説明

二層薄膜構造体、超電導物質三層薄膜構造体及びその製造方法

【課題】
格子定数を変化させたCeO2層の作用でCeO2面側に高い臨界電流を有する超電導膜を得ることができるCeO2層を有するA l2O3-CeO2二層薄膜構造体、当該Al2O3-CeO2二層薄膜構造体を用いて、格子定数を変化させたCeO2層を活用してCeO2面側に高い臨界電流を有する超電導膜を形成したAl2O3-CeO2-超電導物質三層薄膜構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
厚さ0.4mm〜1.0mmのAl2O3単結晶層上に、厚さ20nm〜300nmのCeO2層を設けた薄膜構造体に、エネルギー密度1mJ/cm2〜250mJ/cm2のレーザ光を1000〜1000000パルス照射し、CeO2層の格子定数を変化させたCeO2を有するAl2O3-CeO2二層薄膜構造体のCeO2層側に厚さ100nm〜800nmの超電導薄膜を設けたAl2O3-CeO2-超電導物質三層薄膜構造体及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Al2O3-CeO2二層薄膜構造体、Al2O3-CeO2-超電導物質三層薄膜構造体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、格子定数を変化させたCeO2層の作用で高い臨界電流を有する超電導膜を得る高温酸化物超電導体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導体は、ある温度以下で電流を電気抵抗ゼロで流せるため、さまざまな分野で応用が期待されている。できるかぎり多くの電流を電気抵抗ゼロで流すには、超電導体の結晶性の良さが関わってくる。しかし超電導体に自己磁場などで、下部臨界磁場以上の磁場をかかると量子化磁束が形成され、超電導体中に侵入してしまう。この状態で電流を流すと量子化磁束にローレンツ力が働き、これらが動き出すと電圧が発生して超電導状態が壊れてしまう。そのため、結晶性の良さ以外にも磁束を動き出さないような機構が必要となる。
例えば、酸化物高温超電導体( R E ) B a 2 C u 3 O 7からなる超電導膜において、自然に導入される酸素欠損や微細な不純物などの点状欠陥などが量子化磁束のピン止め機構として機能することが知られている。また、転位などの線状欠陥や結晶粒界等の面状欠陥もピン止め機構として作用することが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
このようなピン止め機構の強さによって、超電導の臨界電流密度(単位断面積当りに抵抗ゼロで流すことのできる電流値)が変化する。
超電導応用のなかで、大面積超電導薄膜、表面コート超電導テープ線材などの大面積・長尺の高温酸化物超電導薄膜は、限流器、超電導送電ケーブル、超電導マグネットなど、さまざまな電力機器や産業機器への応用が期待されている。このような応用においては、できるだけ大きな電流を抵抗ゼロで流すことが求められ、そのためには、臨界電流密度が高い、高性能の高温超電導酸化物薄膜の作製が必要である。
しかし、代表的な酸化物超電導体である( R E ) B a 2 C u 3 O 7の薄膜の場合には、Al2O3単結晶やニッケル基合金基材(テープ) などのような支持体を用いるとき、支持体と超電導体との格子整合性が悪く、かつ、支持体の元素が超電導層に拡散するなどの問題から臨界電流密度が低下してしまう。そのため超電導薄膜の直接成膜は困難で、支持体と超電導薄膜との間に格子整合と拡散防止のための中間層を作製する必要があり、一般的にはこのような手法が用いられてきた(図1参照) 。
【0004】
これ以外にも支持体を意図的に数度ずらしてカット・研磨したオフカット支持体を用いる方法(非特許文献2参照)や、同支持体上に中間層を作製し、その上に超電導薄膜を形成する(特許文献1参照)方法や、超電導薄膜中に人工欠陥を導入する方法(特許文献2,非特許文献3参照)で臨界電流密度を向上させる手法もある。
しかしこれらの手段をもってしても、依然として問題点が残っている。例えば、(1)中間層の導入では、単結晶基板と超電導膜との間に発生する応力の関係から臨界膜厚などが決まってしまう。例に挙げたAl2O3単結晶とYB a 2 C u 3 O 7の格子定数の違いから、臨界膜厚が300nm程度となってしまう。その結果300nm以上の膜厚ではクラックが生じると言う欠点があった。(2)オフカット支持体は、支持体と膜の間に発生する応力緩和に非常に効果的であるが、高精度の研磨技術が必要となる。
【0005】
たとえば、市販されている代表的な支持体であるAl2O3単結晶はR面(1102)でカットされているものを使用するが、その面は1〜2°のミスカットがあるのが通常である。そのため、特許文献1の方法のような原子レベルでの制御は生産には向かない。また、(3)人工的な欠陥の導入は特性の劣化を引き起こすこともある。なぜならば人工的な欠陥は局所的に超電導を破壊することを目的としたことであり、入れすぎると特性が逆に劣化してしまう。また欠陥面はランダムに存在するためは制御が難しい。そのため、人工的な欠陥の制御には、高真空といった特殊な環境や、あらかじめ組成を制御した材料やイオンビームアシストなどといった高価な機材が必要となり、生産には向かない。
以上の点から、特殊な環境が必要なく、市販の安価な支持体で高特性の超電導膜を得ることが、超電導の産業応用に必要不可欠である。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−290528号公報
【特許文献2】特開2006-062896号公報
【特許文献3】特開2004−244263号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nature,Vol .399,p439,(1999)
【非特許文献2】Pysica C 252 125-137(1995)
【非特許文献3】Phys.Rev.Lett.89,237001(2002)
【非特許文献4】Physca C 329 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、格子定数を変化させたCeO2層の作用でCeO2面側に高い臨界電流を有する超電導膜を得ることができる格子定数を変化させたCeO2層を有するA l2O3-CeO2二層薄膜構造体、当該Al2O3-CeO2二層薄膜構造体を用いて、格子定数を変化させたCeO2層を活用してCeO2面側に高い臨界電流を有する超電導膜を形成したAl2O3-CeO2-超電導物質三層薄膜構造体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、大気圧下で、市販のAl2O3-CeO2二層薄膜構造体に一定のレーザ光を照射することで、CeO2層の格子定数を変化させたCeO2層とすることにより改質して、格子定数を変化させたCeO2層を有するAl2O3-CeO2二層薄膜構造体とし、製膜方法によらずに高特性の超電導膜のAl2O3-CeO2-超電導物質三層薄膜構造体を得ることを可能としたものである。
すなわち、本発明は、厚さ0.4mm〜1.0mmのAl2O3単結晶層上に、厚さ20nm〜300nmのCeO2層を設けた薄膜構造体に、エネルギー密度1mJ/cm2〜250mJ/cm2のレーザ光を1000〜1000000パルス照射し、CeO2層の格子定数を変化させたCeO2を有するAl2O3-CeO2二層薄膜構造体である。
また、本発明は、厚さ0.4mm〜1.0mmのAl2O3単結晶層上に、厚さ20nm〜300nmのCeO2層を設けた薄膜構造体に、エネルギー密度1mJ/cm2〜250mJ/cm2のレーザ光を1000〜1000000パルス照射し、CeO2層の格子定数を変化させたCeO2を有するAl2O3-CeO2二層薄膜構造体のCeO2層側に厚さ100nm〜800nmの超電導薄膜を設けたAl2O3-CeO2-超電導物質三層薄膜構造体である。さらに、本発明においては、CeO2層を設けるAl2O3単結晶層をサファイアR面とすることができる。
【0010】
さらにまた、本発明は、厚さ0.4mm〜1.0mmのAl2O3単結晶層上に、厚さ20nm〜300nmのCeO2層を設けた薄膜構造体に、エネルギー密度1mJ/cm2〜250mJ/cm2のレーザ光を1000〜1000000パルス照射し、CeO2層の格子定数を変化させたCeO2を有するAl2O3-CeO2二層薄膜構造体のCeO2層面に、塗布熱分解法、蒸着法、スパッタリング法から選ばれる手法により超電導酸化物層を設けて超電導材料を製造することを特徴とする超電導酸化物材料の製造方法である。
またさらに、本発明の超電導性材料の製造方法では、エネルギー密度1mJ/cm2〜250mJ/cm2のレーザ光を照射するに際して、Al2O3単結晶層側からレーザ光を照射した二層薄膜構造体を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の格子定数を変化させたCeO2を有するAl2O3-CeO2二層薄膜構造体は、特殊な環境が必要なく、市販の安価な支持体と中間層にレーザ光を照射することで、製膜方法によらずに、高特性の超電導膜を得られる効果がある。また、得られたAl2O3-CeO2-超電導物質三層薄膜構造体は、高い臨界電流を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】支持体、中間層、超電導膜の関係を示す模式図
【図2】本発明によるAl2O3-CeO2二層薄膜構造体の製造プロセスの模式図
【図3】本発明による超電導膜の製造プロセス模式図
【図4】本発明によって作製した中間層の格子定数
【図5】本発明におけるレーザ光照射を行う前の中間層の格子定数
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いる、厚さ0.4mm〜1.0mmのAl2O3単結晶層上に、厚さ20nm〜300nmのCeO2層を設けた薄膜構造体は、Al2O3単結晶上に蒸着法やスパッタリング法により、CeO2層を形成し、当業者が適宜作成することができるが、市販のものを利用することもできる。
また、CeO2層を設けるAl2O3単結晶の面は、サファイヤR面が好ましい。
本発明において用いる光は、レーザ光である。
本発明で用いることができるレーザ光としては、KrFエキシマレーザ 、XeClエキシマレーザ 、YAGレーザ の3倍波光を挙げることができる。
また、CeO2層にレーザ光を照射するに際して、レーザ光の強さは、エネルギー密度1mJ/cm2〜250mJ/cm2のレーザ光を1000〜1000000パルス照射するのが良い。好ましくは、エネルギー密度20mJ/cm2〜150mJ/cm2のレーザ光を3000〜30000パルス照射する。
レーザ光の照射は、CeO2層側から行うこともできるし、Al2O3単結晶基板側から行うこともできる。Al2O3単結晶基板側から行ったAl2O3-CeO2二層薄膜構造体を用いた方が超電導特性が良いAl2O3-CeO2-超電導物質三層薄膜構造体を得ることができる。
【0014】
厚さ0.4mm〜1.0mmのAl2O3単結晶層上に、厚さ20nm〜300nmのCeO2層を設けた薄膜構造体に、CeO2層側から、エネルギー密度1mJ/cm2〜250mJ/cm2のレーザ光を1000〜1000000パルス照射し、CeO2層の格子定数を変化させたCeO2を有するAl2O3-CeO2二層薄膜構造体を作ることができる(図2参照)。
一定のレーザ光を照射することで、物質と光との相互作用の一次過程は電子励起ではあるが、電子系に付与されたエネルギーは、その後格子系へと伝達され、単結晶基板と界面応力が緩和するように格子が変化する。図4に示すように、X線で格子定数を測定すると変化する。その上に超電導薄膜を形成すると適度な積層欠陥や転位などの結晶欠陥が誘起される。
【0015】
また、本発明は、厚さ0.4mm〜1.0mmのAl2O3単結晶層上に、厚さ20nm〜300nmのCeO2層を設けた薄膜構造体に、CeO2層側から、エネルギー密度1mJ/cm2〜250mJ/cm2のレーザ光を1000〜1000000パルス照射し、CeO2層の格子定数を変化させたCeO2を有するAl2O3-CeO2二層薄膜構造体のCeO2層側に厚さ100nm〜800nmの超電導薄膜を設けたAl2O3-CeO2-超電導物質三層薄膜構造体を作ることができる(図3参照)。
このような、欠陥や転位が導入は通常の支持体でも部分的に僅かに挿入されることがある(非特許文献4)が、本発明では適量はいることが特徴である。またこの効果はオフカット基板でも同様の効果が得られるが、オフカットといった特殊な作業を必要とすることは無い。このように膜中に適量に挿入された欠陥が支持体と超電導膜との熱膨張係数の差に起因する引っ張り歪みを緩和するため、クラックが生成することなく膜厚を向上させることが可能となり、特性を大きく向上させることができる。また、人工的な欠陥導入とは異なり、制御性も非常によく、生産技術に向いている。
また熱処理でも中間層の改質も行われている(特許文献3参照)が、熱的に処理した場合では、非特許文献3に示されるような表面モホロジーの変化が本発明ではないことや、熱処理だけでは図4に示すような構造が得られていないことから、中間層の小傾角粒界の創製には電子的過程が強く関与していることが考えられ、熱処理による機構とは本質的に異なる。
【0016】
さらに、本発明では、厚さ0.4mm〜1.0mmのAl2O3単結晶層上に、厚さ20nm〜300nmのCeO2層を設けた薄膜構造体に、CeO2層側から、エネルギー密度1mJ/cm2〜250mJ/cm2のレーザ光を1000〜1000000パルス照射し、CeO2層の格子定数を変化させたCeO2を有するAl2O3-CeO2二層薄膜構造体のCeO2層面に、塗布熱分解法、蒸着法、スパッタリング法から選ばれる手法により超電導酸化物層を設けることにより超電導材料を製造することができ、超電導酸化物層を必ずしも精緻な製膜方法を必要としない利点がある。
本発明で用いる超電導材料は周知のものならどれでも用いることができる。典型的には、超電導薄膜は( R E ) B a 2
C u 3 O 7 (ここで、R E は、 Y , N d , S m , E u , G d , D y ,H o , E r , Y bから選ばれる1 種の原子)であることが好ましいが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記に本発明の具体例を示し、さらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
市販の酸化アルミニウム(Al2O3)単結晶(サファイア)R面基板に酸化セリウム(CeO2)層を形成した基板(図5参照)に、裏面(酸化アルミニウム基板側)からKrFエキシマレーザをエネルギー密度80mJ/cm2を30000パルス照射した。この中間層をX線回折装置で調べたところの格子が変化した(図4参照)。
この上に高温超電導体YBa2Cu3O7塗布溶液を4000rpm; 10秒間でスピンコートし、昇温速度毎分約10℃で500℃まで加熱し、30分間この温度に保って取り出す。ついで石英製管状炉中で以下の条件で本焼成を行う。まず、酸素分圧を100ppm に調整したアルゴンと酸素の混合ガス流中で昇温速度毎分約20℃で780℃まで加熱し、この温度に45分間保ち、ガスを純酸素に切り換えてさらに30分間保った後、徐冷し製膜したところ、厚さ410nm、誘導法により臨界電流密度2.0MA/cm2が得られた。
液体窒素で冷却し、ヒーターを使用して室温まで加熱後SEMによる表面と断面観察を行ったが、クラックなどはみられなかった。

【実施例2】
【0018】
市販の酸化アルミニウム(Al2O3)単結晶(サファイア)R面基板に酸化セリウム(CeO2)層を形成した基板に、表面からKrFエキシマレーザをエネルギー密度20mJ/cm2を30000パルス照射した。この中間層をX線回折装置で調べたところの格子が変化した。
この上に実施例1と他は同様にして作製した膜高温超電導体YBa2Cu3O7を塗布熱分解法で製膜したところ、厚さ440nm、誘導法により臨界電流密度1.2MA/cm2が得られた。
液体窒素で冷却し、ヒーターを使用して室温まで加熱後SEMによる表面と断面観察を行ったが、クラックなどはみられなかった。
(比較例1)
実施例2において、光照射を行わないで、他同様にYBa2Cu3O7を作製したところ、厚さ420nm、誘導法で臨界電流密度が、測定限界以下であった。
【実施例3】
【0019】
市販の酸化アルミニウム(Al2O3)単結晶(サファイア)R面基板に酸化セリウム(CeO2)層を形成した基板に、表面からKrFエキシマレーザをエネルギー密度20mJ/cm2を30000パルス照射した。この中間層をX線回折装置で調べたところの格子が変化した。(図4参照)
この上に実施例1と他は同様にして作製した高温超電導体YBa2Cu3O7を塗布熱分解法で成膜したところ、厚さ110nm、誘導法により臨界電流密度4.2MA/cm2が得られた。
(比較例2)
実施例3において、中間層に光照射を行わないで、他同様にYBa2Cu3O7を作製したところ、厚さ120nm、誘導法で臨界電流密度1.2MA/cm2が得られた。

【実施例4】
【0020】
市販の酸化アルミニウム(Al2O3)単結晶(サファイア)R面基板に面内配向していない酸化セリウム(CeO2)中間層を形成した基板に、表面からKrFエキシマレーザをエネルギー密度20mJ/cm2を30000パルス照射した。この中間層をX線回折装置で調べたところの格子が変化した。
この上に実施例1と他は同様にして作製した高温超電導体YBa2Cu3O7を塗布熱分解法で成膜したところ、厚さ100nm、誘導法により臨界電流密度3.0MA/cm2が得られた。

(比較例3)
実施例4において、中間層に光照射を行わないで、他同様にYBa2Cu3O7を作製したところ、超電導特性は得られなかった。

【実施例5】
【0021】
市販の酸化アルミニウム(Al2O3)単結晶(サファイア)R面基板に酸化セリウム(CeO2)中間層を形成した基板に、裏面からXeClエキシマレーザをエネルギー密度100mJ/cm2を30000パルス照射した。この中間層をX線回折装置で調べたところの格子が変化した。
この上に実施例1と他は同様にして作製した高温超電導体YBa2Cu3O7を塗布熱分解法で成膜したところ、厚さ110nm誘導法で臨界電流密度2.0MA/cm2が得られた。
【実施例6】
【0022】
市販の酸化アルミニウム(Al2O3)単結晶(サファイア)R面基板に酸化セリウム(CeO2)中間層を形成した基板に、表面からYAGレーザ三倍波をエネルギー密度5mJ/cm2を100000パルス照射した。この中間層をX線回折装置で調べたところの格子が変化していた。
この基板を800℃に加熱し、組成 (原子比) がY:Ba:Cu:O =1:2:3:X のターゲットを用いてO2 /(Ar+O2)=7% (体積比)の混合ガス圧力 1 Torrの環境で厚さ300nmの YBa2Cu3O7をスパッタ成膜(300W)したところ、誘導法で臨界電流密度2.4MA/cm2の高温超電導体が得られた。
【実施例7】
【0023】
市販の酸化アルミニウム(Al2O3)単結晶(サファイア)R面基板に酸化セリウム(CeO2)中間層を形成した基板に、表面からYAGレーザ三倍波をエネルギー密度5mJ/cm2を100000パルス照射した。この中間層をX線回折装置で調べたところの格子が変化した。
この上に実施例6と他は同様にして作製した高温超電導体GdBa2Cu3O7をスパッタで製膜したところ、厚さ200nm誘導法で臨界電流密度2.2MA/cm2が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の格子定数を変化させたCeO2を有するAl2O3-CeO2二層薄膜構造体は、特定の薄膜を形成する上で、可能性を秘めたものであり、Al2O3-CeO2-超電導物質三層薄膜構造体は、高い臨界電流特性の超電導物質膜を作れるので、産業上きわめて利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0025】
1 レーザ光
2 Al2O3
3 CeO2
4 超電導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ0.4mm〜1.0mmのAl2O3単結晶層上に、厚さ20nm〜300nmのCeO2層を設けた薄膜構造体に、エネルギー密度1mJ/cm2〜250mJ/cm2のレーザ光を1000〜1000000パルス照射し、CeO2層の格子定数を変化させたCeO2を有するAl2O3-CeO2二層薄膜構造体。
【請求項2】
厚さ0.4mm〜1.0mmのAl2O3単結晶層上に、厚さ20nm〜300nmのCeO2層を設けた薄膜構造体に、エネルギー密度1mJ/cm2〜250mJ/cm2のレーザ光を1000〜1000000パルス照射し、CeO2層の格子定数を変化させたCeO2を有するAl2O3-CeO2二層薄膜構造体のCeO2層側に厚さ100nm〜800nmの超電導薄膜を設けたAl2O3-CeO2-超電導物質三層薄膜構造体。
【請求項3】
CeO2層を設けるAl2O3単結晶層がサファイアR面である請求項1または請求項2に記載したAl2O3-CeO2二層薄膜構造体又はAl2O3-CeO2-超電導物質三層薄膜構造体。
【請求項4】
厚さ0.4mm〜1.0mmのAl2O3単結晶層上に、厚さ20nm〜300nmのCeO2層を設けた薄膜構造体に、エネルギー密度1mJ/cm2〜250mJ/cm2のレーザ光を1000〜1000000パルス照射し、CeO2層の格子定数を変化させたCeO2を有するAl2O3-CeO2二層薄膜構造体のCeO2層面に、塗布熱分解法、蒸着法、スパッタリング法から選ばれる手法により超電導酸化物層を設けて超電導材料を製造することを特徴とする超電導酸化物材料の製造方法。
【請求項5】
エネルギー密度1mJ/cm2〜250mJ/cm2のレーザ光を照射するに際して、Al2O3単結晶層側からレーザ光を照射した二層薄膜構造体を用いることを特徴とする請求項4に記載した超電導性材料の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−38175(P2011−38175A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188585(P2009−188585)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】