乗用型走行車両における操向ロック装置
【課題】地上操作具による走行機体の操作開始時点で既に車輪を直進状態にロックする乗用型走行車両における操向ロック装置を提供することを課題としている。
【解決手段】走行機体3の車輪1,2に駆動力を入り切り自在に伝動するクラッチと前記車輪1,2の制動を行うブレーキを操作する踏み込み操作自在のクラッチペダル14の操作系に、走行機体3の前部に上下揺動自在に設けられ、車外から走行機体3の走行を制御する地上操作具15上下揺動作動を連係させる連係機構を設け、車輪1,2の向きを直進方向にロックする操向ロック装置を、連係機構によりクラッチ及びブレーキの操作系と地上操作具15側とが連係状態に切換えられると、自動的に車輪1,2のロックを行うように構成した。
【解決手段】走行機体3の車輪1,2に駆動力を入り切り自在に伝動するクラッチと前記車輪1,2の制動を行うブレーキを操作する踏み込み操作自在のクラッチペダル14の操作系に、走行機体3の前部に上下揺動自在に設けられ、車外から走行機体3の走行を制御する地上操作具15上下揺動作動を連係させる連係機構を設け、車輪1,2の向きを直進方向にロックする操向ロック装置を、連係機構によりクラッチ及びブレーキの操作系と地上操作具15側とが連係状態に切換えられると、自動的に車輪1,2のロックを行うように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機等の乗用型走行車両における操向ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来走行機体の車輪に駆動力を入り切り自在に伝動するクラッチと、前記車輪の制動を行うブレーキと、上記クラッチ及びブレーキを操作する踏み込み操作自在のクラッチペダルと、車外から走行機体の走行を制御する地上操作具と、車輪の向きを直進方向にロックする操向ロック装置とを備えた乗用型水田作業車が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−347478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
走行機体を地上操作具によって車外から操作する場合に、上記操向ロック装置を作動させ、車輪の向きを直進方向にロックする。ただし上記操向ロック装置は、専用の操作具又は地上操作具の操作によって作動する。このため専用の操作具を使用する場合は、ロック忘れが発生する場合があるという欠点があった。一方地上操作具の操作によって操向ロック装置を作動させる場合は、走行機体の走行開始時点で車輪の向きをロックするため、走行開始時の走行方向が直進となる保証はないという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の乗用型走行車両における操向ロック装置は、走行機体3の車輪1,2に駆動力を入り切り自在に伝動するクラッチと、前記車輪1,2の制動を行うブレーキと、上記クラッチ及びブレーキを操作する踏み込み操作自在のクラッチペダル14と、走行機体3の前部に上下揺動自在に設けられ、車外から走行機体3の走行を制御する地上操作具15と、クラッチペダル14によるクラッチ及びブレーキの操作系に上記地上操作具15の上下揺動作動を連係させる連係機構と、車輪1,2の向きを直進方向にロックする操向ロック装置とを備え、クラッチペダル14が、踏み込み状態で、車輪1,2への駆動力を切り、車輪1,2を制動するように、クラッチ及びブレーキを操作し、地上操作具15が、上記連係機構による連係によって、下方への揺動により、車輪1,2に駆動力を伝動し、車輪1,2の制動を解除するように、クラッチ及びブレーキを操作する構成である乗用型走行車両において、操向ロック装置を、連係機構によりクラッチ及びブレーキの操作系と地上操作具15側とが連係状態に切換えられると、自動的に車輪1,2のロックを行うように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
地上操作具による走行機体の走行制御を行うためには、連係機構によりクラッチ及びブレーキの操作系と地上操作具側とを連係状態に切換える必要がある。地上操作具による走行機体の走行制御を行う場合は、走行機体を直進させるため、車輪の向きを直進方向にロックする必要がある。以上のように構成される本発明の構造によると、クラッチ及びブレーキの操作系と地上操作具側とを連係させると同時に操向ロック装置によって車輪の向きが直進方向に自動的にロックされるため、操向ロック装置による車輪のロック忘れがなく、地上操作具による走行機体の走行操作時に走行機体が旋回しようとする不都合が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1,図2は本発明の地上操作具を備えた乗用型走行車両である乗用田植機の側面図及び要部平面図である。本乗用田植機は、従来同様、前後輪1,2を備えた走行機体3の後方に、昇降リンク機構4を介して植付作業機6が連結された構造となっている。
【0007】
走行機体3には、運転席11が設けられている。運転席11は座席8を備えている。運転席11内におけると、座席8前方にはフロント操作パネル9が設けられている。該フロント操作パネル9にはステアリングハンドル12が突設されている。該ステアリングハンドル12を旋回操作することによって、前輪1を操作して走行機体3の操向操作を行うことができる。
【0008】
フロント操作パネル9には、主変速レバー13が左右及び前後揺動自在に設けられている。該主変速レバー13を左右及び前後に揺動操作することにより、走行機体3の変速及び前後進の切り替えを行うことができる。
【0009】
運転席11のフロアからは、クラッチブレーキペダル14が踏み込み操作自在に設けられている。該クラッチブレーキペダル14の操作によって、エンジンからの駆動力をトランスミッションに入り切り自在に伝動するクラッチ(主クラッチ)及び前後輪1,2の制動を行うブレーキの入り切りを操作することができる。前後輪1,2は、トランスミッションから出力される駆動力によって駆動される。
【0010】
クラッチブレーキペダル14は、後述する操作系の作動により、踏み込み状態で、トランスミッションへの駆動力を切り、且つブレーキを作動させて前後輪1,2の制動を行う。踏み込みを解除する(クラッチペダル14から足をはなす)ことによって、クラッチブレーキペダル14が上方に揺動して初期姿勢に復帰し、主クラッチを入り作動させるとともに、上記ブレーキの作動を解除し、4輪の制動を解除する。
【0011】
これにより作業者が座席8に座り、クラッチブレーキペダル14の踏み込みを解除した状態で、主変速レバー13を操作することによって、走行機体3を変速して前進又は後進させることができる。
【0012】
したがって植付作業機6を下降させてフロート7を圃場に接地させ、走行機体3を上記のように走行させるとともに、植付作業機6を駆動することによって、圃場への苗の植付け作業を行うことができる。上記ブレーキは、走行機体3の走行中においては走行を停止させ、走行機体3の停止中は駐車ブレーキとして機能する。
【0013】
走行機体3の前方には、エンジンの上方側を覆うボンネット10が設けられている。該ボンネット10の前方には、走行機体3の前端部分に位置して上下揺動自在に地上操作具15が設けられている。後述するように地上操作具15を上下揺動操作することによって、走行機体3の走行を車外から操作することができる。
【0014】
図3〜5に示されるように、クラッチブレーキペダル14は、ペダルアーム16の先端に取り付けられている。ペダルアーム16の基端部は、機体フレーム3a側に回動自在に軸支されたペダル支点軸17に一体的に取り付けられている。クラッチブレーキペダル14は、ペダル支点軸16を軸心に、上下揺動自在となっている。
【0015】
ペダル支点軸16には連結ロッド18が連結されている。連結ロッド18の他端は、機体フレーム3a側に軸支されている軸19に連結されている。軸19にはアーム21とアーム22が設けられている。アーム21には上記ブレーキの操作用のロッド23が連結されている。該ブレーキはロッド23を介してクラッチブレーキペダル14によって操作される。
【0016】
上記アーム22は、機体フレーム3a側に軸支されている軸24のアーム26に連係されている。軸26の端部にはクラッチアーム27が設けられている。クラッチアーム27にはクラッチローラ28が回転自在に軸支されている。エンジン29の出力軸31に設けられた出力プーリ32と、トランスミッション(HST33)の入力軸34に設けられた入力プーリ36との間には伝動ベルト37が巻き掛けられている。
【0017】
クラッチローラ28は上記伝動ベルト37に摺接している。軸24と機体フレーム3aとの間にはクラッチスプリング38が介設されている。クラッチスプリング38によってクラッチローラ28は伝動ベルト37に、駆動力を伝動するためのテンションを与えている。主クラッチは上記のようにベルトテンションクラッチからなる。
【0018】
クラッチスプリング38によってクラッチブレーキペダル14は復帰状態に付勢されている。クラッチブレーキペダル14の復帰状態において上記のように主クラッチはクラッチスプリング38によって入り状態を維持する。前述のロッド23はクラッチブレーキペダル14の復帰状態において上記ブレーキを切り操作状態で維持する。
【0019】
クラッチブレーキペダル14の踏み込みはクラッチスプリング38の付勢力に抗して行われ、クラッチブレーキペダル14を踏み込むことによってアーム22がアーム24を操作し、クラッチアーム27が軸24を軸心として揺動して主クラッチが切り状態となる。上記ロッド23は、クラッチブレーキペダル14の踏み込み状態でアーム21を介して操作され、ブレーキを入り作動(前後輪1,2を制動)させる。
【0020】
クラッチブレーキペダル14から足を離すと、クラッチスプリング38の付勢力によってクラッチブレーキペダル14は復帰する。上記構成によりクラッチブレーキペダル14を踏み込み操作するとトランスミッションへの駆動力が切れ、前後輪1,2が制動される。またクラッチブレーキペダル14の踏み込みを解除し、復帰状態とするとトランスミッションに駆動力が伝動されて前後輪1,2に駆動力が伝動されると共に、前後輪1,2の制動が解除される。
【0021】
機体フレーム3aの前方側には地上操作具15の取り付け用の取付軸39が設けられている。該取付軸39には回動自在にホルダ41が支持されている。ホルダ41には平面視においてU字状をなす地上操作具15のフレーム42の両端部分がスライド自在に挿入されている。
【0022】
フレーム42はホルダ41に対して前後スライドし、且つホルダ41を介して取付軸39を軸心に上下回動可能となっている。フレーム42とホルダ41とは一体的に回動する。地上操作具15はフレーム42の両端側に上方に突出するように設けられている。これにより地上操作具15は取付軸39を軸心に上下揺動し、且つ前後にスライドする。
【0023】
一方左右両ホルダ41の下方には、スナップ受け43が一体的に設けられている。フレーム42にはスナップピン44が設けられている。スナップピン44がスナップ受け43に嵌まるようにフレーム42を後方にスライドさせるとフレーム42は収納状態に保持される。
【0024】
フレーム42の一端部にはストッパピン46が内側に向かって突出して設けられている。スナップピン46をスナップ受け43から外し、フレーム42を前方にスライドさせるとストッパピン46がホルダ41の端部に当接し、フレーム42の抜けが防止され、且つフレーム42は引出状態となる。
【0025】
なお機体フレーム3側には、フレーム42の一方の後方に伸びる杆部の上方に位置して回動規制部材45が設けられている。フレーム42は収納状態時には、回動規制部材45とフレーム42との当接によってフレーム42の回動が規制される。ただしフレーム42の引出状態において上記フレーム42の杆部は、回動規制部材45より前方に位置するため、回動が可能となる。
【0026】
一方のホルダ41には受け体47が設けられている。受け体47は取付軸39の上下に突出している。受け体47の下方側と機体フレーム3aとの間には圧縮バネ48が介設されている。圧縮バネ48は受け体47を介して上記ホルダ41を上方回動状態に付勢している。
【0027】
受け体47の上方側は機体フレーム3a側に設けられているストッパピン50と当接して、ホルダ41の回動位置を規制して位置決めしている。受け体47とストッパピン50との当接によるホルダ41の位置決め状態でフレーム42は略水平となり、地上操作具15は略垂直となる。
【0028】
以上によりフレーム42の収納状態によって地上操作具15が走行機体3の前端近傍で起立する格納姿勢となる。フレーム42の引出状態によって地上操作具15は格納姿勢から前方に引き出された作業姿勢となる。地上操作具15は格納姿勢と作業姿勢に前後スライドによって姿勢切り換えが自在である。格納姿勢はスナップピン44がスナップ受け43に嵌ることによって保持される。地上操作具15は、作業姿勢時にのみ下方への揺動が可能となる。
【0029】
地上操作具15は圧縮バネ48の付勢力によって起立姿勢に付勢される。このため図6に示されるように、地上操作具15の下方への揺動は、圧縮バネ48の付勢力に抗して操作する必要があり、地上操作具15から手を離すと圧縮バネ48の付勢力によって地上操作具15は略垂直な起立状態に復帰する。
【0030】
他方のホルダ41にはアーム49が突設されている。前述の軸24と取付軸39との間には、軸51が機体フレーム3a側に回動自在に支持されて設けられている。軸51にはパイプ52が回動自在に外嵌されている。該パイプ52にはアーム53が突設されている。
【0031】
上記ホルダ41のアーム49とパイプ52のアーム53とは連結アーム54を介して連結されている。地上操作具15の上下揺動操作によってパイプ52が軸51を軸心に回動する。軸51には、下方に向かって突出する棒状のステアリングロック部材56が一体的に設けられている。
【0032】
機体フレーム3aにおける軸51の端部側には、支点軸57が設けられている。図7,図8に示されるように、支点軸57には三角プレート58が回動自在に支持されている。三角プレート58にはロックレバー59が一体的に取り付けられている。ロックレバー59と三角プレート58は、支点軸57を軸心に一体的に回動する。軸51の端部には連動アーム61のボス62が一体回転するように取り付けられている。連動アーム61と三角プレート58とはスプリング63によって連結されている。
【0033】
支点軸57には、三角プレート64も回動自在に支持されている。三角プレート64は三角プレート58とは別に回動する。三角プレート64の一頂点部分には、プレート状のロック部材66が回動自在に軸支されている。ロック部材66と機体フレーム3aとの間にはスプリング67が設けられている。スプリング67によってロック部材66は上方に付勢されている。
【0034】
三角プレート64の他の一頂点部分には、ピン68が設けられている。上記軸51に設けられているパイプ52には、三角プレート64に対応する部分に、三角プレート64に設けられたピン68に、上方側で当接する規制アーム69(図11参照)が設けられている。三角プレート64の回動は規制アーム69によって規制され、規制アーム69の揺動角度、つまり地上操作具15の揺動角度によって、三角プレート64の回動角度(位置)が決まる。
【0035】
ロック部材66にはピン71が設けられている。該ピン71はロックレバー59の後端面と当接する。ロック部材66の回動はロックレバー59によって規制され、ロックレバー59の揺動角度によってロック部材66の回動角度(位置)が決まる。上記軸51の後方には、軸72が機体フレーム3a側に設けられている。軸72にはアーム73が回動自在に支持されている。アーム73とペダル支点軸17とはロッド74によって連結されている。
【0036】
クラッチブレーキペダル14を踏み込んだ状態で、図9に示されるように、ロックレバー59を後方に揺動させると、ロック部材66のピン71とロックレバー59との当接によってロック部材66がスプリング67の付勢力に抗して下方に向かって回動し、アーム73と係合する。ロック部材66はアーム73におけるロッド74の支軸と係合する。
【0037】
ロックレバー59の揺動に伴う三角プレート58の揺動によって、スプリング63を介して軸51が回動し、ステアリングロック部材56が回動する。ステアリングロック部材56は下方に向かって突出しているため、後方に向かって回動する。
【0038】
図10に示されるように、左右のタイロッド76が連結されるピットマンアーム77には、受けアーム78が前方に突出して取り付けられている。受けアーム78には上記ステアリングロック部材56が挿入可能な凹部79が設けられている。該凹部79はステアリングハンドル12を直進状態とすると、ステアリングロック部材56と向かい合うように設けられている。
【0039】
ステアリングロック部材56の上記回動によって、ステアリングハンドル12が直進状態であると、ステアリングロック部材56が、ピットマンアーム77の受けアーム78における凹部79に挿入され、ステアリングロック部材56と受けアーム78とが係合し、ステアリングハンドル12が直進状態にロックされる。
【0040】
なおステアリングハンドル12が直進状態以外であれば、ロックレバー59を上記のように後方に揺動させてもステアリングロック部材56は凹部79に挿入されず、受けアーム78の前端面に当接する。ただし軸51の回動はスプリング63を介して行われるため、スプリング63が伸びることによってロックレバー59の揺動操作が許容される。
【0041】
この際スプリング63がステアリングロック部材56を受けアーム78の前端面に弾力的に押しつける。ステアリングロック部材56が凹部79に挿入されないため、ステアリングハンドル12の旋回操作は可能となるが、ステアリングハンドル12が直進状態となると、ステアリングロック部材56が凹部79に弾力的に自動挿入され、ステアリングハンドル12が直進状態にロックされる。
【0042】
一方前述のようにロック部材56とアーム73とが係合すると、ロック部材56を介してクラッチブレーキペダル14の復帰付勢力によって、三角プレート64が図9における反時計回りに付勢される。このとき三角プレート64の揺動角度は前述のように地上操作具15の揺動角度によって決まる。
【0043】
このため地上操作具15の揺動角度に応じて三角プレート64の揺動位置が調節され、三角プレート64の揺動位置に応じてロッド74を介してペダル支点軸17の回動角度がコントロールされ、主クラッチ及びブレーキの操作が行われる。
【0044】
以上のようなロック部材66とアーム73との係合によって、クラッチブレーキペダル14による主クラッチ及びブレーキの操作系に地上操作具15の上下揺動操作が連係され、地上操作具15を揺動操作することによって、主クラッチ及びブレーキの操作を行うことが可能となる。
【0045】
地上操作具15を操作する場合は、図11に示されるように、地上操作具15を作業姿勢に引き出すことによって、格納姿勢時の上方への突出長さを延長することなく、回動支点(取付軸39)から力点(操作位置)までの距離が延長され、下方への揺動操作を容易に行うことが可能となる。また格納姿勢時に地上操作具15が運転席11内の作業者の前方視界を妨げることも防止され、コンパクトで前方視界の妨げにならない格納と、容易な揺動操作を両立させることができる。
【0046】
図11の状態から図12の状態に、地上操作具15を下方に揺動させると、ホルダ41が時計方向に回動し、アーム49が前方に揺動するため、規制アーム69が前方に回動する。これによりクラッチブレーキペダル14が復帰方向に戻るため、主クラッチが入り作動し、且つブレーキが切り作動する。下方に揺動操作した地上操作具15から手を離すことによって地上操作具15が起立状態に復帰し、主クラッチを切り作動させ、且つブレーキを入り作動させる。
【0047】
これにより走行機体3が前進し、作業者は畦超え走行やトラックの荷台等への積み下ろし走行等を容易に行うことができる。なお走行操作レバー15は、走行機体3の前方に位置しており、車外からの操作による走行機体3の走行時には、作業者が走行機体3の前方側を下方に押し下げるように走行操作レバー15を操作する。このため走行時の走行機体3のヘッドアップを、てこの原理によって小さな力で防止することができ、走行操作レバー15による走行機体3の走行時のヘッドアップを容易に抑えることができる。
【0048】
一方クラッチブレーキペダル14を踏み込んでいない状態では、アーム73におけるロッド74の支軸の位置がロック部材66の後方側に離れるため、ロック部材66とアーム73との係合は行われない。そしてロック部材66とアーム73とが係合しない場合は、三角プレート64とロッド74との連係が行われないため、地上操作具15を上下揺動操作しても主クラッチ及びブレーキが操作されることはない。
【0049】
ロック部材66とアーム73とを係合させるロックレバー59の揺動位置が、クラッチブレーキペダル14による主クラッチ及びブレーキの操作系への地上操作具15の上下揺動操作を連係させるロック位置となり、クラッチブレーキペダル14の踏み込み状態でロックレバー59をロック位置に切り換えると、上記のように地上操作具15により主クラッチ及びブレーキを操作して、走行機体3を走行させることが可能となる。
【0050】
そして地上操作具15を下方に揺動させることによって走行機体3を車外から走行させることが可能となる。地上操作具15から手を離すと、走行機体3の走行が停止する。特にステアリングハンドル12を直進状態としてロックレバー59をロック位置に切り換えると、ステアリングハンドル12が直進状態にロックされ、車外から地上操作具15の操作(下方への揺動)により走行機体3を走行させる際、走行機体3を直進させることができる。
【0051】
このとき主クラッチ及びブレーキの操作系と地上操作具15側とを連係させると同時に前輪1,2の向きが直進方向に自動的にロックされるため、車輪1,2のロック忘れが防止されるとともに、地上操作具15による走行機体3の走行操作時に走行機体3の直進が保証され、走行機体3が旋回しようとする不都合が防止される。
【0052】
なおロックレバー59をロック位置に切り換えた際にステアリングハンドル12がロックされなかった場合は、ステアリングハンドル12を適当に左右に旋回させると、直進位置において自動的にロックされる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】乗用田植機の側面図である。
【図2】乗用田植機の走行機体の平面図である。
【図3】クラッチブレーキペダル及び地上操作具の連係状態を示す要部平面図である。
【図4】地上操作具の連係状態を示す要部側面図である。
【図5】地上操作具部分の要部正面図である。
【図6】地上操作具の揺動状態を示す要部側面図である。
【図7】ロックレバーの取付け状態を示す要部正面図である。
【図8】クラッチブレーキペダル部分の復帰状態時の要部側面図である。
【図9】地上操作具の連係状態時のクラッチブレーキペダル部分の要部側面図である。
【図10】ピットマンアーム部分の要部平面図である。
【図11】地上操作具を作業姿勢に引き出した状態を示す要部側面図である。
【図12】地上操作具の下方揺動状態を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 前輪(車輪)
2 後輪(車輪)
3 走行機体
14 クラッチブレーキペダル(クラッチペダル)
15 地上操作具
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機等の乗用型走行車両における操向ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来走行機体の車輪に駆動力を入り切り自在に伝動するクラッチと、前記車輪の制動を行うブレーキと、上記クラッチ及びブレーキを操作する踏み込み操作自在のクラッチペダルと、車外から走行機体の走行を制御する地上操作具と、車輪の向きを直進方向にロックする操向ロック装置とを備えた乗用型水田作業車が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−347478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
走行機体を地上操作具によって車外から操作する場合に、上記操向ロック装置を作動させ、車輪の向きを直進方向にロックする。ただし上記操向ロック装置は、専用の操作具又は地上操作具の操作によって作動する。このため専用の操作具を使用する場合は、ロック忘れが発生する場合があるという欠点があった。一方地上操作具の操作によって操向ロック装置を作動させる場合は、走行機体の走行開始時点で車輪の向きをロックするため、走行開始時の走行方向が直進となる保証はないという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の乗用型走行車両における操向ロック装置は、走行機体3の車輪1,2に駆動力を入り切り自在に伝動するクラッチと、前記車輪1,2の制動を行うブレーキと、上記クラッチ及びブレーキを操作する踏み込み操作自在のクラッチペダル14と、走行機体3の前部に上下揺動自在に設けられ、車外から走行機体3の走行を制御する地上操作具15と、クラッチペダル14によるクラッチ及びブレーキの操作系に上記地上操作具15の上下揺動作動を連係させる連係機構と、車輪1,2の向きを直進方向にロックする操向ロック装置とを備え、クラッチペダル14が、踏み込み状態で、車輪1,2への駆動力を切り、車輪1,2を制動するように、クラッチ及びブレーキを操作し、地上操作具15が、上記連係機構による連係によって、下方への揺動により、車輪1,2に駆動力を伝動し、車輪1,2の制動を解除するように、クラッチ及びブレーキを操作する構成である乗用型走行車両において、操向ロック装置を、連係機構によりクラッチ及びブレーキの操作系と地上操作具15側とが連係状態に切換えられると、自動的に車輪1,2のロックを行うように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
地上操作具による走行機体の走行制御を行うためには、連係機構によりクラッチ及びブレーキの操作系と地上操作具側とを連係状態に切換える必要がある。地上操作具による走行機体の走行制御を行う場合は、走行機体を直進させるため、車輪の向きを直進方向にロックする必要がある。以上のように構成される本発明の構造によると、クラッチ及びブレーキの操作系と地上操作具側とを連係させると同時に操向ロック装置によって車輪の向きが直進方向に自動的にロックされるため、操向ロック装置による車輪のロック忘れがなく、地上操作具による走行機体の走行操作時に走行機体が旋回しようとする不都合が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1,図2は本発明の地上操作具を備えた乗用型走行車両である乗用田植機の側面図及び要部平面図である。本乗用田植機は、従来同様、前後輪1,2を備えた走行機体3の後方に、昇降リンク機構4を介して植付作業機6が連結された構造となっている。
【0007】
走行機体3には、運転席11が設けられている。運転席11は座席8を備えている。運転席11内におけると、座席8前方にはフロント操作パネル9が設けられている。該フロント操作パネル9にはステアリングハンドル12が突設されている。該ステアリングハンドル12を旋回操作することによって、前輪1を操作して走行機体3の操向操作を行うことができる。
【0008】
フロント操作パネル9には、主変速レバー13が左右及び前後揺動自在に設けられている。該主変速レバー13を左右及び前後に揺動操作することにより、走行機体3の変速及び前後進の切り替えを行うことができる。
【0009】
運転席11のフロアからは、クラッチブレーキペダル14が踏み込み操作自在に設けられている。該クラッチブレーキペダル14の操作によって、エンジンからの駆動力をトランスミッションに入り切り自在に伝動するクラッチ(主クラッチ)及び前後輪1,2の制動を行うブレーキの入り切りを操作することができる。前後輪1,2は、トランスミッションから出力される駆動力によって駆動される。
【0010】
クラッチブレーキペダル14は、後述する操作系の作動により、踏み込み状態で、トランスミッションへの駆動力を切り、且つブレーキを作動させて前後輪1,2の制動を行う。踏み込みを解除する(クラッチペダル14から足をはなす)ことによって、クラッチブレーキペダル14が上方に揺動して初期姿勢に復帰し、主クラッチを入り作動させるとともに、上記ブレーキの作動を解除し、4輪の制動を解除する。
【0011】
これにより作業者が座席8に座り、クラッチブレーキペダル14の踏み込みを解除した状態で、主変速レバー13を操作することによって、走行機体3を変速して前進又は後進させることができる。
【0012】
したがって植付作業機6を下降させてフロート7を圃場に接地させ、走行機体3を上記のように走行させるとともに、植付作業機6を駆動することによって、圃場への苗の植付け作業を行うことができる。上記ブレーキは、走行機体3の走行中においては走行を停止させ、走行機体3の停止中は駐車ブレーキとして機能する。
【0013】
走行機体3の前方には、エンジンの上方側を覆うボンネット10が設けられている。該ボンネット10の前方には、走行機体3の前端部分に位置して上下揺動自在に地上操作具15が設けられている。後述するように地上操作具15を上下揺動操作することによって、走行機体3の走行を車外から操作することができる。
【0014】
図3〜5に示されるように、クラッチブレーキペダル14は、ペダルアーム16の先端に取り付けられている。ペダルアーム16の基端部は、機体フレーム3a側に回動自在に軸支されたペダル支点軸17に一体的に取り付けられている。クラッチブレーキペダル14は、ペダル支点軸16を軸心に、上下揺動自在となっている。
【0015】
ペダル支点軸16には連結ロッド18が連結されている。連結ロッド18の他端は、機体フレーム3a側に軸支されている軸19に連結されている。軸19にはアーム21とアーム22が設けられている。アーム21には上記ブレーキの操作用のロッド23が連結されている。該ブレーキはロッド23を介してクラッチブレーキペダル14によって操作される。
【0016】
上記アーム22は、機体フレーム3a側に軸支されている軸24のアーム26に連係されている。軸26の端部にはクラッチアーム27が設けられている。クラッチアーム27にはクラッチローラ28が回転自在に軸支されている。エンジン29の出力軸31に設けられた出力プーリ32と、トランスミッション(HST33)の入力軸34に設けられた入力プーリ36との間には伝動ベルト37が巻き掛けられている。
【0017】
クラッチローラ28は上記伝動ベルト37に摺接している。軸24と機体フレーム3aとの間にはクラッチスプリング38が介設されている。クラッチスプリング38によってクラッチローラ28は伝動ベルト37に、駆動力を伝動するためのテンションを与えている。主クラッチは上記のようにベルトテンションクラッチからなる。
【0018】
クラッチスプリング38によってクラッチブレーキペダル14は復帰状態に付勢されている。クラッチブレーキペダル14の復帰状態において上記のように主クラッチはクラッチスプリング38によって入り状態を維持する。前述のロッド23はクラッチブレーキペダル14の復帰状態において上記ブレーキを切り操作状態で維持する。
【0019】
クラッチブレーキペダル14の踏み込みはクラッチスプリング38の付勢力に抗して行われ、クラッチブレーキペダル14を踏み込むことによってアーム22がアーム24を操作し、クラッチアーム27が軸24を軸心として揺動して主クラッチが切り状態となる。上記ロッド23は、クラッチブレーキペダル14の踏み込み状態でアーム21を介して操作され、ブレーキを入り作動(前後輪1,2を制動)させる。
【0020】
クラッチブレーキペダル14から足を離すと、クラッチスプリング38の付勢力によってクラッチブレーキペダル14は復帰する。上記構成によりクラッチブレーキペダル14を踏み込み操作するとトランスミッションへの駆動力が切れ、前後輪1,2が制動される。またクラッチブレーキペダル14の踏み込みを解除し、復帰状態とするとトランスミッションに駆動力が伝動されて前後輪1,2に駆動力が伝動されると共に、前後輪1,2の制動が解除される。
【0021】
機体フレーム3aの前方側には地上操作具15の取り付け用の取付軸39が設けられている。該取付軸39には回動自在にホルダ41が支持されている。ホルダ41には平面視においてU字状をなす地上操作具15のフレーム42の両端部分がスライド自在に挿入されている。
【0022】
フレーム42はホルダ41に対して前後スライドし、且つホルダ41を介して取付軸39を軸心に上下回動可能となっている。フレーム42とホルダ41とは一体的に回動する。地上操作具15はフレーム42の両端側に上方に突出するように設けられている。これにより地上操作具15は取付軸39を軸心に上下揺動し、且つ前後にスライドする。
【0023】
一方左右両ホルダ41の下方には、スナップ受け43が一体的に設けられている。フレーム42にはスナップピン44が設けられている。スナップピン44がスナップ受け43に嵌まるようにフレーム42を後方にスライドさせるとフレーム42は収納状態に保持される。
【0024】
フレーム42の一端部にはストッパピン46が内側に向かって突出して設けられている。スナップピン46をスナップ受け43から外し、フレーム42を前方にスライドさせるとストッパピン46がホルダ41の端部に当接し、フレーム42の抜けが防止され、且つフレーム42は引出状態となる。
【0025】
なお機体フレーム3側には、フレーム42の一方の後方に伸びる杆部の上方に位置して回動規制部材45が設けられている。フレーム42は収納状態時には、回動規制部材45とフレーム42との当接によってフレーム42の回動が規制される。ただしフレーム42の引出状態において上記フレーム42の杆部は、回動規制部材45より前方に位置するため、回動が可能となる。
【0026】
一方のホルダ41には受け体47が設けられている。受け体47は取付軸39の上下に突出している。受け体47の下方側と機体フレーム3aとの間には圧縮バネ48が介設されている。圧縮バネ48は受け体47を介して上記ホルダ41を上方回動状態に付勢している。
【0027】
受け体47の上方側は機体フレーム3a側に設けられているストッパピン50と当接して、ホルダ41の回動位置を規制して位置決めしている。受け体47とストッパピン50との当接によるホルダ41の位置決め状態でフレーム42は略水平となり、地上操作具15は略垂直となる。
【0028】
以上によりフレーム42の収納状態によって地上操作具15が走行機体3の前端近傍で起立する格納姿勢となる。フレーム42の引出状態によって地上操作具15は格納姿勢から前方に引き出された作業姿勢となる。地上操作具15は格納姿勢と作業姿勢に前後スライドによって姿勢切り換えが自在である。格納姿勢はスナップピン44がスナップ受け43に嵌ることによって保持される。地上操作具15は、作業姿勢時にのみ下方への揺動が可能となる。
【0029】
地上操作具15は圧縮バネ48の付勢力によって起立姿勢に付勢される。このため図6に示されるように、地上操作具15の下方への揺動は、圧縮バネ48の付勢力に抗して操作する必要があり、地上操作具15から手を離すと圧縮バネ48の付勢力によって地上操作具15は略垂直な起立状態に復帰する。
【0030】
他方のホルダ41にはアーム49が突設されている。前述の軸24と取付軸39との間には、軸51が機体フレーム3a側に回動自在に支持されて設けられている。軸51にはパイプ52が回動自在に外嵌されている。該パイプ52にはアーム53が突設されている。
【0031】
上記ホルダ41のアーム49とパイプ52のアーム53とは連結アーム54を介して連結されている。地上操作具15の上下揺動操作によってパイプ52が軸51を軸心に回動する。軸51には、下方に向かって突出する棒状のステアリングロック部材56が一体的に設けられている。
【0032】
機体フレーム3aにおける軸51の端部側には、支点軸57が設けられている。図7,図8に示されるように、支点軸57には三角プレート58が回動自在に支持されている。三角プレート58にはロックレバー59が一体的に取り付けられている。ロックレバー59と三角プレート58は、支点軸57を軸心に一体的に回動する。軸51の端部には連動アーム61のボス62が一体回転するように取り付けられている。連動アーム61と三角プレート58とはスプリング63によって連結されている。
【0033】
支点軸57には、三角プレート64も回動自在に支持されている。三角プレート64は三角プレート58とは別に回動する。三角プレート64の一頂点部分には、プレート状のロック部材66が回動自在に軸支されている。ロック部材66と機体フレーム3aとの間にはスプリング67が設けられている。スプリング67によってロック部材66は上方に付勢されている。
【0034】
三角プレート64の他の一頂点部分には、ピン68が設けられている。上記軸51に設けられているパイプ52には、三角プレート64に対応する部分に、三角プレート64に設けられたピン68に、上方側で当接する規制アーム69(図11参照)が設けられている。三角プレート64の回動は規制アーム69によって規制され、規制アーム69の揺動角度、つまり地上操作具15の揺動角度によって、三角プレート64の回動角度(位置)が決まる。
【0035】
ロック部材66にはピン71が設けられている。該ピン71はロックレバー59の後端面と当接する。ロック部材66の回動はロックレバー59によって規制され、ロックレバー59の揺動角度によってロック部材66の回動角度(位置)が決まる。上記軸51の後方には、軸72が機体フレーム3a側に設けられている。軸72にはアーム73が回動自在に支持されている。アーム73とペダル支点軸17とはロッド74によって連結されている。
【0036】
クラッチブレーキペダル14を踏み込んだ状態で、図9に示されるように、ロックレバー59を後方に揺動させると、ロック部材66のピン71とロックレバー59との当接によってロック部材66がスプリング67の付勢力に抗して下方に向かって回動し、アーム73と係合する。ロック部材66はアーム73におけるロッド74の支軸と係合する。
【0037】
ロックレバー59の揺動に伴う三角プレート58の揺動によって、スプリング63を介して軸51が回動し、ステアリングロック部材56が回動する。ステアリングロック部材56は下方に向かって突出しているため、後方に向かって回動する。
【0038】
図10に示されるように、左右のタイロッド76が連結されるピットマンアーム77には、受けアーム78が前方に突出して取り付けられている。受けアーム78には上記ステアリングロック部材56が挿入可能な凹部79が設けられている。該凹部79はステアリングハンドル12を直進状態とすると、ステアリングロック部材56と向かい合うように設けられている。
【0039】
ステアリングロック部材56の上記回動によって、ステアリングハンドル12が直進状態であると、ステアリングロック部材56が、ピットマンアーム77の受けアーム78における凹部79に挿入され、ステアリングロック部材56と受けアーム78とが係合し、ステアリングハンドル12が直進状態にロックされる。
【0040】
なおステアリングハンドル12が直進状態以外であれば、ロックレバー59を上記のように後方に揺動させてもステアリングロック部材56は凹部79に挿入されず、受けアーム78の前端面に当接する。ただし軸51の回動はスプリング63を介して行われるため、スプリング63が伸びることによってロックレバー59の揺動操作が許容される。
【0041】
この際スプリング63がステアリングロック部材56を受けアーム78の前端面に弾力的に押しつける。ステアリングロック部材56が凹部79に挿入されないため、ステアリングハンドル12の旋回操作は可能となるが、ステアリングハンドル12が直進状態となると、ステアリングロック部材56が凹部79に弾力的に自動挿入され、ステアリングハンドル12が直進状態にロックされる。
【0042】
一方前述のようにロック部材56とアーム73とが係合すると、ロック部材56を介してクラッチブレーキペダル14の復帰付勢力によって、三角プレート64が図9における反時計回りに付勢される。このとき三角プレート64の揺動角度は前述のように地上操作具15の揺動角度によって決まる。
【0043】
このため地上操作具15の揺動角度に応じて三角プレート64の揺動位置が調節され、三角プレート64の揺動位置に応じてロッド74を介してペダル支点軸17の回動角度がコントロールされ、主クラッチ及びブレーキの操作が行われる。
【0044】
以上のようなロック部材66とアーム73との係合によって、クラッチブレーキペダル14による主クラッチ及びブレーキの操作系に地上操作具15の上下揺動操作が連係され、地上操作具15を揺動操作することによって、主クラッチ及びブレーキの操作を行うことが可能となる。
【0045】
地上操作具15を操作する場合は、図11に示されるように、地上操作具15を作業姿勢に引き出すことによって、格納姿勢時の上方への突出長さを延長することなく、回動支点(取付軸39)から力点(操作位置)までの距離が延長され、下方への揺動操作を容易に行うことが可能となる。また格納姿勢時に地上操作具15が運転席11内の作業者の前方視界を妨げることも防止され、コンパクトで前方視界の妨げにならない格納と、容易な揺動操作を両立させることができる。
【0046】
図11の状態から図12の状態に、地上操作具15を下方に揺動させると、ホルダ41が時計方向に回動し、アーム49が前方に揺動するため、規制アーム69が前方に回動する。これによりクラッチブレーキペダル14が復帰方向に戻るため、主クラッチが入り作動し、且つブレーキが切り作動する。下方に揺動操作した地上操作具15から手を離すことによって地上操作具15が起立状態に復帰し、主クラッチを切り作動させ、且つブレーキを入り作動させる。
【0047】
これにより走行機体3が前進し、作業者は畦超え走行やトラックの荷台等への積み下ろし走行等を容易に行うことができる。なお走行操作レバー15は、走行機体3の前方に位置しており、車外からの操作による走行機体3の走行時には、作業者が走行機体3の前方側を下方に押し下げるように走行操作レバー15を操作する。このため走行時の走行機体3のヘッドアップを、てこの原理によって小さな力で防止することができ、走行操作レバー15による走行機体3の走行時のヘッドアップを容易に抑えることができる。
【0048】
一方クラッチブレーキペダル14を踏み込んでいない状態では、アーム73におけるロッド74の支軸の位置がロック部材66の後方側に離れるため、ロック部材66とアーム73との係合は行われない。そしてロック部材66とアーム73とが係合しない場合は、三角プレート64とロッド74との連係が行われないため、地上操作具15を上下揺動操作しても主クラッチ及びブレーキが操作されることはない。
【0049】
ロック部材66とアーム73とを係合させるロックレバー59の揺動位置が、クラッチブレーキペダル14による主クラッチ及びブレーキの操作系への地上操作具15の上下揺動操作を連係させるロック位置となり、クラッチブレーキペダル14の踏み込み状態でロックレバー59をロック位置に切り換えると、上記のように地上操作具15により主クラッチ及びブレーキを操作して、走行機体3を走行させることが可能となる。
【0050】
そして地上操作具15を下方に揺動させることによって走行機体3を車外から走行させることが可能となる。地上操作具15から手を離すと、走行機体3の走行が停止する。特にステアリングハンドル12を直進状態としてロックレバー59をロック位置に切り換えると、ステアリングハンドル12が直進状態にロックされ、車外から地上操作具15の操作(下方への揺動)により走行機体3を走行させる際、走行機体3を直進させることができる。
【0051】
このとき主クラッチ及びブレーキの操作系と地上操作具15側とを連係させると同時に前輪1,2の向きが直進方向に自動的にロックされるため、車輪1,2のロック忘れが防止されるとともに、地上操作具15による走行機体3の走行操作時に走行機体3の直進が保証され、走行機体3が旋回しようとする不都合が防止される。
【0052】
なおロックレバー59をロック位置に切り換えた際にステアリングハンドル12がロックされなかった場合は、ステアリングハンドル12を適当に左右に旋回させると、直進位置において自動的にロックされる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】乗用田植機の側面図である。
【図2】乗用田植機の走行機体の平面図である。
【図3】クラッチブレーキペダル及び地上操作具の連係状態を示す要部平面図である。
【図4】地上操作具の連係状態を示す要部側面図である。
【図5】地上操作具部分の要部正面図である。
【図6】地上操作具の揺動状態を示す要部側面図である。
【図7】ロックレバーの取付け状態を示す要部正面図である。
【図8】クラッチブレーキペダル部分の復帰状態時の要部側面図である。
【図9】地上操作具の連係状態時のクラッチブレーキペダル部分の要部側面図である。
【図10】ピットマンアーム部分の要部平面図である。
【図11】地上操作具を作業姿勢に引き出した状態を示す要部側面図である。
【図12】地上操作具の下方揺動状態を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 前輪(車輪)
2 後輪(車輪)
3 走行機体
14 クラッチブレーキペダル(クラッチペダル)
15 地上操作具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(3)の車輪(1),(2)に駆動力を入り切り自在に伝動するクラッチと、前記車輪(1),(2)の制動を行うブレーキと、上記クラッチ及びブレーキを操作する踏み込み操作自在のクラッチペダル(14)と、走行機体(3)の前部に上下揺動自在に設けられ、車外から走行機体(3)の走行を制御する地上操作具(15)と、クラッチペダル(14)によるクラッチ及びブレーキの操作系に上記地上操作具(15)の上下揺動作動を連係させる連係機構と、車輪(1),(2)の向きを直進方向にロックする操向ロック装置とを備え、クラッチペダル(14)が、踏み込み状態で、車輪(1),(2)への駆動力を切り、車輪(1),(2)を制動するように、クラッチ及びブレーキを操作し、地上操作具(15)が、上記連係機構による連係によって、下方への揺動により、車輪(1),(2)に駆動力を伝動し、車輪(1),(2)の制動を解除するように、クラッチ及びブレーキを操作する構成である乗用型走行車両において、操向ロック装置を、連係機構によりクラッチ及びブレーキの操作系と地上操作具(15)側とが連係状態に切換えられると、自動的に車輪(1),(2)のロックを行うように構成した乗用型走行車両における操向ロック装置。
【請求項1】
走行機体(3)の車輪(1),(2)に駆動力を入り切り自在に伝動するクラッチと、前記車輪(1),(2)の制動を行うブレーキと、上記クラッチ及びブレーキを操作する踏み込み操作自在のクラッチペダル(14)と、走行機体(3)の前部に上下揺動自在に設けられ、車外から走行機体(3)の走行を制御する地上操作具(15)と、クラッチペダル(14)によるクラッチ及びブレーキの操作系に上記地上操作具(15)の上下揺動作動を連係させる連係機構と、車輪(1),(2)の向きを直進方向にロックする操向ロック装置とを備え、クラッチペダル(14)が、踏み込み状態で、車輪(1),(2)への駆動力を切り、車輪(1),(2)を制動するように、クラッチ及びブレーキを操作し、地上操作具(15)が、上記連係機構による連係によって、下方への揺動により、車輪(1),(2)に駆動力を伝動し、車輪(1),(2)の制動を解除するように、クラッチ及びブレーキを操作する構成である乗用型走行車両において、操向ロック装置を、連係機構によりクラッチ及びブレーキの操作系と地上操作具(15)側とが連係状態に切換えられると、自動的に車輪(1),(2)のロックを行うように構成した乗用型走行車両における操向ロック装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−166819(P2006−166819A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364916(P2004−364916)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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