説明

中空部品の製造方法

【課題】中空部の折れ曲がり部分が亀裂の起点となることを防止すること。
【解決手段】中空棒状素材11の中空部11aに、弾性を有する挿入体12をセットし、その後、中空棒状素材11を据え込み鍛造し、その据え込み鍛造後に挿入体12を除去することにより内部に潤滑油通路を有するクランクシャフトを製造する。ここで、据え込み鍛造後に、クランクシャフトの成形品17に熱処理を行い、挿入体12が熱処理の温度で加熱除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クランクシャフト等の中空部品を製造するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、クランク形状物の成形方法として、下記の特許文献1に記載される技術が知られている。この技術では、棒材の中間部を棒材の軸に直交する方向へスライドさせながら棒材を押圧して座屈させることにより、すなわち据え込み鍛造を行うことにより、クランク形状物を成形するようになっている。この成形方法によりエンジン用のクランクシャフトを成形することもできる。クランクシャフト等の摺動部品は、その摺動部を潤滑する必要があり、内部に潤滑油通路が設けられている。通常は、鍛造後のクランクシャフトに、機械加工などによって別途に潤滑油通路を形成することが行われており、上記技術でも同様である。
【0003】
ここで、中空棒状素材を据え込み鍛造することで、内部に残る折れ曲がった中空部を潤滑油通路として利用することが考えられる。この場合、機械加工等の後工程を省略又は削減することができるメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭49−106949号公報
【特許文献2】特開2005−009595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、単に中空棒状素材を用いて据え込み鍛造を行っただけでは、中空部の折れ曲がり部分に角稜部(ピン角)ができてしまうことがある。このピン角の部位には、応力集中が生じやすく、鍛造時あるいは成形後の使用時に、クランクシャフトにかかる荷重によってピン角の部位を起点として亀裂が生じるおそれがあり、クランクシャフトの耐久性の点で問題がある。
【0006】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、中空部の折れ曲がり部分が亀裂の起点となることを防止できる中空部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、中空棒状素材の中空部に、少なくとも表面に弾性を有する挿入体をセットし、その後、中空棒状素材を据え込み鍛造し、その据え込み鍛造後に挿入体の不要部を除去することにより内部に媒体通路を有する中空部品を製造することを趣旨とする。
【0008】
上記発明の構成によれば、中空棒状素材の据え込み鍛造時に、中空部にセットされた挿入体が弾性変形するので、中空部の折れ曲がり部分が丸みをおびて成形される。また、中空棒状素材を据え込み鍛造するので、中実棒状素材を据え込み鍛造する場合に比べて素材の変形自由度が増す。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、挿入体は、熱的又は化学的に分解可能な弾性体からなることを趣旨とする。
【0010】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、据え込み鍛造後に挿入体である弾性体を熱的又は化学的に分解することで、弾性体が容易に除去される。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、挿入体は、中空棒状素材よりも低い融点を有する材質で構成され、据え込み鍛造後に加熱除去されることを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、請求項2に記載の発明の作用に加え、据え込み鍛造後に中空棒状素材の融点よりも低い温度で中空部品を加熱することで、挿入体のみが溶融して除去される。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、据え込み鍛造後に中空部品に熱処理を行い、挿入体が熱処理の温度で加熱除去されることを趣旨とする。
【0014】
上記発明の構成によれば、請求項3に記載の発明の作用に加え、据え込み鍛造後に行われる熱処理の熱を利用して、挿入体のみが溶融して除去される。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、挿入体は、溶剤により化学的に分解されることを趣旨とする。
【0016】
上記発明の構成によれば、請求項2に記載の発明の作用に加え、据え込み鍛造後に挿入体に溶剤をかけるだけで挿入体が化学的に分解され、除去される。
【0017】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、挿入体は、表面部を構成する中空弾性材と内部を構成する液体とからなり、据え込み鍛造後に液体が流出除去されることを趣旨とする。
【0018】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、据え込み鍛造後に中空部から液体のみが容易に除去され、中空部に中空弾性材のみが残る。この残った中空弾性材が中空部品の振動減衰性に寄与する。
【0019】
上記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、挿入体は、中空棒状素材の中空部に充填される液体からなり、据え込み鍛造後に液体が流出除去されることを趣旨とする。
【0020】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、据え込み鍛造後に中空部から液体が容易に除去される。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、中空棒状素材の中空部の折れ曲がり部分が亀裂の起点となることを防止することができ、製造後の中空部品の耐久性を向上させることができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、挿入体の除去作業を簡素化することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、据え込み鍛造後の中空部品に熱的悪影響を与えることなく挿入体を確実に除去することができる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、専用の加熱装置を別途設ける必要がなく、製造装置を簡素化することができる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、挿入体の除去作業を簡素化することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、中空部品の振動を抑制することができる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、挿入体の除去作業を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係り、クランクシャフトを概略的に示す断面図。
【図2】同じく、製造方法を示すフローチャート。
【図3】同じく、(A)〜(D)は、一連の製造方法を簡略的に示す断面図。
【図4】同じく、半成形品を概略的に示す断面図。
【図5】第2実施形態に係り、クランクシャフトを概略的に示す断面図。
【図6】同じく、(A)〜(D)は、一連の製造方法を簡略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
以下、本発明の中空部品の製造方法をクランクシャフトの製造方法に具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
図1に、この実施形態で中空部品として製造されるクランクシャフト1を概略的に断面図により示す。このクランクシャフト1は、軸部1a、ピン部1b及びアーム部1cを有する。クランクシャフト1の内部には、その両端に開口する媒体通路としての潤滑油通路2が形成される。この潤滑油通路2は、クランクシャフト1がエンジンで使用されるときに、軸部1a及びピン部1bの外周に潤滑油を供給するために使用される。この潤滑油通路2の折れ曲がり部分2a,2b(図1中に鎖線円で囲む部分)は、それぞれ丸みをおびた形状をなしている。この実施形態では、潤滑油通路2の折れ曲がり部分2a,2bは、後述する中空部11aの折れ曲がり部11b,11cでもある。このように折れ曲がり部分2a,2bが丸みをおびた形状をなすことから、クランクシャフト1の製造時や使用時に、潤滑油通路2の折れ曲がり部分2a,2bに応力集中が生じても、その折れ曲がり部分2a,2bを起点として亀裂が生じることを防止することができ、クランクシャフト1の耐久性を向上させることができる。
【0031】
ここで、上記したクランクシャフト1の製造方法について説明する。図2に、この製造方法をフローチャートにより示す。図3(A)〜(D)に、一連の製造方法を簡略的に断面図により示す。以下に、図2のフローチャートに付された番号に従って順次説明する。
【0032】
(1)セッティング工程では、図3(A)に示すように、金属製の中空棒状素材11の中空部11aに、弾性を有する挿入体12を予めセットした上で、その中空棒状素材11の中間部位にフローティングダイ13を装着する。中空棒状素材11として、例えば、「S45C]の中空丸棒(焼鈍品、Hv=180)を使用することができる。中空部11aの内径は、中空棒状素材11の外径の「30%」の大きさとすることができる。挿入体12として、例えば、熱的に分解可能な弾性体である、ショア硬さ「50」の「NRゴム」を使用することができる。「NRゴム」のショア硬さは「40以上〜100未満」の範囲で設定することができる。ショア硬さが「40未満」だと、ゴム強度が不足して、据
え込み鍛造後に中空部11aが閉塞するおそれがあり、「100以上」だと、ゴムの伸びが低く、偏芯時に破断しやすいからである。この「NRゴム」は、中空棒状素材11よりも低い融点を有する。そして、中空棒状素材11の上下両端部をそれぞれ固定ダイ14の受穴14aと押しダイ15の受穴15aに嵌め入れて組み付ける。これにより、フローティングダイ13を中間部位に保持した中空棒状素材11を、固定ダイ14と押しダイ15との間にて垂直に支持した初期状態が得られる。この初期状態では、中空棒状素材11の半径方向におけるフローティングダイ13の移動が、特定方向SD以外の方向について規制されるようになっている。
【0033】
(2)加圧工程では、図3(B)〜(D)に示すように、中空棒状素材11の中間部位における半径方向への変形を特定方向SD(図面右方向)以外の方向について規制しながら、押しダイ15により同素材11に軸方向の圧縮荷重を加える。これにより、先ず、図3(B)に示す「座屈過程」では、中空棒状素材11の中間部位を特定方向SDへ座屈を開始させる。その後、図3(C)に示す「据え込み過程」では、中空棒状素材11を据え込むと共に、同素材11の中間部位を更に特定方向SDへ座屈させる。そして、図3(D)に示す「偏芯据え込み完了」では、同素材11の座屈と据え込みを完了する。これにより、中空棒状素材11が、固定ダイ14、押しダイ15及びフローティングダイ13の間でクランク形状に成形された成形品17となる。この成形品17の内部では、挿入体12も同じように折れ曲がり、一部で扁平につぶれた状態で残存している。
【0034】
(3)離型工程では、押しダイ15を上昇させ、押しダイ15と固定ダイ14との間から成形品17を取り外すと共に、その成形品17からフローティングダイ13を取り外す。これにより、図4に概略的に断面図に示すようなクランク形状をなす成形品17が得られる。
【0035】
(4)熱処理工程では、成形品17の外周の角部位を高周波で焼き入れし、その後に、成形品17の全体を「220℃」の温度で焼き戻しする。このときの焼き戻しの温度により、同時に「NRゴム」を熱分解して中空部11aから除去する。これにより、図1に示すような、内部に潤滑油通路2を有するクランクシャフト1が得られる。
【0036】
つまり、この実施形態の製造方法では、予め中空部11aに挿入体12を挿入した中空棒状素材11の中間部位における半径方向への変形を特定方向SD以外の方向につき規制しながら同素材11の両端部を押しダイ15及び固定ダイ14により押圧して同素材11に軸方向の圧縮荷重を加えることにより、同素材11を据え込みし、中間部位を特定方向SDへ座屈させてクランク形状に成形する。この据え込み鍛造により中空棒状素材11の中空部11aを外形と同様に折り曲げて、両端が開口する潤滑油通路2を同時に形成するようにしている。
【0037】
以上説明したこの実施形態における中空部品の製造方法によれば、中空棒状素材11の据え込み鍛造時には、その中空部11aにセットされた挿入体12が弾性変形するので、潤滑油通路2の折れ曲がり部分2a,2bが丸みをおびて成形される。この成形時に、挿入体12のゴム圧による内圧が中空棒状素材11に作用することで、同素材11に静圧力が作用することとなり、その分だけ素材11の割れ発生限界を向上させることができる。同じく、挿入体12のゴム圧による内圧が中空棒状素材11に作用することで、同素材11を偏芯させる方向と反対の方向に同素材11が流動しやすくなり、同じ形状を確保する場合の成形荷重を「10%」程度削減することができる。また、クランクシャフト1の製造時や、最終的に製造されるクランクシャフト1がエンジンで使用されるときに、潤滑油通路2の折れ曲がり部分2a,2bに応力集中が生じても、その折れ曲がり部分2a,2bを起点として亀裂が生じることを防止することができ、クランクシャフト1の耐久性を向上させることができる。更に、中空棒状素材11を据え込み鍛造するので、中実棒状素材を据え込み鍛造する場合に比べて素材の変形自由度が増す。この意味で、据え込み鍛造を容易化することができる。
【0038】
この実施形態では、クランクシャフト1の据え込み鍛造後に挿入体12である「NRゴム」を熱的に分解するので、その挿入体12が容易に除去される。このため、中空部11aに残留した挿入体12を、機械的に抉り出すよりも、容易かつ確実に除去することができる。この結果、挿入体12の除去作業を簡素化することができる。また、挿入体12である「NRゴム」を、中空棒状素材11の融点よりも低い温度で熱的に分解するので、そのNRゴムが容易に除去される。このため、据え込み鍛造後のクランクシャフト1に熱的悪影響を与えることなく挿入体12を確実に除去することができる。更に、据え込み鍛造後に行われる熱処理工程(焼き入れ、焼き戻し)の熱を利用して、挿入体12のみが溶融して除去される。このため、専用の加熱装置を別途設ける必要がなく、製造装置を簡素化することができる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、本発明における中空部品の製造方法をクランクシャフトの製造方法に具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
なお、以下の説明において第1実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0041】
図5に、この実施形態で中空部品として製造されるクランクシャフト1を概略的に断面図により示す。このクランクシャフト1は、折れ曲がった中空部11aの内壁に密着して中空弾性材3が設けられる。そして、中空部11aと共に折れ曲がった中空弾性材3の中空部3aにより潤滑油通路2が構成される点で、第1実施形態のクランクシャフト1と構成が異なる。この実施形態では、中空弾性材3が設けられた中空部11aの内壁の折れ曲がり部分11b,11cがそれぞれ丸みをおびた形状をなしている。このため、クランクシャフト1の製造時や使用時に、中空部11aの折れ曲がり部分11b,11cに応力集中が生じても、その折れ曲がり部分11b,11cを起点として亀裂が生じることを防止することができ、クランクシャフト1の耐久性を向上させることができる。また、クランクシャフト1の内部に、中空弾性材3が設けられることから、振動減衰性に優れる。すなわち、クランクシャフト1の使用時に、クランクシャフト1で生じる振動を中空弾性材3により有効に減衰させることができる。
【0042】
図6(A)〜(D)に、一連の製造方法を簡略的に断面図により示す。この実施形態では、セッティング工程で、図6(A)に示すように、中空棒状素材11の中空部11aに、中空弾性材3を予めセットすると共に、その中空弾性材3の中空部3aの中に液体4を充填する。ここで、中空棒状素材11として、例えば、「S45C]の中空丸棒(焼鈍品、Hv=180)を使用することができる。中空棒状素材11の中空部11aの内径は、同素材11の外径の「30%」の大きさとすることができる。中空弾性材3の中空部3aの内径は、中空弾性材3の外形の「10%」の大きさとすることができる。中空弾性材3として、耐熱性及び耐油性を有する、ショア硬さ「40以上〜100未満」の中空ゴムを使用することができる。具体的には、例えば、ショア硬さ「70」の「中空シリコーンゴム」を使用することができる。「中空シリコーンゴム」には、後工程の焼き戻し温度で劣化しないことと、クランクシャフト1の使用温度(約150℃)で劣化せず、振動減衰性に優れた材質が選択される。液体4としては、例えば、「水又は油」を使用することができる。そして、中空棒状素材11の中間部位にフローティングダイ10を装着し、同素材11の上下両端部をそれぞれシール18を介して固定ダイ6の受穴6aと押しダイ7の受穴7aに嵌め入れて組み付ける。これにより、フローティングダイ13を中間部位に保持した中空棒状素材11を、固定ダイ14と押しダイ15との間にて垂直に支持するこ
とで初期状態を得る。上記したシール18は、中空部3aに充填された液体4を封止するためのものである。
【0043】
その後、第1実施形態と同様に「加圧工程」を実行することで、図6(B)〜(D)に示すように、「座屈過程」、「据え込み過程」及び「偏芯据え込み完了」を経る。その後、「離型工程」及び「熱処理工程」を実行することで、図5に示すように、内部に潤滑油通路2を有するクランクシャフト1が得られる。中空弾性材3の中の液体4は、図6(D)に示す「偏芯据え込み完了後」に、成形品17を離型するときに、中空部3aから流出除去される。
【0044】
従って、この実施形態でも、図5に示すように、中空棒状素材11の中空部11aの折れ曲がり部分11b,11cが丸みをおびて成形される。これは、中空棒状素材11の中空部11aに挿入した中空弾性材3と、その中空部3aに充填した液体4の内圧の作用により、中空部11aの折れ曲がり部分11b,11cに丸みが付与されことによるものである。このため、クランクシャフト1の製造時や使用時に、潤滑油通路2を構成する中空部11aの折れ曲がり部分11b,11cに応力集中が生じても、その折れ曲がり部分11b,11cを起点として亀裂が生じることを防止することができ、クランクシャフト1の耐久性を向上させることができる。
【0045】
また、この実施形態では、クランクシャフト1の据え込み鍛造後に、中空弾性材3の中空部3aから液体4のみが容易に除去され、中空棒状素材11の中空部11aに中空弾性材3のみが残ることになる。そして、この残った中空弾性材3が、クランクシャフト1の振動減衰性に寄与する。このため、エンジンでの使用時に、クランクシャフト1の振動を抑制することができる。加えて、潤滑油通路2を構成する中空弾性材3の材質を適宜選択することにより、中空棒状素材11よりも潤滑油に対する耐性に優れた潤滑油通路2を形成することができる。その他の作用効果は、第1実施形態のそれと基本的に同じである。
【0046】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で以下のように実施することもできる。
【0047】
(1)前記第1実施形態では、中空棒状素材11の中空部11aにセットされる挿入体12を弾性材である「NRゴム」により構成したが、この挿入体を、中空棒状素材の中空部に充填される液体から構成し、据え込み鍛造後にその液体を流出除去するように構成してもよい。ここで、液体の粘性を適宜選択することにより、中空部の折れ曲がり部分の丸みの度合いを調整することができる。この場合、据え込み鍛造後に中空部から液体が容易に除去される。このため、挿入体の除去作業を簡素化することができる。
【0048】
(2)前記第1実施形態では、挿入体12を熱処理により除去するようにしたが、挿入体を、溶剤により化学的に分解して除去するように構成してもよい。ここで、溶剤は、挿入体の材質に応じて選択される。この場合、据え込み鍛造後に挿入体に溶剤をかけるだけで挿入体が化学的に分解されて除去される。このため、挿入体の除去作業を簡素化することができる。
【0049】
(3)前記各実施形態では、本発明をクランクシャフトの製造方法に具体化したが、中空部品はクランクシャフトに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明は、内部に潤滑油通路を備えたクランクシャフトの製造に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 クランクシャフト(中空部品)
2 潤滑油通路(媒体通路)
2a 折れ曲がり部分
2b 折れ曲がり部分
3 中空弾性材
3a 中空部
4 液体
11 中空棒状素材
11a 中空部
11b 折れ曲がり部分
11c 折れ曲がり部分
12 挿入体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空棒状素材の中空部に、少なくとも表面に弾性を有する挿入体をセットし、その後、前記中空棒状素材を据え込み鍛造し、その据え込み鍛造後に前記挿入体の不要部を除去することにより内部に媒体通路を有する中空部品を製造することを特徴とする中空部品の製造方法。
【請求項2】
前記挿入体は、熱的又は化学的に分解可能な弾性体からなることを特徴とする請求項1に記載の中空部品の製造方法。
【請求項3】
前記挿入体は、前記中空棒状素材よりも低い融点を有する材質で構成され、据え込み鍛造後に加熱除去されることを特徴とする請求項2に記載の中空部品の製造方法。
【請求項4】
前記据え込み鍛造後に前記中空部品に熱処理を行い、前記挿入体が前記熱処理の温度で加熱除去されることを特徴とする請求項3に記載の中空部品の製造方法。
【請求項5】
前記挿入体は、溶剤により化学的に分解されることを特徴とする請求項2に記載の中空部品の製造方法。
【請求項6】
前記挿入体は、表面部を構成する中空弾性材と内部を構成する液体とからなり、前記据え込み鍛造後に前記液体が流出除去されることを特徴とする請求項1に記載の中空部品の製造方法。
【請求項7】
前記挿入体は、前記中空棒状素材の前記中空部に充填される液体からなり、前記据え込み鍛造後に前記液体が流出除去されることを特徴とする請求項1に記載の中空部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−172926(P2010−172926A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17747(P2009−17747)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】