説明

中空減速機内蔵アクチュエータ

【課題】本発明は、減速機構を組み込んだモータにおいて、軸方向寸法を小さくするとともに、中空の出力軸を得られ、減速機部とモータ部の分離も容易にできる、中空減速機内蔵アクチュエータを提供する
【解決手段】モータ部と、減速機部12と、ブレーキ部と、回転位置検出部とから構成され、回転を伝達するシャフトが中空形状で形成され、前記モータ部の出力軸11と減速機の入力軸14は別部品で構成され、前記モータ部の反負荷側に前記ブレーキ部が配置され、前記ブレーキ部の内周に軸受7を取付けると共に、前記ブレーキ部の内周に設けた前記軸受7とは、別の、少なくとも1つの軸受8により、前記モータ部の前記出力軸11を回転自在に支持したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空減速機内蔵アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の中空減速機付き中空モータについて図4に基づいて説明する。図2は第1の従来技術による中空減速機内蔵アクチュエータの側断面図で、(a)はその第1実施例、(b)は同じく第2実施例を示している。(a)において、11はモータの出力軸となる内部を中空としたモータ中空軸、12は中空減速機本体、13はモータ中空軸に設けられた歯切り部、14はインプットギヤ、15、16はオイルシール、17は減速機内部の空間(潤滑油充填用の空間)、18はモータブラケットを示す。本構造の第1実施例において、モータ中空軸11は中空減速機12の内部を貫通して取り付ける。この時、モータ出力軸11には予め歯切り部13を設けておく。次に第2実施例である、図4(b)において、21はモータ中空軸、22は減速機本体、23はモータ中空軸に設けられた軸内側歯切り部、24はインプットギヤ、25はモータブラケットを示す。モータ中空軸21は中空減速機22のインプットギヤ24で取り付ける。この時、モータ中空軸21には予め軸内側歯車部23を設けておく。これにより、モータのトルクをインプットギヤ14、24へ伝達できるとともに、モータ部から減速機部へと貫通する中空穴を確保することができる。
さらに、第1実施例の減速機の開放部についてはオイルシール15および16にてシールし、外部と遮断する。これにより、減速機内部の空間17には潤滑油を充填することができる。第2実施例については、グリース封入型の中空減速機22を用いることにより外部と遮断する。以上の構造とすることで、モータブラケット18、25を直接減速機へ取り付けている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−315261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の減速機内蔵モータは減速機をモータブラケットに直接取り付ける方式で減速機のフランジとモータブラケットが独立しており、軸方向寸法が長くなっていた。また、減速機として内接式遊星歯車減速機構を用いた場合、出力トルクに比例して減速機のインプットシャフトにラジアル荷重が加わるため、第1従来例において、遊星歯車減速機構を採用した場合、モータ中空軸の軸受寿命が短くなるという問題があった。また、第1実施例では、モータ出力軸に減速機を組み込む構造であるため、減速機またはモータのどちらかが故障した場合、モータと減速機を一体で交換しなければならなかった。また、モータ出力軸と減速機は別体となっているため、どちらかのみの交換も可能であるが、軸方向寸法が長くなってしまうという問題があった。
産業用ロボットでは設置面積を狭くする必要性からロボット本体の小形化が強く要求されている。この要求にこたえる一手段として減速機、電動機、位置検出器を一体化した減速機内蔵形モータをロボットの関節部に配置してロボットを構成する方法があり、ロボットの関節部を小さくするためには減速機内蔵型モータの軸方向寸法を短縮する必要がある。また、ロボットの機内ケーブルや装備ケーブルを通す必要性から、出力軸が中空であることが望ましい。しかしながら、モータと減速機の軸を一体にすると、モータと減速機のどちらか一方が故障した際に全て交換することになるといった問題が生じていた。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、減速機構を組み込んだモータにおいて、軸方向寸法を小さくするとともに、中空の出力軸を得られ、減速機部とモータ部の分離も容易にできる、中空減速機内蔵アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、モータ部と、減速機部と、ブレーキ部と、回転位置検出部とから構成され、回転を伝達するシャフトが中空形状で形成され、前記モータ部の出力軸と減速機の入力軸は別部品で構成され、前記モータ部の反負荷側に前記ブレーキ部が配置され、前記ブレーキ部の内周に軸受を取付けると共に、前記ブレーキ部の内周に設けた前記軸受とは、別の、少なくとも1つの軸受により、前記モータ部の前記出力軸を回転自在に支持したものである。
また、請求項2に記載の発明は、前記モータ部の前記出力軸を支持する軸受は、前記モータ部の反負荷側に配置され、前記モータ部のコイルを前記減速機の構造部の肉抜き部分に配置したものである。
また、請求項3に記載の発明は、前記モータ部の前記出力軸と前記減速機部の入力軸がスプラインで結合されたたものである。
また、請求項4に記載の発明は、前記減速機部のフランジは前記モータ部のコアにオーバーハングした円板形状で形成されたものである。
また、請求項5に記載の発明は、前記モータ部の前記出力軸の内周面は歯切りされ、前記減速機部の入力軸の外周面は、前記モータ部の前記出力軸の内周面の歯形と噛合うように歯切りされ、前記出力軸の前記内周面と前記入力軸の前記外周面が結合されたものである。
また、請求項6に記載の発明は、前記入力軸の先端が細くなるようにテーパ形状で形成され、前記入力軸に噛合するように前記出力軸もテーパ形状で形成されたものである。
また、請求項7に記載の発明は、前記モータ部のモータヨークの反負荷側端面にファンを備えたものである。
また、請求項8に記載の発明は、前記ファンがフィンとディスクから構成され、前記フィンがコイルエンドと空隙を介して円周上に配置され、前記ディスクが前記コイルエンドの端面にオーバーハングするように配置されたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、軸方向寸法を短縮することができる。
本構成によれば、ブレーキ内周に軸受を設けたため、軸受を保持するためのブラケットのスペースが不要となる。
また、モータのコイルを減速機構造部のデッドスペースに潜り込ませる構成とするため、L側のコイルエンドのスペースが不要となる。
また、モータの出力軸と減速機の入力軸がスプラインで結合されているので、モータと減速機を容易にできる。
また、第2実施例によれば、モータ側から減速機側への気流を発生させることにより、減速機グリースがブレーキに浸入するのを防止でき、モータ部の温度を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施例を示す中空減速機内蔵アクチュエータの側断面図
【図2】第2実施例を示す中空減速機内蔵アクチュエータの側断面図
【図3】ファン構造を示す正側面図
【図4】従来の中空減速機内蔵アクチュエータの側断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0009】
モータ出力軸11の外周には、減速機12側から順にモータヨーク10、第2軸受8、ブレーキハブ20、第1軸受7、エンコーダハブ26が取付けられている。モータヨーク10の外周には、永久磁石19が固着されており、永久磁石19の外周には空隙を介して、モータコア9が配置される。モータコア9外周とフレーム1の内周は接着等により固定される。モータコア9には図示しないコイル溝が設けられており、コイル溝に所定の磁極を構成するよう、巻線が施されている。巻線のコイルエンド5はモータコア9の減速機側、エンコーダ側の両軸方向に張り出している。フレーム1のエンコーダ側端面にはブレーキフレーム31が図示しないネジでフレーム1と一体に固定される。ブレーキフレーム31の内周には第2軸受8が固着されている。ブレーキ6はブレーキフレーム31に対してネジで固定されており、ブレーキハブ20とブレーキディスク32は図示しないスプラインによって、軸方向に摺動可能且つ、円周方向には同期して回転するように取付けられており、ブレーキディスク32が開放状態にある時はモータ出力軸11とともに回転し、ブレーキディスク32が拘束状態にある時は、モータ出力軸11が回転しないよう所定のブレーキトルクで拘束する。ブレーキ6の内周には第1軸受7が固着されている。第1軸受7および第2軸受8の内周はモータ出力軸11の外周に固着され、両軸受によってモータ出力軸11は回転自在に支承される。ブレーキ6のエンコーダ側にはエンコーダ基板固定板29が、図示しないネジにより固定されている。さらにエンコーダ基板固定板29にはエンコーダ基板28がネジにより固定される。エンコーダ基板固定版29の内周側とモータ出力軸11の間には、ブレーキ6から磨耗粉等のダストがエンコーダ内部へ浸入しないよう、オイルシールなどからなる防塵機構30が設けられている。エンコーダディスク27はエンコーダハブ26に接着固定されている。出力軸11の減速機側の内周にはモータ歯切り部13が設けられている。減速機入力軸2のモータ側外周にはインプットギヤ14が設けられている。インプットギヤ14はモータ歯切り部13と噛合うように構成され、モータ出力軸11が回転するとインプットギヤ14も結合された状態で同期して回転する。モータ歯切り部13は軸方向に軸径が細くなるテーパ形状をしており、インプットギヤ14も先端が細く形成され、モータ歯切り部13に噛合する形状となっており、インプットギヤ14はモータ歯切り部13に結合されて回転する。減速機12の内部には図示しない減速機構が設けられこれにより、所定の減速比に減速(または増速)された出力が減速機出力軸3から出力される。減速機12の内部には前記、減速機構を潤滑するためのグリースが封入されており、グリースの減速機外部への流出を防止するため、減速機入力軸2にオイルシール16が備えられている。減速機フランジ4の内周には、前記オイルシール16と減速機入力軸2を支持するための減速機反L軸受33が取付けられている。オイルシール16と減速機反L軸受33を軸方向に並べて取付けるため、減速機フランジ4の形状は内周がモータコア9にオーバーハングした円板状となっている。減速機フランジ4の円板部の幅は減速機構を保持するために必要な強度から決定されており、オイルシール16と減速機反L軸受33の設置幅より、強度的に必要とされる幅は狭くなるので、この分の肉抜きが可能である。この肉抜き部の形状を前記コイルエンド5が収まる形状とすることで、中空形減速機内蔵モータの軸方向寸法を短くできる。また、モータの軸受をブレーキ内周に配置することでデッドスペースを減少でき、さらに軸方向寸法を短くできる。
減速機とモータの結合は減速機の出力軸側から図示しない、減速機に設けた穴に所定本数の取付けボルト33を通し、フレーム1に設けた図示しないタップにネジ止めすることで行われるため、減速機12の取付け、取外しも容易に実施できる。
【実施例2】
【0010】
図2を用いて、第2実施例について説明する。第1実施例と同様箇所については説明を省略する。
モータヨーク10の外周でかつブレーキ側にファン126が取り付けられている。図3にファン126の構造を示す。ファン126は、ディスク128に複数のフィン127が円周等分割に放射状に備えられている。図2に示すようにフィン127の外周側は反負荷側のコイルエンド5の内周面に微小な空隙を介して配置され、ディスク128は、反負荷側のコイルエンド5の端面にオーバーハングするように設置されている。
次に動作について説明する。モータが起動するモータヨーク10に固定されたファン126も回転する。フィン127の周りの空気は、ファン126の回転に伴ってフィン127の円周方向へ気流が発生する。フィン127の外周に達した気流は、ディスク128により反負荷側への流れが阻害されるために、モータヨーク10とモータコア9間の空隙を通り、負荷側(減速機側)へ流れる。負荷側には、オイルシール16が取り付けられているため、ファン126の回転により、ファン126のモータ側圧力が高まる結果、減速機内で気化したグリースがオイルシール16から漏れるベーパーライズを防止できる。
また、ファン周辺の空気が攪拌されることでコイルエンドの発熱がブレーキ等の周辺部品へ伝達されるために、モータの温度上昇を低減できる。さらに、フィンはコイルエンドの内周のデットスペースに配置されるために中空減速機内蔵アクチュエータを小型化できる。

【符号の説明】
【0011】

1 フレーム
2 減速機入力軸
3 減速機出力軸
4 減速機フランジ
5 コイルエンド
6 ブレーキ
7 第1軸受
8 第2軸受
9 モータコア
10 モータヨーク
11 モータ出力軸
12、22 減速機本体
13、23 モータ歯切り部
14、24 インプットギヤ
15、16 オイルシール
17 減速機内部の空間
18、25 モータブラケット
19 永久磁石
20 ブレーキハブ
21 モータ中空軸
26 エンコーダハブ
27 エンコーダディスク
28 エンコーダ基板
29 エンコーダ固定板
30 防塵機構
31 ブレーキフレーム
32 ブレーキディスク
33 減速機反L軸受
34 取付けボルト
126 ファン
127 フィン
128 ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部と、減速機部と、ブレーキ部と、回転位置検出部とから構成され、回転を伝達するシャフトが中空形状で形成され、前記モータ部の出力軸と減速機の入力軸は別部品で構成され、前記モータ部の反負荷側に前記ブレーキ部が配置され、前記ブレーキ部の内周に軸受を取付けると共に、前記ブレーキ部の内周に設けた前記軸受とは、別の、少なくとも1つの軸受により、前記モータ部の前記出力軸を回転自在に支持した中空減速機内蔵アクチュエータ。
【請求項2】
前記モータ部の前記出力軸を支持する軸受は、前記モータ部の反負荷側に配置され、前記モータ部のコイルを前記減速機の構造部の肉抜き部分に配置したことを特徴とする請求項1記載の減速機内蔵中空アクチュエータ。
【請求項3】
前記モータ部の前記出力軸と前記減速機部の入力軸がスプラインで結合されたことを特徴とする請求項1記載の減速機内蔵中空アクチュエータ。
【請求項4】
前記減速機部のフランジは前記モータ部のコアにオーバーハングした円板形状で形成されたことを特徴とする請求項1記載の減速機内蔵中空アクチュエータ。
【請求項5】
前記モータ部の前記出力軸の内周面は歯切りされ、前記減速機部の入力軸の外周面は、前記モータ部の前記出力軸の内周面の歯形と噛合うように歯切りされ、前記出力軸の前記内周面と前記入力軸の前記外周面が結合されたことを特徴とする請求項1記載の減速機内蔵中空アクチュエータ。
【請求項6】
前記入力軸の先端が細くなるようにテーパ形状で形成され、前記入力軸に噛合するように前記出力軸もテーパ形状で形成されたことを特徴とする請求項5記載の減速機内蔵中空アクチュエータ。
【請求項7】
前記モータ部のモータヨークの反負荷側端面にファンを備えたことを特徴とする請求項1記載の中空減速機内蔵アクチュエータ。
【請求項8】
前記ファンはフィンとディスクから構成され、前記フィンはコイルエンドと空隙を介して円周上に配置され、前記ディスクは前記コイルエンドの端面にオーバーハングするように配置されたことを特徴とする請求項7記載の中空減速機内蔵アクチュエータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−24406(P2011−24406A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25895(P2010−25895)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】