説明

ローラの製造方法及びその製造装置

【課題】ローラ表面と金型内面及び端部が擦れることを防止し、表面欠陥のないローラを容易に得ることのできるローラの製造方法及びその製造装置を提供する。
【解決手段】金型12内に芯軸14を同軸に配置する工程と、金型12と芯軸14との間に液状ゴムを注入後硬化することにより、芯軸14上にゴム層16を有するローラ18を成型する工程と、金型12とゴム層16との間に液膜20を形成した状態で、ローラ18を金型12から引き抜く工程とを備えた。金型12からローラ18を引き抜く際に、金型12とゴム層16との間に液膜20を形成することにより、ローラ18表面が金型12内面に擦れることがないので、ゴム表面に欠陥のないローラ18を容易に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にOA機器等の定着部や転写部に利用される大口径ローラの製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、OA機器等についても高速化、高画質化の要求が大きく、ローラの外径が60mm以上と大口径の傾向にある。また、従来よりもローラ表面の鏡面性の要求が高くなっている。ローラの離型層としては従来から離型用オイルを含浸させたシリコーンゴム、フッ素塗料をコーティング成型した膜等があるが、離型性及び耐久性を両立させる材料としては最外層にPFAチューブ(フッ素樹脂チューブ)を設けることが最も適している。PFAチューブを利用したローラの製造方法のうち、金型の内面にPFAチューブをセットし、金型と同軸上に芯軸を配置した後、芯軸とPFAチューブを介した金型との間に液状ゴムを注入し、加熱することでローラを一体成型するローラ製造方法がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平04−168040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来の製造方法においては、ローラを一体成型した後に金型から離型する際に、ローラ表面と金型内面及び端部が擦れることにより、ローラ表面に擦り傷等の表面欠陥を生じてしまうという問題があった。また、従来のこの種ローラの製造技術ではローラを金型から離型する際に、冷却に利用した水が金型とローラとの隙間に僅かながら浸透していることを利用していた。しかし、この方法では金型とローラ間にある水の量が必ずしも十分ではなく、ローラと金型の間に水の存在しない部分がある。この水が存在しない部分では金型内面とローラ表面の擦れが生じ、離型の際に擦り傷を発生する原因となっていた。
【0004】
本発明は以上の点に着目してなされたもので、ローラ表面と金型内面及び端部が擦れることを防止し、表面欠陥のないローラを容易に得ることのできるローラの製造方法及びその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
金型内に芯軸を同軸に配置する工程と、上記金型と上記芯軸との間に液状ゴムを注入後硬化して上記芯軸上にゴム層を有するローラを成型する工程と、上記金型と上記ゴム層との間に液膜を形成した状態で、上記ローラを上記金型から引き抜く工程とを備えたことを特徴とするローラの製造方法。
【0006】
金型からローラを引き抜く際に、金型とゴム層との間に液膜を形成することにより、ローラ表面が金型内面に擦れることがないので、ゴム表面に欠陥のないローラを容易に得ることができる。また、液膜が非圧縮体であることにより、ゴム層の弾力に抗して金型との間に液膜が着実に形成され、ローラをスムーズに引き抜くことができる。
【0007】
〈構成2〉
フッ素樹脂チューブを金型の内面に装着する工程と、上記金型内に芯軸を同軸に配置する工程と、上記金型と上記芯軸との間に液状ゴムを注入後硬化して上記芯軸上にゴム層とフッ素樹脂チューブを有するローラを成型する工程と、上記金型と上記フッ素樹脂チューブとの間に液膜を形成した状態で上記ローラを上記金型から引き抜く工程とを備えたことを特徴とするローラの製造方法。
【0008】
最外層にフッ素樹脂チューブを有するローラの製造に際しても、金型からローラを離型する際に、金型とフッ素樹脂チューブとの間に液膜を形成することにより、フッ素樹脂チューブ表面に欠陥のないローラを容易に得ることができる。
【0009】
〈構成3〉
構成1又は2に記載のローラの製造方法において、上記液膜は水流により形成される水膜であることを特徴とするローラの製造方法。
【0010】
水流を利用することにより、簡易に水膜を形成でき、かつ後処理も簡単である。
【0011】
〈構成4〉
直立に配置された円筒形の金型と、上記金型内に同軸に配置されてローラのゴム層を形成するための空間を設ける芯軸と、下面と上記空間とに開口するゴム注入孔を有し、上記金型の下部に嵌合されて上記芯軸の下端を保持する下部栓体と、上記金型の上部に嵌合されて上記芯軸の上端を保持する上部栓体と、上記金型とローラ最外層との間に液膜を形成する液噴射ノズルとを備えたことを特徴とするローラの製造装置。
【0012】
液噴射ノズルで金型とローラ最外層との間に液膜を形成することにより、ローラ最外層の表面に欠陥のないローラを容易に得ることができる。
【0013】
〈構成5〉
構成4に記載のローラの製造装置において、上記液噴射ノズルは、金型下端近傍の周囲に複数本が分散配置され、かつそれぞれの噴射口が上記金型と上記ローラ最外層との境界線に向う姿勢で固定されたものであることを特徴とするローラの製造装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、金型と同軸上に芯軸を配置した後、芯軸と金型との間に液状ゴムを注入し、加熱することでローラを成型する製造方法において、ローラを成型後金型から引き抜く際に、ローラ外表面と金型内面の間に強制的に液膜を形成することにより、ローラ外表面と金型内面及び端部が擦れることを防止し、表面欠陥のないローラを容易に得ることのできるものである。
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜図4は実施例1のローラの製造方法の各工程の説明図である。
先ず、図1に示すように、内径70.1mmの金型12の内面に、厚さ50μmのPFAチューブ(フッ素樹脂チューブ)13を挿入しその両端部を金型12の端部に沿わせて外側に折り返して金型12の内面に装着した。この後、PFAチューブ13の内面にプライマーを塗布、乾燥させた。
【0016】
次に、図2に示すように、金型12の一端に下部栓体15を被せて密閉し、この密閉端側を下側にして、外周面にプライマーを塗布、乾燥させた芯軸14(外径67mm)を金型12内に同軸に配置した。金型12の上端に上部栓体17を被せて金型12内を密閉した。下部栓体15に設けられたゴム注入孔15Aから芯軸14とPFAチューブ13との間に液状ゴムを注入した後、常法により加熱、硬化させ、芯軸14上にゴム層16とPFAチューブ13とを有するローラ18を一体成型した。
【0017】
このようにして成型されたローラ18を金型12からスムーズに取り出すために、図3に示すように、金型12の下端近傍の周囲に、ローラと金型との隙間に水流を生じさせるための液噴出ノズル24を8個設置した。
これらの液噴出ノズル24は、図3(a)に示すように、金型12の下端部から約30mmの距離を置き、かつ芯軸14に対して45度の角度で配置され、かつそれぞれの噴射口が金型とローラ最外層との境界線26に向う姿勢で固定されたものである。
【0018】
8個の液噴出ノズル24は、図3(b)に示すように、円周方向に等間隔で設置した。この時、金型12の端部と液噴出ノズル24の先端との距離が長くなると液膜を形成する効果が低くなるため、金型12の端部と液噴出ノズル24の先端との距離は一定となるように配置した。なお、図示しないが、8個の液噴出ノズル24は、それぞれホースを介して1つのポンプ及び液圧調整装置に接続され、適宜コントロールされて液噴射できるようにされている。
【0019】
各液噴出ノズル24から水を1MPaの圧力で噴出させ、図4に示すようにローラ18と金型12の間に水流膜(液膜)20を形成した。この水流膜20を形成した状態で、液噴出ノズル24のある側(下方)に向ってローラ18を金型12から引き出したところ、外表面に擦れ傷等のないローラを得ることができた。
【0020】
なお、液噴出ノズル24は、ローラ18を液噴出ノズル24のある側に抜き取るため、ローラ18と接触しないように配置されるようにする。液噴出ノズル24より水を噴出するとローラ18と金型12の間に水の膜が形成されるが、この水の膜がローラ18の外表面の保護層の役割を果たす。このため、金型12からローラ18を抜き取る際に、ローラ18外表面が擦れることがなく、擦り傷等の表面欠陥のないローラを得ることができる。
【0021】
なお、液噴出ノズル24を設けること以外は、上記実施例と同じ条件でローラを成型して金型から取り出したところ、金型と擦れたものと推定される擦れ傷がローラ表面に発生した。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1のローラの製造方法において、フッ素樹脂チューブを金型内面に装着した状態の説明図である。
【図2】同方法において、金型内に液状ゴムを注入した後、常法により加熱、硬化させる状態の説明図である。
【図3】同方法において、ローラと金型との隙間に液膜を生じさせる液噴出ノズルの説明図である。
【図4】図3(a)のA部を拡大して示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
12 金型
13 フッ素樹脂チューブ
14 芯軸
15 下部栓体
16 ゴム層
17 上部栓体
18 ローラ
20 液膜
24 液噴射ノズル
26 境界線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内に芯軸を同軸に配置する工程と、
前記金型と前記芯軸との間に液状ゴムを注入後硬化して前記芯軸上にゴム層を有するローラを成型する工程と、
前記金型と前記ゴム層との間に液膜を形成した状態で、前記ローラを前記金型から引き抜く工程とを備えたことを特徴とするローラの製造方法。
【請求項2】
フッ素樹脂チューブを金型の内面に装着する工程と、
前記金型内に芯軸を同軸に配置する工程と、
前記金型と前記芯軸との間に液状ゴムを注入後硬化して前記芯軸上にゴム層とフッ素樹脂チューブを有するローラを成型する工程と、
前記金型と前記フッ素樹脂チューブとの間に液膜を形成した状態で前記ローラを前記金型から引き抜く工程とを備えたことを特徴とするローラの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のローラの製造方法において、
前記液膜は水流により形成される水膜であることを特徴とするローラの製造方法。
【請求項4】
直立に配置された円筒形の金型と、
前記金型内に同軸に配置されてローラのゴム層を形成するための空間を設ける芯軸と、
下面と前記空間とに開口するゴム注入孔を有し、前記金型の下部に嵌合されて前記芯軸の下端を保持する下部栓体と、
前記金型の上部に嵌合されて前記芯軸の上端を保持する上部栓体と、
前記金型とローラ最外層との間に液膜を形成する液噴射ノズルとを備えたことを特徴とするローラの製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載のローラの製造装置において、
前記液噴射ノズルは、金型下端近傍の周囲に複数本が分散配置され、かつそれぞれの噴射口が前記金型と前記ローラ最外層との境界線に向う姿勢で固定されたものであることを特徴とするローラの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−49633(P2008−49633A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230038(P2006−230038)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(306013119)昭和電線デバイステクノロジー株式会社 (118)
【Fターム(参考)】