説明

低温弾性の下方層を有する放射線硬化性塗料系

少なくとも1種の放射線硬化性塗料系(F)、及び、−20℃以下のガラス転移温度(T)を有する、基材と放射線硬化性塗料系(F)との間に存在する少なくとも1つの弾性の中間層(D)を含有する基材上の多層塗装系。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い耐引掻性を有する放射線硬化性塗料系の破壊機序特性を改善するための方法、前記方法により得ることができる塗装系及びそのような塗装系の使用に関する。
【0002】
高い耐引掻性は塗料の広く普及した要求である。そのために、例えば自動車工業において、プラスチック部材は耐引掻性のクリアコートで被覆され、その際、これは一方では熱硬化性のいわゆる1又は2成分PU塗料であってよく、他方では有利に化学線の照射の際に硬化するクリアコートであってよい。しかしながら、堅固な塗装系において、例えばDE−A119956483に記載されているように、塗装系中に生じた微小クラックが、塗装系を通じて、上に塗料が施与された基材へと極めて局所的に定義されて成長するという問題がしばしば生じる。
【0003】
DE−A119956483には、塗装されたプラスチック成形部材が記載されており、前記成形部材は、10℃未満のガラス転移温度Tを有するゴム弾性のグラフト基体と30℃を上回るTを有するグラフトとから成る少なくとも1種のグラフトポリマーから成るプラスチック層上に、所定の特性を有する少なくとも1つの塗装系を有する。従ってゴム相は基材中に分布して存在している。
【0004】
上記方法の欠点は、そのようなグラフトポリマーはトップコートに不十分に共有結合可能であるに過ぎないという点であり、それというのも、ブレンドの弾性成分の体積破壊によってのみグラフト可能であるに過ぎないからである。殊に、微小クラックが連続的なエラストマー層を通じて拡大するのを防ぐことは、高い破壊耐性を有する塗料体にとって重要である。DE−A119920801には特別な多層クリアコート系が記載されており、その際、各クリアコート層は放射線硬化性であり、その際、無機ナノ粒子により層に耐引掻性仕上げを施す。
【0005】
DE−A110027268には特別な多層クリアコート系が記載されており、その際、硬化を1工程で、トリアジン架橋剤を用いて、アクリレートコポリマーをベースとするポリオールの熱架橋により行い、これは同時に又は連続して行うことができる。
【0006】
WO99/26732には多層塗装系の製造法が記載されており、その際、場合により予備被覆された基材上に、被覆剤及びクリアコート層を施与する。
【0007】
上記刊行物の欠点は、該刊行物に開示された技術的教示を用いた場合、耐引掻性、特に塗料中のクラック形成の問題点は現在の要求を満足させることができないという点である。
【0008】
従って、同時に基材への低減したクラック成長における、極めて高い耐引掻性及び基材に対する良好な付着性を有する塗装系を開発するという課題が存在していた。
【0009】
前記課題は、少なくとも1種の放射線硬化性塗料系(F)、及び、(1000Hzまでの周波数帯内で測定された)−20℃以下のガラス転移温度(T)を有する、基材と放射線硬化性塗料系(F)との間に存在する少なくとも1つの弾性の中間層(D)を含有する、基材上の多層塗装系により解決された。
【0010】
本発明による多層塗装系中で、外側に存在する塗料系(F)中に生じるクラックは、上記の使用において典型的な負荷において弾性の中間層(D)を通じて成長することはなく、従って、上に多層塗装系が施与されている基材は損傷されず、その特徴的な機械的特性は保持される。
【0011】
そのような本発明による多層塗装系は、他の層を含有してよい。例えば、本発明による多層塗装系は以下の層から成り、前記層は典型的には以下のように配置されていてよい:
(F)少なくとも1種の放射線硬化性塗料系
(E)場合により、顔料で着色されかつ/又は効果物質を備えた少なくとも1つの層
(D)−20℃以下のガラス転移温度(T)を有する少なくとも1つの弾性の中間層(D)
(C)場合により、プライマー、ベースコート、アンダーコート、顔料で着色されたか又は効果物質を備えた塗料及び基材2の群から選択された少なくとも1つの層、
(B)(C)が基材2である場合には、場合により少なくとも1つの弾性の中間層、並びに
(A)23℃、湿度50%でのDIN EN ISO 179/1fUによる衝撃強度少なくとも20kJ/mを有する基材1。
【0012】
この場合、そのような多層塗装系の構造は通常前記の順序の通りであり、従って、基材1(A)は所定の通り下方に存在しており、放射線硬化性塗料系(F)は上方に存在しており、弾性の中間層(D)はその間に存在している。
【0013】
層(A)及び/又は(C)中の基材1及び/又は2は、例えば、木材、ベニヤ、紙、板紙、ボール紙、テキスタイル、皮革、フリース、プラスチック表面、金属又は被覆された金属、有利に紙、プラスチック又は金属、殊に有利にプラスチック、極めて殊に有利に透明プラスチックであってよい。
【0014】
この場合、23℃、湿度50%でのDIN EN ISO 179/1fUによる衝撃強度少なくとも20kJ/m、有利に少なくとも25kJ/mを有する当業者に自体公知の工業用プラスチック、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ハロゲン化エチレン性不飽和化合物、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、共役不飽和化合物、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン、α,β−不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリル、単不飽和化合物、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソ−ブテン、環式単不飽和化合物、例えばシクロペンテン、シクロヘキセン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルラクタム、例えばN−ビニルカプロラクタム、ビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソ−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルを重合導入された形で含むポリマー及びコポリマーがプラスチックと解釈される。
【0015】
特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂又はポリウレタン、それらのブロックコポリマー又はグラフトコポリマー及びそのブレンドが挙げられる。
【0016】
殊に、ABS、AES、AMMA、ASA、EP、EPS、EVA、EVAL、HDPE、LDPE、MABS、MBS、MF、PA、PA6、PA66、PAN、PB、PBT、PBTP、PC、PE、PEC、PEEK、PEI、PEK、PEP、PES、PET、PETP、PF、PI、PIB、PMMA、POM、PP、PPS、PS、PSU、PUR、PVAC、PVAL、PVC、PVDC、PVP、SAN、SB、SMS、UF、UP−プラスチック(DIN 7728による略記)及び脂肪族ポリケトンが挙げられる。
【0017】
上記のプラスチックは有利に冠状(coronisiert)であってもよい。基材は選択的に顔料で着色されているか又は着色されていなくてよい。
【0018】
有利な基材は、ポリオレフィン、例えば、選択的にイソタクチック、シンジオタクチック又はアタクチックであってよく、選択的に配向されていないか又は単軸延伸もしくは二軸延伸により配向されていてよいPP(ポリプロピレン)、SAN(スチレン−アクリロニトリル−コポリマー)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PBT(ポリ(ブチレンテレフタレート))、PA(ポリアミド)、ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリルエステル−コポリマー)及びABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−コポリマー)、並びにそれらの物理的混合物(ブレンド)である。PP、SAN、ABS、ASA、並びに、ABS又はASAとPA又はPBT又はPCとのブレンドは殊に有利である。
【0019】
層(A)中の基材1は、同じか又は異なる、重なり合って積層された基材、例えば積層プラスチックであってもよい。
【0020】
層(A)及び(C)中の基材1及び2は、同じか又は異なっていてよい。
【0021】
その都度、1つ以上の、例えば1〜3つ、有利に1〜2つ、殊に有利に1つの、基材1及び/又は2が、層(A)及び/又は(C)中に存在してよい。
【0022】
層(C)が少なくとも1つの基材2を含む場合、この場合これは有利に、箔、例えばプラスチック箔又は金属箔、又は殊に有利に、上記のプラスチックから製造されていてよいプラスチック箔であってよい。
【0023】
そのような箔は、1μm〜2mm、有利に5μm〜1000μm、殊に有利に5μm〜750μm、極めて殊に有利に10μm〜500μm、殊に25μm〜300μmの厚さを有してよい。
【0024】
層(C)が基材2を含む場合、これは合理的には、もう1つの弾性の中間層(B)を用いて基材(A)と結合されていてよい。
【0025】
そのような中間層は、中間層(D)(以下を参照のこと)と同じ特徴を有し、これと異なるか又は同じであってよい。
【0026】
層(B)の典型的な厚さは、0.1〜1000μm、有利に0.5〜500μm、殊に有利に1〜250μm、極めて殊に有利に1〜100μmに達する。
【0027】
1種以上、例えば1〜3種、有利に1〜2種、殊に有利に1種の弾性の化合物を層(B)中で使用することができる。
【0028】
層(C)は、例えば少なくとも1種のプライマー、ベースコート、アンダーコート、顔料で着色されたか又は効果物質を備えた塗料を含有してよく、かつ/又は場合により、既に上記した少なくとも1つの基材2を含有してよい。
【0029】
層(C)及び/又は(E)中の色及び/又は効果を付与する塗料として、基本的にこの目的のために慣用でありかつ当業者に公知である全ての塗料が該当する。前記塗料は、物理的に、熱的に、化学線により、又は熱及び化学線(デュアルキュア)により硬化可能であることができる。これは、慣用のベースコート、水性ベースコート、本質的に溶剤及び水不含の液体ベースコート(100%−系)、本質的に溶剤及び水不含の固体ベースコート(顔料で着色された粉末塗料)又は本質的に溶剤不含の顔料で着色された粉末塗料分散液(粉末スラリー−ベースコート)であってよい。これは熱硬化性又はデュアルキュア硬化性であってよく、自己架橋性又は外部架橋性であってよい。
【0030】
これらは、1種以上の、有利に1〜3種の、殊に有利に1〜2種の、極めて殊に有利に1種の、色及び/又は効果を付与する塗料であってよい。
【0031】
本発明の範囲内において、本質的に溶剤不含である、とは、当該の被覆物質が、<2.0質量%、有利に<1.5質量%、殊に有利に<1.0質量%の揮発性溶剤の残留含分を有することを意味する。残留含分がガスクロマトグラフィーの検出限界を下回る場合に極めて殊に有利である。
【0032】
殊に有利に、本発明による多層塗装系において、特許出願EP0089497A1、EP0256540A1、EP0260447A1、EP0297576A1、WO96/12747、EP0523610A1、EP0228003A1、EP0397806A1、EP0574417A1、EP0531510A1、EP0581211A1、EP0708788A1、EP0593454A1、DE−A−4328092A1、EP0299148A1、EP0394737A1、EP0590484A1、EP0234362A1、EP0234361A1、EP0543817A1、WO95/14721、EP0521928A1、EP0522420A1、EP0522419A1、EP0649865A1、EP0536712A1、EP0596460A1、EP0596461A1、EP0584818A1、EP0669356A1、EP0669356A1、EP0634431A1、EP0678536A1、EP0354261A1、EP0424705A1、WO97/49745、WO97/49747、EP0401565A1又はEP0817684、第5欄、第31〜45頁の記載から公知であるような水性塗料が適用される。
【0033】
上記の色及び/又は効果を付与する塗料は、色及び/又は効果を付与するベースコートの製造のみならず、色及び/又は効果を付与する組合せ効果層の製造にも利用することができる。本発明の範囲内で、これは、色及び/又は効果を付与する多層塗装系において少なくとも2つの機能を果たす塗装系であると解釈することができる。この種の機能は、殊に、腐食からの防護、接着促進、機械的エネルギーの吸収、及び、色及び/又は効果の付与である。特に、組合せ効果層は、同時に、機械的エネルギーの吸収並びに色及び/又は効果の付与に役立ち;サーフェイサーコート又は耐チッピングプライマーコート及びベースコートの機能を果たす。有利に、組合せ効果層は更になお腐食防護作用及び/又は接着促進作用を示す。
【0034】
層(C)及び/又は(E)の典型的な厚さは、0.1〜2000μm、有利に0.5〜1000μm、殊に有利に1〜500μm、極めて殊に有利に1〜250μm、殊に10〜100μmに達する。
【0035】
本発明による多層塗装系中で使用可能な塗料は、色及び/又は効果を付与する顔料を含有してよい。色を付与する顔料として、有機又は無機に由来する、塗料に慣用の全ての顔料が適当である。無機又は有機着色顔料の例は、二酸化チタン、微粉化された二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン−及びピロロピロール顔料である。
【0036】
効果顔料は、殊に小片状の構造が顕著である。効果顔料のための例は以下のものである:例えばアルミニウム、銅又は他の金属からの金属顔料;干渉顔料、例えば金属酸化物被覆された金属顔料、例えば二酸化チタン被覆されたか又は混合酸化物被覆されたアルミニウム、被覆された雲母、例えば二酸化チタン被覆された雲母及びグラファイト効果顔料。有利に、例えば硬度を改善するために、UV硬化可能な顔料、及び又場合により充填剤を使用することができる。これは、放射線硬化性化合物、例えばアクリル官能性シラン、被覆された顔料/充填剤であり、従ってこれらを放射線硬化プロセスに取り入れることができる。
【0037】
本発明によれば、中間層(D)中には、その都度−20℃以下、有利に−30℃以下、殊に有利に−40℃以下、極めて殊に有利に−50℃以下、殊に−60℃以下のガラス転移温度(T)を有する少なくとも1種の化合物が含有されている。
【0038】
ガラス転移温度Tは、(DIN 53440 T1〜T3による)曲げ振動試験を用いて0〜1000Hz、有利に100〜1000Hzの周波数で測定した。この場合、曲げ振動試験は、破壊機序の観点から重要である、高い変形速度(周波数)でのTをもたらす。
【0039】
本発明により多層塗装系中に含有される中間層(D)の厚さZSは、例えば0.1〜1000μm、有利に0.5〜500μm、殊に有利に1〜250μm、極めて殊に有利に5〜50μm、殊に10〜50μmであってよい。
【0040】
弾性の中間層において使用可能な化合物としての例は、ゴム含有ポリマー、ac-Resin、上記のTを有するポリアクリレート及びポリイソブテンである。ゴム含有ポリマーとして、例えば熱可塑性エラストマーが該当する。そのような熱可塑性エラストマーは、通常、少なくとも1種のエラストマー成分(軟質ドメイン)及び少なくとも1種の熱可塑性成分(硬質ドメイン)を含有し、これらは互いにブレンド、加硫物又はブロックポリマーとして、有利にブロックポリマーとして結合されていてよい。
【0041】
エラストマー成分は、スチレン−ブタジエン−(SBR)、ポリイソプレン−(IR)、ポリブタジエン−(BR)、クロロプレン−(CR)アクリロニトリル−ブタジエン−(NBR)、ブチル−(イソブテン/イソプレン−コポリマー、IIR)、ブチル/α−メチルスチレン−ターポリマー、エチレン/プロピレン−(EPM)、エチレン/プロピレン/ジエン−(EPDM)、エピクロロヒドリン(CO)、エピクロロヒドリン/エチレンオキシド−(ECO)又はエチレン/ビニルアセテート−ゴム(EVA/EVM)であってよく、有利に、ポリブタジエン−、ポリイソプレン−、エチレン/プロピレン−又はエチレン/プロピレン/ジエン−ゴムであってよく、殊に有利にポリブタジエン−又はポリイソプレンゴムであってよく、極めて殊に有利にポリブタジエンゴムであってよい。
【0042】
エラストマー成分は、(ブロックポリマー中でブロックに対して)通常少なくとも80000g/モル、有利に少なくとも100000g/モル、殊に有利に100000〜250000g/モル、極めて殊に有利に120000〜230000g/モルの分子量を有する。
【0043】
熱可塑性成分は、例えば、ポリプロピレン、有利にイソタクチックのポリプロピレン、プロピレンとエチルとから成るランダム又はブロックコポリマー、HDPE、LDPE、LLDPE、EVA、エチレン/メタクリレート−コポリマー、エチレン/エチルアクリレート−コポリマー、SAN、ABS、ASA、PMMA又はポリスチレンであってよく、ポリスチレン及びポリプロピレンは有利であり、ポリスチレンは殊に有利である。
【0044】
熱可塑性成分は、(ブロックポリマー中でブロックに対して)通常50000g/モルまで、有利に5000〜40000g/モル、殊に有利に6000〜20000g/モルの分子量を有する。
【0045】
通常、熱可塑性成分の全熱可塑性エラストマーの割合は、50質量%まで、有利に40質量%まで、殊に有利に35質量%までである。熱可塑性成分の最低含分は、通常少なくとも8質量%、有利に少なくとも20質量%、殊に有利に少なくとも25質量%である。
【0046】
有利な熱可塑性エラストマーは、一般式Z(−Y−Z)[式中、mは1〜10、有利に1〜5、殊に有利に1〜3の正の整数、極めて殊に有利に1又は2、殊に1を表す]の少なくとも1つのエラストマーブロックY及び少なくとも1つの熱可塑性ブロックZを有するものである。最後の場合には、いわゆるトリブロック−ポリマーと呼称される。ポリマーは例えば直鎖又は分枝鎖、例えば星形に構成されていてよく、有利に直鎖で構成されていてよい。
【0047】
殊に有利な熱可塑性エラストマーはスチレンオリゴブロックポリマーであり、極めて殊に有利にスチレン−トリブロックポリマーであり、その際、熱可塑性ブロックは、主に、有利に完全に、スチレンから成る。いわゆるスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)及びスチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)ブロックポリマーは殊に有利であり、これらは場合によりなお反応性コモノマー、例えば無水マレイン酸で官能化されていてよい。更に、熱可塑性エラストマーは完全に又は部分的に水素化されていてよい。
【0048】
更に、本発明により使用可能な熱可塑性エラストマーは、いわゆるジブロック−割合(Z−Y−)を含有してよく、前記の割合は有利に50質量%まで、殊に有利に40質量%まで、極めて殊に有利に30質量%まで、殊に20質量%までであってよい。
更に、本発明により使用可能な熱可塑性エラストマーを、鉱油、ポリスチレン、ポリオレフィン、充填剤又は添加剤、例えば酸化防止剤、UV安定剤又はオゾン分解防止剤と混合することができる。
【0049】
極めて殊に有利に、熱可塑性エラストマーとして、Kraton(登録商標)−Kraton Polymers U.S. LLC社, Houston, Texas, USAの商標及びVector(登録商標)−Dexco Polymer社, Houston, Texas, USAび商標が該当する。Kraton D-及び-G-商標は殊に有利であり、Kraton D-商標は有利であり、Kraton D1101、D1118、D4150、D1112、D-KS 225 ES、D1102、D1116、D1186及びD4123、並びにVector-商標7400、8508及び2518は特に有利である。
【0050】
ポリアクリレートとして、上記のTを有する(コ)ポリマーが該当する。
【0051】
これは通常以下の通りに構成される:
主要モノマー 50〜98質量%
副次的モノマー 10〜40質量%
官能化されたモノマー 0〜20質量%
但し、合計は常に100質量%である。
【0052】
そのうち主要モノマーは例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−プロピルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−イソブチルエステル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸−イソペンチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−メチル−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸アミルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルブチルエステル、(メタ)アクリル酸−ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−オクチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−n−デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ドデシルエステル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシ−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−(2’−メトキシエトキシ−)エチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシ−プロピルエステル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチルエステル、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ−及び−テトラ(メタ)アクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、メチルビニルケトン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソ−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、s−ブチルビニルエーテル、イソ−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソ−ブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロドデセン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、t−ブチルスチレン並びにその混合物である。
【0053】
副次的モノマーとして例えば、(メタ)アクリル酸−イソ−ボルニルエステル、(メタ)アクリル酸トリデシルエステル、(メタ)アクリル酸ラウリルエステル、(メタ)アクリル酸ステアリルエステル、(メタ)アクリル酸−10−シクロヘキシルウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸−2−シアンエチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸−3−(トリメトキシシリル)プロピルエステル、(メタ)アクリル酸−2−(トリメトキシシリル)エチルエステル、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、(メタ)アクリロニトリル、フマル酸ジ−イソ−プロピルエステル、フマル酸ジ−n−ブチルエステル、フマル酸ジ−s−ブチルエステル、フマル酸ジアミルエステル、フマル酸ジ−2−エチルブチルエステル、フマル酸ジ−n−オクチルエステル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシルエステル、フマル酸ジドデシルエステル、ビス−(2−ヒドロキシエチル)−フマレート、マレイン酸ジブチルエステル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシルエステル、マレイン酸ジ−(2−ヒドロキシエチル)エステル、マレイン酸ニトリル、マレイン酸ジニトリル、吉草酸ビニル、ジビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、α−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、酢酸アリル、酢酸ビニル並びにその混合物が適当である。
【0054】
官能化されたモノマーは、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アリル基、カルボン酸アミド基、アミン基、イソシアネート基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基又はシリルオキシ基を有するモノマーである。これは、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ホルマール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチルエステル、(メタ)アクリル酸ベンゾフェノングリシジルエステル、(メタ)アクリル酸−2−スルホエチルエステル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、フマル酸、フマル酸モノ−イソ−プロピルエステル、フマル酸モノ−n−ヘキシルエステル、フマル酸アミド、フマル酸ジアミド、フマル酸ニトリル、フマル酸ジニトリル、クロトン酸、クロトン酸グリシジルエステル、イタコン酸、イタコン酸半エステル、無水イタコン酸、シトラコン酸、シトラコン酸半エステル、無水シトラコン酸、コハク酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、無水マレイン酸、マレイン酸アミド、マレイン酸ジアミド、N−メチロールマレイン酸アミド、ビニルスクシンイミド、ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルスルホン酸ナトリウム、テトラアリルオキシエタン、ジアリルフタレート、ジアリルスクシネート、テトラアリルエタン、テトラアリルオキシシラン、アリルグリシジルエーテル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジケテン、3〜8個のC−原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸並びにその水性アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、例えば:アクリル酸、メタクリル酸、ジメチルアクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、クロトン酸、フマル酸、メサコン酸又はイタコン酸並びにそれらの混合物であってよい。
【0055】
上記のTを得るために、これらは通常n−ブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレートの高い含量、有利に少なくとも50質量%を有する。
【0056】
場合によりもう1つの架橋前の、使用可能な(コ)ポリマーの重量平均分子量(ポリスチレンを標準として用い、テトラヒドロフランを溶離剤として用いた、ゲル透過クロマトグラフィーにより測定した)は、例えば200000〜1500000g/モル、有利に250000〜1200000g/モル、殊に有利に300000〜900000g/モルである。
【0057】
使用可能な(コ)ポリマーのゲル含量、即ち、THF下で室温で24時間貯蔵された接着フィルムの可溶性の割合は、30〜70質量%、有利に30〜60質量%、殊に有利に40〜60質量%である。
【0058】
本発明によれば、放射線架橋性ポリアクリレートは殊に適当である。
【0059】
この場合これは、活性エネルギー照射により架橋可能なポリアクリレートである。この接着剤は、通常、場合により脂肪族又は芳香族エポキシ樹脂、ウレタン、ポリエステル又はポリエーテルと組み合わせられたポリ(メタ)アクリレート、有利にポリアクリレートを含有する。有利に、エポキシ樹脂、脂肪族、芳香族又は混合された脂肪族−芳香族ウレタンが使用される。
【0060】
架橋は活性エネルギー照射により行うことができるが、第二の硬化機序又は他の硬化機序(デュアルキュア)、例えば湿分、酸化又は熱作用により、有利に、上記の硬化温度での熱により架橋することもできる。
【0061】
更に、架橋性モノマー、例えば1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート又はペンタエリトリトールテトラアクリレートを混合することができる。
【0062】
UV光による架橋のために、光開始剤を添加することができる。
【0063】
しかしながら光開始剤はポリ(メタ)アクリレートに結合されていてもよい。光開始剤は、例えば環式イミド構造、例えばマレインイミド又はマレインイミド誘導体、ベンゾ−又はアセトフェノン基であってよい。後者は例えばEP−B1377199、第3頁、第14行〜第13頁、第45行並びにEP−A395987、第3頁、第24〜第5頁、第42行に記載されており、ここで参照することにより取り入れるものとする。
【0064】
BASF AG, LudwigshafenのUV−アクリレートacResin(登録商標)A 203 UV及びacResin(登録商標)A 258 UVは殊に適当である。
【0065】
ポリイソブテン(PIB)又は変性されたポリイソブテン、例えば、PIBと無水マレイン酸との反応生成物、ヒドロホルミル化されたPIB、ヒドロホルミル化され引き続き水素化されたPIB、並びに、ヒドロホルミル化され引き続きアミノ水素化されたPIBとして、Glissopal(登録商標)ないしOppanol(登録商標)−BASF AG社の商標、Polybutene(登録商標)−BP社の商標、Infineum Int. Ltd.社のInfineum(登録商標)−C−シリーズ、Lubrizol(登録商標)LZ−Lubrizol社の商標、Vistanex(登録商標)−ExxonMobil Chemical Corp.社の商標、Tetrox(登録商標)−Nippon Petrochemicals社の商標、及び、Efrolen(登録商標)−Efrimov社の商標が該当し、これらは、約200〜1000000の分子量を有し、Oppanole(登録商標) B10、B10N、B10SFN、B100、B100G、B12N、B12SF、B12SFN、B15、B15 BULK、B15N、B15SF、B15SFN、B150、B150G、B200、B200G、B246、B250、B30SF、B50、B50SF、B80、NTK及びNTS、並びに、Glissopale(登録商標) 1300、2300、550、750、ES 3252、M 1600、OS、SA、V 1500、V 220、V 230、V33、V 500、V640、V700、V90及び1000、Infineum(登録商標) C9945、C9925、C9950、C9970、C9980、C9983、C9984、C9913、C9922、C9907、C9924及びC9995、並びに、Vistanex(登録商標) L-80、L-100、L-120、L-140、LM-MS、LM-MH、LM-MS-LC、LM-MH-LC及びLM-H-LCが有利である。
【0066】
当然のことながら、−20℃以下のガラス転移温度を有する種々の化合物、例えば1〜5、有利に1〜4、殊に有利に1〜3、極めて殊に有利に1〜2種の化合物から成る混合物を使用することもできる。殊に1種の化合物が使用される。
【0067】
本発明により放射線硬化性塗料系(F)中で使用可能な放射線硬化性材料は自体公知でありかつ限定されず、この場合、例えば当業者にそのような目的のために公知である放射線硬化性クリアコート又はトップコートであってよい。前記材料は通常、少なくとも1つのラジカル及び/又はカチオン重合性の基を有し、有利にこれはラジカル重合性である。
【0068】
重合性の基は、不飽和結合、有利には炭素−炭素−二重結合を有する基であってよい。
【0069】
ラジカル重合性の基は、例えば孤立のエチレン性不飽和基、共役不飽和基、ビニル芳香族基、塩化ビニル基及び塩化ビニリデン基、N−ビニルアミド、ビニルピロリドン、ビニルラクタム、ビニルエステル、(メタ)アクリルエステル又はアクリロニトリルである。
【0070】
カチオン重合性の基は、例えばイソブチレン単位又はビニルエーテルである。
【0071】
有利な放射線硬化性材料は、重合性の基として、有利にアクリレート基、メタクリレート基又はビニルエーテル基を有する。
【0072】
通常、本発明により使用可能な放射線硬化性材料は、以下のものを含有する:
(F1)複数の共重合性のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種の重合性の化合物
(F2)場合により反応性希釈剤
(F3)場合により光開始剤、並びに
(F4)場合により塗料に典型的な他の添加剤。
【0073】
化合物(F1)として、共重合性のエチレン性不飽和基を複数即ち少なくとも2つ有する、放射線硬化性のラジカル重合性の化合物が該当する。
【0074】
有利には化合物(F1)は、ビニルエーテル−又は(メタ)アクリレート化合物、特に有利にはそれぞれアクリレート化合物、即ちアクリル酸誘導体である。
【0075】
有利なビニルエーテル−及び(メタ)アクリレート−化合物(F1)は2〜20個の、有利には2〜10個の、殊に有利には2〜6個の共重合性のエチレン性不飽和二重結合を有する。
【0076】
0.1〜0.7モル/100g、極めて殊に有利には0.2〜0.6モル/100gのエチレン性不飽和二重結合の含量を有する化合物(F1)は特に有利である。化合物(F1)の数平均分子量Mは、別に記載がない限り、有利に15000g/モル未満、殊に有利に300〜12000g/モル、極めて殊に有利に400〜5000g/モル、殊に500〜3000g/モルである(ポリスチレンを標準として用い、テトラヒドロフランを溶離剤として用いた、ゲル透過クロマトグラフィーにより測定した)。
【0077】
(メタ)アクリレート化合物として、(メタ)アクリル酸エステル及び殊にアクリル酸エステル、並びに、多価アルコールのビニルエーテル、殊に、ヒドロキシ基の他には、他の官能基を含まないか又はせいぜいエーテル基を含むものが挙げられる。そのようなアルコールの例は、例えば二官能性アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール及びそれらの高級縮合代表物、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等、1,2−、1,3−又は1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、アルコキシル化されたフェノール性化合物、例えばエトキシル化ないしプロポキシル化されたビスフェノール、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジメタノール、三官能性及び多官能性アルコール、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリトリット、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリット、ソルビトール、マンニトール及び相応するアルコキシル化、殊にエトキシル化及び/又はプロポキシル化されたアルコールである。
【0078】
アルコキシル化生成物は、公知の方法で、上記のアルコールとアルキレンオキシド、殊にエチレンオキシド又はプロピレンオキシドとの反応により得ることができる。有利に、アルコキシル化度はヒドロキシル基1つ当たり0〜10であり、即ち、ヒドロキシル基1モル当たりアルキレンオキシド10モルまでがアルコキシル化されていてよい。
【0079】
(メタ)アクリレート化合物として、更にポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられ、その際、これはポリエステロールの(メタ)アクリル酸エステル又はビニルエーテルである。
【0080】
ポリエステロールとして、例えば、ポリカルボン酸、有利にジカルボン酸とポリオール、有利にジオールとのエステル化により製造することのできるものが該当する。そのようなヒドロキシ基含有ポリエステルのための出発物質は、当業者に公知である。有利に、ジカルボン酸として、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、o−フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、その異性体及び水素化生成物並びにエステル化可能な誘導体、例えば上記酸の無水物又はジアルキルエステルを使用することができる。ポリオールとして、上記のアルコール、有利にエチレングリコール、プロピレングリコール−1,2及び−1,3、ブタンジオール−1,4、ヘキサンジオール−1,6、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン並びにエチレングリコール及びプロピレングリコールのタイプのポリグリコールが該当する。放射線硬化性化合物(F1)として、例えば本質的にポリオール、殊にジオールとポリカルボン酸、殊にジカルボン酸とから成る不飽和ポリエステル樹脂も該当し、その際、エステル化成分の1つは、共重合可能なエチレン性不飽和基を含有し、例えばこの場合これはマレイン酸、フマル酸又は無水マレイン酸である。ポリエステル(メタ)アクリレートは、多段で、又は単段で、例えばEP−A−279303に記載されているように、(メタ)アクリル酸、ポリカルボン酸及びポリオールから製造することができる。
【0081】
更に、化合物(F1)は、例えばウレタン又はエポキシ(メタ)アクリレート又は−ビニルエーテルであってよい。
【0082】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート又は−ビニルエーテルと場合により連鎖延長剤、例えばジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミン又はジチオール又はポリチオールとの反応により得ることができる。水中で乳化剤の添加なしに分散可能なウレタン(メタ)アクリレートは、付加的になおイオン性及び/又は非イオン性の親水性基を含有し、これらは例えば構成成分、例えばヒドロキシカルボン酸によりウレタン中に導入される。
【0083】
本発明によりバインダー(F1)として使用可能なポリウレタンは、構成成分として本質的に以下のものを含有する:
(F1−a)少なくとも1種の有機脂肪族、芳香族又は脂環式ジ−又はポリイソシアネート
(F1−b)少なくとも1個のイソシアネートに対して反応性の基と少なくとも1個のラジカル重合性不飽和基とを有する、少なくとも1種の化合物、及び
(F1−c)場合により、少なくとも2個のイソシアネートに対して反応性の基を有する少なくとも1種の化合物。
【0084】
成分(F1−a)として、例えば、少なくとも1.8、有利に1.8〜5、殊に有利に2〜4のNCO官能価を有する脂肪族、芳香族及び脂環式ジ−及びポリイソシアネート、並びに、そのイソシアヌレート、ビウレット、アロファネート及びウレトジオンが該当する。
【0085】
ジイソシアネートは、有利に、4〜20個のC−原子を有するイソシアネートである。慣用のジイソシアネートの例は、脂肪族ジイソシアネート、例えばテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(1,6−ジイソシアナトヘキサン)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネートの誘導体、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート又はテトラメチルヘキサンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、例えば1,4−、1,3−もしくは1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’−もしくは2,4’−ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン又は2,4−もしくは2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン並びに芳香族ジイソシアネート、例えば2,4−もしくは2,6−トルイレンジイソシアネート及びその異性体混合物、m−もしくはp−キシリレンジイソシアネート、2,4’−もしくは4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン及びその異性体混合物、1,3−もしくは1,4−フェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトベンゼン又はジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネートである。
【0086】
上記のジイソシアネートの混合物が存在してもよい。
【0087】
ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート及びジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタンは有利である。
【0088】
ポリイソシアネートとして、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート、ウレトジオンジイソシアネート、ビウレット基を有するポリイソシアネート、ウレタン基又はアロファネート基を有するポリイソシアネート、オキサジアジントリオン基を有するポリイソシアネート、直鎖状又は分枝鎖状のC〜C20−アルキレンジイソシアネート、全体で6〜20個のC原子を有する脂環式ジイソシアネート又は全体で8〜20個のC原子を有する芳香族ジイソシアネートのウレトニミン(Uretonimin)変性されたポリイソシアネート又はそれらの混合物が該当する。
【0089】
使用可能なジイソシアネート及びポリイソシアネートは、有利にはジイソシアネート及びポリイソシアネート(混合物)に対して10〜60質量%、有利には15〜60質量%、特に有利には20〜55質量%のイソシアネート基(NCOとして計算される、分子量=42)の含量を有する。
【0090】
有利には脂肪族もしくは脂環式のジイソシアネート及びポリイソシアネート、例えば前記の脂肪族もしくは脂環式のジイソシアネート又はそれらの混合物である。
【0091】
以下のものは更に有利である
1)芳香族、脂肪族及び/又は脂環式のジイソシアネートのイソシアヌレート基を有するポリイソシアネート。この場合に特に有利には相応の脂肪族及び/又は脂環式のイソシアナト−イソシアヌレート、特にこれらはヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートをベースとする。この場合に存在するイソシアヌレートは、特にジイソシアネートの環式三量体であるトリスイソシアナトアルキル−イソシアヌレートもしくはトリスイソシアナトシクロアルキルイソシアヌレート、又はそれらの高級の1つより多くのイソシアヌレート環を有する同族体との混合物である。前記のイソシアナト−イソシアヌレートは一般に10〜30質量%、特に15〜25質量%のNCO含量を有し、かつ3〜4.5の平均NCO官能価を有する。
【0092】
2)芳香族、脂肪族及び/又は脂環式に結合されたイソシアネート基、有利には脂肪族及び/又は脂環式に結合されたイソシアネート基、特にヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアネート基を有するウレトジオンジイソシアネート。ウレトジオンジイソシアネートは、ジイソシアネートの環式二量体化生成物である。該ウレトジオンジイソシアネートは、調製物中で単独成分又は他のポリイソシアネート、特に1)で挙げたポリイソシアネートとの混合物として使用できる。
【0093】
3)ビウレット基を有する、芳香族、脂環式又は脂肪族的に結合された、有利には脂環式又は脂肪族的に結合されたイソシアネート基を有するポリイソシアネート、特にトリス(6−イソシアナトヘキシル)ビウレット又はそれらの高級同族体との混合物。これらのビウレット基を有するポリイソシアネートは、一般に18〜22質量%のNCO含量を有し、かつ3〜4.5の平均NCO官能価を有する。
【0094】
4)ウレタン基及び/又はアロファネート基を有する、芳香族、脂肪族又は脂環式に結合された、有利には脂肪族又は脂環式に結合されたイソシアネート基を有するポリイソシアネート、例えばこれらは過剰量のヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートと多価アルコール、例えばトリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリット、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、1,2−ジヒドロキシプロパン又はそれらの混合物との反応によって得ることができる。これらのウレタン基及び/又はアロファネート基を有するポリイソシアネートは、一般に12〜20質量%のNCO含量を有し、かつ2.5〜3の平均NCO官能価を有する。
【0095】
5)オキサジアジントリオン基を有するポリイソシアネート、有利にはヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートから誘導されるオキサジアジントリオン基を有するポリイソシアネート。そのようなオキサジアジントリオン基を有するポリイソシアネートは、ジイソシアネート及び二酸化炭素から製造できる。
【0096】
6)ウレトニミン変性されたポリイソシアネート。
【0097】
ポリイソシアネート1)〜6)は、混合物として、場合によりまたジイソシアネートとの混合物として使用してよい。
【0098】
成分(F1−b)として、少なくとも1個のイソシアネートに対して反応性の基と少なくとも1個のラジカル重合性基とを有する化合物が該当する。
【0099】
イソシアネートに対して反応性の基は、例えば、−OH、−SH、−NH及び−NHRであってよく、その際、Rは水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル又はt−ブチルを表す。
【0100】
成分(F1−b)は、例えば、α,β−不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドグリコール酸、メタクリルアミドグリコール酸のモノエステル、又は、有利に2〜20個のC−原子と少なくとも2個のヒドロキシ基とを有するジ−又はポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,1−ジメチル−1,2−エタンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリトリット、ジトリメチロールプロパン、エリトリット、ソルビトール、162〜2000の分子量を有するポリ−THF、134〜400の分子量を有するポリ−1,3−プロパンジオール又は238〜458の分子量を有するポリエチレングリコールとのビニルエーテルであってよい。更に(メタ)アクリル酸とアミノアルコール、例えば2−アミノエタノール、2−(メチルアミノ)エタノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール又は2−(2−アミノエトキシ)エタノールとのエステル又はアミド、2−メルカプトエタノール又はポリアミノアルカン、例えばエチレンジアミン又はジエチレントリアミン又は酢酸ビニルを使用してもよい。
【0101】
更に、平均OH官能価2〜10を有する不飽和ポリエーテロール又はポリエステロール又はポリアクリレートポリオールも適当である。
【0102】
エチレン性不飽和カルボン酸とアミノアルコールとのアミドのための例は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、5−ヒドロキシ−3−オキサペンチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシアルキルクロトンアミド、例えばN−ヒドロキシメチルクロトンアミド又はN−ヒドロキシアルキルマレインイミド、例えばN−ヒドロキシエチルマレインイミドである。
【0103】
有利に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−もしくは3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ−及びジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ−及びジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットモノ−、−ジ−及び−トリ(メタ)アクリレート並びに4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、4−アミノブチル(メタ)アクリレート、6−アミノヘキシル(メタ)アクリレート、2−チオエチル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、2−アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、3−アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドが使用される。2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−もしくは3−ヒドロキシプロピルアクリレート、1,4−ブタンジオールモノアクリレート及び3−(アクリロイル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートは特に有利である。
【0104】
成分(F1−c)として、少なくとも2個のイソシアネートに対して反応性の基、例えば−OH、−SH、−NH及び−NHR(但し、Rは互いに無関係に水素、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル又はt−ブチルを表すことができる)を有する化合物が該当する。
【0105】
これは有利にジオール又はポリオール、例えば、2〜20個の炭素原子を有する炭化水素ジオール、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,1−ジメチルエタン−1,2−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキサン)イソプロピリデン、テトラメチルシクロブタンジオール、1,2−、1,3−もしくは1,4−シクロヘキサンジオール、シクロオクタンジオール、ノルボルナンジオール、ピナンジオール、デカリンジオール等、短鎖ジカルボン酸、例えばアジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とのそのエステル、ジオールとホスゲンとの反応によりもしくはジアルキル−もしくはジアリールカーボネートとの反応により製造されるその炭酸塩、又は脂肪族ジアミン、例えばメチレン−、及びイソプロピリデン−ビス−(シクロヘキシルアミン)、ピペラジン、1,2−、1,3−もしくは1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−、1,3−もしくは1,4−シクロヘキサン−ビス−(メチルアミン)等、ジチオール又は多官能性アルコール、2級もしくは1級アミノアルコール、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン等、又はチオアルコール、例えばチオエチレングリコールである。
【0106】
更に、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリット、1,2−及び1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、1,2−、1,3−及び1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジペンタエリトリット、ジトリメチロールプロパン、エリトリット及びソルビトール、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール又は2−(2−アミノエトキシ)エタノール、ビスフェノールA又はブタントリオールが考えられる。
【0107】
更にまた、平均OH官能価2〜10を有する不飽和ポリエーテロール又はポリエステロール又はポリアクリレートポリオール、並びに、ポリアミン、例えばポリエチレンイミン又は遊離アミン基を有するポリマー、例えばポリ−N−ビニルホルムアミドである。
【0108】
ここでは、脂環式ジオール、例えばビス−(4−ヒドロキシシクロヘキサン)イソプロピリデン、テトラメチルシクロブタンジオール、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジオール、シクロオクタンジオール又はノルボルナンジオールが殊に適当である。
【0109】
本発明により使用可能なポリウレタンは、互いに成分(F1−a)、(F1−b)及び(F1−c)の反応により得られる。
【0110】
この場合、(F1−a)中の反応性イソシアネート基3モル当たりのモル組成(F1−a):(F1−b):(F1−c)は通常以下の通りである:
(F1−b)イソシアネートに対して反応性の基1.5〜3.0モル、有利に2.0〜2.9モル、殊に有利に2.0〜2.5モル、殊に2.0〜2.3モル
(F1−c)イソシアネートに対して反応性の基0〜1.5モル、有利に0.1〜1.0モル、殊に有利に0.5〜1.0モル、殊に0.7〜1.0モル。
【0111】
水性系中でポリウレタンを使用する際に、有利に本質的に存在する全てのイソシアネート基を完全に反応させる。
【0112】
イソシアネート基含有化合物とイソシアネート基に対して反応性の基を含有する化合物とからの付加物の形成は、通常、成分を任意の順序で場合により高められた温度で混合することにより行われる。
【0113】
この場合有利に、イソシアネート基に対して反応性の基を含有する化合物を、有利に複数の工程で、イソシアネート基含有化合物に添加する。
【0114】
殊に有利に、イソシアネート基含有化合物を装入し、イソシアネート基に対して反応性の基を含有する化合物を添加する。殊に、イソシアネート基含有化合物(F1−a)を装入し、その後(F1−b)を添加する。次いで、場合により所望の他の成分を添加してよい。
【0115】
通常、反応は5〜100℃、有利に20〜90℃、殊に有利に40〜80℃、殊に60〜80℃の温度で実施される。
【0116】
この場合有利に、水不含の条件下で処理される。
【0117】
水不含とは、この場合、反応系中の含水量が5質量%以下、有利に3質量%以下、殊に有利に1質量%以下であることを意味する。
【0118】
有利に、反応は少なくとも1種の適当な不活性ガス、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等の存在で実施される。
【0119】
反応は、不活性溶剤、例えばアセトン、イソブチル−メチルケトン、トルエン、キシレン、ブチルアセテート又はエトキシエチルアセテートの存在で行われてもよい。しかしながら有利に、反応は溶剤の不在で実施される。
【0120】
ウレタン(メタ)アクリレートは、有利に500〜20000g/モル、殊に750〜10000g/モル、殊に有利に750〜3000g/モルの数平均分子量M(テトラヒドロフラン及びポリスチレンを標準として用いた、ゲル透過クロマトグラフィーにより測定した)を有する。
【0121】
ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン(メタ)アクリレート1000g当たり、有利に1〜5モル、殊に有利に2〜4モルの(メタ)アクリル基の含分を有する。
【0122】
ウレタンビニルエーテルは、ウレタンビニルエーテル1000g当たり、有利に1〜5モル、殊に有利に2〜4モルのビニルエーテル基の含分を有する。
【0123】
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシドと(メタ)アクリル酸との反応により得ることができる。エポキシドとして、エポキシ化オレフィン、芳香族グリシジルエーテル又は脂肪族グリシジルエーテル、有利に芳香族又は脂肪族グリシジルエーテルが該当する。
【0124】
エポキシ化オレフィンは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリン、有利にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリン、殊に有利にエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はエピクロロヒドリン、極めて殊に有利にエチレンオキシド及びエピクロロヒドリンである。
【0125】
芳香族グリシジルエーテルは、例えば、ビスフェノール−A−グリシジルエーテル、ビスフェノール−F−グリシジルエーテル、ビスフェノール−B−グリシジルエーテル、ビスフェノール−S−グリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、フェノール/ジクロロペンタジエンのアルキル化生成物、例えば2,5−ビス[(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]オクタヒドロ−4,7−メタノー5H−インデン)(CAS−No.[13446−85−0])、トリス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]メタン異性体(CAS−No.[66072−39−7])、フェノールベースのエポキシノボラック(CAS−No.[9003−35−4])及びクレゾールベースのエポキシノボラック(CAS−No.[37382−79−9])である。
【0126】
脂肪族グリシジルエーテルは、例えば、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリトリットテトラグリシジルエーテル、1,1,2,2−テトラキス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]エタン(CAS−No.[27043−37−4])、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル(α,ω−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ポリ(オキシプロピレン)(CAS−No.[16096−30−3])及び水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパン、CAS−No.[13410−58−7])である。
【0127】
エポキシ(メタ)アクリレート及び−ビニルエーテルは、有利に340〜20000g/モル、殊に有利に500〜10000g/モル、極めて殊に有利に750〜3000g/モルの数平均分子量Mを有し;(メタ)アクリル−又はビニルエーテル基の含分は、エポキシ(メタ)アクリレート又はビニルエーテルエポキシド1000g当たり有利に1〜5、殊に有利に2〜4である(ポリスチレンを標準として用い、テトラヒドロフランを溶離剤として用いた、ゲル透過クロマトグラフィーにより測定した)。
【0128】
更に適当な放射線硬化性化合物(F1)は、平均で有利に1〜5個、殊に2〜4個、殊に有利に2〜3個の(メタ)アクリル基、極めて殊に有利に2個の(メタ)アクリル基を有するカーボネート(メタ)アクリレートである。
【0129】
カーボネート(メタ)アクリレートの数平均分子量Mは、有利に3000g/モル未満、殊に有利に1500g/モル未満、殊に有利に800g/モル未満である(標準としてのポリスチレン、溶剤テトラヒドロフランを用いた、ゲル透過クロマトグラフィーにより測定した)。
【0130】
カーボネート(メタ)アクリレートは、例えばEP−A92269に記載されているように、多価、有利に2価のアルコール(ジオール、例えばヘキサンジオール)を用いた炭酸エステルのエステル交換反応、及び引き続く(メタ)アクリル酸を用いた遊離OH−基のエステル化、又は(メタ)アクリル酸エステルを用いたエステル交換反応により容易に得ることができる。これはまた、ホスゲン、尿素誘導体と、多価、例えば2価アルコールとの反応により得ることもできる。
【0131】
同様に、ヒドロキシアルキルビニルエーテルと炭酸エステル、並びに場合により2価のアルコールを反応させることにより、ビニルエーテルカーボネートを得ることもできる。
【0132】
ポリカーボネートポリオールの(メタ)アクリレート又はビニルエーテル、例えば、上記ジオール又はポリオール及び炭酸エステル並びにヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート又はビニルエーテルからの反応生成物も考えられる。
【0133】
適当な炭酸エステルは、例えば、エチレン−、1,2−又は1,3−プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル−、−ジエチル−又は−ジブチルエステルである。
【0134】
適当なヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートは、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシ−プロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ−及びジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ−及びジ(メタ)アクリレート並びにペンタエリトリットモノ−、−ジ−及び−トリ(メタ)アクリレートである。
【0135】
適当なヒドロキシ基含有ビニルエーテルは、例えば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル及び4−ヒドロキシブチルビニルエーテルである。
【0136】
殊に有利なカーボネート(メタ)アクリレートは、式:
【0137】
【化1】

[式中、RはH又はCHを表し、XはC〜C18−アルキレン基を表し、nは1〜5、有利に1〜3の整数を表す]のものである。
【0138】
Rは有利にHを表し、Xは有利にC〜C10−アルキレン、例えば1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン又は1,6−ヘキシレン、殊に有利にC〜C−アルキレンを表す。極めて殊に有利に、XはC−アルキレンを表す。
【0139】
有利に、これは脂肪族カーボネート(メタ)アクリレートである。
【0140】
更に、放射線硬化性化合物(F1)として、ポリエーテルポリオールの(メタ)アクリレート又はビニルエーテルも使用可能である。これは、自体公知の方法で、適当な開始剤分子のアルコキシル化により入手可能であるような、1価又は有利に多価の、1分子当たりランダム平均で2〜70個の、有利に2〜60個のポリアルキレンオキシド単位を有するポリエーテルアルコールであってよい。このポリエーテルアルコールを製造するために、任意の1価又は多価のアルコールを開始剤分子として使用することができる。
【0141】
アルコキシル化のために適当なアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド及びビニルオキシランであり、これらは任意の順序で、また混合物として、アルコキシル化反応の際に使用することができる。
【0142】
例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリット、グリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリット、ソルビトール、マンニトール、ジグリセリン、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、2,2−ジメチル−1,2−エタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール又は1,4−ブタンジオールは、開始剤分子として適当である。
【0143】
ビニルエーテル基含有ポリエーテルアルコールは、例えば、ヒドロキシアルキルビニルエーテルとアルキレンオキシドとの反応により得られる。
【0144】
(メタ)アクリル酸基含有ポリエーテルアルコールは、例えば、(メタ)アクリル酸エステルとポリエーテルアルコールとのエステル交換反応により、ポリエーテルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化により、又は、上記で(F1−b)のところで記載されたヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの使用により得ることができる。
【0145】
有利なポリエーテルアルコールは、106〜2000、有利に106〜898、殊に有利に238〜678の分子量を有するポリエチレングリコールである。
【0146】
更に、ポリエーテルアルコールとして、162〜2000の分子量を有するポリ−THF、並びに、134〜1178の分子量を有するポリ−1,3−プロパンジオールを使用することができる。
【0147】
ウレタン−又はカーボネート(メタ)アクリレート、又は−ビニルエーテル、殊にウレタン(メタ)アクリレートは、化合物(F1)として殊に有利である。
化合物(F1)は、しばしば、反応性希釈剤として役立つ化合物(F2)と混合物して使用される。
【0148】
反応性希釈剤(化合物(F2))として、エチレン性不飽和の共重合性基を1つだけ有する、放射線硬化性のラジカル又はカチオン重合性の化合物が該当する。
【0149】
例えば、C〜C20−アルキル(メタ)アクリレート、20個までのC原子を有するビニル芳香族化合物、20個までのC原子を有するカルボン酸のビニルエステル、エチレン性不飽和ニトリル、1〜10個のC原子を有するアルコールのビニルエーテル、α,β−不飽和カルボン酸及びその無水物、及び2〜8個のC原子と1又は2個の二重結合を有する脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0150】
(メタ)アクリル酸の定義は、本願明細書の範囲内で、アクリル酸及びメタクリル酸のために用いられる。
【0151】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、C1〜C10−アルキル基を有するもの、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが有利である。
【0152】
特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合物も適当である。
【0153】
1〜20個のC原子を有するカルボン酸のビニルエステルは、例えばビニルラウレート、ビニルステアレート、ビニルプロピオネート及びビニルアセテートである。
【0154】
α,β−不飽和カルボン酸及びその無水物は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸又は無水マレイン酸、有利にアクリル酸であってよい。
【0155】
ビニル芳香族化合物として、例えば、ビニルトルエン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、有利にはスチレンが該当する。
【0156】
ニトリルのための例はアクリロニトリル及びメタクリロニトリルである。
【0157】
適当なビニルエーテルは、例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルヘキシルエーテル及びビニルオクチルエーテルである。
【0158】
2〜8個のC原子を有し、かつ1又は2つのオレフィン性二重結合を有する非芳香族炭化水素としては、ブタジエン、イソプレン並びにエチレン、プロピレン及びイソブチレンが挙げられる。
【0159】
更にN−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン並びにN−ビニルカプロラクタムを使用してよい。
【0160】
光開始剤(F3)として、当業者に公知の光開始剤、例えば“Advances in Polymer Science”, Volume 14, Springer Berlin 1917又はK. K. Dietliker, Chemistry and Technology of UV- and EB-Formulation for Coatings, Inks and Paints, Volume3; Photoinitiators for Free Radical and Cationic Polymerization, P. K. T. Oldring (Eds), SITA Technology Ltd, Londonに記載されたものを使用することができる。
【0161】
例えばEP−A7508号、EP−A57474号、DE−A19618720号、EP−A495751号又はEP−A615980号に記載されるようなモノアシルホスフィンオキシド又はビスアシルホスフィンオキシド、例えばIrgacure(登録商標)819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド)、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin(登録商標)TPO)、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、フェニルグリオキシル酸及びそれらの誘導体又は前記の光開始剤の混合物が該当する。例として、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アセトナフトキノン、メチルエチルケトン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α−フェニルブチロフェノン、p−モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4−モルホリノベンゾフェノン、4−モルホリノデオキシベンゾイン、p−ジアセチルベンゼン、4−アミノベンゾフェノン、4’−メトキシアセトフェノン、β−メチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、アントラキノンカルボン酸エステル、ベンズアルデヒド、α−テトラロン、9−アセチルフェナントレン、2−アセチルフェナントレン、10−チオキサンテノン、3−アセチルフェナントレン、3−アセチルインドール、9−フルオレノン、1−インダノン、1,3,4−トリアセチルベンゼン、チオキサンテン−9−オン、キサンテン−9−オン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジ−イソ−プロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、ベンゾイン、ベンゾイン−イソ−ブチルエーテル、クロロキサンテノン、ベンゾイン−テトラヒドロピラニルエーテル、ベンゾイン−メチルエーテル、ベンゾイン−エチルエーテル、ベンゾイン−ブチルエーテル、ベンゾイン−イソ−プロピルエーテル、7−H−ベンゾイン−メチルエーテル、ベンズ[de]アントラセン−7−オン、1−ナフトアルデヒド、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、ミヒラーケトン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、1−ベンゾイルシクロヘキサン−1−オール、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシアセトフェノン、アセトフェノンジメチルケタール、o−メトキシベンゾフェノン、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、ベンズ[a]アントラセン−7,12−ジオン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルケタール、例えばベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、アントラキノン、例えば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン及び2,3−ブタンジオンが挙げられる。
【0162】
また黄変しない又は殆ど黄変しない、DE−A19826712号、DE−A19913353号又はWO98/33761号に記載されるようなフェニルグリオキサル酸エステル型の光開始剤も適当である。
【0163】
上記の光開始剤のうち、ホスフィンオキシド、α−ヒドロキシケトン及びベンゾフェノンは有利である。
【0164】
殊に、種々の光開始剤の混合物を使用することもできる。
【0165】
光開始剤は、単独で、又は、安息香酸−、アミン−又は類似の型の光重合促進剤と組み合わせて使用することができる。
【0166】
塗料に典型的な他の添加剤(F4)としては、例えば酸化防止剤、酸化抑制剤、安定剤、活性化剤(促進剤)、充填剤、顔料、染料、脱気剤、光沢剤、帯電防止剤、難燃剤、増粘剤、チキソトロピー剤、均展補助剤、結合剤、消泡剤、香料、表面活性剤、粘度改変剤、軟化剤、可塑剤、粘着化樹脂(粘着剤)、キレート形成剤又は相溶化剤(compatibilizer)を使用してよい。
【0167】
熱的な後硬化のための促進剤として、例えば、オクタン酸スズ、オクタン酸亜鉛、ジブチルスズラウレート又はジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを使用することができる。
【0168】
更に、1種以上の光化学的及び/又は熱的に活性可能な開始剤、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、ジベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、アゾビス−イソ−ブチロニトリル、シクロヘキシルスルホニルアセチルペルオキシド、ジ−イソ−プロピルペルカーボネート、t−ブチルペルオクトエート又はベンゾピナコール、並びに例えば、80℃で100時間を上回る半減期を有する熱的に活性可能な開始剤、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、例えばWacker社の商品名ADDID 600として市販されているシリル化されたピナコール、又は、ヒドロキシル基含有アミン−N−オキシド、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルを添加することができる。
【0169】
適当な開始剤の他の例は、”Polymer Handbook”, 第2版, Wiley & Sons, New Yorkに記載されている。
【0170】
増粘剤として、ラジカル(共)重合された(コ)ポリマーの他に、慣用の有機及び無機増粘剤、例えばヒドロキシメチルセルロース又はベントナイトが該当する。
【0171】
キレート形成剤として、例えば、エチレンジアミン酢酸及びその塩、並びにβ−ジケトンを使用することができる。
【0172】
適当な充填剤には、シリケート、例えば四塩化ケイ素の加水分解により得ることができるシリケート、例えばDegussa社のAerosil(登録商標)、珪土、タルク、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が含まれる。
【0173】
適当な安定剤には、典型的なUV吸収剤、例えばオキサニリド、トリアジン及びベンゾトリアゾール(最後のものは、Ciba-Spezialitaetenchemie社のTinuvin(登録商標)−商標として得ることができる)及びベンゾフェノンが含まれる。これは、単独か、又は適当なラジカル補足剤、例えば立体阻害アミン、例えば2,2,6,6−テトラ−メチルピペリジン、2,6−ジ−t−ブチルピペリジン及びその誘導体、例えば、ビス−(2,2,6,6−テトラ−メチル−4−ピペリジル)セバシネートと組み合わせて使用することができる。安定剤は、通常、調製物中に含有される固体成分に対して0.1〜5.0質量%の量で使用される。
【0174】
更に適当な安定剤は、例えば、N−オキシル、例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4,4’,4’’−トリス(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル)−ホスフィット、又は3−オキソ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジン−N−オキシル、フェノール及びナフトール、例えばp−アミノフェノール、p−ニトロソフェノール、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−t−ブトルフェノール(2,6−t−ブチル−p−クレゾール)又は4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェノール、キノン、例えばヒドロキノン又はヒドロキノンモノメチルエーテル、芳香族アミン、例えばN,N−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、例えばN,N’−ジアルキル−パラ−フェニレン−ジアミン(その際、アルキル基は同じか又は異なっていてよく、その都度互いに無関係に1〜4個の炭素原子から成り、直鎖又は分枝鎖であってよい)、ヒドロキシルアミン、例えばN,N−ジエチルヒドロキシルアミン、尿素誘導体、例えば尿素又はチオ尿素、リン含有化合物、例えばトリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィット又はトリエチルホスフィット、又は硫黄含有化合物、例えばジフェニルスルフィド又はフェノチアジンである。
【0175】
放射線硬化性材料のための典型的な組成は、例えば以下の通りである:
(F1)0〜100質量%、有利に50〜90質量%、殊に有利に60〜90質量%、殊に60〜80質量%、
(F2)0〜60質量%、有利に5〜50質量%、殊に有利に6〜40質量%、殊に10〜30質量%、
(F3)0〜20質量%、有利に0.5〜15質量%、殊に有利に1〜10質量%、殊に2〜5質量%、並びに
(F4)0〜50質量%、有利に2〜40質量%、殊に有利に3〜30質量%、殊に5〜20質量%
但し、(F1)、(F2)、(F3)及び(F4)はあわせて100質量%であるという条件付きである。
【0176】
殊に有利な放射線硬化性材料において、化合物(F1)は、化合物(F1)の全量に対して10〜100質量%までが、1種以上のウレタン(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート又はポリエステルアクリレートから成る。
【0177】
殊に適当な、層(F)として使用可能な放射線硬化性材料は、EP−A1942022、該刊行物の特に第4頁、第18行〜第18頁、第31行に記載されているもの、DE−A119944156、第1頁、第26行〜第6頁、第63行及びDE−A119956231、第2頁、第33行〜第4頁、第65行に記載されているもの、並びに、番号第10140769.6号、出願日2001年8月20日のドイツ特許出願に記載されているものである。
【0178】
基材の被覆は、慣用の当業者に公知の方法により行われ、その際、少なくとも1種の被覆材料を、被覆すべき基材上に所望の厚さで施与し、場合により含有される被覆材料の揮発性成分を、場合により加熱下に除去する。前記の過程は、所望であれば1回以上繰り返してよい。基材への施与は、公知のように、例えば吹き付け塗装、へら塗り、ブレード塗布、刷毛塗り、ロール塗装、ローラコーティング、フローコーティング、ラミネーティング、インモールドコーティング又は同時押出しによって実施してよい。被覆厚さは、一般に約3〜1000g/m、有利には10〜200g/mの範囲内である。
【0179】
更に、基材を被覆するための方法を開示し、その際、被覆材料を基材上に施与し、場合により乾燥させ、酸素含有雰囲気下で、又は有利に不活性ガス下で電子線又はUV露光を用いて硬化させ、場合により乾燥温度の高さまでの温度で、次いで160℃までの温度で、有利に60〜160℃で熱処理する。
【0180】
基材を被覆するための方法は、被覆材料を施与した後に、まず160℃まで、有利に60〜160℃の温度で熱処理し、次いで酸素下で、又は有利に不活性ガス下で電子線又はUV露光を用いて硬化させるというように実施することもできる。
【0181】
基材上に形成される皮膜の硬化は、所望であれば専ら熱的に実施してよい。しかしながら一般に該被覆は高エネルギーを有する放射線でも熱的にも硬化する。
【0182】
硬化は、熱的な硬化に対して付加的に、又は熱的な硬化の代わりに、NIR線により行うこともでき、その際、ここでは、760nm〜2.5μm、有利に900〜1500nmの波長領域内の電磁線をNIR線と呼称する。
【0183】
場合により、複層の被覆剤が重なって施与される場合に、各被覆過程後に熱硬化、NIR硬化及び/又は放射線硬化を実施してよい。
【0184】
放射線硬化のための放射線源としては、例えば水銀低圧放射器、水銀中圧放射器、水銀高圧放射器並びに蛍光灯、インパルス放射器、金属ハロゲン化物放射器、閃光放電装置(それらにより放射線硬化は光開始剤を使用せずに可能である)又はエキシマ放射器が適当である。放射線硬化は、高エネルギー線、従ってUV線又は自然光、有利にはλ=200〜700nm、特に有利には、λ=200〜500nm、極めて殊に有利にはλ=250〜400nmの波長領域の光の作用によるか、又は高エネルギー電子(電子線:150〜300keV)の照射によって実施する。放射線源としては、例えば高圧水銀蒸気灯、レーザ、パルスランプ(閃光)、ハロゲンランプ又はエキシマ放射器が用いられる。UV硬化において、通常、架橋に十分な線量は80〜3000mJ/cmの範囲である。
【0185】
当然のことながら、複数、例えば2〜4種の放射線源を、硬化のために使用することができる。
【0186】
これらはまた、それぞれ異なる波長領域で照射してもよい。
【0187】
照射は、場合により酸素の排除下に、例えば不活性ガス雰囲気下に実施してよい。不活性ガスとして、有利には窒素、希ガス、二酸化炭素又は燃焼ガスが適当である。更に照射は、被覆材料を透明な媒体で被覆することにより実施できる。透明な媒体は、例えばプラスチックシート、ガラス又は液体、例えば水である。DE−A119957900号に記載されるように照射することが特に有利である。
【0188】
本発明のもう1つの対象は、基材を被覆するための方法であり、その際、
i)基材を、上記の通りの被覆材料で被覆し、
ii)被覆材料の揮発性成分を、光開始剤(C)が実質的にフリーラジカルを形成しない条件下に除去して、皮膜形成させ、
iii)場合により、工程ii)において形成された皮膜を高エネルギー線で照射し、その際、皮膜を予備硬化させ、引き続き、場合により、予備硬化された皮膜で被覆された対象品を機械的に加工するか、又は、予備硬化された皮膜の表面を別の基材と接触させ、
iv)皮膜を、熱的に又はNIR線を用いて最終硬化させる。
【0189】
この場合に、工程iv)及びiii)は逆の順序で実施してもよく、すなわち該皮膜をまず熱的に又はNIR線により硬化させ、次いで高エネルギー線で硬化させてよい。
【0190】
更に、本発明による多層塗装系で被覆された基材も本発明の対象である。
【0191】
同様に、基材と少なくとも1種の放射線硬化性塗料系(F)との間に、−20℃以下のガラス転移温度(T)を有する1つの弾性の中間層(D)を施与する、少なくとも1種の放射線硬化性塗料系(F)を用いて基材を被覆するための方法は、本発明の対象である。
【0192】
被覆は上記方法の1つにより行うことができ、放射線硬化性塗料系(F)及び弾性の中間層(D)に関して上記のことが当てはまる。
【0193】
上記の硬化すべき層の厚さは、0.1μm〜数mmであってよく、有利に1〜2000μm、殊に有利に5〜1000μm、極めて殊に有利に10〜500μm、殊に10〜250μmであってよい。
【0194】
所定の系に関して、破壊機序挙動は、中間層厚さZS(層(D))と、中間層+上塗り塗料の厚さDL(即ち層(E)と(F)の厚さの合計)の合計の厚さとの比V、V=ZS/(ZS+DL)から測定することができる。系が曝される温度が低いほど、及び、変形速度が高い程、機械応力において破壊が生じないようにVを大きく選択しなければならない。本発明によれば、値Vは、少なくとも25℃の温度で少なくとも0.05、有利に少なくとも0℃の温度で少なくとも0.1、殊に有利に少なくとも−20℃の温度で少なくとも0.2、極めて殊に有利に−50℃の温度で少なくとも0.3である。
【0195】
本発明による多層塗装系は、公知のUV硬化性塗料と比較して、殊に工業用プラスチックに対する改善された付着性、並びに、改善された硬度、弾性、耐摩耗性及び耐薬品性を達成する。
【0196】
殊に有利に、本発明による多層塗装系は、有利に、建築物又は建築部材、内部被覆、道路標識、車両上及び航空機上の被覆の外側被覆、つまり自然光に曝される適用として、又はこのような適用において適当である。殊に、本発明による多層塗装系は、自動車用クリアコート及び自動車用トップコートとして、又はこのようなものにおいて、自動車の外部領域のみならず自動車の内部領域のためにも使用される。
【0197】
本発明による多層塗装系は、外部の塗料層において生じるクラックを、本発明により存在する中間層(D)によって前記クラックが基材まで成長しないようにして阻止することができる。この目的のために、例えば、層(E)と(F)の間に、及び/又は層(A)と(C)の間に(これらの層が多層塗装系中に含まれている場合に)多層塗装系中に当然のことながら複数の弾性の中間層を組み込むこともできる。
【0198】
本発明による多層塗装系を用いて、高い耐引掻性を達成することができる。
【0199】
本願明細書の記載において使用したppm及び百分率の記載は、別に記載がない限り質量百分率及び質量ppmを示す。
【実施例】
【0200】
耐引掻性を、DE−A119940312、第8頁、第64行〜第9頁、第5行に記載されているようにスコッチブライト試験(Scotch Brite - Test)により測定した。
【0201】
試験体として、3×3cmの大きさの、炭化ケイ素変性された不織繊維(Scotch Brite SUFN, 3M ドイツ, 41453 Neuss)をシリンダー上に固定する。前記のシリンダーは不織繊維を750gで被覆に押付け、被覆上を空気圧で移動する。撓路は7cmである。10回又は50回のダブルストローク(DH)後に応力の中央領域の光沢(6回測定)をDIN67530、ISO2813と同様に入射角60°で測定する。機械的応力の前と後の被覆の光沢値から差が生じる。光沢損失は耐引掻性と反比例する。
【0202】
衝撃強度acuをDIN EN ISO 179/1fUに従って−50℃で測定した。
【0203】
トップコート1を、BASF AG, LudwigshafenのLaromer(登録商標)LR 8987と添加剤とから製造した。
【0204】
トップコート2を、BASF AG, LudwigshafenのLaromer(登録商標)LR 8949と添加剤とから製造した。
【0205】
以下の基材を使用した;
【0206】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の多層塗装系において、少なくとも1種の放射線硬化性塗料系(F)、及び、(1000Hzまでの周波数帯内で測定された)−20℃以下のガラス転移温度(T)を有する、基材と放射線硬化性塗料系(F)との間に存在する少なくとも1つの弾性の中間層(D)を含有することを特徴とする基材上の多層塗装系。
【請求項2】
以下
(F)少なくとも1種の放射線硬化性塗料系
(E)場合により、顔料で着色されかつ/又は効果物質を備えた少なくとも1つの層
(D)−20℃以下のガラス転移温度(T)を有する少なくとも1つの弾性の中間層(D)
(C)場合により、プライマー、ベースコート、アンダーコート、顔料で着色されたか又は効果物質を備えた塗料及び基材2の群から選択された少なくとも1つの層、
(B)(C)が基材2である場合には、場合により少なくとも1つの弾性の中間層、並びに
(A)基材1
から成る、請求項1記載の多層塗装系。
【請求項3】
層(A)及び/又は(C)中の基材1及び/又は基材2が、紙、プラスチック及び金属の群から選択されている、請求項1又は2記載の多層塗装系。
【請求項4】
基材が、PP(ポリプロピレン)、SAN(スチレン−アクリロニトリル−コポリマー)、PC、PMMA、PBT、PA、ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリルエステル−コポリマー)及びABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−コポリマー)並びにそれらの物理的混合物(ブレンド)の群から選択されている、請求項1又は2記載の多層塗装系。
【請求項5】
弾性の中間層(D)の層厚が0.5〜500μmである、請求項1から4までのいずれか1項記載の多層塗装系。
【請求項6】
弾性の中間層(D)中の少なくとも1種の化合物が、熱可塑性エラストマー、ポリアクリレート及びポリイソブテンを含む群から選択されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の多層塗装系。
【請求項7】
弾性の中間層(D)中の少なくとも1種の化合物が、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)及びスチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)ブロックポリマーを含む群から選択されている、請求項6記載の多層塗装系。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の多層塗装系で被覆された基材。
【請求項9】
少なくとも1種の放射線硬化性塗料系(F)を用いて基材を被覆するための方法において、基材と少なくとも1種の放射線硬化性塗料系(F)との間に、−20℃以下のガラス転移温度(T)を有する1つの弾性の中間層(D)を施与することを特徴とする、基材を被覆するための方法。
【請求項10】
建築物又は建築部材、内部被覆物、自動車及び航空機上の被覆物を被覆するための、請求項1から7までのいずれか1項記載の多層塗装系の使用。

【公表番号】特表2006−501979(P2006−501979A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−522469(P2004−522469)
【出願日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2003/007709
【国際公開番号】WO2004/009251
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【Fターム(参考)】