説明

伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置

【課題】循環冷却水の磨耗による減肉に関する表面位置の変化取得を把握することができる伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置を提供する。
【解決手段】伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置10は、伝熱管又は蒸発管の減肉状態を監視する監視装置であって、伝熱管内面又は蒸発管内面のフィンチューブ11に沿って移動する移動手段12と、前記移動手段12に設けられ、伝熱管又は蒸発管の表面の減肉状態をレーザ計測するレーザ計測手段13と、レーザ計測手段13にレーザ光を導入する導光路及び反射光を伝達する導出路を備えたケーブル手段14と、前記レーザ計測のデータを過去のデータ又は標準データと比較して、現在の減肉状態を判定する減肉状態判定手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱管又は蒸発管の減肉状態を簡易に監視することができる伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ設備等の蒸発管や熱交換器の伝熱管等には長期間に亙って操業すると、その配管径の変化が発生する。
(1) 例えば陸用ボイラ用蒸発管は、燃焼雰囲気中にあり、燃焼排ガス中のNOxを抑制するために還元雰囲気にさらされているため、硫化物の付着による腐食が進行する、という問題がある。
(2) また、例えば脱硫装置用熱交換器内では脱硫プロセスにおいて生成する硫化物による伝熱管への付着による腐食が発生する、という問題がある。
(3) 例えば熱交換器伝熱管では長期間に亙っての使用により、その内径が水の磨耗により減肉が発生する、という問題がある。
【0003】
このため、従来では、超音波センサや高周波渦電流を用いた探傷センサ等により、その腐食状態を検査する提案がある(特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−181139号公報
【特許文献2】特開昭61−38649号公報
【特許文献3】特開平4−264256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献等の提案では、以下のような問題がある。
特許文献1及び2の提案では、配管部材中の欠陥や腐食に関する情報は得られるが、表面の位置情報を取得することは困難であるという問題がある。
また、測定の都度、壁表面にセンサ部の圧着が必須となる。
また、熱交換器内部のように循環冷却水の磨耗による減肉に関する表面位置の変化状態の取得を把握することができない、という問題がある。
【0006】
特許文献3の提案では、配管部材中の欠陥や腐食に関する情報は得られるが、渦電流が内壁表面全体に分布するため、表面の位置情報を把握することができない、という問題がある。
また、熱交換器内部のように循環冷却水の磨耗による減肉に関する表面位置の変化状態取得を把握することができない、という問題がある。
【0007】
そこで、熱交換器内部のように循環冷却水の磨耗による減肉に関する表面位置の変化取得を把握することができる監視装置の出現が切望されている。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、配管内面の磨耗等による減肉に関する表面位置の変化取得を把握することができる伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態を監視する監視装置であって、伝熱管内面又は蒸発管内面に沿って移動する移動手段と、前記移動手段に設けられ、伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態をレーザ計測するレーザ計測手段と、レーザ計測手段にレーザ光を導入する導光路及び反射光を伝達する導出路を備えたケーブル手段と、前記レーザ計測のデータを過去のデータ又は標準データと比較して、現在の減肉状態を判定する減肉状態判定手段とを具備することを特徴とする伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置にある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記移動手段を一時的に停止する停止手段を有することを特徴とする伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置にある。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、レーザ計測手段は、移動手段の移動により、フィンチューブ内面を順次移動しつつ減肉状態を計測することを特徴とする伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィンチューブの内面に沿って移動することにより、例えばボイラ設備の装置を分解あるいは開放することなく、フィンチューブの腐食及び減肉状態を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置の概略図である。
【図2】図2は、伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置の他の概略図である。
【図3】図3は、伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置の他の概略図である。
【図4】図4は、図3の断面図である。
【図5】図5は、排ガス処理設備の熱交換器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0015】
本発明による実施例1に係る伝熱管又は蒸発管の減肉状態監視装置について、図面を参照して説明する。図1は、伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置の概略図である。
図1に示すように、伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置10は、伝熱管又は蒸発管の減肉状態を監視する監視装置であって、伝熱管内面又は蒸発管内面のフィンチューブ11に沿って移動する移動手段12と、前記移動手段12に設けられ、伝熱管又は蒸発管の表面の減肉状態をレーザ計測するレーザ計測手段13と、レーザ計測手段13にレーザ光を導入する導光路及び反射光を伝達する導出路を備えたケーブル手段14と、前記レーザ計測のデータを過去のデータ又は標準データと比較して、現在の減肉状態を判定する減肉状態判定手段とを具備するものである。
図中、符号15は移動車輪を図示する。
【0016】
図5は、排ガス処理設備の熱交換器の概略図である。
図5に示すように、排ガス80が導入され、熱媒体83と熱交換する熱交換器が設けられている。
熱交換器は、熱回収器81と再加熱器82とを熱媒体83が循環するための熱媒体循環通路84を有する。熱媒体83は、熱媒体循環通路84を介して熱回収器81と再加熱器82との間を循環している。熱回収器81と再加熱器82との各々の内部に設けられる熱媒体循環通路84の表面には、複数のフィンがフィンチューブ11に設けられている。熱媒体循環通路84には熱交換部86が設けられ、熱媒体83をスチーム87と熱交換することで、熱媒体83の媒体温度を調整することができる。
【0017】
熱媒体83は、熱媒体タンク88から熱媒体循環通路84に供給される。熱媒体83は、熱媒体送給ポンプ89により熱媒体循環通路84内を循環させる。また、浄化ガス91のガス温度に応じて調節弁V1によりスチーム87の供給量を調整し、熱回収器81から排出される排ガス80のガス温度に応じて調節弁V2により再加熱器82に送給される熱媒体83を熱回収器81に供給し、再加熱器82に送給される熱媒体83の供給量を調整する。なお、再加熱器82から排出される浄化ガス91は煙突92から外部に排出される。
【0018】
本実施例では、このようなフィンチューブ11内面11aの減肉状態を伝熱管又は蒸発管の減肉状態監視装置10により監視するようにしている。
【0019】
ここで、レーザ計測手段13は、図1に示す減肉状態を伝熱管又は蒸発管の減肉状態監視装置10において、レーザ変位センサを有するセンサヘッド31と、レーザ光32の焦点距離を短縮するプリズム33とを具備し、レーザ変位センサで生成されるレーザ光32をプリズム33に通して焦点距離を短くしている。
【0020】
図2は、伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置の他の概略図である。
図2に示すように、減肉状態を伝熱管又は蒸発管の減肉状態監視装置10において、プリズム33の代わりにミラー35を用いるようにしてもよい。
【0021】
本実施例によれば、フィンチューブ11内面11aにレーザ変位センサから出射するレーザ光32を導光し、導光路先端部13aでフィンチューブ11面に垂直に放射するようにしている。そして、図示しない制御手段により導光路先端を制御し、レーザ光32の反射面フィンチューブ11の周囲壁面に360度移動させるようにしている。
これにより、フィンチューブ11の管壁からの反射面の位置をレーザ変位センサで連続的に読み取ることにより、それらの減肉状態を計測するようにしている。
【0022】
前記レーザ計測手段13の計測データは、過去のデータ又は標準データと比較して、現在の減肉状態を減肉状態判定手段により判定することとなる。
この際、計測の基準点からの位置情報を記録することにより、レーザ変位センサからの表面情報と共に、監視作業者の情報処理装置内に記録されると共に、画面上に表示される。
【0023】
減肉状態判定手段には、プラント情報データベースから、プラント・検査部位情報が入力され、例えば、検査対象プラント名、検査対象部位名、設計データ(管の設計外径、設計要求肉厚、材料等)、過去の検査履歴、類似プラントデータ等が入力される。
【0024】
レーザ計測手段13は、移動手段12の移動により、フィンチューブ11の内面11a全周を順次レーザ計測しつつ移動し、減肉状態を計測するようにしている。
【0025】
このように、本実施例によれば、熱交換器内部のように循環冷却水の磨耗による減肉に関する表面位置の変化状態を連続して把握することができる。
【0026】
図3は、伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置の他の概略図である。図4はその断面図である。
図3及び図4に示すように、伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置10において、バネ16を介して車輪14を設けることで、フィンチューブ11が屈曲している場合に、バネ16等を利用して内壁面に密着させるようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明に係る伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置によれば、配管内面の磨耗等による減肉に関する表面位置の変化取得を把握することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置
11 フィンチューブ
11a 内面
12 移動手段
13 レーザ計測手段
14 ケーブル手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態を監視する監視装置であって、
伝熱管内面又は蒸発管内面に沿って移動する移動手段と、
前記移動手段に設けられ、伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態をレーザ計測するレーザ計測手段と、
レーザ計測手段にレーザ光を導入する導光路及び反射光を伝達する導出路を備えたケーブル手段と、
前記レーザ計測のデータを過去のデータ又は標準データと比較して、現在の減肉状態を判定する減肉状態判定手段とを具備することを特徴とする伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記移動手段を一時的に停止する停止手段を有することを特徴とする伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
レーザ計測手段は、移動手段の移動により、フィンチューブ内面を順次移動しつつ減肉状態を計測することを特徴とする伝熱管内面又は蒸発管内面の減肉状態監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−78037(P2012−78037A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225272(P2010−225272)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】