状態で、作業者がジョグ送り操作を中断した場合は、動作速度監視部11は、基準点B1(即ち、上述の図4に示した教示点A1)と、図1に示した各特徴点T1、T2、T3との接近距離E1、E2、E3の各々と、図6に示す、予め設定された安全距離S、および当該安全距離Sよりも小さい臨界距離Rとを比較し、当該比較の結果に応じて、動作速度を決定する。また、最新の教示点A1に到達する前に、作業者がジョグ送り操作を中断した場合は、動作速度監視部11は、基準点B1、B2(即ち、上述の図5に示した教示点A1とA2)と、各特徴点T1、T2、T3との接近距離E1〜E6の各々と、上述した予め設定された安全距離S、および当該安全距離Sよりも小さい臨界距離Rとを比較し、当該比較の結果に応じて、動作速度を決定する。ここで、安全距離Sとは、ロボット本体4a、または作業ツール4bと作業対象物20との衝突が発生しない、基準点B1(または、基準点B2)からの距離をいい、ロボット4の動作速度の制限が不要な距離をいう。また、臨界距離Rとは、ロボット本体4a、または作業ツール4bと作業対象物20との衝突が発生し易い、基準点B1(または、基準点B2)からの距離をいい、ロボット4の動作速度の制限が必要な距離をいう。
【0035】
また、本実施形態においては、図6に示すように、基準点B1(または、基準点B2)を中心として、安全距離Sを半径とする領域内であって、ロボット本体4a、または作業ツール4bと作業対象物20との衝突が発生しない領域を安全領域Tとしている。さらに、基準点B1(または、基準点B2)を中心として、臨界距離Rを半径とする領域内であって、ロボット本体4a、または作業ツール4bと作業対象物20との衝突が発生し易い領域を臨界領域Uとしている。
【0036】
そして、最新の教示点A1に到達した状態で、作業者がジョグ送り操作を中断した場合において、算出された全ての接近距離E1〜E3(最新の教示点A1に到達する前に、作業者がジョグ送り操作を中断した場合においては、算出された全ての接近距離E1〜E6)が、上述の安全距離S以上である場合は、動作速度監視部11は、動作速度の制限を行わず、作業者が選択した動作速度レベルに対応する速度をロボット4の動作速度とする。例えば、図7に示すように、接近距離に対応して、予めロボット4の動作速度レベルが5段階(レベル0〜4の5段階であって、レベル4が最も高速、レベル0が最も低速)に設定されている場合、算出された全ての接近距離E1〜E3(または、算出された全ての接近距離E1〜E6)が、上述の安全距離S以上であるため、ロボット4は、上述の安全領域Tの外側に位置すると言える。従って、ロボット4の動作速度が、レベル0〜4に対応する、いずれの速度であっても、ロボット本体4a、または作業ツール4bと作業対象物20との衝突は発生しないため、仮に、複数の動作速度レベルのうち、作業者が最も高速であるレベル4の動作速度を選択している場合であっても、動作速度の制限は行われない。
【0037】
また、最新の教示点A1に到達した状態で、作業者がジョグ送り操作を中断した場合において、算出された接近距離E1〜E3の少なくとも1つ以上(最新の教示点A1に到達する前に、作業者がジョグ送り操作を中断した場合においては、算出された接近距離E1〜E6の少なくとも1つ以上)が、上述の臨界距離R未満の場合は、動作速度監視部11は、複数ある動作速度レベルのうち、最も低速な速度レベルに対応する速度を実際の動作速度とする。この場合、ロボット4は、上述の臨界領域Uの内側に位置すると言えるため、動作速度が小さい場合であっても、ロボット本体4a、または作業ツール4bと作業対象物20との衝突が発生し易い状況にある。従って、当該衝突を回避すべく、作業者が設定している動作速度レベルに依存することなく、最も低速な速度レベル(即ち、レベル0)に対応する速度に、ロボット4の動作速度が制限される。
【0038】
また、最新の教示点A1に到達した状態で、作業者がジョグ送り操作を中断した場合において、算出された全ての接近距離E1〜E3(最新の教示点A1に到達する前に、作業者がジョグ送り操作を中断した場合においては、算出された全ての接近距離E1〜E6)が臨界距離R以上で、かつ、接近距離E1〜E3の少なくとも1つ以上(最新の教示点A1に到達する前に、作業者がジョグ送り操作を中断した場合においては、接近距離E1〜E6の少なくとも1つ以上)が、安全距離S未満の場合は、ロボット4は、上述の臨界領域Uの外側に位置するが、安全領域Tの内側に位置すると言えるため、手動操作速度が大きい場合、ロボット本体4a、または作業ツール4bと作業対象物20との衝突が発生する場合がある。従って、当該衝突を回避すべく、動作速度が制限される。この場合、動作速度監視部11は、接近距離E1〜E3(または、接近距離E1〜E6)の長さに応じて速度レベルを選択するとともに、当該選択した速度レベルと、作業者が選択した速度レベルを比較し、より低速な速度レベルに対応する速度をロボットの動作速度とする。
【0039】
より具体的には、動作速度監視部11は、まず、下記(式1)によって、接近距離E1〜E3の各々に対して、速度制限比率を算出する。
速度制限比率(%)=(接近距離−臨界距離)/(安全距離−臨界距離)×100…(式1)
【0040】
次いで、設定された最も高速な動作速度(動作速度レベル4に対応する速度)に、上述の(式1)により算出された速度制限比率のうち、最も低いものを乗じた速度を算出する。そして、当該算出された速度に最も近い速度を有する動作速度レベル(例えば、手動速度レベル2)を選定し、当該選定された動作速度レベルに対応する速度を、ロボット4の動作速度とする。ただし、作業者が選択している動作速度レベルに対応する速度が、速度制限比率から求めた動作速度レベルに対応する速度よりも低速である場合(例えば、作業者が選択した動作速度レベルがレベル1であり、速度制限比率から求めた動作速度レベルがレベル2の場合)は、作業者が選択している速度レベル(レベル1)を優先する。
【0041】
このように、動作速度監視部11は、接近距離に基づいて、ロボット4の動作速度を決定する。そして、動作制御部6は、決定された動作速度により、ロボット4が、作業対象物20に対して所望の位置、および姿勢となるように、ロボット4を動作させる。より具体的には、決定された動作速度に関するデータが、動作速度監視部11から、手動操作実行部12へと出力される。そして、手動操作実行部12は、作業者が指示した手動操作条件に基づいて、ロボット4の移動位置を算出する。次いで、動作制御部6は、入力された動作速度と算出された移動位置に基づいて、サーボモータを駆動させるための駆動信号を発生させ、当該駆動信号がサーボドライバ7に入力される。サーボドライバ7は、駆動信号に基づいて、サーボモータの駆動を行い、ロボット4を、決定された動作速度により、上述の所望の位置、および姿勢となるように動作させる(ステップS9)。
【0042】
手動操作にてロボット4の位置・姿勢が作業に最適な状態(即ち、上述の所望の位置、および姿勢)に変更されると、当該位置・姿勢が新たな教示位置として、既存の作業プログラムに再記録され、教示点の位置修正が行われる(ステップS10)。
【0043】
以上のようにして、作業プログラム内に記録されている全ての教示点に対して、その位置修正を終了すると、作成済みの作業プログラム内に記録されている教示点におけるロボットの位置・姿勢情報を修正するための作業が終了する。一方、全ての教示点に対して、その位置修正を終了していない場合は、上述のステップS1〜ステップS10の作業が繰り返される(ステップS11)。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態においては、ロボット制御装置3が、教示点の位置・姿勢を修正するための手動操作によるロボット4の動作速度を制御する動作速度制御部8と、手動操作に従って、ロボット4の動作を制御する動作制御部6とを備える構成としている。そして、動作速度制御部8は、ロボット本体4aのリンク上および作業ツール4b上に予め設定された特徴点と、特徴点の位置座標を表現するために設定された基準点との接近距離を算出し、当該接近距離に基づいて、ロボット4の動作速度を決定する構成としている。また、動作制御部6は、決定された動作速度により、ロボット4が、作業対象物20に対して所望の位置、および姿勢となるように、ロボット4を動作させる構成としている。従って、動作速度制御部8が、基準点と特徴点との接近距離を算出するため、作業対象物20やロボット4の周辺機器等の詳細な3次元データや、当該データを格納するための記憶装置、および外界センサ等のロボット周辺環境を識別するための特別な装置を使用しなくても、ロボット4と作業対象物20との接近状態を判定することが可能となる。その結果、安価かつ簡単な構成で、ロボット4と作業対象物20との接近状態を判定することが可能となる。
【0045】
また、作業者が作成済みの作業プログラム内に記録されている教示点の位置・姿勢を修正するために手動操作を行う場合、特徴点と基準点との接近距離に応じて、自動的に手動操作におけるロボット4の動作速度を制御できることになる。従って、作業者がロボット4と作業対象物20との接近距離に応じて手動操作時のロボット4の動作速度を変更する必要がなくなるため、作業者への負担を軽減することができる。また、作業ツール4bと作業対象物20との接触の有無を判定するための手段を別個に設ける必要がなくなるため、コストアップを抑制することが可能になる。
【0046】
さらに、ロボット4と作業対象物20が接近した状態にも関わらず、作業者の操作ミスによって、動作速度を高速側に設定し、かつ、ロボット4が作業対象物20に接近する方向に手動操作が指示されても、自動的に動作速度を制限することが可能になる。従って、作業者の操作ミスに基づく、ロボット4と作業対象物20の衝突を効果的に抑制して、ロボット4や作業対象物20の破損を効果的に回避することができ、万一、ロボット4と作業対象物20が衝突しても、双方が受けるダメージを低減することができる。
【0047】
また、動作速度制御部8は、接近距離と、予め設定された安全距離S、および臨界距離Rとを比較し、比較の結果に応じて、動作速度を決定する構成としている。従って、手動操作におけるロボット4の動作速度を精度良く制御できることになり、結果として、作業者の操作ミスに基づく、ロボット4と作業対象物20の衝突を一層効果的に抑制して、ロボット4や作業対象物20の破損を一層効果的に回避することが可能になる。また、手動操作時における、作業者への負担を一層軽減することができる。
【0048】
また、動作速度制御部8は、予め設定された複数の速度レベルに対応する速度の中から動作速度を決定する構成としている。従って、動作速度の決定が迅速かつ簡略化されるため、作業者が作成済みの作業プログラム内に記録されている教示点の位置・姿勢を修正するために行う手動操作の時間を短縮化することが可能になる。
【0049】
また、動作速度制御部8は、接近距離が、安全距離S以上である場合は、複数の速度レベルのうち、作業者が選択した速度レベルに対応する速度をロボット4の動作速度とする構成としている。また、動作速度制御部8は、接近距離が、臨界距離R未満の場合は、複数の速度レベルのうち、最も低速な速度レベルに対応する速度をロボット4の動作速度とする構成としている。さらに、動作速度制御部8は、接近距離が、臨界距離R以上であり、かつ安全距離S未満である場合は、複数の速度レベルのうち、接近距離の長さに応じた速度レベルを選択するとともに、接近距離の長さに応じて選択した速度レベルと、作業者が選択した速度レベルを比較し、より低速な速度レベルに対応する速度をロボット4の動作速度とする構成としている。従って、手動操作におけるロボット4の動作速度を、接近距離、および作業者が選択した速度レベルに応じて、精度良く制御できることになり、結果として、作業者の操作ミスに基づく、ロボット4と作業対象物20の衝突をより一層効果的に抑制して、ロボット4や作業対象物20の破損をより一層効果的に回避することが可能になる。また、手動操作における、作業者への負担をより一層軽減することができる。
【0050】
また、本実施形態においては、特徴点の位置座標を表現するために使用され、ロボット4と作業対象物20との距離を算出するための基準となる基準点として、作業プログラム内に記録されている教示点を使用する構成としている。従って、教示点とは別個に、新たに基準点を設定する必要がなくなるため、ロボット4の動作速度の制御が容易になる。
【0051】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、これらの実施形態を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0052】
例えば、上述の実施形態においては、基準点として、作業プログラム内に記録されている教示点を使用する構成としたが、教示点とは別個に、新たな基準点を設定する構成としても良い。例えば、作業対象物20の搬入および搬出を行う装置や、作業対象物20をクランプする装置等の、ロボット4の周辺装置上に基準点を設ける構成としても良い。
【0053】
より具体的には、例えば、ワールド座標系上の任意の点を設定する手段を設けるとともに、ロボット4の周辺装置上に基準点を設定する。そして、当該基準点を、上述のロボットの作業プログラムとは別個に作成されたプログラム内に記録するとともに、プログラム記憶部13に記憶する。そして、上述の実施形態と同様に、動作速度制御部8により、特徴点T1〜T3と、ロボット4の周辺装置上に設定された基準点との接近距離を算出するとともに、当該接近距離に基づいて、ロボット4の動作速度を決定する。そして、動作制御部6は、決定された動作速度により、ロボット4が、周辺装置に対して所望の位置、および姿勢となるように、ロボット4を動作させる。このような構成により、ロボット4が周辺装置に接近した状態で、手動操作を行う際に、作業者がロボット4と周辺装置との距離に応じてロボット4の動作速度を変更する必要がなくなるため、作業者への負担を軽減することができる。また、ロボット4と周辺装置が接近した状態にも関わらず、作業者の操作ミスによって、動作速度を高速側に設定し、かつ、ロボット4が周辺装置に接近する方向に手動操作が指示されても、自動的に動作速度を制限することが可能になる。従って、作業者の操作ミスに基づく、ロボット4と周辺装置の衝突を効果的に抑制して、ロボット4や周辺装置の破損を効果的に回避することができ、万一、ロボット4と周辺装置が衝突しても、双方が受けるダメージを低減することができる。
【0054】
また、基準点として、作業プログラム内に記録されている教示点と、ロボット4の周辺装置上に設置された基準点の双方を用いて、ロボット4の動作速度を制御する構成としても良い。この場合も、上述の実施形態と同様に、動作速度制御部8により、特徴点T1〜T3と、ジョグ送り操作が中断された段階に応じて設定された基準点(即ち、作業プログラム内に記録されている教示点)、およびロボット4の周辺装置上に設定された基準点との接近距離を算出するとともに、当該接近距離に基づいて、ロボット4の動作速度を決定する。そして、動作制御部6は、決定された動作速度により、ロボット4が、作業対象物20、および周辺装置に対して所望の位置、および姿勢となるように、ロボット4を動作させる。このような構成により、ロボット4が、作業対象物20、および周辺装置に接近した状態で、手動操作を行う際に、作業者がロボット4と、作業対象物20、および周辺装置との距離に応じてロボット4の動作速度を変更する必要がなくなるため、作業者への負担を軽減することができる。また、ロボット4と作業対象物20、周辺装置が接近した状態にも関わらず、作業者の操作ミスによって、動作速度を高速側に設定し、かつ、ロボット4が、作業対象物20、および周辺装置に接近する方向に手動操作が指示されても、自動的に動作速度を制限することが可能になる。従って、作業者の操作ミスに基づく、ロボット4と、作業対象物20、および周辺装置の衝突を効果的に抑制して、ロボット4、作業対象物20、および周辺装置の破損を効果的に回避することができ、万一、ロボット4と、作業対象物20、および周辺装置が衝突しても、これらが受けるダメージを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の活用例としては、ロボットの位置および姿勢を変更するための教示再生方式のロボット制御装置が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係るロボット制御装置が使用されるロボットシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るロボット制御装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るロボット制御装置における、ロボットの動作速度を制御する手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るロボット制御装置における手動操作速度を制御する際の、基準点の設定を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態に係るロボット制御装置における手動操作速度を制御する際の、基準点の設定を説明するための図である。
【図6】ロボットの動作速度を制御する際に使用する安全距離、および臨界距離を説明するための図である。
【図7】ロボットの動作速度レベルと、接近距離の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1…ロボットシステム、2…教示点入力手段、3…ロボット制御装置、4…ロボット、4a…ロボット本体、4b…作業ツール、5…情報変換部、6…動作制御部、7…サーボドライバ、8…動作速度制御部、9…教示点データ記憶部、11…動作速度監視部、12…動操作実行部、13…プログラム記憶部、20…作業対象物、R…臨界距離、S…安全距離、A1…教示点、A2…教示点、A3…教示点、B1…基準点、B2…基準点、D1…教示点データ、E1〜E6…接近距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの作業プログラム内に記録されている教示点の位置・姿勢の修正を行うロボット制御装置において、
前記教示点の位置・姿勢を修正するための手動操作による前記ロボットの動作速度を制御する動作速度制御手段と、
前記手動操作に従って、前記ロボットの動作を制御する動作制御手段と、を備え、
前記動作速度制御手段は、ロボット本体のリンク上および作業ツール上に予め設定された特徴点と、前記特徴点の位置座標を表現するために設定された基準点との接近距離を算出するとともに、前記接近距離に基づいて、前記動作速度を決定し、前記動作制御手段は、決定された前記動作速度により、前記ロボットが、作業対象物に対して所望の位置、および姿勢となるように、前記ロボットを動作させることを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
前記動作速度制御手段は、前記接近距離と、予め設定された安全距離、および予め設定され、前記安全距離よりも小さい臨界距離とを比較し、前記比較の結果に応じて、前記動作速度を決定することを特徴とする請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記動作速度制御手段は、予め設定された複数の速度レベルに対応する速度の中から前記動作速度を決定することを特徴とする請求項2に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記動作速度制御手段は、前記接近距離が、前記安全距離以上である場合は、前記複数の速度レベルのうち、作業者が選択した速度レベルに対応する速度を前記ロボットの動作速度とし、前記接近距離が、前記臨界距離未満の場合は、前記複数の速度レベルのうち、最も低速な速度レベルに対応する速度を前記ロボットの動作速度とし、前記接近距離が、前記臨界距離以上であり、かつ前記安全距離未満である場合は、前記複数の速度レベルのうち、前記接近距離の長さに応じた速度レベルを選択するとともに、前記接近距離の長さに応じて選択した速度レベルと、作業者が選択した速度レベルを比較し、より低速な速度レベルに対応する速度を前記ロボットの動作速度とすることを特徴とする請求項3に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記基準点が、前記作業プログラム内に記録されている教示点であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のロボット制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−199936(P2007−199936A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16639(P2006−16639)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】