説明

二酸化炭素の分離方法および分離装置ならびに洗浄装置

【課題】低エネルギーで不純物から二酸化炭素を分離させることが可能であって、簡単に二酸化炭素の分離速度を高めることが可能な二酸化炭素の分離方法を提供する。
【解決手段】洗浄装置1の分離装置200に用いられる二酸化炭素の分離方法は、不純物が含まれる超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素に遠心力を与えることによって不純物から二酸化炭素を分離することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を不純物から分離する方法と、二酸化炭素を不純物から分離する装置と、二酸化炭素を用いて被洗浄対象物の洗浄を行なう洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄方法としては、水、有機溶剤、酸、アルカリなどの溶媒を利用する湿式洗浄方式があるが、このような湿式洗浄方式に変わって、加圧された液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を溶媒とする洗浄方式が環境配慮型の洗浄方式として普及しつつある。加圧された液体状態または超臨界状態の二酸化炭素は、高精度の洗浄が求められる半導体材料などの電子デバイス部品の洗浄に応用されている。
【0003】
近年では、加圧された液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を用いる洗浄方式は、半導体以外の被洗浄対象物として衣類洗浄にも応用されている。これは、従来の衣類洗浄においては、ドライクリーニング溶剤が洗浄後の被洗浄対象物に残ることによって、健康に悪影響を及ぼすおそれがあるためである。また、洗浄後の廃溶剤によって環境汚染が引き起こされるからである。
【0004】
加圧された液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を用いる洗浄においては、洗浄後に、二酸化炭素を減圧することによって、二酸化炭素を気化させて被洗浄対象物から取り除くことが可能である。そのため、被洗浄対象物に洗浄溶媒が残留する心配がない。また、洗浄後に被洗浄対象物の乾燥を必要としないので、乾燥のためのエネルギーを必要としないなど環境面に対する利点がある。
【0005】
また、洗浄後に減圧して気化させた二酸化炭素は、再加圧することによって洗浄溶媒として再利用することが可能である。このように、二酸化炭素は、有機溶媒等と比較して、簡単に、低エネルギーで再利用が可能であり、環境に対する影響を抑えることができる。また、洗浄後の二酸化炭素を、廃棄せずに溶媒として繰り返し使用することができるので、地球温暖化防止の観点からも利点が大きい。
【0006】
上述のように、加圧された液体二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を溶媒とする洗浄方式は、環境負荷低減に優れた方法であるが、環境負荷の低減のためには、二酸化炭素を回収・再利用することが前提となる。したがって、二酸化炭素の回収の効率を高めることと、回収のための必要エネルギーを抑えることが重要になる。
【0007】
また、洗浄装置としては二酸化炭素を循環させ、被洗浄対象物からの汚れ成分を二酸化炭素から取り除き、常に清浄な二酸化炭素で洗浄を行うことが望ましい。この点から、二酸化炭素の分離回収速度も重要となってくる。
【0008】
二酸化炭素の回収方法は、大きくは以下の2つの方法に分類される。すなわち、ガス吸収法と、気液分離法(蒸留)である。
【0009】
ガス吸収法は、二酸化炭素の溶解度の高いアルカリ吸収液を用い、吸収液に二酸化炭素を溶解させて分離をする方法である。吸収法では、吸収液と二酸化炭素を接触させる操作で簡単に分離が可能である。
【0010】
気液分離法は、加圧された液体状態又は超臨界状態の二酸化炭素を減圧、気化させることにより、低圧下(大気圧下)では液体又は固体で存在する汚れ成分から分離する方法である。気液分離法では、減圧し、二酸化炭素を気化させることで汚れ成分から分離することが可能であり、簡単な手法である。例えば、特開2006−281014号公報(特許文献1)には、気液分離法によって二酸化炭素を汚染物質から分離して、二酸化炭素を循環させる洗浄装置と洗浄方法が記載されている。
【特許文献1】特開2006−281014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ガス吸収法では、吸収液から二酸化炭素を分離するための加熱冷却装置が必要となり、装置が複雑化する。また、二酸化炭素を溶媒として用いる洗浄装置の場合は、使用する二酸化炭素の量が多く、その分必要とする吸収液量も多くなる。このため、装置が大型化するとともに、吸収液から二酸化炭素を分離するための加熱冷却に必要なエネルギーが大きくなってしまう欠点を持つ。
【0012】
また、気液分離法では、二酸化炭素の分離・回収速度を高めるために、減圧・気化される二酸化炭素の物質量を多くした際、気化は大きな体積膨張を伴うため、分離容器内の気相二酸化炭素の流速が速くなり、除去すべき汚れ成分が二酸化炭素に同伴してしまう。汚れ成分の同伴を防ぐためには、装置の大型化が必要となる。また、分離する不純物が高粘性物質や固体である場合、管路を閉塞させる問題も出てくる。
【0013】
そこで、この発明の目的は、低エネルギーで不純物から二酸化炭素を分離させることが可能であって、簡単に二酸化炭素の分離速度を高めることが可能な二酸化炭素の分離方法を提供することである。また、この発明の目的は、装置を大型化することなく、低エネルギーで不純物から二酸化炭素を分離させることが可能であって、二酸化炭素の分離速度を高めることが可能な二酸化炭素の分離装置を提供することである。さらに、この発明の目的は、装置を大型化することなく、低エネルギーで不純物から二酸化炭素を分離させることが可能であって、二酸化炭素の分離速度を高めることが可能な洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に従った二酸化炭素の分離方法は、不純物が含まれる超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素に遠心力を与えることによって不純物から二酸化炭素を分離することを特徴とする。
【0015】
また、この発明に従った二酸化炭素の分離装置は、不純物が含まれる超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素に遠心力を与えることによって不純物から二酸化炭素を分離する遠心分離手段を備える。
【0016】
遠心力を用いて不純物から二酸化炭素を分離することにより、二酸化炭素の流速を分離の駆動力として利用することができる。そのため、二酸化炭素の分離速度を高めた場合であっても、二酸化炭素を分離するための装置を大型化する必要がなくなる。
【0017】
また、遠心力を用いて二酸化炭素を分離することによって、超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素を気体状態にまで減圧する必要がない。二酸化炭素が超臨界または液体状態のままであっても、不純物と二酸化炭素の密度に差があれば、遠心力によって不純物から二酸化炭素を分離することができる。二酸化炭素が超臨界または液体状態のままで不純物から分離されるので、分離した後の二酸化炭素を貯留しておいたり、そのまま再利用したりするときにも、不純物から分離するために二酸化炭素を気化させる工程が不要になるだけでなく、二酸化炭素を再び加圧して液化する工程も不要になる。このように、二酸化炭素を超臨界または加圧された液体状態から気化させ、分離回収後に再度液化させる工程が不要になるので、二酸化炭素の分離において消費されるエネルギーを低減することができる。
【0018】
このようにすることにより、低エネルギーで不純物から二酸化炭素を分離させることが可能であって、簡単に二酸化炭素の分離速度を高めることが可能な二酸化炭素の分離方法と分離装置を提供することができる。
【0019】
この発明に従った洗浄装置は、超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素によって被洗浄対象物を洗浄するための洗浄槽と、洗浄槽において洗浄に用いられた二酸化炭素に遠心力を与えることによって不純物から二酸化炭素を分離するための遠心分離手段と、遠心分離手段において不純物から分離された二酸化炭素を洗浄槽に供給するための流路とを備える。
【0020】
遠心力を用いて不純物から二酸化炭素を分離することにより、二酸化炭素の流速を分離の駆動力として利用することができる。そのため、二酸化炭素の分離速度を高めた場合であっても、洗浄装置を大型化する必要がなくなる。
【0021】
また、遠心力を用いて二酸化炭素の分離を行なうことによって、洗浄に用いられた超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素を気体状態にまで減圧する必要がない。二酸化炭素が超臨界または液体状態のままであっても、不純物と二酸化炭素の密度に差があれば、遠心力によって不純物から二酸化炭素を分離することができる。二酸化炭素が超臨界または液体状態のままで不純物から分離されるので、分離した後の二酸化炭素を貯留しておいたり、そのまま再び洗浄槽に循環させたりするときにも、不純物から分離するために二酸化炭素を気化させる工程が不要になるだけでなく、二酸化炭素を再び加圧して液化する工程も不要になる。このように、二酸化炭素を超臨界または加圧された液体状態から気化させ、分離回収後に再度液化させる工程が不要になるので、洗浄装置において消費されるエネルギーを低減することができる。
【0022】
また、遠心分離手段において不純物から分離された二酸化炭素を、流路を介して洗浄槽に供給することによって、二酸化炭素を洗浄装置の外部に放出せずに、不純物から分離された二酸化炭素を流路内に回収して、繰り返し使用することができる。
【0023】
このようにすることにより、装置を大型化することなく、低エネルギーで不純物から二酸化炭素を分離させることが可能であって、二酸化炭素の分離速度を高めることが可能な洗浄装置を提供することができる。
【0024】
この発明に従った洗浄装置は、遠心分離手段によって不純物から分離された二酸化炭素を液体状態にするための凝縮手段を備えることが好ましい。
【0025】
このようにすることにより、洗浄後に遠心分離手段内において二酸化炭素が気化した場合にも、凝縮手段において二酸化炭素を液化することによって、二酸化炭素を回収することが容易になる。
【0026】
この発明に従った洗浄装置は、凝縮手段において液体状態にされた二酸化炭素を収容するための収容容器を備えることが好ましい。
【0027】
このようにすることにより、洗浄に用いられた二酸化炭素を凝縮した後、収容容器内に収容しておいて、洗浄時に二酸化炭素が必要になれば、収容容器から取出して再利用することができるので、二酸化炭素を外部から洗浄装置に供給する必要がなくなる。
【0028】
この発明に従った洗浄装置は、洗浄槽に向かって二酸化炭素を送出するための送出手段を備えることが好ましい。
【0029】
このようにすることにより、二酸化炭素を洗浄槽に供給する速度を高めることができる。
【0030】
この発明に従った洗浄装置は、遠心分離手段の内部の圧力と温度とを制御するための制御部と、遠心分離手段の内部において二酸化炭素を減圧するための減圧手段と、遠心分離手段の内部において二酸化炭素の温度を調整するための温度調節手段とを備え、制御部は、遠心分離手段の内部における二酸化炭素の密度が所定の密度になるように、減圧手段および/または温度調節手段を制御するように構成されていることが好ましい。
【0031】
このようにすることにより、不純物の密度に応じて、分離される二酸化炭素の密度または相状態を調整することが可能となる。不純物の密度に応じて、分離される二酸化炭素の密度または相状態を調整することによって、遠心分離手段の後段での二酸化炭素液化操作の際に必要なエネルギーを削減することができる。このようにして、洗浄装置全体として低エネルギーで二酸化炭素の分離回収が可能となる。
【0032】
また、このようにすることにより、遠心分離手段内において二酸化炭素の密度を調整することができるので、遠心分離により、固体、液体のいずれの不純物からも二酸化炭素を分離することが可能である。固体、液体のいずれの状態の不純物からも二酸化炭素を遠心力によって分離して、遠心分離手段内に固定化することによって、減圧により析出した固体、液体状態の不純物による遠心分離手段の出口の配管等の閉塞を防ぐことができる。
【0033】
遠心力を用いて不純物から二酸化炭素を分離する場合には、二酸化炭素が減圧される際の体積膨張を、不純物の分離の駆動力とすることができる。遠心分離手段は、二酸化炭素と不純物とを遠心力によって分離するので、二酸化炭素の流速が速ければそれだけ不純物の分離性能が上がる。したがって、二酸化炭素の分離回収速度を高めても、洗浄装置を大型化する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、この発明によれば、低エネルギーで不純物から二酸化炭素を分離させることが可能であって、簡単に二酸化炭素の分離速度を高めることが可能な二酸化炭素の分離方法を提供することができる。また、装置を大型化することなく、低エネルギーで不純物から二酸化炭素を分離させることが可能であって、二酸化炭素の分離速度を高めることが可能な二酸化炭素の分離装置と洗浄装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
図1は、この発明の一つの実施の形態として、洗浄装置の全体を概略的に示す図である。
【0037】
図1に示すように、洗浄装置1は、被洗浄対象物20を収容するための洗浄槽100と、遠心分離手段としてサイクロン(遠心分離装置)201を備える分離装置200と、凝縮手段として凝縮部300と、二酸化炭素10を収容する収容容器として液化二酸化炭素タンク400と、送出手段としてポンプ500と、減圧手段として減圧バルブ600と、温度調節手段として温度調節器700と、制御部とを備える。液化二酸化炭素タンク400には、液化二酸化炭素タンク400の内部の温度を調節するための温度調節器410が配置されている。洗浄槽100、減圧バルブ600、サイクロン201、凝縮部300、液化二酸化炭素タンク400、ポンプ500、洗浄槽100は、順に、流路によって接続されている。温度調節器700は、サイクロン201の外周面上に配置されている。分離装置200は、サイクロン201と温度調節器700と、汚れ成分廃棄流路220と、バルブ221と、バルブ211を有する流路210とから構成されている。
【0038】
洗浄槽100には、被洗浄対象物20として、例えば、衣類などの繊維構造体が収容される。洗浄装置1で洗浄される被洗浄対象物20は、超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素で洗浄されるものであれば、繊維構造体に限られない。洗浄槽100には、温度調節器110が配置される。温度調節器110は、洗浄槽100の内部の温度を調節する。洗浄槽100には、バルブ121を備えた二酸化炭素パージ流路120と、流路130が接続されている。洗浄槽100は、流路130、減圧バルブ600、流路610を介して、サイクロン201と接続されている。
【0039】
サイクロン201の底部には、バルブ221を備えた汚れ成分廃棄流路220が接続されている。また、サイクロン201の上部には、バルブ211を備えた流路210が接続されている。サイクロン201は、流路210を介して凝縮部300と接続されている。
【0040】
凝縮部300は、コンプレッサー310と、冷却器320と、バルブ330と、冷却器出口流路331とを含む。コンプレッサー310は、バルブ211を備える流路210によってサイクロン201と接続されている。コンプレッサー310は、流路311によって冷却器320に接続されている。冷却器320は、バルブ330を有する冷却器出口流路331によって、液化二酸化炭素タンク400に接続されている。
【0041】
液化二酸化炭素タンク400は、バルブ421を備える流路420によってポンプ500に接続されている。ポンプ500は、流路510によって洗浄槽100に接続されている。
【0042】
図2は、洗浄装置のサイクロンの内部とサイクロンの周辺を模式的に示す図である。
【0043】
図2に示すように、サイクロン201は、上部で径が大きく、下部に向かって径が次第に小さくなるように形成されている略円錐形状を有する。サイクロン201の外周面には、温度調節器700が配置されている。減圧バルブ600を有する流路610は、サイクロン201の上部に接続されている。流路610は、流路610を流れる二酸化炭素が円錐形状のサイクロン201の周壁面の接線方向に沿って流れるように、接続されている。流路610からサイクロン201の内部に流入した二酸化炭素は、図中に二点鎖線で示すように、サイクロン201の内部で旋回する旋回流となる。このとき、この旋回流による遠心力と、二酸化炭素と不純物の密度差によって、二酸化炭素と不純物とが分離される。
【0044】
図3は、洗浄装置の制御関連の構成を示すブロック図である。
【0045】
図3に示すように、制御部800は、減圧バルブ600と温度調節器700に制御信号を送信する。制御部800は、サイクロン201(図1、図2)の内部の二酸化炭素の密度が所定の密度になるように、減圧バルブ600と温度調節器700の少なくともいずれか一方を制御する。制御部800から送信された制御信号に基づいて、減圧バルブ600が開閉されると、サイクロン201の内部の圧力が調節される。また、制御部800から送信された制御信号に基づいて温度調節器700が駆動されると、サイクロン201の内部の温度が調節される。
【0046】
以下、図1から図3に基づいて、洗浄装置1の運転について説明する。
【0047】
使用者が、洗浄槽100内に被洗浄対象物20を収容した後、バルブ421が開かれ、ポンプ500が駆動されて、加圧された液体状態の二酸化炭素10が洗浄槽100に供給される。液体状態の二酸化炭素10は、ポンプ500によってさらに加圧されて、超臨界状態の二酸化炭素として洗浄槽100に供給されてもよい。洗浄槽100の内部では、被洗浄対象物20が超臨界または液体状態の二酸化炭素10によって洗浄される。洗浄槽100の内部は、圧力がp1、温度がT1となるように設定されている。圧力p1、温度T1の条件下においては、二酸化炭素10は、液体状態または超臨界状態として存在する。
【0048】
このとき、二酸化炭素パージ流路120のバルブ121は閉じられている。一方、減圧バルブ600は、減圧バルブ600を通過する二酸化炭素10が所定の圧力p2に減圧されるように設定されている。圧力p2は、圧力p1よりも小さい圧力である。サイクロン201とコンプレッサー310とを接続する流路210のバルブ211は開かれている。
【0049】
洗浄に用いられた二酸化炭素10は、被洗浄対象物20から不純物として汚れ成分を取り除く。二酸化炭素10には、不純物が溶解または混合される。不純物を含んだ二酸化炭素10は、洗浄槽100から、減圧バルブ600を通って圧力p2に減圧されて、サイクロン201に供給される。
【0050】
サイクロン201の内部の圧力p2は、洗浄槽100の内部の圧力p2よりも低い圧力に設定されている。そのため、サイクロン201の内部と洗浄槽100の内部との圧力差によって、洗浄槽100からサイクロン201に二酸化炭素10が流入する。二酸化炭素10は、流路610を通って、サイクロン201の周壁面の周方向の接線方向に沿って流れるように、サイクロン201の上部からサイクロン201の内部に流入する。二酸化炭素10は、サイクロン201の内部において、サイクロン201の周壁面の形状に沿って旋回しながら、下方向に向かって流れる。サイクロン201の底部では、二酸化炭素10は、サイクロン201に接続されている流路210内に流入する。流路210内に流入した二酸化炭素10は凝縮部300に向かって流れる。
【0051】
このようにして、サイクロン201において二酸化炭素10の旋回流が発生し、二酸化炭素10と不純物とが遠心分離される。制御部800は、二酸化炭素10の温度がT2になるように温度調節器700を制御する。温度T2は、圧力p2の二酸化炭素10の密度が所定の密度ρになる温度に設定されている。所定の密度ρは、二酸化炭素10から取り除く不純物の密度と異なる密度である。したがって、圧力p2、温度T2の条件下では、二酸化炭素10と不純物の密度に差がある。
【0052】
遠心力による分離を行うためには二酸化炭素と汚れ成分である不純物の密度に差がなければならない。逆に言えば、密度差があれば分離可能である。そのため、遠心力による分離においては、従来の方法のように、汚れ成分を液体または固体の状態で相分離させて析出させるために、二酸化炭素が完全に気化する圧力まで減圧する必要はない。遠心力によって二酸化炭素と不純物とを分離する洗浄装置1では、二酸化炭素と不純物に密度差が生じる圧力、例えば二酸化炭素と汚れ成分が液−液相分離する圧力、液−固相分離する圧力までの減圧に留めても、密度差が生じれば遠心力で不純物と二酸化炭素とを分離ことが可能となる。このようにすることにより、二酸化炭素が液体の状態でも分離回収することが可能となるので、超臨界または液体状態の二酸化炭素を一旦、気体状態にして洗浄に用いて、分離回収後に二酸化炭素を再び気体状態から圧縮、冷却して液化させる必要がなくなり、洗浄装置1の全体として低エネルギーでの回収が可能となる。
【0053】
従来の気液分離法では、気化させる二酸化炭素の物質量を多くすると、その分、気液分離手段内の流速が速くなり、気液分離手段内から出て行く二酸化炭素に汚れ成分が同伴してしまう。そのため、二酸化炭素の分離回収速度を高めるためには気液分離手段の体積増大が必要であった。しかし、洗浄装置1では、二酸化炭素と不純物の分離は遠心力によって行われるため、流速が速くなることは、遠心力が大きくなり分離性能が高まることになり好都合である。したがって、洗浄装置1では、二酸化炭素の物質量が多くなっても、装置体積を大きくすることなく二酸化炭素の分離回収速度を高めることができて、二酸化炭素への汚れ成分の同伴も防ぐことができる。
【0054】
二酸化炭素10から分離された不純物は、サイクロン201の下部に接続されている汚れ成分廃棄流路220に廃棄される。不純物を取り除かれた二酸化炭素10は、図2中に二点鎖線で示すように、サイクロン201の中央部分を通って上方に抜けて、流路210内に流出する。このように、二酸化炭素10から取り除かれた不純物は、分離装置200の汚れ成分廃棄流路220に固定され、流路210内に流出しない。
【0055】
不純物と分離された二酸化炭素10は、バルブ211を備える流路210を通って凝縮部300に流入する。凝縮部300では、まず、コンプレッサー310によって、汚れが分離された清浄な二酸化炭素10が圧力p3まで圧縮される。圧力p3は、冷却器320で冷却可能な温度Tcにおける飽和蒸気圧よりも高い圧力であるように設定される。圧力p3に圧縮された清浄な二酸化炭素10は、次に、冷却器320で温度Tcまで冷却される。冷却された二酸化炭素10は、冷却器出口流路331内で液体になり、液化二酸化炭素タンク400に供給される。液化二酸化炭素タンク400に供給された二酸化炭素10は、ポンプ500によって、洗浄槽100に供給される。二酸化炭素10は、このようなサイクルによって洗浄装置1内を循環する。洗浄装置1は、このサイクルを連続的に運転する。
【0056】
以上のように、洗浄装置1の分離装置200に用いられる二酸化炭素の分離方法は、不純物が含まれる超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素に遠心力を与えることによって不純物から二酸化炭素を分離することを特徴とする。
【0057】
また、二酸化炭素の分離装置200は、不純物が含まれる超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素に遠心力を与えることによって不純物から二酸化炭素を分離するサイクロン201を備える。
【0058】
遠心力を用いて不純物から二酸化炭素を分離することにより、二酸化炭素の流速を分離の駆動力として利用することができる。そのため、二酸化炭素の分離速度を高めた場合であっても、二酸化炭素を分離するためのサイクロン201を大型化する必要がなくなる。
【0059】
また、遠心力を用いて二酸化炭素の分離を行なうことによって、超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素を気体状態にまで減圧する必要がない。二酸化炭素が超臨界または液体状態のままであっても、不純物と二酸化炭素の密度に差があれば、遠心力によって不純物から二酸化炭素を分離することができる。二酸化炭素が超臨界または液体状態のままで不純物から分離されるので、分離した後の二酸化炭素を貯留しておいたり、そのまま再利用したりするときにも、不純物から分離するために二酸化炭素を気化させる工程が不要になるとともに、二酸化炭素を再び加圧して液化する工程も不要になる。このように、二酸化炭素を超臨界または加圧された液体状態から気化させ、分離回収後に再度液化させる工程が不要になるので、二酸化炭素の分離において消費されるエネルギーを低減することができる。
【0060】
このようにすることにより、低エネルギーで不純物から二酸化炭素を分離させることが可能であって、簡単に二酸化炭素の分離速度を高めることが可能な二酸化炭素の分離方法と分離装置200を提供することができる。
【0061】
また、洗浄装置1は、超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素によって被洗浄対象物20を洗浄するための洗浄槽100と、洗浄槽100において洗浄に用いられた二酸化炭素に遠心力を与えることによって不純物を分離するためのサイクロン201と、サイクロン201において不純物から分離された二酸化炭素を洗浄槽100に供給するための流路とを備える。
【0062】
遠心力を用いて不純物から二酸化炭素の分離を行うことにより、二酸化炭素の流速を分離の駆動力として利用することができる。そのため、二酸化炭素の分離速度を高めた場合であっても、洗浄装置1を大型化する必要がなくなる。
【0063】
また、遠心力を用いて二酸化炭素の分離を行なうことによって、洗浄に用いられた超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素を気体状態にまで減圧する必要がない。二酸化炭素が超臨界または液体状態のままであっても、不純物と二酸化炭素の密度に差があれば、遠心力によって不純物から二酸化炭素を分離することができる。二酸化炭素が超臨界または液体状態のままで不純物から分離されるので、分離した後の二酸化炭素を貯留しておいたり、そのまま再び洗浄槽100に循環させたりするときにも、不純物から分離するために二酸化炭素を気化させる工程が不要になるとともに、二酸化炭素を再び加圧して液化する工程も不要になる。このように、二酸化炭素を超臨界または加圧された液体状態から気化させ、分離回収後に再度液化させる工程が不要になるので、洗浄装置1において消費されるエネルギーを低減することができる。
【0064】
また、サイクロン201において不純物から分離された二酸化炭素を、流路を介して洗浄槽100に供給することによって、二酸化炭素を洗浄装置1の外部に放出せずに、不純物から分離された二酸化炭素を流路内に回収して、繰り返し使用することができる。
【0065】
このようにすることにより、装置を大型化することなく、低エネルギーで不純物から二酸化炭素を分離させることが可能であって、二酸化炭素の分離速度を高めることが可能な洗浄装置1を提供することができる。
【0066】
また、洗浄装置1は、サイクロン201によって不純物から分離された二酸化炭素を液体状態にするための凝縮部300を備える。
【0067】
このようにすることにより、洗浄後にサイクロン201内において二酸化炭素が気化した場合にも、凝縮部300において二酸化炭素を液化することによって、二酸化炭素を回収することが容易になる。
【0068】
また、洗浄装置1は、凝縮部300において液体状態にされた二酸化炭素を収容するための液化二酸化炭素タンク400を備える。
【0069】
このようにすることにより、洗浄に用いられた二酸化炭素を凝縮した後、液化二酸化炭素タンク400内に収容しておいて、洗浄時に二酸化炭素が必要になれば、液化二酸化炭素タンク400から取出して再利用することができるので、二酸化炭素を外部から洗浄装置1に供給する必要がなくなる。
【0070】
また、洗浄装置1は、洗浄槽100に向かって二酸化炭素を送出するためのポンプ500を備える。
【0071】
このようにすることにより、二酸化炭素を洗浄槽100に供給する速度を高めることができる。
【0072】
また、洗浄装置1は、サイクロン201の内部の圧力と温度とを制御するための制御部800と、サイクロン201の内部において二酸化炭素を減圧するための減圧バルブ600と、サイクロン201の内部において二酸化炭素の温度を調整するための温度調節器700とを備え、制御部800は、サイクロン201の内部における二酸化炭素の密度が所定の密度になるように、減圧バルブ600および/または温度調節器700を制御するように構成されている。
【0073】
このようにすることにより、不純物の密度に応じて、分離される二酸化炭素の密度または相状態を調整することが可能となる。不純物の密度に応じて、分離される二酸化炭素の密度または相状態を調整することによって、サイクロン201の後段での二酸化炭素液化操作の際に必要なエネルギーを削減することができる。このようにして、洗浄装置1全体として低エネルギーで二酸化炭素の分離回収が可能となる。
【0074】
また、このようにすることにより、サイクロン201内において二酸化炭素の密度を調整することができるので、遠心分離により、固体、液体のいずれの不純物からも二酸化炭素を分離することが可能である。固体、液体のいずれの状態の不純物からも二酸化炭素を遠心力によって分離して、サイクロン201内に固定化することによって、減圧により析出した固体、液体状態の不純物によるサイクロン201の出口の配管等の閉塞を防ぐことができる。
【0075】
遠心力を用いて不純物から二酸化炭素を分離する場合には、二酸化炭素が減圧される際の体積膨張を、不純物の分離の駆動力とすることができる。サイクロン201は、二酸化炭素と不純物とを遠心力によって分離するので、二酸化炭素の流速が速ければそれだけ不純物の分離性能が上がる。したがって、二酸化炭素の分離回収速度を高めても、洗浄装置1を大型化する必要がなくなる。
【0076】
なお、上述のように、溶媒となる二酸化炭素と分離されるべき物質の間に密度の差が有れば、不純物から二酸化炭素を分離することが可能である。この発明に従った洗浄装置1における二酸化炭素の分離方法は、例えば、二酸化炭素の超臨界状態を応用する物質抽出技術の分離工程に使用することが可能である。例えば、大豆からのビタミンE抽出、土中のダイオキシン抽出、高分子中の添加剤抽出を行った後に、この発明の二酸化炭素の分離方法によって、二酸化炭素からビタミンE、ダイオキシン、添加剤を分離するとことができる。特に二酸化炭素の相状態を調節して分離されるべき物質を溶解状態から析出させて行うと分離が効果的になる。
【0077】
図4は、この発明のもう一つの実施の形態として、洗浄装置の全体を概略的に示す図である。
【0078】
図4に示すように、洗浄装置2が図1に示す洗浄装置1と異なる点としては、液化二酸化炭素タンク400は、バルブ421を有する流路420によって洗浄槽100に直接、接続されている。洗浄槽100は、流路130によって、ポンプ500に接続されている。ポンプ500は、流路510によって、減圧バルブ600に接続されている。洗浄装置2のその他の構成は、洗浄装置1と同様である。
【0079】
このように、洗浄装置2においては、ポンプ500が、二酸化炭素の流れにおいて洗浄槽100の下流側に配置されている。このような構成の洗浄装置2であっても、ポンプ500が駆動されると、液化二酸化炭素タンク400から超臨界または液体状態の二酸化炭素10が洗浄槽100内に送出される。
【0080】
洗浄装置2のその他の構成と効果は、洗浄装置1と同様である。
【0081】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明に従った二酸化炭素の分離方法は、二酸化炭素の超臨界状態を応用する物質抽出技術の分離工程に使用することが可能である。例えば、大豆からのビタミンE抽出、土中のダイオキシン抽出、高分子中の添加剤抽出を行った後に、この発明の二酸化炭素の分離方法によって、二酸化炭素からビタミンE、ダイオキシン、添加剤を分離することができる。特に二酸化炭素の相状態を調節して分離されるべき物質を溶解状態から析出させて行うと分離が効果的になる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明の一つの実施の形態として、洗浄装置の全体を概略的に示す図である。
【図2】洗浄装置のサイクロンの内部とサイクロンの周辺を模式的に示す図である。
【図3】洗浄装置の制御関連の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明のもう一つの実施の形態として、洗浄装置の全体を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1,2:洗浄装置10:二酸化炭素、20:被洗浄対象物、100:洗浄槽、200:分離装置、201:サイクロン、300:凝縮部、400:液化二酸化炭素タンク、500:ポンプ、600:減圧バルブ、700:温度調節器、800:制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物が含まれる超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素に遠心力を与えることによって不純物から二酸化炭素を分離することを特徴とする、二酸化炭素の分離方法。
【請求項2】
不純物が含まれる超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素に遠心力を与えることによって不純物から二酸化炭素を分離する遠心分離手段を備える、二酸化炭素の分離装置。
【請求項3】
超臨界または加圧された液体状態の二酸化炭素によって被洗浄対象物を洗浄するための洗浄槽と、
前記洗浄槽において洗浄に用いられた二酸化炭素に遠心力を与えることによって不純物から二酸化炭素を分離するための遠心分離手段と、
前記遠心分離手段において不純物から分離された二酸化炭素を前記洗浄槽に供給するための流路とを備える、洗浄装置。
【請求項4】
前記遠心分離手段によって不純物から分離された二酸化炭素を液体状態にするための凝縮手段を備える、請求項3に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記凝縮手段において液体状態にされた二酸化炭素を収容するための収容容器を備える、請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄槽に向かって二酸化炭素を送出するための送出手段を備える、請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記遠心分離手段の内部の圧力と温度とを制御するための制御部と、
前記遠心分離手段の内部において二酸化炭素を減圧するための減圧手段と、
前記遠心分離手段の内部において二酸化炭素の温度を調整するための温度調節手段とを備え、
前記制御部は、前記遠心分離手段の内部における二酸化炭素の密度が所定の密度になるように、前記減圧手段および/または前記温度調節手段を制御するように構成されている、請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−262016(P2009−262016A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112151(P2008−112151)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】