低酸素性損傷または虚血性損傷を治療しまたは予防するための組成物および方法
生物材料を有効量の化合物と接触させることを含む、低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防するための方法が開示されている。化合物は、下記の構造(I):R1-(S)n-R2、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグを有し、式中、R1、R2、およびnは、本明細書に定義したとおりである。化合物、このような化合物の調製および使用と関連した方法、ならびにこのような化合物を含む医薬組成物も開示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年10月16日に出願された米国仮特許出願第61/105,910号に関する米国特許法第119条第(e)項の下での特典を主張するものであり、該出願は、そのすべての内容が全体として引用により本明細書中に組み込まれている。
【0002】
本発明の分野
本発明は、低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防するための方法、ならびにそのために有用な化合物および化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
関連分野の説明
カルコゲニン元素を含む化合物、すなわち、周期表の第6群にあるもの(酸化物を除く)は通常、「カルコゲニド」または「カルコゲニド化合物」と呼ばれる。これらの元素は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、およびポロニウム(Po)である。一般的なカルコゲニドは、S、Se、およびTeのうちの1つ以上を、他の元素に加えて含む。
【0004】
カルコゲニドを用いた治療は、低酸素性損傷および虚血性損傷から生物物質を保護することが示されている。これらの研究において、酸素消費の強力な阻害剤である硫化水素(H2S)の安定した組成が、小動物および大動物における低酸素性損傷を低下させることが示された(米国特許出願公報第2008/0199541号参照)。硫化水素が、医学的用途について典型的に考慮されてこなかったが、この予期せぬ結果は、いくつかの動物およびヒトでの疾患、特に低酸素症および虚血と関連した疾患および損傷の治療または予防のための刺激的な可能性を呈している。加えて、この予期せぬ結果は、スルフィドを含むものを含むカルコゲニドのさらなる医薬組成物について当技術分野で需要があることを示している。スルフィドは、その2価状態における硫黄として定義され、H2Sとして、またはその塩としてのいずれかで定義され(例えば、NaHS、Na2S等)、例えば、疾患の治療または救急中の場における治療のための、および大損傷または生命の危険にある医学的事象に応じた緊要なケアにおいての両方の制御された医学的環境において患者に簡便に投与され得る。公知のカルコゲニドの医薬組成物に加えて、低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防するのに有用なさらなるカルコゲニド化合物およびこのような化合物を含む組成物について、当技術分野で需要がある。
【0005】
従って、この分野で進展がなされてはいるものの、低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防する方法について、ならびにそれに有用なカルコゲニド化合物および医薬組成物について、当技術分野で需要がなおもある。本発明は、この需要を満たし、さらなる関連した利点を提供する。
【発明の概要】
【0006】
簡潔には、本発明は、低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料を、有効量の構造(I):
【化1】
の化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグと接触させることを含む、該生物材料の損傷を治療しまたは予防するための方法に関する
(式中:
R1およびR2が各々独立して、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され;かつ
nは2〜5の整数である。)。
【0007】
別の実施態様において、本発明は、構造(IV):
【化2】
を有する化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグを提供する
(式中:
R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、およびR2dが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルであり、但し、下記を条件とする:
(a)R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、およびR2dがすべて水素というわけではなく;
(b)R1b、R1c、R2b、およびR2cがすべて水素である場合、R1a、R1d、R2a、およびR2d がすべてクロロというわけではなく;かつ
(c)R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、R2cがすべて水素である場合、R1dおよびR2dが両方とも、-CO2Hではなく、またはR1dおよびR2dが両方とも-CO2CH3ではない。)。
【0008】
別の実施態様において、本発明は、構造(V):
【化3】
を有する化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグを提供する
(式中:
R3およびR4が各々独立して、置換または非置換ヘテロアリールからなる群から選択され、但し、R3およびR4が両方とも置換または非置換イミダゾリジン-2,4-ジオネイルではないことを条件とする。)。
【0009】
別の実施態様において、本発明は、構造(II)の化合物との組み合わせで、医薬として許容し得る担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
別の実施態様において、本発明は、構造(III)の化合物との組み合わせで、医薬として許容し得る担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明のこれらの態様および他の態様は、下記の詳細な説明に対する引用の際に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、モノブロモビマン誘導体化を介したHEPES緩衝液におけるポリスルフィド化合物からのスルフィド放出の分析を示す。
【図2】図2は、モノブロモビマン誘導体化を介したHEPES緩衝液およびグルタチオンにおけるポリスルフィド化合物からのスルフィドの放出の分析を示す。
【図3】図3は、モノブロモビマン誘導体化を介したHEPES緩衝液およびグルタチオンにおけるポリスルフィド化合物からのスルフィドの放出の分析を示す。
【図4】図4は、固体状態のスルフィドプローブを介したグルタチオンの存在下でのポリスルフィド化合物からのスルフィドの放出の分析を示す。
【図5】図5は、モノブロモビマン誘導体化を介したラット鮮血におけるポリスルフィド化合物からのスルフィドの放出の分析を示す。
【図6】図6は、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける血中スルフィド濃度を示す。
【図7】図7は、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける血中スルフィド濃度を示す。
【図8】図8は、モノブロモビマンによる誘導体化によって測定された、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける血中スルフィドレベルを示す。
【図9】図9は、モノブロモビマンによる誘導体化によって測定された、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける血中スルフィドレベルを示す。
【図10】図10は、モノブロモビマンによる誘導体化によって測定された、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける血中スルフィドレベルを示す。
【図11】図11は、モノブロモビマンによる誘導体化によって測定された、異なるポリスルフィド化合物を静脈内投与したラットにおける血中スルフィドレベルを示す。
【図12】図12は、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける肝虚血-再灌流損傷を示す。
【図13】図13は、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける心筋梗塞の大きさを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
下記の説明において、ある具体的な詳細が、本発明の種々の実施態様の完全な理解を提供するために示されている。しかしながら、当業者は、本発明がこれらの詳細なしで実施され得ることを理解するであろう。
【0014】
文脈が別段に必要としない限り、本明細書および特許請求の範囲を通じて、語「を含む(comprise)」ならびに「を含む(comprises)」および「を含んでいる(comprising)」などのその変形は、「を含むがこれに限定されない」と同じように開いた包括的な意味で解釈されるべきである。
【0015】
「一実施態様」または「実施態様」に対する本明細書を通じての引用は、該実施態様と関連して説明された特定の特色、構造、または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。このように、本明細書を通じての種々の箇所における句「一実施態様において」または「実施態様において」の出現は、同一の実施態様に対して必ずしもすべて引用しているわけではない。さらにその上、特定の特色、構造、または構造は、1つ以上の実施態様において任意の適切な様式で組み合わされてもよい。
【0016】
「本発明の化合物(compounds)」または「本発明の化合物(compound)」に対する本明細書を通じての引用は、構造(I)、(II)、または(III)の化合物およびそれらのすべての実施態様を意味している。
【0017】
「アミノ」は、-NH2ラジカルを指す。
【0018】
「シアノ」は、-CNラジカルを指す。
【0019】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、-OHラジカルを指す。
【0020】
「イミノ」は、=NH置換基を指す。
【0021】
「ニトロ」は、-NO2ラジカルを指す。
【0022】
「オキソ」は、=O置換基を指す。
【0023】
「チオキソ」は、=S置換基を指す。
【0024】
「アルキル」は、1〜12個の炭素原子(C1-C12アルキル)、好ましくは1〜8この炭素原子(C1-C8アルキル)または1〜6個の炭素原子(C1-C6アルキル)を有する、飽和または不飽和である(すなわち、1つ以上の二重結合および/または三重結合を含む)、かつ単結合によって分子の残りに結合している、単に炭素原子および水素原子からなる直鎖または分岐鎖炭化水素ラジカルを指し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、(イソ-プロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル、(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、エテニル、プロパ-1-エニル、ブタ-1-エニル、ペンタ-1-エニル、ペンタ-1,4-ジエニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、およびこれらの類似物である。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、アルキル基は、任意に飽和していてもよい。
【0025】
「アルキレン」または「アルキレン鎖」は、飽和または不飽和であり(すなわち、1つ以上の二重結合および/または三重結合を含む)かつ1〜12個の炭素原子を有する、単に炭素および水素からなる、分子の残りをラジカル基に連結している直鎖または分岐鎖の二価炭化水素鎖を指し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレン、プロピニレン、n-ブチニレン、およびこれらの類似物である。アルキレン鎖は、単結合または二重結合を通じて分子の残りに、および単結合または二重結合を通じてラジカル基に結合する。分子の残りに対するおよびラジカル基に対するアルキレン鎖の結合点は、鎖内の1個の炭素または任意の2個の炭素を通じてであることができる。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、アルキレン鎖は、任意に置換されてもよい。
【0026】
「アルコキシ」は、式-ORaのラジカルを指し、式中、Raは、1〜12個の炭素原子を含む上記に定義したアルキルラジカルである。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、アルコキシ基は任意に置換されてもよい。
【0027】
「アルキルアミノ」は、式-NHRaまたは-NRaRaのラジカルを指し、式中、各Raが独立して、1〜12個の炭素原子を含む上記に定義したアルキルラジカルである。本明細書で具体的に別段の記載がない限り、アルキルアミノ基は、任意に置換されてもよい。
【0028】
「チオアルキル」は、式-SRaのラジカルを指し、式中、Raは、1〜12個の炭素原子を含む上記に定義したアルキルラジカルである。本明細書で具体的に別段の記載がない限り、チオアルキル基は任意に置換されてもよい。
【0029】
「アリール」は、水素、6〜18個の炭素原子、および少なくとも1つの芳香環を含む炭化水素環系ラジカルを指す。本発明の目的のために、アリールラジカルは、縮合されたまたは架橋された環系を含んでもよい単環系、二環系、三環系、または四環系であり得る。アリールラジカルには、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、フルオランテン、フルオレン、アズ-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、プレイアデン、ピレン、およびトリフェニレンに由来するアリールラジカルが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で具体的に別段の記載がない限り、用語「アリール」または(「アラルキル」などにおける)接頭辞「アル-(ar-)」は、任意に置換されたアリールラジカルを含むよう意図される。
【0030】
「アラルキル」は、式-Rb-Rcのラジカルを指し、式中、Rbは、上記に定義したアルキレン鎖であり、およびRcは、上記に定義した1つ以上のアリールラジカルであり、例えば、ベンジル、ジフェニルメチル、およびこれらの類似物である。本明細書において具体的に別段の指定がない限り、アラルキル基は任意に置換されてもよい。
【0031】
「シクロアルキル」または「炭素環」は、3〜15個の炭素原子を有する、好ましくは3〜10個の炭素原子を有する、単結合によって分子の残りに結合している縮合したまたは架橋した環系を含んでもよい、かつ、飽和または不飽和である、単に炭素原子および水素原子からなる安定した非芳香単環式または多環式炭化水素ラジカルを指す。単環式ラジカルには、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。多環式ラジカルには、例えばアダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、およびこれらの類似物が含まれる。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、シクロアルキル基は任意に置換されてもよい。
【0032】
「シクロアルキルアルキル」は、式-RbRdのラジカルを指し、式中、Rbは、上記に定義したアルキレン鎖であり、かつRdは、上記に定義したシクロアルキルラジカルである。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、シクロアルキルアルキル基は、任意に置換されてもよい。
【0033】
「シクロアルキルアミノ」は、式-NHRgまたは-NRgRgのラジカルを指し、式中、各Rgは独立して、上記に定義したシクロアルキルラジカルである。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、シクロアルキルアミノ基は任意に置換されてもよい。
【0034】
「オキシカルボニル」は、式-OC(=O)Riのラジカルを指し、式中Riは、上記に定義したアルキルラジカルまたはアリールラジカルである。
【0035】
「縮合した」は、本発明の化合物における既存の環構造に縮合した、本明細書に記載された任意の環構造を指す。縮合した環がヘテロシクリル環またはヘテロアリール環である場合、縮合したヘテロシクリル環のまたは縮合したヘテロアリール環の部分となる既存の環構造における任意の炭素原子は、窒素原子で置換されてもよい。
【0036】
「ハロ」または「ハロゲン」は、ブロモ、クロロ、フルオロ、またはヨードを指す。
【0037】
「ハロアルキル」は、上記に定義した1つ以上のハロラジカルによって置換されている上記に定義したアルキルラジカルを指し、例えば、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,2-ジフルオロエチル、3-ブロモ-2-フルオロプロピル、1,2-ジブロモエチル、およびこれらの類似物である。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、ハロアルキル基は、任意に置換されてもよい。
【0038】
「ヘテロシクロリル」または「複素環」は、2〜12個の炭素原子と、窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される1〜6個のヘテロ原子とからなる安定した3〜18員の非芳香環ラジカルを指す。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、ヘテロシクリルラジカルは、縮合したまたは架橋した環系を含んでもよい単環式、二環式、三環式、または四環式環系であり得;およびヘテロシクリルラジカルにおける窒素原子、炭素原子、または硫黄原子は、任意に酸化されてもよく;窒素原子は任意に四級化されてもよく;およびヘテロシクリルラジカルは、部分的にまたは完全に飽和していてもよい。このようなヘテロシクロルラジカルの例には、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルフォリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルフォリニル、チアモルフォリニル、1-オキソ-チオモルフォリニル、および1,1-ジオキソ-チオモルフォリニルが含まれるが、これらに限定されない。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、本明細書において具体的に別段の記載がない限り、ヘテロシクリル基は、任意に置換されてもよい。
【0039】
「N-ヘテロシクリル」は、少なくとも1つの窒素を含む上記に定義したヘテロシクリルラジカルを指し、ここで、分子の残りに対するヘテロシクリルラジカルの結合点は、ヘテロシクリルラジカルにおける窒素原子を通じている。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、N-ヘテロシクリル基は、任意に置換されてもよい。
【0040】
「ヘテロシクリルアルキル」は、式-RbReのラジカルを指し、式中、Rbは、上記に定義したアルキレン鎖であり、かつReは、上記に定義したヘテロシクリルラジカルであり、ヘテロシクリルが窒素含有ヘテロシクリルである場合、ヘテロシクリルは、窒素原子においてアルキルラジカルに結合していてもよい。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、ヘテロシクロルアルキル基は、任意に置換されてもよい。
【0041】
「ヘテロアリール」は、水素原子、1〜13個の炭素原子、窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される1〜6個のヘテロ原子、ならびに少なくとも1つの芳香環を含む5〜14員の環系ラジカルを指す。本発明の目的のために、ヘテロアリールラジカルは、縮合したまたは架橋した関係を含んでもよい単環式、二環式、三環式、または四環式環系であり得;ヘテロアリールラジカルにおける窒素原子、炭素原子、または硫黄原子は、任意に酸化されていてもよく;窒素原子は任意に四級化されていてもよい。例には、アゼピニル、アクリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズインドリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル、(ベンゾチオフェニル)、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、カルバゾリル、シノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、1-オキシドピリジニル、1-オキシドピリミジニル、1-オキシドピラジニル、1-オキシドピリダジニル、1-フェニル-1H-ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、キヌクリジニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、およびチオフェニル(すなわち、チエニル)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、ヘテロアリール基は任意に置換されてもよい。
【0042】
「N-ヘテロアリール」は、少なくとも1つの窒素を含む上記に定義したヘテロアリールラジカルを指し、ここで、分子の残りに対するヘテロアアリールラジカルの結合点は、ヘテロアリールラジカルにおける窒素原子を通じている。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、N-ヘテロアリール基は、任意に置換されていてもよい。
【0043】
「ヘテロアリールアルキル」は、式-RbRfのラジカルを指し、式中、Rbは、上記に定義したアルキレン鎖であり、かつRfは上記に定義したヘテロアリールラジカルである。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、ヘテロアリールアルキル基は任意に置換されていてもよい。
【0044】
「ポリスルフィド」は、硫黄-硫黄結合によって連結された硫黄原子の鎖を指す。ポリスルフィドは、直鎖、分岐鎖、または環状であってもよく、n個の硫黄原子から構成されており、ここで、nは、本明細書に定義されている。ポリスルフィドラジカルの例には、ジスルフィド(n=2、すなわち-S-S-)、トリスルフィド(n=3、すなわち-S-S-S-)、およびテトラスルフィド(n=4、すなわち-S-S-S-S-)などが含まれるが、これらに限定されない。ポリスルフィド化合物は、1つ以上のポリスルフィドを含む。
【0045】
本明細書で用いられている用語「置換された」は、任意の上記の基(すなわち、アルキル、アルキレン、アルコキシ、アルキルアミノ、チオアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアミノ、ヘテロアリール、N-ヘテロアリール、および/またはヘテロアリールアルキル)を意味し、ここで、少なくとも1つの水素原子は、下記などだがこれらに限定されない非水素原子へ単結合によって置換される:F、Cl、Br、およびIなどのハロゲン原子;ヒドロキシル基、アルコキシ基、およびエステル基などの基における酸素原子;チオール基、チオアルキル基、スルホン基、スルホニル基、およびスルホキシド基などの基における硫黄原子;アミン、アミド、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン、ジアリールアミン、N-オキシド、イミド、およびエナミンなどの基における窒素原子;トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、およびトリアリールシリル基などの基におけるケイ素原子;並びに種々の他の基における他のヘテロ原子。「置換された」はまた、1つ以上の水素原子が、オキソ基、カルボニル基、カルボキシル基、およびエステル基における酸素;ならびにイミン、オキシム、ヒドラゾン、およびニトリルなどの基における窒素などのヘテロ原子に対するより高いオーダーの結合(例えば、二重結合または三重結合)によって置換された上記の任意の基も意味する。例えば、「置換された」には、1つ以上の水素原子が-NRgRh、-NRgC(=O)Rh、-NRgC(=O)NRgRh、-NRgC(=O)ORh、-NRgSO2Rh、-OC(=O)NRgRh、-ORg、-SR8、-SORg、-SO2R8、-OSO2Rg、-SO2ORg、=NSO2Rg、および-SO2NRgRhと置換された上記の任意の基が含まれる。「置換された」はまた、1つ以上の水素原子が-C(=O)Rg、-C(=O)ORg、-C(=O)NRgRh、-CH2SO2Rg、-CH2SO2NRgRhと置換された上記の任意の基も意味する。上記において、RgおよびRhは、同一または異別であり、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、チオアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロシクリル、N-ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、N-ヘテロアリール、および/またはヘテロアリールアルキルである。「置換された」はさらに、1つ以上の水素原子が、アミノ、シアノ、ヒドロキシル、イミノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、ハロ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、チオアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアミノ、オキシカルボニル、ハロアルキル、ヘテロシクリル、N-ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、N-ヘテロアリール、および/またはヘテロアリールアルキルの基に対する単結合によって置換された上記の任意の基を意味する。加えて、上記の各置換基はまた、1つ以上の上記の置換基と任意に置換されてもよい。
【0046】
「プロドラッグ」は、生理学的条件下でまたは本発明の生物活性のある化合物への加溶媒分解によって変換され得る化合物を示すことを意味する。従って、用語「プロドラッグ」は、医薬として許容し得る本発明の化合物の代謝前駆体を指す。プロドラッグは、それを必要とする対象に投与される場合に不活性であってもよいが、インビボで本発明の活性化合物に変換される。プロドラッグは典型的には、インビボで迅速に変換されて、本発明の親化合物を例えば血中における加水分解によって生じる。プロドラッグ化合物はしばしば、哺乳類生物における溶解度、組織適合性、または遅延性放出の利点を提供する(Bundgard, H., Design of Prodrugs (1985), pp. 7-9, 21-24 (Elsevier,
Amsterdam)参照)。プロドラッグに関する論議は、Higuchi, T., et al., A. CS.
Symposium Series, Vol. 14において、およびBioreversible Carriers
in Drug Design, Ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and
Pergamon Press, 1987において提供されている。
【0047】
用語「プロドラッグ」はまた、このようなプロドラッグが哺乳類対象に投与される場合に、本発明の活性化合物をインビボで放出する任意の共有結合した担体を含むことも意味する。本発明の化合物のプロドラッグは、修飾が所定の操作においてまたはインビボでのいずれかで、本発明の親化合物へと開裂されるような方法で、本発明の化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製されてもよい。プロドラッグには本発明の化合物が含まれ、ここで、ヒドロキシ基、アミノ基、またはメルカプト基は、本発明の化合物のプロドラッグが哺乳類対象に投与される場合に、遊離ヒドロキシ基、遊離アミノ基、または遊離メルカプト基をそれぞれ形成するよう開裂する任意の基に結合している。プロドラッグの例には、本発明の化合物およびその類似物におけるアルコールの酢酸誘導体、ギ酸誘導体、および安息香酸誘導体、またはアミン官能基のアミド誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書に開示される本発明は、異なる原子質量または質量数を有する原子によって置換される1つ以上の原子によって同位体標識されている構造(I)、(II)、および(III)の医薬として許容され得るすべての化合物を包含するよう意味する。開示された化合物に組み込まれることのできる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素、ヨウ素の同位体が含まれ、それぞれ例えば2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123I、および125Iなどである。これらの放射性標識した化合物は、例えば作用の部位もしくは様式、または作用の薬理学的に重要な部位に対する結合親和性を特徴づけることによって、化合物の有効性を決定または測定するのを助けるのに有用であり得る。ある同位体標識した構造(I)、(II)、および(III)の化合物、例えば、放射性同位体を組み込んでいる化合物は、薬剤および/または基質の組織分布研究において有用である。放射性同位体であるトリチウム、すなわち3H、および炭素-14、すなわち14Cは、組み込みの容易さおよび検出の迅速な手段の点で、この目的に特に有用である。
【0049】
「安定した化合物」および「安定した構造」は、反応混合物から有用な程度の純度への単離および有効な治療薬への製剤化に耐えるのに十分に頑強である化合物を示すことを意味する。
【0050】
「生物材料」および「生物物質」には、細胞、組織、臓器、生体、および動物(哺乳類を含む。)が含まれる。本発明の方法が、生体内に一部が留まっているか、または生体からもしくは生体全体に関して摘出されているかどうかにかかわらず、生体の一部において(細胞において、組織において、および/または1つ以上の臓器において)実施されてもよいことは考慮される。
【0051】
「細胞」には、哺乳類細胞が含まれるが、これに限定されない。哺乳類細胞には、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、フェレット、ウシ、ヒツジ、またはウマに由来するものが含まれるが、これらに限定されない。その上、本発明の細胞は二倍体であってもよいが、いくつかの場合においては、細胞は一倍体(性細胞)である。加えて、細胞は、倍数体、異数体、または無核であってもよい。細胞は、心臓、肺、腎臓、肝臓、骨髄(bone marrow)、膵臓、皮膚、骨、静脈、動脈、角膜、血液、小腸、大腸、能、脊髄(spinal
cord)、平滑筋、骨格筋、卵巣、精巣、子宮、臍帯などの特定の組織または臓器に由来することができる。ある実施態様において、細胞は、下記の細胞種のうちの1つとして特徴づけることができる:血小板、骨髄細胞、赤血球、リンパ球、脂肪細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、内分泌細胞、グリア細胞、神経細胞、分泌細胞、遮蔽機能細胞、収縮性細胞、吸収性細胞、粘膜細胞、角膜縁細胞(角膜由来)、幹細胞(全能性、多能性(pluripotent)、または多能性(multipotent))、未受精卵母細胞もしくは卵母細胞、または精子。
【0052】
「組織」および「臓器」は、それらの普通のかつ平易な意味に従って用いられる。組織は細胞から構成されるが、用語「組織」は、一定の種類の構造材料を形成する類似の細胞の凝集体を指す。その上、臓器は、特別な種類の組織である。ある実施態様において、組織または臓器は「単離されて」おり、生体内に存在しないことを意味する。
【0053】
「哺乳類」には、ヒトならびに、実験動物および家庭用ペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)などの飼育哺乳類と野生動物などの非飼育哺乳類との両方、ならびにこれらの類似物が含まれる。
【0054】
「任意の」または「任意に」は、状況に関してその後に説明される事象が生じても生じなくてもよく、かつ、説明に、該事象または状況が生じる場合および該事象または状況が生じない場合が含まれることを意味する。例えば、「任意に置換されたアリール」は、アリールラジカルが、置換されてもされなくてもよく、かつ説明に置換アリールラジカルおよび置換を有さないアリールラジカルの両方が含まれることを意味する。
【0055】
「医薬として許容し得る担体、希釈剤、または賦形剤」には、ヒトまたは飼育動物において使用するために許容し得るものとして米国食品医薬品局によって認可された任意のアジュバント、担体、賦形剤、滑沢剤、甘味料、希釈剤、保存料、色素/着色料、調味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定化剤、等張剤、溶媒、または乳化剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
「医薬として許容し得る塩」には、酸付加塩および塩基付加塩の両方が含まれる。
【0057】
「医薬組成物」は、本発明の化合物と、生物活性のある化合物を哺乳類、例えばヒトに送達するために当技術分野で一般的に許容される媒体とからなる製剤を指す。このような媒体には、そのための医薬として許容し得るすべての担体、希釈剤、または賦形剤が含まれる。
【0058】
「有効量」または「治療的有効量」は、哺乳類などの生物材料に投与される場合に、低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防する、以下に定義されるような治療を果たすのに十分な本発明の化合物の量を指す。「治療的有効量」を構成する本発明の化合物の量は、化合物、条件およびその重度、投与の様式、ならびに生物材料(例えば、治療されるべき哺乳類の齢)に応じて変動するであろうが、当業者の知識および本開示に対する関心を有する当業者によって、日常的に決定されることができる。例えば、一実施態様において、用語「有効量」は、測定可能な結果を達成することのできる量を指す。一実施態様において、「有効量」は例えば、制御された第2相または第3相臨床試験において医学的治療を必要とするヒト対象に投与される場合に、あらかじめ定義された臨床的終点(例えば、死亡)に関して統計的に有意な利点を生じる量である。有効量は、疾患または損傷に応じた生物物質の生存率を高め、または生物物質における停滞(stasis)または前停滞(pre-stasis)を誘導する量である。
【0059】
本明細書で用いられる「治療すること」または「治療」は、関心対象の疾患または容態を有する生物材料(例えば、哺乳類)における関心対象の疾患または容態の治療におよび、これには例えば下記が含まれる:
(i)特に、哺乳動物が該容態に罹患しやすいが、該容態に罹患しているとはまだ診断されていない場合、このような哺乳類において疾患または容態が生じるのを予防すること;
(ii)該疾患または容態を阻害すること、すなわち、その発症を抑止すること;
(iii)該疾患または容態を軽減すること、すなわち、該疾患または容態の退行を生じさせること;あるいは
(iv)該疾患または容態から結果として生じる症状を軽減すること、すなわち、潜在的な疾患または容態に向かうことなく疼痛を軽減すること。本明細書で使用される場合、用語「疾患」および「容態」は、相互に交換可能に用いられてもよく、または特定の病弊もしくは容態が、原因となる公知の作用因を有さなくてもよく(そのため、病因は、まだ作用していない。)、それゆえ、疾患としてまだ認識されていないが、望ましくない容態または症候群としてにすぎないものであり、ここで、多かれ少なかれ、具体的なセットの症状が臨床医によってすでに同定されている。
【0060】
用語「低酸素」および「低酸素性」は、通常を下回る酸素レベルを有する環境を指す。低酸素は、通常の生理学的レベルの酸素が細胞、組織、または臓器に供給されない場合に生じる。「酸素正常状態」は、問題となる特定の細胞種、細胞状態、または組織についての正常な生理学的レベルの酸素を指す。「無酸素」は、酸素がないことである。「低酸素性条件」は、細胞、臓器、または生体の低酸素症に至る条件である。本発明の目的のために、低酸素性条件には、酸素濃度が、正常な大気条件以下であり、20.8、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0%未満である条件が含まれる。あるいは、これらの数は、1気圧(101.3kPa)における大気の百分率を表し得る。「無酸素」は、酸素がないことである。
【0061】
本発明の化合物、またはその医薬として許容し得る塩は、1つ以上の非対称性中心を含んでもよく、従って、鏡像異性体、ジアステレオマー、および(R)-もしくは(S)-として、またはアミノ酸についての(D)-もしくは(L)-として無水立体化学の点で定義され得る他の立体異性形態を生じてもよい。本発明は、このような考えられ得るすべての異性体、ならびにこれらのラセミ形態および光学的に純粋な形態を含むことを意味する。
【0062】
「立体異性体」は、同一の結合によって結合した同一だが、相互に交換可能である異なる三次元構造を有する原子で構成された化合物を指す。本発明は、種々の立体異性体およびそれらの混合物を包含し、分子が互いに重ね合わせることのできない鏡像である2つの立体異性体を指す「鏡像異性体」を含む。
【0063】
「錯化剤」は、錯化剤の2つ以上の原子を通じて金属イオンを結合する分子、典型的には有機分子である。
【0064】
「共溶媒」は、一次溶媒に加えて混合物中に存在する任意の溶媒または化合物である。共溶媒は典型的には、溶質の溶解度を増加させまたは低下させるために添加される。
【0065】
本発明において用いられる化学的な命名プロトコールおよび構造図は、ACD/Name Version 9.07ソフトウェアプログラムおよび/またはChemDraw
Ultra Version 11.0ソフトウェア命名プログラム(CambridgeSoft)を用いて、I.U.P.A.Cの命名法系統に関して改変された形態である。
【0066】
上記に記載したとおり、本発明の一実施態様において、低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防するための方法が提供され、ここで、方法は、生物材料を有効量の構造(I):
【化4】
の化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグと接触させることを含み、
式中:
R1およびR2が各々独立して、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され;かつ
nが、2〜5の整数である。
【0067】
さらなる実施態様において、nは、2、3、または5である。他のさらなる実施態様において、nは4である。
【0068】
他のさらなる実施態様において、R1およびR2は各々、置換または非置換アリールである。ある実施態様において、R1およびR2は各々、置換または非置換フェニルである。ある実施態様において、化合物は、下記の構造(II):
【化5】
またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグを有し、
式中:
nは、2、3、4、または5であり;かつ
R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、R2d、およびR2eが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルである
【0069】
上記のより具体的な実施態様において、nは、2、3、または5である。ある実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化6】
のうちの1つを有する。
【0070】
上記の他のより具体的な実施態様において、nは4である。ある実施態様において、化合物は下記の構造:
【化7】
のうちの1つを有する。
【0071】
他のさらなる実施態様において、R1およびR2は各々置換または非置換アラルキルである。ある実施態様において、R1およびR2は各々、置換または非置換ベンジルである。ある実施態様において、化合物は下記の構造(III):
【化8】
またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグを有し、
式中:
nは、2、3、4、または5であり;かつ
R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、R2d、およびR2eが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルである。
【0072】
上記のより具体的な実施態様において、nは2、3、または5である。ある実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化9】
のうちの1つを有する。
【0073】
上記の他のより具体的な実施態様において、nは4である。ある実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化10】
のうちの1つを有する。
【0074】
他のさらなる実施態様において、R1およびR2は各々、置換または非置換ヘテロアリールである。ある実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化11】
のうちの1つを有する。
【0075】
他のさらなる実施態様において、R1およびR2は各々、置換または非置換ヘテロアリールアルキルである。ある実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化12】
のうちの1つを有する。
【0076】
他のさらなる実施態様において、生物材料を接触させることは、注射による、注入による、連続注入による、吸収による、吸収による、浸漬による、限局性灌流による、カテーテルを介する、または洗浄を介する、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸腔内、気管内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所的(topically)、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、眼内、皮下的、結膜下、経皮的、小胞内、粘膜的、心膜内、臍部内、眼内、経口的、局所的(locally)を含む
【0077】
他のさらなる実施態様において、低酸素性条件または虚血性条件は、生物材料に対する損傷、生物材料に有害な影響を与える疾患の発症もしくは進行、または生物材料の出血から結果として生じる。ある実施態様において、生物材料は、損傷前に、疾患の発症もしくは進行前に、または生物材料の出血前に化合物と接触する。ある実施態様において、損傷は、(手術などの)外部からの物理的力に由来する。ある実施態様において、生物材料は、損傷、疾患の発症もしくは進行、または生物材料における出血から結果として生じる障害または死滅から生物材料を保護する量および時間で、化合物と接触する。
【0078】
他のさらなる実施態様において、生物材料は、細胞、組織、臓器、生体、および動物からなる群から選択される。例えば、ある実施態様において、生物材料は動物である。ある実施態様において、動物は哺乳類である。ある実施態様において、哺乳類はヒトである。他の実施態様において、生物材料は血小板を含む。他の実施態様において、生物材料は移植されるべきものである。他の実施態様において、生物材料は、再灌流損傷の危険にある。他の実施態様において、生物材料は、出血性ショックの危険にある。
【0079】
他のさらなる実施態様において、低酸素性条件または虚血性条件が結果として、心筋梗塞、敗血症、脈管異常、硬変症、脈管の石灰化沈着、薬剤処理によって誘発される胃の損傷、熱傷、肺の損傷、好中球接着、白血球仲介性炎症、勃起不全、過敏性腸症候群、炎症後過敏症における抗侵害受容効果、急性冠症候群、心停止、計画心臓バイパス手術、うっ血性心不全、新生児の低酸素症/虚血、心筋梗塞性再灌流損傷、不安定性狭心症、血管形成術後、動脈瘤、外傷、脳卒中、出血性ショック、および/または失血を生じる。
【0080】
本発明の別の実施態様において、下記の構造(IV):
【化13】
を有する化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグが提供され、
式中:
R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、およびR2dが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルであり、但し、下記を条件とする:
(a)R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、およびR2dがすべて水素というわけではなく;
(b)R1b、R1c、R2b、およびR2cがすべて水素である場合、R1a、R1d、R2a、およびR2d がすべてクロロというわけではなく;かつ
(c)R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、およびR2cがすべて水素である場合、R1dおよびR2dが両方とも、-CO2Hまたは-CO2CH3ではない。
【0081】
上記のさらなる実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化14】
のうちの1つを有する。
【0082】
本発明の別の実施態様において、下記の構造(V):
【化15】
を有する化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグが提供され、
式中:
R3およびR4は各々独立して、置換または非置換ヘテロアリールからなる群から選択され、但し、R3およびR4が両方とも置換または非置換イミダゾリジン-2,4-ジオネイルではないことを条件とする。
【0083】
上記のさらなる実施態様において、R3およびR4が各々独立して、置換または非置換イミダゾリル、置換または非置換オキサゾリル、置換または非置換テトラゾリル、および置換または非置換ピリジニルからなる群から選択される。例えば、いくつかの実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化16】
のうちの1つを有する。
【0084】
本発明の別の実施態様において、構造(IV)の化合物との組み合わせで医薬として許容し得る担体または希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0085】
本発明の別の実施態様において、構造(V)の化合物との組み合わせで医薬として許容し得る担体または希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0086】
上記のさらなる実施態様において、構造(IV)または構造(V)の化合物を含む医薬組成物はさらに、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の錯化剤、および/または1つ以上の共溶媒を含む。
【0087】
上記に示された構造(I)、(II)、(III)、(IV)、または(V)の化合物の任意の実施態様、および上記に示された構造(I)、(II)、(III)、(IV)、または(V)の化合物におけるR1、R2、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R3、またはR4の基について本明細書で示された任意の具体的な置換基が、構造(I)、(II)、(III)、(IV)、または(V)の化合物の他の実施態様および/または置換基と独立して組み合わされて、上記に具体的に示されていない本発明の実施態様を形成し得ることは理解される。加えて、特定の実施態様および/または請求項における任意の特定のR1、R2、R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、R2d、R3、またはR4の基について置換基のリストが列挙される事象においては、各個々の置換基が特定の実施態様および/または請求項から欠失されてもよく、および置換基の残りのリストが本発明の範囲内であると考えられるであろうことは理解される。
【0088】
本明細書において、図示される式の置換基および/または変数の組み合わせは、このような寄与が結果として安定した化合物を生じる場合にのみ許されることは理解される。
【0089】
また、本明細書に説明されたプロセスにおいて、中間体化合物の官能基が、適切な保護基によって保護される必要があり得ることも当業者によって認識されるであろう。このような官能基には、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、およびカルボン酸が含まれる。ヒドロキシに適した保護基には、トリアルキルシリルまたはジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシニル、またはトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジル、およびこれらの類似物が含まれる。アミノ、アミジノ、およびグアニジノに適した保護基には、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、およびこれらの類似物が含まれる。メルカプトに適した保護基には、-C(O)-R”(式中、R”は、アルキル、アリール、またはアリールアルキルである。)、p-メトキシベンジル、トリチル、およびこれらの類似物が含まれる。カルボン酸に適した保護基には、アルキルエステル、アリールエステル、またはアリールアルキルエステルが含まれる。保護基は、当業者に公知でありおよび本明細書に記載されている標準的な技術に従って付加しまたは除去してもよい。保護基の使用は、Green, T.W. and
P. G. M. Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis (1999), 3rd Ed., Wileyに詳細に記載されている。当業者が認めるであろうように、保護基はまた、Wang樹脂、Rink樹脂、または2-クロロトリチル-クロリド樹脂などのポリマー樹脂であってもよい。
【0090】
投与の目的のために、本発明の化合物は、未加工の化学物質として投与されてもよく、または医薬組成物として製剤化されてもよい。本発明の医薬組成物は、構造(I)、(II)、(III)、(IV)、または(V)の化合物と、医薬として許容し得る担体、希釈剤、または賦形剤とを含む。構造(I)、(II)、(III)、(IV)、または(V)の化合物は、関心対象の特定の疾患または容態を治療するのに効果的な量で、すなわち低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防するのに十分な量で、好ましくは許容され得る毒性を有して、組成物中に存在する。構造(I)、(II)、(III)、(IV)、または(V)の化合物のスルフィド放出活性は、例えば下記の実施例において説明されるように、当業者によって決定することができる。適切な濃度および薬用量は、当業者によって容易に決定することができる。
【0091】
純粋な形態におけるまたは適切な医薬組成物における本発明の化合物またはその医薬として許容し得る塩の投与は、類似の有用性を供するための許容される任意の様式での作用因の投与を介して実施されることができる。本発明の医薬組成物は、本発明の化合物を適切な医薬として許容し得る担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせることによって調製されることができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏、溶液、坐剤、注射液、吸入薬、ゲル、ミクロスフェア、およびエアロゾルなどの固体、半固体、液体、または気体の形態における調製物へと製剤化されてもよい。このような医薬組成物を投与する典型的な経路には、経口的、局所的、経皮的、吸入、非経口的、舌下、頬側、直腸、膣、および鼻内が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で用いられる用語非経口的には、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または注入技術が含まれる。本発明の医薬組成物は、患者への組成物の投与の際に、本明細書に含まれる活性成分が生物に利用可能であるよう製剤化される。対象または患者に投与されるであろう組成物は、1つ以上の薬用量単位の形態をとり、ここで、例えば錠剤は単一薬用量単位であり得、エアロゾル形態にある本発明の化合物の容器は、複数の薬用量単位を保持し得る。このような薬用量形態を調製する実際の方法は、当業者に公知であり、または明らかであろうし;例えば、Remington: The
Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition (Philadelphia College of
Pharmacy and Science, 2005)を参照されたい。投与されるべき組成物は、任意の事象において、本発明の教示に従った関心対象の疾患または容態の治療のための治療的有効量の本発明の化合物、またはその医薬として許容し得る塩を含むであろう。
【0092】
本発明の化合物を用いて、カルコゲニド(米国特許出願公報第2008/0199541号)またはカルコゲニド組成物を用いて治療された種々の疾患および障害を治療しまたは予防してもよい。例えば、硫化ナトリウムを用いた治療は、心筋梗塞、敗血症(Hui, et al J
Infect (2003):47:155参照)、うっ血性心不全、硬変症における血管異常(Fiorucci S, et
al, Hepatology. (2005) 42:539参照)、のための有望な治療として、心臓保護薬(Geng, et al,
Biochem and Biophy Res Com (2004) 313:362参照)として、神経保護薬(Qu K. et al,
Stroke. (2006) 889参照)として、心筋虚血再灌流損傷(Johansen et al,
Basic Res Cardiol (2006) 101 : 53参照)において、血管の石灰化を低下させるために(Wu et al, Acta
Pharmacol Sin. (2006) 27:299参照)、薬剤治療によって誘発される胃の損傷を低下させるために(Fiorucci, S. et
al, Gastroenterology (2005) 129:1210参照)、好中球接着を低下させるために、および白血球仲介性炎症を調節するために(Zanardo et al,
FASEB J. (2006) 20: 2118-2120参照)、勃起不全(Srilatha B. et al, Eur J
Pharmacol. (2006) 535:280参照)、過敏性腸症候群(Distrutti E.,
et al, JPET (2006) 319:447参照)において、ならびに炎症後過敏症における抗侵害受容効果について、動物モデルにおいて用いられてきた。
【0093】
上記のように、本発明の化合物を用いて、虚血性条件または低酸素性条件に曝露された生物物質の損傷を治療しまたは予防してもよい。一実施態様において、これらの方法を用いて、損傷、外傷、または救急救命治療の経験のある患者、これらを受けている患者、またはこれらにかかりやすい患者を治療する。損傷は、火傷、創傷、切断、銃創、または手術外傷、腹部手術、前立腺手術などの外部侵襲、敗血症ショック、脳卒中、または心停止などの内部侵襲、循環における急性低下を結果的に生じる心臓発作、あるいは冷却または放射線への曝露などの非侵襲的ストレスによる循環の低下によって生じ得る。細胞レベルにおいて、損傷はしばしば、低酸素への細胞、組織、および/または臓器の曝露を結果として生じ、それによりプログラムされた細胞死、または「アポトーシス」の誘導を結果的に生じる。
【0094】
それゆえ、本発明は、組織、臓器、四肢、および生体全体でさえ、これらを損傷の有害な効果から保護する方法として有効量の本発明の化合物と接触させることを考慮する。医療的注意を容易に得ることができない具体的なシナリオにおいて、このことは、患者が適切な医療的注意を受けることができるまで、患者にとって「時間を稼ぐ」ことができる。本発明はまた、遅延した創傷治癒および組織再生を結果的に生じ得る生物学的プロセスの予防/遅延によって組織再生および創傷治癒を誘導するための方法も考慮に入れられる。この文脈において、肢または生体に対してかなりの創傷があるシナリオにおいて、生物物質を本発明の化合物と接触させることは、治癒および再生を阻害する生物プロセスを管理することによって創傷治癒および組織再生プロセスを助ける。創傷治癒に加えて、本発明の方法は、心停止または脳卒中などの外傷および出血性ショックを予防しまたは治療するよう実施することができる。本発明は、開胸術、開腹術、脾臓処理などの救急手術手順または心臓手術、動脈瘤、手術、脳手術、およびこれらの類似のものに由来する外傷の危険に関して重要である。
【0095】
ある実施態様において、本発明の方法は、生存率を高め、心停止または脳卒中から結果として生じる虚血性損傷を予防するよう実施することができる。従って、一実施態様において、本発明には、心筋梗塞、心停止、または脳卒中の前、後、または前後の両方において有効量の本発明の化合物を患者に提供することを含む、心停止または脳卒中を罹患しているまたはその危険にある患者における生存率を高めまたは虚血性損傷を低下させる方法が含まれる。
【0096】
ある実施態様において、本発明の方法には、生物材料、例えば虚血性損傷もしくは低酸素性損傷または疾患侵襲の前の患者を前治療することが含まれる。これらの方法は、虚血または低酸素症を生じる可能性のある損傷または疾患が前もって計画されもしくは選択され、または生じそうであることが前もって予測される場合に使用することができる。例には、失血が自然にまたは手順の結果として生じ得る大手術、血液の酸素化が欠陥を生じさせ得るまたは血液の血管送達が(冠動脈バイパス移植片(CABG)手術の設定などにおいて)低下し得る、または臓器移植を必要とするレシピエントに輸送および移植するためのドナー臓器の摘出前の臓器ドナーの治療における心肺バイパスが含まれるが、これらに限定されない。例には、損傷または疾患の進行の危険が(例えば、血管移植、出血性動脈瘤、出血性発作後の、大外傷または失血、うっ血性心不全後の不安定狭心症の脈絡において)内在する医学的容態、あるいは医学的診断試験を用いて危険であると診断することのできる医学的容態が含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
その上、本発明の追加的な実施態様は、生存率を高め、適切な血液供給のない状態などから細胞または組織に対する酸素化に関する失血または他の欠失から、不可逆的な組織損傷を予防することに関する。このことは、例えば、実際の失血の結果であり得、あるいは細胞もしくは組織への血流の遮断を生じさせ、生体において局所的にもしくは全体的に血圧を低下させ、血中で運搬される酸素の量を低下させ、または血中の酸素運搬細胞数を減少させる容態または疾患に由来し得る。関与し得る容態および疾患には、血栓および塞栓、嚢胞、増殖、腫瘍、貧血(鎌状赤血球性貧血を含む。)、血友病、他の血液凝固疾患(例えばフォン・ヴィルブランド、または特発性血小板減少性紫斑病)、ならびに粥状硬化が含まれるが、これらに限定されない。このような容態および疾患にはまた、損傷、疾患、もしくは容態のために、生体における細胞もしくは組織について本質的に低酸素性条件または無酸素性条件を作るものが含まれる。
【0098】
一実施態様において、本発明は、出血性ショックを受けている生物材料の生存率を高め、生物材料に対する損傷または障害を予防する方法を提供し、方法には、出血性ショックの危険にあるまたはその状態にある生物材料を有効量の本発明の化合物とできるだけ実用的に、理想的には損傷の1時間以内に接触させることが含まれる。この方法によって、患者は、損傷の初期原因に対処できる制御された環境(例えば、手術)へと移ることができ、次に患者は、制御された様式で正常な機能へと回復することができる。この適応のために、「ゴールデンアワー」と呼ばれる損傷後の最初の1時間は、成功した結果にとって決定的である。
【0099】
種々の他の実施態様において、本発明の方法は、虚血または低酸素と関連した神経変性疾患の治療において、低体温の治療において、過剰増殖障害の治療において、および免疫障害の治療において用いられてもよい。種々の他の実施態様において、生物学的容態とは、下記のうちの任意の1つまたは合併症である:神経学的疾患、心臓血管疾患、代謝性疾患、感染性疾患、肺疾患、遺伝子疾患、自己免疫疾患、および免疫関連疾患。
【0100】
ある実施態様において、本発明の方法を用いて、例えば単離された細胞、組織、および臓器を含む、低酸素性条件または虚血性条件に供された生体外生物物質の生存率を高める。このような生体外生物材料の具体的な例には、血小板および他の血液生成物、並びに移植されるべき組織および臓器が含まれる。
【0101】
一実施態様において、例えば、細胞株または実験用生体が例えば凍結保存および貯蔵の間に低酸素性条件または虚血性条件に意図的に供される場合、本発明の方法を用いて、実験または研究の脈絡における生物材料の生存率を高めてもよい。本発明の方法を用いて、ドナー組織および臓器の生存率を高め、それによりドナー組織がレシピエントに移植されて血流が回復されなければならない前の時間を延長してもよい。これらの方法は、他の保存料および酸素灌流の使用を含む近年の保存方法と組み合わせてもよい。本発明は、貯蔵の間に、特定の実施態様においては無酸素性環境に保存された血小板を含む血小板を、有効量の本発明の化合物と接触させることを含む、血小板の生存率を高める方法を提供する。
【0102】
本発明はまた、非生存の生物材料を保存することおよび非生物材料の保存期間を維持しまたは延長することの両方のための方法および組成物も提供する。これらの方法は、非生存の生物物質または非生物材料を本発明の化合物と接触させることを含む。
【0103】
ある実施態様において、生物材料に提供される本発明の化合物の量は、約、少なくとも、少なくとも約、または多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、441、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000mg、mg/kg、もしくはmg/m2、または本明細書で導き出せる任意の範囲である。あるいは、量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、441、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、
770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000 mMもしくはM、または本明細書で導き出せる任意の範囲として表してもよい。
【0104】
本発明の種々の実施態様において、生物材料は、本発明の化合物に、約、少なくとも、少なくとも約、または多くとも約30秒、1, 2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日またはそれより長く、および本明細書の任意の範囲もしくは組み合わせの間、曝露される。
【0105】
さらにその上、投与が静脈内である場合、下記のパラメータを適用してもよいことが考慮に入れられる。約、少なくとも約、または多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100 gtts/分またはμgtts/分、あるいは本明細書で導き出せる任意の範囲。いくつかの実施態様において、溶液の量は、本発明の化合物の濃度に応じて、容積によって具体化される。時間の量は、約、短くとも約、または長くとも約1, 2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60分、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24 時間、1、2、3、4、5、6、7日、1、2、3、4、5週間、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月、あるいは本明細書で導き出せる任意の範囲であり得る。
【0106】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、441、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000 mLもしくはL、または本明細書における任意の範囲の容積を、全体にわたってまたは単一のセッションにおいて投与してもよい。
【0107】
下記の反応スキームは、本発明の代表的な化合物、例えば構造(I):
【化17】
の化合物を製造する方法を示し、式中、R1、R2、およびnは、上記に定義したとおりである。当業者が、類似の方法によってまたは当業者に公知の他の方法を組み合わせることによってこれらの化合物を製造することができるかもしれないことは理解される。当業者が、以下に説明される類似の様式において、以下に具体的に説明されていない構造(I)の他の化合物を、適切な出発成分を用いて必要に応じて合成に関するパラメータを変更することによって製造することができるであろうことも理解される。一般に、出発成分は、Sigma Aldrich、Lancaster Synthesis, Inc、Maybridge、Matrix Scientific、TCI、およびFluorochem USAなどの源から得られてもよく、または当業者に公知の源(例えば、Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure,
5th edition (Wiley, December 2000)参照)に従って合成されてもよく、または本発明において説明されるとおり調製されてもよい。
反応スキーム1
【化18】
【0108】
反応スキーム2において示されるように、nが2である構造(I)の化合物(化合物2)は、Sonavane et al. (Tetrahedron Letters 2007, 48
(34), 6048-6050)によって説明される手順の変更によって調製することができる。R1が本明細書で定義されるとおりである反応スキーム1に関して、構造1の化合物は、購入することができまたは当業者に公知の方法に従って調製することができ(例えば、以下の反応スキーム3参照)、適切な溶媒における硫黄粉末、硫化ナトリウム、および臭化ジデシルジメチル-アンモニウム(DDAB)と反応させて、構造2のジスルフィドを生じることができる。
反応スキーム2
【化19】
【0109】
反応スキーム2において示されるように、nが3である構造(I)の化合物(化合物2)およびnが4である構造(I)の化合物(化合物4)は、Derbesy et al. (Tetrahedron Letters 1994, 35 (30), 5381-5384)によって説明される手順の変法によって調製することができる。まず、構造1の化合物を購入しまたは当業者に公知の方法に従って調製して(例えば、以下の反応スキーム3参照)、適切な溶媒系、例えばピリジン(Py)およびジエチルエーテル(Et2O)において、低い温度で塩化硫黄(CISSCI)と反応させて、構造2のトリスルフィド化合物を得ることができる。次に、構造3の化合物を購入してまたは当業者に公知の方法に従って調製して、適切な溶媒系、例えばピリジンおよびジエチルエーテルにおいて、低い温度で構造2の化合物と反応させて、構造4の化合物を生じることができる。当業者は、nが4ではない構造(I)の他の化合物を、上記の手順の変法によってまたは当業者に公知の他の方法を通じて調製することができることを認めるであろう。
反応スキーム3
【化20】
【0110】
反応スキーム1および2に関するいくつかの実施態様において、化合物1のR1は、アラルキル基またはヘテロアリールアルキル基である。これらの実施態様において、構造1の化合物は、市販のものを購入してもよいか、またはAがアリール基もしくはヘテロアリール基である反応スキーム3に従って調製してもよい。簡潔には、構造5の化合物は、DMFなどの適切な溶媒においてチオアート6で処理され、構造7の化合物を得ることができる。次に、構造7の化合物を、THFまたはH2O/メタノールなどの適切な溶媒においてジメチルアミンまたは炭酸カリウムなどの適切な塩基で処理して、構造8の化合物を得ることができる。
反応スキーム4
【化21】
【0111】
nが5である構造(I)の化合物(化合物10)は、直接的な挿入アプローチによって調製することができる(Hou, Y.,
Abu-Yousef, L, Harpp, D. Tetrahedron Letters 41 (2000), 7809-7812参照)。R1およびR2が本明細書で定義されるとおりである反応スキーム4に関して、構造9のジスルフィド化合物を購入し、または当業者に公知の方法に従って調製し、ジクロロメタンなどの適切な溶媒において1-クロロ-3-トリチルトリスルファンと反応させて、構造10のペンタスルフィドを生じる。
【0112】
下記の実施例は、説明の目的のために提供され、これに限定されない。
【0113】
実施例
実施例1
代表的なジスルフィド化合物の合成
下記のジスルフィド化合物を、下記の一般的な手順によって上記の反応スキームに従って調製する:水(1.25mL)における硫黄粉末(2.5mmol)および硫化ナトリウム(5mmol)の混合物を50℃で0.5時間激しく撹拌した後、室温に冷却した。この混合物に、臭化ジデシルジメチル-アンモニウム(DDAB、4モル%)を添加した後、クロロホルム(1.25mL)における臭化物(すなわち、R1-Br)(5mmol)を添加した。室温で一晩撹拌した後、この反応混合物を水(10mL)に注ぎ、ジエチルエーテル(15mL×3)で抽出した。組み合わせた抽出物を水(10mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、乾燥するまで蒸発させた。所望のジスルフィドを、10%CH2Cl2/ヘキサンを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【表1】
【0114】
実施例2
代表的なトリスルフィド化合物の合成
下記のトリスルフィド化合物を、上記の反応スキーム2に従って調製する。
【表2】
【0115】
実施例3
代表的なテトラスルフィド化合物の合成
下記のテトラスルフィド化合物を、R1およびR2が本明細書に定義されるとおりである上記の反応スキームに従って、下記の一般的な手順によって調製する:無水ジエチルエーテル(12.5mL)におけるメルカプタン(すなわち、R1-SH)(5mmol)およびピリジン(5mmol)の溶液を0.5時間かけて、25mLの無水エーテルにおける塩化硫黄(5mmol)の撹拌した溶液(-78℃)に滴下して添加した。反応混合物を-78℃で0.5時間アルゴン下で撹拌した後、無水ジエチルエーテル(12.5mL)における第二のメルカプタン(すなわちR2-SH)(5mmol)およびピリジン(5mmol)を添加した。-78℃でさらに0.5時間撹拌した後、反応物を水(25mL)の添加によって急冷し、室温に加温させておいた。有機層を分離し、水性洗浄液のpHがほぼ中性になるまで、水(25mL)で数回洗浄した。有機層を乾燥するまで蒸発させた。所望のポリスルフィドをシリカゲルカラムクロマトグラフィー、ヘキサンからの再結晶、または分取HPLC(カラム:Phenomenex、250×10mm、10ミクロ、Luna 10μ)のいずれかによって精製した。
【表3】
【0116】
実施例4
本発明のペンタスルフィド化合物
下記のペンタスルフィド化合物を、上記の反応スキーム4に従って調製する。
【表4】
【0117】
実施例5
モノブロモビマン誘導体化を介したHEPES緩衝液におけるポリスルフィド化合物からのスルフィド放出の分析
化合物(3-1)、(3-2)、および(3-3)を90:10のエタノール:PEG(ポリエチレングリコール)-300+0.1%TFA(トリフルオロ酢酸)に40mMの濃度に溶解した。このストック溶液をHEPES緩衝液(50mM、pH8.0)において4.2mMの濃度にさらに希釈した。次に、試験化合物をHEPES(50mM、pH8.0)に385μMの終濃度で添加した。試験化合物を有するまたは有さない200μLのHEPESを、200μLのモノブロモビマン(10mM)および200μLのHEPES(50mM、pH8.0)を含むガラスバイアルに、試験化合物の添加後の下記の時点で添加した:10分、30分、および120分。バイアルを軌道振蘯機において正確に10分間インキュベートした後、2mLの酢酸エチルを添加し、最短でも10分間転がした。次に、バイアルを1200rpmで7〜10分間遠心分離した後、1mLの有機相を蒸発バイアルに移した。次に、有機相を窒素流の下で乾燥させ、アセトニトリルに取り、HPLCによって分析した。種々のインキュベーション時間におけるスルフィド濃度を図1に示す。
【0118】
実施例6
モノブロモビマン誘導体化を介した緩衝液+グルタチオンにおけるポリスルフィド化合物からのスルフィド放出の分析
化合物(3-1)、(3-2)、および(3-3)を90:10のエタノール:PEG(ポリエチレングリコール)-300+0.1%TFA(トリフルオロ酢酸)において40mMの濃度に溶解した。このストック溶液をHEPES緩衝液(50mM、pH8.0)において4.2mMの濃度にさらに希釈した。次に、試験化合物をHEPESまたはHEPES+グルタチオン(GSH、500μM)に385μMの終濃度で添加した。試験化合物を有するまたは有さない200μLのHEPES/HEPES+GSHを、200μLのモノブロモビマン(10mM)および200μLのHEPES(50mM、pH8.0)を含むガラスバイアルに、試験化合物の添加後の下記の時点で添加した:10分、30分、および120分。バイアルを軌道振蘯機において正確に10分間インキュベートした後、2mLの酢酸エチルを添加し、最短でも10分間転がした。次に、バイアルを1200rpmで7〜10分間遠心分離した後、1mLの有機相を蒸発バイアルへと移した。次に、有機相を窒素流の下で乾燥させ、アセトニトリルに取り、HPLCによって分析した。種々のインキュベーション時間におけるスルフィド濃度を図2および図3に示す。
【0119】
実施例7
H2Sプローブを介した緩衝液+グルタチオンにおけるポリスルフィド化合物からのスルフィド放出の分析
反応容器として機能する機器は、閉鎖型チャンバー呼吸計(Oroboros oxygraph O2k)であった。呼吸計は、チャンバーフロア近くで溶液酸素濃度をモニターするためのポーラログラフ酸素センサー(POS)を各々固定された16mm内径の二重パイレックス(登録商標)チャンバーを有しており、各々、15.8mmの外径のPVDFまたはPEEKストッパーを有しており、このストッパーは、限定された酸素メモリを呈し、チャンバー容積を1〜5mLに調整するよう挿入することができる材料である。ストッパーは、1mmの直径の注射ポートと、PHSSおよびpH電極を保持するための2つの2.5mmポートを有していた。チャンバーに挿入されると、液相の上の空気または気体がすべて、注射ポートを通じてチャンバーから除去され、チャンバーに液体溶液のみを残した。
【0120】
スルフィド放出化合物(SRC)をアッセイするためのプロトコールは、まず、スルフィドストックを0.5〜40μMで連続的に添加することによって、50μMのDPTAを含む2mLの無酸素性のリン酸緩衝塩類溶液(PBS)で満たしたチャンバーにおいて、Na2Sを用いてPHSSを較正することであった。較正が一旦完了すると、チャンバー溶液をまず無酸素性PBSおよびDPTAと置換した後、関心対象のSRCをほぼ400μMの濃度で添加して、H2S放出の背景割合を得、通常無視できる割合を観察した。およそ5分後、500μMのグルタチオン(GSH)の注射をして、H2S放出を触媒した。結果において還元型GSHとSRCとの反応はポリチオールSRCを分解し、それによりH2Sを溶液中に放出し、PHSSを用いて測定した。H2S放出の初期速度、放出が完了した場合のチャンバーにおけるH2Sの程度、および放出持続時間はすべて、各SRCを特徴づけるために得られた。種々の化合物についての80分間にわたるH2S放出の量を図4にまとめる。
【0121】
実施例8
モノブロモビマン誘導体化を介したラット鮮血におけるポリスルフィド化合物からのスルフィド放出の分析
化合物(3-1)、(3-2)、および(3-3)を90:10のエタノール:PEG(ポリエチレングリコール)-300+0.1%TFA(トリフルオロ酢酸)において40mMの濃度に溶解した。このストック溶液を、HEPES緩衝液(50mM、pH8.0)において4.2mMの濃度にさらに希釈した。硫化ナトリウムを0.9%NaClにおいて4.2mMの濃度に希釈した。次に、試験化合物を385μMの終濃度でラット鮮血に添加した。また、血液に希釈ビヒクル(90:10のエタノール:PEG-300+0.1%TFAまたは40:40:20のアセトニトリル:アセトン:PEG-300+0.1%TFA)を対照として加えた。試験化合物を加えた200μLの血液を、200μLのモノブロモビマン(10mM)および200μLのHEPES(50mM、pH8.0)を含むガラスバイアルに、加えた後の下記の時点で添加した:0分、10分、20分、30分、40分、50分、60分、80分、および110分。未処理の血液またはビヒクルを加えた血液を反応混合物に下記の時点で添加した:0分、30分、および110分。未処理の/加えた血液または加えた媒体の添加後、バイアルを軌道振蘯機において正確に10分間インキュベートした後、2mLの酢酸エチルを添加し、最短でも10分間転がした。次に、バイアルを1200rpmで7〜10分間遠心分離した後、1mLの有機相を蒸発バイアルへと移した。次に、有機相を窒素流の下で乾燥させ、アセトニトリルに取り、HPLCによって分析した。種々のインキュベート時間におけるスルフィド濃度を図5に示す。
【0122】
実施例9
ポリスルフィド化合物の投与後のラット血中スルフィドの検出
化合物(3-1)、(3-5)、(3-7)、(3-8)、または硫化ナトリウムの投与後のラット血中のスルフィドレベルを測定した。結果を図6〜図11に示す。下記の例は、ラットにおける化合物(3-1)の投与を示す。実験は、9〜10週齢の雄Sprague Dawleyラット(276〜300g)(Charles River Laboratory, Boston
Massachusetts)からなる3〜4個体の群を用いて、頚静脈カテーテル(JVC)および大腿静脈カテーテル(FVC)により実施した。実験手順の開始前1〜3日間、動物を温度および湿度の制御された環境において回復させおよび順化させた。食餌および水を自由摂取で提供した。
【0123】
基線血液試料(最大0.4mL)を各ラットから頚静脈カニューレを通じて、23gルアースタブアダプターで固定したヘパリンコーティングした1mL注射器に収集した。試料採取後、対応する容積の20:1の塩類溶液:へパリンを、頚静脈カニューレを通じて動物にゆっくりと注射した。ビヒクル(EtOH/PEG300+0.1%クエン酸)における化合物(3-1)の急速投与(7.5mg/kg静脈内注射、15mg/kg静脈内注射、30mg/kg静脈内注射、または60mg/kg静脈内注射)を、大腿静脈カテーテルを通じて注射した。投与10分後、30分後、120分後、および24時間後、48時間後に、頚静脈カニューレを介して、23gルアースタブアダプターを有するヘパリンコーティングした1mL注射器を用いて、血液(最大0.4mL)を収集した。試料採取後、対応する容積の20:1(塩類溶液:ヘパリン)を、頚静脈カニューレを通じて動物にゆっくりと注射した。
【0124】
血液試料を、本明細書において説明したとおり即時処理した。簡潔には、200μLの血液をモノブロモビマン誘導体化試薬のバイアルに添加した。バイアルを軌道振蘯機に配置した。酢酸エチルを各試料に添加し回転させた。バイアルを転がし機に最短でも10分間配置したが、60分間以下であり、その後遠心分離した。各試料の有機相の試料を蒸発バイアルに入れ、窒素下で乾燥させた、48時間血液から回収したスルフィドレベルをHPLCによって測定した。化合物の血漿濃度対時間のプロットを構築した。静脈内投与後の化合物の基本的な薬物動態パラメータを、WinNonlin.Pharmacokinetics分析ソフトウェアを用いた結晶データの非区画化分析(NCA)から得た。
【0125】
実施例10
マウス肝臓虚血-再灌流損傷モデルにおける肝損傷からの細胞保護利点の決定
肝臓虚血-再灌流(I/R)損傷のモデルにおける細胞保護利点を提供する化合物(3-1)の能力をマウスにおいて試験した。本研究において、化合物(3-1)の肝臓虚血後および5時間の再灌流期の直前の腹腔内急速投与が、血清において測定された肝トランスアミナーゼであるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)を低下させることが示された。対照的に、ビヒクルによる処理は、肝I/R損傷における保護的利点を何ら提供しなかった。
【0126】
本研究において用いられたマウスは、8〜10週齢のC57-BL6/Jマウス(Jackson Laboratory, Bar Harbor, Maine)であった。食餌および水を自由摂取で提供した。実験手順の開始前に、試験動物を温度および湿度の制御された環境において順化させておいた。
【0127】
マウスをケタミンおよびキシラジンで麻酔し、手術手順の間に加温しながら維持して、肝虚血-再灌流(I/R)損傷を誘発させた。具体的には、正中線切開を実施して、肝臓を露出させ、ヘパリンを注射して血液凝固を予防した。肝動脈および門脈の両方を微小動脈瘤クランプで挟み、肝臓の左葉および中央葉を虚血にした。具体的には、虚血は45分間進行し、肝臓は、その元の位置で腹腔において維持され、0.9%正常塩類溶液で浸漬したガーゼで湿気を保った。対照マウスは、偽手術を受けたが、肝血流は微小動脈瘤クランプを用いて減少させなかった。5時間の肝再灌流の後、分光光度計および市販の試薬(Sigma-Aldrich)を用いて血清肝トランスアミナーゼレベル(ALT)を試験した。
【0128】
マウス肝虚血-再灌流損傷試験動物を4群に無作為に分けた。第1群:ビヒクル(EtOH:PEG300+0.1%クエン酸)で処理;第2群:7mg/kgの化合物(3-1)で処理;第3群:15.0mg/kgの化合物(3-1)で処理。図12に示すように、ALTレベルは、7mg/kgにおいて統計的に有意な低下に到達した。ALTレベルは、ビヒクルと比較して、2つの処理群(7.0mg/kgおよび15.0mg/kg)において低下した。
【0129】
実施例11
マウス心筋虚血再灌流モデルにおける心臓保護利点
心筋虚血-再灌流(I/R)損傷モデルにおける心臓保護利点を提供する化合物(3-1)の能力をマウスにおいて試験した。本研究において、虚血後および24時間の再灌流期の5分前に左心室腔へ化合物(3-1)を急速投与すると、心筋虚血が低下し、危険面積の百分率としての心筋梗塞の大きさが減少したことが示される。本研究において用いたマウスは、8〜10週齢のC57-BL6/Jマウス(Jackson Laboratory, Bar Harbor, Maine)であった。食餌および水を自由摂取で提供した。試験動物は、実験手順の開始前に温度および湿度の制御された環境において順化させておいた。
【0130】
マウスをケタミンおよびペントバルビタールナトリウムで麻酔し、手術手順の間に加温しながら維持して、心筋虚血-再灌流(I/R)損傷を誘発させた。マウスの腹側を手術台に置き、挿管し、Model 683齧歯類換気装置(一回換気量:2.2mL、呼吸数:100%の酸素供給を用いて換気装置側部ポートを介して1分間あたり122回)(Harvard Apparatus)に接続した。胸部を開き、近位の左の主要な冠動脈を露出させ、結紮した。心筋および冠動脈の閉塞を30分間維持した後、縫合糸を除去し、24時間再灌流させた。
【0131】
虚血後の24時間の再灌流の後、マウスを麻酔し、挿管し、齧歯類換気装置に接続した。総頚動脈に通したカテーテルにエバンスブルー色素を注射した。正中線胸骨切開術を実施し、左の主要な冠動脈を先の結紮と同じ位置で再結紮した。虚血区域の非虚血区域からの分離をエバンスブルー色素で可視化し、心臓を迅速に摘出し、5枚の1mm切片に短軸に沿って連続的に分け、1.0%の塩化2,3,5-トリフェニルテトラゾリウム(Sigma-Aldrich)において37℃で5分間インキュベートし、危険区域内の生心筋および非生心筋を分離した。5枚の心筋切片(1mm)を各々秤量し、梗塞の面積、危険にある面積(AAR)、および非虚血性左心室を、試料同一性に対して盲検の観察者によってコンピュータ支援型面積測定を用いて評価した。危険にある左心室面積(AAR)および梗塞の大きさの決定についての手順に関しては、Jones, S.P. et al. Am. J.
Physiol. Heart Circ. Physiol. (2004) 286:H276-H282を参照されたい。
【0132】
StatViewソフトウェアバージョン5.0(SAS Institute)を用いて、Bonferroniの事後分析をともなう二元配置分散分析によってデータを分析した。データは、平均±平均の標準誤差として報告される。0.05未満のp値は、有意と考えられた。
【0133】
10〜13個体のマウス心筋虚血再灌流モデル試験群を4つの処理群に無作為に分けた。第1群:ビヒクル(EtOH/PEG300+0.1%クエン酸)で処理;および第2群:7mg/kgの化合物(3-1)による処理。本研究において、虚血30分後および24時間灌流期の5分前に左心室腔へ化合物(3-1)を急速投与すると、危険面積の百分率としての心筋梗塞の大きさが減少した(図13)。ビヒクルは、心筋I/R損傷における保護的利点を何ら提供しなかった。
【0134】
本明細書において引用されるすべての米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物は、本明細書と矛盾しない程度まで、それらのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれる。
【0135】
上記から、本発明の具体的な実施態様が説明の目的のために本明細書に記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更がなされてもよいことは認められるであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲によることを除いては限定されない。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年10月16日に出願された米国仮特許出願第61/105,910号に関する米国特許法第119条第(e)項の下での特典を主張するものであり、該出願は、そのすべての内容が全体として引用により本明細書中に組み込まれている。
【0002】
本発明の分野
本発明は、低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防するための方法、ならびにそのために有用な化合物および化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
関連分野の説明
カルコゲニン元素を含む化合物、すなわち、周期表の第6群にあるもの(酸化物を除く)は通常、「カルコゲニド」または「カルコゲニド化合物」と呼ばれる。これらの元素は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、およびポロニウム(Po)である。一般的なカルコゲニドは、S、Se、およびTeのうちの1つ以上を、他の元素に加えて含む。
【0004】
カルコゲニドを用いた治療は、低酸素性損傷および虚血性損傷から生物物質を保護することが示されている。これらの研究において、酸素消費の強力な阻害剤である硫化水素(H2S)の安定した組成が、小動物および大動物における低酸素性損傷を低下させることが示された(米国特許出願公報第2008/0199541号参照)。硫化水素が、医学的用途について典型的に考慮されてこなかったが、この予期せぬ結果は、いくつかの動物およびヒトでの疾患、特に低酸素症および虚血と関連した疾患および損傷の治療または予防のための刺激的な可能性を呈している。加えて、この予期せぬ結果は、スルフィドを含むものを含むカルコゲニドのさらなる医薬組成物について当技術分野で需要があることを示している。スルフィドは、その2価状態における硫黄として定義され、H2Sとして、またはその塩としてのいずれかで定義され(例えば、NaHS、Na2S等)、例えば、疾患の治療または救急中の場における治療のための、および大損傷または生命の危険にある医学的事象に応じた緊要なケアにおいての両方の制御された医学的環境において患者に簡便に投与され得る。公知のカルコゲニドの医薬組成物に加えて、低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防するのに有用なさらなるカルコゲニド化合物およびこのような化合物を含む組成物について、当技術分野で需要がある。
【0005】
従って、この分野で進展がなされてはいるものの、低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防する方法について、ならびにそれに有用なカルコゲニド化合物および医薬組成物について、当技術分野で需要がなおもある。本発明は、この需要を満たし、さらなる関連した利点を提供する。
【発明の概要】
【0006】
簡潔には、本発明は、低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料を、有効量の構造(I):
【化1】
の化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグと接触させることを含む、該生物材料の損傷を治療しまたは予防するための方法に関する
(式中:
R1およびR2が各々独立して、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され;かつ
nは2〜5の整数である。)。
【0007】
別の実施態様において、本発明は、構造(IV):
【化2】
を有する化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグを提供する
(式中:
R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、およびR2dが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルであり、但し、下記を条件とする:
(a)R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、およびR2dがすべて水素というわけではなく;
(b)R1b、R1c、R2b、およびR2cがすべて水素である場合、R1a、R1d、R2a、およびR2d がすべてクロロというわけではなく;かつ
(c)R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、R2cがすべて水素である場合、R1dおよびR2dが両方とも、-CO2Hではなく、またはR1dおよびR2dが両方とも-CO2CH3ではない。)。
【0008】
別の実施態様において、本発明は、構造(V):
【化3】
を有する化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグを提供する
(式中:
R3およびR4が各々独立して、置換または非置換ヘテロアリールからなる群から選択され、但し、R3およびR4が両方とも置換または非置換イミダゾリジン-2,4-ジオネイルではないことを条件とする。)。
【0009】
別の実施態様において、本発明は、構造(II)の化合物との組み合わせで、医薬として許容し得る担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
別の実施態様において、本発明は、構造(III)の化合物との組み合わせで、医薬として許容し得る担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明のこれらの態様および他の態様は、下記の詳細な説明に対する引用の際に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、モノブロモビマン誘導体化を介したHEPES緩衝液におけるポリスルフィド化合物からのスルフィド放出の分析を示す。
【図2】図2は、モノブロモビマン誘導体化を介したHEPES緩衝液およびグルタチオンにおけるポリスルフィド化合物からのスルフィドの放出の分析を示す。
【図3】図3は、モノブロモビマン誘導体化を介したHEPES緩衝液およびグルタチオンにおけるポリスルフィド化合物からのスルフィドの放出の分析を示す。
【図4】図4は、固体状態のスルフィドプローブを介したグルタチオンの存在下でのポリスルフィド化合物からのスルフィドの放出の分析を示す。
【図5】図5は、モノブロモビマン誘導体化を介したラット鮮血におけるポリスルフィド化合物からのスルフィドの放出の分析を示す。
【図6】図6は、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける血中スルフィド濃度を示す。
【図7】図7は、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける血中スルフィド濃度を示す。
【図8】図8は、モノブロモビマンによる誘導体化によって測定された、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける血中スルフィドレベルを示す。
【図9】図9は、モノブロモビマンによる誘導体化によって測定された、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける血中スルフィドレベルを示す。
【図10】図10は、モノブロモビマンによる誘導体化によって測定された、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける血中スルフィドレベルを示す。
【図11】図11は、モノブロモビマンによる誘導体化によって測定された、異なるポリスルフィド化合物を静脈内投与したラットにおける血中スルフィドレベルを示す。
【図12】図12は、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける肝虚血-再灌流損傷を示す。
【図13】図13は、ポリスルフィド化合物を投与したラットにおける心筋梗塞の大きさを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
下記の説明において、ある具体的な詳細が、本発明の種々の実施態様の完全な理解を提供するために示されている。しかしながら、当業者は、本発明がこれらの詳細なしで実施され得ることを理解するであろう。
【0014】
文脈が別段に必要としない限り、本明細書および特許請求の範囲を通じて、語「を含む(comprise)」ならびに「を含む(comprises)」および「を含んでいる(comprising)」などのその変形は、「を含むがこれに限定されない」と同じように開いた包括的な意味で解釈されるべきである。
【0015】
「一実施態様」または「実施態様」に対する本明細書を通じての引用は、該実施態様と関連して説明された特定の特色、構造、または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。このように、本明細書を通じての種々の箇所における句「一実施態様において」または「実施態様において」の出現は、同一の実施態様に対して必ずしもすべて引用しているわけではない。さらにその上、特定の特色、構造、または構造は、1つ以上の実施態様において任意の適切な様式で組み合わされてもよい。
【0016】
「本発明の化合物(compounds)」または「本発明の化合物(compound)」に対する本明細書を通じての引用は、構造(I)、(II)、または(III)の化合物およびそれらのすべての実施態様を意味している。
【0017】
「アミノ」は、-NH2ラジカルを指す。
【0018】
「シアノ」は、-CNラジカルを指す。
【0019】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、-OHラジカルを指す。
【0020】
「イミノ」は、=NH置換基を指す。
【0021】
「ニトロ」は、-NO2ラジカルを指す。
【0022】
「オキソ」は、=O置換基を指す。
【0023】
「チオキソ」は、=S置換基を指す。
【0024】
「アルキル」は、1〜12個の炭素原子(C1-C12アルキル)、好ましくは1〜8この炭素原子(C1-C8アルキル)または1〜6個の炭素原子(C1-C6アルキル)を有する、飽和または不飽和である(すなわち、1つ以上の二重結合および/または三重結合を含む)、かつ単結合によって分子の残りに結合している、単に炭素原子および水素原子からなる直鎖または分岐鎖炭化水素ラジカルを指し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、(イソ-プロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル、(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、エテニル、プロパ-1-エニル、ブタ-1-エニル、ペンタ-1-エニル、ペンタ-1,4-ジエニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、およびこれらの類似物である。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、アルキル基は、任意に飽和していてもよい。
【0025】
「アルキレン」または「アルキレン鎖」は、飽和または不飽和であり(すなわち、1つ以上の二重結合および/または三重結合を含む)かつ1〜12個の炭素原子を有する、単に炭素および水素からなる、分子の残りをラジカル基に連結している直鎖または分岐鎖の二価炭化水素鎖を指し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレン、プロピニレン、n-ブチニレン、およびこれらの類似物である。アルキレン鎖は、単結合または二重結合を通じて分子の残りに、および単結合または二重結合を通じてラジカル基に結合する。分子の残りに対するおよびラジカル基に対するアルキレン鎖の結合点は、鎖内の1個の炭素または任意の2個の炭素を通じてであることができる。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、アルキレン鎖は、任意に置換されてもよい。
【0026】
「アルコキシ」は、式-ORaのラジカルを指し、式中、Raは、1〜12個の炭素原子を含む上記に定義したアルキルラジカルである。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、アルコキシ基は任意に置換されてもよい。
【0027】
「アルキルアミノ」は、式-NHRaまたは-NRaRaのラジカルを指し、式中、各Raが独立して、1〜12個の炭素原子を含む上記に定義したアルキルラジカルである。本明細書で具体的に別段の記載がない限り、アルキルアミノ基は、任意に置換されてもよい。
【0028】
「チオアルキル」は、式-SRaのラジカルを指し、式中、Raは、1〜12個の炭素原子を含む上記に定義したアルキルラジカルである。本明細書で具体的に別段の記載がない限り、チオアルキル基は任意に置換されてもよい。
【0029】
「アリール」は、水素、6〜18個の炭素原子、および少なくとも1つの芳香環を含む炭化水素環系ラジカルを指す。本発明の目的のために、アリールラジカルは、縮合されたまたは架橋された環系を含んでもよい単環系、二環系、三環系、または四環系であり得る。アリールラジカルには、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、フルオランテン、フルオレン、アズ-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、プレイアデン、ピレン、およびトリフェニレンに由来するアリールラジカルが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で具体的に別段の記載がない限り、用語「アリール」または(「アラルキル」などにおける)接頭辞「アル-(ar-)」は、任意に置換されたアリールラジカルを含むよう意図される。
【0030】
「アラルキル」は、式-Rb-Rcのラジカルを指し、式中、Rbは、上記に定義したアルキレン鎖であり、およびRcは、上記に定義した1つ以上のアリールラジカルであり、例えば、ベンジル、ジフェニルメチル、およびこれらの類似物である。本明細書において具体的に別段の指定がない限り、アラルキル基は任意に置換されてもよい。
【0031】
「シクロアルキル」または「炭素環」は、3〜15個の炭素原子を有する、好ましくは3〜10個の炭素原子を有する、単結合によって分子の残りに結合している縮合したまたは架橋した環系を含んでもよい、かつ、飽和または不飽和である、単に炭素原子および水素原子からなる安定した非芳香単環式または多環式炭化水素ラジカルを指す。単環式ラジカルには、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。多環式ラジカルには、例えばアダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、およびこれらの類似物が含まれる。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、シクロアルキル基は任意に置換されてもよい。
【0032】
「シクロアルキルアルキル」は、式-RbRdのラジカルを指し、式中、Rbは、上記に定義したアルキレン鎖であり、かつRdは、上記に定義したシクロアルキルラジカルである。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、シクロアルキルアルキル基は、任意に置換されてもよい。
【0033】
「シクロアルキルアミノ」は、式-NHRgまたは-NRgRgのラジカルを指し、式中、各Rgは独立して、上記に定義したシクロアルキルラジカルである。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、シクロアルキルアミノ基は任意に置換されてもよい。
【0034】
「オキシカルボニル」は、式-OC(=O)Riのラジカルを指し、式中Riは、上記に定義したアルキルラジカルまたはアリールラジカルである。
【0035】
「縮合した」は、本発明の化合物における既存の環構造に縮合した、本明細書に記載された任意の環構造を指す。縮合した環がヘテロシクリル環またはヘテロアリール環である場合、縮合したヘテロシクリル環のまたは縮合したヘテロアリール環の部分となる既存の環構造における任意の炭素原子は、窒素原子で置換されてもよい。
【0036】
「ハロ」または「ハロゲン」は、ブロモ、クロロ、フルオロ、またはヨードを指す。
【0037】
「ハロアルキル」は、上記に定義した1つ以上のハロラジカルによって置換されている上記に定義したアルキルラジカルを指し、例えば、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,2-ジフルオロエチル、3-ブロモ-2-フルオロプロピル、1,2-ジブロモエチル、およびこれらの類似物である。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、ハロアルキル基は、任意に置換されてもよい。
【0038】
「ヘテロシクロリル」または「複素環」は、2〜12個の炭素原子と、窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される1〜6個のヘテロ原子とからなる安定した3〜18員の非芳香環ラジカルを指す。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、ヘテロシクリルラジカルは、縮合したまたは架橋した環系を含んでもよい単環式、二環式、三環式、または四環式環系であり得;およびヘテロシクリルラジカルにおける窒素原子、炭素原子、または硫黄原子は、任意に酸化されてもよく;窒素原子は任意に四級化されてもよく;およびヘテロシクリルラジカルは、部分的にまたは完全に飽和していてもよい。このようなヘテロシクロルラジカルの例には、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルフォリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルフォリニル、チアモルフォリニル、1-オキソ-チオモルフォリニル、および1,1-ジオキソ-チオモルフォリニルが含まれるが、これらに限定されない。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、本明細書において具体的に別段の記載がない限り、ヘテロシクリル基は、任意に置換されてもよい。
【0039】
「N-ヘテロシクリル」は、少なくとも1つの窒素を含む上記に定義したヘテロシクリルラジカルを指し、ここで、分子の残りに対するヘテロシクリルラジカルの結合点は、ヘテロシクリルラジカルにおける窒素原子を通じている。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、N-ヘテロシクリル基は、任意に置換されてもよい。
【0040】
「ヘテロシクリルアルキル」は、式-RbReのラジカルを指し、式中、Rbは、上記に定義したアルキレン鎖であり、かつReは、上記に定義したヘテロシクリルラジカルであり、ヘテロシクリルが窒素含有ヘテロシクリルである場合、ヘテロシクリルは、窒素原子においてアルキルラジカルに結合していてもよい。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、ヘテロシクロルアルキル基は、任意に置換されてもよい。
【0041】
「ヘテロアリール」は、水素原子、1〜13個の炭素原子、窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される1〜6個のヘテロ原子、ならびに少なくとも1つの芳香環を含む5〜14員の環系ラジカルを指す。本発明の目的のために、ヘテロアリールラジカルは、縮合したまたは架橋した関係を含んでもよい単環式、二環式、三環式、または四環式環系であり得;ヘテロアリールラジカルにおける窒素原子、炭素原子、または硫黄原子は、任意に酸化されていてもよく;窒素原子は任意に四級化されていてもよい。例には、アゼピニル、アクリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズインドリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル、(ベンゾチオフェニル)、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、カルバゾリル、シノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、1-オキシドピリジニル、1-オキシドピリミジニル、1-オキシドピラジニル、1-オキシドピリダジニル、1-フェニル-1H-ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、キヌクリジニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、およびチオフェニル(すなわち、チエニル)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、ヘテロアリール基は任意に置換されてもよい。
【0042】
「N-ヘテロアリール」は、少なくとも1つの窒素を含む上記に定義したヘテロアリールラジカルを指し、ここで、分子の残りに対するヘテロアアリールラジカルの結合点は、ヘテロアリールラジカルにおける窒素原子を通じている。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、N-ヘテロアリール基は、任意に置換されていてもよい。
【0043】
「ヘテロアリールアルキル」は、式-RbRfのラジカルを指し、式中、Rbは、上記に定義したアルキレン鎖であり、かつRfは上記に定義したヘテロアリールラジカルである。本明細書において具体的に別段の記載がない限り、ヘテロアリールアルキル基は任意に置換されていてもよい。
【0044】
「ポリスルフィド」は、硫黄-硫黄結合によって連結された硫黄原子の鎖を指す。ポリスルフィドは、直鎖、分岐鎖、または環状であってもよく、n個の硫黄原子から構成されており、ここで、nは、本明細書に定義されている。ポリスルフィドラジカルの例には、ジスルフィド(n=2、すなわち-S-S-)、トリスルフィド(n=3、すなわち-S-S-S-)、およびテトラスルフィド(n=4、すなわち-S-S-S-S-)などが含まれるが、これらに限定されない。ポリスルフィド化合物は、1つ以上のポリスルフィドを含む。
【0045】
本明細書で用いられている用語「置換された」は、任意の上記の基(すなわち、アルキル、アルキレン、アルコキシ、アルキルアミノ、チオアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアミノ、ヘテロアリール、N-ヘテロアリール、および/またはヘテロアリールアルキル)を意味し、ここで、少なくとも1つの水素原子は、下記などだがこれらに限定されない非水素原子へ単結合によって置換される:F、Cl、Br、およびIなどのハロゲン原子;ヒドロキシル基、アルコキシ基、およびエステル基などの基における酸素原子;チオール基、チオアルキル基、スルホン基、スルホニル基、およびスルホキシド基などの基における硫黄原子;アミン、アミド、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン、ジアリールアミン、N-オキシド、イミド、およびエナミンなどの基における窒素原子;トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、およびトリアリールシリル基などの基におけるケイ素原子;並びに種々の他の基における他のヘテロ原子。「置換された」はまた、1つ以上の水素原子が、オキソ基、カルボニル基、カルボキシル基、およびエステル基における酸素;ならびにイミン、オキシム、ヒドラゾン、およびニトリルなどの基における窒素などのヘテロ原子に対するより高いオーダーの結合(例えば、二重結合または三重結合)によって置換された上記の任意の基も意味する。例えば、「置換された」には、1つ以上の水素原子が-NRgRh、-NRgC(=O)Rh、-NRgC(=O)NRgRh、-NRgC(=O)ORh、-NRgSO2Rh、-OC(=O)NRgRh、-ORg、-SR8、-SORg、-SO2R8、-OSO2Rg、-SO2ORg、=NSO2Rg、および-SO2NRgRhと置換された上記の任意の基が含まれる。「置換された」はまた、1つ以上の水素原子が-C(=O)Rg、-C(=O)ORg、-C(=O)NRgRh、-CH2SO2Rg、-CH2SO2NRgRhと置換された上記の任意の基も意味する。上記において、RgおよびRhは、同一または異別であり、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、チオアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロシクリル、N-ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、N-ヘテロアリール、および/またはヘテロアリールアルキルである。「置換された」はさらに、1つ以上の水素原子が、アミノ、シアノ、ヒドロキシル、イミノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、ハロ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、チオアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアミノ、オキシカルボニル、ハロアルキル、ヘテロシクリル、N-ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、N-ヘテロアリール、および/またはヘテロアリールアルキルの基に対する単結合によって置換された上記の任意の基を意味する。加えて、上記の各置換基はまた、1つ以上の上記の置換基と任意に置換されてもよい。
【0046】
「プロドラッグ」は、生理学的条件下でまたは本発明の生物活性のある化合物への加溶媒分解によって変換され得る化合物を示すことを意味する。従って、用語「プロドラッグ」は、医薬として許容し得る本発明の化合物の代謝前駆体を指す。プロドラッグは、それを必要とする対象に投与される場合に不活性であってもよいが、インビボで本発明の活性化合物に変換される。プロドラッグは典型的には、インビボで迅速に変換されて、本発明の親化合物を例えば血中における加水分解によって生じる。プロドラッグ化合物はしばしば、哺乳類生物における溶解度、組織適合性、または遅延性放出の利点を提供する(Bundgard, H., Design of Prodrugs (1985), pp. 7-9, 21-24 (Elsevier,
Amsterdam)参照)。プロドラッグに関する論議は、Higuchi, T., et al., A. CS.
Symposium Series, Vol. 14において、およびBioreversible Carriers
in Drug Design, Ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and
Pergamon Press, 1987において提供されている。
【0047】
用語「プロドラッグ」はまた、このようなプロドラッグが哺乳類対象に投与される場合に、本発明の活性化合物をインビボで放出する任意の共有結合した担体を含むことも意味する。本発明の化合物のプロドラッグは、修飾が所定の操作においてまたはインビボでのいずれかで、本発明の親化合物へと開裂されるような方法で、本発明の化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製されてもよい。プロドラッグには本発明の化合物が含まれ、ここで、ヒドロキシ基、アミノ基、またはメルカプト基は、本発明の化合物のプロドラッグが哺乳類対象に投与される場合に、遊離ヒドロキシ基、遊離アミノ基、または遊離メルカプト基をそれぞれ形成するよう開裂する任意の基に結合している。プロドラッグの例には、本発明の化合物およびその類似物におけるアルコールの酢酸誘導体、ギ酸誘導体、および安息香酸誘導体、またはアミン官能基のアミド誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書に開示される本発明は、異なる原子質量または質量数を有する原子によって置換される1つ以上の原子によって同位体標識されている構造(I)、(II)、および(III)の医薬として許容され得るすべての化合物を包含するよう意味する。開示された化合物に組み込まれることのできる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素、ヨウ素の同位体が含まれ、それぞれ例えば2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123I、および125Iなどである。これらの放射性標識した化合物は、例えば作用の部位もしくは様式、または作用の薬理学的に重要な部位に対する結合親和性を特徴づけることによって、化合物の有効性を決定または測定するのを助けるのに有用であり得る。ある同位体標識した構造(I)、(II)、および(III)の化合物、例えば、放射性同位体を組み込んでいる化合物は、薬剤および/または基質の組織分布研究において有用である。放射性同位体であるトリチウム、すなわち3H、および炭素-14、すなわち14Cは、組み込みの容易さおよび検出の迅速な手段の点で、この目的に特に有用である。
【0049】
「安定した化合物」および「安定した構造」は、反応混合物から有用な程度の純度への単離および有効な治療薬への製剤化に耐えるのに十分に頑強である化合物を示すことを意味する。
【0050】
「生物材料」および「生物物質」には、細胞、組織、臓器、生体、および動物(哺乳類を含む。)が含まれる。本発明の方法が、生体内に一部が留まっているか、または生体からもしくは生体全体に関して摘出されているかどうかにかかわらず、生体の一部において(細胞において、組織において、および/または1つ以上の臓器において)実施されてもよいことは考慮される。
【0051】
「細胞」には、哺乳類細胞が含まれるが、これに限定されない。哺乳類細胞には、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、フェレット、ウシ、ヒツジ、またはウマに由来するものが含まれるが、これらに限定されない。その上、本発明の細胞は二倍体であってもよいが、いくつかの場合においては、細胞は一倍体(性細胞)である。加えて、細胞は、倍数体、異数体、または無核であってもよい。細胞は、心臓、肺、腎臓、肝臓、骨髄(bone marrow)、膵臓、皮膚、骨、静脈、動脈、角膜、血液、小腸、大腸、能、脊髄(spinal
cord)、平滑筋、骨格筋、卵巣、精巣、子宮、臍帯などの特定の組織または臓器に由来することができる。ある実施態様において、細胞は、下記の細胞種のうちの1つとして特徴づけることができる:血小板、骨髄細胞、赤血球、リンパ球、脂肪細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、内分泌細胞、グリア細胞、神経細胞、分泌細胞、遮蔽機能細胞、収縮性細胞、吸収性細胞、粘膜細胞、角膜縁細胞(角膜由来)、幹細胞(全能性、多能性(pluripotent)、または多能性(multipotent))、未受精卵母細胞もしくは卵母細胞、または精子。
【0052】
「組織」および「臓器」は、それらの普通のかつ平易な意味に従って用いられる。組織は細胞から構成されるが、用語「組織」は、一定の種類の構造材料を形成する類似の細胞の凝集体を指す。その上、臓器は、特別な種類の組織である。ある実施態様において、組織または臓器は「単離されて」おり、生体内に存在しないことを意味する。
【0053】
「哺乳類」には、ヒトならびに、実験動物および家庭用ペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)などの飼育哺乳類と野生動物などの非飼育哺乳類との両方、ならびにこれらの類似物が含まれる。
【0054】
「任意の」または「任意に」は、状況に関してその後に説明される事象が生じても生じなくてもよく、かつ、説明に、該事象または状況が生じる場合および該事象または状況が生じない場合が含まれることを意味する。例えば、「任意に置換されたアリール」は、アリールラジカルが、置換されてもされなくてもよく、かつ説明に置換アリールラジカルおよび置換を有さないアリールラジカルの両方が含まれることを意味する。
【0055】
「医薬として許容し得る担体、希釈剤、または賦形剤」には、ヒトまたは飼育動物において使用するために許容し得るものとして米国食品医薬品局によって認可された任意のアジュバント、担体、賦形剤、滑沢剤、甘味料、希釈剤、保存料、色素/着色料、調味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定化剤、等張剤、溶媒、または乳化剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
「医薬として許容し得る塩」には、酸付加塩および塩基付加塩の両方が含まれる。
【0057】
「医薬組成物」は、本発明の化合物と、生物活性のある化合物を哺乳類、例えばヒトに送達するために当技術分野で一般的に許容される媒体とからなる製剤を指す。このような媒体には、そのための医薬として許容し得るすべての担体、希釈剤、または賦形剤が含まれる。
【0058】
「有効量」または「治療的有効量」は、哺乳類などの生物材料に投与される場合に、低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防する、以下に定義されるような治療を果たすのに十分な本発明の化合物の量を指す。「治療的有効量」を構成する本発明の化合物の量は、化合物、条件およびその重度、投与の様式、ならびに生物材料(例えば、治療されるべき哺乳類の齢)に応じて変動するであろうが、当業者の知識および本開示に対する関心を有する当業者によって、日常的に決定されることができる。例えば、一実施態様において、用語「有効量」は、測定可能な結果を達成することのできる量を指す。一実施態様において、「有効量」は例えば、制御された第2相または第3相臨床試験において医学的治療を必要とするヒト対象に投与される場合に、あらかじめ定義された臨床的終点(例えば、死亡)に関して統計的に有意な利点を生じる量である。有効量は、疾患または損傷に応じた生物物質の生存率を高め、または生物物質における停滞(stasis)または前停滞(pre-stasis)を誘導する量である。
【0059】
本明細書で用いられる「治療すること」または「治療」は、関心対象の疾患または容態を有する生物材料(例えば、哺乳類)における関心対象の疾患または容態の治療におよび、これには例えば下記が含まれる:
(i)特に、哺乳動物が該容態に罹患しやすいが、該容態に罹患しているとはまだ診断されていない場合、このような哺乳類において疾患または容態が生じるのを予防すること;
(ii)該疾患または容態を阻害すること、すなわち、その発症を抑止すること;
(iii)該疾患または容態を軽減すること、すなわち、該疾患または容態の退行を生じさせること;あるいは
(iv)該疾患または容態から結果として生じる症状を軽減すること、すなわち、潜在的な疾患または容態に向かうことなく疼痛を軽減すること。本明細書で使用される場合、用語「疾患」および「容態」は、相互に交換可能に用いられてもよく、または特定の病弊もしくは容態が、原因となる公知の作用因を有さなくてもよく(そのため、病因は、まだ作用していない。)、それゆえ、疾患としてまだ認識されていないが、望ましくない容態または症候群としてにすぎないものであり、ここで、多かれ少なかれ、具体的なセットの症状が臨床医によってすでに同定されている。
【0060】
用語「低酸素」および「低酸素性」は、通常を下回る酸素レベルを有する環境を指す。低酸素は、通常の生理学的レベルの酸素が細胞、組織、または臓器に供給されない場合に生じる。「酸素正常状態」は、問題となる特定の細胞種、細胞状態、または組織についての正常な生理学的レベルの酸素を指す。「無酸素」は、酸素がないことである。「低酸素性条件」は、細胞、臓器、または生体の低酸素症に至る条件である。本発明の目的のために、低酸素性条件には、酸素濃度が、正常な大気条件以下であり、20.8、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0%未満である条件が含まれる。あるいは、これらの数は、1気圧(101.3kPa)における大気の百分率を表し得る。「無酸素」は、酸素がないことである。
【0061】
本発明の化合物、またはその医薬として許容し得る塩は、1つ以上の非対称性中心を含んでもよく、従って、鏡像異性体、ジアステレオマー、および(R)-もしくは(S)-として、またはアミノ酸についての(D)-もしくは(L)-として無水立体化学の点で定義され得る他の立体異性形態を生じてもよい。本発明は、このような考えられ得るすべての異性体、ならびにこれらのラセミ形態および光学的に純粋な形態を含むことを意味する。
【0062】
「立体異性体」は、同一の結合によって結合した同一だが、相互に交換可能である異なる三次元構造を有する原子で構成された化合物を指す。本発明は、種々の立体異性体およびそれらの混合物を包含し、分子が互いに重ね合わせることのできない鏡像である2つの立体異性体を指す「鏡像異性体」を含む。
【0063】
「錯化剤」は、錯化剤の2つ以上の原子を通じて金属イオンを結合する分子、典型的には有機分子である。
【0064】
「共溶媒」は、一次溶媒に加えて混合物中に存在する任意の溶媒または化合物である。共溶媒は典型的には、溶質の溶解度を増加させまたは低下させるために添加される。
【0065】
本発明において用いられる化学的な命名プロトコールおよび構造図は、ACD/Name Version 9.07ソフトウェアプログラムおよび/またはChemDraw
Ultra Version 11.0ソフトウェア命名プログラム(CambridgeSoft)を用いて、I.U.P.A.Cの命名法系統に関して改変された形態である。
【0066】
上記に記載したとおり、本発明の一実施態様において、低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防するための方法が提供され、ここで、方法は、生物材料を有効量の構造(I):
【化4】
の化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグと接触させることを含み、
式中:
R1およびR2が各々独立して、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され;かつ
nが、2〜5の整数である。
【0067】
さらなる実施態様において、nは、2、3、または5である。他のさらなる実施態様において、nは4である。
【0068】
他のさらなる実施態様において、R1およびR2は各々、置換または非置換アリールである。ある実施態様において、R1およびR2は各々、置換または非置換フェニルである。ある実施態様において、化合物は、下記の構造(II):
【化5】
またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグを有し、
式中:
nは、2、3、4、または5であり;かつ
R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、R2d、およびR2eが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルである
【0069】
上記のより具体的な実施態様において、nは、2、3、または5である。ある実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化6】
のうちの1つを有する。
【0070】
上記の他のより具体的な実施態様において、nは4である。ある実施態様において、化合物は下記の構造:
【化7】
のうちの1つを有する。
【0071】
他のさらなる実施態様において、R1およびR2は各々置換または非置換アラルキルである。ある実施態様において、R1およびR2は各々、置換または非置換ベンジルである。ある実施態様において、化合物は下記の構造(III):
【化8】
またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグを有し、
式中:
nは、2、3、4、または5であり;かつ
R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、R2d、およびR2eが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルである。
【0072】
上記のより具体的な実施態様において、nは2、3、または5である。ある実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化9】
のうちの1つを有する。
【0073】
上記の他のより具体的な実施態様において、nは4である。ある実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化10】
のうちの1つを有する。
【0074】
他のさらなる実施態様において、R1およびR2は各々、置換または非置換ヘテロアリールである。ある実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化11】
のうちの1つを有する。
【0075】
他のさらなる実施態様において、R1およびR2は各々、置換または非置換ヘテロアリールアルキルである。ある実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化12】
のうちの1つを有する。
【0076】
他のさらなる実施態様において、生物材料を接触させることは、注射による、注入による、連続注入による、吸収による、吸収による、浸漬による、限局性灌流による、カテーテルを介する、または洗浄を介する、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸腔内、気管内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所的(topically)、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、眼内、皮下的、結膜下、経皮的、小胞内、粘膜的、心膜内、臍部内、眼内、経口的、局所的(locally)を含む
【0077】
他のさらなる実施態様において、低酸素性条件または虚血性条件は、生物材料に対する損傷、生物材料に有害な影響を与える疾患の発症もしくは進行、または生物材料の出血から結果として生じる。ある実施態様において、生物材料は、損傷前に、疾患の発症もしくは進行前に、または生物材料の出血前に化合物と接触する。ある実施態様において、損傷は、(手術などの)外部からの物理的力に由来する。ある実施態様において、生物材料は、損傷、疾患の発症もしくは進行、または生物材料における出血から結果として生じる障害または死滅から生物材料を保護する量および時間で、化合物と接触する。
【0078】
他のさらなる実施態様において、生物材料は、細胞、組織、臓器、生体、および動物からなる群から選択される。例えば、ある実施態様において、生物材料は動物である。ある実施態様において、動物は哺乳類である。ある実施態様において、哺乳類はヒトである。他の実施態様において、生物材料は血小板を含む。他の実施態様において、生物材料は移植されるべきものである。他の実施態様において、生物材料は、再灌流損傷の危険にある。他の実施態様において、生物材料は、出血性ショックの危険にある。
【0079】
他のさらなる実施態様において、低酸素性条件または虚血性条件が結果として、心筋梗塞、敗血症、脈管異常、硬変症、脈管の石灰化沈着、薬剤処理によって誘発される胃の損傷、熱傷、肺の損傷、好中球接着、白血球仲介性炎症、勃起不全、過敏性腸症候群、炎症後過敏症における抗侵害受容効果、急性冠症候群、心停止、計画心臓バイパス手術、うっ血性心不全、新生児の低酸素症/虚血、心筋梗塞性再灌流損傷、不安定性狭心症、血管形成術後、動脈瘤、外傷、脳卒中、出血性ショック、および/または失血を生じる。
【0080】
本発明の別の実施態様において、下記の構造(IV):
【化13】
を有する化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグが提供され、
式中:
R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、およびR2dが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルであり、但し、下記を条件とする:
(a)R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、およびR2dがすべて水素というわけではなく;
(b)R1b、R1c、R2b、およびR2cがすべて水素である場合、R1a、R1d、R2a、およびR2d がすべてクロロというわけではなく;かつ
(c)R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、およびR2cがすべて水素である場合、R1dおよびR2dが両方とも、-CO2Hまたは-CO2CH3ではない。
【0081】
上記のさらなる実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化14】
のうちの1つを有する。
【0082】
本発明の別の実施態様において、下記の構造(V):
【化15】
を有する化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグが提供され、
式中:
R3およびR4は各々独立して、置換または非置換ヘテロアリールからなる群から選択され、但し、R3およびR4が両方とも置換または非置換イミダゾリジン-2,4-ジオネイルではないことを条件とする。
【0083】
上記のさらなる実施態様において、R3およびR4が各々独立して、置換または非置換イミダゾリル、置換または非置換オキサゾリル、置換または非置換テトラゾリル、および置換または非置換ピリジニルからなる群から選択される。例えば、いくつかの実施態様において、化合物は、下記の構造:
【化16】
のうちの1つを有する。
【0084】
本発明の別の実施態様において、構造(IV)の化合物との組み合わせで医薬として許容し得る担体または希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0085】
本発明の別の実施態様において、構造(V)の化合物との組み合わせで医薬として許容し得る担体または希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0086】
上記のさらなる実施態様において、構造(IV)または構造(V)の化合物を含む医薬組成物はさらに、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の錯化剤、および/または1つ以上の共溶媒を含む。
【0087】
上記に示された構造(I)、(II)、(III)、(IV)、または(V)の化合物の任意の実施態様、および上記に示された構造(I)、(II)、(III)、(IV)、または(V)の化合物におけるR1、R2、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R3、またはR4の基について本明細書で示された任意の具体的な置換基が、構造(I)、(II)、(III)、(IV)、または(V)の化合物の他の実施態様および/または置換基と独立して組み合わされて、上記に具体的に示されていない本発明の実施態様を形成し得ることは理解される。加えて、特定の実施態様および/または請求項における任意の特定のR1、R2、R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、R2d、R3、またはR4の基について置換基のリストが列挙される事象においては、各個々の置換基が特定の実施態様および/または請求項から欠失されてもよく、および置換基の残りのリストが本発明の範囲内であると考えられるであろうことは理解される。
【0088】
本明細書において、図示される式の置換基および/または変数の組み合わせは、このような寄与が結果として安定した化合物を生じる場合にのみ許されることは理解される。
【0089】
また、本明細書に説明されたプロセスにおいて、中間体化合物の官能基が、適切な保護基によって保護される必要があり得ることも当業者によって認識されるであろう。このような官能基には、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、およびカルボン酸が含まれる。ヒドロキシに適した保護基には、トリアルキルシリルまたはジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシニル、またはトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジル、およびこれらの類似物が含まれる。アミノ、アミジノ、およびグアニジノに適した保護基には、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、およびこれらの類似物が含まれる。メルカプトに適した保護基には、-C(O)-R”(式中、R”は、アルキル、アリール、またはアリールアルキルである。)、p-メトキシベンジル、トリチル、およびこれらの類似物が含まれる。カルボン酸に適した保護基には、アルキルエステル、アリールエステル、またはアリールアルキルエステルが含まれる。保護基は、当業者に公知でありおよび本明細書に記載されている標準的な技術に従って付加しまたは除去してもよい。保護基の使用は、Green, T.W. and
P. G. M. Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis (1999), 3rd Ed., Wileyに詳細に記載されている。当業者が認めるであろうように、保護基はまた、Wang樹脂、Rink樹脂、または2-クロロトリチル-クロリド樹脂などのポリマー樹脂であってもよい。
【0090】
投与の目的のために、本発明の化合物は、未加工の化学物質として投与されてもよく、または医薬組成物として製剤化されてもよい。本発明の医薬組成物は、構造(I)、(II)、(III)、(IV)、または(V)の化合物と、医薬として許容し得る担体、希釈剤、または賦形剤とを含む。構造(I)、(II)、(III)、(IV)、または(V)の化合物は、関心対象の特定の疾患または容態を治療するのに効果的な量で、すなわち低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防するのに十分な量で、好ましくは許容され得る毒性を有して、組成物中に存在する。構造(I)、(II)、(III)、(IV)、または(V)の化合物のスルフィド放出活性は、例えば下記の実施例において説明されるように、当業者によって決定することができる。適切な濃度および薬用量は、当業者によって容易に決定することができる。
【0091】
純粋な形態におけるまたは適切な医薬組成物における本発明の化合物またはその医薬として許容し得る塩の投与は、類似の有用性を供するための許容される任意の様式での作用因の投与を介して実施されることができる。本発明の医薬組成物は、本発明の化合物を適切な医薬として許容し得る担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせることによって調製されることができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏、溶液、坐剤、注射液、吸入薬、ゲル、ミクロスフェア、およびエアロゾルなどの固体、半固体、液体、または気体の形態における調製物へと製剤化されてもよい。このような医薬組成物を投与する典型的な経路には、経口的、局所的、経皮的、吸入、非経口的、舌下、頬側、直腸、膣、および鼻内が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で用いられる用語非経口的には、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または注入技術が含まれる。本発明の医薬組成物は、患者への組成物の投与の際に、本明細書に含まれる活性成分が生物に利用可能であるよう製剤化される。対象または患者に投与されるであろう組成物は、1つ以上の薬用量単位の形態をとり、ここで、例えば錠剤は単一薬用量単位であり得、エアロゾル形態にある本発明の化合物の容器は、複数の薬用量単位を保持し得る。このような薬用量形態を調製する実際の方法は、当業者に公知であり、または明らかであろうし;例えば、Remington: The
Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition (Philadelphia College of
Pharmacy and Science, 2005)を参照されたい。投与されるべき組成物は、任意の事象において、本発明の教示に従った関心対象の疾患または容態の治療のための治療的有効量の本発明の化合物、またはその医薬として許容し得る塩を含むであろう。
【0092】
本発明の化合物を用いて、カルコゲニド(米国特許出願公報第2008/0199541号)またはカルコゲニド組成物を用いて治療された種々の疾患および障害を治療しまたは予防してもよい。例えば、硫化ナトリウムを用いた治療は、心筋梗塞、敗血症(Hui, et al J
Infect (2003):47:155参照)、うっ血性心不全、硬変症における血管異常(Fiorucci S, et
al, Hepatology. (2005) 42:539参照)、のための有望な治療として、心臓保護薬(Geng, et al,
Biochem and Biophy Res Com (2004) 313:362参照)として、神経保護薬(Qu K. et al,
Stroke. (2006) 889参照)として、心筋虚血再灌流損傷(Johansen et al,
Basic Res Cardiol (2006) 101 : 53参照)において、血管の石灰化を低下させるために(Wu et al, Acta
Pharmacol Sin. (2006) 27:299参照)、薬剤治療によって誘発される胃の損傷を低下させるために(Fiorucci, S. et
al, Gastroenterology (2005) 129:1210参照)、好中球接着を低下させるために、および白血球仲介性炎症を調節するために(Zanardo et al,
FASEB J. (2006) 20: 2118-2120参照)、勃起不全(Srilatha B. et al, Eur J
Pharmacol. (2006) 535:280参照)、過敏性腸症候群(Distrutti E.,
et al, JPET (2006) 319:447参照)において、ならびに炎症後過敏症における抗侵害受容効果について、動物モデルにおいて用いられてきた。
【0093】
上記のように、本発明の化合物を用いて、虚血性条件または低酸素性条件に曝露された生物物質の損傷を治療しまたは予防してもよい。一実施態様において、これらの方法を用いて、損傷、外傷、または救急救命治療の経験のある患者、これらを受けている患者、またはこれらにかかりやすい患者を治療する。損傷は、火傷、創傷、切断、銃創、または手術外傷、腹部手術、前立腺手術などの外部侵襲、敗血症ショック、脳卒中、または心停止などの内部侵襲、循環における急性低下を結果的に生じる心臓発作、あるいは冷却または放射線への曝露などの非侵襲的ストレスによる循環の低下によって生じ得る。細胞レベルにおいて、損傷はしばしば、低酸素への細胞、組織、および/または臓器の曝露を結果として生じ、それによりプログラムされた細胞死、または「アポトーシス」の誘導を結果的に生じる。
【0094】
それゆえ、本発明は、組織、臓器、四肢、および生体全体でさえ、これらを損傷の有害な効果から保護する方法として有効量の本発明の化合物と接触させることを考慮する。医療的注意を容易に得ることができない具体的なシナリオにおいて、このことは、患者が適切な医療的注意を受けることができるまで、患者にとって「時間を稼ぐ」ことができる。本発明はまた、遅延した創傷治癒および組織再生を結果的に生じ得る生物学的プロセスの予防/遅延によって組織再生および創傷治癒を誘導するための方法も考慮に入れられる。この文脈において、肢または生体に対してかなりの創傷があるシナリオにおいて、生物物質を本発明の化合物と接触させることは、治癒および再生を阻害する生物プロセスを管理することによって創傷治癒および組織再生プロセスを助ける。創傷治癒に加えて、本発明の方法は、心停止または脳卒中などの外傷および出血性ショックを予防しまたは治療するよう実施することができる。本発明は、開胸術、開腹術、脾臓処理などの救急手術手順または心臓手術、動脈瘤、手術、脳手術、およびこれらの類似のものに由来する外傷の危険に関して重要である。
【0095】
ある実施態様において、本発明の方法は、生存率を高め、心停止または脳卒中から結果として生じる虚血性損傷を予防するよう実施することができる。従って、一実施態様において、本発明には、心筋梗塞、心停止、または脳卒中の前、後、または前後の両方において有効量の本発明の化合物を患者に提供することを含む、心停止または脳卒中を罹患しているまたはその危険にある患者における生存率を高めまたは虚血性損傷を低下させる方法が含まれる。
【0096】
ある実施態様において、本発明の方法には、生物材料、例えば虚血性損傷もしくは低酸素性損傷または疾患侵襲の前の患者を前治療することが含まれる。これらの方法は、虚血または低酸素症を生じる可能性のある損傷または疾患が前もって計画されもしくは選択され、または生じそうであることが前もって予測される場合に使用することができる。例には、失血が自然にまたは手順の結果として生じ得る大手術、血液の酸素化が欠陥を生じさせ得るまたは血液の血管送達が(冠動脈バイパス移植片(CABG)手術の設定などにおいて)低下し得る、または臓器移植を必要とするレシピエントに輸送および移植するためのドナー臓器の摘出前の臓器ドナーの治療における心肺バイパスが含まれるが、これらに限定されない。例には、損傷または疾患の進行の危険が(例えば、血管移植、出血性動脈瘤、出血性発作後の、大外傷または失血、うっ血性心不全後の不安定狭心症の脈絡において)内在する医学的容態、あるいは医学的診断試験を用いて危険であると診断することのできる医学的容態が含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
その上、本発明の追加的な実施態様は、生存率を高め、適切な血液供給のない状態などから細胞または組織に対する酸素化に関する失血または他の欠失から、不可逆的な組織損傷を予防することに関する。このことは、例えば、実際の失血の結果であり得、あるいは細胞もしくは組織への血流の遮断を生じさせ、生体において局所的にもしくは全体的に血圧を低下させ、血中で運搬される酸素の量を低下させ、または血中の酸素運搬細胞数を減少させる容態または疾患に由来し得る。関与し得る容態および疾患には、血栓および塞栓、嚢胞、増殖、腫瘍、貧血(鎌状赤血球性貧血を含む。)、血友病、他の血液凝固疾患(例えばフォン・ヴィルブランド、または特発性血小板減少性紫斑病)、ならびに粥状硬化が含まれるが、これらに限定されない。このような容態および疾患にはまた、損傷、疾患、もしくは容態のために、生体における細胞もしくは組織について本質的に低酸素性条件または無酸素性条件を作るものが含まれる。
【0098】
一実施態様において、本発明は、出血性ショックを受けている生物材料の生存率を高め、生物材料に対する損傷または障害を予防する方法を提供し、方法には、出血性ショックの危険にあるまたはその状態にある生物材料を有効量の本発明の化合物とできるだけ実用的に、理想的には損傷の1時間以内に接触させることが含まれる。この方法によって、患者は、損傷の初期原因に対処できる制御された環境(例えば、手術)へと移ることができ、次に患者は、制御された様式で正常な機能へと回復することができる。この適応のために、「ゴールデンアワー」と呼ばれる損傷後の最初の1時間は、成功した結果にとって決定的である。
【0099】
種々の他の実施態様において、本発明の方法は、虚血または低酸素と関連した神経変性疾患の治療において、低体温の治療において、過剰増殖障害の治療において、および免疫障害の治療において用いられてもよい。種々の他の実施態様において、生物学的容態とは、下記のうちの任意の1つまたは合併症である:神経学的疾患、心臓血管疾患、代謝性疾患、感染性疾患、肺疾患、遺伝子疾患、自己免疫疾患、および免疫関連疾患。
【0100】
ある実施態様において、本発明の方法を用いて、例えば単離された細胞、組織、および臓器を含む、低酸素性条件または虚血性条件に供された生体外生物物質の生存率を高める。このような生体外生物材料の具体的な例には、血小板および他の血液生成物、並びに移植されるべき組織および臓器が含まれる。
【0101】
一実施態様において、例えば、細胞株または実験用生体が例えば凍結保存および貯蔵の間に低酸素性条件または虚血性条件に意図的に供される場合、本発明の方法を用いて、実験または研究の脈絡における生物材料の生存率を高めてもよい。本発明の方法を用いて、ドナー組織および臓器の生存率を高め、それによりドナー組織がレシピエントに移植されて血流が回復されなければならない前の時間を延長してもよい。これらの方法は、他の保存料および酸素灌流の使用を含む近年の保存方法と組み合わせてもよい。本発明は、貯蔵の間に、特定の実施態様においては無酸素性環境に保存された血小板を含む血小板を、有効量の本発明の化合物と接触させることを含む、血小板の生存率を高める方法を提供する。
【0102】
本発明はまた、非生存の生物材料を保存することおよび非生物材料の保存期間を維持しまたは延長することの両方のための方法および組成物も提供する。これらの方法は、非生存の生物物質または非生物材料を本発明の化合物と接触させることを含む。
【0103】
ある実施態様において、生物材料に提供される本発明の化合物の量は、約、少なくとも、少なくとも約、または多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、441、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000mg、mg/kg、もしくはmg/m2、または本明細書で導き出せる任意の範囲である。あるいは、量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、441、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、
770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000 mMもしくはM、または本明細書で導き出せる任意の範囲として表してもよい。
【0104】
本発明の種々の実施態様において、生物材料は、本発明の化合物に、約、少なくとも、少なくとも約、または多くとも約30秒、1, 2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日またはそれより長く、および本明細書の任意の範囲もしくは組み合わせの間、曝露される。
【0105】
さらにその上、投与が静脈内である場合、下記のパラメータを適用してもよいことが考慮に入れられる。約、少なくとも約、または多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100 gtts/分またはμgtts/分、あるいは本明細書で導き出せる任意の範囲。いくつかの実施態様において、溶液の量は、本発明の化合物の濃度に応じて、容積によって具体化される。時間の量は、約、短くとも約、または長くとも約1, 2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60分、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24 時間、1、2、3、4、5、6、7日、1、2、3、4、5週間、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月、あるいは本明細書で導き出せる任意の範囲であり得る。
【0106】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、441、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000 mLもしくはL、または本明細書における任意の範囲の容積を、全体にわたってまたは単一のセッションにおいて投与してもよい。
【0107】
下記の反応スキームは、本発明の代表的な化合物、例えば構造(I):
【化17】
の化合物を製造する方法を示し、式中、R1、R2、およびnは、上記に定義したとおりである。当業者が、類似の方法によってまたは当業者に公知の他の方法を組み合わせることによってこれらの化合物を製造することができるかもしれないことは理解される。当業者が、以下に説明される類似の様式において、以下に具体的に説明されていない構造(I)の他の化合物を、適切な出発成分を用いて必要に応じて合成に関するパラメータを変更することによって製造することができるであろうことも理解される。一般に、出発成分は、Sigma Aldrich、Lancaster Synthesis, Inc、Maybridge、Matrix Scientific、TCI、およびFluorochem USAなどの源から得られてもよく、または当業者に公知の源(例えば、Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure,
5th edition (Wiley, December 2000)参照)に従って合成されてもよく、または本発明において説明されるとおり調製されてもよい。
反応スキーム1
【化18】
【0108】
反応スキーム2において示されるように、nが2である構造(I)の化合物(化合物2)は、Sonavane et al. (Tetrahedron Letters 2007, 48
(34), 6048-6050)によって説明される手順の変更によって調製することができる。R1が本明細書で定義されるとおりである反応スキーム1に関して、構造1の化合物は、購入することができまたは当業者に公知の方法に従って調製することができ(例えば、以下の反応スキーム3参照)、適切な溶媒における硫黄粉末、硫化ナトリウム、および臭化ジデシルジメチル-アンモニウム(DDAB)と反応させて、構造2のジスルフィドを生じることができる。
反応スキーム2
【化19】
【0109】
反応スキーム2において示されるように、nが3である構造(I)の化合物(化合物2)およびnが4である構造(I)の化合物(化合物4)は、Derbesy et al. (Tetrahedron Letters 1994, 35 (30), 5381-5384)によって説明される手順の変法によって調製することができる。まず、構造1の化合物を購入しまたは当業者に公知の方法に従って調製して(例えば、以下の反応スキーム3参照)、適切な溶媒系、例えばピリジン(Py)およびジエチルエーテル(Et2O)において、低い温度で塩化硫黄(CISSCI)と反応させて、構造2のトリスルフィド化合物を得ることができる。次に、構造3の化合物を購入してまたは当業者に公知の方法に従って調製して、適切な溶媒系、例えばピリジンおよびジエチルエーテルにおいて、低い温度で構造2の化合物と反応させて、構造4の化合物を生じることができる。当業者は、nが4ではない構造(I)の他の化合物を、上記の手順の変法によってまたは当業者に公知の他の方法を通じて調製することができることを認めるであろう。
反応スキーム3
【化20】
【0110】
反応スキーム1および2に関するいくつかの実施態様において、化合物1のR1は、アラルキル基またはヘテロアリールアルキル基である。これらの実施態様において、構造1の化合物は、市販のものを購入してもよいか、またはAがアリール基もしくはヘテロアリール基である反応スキーム3に従って調製してもよい。簡潔には、構造5の化合物は、DMFなどの適切な溶媒においてチオアート6で処理され、構造7の化合物を得ることができる。次に、構造7の化合物を、THFまたはH2O/メタノールなどの適切な溶媒においてジメチルアミンまたは炭酸カリウムなどの適切な塩基で処理して、構造8の化合物を得ることができる。
反応スキーム4
【化21】
【0111】
nが5である構造(I)の化合物(化合物10)は、直接的な挿入アプローチによって調製することができる(Hou, Y.,
Abu-Yousef, L, Harpp, D. Tetrahedron Letters 41 (2000), 7809-7812参照)。R1およびR2が本明細書で定義されるとおりである反応スキーム4に関して、構造9のジスルフィド化合物を購入し、または当業者に公知の方法に従って調製し、ジクロロメタンなどの適切な溶媒において1-クロロ-3-トリチルトリスルファンと反応させて、構造10のペンタスルフィドを生じる。
【0112】
下記の実施例は、説明の目的のために提供され、これに限定されない。
【0113】
実施例
実施例1
代表的なジスルフィド化合物の合成
下記のジスルフィド化合物を、下記の一般的な手順によって上記の反応スキームに従って調製する:水(1.25mL)における硫黄粉末(2.5mmol)および硫化ナトリウム(5mmol)の混合物を50℃で0.5時間激しく撹拌した後、室温に冷却した。この混合物に、臭化ジデシルジメチル-アンモニウム(DDAB、4モル%)を添加した後、クロロホルム(1.25mL)における臭化物(すなわち、R1-Br)(5mmol)を添加した。室温で一晩撹拌した後、この反応混合物を水(10mL)に注ぎ、ジエチルエーテル(15mL×3)で抽出した。組み合わせた抽出物を水(10mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、乾燥するまで蒸発させた。所望のジスルフィドを、10%CH2Cl2/ヘキサンを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【表1】
【0114】
実施例2
代表的なトリスルフィド化合物の合成
下記のトリスルフィド化合物を、上記の反応スキーム2に従って調製する。
【表2】
【0115】
実施例3
代表的なテトラスルフィド化合物の合成
下記のテトラスルフィド化合物を、R1およびR2が本明細書に定義されるとおりである上記の反応スキームに従って、下記の一般的な手順によって調製する:無水ジエチルエーテル(12.5mL)におけるメルカプタン(すなわち、R1-SH)(5mmol)およびピリジン(5mmol)の溶液を0.5時間かけて、25mLの無水エーテルにおける塩化硫黄(5mmol)の撹拌した溶液(-78℃)に滴下して添加した。反応混合物を-78℃で0.5時間アルゴン下で撹拌した後、無水ジエチルエーテル(12.5mL)における第二のメルカプタン(すなわちR2-SH)(5mmol)およびピリジン(5mmol)を添加した。-78℃でさらに0.5時間撹拌した後、反応物を水(25mL)の添加によって急冷し、室温に加温させておいた。有機層を分離し、水性洗浄液のpHがほぼ中性になるまで、水(25mL)で数回洗浄した。有機層を乾燥するまで蒸発させた。所望のポリスルフィドをシリカゲルカラムクロマトグラフィー、ヘキサンからの再結晶、または分取HPLC(カラム:Phenomenex、250×10mm、10ミクロ、Luna 10μ)のいずれかによって精製した。
【表3】
【0116】
実施例4
本発明のペンタスルフィド化合物
下記のペンタスルフィド化合物を、上記の反応スキーム4に従って調製する。
【表4】
【0117】
実施例5
モノブロモビマン誘導体化を介したHEPES緩衝液におけるポリスルフィド化合物からのスルフィド放出の分析
化合物(3-1)、(3-2)、および(3-3)を90:10のエタノール:PEG(ポリエチレングリコール)-300+0.1%TFA(トリフルオロ酢酸)に40mMの濃度に溶解した。このストック溶液をHEPES緩衝液(50mM、pH8.0)において4.2mMの濃度にさらに希釈した。次に、試験化合物をHEPES(50mM、pH8.0)に385μMの終濃度で添加した。試験化合物を有するまたは有さない200μLのHEPESを、200μLのモノブロモビマン(10mM)および200μLのHEPES(50mM、pH8.0)を含むガラスバイアルに、試験化合物の添加後の下記の時点で添加した:10分、30分、および120分。バイアルを軌道振蘯機において正確に10分間インキュベートした後、2mLの酢酸エチルを添加し、最短でも10分間転がした。次に、バイアルを1200rpmで7〜10分間遠心分離した後、1mLの有機相を蒸発バイアルに移した。次に、有機相を窒素流の下で乾燥させ、アセトニトリルに取り、HPLCによって分析した。種々のインキュベーション時間におけるスルフィド濃度を図1に示す。
【0118】
実施例6
モノブロモビマン誘導体化を介した緩衝液+グルタチオンにおけるポリスルフィド化合物からのスルフィド放出の分析
化合物(3-1)、(3-2)、および(3-3)を90:10のエタノール:PEG(ポリエチレングリコール)-300+0.1%TFA(トリフルオロ酢酸)において40mMの濃度に溶解した。このストック溶液をHEPES緩衝液(50mM、pH8.0)において4.2mMの濃度にさらに希釈した。次に、試験化合物をHEPESまたはHEPES+グルタチオン(GSH、500μM)に385μMの終濃度で添加した。試験化合物を有するまたは有さない200μLのHEPES/HEPES+GSHを、200μLのモノブロモビマン(10mM)および200μLのHEPES(50mM、pH8.0)を含むガラスバイアルに、試験化合物の添加後の下記の時点で添加した:10分、30分、および120分。バイアルを軌道振蘯機において正確に10分間インキュベートした後、2mLの酢酸エチルを添加し、最短でも10分間転がした。次に、バイアルを1200rpmで7〜10分間遠心分離した後、1mLの有機相を蒸発バイアルへと移した。次に、有機相を窒素流の下で乾燥させ、アセトニトリルに取り、HPLCによって分析した。種々のインキュベーション時間におけるスルフィド濃度を図2および図3に示す。
【0119】
実施例7
H2Sプローブを介した緩衝液+グルタチオンにおけるポリスルフィド化合物からのスルフィド放出の分析
反応容器として機能する機器は、閉鎖型チャンバー呼吸計(Oroboros oxygraph O2k)であった。呼吸計は、チャンバーフロア近くで溶液酸素濃度をモニターするためのポーラログラフ酸素センサー(POS)を各々固定された16mm内径の二重パイレックス(登録商標)チャンバーを有しており、各々、15.8mmの外径のPVDFまたはPEEKストッパーを有しており、このストッパーは、限定された酸素メモリを呈し、チャンバー容積を1〜5mLに調整するよう挿入することができる材料である。ストッパーは、1mmの直径の注射ポートと、PHSSおよびpH電極を保持するための2つの2.5mmポートを有していた。チャンバーに挿入されると、液相の上の空気または気体がすべて、注射ポートを通じてチャンバーから除去され、チャンバーに液体溶液のみを残した。
【0120】
スルフィド放出化合物(SRC)をアッセイするためのプロトコールは、まず、スルフィドストックを0.5〜40μMで連続的に添加することによって、50μMのDPTAを含む2mLの無酸素性のリン酸緩衝塩類溶液(PBS)で満たしたチャンバーにおいて、Na2Sを用いてPHSSを較正することであった。較正が一旦完了すると、チャンバー溶液をまず無酸素性PBSおよびDPTAと置換した後、関心対象のSRCをほぼ400μMの濃度で添加して、H2S放出の背景割合を得、通常無視できる割合を観察した。およそ5分後、500μMのグルタチオン(GSH)の注射をして、H2S放出を触媒した。結果において還元型GSHとSRCとの反応はポリチオールSRCを分解し、それによりH2Sを溶液中に放出し、PHSSを用いて測定した。H2S放出の初期速度、放出が完了した場合のチャンバーにおけるH2Sの程度、および放出持続時間はすべて、各SRCを特徴づけるために得られた。種々の化合物についての80分間にわたるH2S放出の量を図4にまとめる。
【0121】
実施例8
モノブロモビマン誘導体化を介したラット鮮血におけるポリスルフィド化合物からのスルフィド放出の分析
化合物(3-1)、(3-2)、および(3-3)を90:10のエタノール:PEG(ポリエチレングリコール)-300+0.1%TFA(トリフルオロ酢酸)において40mMの濃度に溶解した。このストック溶液を、HEPES緩衝液(50mM、pH8.0)において4.2mMの濃度にさらに希釈した。硫化ナトリウムを0.9%NaClにおいて4.2mMの濃度に希釈した。次に、試験化合物を385μMの終濃度でラット鮮血に添加した。また、血液に希釈ビヒクル(90:10のエタノール:PEG-300+0.1%TFAまたは40:40:20のアセトニトリル:アセトン:PEG-300+0.1%TFA)を対照として加えた。試験化合物を加えた200μLの血液を、200μLのモノブロモビマン(10mM)および200μLのHEPES(50mM、pH8.0)を含むガラスバイアルに、加えた後の下記の時点で添加した:0分、10分、20分、30分、40分、50分、60分、80分、および110分。未処理の血液またはビヒクルを加えた血液を反応混合物に下記の時点で添加した:0分、30分、および110分。未処理の/加えた血液または加えた媒体の添加後、バイアルを軌道振蘯機において正確に10分間インキュベートした後、2mLの酢酸エチルを添加し、最短でも10分間転がした。次に、バイアルを1200rpmで7〜10分間遠心分離した後、1mLの有機相を蒸発バイアルへと移した。次に、有機相を窒素流の下で乾燥させ、アセトニトリルに取り、HPLCによって分析した。種々のインキュベート時間におけるスルフィド濃度を図5に示す。
【0122】
実施例9
ポリスルフィド化合物の投与後のラット血中スルフィドの検出
化合物(3-1)、(3-5)、(3-7)、(3-8)、または硫化ナトリウムの投与後のラット血中のスルフィドレベルを測定した。結果を図6〜図11に示す。下記の例は、ラットにおける化合物(3-1)の投与を示す。実験は、9〜10週齢の雄Sprague Dawleyラット(276〜300g)(Charles River Laboratory, Boston
Massachusetts)からなる3〜4個体の群を用いて、頚静脈カテーテル(JVC)および大腿静脈カテーテル(FVC)により実施した。実験手順の開始前1〜3日間、動物を温度および湿度の制御された環境において回復させおよび順化させた。食餌および水を自由摂取で提供した。
【0123】
基線血液試料(最大0.4mL)を各ラットから頚静脈カニューレを通じて、23gルアースタブアダプターで固定したヘパリンコーティングした1mL注射器に収集した。試料採取後、対応する容積の20:1の塩類溶液:へパリンを、頚静脈カニューレを通じて動物にゆっくりと注射した。ビヒクル(EtOH/PEG300+0.1%クエン酸)における化合物(3-1)の急速投与(7.5mg/kg静脈内注射、15mg/kg静脈内注射、30mg/kg静脈内注射、または60mg/kg静脈内注射)を、大腿静脈カテーテルを通じて注射した。投与10分後、30分後、120分後、および24時間後、48時間後に、頚静脈カニューレを介して、23gルアースタブアダプターを有するヘパリンコーティングした1mL注射器を用いて、血液(最大0.4mL)を収集した。試料採取後、対応する容積の20:1(塩類溶液:ヘパリン)を、頚静脈カニューレを通じて動物にゆっくりと注射した。
【0124】
血液試料を、本明細書において説明したとおり即時処理した。簡潔には、200μLの血液をモノブロモビマン誘導体化試薬のバイアルに添加した。バイアルを軌道振蘯機に配置した。酢酸エチルを各試料に添加し回転させた。バイアルを転がし機に最短でも10分間配置したが、60分間以下であり、その後遠心分離した。各試料の有機相の試料を蒸発バイアルに入れ、窒素下で乾燥させた、48時間血液から回収したスルフィドレベルをHPLCによって測定した。化合物の血漿濃度対時間のプロットを構築した。静脈内投与後の化合物の基本的な薬物動態パラメータを、WinNonlin.Pharmacokinetics分析ソフトウェアを用いた結晶データの非区画化分析(NCA)から得た。
【0125】
実施例10
マウス肝臓虚血-再灌流損傷モデルにおける肝損傷からの細胞保護利点の決定
肝臓虚血-再灌流(I/R)損傷のモデルにおける細胞保護利点を提供する化合物(3-1)の能力をマウスにおいて試験した。本研究において、化合物(3-1)の肝臓虚血後および5時間の再灌流期の直前の腹腔内急速投与が、血清において測定された肝トランスアミナーゼであるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)を低下させることが示された。対照的に、ビヒクルによる処理は、肝I/R損傷における保護的利点を何ら提供しなかった。
【0126】
本研究において用いられたマウスは、8〜10週齢のC57-BL6/Jマウス(Jackson Laboratory, Bar Harbor, Maine)であった。食餌および水を自由摂取で提供した。実験手順の開始前に、試験動物を温度および湿度の制御された環境において順化させておいた。
【0127】
マウスをケタミンおよびキシラジンで麻酔し、手術手順の間に加温しながら維持して、肝虚血-再灌流(I/R)損傷を誘発させた。具体的には、正中線切開を実施して、肝臓を露出させ、ヘパリンを注射して血液凝固を予防した。肝動脈および門脈の両方を微小動脈瘤クランプで挟み、肝臓の左葉および中央葉を虚血にした。具体的には、虚血は45分間進行し、肝臓は、その元の位置で腹腔において維持され、0.9%正常塩類溶液で浸漬したガーゼで湿気を保った。対照マウスは、偽手術を受けたが、肝血流は微小動脈瘤クランプを用いて減少させなかった。5時間の肝再灌流の後、分光光度計および市販の試薬(Sigma-Aldrich)を用いて血清肝トランスアミナーゼレベル(ALT)を試験した。
【0128】
マウス肝虚血-再灌流損傷試験動物を4群に無作為に分けた。第1群:ビヒクル(EtOH:PEG300+0.1%クエン酸)で処理;第2群:7mg/kgの化合物(3-1)で処理;第3群:15.0mg/kgの化合物(3-1)で処理。図12に示すように、ALTレベルは、7mg/kgにおいて統計的に有意な低下に到達した。ALTレベルは、ビヒクルと比較して、2つの処理群(7.0mg/kgおよび15.0mg/kg)において低下した。
【0129】
実施例11
マウス心筋虚血再灌流モデルにおける心臓保護利点
心筋虚血-再灌流(I/R)損傷モデルにおける心臓保護利点を提供する化合物(3-1)の能力をマウスにおいて試験した。本研究において、虚血後および24時間の再灌流期の5分前に左心室腔へ化合物(3-1)を急速投与すると、心筋虚血が低下し、危険面積の百分率としての心筋梗塞の大きさが減少したことが示される。本研究において用いたマウスは、8〜10週齢のC57-BL6/Jマウス(Jackson Laboratory, Bar Harbor, Maine)であった。食餌および水を自由摂取で提供した。試験動物は、実験手順の開始前に温度および湿度の制御された環境において順化させておいた。
【0130】
マウスをケタミンおよびペントバルビタールナトリウムで麻酔し、手術手順の間に加温しながら維持して、心筋虚血-再灌流(I/R)損傷を誘発させた。マウスの腹側を手術台に置き、挿管し、Model 683齧歯類換気装置(一回換気量:2.2mL、呼吸数:100%の酸素供給を用いて換気装置側部ポートを介して1分間あたり122回)(Harvard Apparatus)に接続した。胸部を開き、近位の左の主要な冠動脈を露出させ、結紮した。心筋および冠動脈の閉塞を30分間維持した後、縫合糸を除去し、24時間再灌流させた。
【0131】
虚血後の24時間の再灌流の後、マウスを麻酔し、挿管し、齧歯類換気装置に接続した。総頚動脈に通したカテーテルにエバンスブルー色素を注射した。正中線胸骨切開術を実施し、左の主要な冠動脈を先の結紮と同じ位置で再結紮した。虚血区域の非虚血区域からの分離をエバンスブルー色素で可視化し、心臓を迅速に摘出し、5枚の1mm切片に短軸に沿って連続的に分け、1.0%の塩化2,3,5-トリフェニルテトラゾリウム(Sigma-Aldrich)において37℃で5分間インキュベートし、危険区域内の生心筋および非生心筋を分離した。5枚の心筋切片(1mm)を各々秤量し、梗塞の面積、危険にある面積(AAR)、および非虚血性左心室を、試料同一性に対して盲検の観察者によってコンピュータ支援型面積測定を用いて評価した。危険にある左心室面積(AAR)および梗塞の大きさの決定についての手順に関しては、Jones, S.P. et al. Am. J.
Physiol. Heart Circ. Physiol. (2004) 286:H276-H282を参照されたい。
【0132】
StatViewソフトウェアバージョン5.0(SAS Institute)を用いて、Bonferroniの事後分析をともなう二元配置分散分析によってデータを分析した。データは、平均±平均の標準誤差として報告される。0.05未満のp値は、有意と考えられた。
【0133】
10〜13個体のマウス心筋虚血再灌流モデル試験群を4つの処理群に無作為に分けた。第1群:ビヒクル(EtOH/PEG300+0.1%クエン酸)で処理;および第2群:7mg/kgの化合物(3-1)による処理。本研究において、虚血30分後および24時間灌流期の5分前に左心室腔へ化合物(3-1)を急速投与すると、危険面積の百分率としての心筋梗塞の大きさが減少した(図13)。ビヒクルは、心筋I/R損傷における保護的利点を何ら提供しなかった。
【0134】
本明細書において引用されるすべての米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物は、本明細書と矛盾しない程度まで、それらのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれる。
【0135】
上記から、本発明の具体的な実施態様が説明の目的のために本明細書に記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更がなされてもよいことは認められるであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲によることを除いては限定されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防するための方法であって、該生物材料を有効量の構造(I):
【化1】
の化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグと接触させることを含み、式中:
R1およびR2が各々独立して、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され;かつ
nが、2〜5の整数である、該方法。
【請求項2】
nが、2、3、または5である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
nが、4である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
R1およびR2が各々、置換または非置換アリールである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
R1およびR2が各々、置換または非置換フェニルである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、下記の構造(II):
【化2】
またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグを有し、
式中:
nが、2、3、4、または5であり;かつ
R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、R2d、およびR2eが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
nが、2、3、または5である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、下記の構造:
【化3】
のうちの1つを有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
nが、4である、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、下記の構造:
【化4】
のうちの1つを有する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
R1およびR2が各々、置換または非置換アラルキルである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
R1およびR2が各々、置換または非置換ベンジルである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が、下記の構造(III):
【化5】
またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグを有し、
式中:
nが、2、3、4、または5であり;かつ
R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、R2d、およびR2eが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
nが、2、3、または5である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、下記の構造:
【化6】
のうちの1つを有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
nが4である、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が、下記の構造:
【化7】
のうちの1つを有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記化合物が、下記の構造(3-1)または(3-5):
【化8】
のうちの1つを有する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
R1およびR2が各々、置換または非置換ヘテロアリールである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記化合物が、下記の構造:
【化9】
のうちの1つを有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
R1およびR2が各々、置換または非置換ヘテロアリールアルキルである、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記化合物が、下記の構造:
【化10】
のうちの1つを有する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記接触が、注射による、注入による、連続注入による、吸収による、吸収による、浸漬による、限局性灌流による、カテーテルを介する、または洗浄を介する、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸腔内、気管内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所的(topically)、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、眼内、皮下的、結膜下、経皮的、小胞内、粘膜的、心膜内、臍部内、眼内、経口的、局所的(locally)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記低酸素性条件または虚血性条件が、前記生物材料に対する損傷、前記生物材料に有害な影響を与える疾患の発症もしくは進行、または前記生物材料の出血から結果として生じる、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記生物材料が、前記損傷前に、前記疾患の発症もしくは進行の前に、または前記生物材料の出血前に前記化合物と接触する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記損傷が、外部の物理的起源に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記損傷が手術である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記損傷、前記疾患の発症もしくは進行、または前記生物材料における出血から結果として生じる障害または死滅から前記生物材料を保護する量および時間で、前記生物材料が前記化合物と接触する、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記生物材料が、細胞、組織、臓器、生体、および動物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項30】
前記生物材料が動物である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記動物が哺乳類である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記哺乳類がヒトである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記生物材料が血小板を含む、請求項1記載の方法。
【請求項34】
前記生物材料が移植されるべきである、請求項1記載の方法。
【請求項35】
前記生物材料が、再灌流損傷の危険にある、請求項1記載の方法。
【請求項36】
前記生物材料が、出血性ショックの危険にある、請求項1記載の方法。
【請求項37】
前記低酸素性条件または虚血性条件が結果として、心筋梗塞、敗血症、脈管異常、硬変症、脈管の石灰化沈着、薬剤処理によって誘発される胃の損傷、熱傷、肺の損傷、好中球接着、白血球仲介性炎症、勃起不全、過敏性腸症候群、炎症後過敏症後における抗侵害受容効果、急性冠症候群、心停止、計画心臓バイパス手術、うっ血性心不全、新生児の低酸素症/虚血、心筋梗塞性再灌流損傷、不安定性狭心症、血管形成術後、動脈瘤、外傷、脳卒中、出血性ショック、および/または失血を生じる、請求項1記載の方法。
【請求項38】
下記の構造(IV):
【化11】
を有する化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグ
(式中:
R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、およびR2dが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルであり、但し、下記を条件とする:
(a)R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、およびR2dがすべて水素というわけではなく;
(b)R1b、R1c、R2b、およびR2cがすべて水素である場合、R1a、R1d、R2a、およびR2d がすべてクロロというわけではなく;かつ
(c)R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、およびR2cがすべて水素である場合、R1dおよびR2dが両方とも-CO2Hまたは-CO2CH3ではない。)。
【請求項39】
前記化合物が、下記の構造:
【化12】
のうちの1つを有する、請求項38記載の化合物。
【請求項40】
下記の構造(V):
【化13】
を有する化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグ
(式中:
R3およびR4が各々独立して、置換または非置換ヘテロアリールからなる群から選択され、但し、R3およびR4が両方とも置換または非置換イミダゾリジン-2,4-ジオネイルではないことを条件とする。)。
【請求項41】
R3およびR4が各々独立して、置換または非置換イミダゾリル、置換または非置換オキサゾリル、置換または非置換テトラゾリル、および置換または非置換ピリジニルからなる群から選択される、請求項40記載の化合物。
【請求項42】
前記化合物が、下記の構造:
【化14】
のうちの1つを有する、請求項41記載の化合物。
【請求項43】
請求項38〜42のいずれか一項記載の化合物との組み合わせで医薬として許容し得る担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項44】
前記医薬組成物がさらに、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の錯化剤、および/または1つ以上の共溶媒を含む、請求項43記載の組成物。
【請求項1】
低酸素性条件または虚血性条件に曝露された生物材料の損傷を治療しまたは予防するための方法であって、該生物材料を有効量の構造(I):
【化1】
の化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグと接触させることを含み、式中:
R1およびR2が各々独立して、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され;かつ
nが、2〜5の整数である、該方法。
【請求項2】
nが、2、3、または5である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
nが、4である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
R1およびR2が各々、置換または非置換アリールである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
R1およびR2が各々、置換または非置換フェニルである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、下記の構造(II):
【化2】
またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグを有し、
式中:
nが、2、3、4、または5であり;かつ
R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、R2d、およびR2eが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
nが、2、3、または5である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、下記の構造:
【化3】
のうちの1つを有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
nが、4である、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、下記の構造:
【化4】
のうちの1つを有する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
R1およびR2が各々、置換または非置換アラルキルである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
R1およびR2が各々、置換または非置換ベンジルである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が、下記の構造(III):
【化5】
またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグを有し、
式中:
nが、2、3、4、または5であり;かつ
R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R2a、R2b、R2c、R2d、およびR2eが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
nが、2、3、または5である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、下記の構造:
【化6】
のうちの1つを有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
nが4である、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が、下記の構造:
【化7】
のうちの1つを有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記化合物が、下記の構造(3-1)または(3-5):
【化8】
のうちの1つを有する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
R1およびR2が各々、置換または非置換ヘテロアリールである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記化合物が、下記の構造:
【化9】
のうちの1つを有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
R1およびR2が各々、置換または非置換ヘテロアリールアルキルである、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記化合物が、下記の構造:
【化10】
のうちの1つを有する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記接触が、注射による、注入による、連続注入による、吸収による、吸収による、浸漬による、限局性灌流による、カテーテルを介する、または洗浄を介する、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸腔内、気管内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所的(topically)、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、眼内、皮下的、結膜下、経皮的、小胞内、粘膜的、心膜内、臍部内、眼内、経口的、局所的(locally)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記低酸素性条件または虚血性条件が、前記生物材料に対する損傷、前記生物材料に有害な影響を与える疾患の発症もしくは進行、または前記生物材料の出血から結果として生じる、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記生物材料が、前記損傷前に、前記疾患の発症もしくは進行の前に、または前記生物材料の出血前に前記化合物と接触する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記損傷が、外部の物理的起源に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記損傷が手術である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記損傷、前記疾患の発症もしくは進行、または前記生物材料における出血から結果として生じる障害または死滅から前記生物材料を保護する量および時間で、前記生物材料が前記化合物と接触する、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記生物材料が、細胞、組織、臓器、生体、および動物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項30】
前記生物材料が動物である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記動物が哺乳類である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記哺乳類がヒトである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記生物材料が血小板を含む、請求項1記載の方法。
【請求項34】
前記生物材料が移植されるべきである、請求項1記載の方法。
【請求項35】
前記生物材料が、再灌流損傷の危険にある、請求項1記載の方法。
【請求項36】
前記生物材料が、出血性ショックの危険にある、請求項1記載の方法。
【請求項37】
前記低酸素性条件または虚血性条件が結果として、心筋梗塞、敗血症、脈管異常、硬変症、脈管の石灰化沈着、薬剤処理によって誘発される胃の損傷、熱傷、肺の損傷、好中球接着、白血球仲介性炎症、勃起不全、過敏性腸症候群、炎症後過敏症後における抗侵害受容効果、急性冠症候群、心停止、計画心臓バイパス手術、うっ血性心不全、新生児の低酸素症/虚血、心筋梗塞性再灌流損傷、不安定性狭心症、血管形成術後、動脈瘤、外傷、脳卒中、出血性ショック、および/または失血を生じる、請求項1記載の方法。
【請求項38】
下記の構造(IV):
【化11】
を有する化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグ
(式中:
R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、およびR2dが各々独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C1-C8アルキルアミノ、および-CO2Zからなる群から選択され、ここで、Zが水素または置換もしくは非置換C1-C8アルキルであり、但し、下記を条件とする:
(a)R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、およびR2dがすべて水素というわけではなく;
(b)R1b、R1c、R2b、およびR2cがすべて水素である場合、R1a、R1d、R2a、およびR2d がすべてクロロというわけではなく;かつ
(c)R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、およびR2cがすべて水素である場合、R1dおよびR2dが両方とも-CO2Hまたは-CO2CH3ではない。)。
【請求項39】
前記化合物が、下記の構造:
【化12】
のうちの1つを有する、請求項38記載の化合物。
【請求項40】
下記の構造(V):
【化13】
を有する化合物、またはその立体異性体、医薬として許容し得る塩、もしくはプロドラッグ
(式中:
R3およびR4が各々独立して、置換または非置換ヘテロアリールからなる群から選択され、但し、R3およびR4が両方とも置換または非置換イミダゾリジン-2,4-ジオネイルではないことを条件とする。)。
【請求項41】
R3およびR4が各々独立して、置換または非置換イミダゾリル、置換または非置換オキサゾリル、置換または非置換テトラゾリル、および置換または非置換ピリジニルからなる群から選択される、請求項40記載の化合物。
【請求項42】
前記化合物が、下記の構造:
【化14】
のうちの1つを有する、請求項41記載の化合物。
【請求項43】
請求項38〜42のいずれか一項記載の化合物との組み合わせで医薬として許容し得る担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項44】
前記医薬組成物がさらに、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の錯化剤、および/または1つ以上の共溶媒を含む、請求項43記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−505921(P2012−505921A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532294(P2011−532294)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/061046
【国際公開番号】WO2010/045582
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511091117)イカリア,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/061046
【国際公開番号】WO2010/045582
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511091117)イカリア,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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