ロボット装置
【課題】ハンド部での多点接触による動作を可能とし、多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうロボット装置を提供する。
【解決手段】アーム部20とハンド部30とアーム制御部200とを備えたマニュピレータ10において、ハンド部30は、掌部40と、指部50と、掌部40の押付力を検出するタクタイルセンサ42と、指部50の押付力を検出するタクタイルセンサ53と、指部50の掌部40に対する位置・姿勢を検出する力覚センサ51とを有し、アーム制御部200は、掌部40の押付力と、指部50の押付力と、指部50の掌部40に対する位置・姿勢とに基づいて、アーム部20の制御目標を設定する。これによりハンド部30における各種情報をフィードバックしてアーム部20の制御が行なわれ、ハンド部30での多点接触による動作を可能とし、多点接触による押付力の力制御をより容易に行なえる。
【解決手段】アーム部20とハンド部30とアーム制御部200とを備えたマニュピレータ10において、ハンド部30は、掌部40と、指部50と、掌部40の押付力を検出するタクタイルセンサ42と、指部50の押付力を検出するタクタイルセンサ53と、指部50の掌部40に対する位置・姿勢を検出する力覚センサ51とを有し、アーム制御部200は、掌部40の押付力と、指部50の押付力と、指部50の掌部40に対する位置・姿勢とに基づいて、アーム部20の制御目標を設定する。これによりハンド部30における各種情報をフィードバックしてアーム部20の制御が行なわれ、ハンド部30での多点接触による動作を可能とし、多点接触による押付力の力制御をより容易に行なえる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット装置に関し、特には、アーム部とハンド部とを備えたロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アーム部とハンド部とを備えたロボット装置が提案され、工業分野のみならず、医療福祉、農業、安全システム等の様々な分野への応用が期待されている。特に、医療福祉の分野においては、少子高齢化に伴う労働人口の減少と要介護者の増加が見込まれるため、人と同じ環境で実作業支援を行なう人間共存型のロボット装置への期待が高まっている。
【0003】
例えば、非特許文献1では、ロボットアーム先端に取り付けられた多数の指を備えた多指ハンドの指先部に圧力センサを設置したロボット装置が提案されている。この非特許文献1のロボット装置は、ハンドの指先部が人間の前腕部に触れている状態で、アームを前腕に沿って動かすと同時に、指先の圧力センサにより検出した押付力が目標値と一致するように指関節を制御することで、人の前腕部に対する清拭作業を行なうロボット装置が提案されている。
【非特許文献1】佐々木大輔、則次俊郎、高岩昌弘、「生活支援ロボットのための圧力検出型ソフト接触センサの開発」、日本機械学会、日本機械学会論文集(C編)、2004年1月、70巻689号、p77−p82
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、人間の前腕部等の作業対象物に指先部だけで接触しており、接触面積が小さく作業効率が悪いという欠点がある。すなわち、上記技術では、ハンド部のベース部(掌部)も接触させたハンド部全面での倣い作業を行なっていない。ところが、ハンド部全面を作業対象物に接触させた場合には、多点接触での力学モデルが複雑になるという問題がある。掌部による押付力の調節はアームの力制御により行なわれるが、ハンド部とアーム部とが発生する力は影響し合うため、アームの力制御で発生させた押付力と、実際にハンド部の接触領域全面で発生させている押付力との関係は一定とならず、アーム部とハンド部とを協調させた力制御が必要となる。しかし、多点接触の複雑な力学モデルを解析した上で、アーム部とハンド部とが協調したハンド部全面での面倣い作業をさせる力制御を行なうことは困難である。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、その目的は、アーム部とハンド部とを備えたロボット装置において、面倣い作業等のハンド部での多点接触による動作を可能とし、ハンド部での多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能なロボット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1リンク部と、第1リンク部に対して相対運動する第2リンク部と、第1リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第1接触荷重検出部と、第2リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第2接触荷重検出部と、第1リンク部の制御目標を設定する第1リンク部制御目標設定部とを備え、第1リンク部制御目標設定部は、第1接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、第2接触荷重検出部の接触荷重の検出値との差分を低減させるように、第1リンク部の制御目標を設定するロボット装置である。
【0007】
この構成によれば、第1リンク部と、第1リンク部に対して相対運動する第2リンク部と、第1リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第1接触荷重検出部と、第2リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第2接触荷重検出部と、第1リンク部の制御目標を設定する第1リンク部制御目標設定部とを備えるロボット装置において、第1リンク部制御目標設定部は、第1接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、第2接触荷重検出部の接触荷重の検出値との差分を低減させるように、第1リンク部の制御目標を設定するため、第1リンク部と第2リンク部との接触荷重の差分が低減されることになり、第1リンク部と第2リンク部とで面倣い作業等の多点接触による動作を可能とし、多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【0008】
また、本発明は、第1リンク部と、第1リンク部に対して相対運動する第2リンク部と、第1リンク部に対する第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかを検出する運動検出部と、第1リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第1接触荷重検出部と、第2リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第2接触荷重検出部と、第1リンク部の制御目標を設定する第1リンク部制御目標設定部とを備え、第1リンク部制御目標設定部は、第1接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、第2接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、運動検出部が検出した第1リンク部に対する第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかとに基づいて、第1リンク部の制御目標を設定するロボット装置である。
【0009】
この構成によれば、第1リンク部と、第1リンク部に対して相対運動する第2リンク部と、第1リンク部に対する第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかを検出する運動検出部と、第1リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第1接触荷重検出部と、第2リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第2接触荷重検出部と、第1リンク部の制御目標を設定する第1リンク部制御目標設定部とを備えたロボット装置において、第1リンク部制御目標設定部は、第1接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、第2接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、運動検出部が検出した第1リンク部に対する第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかとに基づいて、第1リンク部の制御目標を設定するため、第1リンク部の制御目標の設定に、第1リンク部の接触荷重と、第2リンク部の接触荷重と、第1リンク部に対する第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかとがフィードバックされることになり、第1リンク部と第2リンク部とで面倣い作業等の多点接触による動作を可能とし、多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【0010】
なお、本願において、「位置及び姿勢の少なくともいずれか」とは、例えば、位置の3自由度と、姿勢の3自由度とがあり、合計で6自由度ある場合において、これらの6自由度の組合せのすべてを含むものとする。例えば、位置(X,Y,Z)と姿勢(φ,θ,Ψ)とに対し、位置Xと姿勢θのみの2自由度の場合をはじめ、姿勢θ、φのみの2自由度の場合や、位置X,Yと姿勢θ,Ψの4自由度の場合等を全て含むものとする。
【0011】
また、本発明は、アーム部と、アーム部先端のハンド部と、アーム部の制御目標を設定するアーム制御目標設定部と、を備え、ハンド部は、アーム部先端に対して取付けられるベース部と、ベース部に対して可動の少なくとも1つのリンク部と、作業対象物の作業対象面に対するベース部の接触領域における2箇所以上の点の押付力を検出するベース押付力検出部と、作業対象物の作業対象面に対するリンク部の接触領域における点の押付力を検出するリンク押付力検出部と、リンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかを検出するリンク可動状態検出部と、を有し、アーム制御目標設定部は、ベース押付力検出部が検出したベース部の接触領域における点の押付力と、リンク押付力検出部が検出したリンク部の接触領域における点の押付力と、リンク可動状態検出部が検出したリンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかとに基づいて、アーム部の制御目標を設定する、ロボット装置である。
【0012】
この構成によれば、アーム部と、アーム部先端のハンド部と、アーム部の制御目標を設定するアーム制御目標設定部とを備えたロボット装置において、ハンド部は、アーム部先端に対して取付けられるベース部と、ベース部に対して可動の少なくとも1つのリンク部と、作業対象物の作業対象面に対するベース部の接触領域における2箇所以上の点の押付力を検出するベース押付力検出部と、作業対象物の作業対象面に対するリンク部の接触領域における点の押付力を検出するリンク押付力検出部と、リンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかを検出するリンク可動状態検出部とを有するため、ベース部の接触領域における2箇所以上の点の押付力、リンク部の接触領域における点の押付力並びにリンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかといったハンド部における各種の情報を検出することができる。さらに、アーム制御目標設定部は、ベース押付力検出部が検出したベース部の接触領域における点の押付力と、リンク押付力検出部が検出したリンク部の接触領域における点の押付力と、リンク可動状態検出部が検出したリンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかとに基づいて、アーム部の制御目標を設定するため、ハンド部における各種の情報をフィードバックしてアーム部の制御が行なわれることになり、面倣い作業等のハンド部での多点接触による動作を可能とし、ハンド部での多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【0013】
この場合、アーム制御目標設定部は、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける接触圧の分布状態が目標の状態に近づくようにアーム部の制御目標を設定することが好適である。
【0014】
この構成によれば、アーム制御目標設定部は、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける接触圧の分布状態が目標の状態に近づくようにアーム部の制御目標を設定するため、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおいて、より作業対象物の形状に合ったアーム部の制御が可能となる。
【0015】
この場合、アーム制御目標設定部は、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける接触圧の圧力重心が、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける幾何学的重心に近づくようにアーム部の制御目標を設定することが好適である。
【0016】
この構成によれば、アーム制御目標設定部は、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける接触圧の圧力重心が、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかそれぞれにおける幾何学的重心に近づくようにアーム部の制御目標を設定するため、例えば、ベース部の接触領域における接触圧の圧力重心が、ベース部の接触領域における幾何学的重心と一致した押圧等が可能となり、ベース部の接触領域において、より作業対象物の形状に合ったアーム部の制御が可能となる。
【0017】
また、リンク部の制御目標を設定するリンク制御目標設定部をさらに備え、リンク制御目標設定部は、リンク押付力検出部が検出したリンク部の接触領域における点の押付力に基づいて、リンク部の接触領域における点の押付力が目標値と一致するように、リンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかを制御するようにリンク部の制御目標を設定することが好適である。
【0018】
この構成によれば、リンク部の制御目標を設定するリンク制御目標設定部は、リンク押付力検出部が検出したリンク部の接触領域における点の押付力に基づいて、リンク部の接触領域における点の押付力が目標値と一致するように、リンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかを制御するようにリンク部の制御目標を設定するため、様々な形状の作業対象物に対して柔軟に適応して、リンク部の接触領域の押付力を目標値にすることが可能となる。
【0019】
さらに、アーム制御目標設定部は、アーム部の制御目標としてアーム部の姿勢及び作業対象物に対して加える力の少なくともいずれかを制御目標として設定することが好適である。
【0020】
この構成によれば、アーム制御目標設定部は、アーム部の制御目標としてアーム部の姿勢及び作業対象物に対して加える力のいずれかを制御目標として設定するため、アーム部の姿勢及び作業対象物に対して加える力の少なくともいずれかの制御は、ハンド部における各種の情報をフィードバックして行なわれることになり、面倣い作業等のハンド部での多点接触による動作を可能とし、ハンド部での多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のロボット装置によれば、アーム部とハンド部とを備えたロボット装置において、面倣い作業等のハンド部での多点接触による動作を可能とし、ハンド部での多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態では、本発明に係るロボット装置を、ロボット装置のマニュピレータに適用する。本実施形態のマニュピレータは医療福祉等の分野において、清拭作業等に用いられるものである。
【0024】
図1は、実施形態に係るマニュピレータの構成を示す側面図である。図1に示すように、本実施形態のマニュピレータ10は、アーム部20とアーム部先端のハンド部30とを備えている。アーム部20は、人間の肩、肘及び手首に相当する部分の6自由度に受動柔軟関節21がそれぞれ設けられている。受動柔軟関節21それぞれは、各々の関節の角度を検出するセンサが内蔵されており、アーム部20の姿勢を検出するようになっている。受動柔軟関節21は、内部に機械ばねを搭載している。これにより、受動柔軟関節21は、環境との接触を伴う作業においてモデル化誤差や環境認識誤差が生じたとしても,機械的受動性でそれらを吸収しながら高速かつ安定した作業遂行を行うことが可能となる。また、受動柔軟関節21は、人への追従性に優れるため、速やかな力低減が図れる等、人との接触時の安全性を高めることが可能となる。
【0025】
アーム部20は、人との接触時の安全性を高めるため、表面に衝突安全被覆・接触センサ22を有する。衝突安全被覆・接触センサ22は、アーム部20表面の接触圧情報を利用した安全制御と、アーム部20表面との接触を活用しながら介助動作や重量物の運搬を行うことも可能とされている。人間の手首に相当する部分に設けられた力覚センサ23は、6軸力覚センサであり、アーム部20の作業対象物に対して加える力を検出するためのものである。
【0026】
ハンド部30は、アーム部20先端に対して取付けられる掌部(ベース部)40と、掌部40に対して可動の指部50を有している。掌部40は、人との接触時の安全性、安定性及び追従性を高める柔軟肉41を有している。掌部40の全面には、分布型圧力センサであるタクタイルセンサ(ベース押付力検出部)42を有している。タクタイルセンサは、人等の作業対象物の作業対象面に対する掌部40の接触領域における少なくとも2箇所以上の点の押付力を検出することが可能とされている。
【0027】
指部50は、合計4本の指を有し、人の親指に相当する指には、掌部40との付け根の関節を含め各々1自由度の2つの関節が設けられ、その他の各指には掌部40との付け根の関節を含め各々1自由度の3つの関節が設けられている。各関節には力覚センサ(リンク可動状態検出部)52が設けられ、各指の作業対象物に加える力を検出する他、指部50の掌部40に対する位置及び姿勢を検出するようになっている。また、指部50の全面には、分布型圧力センサであるタクタイルセンサ(リンク押付力検出部)53が設けられ、人等の作業対象物の作業対象面に対する指部50の各指の接触領域における点の押付力を検出することが可能とされている。
【0028】
図2は、実施形態に係るマニュピレータ10の制御系を示すブロック図である。図2に示すように、マニュピレータ制御系100は、制御対象であるマニュピレータ10のアーム部20とハンド部30とに対して、アーム制御部(アーム制御目標設定部)200とハンド制御部(ハンド制御目標設定部)300とを有する。アーム部20からのアーム部20の端部位置、端部姿勢及び端部発生力に関する信号は、アーム制御部200の端部位置検出部201、端部姿勢検出部202及び端部発生力検出部203に入力される。
【0029】
端部位置検出部201からの検出信号は、アーム制御部200の位置制御部204によって処理され、位置制御部204はアーム部20の位置の制御目標値を算出する。端部姿勢検出部202からの検出信号は、アーム制御部200の姿勢制御部205によって処理され、姿勢制御部205はこれに基づきアーム部20の姿勢の制御目標値を算出する。また、姿勢制御部205は、ハンド制御部300の圧力検出部302から、ハンド部30の掌部40の押圧力に関する検出信号を入力され、これに基づきアーム部20の姿勢の制御目標値を算出する。
【0030】
端部発生力検出部203からの検出信号は、アーム制御部200の力制御部206によって処理され、これに基づき力制御部206はアーム部20の作業対象物に加える力の制御目標値を算出する。また、力制御部206は、ハンド制御部300の関節角度検出部301から、指部50の掌部40に対する位置及び姿勢に関する検出信号を入力され、これに基づき力制御部206はアーム部20の作業対象物に加える力の制御目標値を算出する。さらに、力制御部206は、ハンド制御部300の圧力検出部302から、ハンド部30の指部50の押圧力に関する検出信号を入力され、これに基づき力制御部206はアーム部20の作業対象物に加える力の制御目標値を算出する。
【0031】
アーム制御部200の位置制御部204、姿勢制御部205及び力制御部206は、各々の制御目標値をアーム駆動部250に出力し、アーム部20を制御する。
【0032】
一方、ハンド部30からのハンド部30の指部50の各関節角度、並びに掌部40及び指部50の押付力に関する信号は、ハンド制御部300の関節角度検出部301及び圧力検出部302にそれぞれ入力される。関節角度検出部301からの指部50の各関節角度に関する検出信号と、圧力検出部302からの掌部40及び指部50の押付力に関する検出信号とは、ハンド制御部303によって処理され、これらに基づきハンド制御部303は、指部50の各関節角度並びに掌部40及び指部50の押付力の制御目標値を算出する。
【0033】
関節角度検出部301は、上述のようにアーム制御部200の力制御部206に対して指部50の掌部40に対する位置及び姿勢に関する検出信号を出力する。また、圧力検出部302は、上述のようにアーム制御部200の力制御部206に対してハンド部30の指部50の押圧力に関する検出信号を出力する。さらに、圧力検出部302は、上述のようにアーム制御部200の姿勢制御部205に対して掌部40の押圧力に関する検出信号を出力する。
【0034】
ハンド制御部303は、各々の制御目標値をハンド駆動部350に出力し、ハンド部30を制御する。
【0035】
図3は、実施形態に係る指とアームとの協調のための制御アーキテクチャーを示すブロック図である。図3に示すように、手首力センサ401からの検出信号は圧力制御405のために利用される。手掌接触状態402における圧力偏差は姿勢制御404のために利用され、手掌接触状態402の制御にフィードバックされる。手指接触状態403における接触力は指間接コンプライアンス制御406のために利用され、手指接触状態403の制御にフィードバックされる。さらに、手指接触状態403における接触力は圧力制御405のためにも利用され、圧力制御405により手掌接触状態402の制御が行われる。
【0036】
本実施形態において、ハンド部30全体を作業対象物に接触させるためには、大きく分けて二つの部位に分けることにより簡単に考えることができる。図4は、本実施形態に係るマニュピレータの全体の制御フローを示す図である。図4に示すように、本実施形態では、ハンド部30の根元に位置する掌部40とハンド部30の先端に位置する指部50の2つに分けることとする。
【0037】
まず、掌部40の接触について考える。本実施形態では、アーム部20の手先関節で掌部40の接触状態を制御する。具体的には、掌部40の接触圧の偏りを無くすための(1)アーム手先姿勢制御A、及び掌部(パーム)40の押付力を一定に保つための(2)アーム手先力修正制御Bが必要となる。さらに、指部50が作業対象物に倣うための(3)手指コンプライアンス制御Cが必要となる。以上の基本的な3つの制御に加えて、アーム部20においては、清拭方向への移動を行うための制御が必要となる。
【0038】
図4に示すように、アーム手先姿勢制御Aは、アーム520の手先位置(関節角度)521、ハンド530の接触圧情報531及び関節角度532の情報に基づいて行われ、アーム520の手先位置521にフィードバックされる。アーム手先力修正制御Bは、アーム520の手先位置521、手首力情報522、ハンド530の接触圧情報531及び関節角度532の情報に基づいて行われ、アーム520の手先位置521にフィードバックされる。アーム520の手先位置521は位置制御523に利用される。手指コンプライアンス制御Cは、ハンド530の接触圧情報531及び関節角度532の情報に基づいて行われ、ハンド530の関節角度532にフィードバックされる。以下、各部の制御について詳細を説明する。
【0039】
(1 アームコンプライアンス制御)
(1.1 アームハイブリッド制御)
本実施形態では、アーム部20の押付方向に力制御、掌部40の接触を確保するための手先姿勢制御、及び清拭方向への位置制御が必要となるため、これらをハイブリッド制御により行う。そこで、ハイブリッド制御について以下に簡単に説明する。
【0040】
(1.1.1 位置制御)
目標とする位置に対して並進力としての引力が働くようなポテンシャル場を張り、ロボットの制御対象部位に位置制御用力ベクトルRFPosを作用させる。ただし、添え字Rは力ベクトルが基準座標系で示されていることを表している。引力の強さは目標位置Pref=[xref yref zref]Tと現在位置P=[x y z]Tとの偏差ΔPの関数として以下の式を用いる。
FPos=FPosmax(1−e−αposΔP)
ΔP=|Pref−P|={(xref−x)2+(yref−y)2+(zref−z)2}1/2 (1)
【0041】
偏差と引力との強さの関係を図5に示す。この関数を用いることで、ある程度以上離れた地点での作用力を一定値FPosmaxにすることができ、αPosを調節することで目標値近傍の引力の強さを変化させることができる。
【0042】
このようにして求まった引力を下式(2)によって目標位置に向けてロボットに作用させる。
RFPos=[FPos,x FPos,y FPos,z]T
=[{(xref−x)/ΔP}FPos{{(yref−y)/ΔP}}FPos{{(zref−z)/ΔP}}FPos] (2)
【0043】
(1.1.2 姿勢制御)
目標とする姿勢に対してモーメント力としての引力が働くようなポテンシャル場を張り、ロボットの制御対象部位に姿勢制御用ベクトルRMOriを作用させる。姿勢制御用ベクトルの生成手法の詳細な説明の前に、姿勢制御において重要となる姿勢の表現法と回転行列について説明する。
【0044】
基準座標系をΣAとし、その原点をOA、直行する3軸をXA、YA、ZAとする。また、目標とする姿勢の座標系をΣBとし、その原点をOB、直行する3軸をXB、YB、ZBとする。また、XB、YB、ZBの方向を向く単位ベクトルをΣAで表したものをAxB、AyB、AzBと書くことにする。このときΣAから見た目標姿勢は{AxB、AyB、AzB}で表現することができる。なお、左上の添字Aはそのベクトルが座標系ΣAで表されていることを示す。以後も特に断らない限りベクトルにお左上付き添字はこの約束に従うものとする。
【0045】
ここで、姿勢は3つのベクトル{AxB、AyB、AzB}で表現することができるが、これらを、
ARB=[AxB、AyB、AzB]
と行列の形にまとめて表したものを回転行列と呼ぶ。
【0046】
ARBは9つの変数を持つがこれらの中で独立な成分は3つであり、基準座標系ΣAから、ある固定された軸周りの回転を3回順次行なった結果としてとらえ、これら3つの回転各でΣBの姿勢を表すものとして、オイラー角やロール角・ピッチ角・ヨー角による表現が知られている。オイラー角とロール角・ピッチ角・ヨー角との違いは、3つの回転の回転軸の取り方が異なるのみである。
【0047】
以下、本実施形態で用いているオイラー角について説明する。
i)まず、ΣAをZA軸まわりに角度φだけ回転させた座標系ΣA’とする。
ii)次にΣA’をYA’軸まわりに角度θだけ回転させたものを座標系ΣA”とする。
iii)最後にΣA”をZA”軸まわりに角度Ψだけ回転させたものをΣBとする。
【0048】
このとき、ΣAからみたΣBの姿勢は3つの角度の組(φ,θ,Ψ)で表現でき、この組をオイラー角と呼ぶ。これら3つの回転の合成からなる回転行列ARBは、下式(3)に示すようになる。
【数1】
【0049】
ロボットの姿勢を制御する際に、このオイラー角やロール角・ピッチ角・ヨー角をそのまま用いるには、3つの回転軸を順番に制御しなければ目標とする姿勢を実現することができない。よって、3つの軸周りのモーメントを同時に作用させて制御するためには、これを直接用いることができないことが判る。
【0050】
そこで、目標姿勢へ到達するためのモーメントをある一つの座標系で一度に算出する方法が必要になる。姿勢は、オイラー角、ロール角・ピッチ角・ヨー角などのように表現法がいくつか考えられるが、回転行列に関しては一意である。そして、この回転行列は単純に座標系と座標系との関係を示しているものなので、この回転行列をもとに考えることとする。
【0051】
基本的にはロボットの任意の部位における姿勢を制御することができるが、ここでは、説明の便宜のため、手先姿勢ΣHが基準座標ΣRにおいてオイラー角(φ,θ,Ψ)で表現されている場合について考える。また、目標姿勢は回転行列で表現できれば、オイラー角、及びロール角・ピッチ角・ヨー角のどちらで表現されていてもかまわない。
【0052】
姿勢制御用力ベクトルの生成手法は以下の手順で行なう。
1)オイラー角によって基準座標系で表現された目標姿勢Φ=(φ,θ,Ψ)の回転行列を求める。
【数2】
【0053】
2)目標姿勢の回転変換行列を手先座標系で表現しなおす。
【数3】
【0054】
3)目標姿勢座標の各軸に対応する単位ベクトル{HXref HYref HZref}の手先座標系における偏差{ΔHΦx ΔHΦy ΔHΦz}を算出する。偏差{ΔHΦx ΔHΦy ΔHΦz}を算出した式を下式(6)に示す。また、手先座標系における目標姿勢座標の各軸を表したものを図6(a)〜(c)に示す。
ΔHΦx=atan2(R32,R22)
ΔHΦy=atan2(R13,R33) (6)
ΔHΦz=atan2(R21,R11)
【0055】
4)各軸周りの偏差に対応した目標姿勢用力ベクトルを手先座標系で算出する。この際、力ベクトルの大きさは、位置制御用力ベクトルの大きさを決めるのと同じ指数関数で求める。偏差の大きさは各軸周りの偏差のノルムを用い、各成分を決める際にもこれを用いる。
MOri=MOrimax(1−e−αOriΔΦ)
ΔΦ=(ΔHΦx2+ΔHΦy2+ΔHΦz2)1/2
RMOri=[MOri,xMOri,yMOri,z]T (7)
[(ΔHΦx/ΔΦ)MOri(ΔHΦy/ΔΦ)MOri(ΔHΦz/ΔΦ)Mori]T
【0056】
5)手先座標系で示された目標姿勢用力ベクトルを基準座標系で表現しなおすと下式(8)のようになる。
RMOri=RRHHMOri (8)
【0057】
(1.1.3 コンプライアンス制御)
ロボットの行なう作業の中には、ドアの開閉等のように手先位置の厳密な制御のみではなく、環境との接触力を制御する必要があるものが多い。そこで、本実施形態では、位置制御・姿勢制御をベースとして構築が可能なコンプライアンス制御を用いて力制御を行なう。なお、本実施形態ではコンプライアンス制御により力制御を行なうが、制御手法はこれに限定されるものではない。
【0058】
力はロボットの手首部に搭載された力覚センサ23を用いて検出することを想定すると、手先力を制御するためには、ハンド部30の自重をキャンセルし、手首にかかる負荷から手先力を推定することが必要となる。
【0059】
(1.1.4 ハンドの自重キャンセル)
6軸力覚センサである力覚センサ23が手首に搭載されていた場合、センサで検出される力には常にハンド部30の自重による力も検出されており、外力を算出するには自重を差し引かなければならない。よって、力覚センサ23で検出されるハンド部30の自重を算出することとする。
【0060】
手首座標における力覚センサ23の位置をWPS=[xw−s,yw−s,zw−s]、ハンド部30の重心位置をWPHg=[xw−Hg,yw−Hg,Zw−Hg]とすると、力覚センサ23とハンド部30の重心との同次変換行列は下式(9)(10)のように求まる。
【数4】
【0061】
基準座標系で表したハンド分30の重心に加わる重力は、下式(8)のようになる。
RFHg・Hg=[0 0 −mHg]T,RMHg・Hg=[0 0 0]T (11)
【0062】
これをハンド部30の重心座標系で表現すると、下式(12)のようにできる。
HgFHg,Hg=HgRR・RFHg,Hg,HgMHg,Hg=HgRR・RMHg,Hg
HgRR=(RRHg)T (12)
【0063】
そこで、6軸力覚センサである力覚センサ23で計測されるハンド部30の自重SFs,Hg,SMs,Hgは、下式(13)のように求まる。
【数5】
【0064】
ただし、上式(13)において、記号[・×]は、任意の3次元ベクトルa=[axayaz]Tに対して、以下に示す関係を意味する。
【数6】
【0065】
(1.1.5 手首の力センサを用いた手先力の算出)
手首の力センサで検出した手首座標系の力をもとに、手先の負荷を基準座標系で算出する。まず、手首にかかるハンド部30の自重を算出したのと同じ要領で、手先にかかる負荷を手先座標系で下式(14)のように算出する。
【数7】
【0066】
そこで、算出した手先座標系における手先力は、下式(15)のように基準座標系で表現しなおすことができる。
RFH,ext=RRH・HFH,ext (15)
RMH,ext=RRH・HMH,ext
【0067】
(1.1.6 仮想コンプライアンスに基づく並進力の制御)
仮想コンプライアンス制御を用いて並進力を制御するということは、設定した手先コンプライアンスを実現するように手先の位置を制御するということである。コンプライアンスは力による仮想バネ変位の分だけ目標手先位置をずらすことで実現されるが、ここではその仮想変位を算出する。なお、本実施形態では仮想コンプライアンス制御を用いて並進力を制御するが、制御手法はこれに限定されない。
【0068】
目標位置、仮想バネ変位、修正された目標位置をそれぞれPref,Pcmp,Pref’とすると下式(16)が成り立つ。
Pref’=Pref+Pcmp (16)
【0069】
そこで、目標手先力RFH,ref、手先力RFH、手先コンプライアンス行列CH,Pが与えられた場合、仮想バネ変位は下式(17)より求まる。
【数8】
【0070】
(1.1.7 仮想コンプライアンス制御によるモーメント力の制御)
仮想コンプライアンス制御によって並進力を制御するということは、設定した手先コンプライアンスを実現するように手先の姿勢を制御するということである。並進力の制御の場合には、力による仮想バネ変位の分だけ目標手先位置をずらせば良かったが、モーメント力制御の場合は、常に現在の手先姿勢を基準にしなければならないため、目標姿勢との偏差を修正することで実現される。なお、本実施形態では、仮想コンプライアンス制御によって並進力を制御するが、制御手法はこれに限定されるものではない。
【0071】
目標手先モーメントRMH,ref、手先力RMH、仮想手先コンプライアンスCH,Φが基準座標系で与えられた場合、基準座標系における仮想バネ変位RΦcmpは下式(18)により求まる。
【数9】
【0072】
これを手先座標系に変換して目標姿勢との偏差に加えて姿勢制御を行なうことで、モーメント力制御が可能となる。目標姿勢との偏差、仮想バネ変位、修正された偏差をそれぞれΔHΦ、HΦcmp、ΔHΦ’とすると、下式(19)が成り立つ。
ΔHΦ’=ΔHΦ+HΦcmp
HΦcmp=(RRH)TRΦcmp (19)
【0073】
(1.2 アーム手先姿勢修正)
本実施形態では、図7(a)(c)のように掌部40のみや指部50のみで作業対象物Oに接触するのではなく、図7(b)のように掌部40及び指部50全面を均等に作業対象物Oに接触させるためにアーム手先姿勢修正を行なう。まず、姿勢修正に用いる情報について考察を行なう。
【0074】
図8(a)に示す従来の倣い動作のように接触モデルを1点接触として扱い、手首の力覚センサを用いて制御する場合は、接触モデルは単純であり、手首力覚情報から接触状態は一意に求める事ができる。これに対して、多指ハンドを用いた倣い動作のように多点接触が起きる場合を考えると、図8(b)に示すように、作業対象物Oの形状によっては、手指姿態が動的に変化したり、指列が大きく屈曲して作業対象物Oに回り込むような状況においてハンド部30の中に対向する内力が発生する。
【0075】
これによって力学モデルは格段に複雑化し、手首力情報だけでは接触状態は一意に求めることができない。例えば、図8(b)のような状況において、掌部40の一部が作業対象物Oに接触していないにも関わらず、対向する内力が発生していることによって、手首力覚センサではモーメントが釣り合うということが起きる。
【0076】
そこで、本実施形態では、従来のような手首力覚情報ではなく、掌部圧力分布情報を用いてアーム手先姿勢修正を行なう。
【0077】
本実施形態における姿勢修正を行なう上での基本的な考え方は、掌部40の接触圧重心PCGと掌部40の幾何学重心GCGとが一致するように姿勢修正モーメントを求める。姿勢修正モーメントを求める手順としては、掌部40に配置される圧力分布センサであるタクタイルセンサ42を、図9(a)のように幾何学重心GCGを中心に4分割し、各部の圧力をそれぞれP1,P2,P3,P4とおく。続いて下式(20)のように掌部40の上下・左右にかかる圧力の偏差から修正モーメントMx,Myを算出した。なお、下式(20)においてKx,Kyはそれぞれ任意の定数である。
Mx=Kx{(P1+P2)−(P3+P4)}
My=Ky{(P1+P3)−(P2+P4)} (20)
【0078】
本実施形態では、このようにして求めた修正モーメントに基づき、図9(b)に示すように、アーム姿勢コンプライアンス制御にて釣り合い状態へ遷移、掌部40全面を接触させることとした。なお、本実施形態においては、掌部40の接触圧重心PCGと掌部40の幾何学重心GCGとが一致するように姿勢修正モーメントを求める他、掌部40の一部分を作業対象物Oに特に強く押し付ける等の制御目標の設定も可能である。あるいは、上記制御手法は、指部50の圧力分布情報を用いてアーム手先姿勢修正を行なうようにしても良い。さらには、掌部40及び指部50の接触領域を合わせた全接触領域を考え、当該全接触領域の圧力偏在を低減させるようにしても良く、この場合、掌部40及び指部50の接触領域を合わせた全接触領域の接触圧重心と幾何学的重心とが近づき、一致するように制御しても良い。
【0079】
(1.3 アーム手先力修正)
指姿勢に寄らずハンド部30での押付力を一定に保つために、アーム手先力修正を行なった。従来の倣い動作では、エンドエフェクタの形状は変化しないので手先力は一定であった。しかし、多指ハンドを用いた倣い動作では、対象形状により指姿勢が変化するため、それに伴い手先力も変化しなければならない。図10(a)(b)に示すように、手先力Fz、掌部荷重Fp、各指先力をFti(i=1〜4)、各指先姿勢θi(i=1〜4)とおく。αは掌部40と指部50との面積の比から求まる定数である。
【0080】
下式(21)のようにFzは求まり、図11に示すように、指先角度が大きくなるに伴い図10(b)に示す指先力のFz方向成分が小さくなるのでFzも小さくなり、指先角度が90degの時点でFzとFpが釣り合うことになる。これにより、指先姿勢に寄らずハンド部30全体での押付力を一定とすることができる。なお、本実施形態では、ハンド部30全体での押付力は一定に制御するのみならず、所定の目標値と一致させるように制御することも可能である。
Fz=Fp+ΣFti×cosθi
=αΣFti+ΣFti×cosθi (21)
【0081】
(2 手指コンプライアンス制御)
(2.1 手指コンプライアンス制御の必要性)
安全性・作業性の高い清拭作業を行なうにはハンド部30全面が偏りなく作業対象物Oに接触していることが重要である。そして、掌部40の接触については、上述のアーム手先姿勢・力修正制御によって行なう。続いて指部50の接触についてはハンド指部関節のコンプライアンス制御にて行なう。なお、本実施形態では手指コンプライアンス制御を採用するが、制御手法はこれに限定されない。
【0082】
本実施形態の多指ロボットハンドの掌部40は平面であり、その機構的制約から、小さな曲率を有する対象に全面で倣うことは難しい。しかし、図12に示すように、指部50は比較的に小さな構造部品から構成されており、また、冗長性を有しているために、図13(a)(b)に示すように小さな凹凸にたいしてもきめ細かに倣うことが可能と考えられる。さらに、指部50の関節に受動柔軟関節を搭載し、掌部40全面に柔軟被覆を搭載するなど構造的柔軟性を有しているため、特別な制御無しでも高応答に倣う事が可能である。このように本実施形態のハンド部30は倣い動作をさせるのに適したハードウェアと言える。
【0083】
しかし、図13(a)(b)に示すように、柔軟関節の可動伸展角には限界があり、柔軟被覆も一定以上の圧力がかかると底付きを起こすため、大きな変位には対応することができないという問題がある。さらに、変位や急激な荷重変化を受け流すことはできるが、あうまで力を制御しているわけではないので、作業対象物Oにかかる荷重を一定に保つことは困難である。
【0084】
以上のことから、本実施形態では、高応答な構造的柔軟性に加え、大きな変位にも適応し荷重を一定にする手指コンプライアンス制御を実装する。
【0085】
(2.2 手指コンプライアンス制御の制御構造)
制御対象とする関節は図12に示す多指の関節MP・PIP、母指の関節MP・IPの計8関節とし、各関節は独立して制御する。制御方法はその節と末節にかかる荷重がある一定値よりも大きい場合には、その部位に最も近い根元の関節を伸展駆動させ、その節と末節にかかる荷重がある一定値よりも小さい場合には、その部位に最も近い根元の関節を屈曲駆動させることとした。駆動の際の指令角は曲率関数を用いて算出した。曲率関数とは、予め図13(b)に示すように、作業対象物の50〜∞mmの曲率に沿うように関節角を設定し、曲率と関節角との関係性を関数化したものである。図14に示すように、根元の関節MPについて多項式(I1)が成り立ち、関節PIPについて多項式(I3)が成り立つ。
【0086】
本実施形態によれば、アーム部20と、アーム部20先端のハンド部30と、アーム部20の制御目標を設定するアーム制御部200とを備えたマニュピレータ10において、ハンド部30は、アーム部20先端に対して取付けられる掌部40と、掌部40に対して可動の少なくとも1つの指部50と、作業対象物Oの作業対象面に対する掌部40の接触領域における2箇所以上の点の押付力を検出するタクタイルセンサ42と、作業対象物Oの作業対象面に対する指部50の接触領域における点の押付力を検出するタクタイルセンサ53と、指部50の掌部40に対する位置及び姿勢を検出する力覚センサ52とを有するため、掌部40の接触領域における2箇所以上の点の押付力、指部50の接触領域における点の押付力並びに指部50の掌部40に対する位置及び姿勢といったハンド部30における各種の情報を検出することができる。さらに、アーム制御部200は、タクタイルセンサ42が検出した掌部40の接触領域における点の押付力と、タクタイルセンサ53が検出した指部50の接触領域における点の押付力と、力覚センサ52が検出した指部50の掌部40に対する位置及び姿勢とに基づいて、アーム部20の制御目標を設定するため、ハンド部30における各種の情報をフィードバックしてアーム部20の制御が行なわれることになり、面倣い作業等のハンド部30での多点接触による動作を可能とし、ハンド部30での多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【0087】
すなわち、図33に示す従来のマニュピレータ制御系900では、アーム制御部200によるアーム制御とハンド制御部300によるハンド制御とが協調しておらず、人間の前腕部等の作業対象物に指先部だけで接触しており、接触面積が小さく作業効率が悪いという欠点がある。しかし、本実施形態では、アーム制御部200によるアーム制御とハンド制御部300によるハンド制御とを協調させて力制御を行うことにより、多点での倣い作業と力制御とを容易に行なうことが可能となる。
【0088】
また、本実施形態によれば、アーム制御部200は、掌部40の接触領域における接触圧の分布状態が目標の状態に近づくように、例えば、掌部40の接触領域における接触圧力重心PCGが、掌部40の接触領域における幾何学的重心GCGと一致するようにアーム部20の制御目標を設定するため、掌部40の接触領域における接触圧力重心GCGが、ベース部の接触領域における幾何学的重心GCGと一致した押圧が可能となり、掌部40の接触領域において、より偏りのない作業対象物の形状に合ったアーム部20の制御が可能となる。
【0089】
また、本実施形態によれば、指部50の制御目標を設定するハンド制御部300は、タクタイルセンサ53が検出した指部50の接触領域における点の押付力に基づいて、指部50の接触領域における点の押付力が所定の目標値と一致するように、例えば、指部50の接触領域における点の押付力が一定となるように、指部50の掌部40に対する位置及び姿勢をコンプライアンス制御により制御するように指部50の制御目標を設定するため、様々な形状の作業対象物Oに対して柔軟に適応して、指部50の接触領域の押付力を一定にすることが可能となる。
【0090】
さらに、本実施形態によれば、アーム制御部200は、アーム部20の制御目標としてアーム部20の姿勢及び作業対象物に対して加える力を制御目標として設定するため、アーム部20の姿勢及び作業対象物に対して加える力の制御は、ハンド部30における各種の情報をフィードバックして行なわれることになり、面倣い作業等のハンド部30での多点接触による動作を可能とし、ハンド部での多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【0091】
(実験例)
以下、本実施形態の実験例について説明する。上述の実施形態のマニュピレータ10を用いて清拭作業を行い評価した。試験用の作業対象物としては、図15(a)〜(c)に示すような様々な曲率の曲面、凹凸を有する作業対象物O,O’,O”を用いた。対象部位はφ100及びφ200の円柱部に対して、横方向へのスライド、及び指先方向への回りこみを行なった。また、凹凸に対しても回り込む清拭作業を行なった。
【0092】
マニュピレータ10の制御方法は、本発明の手法を用いた制御と、従来手法を模擬し、ハンド部30を平面として扱い、手先の押付方向及び位置の制御のみを用いた制御の二通りで比較を行った。試験装置としては、図16に示すように、重ねた清拭タオルTの間に分布型圧力センサSを配し、清拭作業時の作業対象物O,O’,O”にかかる圧力分布状況を計測する事により行なった。評価項目としては、接触面積と圧力偏在とし、これらを計測し安全性・作業性の観点から評価を行なった。
【0093】
なお、圧力分布センサの諸元は、
メーカー:NITTA
型番(商品名):I−Scan150−0.5
空間分解能[mm]:3.75
セル数:1936
感圧部分サイズ[mm]:165×165
厚さ[mm]:0.1
感圧範囲[kgf/cm2]:0.05〜0.5
圧力分解能[bit]:8
サンプリング周期[ms]:10
【0094】
図15(a)に示す二つの異なる曲率(φ100及びφ200)を有し当該異なる曲率の部位に段差を有する作業対象物O、図15(b)に示す当該異なる曲率の部位がなだらかな傾斜となっている作業対象物O’、及び図15(c)に示すφ200の曲面に半径60mm、高さ30mmの凸部Pを有する作業対象物O”に対して、ハンド部30側面方向、及び指先方向へ清拭を行なった。
【0095】
(実験例1)
φ100及びφ200の二つの曲率をなだらかにせず段差状にした作業対象物Oに対して、本発明の手法で制御されたマニュピレータ10により、ハンド部30側面方向への清拭を行なった。結果を図17(a)〜(f)、図18及び図19に示す。図17〜19より、動作は段差に対して各指が独立して倣い、荷重は全ての部位においてほぼ一定に収まり、接触面積は全ての部位においてほぼ一定に収まり、荷重中心はほぼ手指の中心に納まっていることが判る。
【0096】
(比較例1)
φ100及びφ200の二つの曲率をなだらかにせず段差状にした作業対象物Oに対して、アーム手先姿勢制御をOFFにしたマニュピレータ10により、ハンド部30側面方向への清拭を行なった。結果を図20(a)〜(d)、図21及び図22に示す。図20〜22より、動作は手先姿勢修正制御が入っていないために掌部40の接触が維持できず、荷重は手指全体ではほぼ一定だが、掌部40及び指部50それぞれでの変化が激しく、接触面積は全ての部位において大きな変化があり、安定した接触維持ができず、荷重中心はハンド幾何学中心GCGから大きく逸脱していることが判る。
【0097】
(実験例2)
φ100及びφ200の二つの曲率をなだらかな傾斜にした作業対象物O’に対して、本発明の手法で制御されたマニュピレータ10により、ハンド部30側面方向への清拭を行なった。結果を図23(a)〜(d)、図24及び図25に示す。図23〜25より、動作は比較的小さな曲率から平面への移行においても安定して倣い、荷重は全ての部位においてほぼ一定に収まり、接触面積は全ての部位においてほぼ一定に収まり、荷重中心はほぼ手指の中心に納まっていることが判る。
【0098】
(実験例3)
φ100及びφ200の二つの曲率をなだらかな傾斜にした作業対象物O’に対して、φ200の曲率の箇所で本発明の手法で制御されたマニュピレータ10により、指先方向への清拭を行なった。また、指先方向から手首方向へ戻す清拭も行なった。結果を図26(a)〜(d)、図27(a)〜(d)、図28及び図29に示す。図26〜29より、動作は手先の角度が0〜80deg程度変化し、手先角度が80deg付近になるとやや振動したが、おおむね安定して倣っていることが判る。また、掌部40の荷重が手先角度が増えるにつれて徐々に大きくなる傾向があり、指部50の荷重が他の動作に比べて低いことが判る。接触面積は掌部40の面積は手先角度が増えるにつれ徐々に大きくなる傾向があり、指部50の面積は他の動作に比べて小さいことが判る。荷重中心は掌部40に偏りがちではあるが、変化量は少ないことが判る。
【0099】
(実験例4)
図15(c)に示すφ200の曲面に半径60mm、高さ30mmの凸部Pを有する作業対象物O”に対して、本発明の手法で制御されたマニュピレータ10により、指先方向へ回り込む清拭を行なった。結果を図30(a)〜(e)、図31、及び図32に示す。図30〜32より、動作は人差し指、中指が凸部に接触したが、各指が独立に動作し作業対象物O”に倣っていることが判る。荷重は、掌部40の荷重が、手先角度が増えるにつれ徐々に大きくなる傾向があることが判り、反対に指部50の荷重は手先角度が増えるにつれ小さくなっていくことが判る。接触面積は凸部Pがあると指が振動するため、接触面積も波立っていることが判る。荷重中心は凸部Pに入ると一旦指部50側に荷重中心が移動するが、しばらくすると中心に戻ってくることが判る。
【0100】
以上の実験例の結果をまとめると、安全性については、曲面に対し常にハンド部30全体がなじむことにより、動作開始時から終了時にわたり常に接色面積が大きくなった。また、凹凸に対し指部50がなじむ事により、局所的圧力偏在を防ぎ、圧力分散することが確認された。また、作業性については、本実施形態の制御手法により、接触面積は大きくなり、圧力偏在も少ないため、清拭面積の増大及び拭き残し箇所の減少といった効果が確認された。特に、曲面においては接触面積の積分値は本実施形態の制御手法による制御有りと無しとでは2倍程度の差が確認され、本実施形態の制御手法の効果が大きく現われる結果となった。
【0101】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施形態に係るマニュピレータの構成を示す側面図である。
【図2】実施形態に係るマニュピレータの制御系を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る指とアームとの協調のための制御アーキテクチャーを示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係るマニュピレータの全体の制御フローを示す図である。
【図5】位置制御のためのポテンシャル関数を示すグラフ図である。
【図6】(a)〜(c)は、手先座標における目標姿勢座標の各軸を示した図である。
【図7】(a)〜(c)は、手先姿勢と各点の押付力との関係を示す図である。
【図8】(a)はマニュピレータにおける作業対象物への一点接触を示す図であり、(b)はマニュピレータにおける作業対象物への多点接触を示す図である。
【図9】(a)はハンド部の接触領域の圧力分布を示す図であり、(b)はハンド部の圧力分布情報を活用したアーム手先姿勢修正を示す図である。
【図10】(a)はハンド指姿勢の変化を示す図であり、(b)はハンド指姿勢の変化に伴うアーム手先力修正を示す図である。
【図11】手先力と指先姿勢との関係を示すグラフ図である。
【図12】手指コンプライアンス制御における手指の動作を示す図である。
【図13】(a)は手指の各関節の動きと作用する力とを示す図であり、(b)は作業対象物の大きさ応じた手指の動作を示す図である。
【図14】作業対象物の大きさに対する関節指令角度の曲率関数を示すグラフ図である。
【図15】(a)は実験例で用いた段差を有する作業対象物を示す斜視図であり、(b)は実験例で用いた傾斜を有する作業対象物を示す斜視図であり、(c)は実験例で用いた突出部を有する作業対象物を示す斜視図である。
【図16】実験例で用いた清拭タオルを示す図である。
【図17】(a)〜(f)は、実験例1におけるマニュピレータの動作と接触領域の圧力分布とを示す図である。
【図18】実験例1における部位ごとの時間に対する荷重を示すグラフ図である。
【図19】実験例1における部位ごとの時間に対する接触面積を示すグラフ図である。
【図20】(a)〜(d)は、比較例1におけるマニュピレータの動作と接触領域の圧力分布とを示す図である。
【図21】比較例1における部位ごとの時間に対する荷重を示すグラフ図である。
【図22】比較例1における部位ごとの時間に対する接触面積を示すグラフ図である。
【図23】(a)〜(d)は、実験例2におけるマニュピレータの動作と接触領域の圧力分布とを示す図である。
【図24】実験例2における部位ごとの時間に対する荷重を示すグラフ図である。
【図25】実験例2における部位ごとの時間に対する接触面積を示すグラフ図である。
【図26】(a)〜(d)は、実験例3における指先方向へ倣うマニュピレータの動作と接触領域の圧力分布とを示す図である。
【図27】(a)〜(d)は、実験例3における指先方向とは逆方向に倣うマニュピレータの動作と接触領域の圧力分布とを示す図である。
【図28】実験例3における部位ごとの時間に対する荷重を示すグラフ図である。
【図29】実験例3における部位ごとの時間に対する接触面積を示すグラフ図である。
【図30】(a)〜(e)は、実験例4におけるマニュピレータの動作と接触領域の圧力分布とを示す図である。
【図31】実験例4における部位ごとの時間に対する荷重を示すグラフ図である。
【図32】実験例4における部位ごとの時間に対する接触面積を示すグラフ図である。
【図33】従来のマニュピレータの制御系を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0103】
10…マニュピレータ、20…アーム部、21…受動柔軟関節、22…衝突安全被覆・接触センサ、23…力覚センサ、30…ハンド部、40…掌部、41…柔軟肉、42…タクタイルセンサ、50…指部、51…受動柔軟関節、52…力覚センサ、100…マニュピレータ制御系、200…アーム制御部、201…端部位置検出部、202…端部姿勢検出部、203…端部発生力検出部、204…位置制御部、205…姿勢制御部、206…力制御部、250…アーム駆動部、300…ハンド制御部、301…関節角度検出部、302…圧力検出部、303…ハンド制御部、350…ハンド駆動部、401…手首力センサ、402…掌接触状態、403…手指接触状態、404…姿勢制御、405…圧力制御、406…指関節コンプライアンス制御、520…アーム、521…手先位置、522…手首力情報、523…位置制御、530…ハンド、531…接触圧情報、532…関節角度、900…マニュピレータ制御系、A…姿勢制御、B…力制御、C…手指コンプライアンス制御。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット装置に関し、特には、アーム部とハンド部とを備えたロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アーム部とハンド部とを備えたロボット装置が提案され、工業分野のみならず、医療福祉、農業、安全システム等の様々な分野への応用が期待されている。特に、医療福祉の分野においては、少子高齢化に伴う労働人口の減少と要介護者の増加が見込まれるため、人と同じ環境で実作業支援を行なう人間共存型のロボット装置への期待が高まっている。
【0003】
例えば、非特許文献1では、ロボットアーム先端に取り付けられた多数の指を備えた多指ハンドの指先部に圧力センサを設置したロボット装置が提案されている。この非特許文献1のロボット装置は、ハンドの指先部が人間の前腕部に触れている状態で、アームを前腕に沿って動かすと同時に、指先の圧力センサにより検出した押付力が目標値と一致するように指関節を制御することで、人の前腕部に対する清拭作業を行なうロボット装置が提案されている。
【非特許文献1】佐々木大輔、則次俊郎、高岩昌弘、「生活支援ロボットのための圧力検出型ソフト接触センサの開発」、日本機械学会、日本機械学会論文集(C編)、2004年1月、70巻689号、p77−p82
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、人間の前腕部等の作業対象物に指先部だけで接触しており、接触面積が小さく作業効率が悪いという欠点がある。すなわち、上記技術では、ハンド部のベース部(掌部)も接触させたハンド部全面での倣い作業を行なっていない。ところが、ハンド部全面を作業対象物に接触させた場合には、多点接触での力学モデルが複雑になるという問題がある。掌部による押付力の調節はアームの力制御により行なわれるが、ハンド部とアーム部とが発生する力は影響し合うため、アームの力制御で発生させた押付力と、実際にハンド部の接触領域全面で発生させている押付力との関係は一定とならず、アーム部とハンド部とを協調させた力制御が必要となる。しかし、多点接触の複雑な力学モデルを解析した上で、アーム部とハンド部とが協調したハンド部全面での面倣い作業をさせる力制御を行なうことは困難である。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、その目的は、アーム部とハンド部とを備えたロボット装置において、面倣い作業等のハンド部での多点接触による動作を可能とし、ハンド部での多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能なロボット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1リンク部と、第1リンク部に対して相対運動する第2リンク部と、第1リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第1接触荷重検出部と、第2リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第2接触荷重検出部と、第1リンク部の制御目標を設定する第1リンク部制御目標設定部とを備え、第1リンク部制御目標設定部は、第1接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、第2接触荷重検出部の接触荷重の検出値との差分を低減させるように、第1リンク部の制御目標を設定するロボット装置である。
【0007】
この構成によれば、第1リンク部と、第1リンク部に対して相対運動する第2リンク部と、第1リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第1接触荷重検出部と、第2リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第2接触荷重検出部と、第1リンク部の制御目標を設定する第1リンク部制御目標設定部とを備えるロボット装置において、第1リンク部制御目標設定部は、第1接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、第2接触荷重検出部の接触荷重の検出値との差分を低減させるように、第1リンク部の制御目標を設定するため、第1リンク部と第2リンク部との接触荷重の差分が低減されることになり、第1リンク部と第2リンク部とで面倣い作業等の多点接触による動作を可能とし、多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【0008】
また、本発明は、第1リンク部と、第1リンク部に対して相対運動する第2リンク部と、第1リンク部に対する第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかを検出する運動検出部と、第1リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第1接触荷重検出部と、第2リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第2接触荷重検出部と、第1リンク部の制御目標を設定する第1リンク部制御目標設定部とを備え、第1リンク部制御目標設定部は、第1接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、第2接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、運動検出部が検出した第1リンク部に対する第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかとに基づいて、第1リンク部の制御目標を設定するロボット装置である。
【0009】
この構成によれば、第1リンク部と、第1リンク部に対して相対運動する第2リンク部と、第1リンク部に対する第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかを検出する運動検出部と、第1リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第1接触荷重検出部と、第2リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第2接触荷重検出部と、第1リンク部の制御目標を設定する第1リンク部制御目標設定部とを備えたロボット装置において、第1リンク部制御目標設定部は、第1接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、第2接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、運動検出部が検出した第1リンク部に対する第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかとに基づいて、第1リンク部の制御目標を設定するため、第1リンク部の制御目標の設定に、第1リンク部の接触荷重と、第2リンク部の接触荷重と、第1リンク部に対する第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかとがフィードバックされることになり、第1リンク部と第2リンク部とで面倣い作業等の多点接触による動作を可能とし、多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【0010】
なお、本願において、「位置及び姿勢の少なくともいずれか」とは、例えば、位置の3自由度と、姿勢の3自由度とがあり、合計で6自由度ある場合において、これらの6自由度の組合せのすべてを含むものとする。例えば、位置(X,Y,Z)と姿勢(φ,θ,Ψ)とに対し、位置Xと姿勢θのみの2自由度の場合をはじめ、姿勢θ、φのみの2自由度の場合や、位置X,Yと姿勢θ,Ψの4自由度の場合等を全て含むものとする。
【0011】
また、本発明は、アーム部と、アーム部先端のハンド部と、アーム部の制御目標を設定するアーム制御目標設定部と、を備え、ハンド部は、アーム部先端に対して取付けられるベース部と、ベース部に対して可動の少なくとも1つのリンク部と、作業対象物の作業対象面に対するベース部の接触領域における2箇所以上の点の押付力を検出するベース押付力検出部と、作業対象物の作業対象面に対するリンク部の接触領域における点の押付力を検出するリンク押付力検出部と、リンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかを検出するリンク可動状態検出部と、を有し、アーム制御目標設定部は、ベース押付力検出部が検出したベース部の接触領域における点の押付力と、リンク押付力検出部が検出したリンク部の接触領域における点の押付力と、リンク可動状態検出部が検出したリンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかとに基づいて、アーム部の制御目標を設定する、ロボット装置である。
【0012】
この構成によれば、アーム部と、アーム部先端のハンド部と、アーム部の制御目標を設定するアーム制御目標設定部とを備えたロボット装置において、ハンド部は、アーム部先端に対して取付けられるベース部と、ベース部に対して可動の少なくとも1つのリンク部と、作業対象物の作業対象面に対するベース部の接触領域における2箇所以上の点の押付力を検出するベース押付力検出部と、作業対象物の作業対象面に対するリンク部の接触領域における点の押付力を検出するリンク押付力検出部と、リンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかを検出するリンク可動状態検出部とを有するため、ベース部の接触領域における2箇所以上の点の押付力、リンク部の接触領域における点の押付力並びにリンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかといったハンド部における各種の情報を検出することができる。さらに、アーム制御目標設定部は、ベース押付力検出部が検出したベース部の接触領域における点の押付力と、リンク押付力検出部が検出したリンク部の接触領域における点の押付力と、リンク可動状態検出部が検出したリンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかとに基づいて、アーム部の制御目標を設定するため、ハンド部における各種の情報をフィードバックしてアーム部の制御が行なわれることになり、面倣い作業等のハンド部での多点接触による動作を可能とし、ハンド部での多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【0013】
この場合、アーム制御目標設定部は、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける接触圧の分布状態が目標の状態に近づくようにアーム部の制御目標を設定することが好適である。
【0014】
この構成によれば、アーム制御目標設定部は、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける接触圧の分布状態が目標の状態に近づくようにアーム部の制御目標を設定するため、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおいて、より作業対象物の形状に合ったアーム部の制御が可能となる。
【0015】
この場合、アーム制御目標設定部は、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける接触圧の圧力重心が、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける幾何学的重心に近づくようにアーム部の制御目標を設定することが好適である。
【0016】
この構成によれば、アーム制御目標設定部は、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける接触圧の圧力重心が、ベース部の接触領域、リンク部の接触領域、及びベース部とリンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかそれぞれにおける幾何学的重心に近づくようにアーム部の制御目標を設定するため、例えば、ベース部の接触領域における接触圧の圧力重心が、ベース部の接触領域における幾何学的重心と一致した押圧等が可能となり、ベース部の接触領域において、より作業対象物の形状に合ったアーム部の制御が可能となる。
【0017】
また、リンク部の制御目標を設定するリンク制御目標設定部をさらに備え、リンク制御目標設定部は、リンク押付力検出部が検出したリンク部の接触領域における点の押付力に基づいて、リンク部の接触領域における点の押付力が目標値と一致するように、リンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかを制御するようにリンク部の制御目標を設定することが好適である。
【0018】
この構成によれば、リンク部の制御目標を設定するリンク制御目標設定部は、リンク押付力検出部が検出したリンク部の接触領域における点の押付力に基づいて、リンク部の接触領域における点の押付力が目標値と一致するように、リンク部のベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかを制御するようにリンク部の制御目標を設定するため、様々な形状の作業対象物に対して柔軟に適応して、リンク部の接触領域の押付力を目標値にすることが可能となる。
【0019】
さらに、アーム制御目標設定部は、アーム部の制御目標としてアーム部の姿勢及び作業対象物に対して加える力の少なくともいずれかを制御目標として設定することが好適である。
【0020】
この構成によれば、アーム制御目標設定部は、アーム部の制御目標としてアーム部の姿勢及び作業対象物に対して加える力のいずれかを制御目標として設定するため、アーム部の姿勢及び作業対象物に対して加える力の少なくともいずれかの制御は、ハンド部における各種の情報をフィードバックして行なわれることになり、面倣い作業等のハンド部での多点接触による動作を可能とし、ハンド部での多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のロボット装置によれば、アーム部とハンド部とを備えたロボット装置において、面倣い作業等のハンド部での多点接触による動作を可能とし、ハンド部での多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態では、本発明に係るロボット装置を、ロボット装置のマニュピレータに適用する。本実施形態のマニュピレータは医療福祉等の分野において、清拭作業等に用いられるものである。
【0024】
図1は、実施形態に係るマニュピレータの構成を示す側面図である。図1に示すように、本実施形態のマニュピレータ10は、アーム部20とアーム部先端のハンド部30とを備えている。アーム部20は、人間の肩、肘及び手首に相当する部分の6自由度に受動柔軟関節21がそれぞれ設けられている。受動柔軟関節21それぞれは、各々の関節の角度を検出するセンサが内蔵されており、アーム部20の姿勢を検出するようになっている。受動柔軟関節21は、内部に機械ばねを搭載している。これにより、受動柔軟関節21は、環境との接触を伴う作業においてモデル化誤差や環境認識誤差が生じたとしても,機械的受動性でそれらを吸収しながら高速かつ安定した作業遂行を行うことが可能となる。また、受動柔軟関節21は、人への追従性に優れるため、速やかな力低減が図れる等、人との接触時の安全性を高めることが可能となる。
【0025】
アーム部20は、人との接触時の安全性を高めるため、表面に衝突安全被覆・接触センサ22を有する。衝突安全被覆・接触センサ22は、アーム部20表面の接触圧情報を利用した安全制御と、アーム部20表面との接触を活用しながら介助動作や重量物の運搬を行うことも可能とされている。人間の手首に相当する部分に設けられた力覚センサ23は、6軸力覚センサであり、アーム部20の作業対象物に対して加える力を検出するためのものである。
【0026】
ハンド部30は、アーム部20先端に対して取付けられる掌部(ベース部)40と、掌部40に対して可動の指部50を有している。掌部40は、人との接触時の安全性、安定性及び追従性を高める柔軟肉41を有している。掌部40の全面には、分布型圧力センサであるタクタイルセンサ(ベース押付力検出部)42を有している。タクタイルセンサは、人等の作業対象物の作業対象面に対する掌部40の接触領域における少なくとも2箇所以上の点の押付力を検出することが可能とされている。
【0027】
指部50は、合計4本の指を有し、人の親指に相当する指には、掌部40との付け根の関節を含め各々1自由度の2つの関節が設けられ、その他の各指には掌部40との付け根の関節を含め各々1自由度の3つの関節が設けられている。各関節には力覚センサ(リンク可動状態検出部)52が設けられ、各指の作業対象物に加える力を検出する他、指部50の掌部40に対する位置及び姿勢を検出するようになっている。また、指部50の全面には、分布型圧力センサであるタクタイルセンサ(リンク押付力検出部)53が設けられ、人等の作業対象物の作業対象面に対する指部50の各指の接触領域における点の押付力を検出することが可能とされている。
【0028】
図2は、実施形態に係るマニュピレータ10の制御系を示すブロック図である。図2に示すように、マニュピレータ制御系100は、制御対象であるマニュピレータ10のアーム部20とハンド部30とに対して、アーム制御部(アーム制御目標設定部)200とハンド制御部(ハンド制御目標設定部)300とを有する。アーム部20からのアーム部20の端部位置、端部姿勢及び端部発生力に関する信号は、アーム制御部200の端部位置検出部201、端部姿勢検出部202及び端部発生力検出部203に入力される。
【0029】
端部位置検出部201からの検出信号は、アーム制御部200の位置制御部204によって処理され、位置制御部204はアーム部20の位置の制御目標値を算出する。端部姿勢検出部202からの検出信号は、アーム制御部200の姿勢制御部205によって処理され、姿勢制御部205はこれに基づきアーム部20の姿勢の制御目標値を算出する。また、姿勢制御部205は、ハンド制御部300の圧力検出部302から、ハンド部30の掌部40の押圧力に関する検出信号を入力され、これに基づきアーム部20の姿勢の制御目標値を算出する。
【0030】
端部発生力検出部203からの検出信号は、アーム制御部200の力制御部206によって処理され、これに基づき力制御部206はアーム部20の作業対象物に加える力の制御目標値を算出する。また、力制御部206は、ハンド制御部300の関節角度検出部301から、指部50の掌部40に対する位置及び姿勢に関する検出信号を入力され、これに基づき力制御部206はアーム部20の作業対象物に加える力の制御目標値を算出する。さらに、力制御部206は、ハンド制御部300の圧力検出部302から、ハンド部30の指部50の押圧力に関する検出信号を入力され、これに基づき力制御部206はアーム部20の作業対象物に加える力の制御目標値を算出する。
【0031】
アーム制御部200の位置制御部204、姿勢制御部205及び力制御部206は、各々の制御目標値をアーム駆動部250に出力し、アーム部20を制御する。
【0032】
一方、ハンド部30からのハンド部30の指部50の各関節角度、並びに掌部40及び指部50の押付力に関する信号は、ハンド制御部300の関節角度検出部301及び圧力検出部302にそれぞれ入力される。関節角度検出部301からの指部50の各関節角度に関する検出信号と、圧力検出部302からの掌部40及び指部50の押付力に関する検出信号とは、ハンド制御部303によって処理され、これらに基づきハンド制御部303は、指部50の各関節角度並びに掌部40及び指部50の押付力の制御目標値を算出する。
【0033】
関節角度検出部301は、上述のようにアーム制御部200の力制御部206に対して指部50の掌部40に対する位置及び姿勢に関する検出信号を出力する。また、圧力検出部302は、上述のようにアーム制御部200の力制御部206に対してハンド部30の指部50の押圧力に関する検出信号を出力する。さらに、圧力検出部302は、上述のようにアーム制御部200の姿勢制御部205に対して掌部40の押圧力に関する検出信号を出力する。
【0034】
ハンド制御部303は、各々の制御目標値をハンド駆動部350に出力し、ハンド部30を制御する。
【0035】
図3は、実施形態に係る指とアームとの協調のための制御アーキテクチャーを示すブロック図である。図3に示すように、手首力センサ401からの検出信号は圧力制御405のために利用される。手掌接触状態402における圧力偏差は姿勢制御404のために利用され、手掌接触状態402の制御にフィードバックされる。手指接触状態403における接触力は指間接コンプライアンス制御406のために利用され、手指接触状態403の制御にフィードバックされる。さらに、手指接触状態403における接触力は圧力制御405のためにも利用され、圧力制御405により手掌接触状態402の制御が行われる。
【0036】
本実施形態において、ハンド部30全体を作業対象物に接触させるためには、大きく分けて二つの部位に分けることにより簡単に考えることができる。図4は、本実施形態に係るマニュピレータの全体の制御フローを示す図である。図4に示すように、本実施形態では、ハンド部30の根元に位置する掌部40とハンド部30の先端に位置する指部50の2つに分けることとする。
【0037】
まず、掌部40の接触について考える。本実施形態では、アーム部20の手先関節で掌部40の接触状態を制御する。具体的には、掌部40の接触圧の偏りを無くすための(1)アーム手先姿勢制御A、及び掌部(パーム)40の押付力を一定に保つための(2)アーム手先力修正制御Bが必要となる。さらに、指部50が作業対象物に倣うための(3)手指コンプライアンス制御Cが必要となる。以上の基本的な3つの制御に加えて、アーム部20においては、清拭方向への移動を行うための制御が必要となる。
【0038】
図4に示すように、アーム手先姿勢制御Aは、アーム520の手先位置(関節角度)521、ハンド530の接触圧情報531及び関節角度532の情報に基づいて行われ、アーム520の手先位置521にフィードバックされる。アーム手先力修正制御Bは、アーム520の手先位置521、手首力情報522、ハンド530の接触圧情報531及び関節角度532の情報に基づいて行われ、アーム520の手先位置521にフィードバックされる。アーム520の手先位置521は位置制御523に利用される。手指コンプライアンス制御Cは、ハンド530の接触圧情報531及び関節角度532の情報に基づいて行われ、ハンド530の関節角度532にフィードバックされる。以下、各部の制御について詳細を説明する。
【0039】
(1 アームコンプライアンス制御)
(1.1 アームハイブリッド制御)
本実施形態では、アーム部20の押付方向に力制御、掌部40の接触を確保するための手先姿勢制御、及び清拭方向への位置制御が必要となるため、これらをハイブリッド制御により行う。そこで、ハイブリッド制御について以下に簡単に説明する。
【0040】
(1.1.1 位置制御)
目標とする位置に対して並進力としての引力が働くようなポテンシャル場を張り、ロボットの制御対象部位に位置制御用力ベクトルRFPosを作用させる。ただし、添え字Rは力ベクトルが基準座標系で示されていることを表している。引力の強さは目標位置Pref=[xref yref zref]Tと現在位置P=[x y z]Tとの偏差ΔPの関数として以下の式を用いる。
FPos=FPosmax(1−e−αposΔP)
ΔP=|Pref−P|={(xref−x)2+(yref−y)2+(zref−z)2}1/2 (1)
【0041】
偏差と引力との強さの関係を図5に示す。この関数を用いることで、ある程度以上離れた地点での作用力を一定値FPosmaxにすることができ、αPosを調節することで目標値近傍の引力の強さを変化させることができる。
【0042】
このようにして求まった引力を下式(2)によって目標位置に向けてロボットに作用させる。
RFPos=[FPos,x FPos,y FPos,z]T
=[{(xref−x)/ΔP}FPos{{(yref−y)/ΔP}}FPos{{(zref−z)/ΔP}}FPos] (2)
【0043】
(1.1.2 姿勢制御)
目標とする姿勢に対してモーメント力としての引力が働くようなポテンシャル場を張り、ロボットの制御対象部位に姿勢制御用ベクトルRMOriを作用させる。姿勢制御用ベクトルの生成手法の詳細な説明の前に、姿勢制御において重要となる姿勢の表現法と回転行列について説明する。
【0044】
基準座標系をΣAとし、その原点をOA、直行する3軸をXA、YA、ZAとする。また、目標とする姿勢の座標系をΣBとし、その原点をOB、直行する3軸をXB、YB、ZBとする。また、XB、YB、ZBの方向を向く単位ベクトルをΣAで表したものをAxB、AyB、AzBと書くことにする。このときΣAから見た目標姿勢は{AxB、AyB、AzB}で表現することができる。なお、左上の添字Aはそのベクトルが座標系ΣAで表されていることを示す。以後も特に断らない限りベクトルにお左上付き添字はこの約束に従うものとする。
【0045】
ここで、姿勢は3つのベクトル{AxB、AyB、AzB}で表現することができるが、これらを、
ARB=[AxB、AyB、AzB]
と行列の形にまとめて表したものを回転行列と呼ぶ。
【0046】
ARBは9つの変数を持つがこれらの中で独立な成分は3つであり、基準座標系ΣAから、ある固定された軸周りの回転を3回順次行なった結果としてとらえ、これら3つの回転各でΣBの姿勢を表すものとして、オイラー角やロール角・ピッチ角・ヨー角による表現が知られている。オイラー角とロール角・ピッチ角・ヨー角との違いは、3つの回転の回転軸の取り方が異なるのみである。
【0047】
以下、本実施形態で用いているオイラー角について説明する。
i)まず、ΣAをZA軸まわりに角度φだけ回転させた座標系ΣA’とする。
ii)次にΣA’をYA’軸まわりに角度θだけ回転させたものを座標系ΣA”とする。
iii)最後にΣA”をZA”軸まわりに角度Ψだけ回転させたものをΣBとする。
【0048】
このとき、ΣAからみたΣBの姿勢は3つの角度の組(φ,θ,Ψ)で表現でき、この組をオイラー角と呼ぶ。これら3つの回転の合成からなる回転行列ARBは、下式(3)に示すようになる。
【数1】
【0049】
ロボットの姿勢を制御する際に、このオイラー角やロール角・ピッチ角・ヨー角をそのまま用いるには、3つの回転軸を順番に制御しなければ目標とする姿勢を実現することができない。よって、3つの軸周りのモーメントを同時に作用させて制御するためには、これを直接用いることができないことが判る。
【0050】
そこで、目標姿勢へ到達するためのモーメントをある一つの座標系で一度に算出する方法が必要になる。姿勢は、オイラー角、ロール角・ピッチ角・ヨー角などのように表現法がいくつか考えられるが、回転行列に関しては一意である。そして、この回転行列は単純に座標系と座標系との関係を示しているものなので、この回転行列をもとに考えることとする。
【0051】
基本的にはロボットの任意の部位における姿勢を制御することができるが、ここでは、説明の便宜のため、手先姿勢ΣHが基準座標ΣRにおいてオイラー角(φ,θ,Ψ)で表現されている場合について考える。また、目標姿勢は回転行列で表現できれば、オイラー角、及びロール角・ピッチ角・ヨー角のどちらで表現されていてもかまわない。
【0052】
姿勢制御用力ベクトルの生成手法は以下の手順で行なう。
1)オイラー角によって基準座標系で表現された目標姿勢Φ=(φ,θ,Ψ)の回転行列を求める。
【数2】
【0053】
2)目標姿勢の回転変換行列を手先座標系で表現しなおす。
【数3】
【0054】
3)目標姿勢座標の各軸に対応する単位ベクトル{HXref HYref HZref}の手先座標系における偏差{ΔHΦx ΔHΦy ΔHΦz}を算出する。偏差{ΔHΦx ΔHΦy ΔHΦz}を算出した式を下式(6)に示す。また、手先座標系における目標姿勢座標の各軸を表したものを図6(a)〜(c)に示す。
ΔHΦx=atan2(R32,R22)
ΔHΦy=atan2(R13,R33) (6)
ΔHΦz=atan2(R21,R11)
【0055】
4)各軸周りの偏差に対応した目標姿勢用力ベクトルを手先座標系で算出する。この際、力ベクトルの大きさは、位置制御用力ベクトルの大きさを決めるのと同じ指数関数で求める。偏差の大きさは各軸周りの偏差のノルムを用い、各成分を決める際にもこれを用いる。
MOri=MOrimax(1−e−αOriΔΦ)
ΔΦ=(ΔHΦx2+ΔHΦy2+ΔHΦz2)1/2
RMOri=[MOri,xMOri,yMOri,z]T (7)
[(ΔHΦx/ΔΦ)MOri(ΔHΦy/ΔΦ)MOri(ΔHΦz/ΔΦ)Mori]T
【0056】
5)手先座標系で示された目標姿勢用力ベクトルを基準座標系で表現しなおすと下式(8)のようになる。
RMOri=RRHHMOri (8)
【0057】
(1.1.3 コンプライアンス制御)
ロボットの行なう作業の中には、ドアの開閉等のように手先位置の厳密な制御のみではなく、環境との接触力を制御する必要があるものが多い。そこで、本実施形態では、位置制御・姿勢制御をベースとして構築が可能なコンプライアンス制御を用いて力制御を行なう。なお、本実施形態ではコンプライアンス制御により力制御を行なうが、制御手法はこれに限定されるものではない。
【0058】
力はロボットの手首部に搭載された力覚センサ23を用いて検出することを想定すると、手先力を制御するためには、ハンド部30の自重をキャンセルし、手首にかかる負荷から手先力を推定することが必要となる。
【0059】
(1.1.4 ハンドの自重キャンセル)
6軸力覚センサである力覚センサ23が手首に搭載されていた場合、センサで検出される力には常にハンド部30の自重による力も検出されており、外力を算出するには自重を差し引かなければならない。よって、力覚センサ23で検出されるハンド部30の自重を算出することとする。
【0060】
手首座標における力覚センサ23の位置をWPS=[xw−s,yw−s,zw−s]、ハンド部30の重心位置をWPHg=[xw−Hg,yw−Hg,Zw−Hg]とすると、力覚センサ23とハンド部30の重心との同次変換行列は下式(9)(10)のように求まる。
【数4】
【0061】
基準座標系で表したハンド分30の重心に加わる重力は、下式(8)のようになる。
RFHg・Hg=[0 0 −mHg]T,RMHg・Hg=[0 0 0]T (11)
【0062】
これをハンド部30の重心座標系で表現すると、下式(12)のようにできる。
HgFHg,Hg=HgRR・RFHg,Hg,HgMHg,Hg=HgRR・RMHg,Hg
HgRR=(RRHg)T (12)
【0063】
そこで、6軸力覚センサである力覚センサ23で計測されるハンド部30の自重SFs,Hg,SMs,Hgは、下式(13)のように求まる。
【数5】
【0064】
ただし、上式(13)において、記号[・×]は、任意の3次元ベクトルa=[axayaz]Tに対して、以下に示す関係を意味する。
【数6】
【0065】
(1.1.5 手首の力センサを用いた手先力の算出)
手首の力センサで検出した手首座標系の力をもとに、手先の負荷を基準座標系で算出する。まず、手首にかかるハンド部30の自重を算出したのと同じ要領で、手先にかかる負荷を手先座標系で下式(14)のように算出する。
【数7】
【0066】
そこで、算出した手先座標系における手先力は、下式(15)のように基準座標系で表現しなおすことができる。
RFH,ext=RRH・HFH,ext (15)
RMH,ext=RRH・HMH,ext
【0067】
(1.1.6 仮想コンプライアンスに基づく並進力の制御)
仮想コンプライアンス制御を用いて並進力を制御するということは、設定した手先コンプライアンスを実現するように手先の位置を制御するということである。コンプライアンスは力による仮想バネ変位の分だけ目標手先位置をずらすことで実現されるが、ここではその仮想変位を算出する。なお、本実施形態では仮想コンプライアンス制御を用いて並進力を制御するが、制御手法はこれに限定されない。
【0068】
目標位置、仮想バネ変位、修正された目標位置をそれぞれPref,Pcmp,Pref’とすると下式(16)が成り立つ。
Pref’=Pref+Pcmp (16)
【0069】
そこで、目標手先力RFH,ref、手先力RFH、手先コンプライアンス行列CH,Pが与えられた場合、仮想バネ変位は下式(17)より求まる。
【数8】
【0070】
(1.1.7 仮想コンプライアンス制御によるモーメント力の制御)
仮想コンプライアンス制御によって並進力を制御するということは、設定した手先コンプライアンスを実現するように手先の姿勢を制御するということである。並進力の制御の場合には、力による仮想バネ変位の分だけ目標手先位置をずらせば良かったが、モーメント力制御の場合は、常に現在の手先姿勢を基準にしなければならないため、目標姿勢との偏差を修正することで実現される。なお、本実施形態では、仮想コンプライアンス制御によって並進力を制御するが、制御手法はこれに限定されるものではない。
【0071】
目標手先モーメントRMH,ref、手先力RMH、仮想手先コンプライアンスCH,Φが基準座標系で与えられた場合、基準座標系における仮想バネ変位RΦcmpは下式(18)により求まる。
【数9】
【0072】
これを手先座標系に変換して目標姿勢との偏差に加えて姿勢制御を行なうことで、モーメント力制御が可能となる。目標姿勢との偏差、仮想バネ変位、修正された偏差をそれぞれΔHΦ、HΦcmp、ΔHΦ’とすると、下式(19)が成り立つ。
ΔHΦ’=ΔHΦ+HΦcmp
HΦcmp=(RRH)TRΦcmp (19)
【0073】
(1.2 アーム手先姿勢修正)
本実施形態では、図7(a)(c)のように掌部40のみや指部50のみで作業対象物Oに接触するのではなく、図7(b)のように掌部40及び指部50全面を均等に作業対象物Oに接触させるためにアーム手先姿勢修正を行なう。まず、姿勢修正に用いる情報について考察を行なう。
【0074】
図8(a)に示す従来の倣い動作のように接触モデルを1点接触として扱い、手首の力覚センサを用いて制御する場合は、接触モデルは単純であり、手首力覚情報から接触状態は一意に求める事ができる。これに対して、多指ハンドを用いた倣い動作のように多点接触が起きる場合を考えると、図8(b)に示すように、作業対象物Oの形状によっては、手指姿態が動的に変化したり、指列が大きく屈曲して作業対象物Oに回り込むような状況においてハンド部30の中に対向する内力が発生する。
【0075】
これによって力学モデルは格段に複雑化し、手首力情報だけでは接触状態は一意に求めることができない。例えば、図8(b)のような状況において、掌部40の一部が作業対象物Oに接触していないにも関わらず、対向する内力が発生していることによって、手首力覚センサではモーメントが釣り合うということが起きる。
【0076】
そこで、本実施形態では、従来のような手首力覚情報ではなく、掌部圧力分布情報を用いてアーム手先姿勢修正を行なう。
【0077】
本実施形態における姿勢修正を行なう上での基本的な考え方は、掌部40の接触圧重心PCGと掌部40の幾何学重心GCGとが一致するように姿勢修正モーメントを求める。姿勢修正モーメントを求める手順としては、掌部40に配置される圧力分布センサであるタクタイルセンサ42を、図9(a)のように幾何学重心GCGを中心に4分割し、各部の圧力をそれぞれP1,P2,P3,P4とおく。続いて下式(20)のように掌部40の上下・左右にかかる圧力の偏差から修正モーメントMx,Myを算出した。なお、下式(20)においてKx,Kyはそれぞれ任意の定数である。
Mx=Kx{(P1+P2)−(P3+P4)}
My=Ky{(P1+P3)−(P2+P4)} (20)
【0078】
本実施形態では、このようにして求めた修正モーメントに基づき、図9(b)に示すように、アーム姿勢コンプライアンス制御にて釣り合い状態へ遷移、掌部40全面を接触させることとした。なお、本実施形態においては、掌部40の接触圧重心PCGと掌部40の幾何学重心GCGとが一致するように姿勢修正モーメントを求める他、掌部40の一部分を作業対象物Oに特に強く押し付ける等の制御目標の設定も可能である。あるいは、上記制御手法は、指部50の圧力分布情報を用いてアーム手先姿勢修正を行なうようにしても良い。さらには、掌部40及び指部50の接触領域を合わせた全接触領域を考え、当該全接触領域の圧力偏在を低減させるようにしても良く、この場合、掌部40及び指部50の接触領域を合わせた全接触領域の接触圧重心と幾何学的重心とが近づき、一致するように制御しても良い。
【0079】
(1.3 アーム手先力修正)
指姿勢に寄らずハンド部30での押付力を一定に保つために、アーム手先力修正を行なった。従来の倣い動作では、エンドエフェクタの形状は変化しないので手先力は一定であった。しかし、多指ハンドを用いた倣い動作では、対象形状により指姿勢が変化するため、それに伴い手先力も変化しなければならない。図10(a)(b)に示すように、手先力Fz、掌部荷重Fp、各指先力をFti(i=1〜4)、各指先姿勢θi(i=1〜4)とおく。αは掌部40と指部50との面積の比から求まる定数である。
【0080】
下式(21)のようにFzは求まり、図11に示すように、指先角度が大きくなるに伴い図10(b)に示す指先力のFz方向成分が小さくなるのでFzも小さくなり、指先角度が90degの時点でFzとFpが釣り合うことになる。これにより、指先姿勢に寄らずハンド部30全体での押付力を一定とすることができる。なお、本実施形態では、ハンド部30全体での押付力は一定に制御するのみならず、所定の目標値と一致させるように制御することも可能である。
Fz=Fp+ΣFti×cosθi
=αΣFti+ΣFti×cosθi (21)
【0081】
(2 手指コンプライアンス制御)
(2.1 手指コンプライアンス制御の必要性)
安全性・作業性の高い清拭作業を行なうにはハンド部30全面が偏りなく作業対象物Oに接触していることが重要である。そして、掌部40の接触については、上述のアーム手先姿勢・力修正制御によって行なう。続いて指部50の接触についてはハンド指部関節のコンプライアンス制御にて行なう。なお、本実施形態では手指コンプライアンス制御を採用するが、制御手法はこれに限定されない。
【0082】
本実施形態の多指ロボットハンドの掌部40は平面であり、その機構的制約から、小さな曲率を有する対象に全面で倣うことは難しい。しかし、図12に示すように、指部50は比較的に小さな構造部品から構成されており、また、冗長性を有しているために、図13(a)(b)に示すように小さな凹凸にたいしてもきめ細かに倣うことが可能と考えられる。さらに、指部50の関節に受動柔軟関節を搭載し、掌部40全面に柔軟被覆を搭載するなど構造的柔軟性を有しているため、特別な制御無しでも高応答に倣う事が可能である。このように本実施形態のハンド部30は倣い動作をさせるのに適したハードウェアと言える。
【0083】
しかし、図13(a)(b)に示すように、柔軟関節の可動伸展角には限界があり、柔軟被覆も一定以上の圧力がかかると底付きを起こすため、大きな変位には対応することができないという問題がある。さらに、変位や急激な荷重変化を受け流すことはできるが、あうまで力を制御しているわけではないので、作業対象物Oにかかる荷重を一定に保つことは困難である。
【0084】
以上のことから、本実施形態では、高応答な構造的柔軟性に加え、大きな変位にも適応し荷重を一定にする手指コンプライアンス制御を実装する。
【0085】
(2.2 手指コンプライアンス制御の制御構造)
制御対象とする関節は図12に示す多指の関節MP・PIP、母指の関節MP・IPの計8関節とし、各関節は独立して制御する。制御方法はその節と末節にかかる荷重がある一定値よりも大きい場合には、その部位に最も近い根元の関節を伸展駆動させ、その節と末節にかかる荷重がある一定値よりも小さい場合には、その部位に最も近い根元の関節を屈曲駆動させることとした。駆動の際の指令角は曲率関数を用いて算出した。曲率関数とは、予め図13(b)に示すように、作業対象物の50〜∞mmの曲率に沿うように関節角を設定し、曲率と関節角との関係性を関数化したものである。図14に示すように、根元の関節MPについて多項式(I1)が成り立ち、関節PIPについて多項式(I3)が成り立つ。
【0086】
本実施形態によれば、アーム部20と、アーム部20先端のハンド部30と、アーム部20の制御目標を設定するアーム制御部200とを備えたマニュピレータ10において、ハンド部30は、アーム部20先端に対して取付けられる掌部40と、掌部40に対して可動の少なくとも1つの指部50と、作業対象物Oの作業対象面に対する掌部40の接触領域における2箇所以上の点の押付力を検出するタクタイルセンサ42と、作業対象物Oの作業対象面に対する指部50の接触領域における点の押付力を検出するタクタイルセンサ53と、指部50の掌部40に対する位置及び姿勢を検出する力覚センサ52とを有するため、掌部40の接触領域における2箇所以上の点の押付力、指部50の接触領域における点の押付力並びに指部50の掌部40に対する位置及び姿勢といったハンド部30における各種の情報を検出することができる。さらに、アーム制御部200は、タクタイルセンサ42が検出した掌部40の接触領域における点の押付力と、タクタイルセンサ53が検出した指部50の接触領域における点の押付力と、力覚センサ52が検出した指部50の掌部40に対する位置及び姿勢とに基づいて、アーム部20の制御目標を設定するため、ハンド部30における各種の情報をフィードバックしてアーム部20の制御が行なわれることになり、面倣い作業等のハンド部30での多点接触による動作を可能とし、ハンド部30での多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【0087】
すなわち、図33に示す従来のマニュピレータ制御系900では、アーム制御部200によるアーム制御とハンド制御部300によるハンド制御とが協調しておらず、人間の前腕部等の作業対象物に指先部だけで接触しており、接触面積が小さく作業効率が悪いという欠点がある。しかし、本実施形態では、アーム制御部200によるアーム制御とハンド制御部300によるハンド制御とを協調させて力制御を行うことにより、多点での倣い作業と力制御とを容易に行なうことが可能となる。
【0088】
また、本実施形態によれば、アーム制御部200は、掌部40の接触領域における接触圧の分布状態が目標の状態に近づくように、例えば、掌部40の接触領域における接触圧力重心PCGが、掌部40の接触領域における幾何学的重心GCGと一致するようにアーム部20の制御目標を設定するため、掌部40の接触領域における接触圧力重心GCGが、ベース部の接触領域における幾何学的重心GCGと一致した押圧が可能となり、掌部40の接触領域において、より偏りのない作業対象物の形状に合ったアーム部20の制御が可能となる。
【0089】
また、本実施形態によれば、指部50の制御目標を設定するハンド制御部300は、タクタイルセンサ53が検出した指部50の接触領域における点の押付力に基づいて、指部50の接触領域における点の押付力が所定の目標値と一致するように、例えば、指部50の接触領域における点の押付力が一定となるように、指部50の掌部40に対する位置及び姿勢をコンプライアンス制御により制御するように指部50の制御目標を設定するため、様々な形状の作業対象物Oに対して柔軟に適応して、指部50の接触領域の押付力を一定にすることが可能となる。
【0090】
さらに、本実施形態によれば、アーム制御部200は、アーム部20の制御目標としてアーム部20の姿勢及び作業対象物に対して加える力を制御目標として設定するため、アーム部20の姿勢及び作業対象物に対して加える力の制御は、ハンド部30における各種の情報をフィードバックして行なわれることになり、面倣い作業等のハンド部30での多点接触による動作を可能とし、ハンド部での多点接触による押付力の力制御をより容易に行なうことが可能となる。
【0091】
(実験例)
以下、本実施形態の実験例について説明する。上述の実施形態のマニュピレータ10を用いて清拭作業を行い評価した。試験用の作業対象物としては、図15(a)〜(c)に示すような様々な曲率の曲面、凹凸を有する作業対象物O,O’,O”を用いた。対象部位はφ100及びφ200の円柱部に対して、横方向へのスライド、及び指先方向への回りこみを行なった。また、凹凸に対しても回り込む清拭作業を行なった。
【0092】
マニュピレータ10の制御方法は、本発明の手法を用いた制御と、従来手法を模擬し、ハンド部30を平面として扱い、手先の押付方向及び位置の制御のみを用いた制御の二通りで比較を行った。試験装置としては、図16に示すように、重ねた清拭タオルTの間に分布型圧力センサSを配し、清拭作業時の作業対象物O,O’,O”にかかる圧力分布状況を計測する事により行なった。評価項目としては、接触面積と圧力偏在とし、これらを計測し安全性・作業性の観点から評価を行なった。
【0093】
なお、圧力分布センサの諸元は、
メーカー:NITTA
型番(商品名):I−Scan150−0.5
空間分解能[mm]:3.75
セル数:1936
感圧部分サイズ[mm]:165×165
厚さ[mm]:0.1
感圧範囲[kgf/cm2]:0.05〜0.5
圧力分解能[bit]:8
サンプリング周期[ms]:10
【0094】
図15(a)に示す二つの異なる曲率(φ100及びφ200)を有し当該異なる曲率の部位に段差を有する作業対象物O、図15(b)に示す当該異なる曲率の部位がなだらかな傾斜となっている作業対象物O’、及び図15(c)に示すφ200の曲面に半径60mm、高さ30mmの凸部Pを有する作業対象物O”に対して、ハンド部30側面方向、及び指先方向へ清拭を行なった。
【0095】
(実験例1)
φ100及びφ200の二つの曲率をなだらかにせず段差状にした作業対象物Oに対して、本発明の手法で制御されたマニュピレータ10により、ハンド部30側面方向への清拭を行なった。結果を図17(a)〜(f)、図18及び図19に示す。図17〜19より、動作は段差に対して各指が独立して倣い、荷重は全ての部位においてほぼ一定に収まり、接触面積は全ての部位においてほぼ一定に収まり、荷重中心はほぼ手指の中心に納まっていることが判る。
【0096】
(比較例1)
φ100及びφ200の二つの曲率をなだらかにせず段差状にした作業対象物Oに対して、アーム手先姿勢制御をOFFにしたマニュピレータ10により、ハンド部30側面方向への清拭を行なった。結果を図20(a)〜(d)、図21及び図22に示す。図20〜22より、動作は手先姿勢修正制御が入っていないために掌部40の接触が維持できず、荷重は手指全体ではほぼ一定だが、掌部40及び指部50それぞれでの変化が激しく、接触面積は全ての部位において大きな変化があり、安定した接触維持ができず、荷重中心はハンド幾何学中心GCGから大きく逸脱していることが判る。
【0097】
(実験例2)
φ100及びφ200の二つの曲率をなだらかな傾斜にした作業対象物O’に対して、本発明の手法で制御されたマニュピレータ10により、ハンド部30側面方向への清拭を行なった。結果を図23(a)〜(d)、図24及び図25に示す。図23〜25より、動作は比較的小さな曲率から平面への移行においても安定して倣い、荷重は全ての部位においてほぼ一定に収まり、接触面積は全ての部位においてほぼ一定に収まり、荷重中心はほぼ手指の中心に納まっていることが判る。
【0098】
(実験例3)
φ100及びφ200の二つの曲率をなだらかな傾斜にした作業対象物O’に対して、φ200の曲率の箇所で本発明の手法で制御されたマニュピレータ10により、指先方向への清拭を行なった。また、指先方向から手首方向へ戻す清拭も行なった。結果を図26(a)〜(d)、図27(a)〜(d)、図28及び図29に示す。図26〜29より、動作は手先の角度が0〜80deg程度変化し、手先角度が80deg付近になるとやや振動したが、おおむね安定して倣っていることが判る。また、掌部40の荷重が手先角度が増えるにつれて徐々に大きくなる傾向があり、指部50の荷重が他の動作に比べて低いことが判る。接触面積は掌部40の面積は手先角度が増えるにつれ徐々に大きくなる傾向があり、指部50の面積は他の動作に比べて小さいことが判る。荷重中心は掌部40に偏りがちではあるが、変化量は少ないことが判る。
【0099】
(実験例4)
図15(c)に示すφ200の曲面に半径60mm、高さ30mmの凸部Pを有する作業対象物O”に対して、本発明の手法で制御されたマニュピレータ10により、指先方向へ回り込む清拭を行なった。結果を図30(a)〜(e)、図31、及び図32に示す。図30〜32より、動作は人差し指、中指が凸部に接触したが、各指が独立に動作し作業対象物O”に倣っていることが判る。荷重は、掌部40の荷重が、手先角度が増えるにつれ徐々に大きくなる傾向があることが判り、反対に指部50の荷重は手先角度が増えるにつれ小さくなっていくことが判る。接触面積は凸部Pがあると指が振動するため、接触面積も波立っていることが判る。荷重中心は凸部Pに入ると一旦指部50側に荷重中心が移動するが、しばらくすると中心に戻ってくることが判る。
【0100】
以上の実験例の結果をまとめると、安全性については、曲面に対し常にハンド部30全体がなじむことにより、動作開始時から終了時にわたり常に接色面積が大きくなった。また、凹凸に対し指部50がなじむ事により、局所的圧力偏在を防ぎ、圧力分散することが確認された。また、作業性については、本実施形態の制御手法により、接触面積は大きくなり、圧力偏在も少ないため、清拭面積の増大及び拭き残し箇所の減少といった効果が確認された。特に、曲面においては接触面積の積分値は本実施形態の制御手法による制御有りと無しとでは2倍程度の差が確認され、本実施形態の制御手法の効果が大きく現われる結果となった。
【0101】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施形態に係るマニュピレータの構成を示す側面図である。
【図2】実施形態に係るマニュピレータの制御系を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る指とアームとの協調のための制御アーキテクチャーを示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係るマニュピレータの全体の制御フローを示す図である。
【図5】位置制御のためのポテンシャル関数を示すグラフ図である。
【図6】(a)〜(c)は、手先座標における目標姿勢座標の各軸を示した図である。
【図7】(a)〜(c)は、手先姿勢と各点の押付力との関係を示す図である。
【図8】(a)はマニュピレータにおける作業対象物への一点接触を示す図であり、(b)はマニュピレータにおける作業対象物への多点接触を示す図である。
【図9】(a)はハンド部の接触領域の圧力分布を示す図であり、(b)はハンド部の圧力分布情報を活用したアーム手先姿勢修正を示す図である。
【図10】(a)はハンド指姿勢の変化を示す図であり、(b)はハンド指姿勢の変化に伴うアーム手先力修正を示す図である。
【図11】手先力と指先姿勢との関係を示すグラフ図である。
【図12】手指コンプライアンス制御における手指の動作を示す図である。
【図13】(a)は手指の各関節の動きと作用する力とを示す図であり、(b)は作業対象物の大きさ応じた手指の動作を示す図である。
【図14】作業対象物の大きさに対する関節指令角度の曲率関数を示すグラフ図である。
【図15】(a)は実験例で用いた段差を有する作業対象物を示す斜視図であり、(b)は実験例で用いた傾斜を有する作業対象物を示す斜視図であり、(c)は実験例で用いた突出部を有する作業対象物を示す斜視図である。
【図16】実験例で用いた清拭タオルを示す図である。
【図17】(a)〜(f)は、実験例1におけるマニュピレータの動作と接触領域の圧力分布とを示す図である。
【図18】実験例1における部位ごとの時間に対する荷重を示すグラフ図である。
【図19】実験例1における部位ごとの時間に対する接触面積を示すグラフ図である。
【図20】(a)〜(d)は、比較例1におけるマニュピレータの動作と接触領域の圧力分布とを示す図である。
【図21】比較例1における部位ごとの時間に対する荷重を示すグラフ図である。
【図22】比較例1における部位ごとの時間に対する接触面積を示すグラフ図である。
【図23】(a)〜(d)は、実験例2におけるマニュピレータの動作と接触領域の圧力分布とを示す図である。
【図24】実験例2における部位ごとの時間に対する荷重を示すグラフ図である。
【図25】実験例2における部位ごとの時間に対する接触面積を示すグラフ図である。
【図26】(a)〜(d)は、実験例3における指先方向へ倣うマニュピレータの動作と接触領域の圧力分布とを示す図である。
【図27】(a)〜(d)は、実験例3における指先方向とは逆方向に倣うマニュピレータの動作と接触領域の圧力分布とを示す図である。
【図28】実験例3における部位ごとの時間に対する荷重を示すグラフ図である。
【図29】実験例3における部位ごとの時間に対する接触面積を示すグラフ図である。
【図30】(a)〜(e)は、実験例4におけるマニュピレータの動作と接触領域の圧力分布とを示す図である。
【図31】実験例4における部位ごとの時間に対する荷重を示すグラフ図である。
【図32】実験例4における部位ごとの時間に対する接触面積を示すグラフ図である。
【図33】従来のマニュピレータの制御系を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0103】
10…マニュピレータ、20…アーム部、21…受動柔軟関節、22…衝突安全被覆・接触センサ、23…力覚センサ、30…ハンド部、40…掌部、41…柔軟肉、42…タクタイルセンサ、50…指部、51…受動柔軟関節、52…力覚センサ、100…マニュピレータ制御系、200…アーム制御部、201…端部位置検出部、202…端部姿勢検出部、203…端部発生力検出部、204…位置制御部、205…姿勢制御部、206…力制御部、250…アーム駆動部、300…ハンド制御部、301…関節角度検出部、302…圧力検出部、303…ハンド制御部、350…ハンド駆動部、401…手首力センサ、402…掌接触状態、403…手指接触状態、404…姿勢制御、405…圧力制御、406…指関節コンプライアンス制御、520…アーム、521…手先位置、522…手首力情報、523…位置制御、530…ハンド、531…接触圧情報、532…関節角度、900…マニュピレータ制御系、A…姿勢制御、B…力制御、C…手指コンプライアンス制御。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リンク部と、
前記第1リンク部に対して相対運動する第2リンク部と、
前記第1リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第1接触荷重検出部と、
前記第2リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第2接触荷重検出部と、
前記第1リンク部の制御目標を設定する第1リンク部制御目標設定部と、
を備え、
前記第1リンク部制御目標設定部は、前記第1接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、前記第2接触荷重検出部の接触荷重の検出値との差分を低減させるように、前記第1リンク部の制御目標を設定する、ロボット装置。
【請求項2】
第1リンク部と、
前記第1リンク部に対して相対運動する第2リンク部と、
前記第1リンク部に対する前記第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかを検出する運動検出部と、
前記第1リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第1接触荷重検出部と、
前記第2リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第2接触荷重検出部と、
前記第1リンク部の制御目標を設定する第1リンク部制御目標設定部と、
を備え、
前記第1リンク部制御目標設定部は、前記第1接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、前記第2接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、前記運動検出部が検出した前記第1リンク部に対する前記第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかとに基づいて、前記第1リンク部の制御目標を設定する、ロボット装置。
【請求項3】
アーム部と、
前記アーム部先端のハンド部と、
前記アーム部の制御目標を設定するアーム制御目標設定部と、
を備え、
前記ハンド部は、
前記アーム部先端に対して取付けられるベース部と、
前記ベース部に対して可動の少なくとも1つのリンク部と、
作業対象物の作業対象面に対する前記ベース部の接触領域における2箇所以上の点の押付力を検出するベース押付力検出部と、
前記作業対象物の前記作業対象面に対する前記リンク部の接触領域における点の押付力を検出するリンク押付力検出部と、
前記リンク部の前記ベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかを検出するリンク可動状態検出部と、
を有し、
前記アーム制御目標設定部は、前記ベース押付力検出部が検出した前記ベース部の接触領域における点の押付力と、前記リンク押付力検出部が検出した前記リンク部の接触領域における点の押付力と、リンク可動状態検出部が検出した前記リンク部の前記ベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかとに基づいて、前記アーム部の制御目標を設定する、ロボット装置。
【請求項4】
前記アーム制御目標設定部は、前記ベース部の接触領域、前記リンク部の接触領域、及び前記ベース部と前記リンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける接触圧の分布状態が目標の状態に近づくように前記アーム部の制御目標を設定する、請求項3に記載のロボット装置。
【請求項5】
前記アーム制御目標設定部は、前記ベース部の接触領域、前記リンク部の接触領域、及び前記ベース部と前記リンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける接触圧の圧力重心が、前記ベース部の接触領域、前記リンク部の接触領域、及び前記ベース部と前記リンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかそれぞれにおける幾何学的重心に近づくように前記アーム部の制御目標を設定する、請求項4に記載のロボット装置。
【請求項6】
前記リンク部の制御目標を設定するリンク制御目標設定部をさらに備え、
前記リンク制御目標設定部は、前記リンク押付力検出部が検出した前記リンク部の前記接触領域における点の押付力に基づいて、前記リンク部の接触領域における点の押付力が目標値と一致するように、前記リンク部の前記ベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかを制御するように前記リンク部の前記制御目標を設定する、請求項3〜5のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項7】
前記アーム制御目標設定部は、前記アーム部の制御目標として前記アーム部の姿勢及び前記作業対象物に対して加える力の少なくともいずれかを制御目標として設定する、請求項3〜6のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項1】
第1リンク部と、
前記第1リンク部に対して相対運動する第2リンク部と、
前記第1リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第1接触荷重検出部と、
前記第2リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第2接触荷重検出部と、
前記第1リンク部の制御目標を設定する第1リンク部制御目標設定部と、
を備え、
前記第1リンク部制御目標設定部は、前記第1接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、前記第2接触荷重検出部の接触荷重の検出値との差分を低減させるように、前記第1リンク部の制御目標を設定する、ロボット装置。
【請求項2】
第1リンク部と、
前記第1リンク部に対して相対運動する第2リンク部と、
前記第1リンク部に対する前記第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかを検出する運動検出部と、
前記第1リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第1接触荷重検出部と、
前記第2リンク部の接触領域における接触荷重を検出する第2接触荷重検出部と、
前記第1リンク部の制御目標を設定する第1リンク部制御目標設定部と、
を備え、
前記第1リンク部制御目標設定部は、前記第1接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、前記第2接触荷重検出部の接触荷重の検出値と、前記運動検出部が検出した前記第1リンク部に対する前記第2リンク部の位置及び姿勢の少なくともいずれかとに基づいて、前記第1リンク部の制御目標を設定する、ロボット装置。
【請求項3】
アーム部と、
前記アーム部先端のハンド部と、
前記アーム部の制御目標を設定するアーム制御目標設定部と、
を備え、
前記ハンド部は、
前記アーム部先端に対して取付けられるベース部と、
前記ベース部に対して可動の少なくとも1つのリンク部と、
作業対象物の作業対象面に対する前記ベース部の接触領域における2箇所以上の点の押付力を検出するベース押付力検出部と、
前記作業対象物の前記作業対象面に対する前記リンク部の接触領域における点の押付力を検出するリンク押付力検出部と、
前記リンク部の前記ベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかを検出するリンク可動状態検出部と、
を有し、
前記アーム制御目標設定部は、前記ベース押付力検出部が検出した前記ベース部の接触領域における点の押付力と、前記リンク押付力検出部が検出した前記リンク部の接触領域における点の押付力と、リンク可動状態検出部が検出した前記リンク部の前記ベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかとに基づいて、前記アーム部の制御目標を設定する、ロボット装置。
【請求項4】
前記アーム制御目標設定部は、前記ベース部の接触領域、前記リンク部の接触領域、及び前記ベース部と前記リンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける接触圧の分布状態が目標の状態に近づくように前記アーム部の制御目標を設定する、請求項3に記載のロボット装置。
【請求項5】
前記アーム制御目標設定部は、前記ベース部の接触領域、前記リンク部の接触領域、及び前記ベース部と前記リンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかにおける接触圧の圧力重心が、前記ベース部の接触領域、前記リンク部の接触領域、及び前記ベース部と前記リンク部とを合わせた全接触領域の少なくともいずれかそれぞれにおける幾何学的重心に近づくように前記アーム部の制御目標を設定する、請求項4に記載のロボット装置。
【請求項6】
前記リンク部の制御目標を設定するリンク制御目標設定部をさらに備え、
前記リンク制御目標設定部は、前記リンク押付力検出部が検出した前記リンク部の前記接触領域における点の押付力に基づいて、前記リンク部の接触領域における点の押付力が目標値と一致するように、前記リンク部の前記ベース部に対する位置及び姿勢の少なくともいずれかを制御するように前記リンク部の前記制御目標を設定する、請求項3〜5のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項7】
前記アーム制御目標設定部は、前記アーム部の制御目標として前記アーム部の姿勢及び前記作業対象物に対して加える力の少なくともいずれかを制御目標として設定する、請求項3〜6のいずれか1項に記載のロボット装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2010−131702(P2010−131702A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309798(P2008−309798)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]