説明

両面基板、半導体装置、半導体装置の製造方法

【課題】熱サイクル時の接合強度を向上することのできる両面基板、半導体装置、半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】ヒートシンク20の上面には、第1のアルミニウム層32、第2のアルミニウム層33、セラミック基板31からなる両面基板30が接合されている。第1のアルミニウム層32は、ヒートシンク側および基板側アルミニウム層32a,32bを積層してなる。ヒートシンク側アルミニウム層32aは純度99.99wt%以上のアルミニウム(4N−Al)であるとともに、基板側アルミニウム層32bは純度99.5wt%以上99.9wt%未満のアルミニウム(2N−Al)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミック基板の両面に金属層を形成してなる両面基板、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子が実装された両面基板をヒートシンクに接合し、半導体素子の発する熱を両面基板を介してヒートシンクに逃がす構成が知られている。この両面基板は、セラミック基板の表面に配線層となる金属層を形成するとともに裏面に接合層となる金属層を形成することによって構成されている。そして、両面基板に形成された配線層には半導体素子を接合する一方で、接合層にはヒートシンクを接合することにより、半導体装置が構成されている。
【0003】
このように構成された半導体装置において、熱サイクル時におけるセラミック基板と金属層との良好な接合強度を得るために、例えば、特許文献1では、接合層として純度の異なる複数のアルミニウム層を積層している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−65144号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のアルミニウム層は、セラミック基板と接合される側のアルミニウム層は純度99.99wt%以上のアルミニウム(4N−Al)であるとともに、ヒートシンクと接合される側のアルミニウム層は、純度99.5wt%以上99.9wt%未満のアルミニウム(2N−Al)である。4N−Alは、2N−Alと比して低硬度(低強度)である。そのため、熱サイクル時に生じる熱応力により、セラミック基板と接合されるアルミニウム層に歪が生じやすく、セラミック基板からアルミニウム層が剥離してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱サイクル時におけるセラミック基板と金属層との接合強度を向上した両面基板、半導体装置、半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、セラミック基板の一方の面に第1の金属層を形成するとともに他方の面に第2の金属層を形成してなる両面基板であって、前記第1の金属層は、純度の異なる複数の金属層を積層してなり、かつ積層した金属層は、前記セラミック基板寄りの金属層ほど純度が低いことを要旨とする。
【0008】
本発明によれば、セラミック基板の一方の面に形成された第1の金属層は、純度の異なる複数の金属層を積層することにより形成されている。そして、複数の金属層のうち、セラミック基板と接合される金属層の純度が最も低くなっている。すなわち、セラミック基板と接合される金属層の硬度(強度)が最も高くなっている。一方、複数の金属層は、セラミック基板から離間するにつれ純度が高くなる(硬度が低くなる)。硬度(強度)の低い金属層は、熱応力を緩和する緩衝材として機能し、セラミック基板への熱応力を緩和する。
【0009】
この結果、セラミック基板に接合される金属層の強度が高くなるとともに、セラミック基板への熱応力が軽減され、第1の金属層に被接合部材を接合したときの、熱サイクル時におけるセラミック基板と金属層との接合強度の向上を図ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の両面基板において、前記第1の金属層は、純度が高い金属層ほど積層方向に厚いことを要旨とする。
本発明によれば、緩衝材として機能する金属層(セラミック基板と接合しない金属層)が積層方向に厚く形成される。
【0011】
この結果、セラミック基板への熱応力がさらに緩和され、セラミック基板と金属層との接合強度がさらに向上する。
請求項3に記載のように、請求項1又は2に記載の両面基板において、前記第1の金属層を構成する金属層のうち、最も純度の低い金属層は純度99.5wt%以上99.9wt%未満のアルミニウム層であり、純度の最も高い金属層は純度99.99wt%以上のアルミニウム層であると好ましい。
【0012】
請求項4に記載の半導体装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の両面基板と、前記両面基板の第2の金属層に接合された半導体素子と、前記両面基板の第1の金属層に接合されたヒートシンクと、を備えたことを要旨とする。
【0013】
本発明によれば、半導体素子の駆動に伴い発生する熱が、両面基板を介してヒートシンクに逃げる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の半導体装置において、前記ヒートシンクは前記第1の金属層を構成する各金属層と同一の金属から形成されることを要旨とする。
【0014】
本発明によれば、接合されるヒートシンクと、第1の金属層を構成する各金属層が同一金属で形成される。接合する金属が同一金属であると、異種金属同士を接合したときに比べ、ヒートシンクと金属層との接合強度が向上する。
【0015】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の両面基板を構成するセラミック基板と、第1の金属層を構成する各金属層と、第2の金属層と、ヒートシンクとを一括でロウ付けする第1の工程と、第1の工程後において、第2の金属層に半導体素子を半田付けする第2の工程とを有することを要旨とする。
【0016】
本発明によれば、請求項4又は5に記載の半導体装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、セラミック基板と金属層との接合強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態におけるパワーモジュールの正面図。
【図2】実施形態におけるパワーモジュールの製造方法を説明するための分解図。
【図3】実施形態におけるパワーモジュールの製造方法を説明するための正面図。
【図4】実施形態におけるパワーモジュールの別例の正面図。
【図5】(a)は、従来構造の半導体装置の正面図、(b)は本実施形態の半導体装置の正面図。
【図6】実施形態におけるパワーモジュールの別例の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図1〜図5に従って説明を行う。
図1に示すように、半導体装置としてのパワーモジュール10において、板状のアルミニウム製ヒートシンク20の上面には、セラミック基板31の両面に金属層としてのアルミニウム層32,33を形成してなる両面基板30が接合されている。詳しくは、セラミック基板31の一方の面(上面)である半導体素子搭載面に第2の金属層としての第2のアルミニウム層(配線層)33が形成されているとともに、セラミック基板31の他方の面(下面)に第1の金属層としての第1のアルミニウム層32が形成されている。セラミック基板31は、例えば窒化アルミ(AlN)などが用いられる。
【0020】
第1のアルミニウム層32は、ヒートシンク側アルミニウム層32aと基板側アルミニウム層32bを積層することにより形成されている。ヒートシンク側アルミニウム層32aと基板側アルミニウム層32bは、純度が異なる。具体的には、ヒートシンク側アルミニウム層32aは純度99.99wt%以上のアルミニウム(4N−Al)であるとともに、基板側アルミニウム層32bは、純度99.5wt%以上99.9wt%未満のアルミニウム(2N−Al)である。セラミック基板31と接合される基板側アルミニウム層32bは、ヒートシンク側アルミニウム層32aと比して高硬度(高強度)である。
【0021】
また、ヒートシンク側アルミニウム層32aの積層方向への厚みt1は、基板側アルミニウム層32bの厚みt2よりも厚く形成される。例えば、ヒートシンク側アルミニウム層32aは0.5mm〜3.0mm、基板側アルミニウム層32bは0.2mm〜0.6mmの厚みでそれぞれ形成される。
【0022】
そして、第1のアルミニウム層32は、ヒートシンク側アルミニウム層32aを下層、基板側アルミニウム層32bを上層として、セラミック基板31の下面に接合されている。第1のアルミニウム層32は、セラミック基板31とヒートシンク20とを接合する接合層として機能する。
【0023】
第2のアルミニウム層33の上面には、半導体素子としてのパワー素子40が半田付けされ、パワーモジュール10を構成している。
パワーモジュール10をこのように構成することにより、ヒートシンク20は両面基板30を介してパワー素子40と熱的に結合されている。ヒートシンク20はその内部に複数の冷却水通路21が並列状に設けられており、各通路21に冷却水が流れている。そして、パワー素子40が駆動し、発熱すると、熱は両面基板30を介してヒートシンク20に逃がされるようになっている。
【0024】
次に、上記のように構成されたパワーモジュール10の製造方法について、図2および図3にしたがって説明する。
ヒートシンク20、セラミック基板31、第1のアルミニウム層32を構成するヒートシンク側アルミニウム層32a及び基板側アルミニウム層32b、第2のアルミニウム層33は一括ロウ付けされる。
【0025】
詳しくは、図3に示すように、ヒートシンク20の上面に、アルミロウ材51を介してヒートシンク側アルミニウム層32aが配置されるとともに、ヒートシンク側アルミニウム層32aの上面に、アルミロウ材52を介して基板側アルミニウム層32bが配置される。さらに、基板側アルミニウム層32bの上面に、アルミロウ材53を介してセラミック基板31が配置されるとともに、セラミック基板31の上面に、アルミロウ材54を介して第2のアルミニウム層33が配置される。そして、この状態で炉内において高温とすることによりアルミロウ材51〜54を溶融し、その後に室温に戻すことによりアルミロウ付けされる。
【0026】
その後、第2のアルミニウム層33の上面に半田55(図2参照)を介してパワー素子40を半田付けする。その結果、パワーモジュール10が製造される。
次に、構造解析を用いて、従来構造と本実施形態の構造の違いを検証したので、図5(a),(b)に従って説明を行う。
【0027】
図5(a)に示すように、セラミック基板61とヒートシンク60の間のアルミ構造(第1のアルミニウム層)62として、従来構造では、上層側のアルミニウム層62b(4N−Al)の厚さは0.6mmであり、下層側のアルミニウム層62a(2N−Al)の厚さは1.0mmである。
【0028】
一方、図5(b)に示すように、セラミック基板31とヒートシンク20の間のアルミ構造(第1のアルミニウム層)32として本実施形態の構造では、上層側のアルミニウム層32b(2N−Al)の厚さは、0.6mmであり、下層側のアルミニウム層32a(4N−Al)の厚さは1.0mmである。
【0029】
他は同一構成となっている。そして、構造解析を行った。この際、図5(a)の従来構造を「1」として規格化している。
歪解析の結果、図5(a)の従来構造の歪が「1」であるのに対し、図5(b)の本実施形態の構造では、歪が「0.22」となった。つまり、本実施形態の構造は従来構造に対し、歪解析結果が78%低減した。
【0030】
このように、本実施形態の構造は、従来構造に対し熱サイクル時の接合信頼性が向上している。
上記のごとく実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0031】
(1)第1のアルミニウム層32を構成する基板側アルミニウム層32bを最も純度の低いアルミニウム層であるとともに、ヒートシンク側アルミニウム層32aを最も純度の高いアルミニウム層である。すなわち、セラミック基板31とアルミロウ付けされる基板側アルミニウム層32bは、高硬度(高強度)のアルミニウム(2N−Al)であるとともに、ヒートシンク側アルミニウム層32aは、基板側アルミニウム層32bと比して硬度が低い。このため、基板側アルミニウム層32bは、熱サイクル時においても歪が生じにくく、剥離しにくい。また、ヒートシンク側アルミニウム層32aが緩衝材として機能し、熱応力を緩和するため、セラミック基板31への熱応力が軽減される。このため、熱サイクル時におけるセラミック基板31と基板側アルミニウム層32bとの接合強度が向上する。
【0032】
(2)ヒートシンク20はアルミニウム製としている。これによれば、ヒートシンク側アルミニウム層32aとヒートシンク20は同一金属により形成されることになり、ヒートシンク側アルミニウム層32aとヒートシンク20との接合強度が向上する。
【0033】
(3)両面基板30とヒートシンク20を一括ロウ付けすることができる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・図1に代わり、図4に示すようにヒートシンク側アルミニウム層32aに貫通孔32c(又は凹部)を形成してもよい。これによれば、セラミック基板31への熱応力が緩和されることにより、さらなる接合強度の向上が図れる。また、基板側アルミニウム層32bにも貫通孔(又は凹部)を形成してもよい。
【0034】
・第1のアルミニウム層32は、図6に示すように3層以上のアルミニウム層を積層することにより形成してもよい。この際、セラミック基板31寄りのアルミニウム層ほど純度が低くなるとともに純度が高いアルミニウム層ほど積層方向に厚くする必要がある。例えば、3層で構成する場合、セラミック基板31側から2N−Alのアルミニウム層71a、3N−Alのアルミニウム層71b、4N−Alのアルミニウム層71cの順に積層する。4N−Alのアルミニウム層71cの厚みt5は3N−Alのアルミニウム層71bの厚みt4に比べて厚く形成されているとともに、3N−Alのアルミニウム層71bの厚みt4は、2N−Alのアルミニウム層71aの厚みt3より厚く形成されている。これにより、セラミック基板31と第1のアルミニウム層32との接合信頼性が向上するとともに4N−Alのアルミニウム層71cにより応力が緩和される。
【0035】
・ヒートシンク20の通路21には、アルコールなどの他の冷却液体が流れるように構成してもよい。また、大気に熱を逃がす空冷式であってもよい。
・第1の金属層を構成する純度の異なる複数の金属層として、アルミニウム層を用いたが、銅層を用いてもよい。
【0036】
・ヒートシンク20は銅製としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10…パワーモジュール、20…ヒートシンク、30…両面基板、31…セラミック基板、32…第1のアルミニウム層、32a…ヒートシンク側アルミニウム層、32b…基板側アルミニウム層、33…第2のアルミニウム層、40…パワー素子、71a…2N−Alのアルミニウム層、71b…3N−Alのアルミニウム層、71c…4N−Alのアルミニウム層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基板の一方の面に第1の金属層を形成するとともに他方の面に第2の金属層を形成してなる両面基板であって、
前記第1の金属層は、純度の異なる複数の金属層を積層してなり、かつ積層した金属層は、前記セラミック基板寄りの金属層ほど純度が低いことを特徴とする両面基板。
【請求項2】
前記第1の金属層は、純度が高い金属層ほど積層方向に厚いことを特徴とする請求項1に記載の両面基板。
【請求項3】
前記第1の金属層を構成する金属層のうち、最も純度の低い金属層は純度99.5wt%以上99.9wt%未満のアルミニウム層であり、純度の最も高い金属層は純度99.99wt%以上のアルミニウム層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の両面基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の両面基板と、
前記両面基板の第2の金属層に接合された半導体素子と、
前記両面基板の第1の金属層に接合されたヒートシンクと、
を備えた半導体装置。
【請求項5】
前記ヒートシンクは前記第1の金属層を構成する各金属層と同一の金属から形成されることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の両面基板を構成するセラミック基板と、第1の金属層を構成する各金属層と、第2の金属層と、ヒートシンクとを一括でロウ付けする第1の工程と、
第1の工程後において、第2の金属層に半導体素子を半田付けする第2の工程とを有する半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−146864(P2012−146864A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5019(P2011−5019)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】