説明

中温化学蒸着処理

【課題】本発明は、中温化学蒸着処理を用いて基体をコーティングする方法を提供する。
【解決手段】本発明は、1つ以上の基体を反応室において反応温度まで加熱し、約1〜30%のハロゲン化水素と所定量の炭素窒素源、金属ハロゲン化合物、H2、及び任意のN2とから構成される蒸着処理気体を反応室に導入して、この1つ以上の基体の表面上に浸炭窒化物含有コーティング層を蒸着する中温化学蒸着処理によって、少なくとも1つの基体を浸炭窒化物含有コーティングでコーティングする方法を含む。また、本発明は、蒸着処理気体を反応室に導入する間、反応室における温度勾配を維持する中温化学蒸着処理によって、少なくとも1つの基体を浸炭窒化物含有コーティングでコーティングする実施の形態も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中温化学蒸着処理を用いて基体をコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学蒸着は、基体表面に単数又は複数のコーティング層を付与する場合に用いられる。典型的には、各コーティング層の厚さは、1ミクロン未満〜約20ミクロンのオーダーであってよい。この化学蒸着では、コーティングを構成する原子を含有する1種類以上の気体を、高温において基体表面上で若しくは基体表面の非常に近くで還元又は分解することによって、所望の組成から成るコーティングを基体上に蒸着する。蒸着物は、金属、半導体、合金、又は耐熱化合物であってよい。
【0003】
中温化学蒸着が化学蒸着と異なる点は、中温化学蒸着で用いられる反応温度は化学蒸着で用いられる反応温度よりも著しく低い、という点である。この温度差は、何百度というオーダーであることが多い。中温化学蒸着において温度を低下させる1つの方法としては、反応することによってより低い温度で所望のコーティングを形成することのできる、1種類以上の反応物気体を用いる方法がある。
【0004】
TiCNコーティングは、化学蒸着或いは中温化学蒸着のいずれかによって蒸着することができる。化学蒸着及び中温化学蒸着によってTiCNコーティングを蒸着する方法は、耐摩耗性であり且つ硬質であるコーティングを基体上に付与する場合に有用である、ということがわかっている。TiCNコーティングを蒸着する化学蒸着処理の一例としては、四塩化チタン(TiCl4)及び分子水素(H2)と共に、反応物としてメタン(CH4)を含有する、蒸着処理気体を用いることによって、約1000℃の反応温度でTiCNコーティングを形成する方法がある。この蒸着処理気体における反応物気体CH4をCH3CN気体で置換すれば、中温化学蒸着処理が得られ、これによって、700〜900℃の範囲の反応温度で、TiCNコーティングを基体上に蒸着することができる。
【0005】
蒸着処理気体においてTiCl4及びH2と共にCH3CNを用いる中温化学蒸着処理では、次の式で表される反応によってTiCN層が形成される。
TiCl4 + CH3CN + 5/2H2 → TiCN + 4HCl + CH4
【0006】
蒸着処理気体の一部としてCH3CNを用いる中温化学蒸着処理を用いて、1つ以上のTiCN層で基体をコーティングすることは、当業界ではよく知られている。例えば、ビッツァー(Bitzer)らによる米国特許第4,196,233号には、他の物質から選択された浸炭窒化物で無機基体をコーティングする処理が説明されており、CH3CNを用いる中温化学蒸着コーティング処理を用いる方法が開示されている。エー.ティー.サンサナム(A.T.Santhanam)及びディー.ティー.クイント(D.T.Quinto)による“Surface Engineering of Carbide, Cermet, and Ceramic Cutting Tools”(「炭化物、サーメット、及びセラミック切削工具の表面工学処理」)(ASM Handbook, Vol. 5, Surface Engineering (1994))の900〜908頁には、超硬合金上にTiCNを蒸着する中温化学蒸着処理は1980年代半ばに商業化された、と述べられている。また、この処理では、TiCl4とH2と例えばCH3CNのような有機炭素窒素化合物との混合物を含有する蒸着処理気体、及び700〜900℃の反応温度を用いると、従来の化学蒸着処理よりも低い温度で蒸着速度が速くなる、と述べられている。さらに、この処理には、温度の高い従来の化学蒸着処理よりも、熱によって生じる引張亀裂が少ないという利点がある、と述べられている。
【0007】
何年にもわたり、このCH3CNを用いる中温化学蒸着処理に対して改良が加えられてきた。例えば、オダニ(Odani)らによる米国特許第5,436,071号には、反応温度800〜900℃及び反応圧力30〜200トル(4〜27kNm-2)において、0.1〜1%のCH3CNと1〜5%のTiCl4と0〜25%の分子窒素(N2)とから構成されると共に、残りの部分がH2から構成される、反応気体を用いることによって、サーメット上にTiCNコーティングを付与する方法が、説明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この従来技術の中温化学蒸着処理は商業的に有用であったが、これにはいくつかの欠点がある。商業的に特に重大な1つの欠点は、TiCNの蒸着速度がいくつかの化学蒸着処理の蒸着速度よりは速いがやはりいくらか遅い、という点である。このように蒸着速度が遅いと、基体をコーティングするのに必要なバッチサイクルの時間が長くなり、これは、生産速度に悪影響を及ぼす。
【0009】
この従来技術の中温化学蒸着処理に伴なう別の欠点は、中温化学蒸着反応室全体にわたるコーティング厚さにばらつきが生じることが多い、という点である。この問題によって、蒸着処理気体の入口付近に配置された基体は、蒸着処理気体の入口から離れて配置された基体よりも、コーティングが著しく厚くなることが多い。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、所定量のCH3CN、TiCl4、H2気体、及び任意のN2気体を含む中温化学蒸着処理気体に、体積百分率約1〜約30%のHCl気体を追加することによって、所定の反応温度でTiCNコーティングの蒸着速度が著しく速くなる、という驚くべき発見をした。従って、本発明は、1つ以上の基体を反応室において反応温度まで加熱し、次に、約1〜約30%のHClと所定量のCH3CN、TiCl4、H2、及び任意のN2とを含む蒸着処理気体を反応室に導入して、この1つ以上の基体の表面上にTiCN層を蒸着する中温化学蒸着処理によって、少なくとも1つの基体をTiCNコーティングでコーティングする方法を提供する。
【0011】
本発明は、この中温化学蒸着処理に適した基体であれば、いずれの所望の基体に関して用いてもよい。このような基体の例としては、セラミック、超硬合金、サーメット、高速度鋼、及びその他の種類の鋼が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本発明は、TiCN又はその他のコーティング組成物から成る1つ以上のコーティング層が付与された基体に関して用いてもよい。また、本発明は、他の方法により蒸着されるコーティング層で連続的に又は断続的にでも覆われることとなる、1つ以上のTiCN層を蒸着する場合に用いてもよい。これらの下層又は上層は、本発明の方法によって付与してもよいし、その他のコーティング蒸着方法によって付与してもよい。このようなその他のコーティング蒸着方法の例としては、化学蒸着、従来の中温化学蒸着、物理蒸着、又は、これらを組み合わせた方法、及び、例えばプラズマ強化を用いるというようなこれらに変化をつけた方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるわけではない。
【0012】
本発明が、TiCNコーティングを基体上の別のコーティング層の上に付与するのに用いられる場合はいつでも、明細書中のこのコンテキストにおいて、このような基体の「表面」と言えば、基体上の最も外側の層の表面を意味する、ということは理解されるべきである。例えば、本明細書中で、基体上に、TiCN層を付与する前の時点で、最も内側の層であるTiN層と、中間の層であるTiCN層と、最も外側の層であるもう1つのTiN層とから成る、3つのコーティング層が既にある場合、本発明の方法によってこの基体の表面にTiCNコーティングを付与すると言えば、本発明の方法によって最も外側のTiN層の外側表面にTiCNコーティングを付与することを意味する、ということは理解されるべきである。
【0013】
本発明によってコーティングされる基体は、この中温化学蒸着処理に適した形状寸法であれば、いずれの形状寸法であってもよい。本発明は、様々な形状寸法の切削工具をコーティングする場合に特に有用である。例えば、本発明は、旋削、フライス削り、又は穿孔用の切削工具の形態である基体に関して用いてもよいが、これに限定されるわけではない。このような切削工具の例としては、ドリル、エンドミル、タップ、リーマ、及びブローチのような、割出し可能な切削インサート及び長尺状の回転工具が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0014】
本発明者は、本発明のある実施の形態では、中温化学蒸着反応室全体にわたるTiCNコーティング蒸着厚さの均一性が著しく向上することによって、TiCNコーティングの蒸着速度も著しく速くなる、という驚くべき結果も発見した。本発明のこの態様は、反応室全体にわたって配置された複数の基体が同時にコーティングされる場合に特に有益である。このような場合、CH3CNを用いる従来技術の中温化学蒸着処理では、蒸着処理気体の反応室への入口位置に対するそれぞれの基体の位置に依って、基体上に蒸着されるTiCNコーティングの厚さにばらつきが生じる。本発明のある好適な実施の形態によれば、この位置に依るTiCNコーティング厚さのばらつきが著しく減少すると同時に、TiCNコーティングの蒸着速度が速くなる。
【0015】
また、本発明者は、約1〜約30%のHClと所定量のCH3CN、TiCl4、H2、及び任意のN2とを含む蒸着処理気体を用いると共に、反応室において温度勾配を用いることによって、TiCNコーティングの蒸着速度、及び、この中温化学蒸着処理中に付与されるTiCNコーティング厚さの均一性を、さらに制御することができる、という驚くべき結果も発見した。従って、本発明は、約1〜約30%のHClと所定量のCH3CN、TiCl4、H2、及び任意のN2とを含む蒸着処理気体を反応室に導入して、1つ以上の基体の表面上にTiCN層を蒸着する間、反応室における温度勾配を維持する中温化学蒸着処理によって、少なくとも1つの基体をTiCNコーティングでコーティングする実施の形態も含む。
【0016】
本発明者は、本発明が、上記の成分気体のうちの1種類以上が別の1種類以上の気体で完全に又は部分的に置換された蒸着処理気体の使用を含む、ということも意図する。例えば、本発明者は、本発明のある実施の形態では、蒸着処理気体において、CH3CNを、蒸着されるコーティングの炭素窒素源としての機能を果たすことのできる別の気体化合物で置換してもよいし、HClを、別の気体ハロゲン化水素で置換してもよいし、TiCl4を、コーティングの金属源としての別の気体金属ハロゲン化合物で置換してもよい、ということを意図する。また、本発明者は、本発明が、所定量の1種類以上の反応気体がさらに含まれた蒸着処理気体の使用を含む、ということも意図する。例えば、本発明者は、ある実施の形態では、酸素又はホウ素のような所定量の1種類以上の反応気体をさらに追加することによって、1種類以上の元素をさらにコーティングに供給してもよい、ということを意図する。このような蒸着処理気体の置換及び追加を含む本発明の実施の形態では、TiCN以外の浸炭窒化物含有コーティングを蒸着することとなってもよい。このような他の浸炭窒化物含有コーティングとしては、オキシカルボナイトライドコーティング及びボロカルボナイトライドコーティングが挙げられる。
【0017】
従って、本発明は、1つ以上の基体を反応室において反応温度まで加熱し、次に、約1〜約30%のハロゲン化水素と所定量の炭素窒素源、金属ハロゲン化合物、H2、及び任意のN2とを含む蒸着処理気体を反応室に導入して、この1つ以上の基体の表面上に浸炭窒化物含有コーティング層を蒸着する中温化学蒸着処理によって、少なくとも1つの基体を浸炭窒化物含有コーティングでコーティングする方法を含む。このような方法において、蒸着処理気体は、所定量の1種類以上の追加の反応気体をさらに含んでいてもよい。また、本発明は、約1〜約30%のハロゲン化水素と所定量の炭素窒素源、金属ハロゲン化合物、H2、及び任意のN2とを含む蒸着処理気体を反応室に導入して、1つ以上の基体の表面上に浸炭窒化物含有コーティング層を蒸着する間、反応室における温度勾配を維持する中温化学蒸着処理によって、少なくとも1つの基体を浸炭窒化物含有コーティングでコーティングする方法も含む。このような方法において、蒸着処理気体は、所定量の1種類以上の追加の反応気体をさらに含んでいてもよい。
【0018】
本発明は、本発明の処理によってコーティングされた基体も含む。
【0019】
請求及び開示された主題において特有であるこれらの及びその他の特徴並びに利点は、現在好適である実施の形態についての以下の詳細な説明及び添付の図面によって、当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の中温化学蒸着反応器の概略断面図である。
【図2】試験Aでコーティングされた基体の一部の拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のある好適な実施の形態では、この中温化学蒸着処理は、以下の蒸着処理気体組成、反応温度、及び反応室圧力範囲を用いて行われる。
【0022】
蒸着処理気体は、好ましくは、体積百分率約1〜約30%のHClと、約0.2〜約3.0%のCH3CNと、約0.5〜約5.0%のTiCl4と、0〜約35%のN2と、約40〜約98%のH2とを含有する。より好ましくは、この蒸着処理気体は、約2.3〜約20%のHClと、約0.3〜約0.7%のCH3CNと、約0.9〜約2.1%のTiCl4と、約10〜約30%のN2と、約50〜約85%のH2とを含有する。
【0023】
反応温度は、好ましくは、約550〜約900℃の範囲であり、より好ましくは、約700〜約900℃未満の範囲である。最も好ましくは、この反応温度は、約830〜約880℃の範囲である。本発明のある実施の形態では、反応室において温度勾配を用いることによって、蒸着処理気体の1箇所以上の入口位置に近接した1つ以上の基体を、蒸着処理気体の1箇所以上の入口位置から最も離れた1つ以上の基体よりも低い反応温度に加熱する。本発明者は、このような勾配を用いることによって、TiCNコーティングの蒸着速度、及び、本発明に基づいて行われる中温化学蒸着処理中に付与されるTiCNコーティング厚さの均一性を、さらに制御することができる、ということを発見した。好ましくは、このような温度勾配は、約10〜約100℃の範囲であり、より好ましくは、約30〜約50℃の範囲である。
【0024】
反応圧力は、好ましくは、約5〜約800トル(約0.7〜約107kNm-2)の範囲である。より好ましくは、この反応圧力は、約40〜約120トル(約5〜約16kNm-2)の範囲である。
【0025】
本発明のある実施の形態では、成分気体であるHCl、CH3CN、及びTiCl4のうちの1種類以上が別の気体で完全に又は部分的に置換された、蒸着処理気体が用いられる。従って、例えば、本発明のある実施の形態では、成分気体であるCH3CNが、気体であるモノメチルアミン(CH3NH2)、ジメチルアミン((CH3)2NH)、トリメチルアミン((CH3)3N)、シアン化水素(HCN)、及びジメチルヒドラジン(CH3(NH)2CH3)のうちの1種類以上のような、コーティングの別の炭素窒素源で完全に又は部分的に置換された、蒸着処理気体が用いられる。同様に、本発明のある実施の形態では、HClが、ヨウ化水素(HI)、臭化水素(HBr)、若しくはフッ化水素(HF)のような、別のハロゲン化水素で完全に又は部分的に置換された、蒸着処理気体が用いられる。また、同様に、本発明のある実施の形態では、TiCl4が、Tiのフッ化物、臭化物、若しくはヨウ化物のような、コーティングのTi金属源としての機能を果たす1種類以上の別の気体で完全に又は部分的に置換された、蒸着処理気体が用いられる。
【0026】
本発明のある実施の形態では、所定量の1種類以上の追加の反応気体がさらに含まれた、蒸着処理気体が用いられる。例えば、この蒸着処理気体は、一酸化炭素(CO)と二酸化炭素(CO2)のうちの少なくとも一方を所定量含んでいてもよい。
【0027】
蒸着処理気体の成分気体のうちの1種類以上が置換された本発明のある実施の形態と、蒸着処理気体が所定量の1種類以上の追加の反応気体をさらに含む本発明のある実施の形態との実施において、蒸着されるコーティングは、TiCN以外の浸炭窒化物含有コーティングであってもよい。例えば、蒸着処理気体において、TiCl4が、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、若しくはタンタル(Ta)、或いは、これら同士の及び/若しくはチタンとの混合物並びに合金のような金属の、塩化物、フッ化物、臭化物、若しくはヨウ化物で完全に又は部分的に置換された、本発明の実施の形態の実施においては、蒸着されるコーティングは、金属の塩化物、フッ化物、臭化物、若しくはヨウ化物を含有していてもよく、これによりTiが完全に又は部分的に置換されることによって、Hf、Nb、V、Zr、若しくはTa、或いは、これら同士の及び/若しくはチタンとの合金又は混合物の、浸炭窒化物から成るコーティングが生成される。例えば、蒸着処理気体においてTiCl4を四塩化ジルコニウム(ZrCl4)で完全に置換した本発明の実施の形態では、TiCNの代わりにZrCNのコーティングが蒸着される。
【0028】
同様に、本発明の実施の形態では、蒸着処理気体において1種類以上の追加の気体成分をさらに用いることによって、TiCN以外の浸炭窒化物含有コーティングが蒸着されることとなってもよい。例えば、この蒸着処理気体に一酸化炭素(CO)又は二酸化炭素(CO2)を追加することによって、チタニウム・オキシカルボナイトライド(TiCON)から成る浸炭窒化物含有コーティングが蒸着されることとなってもよい。また、この蒸着処理気体において、CO又はCO2を追加すると共に、Hf、Nb、V、Zr、若しくはTa、或いは、これら同士の及び/若しくはチタンとの混合物並びに合金の、塩化物、フッ化物、臭化物、若しくはヨウ化物でTiCl4を置換した場合には、Hf、Nb、V、Zr、若しくはTa、或いは、これら同士の及び/若しくはチタンとの合金又は混合物の、オキシカルボナイトライドから成る浸炭窒化物含有コーティングが蒸着される。別の例として、この蒸着処理気体に塩化ホウ素(BCl3)を追加した場合には、チタニウム・ボロカルボナイトライド(TiBCN)から成る浸炭窒化物含有コーティングが蒸着されることとなる。さらに、この蒸着処理気体において、BCl3を追加すると共に、Hf、Nb、V、Zr、若しくはTa、或いは、これら同士の及び/若しくはチタンとの合金又は混合物の、塩化物、フッ化物、臭化物、若しくはヨウ化物でTiCl4を置換した場合には、Hf、Nb、V、Zr、若しくはTa、或いは、これら同士の及び/若しくはチタンとの合金又は混合物の、ボロカルボナイトライドから成る浸炭窒化物含有コーティングが蒸着される。
【0029】
蒸着処理気体の成分気体のうちの1種類以上が置換された本発明の実施の形態、及び、蒸着処理気体が1種類以上の追加の反応気体をさらに含む本発明の実施の形態において、好ましくは、中温化学蒸着反応圧力は約5〜約800トル(約0.7〜約107kNm-2)の範囲であり、反応温度は約550〜約900℃の範囲であり、温度勾配が用いられる場合、温度勾配は約10〜約100℃の範囲である。このような実施の形態においても、蒸着処理気体は、好ましくは、体積百分率約1〜約30%のハロゲン化水素と、約0.2〜約3.0%の炭素窒素源と、約0.5〜約5.0%の金属ハロゲン化合物と、0〜約35%のN2と、約40〜約98%のH2とを含有する。また、この蒸着処理気体が、CO又はCO2のような、所定量の1種類以上の追加の反応気体をさらに含む場合、このような追加気体の量はそれぞれ、約0.1〜約5.0%であるのが好ましい。
【0030】
以下の実施例は、本発明のある好適な実施の形態を例示するためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
試験を行って、本発明の実施の形態による場合と、従来の中温化学蒸着法による場合の、TiCNコーティングの蒸着速度、及び反応室全体にわたるコーティング厚さの均一性を比較した。どちらの試験にも、同一の処理条件を用いた。本発明の実施の形態に基づいて行った試験Aと、従来の中温化学蒸着処理に基づいて行った試験Bとの主な相違点は、用いた蒸着処理気体の組成である。これらの試験は、1つのTiCNコーティングを基体上に付与することによって行った。次に、反応室全体にわたる複数の所定位置から取り出した試料に対し、標準測定法を用いることによって、TiCNコーティング厚さを測定した。これらの位置は、蒸着処理気体の反応室への入口から様々な距離のところにある。
【0032】
これらの中温化学蒸着処理試験は、直径がおよそ20インチ(51cm)で長さがおよそ43.5インチ(110cm)であるレトルトを有する、従来の中温化学蒸着反応器において行った。この反応器が、図1に概略的に示されている。図1を参照すると、この反応器10は、レトルト12、炉14、頭蓋16、支持ツリー18、2つの気体分配マニホールドトレイ20、3つの気体加熱トレイ22、11の基体支持トレイ24、頂部絶縁体トレイ26、気体入口部28、及び気体出口部30を備える。支持ツリー18は中空管32を備えており、この中空管32は気体入口部28及び気体分配マニホールドトレイ20と流体連通している。また、この支持ツリー18は支持板34も備えており、この支持板34上には、気体分配マニホールドトレイ20、気体加熱トレイ22、基体支持トレイ24、及び頂部絶縁体トレイ26が積み重ねられている。中空管32、気体分配マニホールドトレイ20、気体加熱トレイ22、基体支持トレイ24、頂部絶縁体トレイ26、及びレトルト空洞部36間が流体連通していることによって、中空管32からトレイ20〜26を介してレトルト空洞部36へという気流のストリームを維持することができる。反応室38は、基体支持トレイ24の通気内側部分を構成している。
【0033】
気体分配マニホールドトレイ20、気体加熱トレイ22、基体支持トレイ24、及び頂部絶縁体トレイ26は、黒鉛から構成されている。レトルト12、頭蓋16、及び支持ツリー18は、インコネル(Inconel)718のような耐熱金属から構成されている。水冷ガスケット40でレトルト12と頭蓋16との間を気密シールすることによって、動作中、反応器10を、気体出口部30を介して真空ポンプで真空排気し、気体入口部28を介して気体で充填し直すことができる。
【0034】
気体加熱トレイ22は、直径がおよそ0.25インチ(0.6cm)である小さなセラミックビーズを含有しており、このセラミックビーズは、蒸着処理気体42を加熱する機能を果たす。頂部絶縁体トレイ26も、小さなセラミックビーズを含有している。基体支持トレイ24は、コーティングされる基体を支持するためのロッドを備えている。気体入口部28の内径はおよそ1.4インチ(4cm)であり、気体出口部30の内径はおよそ1.9インチ(5cm)である。トレイ20〜26の外径は約18インチ(46cm)であり、内径は約17インチ(43cm)である。
【0035】
動作中、蒸着処理気体42が気体入口部28に入るのに先立って、この蒸着処理気体42を構成する成分気体が予め混合され、約150〜約180℃まで加熱される。中温化学蒸着処理中、蒸着処理気体42は、気体入口部28から、支持ツリー18の中空管32を通って下り、気体分配マニホールドトレイ20へと流れる。この気体分配マニホールドトレイ20から、蒸着処理気体42は、気体加熱トレイ22内のセラミックビーズを通って進む。この気体加熱トレイ22において加熱されてから、蒸着処理気体42は、基体支持トレイ24において支持された基体を通って流れる。この基体支持トレイ24において、蒸着処理気体42が反応温度で反応することによって、基体上にTiCNコーティングが形成される。蒸着処理気体42は、1番上の基体支持トレイ24を出て、頂部絶縁体トレイ26に入り、次にレトルト空洞部36を通過してから、最後に気体出口部30を通って反応器10から出て行く。
【0036】
試験A及びBで用いた基体は、WCと、Co6.3%と、Ta3.5%と、Ti2%と、Nb1.5%とから成る組成を有する炭化タングステンである。これらの基体は、ケンナメタル型(Kennametal Style)SNMA433の形状寸法を有する切削工具である。また、これらの基体は、TiNの薄層で予めコーティングすることによって、下にある超硬合金とこれらの試験で蒸着されるTiCN層とが反応しないようにされている。
【0037】
基体は、当業者にはよく知られた従来の方法によってきれいにしてから、基体支持トレイ24内に装填した。およそ3,000〜4,000の基体を、11の基体支持トレイ24にわたり均等に分配した。
【0038】
基体の装填が完了した後、反応器を組み立てた。レトルト空洞部36から空気を真空排気することによって、圧力を約20トル(約3kNm-2)まで下げた。それから、このレトルト空洞部36を、約1気圧(760トル)(101kNm-2)までH2で充填し直した。次に、炉14を用いて、約3時間にわたり、基体を約870℃の反応温度まで加熱した。この温度は、熱電対44を用いて測定した。それから、この温度を約15分間保持した。次に、反応器10内の圧力を、圧力変換器46で測定するところの約90トル(約12kNm-2)まで下げた。そして、蒸着処理気体42を流し始め、基体を反応温度に保ちながら約180分間続けた。この間、反応器10内の圧力は、およそ120トル(120kNm-2)で維持した。
【0039】
試験1及び2で用いた蒸着処理気体の組成は、下の表1に示されている。これらの試験で用いた中温化学蒸着動作パラメータは、下の表2に示されている。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
蒸着処理気体流し時間の終わりに、蒸着処理気体の流れを止め、反応器10をH2とN2との混合気体でパージした。この反応器を、数時間にわたり冷却してから開いた。次に、TiCNコーティング厚さを測定するための基体を、積み重ねられた11の基体支持トレイ24の下から数えて1番目、4番目、8番目、及び11番目のトレイから取り外した。従って、トレイ1から取り出した測定試料が蒸着処理気体の反応室への入口に最も近く、トレイ11から取り出した測定試料がこの入口から最も離れている。
【0043】
図2は、試験Aで用いた、この試験AでTiCNコーティングを付与した後の、基体の一部の拡大断面を概略的に示している。図2に示されているように、試験開始に先立って、炭化タングステン基体52のすくい面54、逃げ面56、及びこのすくい面と逃げ面との接合部にある切れ刃58に付与されたTiN層50上に、TiCNコーティング48を蒸着した。
【0044】
TiCNコーティング厚さの測定は、すくい面上の、切れ刃から1mmの距離のところで行った。試験A及びBに対するこのTiCNコーティング厚さの測定結果は、下の表3に示されている。この結果によれば、平均コーティング厚さは、従来の中温化学蒸着法によって処理した試料の場合には約2.8ミクロンであったのに対し、本発明の実施の形態によって処理した試料の場合には約9.8ミクロンに増加した。さらに、厚さの測定値の標準偏差を平均厚さの測定値で割ったものである、変動係数で測定したところのコーティング厚さの変動性は、従来の中温化学蒸着法によって処理した試験Bにおける試料の場合には0.54であったのに対し、本発明の実施の形態によって処理した試験Aにおける試料の場合には0.28に減少した。この結果から、本発明の実施の形態に基づいて行った試験Aにおいては、所定量のCH3、TiCl4、H2、及びN2を含有した中温化学蒸着処理気体に所定量のHClを追加したことによって、TiCNコーティングの蒸着速度と、反応室全体にわたって配置された基体上のTiCNコーティング厚さの均一性との両方が著しく向上した、ということが明らかにわかる。
【0045】
【表3】

【0046】
[実施例2]
試験Cでは、蒸着処理気体の組成を試験Aで用いた組成とは異なるものにした、本発明の実施の形態の試験を行った。基体の組成、形状寸法、及び表面状態というようなその他の条件は全て、試験Aで用いた条件と本質的に同一である。
【0047】
試験Cで用いた蒸着処理気体の組成は上の表1に示されており、中温化学蒸着動作パラメータは上の表2に示されている。この試験Cで蒸着されたTiCNコーティング厚さの測定結果は、上の表3に示されている。この結果から、試験Cで実施した本発明の実施の形態においては、蒸着速度及びコーティングの均一性が、従来の中温化学蒸着法による試験Bで得られたものよりも向上した、ということがわかる。
【0048】
[実施例3]
試験Dでは、反応室において温度勾配を用いることによって、蒸着処理気体の反応室への入口位置に近接した基体を、この蒸着処理気体の入口から最も離れた基体の反応温度よりも約40℃低い反応温度に加熱した、本発明の実施の形態の試験を行った。基体の組成、形状寸法、及び表面状態というようなその他の条件は全て、試験Aで用いた条件と本質的に同一である。試験Dで用いた蒸着処理気体の組成は上の表1に示されており、中温化学蒸着動作パラメータは上の表2に示されている。
【0049】
この試験Dで蒸着されたTiCNコーティング厚さの測定結果は、上の表3に示されている。この結果から、試験Dで用いた条件によって、蒸着速度及びコーティングの均一性が、従来の中温化学蒸着法による試験Bで得られたものよりも向上した、ということがわかる。さらに、試験Dにおける変動係数0.16を試験Aにおける変動係数0.28と比較すれば、約1〜約30%のHClと所定量のCH3CN、TiCl4、H2、及びN2とを含む蒸着処理気体を用いると共に、温度勾配を用いることによって、反応室全体にわたるコーティングの均一性が、温度勾配を用いなかった場合に得られたものよりも著しく向上した、ということがわかる。
【0050】
[実施例4]
試験Eでは、試験Dと同様に温度勾配を用いた本発明の実施の形態を実施したが、反応圧力を、試験Dで用いた120トル(16kNm-2)レベルから、試験Eでは90トル(12kNm-2)に下げた。基体の組成、形状寸法、及び表面状態というようなその他の条件は全て、試験Dで用いた条件と本質的に同一である。試験Eで用いた蒸着処理気体の組成は上の表1に示されており、中温化学蒸着動作パラメータは上の表2に示されている。
【0051】
この試験Eで蒸着されたTiCNコーティング厚さの測定結果は、上の表3に示されている。蒸着速度及びコーティングの均一性の点において、試験Eの結果は、試験Dで得られた結果と同等であり、従来の中温化学蒸着法による試験Bで得られた結果よりは優れている。
【0052】
[実施例5]
試験Fでは、TiCl4とCH3CNの濃度が低くなるように蒸着処理気体の組成を変更した以外は、試験Eと同様の動作パラメータを用いた、本発明の実施の形態を実施した。また、試験Dと同様の組成、形状寸法、及び表面状態を有する基体を用いると共に、セラミックSi34と、イットリア(Y23)1%と、マグネシア(MgO)1%とから成る基体をさらに用いた(米国特許第5,382,273号参照)。これらのセラミック基体は、ケンナメタル型SNGA433Tの形状寸法を有しており、TiNで予めコーティングされていない。これらのセラミック基体の表面を、試験Fでの使用に先立って、当業者には知られた従来の方法によってきれいにした。
【0053】
試験Fで用いた蒸着処理気体の組成は上の表1に示されており、中温化学蒸着動作パラメータは上の表2に示されている。
【0054】
この試験Fで超硬合金インサート上に蒸着されたTiCNコーティング厚さの測定結果は、上の表3に示されている。セラミックSi34基体もTiCNでコーティングされていたが、このコーティング厚さは測定しなかった。この超硬合金インサート上のTiCNコーティング厚さの測定結果から、TiCN蒸着速度は、試験Eで得られた速度より遅かったが、従来の中温化学蒸着法による試験Bで得られた速度よりはやはり著しく速かった、ということがわかる。コーティングの均一性の点においては、試験Fの結果は、試験Dで得られた結果と同等であり、従来の中温化学蒸着法による試験Bで得られた結果よりは優れている。
【0055】
[実施例6]
本発明は、他のコーティング蒸着法と共に用いてもよい。実施例1〜5で述べた試験では、コーティングされていない基体又は予めコーティングされた基体の上にTiCNコーティングを付与する場合に本発明を用いてもよい、ということを示したが、試験Gでは、様々なコーティング材料から成る多層コーティングを基体上に形成する場合に、本発明を他のコーティング法と共に断続的に用いることができる、という1つの方法を示している。
【0056】
試験Gでは、本発明の実施の形態を、従来の化学蒸着及び中温化学蒸着によるコーティング蒸着法と共に用いることによって、予めコーティングされていない焼結炭化タングステンインサート上に多層コーティングを形成した。この試験Gで蒸着された層については、下の表4に示されている。反応圧力として、試験Aでは120トル(16kNm-2)を用いたのに対し、試験Gでは90トル(12kNm-2)を用いた以外は、試験Aと同様の条件を用いた、本発明の実施の形態を用いることによって、これらの層のうちの3つである、層2、4、及び6を蒸着した。試験Gに関し、層2、4、及び6を蒸着するのに用いた蒸着処理気体の組成については上の表1に示されており、これらの層に対する中温化学蒸着動作パラメータについては上の表2に示されている。
【0057】
【表4】

【0058】
試験Gで用いた多層コーティング及びコーティングされた基体のいくつかの態様は、同じくケンナメタルに譲渡されると共に本件と同日に出願される別の米国特許出願、つまり、米国特許出願番号09/260,970(ケンナメタル事件番号:K1499)の主題である。
【0059】
試験Gは、以下の方法で行った。試験Aに関して上述した方法で、基体を、試験Aに関して上述した反応器において、870℃の反応温度まで加熱した。次に、従来の化学蒸着法を用いて、TiNから成る層1を蒸着した。次に、試験Aに関して述べた方法で、本発明の実施の形態に基づいて、TiCNから成る中温化学蒸着層である層2を付与した。次に、従来の化学蒸着法を用いて、TiNから成る層3を蒸着した。次に、層2に対して用いた方法と同じ方法で、本発明の実施の形態に基づいて、TiCNから成る中温化学蒸着層である層4を付与した。次に、従来の化学蒸着法を用いて、TiNから成る層5を蒸着した。次に、層2及び4に対して用いた方法と同じ方法で、本発明の実施の形態に基づいて、TiCNから成る中温化学蒸着層である層6を付与した。次に、反応温度を上昇させ、従来の化学蒸着法を用いて、それぞれ、TiCN及びTiC、Al23、TiNのコーティングから成る、層7〜9を蒸着した。
【0060】
本発明の実施の形態による試験Gにおいて蒸着されたTiCN層2及び4に関し、コーティング厚さの測定を行った。このコーティング厚さの測定結果は、下の表5に示されている。この表5を上の表3と比較すれば、反応室全体にわたるTiCNコーティングの均一性は、試験Aで得られた均一性と同等であり、従来の中温化学蒸着法による試験Bで得られた均一性よりは優れている、ということが明らかである。
【0061】
【表5】

【0062】
下の表6は、試験A〜Gで得られたTiCN蒸着速度の比較を示している。この結果からも、試験Gの層2及び4におけるTiCN蒸着速度は、試験Aで得られた速度より遅かったが、従来の中温化学蒸着法による試験Bで得られた速度よりはやはり著しく速かった、ということがわかる。
【0063】
【表6】

【0064】
以上の実施例は、上述した設計である従来の反応室において行ったが、本発明は、従来の中温化学蒸着に関して用いるのに適した設計であれば、当業者に知られたいずれの設計である反応室において実施してもよい、ということは理解されるべきである。
【0065】
本明細書中で言及した特許及び特許出願は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0066】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明してきたが、本発明は、上記特許請求の範囲内であれば別の形態で実施してもよい、ということは理解されるべきである。従って、本発明の実施の形態を少ししか図示及び説明してこなかったが、上記特許請求の範囲で説明された本発明の趣旨及び範囲を逸脱しない限り、これらの実施の形態に多数の変更及び修正を加えてもよい、ということは当業者には明らかであろう。
【0067】
以下に説明する図面は、本発明の動作の理解を助けるためのものにすぎない。従って、これらの図面は、単に本発明を例示するためのものであって、本発明の限界を定義するためのものではない、ということは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)表面を有する少なくとも1つの基体を反応室において反応温度まで加熱するステップと、
b)1〜30%のハロゲン化水素と、炭素窒素源、金属ハロゲン化合物、及びH2とを含む蒸着処理気体を前記反応室に導入して、前記少なくとも1つの基体の前記表面上に浸炭窒化物含有コーティングを蒸着するステップと、
を含む、化学蒸着処理方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)が、前記蒸着処理気体の入口位置に近接した基体が、前記入口位置から離れた基体よりも低い反応温度に加熱されるように、基体全部にわたり温度勾配が形成される方法で、それぞれが表面を有する複数の基体を前記反応室において550〜900℃の範囲の反応温度まで加熱することを含むと共に、前記浸炭窒化物含有コーティングが、前記複数の基体のそれぞれの前記表面上に蒸着する、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記温度勾配が10〜100℃の範囲であり、0.7〜107kNm−2の反応圧力を維持するステップをさらに含む、請求項2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記温度勾配が30〜50℃の範囲であり、0.7〜107kNm−2の反応圧力を維持するステップをさらに含む、請求項3に記載の処理方法。
【請求項5】
前記温度勾配が30〜50℃の範囲であり、5〜16kNm−2の反応圧力を維持するステップをさらに含む、請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
前記反応温度が550〜900℃の範囲であり、0.7〜107kNm−2の反応圧力を維持するステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化水素が、HCl、HI、HBr、及びHFから成る群から選択され、前記炭素窒素源が、CHCN、CHNH、(CH)NH、(CH)N、HCN、及びCH(NH)CHから成る群から選択され、前記金属ハロゲン化合物が、Ti、Hf、Nb、V、Zr、及びTa、並びに、これらの混合物及び合金の、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物から成る群から選択される、請求項1から6のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項8】
前記蒸着処理気体が、N、CO、及びCOから成る群から選択される少なくとも1種類の気体をさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項9】
前記浸炭窒化物含有コーティングが、Ti、Hf、Zr、V、Nb、及びTa、並びに、これらの混合物及び合金の、浸炭窒化物、オキシカルボナイトライド、及びボロカルボナイトライドから成る群から選択される、請求項1から8のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項10】
前記ハロゲン化水素がHClであり、前記炭素窒素源がCHCNであり、前記金属ハロゲン化合物がTiClであり、前記浸炭窒化物含有コーティングがTiCNである、請求項1から9のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項11】
前記反応温度が600〜900℃の範囲である請求項10に記載の処理。
【請求項12】
前記蒸着処理気体が、1〜30%のハロゲン化水素と、0.2〜3.0%のCHCNと、0.5〜5.0%のTiClと、0〜35%のNと、40〜98%のHとを含む、請求項1から7及び9から11のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項13】
前記蒸着処理気体が、2.3〜20%のHClと、0.3〜0.7%のCHCNと、0.9〜2.1%のTiClと、10〜30%のNと、50〜85%のHとを含む、請求項1から7及び9から11のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項14】
前記反応温度が600〜900℃の範囲であり、0.7〜107kNm−2の反応圧力を維持するステップをさらに含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項15】
前記反応温度が830〜880℃の範囲であり、5〜16kNm−2の反応圧力を維持するステップをさらに含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項16】
前記反応温度が830〜880℃の範囲であると共に、前記蒸着処理気体がNをさらに含む、請求項1から15のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの基体が、セラミック、超硬合金、サーメット、及び高速度鋼から成る群から選択される少なくとも1つの基体を含む、請求項1から16のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項18】
前記セラミック、超硬合金、サーメット、及び高速度鋼から成る群から選択される少なくとも1つの基体が、少なくとも1つの切削工具を含む、請求項17に記載の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−137238(P2011−137238A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26981(P2011−26981)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【分割の表示】特願2000−602831(P2000−602831)の分割
【原出願日】平成12年2月24日(2000.2.24)
【出願人】(594027476)ケンナメタル インコ−ポレイテツド (5)
【Fターム(参考)】