説明

ロータリーキルン型汚泥乾燥装置とその安全停止方法

【課題】乾燥装置の汚泥乾燥運転停止時における乾燥装置内の自然発火を防止し、さらには後段に設置された熱交換器等の他の機器にも不具合を発生させることなく安全に停止工程を行うことができるロータリーキルン型汚泥乾燥装置とその安全停止方法を提供することを目的とする。
【解決手段】乾燥装置の汚泥乾燥運転停止後、回転ドラム入口側温度、該ドラム内のCO濃度、攪拌軸102若しくは回転ドラムの軸方向の熱膨張量(線膨張量)のいずれかの検知信号に基づいて、前記回転ドラム内の自然発火の有無を監視し、該回転ドラム内への窒素封入、水噴霧若しくは脱水汚泥の投入のいずれか一を行う構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーキルン型汚泥乾燥装置とその安全停止方法に係り、前記乾燥装置の汚泥乾燥運転停止時における乾燥装置内の自然発火を防止し、さらには後段に設置された熱交換器等の他の機器の損傷及び発火も防止することができるロータリーキルン型汚泥乾燥装置とその安全停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥機を備えたシステムでは、被処理物を乾燥させるための高温の燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスを乾燥機内に導入して被処理物を直接加熱若しくは間接加熱することにより被処理物を乾燥させている。このようなシステムでは、通常停止時や異常が発生した際の非常停止時にはまず被処理物の供給が停止されるが、被処理物が乾燥機内に供給されない状態で燃焼ガスが流入すると、乾燥機内が高温雰囲気となり乾燥機本体が損傷したり、機内に残る乾燥処理物が燃焼ガスに晒されることで過乾燥となり可燃性のガスが発生し、乾燥機後段で爆発したりする危険性がある。また、過乾燥となった処理物自身も自然発火し、周辺機器に重大な損傷を与える危険がある。
【0003】
このような問題を避けるため、従来は乾燥機内に燃焼ガスを供給する循環ファンの吸込みダンパを停止し、乾燥機内に流入する燃焼ガスを遮断するようにしていた。
同様の構成として特許文献1(特開2005−195278号公報)には、運転立下時において、燃焼ガスを生成する熱風炉のバーナ火炎が消えた場合に、熱風を乾燥機内に導入するための燃焼ファンの作動を停止する構成が開示されている。
【0004】
しかし近年、熱効率向上のために乾燥機の後段に熱交換器が設置されることがあり、特許文献1に記載されるように、熱交換器に導入される高温側ガスとして脱臭炉の燃焼ガスを、低温側ガスとして乾燥機からの乾燥排ガスを利用したシステムの場合、乾燥機が停止して低温側の乾燥排ガスが供給されなくなると、熱交換器が急激に温度上昇し、該熱交換器が損傷若しくは発火する惧れがあった。従って、このようなシステムの場合は、低温側の乾燥排ガスを遮断することは危険である。
【0005】
このような問題を解決するため、本件特許出願人は、特許文献2(特願2006−326254号)に記載の乾燥機を備えた熱処理システム及びその運転方法を提供している。詳しくは、乾燥機の乾燥排ガス出口側と熱交換器とが乾燥排ガス排出ラインを介して接続され、該熱交換器にて昇温された乾燥排ガスを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼炉と前記乾燥機の燃焼ガス入口側とが燃焼ガス供給ラインを介して接続され、前記熱交換器は、前記乾燥排ガスと前記燃焼ガスの少なくとも一部が導入されこれらの間で熱交換を行うようにした乾燥機を備えた熱処理システムにおいて、
前記乾燥排ガス排出ライン上に、定常運転時は開の状態に維持され前記乾燥機の停止時に閉に切り替えられる遮断ダンパを設けるとともに、前記燃焼ガス供給ライン上に、前記乾燥機の停止時に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を設けた構成としている。
【0006】
特許文献2によれば、乾燥機出口側の乾燥排ガス排出ライン上に遮断ダンパを設け、停止時に遮断ダンパを閉じることで高温の過熱ガスが乾燥機内に供給されることを防止する。これにより、乾燥機が高温化することを防止でき、乾燥機本体の損傷や乾燥機内に残留した乾燥処理物の発火を防止できる。さらに、過乾燥による可燃性ガスの大量発生を防止し、後段での爆発の危険性を防ぐことができる。さらにまた、遮断ダンパを低温の乾燥排ガス排出ラインに設置したため、高温雰囲気での使用を避けることができ、信頼性が高くかつ材料コストの安いダンパとすることができる。また、停止時に乾燥機入口側に不活性ガスを供給するようにしたため、リーク酸素により乾燥機内の酸素濃度が上昇することを防止できる。尚、システムの停止条件によっては遮断ダンパを閉じるインターロックを設けるようにしてもよい。
【0007】
【特許文献1】特開2005−195278号公報
【特許文献2】特願2006−326254号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、乾燥機を備えたシステムの問題点として、乾燥機の停止時に機内が高温となり乾燥機本体の損傷や被処理物の過乾燥による発火、さらには可燃性ガスの発生による爆発などの危険性があった。
この対策として、特許文献1に記載されるように乾燥に用いられる燃焼ガスを遮断する方法が挙げられるが、乾燥機の後段側に熱交換器を備え、低温側ガスとして乾燥排ガスを利用している場合には、乾燥排ガスの循環停止により熱交換器が高温化し、熱交換器の損傷や発火の惧れがある。
【0009】
これに対して特許文献2に記載される方法では、乾燥機が高温化することを防止でき、乾燥機本体の損傷や乾燥機内に残留した乾燥処理物の発火を防止できる。しかし、乾燥機出口側の乾燥排ガス排出ライン上に遮断ダンパを設け、停止時に遮断ダンパを閉じることで高温の過熱ガスが乾燥機内に供給されることを防止すると、一部ガスが圧力の低い入口側へ逆流する流れが生じる惧れがある。
また、通常運転時は乾燥機内の状況を乾燥機出口温度で監視するが、停止工程で乾燥機への熱風供給を停止したあとは、出口側温度だけでは乾燥機内の状況を十分把握できない可能性がある。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、乾燥装置の汚泥乾燥運転停止時における乾燥装置内の自然発火を防止し、さらには後段に設置された熱交換器等の他の機器にも不具合を発生させることなく安全に停止工程を行うことができるロータリーキルン型汚泥乾燥装置とその安全停止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、回転ドラム軸線方向に沿って挿通された汚泥撹拌軸を具えたロータリーキルン本体入口側に汚泥投入口と汚泥の乾燥に用いられる燃焼ガス導入口を、一方本体出口側に乾燥処理物排出口と、汚泥の乾燥で生じた乾燥排ガスを排出する乾燥排ガス出口を夫々設けたロータリーキルン型汚泥乾燥装置の安全停止方法において、
前記乾燥装置の汚泥乾燥運転停止後、前記回転ドラム入口側温度、該ドラム内のCO濃度、前記撹拌軸若しくは回転ドラムの軸方向の熱膨張量(線膨張量)のいずれかの検知信号に基づいて、前記回転ドラム内の自然発火の有無を監視し、該回転ドラム内への窒素封入、水噴霧若しくは脱水汚泥の投入のいずれか一を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、汚泥乾燥運転停止後、検知信号として、回転ドラム入口側温度、ドラム内のCO濃度、撹拌軸若しくは回転ドラムの軸方向の熱膨張量のいずれかを検知することで、回転ドラム内の自然発火の有無を監視することができる。これにより、回転ドラム内への窒素封入、水噴霧若しくは脱水汚泥の投入のいずれか一を行い、乾燥装置内における温度上昇を抑える処置が適切に行なうことができる。よって、乾燥装置の熱損を防止することができ、さらには後段に設置された熱交換器等の他の機器にも不具合を発生させることなく安全に停止工程を行うことができる。
【0012】
また、前記自然発火監視のための検知信号が前記回転ドラム入口側温度である前記記載のロータリーキルン型汚泥乾燥装置の安全停止方法において、
水噴霧若しくは脱水汚泥の投入のいずれか若しくは両方の選択が前記回転ドラム入口側温度の温度上昇変化率に基づいて決定されることを特徴とする。
前記回転ドラム入口側温度の温度上昇が急激な際は、水噴霧が有効であるが、急激な水蒸気の発生を伴う恐れがある。このような恐れがある場合、含水率の高い脱水汚泥を追加投入する。前記回転ドラム入口側温度の温度上昇に応じて、処置を選択する。
このように、乾燥装置の回転ドラム入口側温度の上昇変化率により、乾燥装置内における温度上昇を抑える処置を選択することで、回転ドラム内の自然発火を防止するとともに、急激な水分蒸発の危険性を防いで汚泥品温を下げることができる。
また、前記乾燥装置の汚泥乾燥運転停止が、前記汚泥投入口よりの汚泥投入停止と燃焼ガス入口よりの燃焼ガス導入停止と回転ドラムの駆動停止によって行われることを特徴とする。
【0013】
また、装置の発明として、回転ドラム軸線方向に沿って挿通された汚泥撹拌軸を具えたロータリーキルン本体入口側に汚泥投入口と汚泥の乾燥に用いられる燃焼ガス導入口を、一方本体出口側に乾燥処理物排出口と、汚泥の乾燥で生じた乾燥排ガスを排出する乾燥排ガス出口を夫々設けたロータリーキルン型汚泥乾燥装置において、
前記乾燥装置の汚泥乾燥運転停止後、前記回転ドラム入口側温度、該ドラム内のCO濃度、前記撹拌軸若しくは回転ドラムの軸方向の熱膨張量(線膨張量)のいずれかの検知信号に基づいて、前記回転ドラム内の自然発火の有無を監視する自然発火監視手段と、
該監視手段の監視結果に基づいて、該回転ドラム内への窒素封入、水噴霧若しくは脱水汚泥の投入のいずれか一を行う消炎手段とを具えたことを特徴とする。
【0014】
さらに、前記監視信号が前記回転ドラム入口側温度である前記記載のロータリーキルン型汚泥乾燥装置において、
水噴霧若しくは脱水汚泥の投入のいずれか若しくは両方の選択が前記回転ドラム入口側温度の温度上昇変化率に基づいて決定されるコントローラを具えたことを特徴とする。
これにより、上述した方法の発明と同様の効果を有する。
【発明の効果】
【0015】
以上記載のごとく本発明によれば、汚泥乾燥運転停止後、検知信号として、回転ドラム入口側温度、ドラム内のCO濃度、撹拌軸若しくは回転ドラムの軸方向の熱膨張量のいずれかを検知することで、回転ドラム内の自然発火の有無を監視することができる。これにより、回転ドラム内への窒素封入、水噴霧若しくは脱水汚泥の投入のいずれか一を行い、乾燥装置内における温度上昇を抑える処置が適切に行なうことができ、自然発火を防止することができる。また、乾燥装置の熱損を防止することができ、さらには後段に設置された熱交換器等の他の機器にも不具合を発生させることなく安全に停止工程を行うことができる。
また、乾燥装置の回転ドラム入口側温度の上昇変化率により、乾燥装置内における温度上昇を抑える処置を選択することで、回転ドラム内の自然発火を防止するとともに、急激な水分蒸発の危険性を防いで汚泥品温を下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は従来のロータリーキルン型汚泥乾燥装置を備えた熱処理システムの基本構成図、図2は実施例1に係るロータリーキルン型汚泥乾燥装置の構成図、図3は乾燥装置停止時における乾燥装置の撹拌軸伸び経時変化を示す図、図4は実施例2に係るロータリーキルン型汚泥乾燥装置の構成図である。
ここで、汚泥とは、下水汚泥、パルプスラッジ、糞尿汚泥、家畜汚泥等であり、特に脱水汚泥が好適に用いられる。
また、乾燥装置の停止時とは、汚泥投入口よりの汚泥投入停止と燃焼ガス入口よりの燃焼ガス導入停止と回転ドラムの駆動停止によるものである。また、異常時における非常停止時を含むものである。
【0017】
従来の熱処理システムは、図1に示すように、汚泥を乾燥させる乾燥機1と、乾燥機1から排出される乾燥排ガスを集塵するサイクロン2と、サイクロン2を経た乾燥排ガスを燃焼して燃焼ガスを生成する乾燥機燃焼炉3と、乾燥機1からの乾燥排ガスと乾燥機燃焼炉3からの燃焼ガスとの間で熱交換を行う循環ガス予熱器4と、該循環ガス予熱器4にて冷却された燃焼ガスを処理する排ガス処理ライン5と、を備えた構成となっている。
【0018】
乾燥機1としては、汚泥を乾燥させる構造であれば何れでもよいが、特に直接加熱式乾燥機が好ましい。一例として、図1に示すようなロータリーキルン式の乾燥機が挙げられる。これは、キルン本体101に撹拌軸102が偏芯した状態で挿設され、該撹拌軸102には複数のパドル103が設けられる。キルン本体101の一側には汚泥投入口と、他側には乾燥処理物排出口が形成されるとともに、該キルン本体101には、汚泥の乾燥に用いられる燃焼ガスを導入する燃焼ガス入口と、汚泥の乾燥で生じた乾燥排ガスを排出する乾燥排ガス出口が設けられている。キルン本体内に投入された汚泥は、高速で回転する撹拌軸102と、該撹拌軸102に対して逆方向に低速で回転するキルン本体101によりキルン内を移送されながら、燃焼ガスと接触することにより乾燥される。汚泥として下水汚泥を用いる場合には、上記した構成を有するロータリーキルン式乾燥機が適している。これは、下水汚泥の含水率によって粘度が高くなる域があるため、撹拌軸102を高速で回転することにより汚泥のキルン本体101への固着を防止できるためである。
【0019】
乾燥機燃焼炉3は、可燃性ガスを含む乾燥排ガスを燃焼させる装置であり、必要に応じて補助燃料を投入するようになっている。
循環ガス予熱器4は、乾燥機1からの乾燥排ガスが低温側ガス入口に導入され、乾燥機燃焼炉3からの燃焼ガスの少なくとも一部が高温側ガス入口に導入され、該乾燥排ガスと燃焼ガスとの間で熱交換を行う装置であり、乾燥排ガスの昇温とともに燃焼ガスの冷却を目的としている。循環ガス予熱器4は、相変化を伴わないガス−ガス熱交換器である。冷却された燃焼ガスは、原則として後段側の排ガス処理ライン5に送給される。
【0020】
排ガス処理ライン5は、少なくとも酸性ガス除去装置501を備えている。酸性ガス除去装置501は、SOやHCl等の酸性ガスを除去する装置であり、スクラバ、バグフィルタ等が挙げられる。
スクラバは、苛性ソーダ等のアルカリ剤を含む洗浄水を噴霧することによって酸性ガスを除去する。このとき排ガス温度も低下させることができる。スクラバは、SOの除去に適しているため、処理対象としては燃焼ガス中にSOが多く含まれる下水汚泥が好ましい。
【0021】
ここで、系内のガス流れを説明する。尚、ここに記載される温度は一実施例であり、これらに限定されるものではない。
乾燥機1から排出された200℃の乾燥排ガスは、乾燥ガス排出ライン31を介してサイクロン2に導かれ、該サイクロン2にて集塵された後乾燥排ガス排出ライン32を通って循環ガス予熱器4に送給される。このとき、乾燥排ガスの少なくとも一部は、循環ガスライン38を介して乾燥機の燃焼ガス入口側へ送給される。循環ガスライン38上にはダンパ46が設置され、循環ガス流量を調整することで乾燥用の燃焼ガス温度を調整するようになっている。
【0022】
循環ガス予熱器4にて550℃まで昇温された排ガスはガス送給ライン34を介して乾燥機燃焼炉3に供給され、乾燥機燃焼炉3にて燃焼脱臭される。乾燥機燃焼炉3にて生成された950℃の高温の燃焼ガスは、その少なくとも一部を乾燥用に用いる燃焼ガスとして燃焼ガス供給ライン35を通って乾燥機1に供給され、残りはガス送給ライン36を通って循環ガス予熱器4に導かれて冷却される。冷却された燃焼ガスは、循環ガス予熱器4から排出され排ガス処理ライン5へ送給される。
【0023】
乾燥ガス排出ライン32上には循環ファン44が設置され、これにより上記したようなガス流れが形成されるようになっている。このとき原則として、ファン吸込み口側のダンパ43の出力が15〜30%になるように、循環ファン44の電動機回転数をステップ制御する。
また、乾燥排ガス排出ライン32上で且つ循環ファン44より上流側には、ダンパ43が設置されている。そして、乾燥機1の乾燥排ガス出口の排ガス温度、流量に基づいてダンパ43を開度制御し、乾燥排ガスの流量を調整するようになっている。また、同様に、乾燥排ガス出口の排ガス温度、流量に基づいて誘引ファンの回転数を適宜調整するとよい。
【0024】
図1に示すような構成を有する熱処理システムにおいては、乾燥機1の停止時に高温の燃焼ガスが乾燥機内に供給されると乾燥機本体が損傷する危険が懸念される。また、乾燥機1内に残留した乾燥処理物が高温の加熱ガスに晒されることで過乾燥となり、可燃性のガスが発生し、後段で爆発する危険性がある。さらに、過乾燥となった処理物自身も発火し、周辺機器に重大な損傷を与える危険がある。
【0025】
そこで、乾燥機1の後流側で且つ循環ファン44より上流側の乾燥ガス排出ライン32上に、乾燥排ガスを遮断する遮断ダンパ41を設けた構成としている。この遮断ダンパ41は、定常運転時は開の状態に維持されるが、乾燥機1の停止時には閉に切り替えて乾燥排ガスの流れを遮断するようになっている。尚、システムの停止条件によっては遮断ダンパ41を閉じるインターロックを設けるようにしてもよい。
また、燃焼ガス供給ライン35上には不活性ガス供給手段が設けられている。この不活性ガス供給手段は、窒素ガス供給手段であることが好ましい。窒素ガス供給手段は、窒素ガス供給ライン50と、該窒素ガス供給ライン50上に設けられた遮断ダンパ51とから構成される。この遮断ダンパ51は、定常運転時は閉の状態に維持されているが、乾燥機1の停止時には遮断ダンパ51を開に切り替えられて窒素ガスを供給するようになっている。
【0026】
また、乾燥排ガス排出ライン32上の遮断ダンパ41の入口側と出口側に不活性ガスを供給する第2の不活性ガス供給手段を設けることが好ましい。この第2の不活性ガス供給手段も窒素ガス供給手段であることが好ましく、この場合窒素ガス供給ライン53と、該窒素ガス供給ライン上に設けられた遮断ダンパ54とから構成する。この遮断ダンパ54は、定常運転時は閉の状態に維持されているが、乾燥機1の停止時には遮断ダンパ54を開に切り替えて窒素ガスを供給する。
【0027】
さらに、乾燥機の停止時に酸性ガス除去装置501より下流側の燃焼ガスを循環ガス予熱器4に導入する燃焼ガス返送ライン37と、該燃焼ガス返送ライン37上に位置する遮断ダンパ42とを設けることが好ましい。そして、定常運転時には遮断ダンパ42を閉の状態に維持し、乾燥機の停止時には遮断ダンパ42を開に切り替えて、低温で且つ低酸素濃度の燃焼ガスを循環ガス予熱器4に供給する。
【実施例1】
【0028】
図2を参照して、実施例1に係るロータリーキルン型汚泥乾燥装置について説明する。尚、実施例1及び実施例2は、上述した図1の熱処理システムに基づくものであり、図1と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
図2において、ロータリーキルン型汚泥乾燥装置は、脱水汚泥を乾燥する乾燥機1を主とした装置であり、ロータリーキルン式の乾燥機を用いている。乾燥機1は、キルン本体101に撹拌軸102が偏芯した状態で挿設され、該撹拌軸102には複数のパドル103が設けられる。キルン本体101の一側には汚泥投入口と、他側には乾燥処理物排出口が形成されるとともに、該キルン本体101には、汚泥の乾燥に用いられる燃焼ガスを導入する燃焼ガス入口と、汚泥の乾燥で生じた乾燥排ガスを排出する乾燥排ガス出口が設けられている。キルン本体内に投入された汚泥は、高速で回転する撹拌軸102と、該撹拌軸102に対して逆方向に低速で回転するキルン本体101によりキルン内を移送されながら、燃焼ガスと接触することにより乾燥される。乾燥排ガスは、乾燥排ガス出口より乾燥ガス排出ライン31を介してサイクロン2(図1)に導かれる。
また、燃焼ガス供給ライン35上には不活性ガス供給手段が設けられている。この不活性ガス供給手段は、窒素ガス供給手段であることが好ましい。窒素ガス供給手段は、窒素ガス供給ライン50と、該窒素ガス供給ライン50上に設けられた遮断ダンパ51とから構成される。この遮断ダンパ51は、定常運転時は閉の状態に維持されているが、乾燥機1の停止時には遮断ダンパ51を開に切り替えられて窒素ガスを供給するようになっている。
【0029】
また、乾燥機1は、回転ドラム入口側温度(乾燥機入口部温度)を検知する乾燥機入口部温度計12と、回転ドラム出口側温度(乾燥機出口部温度)を検知する乾燥機出口部温度計(不図示)と、乾燥機内のCO濃度を検知するCO濃度計13と、撹拌軸102の熱伸びを計測する撹拌軸伸び計測装置14を備えている。なお、乾燥機入口部温度計12は乾燥機入口部の固定端面の燃焼ガス導入口内部に温度計を設置することで、乾燥機内部の温度を検知する事が可能である。また、回転ドラム入口側の外側でも内側でも設置可能であるが、回転ドラム内側に設置するとドラム内の汚泥による影響が懸念されるためドラム外側が好ましい。乾燥機への熱風供給を停止し、乾燥装置の停止時では、出口側温度だけでは乾燥機内の状況を十分把握できないため、入口側温度を計測し、乾燥機内の状況または自然発火の有無を監視する。
また、撹拌軸伸び計測装置14により撹拌軸102の熱伸びを監視しているが、回転ドラムの熱伸びを監視してもよい。また目視による監視でもよい。
【0030】
ここで、図3に乾燥装置停止時における乾燥装置の撹拌軸伸び経時変化を示す。図3に示すように、乾燥装置停止時において、乾燥機内の温度低下に伴い撹拌軸伸びも少なくなっていくことがわかる。このように、乾燥機入口部温度、乾燥機出口部温度とともに、撹拌軸の熱伸びを監視することは、乾燥機内の温度上昇、自然発火の有無を検知することに有効である。
【0031】
図2において、汚泥投入口よりの汚泥投入停止と、遮断ダンパ41を遮断して燃焼ガス入口よりの燃焼ガス導入停止と、回転ドラムの駆動停止によって乾燥装置が汚泥乾燥運転を停止すると、乾燥機内の乾燥汚泥の品温が高い場合、乾燥機内の乾燥汚泥が自然発火する場合がある。そこで、自然発火を検知するために、回転ドラム入口側温度と、乾燥機内のCO濃度、熱伸びを計測して自然発火の有無を監視する。自然発火を検知した場合は、例えば警報(不図示)を発報し、乾燥機1内に窒素ガスを供給したり、水噴霧を行なったりする。水噴霧は、回転ドラム入口側温度の温度上昇が急激な際は、有効な手段である。しかし、高温の乾燥機内で水を噴霧すると水蒸気が急激に発生するという恐れがある。
【0032】
そこで、水蒸気が急激に発生する恐れがある場合、含水率の高い脱水汚泥を追加投入する。含水率が高い脱水汚泥を追加投入することで、急激な水分蒸発を伴わずに乾燥機内の温度を下げることができ、また汚泥品温を下げることができる。なお、このとき投入する脱水汚泥は常温である。また、転ドラム入口側温度の温度上昇に基づいて水噴霧+脱水汚泥の両方を投入することも可能である。
このように、乾燥装置の回転ドラム入口側温度の上昇変化率により、乾燥装置内における温度上昇を抑える処置を選択することで、回転ドラム内の自然発火を防止するとともに、急激な水分蒸発の危険性を防いで汚泥品温を下げることができる。これは、乾燥装置の熱損を防止することができ、さらには後段に設置された熱交換器等の機器の不具合防止にもつながる。
【実施例2】
【0033】
次に、図4を参照して、実施例2に係るロータリーキルン型汚泥乾燥装置について説明する。なお、実施例1と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
図4において、ロータリーキルン型汚泥乾燥装置は、脱水汚泥を乾燥する乾燥機1を主とした装置であり、ロータリーキルン式の乾燥機を用いている。乾燥機1は、キルン本体に撹拌軸102が偏芯した状態で挿設され、該撹拌軸102には複数のパドルが設けられる。キルン本体の一側には汚泥投入口と、他側には乾燥処理物排出口が形成されるとともに、該キルン本体には、汚泥の乾燥に用いられる燃焼ガスを導入する燃焼ガス入口と、汚泥の乾燥で生じた乾燥排ガスを排出する乾燥排ガス出口が設けられている。キルン本体内に投入された汚泥は、高速で回転する撹拌軸102と、該撹拌軸102に対して逆方向に低速で回転するキルン本体によりキルン内を移送されながら、燃焼ガスと接触することにより乾燥される。乾燥排ガスは、乾燥排ガス出口より乾燥ガス排出ライン31を介してサイクロン2(図1)に導かれる。
また、燃焼ガス供給ライン35上には不活性ガス供給手段が設けられている。この不活性ガス供給手段は、窒素ガス供給手段であることが好ましい。窒素ガス供給手段は、窒素ガス供給ライン50と、該窒素ガス供給ライン50上に設けられた遮断ダンパ51とから構成される。この遮断ダンパ51は、定常運転時は閉の状態に維持されているが、乾燥機1の停止時には遮断ダンパ51を開に切り替えられて窒素ガスを供給するようになっている。
【0034】
また、乾燥機1は、回転ドラム入口側温度(乾燥機入口部温度)を検知する乾燥機入口部温度計12と、回転ドラム出口側温度(乾燥機出口部温度)を検知する乾燥機出口部温度計(不図示)と、乾燥機内のCO濃度を検知するCO濃度計13と、撹拌軸102の熱伸びを計測する撹拌軸伸び計測装置14を備えている。なお、乾燥機入口部温度計12は乾燥機入口部の固定端面の燃焼ガス導入口内部に温度計を設置することで、乾燥機内部の温度を検知する事が可能である。また、回転ドラム入口側の外側でも内側でも設置可能であるが、回転ドラム内側に設置するとドラム内の汚泥による影響が懸念されるためドラム外側が好ましい。乾燥機への熱風供給を停止し、乾燥装置の停止時では、出口側温度だけでは乾燥機内の状況を十分把握できないため、入口側温度を計測し、乾燥機内の状況または自然発火の有無を監視する。
また、実施例1と同様に、撹拌軸伸び計測装置14により撹拌軸102の熱伸びを監視しているが、回転ドラムの熱伸びを監視してもよい。また目視による監視でもよい。
【0035】
また実施例1と同様に、自然発火を検知するために、回転ドラム入口側温度と、乾燥機内のCO濃度、熱伸びを計測して自然発火の有無を監視する。自然発火を検知した場合は、例えば警報(不図示)を発報し、乾燥機1内に窒素ガスを供給したり、水噴霧を行なったりする。また、水蒸気が急激に発生する恐れがある場合、含水率の高い脱水汚泥を追加投入する。さらに、回転ドラム入口側温度の温度上昇に基づいて水噴霧+脱水汚泥の両方を投入することも可能である。
【0036】
図4では、上述した構成の他に、回転ドラム入口側温度の温度上昇に基づいて水噴霧若しくは脱水汚泥の投入のいずれか若しくは両方の選択を決定するコントローラ15と、コントローラ15により乾燥機1内に水噴霧量を制御するモータ16と、乾燥機1内に水を噴霧するポンプ17と、コントローラ15により乾燥機1内に脱水汚泥量を制御するモータ19と、モータ19をON/OFFして汚泥を乾燥機1内に投入するスクリューフィーダ20で構成されている。
コントローラ15により回転ドラム入口側温度の温度上昇に基づいて水噴霧若しくは脱水汚泥の投入のいずれか若しくは両方の選択を決定し、乾燥装置の回転ドラム入口側温度の上昇変化率により、乾燥装置内における温度上昇を抑える処置を選択することで、回転ドラム内の自然発火を防止するとともに、急激な水分蒸発の危険性を防いで汚泥品温を下げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、ロータリーキルン型汚泥乾燥装置とその安全停止方法に係り、前記乾燥装置の汚泥乾燥運転停止時における乾燥装置内の自然発火を防止し、さらには後段に設置された熱交換器等の他の機器の損傷及び発火も防止することができるロータリーキルン型汚泥乾燥装置とその安全停止方法として有益である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来のロータリーキルン型汚泥乾燥装置を備えた熱処理システムの基本構成図である。
【図2】実施例1に係るロータリーキルン型汚泥乾燥装置の構成図である。
【図3】乾燥装置停止時における乾燥装置の撹拌軸伸び経時変化を示す図である。
【図4】実施例2に係るロータリーキルン型汚泥乾燥装置の構成図である。
【符号の説明】
【0039】
1 乾燥機
2 サイクロン
3 乾燥機燃焼炉
4 循環ガス予熱器
5 排ガス処理ライン
12 乾燥機入口部温度計
13 CO濃度計
14 撹拌軸伸び計測装置
15 コントローラ
31 乾燥排ガス排出ライン
35 燃焼ガス供給ライン
38 乾燥排ガス循環ライン
41 遮断ダンパ
50、53 窒素ガス供給ライン
102 撹拌軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ドラム軸線方向に沿って挿通された汚泥撹拌軸を具えたロータリーキルン本体入口側に汚泥投入口と汚泥の乾燥に用いられる燃焼ガス導入口を、一方本体出口側に乾燥処理物排出口と、汚泥の乾燥で生じた乾燥排ガスを排出する乾燥排ガス出口を夫々設けたロータリーキルン型汚泥乾燥装置の安全停止方法において、
前記乾燥装置の汚泥乾燥運転停止後、前記回転ドラム入口側温度、該ドラム内のCO濃度、前記撹拌軸若しくは回転ドラムの軸方向の熱膨張量(線膨張量)のいずれかの検知信号に基づいて、前記回転ドラム内の自然発火の有無を監視し、該回転ドラム内への窒素封入、水噴霧若しくは脱水汚泥の投入のいずれか一を行うことを特徴とするロータリーキルン型汚泥乾燥装置の安全停止方法。
【請求項2】
前記自然発火監視のための検知信号が前記回転ドラム入口側温度である請求項1記載のロータリーキルン型汚泥乾燥装置の安全停止方法において、
水噴霧若しくは脱水汚泥の投入のいずれか若しくは両方の選択が前記回転ドラム入口側温度の温度上昇変化率に基づいて決定されることを特徴とするロータリーキルン型汚泥乾燥装置の安全停止方法。
【請求項3】
前記乾燥装置の汚泥乾燥運転停止が、前記汚泥投入口よりの汚泥投入停止と燃焼ガス入口よりの燃焼ガス導入停止と回転ドラムの駆動停止によって行われることを特徴とする請求項1記載のロータリーキルン型汚泥乾燥装置の安全停止方法。
【請求項4】
回転ドラム軸線方向に沿って挿通された汚泥撹拌軸を具えたロータリーキルン本体入口側に汚泥投入口と汚泥の乾燥に用いられる燃焼ガス導入口を、一方本体出口側に乾燥処理物排出口と、汚泥の乾燥で生じた乾燥排ガスを排出する乾燥排ガス出口を夫々設けたロータリーキルン型汚泥乾燥装置において、
前記乾燥装置の汚泥乾燥運転停止後、前記回転ドラム入口側温度、該ドラム内のCO濃度、前記撹拌軸若しくは回転ドラムの軸方向の熱膨張量(線膨張量)のいずれかの検知信号に基づいて、前記回転ドラム内の自然発火の有無を監視する自然発火監視手段と、
該監視手段の監視結果に基づいて、該回転ドラム内への窒素封入、水噴霧若しくは脱水汚泥の投入のいずれか一を行う消炎手段と、を具えたことを特徴とするロータリーキルン型汚泥乾燥装置。
【請求項5】
前記監視信号が前記回転ドラム入口側温度である請求項4記載のロータリーキルン型汚泥乾燥装置において、
水噴霧若しくは脱水汚泥の投入のいずれか若しくは両方の選択が前記回転ドラム入口側温度の温度上昇変化率に基づいて決定されるコントローラを具えたことを特徴とするロータリーキルン型汚泥乾燥装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−204265(P2009−204265A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48881(P2008−48881)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】