説明

ローラーの成型冶具及び製造方法

【課題】温度分布が安定で昇温時間が短い、小型・軽量のローラー成型冶具を提供することによって、安定した発泡ローラー成型の実現を目的とする。
【解決手段】ローラー形状をしたキャビティを有し、且つ芯材を支持する少なくとも2つの駒が両端に取り付けられたパイプ金型と、該パイプ金型の断面形状を有する少なくとも1つの穴を備え、且つ該穴に該パイプ金型が挿入される成型冶具本体と、を有し、該パイプ金型が該成型冶具本体に少なくとも2つ組み込まれていることで、ローラーを多数個取り出すことが出来る、芯材とゴム材で構成され加熱硬化して成型されるローラーの成型冶具であって、該パイプ金型は、該ローラ成型冶具本体の該穴に嵌め合い挿入して固定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡ローラー成型時に使用する成型冶具、及びローラー製造方法に関する。詳しくは、複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置や静電記録装置に使用される円筒状のスポンジ材と芯材からなる発泡ローラー成型時に使用する成型冶具、及びローラー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡ローラーの成型は、パイプ金型を使用し、円筒形状の穴を有する熱板もしくは加熱された成型冶具に該パイプ金型を挿入する、又は半円でくり抜かれた金属片を対に配置し該パイプ金型を挟みこんで加熱し成型する方法を用いていた。
【0003】
従来の方法において用いられたローラー成型冶具を、図2を参照して説明する。図2(a)で示されているのは、パイプ金型2’の外径より大きい穴加工を施した成型冶具本体1にパイプ金型2’を挿入するタイプの成型冶具である。図2(b)で示されているのは、成型冶具本体1を掘り込み加工し、可動部11を設置することでパイプ金型2’を挟み込むタイプの成型冶具である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述した方法では、パイプ金型を熱盤もしくは成型冶具に出し入れする観点から、金型や成型冶具の剛性を強くすることが求められる。そのために金型や成型冶具が大きくなり、従ってそれらを搬送する装置も巨大化する傾向があった。また、温度分布の安定性や昇温時間が長い等の課題もあった。
【0005】
具体的に説明すると、図2(a)では、パイプ金型2’を出し入れする時の成型冶具本体1との磨耗対策から、成型冶具本体1のパイプ金型2’挿入用の穴径をパイプ金型2’外径よりも大きくしてある。これにより成型冶具1とパイプ金型2’の接触面積が減るため、効率的に加熱を行うことが困難であった。図2(b)では、パイプ金型2’を成型冶具可動部11により挟み込むため、効率的に加熱出来る反面、可動部11の可動スペースを確保することが求められる。そのために、成型冶具1が大きくなってしまう欠点があった。また、図2(a)又は(b)のどちらにしても、パイプ金型2’を出し入れするために強度を上げることが求められ、それによってパイプ金型2’の肉厚が厚くなり、更には成型冶具本体1が大きくなった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決し、小型・軽量の成型冶具を提供することによって、安定した発泡ローラー成型の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ローラー形状をしたキャビティを有し、且つ芯材を支持する少なくとも2つの駒が両端に取り付けられたパイプ金型と、該パイプ金型の断面形状を有する少なくとも1つの穴を備え、且つ該穴に該パイプ金型が挿入される成型冶具本体と、を有し、該パイプ金型が該成型冶具本体に少なくとも2つ組み込まれていることで、ローラーを多数個取り出すことが出来る、芯材とゴム材で構成され加熱硬化して成型されるローラーの成型冶具であって、該パイプ金型は、該ローラ成型冶具本体の該穴に嵌め合い挿入して固定されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、ローラーの成型冶具内に挿入されたパイプ金型内部に芯材を設置し、駒によって該芯材を固定する第1工程と、該芯材が固定された該成型冶具を予熱する第2工程と、該パイプ金型内に発泡材料を注入する第3工程と、該パイプ金型内で発泡した該発泡材料を加熱硬化し、該パイプ金型より脱型する第4工程と、を有するローラーの製造方法であって、該成型冶具には、該パイプ金型が嵌め合い挿入で取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従うことで、成型冶具が小型・軽量化し、それによって装置全体を小型化することが出来る。また、成型冶具の温度分布を良くすることで、昇温時間の短縮をすることが出来る。更には、成型冶具の温度が安定しているため、成型されるローラーの物性を安定させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るローラー成型冶具及び発泡ローラーの実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明のローラー成型冶具の概略図である。図1(a)は成型冶具の本体に穴加工をして、パイプ金型を挿入・固定した場合の、図1(b)は成型冶具の本体に直接ローラーキャビティとなる穴を加工した場合の成型冶具断面の概略図である。
【0012】
図1(a)の場合、成型冶具の本体1に穴加工し、ローラーキャビティを有した、肉厚が内径の7.5から45%のパイプ金型2を隙間嵌めにて該成型冶具本体1に挿入し固定する。パイプ金型2の長手方向と垂直な平面上におけるパイプ金型2の肉厚が、パイプ内径の7.5%より小さいの場合では必要強度を維持することが困難であり、45%より大きい場合では該パイプ金型及び該成型冶具本体が巨大化してしまう。そのため、パイプ金型2の肉厚はパイプ内径の7.5から45%の範囲にあることが好ましい。また、パイプ金型2を成型冶具本体1に挿入及び固定するときの嵌め合い公差は、JIS規格でH7g7等級以上とする。嵌め合い公差のJIS規格の定義は「JISB0401」による。嵌め合い公差がJIS規格でH7g7等級より小さい場合、該成型冶具本体1と該パイプ金型2の隙間が大きくなるため、該パイプ金型2の加熱が十分に出来ず、温度ムラが生じやすい。H7g7等級以上とすることで、該パイプ金型2と該成型冶具本体1の隙間を減らし、効率よく加熱することが出来る。また、成型冶具本体1が補強の役割を果たし、パイプ金型2に関して薄肉でありながら十分な必要強度を確保出来る。
【0013】
図1(b)の場合、少なくともパイプ金型の肉厚分、成型冶具本体1の幅寸法を小さく出来る。成型冶具本体1の長手方向と垂直な平面上における成型冶具本体1の肉厚は、材質及び大きさ、該成型冶具の使い方にもよるが、強度を考慮して選定する必要があり、一般的には2mm以上とすることが好ましい。
【0014】
図1(a)又は(b)のどちらにしても、成型冶具1が小型・軽量化出来ることから昇温時間の短縮や温度分布の安定を得ることが出来る。また、成型冶具1の搬送装置も小型化出来る。更には、温度分布が安定していることから、成型される発泡ローラーを常に安定して成型することが出来る。
【実施例】
【0015】
以下、本発明による実施例を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0016】
製作したローラー成型冶具は、幅150mm×縦400mm×高さ34mmの直方体(一部凹凸形状あり)の成型冶具本体にパイプ金型挿入用のφ20H7(JIS)穴を4箇所加工したものである(4個取り冶具仕様である)。そして、パイプ金型(外径φ20g6(JIS)mm、内径φ13mm、長さ250mm)の両端に芯材を支持する駒を設置するためにテーパー加工を施し、該成型冶具に挿入し、止めネジにより固定した。該パイプ金型の肉厚最小部は1mmである。成型冶具本体のパイプ金型挿入用穴とパイプ金型との嵌め合い公差はH7g6(JIS)とした。成型冶具本体の材質はアルミニウムA2017(一部異材質)を使用した。パイプ金型の材質はSUSを使用した。
【0017】
従来のパイプ金型と比べると、肉厚が約25%減であり、質量では55%減となった。成型冶具本体では従来と比べ質量で65%減となり、大幅な小型・軽量化を実現した。また、該成型冶具の搬送機構に至っても成型冶具の小型・軽量に伴い、小型化することが出来るため、装置全体としての小型・低コスト化を実現した。
【0018】
温度特性については、パイプ金型を成型冶具本体と嵌め合い嵌合にしているため、効率良く熱を伝えることが出来、従来タイプ(図2b)と比べて昇温時間を60%短縮することが出来た(常温25℃から60℃までの昇温時間にて比較)。これにより装置立上げ時間が大幅に短縮出来るとともに、成型冶具の加熱(予熱)時間を短縮することが出来るため、装置の加熱ユニットを減らすことができた。
【0019】
次に、成型する発泡ローラーの材料と成形条件、製造の手順を示す。
【0020】
図3に示す形状をした発泡ローラーを成型した。成型した発泡ローラーの芯材部はφ5mm、全長260mmであり、発泡ゴム部はφ13mm、全長220mmである。
【0021】
発泡ゴム部の材料であるが、材料混合ポリオールとして、FA−908を100重量部、ジエタノールアミンを0.5重量部、L5366を1重量部、ToyoCat−ETを0.1重量部、TEDA−L33を0.5重量部、水(発泡剤)2重量部を混合した。前記FA−908は、三洋化成株式会社製ポリエーテルポリオールである。前記L5366は、日本ユニカー株式会社製シリコーン系整泡剤である。前記ToyoCat−ETは、東ソー株式会社製第3級アミン触媒である。前記TEDA−L33は、東ソー株式会社製第3級アミン触媒である。その後、T80(三井武田ケミカル株式会社製イソシアネート、NCO%=48)29.5重量部、M200(三井武田ケミカル株式会社製イソシアネート、NCO%=31)7.4部とをNCOインデックス100となるように混合攪拌したものを発泡材料とした。
【0022】
上記の成型冶具内のパイプ金型内面部にシリコンオイル離型剤を塗布し、該パイプ金型内に該芯材を設置し、該パイプ金型両端部にて該芯材を把持する駒により該芯材を固定した。この状態の該成型冶具を65℃に温度制御された熱盤にて挟み込み予熱した。その後、混合攪拌した該発泡材料を65℃に予熱した液受けカップに吐出し、該成型冶具と組付けた。その際、液受けカップに吐出した上記成型材料が発泡材料であることから、充填口を介して自然発泡によりパイプ金型内は上記材料で充填される。その後、10分間、65℃に温度制御された熱盤において硬化させ、脱型し、発泡ローラーを得た。
【0023】
本実施例の成型冶具を使用することで、熱が均一にパイプ金型に伝わるため、発泡ゴム部の硬化が均一及び良好となり、セルが均一で発泡ゴム部の歪みが少ない発泡ローラーを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のローラー成型冶具の断面図。
【図2】従来のローラー成型冶具の断面図。
【図3】発泡ローラーの概略図。
【符号の説明】
【0025】
1 本発明のローラー成型冶具本体
2 本発明のパイプ金型
2’ 従来のパイプ金型
11 従来のローラー成型冶具(可動部)
20 発泡ゴム
21 芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラー形状をしたキャビティを有し、且つ芯材を支持する少なくとも2つの駒が両端に取り付けられたパイプ金型と、該パイプ金型の断面形状を有する少なくとも1つの穴を備え、且つ該穴に該パイプ金型が挿入される成型冶具本体と、を有し、該パイプ金型が該成型冶具本体に少なくとも2つ組み込まれていることで、ローラーを多数個取り出すことが出来る、芯材とゴム材で構成され加熱硬化して成型されるローラーの成型冶具であって、
該パイプ金型は、該ローラ成型冶具本体の該穴に嵌め合い挿入して固定されることを特徴とするローラー成型冶具。
【請求項2】
前記成型冶具と前記パイプ金型の嵌め合い公差が、JIS規格でH7g7等級以上であることを特徴とする請求項1に記載のローラー成型冶具。
【請求項3】
嵌め合い挿入する前記パイプ金型の肉厚が、該パイプ金型内径の7.5から45%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のローラー成型冶具。
【請求項4】
前記パイプ金型を使用することなく、成型冶具本体に直接、ローラー外径を有するキャビティとなる穴を加工したことを特徴とする請求項1に記載のローラー成型冶具。
【請求項5】
ローラーの成型冶具内に挿入されたパイプ金型内部に芯材を設置し、駒によって該芯材を固定する第1工程と、該芯材が固定された該成型冶具を予熱する第2工程と、該パイプ金型内に発泡材料を注入する第3工程と、該パイプ金型内で発泡した該発泡材料を加熱硬化し、該パイプ金型より脱型する第4工程と、を有するローラーの製造方法であって、
該成型冶具には、該パイプ金型が嵌め合い挿入で取り付けられていることを特徴とするローラーの製造方法。
【請求項6】
前記成型冶具と前記パイプ金型の嵌め合い公差が、JIS規格でH7g7等級以上であることを特徴とする請求項5に記載のローラーの製造方法。
【請求項7】
嵌め合い挿入する前記パイプ金型の肉厚が、該パイプ金型内径の7.5から45%であることを特徴とする請求項5又は6に記載のローラーの製造方法。
【請求項8】
前記パイプ金型を使用することなく、成型冶具本体に直接、ローラー外径を有するキャビティとなる穴を加工したことを特徴とする請求項5に記載のローラーの製造方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1項に記載の製造方法で作られたことを特徴とするローラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−87439(P2008−87439A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274046(P2006−274046)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】