説明

位置姿勢計測方法及び装置

【課題】 誤検出指標や検出精度の低い指標による影響を減少させ、高精度かつより安定な撮像装置の位置姿勢計測を行う。
【解決手段】 指標検出部2030は、物体上に配置または設定された指標を撮像画像から検出する。評価量算出部2060は評価量を、この指標の画像上での2次元幾何特徴及び/又はこの指標の3次元空間中における撮像装置2010と指標との間の関係を表す3次元幾何特徴を利用して算出する。信頼度算出部2070は、算出した指標の評価量に応じてこの指標の信頼度を算出する。位置姿勢算出部2080は、算出された指標の信頼度と、検出された夫々の指標の画像座標に関する情報とを少なくとも用いて、物体または撮像装置2010の位置姿勢を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視点位置姿勢計測の精度向上と安定性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、現実空間と仮想空間の繋ぎ目のない融合を目的とした、複合現実感に関する研究が盛んに行われている。複合現実画像は、ビデオカメラなどの撮像装置によって撮影された現実空間の画像に、撮像装置の位置及び姿勢に応じて生成した仮想空間の画像を重畳描画することにより生成される。そして、複合現実感システムで利用される画像表示装置は、例えば、ビデオシースルー方式によって実現される。ここで、仮想空間の画像とは、例えば、コンピュータ・グラフィックスにより描画された仮想物体や文字情報等である。
【0003】
複合現実感の実現のためには、現実空間と仮想空間の間の位置合わせをいかに正確に行うかということが重要であり、従来から多くの取り組みが行われてきた。複合現実感における位置合わせの問題は、仮想の情報を重畳しようとする対象物体と撮像装置との間の、相対的な位置姿勢(以下ではこれを、撮像装置の位置姿勢と称する)を求める問題に帰結される。
【0004】
この問題を解決する方法としては次のような試みがなされている。即ち、環境中や対象物体上に、対象の座標系における配置が既知であるような複数の指標を設置あるいは設定する。そして、既知の情報であるその指標の対象座標系における三次元座標と、撮像装置が撮像した画像内における指標の投影像の座標とを利用して、対象座標系に対する撮像装置の位置姿勢を求める(非特許文献1を参照)。
【0005】
また、撮像装置に慣性センサを装着し、センサ計測値を利用することにより、画像情報のみを用いる場合と比べて安定した位置合わせを実現する試みがなされている。例えば、センサ計測値に基づいて推定した撮像装置の位置及び姿勢を指標の検出処理に利用する方法が提案されている。同推定結果を画像に基づく位置及び姿勢算出の初期値として用いる方法も提案されている。さらに、指標が見えない状況においても同推定結果を大まかな位置及び姿勢として用いる方法も提案されている(特許文献1、非特許文献2を参照)。
【0006】
従来の画像情報を用いた位置合わせ手法は、指標の検出結果がすべて正しいことを前提としていた。さらに、指標検出結果はすべて均等な重みとして計算されていた。そのため、誤検出や検出精度の低い指標による影響を大きく受け、正しい位置姿勢計測が行えない場面が起こり得る。
【0007】
そこで、M推定のような統計的推定手法を導入し、検出した指標(特徴点)の画像上での観察座標と撮像装置の位置姿勢や指標の位置から推定した指標の画像座標(再投影座標)との間の誤差(再投影誤差)を求る。そして、この誤差をもとに検出指標の信頼度を算出し、誤検出指標を排除することや、その影響を下げる手法が近年提案されている(非特許文献3を参照)。
【特許文献1】特開2005−33319号公報
【非特許文献1】佐藤, 田村:“複合現実感における位置合わせ手法”, 画像の認識・理解シンポジウム(MIRU 2002)論文集I, 情報処理学会シンポジウムシリーズ、 vol.2002、 no.11、 pp.I.61−I.68, July 2002
【非特許文献2】藤井博文,神原誠之,岩佐英彦,竹村治雄,横矢直和,拡張現実のためのジャイロセンサを併用したステレオカメラによる位置合わせ,電子情報通信学会技術研究報告PRMU99−192(信学技報vol.99、 no.574、 pp.1−8)
【非特許文献3】佐藤,神原,横矢,竹村:“マーカと自然特徴点の追跡による動画像からのカメラ移動パラメータの復元”,電子情報通信学会論文誌,D−III,vol.J86−D−II,no.10,pp.1431−1440,2003.
【0008】
近年、現実空間と仮想空間の繋ぎ目のない融合を目的とした、複合現実感に関する研究が盛んに行われている。複合現実感システムで利用される画像表示装置は、ビデオカメラなどの撮像装置によって撮影された現実空間の画像に、撮像装置の位置及び姿勢に応じて生成した仮想空間の画像を重畳描画してそれを表示するビデオシースルー方式によって主に実現される。ここで、仮想空間の画像とは、例えば、コンピュータ・グラフィックスにより描画された仮想物体や文字情報等である。
【0009】
複合現実感の実現のためには、現実空間と仮想空間の間の位置合わせをいかに正確に行うかということが重要であり、従来から多くの取り組みが行われてきた。複合現実感における位置合わせの問題は、仮想の情報を重畳しようとする対象物体と撮像装置との間の、相対的な位置姿勢(以下ではこれを、撮像装置の位置姿勢と称する)を求める問題に帰結される。
【0010】
この問題を解決する方法としては次のような試みがなされている。即ち、環境中や対象物体上に、対象の座標系における配置が既知であるような複数の指標を設置あるいは設定する。そして、既知の情報であるその指標の対象座標系における三次元座標と、撮像装置が撮像した画像内における指標の投影像の座標とを利用して、対象座標系に対する撮像装置の位置姿勢を求める(非特許文献1を参照)。
【0011】
また、撮像装置に慣性センサを装着し、センサ計測値に基づいて推定した撮像装置の位置及び姿勢を指標の検出処理に利用したり、同推定結果を画像に基づく位置及び姿勢算出の初期値として用いたり、さらに、指標が見えない状況においても同推定結果を大まかな位置及び姿勢として用いることで、画像情報のみを用いる場合と比べて安定した位置合わせを実現する試みがなされている(特許文献1、非特許文献2を参照)。
【0012】
従来の画像情報を用いた位置合わせ手法は、指標の検出結果がすべて正しいことを前提としていた。さらに、指標検出結果はすべて均等な重みとして計算されていた。そのため、誤検出や検出精度の低い指標による影響を大きく受け、正しい位置姿勢計測が行えない場面が起こり得る。
【0013】
そこで、M推定のような統計的推定手法を導入し、検出した指標(特徴点)の画像上での観察座標と撮像装置の位置姿勢や指標の位置から推定した指標の画像座標(再投影座標)との間の誤差(再投影誤差)を求る。そして、この誤差をもとに検出指標の信頼度を算出し、誤検出指標を排除することや、その影響を下げる手法が近年提案されている(非特許文献3を参照)。
【特許文献1】特開2005−33319(ジャイロ&ICP位置あわせ 内山,佐藤)
【非特許文献1】佐藤, 田村:“複合現実感における位置合わせ手法”, 画像の認識・理解シンポジウム(MIRU 2002)論文集I, 情報処理学会シンポジウムシリーズ、 vol.2002、 no.11、 pp.I.61−I.68, July 2002
【非特許文献2】藤井博文,神原誠之,岩佐英彦,竹村治雄,横矢直和,拡張現実のためのジャイロセンサを併用したステレオカメラによる位置合わせ,電子情報通信学会技術研究報告PRMU99−192(信学技報vol.99、 no.574、 pp.1−8)
【非特許文献3】佐藤,神原,横矢,竹村:“マーカと自然特徴点の追跡による動画像からのカメラ移動パラメータの復元”,電子情報通信学会論文誌,D−III,vol.J86−D−II,no.10,pp.1431−1440,2003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、再投影誤差の統計量のみに基づいて信頼度を算出し、指標に重み付けすることで誤検出を排除または検出精度(検出すべき画像座標の正確さ)の低い指標の影響を軽減する試みは、必ずしも有効であるとはいえない。なぜなら、上記の手法は多数の指標が正しく検出され、例外的に現れた誤検出指標を排除することに関しては有効であるが、正しい指標より誤検出した指標の方が多い場合では、検出精度の低い指標の影響を受ける可能性があるからである。また、同じ画像で撮影された指標であっても、マーカの配置や撮影時の状況に応じて検出精度の低い指標が含まれる場合があるため位置姿勢計測精度の低下につながるという課題がある
本発明は上記問題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、二次元形状を持つ指標(円マーカや多角形マーカ等)特有の評価量に応じて重み付けを変え、検出精度の低い指標による影響を排除又は減少させ、高精度且つより安定な撮像装置の位置姿勢計測を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成をを有する。
【0016】
本願請求項1記載の発明は、撮像装置によって撮像された撮像画像を入力する画像入力工程と、物体上に配置または設定された指標を前記撮像画像から検出する指標検出工程と、前記撮像画像から検出されている夫々の指標の信頼度を算出する手がかりとして用いるための評価量を算出する指標評価量算出工程と、前記指標評価量算出工程で算出した指標の評価量に応じて当該指標の信頼度を算出する信頼度算出工程と、前記信頼度算出工程で算出された指標の信頼度と、前記指標検出工程で検出された夫々の指標の画像座標に関する情報とを少なくとも用いて、前記物体または撮像装置の位置姿勢を求める位置姿勢算出工程とを有し、前記評価量は、前記指標の画像上での2次元幾何特徴および/または前記指標の3次元空間中における前記撮像装置と前記指標との間の関係を表す3次元幾何特徴に基づくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検出精度の低い指標の影響を下げることができるので、高精度かつより安定的に撮像装置の位置姿勢計測を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下添付図面を参照して、本発明をその好適な実施形態に従って詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
本実施形態に係る撮像装置の位置姿勢計測装置は、検出した2次元形状を持つ指標の評価量に応じて信頼度を変えて重み付けを行い、精度の低い指標の排除または影響を下げ、撮像装置の位置姿勢計測結果の精度を向上させる。以下、本実施形態に係る指標の評価量に応じた重み付けによる撮像装置の位置姿勢測定方法について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る撮像装置の位置姿勢計測装置2000の概略構成を示している。位置姿勢計測装置2000は、画像入力部2020、指標検出部2030、撮像装置概略位置姿勢入力部2040、データ管理部2050、評価量算出部2060、信頼度算出部2070、位置姿勢算出部2080によって構成されている。また、画像入力部2020には、計測対象である撮像装置2010が接続されている。
【0021】
環境中または対象物体上には、指標が複数配置されている。ここで、物体に配置された指標をP(k=1,,,Ko)で表す。Koは配置された指標の数(図3(a)の例ではK0=3)である。また、図3(b)で示すような多角形の指標Pは頂点pki(i=1,,,N)を含む。Nは、指標Pを構成する頂点の総数(本実施形態の場合はN=4)を表す。また、図3(c)に示すように、それぞれの頂点の相対的な位置関係が既知の点pki(i=1,,,N)によって構成される指標であってもよい。
【0022】
以下では、計測の基準とする座標系(ここでは、環境中の一点を原点として定義し、互いに直交する3軸を夫々X軸、Y軸、Z軸として定義した座標系)を世界座標系と呼び、世界座標系における各指標の位置姿勢は既知であるとする。また、環境中に配置された夫々の指標を構成する各頂点は、世界座標系において位置が既知であるとする。
【0023】
指標Pは、撮影画像上における投影像の画面座標が検出可能であって、かついずれの指標であるか、さらには指標を構成する各頂点が識別可能であるような指標であれば、何れの形態であってもよい。例えば、図3(a)、(b)に示すような四角形指標は内部に識別子を表すパターンを持ち、一意に同定可能である。このような指標を検出する際には、撮影画像に2値化処理を施した後にラベリング処理を行い、一定面積以上の領域の中から4つの直線によって形成されているものを指標候補として抽出する。さらに、候補領域の中に特定のパターンがあるか否かを判定することによって候補領域が指標領域であるかを判定する。そして、指標領域と判定された場合は、内部のパターンを読み出すことによって指標の方向と識別子を取得する。
【0024】
撮像装置2010によって撮影された画像は、画像入力部2020を介して指標検出部2030に入力される。
【0025】
指標検出部2030は、画像入力部2020から画像を入力し、入力された画像中に撮影されている指標Pknを構成する各頂点pkniの画像座標を検出する。
【0026】
さらに、指標検出部2030は、検出された各々の指標Pknの識別(同定)を行う。
【0027】
そして、世界座標系における指標の位置姿勢MWMや各頂点の世界座標xpkni(指標に関する既知の情報として予め保持している)をデータ管理部2050から入力する。
【0028】
そして、検出された夫々の指標の識別子knと世界座標系における位置姿勢MWM、各頂点pkniの画像座標upkniと世界座標xpkniの組を要素として有するリスト(以下、データリストと称す)を作成し、データ管理部2050に出力する。ここで、n(n=1,,,N)は検出された指標夫々に対するインデックスであり、Nは検出された指標の総数を表している。また、N個の指標から成る構成点(頂点)の総数をNTotalとする。例えば図1の場合は、識別子が1、2、3である四角形形状の指標が撮影される場合を示しているので、N=3である。また、識別子k=1、k=2、k=3と、これらの指標の位置姿勢、各頂点の画像座標upk1i、upk2i、upk3i、(i=1、2、3、4)及び世界座標xpk1i、xpk2i、xpk3i、(i=1、2、3、4)が出力される。NTotalは、12(=3×4)になる。
【0029】
ここで、ある三次元座標系Bに対する三次元の座標系Aの位置を表す三次元ベクトルをt、姿勢を表す3×3回転行列をRとする。この場合、A上での位置がxA(三次元ベクトル)で表される点のB上での座標xB(三次元ベクトル)は、下記の式1に示す4×4行列MBAを使って同次座標表現によって下記の式2のように表される。
【0030】
【数1】

【0031】
【数2】

【0032】
本実施形態においては、MBAを座標系Bに対する座標系Aの位置姿勢を表す手段として用いる。
【0033】
撮像装置概略位置姿勢入力部2040は、世界座標系における撮像装置2010の位置姿勢の概略値MWCを求め、これをデータ管理部2050へと出力する。撮像装置の概略位置姿勢としては、例えば、6自由度位置姿勢センサを撮像装置2010に装着させてその出力値を用いてもよい。また、3自由度姿勢センサを撮像装置2010に装着することによって撮像装置2010の姿勢を計測し、指標検出部2030で得たデータリストをデータ管理部2050から入力し、これらの情報に基づいて求めてもよい。あるいは、指標検出部2030で得たデータリストをデータ管理部2050から入力し、画像座標と世界座標との対応関係から得られる線形連立方程式を解くことによって撮像装置の位置姿勢を推定する手法を用いて求めてもよい。その他の何れの手法を用いて撮像装置の概略位置姿勢を求め初期値としてもよい。
【0034】
データ管理部2050は、データリストの保持・管理を行っており、必要に応じてこれを出力する。また、指標に関する既知の情報として、世界座標系における指標の位置姿勢MWMや各頂点の世界座標xpkniを予め保持している。さらに、撮像装置概略位置姿勢入力部2040で求めた世界座標系における撮像装置2010の概略位置姿勢MWCを入力・保持し、必要に応じてこれを出力する。
【0035】
評価量算出部2060は、データ管理部2050から、あるフレームにおける撮像装置2010の概略位置姿勢と、同フレームで検出された指標のデータリストを入力する。そして、データリストの要素である夫々の指標に対してその評価量VPknを算出し、得られた評価量を各指標のパラメータとしてデータリスト内に保存する。
【0036】
ここで、本実施形態に係る評価量算出部2060における、評価量算出の詳細について説明する。まず、世界座標系における指標の重心位置と撮像装置2010の概略位置tWCとに基づいて、指標と撮像装置2010の視点とを結ぶ共線ベクトル
【0037】
【数3】

【0038】
を求める。ここで、世界座標系における指標の重心位置については、指標に関する既知の値として予め保持しておいても良いし、指標の各頂点の世界座標の平均値として求めても良い。
【0039】
次に、指標の各頂点の世界座標に基づいて、世界座標系における指標の法線ベクトル
【0040】
【数4】

【0041】
を求める。この値は、指標に関する既知の値として予め保持しておいても良い。さらに、この指標の法線ベクトル
【0042】
【数5】

【0043】
と共線ベクトル
【0044】
【数6】

【0045】
とのなす角θPkn(図4(a)にその幾何的な関係を示す)を、式7の関係に基づいて算出する。
【0046】
【数7】

【0047】
最後に、評価量VPkn=θPknとしてデータリストへと保存する。このようにして求めた評価量は、各指標がカメラに対してどれくらい正面から捕らえられているかを表す値となる。
【0048】
信頼度算出部2070は、データ管理部2050からデータリストを入力し、データリスト中の夫々の指標に対して、評価量算出部2060で求めたそれぞれの指標の評価量VPknに基づいて指標の信頼度ωPknを算出する。そして、得られた評価量を各指標のパラメータとしてデータリスト内に保存する。
【0049】
ここで、本実施形態に係る信頼度算出部2070における、信頼度算出の詳細について説明する。指標の信頼度ωPknは、指標の評価量VPknを引数とする重み関数
【0050】
【数8】

【0051】
によって算出する。重み関数ω(VPkn)は、正(>0)である。係る関数は、ロバスト推定手法のひとつであるM推定で用いられるような重み関数(確率論的モデルを作り、観測データとよくあてはまるものに、より大きな重み付けを行う関数)であってもよいし、実験的、経験的に求めた関数であってもよい。
【0052】
ここで、
【0053】
【数9】

【0054】

【0055】
【数10】

【0056】
のなす角θPknは0°から90°までの範囲で変化する。θPkn=90°であれば、平面形状の指標は検出できないので信頼度は0とする。また、θPknが90°付近であれば、指標の各頂点の観察座標の検出精度が低下するので小さな信頼度を与える。θPknが0°付近では検出精度が高くなるので大きな信頼度を与える。このように、θPkn=90°で0、θPkn=0°で最大となるような評価値θPknの関数ω(θPkn)によって信頼度ωPknを定義する。
【0057】
位置姿勢算出部2080は、データ管理部2050からデータリスト及び撮像装置2010の概略位置姿勢を入力する。そして、あるフレームにおける撮像装置の初期位置姿勢と、同フレームで検出された各指標の識別子、信頼度、各頂点の画像座標と世界座標とをもとに撮像装置2010の位置姿勢算出処理を行う。そして、その結果として得られた撮像装置2010の位置姿勢情報(すなわち、世界座標系における撮像装置の位置と姿勢)を出力する。
【0058】
図2は、本実施形態の位置姿勢測定装置2000が位置姿勢情報を求める際に行う処理のフローチャートである。
【0059】
ステップS6010において、指標検出部2030は、入力画像に対して指標の検出処理を実行し、検出結果として生成したデータリストをデータ管理部2050に出力する。
【0060】
ステップS6020において、撮像装置概略位置姿勢算出部2040は、入力画像の撮像時刻と同一時刻の世界座標系における撮像装置2010の概略位置姿勢MWCを算出し、データ管理部2050へと入力する。
【0061】
ステップS6030において、評価量算出部2060は、データ管理部2050から撮像装置2010の概略位置姿勢MWCを入力し、データリスト中の夫々の指標の評価量VPknを算出する。
【0062】
ステップS6040において、信頼度算出部2070は、データリスト中の夫々の指標に対して、その評価量VPknに基づいて信頼度ωPknを算出する。
【0063】
ステップS6050において、位置姿勢算出部2080は、データ管理部2050が保持している撮像装置2010の概略位置姿勢情報MWCと検出指標のデータリストを入力する。そして、これをもとに撮像装置2010の位置姿勢算出処理を行い、その結果として得られた撮像装置2010の位置姿勢情報を出力する。
【0064】
最後にステップS6060では、位置姿勢算出処理を終了するか否かの判定が行われる。オペレータが、位置姿勢算出装置2000に対して、位置姿勢算出処理の終了を指示した場合には、処理を終了させ、位置姿勢算出処理の継続を指示した場合には、再びステップS6010へと戻り、次フレームの入力画像に対する処理が実行される。
【0065】
次に、図5に示すフローチャートを参照しながら、位置姿勢算出部2080の処理(図2のステップS6050)の詳細を説明する。
【0066】
ステップS4010において、位置姿勢算出部2080は、あるフレームにおける撮像装置の初期位置姿勢と、データリスト(同フレームで検出された各指標の識別子、信頼度、各頂点の画像座標と世界座標)を、データ管理部2050から入力する。
【0067】
ステップS4020において、位置姿勢算出部2080は、入力された指標の情報が位置及び姿勢の推定に十分な情報を含むか否かを判定し、それに応じて処理の分岐を行う。具体的には、入力された指標の頂点の総数NTotalが3以上の場合はステップS4030に処理を進め、3未満の場合はステップS4090に処理を進める。NTotalについてであるが、例えば、四角形の4頂点で構成される指標1つであればNTotalは4、三角形の3頂点で構成される指標2つならばNTotalは6となる。
【0068】
位置姿勢算出部2080では、世界座標系(あるいは任意の座標系)における撮像装置2010の位置姿勢を求めるべき未知パラメータとして扱う。ここで、姿勢の表現方法として、3値のベクトルa=[ξ ψ ζ]を用いる。aは回転軸・回転角による姿勢の表現方法であり、回転行列Rは次式に示すようなaの関数となる。
【0069】
【数11】

【0070】
このとき、算出すべき撮像装置の位置姿勢は、位置t=[x y z]及び姿勢a=[ξ ψ ζ]によって表現される。そして、求める未知パラメータは、6値の状態ベクトルs=[x y z ξ ψ ζ]と記述される。
【0071】
ステップS4030において、位置姿勢算出部2080は、各々の指標の頂点pkniに対して、その画像座標の推定値(再投影座標)uPkni’を算出する。uPkni’の算出は、指標の頂点pkniの世界座標xPkniと現在の状態ベクトルsの関数(観測方程式)
【0072】
【数12】

【0073】
に基づいて行われる。
【0074】
具体的には、関数FC()は、xPkniからカメラ座標における位置ベクトルxPkniを求める次式
【0075】
【数13】

【0076】
及び、xPkniから画像上の座標uPkni’を求める次式
【0077】
【数14】

【0078】
によって構成されている。ここでf及びfは、それぞれx軸方向及びy軸方向における撮像装置2010の焦点距離であり、既知の値として予め保持されているものとする。
【0079】
ステップS4040において、位置姿勢算出部2080は、各々の指標の頂点pkniの実測値uPkniと、それに対応する画像座標の計算値uPkni’との誤差(再投影誤差)ΔuPkniを次式によって算出する。
【0080】
【数15】

【0081】
ステップS4050において、位置姿勢算出部2080は、各々の指標の頂点pkniに対して、状態ベクトルsに関する画像ヤコビアンJusPkni(=∂uPkni/∂s)を算出する。ここで、係るヤコビアンは即ち、式12の関数F()を状態ベクトルsの各要素で偏微分した解を各要素に持つ2行×6列のヤコビ行列である。
【0082】
具体的には、式14の右辺をカメラ座標xPkniの各要素で変微分した解を各要素に持つ2行×3列のヤコビ行列JuxPkni(=∂uPkni/∂x)と、式13の右辺をベクトルsの各要素で偏微分した解を各要素に持つ3行×6列のヤコビ行列JxsPkni(=∂x/∂s)を算出し、次式によってJusPkniを算出する。
【0083】
【数16】

【0084】
ステップS4060において位置姿勢算出部2080は、ステップS4040及びステップS4050において算出した各指標の頂点の誤差ΔuPkni、画像ヤコビアンJusPkni、ステップS4010で入力した各指標の信頼度ωPknに基づいて、状態ベクトルsの補正値Δsを算出する。以下、補正値Δsの算出処理の詳細を説明する。
【0085】
はじめに、各指標の頂点における再投影誤差を垂直に並べた2NTotal次元の誤差ベクトルUを作成する。
【0086】
【数17】

【0087】
また、各指標の頂点におけるヤコビ行列JusPkniを垂直に並べた(2NTotal)行×6列の行列Φを作成する。
【0088】
【数18】

【0089】
次に、指標Pknの各頂点pkniに対応する要素(頂点毎にx座標とy座標の2要素を有する)に対して当該指標の信頼度ωPknを対角成分に持つような、2NTotal行×2NTotal列の対角行列Wを作成する。
【0090】
【数19】

【0091】
行列Wを重みとした最小二乗法によってΔsを求めることを考えると、次の正規方程式
【0092】
【数20】

【0093】
が得られるので、Δsを次式より算出する。
【0094】
【数21】

【0095】
このように、2次元指標特有の検出時の評価量に基づく信頼度を表す行列Wを重みとしてΔsの算出に利用することで、検出時の指標の評価量に応じて各指標のΔsの算出への寄与度が変化するという効果を得ることができる。2次元指標特有の検出時の評価量とは、ここでは、撮像装置と指標の相対姿勢である。即ち、より信頼できる指標である可能性が高い指標をΔsの算出に積極的に利用し、検出精度が低い可能性が高い指標から受ける悪影響を軽減するという効果を得ることができる。
【0096】
なお、M推定のような統計的推定手法によって指標の再投影誤差ΔuPkniに応じた重みを求め、ωPknとの積を得てこれを重みとして用いてもよい。
【0097】
ここで、Δsは6次元ベクトルであるから、2MTotalが6以上であれば、Δsを求めることができる。式21のようにΔsを求めることができるが、他の方法によって求めてもよい。例えば、式20は連立一次方程式であるので、ΔsをGaussの消去法で解いてもよいし、その他のいずれの手法で解いてもよい。
【0098】
ステップS4070において、位置姿勢算出部2080は、ステップS4060において算出した補正値Δsを用いて、以下の式22に従ってsを補正し、得られた値を新たなsとする。
【0099】
【数22】

【0100】
ステップS4080において、位置姿勢算出部2080は、誤差ベクトルUが予め定めた閾値より小さいかどうか、あるいは、補正値Δsが予め定めた閾値より小さいかどうかといった何らかの判断基準を用いて、計算が収束しているか否かの判定を行う。収束していない場合には、補正後の状態ベクトルsを用いて、再度ステップS4030以降の処理を行う。
【0101】
ステップS4080において計算が収束したと判定されると、ステップS4090において、位置姿勢算出部2080は、世界座標系における撮像装置の位置及び姿勢sを出力する。この時の出力の形態は、sそのものであっても良いし、sの位置成分を3値のベクトルで表し、姿勢成分をオイラー角や3×3の回転行列で表したものであっても良いし、sから生成した座標変換行列Mであっても良い。
【0102】
以上の処理によって、世界座標系に対する(すなわち、世界座標系における)撮像装置の位置または位置と姿勢を取得することができる。以上のように、本実施形態に係る位置姿勢計測装置によれば、2次元形状を持つ指標の特有の評価量を考慮して位置姿勢推定を行うので、検出精度の低い指標の影響を軽減し、撮像装置の位置姿勢計測を高精度に行うことができる。
【0103】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、信頼度ωPknは、撮像装置と指標の相対姿勢に基づく評価量に基づいて決定されていた。しかし、二次元形状を持つ指標の幾何形状の特性を利用した評価量に基づいて信頼度を算出するのであれば、評価量とする情報の種類はこれに限定されるものではない。即ち、信頼度の算出方法はその他の方法、またはその他の方法と組み合わせた方法であってもよい。例えば、指標に関する2次元幾何情報(例えば、面積や縦横比など)を画像から得て、これを評価値として信頼度を算出することができる。
【0104】
例えば、検出された指標の画像上での面積SPknを評価値VPknとして信頼度ωPknを算出してもよい。この場合、撮像装置概略位置姿勢入力部2040は不要となる。
【0105】
評価量算出部2060は、データリストに保持している指標の各頂点の画像座標pkniを用いて、画像上で検出した指標領域の画像中における面積SPknを算出し、これを夫々の指標の評価量とする。指標の面積は、指標検出部2030の指標検出工程で得られるラベリング画像を指標検出部2030から評価量算出部2060へと入力し、当該指標領域の画素数をカウントすることで算出してもよい。ここでラベリング画像とは、例えば指標領域以外の画素の画素値を0に、各指標領域に相当する画素の画素値をその画像上における夫々の指標領域の識別番号に設定した画像である。
【0106】
信頼度算出部2070は、画像上で検出した指標の面積SPknが大きいとき高い信頼度を、面積SPknが小さいとき低い信頼度を与えるような重み関数ω(VPkn)を用いて、夫々の指標の信頼度を算出する。面積SPknの大小の判定は、分散や標準偏差を用いてもよいし、実験的、経験的に求めてもよい。
【0107】
また、このようにして得られた指標の面積に基づく信頼度ωPknをそのまま信頼度ωPknとして用いるだけでなく、その他の方法で求めた信頼度との積や平均を求めることでこれらを組み合わせた信頼度を得、これを用いてもよい。
【0108】
<変形例1>
第2の実施形態で求めた信頼度の算出方法において、指標が四角形指標の場合には、画像上で検出した辺の縦横比を評価値VratioPknとして信頼度ωPknを算出してもよい。
【0109】
評価量算出部2060は、データリストに保持している指標の各頂点の画像座標pkniを用いて、例えば、夫々の頂点毎に存在する隣り合う2辺に対して、「見かけ上の短辺/見かけ上の長辺」によって長さの比を求める。そして、これらのうちの最小値を選択することによって評価量を得る。信頼度算出部2070は、例えば、指標が図3に示すような四角形指標であるとき評価値が1に近い指標に高い信頼度を、評価値が0に近い指標には低い信頼度を与えるような重み関数ωratio(VratioPkn)を用いて、夫々の指標の信頼度を算出する。
【0110】
また、このようにして得られた検出した辺の縦横比に基づく信頼度ωratioPknをそのまま信頼度ωPknとして用いるだけでなく、その他の方法で求めた信頼度との積や平均を求めることでこれらを組み合わせた信頼度を得て、これを用いてもよい。
【0111】
<変形例2>
第2の実施形態で求めた信頼度の算出方法において、指標が四角形指標の場合には、画像上で検出した指標における隣り合う2辺の間の角度を評価値VanglePknとして信頼度ωPknを算出してもよい。
【0112】
隣り合う2辺の組み合わせは夫々の頂点毎に存在するので、例えば、夫々の2辺間のなす角を求め、これらのうちの最小値を評価値とする。例えば、四角形指標の隣り合う辺の間の角度が90°付近であれば大きな信頼度を、0°付近であれば小さな信頼度を与えるような関数ωangle(VanglePkn)を重み関数として定義する。
【0113】
また、このようにして得られた指標における隣り合う2辺の間の角度に基づく信頼度ωanglePknをそのまま信頼度ωPknとして用いるだけでなく、その他の方法で求めた信頼度との積や平均を求めることでこれらを組み合わせた信頼度を得て、これを用いてもよい。
【0114】
<変形例3>
第2の実施形態で求めた信頼度の算出方法において、円形の平面形状からなる円形指標を指標として用いる場合には、画像上で検出した指標の真円度を評価値VcirclePknとして信頼度ωPknを算出してもよい。この場合、指標検出部2030から評価量算出部2060へとラベリング画像が出力される。
【0115】
真円度とは,円形指標の投影像として検出された領域(この領域は、円形指標が正面から撮影された場合には真円に近い形状となり、斜め方向から撮影された場合には楕円に近い形状となる)の真円からのずれ量である。円真度は、例えば、検出領域の外接円と内接円の半径の差によって定義できる。
【0116】
信頼度算出部2070は、このrを夫々の指標領域に対して求め、これを評価値VcirclePknとする。信頼度算出部2070は、rが小さな指標には高い信頼度を、逆にrが大きな指標には低い信頼度を与えるような重み関数ωcircle(VcirclePkn)を用いて、夫々の指標の信頼度を算出する。
【0117】
また、このようにして得られた円形マーカの真円度に基づく信頼度ωcirclePknをそのまま信頼度ωPknとして用いるだけでなく、その他の方法で求めた信頼度との積や平均を求めることでこれらを組み合わせた信頼度を得て、これを用いてもよい。
【0118】
<変形例4>
第1の実施形態及び第2の実施形態で求めた信頼度の算出方法において、複数種の指標を混在して用いる場合に、夫々の指標の種類に応じて信頼度を定義してもよい。ここで複数の指標とは、例えば、内部にID情報を有するような多角形形状の指標、画像情報からは同定することができない単色領域からなる円形指標(以上の指標は人為的な指標)、エッジやテクスチャといった自然特徴によって定義される自然特徴指標である。
【0119】
例えば、円形指標や自然特徴指標などに比べて誤検出や同定間違いが起きにくいID情報を持つ多角形指標には高い信頼度を与える。自然特徴と比べると相対的に誤検出の可能性が低い円形指標には中位の信頼度を与える。最も誤検出の可能性の高い自然特徴指標には低い信頼度を与える。そして、これらの信頼度に応じて上記式21に基づく位置姿勢算出を行っても良い。
【0120】
また、このようにして得られた指標の種類に基づく信頼度をそのまま用いるだけでなく、その他の方法で求めた例えば指標の幾何形状の特性を利用した信頼度との積や平均を求めることでこれらを組み合わせた信頼度を得て、これを用いてもよい。
【0121】
<変形例5>
第1の実施形態及び第2の実施形態で求めた信頼度の算出方法において、検出した指標が識別子を持ち、かつ認識の誤りを修正する誤り修正情報を持つとき、誤り修正の有無を評価値VIDmdfPknとして信頼度ωPknを算出してもよい。何らかの理由で情報が抜けた場合等に指標の誤り修正が行われるため、誤り修正が行われた指標には低い信頼度を、逆に誤り訂正が行われない指標に高い信頼度を与えるような関数ωIDmdf(VIDmdfPkn)を重み関数として定義する。
【0122】
また、このようにして得られた誤り修正の有無に基づく信頼度ωIDmdfPknをそのまま信頼度ωPknとして用いるだけでなく、その他の方法で求めた信頼度との積や平均を求めることでこれらを組み合わせた信頼度を得て、これを用いてもよい。
【0123】
<変形例6>
第1の実施形態及び第2の実施形態で求めた信頼度の算出方法において、画像上で検出した指標のコントラストの強さを評価値VPknとして信頼度ωPknを算出してもよい。コントラストCは、画像の明暗の差を表したもので、画像中の濃淡レベルの最小値をImin、最大値をImaxとすると次式で定義される。
【0124】
【数23】

【0125】
コントラストCを指標の周辺領域において調べ、その値を評価値VPknとする。コントラストが高い指標には、検出精度が高くなるので高い信頼度を、コントラストが低い指標は、検出精度が低くなるので低い信頼度を与えるような関数ω(VPkn)を重み関数として定義する。
【0126】
また、このようにして得られたコントラストに基づく信頼度ωPknをそのまま信頼度ωPknとして用いるだけでなく、その他の方法で求めた信頼度との積や平均を求めることでこれらを組み合わせた信頼度を得て、これを用いてもよい。
【0127】
<変形例7>
第1の実施形態及び第2の実施形態で求めた信頼度の算出方法において、画像上で検出した指標の鮮鋭度を評価値VsharpPknとして信頼度ωPknを算出してもよい。鮮鋭度の計測方法は、エッジの斜度を計測する方法であってもよいし、像の空間周波数成分を計測する方法であってもよいし、その他の何れの方法でもよい。指標の周辺の鮮鋭度が高いとき、エッジがはっきり検出できるため高い信頼度を、逆に鮮鋭度が低いときは、低い信頼度を与えるような関数ωsharp(VsharpPkn)を重み関数として定義する。
【0128】
また、このように得られた鮮鋭度に基づく信頼度ωsharpPknをそのまま信頼度ωPknとして用いてもよいし、その他の方法で求めた信頼度との積や平均を求めることでこれらを組み合わせた信頼度を得て、これを用いてもよい。
【0129】
<変形例8>
第1の実施形態では、撮像装置概略位置姿勢入力部2040は次のような処理を行っていた。即ち、世界座標系における撮像装置2010の位置姿勢の概略値MWCを求め、概略値MWCと世界座標系における位置または位置姿勢が既知の指標より撮像装置2010と指標の相対姿勢を求めていた。しかし、4点以上の特徴点を有する指標を用いる場合には次のようにしても良い。即ち、2次元ホモグラフィの計算に基づいて画像上で検出した指標の画像座標より指標と撮像装置2010の概略位置姿勢MMCを求め、これに基づいて、指標の法線ベクトルと撮像装置2010から指標への視軸とのなす角を算出してもよい。
【0130】
具体的には、求めた指標と撮像装置2010の概略相対位置に基づいて、撮像装置を基準とした座標系(以降、撮像装置座標系とする)における指標と撮像装置2010の視点とを結ぶ共線ベクトル
【0131】
【数24】

【0132】
を求める。そして、撮像装置座標系における指標の各頂点の座標(MMCから算出可能)に基づいて、撮像装置座標系における指標の法線ベクトル
【0133】
【数25】

【0134】
を求める。以上のようにして、指標の法線ベクトル
【0135】
【数26】

【0136】
と共線ベクトル
【0137】
【数27】

【0138】
が得られたら、以降は第1の実施形態と同様な処理を行えばよい。
【0139】
また、このように得られた撮像装置2010と指標との相対姿勢に基づく信頼度ωθPknをそのまま信頼度ωPknとして用いてもよい。また、その他の方法で求めた信頼度との積や平均を求めることでこれらを組み合わせた信頼度を得て、これを用いてもよい。
【0140】
<変形例9>
第2の実施形態では、指標の2次元幾何情報を画像から得て、これを評価量として信頼度を算出していた。しかし、撮像装置の概略位置姿勢MWCに基づいて指標の各頂点の推定座標(再投影座標)を求め、再投影座標の2次元幾何情報に基づいて信頼度を算出してもよい。
【0141】
撮像装置2010の概略位置姿勢MWCが実際の位置姿勢(真値)から大きくずれていなければ、画像上で検出した座標の代わりに再投影座標を用いて信頼度を算出しても本発明の本質が損なわれないことはいうまでもない。
【0142】
<変形例10>
第1の実施形態及び第2の実施形態では、指標の位置は既知であるとして撮像装置の位置姿勢を求めていたが、指標の位置または位置姿勢も撮像装置の位置姿勢とともにを求めてもよい。
【0143】
このとき、求めるべき位置または位置姿勢情報は、すなわち世界座標系における撮像装置2010の位置姿勢と、世界座標系における指標の位置または位置姿勢である。世界系座標における指標の位置を3値ベクトル[xPknPknPkn]、または位置姿勢を6値ベクトル[xPknPknPkn ξPkn ψPkn ζPknとして扱い、この未知パラメータを状態ベクトルsPknと記述する。
【0144】
状態ベクトルsPknに適当な初期値を与える。初期値としては、オペレータが予めおおよその値を手入力しても良い。また、ある同一時刻に入力された(すなわち、撮影画像から検出された)複数の指標の検出座標をデータリストから抽出し、このデータを用いて、世界座標系系における指標の同時刻における位置または位置姿勢を公知の方法によって算出する。ここで、世界座標系における既知の点が3点以上必要となる。
【0145】
また、世界座標系における撮像装置の位置姿勢を6値のベクトル[xWCWCWC ξWC ψWC ζWCとして扱う。そして、この未知パラメータを状態ベクトルsWCと記述する。求めるべき位置または位置姿勢の状態ベクトルをs=[sWCPkn]と記述する。
【0146】
なお、世界座標系における指標の位置又は位置姿勢を算出する公知の手法としては例えば、指標が同一平面上に配置されている場合には、4点以上の指標を用いて2次元ホモグラフィの計算に基づいて指標の位置又は位置姿勢を得る手法を用いることができる。また、同一平面上にない6点以上の指標を用いる手法や、これらの解を初期値にして、ニュートン法のような繰り返し計算によって最適解を得る手法を用いることもできる。
【0147】
ここで位置姿勢算出部2080は、各々の指標の頂点pkniに対して、その画像座標の推定値(再投影座標)uPkni’を算出する。uPkni’の算出は、指標の頂点pkniの世界座標xPkniと現在の状態ベクトルsの関数(観測方程式)
【0148】
【数28】

【0149】
に基づいて行われる。
【0150】
以降の処理については、第1の実施形態と同様に算出する。即ち、第1の実施形態と同様に信頼度を求め、信頼度を対角成分にもつ行列Wを重みとし、重みを考慮した最小二乗法で算出することで、指標の位置または位置姿勢と撮像装置の位置姿勢を求めることができる。
【0151】
また、撮像装置の位置と姿勢(外部パラメータ)のみではなく、撮像装置の内部パラメータ(焦点距離やアスペクト比、歪み補正パラメータ)を求める問題であっても、同様の重み付けの枠組みを適用できることは言うまでもない。
【0152】
<変形例11>
また、上記実施形態においては、図3(b)に示すような複数の頂点を有する2次元形状を持つ指標(三角形や四角形等の外形から成る指標)を用いていた。しかし2次元形状を持つ指標と同様に、複数の座標の集合を構成要素として有するような指標(これらを総称して多角形形状と呼ぶ)を用いる場合であっても、画像上の2次元幾何特徴やカメラと指標の3次元幾何特徴に基づいた評価量を求めることは可能である。従って、本実施形態で述べた発明の効果を得ることが可能である。
【0153】
例えば、図3(c)に示すようにそれぞれの相対的な位置関係が既知の点pki(i=1,,,N)によって構成される指標であってもよい。また、複数の座標の集合を構成要素として有するような指標であればいずれの指標を用いてもよい。
【0154】
<変形例12>
なお、上記実施形態においては、最適化演算において非線形方程式をテーラー展開し、1次近似で線形化することで補正値を求め、繰り返し補正していくことで最適解を求めるNewton−Raphson法を用いている。しかし、補正値の算出は必ずしもNewton−Raphson法によって行わなくてもよい。例えば公知の非線形方程式の反復解法であるLM法(Levenberg−Marquardt法)を用いて求めてもよい。また、最急降下法を用いても求めてもよい。他の何れの数値計算手法を適用しても本発明の本質が損なわれないことは言うまでもない。
【0155】
[第3の実施形態]
上記実施形態では、図1に示した位置姿勢計測装置2000を構成する各部はハードウェアでもって実装されているものとして説明した。しかし、図1に示した各部の一部若しくは全部をソフトウェアでもって実現し、残りをハードウェアでもって実現しても良い。この場合、例えば、このハードウェアをパーソナルコンピュータに挿入可能な機能拡張カードとして実現し、この機能拡張カードをパーソナルコンピュータに挿入する。また、このソフトウェアは、このパーソナルコンピュータが有するメモリ上に格納する。係る構成によれば、パーソナルコンピュータが有するCPUがこのソフトウェアを実行すると共に、この機能拡張カードの動作制御をも行うことにより、第1の実施形態及び各種の変形例で説明した処理を行うことができる。
【0156】
図6は、位置姿勢計測装置2000に適用可能なコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0157】
601はCPUで、RAM602やROM603に格納されているプログラムやデータを用いて本コンピュータ全体の制御を行う。
【0158】
602はRAMで、外部記憶装置606からロードされたプログラムやデータ、I/F(インターフェース)607を介して外部から受信したプログラムやデータを一時的に記憶するためのエリアを有する。更には、CPU601が各種の処理を実行する際に用いるワークエリアも有する。即ち、RAM602は各種のエリアを適宜提供することができる。
【0159】
603はROMで、本コンピュータの設定データやブートプログラムなどを格納する。
【0160】
604は操作部で、キーボードやマウスなどにより構成されており、本コンピュータの操作者が操作することで、各種の指示をCPU601に対して入力することができる。
【0161】
605は表示部で、CRTや液晶画面などにより構成されており、CPU601による処理結果を画像や文字などでもって表示することができる。
【0162】
606は外部記憶装置で、ハードディスクなどに代表される大容量情報記憶装置であって、ここにはOS(オペレーティングシステム)や、本コンピュータが行う各種の処理をCPU601に実行させるためのプログラムやデータ等が保存される。このプログラムやデータには、上記ソフトウェアや、機能拡張カード608の動作制御プログラムなども含まれる。また、外部記憶装置606には、上記説明において予め保持しているものとして説明した各種の情報や、I/F607を介して撮像装置2010から受信した撮像画像も保存される。
【0163】
外部記憶装置606に保存されている各種の情報はCPU601による制御に従って適宜RAM602にロードされる。そしてCPU601がこのロードされたプログラムやデータを用いて処理を実行することにより、本コンピュータは第1の実施形態及び各種の変形例で説明した処理を実行することができる。
【0164】
607はI/Fで、本コンピュータを上記撮像装置2010に接続するためのものである。
【0165】
608は機能拡張カードである。
【0166】
609は上述の各部を繋ぐバスである。
【0167】
[その他の実施形態]
また、本発明の目的は、以下のようにすることによって達成されることはいうまでもない。即ち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体(または記憶媒体)を、システムあるいは装置に供給する。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。
【0168】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行う。その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0169】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれたとする。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0170】
本発明を上記記録媒体に適用する場合、その記録媒体には、先に説明したフローチャートに対応するプログラムコードが格納されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】第1の実施形態に係る位置姿勢算出装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る位置姿勢算出方法の概略処理を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態に係る指標の概略構成を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る指標と撮像装置の相対姿勢を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る位置姿勢算出部2080の概略処理を示すフローチャートである。
【図6】位置姿勢計測装置2000に適用可能なコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置によって撮像された撮像画像を入力する画像入力工程と、
物体上に配置または設定された指標を前記撮像画像から検出する指標検出工程と、
前記撮像画像から検出されている夫々の指標の信頼度を算出する手がかりとして用いるための評価量を算出する指標評価量算出工程と、
前記指標評価量算出工程で算出した指標の評価量に応じて当該指標の信頼度を算出する信頼度算出工程と、
前記信頼度算出工程で算出された指標の信頼度と、前記指標検出工程で検出された夫々の指標の画像座標に関する情報とを少なくとも用いて、前記物体または撮像装置の位置姿勢を求める位置姿勢算出工程とを有し、
前記評価量は、前記指標の画像上での2次元幾何特徴および/または前記指標の3次元空間中における前記撮像装置と前記指標との間の関係を表す3次元幾何特徴に基づくことを特徴とする位置姿勢計測方法。
【請求項2】
前記指標評価量算出工程では、前記撮像画像を撮影した時点での撮像装置の位置姿勢と指標の配置情報を用いて、画像上における当該指標の再投影座標を求め、該再投影座標を用いて当該指標の2次元幾何情報を算出し、これを当該指標の評価量とし、
前記信頼度算出工程では、前記2次元幾何情報に基づいて当該指標の信頼度を算出することを特徴とする請求項1に記載の位置姿勢計測方法。
【請求項3】
前記指標評価量算出工程では、前記撮像画像から検出されている夫々の指標の評価量として、当該指標の2次元幾何情報を前記撮像画像から取得し、
前記信頼度算出工程では、前記2次元幾何情報に基づいて当該指標の信頼度を算出することを特徴とする請求項1に記載の位置姿勢計測方法。
【請求項4】
前記指標評価量算出工程では、前記撮像画像から検出されている夫々の指標の評価量として、前記撮像装置と当該指標の相対姿勢を取得し、
前記信頼度算出工程では、前記相対姿勢に基づいて当該指標の信頼度を算出することを特徴とする請求項1に記載の位置姿勢計測方法。
【請求項5】
前記指標評価量算出工程では、前記撮像画像から検出されている夫々の指標の評価量として、前記指標検出工程で検出された当該指標の画像座標を用いて、指標を撮影した時点での前記撮像装置と当該指標の相対姿勢を取得することを特徴とする請求項4に記載の位置姿勢計測方法。
【請求項6】
前記指標評価量算出工程では、前記撮像画像を撮影した時点での撮像装置の位置姿勢と指標の配置情報を用いて、前記撮像装置と当該指標の相対姿勢を取得することを特徴とする請求項4に記載の位置姿勢計測方法。
【請求項7】
前記指標評価量算出工程では、前記撮像画像から検出されている夫々の指標の評価量として、画像上における当該指標の面積を取得し、
前記信頼度算出工程では、前記面積に基づいて当該指標の信頼度を算出することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の位置姿勢計測方法。
【請求項8】
前記指標評価量算出工程では、前記指標が多角形形状を有する場合、前記撮像画像から検出されている夫々の指標の評価量として、画像上における当該指標の隣り合う辺の比を取得し、
前記信頼度算出工程では、前記隣り合う辺の比に基づいて当該指標の信頼度を算出することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の位置姿勢計測方法。
【請求項9】
前記指標評価量算出工程では、前記指標が円形状を持つとき、前記撮像画像で検出されている夫々の指標の評価量として、画像上における当該指標の真円度を取得し、
前記信頼度算出工程では、前記真円度に基づいて当該指標の信頼度を算出することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の位置姿勢計測方法。
【請求項10】
前記指標評価量算出工程では、前記指標が多角形形状を有する場合、前記撮像画像から検出されている夫々の指標の評価量として、画像上における当該指標の隣り合う各辺で作られる角度を取得し、
前記信頼度算出工程では、前記隣り合う各辺で作られる角度に基づいて当該指標の信頼度を算出することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の位置姿勢計測方法。
【請求項11】
前記位置姿勢算出工程では、前記信頼度算出工程で算出された当該指標の信頼度と、前記指標検出工程で検出された夫々の指標の画像座標に関する情報とを少なくとも用いて、前記物体または撮像装置の位置姿勢を求める過程において、当該指標の位置または位置姿勢をも求めることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の位置姿勢計測方法。
【請求項12】
撮像装置によって撮像された撮像画像を入力する画像入力手段と、
物体上に配置または設定された指標を前記撮像画像から検出する指標検出手段と、
前記撮像画像で検出されている夫々の指標の信頼度を算出する手がかりとして用いるための評価量を、当該指標の画像上での2次元幾何特徴および/または当該指標の3次元空間中における撮像装置と指標との間の関係を表す3次元幾何特徴を利用して算出する指標評価量算出手段と、
前記指標評価量算出手段で取得した指標の評価量に応じて当該指標の信頼度を算出する信頼度算出手段と、
前記信頼度算出手段で算出された当該指標の信頼度と、前記指標検出手段で検出された夫々の指標の画像座標に関する情報とを少なくとも用いて、前記物体または撮像装置の位置姿勢を求める位置姿勢算出手段と
を有することを特徴とする位置姿勢計測装置。
【請求項13】
コンピュータに請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の位置姿勢計測方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−116373(P2008−116373A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300981(P2006−300981)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】