説明

二酸化ウラン製造用ロータリーキルン

【課題】六フッ化ウランから二酸化ウランを生成するまでの反応の効率化をより簡易な構成で行う。
【解決手段】一端に入口フード3が設けられるとともに他端に出口フード4が設けられたキルン本体2と、入口フード側から気体状の六フッ化ウランおよび水蒸気を供給する入口側供給管5と、出口フード側から水素および水蒸気を供給する出口側供給管6とを備え、出口フードから固体の二酸化ウランを得るロータリーキルンにおいて、キルン本体の内部が、仕切板9により第一反応室2aと第二反応室2bとに区画され、第一反応室と第二反応室とは、キルン本体の内面と仕切板の外縁とで形成される隙間により連通していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体状の六フッ化ウラン(UF6)と水蒸気とを原料とし、高温下でのこれらの反応により固体状のUO22(フッ化ウラニル)を生成させ、更に、これと水蒸気との反応によりUO3を生成させ、生成したUO3と水素ガスとを反応させて、二酸化ウラン(UO2)を製造するロータリーキルンに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーキルンは、被処理物を焼成、焼却あるいは仮焼して固形物として取り出すのに用いられる設備であり、回転可能に設けられた円筒状のキルン本体と、その一端に設けられた入口フードおよび他端に設けられた出口フードとを有する。キルン本体の内部は加熱手段により高温状態とされ、この中に、入口フードを介して被処理物を供給し、供給された被処理物を出口側へ送りつつ加熱処理し、生成された固形物が出口フードを介して排出される。
【0003】
この種のロータリーキルンは、外国では核燃料ペレットの原料となる二酸化ウランの粉末を製造するのにも用いられている。二酸化ウランを製造するロータリーキルンとしては、例えば、特表平8−500057号公報に記載のものが知られている。同公報に記載のロータリーキルンは、入口装置と、キルン本体と、出口装置とを備えている。入口装置には、二重管構造の反応気体入口ノズルが、キルン本体の軸心と一致するように設けられており、この反応気体入口ノズルから、気体状の六フッ化ウランおよび水蒸気が入口装置内に噴出される。噴出された六フッ化ウランおよび水蒸気は入口装置内で反応してフッ化ウラニルが生成される。一方、出口装置には、キルン本体内に水蒸気および水素を導入するための手段が設けられており、入口装置内で生成されたフッ化ウラニルはキルン本体内に入り、そこで、水蒸気と水素との混合気体と反応して、最終的には出口装置から二酸化ウランの粉末が放出される。
【0004】
また、キルン本体内で発生した余分なガスを排出するための気体放出パイプが入口装置の外周面に設けられているが、入口装置内で生成されたフッ化ウラニルは微細な粒子であり、フッ化ウラニルが気体放出パイプから排出されないようにするために、筒状のフィルタが入口装置に設けられている。
【特許文献1】特表平8−500057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のロータリーキルンでは、六フッ化ウランからフッ化ウラニルを生成する際の反応条件、およびフッ化ウラニルから二酸化ウランを生成する際の反応条件が十分に最適化されているとはいえなかった。
【0006】
すなわち、六フッ化ウランから二酸化ウランを得るには複数の段階を経る必要があるが、入口装置から出口装置までの、反応用の空間は、概ね連続した空間となっているため、必ずしも、各反応の段階で必要な物質を必要な部分に供給する構成とはなっていなかった。
【0007】
以上のように、従来のロータリーキルンは、六フッ化ウランから二酸化ウランを得るまでの反応条件が十分に最適化されていないことにより、結果的には、供給された六フッ化ウランに対する二酸化ウランの生産効率の低下を招くことになる。六フッ化ウランから二酸化ウランを得るまでの反応条件を最適化するには、供給する物質の量、反応温度、反応時間等を厳密に管理する方法もあるが、上述のように反応が複数の段階にわたって連続して行われるロータリーキルンにおいては、それらの管理も難しく、ロータリーキルン自体の構成も複雑になってしまう。
【0008】
そこで本発明は、六フッ化ウランから二酸化ウランを生成するまでの反応の効率化をより簡易な構成で行えるロータリーキルンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のロータリーキルンの第1の態様は、一端に入口フードが設けられるとともに他端に出口フードが設けられたキルン本体と、前記入口フード側から気体状の六フッ化ウランおよび水蒸気を供給する入口側供給管と、前記出口フード側から水素および水蒸気を供給する出口側供給管とを備え、前記出口フードから固体の二酸化ウランを得るロータリーキルンにおいて、前記キルン本体の内部が、仕切板により第一反応室と第二反応室とに区画され、前記第一反応室と前記第二反応室とは、前記キルン本体の内面と前記仕切板の外縁とで形成される隙間により連通していることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、キルン本体の内部を第一反応室と第二反応室とに区画することにより、入口側供給管から供給される六フッ化ウランの出口フード側への移動、および出口側供給管から供給される水素の入口フード側への移動が抑制される。つまり、反応に必要な物質が必要な箇所に供給される。また、第一反応室と第二反応室とは、キルン本体の内面と仕切板の外縁とで形成される隙間により連通しているので、キルン本体内で生成されたウラン化合物の、第一反応室から第二反応室への移動が妨げられることはない。その結果、六フッ化ウランと水蒸気との反応、この反応によって生成されたフッ化ウラニルと水蒸気との反応、およびこの反応によって生成された三酸化ウランと水素との反応が効率よく行われる。しかも、このことは、仕切板をキルン本体内に設置するという極めて簡単な構成で達成される。
【0011】
本発明のロータリーキルンの第2の態様は、一端に入口フードが設けられるとともに他端に出口フードが設けられたキルン本体と、前記入口フード側から気体状の六フッ化ウランおよび水蒸気を供給する入口側供給管と、前記出口フード側から水素および水蒸気を供給する出口側供給管とを備え、前記出口フードから固体の二酸化ウランを得るロータリーキルンにおいて、前記出口側供給管は、前記水蒸気が供給される内管と前記水素が供給される外管との二重管構造を有し、前記水蒸気は前記内管の先端部から噴射されるとともに、前記水素は前記外管の周面に形成された複数の噴射口から噴射されることを特徴とする。
【0012】
このロータリーキルンでは、入口側供給管から供給された水蒸気と六フッ化ウランとの反応によりフッ化ウラニルを生成し、このフッ化ウラニルと出口側供給管から供給された水蒸気との反応により三酸化ウランを生成し、更に、この三酸化ウランと出口側供給管から供給された水素との反応により、最終的に二酸化ウランを生成する。この発明によれば、出口側供給管は二重管構造を有しており、水蒸気は内管の先端から噴射され、水素は外管の周面に形成された噴射口から噴射される。これにより、水蒸気と六フッ化ウランとの反応により生成したフッ化ウラニルには、まず、出口側供給管の内管から噴射された水蒸気が優先的に接触し、次いで、フッ化ウラニルと水蒸気との反応によって生成された三酸化ウランに、出口側供給管の外管から噴射された水素が優先的に接触するので、フッ化ウラニルから二酸化ウランまでの反応が効率的に行われる。しかも、このことは、二重管構造に対して外管の周面に噴出口を形成するという極めて簡単な構成で達成される。
【0013】
上記の発明においては、三酸化ウランはキルン本体の底部に堆積して存在しているので、このような三酸化ウランに対して効果的に水素を噴射するためには、噴射口を外管の下側に形成することが望ましい。さらに、キルン本体の回転による三酸化ウランの移動を考慮すると、噴射口は、水素の噴射範囲の中心が、キルン本体の回転中心の真下よりもキルン本体の回転方向について下流側に位置するように形成されていることが、より望ましい。
【0014】
なお、本明細書において、「水蒸気」は、蒸気状の水を意味し、飽和水蒸気や加熱水蒸気等を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、六フッ化ウランから二酸化ウランを生成するまでの反応の効率化をより簡易な構成で行えるロータリーキルンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態によるロータリーキルンの構造を示す図である。
【0018】
図1に示すように、ロータリーキルン1は、酸化物への転換用、より具体的には、気体状の六フッ化ウラン(UF6)を原料として粉末状の二酸化ウラン(UO2)を製造するための設備であり、ローラ7の上に載置されることによって略水平な軸回りに回転可能に支持された筒状のキルン本体2と、キルン本体2の一端部に設けられた入口フード3および他端部に設けられた出口フード4とを有する。
【0019】
キルン本体2の入口フード3側の外周面には歯車13が設けられており、不図示の駆動手段による駆動力をこの歯車13に伝達することで、キルン本体2が回転される。また、キルン本体2の外側には、電気ヒータ等の加熱手段を備えた外熱炉14が設けられている。外熱炉14は、キルン本体2の内部の温度を反応に適した所定の温度とするためのものである。特に本実施形態では、入口フード3側から出口フード4側へ至る過程で複数段階の反応を経て二酸化ウランが生成されるので、キルン本体2内の温度をそれぞれの段階ごとに反応に適した温度とすることができるようにするために、外熱炉14は、キルン本体2の軸線方向に沿って複数のブロック14a〜14cに区分され、ブロック14a〜14c毎に独立して温度制御が可能となっている。キルン本体2の内部には、それぞれ外熱炉14の各ブロック14a〜14cに対応する位置で、キルン本体2の端部から挿入された温度計(不図示)が設置されており、ブロック14a〜14c毎の温度制御は、これら温度計による温度の測定結果に基づいて行われる。
【0020】
本実施形態では外熱炉14を3つのブロック14a〜14cに分けたが、ブロックの数はこれに限られるものではなく、温度制御の精度を考慮し、適宜必要な数とすればよい。ブロックの数を多くすれば、外熱炉14の構成の複雑化や部品点数の増加等によってロータリーキルンの制作費が高くなるが、温度の制御精度は高くなる。
【0021】
キルン本体2の入口フード3側の端面には、キルン本体2内で生成したウラン化合物が入口フード3へ侵入するのを阻止するための板状のフィルタ15が固定されており、このフィルタ15により、キルン本体2の入口フード3側の端面が塞がれている。フィルタ15としては、この種のロータリーキルンに通常用いられるフィルタであればよい。さらに、キルン本体2の内部には、キルン本体2の内部を、入口フード3側から順に第一反応室2aと第二反応室2bとに区画する仕切板9が設置されている。上述した外熱炉14により、第一反応室2aは、気体状のUF6と水蒸気との反応に適した300℃以上の温度に設定され、第二反応室2bは、第一反応室2aでの反応により生成したフッ化ウラニル(UO22)と水蒸気との反応に適し、かつ、この反応で生成した三酸化ウラン(UO3)と水素との反応に適した450〜800℃の温度に設定される。
【0022】
仕切板9は、第一反応室2aと第二反応室2bとの間でのガスの自由な移動を規制するものであり、第一反応室2aと第二反応室2bとを完全に区画するものではない。すなわち、図3に示すように、仕切板9は、キルン本体2の横断面に対して一回り小さい外径を有し、適宜の固定部材9aにより、仕切板9の外縁全域にわたってキルン本体2の内壁面と隙間が形成されるように、キルン本体2内に支持されている。
【0023】
キルン本体2は、出口フード4側に向かって2〜3度の下り勾配となるように設置し、キルン本体2内で生成したUO22等が出口フード4側に流れ易くなるようにしている。キルン本体2の下り勾配の角度は、生成する粒子の大きさや流動性等を考慮して設定され、2〜3度に限定されるものではない。
【0024】
キルン本体2は、入口フード3および出口フード4に対して回転可能に設けられているので、入口フード3とキルン本体2との接続部、および出口フード4とキルン本体2との接続部にはそれぞれ、この部分からのガスの漏れを防止するために、シール手段17a,17bが設けられている。各シール手段17a,17bは、それぞれキルン本体2の軸線方向に間隔をあけて配置された2つのシールリングを有し、シール手段17a,17bを介してのガスの漏洩をより効果的に防止するために、シールリングの間の空間に窒素ガスが注入される構成となっている。
【0025】
入口フード3には、キルン本体2の第一反応室2a内へ気体状のUF6および水蒸気を供給する入口側供給管5と、キルン本体2内で発生したガスを排出するための排ガス出口18とが設けられている。入口側供給管5は、入口フード3、およびフィルタ15の中心部を貫通して、先端部をキルン本体2内に臨ませて、キルン本体2の中心軸上に設置されている。入口側供給管5の先端には、フィルタ15の表面に付着した付着物を除去するためのスクレーパ16が固定されている。スクレーパ16は、キルン本体2の回転に伴ってフィルタ15が回転することでフィルタの表面を擦り、これによってフィルタ15の表面から付着物が掻き落とされる。
【0026】
出口フード4には、キルン本体2内で発生したガスを排出するための排ガス出口19と、キルン本体2内での反応によって得られた固体状の最終製品を排出するための排出口8とが設けられている。さらに、出口フード4には、キルン本体2の第二反応室2b内へ、水素および水蒸気を供給するための出口側供給管6が、出口フード4を貫通して設けられている。
【0027】
出口側供給管6は外管62と内管63との二重管構造となっている。水素は、外管62の周壁に形成された複数の噴射口61から噴射される。水蒸気は、内管63の先端部、具体的には、内管63の先端、および内管63の先端付近で内管63の周囲に形成された複数の噴射口から噴射される。噴射口61は、キルン本体2の底部に堆積しているウラン化合物に向かって水素を噴射するように外管62の下側の壁面に設けられている。
【0028】
ここで、入口側供給管5について、図2を参照して説明する。
【0029】
入口側供給管5は、図2に示すように、気体状のUF6を噴射する内管51と、水蒸気を噴射する外管52とを有する二重管構造となっており、入口側供給管5の先端部には、内管51と外管52との間に、入口側供給管5の中心軸に対する旋回流を発生するための傾斜羽根53が設けられている。また、入口側供給管5の先端部において、内管51の中心部には分散体54が設けられており、この分散体54と内管51とにより、先端に向かって直径が次第に小さくなる環状の傾斜通路が形成されている。このため、内管51よりUF6は、ドーナツ状となって拡散しながら噴射される。一方、外管52は先細り形状となっており、水蒸気は、内管51から噴射したUF6と衝突するように噴射される。これにより、UF6の微粒化が行われる。
【0030】
入口側供給管5からのUF6と水蒸気との噴射により両者が衝突することで、両者は速やかに混合され、第一反応室2aでは、以下の反応式
UF6+2H2O→UO22+4HF
により、UO22が生成される。
【0031】
第一反応室2aで生成したUO22は粒径が1μm以下の微細な固体であり、第一反応室2a内で浮遊する傾向がある。しかし、入口側供給管5を上述した構成とすることで、入口側供給管5から噴射された水蒸気は、傾斜羽根53の作用により旋回しながら噴射されるので、内管51から噴射されるUF6および生成したUO22も、その流れに随伴してキルン本体2内で、キルン本体2の中心軸回りに旋回することになる。これにより、生成したUO22は、第一反応室2aの内壁面へと移動し易くなり、UO22の粒子同士の結合が起こり易い状況となる。このことは、図5および図6に示した入口側供給管35を用いた場合でも同様である。UO22の粒子同士が結合することにより、UO22の粒子径が大きくなる。その結果、UO22は、水蒸気や生成したガス成分と分離し易くなり入口フード3の排ガス出口18へ向かうUO22の量が少なくなる。
【0032】
上述したように、排ガス出口18へ向かうUO22の量が少なくなることで、より多くのUO22をキルン本体2の底部に堆積させることができ、より多くのUO22を第二反応室2bでの反応に利用することができるようになる。また、排ガス出口18へ向かうUO22の量が少なくなることで、フィルタ15に付着するUO22の量を少なくすることができる。フィルタ15に付着した付着物は、スクレーパ16により除去することができるが、このように、フィルタ15に付着するUO22の量を少なくすることで、フィルタ15の目詰まりを長期間にわたってより効果的に抑制することができる。なお、上述した入口側供給管によれば、旋回流の付与によりUO22の粒子径を従来と比較して大きくすることができるが、このようにUO22の粒子径が大きくなることによっても、フィルタ15の目詰まりを抑制することができ、また、フィルタ15に付着したUO22をスクレーパ16によって容易に除去することができる。
【0033】
フィルタ15に付着するUO22はスクレーパ16により除去されるが、時間の経過でフィルタ15に目詰まりが生じた場合には、フィルタ15の上流側(図1においてフィルタ15の左側)より窒素ガスを間欠的に供給することも、付着物の除去には効果的である。
【0034】
本実施形態では、入口側供給管5自体の構造により第一反応室2aに旋回流を発生させた例を示したが、図5および図6に示すように、複数本の入口側供給管35を設け、これにより旋回流を発生させてもよい。図5および図6に示す例では、各入口側供給管35は、それぞれ二重管構造を有するもので、キルン本体32の回転中心に対して点対称となるように、キルン本体32の周縁部に配置されている。また、各入口側供給管35の先端部は、それぞれキルン本体32の回転方向と反対向きに屈曲している。このため、各入口側供給管35からUF6および水蒸気はキルン本体32の周方向に噴射され、これによってUF6および水蒸気を旋回流としてキルン本体32内に供給している。図1に示した構造および図5,6に示した構造のいずれの場合も、UO22がフィルタ15に向かうことを抑制するために、生成したUO22に旋回流を与え、キルン本体の内壁面へ向かわせるものであり、しかもその構成も極めて簡単である。このように生成したUO22に旋回流を与えるためには、入口側供給管は、UF6および水蒸気の少なくとも一方を旋回流としてキルン本体内に供給することができるものであれば、特に限定されるものではない。なお、UF6および水蒸気を供給する手段は、上述の手段に限られるものではなく、気体状のUF6と水蒸気とが十分に混合し、混合した結果、十分な反応が行われるような手段であればよい。
【0035】
また、本実施形態では、フィルタ15は板状とし、キルン本体2の端面に設けるとともに、フィルタ15に付着した付着物を掻き落とすスクレーパ16を、入口側供給管5の先端部に固定し、フィルタ15の表面に付着した付着物の除去が、キルン本体2の回転を利用して自動的に行われる構成としている。これにより、スクレーパ16を駆動するための駆動源を必要としない極めて簡単な構成でフィルタ15の付着物を除去することができ、しかも、フィルタ15は板状であるので、その製作も容易である。
【0036】
再び図1を参照すると、前述したように、第一反応室2aは仕切板9により第二反応室2bと仕切られており、その内部の温度は反応に最適な温度である300〜400℃程度に制御されている。第一反応室2aの温度は、供給するUF6の性状(純度等)や水蒸気の量により適宜最適な温度が選ばれ設定される。更に、第一反応室2aが仕切板9で第二反応室2bと仕切られていることにより、第二反応室2bに供給された水素および水蒸気に希釈されることなく、第一反応室2aに供給されたUF6および水蒸気の濃度が維持されるので、第一反応室2a内の雰囲気を、UO22が生成されやすい条件に保持することができる。しかも、このことは、キルン本体2を仕切板9で仕切るという極めて簡単な構成で達成される。
【0037】
第一反応室2aで生成されたUO22は、第一反応室2aの底部に堆積し、キルン本体2が出口フード4に向かって下り勾配で設置されていることから、キルン本体2の回転に伴い、徐々に出口フード4側へ移送される。ここで、仕切板9とキルン本体2との間には、図3に示したように隙間が設けられているので、第一反応室2aで生成したUO22は、この隙間を通って第二反応室2bへ移動する。
【0038】
仕切板9とキルン本体2との間の隙間の大きさは、処理されるUF6の量に応じて適宜最適な値が選ばれる。処理されるUF6の変動幅が大きい場合には、キルン本体2との隙間を変化させることのできる仕切板を用いてもよい。また、仕切板9とキルン本体2との間の隙間は、仕切板9の全周にわたって設けられている必要はない。これは、隙間が一部位にのみ設けられている場合でも、キルン本体2が1回転する間には、隙間は必ずキルン本体2の底部を通過し、このときに、UO22を第一反応室2aから第二反応室2bへ移動させることができるからである。ただし、UO22をよりスムーズに移動させるためには、仕切板9の全周にわたって隙間を設けることが望ましい。
【0039】
第二反応室2bに移動したUO22は、出口側供給管6の内管63から噴射された水蒸気と反応し、以下の反応式
UO22+H2O→UO3+2HF
により、UO3が生成される。生成されたUO3は、更に、キルン本体2の回転に伴う移送により、出口側供給管6の噴射口61から噴射された水素と反応し、以下の反応式
UO3+H2→UO2+H2
により、最終製品である二酸化ウラン(UO2)が生成される。生成されたUO2は、出口フード4の排出口8から排出される。
【0040】
このように、第二反応室2bでは、第一反応室2aで生成されたUO22が、2段階の反応を経てUO2となる。ここで、出口側供給管6は、その先端から水蒸気を噴射し、周面の噴射口61からH2を噴射する構成となっているので、第二反応室2b内でのウラン化合物の移送方向について、上流側ではH2Oが、下流側ではH2が、それぞれ優先的に供給される。そのことにより、H2Oによる1段階目の反応、およびH2による2段階目の反応を簡単な構成で効率的に行うことができ、結果的に、UO22からUO2を効率よく得ることができる。
【0041】
また、噴射口61は、図1および図4に示すように、出口側供給管6の軸方向および周方向にそれぞれ複数形成されている。したがって、水素は、キルン本体2の第二反応室2bの底部に堆積しているUO3に対して効率よく噴射され、UO3と水素との反応が最適に生じるように供給される。噴射口61の数および分布密度は、第二反応室2bに堆積しているウラン化合物(UO3)の量に応じて、堆積しているウラン化合物に効果的に噴射できるように適宜設定される。
【0042】
ここで、ロータリーキルン1の動作中すなわちキルン本体2の回転中のキルン本体2内でのウラン化合物の位置を考慮すると、キルン本体2の内壁面とウラン化合物との摩擦により、実際には、ウラン化合物は、図4にも示すように、キルン本体2の回転中心の真下よりもキルン本体2の回転方向について下流側にずれた位置に存在する。
【0043】
そこで本実施形態では、キルン本体2の回転中のウラン化合物に対して効果的に水素が接触するように、キルン本体2の回転方向についての水素の噴射範囲の中心Cが、キルン本体2の回転中心の真下よりもキルン本体2の回転方向について所定の角度だけ下流側となるように噴射口61が設けられている。この角度は、生成するウラン化合物の粒子径や量等に応じて適宜決定される。これにより、ウラン化合物と水素とが接触する領域が多くなり、また、無駄に噴射される水素が少なくなるため、水素とウラン化合物との反応を効率的に行うことができる。また、噴射された水素ができるだけ均一にウラン化合物と接触することができるように、各噴射口61は、広がりを持って水素が噴射される構造であることが好ましい。
【0044】
上記のUO22とH2Oとの反応、およびUO3とH2との反応に適した温度は450〜800℃であり、この温度は、外熱炉14のブロック14a〜14c毎に、ウラン付着防止機能を備えた温度計により測定され、制御される。それぞれの設定温度は、ブロック14a〜14c毎に、反応が最適に行われるように決められる。一般的には、第一反応室2a側から概ね100℃刻みで温度が高くなっていくように設定される。
【0045】
また、上記の反応に見られるように、第二反応室2bでは、UO3が生成される際にHFが生成され、さらに、第二反応室2b内には出口側供給管6から供給された未反応の水素も存在している。このように、第二反応室2b内のガス成分には、腐食性ガスであるフッ化水素ガス(HF)、可燃性ガスである水素ガス(H2)、水蒸気(H2O)等が含まれている。しかも、第二反応室2bの温度は800℃もの高温であり、キルン本体2は、腐食性ガスによる腐食が発生しやすい状況となっている。したがって、キルン本体2の材質の選定が難しく、従来は、モネル合金またはニッケルが用いられていた。しかし、これらの材質でも腐食するとの報告もあるため、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、キルン本体2や、キルン本体2内に設置される温度計の材質としては、インコネル(例えばインコネル600、インコネル625等)、モネル、Niハステロイ(例えばハステロイB、ハステロイC等)、ステンレス鋼が適していることが判明した。そこで、本実施形態では、キルン本体2およびその中に設置される温度計の、少なくともキルン本体2の内部空間に露出する部分の材質として、インコネル600を用いている。
【0046】
キルン本体2の断面形状は、一般的に用いられる円形であってもよいが、図3および図4に示すように、多角形(図示した例では六角形)とすることが望ましい。断面が円形であると、キルン本体2を回転させた際、堆積しているウラン化合物がそのまま横滑りし、表面層と内部層との置換がスムーズに行われないため、内部層の反応が行われ難くなるが、多角形とすることで、表面層と内部層とが入れ替わり易くなり、ウラン化合物の反応が速やかに行われる。
【0047】
出口フード4には排ガス出口19が設けられているが、この排ガス出口19にはバルブが設けられており、排ガス出口19からの排ガス量を調整して、第一反応室2aと第二反応室2bとの圧力バランスを、第二反応室2bの圧力が第一反応室2aの圧力よりも高くなるように調整している。これにより、第一反応室2a内の未反応のUF6が第二反応室2bへ流入するのを抑制している。なお、第一反応室2aおよび第二反応室2bにはそれぞれ圧力センサ(不図示)が設けられており、これらの圧力センサでの検出結果に基づいて、排ガス出口19に設けられたバルブの開閉を制御することによって、第二反応室2bの圧力が調整される。
【0048】
なお、キルン本体2の内面に付着した付着物の除去は、外部よりキルン本体2に衝撃を与え、そのときの振動により付着物を落下させるハンマリング方式を用いることができる。
【0049】
さらに、前述したように、キルン本体2の内部には、外熱炉14の各ブロック14a〜14cに対応した位置に、それぞれ温度計(不図示)が設置されているが、これらの温度計を含め、キルン本体2の内部に設置される付属機器にも付着物が生じるので、これらの付着物も除去する必要がある。そのために本実施形態では、キルン本体2の内部に二重管(不図示)を設置し、その二重管の内管の中に付属機器を設置している。そして、内管と外管との間から一定時間ごとに高圧の窒素ガスを流すことで二重管を振動させ、これによって付着物を脱落させることができる。二重管の設置位置および数は、付属機器の設置位置および数に応じて決められる。また、内管に設置された付属機器の重要な先端部は、外管による影響を排除するために、外管の先端よりも10mm程度突出させて設置することが好ましい。
【0050】
以上説明したように本発明によれば、以下に記載するような効果を奏する。
【0051】
入口側供給管から供給される六フッ化ウランおよび水蒸気の少なくとも一方を旋回流として供給するロータリーキルンにおいては、旋回流を発生させるだけの簡単な構成で、六フッ化ウランと水蒸気との反応により生成されるフッ化ウラニルの粒子径が大きくなるとともに、入口フードへ向かうフッ化ウラニルの量が少なくなり、キルン本体内に堆積するフッ化ウラニルの量を多くすることができるので、出口フード側での反応に利用されるフッ化ウラニルの利用効率を向上させることができる。この場合、板状のフィルタをキルン本体の入口フード側の端面に設けることもできるが、そのフィルタの中心部を貫通させて入口側供給管を設け、入口側供給管にスクレーパを固定することで、フィルタの目詰まりを抑制することができる。
【0052】
また、キルン本体の内部を仕切板により第一反応室と第二反応室とに区画したロータリーキルン、および、出口側供給管を二重管構造としてその内管の先端から水蒸気を噴射し外管の周面に形成された複数の噴射口から水素を噴射するロータリーキルンにおいては、キルン本体内での各種の反応に必要な物質を、簡単な構成でありながらも、必要な箇所に優先的に供給することができるので、キルン本体内での反応を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態によるロータリーキルンの構造を示す図である。
【図2】図1に示す入口側供給管の先端部の構造を示す縦断面図である。
【図3】図1に示すロータリーキルンのX−X線断面図である。
【図4】図1に示すロータリーキルンのY−Y線断面図である。
【図5】本発明に適用可能な入口側供給管の他の例を説明するための、キルン本体および入口フードの縦断面図である。
【図6】本発明に適用可能な入口側供給管の他の例を説明するための、出口フード側から見たキルン本体の横断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ロータリーキルン
2,32 キルン本体
2a 第一反応室
2b 第二反応室
3 入口フード
4 出口フード
5,35 入口側供給管
6 出口側供給管
7 ローラ
8 排出口
9 仕切板
9a 固定部材
13 歯車
14 外熱炉
15 フィルタ
16 スクレーパ
17a,17b シール手段
18,19 排ガス出口
51 内管
52 外管
53 傾斜羽根
54 分散体
61 噴射口
62 外管
63 内管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に入口フードが設けられるとともに他端に出口フードが設けられたキルン本体と、前記入口フード側から気体状の六フッ化ウランおよび水蒸気を供給する入口側供給管と、前記出口フード側から水素および水蒸気を供給する出口側供給管とを備え、前記出口フードから固体の二酸化ウランを得るロータリーキルンにおいて、
前記キルン本体の内部が、仕切板により第一反応室と第二反応室とに区画され、前記第一反応室と前記第二反応室とは、前記キルン本体の内面と前記仕切板の外縁とで形成される隙間により連通していることを特徴とするロータリーキルン。
【請求項2】
前記仕切板は、前記隙間が前記仕切板の全周にわたって形成されるように、支持部材によって前記キルン本体内に支持されている、請求項1に記載のロータリーキルン。
【請求項3】
一端に入口フードが設けられるとともに他端に出口フードが設けられたキルン本体と、前記入口フード側から気体状の六フッ化ウランおよび水蒸気を供給する入口側供給管と、前記出口フード側から水素および水蒸気を供給する出口側供給管とを備え、前記出口フードから固体の二酸化ウランを得るロータリーキルンにおいて、
前記出口側供給管は、前記水蒸気が供給される内管と前記水素が供給される外管との二重管構造を有し、前記水蒸気は前記内管の先端部から噴射されるとともに、前記水素は前記外管の周面に形成された複数の噴射口から噴射されることを特徴とするロータリーキルン。
【請求項4】
前記噴射口は前記外管の下側に形成されている、請求項3に記載のロータリーキルン。
【請求項5】
前記噴射口は、水素の噴射範囲の中心が、前記キルン本体の回転中心の真下よりも前記キルン本体の回転方向について下流側に位置するように形成されている、請求項4に記載のロータリーキルン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−217266(P2007−217266A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276671(P2006−276671)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【分割の表示】特願2002−186330(P2002−186330)の分割
【原出願日】平成14年6月26日(2002.6.26)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(000222174)東洋エンジニアリング株式会社 (69)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】