説明

両面研磨方法

【課題】キャリアの厚さの経時変化に影響されず、ウェーハの平坦度を安定的に改善できる両面研磨方法を提供することを目的とする。
【解決手段】キャリアに保持されるウェーハを研磨布が貼付された上下の定盤で挟み込み、キャリアを自転及び公転させ、研磨剤を供給しながらウェーハの両面を同時に研磨するウェーハの両面研磨において、高研磨レートで研磨する第1の研磨工程と、次に低研磨レートで研磨する第2の研磨工程とを有する両面研磨方法であって、研磨後にウェーハの平坦度を測定する工程と、平坦度の測定結果に基づいて次回研磨時の第2の研磨工程の研磨条件を設定する工程とを含むことを特徴とする両面研磨方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨剤を供給しながらウェーハの両面を同時に研磨する両面研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路線幅の微小化に伴い、その基板である半導体ウェーハに要求される平坦度はますます厳しくなってきている。このような中で、大口径ウェーハを研磨する際には、従来の片面研磨に代わってより加工精度の優れた両面研磨方式が採用されている。
ここで両面研磨装置は図6に示すような遊星歯車式の両面研磨装置と図7に示すような揺動式の両面研磨装置がある。遊星歯車式の両面研磨装置は上下定盤を有し、上定盤は上下動が可能で上定盤を下定盤に押し付けることで上下定盤間に挟まれたウェーハに対して荷重を加えることができる。また、図6に示すように、両面研磨装置101は下定盤内側に設けられたサンギヤ107と、下定盤外側に設けられたインターナルギヤ108とを有している。
【0003】
また、上下定盤間にはウェーハを保持するキャリア105があり、その外周部がサンギヤとインターナルギヤに噛合して回転することができる。このキャリアはサンギヤとインターナルギヤの回転数に応じて上下定盤間で自転および公転する。被研磨物であるウェーハはこのキャリアに設けられた保持孔106に挿入されて保持されることで研磨中に両面研磨装置から飛び出すことなく研磨される。
【0004】
一方、図7に示すように、揺動式の両面研磨装置111は回転する上下定盤の間にウェーハを保持するキャリア105を配置し、キャリア105を自転させずに円運動させてウェーハを研磨するものである。
遊星歯車式の両面研磨装置は揺動式の両面研磨装置と比べてキャリアの自転数及び公転数を高く設定することができ、その結果研磨中のウェーハの自転運動を促進させることで揺動式研磨機と比べ平坦度の高いウェーハに研磨できる。そのため、近年の両面研磨装置としては遊星歯車式の両面研磨機が主流となっている。
【0005】
ここで、遊星歯車式の両面研磨装置において、研磨後のウェーハの平坦度は研磨終了時のウェーハの厚さ、すなわちウェーハの仕上がり厚さとキャリアの厚さとの関係によって変化することが知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、キャリアの厚さに対して仕上がり厚さを厚くすると研磨荷重によるウェーハの研磨布への沈み込みの影響からウェーハ外周部の圧力が中央部に比べて高くなる。その結果、ウェーハ外周部の研磨が促進されて中心部よりも外周部が薄くなる、いわゆる外周ダレが発生し全体形状も凸形状になりやすい。
【0006】
逆に、キャリアの厚さに対して仕上がり厚さを薄くするとキャリアがウェーハの研磨布への沈み込みの影響を緩和するいわゆるリテーナー効果から外周部の圧力が中央部に比べて小さくなる。その結果ウェーハ外周部が中心部に対して厚くなる外周ハネが発生し、全体形状は凹形状になりやすい。
このことから、従来では、キャリアの厚さに対するウェーハの仕上がり厚さを調整することによって平坦度を調整している。一般に、研磨工程は高研磨レートで粗研磨する第1の研磨工程と、次に低研磨レートで精研磨する第2の研磨工程を有しているが、仕上がり厚さの調整はこの第1の研磨工程の研磨時間を変化させることによって行われる。平坦度の高いウェーハに研磨するためにはキャリアの厚さに対して最適な厚さでウェーハを仕上げる必要がある。
【0007】
また、ウェーハの仕上がり厚さ及び平坦度の測定は、作業者が両面研磨装置から研磨後のウェーハを取出し、装置外にある平坦度測定器で測定し、測定終了後に研磨装置へ戻している。この平坦度の測定結果を基に次の研磨の仕上がり厚さを決定し研磨時間を設定している。このような研磨後にウェーハを取出して行う測定を毎回行うと装置生産性及び労働生産性の低下を招くため、複数回の研磨毎に1回の測定を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−177539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、例えばGBIRのようなウェーハ全体の平坦度と、例えばSFQRやESFQRのような外周部の平坦度が共に高平坦化する厚さが等しいとは必ずしも限らない。例えば、GBIRが良好となる厚さで仕上げたとしても、外周部の平坦度は外周ハネ又は外周ダレが発生し、SFQRやESFQRが悪化することがある。そのため、上記のような従来の仕上がり厚さの調整では平坦度を十分に改善できない。また、上記のように、キャリアの厚さを基準に用いる方法では、キャリアの厚さの摩耗などによる経時変化に対応するのが困難である。
【0010】
近年、半導体デバイスのコスト削減のためウェーハ外周部の平坦度の要求が厳しくなる中で、今まで問題とならなかった範囲の外周ハネ、又は外周ダレが問題となってきており、例えば上記したような従来の方法ではウェーハ全体の平坦度と外周部の平坦度が共に良好なウェーハに研磨することが困難になってきた。
【0011】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、キャリアの厚さの経時変化に影響されず、ウェーハの平坦度を安定的に改善できる両面研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明によれば、キャリアに保持されるウェーハを研磨布が貼付された上下の定盤で挟み込み、前記キャリアを自転及び公転させ、研磨剤を供給しながら前記ウェーハの両面を同時に研磨するウェーハの両面研磨において、高研磨レートで研磨する第1の研磨工程と、次に低研磨レートで研磨する第2の研磨工程とを有する両面研磨方法であって、研磨後に前記ウェーハの平坦度を測定する工程と、前記平坦度の測定結果に基づいて次回研磨時の前記第2の研磨工程の研磨条件を設定する工程とを含むことを特徴とする両面研磨方法が提供される。
【0013】
このような両面研磨方法であれば、キャリアの厚さを基準値として用いないのでキャリアの厚さの経時変化に影響されることもなく、前回の平坦度の測定結果に基づいて平坦度を効果的に安定的に改善できる。また、平坦度の測定をインラインで行うようにすれば、生産性が低下することもない。
【0014】
このとき、前記測定する平坦度として、前記ウェーハの中心を通る断面形状である全体の平坦度と前記ウェーハの外周部のダレ形状又はハネ形状である外周部の平坦度とすることが好ましい。
このようにすれば、全体の平坦度と外周部の平坦度とのそれぞれの測定結果に基づいて、第2の研磨工程の研磨条件をより詳細に設定でき、平坦度をより効果的に改善できる。
【0015】
またこのとき、具体的には、前記第2の研磨工程の研磨条件を設定する工程において、前記研磨条件として、研磨荷重、前記キャリアの自転数及び公転数、前記上下定盤の回転数、研磨時間の少なくともいずれか1つを設定することができる。
このようにすれば、具体的に第2の研磨工程の研磨条件を設定でき、特に全体の平坦度と外周部の平坦度とを測定する場合において、これらの平坦度を共に効果的に改善できる。
【0016】
またこのとき、前記第2の研磨工程の研磨条件を設定する工程において、前記外周部の平坦度の結果がハネ形状であった場合には、前回の研磨時よりも、前記研磨荷重を減少し、かつ前記上下定盤の回転数と前記キャリアの自転数及び公転数とを増加し、前記外周部の平坦度の結果がダレ形状であった場合には、前回の研磨時よりも、前記研磨荷重を増加し、かつ前記上下定盤の回転数と前記キャリアの自転数及び公転数とを減少するように前記研磨条件を設定することができる。
このようにすれば、外周部の平坦度の結果がハネ形状であった場合にはウェーハを凹形状になりやすくし、ダレ形状であった場合にはウェーハを凸形状になりやすくすることができるので、仕上がり厚さによる全体の平坦度の調整と組み合わせて全体及び外周部の平坦度を共に改善できる。
【0017】
このとき、具体的には、前記第1の研磨工程の研磨時間を、前記外周部の平坦度の結果がハネ形状であった場合に仕上がり厚さが前回の研磨時よりも厚くなるように設定し、前記外周部の平坦度の結果がダレ形状であった場合に仕上がり厚さが前回の研磨時よりも薄くなるように設定することができる。
このようにすれば、外周部の平坦度の結果がハネ形状であった場合にはウェーハが凸形状になりやすくなるので、上記の第2の研磨工程の研磨条件の変更によってウェーハが凹形状になりやすくなる効果との組み合わせにより全体及び外周部の平坦度を共に改善できる。また、外周部の平坦度の結果がダレ形状であった場合にはウェーハが凹形状になりやすくなるので、上記の第2の研磨工程の研磨条件の変更によってウェーハが凸形状になりやすくなる効果との組み合わせにより全体及び外周部の平坦度を共に改善できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、ウェーハの両面研磨において、研磨後にウェーハの平坦度を測定する工程と、平坦度の測定結果に基づいて次回研磨時の第2の研磨工程の研磨条件を設定する工程とを含むので、キャリアの厚さの経時変化に影響されず、ウェーハの平坦度を安定的に改善できる。また、全体の平坦度と外周部の平坦度とを測定し、これらの測定結果に基づいて第2の研磨工程の研磨条件を設定することで、全体の平坦度と外周部の平坦度とを共に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の両面研磨方法の一例のフロー図である。
【図2】本発明の両面研磨方法で用いることができる両面研磨装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の両面研磨方法で用いることができるウェーハ自動搬送ロボットを具備した両面研磨装置の一例を示す概略図である。(A)上面図。(B)ロボットの部分を拡大した側面図。
【図4】本発明の両面研磨方法の第1及び第2の研磨工程を説明する説明図である。
【図5】実施例及び比較例の結果を示す図である。
【図6】一般的な遊星歯車式の両面研磨装置を示す概略図である。
【図7】一般的な揺動式の両面研磨装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記したように、平坦度を改善するためにキャリアの厚さを基準にして仕上り厚さを調整する従来の両面研磨方法では平坦度を十分に改善できず、特にウェーハ外周部の平坦度の更なる改善が課題となっている。また、キャリアの厚さの摩耗などによる経時変化に対応するのが困難である。
【0021】
そこで、本発明者等はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、毎回研磨後にウェーハの平坦度を測定し、その結果を次のバッチの第2の研磨工程の研磨荷重、上下定盤の回転数などといった研磨条件に反映させることで、キャリアの厚さの経時変化に影響されず、平坦度の高いウェーハに安定的に研磨できることに想到した。さらに、本発明者等は全体及び外周部の平坦度の測定結果に基づいて第2の研磨工程の研磨荷重、上下定盤の回転数、キャリアの自転数及び公転数、研磨時間などの研磨条件、及び前回の研磨時からの仕上がり厚さの増減を設定すれば全体及び外周部の平坦度を共に改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0022】
ここで、本発明の両面研磨方法で用いることができる両面研磨装置について説明する。図2に示すように、両面研磨装置1は円筒形の上定盤2及び下定盤3を有し、この上下定盤2、3には研磨布4がそれぞれその研磨面が対向するように貼り付けられている。ここで研磨布4は不織布にウレタン樹脂を含浸させたもの、又はウレタン発泡体のものなどである。下定盤3の内側にはサンギヤ7、外側にはインターナルギヤ8が取り付けられている。上下定盤2、3とサンギヤ7、インターナルギヤ8は同じ回転中心軸を有しており、当該軸周りに互いに独立に回転運動することができる。
【0023】
キャリア5にはウェーハWを保持するための保持孔6が設けられ、図3(A)に示すように、複数のキャリア5が上下定盤2、3の間に挟まれるようになっている。1つのキャリア5には複数の保持孔6が設けられバッチ毎に複数のウェーハWを研磨できるようになっている。また、キャリア5はサンギヤ7およびインターナルギヤ8とそれぞれ噛合し、サンギヤ7およびインターナルギヤ8の回転数に応じて上下定盤間で自転および公転する。このようなキャリア5の保持孔6にウェーハWを挿入して保持し、上定盤2が下降することでウェーハW及びキャリア5を挟み込んで研磨荷重を加える。そして、上定盤2に設けられた貫通孔9を介して、ノズル10から供給された研磨剤を上下定盤間に流し込みながら上定盤2と下定盤3を互いに逆方向に回転させてウェーハWの両面を同時に研磨する仕組みになっている。
【0024】
また、図3(A)(B)に示すように、本発明の両面研磨方法で用いることができる両面研磨装置にはウェーハ自動搬送ロボット11(以下、ロボットと略す)、研磨後のウェーハの仕上がり厚さを測定する厚さ測定器12が設けられている。この厚さ測定器12は2つの変位センサ13を対向させて配置し、その間にウェーハWを挿入して各変位センサ13の変位量を測定することでウェーハの厚さを測定するものである。ここで、変位センサ13は接触式と非接触式(静電容量やレーザー変位計など)のものを用いることができ、ウェーハへのキズの影響を考えると非接触式が好ましい。このように、ウェーハの厚さをインラインで測定できるようになっている。
【0025】
本発明の両面研磨方法では、このような両面研磨装置を用い、図4に示すように、高研磨レートで研磨する第1の研磨工程と、次に低研磨レートで研磨する第2の研磨工程の2つの研磨工程でウェーハを研磨する。ここで、第1の研磨工程は、主に前工程で残存したウェーハ表面の加工歪みやピットをとり除くための工程であり、生産性向上のため研磨荷重を高くし、高研磨レートで研磨する。第2の研磨工程は、主に平坦度を調整するための工程であり、前回の平坦度の測定結果に基づいて適切に研磨条件を設定し、低研磨レートで研磨する。なお、本発明で用いる上記した両面研磨装置の構成は例であり、これに限定されることはない。
【0026】
以下、本発明の両面研磨方法を図1を用いてより具体的に説明する。
図1に示すように、前回の研磨終了後(図1のS1)のウェーハをロボットによって両面研磨装置から回収し(図1のS2)、回収槽に収納する。全てのウェーハを両面研磨装置から回収した後、測定するウェーハをロボットが回収槽から取り出し(図1のS3)、必要に応じてウェーハ表面の水分を送風機により除去した後(図1のS4)、仕上がり厚さ及び平坦度を測定する(図1のS5)。
【0027】
ここで、仕上がり厚さは厚さ測定器で測定できる。この際、測定に使用するウェーハ枚数は1回のバッチで研磨されたウェーハのうち1枚以上であれば良く、2枚以上測定した場合は平均値を使用する。また、例えばウェーハの中心を通る水平線上の複数点の位置の厚さを測定し、仕上がり厚さをその平均値とすることができる。
また、測定する平坦度として、ウェーハの中心を通る断面形状である全体の平坦度とウェーハの外周部のダレ形状又はハネ形状である外周部の平坦度とすることができる。
【0028】
平坦度の測定は平坦度測定器を用いて行うことができる。また、以下に示すように、厚さを測定し、その厚さから平坦度を数値化することによって行うこともできる。すなわち、まず、厚さ測定器で厚さを測定する。この測定した厚さからウェーハの平坦度を数値化する。例えば、ウェーハ全体の平坦度は複数点の位置で測定した厚さの最大値と最小値との差とすることができ、外周部の平坦度はウェーハ外周3mm位置の厚さと1mm位置の厚さとの差とすることができる。
従来のように両面研磨装置外にある平坦度測定器で平坦度を測定するのではなく、上記のように、ウェーハの厚さをインラインで測定し、この厚さから平坦度を数値化するようにすれば、生産性が低下することもないので好ましいが、特にこれに限定されることない。
【0029】
次に、平坦度の測定結果に基づいて次回研磨時の第2の研磨工程の研磨条件を設定する(図1のS6、S7)。この際、特に外周部の平坦度の測定結果が良好であれば、第2の研磨工程の研磨条件を前回と同じに設定することができる。さらに、平坦度の測定結果に基づいて次回研磨時の仕上がり厚さを決定する(図1のS8)。
次に、研磨前のウェーハの厚さと決定した仕上がり厚さの差から必要な総研磨量を算出し(図1のS9)、過去の研磨速度を参考にして必要な第1の研磨工程の研磨時間を算出して設定する。
このようにして研磨条件を設定し、ウェーハの研磨を開始する。
【0030】
このような本発明の両面研磨方法であれば、キャリアの厚さを基準値として用いないのでキャリアの厚さの経時変化に影響されることもなく、前回の平坦度の測定結果に基づいて平坦度を効果的に安定的に改善できる。また、平坦度の測定をインラインで行うようにすれば、生産性が低下することもない。
また、上記のように測定する平坦度を全体の平坦度と外周部の平坦度とすることで、全体の平坦度と外周部の平坦度とのそれぞれの測定結果に基づいて、第2の研磨工程の研磨条件をより詳細に設定でき、平坦度をより効果的に改善できる。
【0031】
第2の研磨工程の研磨条件を設定する工程において、具体的な研磨条件として、研磨荷重、キャリアの自転数及び公転数、上下定盤の回転数、研磨時間の少なくともいずれか1つを設定することができる。
このようにすれば、特に全体の平坦度と外周部の平坦度とを測定する場合において、全体の平坦度と外周部の平坦度を共に効果的に改善できる。
ここで、例えば研磨荷重は50〜300g/cm、上下定盤は1〜50rpm、研磨時間は25分以下の範囲内になるように設定することができる。また、キャリアの自転数及び公転数は上下定盤、サンギア、インターナルギアの回転数によって調整でき、サンギア、インターナルギアの回転数は上下定盤の回転数と同じとすることができる。
【0032】
この際、具体的な設定方法として以下のように設定することが好ましい。
外周部の平坦度の結果がハネ形状であった場合には、前回の研磨時よりも、研磨荷重を減少し、かつ上下定盤の回転数とキャリアの自転数及び公転数とを増加する。低荷重で上下定盤の回転数とキャリアの自転数及び公転数とを増加することで、ウェーハ中心部まで研磨剤が行き渡るようになる。またウェーハ中心部は研磨による発熱の影響及び研磨剤の冷却効果が外周部よりも少ないため温度が高くなっている。この2点の理由からウェーハ中心部は外周部に比べて機械的研磨および化学的研磨が促進され中央部分の研磨レートが速く、凹形状になりやすくなる。
【0033】
一方、外周部の平坦度の結果がダレ形状であった場合には、前回の研磨時よりも、研磨荷重を増加し、かつ上下定盤の回転数とキャリアの自転数及び公転数とを減少するように研磨条件を設定する。このようにすれば、上記と逆にウェーハ中心部まで研磨剤が行き渡らなくなるので中央部分の研磨レートが遅く、凸形状になりやすくなる。
このように、第2の研磨工程の研磨条件を設定して凹又は凸形状になりやすくし、これに仕上がり厚さによる全体の平坦度の調整とを組み合わせることで、全体及び外周部の平坦度を共に改善できる。
【0034】
例えば、平坦度測定の結果が全体が凸形状で外周部がハネ形状であった場合、前回の研磨時よりも、研磨荷重を減少し、かつ上下定盤の回転数とキャリアの自転数及び公転数とを増加して凹形状にしやすくするとともに、仕上がり厚さを厚くして凸形状にしやすくする。このように設定することで、全体及び外周部の平坦度を共に改善できる。また、平坦度測定の結果が全体が凹形状で外周部がダレ形状であった場合には、前回の研磨時よりも、研磨荷重を増加し、かつ上下定盤の回転数とキャリアの自転数及び公転数とを減少して凸形状にしやすくするとともに、仕上がり厚さを薄くして凹形状にしやすくする。このようにすれば同様に全体及び外周部の平坦度を共に改善できる。
【0035】
なお、従来では、例えば全体が凸形状で外周部がハネ形状であった場合には、全体の凸形状を改善するために仕上がり厚さを薄くする調整のみ行っているので、キャリアによる研磨布の沈み込み量を抑える、いわゆるリテーナー効果のため外周部のハネ形状がさらに強くなってしまう。
【0036】
本発明では、上記したように、ハネ及びダレ形状をそれぞれ凹及び凸形状にシフトさせる条件を設定した上で、これに応じて仕上がり厚さを設定して全体が平坦になるようにするので、全体及び外周部の平坦度が共に改善される。
また上記したように、外周部の平坦度の結果がハネ及びダレ形状でなく平坦であった場合に、第2の研磨工程の研磨条件を前回の研磨時と同じに設定できるが、この場合には、第1の研磨工程の研磨時間を変更して仕上がり厚さを調整することで全体の平坦度を改善できる。具体的には、第1の研磨工程の研磨時間を、全体の平坦度の結果が凹形状であった場合には仕上がり厚さが前回の研磨時よりも厚くなるように設定し、又は全体の平坦度の結果が凸形状であった場合には仕上がり厚さが前回の研磨時よりも薄くなるように設定すれば良い。
【0037】
ここで、第2の研磨工程の研磨時間は、上記した形状調整のために十分な研磨量となるように設定されることが好ましい。特に限定はされないが、例えば研磨量が1.5〜5.0μmの範囲となるように研磨時間を設定することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
(実施例)
平坦度の測定をインラインで行うことができる両面研磨装置を用い、図1に示すような本発明の両面研磨方法に従ってウェーハを研磨し、平坦度を評価した。研磨したウェーハとして、CZ法により製造されたシリコン単結晶インゴットをスライスし、エッジ部の面取り、ラッピング、エッチングを施した直径300mmのシリコンウェーハを用意した。また、両面研磨装置の研磨布として上下定盤側共にウレタン発泡体のものを用い、研磨剤はコロイダルシリカ砥粒を含み、pHを10.0〜11.0の範囲内で調整されたものを使用した。
【0040】
まず、1バッチ目の研磨条件を以下のように設定した。第1の研磨工程の研磨荷重は250g/cm、上下定盤、サン、インターナルギヤの回転数は、キャリア公転数と上定盤回転数の差及び下定盤回転数とキャリア公転数の差が共に20rpmになるように、キャリア自転数は1rpmになるようにそれぞれ設定した。第2の研磨工程の研磨荷重は180g/cm、上下定盤、サン、インターナルギヤの回転数は第1の研磨工程と同様に設定した。また、第2の研磨工程の研磨時間は3.5分とし、仕上がり厚さが777μmになるように第1の研磨工程の研磨時間を設定した。
【0041】
このような研磨条件でウェーハを研磨し、研磨後のウェーハの平坦度を測定した。その結果、平坦度は全体が凸形状で外周部がハネ形状であった。そこで、2バッチ目の第2の研磨工程の研磨条件を以下のように設定した。研磨荷重を130g/cmに減少し、上下定盤の回転数とキャリアの自転数及び公転数とを増加した。この際、キャリア公転数と上定盤回転数の差及び下定盤回転数とキャリア公転数の差が共に25rpmになるようにした。また、キャリアの自転数は4rpmに増加した。また、仕上がり厚さを780μmに増加し、第2の研磨工程の研磨時間は6分とした。なお、第1の研磨工程の研磨条件は仕上がり厚さを780μmにするような研磨時間に変更した以外は1バッチ目と同じ条件とした。このような研磨条件でウェーハを研磨し、研磨後のウェーハの平坦度を測定した。
【0042】
その結果、全体及び外周部の平坦度を共に良好な値に改善できた。図5は後述する比較例の結果を1としたときの平坦度の結果を示す図である。図5に示すように、実施例、比較例とも全体の平坦度を示すGBIRは良好であったが、外周部の平坦度を示すSFQR、ESFQRは比較例に比べ実施例の方が改善されていた。
また、平坦度の測定をインラインで行ったため工程時間を増加することなく、すなわち生産性を低下させることもなく研磨することができた。
このように、本発明の両面研磨方法はウェーハの平坦度を安定的に向上できることが確認できた。また、本発明ではキャリアの厚さを基準に研磨条件を設定しないので、キャリアの厚さの経時変化に影響されず平坦度を改善できることが確認できた。
【0043】
(比較例)
実施例1における1バッチ目の研磨と同様な条件でシリコン単結晶ウェーハを研磨した。研磨後のウェーハを両面研磨装置外にある平坦度測定器(黒田精工製Nanometro 300TT)で測定したところ平坦度は全体が凸形状で外周部がハネ形状であった。そこで、全体の平坦度を改善するために、2バッチ目の研磨において、キャリアの厚さに対するウェーハの仕上がり厚さを薄く設定した。
その結果、全体の平坦度は改善されたが、外周部の平坦度はハネ形状が強くなってしまい、図5に示すように、実施例と比べ外周部の平坦度が大幅に悪化してしまった。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0045】
1…両面研磨装置、 2…上定盤、 3…下定盤、 4…研磨布、
5…キャリア、 6…保持孔、 7…サンギア、 8…インターナルギア、
9…貫通孔、 10…ノズル、 11…ロボット、 12…厚さ測定器、
13…変位センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアに保持されるウェーハを研磨布が貼付された上下の定盤で挟み込み、前記キャリアを自転及び公転させ、研磨剤を供給しながら前記ウェーハの両面を同時に研磨するウェーハの両面研磨において、高研磨レートで研磨する第1の研磨工程と、次に低研磨レートで研磨する第2の研磨工程とを有する両面研磨方法であって、
研磨後に前記ウェーハの平坦度を測定する工程と、
前記平坦度の測定結果に基づいて次回研磨時の前記第2の研磨工程の研磨条件を設定する工程とを含むことを特徴とする両面研磨方法。
【請求項2】
前記測定する平坦度として、前記ウェーハの中心を通る断面形状である全体の平坦度と前記ウェーハの外周部のダレ形状又はハネ形状である外周部の平坦度とすることを特徴とする請求項1に記載の両面研磨方法。
【請求項3】
前記第2の研磨工程の研磨条件を設定する工程において、前記研磨条件として、研磨荷重、前記キャリアの自転数及び公転数、前記上下定盤の回転数、研磨時間の少なくともいずれか1つを設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の両面研磨方法。
【請求項4】
前記第2の研磨工程の研磨条件を設定する工程において、前記外周部の平坦度の結果がハネ形状であった場合には、前回の研磨時よりも、前記研磨荷重を減少し、かつ前記上下定盤の回転数と前記キャリアの自転数及び公転数とを増加し、前記外周部の平坦度の結果がダレ形状であった場合には、前回の研磨時よりも、前記研磨荷重を増加し、かつ前記上下定盤の回転数と前記キャリアの自転数及び公転数とを減少するように前記研磨条件を設定することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の両面研磨方法。
【請求項5】
前記第1の研磨工程の研磨時間を、前記外周部の平坦度の結果がハネ形状であった場合に仕上がり厚さが前回の研磨時よりも厚くなるように設定し、前記外周部の平坦度の結果がダレ形状であった場合に仕上がり厚さが前回の研磨時よりも薄くなるように設定することを特徴とする請求項4に記載の両面研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94954(P2013−94954A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243342(P2011−243342)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】