説明

中間転写ユニット及び画像形成装置

【課題】中間転写ベルトに生じる傷や高温環境下で発生する曲げ癖等を防止でき、使用開始後には不必要になる部品点数を抑えることができ、作業が容易な中間転写ユニット及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナー像を記録媒体へ転写する無端状の中間転写ベルト31と、中間転写ベルト31へ張力を付与する張力付与手段と、中間転写ベルトユニット3の挿入方向と同一方向に伸びて設けられ、転写を実行するときまで中間転写ベルト31の張力を解除するための脱着可能な張力解除部材14と、を備え、張力解除部材14が、中間転写ベルト31の一方の端部に沿った内側の面で中間転写ベルト31を保護するカバー部と、中間転写ベルト31の一方の端部に沿った外側に設けられ中間転写ベルトユニット3を画像形成装置1内に挿入する際に用いる取っ手部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタや複写機など、電子写真方式を利用してベルト方式で転写を行う中間転写ユニット、及びその中間転写ユニットを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を利用してカラー画像を形成する画像形成装置では、感光ドラムや感光ベルト等の像担持体の表面にLSU(Laser Scanning Unit)によって制御されたレーザ光を照射して静電潜像を形成し、この静電潜像を現像剤であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、更に場合によって加えられる黒(B)のトナーで現像して可視像化する。そして、この像担持体上で現像された4色積み重なったトナー画像を以下説明する転写装置によって搬送されてきた記録用紙等の記録媒体に転写し、このトナー画像のトナーを熱や圧力を利用して定着装置で溶融し、記録媒体上に定着させる。このプロセスを順次行うことによって記録媒体に所定のカラー画像を形成している。
【0003】
ところで、記録媒体上にYMCBのトナー画像を担持するまでの転写方式には直接転写方式と中間転写方式がある。このうち、中間転写体を用いた中間転写方式が多く使用されている。この中間転写方式は、YMCB各色感光ドラムや感光ベルト等の像担持体と転写ローラの間に、静電転写による現像で各色感光ドラム等から各色のトナーが表面上に1色ずつ順次積み重ねられた状態で現像画像を形成し、これを転写装置に転写するための中間転写体が設けられているものである。
【0004】
さて、このような中間転写体は、大分けすると中間転写ベルト型のものと回転ドラム型のものに分けられる。いずれも回転しながら現像と転写を繰り返すものであるが、装置形態はかなり異なった構成のものとなる。即ち、回転ドラム型の中間転写体は4色の現像器が円周に配置されて回転するため比較的大型化する。これに対し、中間転写ベルトの方は、張力付与ローラを配することによってベルト部分の形状を自由に設定することができ(例えば、YMCBの感光ドラムをタンデム型の画像形成装置として直線に並べることができる)、画像形成装置内の空間のうちベルト部分が占める容積を小さく、小型化を図ることができる。
【0005】
ただ、ベルト方式の中間転写体をスリップなく回転させるためには、中間転写ベルトを張架する張力が必要になる。もし中間転写ベルトがスリップすると、感光ドラム等から現像画像をベルトに転写するとき、又はベルトから記録媒体に二次の転写を行うときに画像不良が発生する。
【0006】
そこで、中間転写ベルトには伸び縮みの少ない、ポリイミドなどのプラスチックやゴム等を無端でベルト状にしたものを使用している。しかし、このような材質の中間転写ベルトに張力をかけて高温の環境に置いておくと、その後常温下に取り出したとき、ベルトがこの形状で固まってしまう。ベルトにいわゆる巻き癖がつく。例えば、画像形成装置を船で輸送するときなどの場合、収容した船底で予想以上に高温になる可能性があり、この環境でテンションをかけた状態にしておくと、この形で固まりベルトに癖がついてしまう。そしてこの画像形成装置をユーザが使って画像印刷を行うと、巻き癖のついた箇所で転写不良を起こす。経年変化などでもこうした転写不良が発生する。
【0007】
そこで、画像形成装置の運搬時や、長期間放置したときに、転写ベルトに巻き癖がつくことを防止すること、及び転写ベルトクリーニングブレードのクリープによる永久変形を防止することを目的として、工場出荷時にベルト張力及びブレード押圧を弱める圧解除部材を設け、その圧解除部材を画像形成装置の使用直前に外す画像形成装置が提案された(例えば、特許文献1参照)。ベルトと転写ベルトクリーニングブレードに張力をかけるため、それぞれ常時バネ圧を作用させる構成を前提としており、このバネ圧を圧解除部材で弱めるものである。
【特許文献1】特開2005−49678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上説明したように、(特許文献1)のベルト方式で転写を行う中間転写ユニットは、張力付与ローラの画像幅方向の左右に1つずつ圧解除部材を設け、高温条件になる輸送保管中にベルト張力側、ブレード張力側の両方に対してベルト張力及びブレード押圧力を弱めるように作用させ、装置が使用者の手に渡って稼動させる直前に部材を外す。それぞれにかかる圧力が小さければ、クリープ限界を下回ることが可能であり、且つ解除部材を外すだけで、ベルト及びブレードへの設定圧を確保できる。しかし、YMCB4色の張力付与ローラの左右両側(×2個)にそれぞれ圧解除部材を取付けるのは作業工程が煩雑で、使用者にとっても上下、左右両側に並んだ8箇所の圧解除部材を外すのは面倒で、到底使い易い装置とは言い難いものであった。
【0009】
また、(特許文献1)の中間転写ユニットは、圧解除部材を取り外したときバネの張力が中間転写ベルトに衝撃的に加わり、これによって印刷開始前に張力付与ローラ周りのベルトがダメージを受ける。そして、左右の一方側から一個所ずつ取り外さなければならないので、片側のベルトだけが急激に緩みもう一方の側は緊張したままの状態で不均等な力が加わる。ベルト張力とブレード押圧を同時に徐々に解除する構成でなければ、中間転写ベルトを傷めることになる。
【0010】
更に、従来、中間転写ユニットを画像形成装置本体に装着するとき、作業者は中間転写ベルト表面に傷をつけたり手で触れたりしないように別途ハンドルを付けて作業したり、温度環境がベルトに影響しないようにカバーをかけたりしている。(特許文献1)の中間転写ユニットにおいても、こうしたハンドルやカバーは必要である。この(特許文献1)の中間転写ユニットにおいては、中間転写ベルトユニット1組のためハンドルは少なくとも4個(場合によっては8個)、ベルトを覆うカバーは4個、上述した圧力解除部材は8個必要になる。しかし、これらの部材はすべて画像形成装置を使用可能にした後は廃棄物となる。
【0011】
このように画像形成装置の工場出荷時や輸送時に発生する中間転写ベルトの傷や輸送時の高温未使用状態で発生する曲げ癖、伸び癖等を防止でき、また、これに起因する転写不良が発生せず、工場出荷時や輸送時後には廃棄される部品点数を最小にでき、経年変化に強く、作業者や使用者の作業効率を上げることが望ましい。
【0012】
そこで、このような問題を解決するために本発明は、工場出荷時や輸送時に中間転写ベルトに生じる傷や高温環境下で発生する曲げ癖、伸び癖等を確実に防止でき、転写不良が発生し難く、経年変化に強く耐久性があり、使用開始前にだけ必要でその後には不必要になる部品点数を最小限に抑えることができ、作業が容易な中間転写ユニットと、それを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の中間転写ユニットは、画像形成装置内に挿入される中間転写ユニットであって、トナー像を記録媒体へ転写する無端状の転写フィルムと、転写フィルムへ張力を付与する張力付与手段と、中間転写ユニットの挿入方向と同一方向に伸びて設けられ、転写を実行するときまで転写フィルムの張力を解除するための脱着可能な張力解除手段と、を備え、張力解除手段が、転写フィルムの一方の端部に沿った内側の面で転写フィルムを保護するカバー部と、転写フィルムの一方の端部に沿った外側に設けられ中間転写ユニットを画像形成装置内に挿入する際に用いる取っ手部と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の画像形成装置は、感光体に静電潜像を形成して現像することができる画像形成部と、トナー像を記録媒体へ転写する無端状の転写フィルムを有し、張力付与手段によって転写フィルムへ張力を付与し、画像形成部によって現像されたトナー像を記録媒体に転写することができる転写部と、転写された記録媒体のトナー画像を定着する定着装置を備え、上記中間転写ユニットを装着して構成された画像形成装置であって、中間転写ユニットの張力解除手段の挿入を案内するためのガイド部が該中間転写ユニットの脇に設けられ、転写を実行するときまで張力解除手段の挿入によって転写フィルムの張力を緩め、転写実行時には張力解除手段が取り外されて転写フィルムに所定の張力を加えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の中間転写ユニットと画像形成装置によれば、工場出荷時や輸送時に中間転写ベルトに生じる傷や高温環境下で発生する曲げ癖、伸び癖等を確実に防止でき、転写不良が発生し難く、経年変化に強く耐久性があり、使用開始前にだけ必要でその後には不必要になる部品点数を最小限に抑えることができ、作業が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の第1の発明は、画像形成装置内に挿入される中間転写ユニットであって、トナー像を記録媒体へ転写する無端状の転写フィルムと、転写フィルムへ張力を付与する張力付与手段と、中間転写ユニットの挿入方向と同一方向に延び設けられ転写フィルムの張力を解除する張力解除手段と、を備え、張力解除手段は、転写フィルムの一方の端部に沿った内側の面で転写フィルムを保護するカバー部と、転写フィルムの一方の端部に沿った外側に設けられ中間転写ユニットを画像形成装置内に挿入する際に用いる取っ手部と、を有することを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、転写フィルムの張力を解除する機能、転写フィルムの露出した側の一端が破損しないよう保護する機能、中間転写ユニットを画像形成装置内に装着するときに作業者の手が、直接転写フィルムに触れないように挿入できる機能、これらの機能を一つの部材へ一体化させたので、画像形成装置を輸送する際にこの張力解除手段を中間転写ユニットに取付けておくだけで、画像形成装置の輸送中に発生する転写フィルムの伸び癖や曲げ癖を防止でき、更に、工場出荷時に作業者が両手を使って簡単に中間転写ユニットを画像形成装置内に装着することができ、また画像形成装置の輸送中、或いは中間転写ユニットの装着中の転写フィルムの破損を防止することができる。
【0017】
本発明の第2の発明は、第1の発明において、中間転写ユニットに回転自在に支持され、転写フィルムを保持する保持ローラを転写フィルムの内周空間であって一方の端部に沿って有し、張力付与手段は、転写フィルムの内周空間に設けられ転写フィルムに内側から張力を与える張力付与ローラと、保持ローラの軸を支点に回動し張力付与ローラを保持する揺動部材と、この揺動部材が回動する際の揺動部材の円周軌道の接線に対して所定角度ずれた方向から揺動部材を付勢して張力付与ローラに転写フィルムを押圧させる付勢手段と、を有することを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、経時変化又は温度変化により転写フィルムの長さが変化した場合であっても、転写フィルムの高さが狭くなるように張力付与ローラの位置が変化した場合は付勢手段の押圧力が張力付与ローラを転写フィルム方向に押す力に寄与する割合が小さく、また、転写フィルムの高さが広くなるように張力付与ローラの位置が変化した場合は付勢手段の押圧力が張力付与ローラを転写フィルム方向に押す力に寄与する割合が大きくなるので、転写フィルムの張力のバラツキを小さくできる。また、付勢手段によって付勢力を発生させる揺動部材は、張力付与ローラの支持を支持する機能も兼ね、更にその回転支点を保持ローラの軸とすることで揺動部材の支持剛性を確保しつつ構成を簡略化できるので、簡単、小型化を図りつつ転写フィルムへ付勢力を付与することができると言う効果を有する。
【0018】
本発明の第3の発明は、第1又は2の発明において、転写フィルムの回転方向の側面を覆うフレームを設け、張力解除手段は、中間転写ユニットに対して脱着可能であり、転写フィルムの一方の端部に沿って挿入されて中間転写ユニットに取付けられ、挿入方向の先端に突起部を有し、フレームは、張力解除手段が中間転写ユニットに沿って挿入される方向の奥側に穴部を有し、張力解除手段の転写フィルム側の端面は、張力解除手段が転写フィルムの一方の端部に沿って中間転写ユニットに取付けられる際、揺動部材を付勢手段が押圧する所定方向と逆方向に揺動部材を押圧した後、穴部に突起部が挿入されて押圧レバーによる転写フィルムの押圧を解除することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の中間転写ユニットである。この構成によって、張力解除手段の転写フィルム側の端面が付勢手段による付勢力で押されている揺動部材を、付勢方向とは逆の方向へ押返させて、この穴部へ突起部を挿入させるので、退避させた揺動部材が付勢手段の付勢力により押返す力に逆らって逆戻りしないよう固定することができ確実に転写フィルムへの付勢力の解除状態を維持することができる。
【0019】
本発明の第4の発明は、第1乃至第3の発明において、転写フィルムの回転方向の側面を覆うフレームを設け、張力解除手段は、中間転写ユニットに対して脱着可能であり、転写フィルムの一方の端部に沿って挿入されて中間転写ユニットに取付けられ、挿入方向の先端に突起部を有し、フレームは、張力解除手段が中間転写ユニットに沿って挿入される方向の奥側に穴部を有し、揺動部材は、付勢手段が所定方向に押圧レバーを押圧している間フレームに設けられた穴部を覆う覆い部を有し、張力解除手段の転写フィルム側の端面は、張力解除手段が転写フィルムの一方の端部に沿って中間転写ユニットに取付けられる際、揺動部材を付勢手段が押圧する所定方向と逆方向に揺動部材を押圧し、覆い部を穴部から退避させて覆い部で覆われている穴部を露出させた後、露出した穴部に突起部が挿入されて押圧レバーによる転写フィルムの押圧を解除することを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の中間転写ユニットである。この構成によって、張力解除手段の転写フィルム側の端面は、張力解除手段が転写フィルムの一方の端部に沿って中間転写ユニットに取付けられる際、揺動部材を付勢手段が押圧する所定方向と逆方向に揺動部材を押圧し、覆い部を穴部から退避させて覆い部で覆われている穴部を露出させた後、露出した穴部に突起部が挿入されて押圧レバーによる転写フィルムの押圧を解除することにより、張力解除手段の転写フィルム側の端面が付勢手段による付勢力で押されて穴部を塞ぐ位置に置かれている揺動部材を、付勢方向とは逆の方向へ押返すことで揺動部材の覆い部を穴部から退避させて、この露出した穴部へ突起部を挿入させるので、退避させた揺動部材が付勢手段の付勢力により押返す力に逆らって逆戻りしないよう固定することができ確実に転写フィルムへの付勢力の解除状態を維持することができる。
【0020】
本発明の第5の発明は、第3の発明において、画像形成装置の内側には張力解除手段の挿入を案内するガイド部が転写フィルムの一方の端部に沿って設けられ、ガイド部には挿入された際に張力解除手段と当接する押出作用部が形成され、一方、張力解除手段の取っ手部側の側面には、挿入された際に押出作用部と当接するスライド部が形成され、中間転写ユニットが画像形成装置内に装着されている場合、張力解除手段がガイド部に案内されながら転写フィルムの一方の端部に沿って所定距離挿入されると、スライド部がガイド部の押出作用部に当接すると共に張力解除手段の転写フィルム側の端面が揺動部材へ当接し、その後、スライド部がガイド部の押出作用部に当接したまま移動をすると張力解除手段の転写フィルム側の端面は揺動部材を付勢手段による付勢力とは反対の方向へ押返すように移動させ、退避後に穴部に突起部が挿入されて張力解除手段による転写フィルムへの張力が解除された状態を保持することを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、中間転写ユニットが画像形成装置内に装着されている場合、張力解除手段がガイド部に案内されながら転写フィルムの一方の端部に沿って所定距離挿入されると、スライド部がガイド部の押出作用部に当接すると共に張力解除手段の転写フィルム側の端面が揺動部材へ当接し、その後、スライド部がガイド部の押出作用部に当接したまま移動をすると張力解除手段の転写フィルム側の端面は揺動部材を付勢手段による付勢力とは反対の方向へ押返すように移動させ、退避後に穴部に突起部が挿入されて張力解除手段による転写フィルムへの張力が解除された状態を保持することにより、張力解除手段に形成したスライド部とガイド部に形成した押出作用部とが当接した際に、スライド部の面と押出作用部の面とが互いに滑りあって張力解除手段の端面が斜め方向、即ち揺動部材に向かって移動し、移動してきた張力解除手段の端面が回動自在に設けられた揺動部材に当接した後、更に揺動部材を押し続けて移動し、最後に突起部が穴部へ挿入されて固定される動きを張力解除手段自体に与えることができるので、張力解除手段の挿入と言う簡単な動作だけで転写フィルムの張力を確実に解除し、解除された状態を保つことができる。
【0021】
本発明の第6の発明は、第5の発明において、スライド部は、所定の間隔をおいて張力付与手段に複数配置されることを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、スライド部を所定の間隔をおいて張力付与手段に複数配置することにより、複数のスライド部が、各々の位置において張力解除手段自体が適正な動きを取れるようサポートするので、張力解除手段の端面を揺動部材へ確実に当接させ最後に突起部を穴部へ挿入させるために必要な安定した動きを張力解除手段に対して与えることができる。
【0022】
本発明の第7の発明は、第5又は第6の発明において、スライド部は、張力解除手段の挿入方向の奥側と手前側とに少なくとも各々1つずつ形成されることを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、スライド部を張力解除手段の挿入方向の奥側と手前側とに少なくとも各々1つずつ形成することにより、張力解除手段の両端、即ち張力解除手段の奥側と手前側とにスライド部を設けたので、必要最小限のスライド部数で張力解除手段の前端と後端の動きが安定させることができると共に張力解除手段自体の動きがぶれずに確実に突起部が穴部へ挿入されることができる。
【0023】
本発明の第8の発明は、第5の発明において、スライド部の長さは、張力解除手段が所定距離挿入され張力解除手段の転写フィルム側の端面が揺動部材に当接するときの揺動部材の位置から揺動部材が張力付与ローラによる転写フィルムへの押圧を解除させる位置へ移動して突起部と穴部とが一直線となるときの揺動部材の位置とに対応していることを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、スライド部の長さ張力解除手段が所定距離挿入され張力解除手段の転写フィルム側の端面が揺動部材に当接するときの揺動部材の位置から揺動部材が張力付与ローラによる転写フィルムへの押圧を解除させる位置へ移動して突起部と穴部とが一直線となるときの揺動部材の位置とに対応しているので、複雑な機構に頼らず簡素な方法で確実に突起部を穴部へ挿入させることができる。
【0024】
本発明の第9の発明は、画像形成装置内に挿入される中間転写ユニットであって、トナー像を記録媒体へ転写する無端状の転写フィルムと、転写フィルムへ張力を付与する張力付与手段と、中間転写ユニットの挿入方向と同一方向に伸びて設けられ、転写を実行するときまで転写フィルムの張力を解除するための脱着可能な張力解除手段と、を備え、張力解除手段が、転写フィルムの一方の端部に沿った内側の面で転写フィルムを保護するカバー部と、転写フィルムの一方の端部に沿った外側に設けられ中間転写ユニットを画像形成装置内に挿入する際に用いる取っ手部と、を有することを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、転写フィルムの張力を解除する機能、転写フィルムの露出した側の一端が破損しないよう保護する機能、中間転写ユニットを画像形成装置内に装着するときに作業者の手が直接転写フィルムに触れないように挿入できる機能、などの複数の機能が張力解除手段と言う共通の一つの部材へ集約することができ、例えば画像形成装置を輸送する際にこの張力解除手段を中間転写ユニットに取付けておくだけで、画像形成装置の輸送中に発生する転写フィルムの伸び癖や曲げ癖を防止でき、更に、工場出荷時に作業者が両手を使って中間転写ユニットの両端を持ち簡単に画像形成装置内に装着することができ、また、画像形成装置の輸送中、或いは中間転写ユニット装着中の転写フィルムの破損を防止することができる。
【0025】
本発明の第10の発明は、第9の発明において、転写フィルムの内周空間には転写フィルムを保持する保持ローラが配設されると共に、該転写フィルムの側面を挟んで保持ローラの軸端を支持するフレームが設けられ、張力付与手段が、転写フィルムの内周空間に設けられて転写フィルムに内側から張力を与える張力付与ローラと、保持ローラの軸を支点に揺動し張力付与ローラを保持する揺動部材と、この揺動部材が揺動する際の軌道の接線に対して所定の角度だけずれた方向から揺動部材を付勢して張力付与ローラを押圧し、転写フィルムに所定の張力を加える付勢手段と、付勢手段の付勢力を揺動部材に伝えて揺動させる押圧レバーと、を有することを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、経時変化又は温度変化により転写フィルムの長さが変化した場合であっても、この長さの変化に対応し、押圧レバーを介しての付勢力がこの変化に由来する所定の角度だけずれて揺動部材を押圧するため、転写フィルムの高さが狭くなるように張力付与ローラの位置が変化した場合は付勢手段の押圧力が張力付与ローラを転写フィルム方向に押す力に寄与する割合が小さく、また、転写フィルムの高さが広くなるように張力付与ローラの位置が変化した場合は付勢手段の押圧力が張力付与ローラを転写フィルム方向に押す力に寄与する割合が大きくなり、転写フィルムの張力のバラツキを小さくできる。また、付勢手段によって付勢力を発生させる揺動部材は、張力付与ローラの支持を支持する機能も兼ねており、更にその回転支点を保持ローラの軸とすることで揺動部材の支持剛性を確保しつつ構成を簡略化できるので、簡単、小型化を図りつつ転写フィルムへ付勢力を付与することができる。
【0026】
本発明の第11の発明は、第9又は第10の発明において、張力解除手段には挿入方向先端に突起部が設けられると共に、フレームには突起部に対応する穴部が設けられ、張力解除手段の転写フィルム側の端面が転写フィルムの一方の端部に沿って張力解除手段が脱着可能に挿入されたとき、張力解除手段が揺動部材を付勢手段が押圧する方向と逆方向に該揺動部材を押圧し、穴部に突起部が挿入されて張力付与手段による転写フィルムの押圧を解除することを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、張力解除手段の転写フィルム側の端面が付勢手段による付勢力で押されている揺動部材を、付勢方向とは逆の方向へ押返させて、この穴部へ突起部を挿入させるので、退避させた揺動部材が付勢手段の付勢力により押返す力に逆らって逆戻りしないよう固定することができ確実に転写フィルムへの付勢力の解除状態を維持することができる。
【0027】
本発明の第12の発明は、第11の発明において、フレームが転写フィルムの回転方向の側面を覆い、揺動部材には、付勢手段が所定の角度だけずれた方向に揺動部材を押圧している間フレームに設けられた穴部を覆う覆い部が設けられ、張力解除手段が転写フィルムの一方の端部に沿って脱着可能に挿入されたとき、張力解除手段が揺動部材を付勢手段が押圧する方向と逆方向に該揺動部材を押圧し、覆い部を穴部から退避させて覆い部で覆われている穴部を露出させた状態で、穴部に突起部が挿入されて張力付与手段による転写フィルムの押圧を解除することを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、張力解除手段の転写フィルム側の端面が付勢手段による付勢力で押されて穴部を塞ぐ位置に置かれている揺動部材を、付勢方向とは逆の方向へ押返すことで揺動部材の覆い部を穴部から退避させて、この露出した穴部へ突起部を挿入させるので、退避させた揺動部材が付勢手段の付勢力により押返す力に逆らって逆戻りしないよう固定することができ確実に転写フィルムへの付勢力の解除状態を維持することができる。
【0028】
本発明の第13の発明は、感光体に静電潜像を形成して現像し、トナー像を記録媒体へ転写して定着する画像形成装置が転写を実行するまで該画像形成装置に装着される第12の発明の中間転写ユニットであって、画像形成装置の内側には、張力解除手段の挿入を案内するガイド部が転写フィルムの一方の端部に沿って設けられ、ガイド部には、張力解除手段が挿入されたとき張力解除手段と当接する押出作用部が形成されると共に、張力解除手段の取っ手部側の側面には、挿入されたときに押出作用部と当接するスライド部が形成され、張力解除手段がガイド部に案内されて転写フィルムの一方の端部に沿って所定距離挿入されると、スライド部が押出作用部上をスライドすると共に張力解除手段の転写フィルム側の端面が揺動部材へ当接し、該張力解除手段の更なる挿入で張力解除手段の転写フィルム側の端面は揺動部材を付勢手段による付勢力とは逆方向に挿入による押圧幅の分だけ押圧し、覆い部を穴部から退避させて穴部に突起部が挿入されて張力解除手段による転写フィルムへの張力が解除された状態を保持することを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、張力解除手段に形成したスライド部とガイド部に形成した押出作用部とが当接した際に、スライド部の面と押出作用部の面とが互いに滑りあって張力解除手段の端面が斜め方向、即ち全体として揺動部材側に向かって移動し、移動してきた張力解除手段の端面が回動自在に設けられた揺動部材に当接した後、更に揺動部材を押し続けて移動し、最後に突起部が穴部へ挿入されて固定される動きを張力解除手段自体に与えることができるので、張力解除手段の挿入と言う簡単な動作だけで転写フィルムの張力を確実に解除し、解除された状態を保つことができる。
【0029】
本発明の第14の発明は、第13の発明において、スライド部は、所定の間隔をおいて張力解除手段に複数配置されることを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、スライド部を所定の間隔をおいて張力付与手段に複数配置することにより、複数のスライド部が、各々の位置において張力解除手段自体が適正な動きを取れるよう互いにサポートするので、張力解除手段の端面を揺動部材へ確実に当接させ、最後に突起部を穴部へ挿入させるために必要で安定した動きを張力解除手段に対して与えることができる。
【0030】
本発明の第15の発明は、第13又は第14の発明において、スライド部は、張力解除手段の挿入方向の奥側と手前側とに少なくとも各々1個所ずつ形成されることを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、張力解除手段の両端、即ち張力解除手段の奥側と手前側とにスライド部を設けることになり、必要最小限のスライド部数で張力解除手段の前端と後端の動きが安定させることができると共に張力解除手段自体の動きがぶれずに確実に突起部が穴部へ挿入される。
【0031】
本発明の第16の発明は、第13の発明において、スライド部による押出幅は、張力解除手段の転写フィルム側の端面が揺動部材に当接するときの位置と、穴部に突起部が挿入されたときの位置とに対応する幅であることを特徴とする中間転写ユニットである。この構成によって、スライド部による押出幅が張力解除手段の揺動部材に当接するときの位置と穴部に突起部が挿入されたときの位置とに対応するため、複雑な機構に頼らず簡素な方法で確実に突起部を穴部へ挿入させることができると言う効果を有する。
【0032】
本発明の第17の発明は、感光体に静電潜像を形成して現像することができる画像形成部と、トナー像を記録媒体へ転写する無端状の転写フィルムを有し、張力付与手段によって転写フィルムへ張力を付与し、画像形成部によって現像されたトナー像を記録媒体に転写することができる転写部と、転写された記録媒体のトナー画像を定着する定着装置を備え、転写部が第5乃至第8、第13乃至第16記載の中間転写ユニットを装着して構成された画像形成装置であって、中間転写ユニットの張力解除手段の挿入を案内するためのガイド部が該中間転写ユニットの側に設けられ、転写を実行するときまで張力解除手段の挿入によって転写フィルムの張力を緩め、転写実行時には張力解除手段が取り外されて転写フィルムに所定の張力を加えることを特徴とする画像形成装置である。この構成によって、中間転写ユニットが画像形成装置内に装着されている場合、張力解除手段がガイド部に案内されながら転写フィルムの一方の端部に沿って所定距離挿入されると、スライド部がガイド部の押出作用部に当接すると共に張力解除手段の転写フィルム側の端面が揺動部材へ当接し、その後、スライド部がガイド部の押出作用部に当接したまま移動をすると張力解除手段の転写フィルム側の端面は揺動部材を付勢手段による付勢力とは反対の方向へ押返すように移動させ、退避後に穴部に突起部が挿入されて張力解除手段による転写フィルムへの張力が解除された状態を保持することにより、張力解除手段に形成したスライド部とガイド部に形成した押出作用部とが当接した際に、スライド部の面と押出作用部の面とが互いに滑りあって張力解除手段の端面が斜め方向、即ち全体として揺動部材側に向かって移動し、移動してきた張力解除手段の端面が回動自在に設けられた揺動部材に当接した後、更に揺動部材を押し続けて移動し、最後に突起部が穴部へ挿入されて固定される動きを張力解除手段自体に与えることができるので、張力解除手段の挿入と言う簡単な動作だけで転写フィルムの張力を確実に解除し、解除された状態を保つことができる。
【0033】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態1における中間転写ユニットと、これを備えた複写機、プリンタ、複合機等の画像形成装置について説明する。本発明の中間転写ユニットと画像形成装置は、トナーを使って画像形成を行う電子写真プロセスで画像を形成する装置であればよい。
【0034】
図1は本発明の実施の形態1における画像形成装置に中間転写ユニットを装着した転写実行時の構成図、図2は本発明の実施の形態1における画像形成装置に中間転写ユニットを装着し張力解除部材を挿入して未転写時の構成図、図3(a)は本発明の実施の形態1における中間転写ユニットに張力解除部材を挿入して張力を弛緩させたときの張力調整機構の説明図、図3(b)は本発明の実施の形態1における中間転写ユニットに張力を加えたときの張力調整機構の説明図、図3(c)は本発明の実施の形態1における中間転写ベルトの断面の説明図、図4(a)は本発明の実施の形態1における中間転写ユニットに張力解除部材を挿入して張力を弛緩させたときの張力調整機構の斜視図、図4(b)は本発明の実施の形態1における中間転写ユニットに張力を加えたときの張力調整機構の斜視図、図5は本発明の実施の形態1における中間転写ユニットに張力解除部材を挿入して張力を弛緩させるときの張力調整機構の動作説明図、図6(a)は本発明の実施の形態1における張力解除部材の斜視図、図6(b)は本発明の実施の形態1における張力解除部材の側面図、図6(c)は本発明の実施の形態1における張力解除部材の正面図である。
【0035】
また、図7は本発明の実施の形態1における画像形成装置の中間転写ユニットに張力解除部材を挿入していない状態の斜視図、図8(a)は本発明の実施の形態1における画像形成装置の中間転写ユニットに張力解除部材を挿入した状態の斜視図、図8(a)は本発明の実施の形態1における画像形成装置の中間転写ユニットに張力解除部材を挿入した状態の背後側面図、図9(a)は本発明の実施の形態1における画像形成装置の中間転写ユニットの張力付与ローラが移動したときの中間転写ベルトの説明図、図9(b)は本発明の実施の形態1における画像形成装置の中間転写ユニットの張力の説明図、図9(c)は本発明の実施の形態1における画像形成装置の中間転写ユニットの張力付与ローラが移動するときの軌道と張力を説明する説明図である。
【0036】
先ず、図1に示す1はタンデム型のカラーの画像形成装置であり、用紙やOHP(Over Head Projector)用シート等の搬送路Aを送られる記録媒体にカラー画像を形成する。図1において、2はYMCBの各色ごとに感光体21にそれぞれの静電潜像を形成させて、各色現像ローラ24から供給されたトナーでそれぞれトナー画像を形成し順に中間転写ベルト31(本発明の転写フィルム)に一次転写する画像形成部である。
【0037】
そして、3は一次転写されてYMCBの順で積み重なったトナー画像を二次転写ローラ51によって記録媒体に二次転写させるための中間転写ベルトユニット(本発明の中間転写ユニット)である。中間転写ベルトユニット3は脱着自在に装着できる後述する張力解除部材14を備えている。また、4は画像形成部2に対して各感光体21に静電潜像を形成させるためのLSU(Laser Scanning Unit)、5は中間転写ベルト31に形成されたトナー画像を記録媒体に転写する二次転写部、6は記録媒体に転写されたトナー画像を定着させる定着部である。そして、7は用紙やOHP等の記録媒体を収容する記録媒体カセット、8はカラー画像形成後の記録媒体を排出する排出部である。なお、張力解除部材14が装着されていない中間転写ベルトユニット3と二次転写部5とで、実施の形態1の転写部を構成する。定着部6には、定着ローラ61、加圧ローラ62が設けられている。
【0038】
また、LSU4はスキャナ等で読取った画像信号、或いはプリンタとして外部のコンピュータから出力された画像信号等によって変調されたレーザー光で各色感光体21のドラム上を走査し、YMCB各色の静電潜像を各感光体21上にそれぞれ形成する。
【0039】
さて、更に図1の説明を続けると、9は記録媒体カセット7から1枚ずつ記録媒体を取り出して搬送路Aに送出することができるピックアップローラ、10はレジストセンサ(図示しない)によって位置ズレを検出し搬送される記録媒体に抵抗を与えて先端位置を補正するレジストローラである。そして11は、カラー画像を形成された後の記録媒体を排出部8に排出するための排出ローラである。
【0040】
そして、図1,2に示す13は、画像形成装置1本体の中間転写ユニットを収容した側面に位置する(言い換えれば脇に設けられた)側壁ケース、13aは側壁ケース13に形成されたガイド溝(本発明のガイド部)である。この側壁ケース13は板金やプラスチックで成形されて、内部には電源線等の配線類が収められる。
【0041】
図2に示す14は、中間転写ベルトユニット3の挿入方向と同一方向に伸びてガイド溝13a内に挿入され中間転写ベルト31の張力を解除する張力解除部材である。張力解除部材14を装着するガイド機能をこのガイド溝13aが果たす。この張力解除部材14の中間転写ベルト31側の面は揺動部材36aの側面を押圧して揺動させるカム面として作用する。このとき揺動部材36aはいわばカムフォロワとなる。この張力解除部材14を挿入することにより、本来中間転写ベルト31に作用する付勢力を後述の張力調整機構Mによって張力解除部材14からの力とバランスさせることにより一時的に制限することができる。
【0042】
これにより、この張力解除部材14を工場出荷時や輸送時にガイド溝13a内に挿入し、これを挿入したままの状態で搬送すると、輸送中に高温に曝されるなどで多発する中間転写ベルト31の曲げ癖、伸び癖等をベルトが弛緩していることによって防止するものである。同様に、輸送時の搬送で傷つく可能性がある中間転写ベルト31もこの張力解除部材14がカバーとして作用して防止できる。
【0043】
そして、以上説明した使用者が画像形成装置1を実際に使用するときには、この張力解除部材14は用済みのものとしてガイド溝13a内から引き抜く。使用者によるこの引き抜き作業が、力のバランス点を移し、中間転写ベルト31の状態をバネ38の付勢力によって弛緩状態から本来の緊張した張力の状態に回復させるもので、これにより使用時には中間転写ベルト31に弛みのない張力を加えることができる。詳細は後述する。
【0044】
なお、実施の形態1の中間転写ベルトユニット3は、無端の中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31を張架する駆動ローラ32(後で詳述する)と従動ローラ33(後で詳述する)の2つのローラ、更に中間転写ベルト31を感光体21との間で挟持するYMCBの4つの一次転写ローラ、張力付与ローラと、張力調整機構M、更には脱着自在の張力解除部材14とから構成される。
【0045】
更に図1,2に戻って、画像形成部2の詳細について説明する。21はYMCB各色の感光体である。感光体21は円筒形のドラムの外周に有機感光体(OPC;Organic Photo Conductor)の層が設けられており、この表面を上述したようにレーザー光で走査し、帯電器23(後述する)によって帯電された感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する。22はYMCB各色のトナーを収容したボトルである。ボトル22の内部にはそれぞれトナーを攪拌するための攪拌パネルが設けられている。
【0046】
そして、図1に示す23は、感光体21を一様に帯電させるための帯電器であり、YMCBの各色ごとに感光体21に接近して設けられる。24は各色トナーを感光体21表面に供給するYMCBの各色ごとに設けられた現像ローラ、25は転写のためバイアス電圧が印加された一次転写ローラである。また、26は感光体21の周りに設けられ残留トナーを掻き取るためのブラシとこの廃トナーを回収ボトル12(後述)に廃棄するクリーニング部である。一次転写が行われた後、ブラシは各感光体21上に残った各色の残留トナーを掻き取って回収ボトル12に搬送して回収する。
【0047】
ここで画像形成部2の画像形成に関する動作の詳細な説明をすると、画像形成部2では帯電器23が感光体21上に電荷を一様に帯電させる。これに対して、読取装置やその他コンピュータなどから転送されたデータに基づいて、LSU4からレーザー光を走査し、一様に帯電している電荷のうちトナー画像形成に必要な電荷だけを残留させ、形成された静電潜像に現像ローラ24から供給されたトナー(通常は負に帯電)を付着させる。また、一次転写ローラ25にはそれぞれトナーと逆極性(通常は正)のバイアス電圧が印加されており、この電界の作用によって回転してきた感光体21上のトナー画像は中間転写ベルト31に一次転写される。バイアス電圧はYMCBの順でそれぞれ転写できるように電圧制御される。
【0048】
さて、そこでこのトナー画像を一次転写され、またこのトナー画像を記録媒体に二次転写する中間転写ベルトユニット3について説明する。図1において、31はバイアス電圧の印加による電界の作用によって感光体21上のトナー画像が一次転写される中間転写ベルト、32は中間転写ベルト31の内周空間に配設された駆動ローラ、33は中間転写ベルト31の内周空間に配設された従動ローラ、34はクリーニングブレードが設けられたベルトクリーニング部、35は駆動ローラ32と従動ローラ33のほかに設けられた中間転写ベルト31の張力を調整するため張力付与ローラである。なお、本発明の実施の形態1における保持ローラは駆動ローラ32と従動ローラ33が相当する。
【0049】
さて、この中間転写ベルト31の構成は図3(c)に示すように基本的に二層から形成されている。31aは樹脂やゴムなどの誘電体であって可撓性の無端のベルト、31bはベルト31aの表面に被覆された無端でトナー画像が一次転写される転写フィルム層である。なお、本発明においては、中間転写ベルトを発明の構成要件としないで、表現としては転写フィルムを構成要件としている。これは一次転写、二次転写において転写部の機能を担うのは転写フィルム層31bであって、曲げ癖、伸び癖等が問題となるのは転写フィルム層31bだからであり、実施の形態1においては中間転写ベルト31が転写フィルムである。
【0050】
また、実施の形態1においては、この中間転写ベルト31に高い張力を与えるために張力付与ローラ35を押出したり、中間転写ベルト31に傷や熱が加わらないように低い張力状態にしたりできる張力調整機構M(本発明の張力付与手段)が設けられている。
【0051】
ここで、この画像形成装置1の中間転写ベルトユニット3の張力調整機構Mについて説明する。先ず、中間転写ベルト31に常時張力を加える(とくに転写の機能を担う転写フィルム層31bを弛ませずに適正な張力をかける)メカニズムについて説明する。以下、中間転写ベルト31に張力を加えると言うが、これはベルト31a共々、転写フィルム層31bに適正な張力をかけることを意味している。
【0052】
張力調整機構Mは使用状態の画像形成装置1の中間転写ベルト31に張力付与ローラ35を使って適正な緊張力を加えるものである。張力調整機構Mには、(1)この緊張力を加えるための付勢体(後述するバネ38)と、(2)この付勢体による中間転写ベルト31の張力を一時的に緩めることができる張力解除部材14と、(3)付勢体による付勢力を押圧レバーの作用で張力付与ローラ35の位置に応じて大小変化する第1の入力として、また、張力解除部材14による反対方向の押圧力を第2の入力として受け、この第1及び第2の2つの力のバランスで、第1の入力だけが加えられたときと、第1及び第2の入力が重畳的に加えられたときとで、2段階に張力の緊張状態を切換えることができるリンク切換機構を有している。そして第1の入力だけが加えられたときには張力の変動を吸収することができる機能を有している。
【0053】
先ず、図3(a)(b),図4(a)(b),図5(a)(b)(c),図7,図8(a)(b),図9(a)(b)(c)に基づいて張力調整機構Mの構造について説明する。図7,図8(a)(b)に示す3aは中間転写ベルトユニット3の枠体を構成し駆動ローラ32と従動ローラ33の軸端を支持するフレーム(本発明のフレーム)であり、対向する面の間に中間転写ベルト31が配設され、その従動ローラ33の感光体21側の側面にベルトクリーニング部34が設けられる。図5(a)(b)(c)に示した3a1,3a2は、張力解除部材14の突起を受け入れるための穴(本発明の穴部)である。36aは駆動ローラ32両端に軸支され、張力付与ローラ35を軸支する揺動部材である。揺動部材36aは駆動ローラ32の周囲で揺動(回転)可能であり、張力付与ローラ35を駆動ローラ32の軸を中心とする円軌道上を外側に向かって移動することによって、弛緩した状態の中間転写ベルト31に張力を加える。
【0054】
図9(a)は張力付与ローラ35を外側に向かって張り出させたときに、仰角θが小さくなると中間転写ベルト31が伸びて張力を加えることを示す。仰角θが大きいと、中間転写ベルトユニット3全体の高さ(3つのローラを頂点とする三角形の張力付与ローラ35からの高さ)は抑えられる。しかし、中間転写ベルト31の長さが変化(例えば部品によるバラツキ、寿命によるバラツキ、環境温度によるバラツキ、ベルト張力によるバラツキなどの原因による変化)する事情も多く、仰角θのバラツキは大きくなる。これは図9(b)に示すように、中間転写ベルト31の張力Tは張力付与ローラ35の押圧力fとの間にT=f/2/cos(θ/2)、すなわちT=f/{2・cos(θ/2)}の関係があることから、押圧力f(バネ38による力)があまり変化しない場合、仰角θが変化すると張力Tも変化し、仰角θと張力Tは連動することが分かる。
【0055】
従って、中間転写ベルトユニット3は輸送時など(画像形成装置1で実際に転写を実行するまで)に中間転写ベルト31の張力を弛緩させていたとしても、実際に転写を実行するときには、張力付与ローラ35が適正な張力Tを中間転写ベルト31に与える必要があり、また、適正な張力Tを中間転写ベルト31に与えた状態で上記した様々なバラツキにより仰角θが所定の値の位置から変化しても張力Tに変化がないのが望ましい。
【0056】
このように困難な課題を実施の形態1の張力調整機構Mは機械的な方法で実現する。即ち、図9(c)に示すとおり、張力付与ローラ35の軸中心(回転支点)が円軌道になるように揺動部材36aを支持する。そして、この円軌道の接線方向から所定の角度θ’だけずれた位置からほぼ一定の力f’で押す構成にしている。これにより、揺動部材36aが揺動するときの軌道の接線に対して揺動量に対応(比例的に変化)する大きさの所定の角度だけずれた方向から押圧レバー36cが中間リンク36bを介して揺動部材36aを付勢し張力付与ローラ35を押圧することになる。仰角θとこの所定の角度θ’が大きい場合、中間転写ベルトユニット3のユニット高さが低くなり、力f’がほぼ一定のため押圧力f=f’・cosθ’の関係からfは小さくなる。また、逆に仰角θとこの所定の角度θ’が小さく、ユニット高さを高くなると、力f’がほぼ一定のため押圧力f=f’・cosθ’の関係からfは大きくなる。これは張力Tがほぼ一定の状態を保つことを意味する。
【0057】
即ち、張力TはT=f’・cosθ’/{2・cos(θ/2)}と言う関係を有すため、仰角θ、角度θ’がいずれも同期して変動すると、張力Tがほぼ一定の値を持つことを示す。これは実験的にも裏付けられる。従って、中間転写ベルト31が経時変化したり、或いは温度変化によって長さが変化したりしても、(1)中間転写ベルトユニット3のユニット高さが小さくなるように張力付与ローラ35の位置が変化すれば、押圧力fが張力付与ローラを中間転写ベルト31方向に押す力に寄与する割合が小さく、また、(2)中間転写ベルトユニット3のユニット高さが大きくなるように張力付与ローラ35の位置が変化した場合には、押圧力fが張力付与ローラ35を押出す力に寄与する割合が大きくなり、中間転写ベルト31の張力Tのバラツキを吸収し、小さくすることができる。
【0058】
揺動部材36aは略三角形状をしており、この一隅が駆動ローラ32に軸支されて揺動する。揺動部材36aの残りの二隅には、これを駆動ローラ32周りに第1の方向(例えば時計回り)と第2の方向(例えば反時計回り)に揺動させるための2つの力(上記第1の入力と、第2の入力)を両側から加えることができる。
【0059】
36a1は張力解除部材14の挿入によって揺動部材36aに押圧力(第2の入力)を加えるためのカムフォロア面であり、36a2は画像形成装置1の使用時に穴3a1,3a2を覆い隠すことができる揺動部材36aの覆い部である。揺動部材36aは、張力解除部材14を押し込んだときその側面に沿って追従した動きをするので、張力解除部材14の側面がいわばカム面として作用し、揺動部材36aがカムフォロアとして作用する。そして、覆い部36a2は略三角形状で、張力解除部材14を挿入して第1の方向(例えば時計回り)に揺動したときは穴3a1,3a2を露出させることができる。なお、第1の方向と第2の方向はフレーム3aのサイドで逆になる。
【0060】
36bは揺動部材36aに対して付勢体(バネ38)からの付勢力(第1の入力)を常時加えるための中間リンクであり、36cは中間を軸支され、一端がバネ38に接続され、その引っ張り力(付勢力)によって他端側に接続された中間リンク36bを押し込む、或いは第2の入力により一部押返される押圧レバーである。更に、37は中間転写ベルトユニット3の枠体を構成するフレーム3a(図7,図8参照)に押圧レバー36cを回動自在に支持するレバー軸であり、38はこの押圧レバー36cの一端に取付けられて引っ張り力(付勢力)を作用させるバネである。
【0061】
なお、押圧レバー36cと中間リンク36bはピン(図示しない)で回動自在に接続され、中間リンク36bと揺動部材36aもピン(図示しない)で回動自在に接続される。そして、バネ38の引っ張り力を押圧レバー36cの梃子の作用で中間リンク36bの押圧力に変換し、揺動部材36aを第2の方向(例えば反時計回り)に付勢する。
【0062】
これに対し張力解除部材14をガイド溝13aと揺動部材36aの間に挿入したときは、揺動部材36aのカムフォロア面36a1を張力解除部材14が側面によって押し、フレーム3aを第1の方向(例えば時計回り)に回転させる。従って、第2の方向(例えば反時計回り)に付勢するバネ38によるモーメントと第1の方向に回転させる張力解除部材14の逆方向のモーメント、力がバランスしたところで揺動部材36aの位置が定まる。このバランスによって、揺動部材36aの軸支された張力付与ローラ35は中間リンク36bが中間転写ベルト31と平行になる状態の方向(中間転写ベルトユニット3のユニット高さが小さくなる方向)に円軌道上を内向きに移動し、このとき中間転写ベルト31が弛緩する。
【0063】
ここで、以上説明した張力調整機構Mに第2の入力を加える機構、即ちガイド溝13aと張力解除部材14の構成について説明する。
【0064】
先ず、画像形成装置1本体側の側壁ケース13のガイド溝13aについて説明すると、図5(a)(b)(c)に示すように、張力解除部材14を挿入したとき、この挿入する張力解除部材14の長手方向に向かう力をいわばカムの作用でこの方向と直交する横方向の力に変換し、徐々に中間転写ベルトユニット3に向けて張力解除部材14を押出すテーパー状の押出作用面13a1,13a2(本発明の押出作用部)が設けられている。図1は張力解除部材14を外して画像形成装置1が使用状態にあるときの状態を示し、図2は張力解除部材14を装着して画像形成装置1を未使用の状態で運搬時の状態の状態を示している。
【0065】
従って、ガイド溝13aは、張力解除部材14の先端の突起14cを挿入する部分は狭くなっているが、これが押出作用面13a1が形成されることで拡大され、中間転写ベルト31の幅はそのままの幅を保ち、再度押出作用面13a2で拡大される。いわゆる2段の段差が設けられた構成となっている。張力解除部材14は以下説明するようにこの段差に合致した形状をしており、輸送時にも移動するようなことはない。
【0066】
次に、図6に基づいて張力解除部材14の構成について説明する。上記したガイド溝13aと組み合わされるものである。図6で示すように、14aは張力解除部材14のフィルムカバー部(本発明のカバー部)で、中間転写ベルト31の側面から覆って保護することができるし、中間転写ベルトユニット3を扱うときに中間転写ベルト31に触れずに持つことができる。次に、このフィルムカバー部14aのガイド溝13a側に設けられた14b1,14b2は、ガイド溝13aの押出作用面13a1,13a2とそれぞれ協働して張力解除部材14を中間転写ベルトユニット3側に向けて押出す張力解除部材14のスライド面(本発明のスライド部)である。このうち、スライド面14b2が挿入方向の先端で反中間転写ベルト31側のフィルムカバー部14aに設けられ、スライド面14b1が根元側で反中間転写ベルト31側のフィルムカバー部14aに設けられる。これらは側壁ケース13のガイド溝13a内に挿入され、案内されて押出作用面13a1,13a2それぞれ載り上げ、中間転写ベルトユニット3側に張力解除部材14を所定幅だけ押出す。
【0067】
張力解除部材14の先端14cは自身を中間転写ベルトユニットのフレーム3aに係止するための突起であり、張力解除部材14が揺動部材36a押圧して安定した状態になったとき穴3a1,3a2と嵌合して張力解除部材14を所定位置に固定する。同様に張力解除部材14には、張力解除部材14の根元側に拡大保持部14dが設けられ、この拡大保持部14dにも突起14cと平行に第2の突起14eが設けられている。この突起14eは図5に示すように中間転写ベルトユニットのフレーム3aに形成された穴3a2に嵌合される。
【0068】
このようにスライド面14b1,14b2は、2ヶ所に限らず、所定の間隔をおいて張力解除部材14に複数配置することができ、このとき複数のスライド面14b1,14b2が、各々の位置において張力解除部材14自体が適正な動きを取れるよう互いにサポートするので、張力解除部材14の端面を揺動部材へ確実に当接させ、最後に穴3a1,3a2に突起14c,14eが挿入させるために必要で安定した動きを与えることができる。
【0069】
中でも実施の形態1のように、スライド面14b1,14b2を張力解除部材14の挿入方向の奥側と手前側とに少なくとも各々1個所ずつ形成するのが好適である。このとき、張力解除部材14の両端、即ち張力解除部材14の奥側と手前側とにスライド面14b1,14b2を設けることになり、必要最小限のスライド面14b1,14b2で張力解除部材14の前端と後端の動きを安定させることができ、張力解除部材14自体の動きがぶれずに確実に突起14c,14eを穴3a1,3a2に挿入することができる。
【0070】
次に、図6において、14fは、張力解除部材14を中間転写ベルトユニットのフレーム3aに装着したとき、中間転写ベルト31の側面から伸びており、作業者がこれを直接把持することができる取っ手部である。取っ手部14fは無端の転写フィルム層31bの駆動ローラ32に沿った外側に設けられ中間転写ベルトユニットフレーム3aを画像形成装置1内に挿入する際に使用される。
【0071】
さて、張力解除部材14を挿入すると、その中間転写ベルト31側の端面がバネ38によって押圧されている揺動部材36aのカムフォロア面36a1をこれと逆の方向へ押返し、覆い部36a2によって覆い隠されていた穴3a1,3a2を露出する。この露出された穴3a1,3a2に突起14c,14eが挿入される。この穴3a1,3a2に突起14c,14eの係合は、一連の作業で押し込まれ、退避した揺動部材36aがバネ38の付勢力で逆戻りしないように固定するためのもので、張力解除部材14を取り外すまで確実に中間転写ベルト31への付勢力の解除状態を維持することができる。
【0072】
そして、張力解除部材14が揺動部材36aを押圧して中間転写ベルト31の緊張を緩めた後は、突起14c,14eと穴3a1,3a2が係合し、且つ拡大保持部14dがガイド溝13aの段差形状と一致した高さに形成されているため、張力解除部材14はこの状態で安定して保持される。なお、この押出作用面13a1,13a2とスライド面14b1,14b2の形状はテーパー面であるのが好適である。この場合、形状が単純で、製造が容易であり、挿入時も円滑に挿入できる。しかし、円弧などこれに限られるものではない。
【0073】
なお、押出作用面13a1,13a2の押圧幅、即ち張力解除部材14の挿入方向と直交する方向(横方向)に張力解除部材14が駆動ローラ32側に前進するスライド面14b1,14b2の押出幅は、張力解除部材14が所定距離ガイド溝13a内に挿入されて、張力解除部材14の中間転写ベルト31側の端面が揺動部材36aのカムフォロア面36a1に当初当接するときの位置(押出作用面13a1,13a2がスライド面14b1,14b2と当接する前の状態の位置)と、揺動部材36aが張力付与ローラ35の押圧を制限して穴3a1,3a2と突起14c,14eとが一直線となるときの揺動部材36aの位置(張力解除部材14がガイド溝13aの押出作用面13a1と押出作用面13a2を載り越えて一直線となって突起14c,14eと穴3a1,3a2が係止された位置)とのベルトに沿った横方向の幅に対応している。これにより、複雑な機構に頼らず簡素な方法で確実に突起14c,14eを穴3a1,3a2へ挿入させることができる。
【0074】
そして、以上は出荷時や輸送時に張力解除部材14を装着するときの状態の説明であるが、実際に画像形成装置1を使用するときには、張力解除部材14をガイド溝13aから引き抜いて使用しなければならない。この引き抜きにより揺動部材36aはバネ38の付勢力によって第2の方向(例えば反時計回り)に押圧されて反力がなかったときの元の位置に戻ることになる。このとき、覆い部36a2が再び穴3a1,3a2を覆い隠す。これにより画像形成装置1を使用するとき、穴3a1,3a2が露出されることはなく、見映えが悪化することはない。
【0075】
このように張力調整機構Mに特定の方向から第1の入力を加えるだけでなく、第2の入力を加えるように構成されているので、張力解除部材14を所定位置に挿入するだけで、中間転写ベルト31の緊張状態を弛緩し、温度が高くなる輸送時などの中間転写ベルト31の伸び癖や曲げ癖を防止することができる。また、フィルムカバー部14aを設けたため、転写フィルム層31bの露出した部分が破損しないよう保護することができ、中間転写ユニット3を画像形成装置1内に装着するとき、取っ手部14fを作業者が持つことができ、手が直接中間転写ベルト31に触れないで中間転写ベルトユニット3を画像形成装置1に挿入できる。そして、経年変化などの中間転写ベルト31の変化を吸収し、安定した張力を保つことができる。
【0076】
そして、実施の形態1の張力解除部材14は、中間転写ベルト31の張力を解除する機能、転写フィルム層31bの露出した個所が破損しないよう保護する機能、中間転写ユニット3を画像形成装置1内に装着するときに、作業者の手が直接転写フィルム層31bに触れないように挿入できる機能など、複数の機能を一つの部材で実現することができ、この部材を中間転写ユニット3に装着するだけで、画像形成装置1を使用する前の諸々の問題をすべて解決することができる。
【0077】
以上説明したように実施の形態1の中間転写ベルトユニット3と画像形成装置1は、張力解除部材14を画像形成装置1の所定位置に挿入するだけで、輸送時には不要な中間転写ベルト31の張力を緩め、その伸び癖や曲げ癖が発生するのを防止し、作業者が転写フィルム層31bに触れないで持ち運べ、転写フィルム層31bの露出した部分の破損を防止することができる。最終的には不要になる部材を一つにすることができ、安価で、コンパクトであり、操作性に優れた部材を提供することができる。
【0078】
また、バネ38によって付勢力を発生させる揺動部材36aは、張力付与ローラ35の支持を支持する機能も兼ねており、その回転支点が駆動ローラ32の軸であるため、揺動部材36aの支持剛性を確保しつつ構成を簡略化できるので、簡単な構成で小型化を図りつつ、中間転写ベルト31へ付勢力を付与することができる。そして、実施の形態1の張力調整機構Mは経年変化などの中間転写ベルト31の変化を吸収し、安定した張力を保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、トナーを使った電子写真プロセスで画像を形成する中間転写ベルトユニット及び画像形成装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態1における画像形成装置に中間転写ユニットを装着した転写実行時の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における画像形成装置に中間転写ユニットを装着し張力解除部材を挿入して未転写時の構成図
【図3】(a)本発明の実施の形態1における中間転写ユニットに張力解除部材を挿入して張力を弛緩させたときの張力調整機構の説明図、(b)本発明の実施の形態1における中間転写ユニットに張力を加えたときの張力調整機構の説明図、(c)本発明の実施の形態1における中間転写ベルトの断面の説明図
【図4】(a)本発明の実施の形態1における中間転写ユニットに張力解除部材を挿入して張力を弛緩させたときの張力調整機構の斜視図、(b)本発明の実施の形態1における中間転写ユニットに張力を加えたときの張力調整機構の斜視図
【図5】本発明の実施の形態1における中間転写ユニットに張力解除部材を挿入して張力を弛緩させるときの張力調整機構の動作説明図
【図6】(a)本発明の実施の形態1における張力解除部材の斜視図、(b)本発明の実施の形態1における張力解除部材の側面図、(c)本発明の実施の形態1における張力解除部材の正面図
【図7】本発明の実施の形態1における画像形成装置の中間転写ユニットに張力解除部材を挿入していない状態の斜視図
【図8】(a)本発明の実施の形態1における画像形成装置の中間転写ユニットに張力解除部材を挿入した状態の斜視図、(b)本発明の実施の形態1における画像形成装置の中間転写ユニットに張力解除部材を挿入した状態の背後側面図
【図9】(a)本発明の実施の形態1における画像形成装置の中間転写ユニットの張力付与ローラが移動したときの中間転写ベルトの説明図、(b)本発明の実施の形態1における画像形成装置の中間転写ユニットの張力の説明図、(c)本発明の実施の形態1における画像形成装置の中間転写ユニットの張力付与ローラが移動するときの軌道と張力を説明する説明図
【符号の説明】
【0081】
1 画像形成装置
2 画像形成部
3 中間転写ベルトユニット
3a1,3a2
4 LSU
5 二次転写部
6 定着部
7 記録媒体カセット
8 排出部
9 ピックアップローラ
10 レジストローラ
11 排出ローラ
13 側壁ケース
13a1,13a2 押出作用面
14a フィルムカバー部
14b1,14b2 スライド面
14c,14e 突起
14d 拡大保持部
14f 取っ手部
21 感光体
22 ボトル
23 帯電器
24 現像ローラ
25 一次転写ローラ
26 クリーニング部
31 中間転写ベルト
32 駆動ローラ
33 従動ローラ
34 ベルトクリーニング部
35 張力付与ローラ
36a 揺動部材
36a1 カムフォロア面
36a2 覆い部
36b 中間リンク
36c 押圧レバー
37 レバー軸
38 バネ
51 二次転写ローラ
61 定着ローラ
62 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置内に挿入される中間転写ユニットであって、
トナー像を記録媒体へ転写する無端状の転写フィルムと、
前記転写フィルムへ張力を付与する張力付与手段と、
前記中間転写ユニットの挿入方向と同一方向に延び前記設けられ前記転写フィルムの張力を解除する張力解除手段と、を備え、
前記張力解除手段は、前記転写フィルムの一方の端部に沿った内側の面で前記転写フィルムを保護するカバー部と、
前記転写フィルムの一方の端部に沿った外側に設けられ前記中間転写ユニットを前記画像形成装置内に挿入する際に用いる取っ手部と、を有することを特徴とする中間転写ユニット。
【請求項2】
前記中間転写ユニットに回転自在に支持され、前記転写フィルムを保持する保持ローラを前記転写フィルムの内周空間であって前記一方の端部に沿って有し、
前記張力付与手段は、
前記転写フィルムの内周空間に設けられ前記転写フィルムに内側から張力を与える張力付与ローラと、前記保持ローラの軸を支点に回動し前記張力付与ローラを保持する揺動部材と、この揺動部材が回動する際の前記揺動部材の円周軌道の接線に対して所定角度ずれた方向から前記揺動部材を付勢して前記張力付与ローラに前記転写フィルムを押圧させる付勢手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の中間転写ユニット。
【請求項3】
前記転写フィルムの回転方向の側面を覆うフレームを設け、
前記張力解除手段は、前記中間転写ユニットに対して脱着可能であり、前記転写フィルムの一方の端部に沿って挿入されて前記中間転写ユニットに取付けられ、前記挿入方向の先端に突起部を有し、
前記フレームは、前記張力解除手段が前記中間転写ユニットに沿って挿入される方向の奥側に穴部を有し、
前記張力解除手段の転写フィルム側の端面は、前記張力解除手段が前記転写フィルムの一方の端部に沿って前記中間転写ユニットに取付けられる際、前記揺動部材を前記付勢手段が押圧する所定方向と逆方向に前記揺動部材を押圧した後、前記穴部に突起部が挿入されて張力付与ローラによる前記転写フィルムの押圧を解除することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の中間転写ユニット。
【請求項4】
前記転写フィルムの回転方向の側面を覆うフレームを設け、
前記張力解除手段は、前記中間転写ユニットに対して脱着可能であり、前記転写フィルムの一方の端部に沿って挿入されて前記中間転写ユニットに取付けられ、前記挿入方向の先端に突起部を有し、
前記フレームは、前記張力解除手段が前記中間転写ユニットに沿って挿入される方向の奥側に穴部を有し、
前記揺動部材は、前記付勢手段が前記所定方向に前記押圧レバーを押圧している間前記フレームに設けられた穴部を覆う覆い部を有し、
前記張力解除手段の転写フィルム側の端面は、前記張力解除手段が前記転写フィルムの一方の端部に沿って前記中間転写ユニットに取付けられる際、前記揺動部材を前記付勢手段が押圧する所定方向と逆方向に前記揺動部材を押圧し、前記覆い部を前記穴部から退避させて前記覆い部で覆われている穴部を露出させた後、前記露出した穴部に突起部が挿入されて前記押圧レバーによる前記転写フィルムの押圧を解除することを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の中間転写ユニット。
【請求項5】
前記画像形成装置の内側には前記張力解除手段の挿入を案内するガイド部が前記転写フィルムの一方の端部に沿って設けられ、
前記ガイド部には前記挿入された際に前記張力解除手段と当接する押出作用部が形成され、一方、前記張力解除手段の取っ手部側の側面には、前記挿入された際に前記押出作用部と当接するスライド部が形成され、前記中間転写ユニットが前記画像形成装置内に装着されている場合、前記張力解除手段が前記ガイド部に案内されながら前記転写フィルムの一方の端部に沿って所定距離挿入されると、前記スライド部が前記ガイド部の押出作用部に当接すると共に前記張力解除手段の転写フィルム側の端面が前記揺動部材へ当接し、その後、前記スライド部が前記ガイド部の押出作用部に当接したまま移動をすると前記張力解除手段の転写フィルム側の端面は前記揺動部材を前記付勢手段による付勢力とは反対の方向へ押返すように移動させ、前記退避後に穴部に前記突起部が挿入されて前記張力解除手段による前記転写フィルムへの張力が解除された状態を保持することを特徴とする請求項3記載の中間転写ユニット。
【請求項6】
前記スライド部は、所定の間隔をおいて前記張力付与手段に複数配置されることを特徴とする請求項5記載の中間転写ユニット。
【請求項7】
前記スライド部は、前記張力解除手段の挿入方向の奥側と手前側とに少なくとも各々1つずつ形成されることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の中間転写ユニット。
【請求項8】
前記スライド部の長さは、前記張力解除手段が前記所定距離挿入され前記張力解除手段の転写フィルム側の端面が前記揺動部材に当接するときの前記揺動部材の位置から前記揺動部材が前記張力付与ローラによる前記転写フィルムへの押圧を解除させる位置へ移動して前記突起部と前記穴部とが一直線となるときの前記揺動部材の位置とに対応していることを特徴とする請求項5記載の中間転写ユニット。
【請求項9】
画像形成装置内に挿入される中間転写ユニットであって、
トナー像を記録媒体へ転写する無端状の転写フィルムと、
前記転写フィルムへ張力を付与する張力付与手段と、
前記中間転写ユニットの挿入方向と同一方向に伸びて設けられ、転写を実行するときまで前記転写フィルムの張力を解除するための脱着可能な張力解除手段と、を備え、
前記張力解除手段が、前記転写フィルムの一方の端部に沿った内側の面で前記転写フィルムを保護するカバー部と、
前記転写フィルムの一方の端部に沿った外側に設けられ前記中間転写ユニットを前記画像形成装置内に挿入する際に用いる取っ手部と、を有することを特徴とする中間転写ユニット。
【請求項10】
前記転写フィルムの内周空間には前記転写フィルムを保持する保持ローラが配設されると共に、該転写フィルムの側面を挟んで前記保持ローラの軸端を支持するフレームが設けられ、
前記張力付与手段が、前記転写フィルムの内周空間に設けられて前記転写フィルムに内側から張力を与える張力付与ローラと、前記保持ローラの軸を支点に揺動し前記張力付与ローラを保持する揺動部材と、この揺動部材が揺動する際の軌道の接線に対して所定の角度だけずれた方向から前記揺動部材を付勢して前記張力付与ローラを押圧し、前記転写フィルムに所定の張力を加える付勢手段と、前記付勢手段の付勢力を前記揺動部材に伝えて揺動させる押圧レバーと、を有することを特徴とする請求項9記載の中間転写ユニット。
【請求項11】
前記張力解除手段には挿入方向先端に突起部が設けられると共に、前記フレームには前記突起部に対応する穴部が設けられ、
前記張力解除手段の転写フィルム側の端面が前記転写フィルムの一方の端部に沿って前記張力解除手段が脱着可能に挿入されたとき、前記張力解除手段が前記揺動部材を前記付勢手段が押圧する方向と逆方向に該揺動部材を押圧し、前記穴部に前記突起部が挿入されて前記張力付与手段による前記転写フィルムの押圧を解除することを特徴とする請求項9又は請求項10記載の中間転写ユニット。
【請求項12】
前記フレームが前記転写フィルムの回転方向の側面を覆い、
前記揺動部材には、前記付勢手段が前記所定の角度だけずれた方向に前記揺動部材を押圧している間前記フレームに設けられた穴部を覆う覆い部が設けられ、
前記張力解除手段が前記転写フィルムの一方の端部に沿って脱着可能に挿入されたとき、前記張力解除手段が前記揺動部材を前記付勢手段が押圧する方向と逆方向に該揺動部材を押圧し、前記覆い部を前記穴部から退避させて前記覆い部で覆われている穴部を露出させた状態で、前記穴部に前記突起部が挿入されて前記張力付与手段による前記転写フィルムの押圧を解除することを特徴とする請求項10乃至11記載の中間転写ユニット。
【請求項13】
感光体に静電潜像を形成して現像し、トナー像を記録媒体へ転写して定着する画像形成装置が転写を実行するまで該画像形成装置に装着される請求項12記載の中間転写ユニットであって、
前記画像形成装置の内側には、前記張力解除手段の挿入を案内するガイド部が前記転写フィルムの一方の端部に沿って設けられ、
前記ガイド部には、前記張力解除手段が挿入されたとき前記張力解除手段と当接する押出作用部が形成されると共に、前記張力解除手段の取っ手部側の側面には、前記挿入されたときに前記押出作用部と当接するスライド部が形成され、
前記張力解除手段が前記ガイド部に案内されて前記転写フィルムの一方の端部に沿って所定距離挿入されると、前記スライド部が前記押出作用部上をスライドすると共に前記張力解除手段の転写フィルム側の端面が前記揺動部材へ当接し、該張力解除手段の更なる挿入で前記張力解除手段の転写フィルム側の端面は前記揺動部材を前記付勢手段による付勢力とは逆方向に挿入による押圧幅の分だけ押圧し、前記覆い部を前記穴部から退避させて前記穴部に前記突起部が挿入されて前記張力解除手段による前記転写フィルムへの張力が解除された状態を保持することを特徴とする中間転写ユニット。
【請求項14】
前記スライド部は、所定の間隔をおいて前記張力解除手段に複数配置されることを特徴とする請求項13記載の中間転写ユニット。
【請求項15】
前記スライド部は、前記張力解除手段の挿入方向の奥側と手前側とに少なくとも各々1個所ずつ形成されることを特徴とする請求項13又は請求項14記載の中間転写ユニット。
【請求項16】
前記スライド部による押出幅は、前記張力解除手段の転写フィルム側の端面が前記揺動部材に当接するときの位置と、前記穴部に前記突起部が挿入されたときの位置とに対応する幅であることを特徴とする請求項13記載の中間転写ユニット。
【請求項17】
感光体に静電潜像を形成して現像することができる画像形成部と、トナー像を記録媒体へ転写する無端状の転写フィルムを有し、張力付与手段によって前記転写フィルムへ張力を付与し、前記画像形成部によって現像されたトナー像を記録媒体に転写することができる転写部と、転写された記録媒体のトナー画像を定着する定着装置を備え、前記転写部が請求項5乃至請求項8、請求項13乃至請求項16記載の中間転写ユニットを装着して構成された画像形成装置であって、前記中間転写ユニットの張力解除手段の挿入を案内するためのガイド部が該前記中間転写ユニットの脇に設けられ、転写を実行するときまで前記張力解除手段の挿入によって前記転写フィルムの張力を緩め、転写実行時には前記張力解除手段が取り外されて前記転写フィルムに所定の張力を加えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−47869(P2009−47869A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213240(P2007−213240)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】