説明

代謝経路タンパク質をコードするコリネバクテリウム−グルタミカム遺伝子

【課題】さまざまな用途を有する、新規な細菌核酸分子を提供する。
【解決手段】単離された核酸分子、指示されたMP核酸であって、コリネバクテリウム−グルタミカム由来の新規MPタンパク質をフードするものが記載されている。本発明は、アンチセンス核酸分子、MP核酸分子を含む組み換え発現ベクター、および発現ベクターが導入される宿主細胞も提供する。本発明はさらに単離されたMPタンパク質、突然変異させられたMPタンパク質、融合タンパク質、抗原性ペプチド、およびC.グルタミカムからの、この生物のMP遺伝子の遺伝子操作に基づく所望の化合物の製造を改善するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さまざまな用途を有する、新規な細菌核酸分子を提供する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、先に出願された、1999年6月25日に出願された米国仮特許出願第60/141031号、1999年7月2日に出願された米国仮特許出願第60/142101号、1999年8月12日に出願された米国仮特許出願第60/148613号、および2000年3月9日に出願された米国仮特許出願第60/187970号に対する優先権を主張するものである。本出願はまた、先に出願された、1999年7月1日に出願されたドイツ特許出願第19930476.9号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931415.2号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931418.7号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931419.5号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931420.9号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931424.1号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931428.4号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931434.9号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931435.7号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931443.8号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931453.5号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931457.8号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931465.9号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931478.0号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931510.8号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931541.8号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931573.6号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931592.2号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931632.5号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931634.1号、1999年7月8日に出願されたドイツ特許出願第19931636.8号、1999年7月9日に出願されたドイツ特許出願第19932125.6号、1999年7月9日に出願されたドイツ特許出願第19932126.4号、1999年7月9日に出願されたドイツ特許出願第19932130.2号、1999年7月9日に出願されたドイツ特許出願第19932186.8号、1999年7月9日に出願されたドイツ特許出願第19932206.6号、1999年7月9日に出願されたドイツ特許出願第19932227.9号、1999年7月9日に出願されたドイツ特許出願第19932228.7号、1999年7月9日に出願されたドイツ特許出願第19932229.5号、1999年7月9日に出願されたドイツ特許出願第19932230.9号、1999年7月14日に出願されたドイツ特許出願第19932922.2号、1999年7月14日に出願されたドイツ特許出願第19932928.1号1999年7月14日に出願されたドイツ特許出願第19932926.5号、1999年7月14日に出願されたドイツ特許出願第19933004.2号、1999年7月14日に出願されたドイツ特許出願第19933005.0号、1999年7月14日に出願されたドイツ特許出願第19933006.9号、1999年8月14日に出願されたドイツ特許出願第19940764.9号、1999年8月27日に出願されたドイツ特許出願第19940765.7号、1999年8月27日に出願されたドイツ特許出願第19940766.5号、1999年8月27日に出願されたドイツ特許出願第19940832.7号、1999年8月27日に出願されたドイツ特許出願第19941378.9号、1999年8月31日に出願されたドイツ特許出願第19941379.7号、1999年8月31日に出願されたドイツ特許出願第19941380.0号、1999年8月31日に出願されたドイツ特許出願第19941394.0号、1999年8月31日に出願されたドイツ特許出願第19941396.7号、1999年8月31日に出願されたドイツ特許出願第19942077.7号、1999年8月31日に出願されたドイツ特許出願第19942076.9号、1999年9月3日に出願されたドイツ特許出願第19942079.3号、1999年9月3日に出願されたドイツ特許出願第19942086.6号、1999年9月3日に出願されたドイツ特許出願第19942087.4号、1999年9月3日に出願されたドイツ特許出願第19942088.2号、1999年9月3日に出願されたドイツ特許出願第19942095.5号、1999年9月3日に出願されたドイツ特許出願第19942124.2号、1999年9月3日に出願されたドイツ特許出願第19942129.3号に対する優先権を主張するものである。前記出願のすべての全内容はこれにより参考文献として本出願に特に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
細胞における天然発生代謝プロセスの産物および副産物は、食品、食餌、コスメティックスおよび製薬産業を含む、さまざまな系統の産業において有用性を有する。これらの分子は総称して「精製化学製品」と呼ばれており、有機酸、タンパク質新生と非タンパク質新生アミノ酸の両方、ヌクレオチド、ヌクレオシド、脂質、脂肪酸、ジオール、炭水化物、芳香族化合物、ビタミン、コファクター、酵素を含む。これらの産生は、大量の特定の所望される分子を産生し、また分泌するように開発された大規模な細菌の培養培地により非常に簡便に行われる。この目的のための特に有用な生物の1つは、コリネバクテリウム−グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、グラム陽性で、非病原性の細菌である。菌株選択により、さまざまな望ましい化合物を産生する数々の変異菌株が開発されてきた。しかし、特定分子の産生のために改良された菌株を選択することは時間を浪費し、また困難なプロセスである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、さまざまな用途を有する、新規な細菌核酸分子を提供する。これらの用途には、精製化学製品を産生するのに使用することができる微生物の同定、C.グルタミカム(C.glutamicum)あるいは関連細菌における精製化学製品生産の調節、C.グルタミカム ゲノムをマッピングするための基準点として、また、形質転換に関するマーカーとして、C.グルタミカムあるいは関連細菌のタイプ分けならびに同定が含まれる。これらの新規な核酸分子は、本出願では代謝経路(MP)タンパク質と呼ばれているタンパク質をコードする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
C.グルタミカムは、通常はさまざまな精製化学製品の大規模生産また炭化水素の分解(石油のこぼれ屑の中など)、テルペノイドの酸化の用途で工業的に使用されるグラム陽性、好気性細菌である。本発明の代謝経路(MP)核酸分子は、したがって、例えば、発酵プロセスにより、精製化学製品を産生するのに使用することができる微生物を同定するのに使用することができる。本発明の代謝経路核酸発現の調節あるいは本発明のその代謝経路核酸分子の配列の修飾は、微生物から得られる1つあるいはそれ以上の精製化学製品の生産を調節するのに使用することができる(例えば、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種から得られる1つあるいはそれ以上の精製化学製品(ファインケミカル)の収率あるいは生産を改善する)。
【0006】
本発明の代謝経路核酸はまた、コリネバクテリウム−グルタミカムあるいはそれと近しい関係にあるものである生物体を同定し、あるいは、混ざり合っている微生物の集団の中にあるC.グルタミカムあるいはそれと近しい関係にある種の存在を同定するのに使用することが可能である。本発明は数多くのC.グルタミカムの核酸配列を提供する。すなわち、この生物体にユニークなものであるC.グルタミカム 遺伝子の領域にわたるプローブにより、緊縮(ストリンジェント)性条件下で、微生物の単一あるいは混在集団培養培地の抽出ゲノムDNAをプローブすることにより、この微生物が存在しているのかどうかを確かめることができる。コリネバクテリウム−グルタミカム自体は非病原体であるが、コリネバクテリウム−ジフテリア(Corynebacterium diphtheriae)(ジフテリアの原因菌)などのヒトにおいて病原体となる種に関連しており、こうした生物体の検出は臨床上極めて適切なものになる。
【0007】
本発明の代謝経路核酸分子はまた、C.グルタミカムゲノム、関連生物体のゲノムのマッピングの基準点として役に立つ可能性がある。同様に、これらの分子あるいは変異体あるいはそれらの一部分は、遺伝子工学的に作成されたコリネバクテリウムあるいはBrevibacterium種のマーカーとして役に立つ可能性がある。
【0008】
本発明の新規な核酸分子によりコードされる代謝経路タンパク質は、例えば、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル(栄養薬剤)、ヌクレオチド、ヌクレオシド、トレハロースを含むある種の精製化学製品の代謝に関与している酵素工程を実施することができる。Sinskeyらの米国特許第4,649,119号、およびC.グルタミカムあるいはその関連 Brevibacterium種(例えば、lactofermentum)(Yoshihamaら、J. Bacteriol 162: 591−597 (1985); Katsumataら、J. Bacteriol. 159: 306−311(1984); Santamariaら、J. Gen. Microbiol. 130: 2237−246 (1984)) の遺伝子操作に関する技術などに開示されているコリネバクテリウム−グルタミカムに用いられるクローニングベクターの有用性は付与されており、本発明の核酸分子は、この生物体を1つあるいはそれ以上の精製化学製品のより良いあるいはさらに効率的な生産者とするため、この生物体に関する遺伝子工学上利用することが可能である。
【0009】
この精製化学製品の改善された生産あるいはその生産効率は、本発明の遺伝子操作の直接的な効果によるものであり、あるいは、こうした操作の間接的な効果によるものでありうる。すなわち、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ヌクレオチド、トレハロース、に関するC.グルタミカム代謝経路における変更は、この生物体から得られるこれらの所望される1つあるいはそれ以上の化合物の全体的な製造に直接影響を及ぼしうる。例えば、リシン生合成経路タンパク質の活性を最適化すること、あるいはリシンの分解経路タンパク質の活性を減少させることは、こうした遺伝子工学的に操作された生物体から得られるリシンの生産の収率と効率を増加させる結果となりうる。こうした代謝経路に関与しているタンパク質における変更はまた、所望される精製化学製品産生の生産性あるいは効率に間接的な影響を及ぼしうる。例えば、所望される分子の産生に必要とされる中間体と競合する反応が除外され、あるいは所望される化合物に関する特定の中間体の産生に必要とされる経路が最適化されうる。さらに、例えば、アミノ酸、ビタミン、あるいはヌクレオチドの生合成あるいは分解において調節することにより、急速に増殖し、また分化する微生物の総体的な能力は増大しうるものであり、したがって、培養培地の中のその微生物の数および/または産生能力を増加させ、またそれによって、所望される精製化学製品の収率を可能なかぎり増加させうる。
【0010】
本発明の核酸およびタンパク質分子は、コリネバクテリウム−グルタミカムから得られる、1つあるいはそれ以上の所望される精製化学製品の生産あるいは生産効率を直接改善するのに利用しうる。当業者には周知の組換え遺伝子技術を使用して、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロースに関する本発明の1つあるいはそれ以上の生合成あるいは分解酵素は、その機能が調節されるように操作しうる。例えば、生合成酵素は効率上改善され、あるいは、その化合物の産生阻害のフィードバックを防ぐようにそのアロステリック制御領域が破壊されうる。同様に、分解酵素は、その細胞の生存度を損なうことなく、所望される化合物に対するその分解活性を減弱させるように、置換、欠失、あるいは付加により欠失あるいは修飾されうる。それぞれの場合で、所望される精製化学製品の生産の総体的な収率あるいは速度を増加させうる。
【0011】
本発明のタンパク質およびヌクレオチド分子における変更が、間接的なメカニズムによりアミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、トレハロース以外にも、その他の精製化学製品の産生を改善しうる。化合物のうちのいずれか1つの代謝は細胞内の他の生合成および分解経路と必然的に絡み合い、あいは1つの経路にある基質が別のこうした経路により供給されるあるいは制限される可能性がある。したがって、本発明のタンパク質の1つあるいはそれ以上の活性を調節することより、別の精製化学製品生合成あるいは分解経路の活性の産生あるいは効率に影響を及ぼしうる。例えば、アミノ酸は全てのタンパク質の構造ユニットとして役に立ち、その上、タンパク質合成に限定されるレベルで細胞間に存在しうる。したがって、細胞内の1つあるいはそれ以上のアミノ酸の生産性の効率あるいは収率を増加させることにより、生合成あるいは分解タンパク質などのタンパク質は、さらに容易に合成しうる。同様に、特定の副反応が多かれ少なかれ好適なものにあるような代謝経路酵素における変更は、所望される精製化学製品の産生に関する中間体あるいは基質として利用される1つあるいはそれ以上の過剰生産あるいは低生産という結果を生じうる。
【0012】
本発明は、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ヌクレオチド、ヌクレオシドあるいはトレハロースなどの、例えば、細胞の正常機能に重要な分子の代謝に関与している酵素によるステップを実施することができる、本出願では代謝経路(MP)タンパク質と呼ばれているタンパク質をコードする新規な核酸分子を提供する。代謝経路タンパク質をコードする核酸分子は、本出願では代謝経路核酸分子と呼ばれる。1つの好適な実施態様では、その代謝経路タンパク質は、以下のうちの1つあるいはそれ以上の代謝に関連している酵素によるステップを実行する。すなわち、アミノ酸、ビタミン、コファクター、栄養性薬剤、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよびトレハロースである。こうしたタンパク質の実施例には、表1に掲載されている遺伝子によりコードされるものが含まれる。
【0013】
したがって、本発明の1つの態様は、代謝経路コード核酸(例えば、cDNA、DNAあるいはRNA)の検出あるいは増幅に関するプライマーあるいはハイブリダイゼーションプローブとして適当な核酸断片だけではなく、代謝経路タンパク質あるいはその生物学的活性部分をコードするヌクレオチド配列から成る分離核酸分子(例えば、DNAあるいはmRNA)に関する。特に好適な実施態様では、分離核酸分子は、配列表(例えば、配列識別番号:1、配列識別番号:3、配列識別番号:5、配列識別番号:7・・・)にある奇数番号の配列識別番号のものとして説明されているヌクレオチド配列、あるいはこれらヌクレオチド配列のうちの1つのコード領域あるいはその補体の1つから成る。他の特に好適な実施態様では、本発明の分離核酸分子は、配列表(例えば、配列識別番号:1、配列識別番号:3、配列識別番号:5、配列識別番号:7・・・)にある奇数番号の配列識別番号のものとして説明されているヌクレオチド配列にハイブリダイズされている、あるいは少なくとも約50%、好適には少なくとも約60%、さらに好適には、少なくとも約70%、80%あるいは90%、また、その上さらに好適には少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%あるいはそれ以上、相同性であるヌクレオチド配列、あるいはその一部分から成る。他の好適な実施態様では、分離核酸分子は、配列表(例えば、配列識別番号:2、配列識別番号:4、配列識別番号:6、配列識別番号:8・・・)にある偶数番号の配列識別番号のものとして説明されているアミノ酸配列のうちの1つをコードする。本発明の好適な代謝経路はまた、本出願に記載されている代謝経路活性の少なくとも1つを所有していることが好ましい。
【0014】
もう1つの実施態様では、分離核酸分子には、例えば、そのタンパク質あるいはその一部分が1つの代謝経路を維持しているような本発明のアミノ酸配列に十分に相同的である、アミノ酸配列(例えば、配列表の中にある偶数番号の配列識別番号を有する配列)が含まれる。好適には、その核酸分子によりコードされるタンパク質あるいはその一部分が、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路における酵素反応を実行する能力を維持している。1つの実施態様では、核酸分子によりコードされるタンパク質は、少なくとも約50%、好適には少なくとも約60%、またさらに好適には少なくとも約70%、80%あるいは90%、そしてもっとも好適には、少なくとも約95%、96%、97%、98%あるいは99%あるいはそれ以上が本発明の1つのアミノ酸配列(例えば、配列表中にある偶数番号の配列識別番号を有するものから選択される全アミノ酸配列)に相同的なものである。もう1つの好適な実施態様では、タンパク質は、本発明の全アミノ酸配列(配列表(例えば、配列識別番号:1、配列識別番号:3、配列識別番号:5、配列識別番号:7・・・)にある対応する奇数番号の配列識別番号のものに示されているオープン読み枠によりコードされる)に実質的に相同的なものである完全長C.グルタミカムタンパク質である。
【0015】
もう1つの好適な実施態様では、分離核酸分子は、C.グルタミカム から誘導され、また、本発明のアミノ酸配列の1つ(例えば、配列表にある偶数番号の配列識別番号のものの1つの配列)に少なくとも50%あるいはそれ以上相同的である生物学的に活性なドメインを含むタンパク質(例えば、代謝経路融合タンパク質)をコードし、また、アミノ酸、ビタミン、コファクター、栄養性薬剤、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース、あるいは表1に記載されている活性の1つあるいはそれ以上のものに関する代謝経路における反応を触媒することが可能であり、これにはまた異種性ポリペプチド、あるいは制御領域をコードする異種性の核酸配列が含まれる。
【0016】
もうひとつの実施態様では、分離核酸分子は、少なくとも長さ15ヌクレオチドであり、また、緊縮性条件下で本発明のヌクレオチド配列(例えば、配列表にある奇数番号の配列識別番号の配列)から成る核酸分子にハイブリダイズされる。好適には、分離核酸分子は、天然発生核酸分子に相当する。さらに好適には、分離核酸は、天然発生C.グルタミカム代謝経路あるいはその生物学的活性部分をコードする。
【0017】
本発明のもう1つの態様は、ベクター、例えば、本発明の核酸分子を含有する組換え発現ベクターに関し、またこうしたベクターが導入された宿主細胞に関する。1つの実施態様では、こうした宿主細胞は、適当な培地の中の宿主細胞を培養することにより代謝経路タンパク質を産生するのに使用される。その代謝経路タンパク質はその後にその培地あるいはその宿主細胞から分離することができる。
【0018】
本発明のさらにもう1つの態様は、代謝経路遺伝子が導入された、あるいは変更された遺伝子工学的に変更された微生物に関する。1つの実施態様では、微生物のゲノムは、導入遺伝子として野生型あるいは変異代謝経路配列をコードする本発明の核酸分子を導入することにより変更された。もう1つの実施態様では、その微生物のゲノム内にある内在性代謝経路遺伝子が変更され、例えば、変更された代謝経路遺伝子による相同的組換えにより機能的に破壊された。もう1つの実施態様では、微生物中の内在性あるいは導入代謝経路遺伝子が、1つあるいはそれ以上の点変異、欠失、あるいは反転により変更されたが、しかしその上さらに、機能的な代謝経路タンパク質をコードする。さらなるもう1つの実施態様では、代謝経路遺伝子の発現が調節されるように、微生物中にある大使や経路遺伝子の1つあるいはそれ以上の制御領域(例えば、プロモーター、リプレッサーあるいは誘発物質)が変更された(例えば、欠失、切り詰め、反転あるいは点変異)。1つの好適な実施態様では、その微生物はコリネバクテリウム属あるいはBrevibacterium属に属するが、しかし、コリネバクテリウム−グルタミカムが特に好適である。1つの好適な実施態様では、その微生物はまた、アミノ酸などの所望される化合物の産生に利用されるが、リシンが特に好適である。
【0019】
もう1つの態様では、本発明は対象の中のコリネバクテリウム−ジフテリアの存在あるいは活性を同定する方法を提供する。本方法には、1つの対象者中にある本発明の1つあるいはそれ以上の核酸あるいはアミノ酸配列(例えば、配列識別番号:1〜1156として、配列表中に記載されている配列)を検出するステップが含まれ、それによって、その対象中のコリネバクテリウム−ジフテリアの存在あるいは活性を検出する。
【0020】
本発明のさらにもう1つの態様は、分離代謝経路タンパク質あるいはその一部、例えば、その生物学的活性部分に関する。1つの好適な実施態様では、分離代謝経路タンパク質あるいはその一部分は、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシドあるいはトレハロースの代謝に関する1つあるいはそれ以上の経路に関与している酵素反応を触媒することができる。
【0021】
本発明はまた、代謝経路の分離作成を提供する。好適な実施態様では、代謝経路タンパク質は、本発明のアミノ酸配列(例えば、配列表中にある偶数番号の配列識別番号の配列)から成る。もう1つの好適な実施態様では、本発明は、本発明の全アミノ酸配列(例えば、配列表中にある偶数番号の配列識別番号の配列)(配列表の対応する奇数番号の配列識別番号に記載されているオープン読み枠によりコードされる)に実質的に相同的である分離完全長タンパク質に関する。さらにもう1つの実施態様では、そのタンパク質は、少なくとも約50%、好適には少なくとも約60%、またさらに好適には少なくとも約70%、80%あるいは90%、そしてもっとも好適には、少なくとも約95%、96%、97%、98%あるいは99%あるいはそれ以上が本発明の1つの全アミノ酸配列(例えば、配列表中にある偶数番号の配列識別番号の配列)に相同的なものである。他の実施態様では、分離代謝経路タンパク質は、本発明のアミノ酸配列(配列表中にある偶数番号の配列識別番号の配列)の1つの少なくとも約50%あるいはそれ以上相同的なものであるアミノ酸配列から成り、また、アミノ酸、ビタミン、コファクター、栄養性薬剤、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路における酵素反応を触媒することができ、あるいは表1に掲載されている1つあるいはそれ以上の活性を有する。
【0022】
代替的には、分離代謝経路タンパク質は、ハイブリダイズ、例えば、緊縮性条件下でハイブリダイズされるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列から成ることができ、あるいはそのタンパク質は、少なくとも約50%、好適くには少なくとも約60%、またさらに好適には少なくとも約70%、80%あるいは90%、そしてもっとも好適には、少なくとも約95%、96%、97%、98%あるいは99%あるいはそれ以上が配列表中に記載されている偶数番号の配列識別番号のうちの1つのヌクレオチド配列に相同的なものである。代謝経路タンパク質の好適な形態が本出願に記載されている代謝経路生物活性の1つあるいはそれ以上を有することもまた好適である。
【0023】
代謝経路ペプチドあるいはその生物学的活性部分は、融合タンパク質を形成するために、非代謝経路ペプチドに操作可能にリンクすることができる。好適な実施態様では、この融合タンパク質は代謝経路タンパク質のみの活性とは異なる活性を有する。他の好適な実施態様では、この融合タンパク質は、アミノ酸、ビタミン、コファクター、栄養性薬剤の代謝に関するC.グルタミカム経路の中に導入されると、C.グルタミカムから得られる所望される精製化学製品の生産の収率および/または効率を増加させる結果を生じる。特に好適な実施態様では、この融合タンパク質を、宿主細胞のアミノ酸、ビタミン、コファクター、栄養性薬剤、ヌクレオチド、ヌクレオシドあるいはトレハロース代謝経路の中に組み込むことにより、その細胞から得られる所望される化合物の生産が調節される。
【0024】
もう1つの態様では、本発明は、タンパク質自体あるいは基質あるいはその代謝経路タンパク質の結合パートナーと相互作用によってか、あるいは本発明の代謝核酸分子の転写あるいは翻訳を調節することよってかのいずれかにより、代謝経路タンパク質の活性を調節する分子をスクリーニングするための諸方法を提供する。
【0025】
本発明のもう1つの態様は、精製化学製品を生産するための方法に関する。本方法には、精製化学製品が生産されるように、本発明の代謝経路核酸分子の発現を指示するベクターを含む細胞を培養するステップが含まれる。1つの好適な実施態様では、本方法にはさらに、細胞が、代謝経路核酸の発現を指示するベクターによりトランスフェクションされる、そうしたベクターを含む細胞を得るステップが含まれる。もう1つの好適な実施態様では、本方法にはさらに、その培養培地から得られる精製化学製品を回収するステップが含まれる。1つの特に好適な実施態様では、その細胞は、コリネバクテリウム属あるいは Brevibacterium属から得られ、あるいは表3に掲載されている菌株のものから選択される。
【0026】
本発明のもう1つの態様は、微生物から得られる分子の生産を調節するための諸方法に関する。こうした諸方法には、薬剤が存在しない場合には、この同じ活性に関連して、細胞関連活性が変更されるように、代謝経路タンパク質活性あるいは代謝経路核酸発現を調節する薬剤とその細胞を接触されるステップが含まれる。1つの好適な実施態様では、その細胞は、この微生物により得られる所望される精製化学製品の生産の収率あるいは速度が改善されるように、1つあるいはそれ以上のC.グルタミカムアミノ酸、ビタミン、コファクター、栄養性薬剤、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路に関して調節される。代謝経路タンパク質活性を調節する薬剤は、代謝タンパク質活性あるいは代謝経路核酸発現を刺激する薬剤でありうる。代謝経路タンパク質活性あるいは代謝経路核酸発現を刺激する薬剤の実施例には、細胞の中に導入された小さな分子、活性代謝経路タンパク質、および代謝経路タンパク質をコードする核酸が含まれる。代謝経路活性あるいは発現を阻害する薬剤の実施例には、小さな分子、およびアンチセンス代謝経路核酸分子が含まれる。
【0027】
本発明のもう1つの態様は、別のプラスミド上で保持されているか、あるいは宿主細胞のゲノムの中に組み込まれているかのいずれかである細胞の中に野生型あるいは変異体代謝経路遺伝子を導入することを含めて、細胞から得られる所望される化合物の収率を調節するための諸方法に関する。そのゲノムの中に組み込まれると、こうした組み込みは無作為的なものとなりうる、あるいは、調節される細胞から得られる所望化合物の生産を生じる導入コピーにより在来遺伝子が置換されるように、相同的組換えによりそれを生じさせることができる。1つの好適な実施態様では、前記収率は増加する。もう1つの好適な実施態様では、前記ケミカルは精製化学製品である。1つの特に好適な実施態様では、前記精製化学製品はアミノ酸である。特に好適な実施態様では、前記アミノ酸はL−リシンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびトレハロースを含む、コリネバクテリウム−グルタミカム中のある種の精製化学製品の代謝に関与している代謝経路核酸およびタンパク質分子を提供する。本発明の分子は、直接的に(例えば、その場合はリシン生合成タンパク質活性の調節はその生物体から得られるリシンの生産あるいは生産効率に直接影響を与える)か、あるいは所望化合物の収率あるいは生産効率の増加という結果をやはり生じる間接的な影響を有する可能性があるもの(例えば、その場合には、ヌクレオチド生合成タンパク質の活性の調節は、おそらく、必要なコファクター、エネルギー化合物、あるいは前駆体分子の改善された増殖あるいは増加供給のために、その細菌から得られる有機酸あるいは脂肪酸の生産に影響を及ぼす)かのいずれかで、C.グルタミカムなどの微生物から得られる精製化学製品の生産を調節する際に利用しうる。本発明の諸態様がさらに以下に詳細に説明される。
【0029】
I.精製化学製品
「精製化学製品(ファインケミカル)」という用語は認知されている技術であって、製薬、農業、コスメティックス産業などの、これらに限定されるわけではないが、さまざまな産業において適用されている生物体により産生される分子を含む。こうした化合物には、酒石酸、イタコン酸、ジアミノピメリン酸、タンパク質新生と非タンパク質新生アミノ酸の両方などの有機酸、プリンおよびピリミジン塩基、ヌクレオシドおよびヌクレオチド(例えば、Rehmら編『バイオテクノロジー(Biotechnology)』第6巻、Kuninaka, A.の執筆部分「ヌクレオチドと関連化合物(Nucleotides and related compounds)」、p. 561−612(1996)、VCH:Weinheim刊に説明されており、参考文献もそこに含まれる)、脂質、飽和および不飽和脂肪酸(例えば、アラキドン酸)、ジオール(例えば、プロパンジオールおよびブタンジオール)、炭水化物(例えば、ヒアルロン酸およびトレハロース)、芳香族化合物(例えば、芳香族アミン類、バニリンおよびインジゴ)、ビタミンおよびコファクター(『ウルマンの工業化学エンサイクロペディア(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)』、第A27巻、「ビタミン」p.443−613 (1996)VCH:Weinheim刊、参考文献もそれに;マレーシアにおけるユネスコ/科学と技術協会の合同会議議事録(Proceedings of the UNESCO/ Confederation of Scientific and Technological Associations in Malaysia,)の中のOng, A. S. Niki, E. とPacker, L. の講演執筆部分(1995)「栄養、脂質、健康および疾患(”Nutrition, Lipids, Health, and Disease”)」と、『遊離基研究会−アジア(Society for Free Radical Research−Asia)』、1994年9月1−3日マレーシア、ペナンで開催、AOCS Press 刊(1955))、酵素、ポリペプチド(Caneら、(1998)Science282:63−68)、その他のケミカル(Gutch (1983) 『ケミカル(Chemicals)』、Fementation, Noyes Data Corporation刊, ISBN: 0818805086、参考文献はそこに入っている、に説明されている)が含まれる。
【0030】
A.アミノ酸代謝および使用
アミノ酸は、全てのタンパク質の塩基構造ユニットから成り、また、そうしたものが、全ての生体における正常細胞機能には必須のものである。「アミノ酸」という用語は認知されている技術である。20種あるタンパク質新生アミノ酸は、それらアミノ酸がペプチド結合によりリンクされているタンパク質に関する構造ユニットとして役立っており、一方、非タンパク質新生アミノ酸(数百が知られている)はタンパク質では通常みつからない(『ウルマンの工業化学エンサイクロペディア(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)』、第A2巻、p.57−97 (1985)VCH:Weinheim刊、参照)。アミノ酸は、D−あるいはL−光学的立体配置であるが、L−アミノ酸は一般的には天然発生タンパク質に見出される唯一のタイプである。20のタンパク質新生アミノ酸の生合成および分解経路は、原核および真核細胞の両方でうまく特徴付けられてきた(例えば、Stryer, L. 『生化学(Biochemistry)』、第3版、578−590(1988)を参照)。一般的には、それら生合成の複雑性のために栄養的な必要条件であるためにそのように命名されている「必須」アミノ酸(ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファンおよびバリン)は、簡単な生合成経路により容易に残りの11の「非必須」アミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グリシン、プロリン、セリンおよびチロシン)に変換される。高等動物は、これらアミノ酸のいくつかを合成する能力を保持しているが、しかし、必須アミノ酸は通常のタンパク質合成を起こすためには、食事から供給しなければならない。
【0031】
タンパク質生合成における機能から離れては、これらアミノ酸はそれ自体の能力により興味深いケミカルになっており、また多くは、食物、食餌、化学、コスメティックス、農業ならびに製薬産業においてさまざまな適用を有しているのが見られた。リシンはヒトに関する栄養においてだけではなく、家禽とブタなどの単胃の動物の栄養においても重要なアミノ酸である。グルタミン酸塩は、香料添加物としてもっとも通常使用されているものであり(グルタミン酸一ナトリウム、MSG)、アスパラギン酸塩、フェニルアラニン、グリシンおよびシステインのように、食品産業ではどこでも広範に使用されている。グリシン、L−メチオニンおよびトリプトファンは全て製薬産業で利用されている。グリタミン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、アルギニン、プロリン、セリンおよびアラニンは、製薬ならびにコスメティック産業の両方で使用される。スレオニン、トリプトファンおよびD/L−メチオニンは通常の食餌添加物である(Rehmら編『バイオテクノロジー(Biotechnology)』第6巻、第14a章. Leuchtenberger, W. の執筆部分(1996)「アミノ酸−技術的生産と用途(Amino acids−technical production and use)」、, p. 466−502、VCH: Weinheim刊)。さらに、これらアミノ酸は、『ウルマンの工業化学エンサイクロペディア(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)』、第A2巻、p.57−97 (1985)VCH: Weinheim刊に記載されているN−アセチルシステイン、S−カルボキシメチル−L−システイン、(S)−5−ヒドロキシトリプトファン、その他などの合成アミノ酸とタンパク質の合成のための前駆体として有用であることが見つかっている。
【0032】
細菌などの、それらを産生することができる生物におけるこれら天然アミノ酸の生合成はうまく特徴付けられてきた(細菌アミノ酸生合成とその制御の総説に関しては、Umbarger, H. E. (1978) Ann. Rev. Biochem. 47: 533−606参照)。グルタミン酸塩は、クエン酸回路における中間体であるα−ケトグルタル酸塩の還元アミノ酸化により合成される。グルタミン、プロリンおよびアルギニンはそれぞれその後にグルタミン酸塩から産生される。セリンの生合成は、3−ホスホグリセリン酸(糖分解における中間体)で始まる3つのステッププロセスであり、また、酸化、アミノ基転移および加水分解ステップの後にこのアミノ酸に結果的になる。システインとグリシンは、セリンから産生される。つまり、前者はセリンによるホモシステインの濃縮により、また後者はセリントランスヒドロキシメチラーゼにより触媒される反応におけるテトラヒドロ葉酸塩への側鎖β炭素原子の転移による。フェニルアラニンおよびチロシンは、プレフェニル酸の合成後最終的な2つのステップでのみ異なる9つのステップの生合成経路における糖分解およびペントースリン酸経路前駆体エリトロース4−リン酸塩およびホスホエノールビルビン酸塩から合成される。 トリプトファンはまた、これら2つの初めの分子から産生されるが、しかし、その合成は11ステップ経路である。チロシンはまた、フェニルアラニンヒドロキシラーゼによる触媒化反応の中でフェニルアラニンから合成されうる。アラニン、バリンおよびロイシンは全てピルビン酸塩の生合成産物であり、糖分解の最終産物である。アスパラギン酸は、クエン酸回路の中間体であるオキザロ酢酸から形成される。アスパラギン、メチオニン、スレオニンおよびリシンはそれぞれ、アスパラギン酸塩の変換により産生される。イソロイシンは、スレオニンから形成される。複雑な9つのステップ経路は、活性化された糖である5−ホスホリボシル−1−ピロリン酸塩からヒスチジンの産生という結果になる。
【0033】
アミノ酸はその細胞のタンパク質合成要求過剰では蓄えることはできず、その細胞の主要な代謝経路の中間体を提供するために代わりに分解される(総説についてはStryer, L. 『生化学(Biochemistry)』、 第3版、第21章、「アミノ酸分解と尿素回路(Amino Acid Degradation and the Urea Cycle)」p. 495−516(1988)参照)。細胞は要求されていないアミノ酸を有用な代謝中間体に変換することができるが、アミノ酸産生は、それらを合成するのに必要とされるエネルギー、前駆体分子および酵素の面からコスト高である。したがって、特定のアミノ酸の存在が、それ自体の産生を遅くするあるいはまったく停止するのに役立つ、フィードバック阻害により制御されることは驚くに当たらない(アミノ酸生合成経路におけるフィードバックメカニズムに関する総説については、Stryer, L. 『生化学(Biochemistry)』、第3版、第24章、「アミノ酸分解と尿素回路(Biosynthesis of Amino Acid and Heme)」p. 575−600(1988)参照))。したがって、いずれかの特定のアミノ酸の産出は細胞の中に存在するアミノ酸の量により制限される。
【0034】
B.ビタミン、補因子、栄養補給物質代謝および使用
ビタミン、コファクターおよびニュートラシューティカルは、細菌などのほかの生物により容易に合成されるが、高等動物は合成する能力を喪失し、また、そのために摂取しなければならない、もう1つの分子のグループから成る。 これら分子は、生物活性物質それ自体か、あるいは、さまざまな代謝経路における電子キャリアあるいは中間体として役に立つ可能性がある生物学的活性物質の前駆体かのいずれかである。その栄養的価値とは別に、それら化合物はまた、着色剤、抗酸化剤および触媒あいるはその他の処理補助剤としての顕著な産業上の価値を有する(これら化合物の構造、活性、および工業上の適用に関する総説については、ウルマンの工業化学エンサイクロペディア(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry))、「ビタミン」第A27巻、p.443−613 (1996)VCH: Weinheim刊、参照)。「ビタミン」という用語は当業者には認知されているものであり、正常機能のために生物により要求される栄養素を含むが、しかし、その生物はそれ自体では合成することができない。ビタミンのグループはコファクターおよびニュートラシューティカル化合物を包含している。「コファクター」という用語には、正常な酵素活性を生じるのに必要とするタンパク質の化合物が含まれる。こうした化合物は有機あるいは無機でありうる。本発明のコファクター分子は好適には有機である。「ニュートラシューティカル(医薬・健康食品)」という用語には、植物および動物、特にヒトにおいて健康上の恩恵を有する食品サプルメントが含まれる。こうした分子の実施例には、ビタミン、抗酸化剤、またある種の脂質(例えば、多価不飽和脂肪酸)がある。
【0035】
細菌などの、それらを産生することができる生物体におけるこうした分子の生合成はよく特徴付けられているコファクター(『ウルマンの工業化学エンサイクロペディア(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)』、第A27巻、「ビタミン」p.443−613 (1996)VCH: Weinheim刊、参考文献もそれに;Michal, G. (1999), 『生化学経路−生化学および分子生物学図録(Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology)』, John Wiley & Sons刊; マレーシアにおけるユネスコ/科学と技術協会の合同会議議事録(Proceedings of the UNESCO/ Confederation of Scientific and Technological Associations in Malaysia)の中のOng, A. S. Niki, E. とPacker, L. の講演執筆部分(1995)「栄養、脂質、健康および疾患(“Nutrition, Lipids, Health, and Disease”)」と、『遊離基研究会−アジア(Society for Free Radical Research−Asia)』、1994年9月1−3日マレーシア、ペナンで開催、AOCS Press 刊(1955):イリノイ州シャンペーン市、X 374S)。
【0036】
チアミン(ビタミンB1)は、ピリミジンとチアゾール部分の化学的結合により産生される。リボフラビン(ビタミンB2)は、グアノシン−5’−三リン酸塩(GTP)とリボース−5’−リン酸塩から合成される。リボフラビンは、順番に、フラビンモノヌクレオチド(FMN)とフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の合成に用いられる。「ビタミンB6」と総称的に名前を付けられた化合物のファミリー(例えば、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサ−5’−リン酸、および商業的に使用されている塩酸ピリドキシン)は、全て、通常の構造ユニットである5−ヒドロキシ−6−メチルピリジンの誘導体である。パントテン酸塩(パントテン酸、(R)−(+)−N−(2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチル−1−オキソブチル)−β−アラニン)は、化学的合成によるか、あるいは発酵によるかのいずれかにより産生することができる。パントテン酸塩生合成の最終ステップはβ−アラニンとパントイン酸のATP−駆動濃縮から成る。パントイン酸への変化、β−アラニンへの変換に関する、また、パントテン酸への濃縮に関する生合成ステップを司る酵素は公知のものである。パントテン酸塩の代謝的に活性な形態はコエンザイムAであり、それに関する生合成は5つの酵素ステップで進行する。パントテン酸、ピリドキサル−5’−リン酸塩、システインおよびATPはコエンザイムAの前駆体である。これら酵素はパントテン酸塩の形成を触媒するだけではなく、(R)−パントイン酸、(R)−パントラクトン、(R)−パンテノール(プロビタミンB5)、パンテテイン(およびその誘導体)およびコエンザイムの産生をも触媒する。
【0037】
微生物の中の前駆体分子ピメロイル−CoAからのビオチン生合成は詳細に研究されており、また関わっている遺伝子のいくつかが同定されている。対応するタンパク質の多くがFeクラスター合成にも関与していることがみつかっており、また、タンパク質のnifSクラスのメンバーである。リポ酸はオクタン酸から誘導され、また、それがピルビン酸塩デヒドロゲナーゼ複合体の一部およびα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体となるエネルギー代謝におけるコエンザイムとして役に立つ。葉酸塩は全て葉酸の誘導体である物質のグループであり、順にL−グルタミン酸、p−アミノ−安息香酸および6−メチルプテリンから誘導される。代謝中間体グアノシン−5’−三リン酸塩(GTP)、L−グルタミン酸、p−アミノ−安息香酸から始まる葉酸とその誘導体の生合成はある種の微生物において詳細に研究されている。
【0038】
コリノイド(コバラミンと特定のビタミンB12など)とポルフィリンは、テトラピロール環系により特徴付けられるケミカルのグループに属する。ビタミンB12の生合成は非常に複雑であるため、まだ完全には特徴付けられているわけではないが、しかし、関わっている酵素と基質の多くは今では公知のものである。ニコチン酸(ニコチン酸塩)とニコチン酸アミドは、「ナイアシン」とも呼ばれるピリジン誘導体である。ナイアシンは、重要なコエンザイムNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)とNADP(リン酸ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の前駆体であり、またそれらの還元形態である。
【0039】
リボフラビン、ビタミンB6、パントテン酸塩、およびビオチンなどの微生物の大規模培養により生産されてはきたが、これら化合物の大規模生産は、細胞を用いない化学的合成に大きく依存してきた。ビタミンB12だけは、その合成が複雑であるため、発酵のみで生産される。In vitroによる諸方法は材料および時間を著しい量、投入することが必要となり、多くの場合は非常にコストが高くなる。
【0040】
C.プリン、ピリミジン、ヌクレオシド、およびヌクレオチド代謝およびその使用
プリンとピリミジン代謝遺伝子とその対応タンパク質は、腫瘍疾患とウイルス感染の治療にとっては重要な標的である。「プリン」あるいは「ピリミジン」という用語には、核酸、コエンザイム、ヌクレオチドの構成成分である窒素を含む塩基が包含される。「ヌクレオチド」という用語には、窒素を含む塩基、ペントース糖(RNAの場合は、その糖はリボースであり、DNAの場合は、その糖はD−デオキシリボース)、リン酸から成る核酸分子の塩基構造ユニットが包含される。「ヌクレオシド」という用語には、ヌクレオチドに対する前駆体として役に立つ分子が包含されているが、ヌクレオチドが所有しているリン酸部分を欠いている。こうした分子の生合成、あるいは核酸分子を形成するためにそれらを動員することを阻害することにより、RNAならびにDNA合成を阻害することは可能である。すなわち、癌性細胞に対して標的化するやり方でその活性を阻害することにより、分化および複製する腫瘍細胞の能力は阻害しうる。さらに、核酸分子を形成しないヌクレオチドがあるが、そうしたヌクレオチドはエネルギー貯蔵(例えば、AMP)あるいはコエンザイム (例えば、FADやNAD) として役に立つ。
【0041】
いくつか公表されているものに、プリンおよび/またはピリミジン代謝に影響を与えることにより、これら医学上の適用症のためのケミカルの用途が説明されている(例えば、Christopherson, R. I. Lyons, S. D. (1990) 「化学療法薬剤としての新規ピリミジンおよびプリン合成の強力な阻害剤」“Potent inhibitors of de novo pyrimidine and purine biosynthesis as chemotherapeutic agents.” Med. Res. Reviews 10: 505−548)。プリンとピリミジン代謝に関与する酵素に関する研究では、例えば、免疫抑制剤あるいは抗増殖剤として使用できるような新しい薬剤の開発に焦点が当てられてきた(Smith, J. L.(1995) “Enzymes in nucleotide synthesis”, (1995) Biochem Soc. Transact. 23: 877−902)。しかし、プリンとピリミジン塩基、ヌクレオシドとヌクレオチドは他の有用性を有する。すなわち、いくつかの精製化学製品の生合成の中間体として(例えば、チアミン、S−アデノシル−メチオニン、葉酸塩、あるいはリボフラビン)、細胞に対するエネルギーキャリアーとして(例えば、ATPあるいはGTP)、また通常は香料の促進剤(例えば、IMPあるいはGMP)として使用されるケミカル自体の用途、あるいはいくつかの医療適用(例えば、Rehmら編『バイオテクノロジー(Biotechnology)』 第6巻の中のKuninaka, A 執筆部分(1996) 「ヌクレオチドと関連化合物(Nucleotides and Related Compounds)」、VCH:Weinheim, p. 561−612参照)の有用性を有している。また、プリン、ピリミジン、ヌクレオシド、あるいはヌクレオチド代謝に関与する酵素は殺真菌剤、除草剤、殺虫剤を含む、作物保護のためのケミカルが開発されるその標的として次第に役に立ってきている。
【0042】
細菌におけるこれら化合物の代謝は特徴付けが行われてきた(総説については、例えば、『核酸研究と分子生物学(“Progress in Nucleic Acid Research and Molecular Biology”)』第42巻、Academic Press刊の中のp. 259−287、Zalkin, H. とDixon, J. E. 執筆部分(1992)「新規プリンヌクレオチド生合成“de novo purine nucleotide biosyntesis”;『生化学経路−生化学と分子生物学の図録(“Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology”)』、Wiley、ニューヨークの中の第8章Michal,G.執筆部分(1999)「ヌクレオチドとヌクレオシド(“Nucleotides an Nucleosides”)」。プリン代謝は、集中的な研究の対象となってきたが、細胞の正常機能には必須のものである。高等動物のプリン代謝障害は、通風などの重篤な疾患の原因となりうるものである。プリンヌクレオチドは、中間体化合物イノシン−5’−リン酸(IMP)による連続しているステップにおいて、それからヌクレオチドとして使用される三リン酸塩形態が容易に形成される、グアノシン−5’−一リン酸塩(GMP)あるいはアデノシン−5’−一リン酸塩(AMP)の生産という結果を生じる、リボース−5−リン酸塩から合成される。これら化合物はまた、エネルギー貯蔵としても利用されており、そのため、それらの分解は、細胞内の数多くの異なる生化学プロセスのためのエネルギーを供給する。ピリミジン生合成はリボース−5−リン酸塩からウリジン−5’−一リン酸塩(UMP)の形成により進む。UMPは次々にシチジン−5’−三リン酸塩(CTP)に変換される。これらヌクレオチドの全てのデオキシ−形態は、ヌクレオチドの二リン酸塩リボース形態から、ヌクレオチドの二リン酸塩デオキシリボース形態への1つのステップの還元反応で産生される。リン酸化に際しては、これら分子はDNA合成に参加することができる。
【0043】
D.トレハロース代謝およびその使用
トレハロースは、α、α−1、1連鎖で結合される2つのグルコース分子から成る。食品産業では、甘味料、乾燥凍結食品用および飲料用添加剤として、通常は使用されている。しかし、これは製薬、コスメティックスおよびバイオテクノロジー産業においても適用されている(例えば、Nishimotoら(1998)米国特許第5,759,610号;Singer, M. A. とLindquist, S. (1998) Trends Biotech. 16: 460−467; Paiva, C. L. A. とPanek, A. D. (1996) Biotech. Ann. Rev. 2: 293−314; Shiosaka, M. (1997) J. Japan 172: 97−102参照)。トレハロースは数多くの微生物から酵素により産生され、自然にその周囲の培地の中に放出され、それから、当業者には公知の諸方法を使用して回収することができる。
【0044】
II. 本発明の諸要素と諸方法
本発明は、1つあるいはそれ以上の細胞代謝経路において役割を果す、あるいは機能する、本出願においては、代謝経路核酸およびタンパク質分子と呼ばれている新規の分子の発見を少なくとも部分的に基づくものである。1つの実施態様では、代謝経路分子は、1つあるいはそれ以上のアミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路を含む酵素反応を触媒する。1つの好適な実施態様では、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロースの1つあるいはそれ以上のC.グルタミカム代謝経路における本発明の代謝経路分子の活性は、この生物による所望される精製化学製品の産生に影響を及ぼす。1つの特に好適な実施態様では、本発明の代謝経路分子は、本発明の代謝経路タンパク質が慣用しているC.グルタミカム代謝経路は、C.グルタミカム により所望される精製化学製品の生産あるいは生産の効率を直接的か、間接的にかのいずれかで調節する、効率あるいは産出量において調節されるように、活性が調節される。
【0045】
「代謝経路タンパク質」あるいは「代謝経路ポリペプチド」という用語には、1つあるいはそれ以上のアミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路において、例えば、酵素反応を触媒するといった役割を果しているタンパク質が含まれる。代謝経路タンパク質の実施例には、表1に掲載されている代謝経路遺伝子によりコードされるそうしたものと、奇数番号の配列識別番号によってコードされているものが含まれる。「代謝経路遺伝子」あるいは「代謝経路核酸配列」という用語には、コード領域とまた対応する非翻訳5’および3’配列領域から成る、代謝経路タンパク質をコードする核酸配列が含まれる。代謝経路遺伝子の実施例には、表1に掲載されているそうしたものが含まれる。「生産」あるいは「生産性」という用語は当業者には認知されているものであり、また、これには、任意の時間および任意の発酵容量内に形成される発酵産物(例えば、所望される精製化学製品)の濃度が含まれる(例えば、kg産物/時間/リットル)。「生産の効率」という用語には、達成される生産の特定のレベルに必要とされる時間が含まれる(例えば、精製化学製品の産出量の特定速度を得るのに細胞はどのくらい時間がかかるのかである)。「収量」あるいは「産物/炭素収率」という用語は当業者には認知されているものであり、また、その産物(すなわち、精製化学製品)の中に炭素資源を変換して入れるその効率のことである。これは一般的には、例えば、kg産物/kg炭素資源と表記される。その化合物の収率あるいは生産を増加させることにより、回収された分子の量、あるいは任意の時間量にわたって培養培地の任意の量におけるその化合物の有効に回収された分子の量は増加する。「生合成」あるいは「生合成経路」というという用語は当業者には認知されているものであり、また、複数ステップおよび高度に制御されたプロセスであるものの中にある中間体化合物から得られる1つの細胞による、好適には有機化合物である、その化合物の合成が含まれる。「分解」あるいは「分解経路」は当業者には認知されているものであり、また、これには、複数ステップおよび高度に制御されたプロセスであるものの中にあって分解産物(一般的に言うと、小さなあるいはより複雑ではない複合体)になる1つの細胞による、好適には有機化合物であるが、その化合物の分解が含まれる。「代謝」という用語は当業者には認知されているものであり、またこれには1つの生物に起こる生化学反応全体が含まれる。特定の化合物の代謝(例えば、グリシンなどのアミノ酸の代謝)はその後、この化合物に関連している細胞の全体的な生合成、修飾、および分解経路から成る。
【0046】
もう1つの実施態様では、本発明の代謝経路分子は、C.グルタミカムなどの生物体の中で、精製化学製品などの所望される分子の生産を調節することができる。組換え遺伝子技術を使用して、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロースに関する本発明の1つあるいは以上の生合成酵素あるいは分解酵素は、その機能が調節されるように操作される。例えば、その化合物の生産のフィードバック阻害を防ぐように、生合成酵素はその効率を改善され、そのアロステリック制御領域は破壊されうる。同様に、分解酵素は、その分解活性が、細胞の生存度を障害することなく所望される化合物に対して減少させるように、置換、欠失、あるいは付加により欠失あるいは修飾されうる。それぞれの場合では、これら所望される精製化学製品の1つの総体的な収率あるいは生産速度は増加しうる。
【0047】
本発明のタンパク質およびヌクレオチド分子におけるこうした変更は、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース以外のその他の精製化学製品の生産を改善しうる。いずれか1つの化合物の代謝は必然的に他の生合成や細胞内の分解経路と絡み合い、また、1つの経路にある必要なコファクター、中間体あるいは基質は、もう1つのこうした経路により供給されるあるいは限定されるようである。したがって、本発明のタンパク質の1つあるいはそれ以上の活性を調節することにより、もう1つのファイン生合成経路あるいは分解経路の活性の生産あるいは効率は影響を受ける可能性がある。例えば、アミノ酸は、全てのタンパク質の構造ユニットとして役に立ち、その上、タンパク質合成に関して限定しているレベルで細胞間に存在しうる。したがって、細胞内の1つあるいはそれ以上のアミノ酸の生産の効率あるいは収率を増加させることにより、生合成タンパク質あるいは分解タンパク質などのタンパク質がさらに容易に合成されうる。同様に、特定の副反応が多かれ少なかれ好適に成るように行われる代謝経路酵素における変更は、所望される精製化学製品の生産のための中間体あるいは基質として利用される1つあるいはそれ以上の化合物の過剰生産あるいは低生産という結果になる。
【0048】
本発明の分離核酸配列は、米国タイプ培養コレクションを通じて入手可能な付与された命名(受託番号)ATCC 13032のコリネバクテリウム−グルタミカム菌株のゲノム内に含まれている。分離C.グルタミカム代謝経路DNAのヌクレオチド配列およびC.グルタミカム代謝経路タンパク質の予想されるアミノ酸配列は、奇数番号を付した配列識別番号のものと偶数番号を付した配列識別番号のものとして、それぞれ配列表に示されている。代謝経路タンパク質をコードする配列としてこうしたヌクレオチド配列を分類し、および/または同定を行ってコンピュータを用いた分析が実施された。
【0049】
本発明はまた、本発明のアミノ酸配列(例えば、配列表の偶数番号を付した配列識別番号の配列)に実質的に相同的であるアミノ酸配列を有するタンパク質に関する。本出願で使用するとき、選択された1つのアミノ酸配列に実質的に相同的であるアミノ酸配列を有するタンパク質は、選択されたアミノ酸配列、例えば、選択されたアミノ酸配列全体に対して、少なくとも約50%は相同的である。選択された1つのアミノ酸配列に対して実質的に相同的であるアミノ酸配列を有するタンパク質はまた、少なくとも約50〜60%、好適には少なくとも約60〜70%、またさらに好適には少なくとも約70〜80%、80〜90%、あるいは90〜95%、またもっとも好適にはその選択されたアミノ酸配列に対して少なくとも約96%、97%、98%、99%あるいはそれ以上に相同的である。
【0050】
本発明の代謝経路あるいは生物学的に活性である部分あるいはその断片は1つあるいはそれ以上のアミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路において酵素反応を触媒することができる、あるいは表1に記載されている1つあるいはそれ以上の活性を有することができる。
【0051】
本発明のさまざまな態様は、以下のサブセクションでは、さらに詳細に説明される。
A.分離核酸分子
本発明の1つの態様は、代謝経路コード化核酸(例えば、代謝経路DNA)の同定あるいは増幅用のハイブリダイゼーションプローブあるいはプライマーとして使用するのに十分である核酸断片とともに、代謝経路ポリペプチドあるいはその生物学的活性部分をコードする分離核酸分子に関する。本出願で使用されるとき、「核酸分子」という用語はDNA分子(例えば、cDNAあるいはゲノムDNA)とRNA分子(例えば、mRNA)およびヌクレオチド類似体を用いて生成されたDNAあるいはRNAの類似体を包含することが意図されている。この用語はまた、遺伝子のコード領域の3’と5’末端の両方に位置する非翻訳配列を包含する。すなわち、そのコード領域の5’末端から上流にある配列の少なくとも約100ヌクレオチドおよびその遺伝子のコード領域の3’末端から顆粒にある配列の少なくとも約20ヌクレオチドである。核酸分子は一本鎖あるいは二本鎖でありうるものであるが、しかし好適には、二本鎖DNAである。「分離された」核酸分子は核酸の天然資源の中に存在している他の核酸分子から分離されている核酸分子である。好適には、「分離された」核酸は、その核酸が由来している生物体のゲノムDNAの中にある核酸(すなわち、核酸の5’と3’末端に位置している配列)に自然状態では隣接する配列からは遊離している。例えば、さまざまな実施態様では、分離代謝経路核酸分子は、その核酸が由来している細胞(例えば、C.グルタミカム細胞)のゲノムDNAの中にある核酸分子に天然の状態では隣接しているヌクレオチド配列の約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5 kb、0.1 kb未満を含みうる。さらに、DNA分子などの「分離」核酸分子は、他の細胞材料、あるいは組換え技術により産生される場合の培養培地、あるいは化学前駆体あるいは化学的に合成されるときに他のケミカルから実質的に遊離しているものでありうる。
【0052】
本発明の核酸分子は、例えば、配列表の奇数番号を付した配列識別番号のヌヌクレオチド配列を有する核酸分子あるいはその一部分は、標準的な分子生物学的技術および本出願に提供されている配列情報を用いて、分離することができる。
【0053】
例えば、C.グルタミカム代謝経路DNAは、ハイブリダイゼーションプローブとして配列表の奇数番号を付した配列識別番号配列の1つの全部あるいは一部分および標準的なハイブリダイゼーション技術を用いて、C.グルタミカムライブラリーから分離することができる(Sambrook, J., Fritsh, E. G., Maniatis, T. 『分子クローニング−実験室マニュアル:コールドスプリングハーバーラボラトリー版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual.)』、第 2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press刊, ニューヨーク州Cold Spring Harbor市、1989)。さらに、本発明の核酸配列の1つの全部あるいは一部分を包含する核酸分子(例えば、奇数番号を付した配列識別番号のもの)は、この配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用してそのポリメラーゼ連鎖反応により分離することができる(例えば、本発明の核酸配列の1つの全部あるいは一部分を包含する核酸分子(例えば、配列表の奇数番号を付した配列識別番号)は、この同じ配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用してそのポリメラーゼ連鎖反応により分離することができる)。例えば、mRNAは、正常な内皮細胞から分離することができ(例えば、Chirgwinら(1979) Biochemistry 18:5294−5299のグアニジニウム−チオシアン酸塩抽出手順により)、また、DNAは逆転写酵素を使用して作成することができる(例えば、Gibco/BRL(メリーランド州Bethesda市)から入手可能なマロニーMLV逆転写酵素;あるいは生化学アメリカ社(フロリダ州セントピータースバーグ市)から入手可能なAMV逆転写酵素)。ポリメラーゼ連鎖反応増幅用の合成オリゴヌクレオチドプライマーは、配列表に示されているヌクレオチド配列の1つに基づいて設計することができる。本発明の核酸は、標準的なPCR増幅技術により鋳型および適当なオリゴヌクレオチドプライマーとしてcDNAあるいは代替的にはゲノムDNAを使用して、増幅することができる。そのように増幅された核酸は、適当なベクターの中にクローン化することができ、また、DNA配列分析により特徴付けることができる。さらに、代謝経路オリゴヌクレオチドに対応するオリゴヌクレオチドは、標準的合成技術、例えば、自動化DNAシンセサイザーを使用して、作成することができる。
【0054】
1つの好適な実施態様では、本発明の分離核酸分子は、配列表に示されているヌクレオチド配列の1つから成る。配列表に記載されているように、本発明の1つのヌクレオチド配列は本発明のCorynebacerium glutamicum代謝経路DNAに相当する。このDNAは、これまた配列表の各奇数番号を付した各配列識別番号に示されている5’非翻訳配列と3’非翻訳配列だけではなく、代謝経路タンパク質をコードする配列(すなわち、配列表の各奇数番号を付した配列識別番号配列に示されている「コード領域」)から成る。代替的には、核酸分子は配列表の核酸配列のいずれかのコード領域だけから構成することができる。
【0055】
この適用を目的として、配列表に記載されている核酸とアミノ酸配列のそれぞれが、5桁の数字(すなわち、RXA00007、RXN00023、RXS00116、あるいはRXC00128)が後に続いている命名「RXA」、「RXN」「RXS」「RXC」を有する識別RXA、RXN、RNS、RXC番号を有している。核酸配列のそれぞれは3つの部分までから成る。すなわち、5’上流領域、コード領域および下流領域である。これら3つの領域のそれぞれは混乱を避けるため、同じRXA、RXN、RXS、あるいはRXCという命名により識別される。「配列表の奇数番号を付した配列のうちの1つ」という詳説はこの場合は、それらの異なるRXA、RXN、RXS、あるいはRXCという命名により識別することもできる、配列表にある核酸配列のいずれかを言う。これら配列のそれぞれのコード領域は、偶数番号を付した配列識別番号:直後に続く対応する核酸配列として配列表に掲載されてもいる対応アミノ酸配列に翻訳される。例えば、RXA02229のコード領域は、配列識別番号:1に記載されており、一方、それがコードするアミノ酸配列は、配列識別番号:2として記載されている。本発明の核酸分子の配列は、それらが容易に相互に対応付けができるように、それらがコードするアミノ酸分子として、同じRXA、RXN、RXS、あるいはRXCという命名により識別される。例えば、RXA02229、RX00351、RXS02970、RXC02390と命名されたアミノ酸配列は、それぞれ核酸分子RXA02229、RX00351、RXS02970、RXC02390のヌクレオチド配列のコード領域を翻訳したものである。RXA、RXN、RXS、およびRXCヌクレオチドと本発明のアミノ酸配列との間の対応関係は表1に記載されている。
【0056】
本発明の遺伝子のいくつかは、「F表示遺伝子(F−designataed gene)」である。F表示遺伝子には、RXA、RXN、RXS、およびRXC命名の前に「F」を有する、表1に記載されている遺伝子が含まれる。配列識別番号:73、75および77(「F RXA00007」、「F RXA00364」および「F RXA00367」としてそれぞれ、表1上には命名されている)のように、例えば表1に示されているように、「F RXA01009」と命名される配列識別番号:5はF表示遺伝子である。
【0057】
1つの実施態様では、本発明の核酸分子は、表2に集められ記載されたC.グルタミカムを含むことは意図していない。dapD遺伝子の場合は、この遺伝子の配列はWehrmann, A.ら(1998)J. Bacteriol. 180 (12): 3159−3165に公表されている。しかし、本出願の発明者らにより得られた配列は、この公表されたバージョンよりも著しく長いものである。その公表されたバージョンは不正確な開始コドンに依存しており、またしたがって、実際のコード領域の断片だけを表わしている。
【0058】
もう1つの好適な実施態様では、本発明の1つの分離核酸分子は本発明のヌクレオチド配列(例えば、配列表の奇数番号を付した配列識別番号の配列)の1つの補体あるいはその一部分である核酸分子から成る。本発明のヌクレオチド配列のうちの1つに相補的である核酸分子は、本発明のヌクレオチド配列の1つにハイブリダイズすることができ、それによって安定した二重鎖を形成するように、配列表に示されているヌクレオチド配列のうちの1つに十分に相補的である核酸分子である(例えば、奇数番号を付した配列番号の配列)。
【0059】
さらにもう1つの好適な実施態様では、本発明の分離核酸分子は、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、あるいは60%が本発明のヌクレオチド配列(例えば、配列表の奇数番号を付した配列識別番号の配列)あるいはその一部分に相同的であるヌクレオチド配列から成り、好適には、少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、あるいは70%が本発明のヌクレオチド配列(例えば、配列表の奇数番号を付した配列識別番号の配列)あるいはその一部分に相同的であるヌクレオチド配列から成り、さらに好適には、少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、あるいは80%が本発明のヌクレオチド配列(例えば、配列表の奇数番号を付した配列識別番号の配列)あるいはその一部分に相同的であるヌクレオチド配列から成り、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、あるいは90%あるいは91%、92%93%94%が本発明のヌクレオチド配列(例えば、配列表の奇数番号を付した配列識別番号の配列)あるいはその一部分に相同的であるヌクレオチド配列から成り、約95%、96%、97%、98%、99%あるいはそれ以上が本発明のヌクレオチド配列(例えば、配列表の奇数番号を付した配列識別番号の配列)あるいはその一部分に相同的であるヌクレオチド配列から成る。上記に引用されている反応に対する中間的な範囲と識別値(例えば、70〜90%が同一、あるいは80〜95%が同一)もまた、本発明により包含されることが意図されている。例えば、上限およびまたは下限として引用されている上記の値のいずれかの組み合わせを使用した識別値の範囲は包含されることが意図されている。1つの付加的な好適な実施態様では、本発明の分離核酸分子は、本発明のヌクレオチド配列のうちの1つあるいはその一部分に、例えば、緊縮性条件下でハイブリダイズされるヌクレオチド配列から成る。
【0060】
さらに、本発明の核酸分子は配列表の奇数番号を付した配列識別番号のちの1つの配列のコード領域の一部だけで、例えば、代謝経路タンパク質の生物学的活性部分をコードするプローブ、あるいはプライマー、あるいは断片として使用することができる断片だけからでも構成することができる。C.グルタミカム から得られる代謝経路遺伝子のクローニングから決定されるヌクレオチド配列は、他のCorynebacteriaあるいは関連種から得られる代謝経路類似体だけではなく、他の細胞タイプおよび生物体において、代謝経路類似体を同定するおよび/またはクローン化するのに使用されるよう設計されているプローブおよびプライマーの生成を考慮するものである。このプローブ/プライマーは典型的には実質的に精製オリゴヌクレオチドからなる。そのオリゴヌクレオチドは典型的には、少なくとも約12の本発明のヌクレオチド配列のうちの1つのセンス鎖、これら配列のうちの1つのアンチセンス配列あるいはその自然発生変異体の連続ヌクレオチドに緊縮性条件下でハイブリダイズされるヌクレオチド配列の1つの領域から成り、好適には約25、さらに好適には約40、50あるいは75の本発明のヌクレオチド配列のうちの1つのセンス鎖、これら配列のうちの1つのアンチセンス配列あるいはその自然発生変異体の連続ヌクレオチドに緊縮性条件下でハイブリダイズされるヌクレオチド配列の1つの領域から成る。本発明のヌクレオチド配列に基づくプライマーは、代謝経路類似体をクローン化するためにPCR反応において使用することができる。代謝経路ヌクレオチド配列に基づくプローブは転写物あるいは、同じあるいは相同的なタンパク質をコードするあるいはゲノム配列を検出するのに使用することができる。好適な実施態様では、そのプローブはさらに、それに付着された標識群から成り、例えば、その標識群は、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素あるいは酵素コファクターでありうる。こうしたプローブは、対象から得た細胞のサンプル中の代謝経路コード核酸のレベルを測定することによって、例えば、代謝経路mRNAレベルを検出する、あるいはゲノム代謝経路遺伝子が変異させられたあるいは欠失されられたかどうかを測定するなどにより、1つの代謝経路タンパク質を誤発現させる細胞を同定するための診断試験キットの一部として使用することができる。
【0061】
1つの実施態様では、本発明の核酸分子は、タンパク質あるいはその一部がアミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路における酵素反応を触媒する能力を維持するように、本発明のアミノ酸配列(例えば、配列表の偶数の番号を付した配列識別番号の配列)に十分に相同的であるアミノ酸配列を含む、タンパク質あるいはその一部をコードする。本出願で使用するとき、「十分に相同的な」という用語は、タンパク質あるいはその部分がC.グルタミカムのアミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路において酵素反応を触媒することができるように、本発明のアミノ酸配列に等しいあるいは等価である(例えば、配列表の偶数の番号を付した配列識別番号のうちの1つの配列中にあるアミノ酸残基として、同様の側鎖を有するアミノ酸残基)最小数のアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を有するタンパク質あるいはその一部分を言う。こうした代謝経路のタンパク質メンバーは、本出願に説明されているように、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロースのうちの1つあるいはそれ以上の生合成あるいは分解を触媒するように機能する。こうした活性の実施例もまた、本出願では記載される。したがって、「代謝経路タンパク質」は、1つあるいはそれ以上のこうした代謝経路の総体的な機能に寄与し、また、1つあるいはそれ以上の精製化学製品の収率、生産および/または生産の効率に直接的にかあるいは間接的にかのいずれかで寄与している。代謝経路タンパク質活性の実施例は表1に掲載されている。
【0062】
もう1つの実施態様では、そのタンパク質は、本発明の全アミノ酸配列(例えば、配列表の偶数番号を付した配列識別番号の配列)に対して、少なくとも約50〜60%、好適には少なくとも約60〜70%、さらに好適には少なくとも約70〜80%、80〜90%、90〜95%、またもっとも好適には少なくとも約96%97%98%99%あるいはそれ以上に相同的である。
【0063】
本発明の代謝経路核酸分子によりコードされるタンパク質の部分は、好適には、その代謝経路タンパク質のうちの1つの生物学的活性部分である。本出願で使用されるとき、「代謝経路タンパク質の生物学的活性部分」は、1つあるいはそれ以上のC.グルタミカムのアミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路において、酵素反応を触媒する代謝経路タンパク質の一部分、例えば、ドメイン/モチーフを含むこと、あるいは表1に掲載されているような活性を有することが意図されている。代謝経路タンパク質あるいはその生物学的活性部分が、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路において、酵素反応を触媒することができるかどうかを測定するために、酵素活性の測定は実施されうる。こうした測定方法は、例示の実施例8に詳述されているように、当業者には周知のことである。
【0064】
代謝経路の生物学的活性部分をコードする付加的な核酸断片は、本発明のアミノ酸配列(例えば、配列表の偶数番号を付した配列識別番号の配列)のうちの1つの一部を分離し、代謝経路タンパク質あるいはペプチドのコードした部分を発現し(例えば、in vitroでの組換え発現により)、また代謝経路タンパク質あるいはペプチドのコードした部分の活性を評価することにより作成することができる。
【0065】
本発明はさらに、遺伝子コードの変性のために本発明のヌクレオチド配列の1つ(例えば、配列表の奇数番号配列識別番号の配列)(およびその一部分)とは異ならせ、また、したがって本発明の核酸配列によりコードされるように、同じ代謝経路タンパク質をコードする核酸分子を包含する。もう1つの実施態様では、本発明の分離核酸分子は、配列表に示されているアミノ酸配列(例えば、偶数番号を付した配列識別番号)を有するタンパク質をコードする核酸配列を有する。その上さらなる1つの実施態様では、本発明の核酸分子は、本発明のアミノ酸配列(配列表の奇数番号を付した配列番号に示されているオープン読み枠によりコードされる)に実質的に相同的である完全長C.グルタミカムタンパク質をコードする。
【0066】
1つの実施態様では、本発明の配列は、本発明に先立って入手可能であった表2あるいは4に記載されているGenbank配列などの先行技術の配列を含むことを意味していないことは当業者には理解されるであろう。1つの実施態様では、本発明には、先行技術の配列のそれよりも大きい、本発明のヌクレオチドあるいはアミノ酸配列に対するパーセント同一性を有するヌクレオチドおよびアミノ酸配列が含まれる(例えば、表2あるいは4に記載されているGenbank配列(あるいはこうした配列によりコードされるタンパク質))。例えば、本発明には、RXA00115(配列識別番号:185)と命名されたヌクレオチド配列に対して40%同一性よりも大きいおよび/または少なくとも40%同一性があるヌクレオチド配列、RXA00131(配列識別番号:991)と命名されたヌクレオチド配列に対してより大きなおよび/または少なくとも39%同一性であるヌクレオチド配列、およびRxa00219(配列識別番号:345)と命名されたヌクレオチド配列に対して39%同一性よりも大きい、および/または少なくとも39%同一性であるヌクレオチド配列が含まれる。当業者であれば、任意の配列に対する3つのトップヒットのそれぞれに関して表4に掲載されているGAP計算パーセント同一性スコアを調べることにより、また、100パーセントからもっとも高いGAP計算パーセント同一性を引き算することにより、本発明のいずれかの任意の配列に対するパーセント同一性の低い方の閾値を計算することができるであろう。当業者であれば、また、そのように計算された低い方の閾値よりも大きなパーセント同一性(例えば、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、あるいは60%、好適には少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、あるいは70%、さらに好適には約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、あるいは80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、あるいは90%、あるいは91%、92%、93%、94%、およびその上さらに好適には95%、96%、97%、98%、99%あるいはそれ以上の同一性)を有する核酸とアミノ酸配列はまた、本発明により包含される。
【0067】
奇数番号を付した配列識別番号のように配列表に記載されているC.グルタミカム代謝経路ヌクレオチド配列に加えて、代謝経路タンパク質のアミノ酸配列における変化につながるDNA配列遺伝子多型が集団(例えば、C.グルタミカム集団)内に存在するであろうことは当業者には理解されることであろう。代謝経路遺伝子におけるこうした遺伝子多型は、天然の変異による集団内のそれぞれの間に存在する可能性もある。本出願で使用されるとき、「遺伝子」および「組換え遺伝子」とは、代謝経路タンパク質をコードするオープン読み枠から成る核酸分子、好適にはC.グルタミカム代謝経路タンパク質を言う。こうした天然の変異は典型的には、代謝経路遺伝子のヌクレオチド配列における1〜5%の変異率という結果を生じる可能性がある。いずれかの、また全てのこうしたヌクレオチド変異と、天然の変異の結果であり、また代謝経路タンパク質の機能活性を変えることはない代謝経路において結果的に生じるアミノ酸遺伝子多型は、本発明の範囲内にあることが意図されている。
【0068】
本発明のC.グルタミカム代謝経路DNAの非C.グルタミカム類似体に相当する核酸分子は、緊縮性ハイブリダイゼーション条件下で標準的なハイブリダイゼーション技術によるハイブリダイゼーションプローブとして、C.グルタミカムDNAあるいはその一部分を使用して本出願に開示されているC.グルタミカム代謝経路核酸に対するその類似性に基づいて分離することができる。したがって、もう1つの実施態様では、本発明の分離核酸分子は、少なくとも長さ15ヌクレオチドであり、また、配列表の奇数番号を付した配列識別番号のヌクレオチド配列から成る核酸分子に、緊縮性条件下でハイブリダイズされる。他の実施態様では、その核酸は少なくとも長さ30、50、100、250あるいはそれ以上のヌクレオチドである。本出願で使用されるとき、「緊縮性条件下でハイブリダイズされる」という表現は、互いに少なくとも60%相同的であるヌクレオチド配列が典型的には互いにハイブリダイズされて残る、ハイブリダイゼーションと洗浄のための条件を説明することを意図している。好適には、その条件は、少なくとも約65%、さらに好適には少なくとも約70%、またその上さらに好適には少なくとも約75%あるいはそれ以上互いに相同的である配列が典型的には互いにハイブリダイズされて残るような条件である。こうした緊縮性条件は、当業者には公知のものであり、また、『分子生物学における現行プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)』、John Wiley & Sons社刊、ニューヨーク、(1989) 6.3.1 6.3.6.にも見ることができる。緊縮性ハイブリダイゼーション条件の1つの好適な、非限定実施例は、45℃にて6 x 塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)の中でハイブリダイゼーション、その後に50〜65℃にて0.2 x SSC、0.1% SDS中で1つあるいはそれ以上の洗浄である。好適には、本発明のヌクレオチド配列に緊縮性条件下でハイブリダイズされる本発明の分離核酸分子は自然発生核酸分子に相当する。本出願で使用されるとき、「自然発生」核酸分子は、天然に発生(例えば、天然のタンパク質をコードする)ヌクレオチド配列を有するRNAあるいはDNA分子を言う。1つの実施態様では、核酸は天然C.グルタミカム代謝経路タンパク質をコードする。
【0069】
その集団の中に存在する可能性がある代謝経路配列の自然発生変異に加えて、当業者であれば、本発明のヌクレオチド配列の中に変異により変化が導入され、それによって、代謝経路タンパク質の機能能力を変えることなく、コードされた代謝経路タンパク質のアミノ酸配列の変化につながることをさらに理解されることであろう。例えば、「非必須」アミノ酸残基におけるアミノ酸置換につながるヌクレオチド置換は、本発明のヌクレオチド配列において作成することができる。「非必須」アミノ酸残基は、前記代謝経路タンパク質の活性を変えることなく、代謝経路タンパク質のうちの1つ(例えば、配列表の偶数番号を付した配列識別番号)の野生型配列から変化させることができる残基であり、一方、「必須」アミノ酸残基は、代謝経路タンパク質には必要となる。しかし、他のアミノ酸残基(例えば、代謝経路活性を有するドメインでは保存されないあるいは単に半分だけ保存されるもの)は、活性には必須のものではない可能性があり、またしたがって、代謝経路活性を変えることなく、変化に対しては敏感に反応するようである。
【0070】
したがって、本発明のもう1つの態様は、代謝経路活性には必須ではないアミノ酸残基の変化を包含する代謝経路タンパク質をコードする核酸分子に関する。こうした代謝経路タンパク質は、配列表の偶数番号を付した配列識別番号の配列から得られるアミノ酸配列において異なり、またさらに、本出願に説明されている代謝経路活性の少なくとも1つを保持している。1つの実施態様では、分離核酸分子はタンパク質をコードするヌクレオチド配列から成り、そのタンパク質は本発明のアミノ酸配列(配列表中にある偶数番号の配列識別番号の配列)の1つの少なくとも約50%あるいはそれ以上相同的なものであるアミノ酸配列から成り、また、アミノ酸、ビタミン、コファクター、栄養性薬剤、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路における酵素反応を触媒することができ、あるいは表1に掲載されている1つあるいはそれ以上の活性を有する。好適には、その核酸分子によりコードされるタンパク質は配列表の奇数番号を付した配列識別番号のうちの1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約50〜60%相同的であり、さらに好適には、コレラ配列のうちの1つに対して少なくとも約60〜70%相同的であり、その上さらに好適にはこれら配列のうちの1つに対して約70〜80%、80〜90%、90〜95%相同的であり、またもっとも好適には本発明のアミノ酸配列のうちの1つに対して少なくとも約96%、97%、98%、あるいは99%相同的である。
【0071】
2つのアミノ酸配列(例えば、本発明のアミノ酸配列の1つおよびその変異体形態)あるいは2つの核酸のパーセント相同性を測定するために、配列が最適比較目的のために整列される(例えば、ギャップが他のタンパク質あるいは核酸による最適整列のために、1つのタンパク質あるいは核酸の配列の中に導入することができる)。対応するアミノ酸の位置あるいはヌクレオチドの位置にあるアミノ酸残基あるいはヌクレオチドがその後に比較される。1つの配列における位置(例えば、本発明のアミノ酸配列の1つ)が、他の配列のそれに対応する位置として、同じアミノ酸残基あるいはヌクレオチドにより占有される場合(例えば、そのアミノ酸配列の変異体形態)、その場合には、その分子はその位置で相同的である(例えば、本出願で使用されるとき、アミノ酸あるいは核酸の「相同性」はアミノ酸あるいは核酸「同一性」と等価である)。この2つの配列の間のパーセント相同性は、その配列により共有される同一位置の数の関数である(すなわち、%相同性=同一位置の数(#)/位置の合計数(#)x 100)。
【0072】
本発明のタンパク質配列に対して相同的である代謝経路タンパク質をコードする分離核酸分子(例えば、配列表の偶数番号を付した配列識別番号の配列)は、1つあるいはそれ以上のアミノ酸置換、付加、あるいは欠失がコードされたタンパク質の中に導入されるように、本発明のヌクレオチド配列の中に1つあるいはそれ以上のヌクレオチド置換、付加、あるいは欠失を導入することにより作り出すことができる。変異は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発などの標準的な技術により本発明のヌクレオチド配列のうちの1つの中に導入することができる。好適には、保存的アミノ酸置換は1つあるいはそれ以上の予測される必須アミノ酸残基で行われる。「保存的なアミノ酸置換」は、同様の側鎖を有するアミノ酸残基により、アミノ酸残記が置換されるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当業界では定義されてきたものである。これらファミリーには、塩基性鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパルギン酸、グルタミン酸)、荷電されていない極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルダミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、代謝経路タンパク質において予測される非必須アミノ酸残基が好適には、同じ側鎖ファミリーから得られるもう1つのアミノ酸残基により置換される。代替的には、もう1つの実施態様では、変異は、飽和突然変異誘発などによる代謝経路コード配列の全部あるいは一部に沿って無作為に導入することができ、また、その結果生じた変異体は、代謝経路活性を保持する変異体を同定するために、本出願に記載されている代謝経路活性に関してスクリーニングすることができる。配列表の奇数番号を付した配列識別番号のうちの1つのヌクレオチド配列の変異誘発の後に、コードされたタンパク質を、組換え的に発現することができ、また、タンパク質の活性は、例えば、本出願に記載されている測定法を使用して測定することができる(例示の実施例8参照)。
【0073】
上述されている代謝経路タンパク質をコードする核酸分子に加えて、本発明のもう1つの態様はそれに対してアンチセンスである分離核酸分子に関する。「アンチセンス」核酸は、タンパク質をコードする「センス」核酸に対して相補的である核酸配列、例えば、二本鎖DNA分子のコード鎖に対して相補的である核酸配列、あるいはmRNA配列に対して相補的である核酸配列から成る。したがって、アンチセンス核酸は、センス核酸に対して水素結合することができる。アンチセンス核酸は、代謝経路コード鎖全体に対してあるいはその一部分のみに対して相補的でありうる。1つの実施態様では、アンチセンス核酸分子は代謝経路タンパク質をコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「コード領域」に対してアンチセンスである。「コード領域」という用語は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンから成るヌクレオチド配列の領域を言う(例えば、配列識別番号:1(RXA02229)はの全コード領域はヌクレオチド1〜825から成る)。もう1つの実施態様では、アンチセンス核酸分子は、代謝経路をコードする核酸配列のコード鎖の「非コード領域」に対してアンチセンスである。「非コード領域」という用語は、アミノ酸に翻訳されないコード領域に隣接している5’と3’配列を言う(すなわち、5’と3’非翻訳領域とも呼ばれる)。
【0074】
本出願に開示されている代謝経路をコードしているそのコード鎖配列(例えば、配列表の奇数番号を付した配列識別番号として記載されている配列)が与えられれば、本発明のアンチセンス核酸は、ワトソンとクリック塩基対の規則により設計することができる。アンチセンス核酸分子は代謝経路mRNAの全コード領域に対して相補的でありうるが、しかし、さらに好適には、代謝経路mRNAのコード領域あるいは非コード領域の一部分のみに対してアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、代謝経路mRNAの翻訳開始部位を取り囲む領域に対して相補的でありうる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、長さ5、10、20、25、30、35、40、45あるいは50ヌクレオチドである。本発明のアンチセンス核酸は、当業者には公知のものである手順を用いて化学合成および酵素ライゲーションを使用して構築することができる。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、自然発生ヌクレオチド、あるいは、その分子の生物学的安定性を増強するために、あるいはアンチセンスとセンス核酸の間に形成される二本鎖の物理的安定性を増強するために、さまざまに修飾されるヌクレオチドを使用して化学的に合成することができ、例えば、モノチオリン酸塩誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。そのアンチセンス核酸を生成するために使用することができる修飾ヌクレオチドの実施例には、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノーシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトオキソシン、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンが含まれる。代替的には、アンチセンス核酸は、核酸が、アンチセンス配向でサブクローンされた発現ベクター(すなわち、挿入核酸から転写されたRNAは、以下のサブセクションでさらに説明される、関心の対象である標的核酸に対してアンチセンス配向となる)を使用して生物学的に産生することができる。
【0075】
本発明のアンチセンス核酸分子は典型的には、それらが、細胞内mRNAおよび/ またはMCTタンパク質をコードするゲノムDNAによりハイブリダイズされる、あるいはそれに結合し、それによってそのタンパク質の発現を、例えば、転写および/または翻訳することにより阻害するように、典型的には細胞に投与されるか、in situで生成される。そのハイブリダイゼーションは安定した二重鎖を形成するために従来のヌクレオチド相補性により、あるいは例えば、二重へリックスの主要溝の中での特異的な相互作用により起こりうるものであり、DNA二本鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合でも起こりうる。そのアンチセンス分子は、それが、例えば、細胞表面受容体あるいは抗原に結合するペプチドあるいは抗体に対してアンチセンス核酸分子をリンクすることにより、選択細胞表面上に発現される受容体あるいは抗原に特異的に結合するように、修飾することができる。アンチセンス核酸分子はまた、本出願に説明されているベクターを使用して細胞にデリバリーすることもできる。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するために、そのアンチセンス核酸分子が、強力な原核細胞、ウイルス、あるいは真核細胞プロモーターの制御下に置かれるベクター構築が好ましい。
【0076】
さらにもう1つの実施態様では、本発明のアンチセンス核酸分子はα−アノマー核酸分子である。α−アノマー核酸分子は、通常のβ−ユニットとは反対に、その鎖は互いに並行に走行する、相補的なRNAによる特異的二本鎖ハイブリッドを形成する(Gaultierら、(1987) Nucleic Acids. Res. 15: 6625−6641)。アンチセンス核酸分子はまた、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoueら(1987)Nucleic Acids Res. 15:6131−6148)あるいはキメラRNA−DNA類似体(Inoueら(1987)FEBS Lett. 215:327−330)から構成されることもできる。
【0077】
さらにもう1つの実施態様では、本発明のアンチセンス核酸はリボザイムである。リボザイムは、それらが相補的領域を有している、mRNAなどの一本鎖核酸を切断することができるリボヌクレアーゼ活性を備えた触媒RNA分子である。したがって、リボザイム(例えば、ハンマーヘッドリボザイム(HaselhoffとGerlach(1988) Nature 334:585−591に記載)は、代謝経路mRNA転写物を触媒的に切断し、それによって代謝経路mRNAの翻訳を阻害するのに使用することができる。代謝経路コード核酸に対して特異性を有するリボザイムは、本出願に開示されている代謝経路DNAのヌクレオチド配列(すなわち、配列識別番号:1(RXA02229))に基づいて設計することができる。例えば、活性部位のヌクレオチド配列が、代謝経路コードmRNAで切断されるヌクレオチド配列に相補的である場合はTetrahymena L−19 IVS RNAの誘導体は構築することができる。これについては、例えば、Cechらの米国特許第4,987,071号、Cechらの米国特許第5,116,742号を参照されたい。代替的には、代謝経路mRNAは、RNA分子のプールから特異的なリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNAを選択するのに使用することができる。これについては、例えば、Bartel, D.と Szostak, J. W. (1993) Science 261:1411−1418を参照されたい。
【0078】
代替的には、代謝経路遺伝子発現は、標的細胞中の代謝経路遺伝子の転写を防ぐトリプルヘリカル構造を形成するために、代謝経路ヌクレオチド配列(例えば、代謝経路プロモーターおよび/またはエンハンサー)の制御領域に対して相補的なヌクレオチド配列を標的化することにより、阻害することができる。一般的なものとしては、Helene, C. (1991) Anticancer Drug Des. 6 (6): 569−84; Helene, C.ら(1992)Ann. NY. Acad. Sci. 660: 27−36; およびMaher, L. J. (1992) Bioassays 14 (12): 807−15を参照されたい。
【0079】
B.組換え発現ベクターと宿主細胞
本発明のもう1つの態様は、代謝経路タンパク質(あるいはその一部分)をコードする核酸を含むベクター、好適には発現ベクターに関する。本出願で使用されるとき、「ベクター」という用語はそれがリンクされていた別の核酸を輸送することができる核酸分子を言う。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、付加的なDNAセグメントがそのウイルスゲノムの中に結紮することができる環状二本鎖DNAループを言う。ベクターによっては、それらが導入される宿主細胞の中で自己複製ができるものもある(例えば、複製の細菌起源を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、その宿主細胞の中に導入される際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ベクターによっては、ベクターが操作可能にリンクされている遺伝子の発現を指示することができるものもある。こうしたベクターは本出願では、「発現ベクター」と呼ばれる。一般的には、組換えDNA技術において有用性を有する発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形態のものである。本明細書の中では、「プラスミド」と「ベクター」という用語は、プラスミドがもっとも通常使用されるベクターの形態であるので、相互交換的に使用することができる。しかし、本発明は、同等の機能を果すウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス)などのそうした発現ベクターの他の形態を含めることが意図されている。
【0080】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞での核酸の発現に適している形態をとる本発明の核酸から成る。それは、その組換え発現ベクターには、発現する核酸配列に操作可能にリンクされ、発現に使用されるよう、宿主細胞をベースとして選択される1つあるいはそれ以上の制御配列が含まれる。組換え発現ベクター内には、「操作可能にリンクされる」という表現は、関心の対象となっているヌクレオチド配列が、そのヌクレオチド配列の発現を考慮するやり方で制御配列(複数)に関心の対象となっているヌクレオチド配列リンクされることを意味している(例えば、in vitroでの転写/翻訳システムにおいて、あるいはそのベクターが宿主細胞の中に導入されるときに宿主細胞において)。「制御配列」という用語はプロモーター、リプレッサー結合部位、活性化因子結合部位、エンハンサーおよび他の発現制御要素(例えば、mRNA二次構造の転写終結区、ポリアデニル化シグナル、あるいは他の要素)を含むことが意図されている。こうした制御配列は、例えば、Goeddelの『遺伝子発現技術−酵素学における諸方法(Gene Expression Technology: Methods in Enzymology)185』(1990年)、Academic Press社, カルフォルニア州サンディエゴ市に説明されている。制御配列には、宿主細胞中で数多くのタイプのヌクレオチド配列の構成的な発現を指示するものと、一定の宿主細胞中でのみヌクレオチド配列の発現を指示するものが含まれる。好適な制御配列は、例えば、細菌の中で好適に使用される、cos−、tac−、trp−、tet−、trp−tet−、 lpp− 、lac−、 lpp−lac−、lacIq−、T7−、T5−、 T3−、 gal−、 trc−、ara−、 SP6−、arny、」SPO2、λ−PR−あるいはλPLなどのプロモーターである。 付加的な制御配列は例えば、ADC1、MFα、AC、P−60、CYC1、 GAPDH、TEF、rp28、ADHなどの酵母や真菌から得られるプロモーターであり、CaMV/35S, SSU, OCS, lib4, usp, STLS1, B33, nosあるいはユビキチン−あるいはファゼオリン−プロモーターなどの植物から得られるプロモーターである。人工的なプロモーターを使用することも可能である。発現ベクターの設計は、形質転換する宿主細胞の選択、所望されるタンパク質の発現のレベルなどといった因子に頼ることができることは当業者であれば、理解されることであろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入することができ、それによって、本出願で説明されているように、核酸によりコードされる融合タンパク質あるいはペプチド、タンパク質あるいはペプチドを産生する(例えば、代謝経路タンパク質、代謝経路タンパク質の変異体形態、融合タンパク質、など)。
【0081】
本発明の組換え発現ベクターは、原核細胞あるいは真核細胞における代謝経路タンパク質の発現に関して設計することができる。例えば、代謝経路遺伝子はC.グルタミカム、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用して)、酵母やその他の真菌細胞などの細菌細胞(Romanos,M.A.ら(1992)「酵母における外因性遺伝子発現:総説(Foreign gene expression in yeast: a review)」Yeast 8: 423−488; Fungi, J. W. Bennet & L. L. Lasure編『さらなる遺伝子操作(More Gene Manipulations)』の中の van den Hondel, C. A. M. J. J. ら執筆部分(1991)「糸状真菌における異種遺伝子発現(“Heterologous gene expression in filamentous fungi”)」、P.396−428, Academic Press刊, サンディエゴ市;Peberdy, J. F.ら編『真菌の応用分子遺伝学(Applied Molecular Genetics of Fungi)』の中のvan den Hondel, C. A. M. J. J. & Punt, P. J. 執筆部分「遺伝子移入システムと糸状真菌のベクター開発(1991年)(“Gene transfer system and vector development for filamentous fungi”)」、p1−28, Cambridge Unversity Press,ケンブリッジ市)、藻類および多細胞植物細胞(Schmidt, R. とWillmitzer, L. (1988) 「Arabidopsis thalianaの葉と子葉外植片の高効率Agrobacterium tumefaciens媒介形質転換(High efficiency Agrobacterium tumefaciens mediated transformation of Arabidopsis thaliana leaf and cotyledon explants)」 Plant Cell Rep. : 583−586)あるいは、哺乳動物の細胞の中で発現させることができる。適当な宿主細胞はGoeddelの『遺伝子発現技術−酵素学における諸方法(Gene Expression Technology: Methods in Enzymology)185』、Academic Press社, カルフォルニア州サンディエゴ市(1990)で敷衍して論じられている。代替的には、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター制御配列やT7ポリメラーゼを使用して、in vitroにて転写および翻訳することができる。
【0082】
原核細胞におけるタンパク質の発現は、融合タンパク質か、あるいは非融合タンパク質かのいずれかの発現を指示する構成あるいは誘導可能なプロモーターを含むベクターにより、もっとも頻繁に実施される。融合ベクターは、それにコードされているタンパク質に多くのアミノ酸を付加する、通常は、組換えタンパク質のアミノ末端に、付加するのであるが、しかし、タンパク質の適当な領域内にあるC末端あるいは融合部位にも付加する。こうした融合ベクターは典型的には、3つの目的のために役立っている。すなわち、1)組換えタンパク質の発現を増加させるため、2) 組換えタンパク質の溶解度を増加させるため、3) 親和性精製でリガンドとして作用することにより組換えタンパク質の精製の際に手助けするため、である。多くの場合、融合発現ベクターでは、タンパク質切断部位が、融合部分の接合部に導入され、またその組換えタンパク質に関しては、その融合タンパク質の精製に続いてその後に、その融合部分から組換えタンパク質を分離することが可能になる。こうした酵素とその同属の認識配列には、因子Xa、トロンビンおよびエンテロキナーゼが含まれる。
【0083】
典型的な融合発現ベクターには、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、あるいはタンパク質Aをそれぞれ、その標的組換えタンパク質に融合する、pGEX (Pharmacia Biotech社Smith, D. B Johnson, K. S. (1988) Gene 67: 31−40)、pMAL (New England Biolabs社、マサチューセッツ州Beverly市)およびpRIT5(Pharmacia社、ニュージャージー州Piscataway市)が含まれる。1つの実施態様では、代謝経路タンパク質のコード配列は、N−末端からC−末端まで、GST−トロンビン切断部位−Xタンパク質から成る融合タンパク質をコードするベクターを作り出すために、pGEX発現ベクターの中に入れてクローン化される。融合タンパク質は、グルタチオン−アガロース樹脂を使用して親和性クロマトグラフィにより精製することができる。GSTに融合されない組換え代謝経路タンパク質は、トロンビンによるその融合タンパク質の切断により回収することができる。
【0084】
適当な誘導可能な非融合大腸菌(E.coli)発現ベクターの実施例には、pTrc (Amannら(1988) Gene 69:301−315), pLG338, pACYC184, pBR322, pUC18, pUC19, pKC30, pRep4, pHS1, pHS2, pPLc236, pMBL24, pLG200, pUR290, pIN−III113−B1, λgt11, pBdCl, pET 11d (Studierら、「遺伝子発現技術−酵素学における諸方法185(Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Presss刊, カリフォルニア州サンディエゴ市(1990)60−89; Pouwelsら編(1985)「クローニングベクター(Cloning Vectors)」、ニューヨーク州 Elsevier社刊, IBSN 0 444 904018)。pTrcベクターから得られる標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp−lac融合プロモーターから得られる宿主RNAポリメラーゼ転写物に依存している。pET 11dベクターから得られる標的遺伝子発現は、共同発現したウイルスRNAポリメラーゼ(T7gnl)により媒介されるT7 gn10−lac融合プロモーターから得られる転写物に依存している。このウイルスポリメラーゼは、lacUV5プロモーターの転写制御下でT7 gnl遺伝が存在している常在性λプロファージから宿主菌株BL21 (DE3)あるいはHMS174 (DE3)により供給される。他のさまざまな細菌の形質転換に関しては、適当なベクターを選択しうる。例えば、プラスミドpIJ101, pIJ364, pIJ702および pIJ361が、Streptomycesを形質転換させる際に有用であることが知られており、一方、プラスミドpUB110, pC194, あるいはpBD214 がBacillus種の形質転換には適している。コリネバクテリウムの中に遺伝子情報を移入する際に使用するいくつかのプラスミドには、pHM1519, pBL1, pSA77,あるいはpAJ667 が含まれている(Pouwelsら編(1985)「クローン化ベクター(Cloning Vectors)」、Elsevier社刊, IBSN 0 444 904018)。
【0085】
組換えタンパク質発現を最大限に発揮させるための1つの方策は、組換えタンパク質をタンパク質分解的に切断するように障害された能力により宿主細菌のタンパク質を発現させることである(Gottesma, S., 「遺伝子発現技術−酵素学における諸方法(Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185)」, Academic Press社刊、カリフォルニア州サンディエコ市 (1990) 119−128)。もう1つの方策は、各アミノ酸に対する個々のコドンが、C.グルタミカムなどの発現のために選択された細菌の中で好適に利用されるものになるように、発現ベクターの中に挿入される核酸の核酸配列を変化させることである(Wadaら(1992)Nucleic Acids Res. 20: 2111−2118)。本発明の核酸配列のこうした変化は、標準的なDNA合成技術により実施することができる。
【0086】
もう1つの実施態様では、代謝経路タンパク質発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母S.cerevisiae中の発現用のベクターの実施例には、pYepSec1 (Baldarら (1987) Embo J. 6: 229−234), 2μ, pAG−1, Yep6, Yep13, pEMBL Ye23, pMFa (Kurjan Herskowitz (1982) Cell 30: 933−943), pJRY88 (Schultzら(1987) Gene 54: 113−123)およびpYES2 (Invitrogen社、カリフォルニア州サンディエゴ市)が含まれる。ベクターと、糸状真菌などの他の真菌類で使用するのに適当なベクターの構築のための諸方法には以下の文献に詳述されているものが含まれる。すなわち、Peberdy, J. F.ら編『真菌の応用分子遺伝学(Applied Molecular Genetics of Fungi)』の中のvan den Hondel, C. A. M. J. J. & Punt, P. J. 執筆部分「遺伝子移入システムと糸状真菌のベクター開発(“Gene transfer system and vector development for filamentous fungi”)」、p1−28, Cambridge Unversity Press,ケンブリッジ市)およびPouwelsら編(1985)「クローニングベクター(Cloning Vectors)」、Elsevier社刊, IBSN 0 444 904018)である。
【0087】
代替的には、本発明の代謝経路タンパク質は、バキュロウイルス発現ベクターを使用して昆虫細胞の中で発現させることができる。培養された昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)中のタンパク質の発現に有用であるバキュロウイルスベクターには、pAc系列(Smithら(1983)Mol. cell Biol. 3:2156−2165)およびpVL系統(Lucklow and Summers(1989)Virology170:31−39)が含まれる。
【0088】
もう1つの実施態様では、本発明の代謝経路タンパク質は単細胞植物細胞(藻類など)あるいは高等植物から得られる植物細胞(例えば、作物などの種子植物)において発現しうる。植物発現ベクターの実施例には、以下の文献に詳述されているものが含まれる。すなわち、Becker, D., Kemper, E., Schell, J. Masterson, R. (1992) 「左境界線近傍に位置する選択可能なマーカーを付けた新しい植物バイナリーベクター(“New plant binary vectors with selectable markers located proximal to the left border”)」, Plant Mol. Biol. 20: 1195−1197; Bevan, M. W. (1984) 「植物形質転換用バイナリーAgrobacteriumベクター(“Binary Agrobacerium vectors for plant transformation”)」、Nucl. Acid. Res. 12: 8711−8721, であり、また、pLgV23, pGHlac+, pBIN19, pAK2004,pDH51(Pouwelsら編(1985)「クローニングベクター(Cloning Vectors)」、Elsevier社刊, IBSN 0 444 904018)が含まれる。
【0089】
その上さらにもう1つの実施態様では、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを使用して、哺乳動物細胞で発現させる。哺乳動物発現ベクターの実施例には、pCDM8 (Seed, B. (1987) Nature 329: 840)と、pMT2PC (Kaufmanら(1987) EMBO J. 6:187−195) が含まれる。哺乳動物細胞で使用されるとき、その発現ベクターの制御機能は多くの場合は、ウイルス制御要素によりもたらされる。例えば、通常使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスとシミアンウイルス40に由来するものである。
【0090】
原核細胞と真核細胞の両方に関するほかの適当な発現システムについては、Sambrook, J., Fritsh, E. F., Maniatis, T. 『分子クローニング−実験室マニュアル:コールドスプリングハーバーラボラトリー版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual.)』、第 2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press刊, ニューヨーク州Cold Spring Harbor市、1989の16章と17章を参照されたい。
【0091】
もう1つの実施態様では、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞タイプでは好適にその核酸の発現を指示することができる(例えば、組織特異的制御要素は核酸を発現させるのに使用される)。組織特異的制御要素は当業者には公知のものである。適当な特異的プロモーターの非限定実施例には、アルブミンプロモーター(肝特異的;Pickertら(1987) Genes Dev. 1: 268−277)、リンパ系特異的プロモーター(CalameとEaton(1988)Adv. Imunol. 43: 235−275)、特に、T細胞受容体のプロモーター(WinotoとBaltimore(1989)EMBO J. 8:729−733)および免疫グロブリン(Banerjiら(1983)Cell 33:729−740; Queen とBaltimore (1983) Cell 33: 741−748)、神経細胞特異的プロモーター(例えば、神経細線維プロモーター;ByrneとRuddle (1989) PNAS 86:5473−5477)、膵特異的プロモーター(Edlundら(1985)Science 230: 912−916)、および哺乳動物腺特異的プメモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州出願公開第264,166号)が含まれる。発生的に制御されたプロモーター、例えば、マウスホックスプロモーター(KesselGruss (1990)Science 249:374−379)と、α−フェトプロテインプロモーター(CampesとTilghman (1989) Genes Dev. 3: 537−546)もまた包含される。
【0092】
本発明はさらに、アンチセンス配向に発現ベクターの中にクローン化されて入れられた本発明のDNA分子から成る組換え発現ベクターを提供する。すなわち、DNA分子は、代謝経路mRNAであるRNA分子の発現(DNA分子の転写により)を考慮するやり方で制御配列に操作可能にリンクされている。さまざまな細胞タイプにあるアンチセンスRNA分子の連続発現を指示し、アンチセンス配向にクローン化された核酸に操作可能にリンクされている制御配列は選択することができ、例えば、アンチセンスRNAの構成的、組織特異的あるいは細胞型特異的発現を指示するウイルスプロモーターおよび/またはエンハンサー、あるいは制御配列は選択することができる。アンチセンス発現ベクターは、アンチセンス核酸が高効率制御領域およびそのベクターが導入される細胞のタイプにより決定することができるその活性の制御下で、産生される。アンチセンス遺伝子を用いた遺伝子発現の制御の議論に関しては、「遺伝学(Genetics)」、 Vol. 1 (1) 1986の中のWeintraub, H.執筆部分 「遺伝子分析用分子ツールとしてのアンチセンスRNA−総説と潮流(Antisense RNA as molecular tool for genetic analysis, Review−Trends)」。
【0093】
本発明のもう1つの態様は、本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は、本出願では相互に交換可能に使用される。こうした用語は特定の対象になっている細胞だけではなく、こうした細胞の子孫あるいは潜在的な子孫をも言うことが分かる。修飾によっては、変異かあるいは環境の影響かのいずれかにより、継代していく際に起こりうることであるため、こうした子孫は、事実、その親細胞と同一であるがそればかりでなく、本出願で使用されるときには、その用語の範囲内にその上でさらに含められうる。
【0094】
宿主細胞はいずれかの原核細胞あるいは真核細胞でありうる。例えば、代謝経路タンパク質は、C.グルタミカムなどの細菌細胞、昆虫細胞、酵母あるいは哺乳動物細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)あるいはCOS細胞)の中で発現させることができる。他の適当な宿主細胞は当業者には公知のものである。本発明の核酸およびタンパク質分子のための宿主細胞として都合よく使用されうるコリネバクテリウム−グルタミカムに関連している微生物は表3に掲載してある。
【0095】
ベクターDNAは、従来の形質転換あるいはトランスフェクション技術により原核細胞あるいは真核細胞の中に導入することができる。本出願で使用されるとき、「形質転換」と「トランスフェクション」、「接合」と「形質導入」という用語は、リン酸カルシウム法、あるいは塩化カルシウム共同沈降法、DEAE−デキトストラン−仲介トランスフェクション法、リポフェクション法、天然応答能法、化学的媒介移送法、あるいは電気穿孔法を含む、宿主細胞の中にベクターの形態で外因性核酸(例えば、線状DNAあるいはRNA(例えば、線状化されたベクターあるいはベクター無しで遺伝子構築物のみ)あるいはベクターの形態の核酸(例えば、ブラスミド、ファージ、ファスミド、ファージミド、トランスポゾン、あるいは他のDNA))を導入するための認知されているさまざまな技術を言う。宿主細胞を形質転換するあるいはトランスフェクションするための適当な諸方法は、Sambrookら『分子クローニング−実験室マニュアル:コールドスプリングハーバーラボラトリー版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual.)』、第 2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press刊, ニューヨーク州Cold Spring Harbor市、1989およびその他の実験室マニュアルに見つけることができる。
【0096】
哺乳動物細胞の安定したトランスフェクションに関しては、使用されている発現ベクターおよびトランスフェクション技術によるが、細胞のほんの小さな分画だけがその外因性DNAをそのゲノムの中に組み込みうる。これらの構成要素を同定しまた選択するためには、選択可能なマーカーをコードする遺伝子(例えば、抗生物質に対する耐性)が一般的には、その関心の対象となっている遺伝子とともにその宿主細胞の中に導入される。好適な選択可能なマーカーには、G418、ハイグロマイシン、メトトレキセートなどの薬剤に対する耐性を付与するそうしたものが含まれる。選択可能なマーカーをコードする核酸は、代謝経路タンパク質をコードするものと同じベクター上に、宿主細胞の中に導入することができ、あるいは別のベクター上に導入することができる。その導入された核酸により安定的にトランスフェクションされた細胞は、薬剤選択により同定することができる(例えば、その選択可能なマーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生存し、一方、その他の細胞は死亡する)。
【0097】
相同的組換え微生物を作り出すために、欠失、付加、あるいは置換が導入され、それによって例えば、機能的に破壊された代謝経路を変化させる代謝経路遺伝子の少なくとも一部を含むベクターが作成される。好適には、この代謝経路遺伝子はコリネバクテリウム−グルタミカム代謝経路遺伝子であるが、しかし、それは、関連細菌あるいは哺乳動物、酵母、あるいは昆虫資源からであっても相同体になりうる。1つの好適な実施態様では、そのベクターは、相同的な組換えに際して、内因性代謝経路遺伝子が機能的に破壊される(すなわち、もはや機能タンパク質をコードせず、また、「ノックアウト」ベクターと呼ばれる)ように設計される。代替的には、そのベクターは、相同的な組換えに際して、内因性代謝経路遺伝子が変異される、あるいはそうでなければ変更されるが、しかしまだ機能タンパク質をコードする(例えば、上流制御領域は変更することができ、それによって内因性代謝経路タンパク質の発現を変更する)ように設計される。相同的組換えベクターでは、代謝経路遺伝子の変更された部分が、微生物中の内因性代謝経路遺伝子とベクターにより担体された外因性代謝経路遺伝子との間に起こる相同的組換えを考慮するように、代謝経路遺伝の付加的な核酸によりその5’と3’末端で隣接している。付加的な隣接代謝経路核酸は、内在性遺伝子との相同的組換えを成功裡に行うには十分なものである。典型的には、隣接するDNAの数キロベース(5’と3’末端の両方で)がそのベクターには含められる(例えば,相同的組換えベクターに関する説明に関してはThomas, K. R., Capecchi, M. R. (1987) Cell 51: 503を参照されたい)。そのベクターは、微生物の中に導入され(例えば、電気穿孔法により)、また、その導入された代謝経路遺伝が内因性代謝経路遺伝子と相同的に組換えられた細胞が当業者には公知の技術を使用して選択される。
【0098】
もう1つの実施態様では、導入された遺伝子の制御された発現を考慮する選択システムを含む組換え微生物を産生することができる。例えば、lacオペロンの制御下にそれを置くベクター上に代謝経路遺伝子を含めることは、IPTGの存在下でのみ代謝経路遺伝子の発現が可能になる。こうした制御システムは当業者には周知のことである。
【0099】
もう1つの実施態様では、そのタンパク質産物の発現が起こらないように、宿主細胞中の内因性代謝経路遺伝子が破壊される(例えば、当業者には公知のものである相同的組換えあるいは他の遺伝子手段により)。もう1つの実施態様では、宿主細胞の中の内因性あるいは導入された代謝経路遺伝子が、1つあるいはそれ以上の点変異、欠失、あるいは転化により変更されたが、しかしまだ機能代謝経路タンパク質をコードする。さらにもう1つの実施態様では、代謝経路遺伝子の発現が調節されるように、微生物の中の代謝経路遺伝子の1つあるいはそれ以上の制御領域(例えば、プロモーター、リプレッサー、あるいは誘導物質)が変更された。当業者であれば、説明されている代謝経路遺伝とタンパク質修飾の1つ以上を含む宿主細胞は、本発明の諸方法を使用して容易に産生しうるものであり、また、本発明には含まれるということを意味している。
【0100】
原核細胞あるいは真核細胞である宿主細胞などの本発明の宿主細胞は、代謝経路タンパク質を産生する(すなわち、発現する)のに使用することができる。したがって、本発明はさらに、本発明の宿主細胞を使用して代謝経路タンパク質を産生するための諸方法を提供する。1つの実施態様では、本方法は、本発明の宿主細胞(そこに、野生型あるいは変更された代謝経路タンパク質をコードする遺伝子により、代謝経路タンパク質をコードする組換え発現ベクターが導入され、あるいはゲノムが導入された)を培養するステップから成る。毛1つの実施態様では、本方法はさらに、培地あるいは宿主細胞から代謝経路タンパク質を分離するステップから成る。
【0101】
C.分離代謝経路タンパク質
本発明のもう1つの態様は、分離された代謝経路タンパク質およびその生物学的活性部分に関する。「分離された」あるいは「精製された」タンパク質あるいはその生物学的活性部分が、組換えDNA技術により産生されるときに化学前駆体あるいは化学的に合成されるときにはその他のケミカルが実質的に細胞物質から遊離する。「実質的に細胞物質から遊離する」という表現には、天然であるいは組換え的に産生される細胞の細胞成分からタンパク質が分離される代謝経路タンパク質の作成物が含まれる。1つの実施態様では、「実質的に細胞物質から遊離する」という表現には、非代謝経路タンパク質の約30%(乾燥重量で)未満を有する代謝経路タンパク質の作成物が含まれ、さらに好適には非代謝経路タンパク質の約20%未満であり、その上さらに好適には非代謝経路タンパク質の約10%未満であり、またもっとも好適には約5%の非代謝経路タンパク質である。代謝経路タンパク質あるいはその生物学的活性部分が組換え的に生産されるとき、それはまた好適には実質的に培養培地から遊離する、すなわち、培養培地は、約20%未満を示し、さらに好適には約10%未満、またもっとも好適にはタンパク質調製物の容量の約5%未満である。「実質的に化学前駆体あるいはその他のケミカルから遊離する」という表現は、タンパク質の合成に関与している化学前駆体あるいはその他のケミカルからそのタンパク質が分離している代謝経路タンパク質の調製物が含まれる。1つの実施態様では、実質的に化学前駆体あるいはその他のケミカルから遊離する」という表現は、化学前駆体あるいは非代謝経路ケミカルの約30%(乾燥重量で)未満を有する代謝経路タンパク質の作成物が含まれ、さらに好適には約20%未満の化学前駆体あるいは非代謝経路ケミカルであり、その上さらに好適には約10%未満の化学前駆体あるいは非代謝経路ケミカルであり、またもっとも好適には約5%の化学前駆体あるいは非代謝経路ケミカルである。好適な実施態様では、分離タンパク質あるいはその生物学的活性部分は、代謝経路タンパク質が誘導された同じ生物体から得られる汚染タンパク質がない。典型的には、こうしたタンパク質は、例えば、C.グルタミカムなどの微生物の中のC.グルタミカム 代謝経路タンパク質の組換え発現により産生される。
【0102】
本発明の分離代謝経路タンパク質あるいはその一部は、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路における酵素反応を触媒することができ、あるいは表1に掲載されている1つあるいはそれ以上の活性を有する。好適な実施態様では、そのタンパク質あるいはその一部は、そのタンパク質あるいはその一部がアミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路における酵素反応を触媒する能力を維持するように、本発明のアミノ酸配列(例えば、配列表の偶数の番号を付した配列識別番号の配列)に十分に相同的であるアミノ酸配列から成る。そのタンパク質の一部は、本出願で説明されているように、好適には生物学的活性部分である。もう1つの好適な実施態様では、本発明の代謝経路タンパク質は、配列表の偶数番号を付した配列識別番号として掲載されているアミノ酸配列を有する。さらにもう1つの好適な実施態様では、代謝経路タンパク質は、例えば、緊縮性条件下で本発明のヌクレオチド配列(例えば、配列表の奇数番号を付した配列識別番号の配列)にハイブリダイズされるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有する。その上さらにもう1つの好適な実施態様では、代謝経路タンパク質は、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、あるいは60%が本発明のヌクレオチド配列の1つの相同的であるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有し、好適には、少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、あるいは70%が本発明のヌクレオチド配列の1つの相同的であるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有し、さらに好適には、少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、あるいは80%が本発明のヌクレオチド配列の1つの相同的であるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有し、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、あるいは90%あるいは91%、92%、93%、94%が本発明のヌクレオチド配列の1つの相同的であるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有し、約95%、96%、97%、98%、99%あるいはそれ以上が本発明のヌクレオチド配列の1つの相同的であるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有する。上記に引用されている反応に対する中間的な範囲と識別値(例えば、70〜90%が同一、あるいは80〜95%が同一)もまた、本発明により包含されることが意図されている。例えば、上限およびまたは下限として引用されている上記の値のいずれかの組み合わせを使用した識別値の範囲は包含されることが意図されている。本発明の好適な代謝経路タンパク質もまた、本出願で説明されている代謝経路活性の少なくとも1つを好適には有する。例えば、本発明の好適な代謝経路タンパク質には、本発明のヌクレオチド配列に、例えば、緊縮性条件下でハイブリダイズされるヌクレオチド配列、また、アミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロース代謝経路における酵素反応を触媒することができるヌクレオチド配列、あるいは表1に掲載されている活性の1つあるいはそれ以上を有するヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列が含まれる。
【0103】
他の実施態様では、代謝経路タンパク質は、本発明のアミノ酸配列(例えば、配列表の偶数を付した配列識別番号の配列)に対して実質的に相同的であり、また、本発明のアミノ酸配列のうちの1つの一部の機能活性を維持し、その上さらに上のサブセクションIに詳細に説明されているように、自然変異と突然変異誘発によりアミノ酸配列で異なる。したがって、もう1つの実施態様では、代謝経路タンパク質は、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、あるいは60%が本発明の全アミノ酸配列に相同的であり、また少なくとも本出願に説明されている代謝経路活性の少なくとも1つは有するアミノ酸配列から成るタンパク質であり、また少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、あるいは70%が本発明の全アミノ酸配列に相同的であり、また少なくとも本出願に説明されている代謝経路活性の少なくとも1つは有するアミノ酸配列から成るタンパク質であり、さらに好適には、少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、あるいは80%が本発明の全アミノ酸配列に相同的であり、また少なくとも本出願に説明されている代謝経路活性の少なくとも1つは有するアミノ酸配列から成るタンパク質であり、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、あるいは90%あるいは91%、92%、93%、94%が本発明の全アミノ酸配列に相同的であり、また少なくとも本出願に説明されている代謝経路活性の少なくとも1つは有するアミノ酸配列から成るタンパク質であり、約95%、96%、97%、98%、99%あるいはそれ以上が本発明の全アミノ酸配列に相同的であり、また少なくとも本出願に説明されている代謝経路活性の少なくとも1つは有するアミノ酸配列から成るタンパク質である。上記に引用されている反応に対する中間的な範囲と識別値(例えば、70〜90%が同一、あるいは80〜95%が同一)もまた、本発明により包含されることが意図されている。例えば、上限およびまたは下限として引用されている上記の値のいずれかの組み合わせを使用した識別値の範囲は包含されることが意図されている。もう1つの実施態様では、本発明は、本発明の全アミノ酸配列に対して実質的に相同的である完全長C.グルタミカム タンパク質に関する。
【0104】
代謝経路タンパク質の生物学的活性部分には、代謝経路タンパク質のアミノ酸配列から誘導されたアミノ酸配列、例えば、配列表の偶数番号を付した配列識別番号のアミノ酸配列あるいは、代謝経路タンパク質に相同的である完全長代謝経路タンパク質よりも少ないアミノ酸を含む、あるいは完全長代謝経路タンパク質を含む、代謝経路タンパク質に相同的であるタンパク質のアミノ酸配列から成るペプチドが含まれ、また、代謝経路タンパク質の生物学的活性部分は代謝経路タンパク質の少なくとも1つの活性を示す。典型的には、生物学的活性部分(ペプチド、例えば、長さにして例えば、5,10, 15, 20, 30, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 50, 100 あるいはそれ以上のアミノ酸である)は、代謝経路タンパク質の少なくとも1つの活性を備えたドメインあるいはモチーフから成る。さらに、そのタンパク質の他の領域が欠失しているその他の生物学的活性部分は、組換え技術により作成することができ、また、本出願で説明されている活性の1つあるいはそれ以上に関して評価される。好適には、代謝経路タンパク質の生物学的活性部分には、生物学的活性を有する1つあるいはそれ以上の選択されたドメイン/モチーフあるいはその一部が含まれる。
【0105】
代謝経路タンパク質は好適には組換えDNA技術により産生される。例えば、そのタンパク質をコードする核酸分子は、発現ベクター(上述されているように)の中にクローン化されて入れられ、その発現ベクターは宿主細胞の中に導入され(上述されているように)、また代謝経路タンパク質は宿主細胞の中で発現する。代謝経路タンパク質はその後に、標準的なタンパク質精製技術を使用して適当な精製計画により細胞から分離することができる。組換え発現に対する代替的なものとして、代謝経路タンパク質、ポリペプチド、あるいはペプチドは、標準的なペプチド合成技術を使用して化学的に合成することができる。さらに、在来の代謝経路タンパク質は、例えば、本発明の代謝経路タンパク質あるいはその断片を利用して標準的な技術により産生することができる抗代謝経路タンパク質を使用して、細胞(例えば、内皮細胞)から分離することができる。
【0106】
本発明はまた、代謝経路キメラあるいは融合タンパク質を提供する。本出願で使用されるとき、代謝経路「キメラタンパク質」あるいは「融合タンパク質」は、非代謝経路ポリペプチドに操作可能にリンクされる代謝経路ポリペプチドから成る。「代謝経路ポリペプチド」は、代謝経路に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドを言い、一方、「非代謝経路ポリペプチド」は代謝経路タンパク質に実質的に相同的ではないタンパク質、例えば、代謝経路タンパク質とは異なりまた、同じあるいは異なる生物から誘導されるタンパク質に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドを言う。融合タンパク質内では、「操作可能にリンクする」という表現は、代謝経路ポリペプチドと非代謝経路ポリペプチドが互いにフレーム内で融合していることを示すように意図されている。非代謝経路ポリペプチドは、代謝経路ポリペプチドのN−末端あるいはC−末端に融合することができる。例えば、1つの実施態様では、融合タンパク質は、代謝経路配列がGST配列のC−末端に融合されるGST−MP融合タンパク質である。こうした融合タンパク質は、組換え代謝経路タンパク質の精製を容易にすることができる。もう1つの実施態様では、融合タンパク質は、そのN−末端にある異種シグナル配列を含む代謝経路タンパク質である。ある種の宿主細胞(例えば、哺乳宿主細胞)では、代謝経路タンパク質の発現および/または分泌は、異種シグナル配列の使用により増加することができる。
【0107】
好適には、本発明の代謝経路キメラあるいは融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術により産生される。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNA断片が、例えば、望ましくない接合および酵素ライゲーションを回避するために、適当なアルカリホスファターゼ処理として、適当な末端、接着末端の充填を用意するように、ライゲーション、制限酵素加水分解に関しては、平滑断端あるいはねじり型断端末端を用いることにより、通常の技術によりフレーム内で結紮される。もう1つの実施態様では、融合遺伝子は融合遺伝子は、自動化DNAシンセサイザーを含む通常の技術により合成することができる。代替的には、遺伝子断片のPCR増幅は、キメラ遺伝子配列を生成するためにその後にアニーリングし、また再増幅することができる、連続遺伝子断片の間の相補的なオーバーハングを生じるアンカープライマーを使用して実施することができる(例えば、Ausubelら編『分子生物学における現行プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)』、John Wiley & Sons社刊(1992)を参照されたい)。さらに、融合部分を容易にコードする数多くの発現ベクターが市販されていて入手可能である(例えば、GSTポリペプチド)。代謝経路コード核酸は、代謝経路タンパク質にフレーム内で融合部分がリンクするように、そうした発現ベクターの中にクローン化して入れることができる。
【0108】
代謝経路タンパク質の相同体は、突然変異誘発物質、例えば、代謝経路タンパク質の分散した点変異あるいは切り詰めにより生成することができる。本出願で使用されるとき、「相同体」という用語は、代謝経路タンパク質のアゴニストあるいはアンタゴニストとして作用する代謝経路タンパク質の変異形態を言う。代謝経路のアゴニストは、代謝経路タンパク質の生物学的活性と同じものあるいはサブセットを実質的に保持することができる。代謝経路タンパク質のアンタゴニストは、例えば、代謝タンパク質を含む代謝経路カスケードの下流あるいは上流メンバーに競合的に結合することにより、代謝経路タンパク質の天然に起こる形態の活性の1つあるいはそれ以上を示すことができる。したがって、本発明のC.グルタミカム代謝経路タンパク質とその相同体は、代謝経路タンパク質がこの微生物の中で役割を果す1つあるいはそれ以上の代謝経路の活性を調節しうる。
【0109】
1つの代替的実施態様では、代謝経路タンパク質の相同体は、代謝経路アゴニストあるいはアンタゴニスト活性に関して、代謝経路タンパク質の変異体、例えば、切り詰め変異体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより、同定することができる。1つの実施態様では、代謝経路変異体の異型性ライブラリーは、核酸レベルでコンビナトリアル突然変異誘発物質により生成され、また異型性遺伝子ライブラリーによりコードされる。代謝経路変異体の異型性ライブラリーは、潜在的な代謝経路配列の分解セットが、個々のポリペプチドあるいは代替的には、そこにある代謝経路配列のセットを含有する大きな融合タンパク質のセットとして(例えば、ファージ表示のために)発現可能である。変性オリゴヌクレオチド配列から潜在的な代謝経路層動態のライブラリーを賛成するのに使用することができるさまざまな方法がある。変性遺伝子配列の化学合成は自動化DNAシンセサイザーで実施することができ、また、その合成遺伝子は適当な発現ベクターの中に結紮される。遺伝子の変性セットを使用することにより、1つの混合物の中で、潜在的な代謝経路配列の所望されるセットをコードする配列の全ての供給が考慮される。変性オリゴヌクレオチドを合成するための諸方法は当業者には公知のものである(例えば、Narang, S. A. (1983)Tetrahedron 39: 3; Itakuraら、(1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakuraら(1984)Science 198:1056; Ikeら(1983)NucleicAcidRes.11:477)。
【0110】
さらに、代謝経路タンパク質コード化断片のライブラリーを、代謝経路タンパク質の相同体のスクリーニングとその後に続く選択に対して、代謝経路断片の異型性集団を生成するのに使用することができる。1つの実施態様では、コード化配列断片のライブラリーはニッキングが分子当たりたった約1回しか起こらない条件下でヌクレアーゼにより、代謝経路コード配列の二本鎖PCR断片を処理し、その二本鎖DNAを変性し、異なるニック産物からセンス/アンチセンス対を含むことができる二本鎖DNAを形成するためにそのDNAを再編成し、S1ヌクレオチドによる処理により再形成された二本鎖から一本鎖を取り除き、また、発現ベクターの中に結果的に生じた断片ライブラリーを結紮することにより、生成することができる。この方法により、代謝経路タンパク質のさまざまなサイズのN−末端、C−末端、および内的断片をコードする発現ライブリーは誘導することができる。
【0111】
点変異あるいは切り詰めにより作られたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための、また、選択された特性を有する遺伝子産物のcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術は当業者には公知のものである。こうした技術は、代謝経路相同体のコンビナトリアル突然変異誘発物質により生成される遺伝子ライブラリーの急速なスクリーニングに応用可能である。大量の遺伝子ライブラリーをスクリーニングするため高いスループット分析に敏感に反応することができるもっとも広く用いられている技術には典型的には、その遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターの中に入れてクローン化すること、ベクターの結果的に生じるライブラリーにより適当な細胞を形質転換すること、また、所望される活性の検出によりその産物が検出された遺伝子をコードするベクターの分離が容易になる条件下でコンビナトリアル遺伝子を発現することが含まれる。ライブラリーでは機能変異体の頻度を向上させる新しい技術である反復アンサンブル変異誘発(REM)は、代謝経路相同体を同定するスクリーニング測定と組み合わせて使用することができる(Arkin Yourvan (1992) PNAS 89:7811−7815; Delgraveら(1993) Proten Engineering 6 (3): 327−331)。
【0112】
もう1つの実施態様では、細胞を基礎においた測定は、当業者には公知の方法を用いて、異型性代謝経路ライブラリーを分析するのに用いうる。
【0113】
D.本発明の使用および用途
本出願で説明されている核酸分子、タンパク質、タンパク質相同体、融合タンパク質、プライマー、ベクターおよび宿主細胞は以下の方法の1つあるいはそれ以上の以下の方法で使用することができる。すなわち、C.グルタミカムとその関連生物の同定、C.グルタミカムに関連している生物のゲノム、関心の対象となっているC.グルタミカム配列の同定と局在化、進化の研究、機能に必要な代謝経路タンパク質領域の測定、代謝経路タンパク質活性の調節、代謝経路の活性の調節、およびファインケミカルなどの所望される細胞産生の調節。
【0114】
本発明の代謝経路核酸分子はさまざまな用途を有する。まず、コリネバクテリウム−グルタミカムあるいはその近しい関連のあるものであると、1つの生物を同定するのに使用しうる。また、それらは、微生物の混合手段の中にいるC.グルタミカム の存在を同定するのに使用しうる。本発明は、C.グルタミカム遺伝子の数々のヌクレオチド配列を提供する。すなわち、この生物にユニークであるC.グルタミカム遺伝子の領域にわたるプローブにより、緊縮性条件下で微生物の単一あるいは混合集団の培養培地からの抽出ゲノムDNAをプローブしてみることにより、この生物が存在しているかどうかを確かめることができる。コリネバクテリウム−グルタミカム自体はヒトに対しては病原体とはならないが、これはコリネバクテリウム−ジフテリアなどのヒト病原体である種に関連している。コリネバクテリウム−ジフテリアは、ジフテリアの原因菌であり、局所および全身的な病原性を含んでいる、急速に発症する、急性、発熱性感染症である。この疾患では、局所病変が上部呼吸気管で発症し、また、上皮細胞への壊死損傷が含まれる。Bacilli菌は毒素を分泌し、それがこの病変中に播種されて、身体遠位の感受性のある組織に播種される。変性変化が、これらの組織の中でタンパク質の合成の阻害によりもたらされ、それには心臓、筋肉、末梢神経、副腎、腎臓、肝臓および脾臓を含み、この疾患全身的な病原体という結果になる。ジフテリアは、アフリカ、アジア、東ヨーロッパおよび旧ソビエト時代の独立諸国を含む世界の多くの地域で高い罹患率を保有しつづけている。1990年以来、まだ続いている後者2つの地域では、少なくとも5000人の死亡という結果になっている。
【0115】
1つの実施態様では、本発明は対象者にコリネバクテリウム ジフテリアの存在あるいは活性を同定する方法を提供する。これの方法には、本発明の核酸あるいはアミノ酸配列(例えば、それぞれ奇数番号を付したあるいは偶数番号を付した配列識別番号として説明されている配列)の1つあるいはそれ以上の検出が含まれており、それによって、その対象者におけるコリネバクテリウム ジフテリアの存在あるいは活性を検出する。C.グルタミカムとC. ジフテリア は関連性があり、また、C.グルタミカム中の核酸およびタンパク質分子の多くが、C. ジフテリア核酸とタンパク質分子に相同的であり、またしたがって、対象者の中でC. ジフテリアを検出するのに使用することができる。
【0116】
本発明の核酸とタンパク質分子はまた、そのゲノムの特定領域に対するマーカーとして役立っている。 これは、そのゲノムの地図作成においてだけてはなく、C.グルタミカムタンパク質の機能的な研究のためにも有用性有している。例えば、特定のC.グルタミカム DNA結合タンパクマ質が結合しているそのゲノムの領域を同定するために、そのC.グルタミカムのゲノムは加水分解させることができ、また、その断片はDNA結合タンパク質によりインキューベートされる。タンパク質に結び付いたものは、本発明の核酸分子により追加してプローブされるが、好適には、容易に検出可能な標識と一緒である。すなわち、こうした核酸分子をゲノム断片に結合すると、C.グルタミカムのゲノム地図に対してその断片の局在化が可能になり、また、異なる酵素で数回行った場合には、そのタンパク質が結合する核酸配列の急速な測定を容易にする。さらに、本発明の核酸分子は、これら核酸分子が、ブレビバクテリウム−ラクトフェルメンタム(Brevibacterium lactofermentum)などの関連細菌における遺伝子地図の構築用のマーカーとして役に立つように、関連種配列に十分に相同性になりうる。
【0117】
本発明の代謝経路核酸はまた、進化およびタンパク質構造の研究に有用である。本発明の分子が参加する代謝プロセスは、広範でさまざまな原核細胞および真核細胞により利用される。すなわち、本発明の核酸分子の配列を、他の生物からの同様なエンザイムをコードするものと比較することにより、生物間の進化の関連性を評価することができる。同様に、こうした比較により、どの配列の領域が保存され、またどれがそうでないのか、どれがエンザイムの機能性に対して欠かせないタンパク質のそうした領域を決定するのを手助けするものなのかの評価が可能となる。このタイプの決定は、タンパク質工学に関する値のものであり、また、タンパク質が機能を失わずに、突然変異誘発という点からタンパク質が耐性をもちうるのは何かという示唆が与えられる。
【0118】
本発明の代謝経路核酸分子の操作は、野生型代謝タンパク質とは異なる機能的な違いを有する代謝経路タンパク質の産生という結果を生じる。こうしたタンパク質は、効率あるいは活性において改善される可能性があり、通常よりも細胞の中に大きな数になるものとして存在しており、あるいは効率あるいは活性において減少することもありうる。
【0119】
本発明はまた、タンパク質自体と、あるいは基質、あるいは代謝経路タンパク質の結合パートナーと相互作用することによるか、あるいは本発明の代謝経路核酸分子の転写あるいは翻訳を調節することよるかのいずれかで、代謝経路タンパク質の活性を調節する分子をスクリーニングするための方法を提供する。こうした方法では、本発明の1つあるいはそれ以上の代謝経路タンパク質を発現する微生物は、1つあるいはそれ以上の試験化合物と接触し、また代謝経路タンパク質の活性あるいは発現のレベルに対して各試験化合物の効果が評価される。
【0120】
C.グルタミカムの大規模発酵培養培地から分離される所望されるファインケミカルがアミノ酸、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシド、あるいはトレハロースである場合は、組換え遺伝子メカニズムによる本発明のタンパク質の1つあるいはそれ以上の活性の調節あるいは活性の効率は、こうしたファインケミカルのうちの1つの生産に直接影響を与える可能性がある。例えば、所望されるアミノ酸に関する生合成経路にある酵素の場合、その酵素の効率あるいは活性(遺伝子の複数コピーの存在も含めて)は、所望されるアミノ酸の増加生産あるいは生産の効率につながるべきものである。所望するアミノ酸の合成とその合成が競合するアミノ酸の生合成経路にある酵素の場合、この酵素の効率あるいは活性のいずれかの減少(その遺伝子の欠失も含めて)により、中間体化合物および/またはエルネギーに関する競合が減少したために、所望されるアミノ酸の生産のあるいは生産効率で増加するという結果になって然るべきである。所望するアミノ酸の分解経路にある酵素の場合は、その酵素の効率あるいは活性のいずれかの減少はその分解の減少のために、所望される産物の生産のより大きな収率あるいは生産効率を結果的に生じて然るべきである。最後に、この酵素はもはや阻害のフィードバックができないといったように所望されるアミノ酸の生合成に関与している酵素の突然変異誘発物質は、その所望されるアミノ酸の収率と生産の効率が増加するという結果になって然るべきなのである。同じことが、ビタミン、コファクター、ニュートラシューティカル、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよびトレハロースの代謝に関与している本発明の生合成および分解酵素に適用すべきである。
【0121】
同様に、所望されるファインケミカルが前述の化合物の1つではない場合、本発明のタンパク質の1つの活性の調節が、C.グルタミカムの大規模培養培地から得られる化合物の生産の収率および/または効率にさらに影響を及ぼしうる。いずれかの生物の代謝経路は互いに関連している。1つの経路により使用されている中間体は多くの場合、異なる経路により供給される。酵素発現と機能は、異なる代謝プロセスから得られる化合物の細胞レベルに基づいて制御され、また、アミノ酸やヌクレオチドなどの塩基増殖に必要な分子の細胞レベルは、大規模培養培地中の微生物の生存度に非常に重大な影響を与える可能性がでる。したがって、もはや阻害をフィードバックするように反応しない、あるいは効率あるいは代謝率が改善されるように、アミノ酸生合成酵素の調節は、例えば、1つあるいはそれ以上のアミノ酸の細胞レベルの増加と結果になりうる。順番に、アミノ酸のプールが増加すれば、タンパク質合成に必要な分子の供給増加だけではなく、数多くの他の生合成経路にある中間体および前駆体として利用される分子も増加する。特定のアミノ酸がその細胞の中で制限されていた場合、その生産が増加すると、全ての種類のタンパク質を細胞がさらに効率的に生産でき、大規模な培養培地でおそらく全体的な増殖速度あるいは細胞の生存能力が増加するようになるばかりでなく、非常に多くのその他の代謝反応を行う細胞の能力も増大する。生存度が増加すると、発酵培養培地で所望されるファインケミカルを生産することができる細胞の数が改善され、それによって、この化合物の収率が増加する。その酵素がもはや触媒せず、あるいはより少ない効率で触媒を行い、所望される化合物の生合成に重要である細胞内化合物の分解が行われ、あるいは大規模培養培地で細胞がより効率よく増殖し再生産するように、同様なプロセスを本発明の分解酵素活性の調節により実現可能である。強調すべきことといえば、分解活性を最適化し、あるいは本発明のある分子の生合成活性を減少させることによっても、C.グルタミカムから得られるある種のファインケミカルの生産に及ぶ恩恵を受けることができることである。例えば、1つあるいはそれ以上の中間体、それ以上の中間体に対する所望される化合物の生合成経路と競合する経路にある生合成酵素の活性の効率を減少させることにより、より多くのこれら中間体が所望される産物に変換するのに有用なものとなって然るべきである。同様の状況で、本発明の1つあるいはそれ以上のタンパク質の分解能力あるいは効率を改善することが必要となる場合も考えられる。
【0122】
所望される化合物の増加した収量を結果的に得ている代謝経路タンパク質に対する突然変異誘発物質の対策のこの前述されているリストは、限定されたものではない。これら突然変異物質の対策についての変更は、当業者であれば、容易に明らかとなることであろう。これらのメカニズムにより、本発明の核酸とタンパク質分子は、所望される化合物の収率、生産および/または生産効率が改善されるように、変異させた代謝経路核酸とタンパク質分子を発現させるC.グルタミカムあるいは細菌の関連菌株を生成するのに使用されうる。この所望される化合物は、C.グルタミカムの代謝では自然発生はしないが、本発明のC.グルタミカムにより生産される分子だけではなく、自然発生代謝経路の生合成経路と中間体の最終産物を含む、C.グルタミカムのいずれかの天然産物である。
【実施例】
【0123】
本発明はさらに、制限するものとして解釈されるべきものではない以下の実施例により説明される。本出願により引用されている全ての参考資料、特許出願、特許、公開特許出願、表および配列表の内容は引用例として本出願に組み込まれているものである。
【0124】
【表1】

【0125】
【表2】

【0126】
【表3】

【0127】
【表4】

【0128】
【表5】

【0129】
【表6】

【0130】
【表7】

【0131】
【表8】

【0132】
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【表10】

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【表11】

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【表76】

【0200】
【表77】

【0201】
実施例
実施例1:Corynebacterium glutamicum ATCC13032の全ゲノムDNAの製造
Corynebacterium glutamicum (ATCC13032)の培養は、激しく攪拌したBHI媒体(Difco)中で、30℃で終夜行なわれた。細胞は遠心分離により回収され、上澄みを処分し、細胞は、5mlの緩衝液I(最初の培養容積の5%、すべての示された容積は、100mlの培養容積のために計算されたものである。)中再懸濁された。緩衝液Iの組成は、140.34g/lのショ糖、2.46g/lのMgSO4x7H2O、10ml/lのKH2PO4溶液(100g/l、KOHでpH6.7に調整)、50ml/lのM12濃縮物(10g/lの(NH42SO4、1g/lのNaCl、2g/lのMgSO4x7H2O、0.2g/lのCaCl2、0.5g/lの酵母抽出物(Difco)、10ml/lのトレース−エレメンツ−ミックス(200mg/lのFeSO4xH2O、10mg/lのZnSO4x7H2O、3mg/lのMnCl2x4H2O、30mg/lのH3BO3、20mg/lのCoCl2x6H2O、1mg/lのNiCl2x6H2O、3mg/lのNa2MoO4x2H2O、500mg/lの錯化剤(EDTAまたはクエン酸)、100ml/lのビタミン−ミックス(0.2mg/lのビオチン、0.2mg/lの葉酸、20mg/lのp−アミノ安息香酸、20mg/lのリボフラビン、40mg/lのパントテン酸カルシウム、140mg/lのニコチン酸、40mg/lの塩酸ピリドキソール、200mg/lのミオ−イノシトール)である。リゾチームを最終濃度が2.5mg/mlになるまで懸濁液に加えた。約4時間、37℃での培養の後、細胞壁を劣化させ得られたプロトプラストを遠心分離によって回収した。ペレットを5mlの緩衝液Iで一度、5mlのTE緩衝液(10mMのトリスHCl、1mMのEDTA、pH8)で一度洗浄した。ペレットを4mlのTE緩衝液に再懸濁し、0.5mlのSDS溶液(10%)と0.5mlのNaCl溶液(5M)を加えた。プロテイナーゼKを最終濃度200μg/mlになるまで加えた後、懸濁液を約18時間、37℃で培養した。DNAを標準的な操作で、フェノール、フェノール−クロロホルム−イソアミルアルコールおよびクロロホルム−イソアミルアルコールによる抽出により精製した。それから、DNAを1/50容積の3M酢酸ナトリウムおよび2容積のエタノールを加えて析出させ、次いで30分間、−20℃でインキュベートし、SS34ローター(Sorvall)を使用した高速遠心分離機で12000rpmで遠心分離を30分間行なった。DNAを20μg/mlのRNアーゼAを含む1mlのTE緩衝液に溶解し、4℃で、少なくとも3時間1000mlのTE緩衝液に対して透析した。この間、緩衝液を3度交換した。透析したDNA溶液の0.4mlの部分に、0.4mlの2MLiClと0.8mlのエタノールを加えた。30分間、−20℃でインキュベートした後、遠心分離(13000rpm、Biofuge Fresco,Heraeus,Hanau,Germany)によりDNAを集めた。DNAペレットをTE緩衝液に溶解した。この操作により製造されたDNAは、すべての目的、サザンブロット法またはゲノムライブラリーの構築に使用することができた。
【0202】
実施例2:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のEscherichia Coliにおけるゲノムライブラリーの構築
実施例1に記載したように製造されたDNAを用いて、コスミッドおよびプラスミドライブラリーが、公知で、よく確立された方法に従って構築された(例えば、Sambrook,Jら、(1989)'Molecular Cloning:A Laboratory Manual', Cold Spring Harbor Laboratory PressまたはAusubel,F.Mら(1994) 'Current Protocols in Molecular Biology', John Wiley and Sons.を参照)。
【0203】
どんなプラスミドまたはコスミッドでも使用することができた。特別に、プラスミドpBR322(Sutcliffe, J.G.(1979) Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75:3737-3741);pACYC177 (Change とCohen(1978) J.Bacteriol 134:1141-1156),pBSの系列のプラスミド(pBSSK+,pBSSK-およびその他;Stratagene LaJolla,USA),またはSuperCos1(Stratagene LaJolla,USA)、Lorist6(Gibson,T.J.,Rosenthal A.およびWaterson,R.H.(1987) Gene 53:283-286)のコスミッドが使用された。特にC.glutamicumにおいて使用するためのジーンライブラリーは、プラスミドpSL109( Lee,H.S.およびA.J.Sinskey(1994) J.Microbiol.Biotechnol.4:256-263)を用いて構築することができる。
【0204】
実施例3:DNAシーケンスとコンピューターによる機能解析
実施例2に記載されたゲノムライブラリーを標準的な方法、特にABI377シーケンスマシーンを用いた鎖成長停止反応法(例えばFleischman,R.D.ら(1995)'Whole-genome Random Sequencing and Assembly of Haemophilus Influenzae Rd.',Science, 269:496-512参照)に従ったDNAシーケンスに使用した。以下のヌクレオチド配列のシーケンスプライマーが使用された:5'-GGAAACAGTATGACCATG-3'または5'-GTAAAACGACGGCCAGT-3'。
【0205】
実施例4:生体内突然変異誘発
Corynebacterium glutamicumの生体内突然変異誘発が、E.coliまたは他の微生物(例えばBacillus spp.またはSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母)であってその遺伝子情報の完全性を保つための能力が減じられているものを通して、プラスミド(または他のベクター)の通過により行なうことができる。典型的なミューテーター株は、DNA修復システム(例えばmutHLS,mutD,mutTその他;Rupp,W.D.(1996) DNA repair mechanisms,Escherichia coli and Salmonella,p2277-2294,ASM:Washington参照)の遺伝子に変異を持っている。このような株は当業者によく知られている。このような株の使用は、例えばGreener,A.およびCallahan,M.(1994) Strategies 7:32-34に記載されている。
【0206】
実施例5:Escherichia coli および Corynebacterium glutamicumの間のDNA転換
いくつかのCorynebacteriumとBrevibacterium種は自律的に複製する(例えば、Martin, J.F.ら(1987) Biotechnology, 5:137-146参照)内因性プラスミド(例えばpHM1519またはpBL1)を含む。Escherichia coliとCorynebacuterium glutamicumのシャトルベクターは、E.coliの標準ベクター(Sambrook,J.et al.(1989),'Molecular Cloning:A Laboratory Manual',Cold Spring Harbor Laboratory PressまたはAusubel,F.M.et al.(1994)'Current Protocols in Molecular Biology', John Wiley and Sons)を用いて、これに、開始または複製のおよび適当なCorynebacterium glutamicum由来のマーカーを加えることで容易に構築することができる。このような複製の開始点は、好ましくはCorynebacteriumとBrevibacterium種から単離された内因性プラスミドからもたらされる。これらの種の形質転換マーカーとして、カナマイシン耐性の遺伝子(Tn5またはTn903トランスポゾンから誘導されたもの)またはクロラムフェニコール耐性遺伝子(Winnacker,E.L.(1987)'From Genes to Clones-Introduction to Gene Technology,VCH,Weinheim)が特に用いられる。E.coli とC.glutamicumの双方でおいて複製するシャトルベクターの広範囲の構築の文献は数多く例があり、遺伝子過剰発現を含むいくつかの目的に使用することができる(例えば、Yoshihama,M.et al.(1985) J.Bacteriol. 162:591-597, Martin,J.F.et al.(1987) Biotechnology,5:137-146 およびEikmanns,B.J.et al.(1991) Gene, 102:93-98参照)。
【0207】
標準的な方法を用いて、上述のように注目の遺伝子をシャトルベクターの一つヘクローンすることが可能であり、またこのようなハイブリッドベクターをCorynebacterium glutamicum株に導入することが可能である。C.glutamicumの形質転換を、プロトプラスト形質転換(Kastsumata,R.et al.(1984) J.Bacteriol. 159306-311),エレクトロポレーション(Liebl,E.et al.(1989)FEMS Microbiol.Letters,53:399-303)そして特別のベクターが用いられた場合には、接合(例えば Schaefer,A et al.(1990)J.Bacteriol.172:1663-1666に記載)によって達成することができる。C.glutamicumからのプラスミドDNAの製造(周知の標準的な方法を用いて)およびそのE.Coliへの形質転換によるC.glutamicumからE.coliへのシャトルベクターの転換も可能である。この形質転換の段階は、標準的な方法を用いて行なうことができるが、Mcr−不足E.coli株、例えばNM522(Gough and Murray(1983)J.Mol.Biol.166:1-19)を使用することが有利である。
【0208】
遺伝子は、pCG1(U.S.patent No.4617267)またはその断片、任意でTN903(Grindley,N.D.and Joyce,C.M.(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(12):7176-7180)からのカナマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドを用いたC.glutamicum 株中に過剰発現させることができる。加えて、遺伝子は、プラスミドpSL109(Lee,H.S and A.J.Sinskey(1994) J.Microbiol Biotechnol.4:256-263)を用いてC.Glutamicum株中に過剰発現することができる。
【0209】
複製プラスミドに加えて、遺伝子の過剰発現は、ゲノムへの組み込みによって達成することができる。C.glutamicum または他のCorynebacteriumまたはbrevibacterium種における遺伝子組み込みは、周知の方法、例えばゲノム領域での相同性組換え、制限エンドヌクレアーゼ仲介の組み込み(REMI)(例えばDE patent 19823834)またはトランスポゾンの使用などによって達成することができる。調節領域(例えば、プロモーター、レプレッサー、および/またはエンハンサー)を配列の修飾、挿入、サイト−ダイレクテド法(例えば相同性組換え)による削除、またはランダムイベントに基づく方法(例えばトランスポゾン突然変異誘発またはREMI)により変形することにより、注目遺伝子の活性を変化させることもできる。転写ターミネーターとして機能する核酸配列は、本発明の一以上の遺伝子のコード領域へ3’挿入されることもできる。このようなターミネーターは、周知であり、例えばWinnacker, E.L. (1987)From Genes to Clones-Introduction to Gene Technology. VCH: Weinheim中に記載されている。
【0210】
実施例6:変異タンパク質の発現の評価
形質転換された宿主細胞中の変異タンパク質の活性の観察は、変異タンパク質が、野生種のタンパク質と類似した形態と類似した量で発現されるという事実に基づいている。変異遺伝子(遺伝子産物に対する転写に用いられるmRNAの量のインジケーター)の転写のレベルを確認するために有用な方法は、ノーザン・ブロット法(Ausubel et al.(1988) Current Protocols in Molecular Biology, Wiley: New York参照)であり、注目遺伝子に結合するように設計されたプライマーが、検出タグ(通常放射性または化学ルミネセンス)により、生物の培養の総RNAを抽出し、ゲルに流し、安定マトリックスに移動させ、このプローブでインキュベートする場合に、プローブの結合および結合の量が、この遺伝子のmRNAの存在と量を示すようにラベルされている。この情報は、変異遺伝子の転写の程度の証拠である。全部の細胞のRNAは、いくつかの周知の方法、例えば、 Bormann, E.R. et al. (1992) Mol. Microbiol. 6:317-326に記載された方法により、Corynebacterium glutamicumから製造することができる。
【0211】
このmRNAから翻訳されたタンパク質の存在と比較量の評価のために、ウェスタン・ブロッド法などの標準的な技術が使用され得る(例えばAusubel et al. (1988) Current Protocols in Molecular Biology, Wiley: New York参照)。この方法では、全部の細胞のタンパク質は、抽出され、ゲル電気泳動により分離され、ニトロセルロースのようなマトリックスに移され、設計されたタンパク質に特異的に結合する抗体などのプローブとともにインキュベートされる。このプローブは、一般に容易に検出可能な化学ルミネセンスまたは比色のラベルでタグがつけられている。観察されたラベルの存在と量は、細胞中の所望の変異タンパク質の存在と量を示す。
【0212】
実施例7:遺伝子的に修飾されたCorynebacteriaの成長−媒体および培養条件
遺伝子的に修飾されたCorynebacterium glutamicumは、合成または天然成長媒体中で培養される。Corynebacteriaの異なった成長媒体の多くはどちらも知られており、容易に入手可能である(Lieb et al. (1989) Appl. Microbiol. Biotechnol., 32:205-210; von der Osten et al. (1998) Biotechnology Letters, 11:11-16; Patent DE 4,120,867; Liebl (1992)'The Genus Corynebacterium, in: The Procaryotes, Volume II, Balows, A. et al., eds. Spring-Verlag)。これらの媒体は、一種以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンおよび痕跡の要素からなる。好ましい炭素源は、モノ−、ジ−またはポリサッカライドなどの砂糖である。例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプンまたはセルロースが非常によい炭素源として働く。糖蜜または他の砂糖精製の副生成物のような複合化合物によって媒体に砂糖を供給することも可能である。異なった炭素源の混合物を供給することも有利である。他の可能な炭素源は、メタノール、エタノール、酢酸、乳酸などのアルコールおよび有機酸である。窒素源は通常有機または無機の窒素化合物か、またはこれらの化合物を含む材料である。窒素源として例えば、アンモニアガス、アンモニウム塩(例えばNH4Clまたは(NH42SO4)、NH4OH、硝酸塩、尿素、アミノ酸、コーンスティープリカー、大豆粉、大豆タンパク質、酵母抽出物、肉抽出物などの複合窒素源が含まれる。
【0213】
媒体に含まれる無機塩化合物は、クロリド−、リン酸、硫酸のカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、コバルト塩、モリブデン塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、銅塩、鉄塩を含む。金属イオンを溶液中に保持するために
媒体中にキレート化合物を加えることができる。特に有用なキレート化合物は、カテコールやプロトカテチュエートなどのジヒドロキシフェノールまたはクエン酸などの有機酸を含む。ビタミンなどの成長因子または成長促進剤、例えばビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸塩、ピリドキシンなどを含む媒体が典型的である。成長因子および塩はしばしば酵母抽出物、糖蜜、コーンスティープリカーなどの複合媒体成分に由来する。正確な媒体化合物の組成は、直接の実験に強く依存し、各々の特定の場合に個々に決定される。媒体の最適化の情報は、テキストブックApplied Microbiol. Physiology, A Practical Approach (eds. P.M. Rhodes, P.F. Stanbury, IRL Press (1997) pp.53-73, ISBN 019 963577 3) から入手可能である。成長媒体を市販品、例えば標準1(Merck)またはBHI(grain heart infusion, DIFCO)などから選定することも可能である。
【0214】
すべての媒体成分は、熱(1.5×105Pa、121℃で20分間)またはろ過殺菌法のいずれかにより殺菌される。成分は、一緒に、または所望により分割して殺菌することができる。すべての媒体成分は、成長の初期に存在させるか、または任意に連続的にまたは回分式に加えることができる。
【0215】
培養条件は各々の実験のために分けて定義される。温度は、15℃から45℃の範囲であるべきである。温度を一定に保つか、実験中に変えることができる。媒体のpHは、5から8.5、好ましくは7.0前後の範囲であるべきであり、媒体に緩衝液を添加することで一定に保つことができる。この目的のための緩衝液の例は、リン酸カリウム緩衝液である。MOPS, HEPES, ACESその他の合成緩衝液を代わりに、または同時に使用することができる。成長の間にNaOHまたはNH4OHを添加することより一定の培養pHを保つことも可能である。酵母抽出物などの複合媒体成分が使用される場合、多くの複合成分は高い緩衝能力があるという事実によって、追加の緩衝液が必要ないかもしれない。微生物の培養に発酵槽を使用する場合、pHはアンモニアガスにより制御することもできる。
【0216】
インキュベート時間は通常数時間から数日の範囲である。この時間は、ブロスの中に蓄積される生成物を最大にするように選択される。開示された成長実験は、種々の容器、例えばミクロタイター板、ガラス管、ガラスフラスコ、または種々のサイズのガラスまたは金属発酵槽等の中で行なうことができる。多数のクローンのスクリーニングのために、微生物をミクロタイター板、ガラス管、振とうフラスコ中、バッフル付きで、またはなしで培養すべきである。好ましくは100mlの振とうフラスコを使用し、所望の成長媒体の10容積%で満たす。フラスコを100から300rpmの速さの範囲を使用して、ロータリーシェーカー(ふり幅25mm)で振とうすべきである。蒸発ロスは湿潤雰囲気中に保つことによって少なくすることができる。代わりに、蒸発ロスの数学的補正が行なわれるべきである。
【0217】
遺伝子的に修飾されたクローンを試験した場合、修飾されていないコントロールのクローンまたはいかなる挿入もなされていない基本的なプラスミドを含むコントロールのクローンも試験するべきである。媒体を寒天平板上、例えばCMプレート(10g/lのグルコース、2.5g/lのNaCl、2g/lの尿素、10g/lのポリペプトン、5g/lの酵母抽出物、5g/lの肉抽出物、22g/lの寒天、2M NaOHによるpH6.8としたもの)を30℃でインキュベートしたもので成長させた細胞を用いて0.5−1.5のOD600まで接種する。媒体の接種は、CMプレートからのC.glutamicum細胞のサリーン懸濁液の導入、またはこのバクテリアの前培養液の添加のいずれかによりなされる。
【0218】
実施例8:変異タンパク質の機能のインビトロ解析
酵素の活性と速度論的パラメーターの決定は、先行技術でよく確立されている。得られた改変された酵素の活性決定のための実験は、当業者の能力の範囲内で、野生種酵素の比活性に対して行なわれなければならない。一般に酵素についての概要は、構造、速度論的、原理、方法、適用および多数の酵素の活性の決定例に関する特定の詳細と同様に、例えば以下の参照に見出される:Dixon, M., and Webb, E.C., (1979) Enzymes. Longmans: London; Fersht, (1985) Enzyme Structure and Mechanism. Freeman: New York; Walsh, (1979) Enzymatic Reaction Mechanisms. Freeman: San Francisco; Price, N.C., Stevens, L. (1982) Fundamentals of Enzymology. Oxford Univ. Press:Oxford; Boyer, P.D., ed(1983) The Enzymes, 3rd ed. Academic Press: New York; Bisswanger, H., (1994) Enzymkinetic, 2nd ed. VCH: Weinheim (ISBN 3527300325), Bergmeyer, H.U., Bergmeyer, J., Grassl, M., eds. (1983-1986) Methods of Enzymatic Analysis, 3rd ed., vol. I-XII, Verlag Chemie: Weinheim; and Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (1987) vol. A9, 'Enzymes'. VCH: Weinheim, p. 352-363.。
【0219】
DNAと結合するタンパク質の活性は、数種のよく確立された方法、例えばDNAバンド−シフトアッセイ(ゲル遅延アッセイとも呼ばれる)により測定することができる。他の分子の発現におけるこのようなタンパク質の効果は、レポーター遺伝子アッセイ(例えばKolmar, H. et al. (1995) EMBO J. 14: 3895-3904および引用文献に記載されたような) を用いて測定される。レポーター遺伝子試験系は、周知であり、ベータ−ガラクトシダーゼ、緑蛍光性タンパク質およびその他数種の酵素を用いて、原核および真核細胞のどちらにでも適用が確立されている。
【0220】
膜輸送タンパク質の活性の決定は、例えばGennis, R.B. (1989) 'Pores, Channels and Transporters', in Biomembranes, Molecular Structure and Function, Springer; Heidelberg, p. 85-137; 199-234; and 270-322に記載されたような技術に従って行なわれる。
【0221】
実施例9:所望の製造物の製造における変異タンパク質の感化の解析
所望の化合物(例えばアミノ酸)の製造におけるC.Glutamicumの遺伝子修飾の効果は、適当な条件(例えば上述の)下の改変された微生物成長および媒体及び/または細胞成分の増加した所望の製造物(即ちアミノ酸)の生成の解析によって評価することができる。このような解析法は当業者に周知であり分光法、薄層クロマトグラフィー、種々の染色法、酵素的および微生物学的方法、高速液体クロマトグラフィーのような解析クロマトグラフィー(例えばUllman, Encyclopedia of Industrial Chemistry, vol. A2, p. 89-90 and p. 443-613, VCH: Weinheim (1985); Fallon, A. et al., (1987) 'Applications of HPLC in Biochemistry 'in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, vol. 17; Rehm et al. (1993) Biotechnology, vol. 3, Chapter III: 'Product recovery and purification', page 469-714, VCH: Weinheim; Belter, P.A. et al. (1988) Bioseparations: downstream processing for biotechnology, John Wiley and Sons; Kennedy, J.F. and Cabral, J.M.S. (1992) Recovery processes for biological materials, John Wiley and Sons; Shaeiwitz, J.A. and Henry, J.D.(1988) Biochemical separations, in: Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, vol. B3, Chapter 11, page 1-27, VCH: Weinheim; and Dechow, F.J. (1989) Separation and purification techniques in biotechnology, Noyes Publications参照)を含む。
【0222】
最終発酵生成物の測定に加えて、所望の化合物の生産に使用された代謝経路の他の成分、例えば中間体、副生成物を、化合物の製造の全体の効率を決定するために解析することもできる。解析法は、媒体中の栄養剤(例えば砂糖、炭化水素、窒素源、ホスファートおよび他のイオン)のレベルの測定、バイオマス組成物と成長の測定、通常の生合成経路の代謝物の製造の解析、発酵の間に生成したガスの測定を含む。これらの測定のための標準的な方法は、Applied Micro Physiology, A Practical Approach, P.M. Rhodes and P.F. Stanbury, eds., IRL Press, p. 103-129; 131-163; and 165-192 (ISBN: 0199635773) および引用文献に概説してある。
【0223】
実施例10:C.glutamicum培養からの所望の製造物の精製
C.glutamicum細胞からまたは上述の培養物の上澄みからの所望の製造物の回収は、周知の種々の方法により行なうことができる。所望の製造物が細胞から隠されていない場合、細胞を培養物から低速遠心分離により回収することができ、細胞を機械的力または超音波のような標準的な方法で溶解することができる。細胞の破片を遠心分離で取り除き、可溶性タンパク質を含む上澄み画分を所望の化合物のさらなる精製のために保持する。製造物がC.glutamicum細胞から隠されている場合、細胞を培養物から低速遠心分離により取り除き、上澄み画分をさらなる精製のために保持する。
【0224】
双方の精製法からの上澄み画分を、適当なレジンであって、所望の分子がクロマトグラフィーレジンに保持され、サンプル中の多くの不純物が保持されないか、または不純物がレジンにより保持され、サンプルが保持されないようなレジンを用いたクロマトグラフィーで処理する。このようなクロマトグラフィーの工程は、必要に応じて、同じまたは異なるクロマトグラフィーレジンを用いて繰り返すことができる。当業者は、適当なクロマトグラフィーレジンの選択と、精製される特別の分子への最も効率的な適用に精通しているであろう。精製された製造物はろ過または限外ろ過により濃縮し、製造物の安定性が最も大きくなる温度で保存することができる。
【0225】
広い範囲の精製法が周知であり、前述した精製法は範囲の減縮を意味しない。このような精製法が、例えば Bailey, J.E. & Ollis, D.F. Biochemical Engineering Fundamentals, McGraw-Hill: New York (1986)に記載されている。
【0226】
単離した化合物の同定と純度が、先行技術で標準的な方法で評価される。これらは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、分光学的方法、染色法、薄層クロマトグラフィー、NIRS、酵素的または微生物学的アッセイを含む。このような解析方法は、Petek et al. (1994) Appl. Environ. Microbiol. 60: 133-140; Malakhova et al.(1996) Biotekhnologiya 11: 27-32; and Schmidt et al. (1988) Bioprocess Engineer. 19: 67-70. Ulmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, (1996) vol. A27, VCH: Weinheim, p. 89-90, p. 521-540, p.540-547, p. 559-566, 575-581 and p. 581-587; Michal, G. (1999) Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, John Wiley and Sons; Fallon, A. et al. (1987) Applications of HPLC in Biochemistry in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, vol. 17に記載されている。
【0227】
実施例11:本発明の遺伝子配列の解析
配列の比較と、2個の配列の間の相同性の百分率の決定は、公知の技術であり、数学的アルゴリズム、例えばKarlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 87: 2264-68のアルゴリズムで、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-77に記載のように変形されたものなどを使用して行なうことができる。このようなアルゴリズムは、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み入れられている。BLASTヌクレオチド探索は、NBLASTプログラム、スコア=100、語長=12によって、本発明のMP核酸分子に対するヌクレオチド配列の相同性を得るために行なうことができる。BLASTタンパク質探索は、XBLASTプログラム、スコア=50、語長=3によって、本発明のMPタンパク質分子に対するアミノ酸配列の相同性を得るために行なうことができる。比較の目的で、間隙のあけられたアライメントを得るために、ギャップドBLASTをAltschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載のように使用することができる。BLASTおよびギャップドBLASTプログラムの使用に際して、当業者はプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のパラメーターの、解析される特定の配列のための最適化の方法についてよく知っている。
【0228】
配列の比較に使用される数学的アルゴリズムの他の例は、Meyers とMiller ((1988) Comput. Appln. Biosci. 4: 11-17)のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCGシーケンスアライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み入れられている。ALIGNプログラムをアミノ酸配列の比較のために使用する場合、PAM120重量残渣表、12のギャップ長さペナルティー、4のギャップペナルティーを使用することができる。さらに配列解析に使用されるアルゴリズムが公知であり、ADVANCEおよびADAM(Torelli and Robotti (1994) Comput. Appl. Biosci. 10:3-5に記載)および FASTA( Pearson and Lipman (1988) P.N.A.S. 85:2444-8に記載)を含む。
【0229】
2本のアミノ酸配列の間の相同性の百分率は、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(http: //www.gcg.comで入手可能)を用い、Blosum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、12、10、8、6、または4の間隙重さ、2、3または4の長さ重さを用いて行なうことができる。2本の核酸配列の間の相同性の百分率は、標準的なパラメーター、例えば間隙重さが50、および長さ重さが3などを用いて、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを用いて決定することができる。
【0230】
本発明の遺伝子配列と、遺伝子バンクに存在する配列の比較解析が先行技術において公知の技術を用いて行なわれた(例えばBexevanis and Ouellette, eds. (1998) Bioinformatics: A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins. John Wiley and Sons: New York参照)。本発明の遺伝子配列が、遺伝子バンクに存在する遺伝子と、3段階の工程で比較された。第一段階で、遺伝子バンクに存在するヌクレオチド配列に対する本発明の配列の各々について、BLASTN解析(例えばローカルアライメント解析)が行なわれた。最初にヒットした500個についてさらに解析が続けられた。次いでFASTA探索(例えば、結合されたローカルおよびグローバルアライメント解析で、配列の限定された領域を整列させる)が、これらの500個について行われた。各々の本発明の遺伝子配列は次いで全体的に、FASTAの頭の3個のヒットの各々について、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを用いて(標準的なパラメーターを使用して)整列させられる。正しい結果を得るために、遺伝子バンクから抽出された配列の長さは、周知の方法により質問の配列の長さに調整された。この解析の結果は、表4にまとめられている。得られた結果は、遺伝子バンクの参照の各々と比較した本発明の遺伝子の各々においてGAP(グローバル)解析を単独で行なったときに得られるであろう結果と一致したが、このようなデータベースを広げて行なったGAP(グローバル)解析と比較して明らかに計算時間が短縮された。切り捨て値を上回るアライメントが得られなかった本発明の配列を、アライメントの情報なく表4に示した。表4に、’%相同性(GAP)’の見出しで記載されたGAPアライメント相同性百分率は、’,’は小数点を表すヨーロッパの数の形式で、並べられているということは、当業者によってさらに理解されるであろう。例えば、このカラム中の’40,345’の値は、40.345%を表す。
実施例12:DNAマイクロアレイの構築と操作
本発明の配列を追加で、DNAマイクロアレイ(デザイン、方法論、DNAアレイの使用は周知であり、例えばSchena, M. et al. (1995) Science 270: 467-470; Wodicka, L. et al. (1997) Nature Biotechnology 15:1359-1367; DeSaizieu, A. et al. (1998) Nature Biotechnology 16: 45-48; and DeRisi, J.L. et al. (1997) Science 278: 680-686に記載されている。)の構築と適用に使用することができる。
【0231】
DNAマイクロアレイは、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、シリコーンまたは他の材料からなる固体または柔軟性のある支持体である。核酸分子を、注文された方法で表面に取り付けることができる。適当なラベリングのあと、他の核酸または核酸混合物を固定された核酸分子にハイブリダイズすることができ、限定された領域でハイブリダイズされた分子の個々の信号強度を検知し、測定するためにラベルを使用することができる。この方法論は、適用された核酸サンプルまたは混合物中のすべてあるいは選択された核酸の相対量または絶対量を同時に定量化することを可能にする。このためDNAマイクロアレイは、並行して多数の(6800以上)核酸の発現を解析することを可能とする(Schena, M. (1996) BioEssays 18(5): 427-431参照)。
【0232】
本発明の配列は、ポリメラーゼ連鎖反応のような核酸増幅反応によって、1種以上のC.glutamicum遺伝子の限定された領域を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーの設計に使用することができる。5’または3’オリゴヌクレオチドプライマーあるいは適当なリンカーの選択と設計は、上述の支持媒体(例えばSchena, M. et al. (1995) Science 270: 467-470にも記載されている。)の表面に対する、得られたPCR産物の共有結合を可能とする。
【0233】
核酸マイクロアレイは、Wodicka,L.et al.(1997) Nature Biotechnology 15:1359-1367に記載されたようにその場のオリゴヌクレオチド合成によっても構築することができる。写真平板法により、マトリックスの正確に限定された領域が露光される。光不安定な保護基はこれによって活性化され、ヌクレオチド付加が進行し、一方光からマスクされた領域はいかなる修飾も進行しない。続く保護と光活性化のサイクルは、限定された位置における異なったオリゴヌクレオチドの合成を可能とする。小さい、限定された本発明の遺伝子の領域は、マイクロアレイ上で、固相オリゴヌクレオチド合成により合成することができる。
【0234】
ヌクレオチドのサンプルまたは混合物の中に存在する本発明の核酸分子は、マイクロアレイに対してハイブリダイズすることができる。これらの核酸分子は標準的な方法でラベルすることができる。要するに、核酸分子(例えば、mRNA分子またはDNA分子)は、例えば、逆転写またはDNA合成の間、放射性同位元素によりまたは蛍光によりラベルされたヌクレオチドの組み込みによりラベルされる。ラベルされた核酸のマイクロアレイに対するハイブリダイゼーションは、例えば Schena, M. et al. (1995) supra; Wodicka, L. et al. (1997), supra; and DeSaizieu A. et al (1998), supraに記載されている。ハイブリダイズされた分子の検出と定量化は、特定の組み込まれたラベルにより行なわれる。放射性のラベルは例えばSchena, M. et al. (1995) supraに記載されたように検出することができ、蛍光ラベルは例えばShalon et al. (1996) Genome Research 6: 639-645の方法により検出することができる。
【0235】
本発明の配列のDNAマイクロアレイ技術に対する適用は、上述したように、C.glutamicumまたは他のCorynebacteriaの異なった株の比較解析を可能とする。例えば、個々の転写の特徴に基づく内部株の変種の研究および特定するために重要な遺伝子の同定および/または所望の株の特性、例えば病原性、生産性、およびストレス寛容などの同定は、核酸アレイ方法論により促進される。発酵反応の進行の間の、本発明の遺伝子の発現の特徴の比較は、核酸アレイ技術を用いることで可能である。
実施例13:細胞タンパク質ポピュレーションの動力学的解析(プロテオミクス)
本発明の遺伝子、組成、方法は、タンパク質のポピュレーションの相互作用および動力学(プロテオミクスと定義する)の研究に適用することができる。注目のタンパク質ポピュレーションは、C.glutamicum(例えば他の生物のタンパク質ポピュレーションと比較して)、特定の環境または代謝条件下(例えば高いまたは低い温度で、または高いまたは低いpHでの発酵の間)で活性なタンパク質または特定の成長および発達の相の間に活性なタンパク質の総タンパク質ポピュレーションを含むが、これに限定されない。
【0236】
タンパク質ポピュレーションは、種々の周知の技術、例えばゲル電気泳動などにより解析することができる。細胞タンパク質は、例えば細胞溶解または抽出により得られ、種々の電気泳動技術を用いて互いに分離することができる。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)は、タンパク質をその分子量に基づいて大部分分離する。等電点のポリアクリルアミドゲル電気泳動(IEF−PAGE)は、タンパク質をその等電点(アミノ酸配列を反映するのみならずタンパク質の後翻訳修飾も反映する)により分離する。他の、さらに好ましいタンパク質解析の方法は、2−D−ゲル電気泳動(例えばHermann et al. (1998) Electrophoresis 19: 3217-3221; Fountoulakis et al. (1998) Electrophoresis 19: 1193-1202; Langen et al. (1997) Electrophoresis 18: 1184-1192; Antelmann et al. (1997) Electrophoresis 18: 1451-1463に記載されている)として知られるIEF−PAGEとSDS−PAGEの連続する組み合わせである。他の分離技術、例えばキャピラリーゲル電気泳動などもタンパク質の分離に利用することができ、このような技術は、周知である。
【0237】
これらの方法論により分離されたタンパク質は、標準的な技術、例えば染色またはラベリングにより可視化することができる。適当な染色は公知であり、Coomassie ブリリアントブルー、銀染色、蛍光染料、例えばSypro Ruby(Molecular Probes)を含む。C.glutamicumの媒体中にある、放射性物質によりラベルされたアミノ酸またはその他のタンパク質前駆体(例えば35S−メチオニン、35S−システイン、14C−ラベルされたアミノ酸、15N−アミノ酸、15NO3または15NH4+またはC13ラベルされたアミノ酸)の含有物は、分離に先立ってこれらの細胞からタンパク質をラベルすることを可能とする。同様に、蛍光ラベルを使用することができる。これらのラベルされたタンパク質は、抽出され、単離され、前述した技術に従って分離される。
【0238】
これらの技術により可視化されたタンパク質はさらに、使用された染料またはラベルの量を測定することにより解析することができる。得られたタンパク質の量は、定量的に、例えば光学的方法を用いて決定することができ、同様のゲルまたは他のゲル中の他のタンパク質の量と比較することができる。ゲル上のタンパク質の比較は、例えば光学的比較、分光学的、ゲルのイメージスキャンおよび解析、または写真フィルムおよびスクリーンの使用を通じて行なうことができる。このような技術は周知である。
【0239】
得られたタンパク質を同定するために、直接シーケンスまたは他の標準的な技術を使用することができる。例えば、N−および/またはC末端アミノ酸シーケンス(例えばエドマン分解)を、マススペクトロメトリー(特にMALDIまたはESI技術(例えばLangen et al. (1997) Electrophoresis 18: 1184-1192参照))として使用することができる。ここで提供されたタンパク質配列を、これらの技術によりC.glutamicumタンパク質の同定のために使用することができる。
【0240】
これらの方法により得られた情報は、タンパク質の存在、活性、種々の生物学的条件(例えば、異なった生物、発酵の時点、媒体条件、または異なったビオトープ、その他)からの異なったサンプルの間の修飾の様式の比較に使用することができる。このような実験から単独で、または他の技術との組み合わせにより得られたデータは、様々な適用、例えば与えられた(例えば代謝的)状況にある種々の生物の挙動の比較、精密化学品を産出する株の生産性の上昇、または精密化学品の製造の効率の上昇などに使用することができる。
【0241】
同等物
当業者は、わずかの型にはまった実験を用いて、ここに記載された発明の特定の態様に対する多くの同等物を認識するか、確認することができるであろう。このような同等物は、請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号(SEQ ID NO):1145に示されたヌクレオチド配列又はその相補体を含む単離された核酸分子。
【請求項2】
配列番号(SEQ ID NO):1146に示されたアミノ酸配列又はその相補体を含むポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項3】
配列番号(SEQ ID NO):1146に示されたアミノ酸配列又はその相補体を含むポリペプチドの自然に発生する対立性変異体をコードする単離された核酸分子。
【請求項4】
配列番号(SEQ ID NO):1145に示されたヌクレオチド配列又はその相補体の全体に対して、少なくとも50%が相同的であるヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【請求項5】
配列番号(SEQ ID NO):1145に示されたヌクレオチド配列又はその相補体に隣接する少なくとも15個のヌクレオチドを含む単離された核酸分子。
【請求項6】
配列番号(SEQ ID NO):1146に示されたアミノ酸配列又はその相補体の全体に対して、少なくとも50%が相同的であるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の核酸分子、及び異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
発現ベクターである請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の発現ベクターによりトランスフェクションされた宿主細胞。
【請求項11】
前記細胞が微生物である請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項12】
前記細胞が、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属に属する請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項13】
前記核酸分子の発現により、前記細胞からのファインケミカルの製造が調節される請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項14】
当該ファインケミカルが、有機酸、タンパク原および非タンパク原アミノ酸、プリンおよびピリミジン塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、脂質、飽和および不飽和の脂肪酸、ジオール、炭水化物、芳香族化合物、ビタミン、補助因子、ポリケチド、および酵素からなる群より選択される、請求項13に記載の宿主細胞。
【請求項15】
適当な培地中で請求項10に記載の宿主細胞を培養し、これによりポリペプチドを製造することを含む、ポリペプチドの製造方法。
【請求項16】
配列番号(SEQ ID NO):1146に示されたアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項17】
配列番号(SEQ ID NO):1146に示されたアミノ酸配列を含むポリペプチドの自然に発生する対立性変異体を含む単離されたポリペプチド。
【請求項18】
配列番号(SEQ ID NO):1145に示されたヌクレオチド配列の全体に対して、少なくとも50%が相同的であるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされた単離されたポリペプチド。
【請求項19】
配列番号(SEQ ID NO):1146に示されたアミノ酸配列の全体に対して、少なくとも50%が相同的であるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項20】
ポリペプチドフラグメントが配列番号(SEQ ID NO):1146に示されたアミノ酸配列を含むポリペプチドの生物学的活性を維持する、配列番号(SEQ ID NO):1146に示されたアミノ酸配列を含むポリペプチドのフラグメントを含む単離されたポリペプチド。
【請求項21】
配列番号(SEQ ID NO):1145に示されたヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項22】
さらに異種アミノ酸配列を含む請求項16〜21のいずれかに記載の単離されたポリペプチド。
【請求項23】
請求項10に記載の細胞を培養してファインケミカルを製造するファインケミカルの製造方法。
【請求項24】
さらに培養物からファインケミカルを回収する工程を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
細胞が、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属に属する請求項23に記載の方法。
【請求項26】
当該細胞が、コリネバクテリウム−グルタミカム, コリネバクテリウム−ヘルキュリス、コリネバクテリウム−リリウム、コリネバクテリウム−アセトアシドフィリウム、コリネバクテリウム−アセトグルタミカム、コリネバクテリウム−アセトフィリウム、コリネバクテリウム−アンモニアゲン、 コリネバクテリウム−フジオケンス、コリネバクテリウム−ニトリロフィリウス、 ブレビバクテリウム−アンモニアゲン、ブレビバクテリウム−ブタニカム、 ブレビバクテリウム−ジバリカツム、ブレビバクテリウム−フラビン、ブレビバクテリウム−ヘアリ、ブレビバクテリウム−ケトグルタミカム、ブレビバクテリウム−ケトソレダクタム、ブレビバクテリウム−ラクトフェルメンタム、ブレビバクテリウム−リネンス、ブレビバクテリウム−パラフィノリツカム、および表3に記載の株からなる群より選択される請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記ベクターによる核酸分子の発現により、前記ファインケミカルの製造の調節される請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記ファインケミカルが、有機酸、タンパク原および非タンパク原アミノ酸、プリンおよびピリミジン塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、脂質、飽和および不飽和の脂肪酸、ジオール、炭水化物、芳香族化合物、ビタミン、補助因子、ポリケチド、および酵素からなる群より選択される請求項23に記載の方法。
【請求項29】
ファインケミカルがアミノ酸である請求項23に記載の方法。
【請求項30】
アミノ酸が、リジン、グルタマート、グルタミン、アラニン、アスパルタート、グリシン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、チロシン、フェニルアラニン、およびトリプトファンから成る群より選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項1から6のいずれかに記載の核酸分子の含有によってゲノムDNAが変異した細胞を培養する工程を含むファインケミカルの製造方法。
【請求項32】
請求項1〜6のいずれかに記載の核酸分子、または請求項16〜21のいずれかに記載のポリペプチド分子の1種以上の存在を検出する工程を含み、これによりコリネバクテリウム−ジフテリアの存在または活性を検出する、コリネバクテリウム−ジフテリアの存在または活性を検出する方法。
【請求項33】
配列番号(SEQ ID NO):1145に示された核酸分子を含み、核酸分子が混乱している宿主細胞。
【請求項34】
配列番号(SEQ ID NO):1145に示された核酸分子を含み、核酸分子が配列番号(SEQ ID NO):1145に示された配列に対して一個以上の核酸の修飾を含む宿主細胞。
【請求項35】
配列番号(SEQ ID NO):1145に示された核酸分子を含み、核酸分子の調節領域が、分子の野生種の調節領域と関連して修飾されている宿主細胞。

【公開番号】特開2007−252384(P2007−252384A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123626(P2007−123626)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【分割の表示】特願2001−506835(P2001−506835)の分割
【原出願日】平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】