説明

代謝障害の併用治療

インスリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化および動脈硬化などの各種代謝性障害を、直接PPAR−ガンマアゴニストと、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩とを併用して治療できる。本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化、動脈硬化からなる群から選択される状態の治療において使用するための医薬組成物であって、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と、直接PPAR−ガンマアゴニストとを、状態を治療するのに有効な併用量で含む医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
糖尿病は、依然として、主要な増大しつつある公衆衛生問題である。糖尿病の末期の合併症は、国家の医療財源において大きな比率を消費する。
【0002】
PPAR−ガンマ(Peroxisome Proliferation Activator Receptor−ガンマ:ペルオキシソーム増殖活性因子受容体−ガンマ)に対しアゴニストとして作用する薬物は、2型糖尿病の治療に有用である。それらは、皮下脂肪の沈積を増大させ、体重を増加させるが、血糖を低下させ、インスリン抵抗性に寄与する脂質を筋肉から除去する。また、PPAR−ガンマアゴニストの臨床的使用は体液貯留によって限定され、心不全の危険性を高める。動物において、治療域内または僅かに外れた投薬量のPPAR−ガンマアゴニストにより、心肥大が引き起こされる。既存の薬物よりも副作用が少ないかまたはより軽度であり、インスリン抵抗性および島の機能不全という主要な異常を効果的に対処する新たな治療に対する必要性が存在する。
【0003】
ある種の化合物をロシグリタゾンまたはピオグリタゾンと併用することが、特許文献1、国際公開第/073611号公報、特許文献2、2005年4月1日出願の米国仮特許出願第60/667,457号、および2006年1月25日出願の第60/762,068号に開示されており、これらは全てWellstat Therapeutics社に譲渡されている。
【0004】
ロシグリタゾン、即ち直接PPAR−ガンマアゴニストは、AVANDAMET(登録商標)(マレイン酸ロシグリタゾンおよび塩酸メトホルミン)として、およびAVANDARYL(登録商標)(マレイン酸ロシグリタゾンおよびグリメピリド)として、他の抗糖尿病薬物と組み合わせて上市されている。
【特許文献1】国際公開第02/100341号パンフレット
【特許文献2】国際公開第04/091486号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、直接PPAR−ガンマアゴニストと、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩の組合せを治療的に使用することに関する。
【0006】
【化7】

式I中、mは、0、2または4である。Xは−ORであり、ここでRは水素または1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;Rは、水素、Oまたはヒドロキシであり;R、R、R、RおよびRのうちの3つは水素であり、残りは、水素、ハロ、ヒドロキシ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より独立に選択される。あるいは、Xは−NRであり、ここでRは水素またはヒドロキシであり、Rは、水素、メチルまたはエチルであり;Rは水素であり;ならびにR、R、R、RおよびRのうちの3つは水素であり、残りは、水素、ハロ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より独立に選択される。
【0007】
本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化および動脈硬化からなる群から選択される状態を有する哺乳動物対象を治療する方法であって、対象に、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と、直接PPAR−ガンマアゴニストとを、代謝性状態の治療に有効な併用量で投与することを含む方法を提供する。
【0008】
本発明は、インスリン抵抗性症候群、I型糖尿病およびII型糖尿病を含む糖尿病、ならびに多嚢胞性卵巣症候群からなる群から選択される状態を治療するための;または糖尿病に伴うアテローム性動脈硬化、動脈硬化、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、ネフロパシー、ニューロパシー、網膜症、足部潰瘍形成もしくは白内障を治療もしくは発症の機会を低減するための;または高脂血症、悪液質、および肥満からなる群から選択される状態を治療するための医薬の製造における生物学的活性薬剤の使用であって、薬剤は式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩であり、代謝性状態の治療に有効な併用量で直接PPAR−ガンマアゴニストと併用するために製剤される使用を提供する。
【0009】
本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化、動脈硬化からなる群から選択される状態の治療において使用するための医薬組成物であって、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と、直接PPAR−ガンマアゴニストとを、状態を治療するのに有効な併用量で含む医薬組成物を提供する。
【0010】
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩の1つまたは複数の単位経口投薬量と、直接PPAR−ガンマアゴニストの1つまたは複数の単位経口投薬量と、直接PPAR−ガンマアゴニストと組み合わせて式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するための使用説明書とを備えるキット。
【0011】
本発明は、低い投薬量(例えば、3mg/kg/日)のロシグリタゾン(RSG)などの直接PPAR−ガンマアゴニストと、低い投薬量の化合物BI(例えば、30mg/kg/日)などの式Iの化合物の組合せで肥満で糖尿病のマウスを治療すると、一方の薬剤の高い投薬量で達成できるよりも低いレベルにまで血糖を低下できるという観察に一部基づいている。
【0012】
更に、低い投薬量(30mg/kg)の化合物BI(それ自体では体重および食糧摂取量に殆ど効果を有さなかった)などの式Iの化合物と、低い投薬量のRSG(3mg/kg)(それ自体では体重の増加および食糧摂取量を軽減しなかった)などの直接PPAR−ガンマアゴニストとを使用する併用治療の結果、体重および食物摂取が実質的に低下した。併用において一方の薬物の投薬量を上昇すると、両方の薬物の低い投薬量の効果と比して、食物摂取量の増加が誘発された。このことは、食欲減退が中毒性の食欲不振によるものではなく、むしろ食欲の制御機構が変化したことによることを示唆している。
【0013】
低い投薬量の直接PPAR−ガンマアゴニストの抗糖尿病効果を改良することにより、それらの治療的利益を保ちつつ、それらの副作用(例えば、体重の増加および浮腫)が最小化される。このため、副作用に関する安全性の懸念から、それらの使用がこれまで制限されてきた前糖尿病性状態(「代謝性症候群」または「耐糖能異常」)における直接PPAR−ガンマアゴニストのより広い用途に対する機会が開かれる。更に、化合物BIなどの式Iの化合物と、RSGなどの直接PPAR−ガンマアゴニストとを併用した結果、遺伝的に肥満なマウスにおいて食欲が大きく減退し、体重が減少したとの観察は、そのような併用治療が肥満およびその健康上の結果に対して有用であることを示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
定義
本明細書中で使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を意味する。ある数の炭素原子を有すると特定されるアルキル基は、指定された数の炭素を有する任意のアルキル基を意味する。例えば、3個の炭素原子を有するアルキルは、プロピルまたはイソプロピルでよく;4個の炭素原子を有するアルキルは、n−ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピルまたはt−ブチルでよい。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「ハロ」は、1個または複数のフルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードをいう。
【0016】
本明細書中で使用される場合、ペルフルオロメチルまたはペルフルオロメトキシにおけるような用語「ペルフルオロ」は、当該の基が全ての水素原子の代わりにフッ素原子を有することを意味する。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「Ac」は、基CHC(O)−をいう。
【0018】
上式Iにおいて、Rと、それが直接結合している炭素原子との間の結合は、破線と実線とで表されている。この表現は、Rが水素またはヒドロキシの場合、当該結合は単結合でよく、またはRがOの場合、二重結合でよいことを反映している。
【0019】
上式Iの表現中の星印はキラル中心であり得ることを示し、Rがヒドロキシの場合、その炭素はキラルである。そのような場合、本発明は、式Iの化合物のラセミ体、(R)エナンチオマー、および(S)エナンチオマーを提供し、それら全ては活性であると考えられる。これらのエナンチオマーの混合物は、例えばChirality11巻:420〜425頁(1999年)に記載されるように、HPLCを使用して分離できる。
【0020】
特定の化学化合物は、本明細書中でそれらの化学名によるかまたは以下に示される2文字のコードにより呼ばれる。化合物BI、CF、CRおよびCTは、上に示される式Iの範囲内に含まれる。
BI 4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソ酪酸
CF 3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル酢酸
CR 4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル)−4(R)−ヒドロキシブタン酸
CT N−ヒドロキシ−2−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]アセトアミド
本明細書中で使用される場合、用語「直接PPAR−ガンマアゴニストは、その主要作用機序が、ペルオキシソーム増殖活性因子受容体−ガンマ(PPAR−γ)に結合し、その活性を増加させることに関与する薬剤を意味する。PPAR−ガンマの活性化は種々の様式で測定でき、直接アッセイによる、トランス活性化アッセイによる、またはPPAR−ガンマにより制御される遺伝子または遺伝子産物の活性変化の測定が挙げられる。
【0021】
本明細書中で使用される場合、略語「RSG」はロシグリタゾンをいう。実施例においてRSGまたはロシグリタゾンとの言及はマレイン酸ロシグリタゾンをいい、商標名AVANDIA(登録商標)でも知られている。本明細書中で使用される場合、略語「PIO」はピオグリタゾンをいう。実施例において、PIOまたは塩酸ピオグリタゾンと呼び、商標名ACTOS(登録商標)でも知られている。本明細書中で使用される場合、略語「PYY」はヒトのペプチドYY断片3〜36をいう。PYYおよびセルレニンはSigmaより入手できる。
【0022】
本明細書中で使用される場合、移行の用語(transitional term)「含む(comprising)」は開放型である。この用語を利用する請求項は、そのような請求項で列挙されるものに加えて、要素を含むことができる。
【0023】
本発明の化合物
上の発明の開示で記載される本発明の実施形態においては、Rがメチルであり、Rがメチルである。もう1つの実施形態においては、Xが−ORであり、ここでRが水素または1〜3個の炭素原子を有するアルキルである。もう1つの実施形態においては、Xが−NRであり、ここでRが水素またはヒドロキシであり、Rが水素、メチルまたはエチルである。
【0024】
上の発明の開示で記載される本発明の更なる実施形態においては、直接PPAR−ガンマアゴニストを式IAの化合物または薬学的に許容されるその塩と組み合わせる。
【0025】
【化8】

式IAにおいて、変数は式Iに関連して上に記載される値と同一である。好ましくは、Rがメチルであり、Rがメチルである。そのような化合物の例として、化合物BI、CF、CRおよびCTが挙げられる。
【0026】
式Iの化合物は、国際公開第02/100341号公報、国際公開第/073611号公報、国際公開第04/091486号公報、2005年4月1日出願の米国仮特許出願第60/667,457号、および2006年1月25日出願の第60/762,068号に記載される方法に従って作製でき、その内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0027】
上に記載される本発明によれば、任意の直接PPAR−ガンマアゴニストを利用できる。そのような直接PPAR−ガンマアゴニストの例としては、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン、薬学的に許容されるそれらの塩、ならびにそのような化合物およびそのような塩の水和物および溶媒和物が挙げられる。ロシグリタゾンのマレイン酸塩は、現在、商標名AVANDIA(登録商標)(GlaxoSmithKline)の下に上市されている。塩酸ピオグリタゾンは、現在、商標名ACTOS(登録商標)(Eli Lilly社)の下に上市されている。直接PPAR−ガンマアゴニストの他の例としては、5−[(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イル)メチル]−2−メトキシ−N−[[4−(トリフルオロメチル)−フェニル]メチル]ベンズアミド(KRP−297;Kyorin/Merck;Murakamiら、Metabolism.1999年11月;48巻(11号):1450〜4頁);((+)−5−[[6−(2−フルオロベンジル)−オキシ−2−ナフィ]メチル]−2,4−チアゾリジンジオン)(MCC−555;Mitsubishi/J&J;Uptonら、Br J Pharmacol.1998年12月;125巻(8号):1708〜14頁);(4−[4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エトキシ]ベンジル]−3,5−イソオキサゾリジンジオン))(PNU−1827/JTT−501;Pharmacia/Japan Tobacco;Shibataら、Eur J Pharmacol. 1999年1月8日;364巻(2〜3号):211〜9頁);(−)3−[4−[2−(フェノキサジン−10−イル)エトキシ]フェニル]−2−エトキシプロパン酸(DRF−2725;Novo Nordisk/Doctor Reddy Foundation;Lohrayら、J Med Chem.2001年8月2日;44巻(16号):2675〜8頁);([5−[4−[2−(1−インドリル)エトキシ]フェニル]メチル]チアゾリジン−2,4−ジオン(DRF−2189;Doctor Reddy Foundation;Chakrabartiら、Arzneimittelforschung.1999年11月;49巻(11号):905〜11頁);((Z)−1,4−ビス[4−[(3,5−ジオキソ−1,2,4−オキサジアゾリジン−2−イル)メチル]フェノキシ]ブタ−2−エン)(YM−440;Yamanouchi;Shimayaら、Metabolism.2000年3月;49巻(3号):411〜7頁);(5−[4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル]−2,4−チアゾリジンジオン)(AD−5075;Daiichi;Zhangら、J Biol Chem.1996年4月19日;271巻(16号):9455〜9頁);(S)−2−エトキシ−3−[4−[2−(4−メチルスルホニルオキシフェニル)エトキシ]フェニル]プロパン酸(AZ−242;AstraZeneca);および{[±]−5−[(7−ベンジルオキシ−3−キノリル)メチル]−2,4−チアゾリジンジオン}(NC2100;Fukuiら、Diabetes.2000年5月;49巻(5号):759〜67頁)が挙げられる。
【0028】
治療方法における使用
本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病(I型糖尿病またはII型糖尿病などの原発性本態性糖尿病および続発性非本態性糖尿病の両者)ならびに多嚢胞性卵巣症候群からなる群から選択される状態を有する哺乳動物対象を治療する方法であって、対象に式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と、直接PPAR−ガンマアゴニストとを、状態の治療に有効な併用量で投与することを含む方法を提供する。本発明の方法によれば、アテローム性動脈硬化、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、ネフロパシー、ニューロパシー、網膜症、足部潰瘍形成および白内障などの糖尿病の症状または糖尿病の症状を発症する機会を低減でき、それぞれのそのような症状は糖尿病に伴うものである。また、本発明は、状態の治療に有効で本明細書に記載される通り、ある量の生物学的活性薬剤を対象に投与することを含む高脂血症を治療する方法を提供する。化合物は、高脂血症の動物中の血清トリグリセリドおよび遊離脂肪酸を減少させる。また、本発明は、悪液質の治療に有効で本明細書に記載される通り、ある量の生物学的活性薬剤を対象に投与することを含む悪液質を治療する方法を提供する。また、本発明は、状態の治療に有効で本明細書に記載される通り、ある量の生物学的活性薬剤を対象に投与することを含む肥満を治療する方法を提供する。また、本発明は、状態の治療に有効で本明細書に記載される通り、ある量の生物学的活性薬剤を対象に投与することを含むアテローム性動脈硬化または動脈硬化から選択される状態を治療する方法を提供する。本発明の活性薬剤は、対象が糖尿病またはインスリン抵抗性症候群を有しているかいないかに関わらず、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化または動脈硬化を治療するのに有効である。式Iの化合物またはその塩および直接PPAR−ガンマアゴニストは、全身投与の任意の従来の経路により投与できる。好ましくは、それらは経口投与される。したがって、その医薬は経口投与のために製剤されることが好ましい。本発明によって使用できる他の投与経路としては、直腸、非経口、注射(例えば、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射または腹腔内注射)による、または経鼻が挙げられる。
【0029】
本発明の使用および治療方法の各々の更なる実施形態は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩の任意の実施形態と、上に記載される任意の直接PPAR−ガンマアゴニストとを投与することを含む。不必要な冗長さを避けるために、各々のそのような薬剤および薬剤の群は繰返されないが、それらは、あたかも繰返されたかのように使用および治療方法のこの記載中に組み込まれる。
【0030】
本発明により対処される疾患または障害の多くは、2つの広いカテゴリーに分類される:インスリン抵抗性症候群と慢性高血糖症の結果である。糖尿病(持続性高血糖症)の非存在下で発生し得る燃料代謝の調節異常、特にインスリン抵抗性は、それ自体が種々の症状を伴い、高脂血症、アテローム性動脈硬化、肥満、本態性高血圧、脂肪肝疾患(NASH;非アルコール性脂肪性肝炎)、および特に癌または全身性炎症疾患の状況において、悪液質が挙げられる。また、悪液質はI型糖尿病または末期II型糖尿病の状況でも発生し得る。組織の燃料代謝を改善することによって、本発明の活性薬剤は、インスリン抵抗性に関連する疾患および症状を予防または改善するために有用である。インスリン抵抗性に関連する一群の徴候および症状は個々の患者に同時に存在し得るが、多くの場合、インスリン抵抗性に影響される多くの生理学的な系の脆弱性の個体差に起因して、1つの症状のみが優勢になり得る。いずれにせよ、インスリン抵抗性が多くの疾患状態に主に寄与するので、この細胞性および分子性の異常に対処する薬物は、インスリン抵抗性に起因し得るか、またはそれにより悪化し得る任意の器官系の実質的に任意の症状を予防または改善するために有用である。
【0031】
インスリン抵抗性および同時に起こる膵島による不十分なインスリン産生が十分に重症である場合、慢性高血糖症が発生し、II型真性糖尿病(NIDDM)の発現を規定する。上に示されたインスリン抵抗性に関連する代謝性障害に加えて、高血糖症に対して副次的な疾患の症状も、NIDDMの患者に発生する。これらとしては、ネフロパシー、末梢性ニューロパシー、網膜症、微小血管疾患、四肢の潰瘍形成、およびタンパク質の非酵素的グリコシル化の結果、例えば、コラーゲンおよび他の結合組織の損傷が挙げられる。高血糖症を軽減することで、糖尿病のこれらの結果の発現速度および重症度が低下する。本発明の活性薬剤および組成物は糖尿病における高血糖症を低減するのに役立つので、それらは慢性高血糖症の合併症の予防および改善のために有用である。
【0032】
ヒトおよびヒトでない哺乳動物対象の両者を、本発明の治療方法によって治療できる。特定の対象に対する本発明の特定の活性薬剤の最適投薬量は、熟練した臨床医により臨床的設定において決定できる。インスリン抵抗性、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質または肥満に関連する障害の治療のためにヒトへ経口投与する場合、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩は、一般に、1mg〜400mg、より好ましくは200mg〜400mgの1日投薬量で投与され1日あたり1回または2回投与される。マウスへ経口投与する場合、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩は、一般に、体重1kgあたり薬剤1〜300mgの1日投薬量で投与される。直接PPAR−ガンマアゴニストは、標準的な臨床的実務に従って投与される。場合によっては、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と同時投与することで、他のクラスの薬物の効果が改善され、そのような薬剤のより少ない(そして、それゆえにより毒性が低い)投薬量により満足のいく治療結果で患者に投与できるようになる。代表的な化合物に対しヒトにおいて確立された安全および有効な投薬量の範囲は:ロシグリタゾン(マレイン酸ロシグリタゾンを含む)4〜8mg/日;ピオグリタゾン(塩酸ピオグリタゾンを含む)15〜45mg/日である。
【0033】
本発明の1つの実施形態において、式Iの化合物およびPPAR−ガンマアゴニストの一方または両者の投薬量は、その薬物を単独で使用する場合の治療的な投薬量より少ない。典型的には、その投薬量を通常の投薬量の25%および75%の間まで低減できる。よって、例えば、式Iの化合物の1日投薬量を50mg〜150mgとできる。ロシグリタゾンの1日投薬量を1mg〜3mgとすることができ、ピオグリタゾンの1日投薬量を3.75mg〜11.25mgとすることができる。本発明の1つの実施形態において、式Iの化合物およびPPAR−ガンマアゴニストの一方または両者の投薬量は、体重の減少および/または食欲の減退が結果として生じるように選択される。
【0034】
直接PPAR−ガンマアゴニストと式Iの化合物または塩の混合剤を、対象に投与できる。あるいは、直接PPAR−ガンマアゴニストおよび式Iの化合物または塩を一緒には混合せず混合剤を形成せず、対象に独立に投与する。活性成分を一緒に混合せず、単一の混合剤または組成物を形成しない場合、それらを1つのキットの形で提供するのが便利であり、キットは式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩の1つまたは複数の単位経口投薬量と、直接PPAR−ガンマアゴニストの1つまたは複数の単位経口投薬量と、直接PPAR−ガンマアゴニストとを組み合わせて式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するための使用説明書とを備える。好ましくは、キットの構成物を箱またはブリスター包装内などで一緒に包装する。
【0035】
I型真性糖尿病:I型糖尿病の患者は、インスリン投与の投薬量および時期を適切に調整できるように血糖を頻繁にモニタリングしながら、主として1日あたり1回〜数回の投薬量のインスリンを自己投与して、自分の疾患を管理する。慢性高血糖症は、ネフロパシー、ニューロパシー、網膜症、足部潰瘍形成、および早死のような合併症につながり、過剰のインスリン投薬に起因する低血糖症は、認知機能障害または意識消失を引き起こし得る。I型糖尿病の患者は、錠剤またはカプセル剤形態で、単一または分割された1日投薬量で各々の薬物を別々に、または単一または分割された1日投薬量で両方の薬物を混合して、直接PPAR−ガンマアゴニストおよび1〜400mg/日の式Iの化合物またはその塩により治療する。期待される効果は、血糖を満足のいく範囲に維持するために必要とされるインスリン投与の投薬量または頻度の低下、および低血糖症発現の発生率および重症度の低下である。臨床結果は、血糖およびグリコシル化ヘモグロビン(数カ月間にわたり積分された血糖制御の妥当性の指標)の測定により、ならびに糖尿病の代表的な合併症の発生率および重症度の低下によりモニタリングされる。本発明の治療は島の移植と併用して投与でき、島移植片の抗糖尿病性の効力を維持するのを助けることができる。
【0036】
II型真性糖尿病:II型糖尿病(NIDDM)の典型的な患者は、食事と運動のプログラムにより、ならびにメトホルミン、グリブリド、レパグリニド、ロシグリタゾン、またはアカルボースなどの医薬を摂取することにより自分の疾患を管理し、それら全てが、何人かの患者において、血糖制御における何らかの改善をもたらすが、いずれも副作用があり、疾患の進行によって最終的に治療が失敗とならない訳ではない。島の機能不全は時間とともにNIDDMの患者に発生し、大部分の患者でインスリンの注射が必要となる。本発明による日々の治療(追加のクラスの抗糖尿病医薬と共にまたは共にではなく)が血糖制御を改善し、島の機能不全の速度を低下させ、糖尿病の典型的な症状の発生率およびその重症度を低下させることが期待される。加えて、上昇した血清トリグリセリドおよび脂肪酸を低下させ、それによって糖尿病患者の主要な死因である心臓血管性疾患の危険を低下させる。糖尿病に対する全ての他の治療的薬剤の場合のように、投薬量の最適化は、必要性、臨床効果、および副作用に対する感受性に従って、個々の患者においてなされる。
【0037】
高脂血症:血中の上昇したトリグリセリドおよび遊離脂肪酸のレベルは、かなりの割合の人々を侵しており、アテローム性動脈硬化および心筋梗塞の重要な危険因子である。本発明による治療は、高脂血症患者において循環トリグリセリドおよび遊離脂肪酸を減少するのに有用である。また、高脂血症患者は、しばしば、上昇した血中コレステロールレベルも有し、それも心臓血管疾患の危険を上昇させる。HMG−CoA還元酵素阻害剤(「スタチン」)などのコレステロール低下薬物は、本発明の薬剤に加えて、場合により同じ医薬組成物の中に組み込まれて高脂血症患者に投与できる。
【0038】
脂肪肝疾患:かなりの割合の人々が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)としても知られる脂肪肝疾患に侵されており、しばしばNASHは肥満および糖尿病を伴う。肝臓脂肪症、即ち肝細胞を伴うトリグリセリドの小滴の存在は、肝臓を慢性的な炎症(生検試料において炎症性白血球の浸潤物として検出される)に罹りやすくし、それが線維症および肝硬変につながり得る。脂肪肝疾患は、一般に、肝細胞の損傷の指標として役立つトランスアミナーゼALTおよびASTなどの肝臓に特異的な酵素の上昇した血清レベルの観察によって、ならびに疲れおよび肝臓領域での疼痛を含む症状の提示により検出されるが、しばしば、確定診断は生検を必要とする。期待される利益は肝臓の炎症および脂肪含量の低下であり、NASHが線維症および肝硬変へ進行することが軽減、休止または逆転される。
【0039】
医薬組成物
本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と直接PPAR−ガンマアゴニストおよび場合により薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物の更なる実施形態は、上記の生物学的活性薬剤の実施形態の任意の1つを含む。不必要な冗長さを避けるために、各々のそのような薬剤および薬剤の群は繰返されないが、それらは、あたかも繰返されたかのように医薬組成物のこの記載中に組み込まれる。
【0040】
好ましくは、組成物は経口投与に適合され、例えば、錠剤、被覆錠剤、糖衣錠、硬質もしくは軟質ゼラチンカプセル、液剤、乳剤または懸濁剤の形態である。一般に、経口用組成物は、直接PPAR−ガンマアゴニストと一緒に、1mg〜400mg、好ましくは200mg〜400mgの式Iの化合物またはその塩を含む。対象にとって、1日あたり1個または2個の錠剤、被覆錠剤、糖衣錠、もしくはゼラチンカプセルを飲み込むことが都合がよい。しかしながら、組成物は、任意の他の従来的手段による全身投与に適合することもでき、例えば坐剤の形態での直腸投与、例えば注射液剤の形態での非経口投与、または経鼻投与が挙げられる。
【0041】
医薬組成物を製造するために、活性成分を薬学的に不活性な無機または有機担体と共に加工できる。乳糖、コーンスターチまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩などを、例えば、錠剤、被覆錠剤、糖衣錠および硬質ゼラチンカプセルのための担体などのために使用できる。軟質ゼラチンカプセルのための適切な担体は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオールなどである。しかしながら、活性成分の性質に依存して、軟質ゼラチンカプセルの場合には、通常は、軟質ゼラチン自体以外に担体は必要ない。液剤およびシロップ剤の製造に適切な担体は、例えば、水、ポリオール、グリセロール、植物油などである。坐剤のために適切なキャリアは、例えば、天然または硬化油、ワックス、脂肪、半固体または液体ポリオールなどである。
【0042】
医薬組成物は、更に、保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、矯味矯臭剤、浸透圧を変えるための塩、緩衝剤、被覆剤または酸化防止剤を含むことができる。また、医薬組成物は、更に他の治療的に価値のある物質、特に、他の機構を通して作用する抗糖尿病または抗高脂血症薬剤も含むことができる。単一の製剤物において本発明の組成物と好都合に併用できる薬剤としては、メトホルミンなどのビグアニド、スルホニル尿素インスリン放出剤グリブリドおよび他のスルホニル尿素インスリン放出剤などのインスリン放出剤、アトルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンおよびシンバスタチンのような「スタチン」HMG−CoA還元酵素阻害剤などのコレステロール低下薬物、クロフィブレートおよびゲムフィブロジルなどのPPAR−アルファ アゴニスト、アカルボース(デンプン消化を阻害する)などのアルファ−グルコシダーゼ阻害剤、ならびにレパグリニドなどの食事用インスリン放出剤が挙げられるが、これらに限定されない。単一の製剤物において本発明の組成物と併用される補助的な薬剤の量は、標準的な臨床的実務で使用される投薬量に従う。特定の代表的な化合物に対する確立された安全および有効な投薬量の範囲は、上に記載される。
【0043】
本発明は、以下の実施例を参照して、より良く理解されるが、実施例は本明細書中に記載される本発明を例証し限定はしない。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
金チオグルコース誘導肥満マウスの体重に対する化合物BIおよびロシグリタゾンの効果
金チオグルコース(GTG)の全身投与は視床下部のグルコース感知ニューロンに損傷を与え、結果として満腹の制御が損なわれ、慢性的な過食症となり、結果として肥満に至る。体重22〜25グラムの雄C57BL/6Jマウスに金チオグルコース(Sigma Chemical社、ミズーリ州セントルイス)を腹腔内注射(500mg/kg)で与えた。マウスに高脂肪飼料(45%Kcal脂肪;D12451、Research Diets、ニュージャージー州ニューブランズウィック)を8週間与え、肥満を悪化させた。
【0045】
次いで、各5匹を含む群にマウスを分け、各群が同様の平均体重(約47グラム)を有するように仕分けした。マウスに、1日1回、化合物BI、ロシグリタゾンまたはその2種類の薬物を併用して経口治療を行った。標準的な低脂肪の齧歯類飼料による非肥満対照マウスの群も含めた。
【0046】

1.ビヒクル(1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース)
2.化合物BI 30mg/kg
3.化合物BI 100mg/kg
4.ロシグリタゾン(RSG) 3mg/kg
5.RSG 3mg/kg + 化合物BI 30mg/kg
6.RSG 3mg/kg + 化合物BI 100mg/kg
7.非肥満対照(治療せず)
2週間後、血清グルコース、トリグリセリド、および遊離脂肪酸の測定のために、逆眼窩血脈洞より血液試料を回収した。
【0047】
化合物BIおよびロシグリタゾンの両方が、血糖、トリグリセリドおよび遊離脂肪酸の投薬量に依存した減少を引き起こした(表1)。両方の薬剤を併用した治療の結果、一方の薬剤単独の同等の投薬量より大きく減少した。
【0048】
化合物BIの治療の結果、5週間にわたる過程にわたり体重が減少した(表2)。化合物BIおよびロシグリタゾンの両方による併用治療の結果、化合物BI単独より大きく体重が減少し、低脂肪飼料による非肥満マウスと同程度に低い体重を達成した。ロシグリタゾン単独では、体重は減少しなかった。ヒトおよびいくつかの齧歯類モデル、例えばob/obおよびdb/dbマウスにおいて、体重の増加がロシグリタゾンの一般的な副作用であるとの事実から見れば、化合物BIおよびロシグリタゾンの併用効果は驚くべきことである。
【0049】
化合物BIまたは特に化合物BIおよびロシグリタゾンによる治療によって、総飼料およびカロリー消費が減少した(表3)。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

(実施例2)
db/dbマウスの糖尿病および肥満における化合物BIおよびロシグリタゾンの併用効果
雄db/dbマウスは食欲制御タンパク質であるレプチンの受容体に欠陥を有し、結果として過食症、肥満、インスリン抵抗性、高血糖症、高トリグリセリド血症を発症する。雄db/dbマウスは、II型糖尿病の一般に認められた動物モデルである。このモデルにおいて、経口投与された化合物BIの1日1回の投薬量の範囲の効果を評価し、ロシグリタゾン単独および化合物BIとの併用による効果も検討した。
【0053】
ロシグリタゾンはII型糖尿病の治療のために使用される治療的薬剤であり、主にPPAR−ガンマ受容体を介して作用し、それにより脂肪組織のインスリンに対する感受性を増加させ、血清グルコース、トリグリセリド、および遊離脂肪酸を減少させる。ロシグリタゾンおよび他のチアゾリジンジオン(TZD)は副作用として体重増加をしばしば引き起こし、肥満はII型糖尿病の危険因子であるため、既に一般に過体重である患者の人々には望ましくない。
【0054】
雄C57BL/Ksola db/dbマウス(「db/dbマウス」)をHarlan(インディアナ州インディアナポリス)より入手し、最低1週間、順応させた。動物にPurina 5008 Lab Dietおよび水道水を自由に摂取させ、ケージあたり3〜4匹の動物で飼育した。同一齢の雄C57BL/6マウスを、非肥満非糖尿病対照として使用した。
【0055】
試験薬剤およびビヒクル:
1.化合物BI(Wellstat Therapeuticsで合成)
2.ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC;Sigma Chemical社、ミズーリ州セントルイス、カタログ番号H7509)
3.ロシグリタゾン(GlaxoSmithKline)
体重および血糖値を測定し、動物を各群、平均体重の等しい6〜7匹のマウスの群に仕分けた。それぞれの試験群は5匹のマウスを含んでいた。
【0056】
実験群:
1.非肥満対照(治療せず)
2.ビヒクル
3.化合物BI 30mg/kg/日
4.化合物BI 100mg/kg/日
5.化合物BI 150mg/kg/日
6.ロシグリタゾン 3mg/kg
7.ロシグリタゾン 3mg/kg + 化合物BI 30mg/kg
8.ロシグリタゾン 3mg/kg + 化合物BI 100mg/kg
9.ロシグリタゾン 20mg/kg
10.ロシグリタゾン 20mg/kg + 化合物BI 30mg/kg
11.ロシグリタゾン 20mg/kg + 化合物BI 100mg/kg
薬物の調製:1%の水性ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むビヒクルに化合物BIを懸濁し、組織用ホモジナイザーを使用し、粒子径を最小とし、懸濁液の均一性を最大とした。ロシグリタゾンを、同じビヒクルに懸濁した。それぞれの治療群に対する投薬懸濁液中の薬物濃度を、全ての群で0.4mlの一定容量が適切な薬物の投薬量を提供するよう体重により調整した。
【0057】
薬物の投与:強制経口投与により1日1回28日間、薬物を経口投与した。
【0058】
採血:血清化学分析のため、薬物投与開始後14日目および28日目の午前11時に、非空腹時の血液試料(200マイクロリットル)を逆眼窩血脈洞より得て、血清分離器チューブ中に回収した。
【0059】
結果:
治療前には、研究に含まれる全てのdb/dbマウスが高血糖症を示した。その後全ての時点において、ビヒクルで治療されたマウスは全ての時点において持続性で重度の非空腹時高血糖症を示した。
【0060】
化合物BIによる治療の結果、投薬量に依存して血清グルコースが減少した。ロシグリタゾンによる治療の結果でも、投薬量に依存して血清グルコースが低下した。
【0061】
化合物BIおよびロシグリタゾンの併用治療の結果、一方の薬剤単独よりも血清グルコースが大きく減少した。併用において両方の薬物のより低い投薬量、例えば3mg/kg/日のロシグリタゾンおよび30mg/kgの化合物BIで最大のグルコース低下が達成された。ロシグリタゾンのより高い投薬量(20mg/kg)において、30および100mg/kgの化合物BIを加えた結果、両方において、一方の薬剤単独の最大投薬量で達成されたよりも低い血糖値となった。
【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

3mg/kg/日の投薬量のロシグリタゾンと、30または100mg/kg/日のいずれかの化合物BIとで併用治療した結果、ビヒクルで治療された動物、または一方の薬物単独で治療された動物に比して体重が減少した(表6)。
【0064】
【表6】

飼料消費も薬物治療に影響された。ビヒクルで治療されたマウスは過食症で、1日あたり平均7グラムより多い飼料を消費し、一次レプチン受容体の欠陥および糖尿病の二次過食症効果の両方を反映した。
【0065】
3mg/kgのRSGおよび30または100mg/kgの化合物BIの併用で治療されたマウスは、ビヒクルで治療された動物または一方の薬物単独を与えられたものに比して飼料消費の著しい減退を示した。
【0066】
【表7】

化合物BIでの治療の結果、db/dbマウスにおいて、高血糖症、高トリグリセリド血症および遊離脂肪酸レベルが投薬量に依存して軽減した。ロシグリタゾンも、糖尿病および脂質異常症のこれらのマーカーを低下させた。ロシグリタゾンの低い投薬量(3mg/kg/日)と、化合物BIの低い投薬量(30mg/kg/日)とで併用治療した結果、一方の薬物単独のより高い投薬量で行った、または両方の薬物をより高い投薬量で一緒に与えたよりも良好な治療的効果となった。驚くべきことに、低投薬量のRSGおよび化合物BIの併用により、db/db遺伝的欠陥に伴う過食症が強力に低減すると共に、化合物BI単独により生じるより大きい体重減少が引き起こされた。このことは、単独または併用においてRSGまたは化合物BIの一方の投薬量が高くなるほど、より低い投薬量のRSGおよび化合物BIの両方の併用によるよりも飼料摂取量が大きい結果となったため、中毒性の食欲不振であった可能性はない。
【0067】
(実施例3)
雄C57Bl/6マウスの飼料摂取量および体重におけるロシグリタゾンと併用の化合物BIの効果
動物。18週齢の雄C57Bl/6マウスを5匹/ケージで飼育し、標準飼料および水道水を少なくとも1カ月間自由摂取させた。動物の飼料摂取量を3週間モニタリングし、その後、毎日午前9時〜午後2時に1回、飼料を食べるよう訓練した。毎日、他では飼料を与えなかった。飼料を与える時間を制限したために、飼料の入手が自由摂取よりも少量をマウスは食べる。したがって、このモデルにおける飼料摂取量の減少は、正常量より少ない毎日の飼料摂取量による空腹刺激を克服するのに十分な薬物の効果を必要とする。
【0068】
薬物の投与。(個々に体重を量りおよびマークされた、それぞれ10匹のマウスの群を5匹/ケージに分け、上の通り訓練およびモニタリングし、化合物BI(100mg/kg)、ロシグリタゾン(3mg/kg)、両方の薬物、またはビヒクルを1日1回、強制経口で午前8時に4日間連続で投薬した。経口投薬(PYYおよびセルレニン)に不適切な食欲変製剤を与えられた比較群には、4日間連続、午前8時に腹腔内注射をした。最初の3日間は、全ての群に対し午前9時〜午後2時に飼料を与え、飼料摂取量および体重を測定した。
【0069】
実験群:
群番号(10匹の動物/群)
強制経口
1 治療せず
2 ビヒクル
3 化合物BI(100mg/kg/日)
4 ロシグリタゾン(3mg/kg)
5 ロシグリタゾン + 化合物BI
腹腔内注射
6 生理食塩水(3ml/kg/日)
7 PYY(生理食塩水中100ug/kg)
8 セルレニン(30mg/kg)
試験された薬物および薬物併用のうち、化合物BIおよびロシグリタゾンの併用のみにより、この飼料の供給が制限された枠組みにおいて飼料摂取量の有意な減少を生じた。このモデル系において、既知の食欲変製剤PYYおよびセルレニンでは効果が得られなかった。
【0070】
【表8】

p<0.05ビヒクル対照と比較して有意に異なる。
【0071】
飼料摂取量における効果により、化合物BIおよびロシグリタゾンの併用のみにより、この短期間の実験計画において体重が有意に減少する結果となった。
【0072】
【表9】

【0073】
【表10】

(実施例4)
db/dbマウスの血清グルコースおよびアディポネクチンにおける化合物BI、化合物CF、ならびに化合物CTの単独およびロシグリタゾンとの併用の効果
アディポネクチンは、白色脂肪組織より分泌される糖タンパク質である。アディポネクチンは他の組織、例えば筋肉および肝臓においてインスリン感受性を改良し、またアテローム性動脈硬化から保護する。ロシグリタゾンまたはピオグリタゾンなどのチアゾリジンジオン抗糖尿病薬剤は、主としてPPAR−ガンマ、即ち燃料代謝の制御に関与する核内受容体での作用により作用する。PPAR−ガンマアゴニストは脂肪組織によるアディポネクチンの産生を高め、このことは糖尿病および関連する代謝性障害におけるそれらの有益な効果に寄与できる。
【0074】

8.ビヒクル(1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース)
9.化合物BI 100mg/kg
10.ロシグリタゾン(RSG) 3mg/kg
11.化合物BI 100mg/kg + RSG 3mg/kg
12.化合物CF 100mg/kg
13.化合物CF 100mg/kg + RSG 3mg/kg
14.化合物CT 100mg/kg + RSG 3mg/kg
15.化合物CT 100mg/kg + RSG 3mg/kg
2週間後、逆眼窩血脈洞より血液試料を回収し、血清化学測定のために処理した。
【0075】
ロシグリタゾンは、それ自体で血清アディポネクチンを僅かに上昇させた。化合物BI、化合物CFおよび化合物CTは、個々の薬剤としては血清アディポネクチン値を上昇させなかったが、それらはアディポネクチンにおける併用のロシグリタゾンの効果を強力に増幅した。
【0076】
【表11】

(実施例5)
db/dbマウスの血清グルコースにおける化合物BIおよびロシグリタゾンまたはピオグリタゾンの併用効果
雄db/dbマウスは食欲制御タンパク質であるレプチンの受容体に欠陥を有し、結果として過食症、肥満、インスリン抵抗性、高血糖症、高トリグリセリド血症を発症する。雄db/dbマウスは、II型糖尿病の一般に認められた動物モデルである。このモデルにおいて、経口投与された化合物BIの1日1回の投薬量の範囲の効果を評価し、ロシグリタゾン単独および化合物BIとの併用による効果も検討した。
【0077】
ロシグリタゾンおよびピオグリタゾンはII型糖尿病の治療のために使用される治療的薬剤であり、主にPPAR−ガンマ受容体を介して作用し、それにより脂肪組織のインスリンに対する感受性を増加させ、血清グルコース、トリグリセリド、および遊離脂肪酸を減少させる。ロシグリタゾン、ピオグリタゾンおよび他のチアゾリジンジオン(TZD)は副作用として体重増加をしばしば引き起こし、既に一般に過体重である患者の人々には望ましくない。
【0078】
雄C57BL/Ksola db/dbマウス(「db/dbマウス」)をHarlan(インディアナ州インディアナポリス)より入手し、最低1週間、順応させた。動物にPurina 5008 Lab Dietおよび水道水を自由摂取させ、ケージあたり3〜4匹の動物で飼育した。
【0079】
試験薬剤およびビヒクル:
4.化合物BI(Wellstat Therapeutics社で合成)
5.ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC;Sigma Chemical社、ミズーリ州セントルイス、カタログ番号H7509)
6.ロシグリタゾン(GlaxoSmithKline)
7.ピオグリタゾン(Lilly)
体重および血糖値を測定し、動物をそれぞれの群で等しい平均体重の6〜7匹のマウスの群に仕分けた。それぞれの試験群は5匹のマウスを含んでいた。
【0080】
実験群:
12.ビヒクル
13.化合物BI 100mg/kg/日
14.ロシグリタゾン 3mg/kg
15.ロシグリタゾン 3mg/kg + 化合物BI 100mg/kg
16.ピオグリタゾン 30mg/kg
17.ピオグリタゾン 30mg/kg + 化合物BI 100mg/kg
18.ピオグリタゾン 100mg/kg
19.ピオグリタゾン 100mg/kg + 化合物BI 100mg/kg
薬物の調製:1%の水性ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むビヒクルに化合物BIを懸濁し、組織用ホモジナイザーを使用し粒子径を最小とし、懸濁液の均一性を最大とした。ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンを、これらの薬物のそれぞれの商業的な錠剤を粉砕後、同じビヒクルに懸濁した。それぞれの治療群に対する投薬懸濁液中の薬物濃度を、全ての群で0.4mlの一定容量が適切な薬物の投薬量を提供するよう体重により調整した。
【0081】
薬物の投与:強制飼養により1日1回28日間、薬物を経口投与した。
【0082】
採血:血清化学分析のため、薬物投与開始後28日目の午前11時に、非空腹時の血液試料(200マイクロリットル)を逆眼窩血脈洞より得て、血清分離器チューブ中に回収した。
【0083】
結果:
治療前には、研究に含まれる全てのdb/dbマウスが高血糖症を示した。その後全ての時点において、ビヒクルで治療されたマウスは全ての時点において持続性で重篤な非空腹時高血糖症を示した。
【0084】
化合物BIおよびロシグリタゾンの併用治療の結果、一方の薬剤単独よりも血清グルコースが大きく減少した。ピオグリタゾン単独は血清グルコースに対して比較的小さい効果を有していたが、化合物BIとの併用により、一方の薬剤単独よりも良好にグルコースを低下した。
【0085】
【表12】

(実施例6)
db/dbマウスの白色脂肪組織中における脱共役タンパク質1の発現に対する化合物BIおよびロシグリタゾンの効果
db/db突然変異を有するマウスはレプチンのシグナル伝達に欠陥を有し、過食症、肥満および糖尿病に至る。
【0086】
脱共役タンパク質1(Uncoupling Protein 1:UCP1)は、ミトコンドリア膜中で発現された場合、代謝エネルギーを散逸できるタンパク質である。その主な機能が熱を生成することである小型哺乳類中の褐色脂肪組織(BAT;褐色は白色脂肪組織中より高いミトコンドリアの密度による)に脱共役タンパク質1は存在しているが、それは脂肪酸の燃焼を加速するように働くこともできる。この後者の機能は、UCP1が褐色脂肪以外の組織で発現された場合、褐色脂肪の貯蔵はヒトに限られるため、特に重要である。白色脂肪中でのUCP1の発現は、組織の機能的表現型を脂肪の貯蔵から脂肪の燃焼へと変化させる。白色脂肪組織内でUCP1を発現する形質転換マウスは、高脂肪食により誘導される肥満および糖尿病に耐性である。したがって、白色脂肪組織内でのUCP1の発現を薬理的に誘導することは、体重の減少および体重増加に対する耐性を促進するための魅力的な方略である。
【0087】
約8週齢で雄の糖尿病(db/dbホモ接合体)C57BL/KsolaマウスをJackson Labs(メイン州バーハーバー)から入手し、体重(40〜45g)および血清グルコース値(食事状態で300mg/dl以上)が群間で同様となるよう無作為に5〜7匹の動物の群に割り当てた;雄の非肥満(db/+ヘテロ接合体)マウスを集団対照として扱った。最低7日で、到着後の順応が可能となった。全ての動物を制御された温度(23℃)、相対湿度(50±5℃)および光(7:00〜19:00)の下に維持し、標準的な飼料(Formulab Diet 5008、Quality Lab Products、メリーランド州エルクリッジ)および水を自由に摂取させた。
【0088】
治療集団に、ビヒクル、化合物BI(100mg/kg/日)、ロシグリタゾン(RSG;3mg/kg/日)または2種類の薬物の併用を2週間、経口投薬で毎日与えた。治療期間の最後に副睾丸脂肪体を摘出し、冷凍しウエスタンブロット分析によってUCP1を測定するために引続き処理した。また、屠殺に先立ち逆眼窩静脈叢より血液試料も回収し、血清グルコースのために処理および分析した(AniLytics社;メリーランド州ゲイサーズバーグ)。
【0089】
白色脂肪組織ライセートを、8.5%PAG、TRIS−Gly−SDS中の17×15×0.15cmゲル上での電気泳動により分離した。ゲルをIMMOBILON膜上に電気的に移動させ、3%無脂ミルク中、TBST(25mM Tris−HCl;0.1% Tween20)中により一晩、低温室でブロックした。
【0090】
膜をTBST中、室温にて3回洗浄し、次いで一次抗UCP1抗体(Chemicon Rabbit anti−mouse UCP−1、カタログ番号AB3036)で1時間、RT(室温)において密閉された袋の中でインキュベートした。一次抗体により1時間後、膜を6回7分間TBST中で室温において洗浄し、二次抗体で1時間インキュベートした(Anti−Rabbit−HRP(Amersham)。作業用に希釈:100mL TBST中20μL)。膜を6回7分間TBST中で室温において洗浄し、次いでECL(強化化学発光)試薬(Amersham)で1分間インキュベートし、組織試料中のUCP1の相対量を、化学発光反応からの光に露光した結果得られたX線フィルム上の画像の濃度測定により定量し、相対光単位(RLU)で表した。
【0091】
化合物BI単独により、白色脂肪組織のUCP1含有量が僅かに上昇した。ロシグリタゾンは、それ自体でより大きな効果を有し、化合物BIおよびロシグリタゾンを併用することで、表13に示す通りUCP1の発現が非常に強力に増加した。化合物BIおよびロシグリタゾンは、ビヒクルで治療された対照の動物と比して血清グルコースを個々に低下させ、化合物BIおよびロシグリタゾンを併用することで、一方の薬物単独よりも大きい程度にグルコースを低下させた(表13)。
【0092】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化および動脈硬化からなる群から選択される状態を有する哺乳動物対象を治療する方法であって、該対象に式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩
【化1】

[式中:
mは、0、2または4であり;
Xは−ORであり、ここでRは水素または1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、Oまたはヒドロキシであり;
、R、R、RおよびRのうちの3つは水素であり、残りは、水素、ハロ、ヒドロキシ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より独立に選択されるか;
または、Xは−NRであり、ここでRは水素またはヒドロキシであり、Rは、水素、メチルまたはエチルであり;
は水素であり;
、R、R、RおよびRのうちの3つは水素であり、残りは、水素、ハロ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より独立に選択される]と、
直接PPAR−ガンマアゴニストとを、代謝性状態の治療に有効な併用量で投与することを含む方法。
【請求項2】
がメチルであり、Rがメチルである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Xが−ORであり、ここでRが水素または1〜3個の炭素原子を有するアルキルである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Xが−NRであり、ここでRが水素またはヒドロキシであり、Rが水素、メチルまたはエチルである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が式IAで表される請求項1に記載の方法。
【化2】

【請求項6】
がメチルであり、Rがメチルである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が、4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソ酪酸である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル酢酸である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物が、4−3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル)−4(R)−ヒドロキシブタン酸である請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、N−ヒドロキシ−2−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]アセトアミドである請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記直接PPAR−ガンマアゴニストが、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン、薬学的に許容されるそれらの塩、水和物、および溶媒和物、ならびにそのような塩の水和物および溶媒和物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記直接PPAR−ガンマアゴニストが、
5−[(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イル)メチル]−2−メトキシ−N−[[4−(トリフルオロメチル)−フェニル]メチル]ベンズアミド;
(+)−5−[[6−(2−フルオロベンジル)−オキシ−2−ナフィ]メチル]−2,4−チアゾリジンジオン;
4−[4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エトキシ]ベンジル]−3,5−イソオキサゾリジンジオン);
(−)3−[4−[2−(フェノキサジン−10−イル)エトキシ]フェニル]−2−エトキシプロパン酸;
[5−[4−[2−(1−インドリル)エトキシ]フェニル]メチル]チアゾリジン−2,4−ジオン;
5−[4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル]−2,4−チアゾリジンジオン;
(S)−2−エトキシ−3−[4−[2−(4−メチルスルホニルオキシフェニル)エトキシ]フェニル]プロパン酸;
および{[±]−5−[(7−ベンジルオキシ−3−キノリル)メチル]−2,4−チアゾリジンジオン}からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記対象がヒトである請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記直接PPAR−ガンマアゴニストが、単独で投与される際の通常の治療的投薬量より少ない量で投与される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記式Iの化合物またはその塩が、単独で投与される際の通常の治療的投薬量より少ない量で投与される請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記併用量が、前記治療の結果により対象で体重の減少および食欲の減退の1つまたは複数が生じるように選択される請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記直接PPAR−ガンマアゴニストおよび式Iの化合物を一緒に混合して混合剤を形成し、該混合剤が対象に投与される請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記直接PPAR−ガンマアゴニストおよび式Iの化合物を一緒に混合せず、混合剤を形成せず、しかしながら独立に対象に投与する請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記状態が、インスリン抵抗性症候群またはII型糖尿病である請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記治療が糖尿病の症状または糖尿病の症状を発症する機会を低減し、該症状は、糖尿病に伴うアテローム性動脈硬化、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、ネフロパシー、ニューロパシー、網膜症、足部潰瘍形成および白内障からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項21】
インスリン抵抗性症候群、I型糖尿病およびII型糖尿病を含む糖尿病、ならびに多嚢胞性卵巣症候群からなる群から選択される状態を治療するための;または糖尿病に伴うアテローム性動脈硬化、動脈硬化、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、ネフロパシー、ニューロパシー、網膜症、足部潰瘍形成もしくは白内障を治療するもしくはその発症の機会を低減するための;または高脂血症、悪液質および肥満からなる群から選択される状態を治療するための医薬の製造における生物学的活性薬剤の使用であって;
前記薬剤は式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩であり
【化3】

[式中:
mは、0、2または4であり;
Xは−ORであり、ここでRは水素もしくは1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、Oもしくはヒドロキシであり;
、R、R、RおよびRのうちの3つは水素であり、残りは、水素、ハロ、ヒドロキシ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より独立に選択されるか;
または、Xは−NRであり、ここでRは水素またはヒドロキシであり、Rは、水素、メチルまたはエチルであり;
は水素であり;
、R、R、RおよびRのうちの3つは水素であり、残りは、水素、ハロ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より独立に選択される]、
該薬剤は、該代謝性状態の治療に有効な併用量で直接PPAR−ガンマアゴニストと併用して投与するように製剤される、使用。
【請求項22】
がメチルであり、Rがメチルである請求項21に記載の使用。
【請求項23】
Xが−ORであり、ここでRが水素または1〜3個の炭素原子を有するアルキルである請求項21に記載の使用。
【請求項24】
Xが−NRであり、ここでRが水素またはヒドロキシであり、Rが水素、メチルまたはエチルである請求項21に記載の使用。
【請求項25】
前記化合物が式IAで表される請求項21に記載の使用。
【化4】

【請求項26】
がメチルであり、Rがメチルである請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記化合物が、4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソ酪酸である請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記化合物が、3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル酢酸である請求項26に記載の使用。
【請求項29】
前記化合物が、4−3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル)−4(R)−ヒドロキシブタン酸である請求項26に記載の使用。
【請求項30】
前記化合物が、N−ヒドロキシ−2−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]アセトアミドである請求項26に記載の使用。
【請求項31】
前記直接PPAR−ガンマアゴニストが、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン、それらの薬学的に許容される塩、水和物、および溶媒和物、ならびにそのような塩の水和物および溶媒和物からなる群から選択される請求項21に記載の使用。
【請求項32】
前記直接PPAR−ガンマアゴニストが、
5−[(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イル)メチル]−2−メトキシ−N−[[4−(トリフルオロメチル)−フェニル]メチル]ベンズアミド;
(+)−5−[[6−(2−フルオロベンジル)−オキシ−2−ナフィ]メチル]−2,4−チアゾリジンジオン;
4−[4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エトキシ]ベンジル]−3,5−イソオキサゾリジンジオン);
(−)3−[4−[2−(フェノキサジン−10−イル)エトキシ]フェニル]−2−エトキシプロパン酸;
[5−[4−[2−(1−インドリル)エトキシ]フェニル]メチル]チアゾリジン−2,4−ジオン;
5−[4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル]−2,4−チアゾリジンジオン;
(S)−2−エトキシ−3−[4−[2−(4−メチルスルホニルオキシフェニル)エトキシ]フェニル]プロパン酸;
および{[±]−5−[(7−ベンジルオキシ−3−キノリル)メチル]−2,4−チアゾリジンジオン}からなる群から選択される請求項21に記載の使用。
【請求項33】
前記医薬が経口投与用に製剤される請求項21から32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記医薬が、前記直接PPAR−ガンマアゴニストおよび前記式Iの化合物を一緒に混合した混合剤の形態で含む請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記直接PPAR−ガンマアゴニストおよび前記式Iの化合物が、混合剤の形態としては一緒に混合されていない請求項33に記載の使用。
【請求項36】
前記直接PPAR−ガンマアゴニストの量が、単独で投与される際の通常の治療的投薬量より少ない請求項21に記載の使用。
【請求項37】
前記式Iの化合物またはその塩の量が、単独で投与される際の通常の治療的投薬量より少ない請求項21に記載の使用。
【請求項38】
前記併用量が、前記医薬を哺乳動物対象に投与した結果により、対象で体重の減少および食欲の減退の1つまたは複数が生じるように選択される請求項21に記載の使用。
【請求項39】
インスリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化、動脈硬化からなる群から選択される状態の治療において使用するための医薬組成物であって、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩
【化5】

[式中:
mは、0、2または4であり;
Xは−ORであり、ここでRは水素もしくは1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、Oもしくはヒドロキシであり;
、R、R、RおよびRのうちの3つは水素であり、残りは、水素、ハロ、ヒドロキシ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より独立に選択されるか;
または、Xは−NRであり、ここでRは水素またはヒドロキシであり、Rは、水素、メチルまたはエチルであり;
は水素であり;
、R、R、RおよびRのうちの3つは水素であり、残りは、水素、ハロ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より独立に選択される]と、
直接PPAR−ガンマアゴニストとを、状態を治療するのに有効な併用量で含む医薬組成物。
【請求項40】
がメチルであり、Rがメチルである請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
Xが−ORであり、ここでRが水素または1〜3個の炭素原子を有するアルキルである請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項42】
Xが−NRであり、ここでRが水素またはヒドロキシであり、Rが水素、メチルまたはエチルである請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記化合物が式IAで表される請求項39に記載の医薬組成物。
【化6】

【請求項44】
がメチルであり、Rがメチルである請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記化合物が、4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソ酪酸である請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記化合物が、3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル酢酸である請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記化合物が、4−3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル)−4(R)−ヒドロキシブタン酸である請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記化合物が、N−ヒドロキシ−2−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]アセトアミドである請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記直接PPAR−ガンマアゴニストが、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン、薬学的に許容されるそれらの塩、水和物、および溶媒和物、ならびにそのような塩の水和物および溶媒和物からなる群から選択される請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記直接PPAR−ガンマアゴニストが、
5−[(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イル)メチル]−2−メトキシ−N−[[4−(トリフルオロメチル)−フェニル]メチル]ベンズアミド;
(+)−5−[[6−(2−フルオロベンジル)−オキシ−2−ナフィ]メチル]−2,4−チアゾリジンジオン;
4−[4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エトキシ]ベンジル]−3,5−イソオキサゾリジンジオン);
(−)3−[4−[2−(フェノキサジン−10−イル)エトキシ]フェニル]−2−エトキシプロパン酸;
[5−[4−[2−(1−インドリル)エトキシ]フェニル]メチル]チアゾリジン−2,4−ジオン;
5−[4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル]−2,4−チアゾリジンジオン;
(S)−2−エトキシ−3−[4−[2−(4−メチルスルホニルオキシフェニル)エトキシ]フェニル]プロパン酸;
および{[±]−5−[(7−ベンジルオキシ−3−キノリル)メチル]−2,4−チアゾリジンジオン}からなる群から選択される請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記直接PPAR−ガンマアゴニストが、単独で投与される際の通常の治療的投薬量より少ない量で存在している請求項39から50のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記式Iの化合物またはその塩が、単独で投与される際の通常の治療的投薬量より少ない量で存在している請求項39から50のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記併用量が、前記医薬組成物を哺乳動物対象に投与した結果により、対象に体重の減少および食欲の減退の1つまたは複数が生じるように選択される請求項39から50のいずれか一項に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2009−532372(P2009−532372A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503119(P2009−503119)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/063288
【国際公開番号】WO2007/117791
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(501056821)ウェルスタット セラピューティクス コーポレイション (32)
【Fターム(参考)】