説明

乗員保護装置

【課題】緊急状態を予測した際に効率的に電力を確保して供給することを目的とする。
【解決手段】衝突判断ECU22によって衝突が予測された場合(衝突予測時間が所定時間t1未満となった場合)に、電源制御ECU40が、モータジェネレータ44を発電器として機能させて回生電力を発生させ、該回生電力を各種アクチュエータ(シートアクチュエータ28、プリテンショナアクチュエータ30、及びブレーキアクチュエータ34等)に供給するように、電源制御セレクタ42を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員保護装置にかかり、特に、衝突等の緊急状態を予測して、乗員を保護する乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衝突などの緊急状態の際に乗員を保護する乗員保護装置としては、種々の技術が提案されている。例えば、衝突が予測された場合に、シートの各状態を変更して、乗員姿勢を適切な状態にしたり、シートベルトを巻き取って着座乗員を拘束したりする乗員保護装置等が提案されている。
【0003】
この種の乗員保護装置では、衝突が予測された場合に、各種アクチュエータを駆動するため、アクチュエータを駆動するための電力を確保する必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の技術では、第1の電源手段と、この第1の電源手段よりも高電圧の電力を供給する第2の電源手段と、衝突を予知するための衝突予知手段と、衝突予知手段とからの出力に基づいて車両の所定の動作機構を作動させる駆動手段と、衝突予知手段により衝突を予知した際に、第1の電源手段からの電力を駆動手段に供給していた場合には第2の電源手段からの電力を駆動手段に供給するように切り替える切替手段と、を備えることが提案されている。すなわち、特許文献1に記載の技術では、衝突を予知した際に、高電圧の第2の電源手段に切り替えることにより、乗員保護装置を駆動する電力を確保するようにしている。
【特許文献1】特開2006−7833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、衝突予知時に作動させる対象装置に第2の電源手段から高電圧の電力を供給するようにしているが、高電圧の電力を供給する第2の電源手段を単に追加しているのみであり、衝突予知時という状況下で、より効率的に電力を供給するためには改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、緊急状態を予測した際に効率的に電力を確保して供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、自車両に対する緊急状態を予測する予測手段と、予測された前記緊急状態を回避するための回避手段を駆動する緊急回避駆動手段と、前記緊急状態が予測された際に乗員を保護するための乗員保護手段を駆動する乗員保護駆動手段と、車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換可能な変換手段と、前記緊急状態が予測された場合に、前記緊急状態に応じた運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、変換した電気エネルギーを前記緊急回避駆動手段及び前記乗員保護駆動手段の少なくとも一方に供給するように前記変換手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴としてる。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、予測手段では、自車両に対する緊急状態が予測される。例えば、予測手段は、自車両と障害物の距離等を検出することによって自車両に対する緊急状態を予測したり、自車両と障害物の衝突予測時間等を求めることによって自車両に対する緊急状態を予測することが可能である。
【0009】
緊急回避駆動手段は、予測された緊急状態を回避するための回避手段を駆動し、乗員保護駆動手段は、緊急状態が予測された際に乗員を保護するための乗員保護手段を駆動する。例えば、緊急回避駆動手段は、請求項4に記載の発明のように、緊急状態を回避するように車両の制動装置を駆動する制動駆動手段、及び緊急状態を回避しやすいように車両の操舵装置を駆動する操舵駆動手段の少なくとも一方を適用することができる。また、乗員保護駆動手段は、請求項5に記載の発明のように、シートクッションに対する傾斜角度が変更可能なシートバックの傾斜角度を予め定めた傾斜角度に変更するように駆動するシートバック駆動手段、及びシートベルトを巻き取って乗員を拘束するように駆動するシートベルト駆動手段の少なくとも一方を適用することができる。
【0010】
また、変更手段は、車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変更することが可能とされている。変更手段は、例えば、請求項2に記載の発明のように、制動時の運動エネルギーを電気エネルギーに変換するようにしてもよい。この場合には、例えば、請求項3に記載の発明のように、車両の駆動力を発生と発電とが可能なモータジェネレータを適用することができる。
【0011】
そして、制御手段では、緊急状態が予測された場合に、緊急状態に応じた運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、変換した電気エネルギーを緊急回避駆動手段及び乗員保護駆動手段の少なくとも一方に供給するように変換手段が制御される。すなわち、緊急状態の際には、緊急状態に応じた運動エネルギーを利用して電気エネルギーを確保して、緊急回避駆動手段や乗員保護駆動手段を駆動することができるので、緊急状態を予測した際に効率的に電力を確保して供給することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、緊急状態が予測された場合に、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、緊急状態の回避や乗員保護等を駆動する駆動手段に供給するので、緊急状態を予測した際に効率的に電力を確保して供給することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置の概略車両搭載位置を示す図であり、図2は、本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置の構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態に係わる乗員保護装置10は、走行の駆動源として、エンジンとモータジェネレータを搭載したハイブリッド車、またはモータジェネレータを備えた電気自動車に搭載するものとして説明する。
【0014】
本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置10は、図1、2に示すように、前方の障害物までの距離を検出するための前方ミリ波レーダー12、前側方の障害物までの距離を検出するための前側方ミリ波レーダー14、前方を撮影するステレオカメラ16、後方の障害物までの距離を検出するための後方ミリ波レーダー18、後側方の障害物までの距離を検出するための後側方ミリ波レーダー20、及び衝突判断ECU(Elecgtronic Control Unit)22を備え、それぞれバス24に接続されている。前方ミリ波レーダー12、前側方ミリ波レーダー14、ステレオカメラ16、後方ミリ波レーダー18、及び後側方ミリ波レーダー20は、車両周辺を監視して、監視結果を衝突判断ECU22に出力する。
【0015】
前方ミリ波レーダー12は、例えば、フロントグリル中央付近に設けられ、前側方ミリ波レーダー14は、バンパ内の車幅方向両端付近等に設けられ、それぞれ車両前方や前側方にミリ波を出射することで対象物から反射してきた電波を受信し、伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差などを基に対象物までの距離や自車との相対速度等を測定するために設けられている。また、後方ミリ波レーダー18及び後側方ミリ波レーダー20は、リアバンパー等に設けられ、それぞれ車両後方や後側方にミリ波を出射することで対象物から反射してきた電波を受信し、伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差などを基に対象物までの距離や自車との相対速度等を測定するために設けられている。
【0016】
ステレオカメラ16は、フロントウインドシールドガラス上方の中央付近に設けられ、車両前方を撮影して、周辺の障害物を検出すると共に、障害物までの距離を測定するために設けられている。なお、ステレオカメラ16は、省略した構成としてもよい。
【0017】
そして、衝突判断ECU22は、前方ミリ波レーダー12、前側方ミリ波レーダー14、ステレオカメラ16、後方ミリ波レーダー18、及び後側方ミリ波レーダー20の検出結果を取得して衝突予測を行う。衝突予測については既知の各種技術を適用することができるので、詳細な説明を省略する。
【0018】
また、本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置10は、衝突判断ECU22によって衝突が予測された場合に、緊急状態を回避するための回避手段や、乗員を保護するための各種乗員保護手段を制御する乗員保護制御ECU26を更に備えてバス24に接続されている。
【0019】
乗員保護制御ECU26による乗員保護手段の制御としては、本実施形態では、図3に示すように、衝突予測時にシートクッションに対するシートバック36の傾斜角度を目標角度(目標角度範囲)内に調整するシート制御や、衝突予測時にシートベルト38を巻き取るシートベルト制御を行う。また、乗員保護制御ECU26による回避手段の制御としては、本実施形態では、衝突予測時にブレーキを制御して衝突を回避するブレーキ制御等の制御を行う。
【0020】
詳細には、乗員保護制御ECU26には、シートクッションに対するシートバック36の傾斜角度を検出するシートバック角度検出センサ32、シートクッションに対する傾斜角度が変更可能なシートバック36を駆動するためのシートアクチュエータ28、シートベルト38を巻き取るためのプリテンショナアクチュエータ30、及びブレーキを駆動するためのブレーキアクチュエータ34が接続されている。
【0021】
乗員保護制御ECU26は、衝突判断ECU22によって衝突が予測され、シートバック角度検出センサ32の検出結果からシートバック36が目標角度外(目標角度範囲外でもよい)の場合に、図3に示すように、シートアクチュエータ28を作動してシートバック36が目標角度になるように制御すると共に、プリテンショナアクチュエータ30を作動してシートベルト38を巻き取るように制御することによって乗員を保護する。
【0022】
また、乗員保護制御ECU26は、衝突が予測された場合に、衝突を回避するためにブレーキアクチュエータ34を制御することによって緊急状態を回避する。ブレーキアクチュエータ34の制御(ブレーキ制御)としては、例えば、衝突対象を回避するように自動的にブレーキを制御するようにしてもよいし、乗員の操作を補助して制動力を上げるようにブレーキを制御するようにしてもよい。
【0023】
なお、シートは、図示しないスイッチ等によってシートの状態変更が指示された場合にスイッチの操作状態に応じて、シートアクチュエータ28を駆動して、リクライニング角度を調整したり、他のアクチュエータを駆動して、シートスライド等のシートの各種状態を変更する。
【0024】
ところで、本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置10は、衝突が予測された場合に、乗員保護制御ECU26によって上述のように回避手段や乗員保護手段等の乗員保護機能を制御するが、各アクチュエータを作動させるための電力を確保する必要がある。
【0025】
そこで、本実施の形態では、各アクチュエータへ供給する電力を制御する電源制御ECU40を備えてバス24に接続されている。
【0026】
電源制御ECU40には、電源制御セレクタ42が接続され、電源制御セレクタ42には車両を駆動するためのモータジェネレータ44、及び電池46が接続されている。
【0027】
電源制御セレクタ42は、モータジェネレータ44や各種アクチュエータ(シートアクチュエータ28、プリテンショナアクチュエータ30、及びブレーキアクチュエータ34等)への電池電力の供給や、モータジェネレータ44によって発電された電力の電池46や各種アクチュエータへの供給を電源制御ECU40の制御によって切り替えるようになっている。
【0028】
本実施の形態では、電源制御ECU40は、衝突予測されていない通常の走行時には、一般的なハイブリッド自動車や電気自動車と同様に、電池46による電力でモータジェネレータ44を駆動して走行を行うように制御する。また、乗員によってブレーキ操作が行われた場合には、モータジェネレータ44を発電器として機能させることによって回生電力を発生させ、該回生電力が電池46やブレーキアクチュエータ34等へ供給されるように、電源制御セレクタ42を制御する。
【0029】
一方、衝突判断ECU22によって衝突が予測された場合(衝突予測時間が所定時間t1未満となった場合)には、電源制御ECU40は、モータジェネレータ44を発電器として機能させて回生電力を発生させ、該回生電力が各種アクチュエータ(シートアクチュエータ28、プリテンショナアクチュエータ30、及びブレーキアクチュエータ34等)に供給されるように、電源制御セレクタ42を制御する。すなわち、衝突等の緊急状態の際には、通常ブレーキを使用するので、モータジェネレータ44の発電抵抗により回生ブレーキを機能させて、緊急状態に応じたモータジェネレータ44の回生エネルギーを利用することで、回避手段や乗員保護手段等の乗員保護機能を作動させるために必要な電力を効率的に確保して供給することができる。
【0030】
続いて、上述のように構成された本発明の第1実施形態に係わる乗員保護装置10の各ECUで行われる処理について説明する。
【0031】
まず、衝突判断ECU22で行われる処理について説明する。図4は、本発明の第1実施の形態に係わる乗員保護装置10の衝突判断ECU22で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図4の処理は、図示しないイグニッションスイッチがオンされた場合に開始し、イグニッションスイッチがオフまたは車両が衝突した場合に終了するものとして説明する。
【0032】
ステップ100では、前方障害物までの距離が入力されてステップ102へ移行する。すなわち、前方ミリ波レーダー12、前側方ミリ波レーダー14、ステレオカメラ16等の検出結果が入力される。
【0033】
ステップ102では、相対速度が算出されてステップ104へ移行する。例えば、ミリ波レーダーによって所定時間毎に検出された前方物体までの距離から相対速度が算出される。なお、ステレオカメラ16の撮影結果を画像処理することによって距離を求めて相対速度を算出するようにしてもよい。
【0034】
ステップ104では、新たにミリ波レーダーの検出結果が入力されてステップ106へ移行する。
【0035】
ステップ106では、衝突までの時間tが算出され、ステップ100に戻って上述の処理が繰り返される。すなわち、前方ミリ波レーダー12、前側方ミリ波レーダー14、ステレオカメラ16等によって検出した前方物体までの距離と、ステップ102で算出した相対速度から衝突までの時間tを算出して、ステップ100に戻って上述の処理が繰り返される。
【0036】
次に、乗員保護制御ECU26で行われる処理について説明する。図5は、本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置10の乗員保護制御ECU26で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図5の処理は、図示しないイグニッションスイッチがオンされた場合に開始し、イグニッションスイッチがオフまはたバンパ等に設けられた衝突検出センサ等によって衝突が検出された場合に終了するものとして説明する。
【0037】
ステップ200では、衝突判断ECU22によって算出された衝突予測時間tが入力されてステップ202へ移行する。
【0038】
ステップ202では、衝突予測時間tが予め定めた時間t1未満になったか否か判定され、該判定が肯定された場合にはステップ204へ移行し、否定された場合にはステップ218へ移行する。
【0039】
ステップ204では、乗員保護機能が作動中か否か判定される。該判定は、既に衝突時間t1未満となってシートアクチュエータ28、プリテンショナアクチュエータ30、及びブレーキアクチュエータ34等が動作しているか否かを判定し、該判定が否定された場合にはステップ206へ移行し、肯定された場合にはステップ212へ移行する。
【0040】
ステップ206では、シートバック36の傾斜角度が予め定めた目標角度外か否か判定される。該判定は、シートバック角度検出センサ32の検出結果からシートバック36の傾斜角度が目標角度範囲外か否かをを判定し、該判定が肯定された場合にはステップ208へ移行し、否定された場合にはステップ210へ移行する。
【0041】
ステップ208では、シートアクチュエータ28が駆動開始されてステップ210へ移行する。すなわち、目標角度になるようにシートバック36の調整が開始される。
【0042】
ステップ210では、プリテンショナアクチュエータ30が駆動開始されると共に、ブレーキアクチュエータ34が駆動制御されてステップ200に戻って上述の処理が繰り返される。すなわち、シートベルト38が巻き取られると共に、ブレーキの制御が行われる。
【0043】
また、ステップ204の判定が肯定されてステップステップ212へ移行すると、シートバック36の傾斜角度が目標角度か否か判定される。該判定は、シートアクチュエータ28によってシートバック36の傾斜角度が調整開始されて、目標角度になったか否かをシートバック角度検出センサ32の検出結果から判定し、該判定が肯定された場合にはステップ216へ移行し、否定された場合にはステップ214へ移行する。
【0044】
ステップ214では、シート調整が所定時間経過したか否か判定される。該判定は、衝突後にシート調整が継続されていることを防止するための所定時間が設定され、該所定時間が経過したか否かが判定される。該判定が肯定された場合にはステップ216へ移行し、否定された場合にはステップ200へ戻って上述の処理が繰り返される。
【0045】
一方、ステップ202の判定が否定されてステップ218へ移行すると、乗員保護機能が作動中か否か判定される。すなわち、既にシートアクチュエータ28、プリテンショナアクチュエータ30、及びブレーキアクチュエータ34等が動作しているか否かを判定し、該判定が肯定された場合にはステップ220へ移行し、否定された場合にはステップ200に戻って上述の処理が繰り返される。
【0046】
ステップ220では、シート調整、シートベルト調整、ブレーキ制御等の乗員保護機能が動作しているので、リセットしてシートアクチュエータ28及びプリテンショナアクチュエータ30の動作を停止すると共に、ブレーキアクチュエータ34の制御を停止してステップ200へ戻って上述の処理が繰り返される。なお、リセットとしては、シートアクチュエータ28の動作前の状態に戻すようにシートアクチュエータ28を更に動作するようにしてもよい。
【0047】
このように本実施の形態に係わる乗員保護装置10は、衝突が予測された場合(衝突予測時間tが予め定めた時間t1未満になった場合)に、シートバック36の傾斜角度が目標角度外のときに、シートバック36の傾斜角度を目標角度になるように調整するので、着座乗員を予め定めた適正姿勢にすることができ、シートベルト38やエアバック装置等を適正に作動させることができる。また、衝突が予測された場合に、シートベルト38を巻き取るので、衝突に備えて乗員を拘束して乗員を保護することができる。さらに、ブレーキ制御が行われるので、衝突等の緊急状態を回避することも可能となる。
【0048】
続いて、電源制御ECU40で行われる処理について説明する。図6は、本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置10の電源制御ECU40で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図6の処理は、図示しないイグニッションスイッチがオンされた場合に開始するものとして説明する。
【0049】
まずステップ300では、通常走行電源制御が開始されてステップ302へ移行する。通常走行電源制御は、例えば、電源制御セレクタ42が、電池46の電力をモータジェネレータ44へ供給することによって走行可能とし、ブレーキ時にモータジェネレータ44を発電器として機能させて回生電力を電池46に供給して電池46を充電する等の制御を行う。
【0050】
ステップ302では、衝突判断ECU22によって算出された衝突予測時間tが入力されてステップ304へ移行する。
【0051】
ステップ304では、衝突予測時間tが予め定めた時間t1未満になったか否か判定され、該判定が肯定された場合にはステップ306へ移行し、否定された場合にはステップ308へ移行する。
【0052】
ステップ306では、モータジェネレータ44の回生電力が乗員保護機能を駆動する各種アクチュエータに供給されてステップ302に戻って上述の処理が繰り返される。すなわち、電源制御セレクタ42がモータジェネレータ44を発電器として機能させ、モータジェネレータ44によって発電された電力をシートアクチュエータ28、プリテンショナアクチュエータ30、及びブレーキアクチュエータ34へ供給するように切り替える。これによって、衝突予測時に機能する回避手段や乗員保護手段等の乗員保護機能を動作させるための電力を効率的に確保して供給することができる。
【0053】
一方、ステップ308では、回生電力に切り替えられているか否か判定される。該判定は、既に衝突予測時間tが時間f1未満となってモータジェネレータ44の回生電力が乗員保護機能を駆動する各種アクチュエータに供給されるように切り替えられているか否かを判定し、肯定された場合にはステップ310へ移行し、否定された場合にはステップ302に戻って上述の処理が繰り返される。
【0054】
ステップ308では、通常走行電源制御に切り替えられてステップ300に戻って上述の処理が繰り返される。すなわち、電源制御セレクタ42が、電池46の電力をモータジェネレータ44へ供給することによって走行可能とし、ブレーキ時にモータジェネレータ44を発電器として機能させて回生電力を電池46に供給して電池46を充電する等の制御を行う。
【0055】
このように本実施の形態では、衝突が予測された場合には、回避手段や乗員保護手段等の乗員保護機能を作動させるが、この時、モータジェネレータ44の回生電力を各種アクチュエータ(シートアクチュエータ28、プリテンショナアクチュエータ30、ブレーキアクチュエータ34等)に供給するように電源を切り替える。すなわち、衝突等の緊急状態が予測された場合に、緊急状態に応じた運動エネルギーを電気エネルギーに変換するので、衝突予測時に作動する乗員保護機能を作動させるために必要な電力を効率的に確保して供給することができる。
【0056】
なお、上記の実施の形態では、乗員保護制御ECU26が、回避手段や乗員保護手段等の乗員保護機能を制御するようにしたが、これに限るものではなく、回避手段と乗員保護手段を制御するECUをそれぞれ備えるようにしてもよい。また、回避手段の制御として、ブレーキ制御を挙げて説明したが、これに限るものではなく、例えば、ステアリングの舵角を制御して衝突を回避し易くするような制御等を行うようにしてもよい。さらに、乗員保護手段として、シート及びシートベルト調整を例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、例えば、エアバッグ装置等を適用するようにしてもよい。
【0057】
また、上記の実施の形態では、衝突を予測した場合に、回生電力を回避手段や乗員保護手段等の乗員保護機能を駆動する各種アクチュエータに供給するようにしたが、これに限るものではなく、回避手段または乗員保護手段の何れかを駆動するアクチュエータにモータジェネレータ44によって発電した回生電力を供給するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置の概略車両搭載位置を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置の構成を示すブロック図である。
【図3】衝突予測時のシートバックの調整を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置の衝突判断ECUで行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置の乗員保護制御ECUで行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置の電源制御ECUで行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
10 乗員保護装置
12 前方ミリ波レーダー
14 前側方ミリ波レーダー
16 ステレオカメラ
18 後方ミリ波レーダー
20 後側方ミリ波レーダー
22 衝突判断ECU
26 乗員保護制御ECU
28 シートアクチュエータ
30 プリテンショナアクチュエータ
32 シートバック角度検出センサ
34 ブレーキアクチュエータ
36 シートバック
38 シートベルト
40 電源制御ECU
42 電源制御セレクタ
44 モータジェネレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に対する緊急状態を予測する予測手段と、
予測された前記緊急状態を回避するための回避手段を駆動する緊急回避駆動手段と、
前記緊急状態が予測された際に乗員を保護するための乗員保護手段を駆動する乗員保護駆動手段と、
車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換可能な変換手段と、
前記緊急状態が予測された場合に、前記緊急状態に応じた運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、変換した電気エネルギーを前記緊急回避駆動手段及び前記乗員保護駆動手段の少なくとも一方に供給するように前記変換手段を制御する制御手段と、
を備えた乗員保護装置。
【請求項2】
前記変換手段は、制動時の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記変換手段は、車両の駆動力の発生と発電とが可能なモータジェネレータである請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記緊急回避駆動手段は、前記緊急状態を回避するように車両の制動装置を駆動する制動駆動手段、及び前記緊急状態を回避しやすいように車両の操舵装置を駆動する操舵駆動手段の少なくとも一方を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記乗員保護駆動手段は、シートクッションに対する傾斜角度が変更可能なシートバックの傾斜角度を予め定めた傾斜角度に変更するように駆動するシートバック駆動手段、及びシートベルトを巻き取って乗員を拘束するように駆動するシートベルト駆動手段の少なくとも一方を含む請求項1〜4の何れか1項に記載の乗員保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−292416(P2009−292416A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150379(P2008−150379)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】