説明

ワーク搬送方法及びワーク受渡し機構を有する装置

【課題】 ウエハの両面を順次処理する場合、ウエハを確実に保持して所定の処理や搬送をできるようにする。
【解決手段】ウエハの一面に第1の固定治具3aを密着固定し、その他面に対し所定の処理を行った後、ウエハの他面に第2の固定治具3bを密着固定し、第1の固定治具3aを脱離して第2の固定治具3bにウエハを受け渡す。両固定治具は、治具本体31と、その片面に設けた密着層32とからなる。治具本体は、密着層を支持する複数の支持突起33及び側壁34を有し、側壁の端面に密着層が接着されて密着層と治具本体との間に側壁で囲われた区画空間35が画成され、区画空間に連通する通気孔36が形成され、区画空間内の空気の吸引により密着層が変形される。脱離の際、第1の固定治具の密着層を変形させ、両固定治具を相互に離間する方向に相対移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の薄板状のワークを密着固定する固定治具を用いたワーク搬送方法及びワーク受渡し機構を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、半導体チップ(以下、「チップ」という)を小型化するために半導体ウエハ(以下、「ウエハ」という)の裏面を研削して薄くするバックグラインド工程、回路が形成されたウエハを個々の半導体チップに切断するダイシング工程、及びチップ化したものを、配線パターンを有する実装基板の電極箇所に接着するダイボンディング工程など、種々の工程がある。
【0003】
ここで、バックグラインド工程により極薄化されたウエハは僅かな衝撃によっても破損してしまう。そこで、極薄化されたウエハが搬送時や加工時に、自重、加速度あるいは加工応力により歪んで破損しないように、板状の治具本体と、治具本体の片面に設けられた、ワークを着脱自在に密着保持する密着層とから構成され、ウエハを支持固定する固定治具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この治具本体は、片面に密着層を支持する複数の支持突起を有すると共に、片面の外周部に支持突起と同等高さの側壁を有し、この側壁の端面に密着層が接着されて、密着層と治具本体との間に側壁で囲われた区画空間が画成され、治具本体に区画空間に連通する通気孔が形成されている。
【0004】
そして、この固定治具にウエハが密着固定されている間は、ウエハの位置ずれや破損なくウエハが保持される。他方で、上記通気孔の真空引きにより、通気孔を介して区画空間内の空気を吸引すると、密着層が支持突起間で窪むように変形し、密着層に対するウエハの接触面積が減少する。このため、ウエハをこれに無理な力をかけずに固定治具から脱離できる。
【0005】
上記のような固定治具の利点から、固定治具にウエハを密着固定することによりウエハと固定治具とを合体したウエハの保護構造体をつくり、この保護構造体の状態でバックグラインド工程等を行ったり、次工程のために搬送したりすることが提案される。
【特許文献1】特開2006−216775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記半導体製造工程においては、ウエハの一面(つまり、固定治具に密着している面とは反対側の面)に所定の処理を行った後、次工程でウエハの他面(つまり、固定治具に密着している面)に所定の処理を行うことがある。このような場合に、保護構造体状態からウエハを一旦脱離し、ウエハの上下を反転させて固定治具とウエハとを再度密着固定させるのでは、作業性が悪いだけでなく、ウエハの上下反転時に極薄のウエハが破損する虞がある。
【0007】
他方、ウエハの処理済みの面に粘着テープを介して貼付してリングフレームに固定し、固定治具を脱離して当該リングフレームにウエハを受け渡す方法が従来から知られているが、このものでは、粘着テープ部分でのウエハの支持性が欠け、また、リングフレームのサイズにあった処理テーブルにしか適用できない。さらに、粘着テープが使い捨てになってコスト高を招くという問題を有する。
【0008】
そこで、本発明の課題は、上記の点に鑑み、薄板状のワークの両面を順次処理する場合に、ワークを確実に保持した状態でワークに対し所定の処理を行ったり、搬送したりできる低コストのワーク搬送方法及びワーク受渡し機構を有する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1記載のワーク搬送方法は、薄板状のワークの一面に第1の固定治具を密着固定し、その他面に対し所定の処理を行った後、または、一面に対し所定の処理を行った薄板状のワークのその一面に第1の固定治具を密着させた後、当該ワークの他面に第2の固定治具を密着固定する工程と、当該ワークから第1の固定治具を脱離して第2の固定治具にワークを受け渡す工程と、を含むワーク搬送方法であって、 前記第1及び第2の両固定治具は、板状の治具本体と、当該治具本体の片面に設けられ当該ワークを着脱自在に密着保持する密着層とから構成され、前記治具本体は、片面に前記密着層を支持する複数の支持突起を有すると共に、片面の外周部に前記支持突起と同等高さの側壁を有し、この側壁の端面に前記密着層が接着されて、前記密着層と前記治具本体との間に前記側壁で囲われた区画空間が画成され、前記治具本体に前記区画空間に連通する通気孔が形成され、この通気孔を介して前記区画空間内の空気を吸引することにより、前記密着層が変形されるものであり、前記脱離を、前記第1の固定治具の密着層を変形させた後に、前記両固定治具を、相互に離間する方向に相対移動させて行うことを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明のワーク受渡し機構を有する装置は、第1の固定治具が密着固定された薄板状のワークを第2の固定治具に受け渡すワーク受渡し機構を有する装置であって、前記第1及び第2の両固定治具は、板状の治具本体と、当該治具本体の片面に設けられ当該ワークを着脱自在に密着保持する密着層とから構成され、前記治具本体は、片面に前記密着層を支持する複数の支持突起を有すると共に、片面の外周部に前記支持突起と同等高さの側壁を有し、この側壁の端面に前記密着層が接着されて、前記密着層と前記治具本体との間に前記側壁で囲われた区画空間が画成され、前記治具本体に前記区画空間に連通する通気孔が形成され、この通気孔を介して前記区画空間内の空気を吸引することにより、前記密着層が変形されるものであり、前記ワーク受渡し機構が、第1の固定治具の通気孔に連通し、吸引手段に接続する貫通孔を有する着脱部と、ワークまたは固定治具の支持が可能で上下反転可能に形成されたフィンガー部を有する搬送手段とを備え、前記ワークを受け渡した後の固定治具を一時的に保管する治具待機部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2個の固定治具を用いて両固定治具間でワークを受け渡すようにしたため、当該両固定治具のうちワークを密着固定するものをかえるだけで、ワークの処理すべき面を開放できる。このため、次工程のためにワークの処理すべき面を反転させて搬送するときの作業性を、支持体がない状態でワーク自体を反転させるものと比較して格段に向上できる。そして、ワークに対して所定の処理を行う間及びワークを搬送する間だけでなく、両固定治具間でワークを受け渡す間も、固定治具によりワークが確実に保持されたワークの保護構造体となるため、ワークが極薄のものであっても破損等することが防止できる。
【0012】
このように本発明によれば、ワーク表面保護用のシート等を用いることなく、再利用可能な固定治具を用いてワークを順次搬送してその両面に所定の処理を行うことができるので、保護シートの利用に伴うコスト高や廃棄物の増加等、種々の問題を有効に解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を参照して、1は、本発明の薄板状のワークたるウエハWを搬送するウエハ搬送装置を示している。ウエハ搬送装置1は、平面視長方形の架台2を有し、上流の工程を行う所定の装置(以下、「上流装置」という)10aと、下流の工程を行う所定の装置(以下、「下流装置」という)10bとの間に設置される。そして、上流装置10aによりウエハWの一面に所定の処理を行った後、ウエハWの他面に所定の処理を行うために、その処理すべき他面を開放して下流装置10bに搬送する。
【0014】
上流装置10a及び下流装置10bには、ウエハ搬送装置1にその開口面を対向させて配置した保護構造体収納部S1、S2が備えられている。上流装置10aの保護構造体収納部S1には、ウエハWが後述の固定治具3aに支持固定された状態(以下、「保護構造体30a」という)で、上下方向に所定の間隔を置いて複数個収納されている。なお、ウエハW及び固定治具3を公知の構造のカセットに収納し、ハンドリング装置により上流装置10aの所定位置に設置するようにしてもよい。また、保護構造体収納部S2は、ウエハWが後述の固定治具3bに支持固定された状態(以下、「保護構造体30b」という)で、上下方向に所定の間隔を置いて複数個収納できるようになっている。
【0015】
ここで、ウエハWを支持固定する固定治具3は、板状の治具本体31と、治具本体31の片面に設けられた密着層32とで構成されている(図2(a)及び図2(b)参照)。治具本体31は、ウエハWよりも僅かに大径の円板状に形成されている。治具本体31の材料は、機械強度に優れたものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金、ステンレス等の金属材料、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリル、ポリ塩化ビニル等の樹脂成形材料、ガラス等の無機材料、ガラス繊維強化エポキシ樹脂等の有機無機複合材料等が挙げられる。
【0016】
治具本体31の片面には、0.05〜0.5mm程度の高さで直径が0.05〜1.0mm程度の円柱状の支持突起33が0.2〜2.0mm程度のピッチで複数形成されている。更に、治具本体31の片面の外周部には、支持突起33と同等高さの円筒状の側壁34が形成されている。尚、支持突起33は円柱状以外の形状、例えば、円錐台形に形成されていても良い。他方、治具本体31の他面は、所定の表面粗さを有するように平滑加工しておくことが好ましい。
【0017】
密着層32は、可撓性、柔軟性、耐熱性、弾性、粘着性等に優れたウレタン系、アクリル系、フッ素系、シリコーン系等のエラストマーから成る20〜200μmの厚さのフィルムで形成される。そして、治具本体31の側壁34の端面に、密着層32の外周部を接着剤、ヒートシール等で接着している。これにより、密着層32と治具本体31との間に側壁34で囲われた区画空間35が画成される。また、密着層32は各支持突起33の平坦な端面に当接して支持される。治具本体31には、治具本体31をその厚さ方向に貫通して区画空間35に連通する少なくとも1個の通気孔36が形成されている。
【0018】
架台2の作業面2aの中央部には、公知の構造を有する多関節式の搬送アーム(搬送手段)4が設けられている(図1及び図3参照)。搬送アーム4の先端部は、平面視略U字状のフィンガー部41として形成され、フィンガー部41の少なくとも片面には、吸着孔42が開設され、フィンガー部41によりウエハW及び/または固定冶具3を吸着保持した状態で搬送できるようになっている。なお、この吸着孔42は、固定治具3の通気孔36に一致しないように配置され、固定治具3を吸着固定する際、区画空間35を減圧しないようになっている。
【0019】
また、このフィンガー部41は、反転機構としてのモータ43により上下反転できると共に、搬送アーム4の作業面2aへの取付軸44がシリンダ等の駆動手段に連結され、作業面2aと直交する方向に上下動するようになっている。なお、搬送アーム4は、後述の第1の固定治具3a及び第2の固定治具3bそれぞれ専用のものを架台2の作業面2aに2台設置してもよい。
【0020】
架台2の作業面2aの長手方向の一端(図1では、右側)には、ウエハWへの固定治具3の着脱が行なわれる着脱部5が設けられている。この場合、搬送アーム(搬送手段)4と着脱部5とがウエハ受渡し機構を構成する。着脱部5は、固定治具3の外形に略一致させて架台の作業面2aに形成した凹部6と、架台2に組み込まれた複数本のリフトピン7とを具備する(図1及び図4参照)。リフトピン7は、搬送アーム4からの固定治具3の受け渡しのため、図示しないエアーシリンダにより架台2の作業面2aから上方に突出した上昇位置と、架台2内に収納される下降位置との間で往復動する。
【0021】
また、着脱部5は、凹部6に固定治具3をセットしたときに当該固定治具3の通気孔36に連通する貫通孔8を有し、この貫通孔8には、図示しない蛇腹管を介してバキュームポンプ(吸引手段)Vが接続されている。この場合、凹部6の底面には、貫通孔8の周囲を囲繞するようにOリングが設けられていてもよい。
【0022】
そして、リフトピン7の下降により固定治具3が凹部6に落とし込むことでセットされたとき、この固定治具3の通気孔36が貫通孔8に連通し、バキュームポンプVによる真空引きにより貫通孔8及び通気孔36を介して区画空間35内の空気を吸引すると、密着層32が支持突起33間で窪むように変形し、密着層32に対するウエハWの接触面積が減少する。このため、ウエハWをこれに無理な力をかけずに固定治具3から脱離できる。
【0023】
さらに、架台2の作業面2aの長手方向の他端(図1では、左側)には、治具待機部S3が設けられ、当該治具待機部S3には、固定治具3が上下方向に所定の間隔を置いて少なくとも1個一時的に保管されている。なお、図1では、固定治具3を公知の構造のカセットに収納し、ハンドリング装置により作業面2aの所定位置に設置するようにしているが、単に一枚の固定治具3を一時的に仮置きするスペースがあるだけでもよい。
【0024】
次に、本発明のウエハ搬送装置1の作動について説明する。まず、搬送アーム4により保護構造体収納部S1から一個の保護構造体30aを取り出し、着脱部5へと搬送する。その際、固定治具3の治具本体31側をフィンガー部41により吸着し、フィンガー部41を適宜上下反転させ、保護構造体30aのウエハWが上側になるように搬送する。
【0025】
搬送アーム4により保護構造体30aが着脱部5に到達する前に、リフトピン7を上昇させ、リフトピン7に保護構造体30aを受け渡す。リフトピン7により保護構造体30aが支持されると、搬送アーム4の吸着を解除した後、搬送アーム4を後退させる。そして、リフトピン7を下降位置に戻すと、第1の固定治具3aが着脱部5の凹部6にセットされ、保護構造体30aがウエハ搬送装置1に固定される(図4(a)及び図4(b)参照)。
【0026】
次いで、搬送アーム4により治具待機部S3から一枚の固定冶具3、つまり、第2の固定治具3bをその冶具本体31側を吸着保持して取り出し、着脱部5へと搬送する。その際、固定冶具3bの密着層32が下側となるようにする。そして、保護構造体30aのウエハW表面に、第2の固定冶具3bの密着層32をその全面に亘って接触させ、搬送アーム4を若干下方に移動させて押圧力を加えて第2の固定冶具3bにウエハWを密着固定させる(図4(c)参照)。
【0027】
次いで、バキュームポンプVを作動させて貫通孔8及び通気孔36の真空引きにより、通気孔36を介して区画空間35内の空気を吸引すると、第1の固定冶具3aの密着層32が支持突起33間で窪むように変形し、密着層32に対するウエハWの接触面積が減少して、ウエハWの第1の固定治具3aから脱離可能状態となる。そして、両固定冶具3a、3bが相互に離間するように搬送アーム4により第2の固定治具3bを真上に移動させると、第1の固定冶具3aがウエハWから完全に脱離されて第2の固定治具3bにウエハが受け渡され、保護構造体30bが形成される(図4(d)参照)。
【0028】
次いで、第2の固定治具3b及びウエハWの保護構造体30bを搬送アーム4により下流側の装置10bの保護構造体収納部S2に搬送し、収納する。また、着脱部5の凹部6に残っている第1の固定治具3aは、搬送アーム4により治具待機部S3に移送されて、次のウエハWを処理する第2の固定治具3bとして一時的に保管される。最後に、図示しない下流装置10bの処理機構により、保護構造体30bの状態でウエハWの開放面、すなわち第1の固定治具3aで覆われていた側の面への処理が行われる。
【0029】
このように本実施の形態では、2個の固定治具3a、3bを用いてウエハWを受け渡すようにしたため、両固定治具3a、3bのうちウエハWが密着固定するものをかえるだけで、ウエハWの処理すべき面を開放できる。このため、次工程のためにウエハWの処理すべき面を反転させて搬送するときの作業性を、ウエハW自体を反転させるものと比較して格段に向上できる。そして、ウエハWが固定治具3に一旦密着固定された後においては、ウエハWに対して所定の処理を行う間及びウエハWを搬送する間だけでなく、両固定治具3a、3b間でウエハWの受け渡す場合でも、固定治具3によりウエハWが確実に保持された保護構造体30a、30bとなることで、ウエハWが極薄のものであっても破損等することはない。
【0030】
このように本実施の形態によれば、使い捨てとなる粘着シート等を用いることなく、再利用可能な2個の固定治具3a、3bを用いてウエハWを順次搬送してそのウエハW両面に所定の処理を行うことができるので、粘着シートの利用に伴うコスト高や廃棄物の増加等、種々の問題を有効に解消できる。
【0031】
尚、本実施の形態では、ウエハ搬送装置1を独立の装置として構成した場合について説明したが、例えば、公知の構造を有するウエハ研削用の研削装置20に本発明のワーク搬送装置を組み込むようにしてもよい。
【0032】
即ち、図5に示すように、研削装置20は、架台21を有し、この架台21の作業面に22は、ステッピングモータを備えた回転テーブル23が設けられ、所定の回転角毎に間欠停止するようになっている。回転テーブル23上には、周方向に所定の間隔を置いて4個のチャックテーブル24が設けられている。チャックテーブル24は、例えばポーラステーブルから構成され、負圧でウエハを着脱自在に吸着固定できる。
【0033】
また、作業面22の上方には、チャックテーブル24の停止位置に対応させて、その回転方向の上流側から公知の構造を有する粗研削装置25及び仕上研削装置26が吊設されている。そして、架台21の作業面22には、搬送アーム4aとウエハWへの固定治具3の着脱が行なわれる着脱部5とが上記実施の形態と同様に配置されている。
【0034】
本研削装置20においては、作業面22上の所定の位置に、複数枚のウエハWが上下方向に所定の間隔おいて収納されたウエハ収納部SAと、複数枚の固定治具3が上下方向に所定の間隔おいて収納された治具収納部SBと、ウエハWが固定治具3に支持固定された状態で、上下方向に所定の間隔を置いて複数個収納できる保護構造体収納部SCとが配置されている。それに加えて、ウエハWの固定治具3との密着面をかえてウエハWの処理すべき面を変更するため、治具待機部SDと搬送アーム4aと同一構造の他の搬送アーム4bとが設けられている。
【0035】
そして、搬送アーム4aによりウエハ収納部SAから一枚のウエハWを、その研削処理を行う側の面を吸着保持して取り出し、回転テーブル23上のチャックテーブル24のうち搬入位置Aにあるものへと搬送する。その際、ウエハ収納部SAの収納状態に応じて搬送アーム4aを適宜上下反転させ、ウエハWの処理すべき面(吸着面側)が上側になるようにする。
【0036】
次いで、回転テーブル24を回転させ、粗研削装置25下方の粗研削位置BにウエハWを移動させ、ウエハW裏面の粗研削を行い、所定の厚さに研削する。その後、回転テーブルをさらに回転させて仕上研削装置下方の仕上位置Cにウエハを移動させ、所定厚さに研削されたウエハW裏面が仕上研削され、洗浄される。
【0037】
次いで、回転テーブル24をさらに回転させ、研削が終了したウエハWを排出位置Dに移動する。研削が終了したウエハWが排出位置Dに到達すると、搬送アーム4aにより冶具収納部SBから一枚の固定冶具3、つまり、第1の固定治具3aを取り出し、排出位置Dへと搬送する。その際、固定治具3aの治具本体31側をフィンガー部41により吸着し、フィンガー部41を適宜上下反転させ、固定治具3の密着層32が下側になるようにする。
【0038】
次いで、第1の固定冶具3aの密着層32を、排出位置にあるウエハWの上面(研削が行われた面)にその全面に亘って接触させ、搬送アーム4を若干下方に移動させることにより押圧力を加える。これにより、第1の固定冶具3aにウエハWが密着固定され、ウエハWと固定治具3aとの合体で保護構造体30aがつくられる。
【0039】
次いで、この保護構造体30aを、搬送アーム4aにより着脱部5に搬送する。その際、フィンガー部41を上下反転させ、ウエハWの被処理面が上側になるように搬送すると共に、リフトピン7を上昇位置に移動させ、リフトピン7に保護構造体30aを受け渡し、リフトピン7の下降により保護構造体30aを着脱部5にセットする。
【0040】
次いで、搬送アーム4aにより治具待機部SDから一枚の固定冶具3、つまり、第2の固定治具3bをその冶具本体31側を吸着保持して取り出し、着脱部5へと搬送する。その際、固定冶具3bの密着層32が下側となるようにする。この場合、第2の固定治具3bは、前の処理で使用され着脱部5に残された第1の固定治具3aであって、搬送アーム4aにより治具待機部SDに移送されて一時的に保管されたものが用いられる。なお、作業面22上に、着脱部5に残された第1の固定治具3aを元の治具収納部SBに、搬送アーム4bにより再収納するようにしてもよい。
【0041】
そして、着脱部5にある保護構造体30aのウエハW表面に、第2の固定冶具3bの密着層32をその全面に亘って接触させ、搬送アーム4を若干下方に移動させて押圧力を加えて第2の固定冶具3bにウエハWを密着固定させる。
【0042】
次いで、バキュームポンプを作動させて貫通孔8及び通気孔36の真空引きにより、通気孔36を介して区画空間35内の空気を吸引すると、第1の固定冶具3aの密着層32が支持突起33間で窪むように変形し、密着層32に対するウエハWの接触面積が減少して、ウエハWの第1の固定治具3aから脱離可能状態となる。そして、両固定冶具3a、3bが相互に離間するように搬送アーム4により第2の固定治具3bを真上に移動させると、第1の固定冶具3aがウエハWから完全に脱離されて第2の固定治具3bにウエハWが受け渡され、保護構造体30bとなる。保護構造体30bは、搬送アーム4bにより保護構造体収納部SCにセットされているカセットに収納され、カセットは、次工程の加工装置に移載される。
【0043】
次いで、次工程、例えば、ダイシング工程においてウエハWの回路面(研削面とは反対側の面)に所定の処理を行うため、図示しない他の搬送アームによりダイシング工程を行うダイシング装置にウエハWが保護構造体30bのまま搬送される。他方、着脱部5に残された第1の固定治具3aは搬送アーム4aにより治具待機部SDに戻される。
【0044】
次に、ウエハWの他の処理工程において用いられる本発明の搬送方法について、さらに説明する。
【0045】
第1の例として、上流装置10aがウエハ研削装置であるバックグラインド工程、下流装置10bがダイボンドフィルム(ダイアタッチフィルム(DAF)ともいう)の貼付装置となるDAF貼付工程である処理工程が挙げられる。
【0046】
まず、前工程において表面に回路パターンが組み込まれた未研磨ウエハWの回路面に表面保護シートが貼付され、上流装置10bであるウエハ研削装置に搭載されて、ウエハWの研削が行われる。極薄に研削されたウエハWは極めて脆質であるため、ウエハ研削装置のステージ上に設置されたまま、研削面に固定治具3aが密着固定される。得られた保護構造体30aは、固定治具3a、ウエハW(固定治具側は研削面)及び表面保護シートの順からなる構造となる。
【0047】
続いて、本発明のウエハ搬送装置1を用いて保護構造体30aを固定治具3aから固定治具3bに受け渡し、保護構造体30bを形成する。受け渡しの方法は、先に説明した通りであり、得られた保護構造体30bは、固定治具3b、表面保護シート及びウエハW(研削面が露出)の順からなる構造となる。
【0048】
次に、保護構造体30bは下流装置10bであるダイボンドフィルムの貼付装置に搬送され、ウエハWの研削面側にダイボンドフィルムが貼付される。ダイボンドフィルムが貼付されたウエハWは、表面保護シートの剥離工程、ダイシング工程、ダイボンド工程など、所定の処理が施される。なお、表面保護シートの剥離工程はDAF貼付工程の前に行ってもよい。これらの工程においても、固定治具3にウエハが支持固定された状態で処理されることが好ましい。
【0049】
第2の例として、上流装置10aがダイシング装置であるダイシング工程、下流装置10bがピックアップ装置となるチップソート工程である処理工程が挙げられる。
【0050】
まず、前工程において表面に回路パターンが組み込まれた未研磨ウエハWの回路面に表面保護シートを貼付し、さらに表面保護シート上に第1の固定治具3aが密着固定される。続いて、上流装置10aであるウエハ研削装置に設置され、ウエハWの裏面側から所定の厚みになるまで研削が行われる。得られた保護構造体30aは、固定治具3a、表面保護シート及びウエハW(研削面が露出)の順からなる構造となる。
【0051】
次に、ウエハWは保護構造体30aの状態で、第1の例における上流装置であるダイシング装置に搬送される。ダイシング装置において、表面保護シートの一部の厚さまで切り込むようにしてウエハWのダイシングが行われ、ウエハWがチップ化される。このようにして、固定治具3a、表面保護シート及びチップ(ワーク)の構成の保護構造体30aが得られる。
【0052】
次いで、本発明のウエハ搬送装置1を用いて保護構造体30aを固定治具3aから固定治具3bに受け渡し、保護構造体30bを形成する。受け渡しの方法は、先に説明した通りであり、得られた保護構造体30bは、固定治具3b、チップ(研削面が固定治具側)及び表面保護シートの順からなる構造となる。
【0053】
次に、保護構造体30bは下流装置10bであるシート剥離装置に搬送され、表面保護シートがチップから剥離される。さらに、保護構造体30bはピックアップ装置に搬送されて、チップ毎に所定の基板上にダイボンドされたり、チップトレイ上に移載されたりする。なお、ピックアップ装置は、固定治具3bの通気路36を介して区画空間35を減圧させる機能を有する装置が使用できる。区画空間35を減圧させることにより、固定治具3bの密着層32を変形させ、固定治具3bに固定されている全チップの密着を弱めることができる。これにより、針の突き上げを行わずにピックアップ工程が行われるため、チップにダメージを与えることがない。
【0054】
また、本発明の実施の形態においては、上記で説明した工程に限定されることはなく、その他の工程間での搬送において適用することができる。また、上記で説明した工程の順番や組み合わせが異なった工程間での搬送においても適用することができる。
【0055】
さらに、本実施の形態では、ウエハWの処理すべき面をかえて搬送するものについて説明したが、石英ガラス等からなる精密基板といったウエハW以外の薄板状ワークの処理で使用する固定治具にも同様に本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態のウエハ搬送装置の模式的平面図。
【図2】(a)は、本発明のウエハ搬送装置に用いる固定治具の模式的断面図。(b)は、その固定治具の治具本体の平面図。
【図3】搬送アームの模式的斜視図。
【図4】(a)乃至(d)は、固定治具間でのウエハの受け渡しを説明する模式的断面図。
【図5】本発明のウエハ搬送装置を研削装置に組み込んだ変形例を示す平面図。
【符号の説明】
【0057】
1 ウエハ搬送装置(ワーク搬送装置)
3 固定治具、
31 治具本体
32 密着層
33 支持突起
34 側壁
35 区画空間
36 通気孔
4 搬送手段(ワーク受渡し機構)
41 フィンガー部
43 モータ(反転機構)
5 着脱部(ワーク受渡し機構)
W ウエハ
S1、S2 保護構造体収納部
S3 治具待機部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状のワークの一面に第1の固定治具を密着固定し、その他面に対し所定の処理を行った後、または、一面に対し所定の処理を行った薄板状のワークのその一面に第1の固定治具を密着させた後、当該ワークの他面に第2の固定治具を密着固定する工程と、
当該ワークから第1の固定治具を脱離して第2の固定治具にワークを受け渡す工程と、を含むワーク搬送方法であって、
前記第1及び第2の両固定治具は、板状の治具本体と、当該治具本体の片面に設けられ当該ワークを着脱自在に密着保持する密着層とから構成され、前記治具本体は、片面に前記密着層を支持する複数の支持突起を有すると共に、片面の外周部に前記支持突起と同等高さの側壁を有し、この側壁の端面に前記密着層が接着されて、前記密着層と前記治具本体との間に前記側壁で囲われた区画空間が画成され、前記治具本体に前記区画空間に連通する通気孔が形成され、この通気孔を介して前記区画空間内の空気を吸引することにより、前記密着層が変形されるものであり、
前記脱離を、前記第1の固定治具の密着層を変形させた後に、前記両固定治具を、相互に離間する方向に相対移動させて行うことを特徴とするワーク搬送方法。
【請求項2】
第1の固定治具が密着固定された薄板状のワークを第2の固定治具に受け渡すワーク受渡し機構を有する装置であって、
前記第1及び第2の両固定治具は、板状の治具本体と、当該治具本体の片面に設けられ当該ワークを着脱自在に密着保持する密着層とから構成され、前記治具本体は、片面に前記密着層を支持する複数の支持突起を有すると共に、片面の外周部に前記支持突起と同等高さの側壁を有し、この側壁の端面に前記密着層が接着されて、前記密着層と前記治具本体との間に前記側壁で囲われた区画空間が画成され、前記治具本体に前記区画空間に連通する通気孔が形成され、この通気孔を介して前記区画空間内の空気を吸引することにより、前記密着層が変形されるものであり、
前記ワーク受渡し機構が、第1の固定治具の通気孔に連通し、吸引手段に接続する貫通孔を有する着脱部と、ワークまたは固定治具の支持が可能で上下反転可能に形成されたフィンガー部を有する搬送手段とを備え、
前記ワークを受け渡した後の固定治具を一時的に保管する治具待機部を設けたことを特徴とするワーク受渡し機構を有する装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−43995(P2009−43995A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208263(P2007−208263)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】