説明

ロータリキルンのシェル冷却装置及び冷却方法並びにロータリキルンの排熱回収方法

【目的】ロータリキルンのシェル全周を良好に冷却することのできる簡易構造の装置および方法を提供する。
【構成】内周面に耐火物から成るライニング層15が設けられるロータリキルンのシェル14を被覆するジャケットカバー7を備える。ジャケットカバー7は冷却空気を受け入れる導入口9と、シェル14からの放散熱により加熱された冷却空気を外部に排出するための排気口11とを有する。導入口9には送風機10が接続され、排気口11には排風機12が接続される。又、ジャケットカバー7の内周面には、フィン18が設けられる。そして、送風機10と排風機12の作動により導入口9より流入した冷却空気を、フィン18によりシェル14の外周面に沿って螺旋状に旋回させながら排気口11へと導き、シェル14からの放散熱によって加熱された高温状態の冷却空気を排気口11からジャケットカバー7の外部に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性廃材の焼却や無機質材料などの加熱、焼成に用いられるロータリキルンに係わり、特に耐火物が内張りされた金属製シェルを効果的に冷却できるようにした冷却装置及び冷却方法並びに排熱回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリキルンは内熱式と外熱式に大別されるが、内熱式のロータリキルンでは一般に円筒状を成す金属製のシェルに耐火物による内張りが施される。
【0003】
係る耐火物としては、キャスタブル耐火物、耐火モルタル、あるいはプラスチックス耐火物といった不定形耐火物のほか、粘土質レンガや高アルミナ質レンガといった定形のプレキャストブロックが用いられるが、その種の耐火物に比して金属製のシェルは熱膨張率が大きいため、シェルが250℃を超えるような高温状態に達すると、内張りされた耐火物に亀裂等が生じて耐久性を著しく損ね、最悪の場合にはライニング層が崩落するという問題があった。
【0004】
例えば、熱膨張率0.5%/1000℃(アサヒCLC−A539・REキルン用炉材)、長さ10mの耐火物の場合、平均温度を425℃とすると、その伸びL=10000×0.005×425/1000=21.25mmとなる。
【0005】
一方、熱膨張率14×10−6(SS400)、長さ10mのシェルの場合には、平均温度を250℃とすると、その伸びL=10000×250×14×10−6=35mmとなる。
【0006】
故に、両者の差(L−L)は13.75mmとなり、耐火物に亀裂が発生し易い状況となる。尚、その差がシェル長さ1mに対して1mm以下では耐火物に亀裂は生じないとされているが、金属製シェルとその内張り耐火物(ライニング層)との伸度差を1mm以下に抑えることは甚だ困難である。
【0007】
このため、従来のロータリキルンでは内張り耐火物に亀裂が発生し、これを頻繁に補修しているという実情にある。尚、耐火物の亀裂、損傷を放置して運転を続けた結果、シェル自体が熱変形を起こして運転不能な状態に陥り、シェルの部分交換を余儀なくされる状況も発生している。
【0008】
そこで、耐火物による内張りが施されたシェル(ジャケット)を環状ケーシングで包囲し、環状ケーシングの内側に形成される環状給気室に冷却空気を吹き込むと共に、その冷却空気を環状給気室の外側に形成される環状排気室内に吸い出してシェルの冷却を行うという方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0009】
【特許文献1】特許第2960163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1では外壁と多孔内壁とで構成される環状給気室に複数のチューブを放射状にして貫通せしめ、環状給気室の外壁に形成される冷却空気入口から給気室内に吹き込まれた冷却空気が上記チューブを通じて環状排気室に吸い出されるようにしている。
【0011】
このため、装置構造が非常に複雑となり、しかも給気室内に吹き込まれた冷却空気の多くはシェル(ジャケット)の外周全域に行き渡らず、冷却空気入口の付近からチューブ内を通じて排気室内に直ぐさま吸い出されてしまうので大きな冷却効果が得られないという欠点がある。
【0012】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その主たる目的はロータリキルンのシェルの全周を良好に冷却することのできる簡易構造の装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係るシェル冷却装置は、円筒状の金属製シェルの内周面に耐火物から成るライニング層を設けたロータリキルンにおいて、前記シェルを被覆するジャケットカバーと、該ジャケットカバー内に冷却空気を強制流入させるための通気手段とを備え、前記ジャケットカバーは冷却空気を受け入れる導入口と、前記シェルからの放散熱により加熱された高温状態の冷却空気を外部に排出するための排気口とを有すると共に、該ジャケットカバーの内周面には前記通気手段の作動により導入口より流入した冷却空気を前記シェルの外周面に沿って螺旋状に旋回させながら前記排気口へと導くフィンが設けられることを特徴とする。
【0014】
又、本発明に係るシェル冷却方法は、円筒状の金属製シェルの内周面に耐火物から成るライニング層を設けたロータリキルンにおいて、前記シェルを内周面にフィンをもつジャケットカバーにより被覆し、そのジャケットカバー内に冷却空気を強制流入せしめると共に、該ジャケットカバー内に流入した冷却空気を前記フィンにより前記シェルの外周面に沿って螺旋状に旋回させながら、前記シェルからの放散熱によって加熱された高温状態の冷却空気を前記ジャケットカバーの外部に排出することを特徴とする。
【0015】
特に、上記方法と並行して、ジャケットカバー内から排出された高温状態の冷却空気を、シェル内に放射するための火炎又は熱風を発生するバーナの燃焼用空気として該バーナ内に送り込むことが好ましく、これによってシェルの冷却による内張り耐火物の損傷を防止しながら、シェルからの放散熱量の有効利用を図れる。
【0016】
尚、本発明において、ロータリキルンとは処理物(内部装入物)を100〜400℃程度で乾燥させるロータリドライヤも含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るロータリキルンのシェル冷却装置によれば、シェルを被覆するジャケットカバーの内周面に、導入口から流入した冷却空気をシェルの外周面に沿って螺旋状に旋回させながら排気口へと導くフィンが設けられることから、簡易構造にしてシェルを良好に冷却し、これによりシェルの熱膨張を抑制して内張り耐火物(ライニング層)の損傷を防止することができる。
【0018】
又、本発明のシェル冷却方法では、ジャケットカバー内に流入せしめた冷却空気をフィンによりシェルの外周面に沿って螺旋状に旋回させながら、加熱された冷却空気を外部に排出することから、シェルの外周面をその全周に亘って効率よく冷却することができる。
【0019】
更に、シェルの冷却と並行して、ジャケットカバー内から排出された高温状態の冷却空気をロータリキルン内の加熱源であるバーナの燃焼用空気として該バーナ内に送り込むようにしていることから、ロータリキルンの入熱比を低減させて省エネルギー効果を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。図1において、1はやや傾斜した状態で回転自在に設けられる内熱式のロータリキルンであり、その上流側は入口フード2により閉鎖されると共に下流側は出口フード3により閉鎖される。
【0021】
4は入口フードの上部からロータリキルンの内部に挿入されるフィーダ(例えば、スクリューフィーダ)であり、このフィーダ4を通じてロータリキルン1の上流側の一端からその内部に処理物が導入される構成となっている。
【0022】
一方、出口フード3には、ロータリキルン1の上流側に向かってバーナ5が貫通状態で取り付けられ、そのバーナ5からロータリキルン1内に火炎が放射され、これによりロータリキルン1内に導入された処理物が加熱、燃焼されながら下流側に送られて出口フード3の下部から処理物の残渣あるいは焼成物が排出される構成となっている。尚、出口フード3の下端には処理物の残渣あるいは焼成物を搬送する搬出装置6が接続される。
【0023】
ここで、ロータリキルン1の外周にはそのほぼ全体を覆う鋼板製のジャケットカバー7が設けられる。尚、ロータリキルン1は、その外周に環状のドラムタイヤ8を有して該タイヤが図示せぬ転動ローラにより回転自在に支持されるのであり、このためジャケットカバー7は転動ローラに対応する位置が部分的に切り欠かれる。
【0024】
係るジャケットカバー7は、後述のシェルを冷却するシェル冷却装置を構成する非回転の構造体であり、ロータリキルン1の上流側で当該ジャケットカバー7の一端部には冷却空気(外気)を受け入れるための導入口9が形成され、その導入口9に冷却空気を強制流入せしめる送風機10(通気手段)が接続される構成としてある。送風機10は導入口9からジャケットカバー7内に冷却空気を吹き込むためのもので、これには公知のファンやブロワが用いられる。
【0025】
又、ロータリキルン1の下流側でジャケットカバー7の一端部には排気口11が形成され、その排気口11を通じてロータリキルン1からの放散熱により加熱されたジャケットカバー7内における高温状態の冷却空気が外部に排出される構成としてある。
【0026】
特に、排気口11には加熱された冷却空気をジャケットカバー7内から吸い出す排風機12(通気手段)が接続されると共に、その排風機12とバーナの空気取込口5Aがダクト13で接続され、排気口11から排出された高温状態の冷却空気がバーナ5の燃焼用空気として該バーナ内に送り込まれる構成としてある。
【0027】
これによれば、シェル温度75〜150℃で入熱比1〜3%、シェル温度150〜250℃では入熱比2〜5%の省エネルギー効果を実現できる。
【0028】
尚、排風機12は送風機10と協同して導入口9からジャケットカバー7内に冷却空気を強制流入させる働きをするが、これを省略して送風機10による冷却空気の流入圧で加熱された冷却空気を排気口11からバーナ5内に送り込むようにしたり、又は送風機10を省略して排風機12による吸引力で外部の冷却空気を導入口9からジャケットカバー7内に強制流入せしめるようにしてもよい。
【0029】
次に、図2は図1におけるX−X断面を示す。この図で明らかなように、ロータリキルン1は円筒状のシェル14の内周面に耐火物から成るライニング層15を設けて構成される。シェル14は鋼板などから成る金属製であり、その内側に設けられるライニング層15を形成する耐火物としては耐火性骨材と水硬性セメントとの混合物から成るキャスタブル耐火物、熱硬性、気硬性、乃至は水硬性の耐火モルタル、若しくはプラスチックス耐火物といった不定形耐火物のほか、プレキャストブロックが用いられる。
【0030】
尚、図2にはライニング層15の内表面を平滑面として示してあるが、その内表面をシェル14の長手方向に延びる図示せぬ谷部と山部とから成る凹凸面とし、係る谷部と山部をシェル14の周方向に交互に形成することが好ましく、これにより処理物のスリップを抑制し、ライニング層15の摩耗を抑制しながら処理物を良好に撹拌して一様な処理を施すことができる。
【0031】
一方、図2において、ジャケットカバー7はロータリキルン1と同心の円筒形であり、これによりロータリキルンのシェル14が被覆され、ジャケットカバー7の内周面とシェル14の外周面との間に冷却空気を流通させるための環状の冷却室16が形成される構成となっている。
【0032】
又、本例において、ジャケットカバー7は両側縁に鍔部17を有する一対の半割円筒体7A,7Bから成り、その両半割円筒体7A,7Bが互いの鍔部17をボルトなどで締結されることによって円筒状に結合されるようになっている。これによれば、シェル14の周りでの組み付けや解体が容易であり、後述するフィンの取り付けも分割状態で容易に行うことができる。
【0033】
特に、ジャケットカバー7に形成される導入口9と排気口11は、該ジャケットカバー7の接線方向に差し向けられると共に、ジャケットカバー7の内周面には金属の薄板などから成る上記フィン18(旋回羽根)が設けられ、このフィン18により導入口9からジャケットカバー7内に流入した冷却空気(流速3〜30m/s)がシェル14の外周面に沿って螺旋状に旋回されつつ排気口11へと導かれるようにしてある。
【0034】
尚、図示例ではフィン18の先端縁がシェル14の外周面に近接されているが、これをシェル14の外周面に摺接させるようにしてもよく、この場合には冷却空気の一部がフィン18の先端縁とシェル14の外周面との隙間を通じて直線状に流れることを防止することができる。
【0035】
又、フィン18による冷却空気の旋回方向はロータリキルン1の回転方向に対して逆向きになるよう設定することが好ましく、これによってシェル14の外周面に対する冷却空気の流速を上げてシェル14の冷却効果を一段と高めることができる。
【0036】
次に、図3及び図4はフィンの構成例を示す。これらの図で明らかなように、係るフィン18は多翼形であり、その各フィン18はジャケットカバー7の内周面にその周方向に対し斜めの状態で規則的に取り付けられる。
【0037】
このようなフィン18によれば、ジャケットカバー7内に流入した冷却空気を旋回流(スワール)としながら、ジャケットカバー7を補強するリブとしてジャケットカバー7を定形状態に保つことができる。又、上記の送風機10と排風機12の作動によりジャケットカバー7内に流入せしめられた冷却空気は、上記の如くフィン18によりシェル14回りの旋回流とされてシェル14を冷却しながら、シェル14からの熱伝達により加熱されたフィン18を冷却する働きもする。
【0038】
尚、係るフィン18を連続する螺旋羽根としてもよい。又、図3及び図4において、19は一対の半割円筒体7A,7Bを結合するべく鍔部17に穿設したボルト孔、20はジャケットカバー7の長手方向両端を閉鎖する端部プレートであり、その端部プレート20の内周縁はシェル14の外周面に近接乃至は摺接される。
【0039】
ここで、以上のようなロータリキルン1は所定方向に回転され、その内部ではバーナ5から火炎が放射されつつフィーダ4から装入される処理物の焼却、焼成処理が行われる。このため、シェル14は内部からの熱伝達により加熱されて熱膨張し、内部のライニング層15が損傷されるような事態を招く。
【0040】
そこで、ロータリキルン1による処理物の焼却、焼成処理に際しては、送風機10および排風機12を作動させる。これにより外気がシェル14を冷却する冷却空気として導入口9からジャケットカバー7内にその接線方向から強制流入される。
【0041】
すると、その冷却空気はフィン18によりシェル14の外周面に沿って螺旋状に旋回されつつ、排気口11へと導かれる。これにより、シェル14はその外周面に接触する冷却空気との熱交換で全長、全周に亘って効率よく冷却される。よって、シェル14の熱膨張が抑制され、これによるライニング層15の損傷を防止することができる。
【0042】
そして、シェル14からの放散熱により加熱された高温状態の冷却空気は、排風機12により排気口11から吸い出され、これがバーナ5の燃焼用空気としてダクト13を通じてバーナ5内に送り込まれる。これによれば、シェル14の排熱を回収して有効利用することができる。
【0043】
因みに、本発明によれば、高温状態の冷却空気を回収し、これをバーナ5内に燃焼用空気として送り込むことにより、従来においてシェル表面平均温度150〜250℃のロータリキルンで入熱比10〜17%、シェル表面平均温度75〜150℃の乾燥式ロータリキルン(ロータリドライヤ)で入熱比5〜10%であった放散熱量が、それぞれ入熱比2〜5%、1〜3%低減するという省エネルギー効果を実現することができた。
【0044】
以上、本発明について説明したが、排気口11より流出した高温状態の冷却空気はバーナ5の燃焼用空気のほか、その他の熱利用装置の予熱空気として利用することもできる。
【0045】
又、上記例ではバーナ5をロータリキルン1内に火炎放射するものとしたが、バーナ5の火炎により加熱した熱風をロータリキルン1内に放射する態様としてもよい。
【0046】
更に、上記例ではジャケットカバー7の長手方向一端部に導入口9を設けると共に、ジャケットカバー7の長手方向他端部に排気口11を設ける構成としたが、ジャケットカバー7の長手方向両端部にその接線方向に差し向けられる導入口9を設けると共に、ジャケットカバー7の中央部にその接線方向に差し向けられる排気口11を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るロータリキルンのシェル冷却装置を示す側面概略図
【図2】図1におけるX−X断面図
【図3】ジャケットカバーを部分的に破断して示した内部平面図
【図4】ジャケットカバーを部分的に破断して示した斜視図
【符号の説明】
【0048】
1 ロータリキルン
5 バーナ
7 ジャケットカバー
9 導入口
10 送風機(通気手段)
11 排気口
12 排風機(通気手段)
14 シェル
15 ライニング層
18 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の金属製シェルの内周面に耐火物から成るライニング層を設けたロータリキルンにおいて、前記シェルを被覆するジャケットカバーと、該ジャケットカバー内に冷却空気を強制流入させるための通気手段とを備え、前記ジャケットカバーは冷却空気を受け入れる導入口と、前記シェルからの放散熱により加熱された高温状態の冷却空気を外部に排出するための排気口とを有すると共に、該ジャケットカバーの内周面には前記通気手段の作動により導入口より流入した冷却空気を前記シェルの外周面に沿って螺旋状に旋回させながら前記排気口へと導くフィンが設けられることを特徴とするロータリキルンのシェル冷却装置。
【請求項2】
円筒状の金属製シェルの内周面に耐火物から成るライニング層を設けたロータリキルンにおいて、前記シェルを内周面にフィンをもつジャケットカバーにより被覆し、そのジャケットカバー内に冷却空気を強制流入せしめると共に、該ジャケットカバー内に流入した冷却空気を前記フィンにより前記シェルの外周面に沿って螺旋状に旋回させながら、前記シェルからの放散熱によって加熱された高温状態の冷却空気を前記ジャケットカバーの外部に排出することを特徴とするロータリキルンのシェル冷却方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法と並行して、ジャケットカバー内から排出された高温状態の冷却空気を、シェル内に放射するための火炎又は熱風を発生するバーナの燃焼用空気として該バーナ内に送り込むことを特徴とするロータリキルンの排熱回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−29667(P2006−29667A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208199(P2004−208199)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(398021102)株式会社木暮製作所 (2)
【Fターム(参考)】