説明

作業機械における制御システム

【課題】エンジンからトルク供給されるメインポンプと、アキュムレータからトルク供給される専用ポンプとを設けた作業機械において、作業機械全体としての消費トルクが増加してしまうことを防止する一方、作業機械のパワーを上げたい場合に対応できるようにする。
【解決手段】第一、第二メインポンプへの供給トルクと専用ポンプへの供給トルクとを合計したトルクが、エンジンから第一、第二メインポンプに供給可能なトルクとして予め設定される許容トルクTAの値を越えないように制限するトルク制限制御と、該制限を行うことなく第一、第二メインポンプおよび専用ポンプに供給可能なトルクを供給するパワーアップ制御との両方の制御を行えるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプにトルクを供給するトルク供給源として、エンジンとアキュムレータとが設けられた作業機械における制御システムの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルやクレーン等の作業機械は、昇降自在な作業部を備えると共に、該作業部の昇降は、油圧ポンプから圧油供給される油圧シリンダの伸縮作動に基づいて行うように構成されているが、このものにおいて、従来、作業部の下降時に油圧シリンダの重量保持側油室から油タンクに排出される油は、作業部の自重による急激な落下を防止するため、油圧シリンダの油供給排出制御を行うコントロールバルブに設けられた絞りによってメータアウト制御されるように構成されている。つまり、地面より上方に位置している作業部は位置エネルギーを有しているが、該位置エネルギーは、前記コントロールバルブの絞りを通過するときに熱エネルギーに変換され、さらに該熱エネルギーはオイルクーラーによって大気中に放出されることになって、無駄なエネルギー損失となる。
そこで、作業部の有する位置エネルギーを回収、再利用するために、作業部昇降用の油圧シリンダに加えて補助油圧シリンダ(アシストシリンダ)を設け、作業部の下降時に、補助油圧シリンダの重量保持側油室から排出される油をアキュムレータに蓄圧すると共に、作業部の上昇時に、アキュムレータに蓄圧された圧油を補助シリンダの重量保持側油室に供給するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第2582310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、前記特許文献1のものは、作業部の下降時に、補助油圧シリンダからの排出油はアキュムレータに蓄圧されるものの、作業部昇降用油圧シリンダからの排出油はコントロールバルブを経由して油タンクに排出されるようになっており、作業部の有する位置エネルギーの一部しか回収されないことになる。しかも、アキュムレータに蓄圧された圧油を補助油圧シリンダに供給するにあたり、該供給圧油の圧力や流量を制御するための油圧機器が設けられていない。このため、作業部の上昇速度を正確にコントロールすることができず、作業性に劣るという問題がある。
そこで、補助油圧シリンダを設けることなく、作業部の下降時に、作業部昇降用油圧シリンダからの排出油をアキュムレータに蓄圧すると共に、作業部の上昇時に該アキュムレータに蓄圧された圧油を、油圧ポンプを介して作業部昇降用油圧シリンダに供給するように構成することが提唱される。この場合、上記油圧ポンプには、アキュムレータの高圧の蓄圧油によってトルクが供給されることになる。
ところで、一般に、油圧ショベルやクレーン等の作業機械には、作業部昇降用油圧シリンダだけでなく、走行モータや旋回モータ、あるいは作業部を前後せしめる油圧シリンダ等の複数の油圧アクチュエータが設けられると共に、これら油圧アクチュエータに圧油供給するべく、エンジンから供給されるトルクによって駆動する油圧ポンプ(メインポンプ)が設けられている。このように、エンジンからトルク供給される油圧ポンプが設けられている作業機械において、前述したようにアキュムレータの蓄圧油を油圧ポンプを介して作業部昇降油圧シリンダに供給するように構成する場合、作業機械には、複数の油圧ポンプにトルクを供給するトルク供給源として、エンジンとアキュムレータとが設けられていることになる。
しかるに、前記エンジン以外にもトルク供給源が設けられているものにおいて、エンジンから出力されるトルクをメインポンプにそのまま供給すると、作業機械全体が消費するトルクとしては、エンジンの出力トルクにアキュムレータから供給されるトルクがプラスされることになって、作業機械全体としてのトルク消費量が増加してしまい、省エネルギー化を達成できないという問題がある。一方、省エネルギー化のみ重視すると、作業機械の行う作業内容によってはパワー不足と感じられたり、作業効率が低下してしまう場合もあり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、エンジンから供給されるトルクにより駆動するメインポンプと、アキュムレータから供給されるトルクにより駆動する専用ポンプとを設けてなる作業機械において、前記メインポンプおよび専用ポンプのトルク制御を行う制御装置を設けると共に、該制御装置は、メインポンプへの供給トルクと専用ポンプへの供給トルクとを合計したトルクが、エンジンからメインポンプに供給可能なトルクとして予め設定される許容トルクの値を越えないようにメインポンプおよび専用ポンプへの供給トルクを制限するトルク制限制御と、該制限を行うことなくメインポンプおよび専用ポンプに供給可能なトルクを供給するパワーアップ制御との何れか一方のトルク制御を選択して実行することを特徴とする作業機械における制御システムである。
そして、この様にすることにより、トルク制限制御が実行されている場合には、メインポンプおよび専用ポンプに供給されるトルクの合計が、エンジンからメインポンプに供給可能なトルクとして設定される許容トルクの値を越えてしまうことなく、而して、トルク供給源としてエンジンだけでなくアキュムレータが設けられている作業機械であっても、作業機械全体としての消費トルクの増加を抑えることができると共に、アキュムレータからトルク供給される分、エンジンからの供給トルクを減らすことができて、省エネルギー化を確実に達成することができる。一方、パワーアップ制御が実行されている場合には、メインポンプおよび専用ポンプにそれぞれ供給可能なトルクが供給されるから、エンジンからの供給トルクとアキュムレータからの供給トルクとをフルに活用できることになって、大きなパワーの必要とする作業や作業速度を上げたいような場合であっても、充分に対応することができ、作業効率の向上に大きく貢献できる。
請求項2の発明は、制御装置は、オペレータが任意に操作するパワーアップ用操作具の操作に基づいて、パワーアップ制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の作業機械における制御システムである。
そして、この様にすることにより、作業中にパワー不足と感じたり作業速度が遅いと感じたりした場合に、パワーアップ用操作具を操作するだけでパワーアップ制御が実行されることになり、而して、オペレータの要望に応じて簡単且つ瞬時に作業機械のパワーアップを実現できることになる。
請求項3の発明は、制御装置は、作業機械の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であるか否かを判断する運転状態判断手段を有すると共に、該運転状態判断手段の判断に基づいて、パワーアップ制御を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械における制御システムである。
そして、この様にすることにより、運転状態に応じて自動的にパワーアップ制御が行われることになって、作業性、操作性の向上に大きく貢献できる。
請求項4の発明は、運転状態判断手段による作業機械の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であるか否かの判断は、メインポンプおよび専用ポンプから圧油供給される油圧アクチュエータの操作状態に基づいて行うことを特徴とする請求項3に記載の作業機械における制御システムである。
そして、この様にすることにより、作業機械の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であるか否かの判断を、簡単、且つ的確に行うことができる。
請求項5の発明は、運転状態判断手段による作業機械の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であるか否かの判断は、メインポンプおよび専用ポンプの吐出圧に基づいて行うことを特徴とする請求項3に記載の作業機械における制御システムである。
そして、この様にすることにより、作業機械の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であるか否かの判断を、簡単、且つ的確に行うことができる。
請求項6の発明は、運転状態判断手段の判断に基づくパワーアップ制御は、モード設定手段により設定される作業機械の運転モードが予めパワーアップモードに設定されている場合に実行されることを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載の作業機械における制御システムである。
そして、この様にすることにより、例えば、オペレータが省エネルギーを重視して作業を行いたい場合等、オペレータが望まない場合に自動的にパワーアップ制御が実行されてしまうような不具合を回避でき、而して、オペレータの要望により柔軟に対応できる作業機械を提供できる。
請求項7の発明は、制御装置は、アキュムレータの蓄圧状態に基づいてパワーアップ制御を行うことができるか否かを判断すると共に、該判断結果に基づいて報知手段に報知指令を出力することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の作業機械における制御システムである。
そして、この様にすることにより、オペレータは、パワーアップ制御を行うことができるか否かを容易に認識することができる。
請求項8の発明は、アキュムレータは、昇降する作業部の下降時に、該作業部を昇降せしめる油圧シリンダから排出される油を蓄圧する一方、該アキュムレータに蓄圧された油は、作業部の上昇時に専用ポンプを介して油圧シリンダに供給される構成であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の作業機械における制御システムである。
そして、この様にすることにより、昇降する作業部の位置エネルギーを、アキュムレータを用いて有効に回収、再利用することができる作業機械において、メインポンプおよび専用ポンプのトルク制御を適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は作業機械の一例である油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2の上方に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3のフロントに装着される作業部4等の各部から構成され、さらに該作業部4は、基端部が上部旋回体3に上下揺動自在に支持されるブーム5、該ブーム5の先端部に前後揺動自在に支持されるアーム6、該アーム6の先端部に取付けられるバケット7等から構成されている。
【0006】
8は前記ブーム5を上下揺動せしめるべく伸縮作動する左右一対のブームシリンダ(本発明の油圧シリンダに相当する)であって、該ブームシリンダ8は、ヘッド側油室8aの圧力によって作業部4の重量を保持すると共に、該ヘッド側油室8aへの圧油供給およびロッド側油室8bからの油排出により伸長してブーム5を上昇せしめ、また、ロッド側油室8bへの圧油供給およびヘッド側油室8aからの油排出により縮小してブーム5を下降せしめるように構成されている。そして、該ブーム5の昇降によって作業部4全体が昇降すると共に、ブーム5の上昇に伴い作業部4の有する位置エネルギーが増加するが、該位置エネルギーは、後述する油圧制御システムによってブーム5の下降時に回収される一方、該回収されたエネルギーは、ブーム5の上昇時に利用されるようになっている。
【0007】
次いで、前記油圧制御システムについて、図2、図3の回路図に基づいて説明するが、これらの図面において、9、10は油圧ショベル1に搭載のエンジンEにポンプドライブギア部Gを介して連結される第一、第二メインポンプであって、これら第一、第二メインポンプ9、10は、油タンク11から作動油を吸込んで第一、第二ポンプ油路12、13に吐出するように構成されている。
ここで、第一、第二メインポンプ9、10は、前記ブームシリンダ8だけでなく、油圧ショベル1に設けられる各種油圧アクチュエータ(図示しないが、本実施の形態では、アームシリンダ、バケットシリンダ、旋回モータ、走行モータ)の油圧供給源となる可変容量型の油圧ポンプであって、これら第一、第二メインポンプ9、10は、本発明のメインポンプに相当し、エンジンEから供給されるトルクによって駆動する。尚、図2、図3中、丸付きの数字は結合子記号であって、対応する丸付き数字同士が接続される。
【0008】
14、15は前記第一、第二メインポンプ9、10の吐出流量制御を行う第一、第二レギュレータであって、該第一、第二レギュレータ14、15は、後述する制御装置16によって制御されるメインポンプ制御用電磁比例減圧弁17からの制御信号圧を受けて、エンジンから第一、第二メインポンプ9、10への供給トルクを制御するべく作動すると共に、第一、第二メインポンプ9、10の吐出圧力を受けて定馬力制御を行う。さらに第一、第二レギュレータ14、15は、後述するように第一、第二コントロールバルブ18、19のセンタバイパス弁路18f、19bの開口量に対応してポンプ流量を増減せしめるネガティブコントロール流量制御も行うように構成されている。
【0009】
一方、前記第一、第二コントロールバルブ18、19は、第一、第二ポンプ油路12、13にそれぞれ接続される方向切換弁であって、これら第一、第二コントロールバルブ18、19は、第一、第二メインポンプ9、10の吐出油をブームシリンダ8に供給するべく作動する。尚、第一、第二メインポンプ9、10は、前述したように、油圧ショベル1に設けられる各種油圧アクチュエータの圧油供給源となるため、第一、第二ポンプ油路12、13には他の油圧アクチュエータ用のコントロールバルブも接続されるが、これらについては省略する。
【0010】
前記第一コントロールバルブ18は、上昇側、下降側パイロットポート18a、18bを備えたスプール弁で構成されており、そして、両パイロットポート18a、18bにパイロット圧が入力されていない状態では、ブームシリンダ8に対する油給排を行わない中立位置Nに位置しているが、上昇側パイロットポート18aにパイロット圧が入力されることによりスプールが移動して、第一メインポンプ9の圧油をシリンダヘッド側油路20を経由してブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給する一方、ロッド側油室8bからシリンダロッド側油路21に排出された油をリターン油路22を経由して油タンク11に流す上昇側位置Xに切換わる。また、下降側パイロットポート18bにパイロット圧が入力されることにより、前記上昇側位置Xとは反対側にスプールが移動して、ヘッド側油室8aからシリンダヘッド側油路20に排出された油を、再生用弁路18cを経由してシリンダロッド側油路21からロッド側油室8bに供給する下降側位置Yに切換るように構成されている。尚、前記シリンダヘッド側油路20は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに油を給排するべくヘッド側油室8aに接続される油路であり、シリンダロッド側油路21は、ブームシリンダ8のロッド側油室8bに油を給排するべくロッド側油室8bに接続される油路である。
【0011】
ここで、前記下降側位置Yの第一コントロールバルブ18に設けられる再生用弁路18cは、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aとロッド側油室8bとを連通する弁路であって、該再生用弁路18cには、ヘッド側油室8aからロッド側油室8bへの油の流れは許容するが逆方向の流れは阻止するチェック弁18dと、絞り18eとが配されている。而して、前述したように、第一コントロールバルブ18が下降側位置Yのとき、ヘッド側油室8aから排出された油は、再生用弁路18cを介してロッド側油室8bに供給されるが、その流量は、再生用弁路18cに配された絞り18eの開口特性(該絞り18eの開口特性は、第一コントロールバルブ18のスプール移動ストロークに応じて設定される)と、ヘッド側油室8aとロッド側油室8bの差圧とによって変化するようになっている。
【0012】
一方、第二コントロールバルブ19は、上昇側パイロットポート19aを備えたスプール弁で構成されており、そして、上昇側パイロットポート19aにパイロット圧が入力されていない状態では、ブームシリンダ8に対する油給排を行わない中立位置Nに位置しているが、上昇側パイロットポート19aにパイロット圧が入力されることによりスプールが移動して、第二メインポンプ10の圧油をシリンダヘッド側油路20を経由してブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給する上昇側位置Xに切換るように構成されている。
【0013】
また、23、24、25は第一上昇側、第一下降側、第二上昇側電磁比例減圧弁であって、これら各電磁比例減圧弁23、24、25は、制御装置16からの制御信号に基づいて、前記第一コントロールバルブ18の上昇側パイロットポート18a、下降側パイロットポート18a、第二コントロールバルブ19の上昇側パイロットポート19aにそれぞれパイロット圧を出力するべく作動するが、該パイロット圧は、制御装置16から出力される制御信号値の増減に対応して増減するように設定されている。そして、これら第一上昇側、第一下降側、第二上昇側電磁比例減圧弁23、24、25から出力されるパイロット圧の圧力の増減に対応して第一、第二コントロールバルブ18、19のスプールの移動ストロークが増減するようになっており、これによって、第一、第二コントロールバルブ18、19からブームシリンダ8への給排流量の増減制御がなされるように構成されている。尚、図2、図3中、26はパイロット油圧源となるパイロットポンプである。
【0014】
さらに、第一、第二コントロールバルブ18、19には、第一、第二メインポンプ9、10の圧油を第一、第二ネガティブコントロールバルブ27、28を介して油タンク11に流すセンタバイパス弁路18f、19bが形成されている。該センタバイパス弁路18f、19bの開口量は、第一、第二コントロールバルブ18、19が中立位置Nのときに最も大きく、上昇側位置Xに切換わったスプールの移動ストロークが大きくなるほど小さくなるように制御されるが、下降側位置Yの第一コントロールバルブ18のセンタバイパス弁路18fは、スプールの移動ストロークに拠らず大きな開口を維持する特性を有しており、これにより、下降側位置Yの第一コントロールバルブ18のセンタバイパス弁路18fの通過流量は、中立位置Nのときの通過流量から変化しないように設定されている。そして、上記センタバイパス弁路18f、19bの通過流量は、ネガティブコントロール制御信号として前記第一、第二レギュレータ14、15に入力されて、センタバイパス弁路18f、19bの通過流量が少なくなるほど第一、第二メインポンプ9、10の吐出流量が増加する、所謂ネガティブコントロール流量制御が行われるようになっている。ここで、前述したように、第一コントロールバルブ18のセンタバイパス弁路18fの通過流量は、下降側位置Yに切換わっても中立位置Nのときと変化せず、而して、第一コントロールバルブ18が下降側位置Yのときの第一メインポンプ9の吐出流量は、ネガティブコントロール流量制御によって最小となるように制御されるようになっている。
【0015】
また、29は前記シリンダヘッド側油路20に配されるドリフト低減弁、30は制御装置16からのON信号に基づいてOFF位置NからON位置Xに切換わるドリフト低減弁用電磁切換弁であって、上記ドリフト低減弁29は、前記第一、第二コントロールバルブ18、19および後述する第三コントロールバルブ37からブームシリンダ8のヘッド側油室8aへの油の流れは常時許容するが、逆方向の流れは、ドリフト低減弁用電磁切換弁30がOFF位置Nのときには阻止し、ON位置Xのときのみ許容するように構成されている。尚、31はシリンダヘッド側油路20に接続されるリリーフ弁であって、該リリーフ弁31によって、シリンダヘッド側油路20の最高圧力が制限されている。
【0016】
一方、32は専用ポンプであって、このものもポンプドライブギア部Gを介してエンジンEに連結される可変容量型ポンプであるが、該専用ポンプ32は、サクション油路33から供給される油を吸込んで専用ポンプ油路34に吐出すると共に、専用ポンプ32の容量制御は、制御装置16から出力される制御信号に基づいて作動する専用ポンプ用レギュレータ35によって行われるように構成されている。
【0017】
ここで、前記サクション油路33は、後述するように、ブーム上昇時にはアキュムレータ36の蓄圧油が供給されるようになっている。而して、専用ポンプ32は、ブーム上昇時にはアキュムレータ36の蓄圧油を吸込んで専用ポンプ油路34に吐出することになるが、該アキュムレータ36の蓄圧油は高圧であって、その圧力は前記専用ポンプ32にトルクを供給することになり、而して、専用ポンプ32には、エンジンEだけでなくアキュムレータ36からもトルクが供給されるようになっている。尚、ブーム上昇時に専用ポンプ32に供給されるトルクは、アキュムレータ36からの供給トルクが殆どであって、エンジンEから専用ポンプ32に供給されるトルクは、極めて少ないことになる。
【0018】
37は前記専用ポンプ油路34に接続される第三コントロールバルブであって、該第三コントロールバルブ37は、制御装置16からの制御信号に基づいて、専用ポンプ32から吐出される圧油を、ブームシリンダ8に供給するべく作動する。
【0019】
前記第三コントロールバルブ37について詳細に説明すると、該第三コントロールバルブ37は、制御装置16からの制御信号が入力される第三上昇側、第三下降側電油変換弁38、39の作動に基づいてスプールが移動する方向切換弁であって、両電油変換弁38、39に制御信号が入力されていない状態では、ブームシリンダ8に対する油給排を行わない中立位置Nに位置しているが、第三上昇側電油変換弁38に制御信号が入力されることによりスプールが移動して、専用ポンプ32の吐出油をシリンダヘッド側油路20を経由してブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給する一方、ロッド側油室8bからシリンダロッド側油路21に排出された油をリターン油路22を経由して油タンク11に流す上昇側位置Xに切換わる。また、第三下降側電油変換弁39に制御信号が入力されることにより、前記上昇側位置Xとは反対側にスプールが移動して、専用ポンプ32の吐出油をシリンダロッド側油路21を経由してブームシリンダ8のロッド側油室8bに供給する下降側位置Yに切換るように構成されている。
【0020】
前記第三コントロールバルブ37のスプールの移動ストロークは、制御装置16から第三上昇側、第三下降側電油変換弁38、39に入力される制御信号値によって増減制御されるようになっており、そして該スプールの移動ストロークの増減制御によって、第三コントロールバルブ37からブームシリンダ8への給排流量の増減制御がなされるように構成されている。
【0021】
さらに、40は前記シリンダヘッド側油路20から分岐形成される回収油路であって、該回収油路40には、回収用バルブ41が配されていると共に、該回収用バルブ41の下流側で、アキュムレータ油路42と前記サクション油路33とに接続されている。さらに、回収油路40には、シリンダヘッド側油路20からアキュムレータ油路42およびサクション油路33への油の流れは許容するが、逆方向の流れは阻止するチェック弁43が配されている。而して、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからシリンダヘッド側油路20に排出された油を、回収油路40を経由して、アキュムレータ油路42およびサクション油路33に供給することができるようになっている。
【0022】
前記回収用バルブ41は、制御装置16からの制御信号が入力される回収用電油変換弁44の作動に基づいてスプールが移動する開閉弁であって、回収用電油変換弁44に制御信号が入力されていない状態では、回収油路40を閉じる閉位置Nに位置しているが、回収用電油変換弁44に制御信号が入力されることによりスプールが移動して、回収油路40を開く開位置Xに切換わるように構成されている。
【0023】
前記回収用バルブ41のスプールの移動ストロークは、制御装置16から回収用電油変換弁44に入力される制御信号値によって増減制御されるようになっており、そして、該スプールの移動ストロークの増減制御によって、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから回収油路40を経由してアキュムレータ油路42およびサクション油路33に流れる流量の増減制御がなされるように構成されている。
【0024】
一方、アキュムレータ油路42は、前記回収油路40からアキュムレータチェックバルブ45を経由してアキュムレータ36に至る油路であって、該アキュムレータ油路42の最高圧力は、アキュムレータ油路42に接続されるリリーフ弁46によって制限されている。尚、本実施の形態において、アキュムレータ36は、油圧エネルギー蓄積用として最適なブラダ型のものが用いられているが、これに限定されることなく、例えばピストン型のものであっても良い。
【0025】
前記アキュムレータチェックバルブ45は、アキュムレータ36に対する油の給排制御を行うバルブであって、ポペット弁47と、制御装置16から出力されるON信号に基づいてOFF位置NからON位置Xに切換わるアキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48とを用いて構成されている。そして、上記ポペット弁47は、回収油路40からアキュムレータ36への油の流れは、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48がOFF位置N、ON位置Xの何れであっても許容するが、アキュムレータ36からサクション油路33への油の流れは、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48がOFF位置Nに位置しているときには阻止し、ON位置Xに位置しているときのみ許容するように構成されている。尚、回収油路40からアキュムレータ36への油の流れは、前述したようにアキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48がOFF位置N、ON位置Xの何れであっても許容されるが、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48がON位置Xに位置している状態では、アキュムレータ油路42の圧力がポペット弁47のバネ室47aに導入されないため、殆ど圧力損失のない状態で回収油路40からアキュムレータ油路42に油を流すことができる。
【0026】
さらに、49は前記サクション油路33から分岐形成されて油タンク11に至る排出油路であって、該排出油路49には、タンクチェックバルブ50が配されている。
【0027】
前記タンクチェックバルブ50は、ポペット弁51と、制御装置16から出力されるON信号に基づいてOFF位置NからON位置Xに切換わるタンクチェックバルブ用電磁切換弁52とを用いて構成されている。上記ポペット弁51は、サクション油路33から油タンク11への油の流れを、タンクチェックバルブ用電磁切換弁52がON位置Xに位置しているときのみ許容し、OFF位置Nに位置しているときには阻止するようになっている。そして、例えば、油圧ショベル1の作業終了時やメンテナンス時等に、前記アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48およびタンクチェックバルブ用電磁切換弁52を共にON位置Xに切換えることにより、アキュムレータ36に蓄圧された圧油を油タンク11に放出することができるようになっている。
【0028】
一方、前記制御装置16は、マイクロコンピュータ等を用いて構成されるものであって、図4のブロック図に示すごとく、図示しないブーム用操作レバーの操作方向および操作量を検出するブーム操作検出手段53、第一メインポンプ9の吐出圧を検出するべく第一ポンプ油路12に接続される第一吐出側圧力センサ54、第二メインポンプ10の吐出圧を検出するべく第二吐出側ポンプ油路13に接続される第二吐出側圧力センサ55、専用ポンプ32の吐出圧を検出するべく専用ポンプ油路34に接続される第三吐出側圧力センサ56、専用ポンプ32の吸入側の圧力を検出するべくサクション油路33に接続される吸入側圧力センサ57、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aの圧力を検出するべくシリンダヘッド側油路20に接続されるシリンダヘッド側圧力センサ58、ブームシリンダ8のロッド側油室8bの圧力を検出するべくシリンダロッド側油路21に接続されるシリンダロッド側圧力センサ59、アキュムレータ36の圧力を検出するべくアキュムレータ油路42に接続されるアキュムレータ用圧力センサ60、アキュムレータ36の封入ガス温度を検出するアキュムレータ用温度センサ61、エンジンEの回転数を設定するアクセルダイヤル73、後述するパワーアップスイッチ80、モード設定手段81、第一、第二メインポンプ9、10を油圧供給源とする各種油圧アクチュエータ用の操作具(図示しないが、本実施の形態では、アーム用操作レバー、バケット用操作レバー、旋回用操作レバー、走行用操作レバー或いはペダル)の操作方向および操作量をそれぞれ検出する油圧アクチュエータ用操作検出手段82〜85(図4には纏めて図示するが、本実施の形態では、アーム用操作検出手段82、バケット用操作検出手段83、旋回用操作検出手段84、走行用操作検出手段85)等からの信号を入力し、これら入力信号に基づいて、前述のメインポンプ制御用電磁比例減圧弁17、第一上昇側電磁比例減圧弁23、第一下降側電磁比例減圧弁24、第二上昇側電磁比例減圧弁25、ドリフト低減弁用電磁切換弁30、専用ポンプ用レギュレータ35、第三上昇側電油変換弁38、第三下降側電油変換弁39、回収用電油変換弁44、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48、タンクチェックバルブ用電磁切換弁52、後述する報知手段86等に制御信号を出力する。
【0029】
前記アクセルダイヤル73は、オペレータがエンジンEの回転数を設定するべく操作するエンジン回転数設定用操作具である。また、本実施の形態において、エンジンEは、電子制御された燃料噴射装置を備えていて、負荷が変動しても前記アクセルダイヤル73で設定されたエンジン回転数を保つように制御される構成になっている。
【0030】
また、パワーアップスイッチ80(本発明のパワーアップ用操作具に相当する)は、油圧ショベル1での作業中にオペレータがパワー不足と感じたり作業速度が遅いと感じられるとき等、油圧ショベル1のパワーを上げたい場合にオペレータが任意に操作する操作具であって、該パワーアップスイッチ80をONすることによって、後述するパワーアップ制御が実行されるように構成されている。
【0031】
さらに、モード設定手段81は、油圧ショベル1の運転モードを設定するべくオペレータが任意に操作する操作手段であって、例えば、運転室に配設されるモニターやモード設定用ダイヤル(何れも図示せず)等により構成される。油圧ショベル1の運転モードとしては、例えば、ブーム優先モードや、旋回優先モード、或いはバケット7の代わりに各種作業アタッチメントを装着した場合のアタッチメント装着用モード等があるが、この様な運転モードの一つとして、パワーアップモードを設定できるようになっている。そして、前記モード設定手段81によりパワーアップモードが設定されているときに、油圧ショベル1の運転状態がパワーアップ制御に適した状態になると、自動的にパワーアップ制御が実行されるように構成されている。
【0032】
また、報知手段86は、例えばモニターやランプ等で構成されており、オペレータにパワーアップ制御が可能であることを報知するためのものである。
【0033】
次いで、前記制御装置16に設けられる各種演算部や制御部について説明する。まず、62は蓄圧量演算部であって、該蓄圧量演算部62は、アキュムレータ用圧力センサ60から入力される検出信号に基づいて、現在のアキュムレータ36の蓄圧量を演算する。該演算されるアキュムレータ36の蓄圧量は、本実施の形態では、蓄圧開始設定圧を越えてアキュムレータ36に蓄圧された蓄圧圧力ΔPであって、該蓄圧圧力ΔPは、アキュムレータ36の現時点での圧力(Pa、アキュムレータ用圧力センサ60により検出される)からアキュムレータ36の現時点での蓄圧開始設定圧(Po、摂氏20度におけるプレチャージ圧を現時点での温度に換算した圧力)を減じることにより演算される(ΔP=Pa−Po)。
【0034】
また、63は要求ポンプ容量演算部であって、該要求ポンプ容量演算部63は、図5のブロック図に示す如く、ブーム操作検出手段53から出力されるブーム用操作レバーの操作信号を入力し、ゲインコントロール64によって要求ポンプ容量DRを演算する。該要求ポンプ容量DRは、ブーム用操作レバーの操作量によって要求されるポンプ容量であって、ブーム用操作レバーの操作量の増加に伴い増加するように設定されると共に、ブーム上昇側に操作された場合は「正」の値で、また、ブーム下降側に操作された場合は「負」の値で出力されるように設定されている。
【0035】
さらに、65は分担割合演算部であって、該分担割合演算部65は、図6のブロック図に示す如く、前記蓄圧量演算部62によって演算される蓄圧圧力ΔPと、ブーム5の上昇時における第一メインポンプ9のアシスト割合α(α=「0」〜「1」)との関係を設定したアシストテーブル66を有している。そして、分担割合演算部65は、上記アシストテーブル66に基づいてアシスト割合αを求めるが、該アシスト割合αは、本実施の形態では、蓄圧圧力ΔPが、アキュムレータ36の蓄圧量が充分であるときの圧力として予め設定される高設定圧PHに達しているときには「0」、アキュムレータ36の蓄圧量が殆どないときの圧力として予め設定される低設定圧PL以下の場合には「1」、上記高設定圧PHと低設定圧PLとの間のときは、蓄圧圧力ΔPが減少するにつれてアシスト割合αが高くなるように設定されている。さらに分担割合演算部65は、「1」から前記アシスト割合αを減ずることで、ブーム5の上昇時における専用ポンプ32の供給割合β(β=1−α)を演算する。そして、これらアシストテーブル66に基づいて求められたアシスト割合αおよび供給割合βは、ブーム用操作レバーがブーム上昇側に操作された場合に分担割合演算部65から出力されて、後述するように、第一コントロールバルブ18、第三コントロールバルブ37の流量制御、および専用ポンプ32のトルク制御に用いられる。尚、ブーム用操作レバーがブーム下降側に操作された場合、分担割合演算部65から出力されるアシスト割合αおよび供給割合βは、アキュムレータ36の蓄圧圧力ΔPに関わらず常に「1」となるように設定されている。
【0036】
一方、67は第一コントロールバルブ制御部であって、該第一コントロールバルブ制御部67は、図7のブロック図に示す如く、前記分担割合演算部65から出力されるアシスト割合αと要求ポンプ容量演算部63から出力される要求ポンプ容量DRとを入力し、これらアシスト割合αと要求ポンプ容量DRとを乗算器68で乗じて、アシスト用要求ポンプ容量DRαを求める。さらに、第一コントロールバルブ制御部67は、上記アシスト用要求ポンプ容量DRαを、第一上昇側、第一下降側電磁比例減圧弁23、24に対する制御信号値に変換するための第一バルブテーブル69を有しており、該第一バルブテーブル69に基づいて、第一上昇側、第一下降側電磁比例減圧弁23、24に対する制御信号値を求める。そして、第一コントロールバルブ制御部67は、上記制御信号値を、ブーム用操作レバーがブーム上昇側に操作された場合は第一上昇側電磁比例減圧弁23に出力し、またブーム下降側に操作された場合は第一下降側電磁比例減圧弁24に出力するように設定されているが、該制御信号値によって第一上昇側電磁比例減圧弁23は、ブーム上昇時における第一コントロールバルブ18からブームシリンダ8への供給流量を、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量にアシスト割合αを乗じた流量にするためのパイロット圧を出力するように制御される。
【0037】
さらに、70は第三コントロールバルブ制御部であって、該第三コントロールバルブ制御部70は、図8のブロック図に示す如く、前記分担割合演算部65から出力される供給割合βと要求ポンプ容量演算部63から出力される要求ポンプ容量DRとを入力し、これら供給割合βと要求ポンプ容量DRとを乗算器71で乗じて、供給用要求ポンプ容量DRβを求める。さらに、第三コントロールバルブ制御部70は、上記供給用要求ポンプ容量DRβを、第三上昇側、第三下降側電油変換弁38、39に対する制御信号値に変換するための第三バルブテーブル72を有しており、該第三バルブテーブル72に基づいて、第三上昇側、第三下降側電油変換弁38、39に対する制御信号値を求める。そして、第三コントロールバルブ制御部70は、上記制御信号値を、ブーム用操作レバーがブーム上昇側に操作された場合は第三上昇側電油変換弁38に出力し、またブーム下降側に操作された場合は第三下降側電油変換39に出力するように設定されているが、該制御信号値によって、第三上昇側電油変換弁38は、ブーム上昇時における第三コントロールバルブ37からブームシリンダ8への供給流量を、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量に供給割合βを乗じた流量にするように制御される。
【0038】
一方、74は専用ポンプ要求トルク演算部であって、該専用ポンプ要求トルク演算部74は、図9のブロック図に示す如く、第三吐出側圧力センサ56により検出される専用ポンプ32の吐出圧PEと、前記要求ポンプ容量演算部63から出力される要求ポンプ容量DRと、前記分担割合演算部65から出力される供給割合βとを入力して、これら専用ポンプ32の吐出圧PEと要求ポンプ容量DRと供給割合βとを乗算器75、76で乗じ、さらにトルク演算ブロック77においてトルク換算定数Cを乗じることで、ブーム用操作レバーの操作量およびアキュムレータ36の蓄圧量に応じて現時点の吐出圧で専用ポンプ32の出し得るトルクを演算する。該演算されたトルクは、要求ポンプ容量DRが「負」の値(ブーム用操作レバーがブーム下降側に操作された場合)であると「負」の値となるため、絶対値化ブロック78で絶対値化して「正」の値にする。そして、該「正」の値のトルクを、専用ポンプ32が要求する専用ポンプ要求トルクTE(TE=PE×DR×β×C)として出力する。
【0039】
また、87は運転状態判断部(本発明の運転状態判断手段に相当する)であって、該運転状態判断部87は、油圧ショベル1の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であるか否かの判断を行い、該判断と前記モード設定手段81からの入力信号に基づいて、パワーアップ要求ON/OFF信号を出力する。
【0040】
つまり、運転状態判断部87は、図10のブロック図に示すごとく、ブーム操作検出手段53により検出されるブーム用操作レバーの操作信号を、ANDゲート88に入力する。さらに運転状態判断部87は、アーム用操作検出手段82、バケット用操作検出手段83、旋回用操作検出手段84、走行用操作検出手段85によりそれぞれ検出されるアーム用操作レバー、バケット用操作レバー、旋回用操作レバー、走行用操作レバー或いはペダルの操作信号をORゲート89に入力し、該ORゲート89は、何れかの操作信号が入力された場合に、ON信号を前記ANDゲート88に出力する。該ANDゲート88は、ブーム用操作レバーの操作信号が入力され、且つ、ORゲート89からON信号が入力された場合に、ON信号を出力する。さらに、該ANDゲート88から出力されたON信号は、モード設定手段81によりパワーアップモードが設定されている場合(パワーアップモード設定信号ON)に、パワーアップ要求ON信号として、後述するパワーアップシステム起動部90に出力される。一方、ANDゲート88からON信号が出力されない場合、或いはパワーアップモードが設定されていない場合(パワーアップモード設定信号OFF)は、パワーアップ要求OFF信号が出力される。
【0041】
而して、運転状態判断部87は、ブーム用操作レバーと、アーム用操作レバー、バケット用操作レバー、旋回用操作レバー、走行用操作レバー或いはペダルのうちの何れかの操作具とが同時に操作されている場合に、油圧ショベル1の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であると判断すると共に、該パワーアップ制御に適した状態であると判断され、且つ、モード設定手段81によりパワーアップモードが設定されている場合に、パワーアップ要求ON信号をパワーアップシステム起動部90に出力するように構成されている。
【0042】
尚、前記運転状態判断部87において、油圧ショベル1の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であるか否か判断を、図11に示す他例の如く、第一、第二メインポンプ9、10および専用ポンプ32の吐出圧に基づいて行うように構成することもできる。
【0043】
つまり、前記図11に示す他例において、運転状態判断部87は、第三吐出側圧力センサ56により検出される専用ポンプ32の吐出圧PEを入力し、該吐出圧PEに基づいて、専用ポンプ用判断テーブル91により専用ポンプ32が高圧吐出状態であるかで否かを判断する。そして、高圧吐出状態であると判断された場合はON信号を、また高圧吐出状態でないと判断された場合はOFF信号を、ANDゲート92に出力する。さらに運転状態判断部87は、第一、第二吐出側圧力センサ54、55により検出される第一、第二メインポンプ9、10の吐出圧P1、P2を入力し、これら吐出圧P1、P2の平均吐出圧PA(PA=(P1+P2)/2)を平均値化ブロック93により求める。そして、該メインポンプ平均吐出圧PAに基づいて、メインポンプ用判断テーブル94により第一、第二メインポンプ9、10が高圧吐出状態であるか否かを判断し、高圧吐出状態であると判断された場合はON信号を、また高圧吐出状態でないと判断された場合はOFF信号を、前記ANDゲート92に出力する。該ANDゲート92は、専用ポンプ用判断テーブル91及びメインポンプ用判断テーブル94の両方からON信号が入力された場合に、ON信号を出力する。さらに、該ANDゲート92から出力されたON信号は、モード設定手段81によりパワーアップモードが設定されている場合(パワーアップモード設定信号ON)に、パワーアップ要求ON信号としてパワーアップシステム起動部90に出力される。一方、ANDゲート92からON信号が出力されない場合、或いはパワーアップモードが設定されていない場合(パワーアップモード設定信号OFF)は、パワーアップ要求OFF信号が出力される。而して、この他例においては、第一、第二メインポンプ9、10および専用ポンプ32が共に高吐出状態の場合に、油圧ショベル1の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であると判断されると共に、該パワーアップ制御に適した状態であると判断され、且つ、モード設定手段81によりパワーアップモードが設定されている場合に、パワーアップ要求ON信号をパワーアップシステム起動部90に出力するように構成されている。
尚、前記専用ポンプ用判断テーブル91、メインポンプ用判断テーブル94における判断は、専用ポンプ吐出圧PE、メインポンプ平均吐出圧PAが予め設定される第一所定圧PE1、PA1以下の場合は、高圧吐出状態でない(OFF)と判断する一方、予め設定される第二所定圧PE2、PA2以上の場合は、高圧吐出状態である(ON)と判断する。また、前記第一所定圧PE1、PA1と第二所定圧PE2、PA2の間は、専用ポンプ吐出圧PE、メインポンプ平均吐出圧PAの上昇時にはOFF、下降時にはONとなるように設定されている。
【0044】
さらに、前記パワーアップシステム起動部90は、図12のブロック図に示す如く、パワーアップスイッチ80のON/OFF信号、および前記運転状態判断部87から出力されるパワーアップ要求ON/OFF信号をORゲート95に入力し、これら入力信号のうち少なくとも一方がON信号の場合に、パワーアップシステムON信号を後述するトルク制御部96に出力する。また、両方の入力信号がOFF信号の場合は、パワーアップシステムOFF信号をトルク制御部96に出力する。
【0045】
一方、トルク制御部96は、図13のブロック図に示す如く、後述するメインポンプ経時制限トルクTLと、許容トルクTAと、前記専用ポンプ要求トルク演算部74から出力される専用ポンプ要求トルクTEと、前記パワーアップシステム起動部90から出力されるパワーアップシステムON/OFF信号とを入力する。
ここで、上記許容トルクTAは、アクセルダイヤル73によって設定されるエンジン回転数に応じて、エンジンEから第一、第二メインポンプ9、10に供給できる最大のトルク(エンスト防止やオーバーヒート防止等を考慮した上で許容される最大のトルク)であって、例えば図示しないトルクマップ等により予め設定されている。
【0046】
そして、トルク制御部96は、前記入力信号に基づいて、第一、第二メインポンプ9、10および専用ポンプ32のトルク制御を行うが、該トルク制御部96の行うトルク制御として、第一、第二メインポンプ9、10および専用ポンプ32への供給トルクを制限するトルク制限制御と、該制限を行うことなく第一、第二メインポンプ9、10および制限ポンプに供給可能なトルクを供給するパワーアップ制御とがプログラムされている。
【0047】
前記トルク制限制御は、パワーアップシステム起動部90からパワーアップシステムOFF信号が入力された場合に実行される制御であり、また、パワーアップ制御は、パワーアップシステムON信号が入力された場合に実行される制御であるが、まず、トルク制限制御について、前記図13のブロック図に基づいて説明すると、トルク制御部96は、入力された許容トルクTAと専用ポンプ要求トルクTEとを加算器97で加算し、該加算値と許容トルクTAとに基づいて、減縮率演算ブロック98で減縮率γ(γ=TA/(TA+TE))を求める。該減縮率γは、許容トルクTAの値を、許容トルクTAと専用ポンプ要求トルクTEとの比率に応じて第一、第二メインポンプ9、10と専用ポンプ32とに分配するための値であって、この減縮率γと許容トルクTAとを乗算器99で乗じることによって、第一、第二メインポンプ9、10に分配されるトルクTDM(TDM=γ×TA、以下、メインポンプ分配トルクTDMと称する)が演算され、また、減縮率γと専用ポンプ要求トルクTEとを乗算器100で乗じることによって、専用ポンプ32に分配されるトルクTDE(TDE=γ×TE、以下、専用ポンプ分配トルクTDEと称する)が演算される。上記メインポンプ分配トルクTDMの値および専用ポンプ分配トルクTDEの値は、パワーアップシステム起動部90からパワーアップシステムOFF信号が入力された場合に、メインポンプ目標トルクおよび専用ポンプ目標トルクとして出力される。そして、メインポンプ目標トルクは、メインポンプ制御用電磁比例減圧弁17に対する制御信号値に変換されて出力され、さらに該制御信号値が入力されたメインポンプ制御用電磁比例減圧弁17は、第一、第二メインポンプ9、10への供給トルクをメインポンプ分配トルクTDMにするための制御信号圧を、第一、第二レギュレータ14、15に対して出力するように構成されている。一方、専用ポンプ目標トルクは、専用ポンプ用レギュレータ35に対する制御信号値に変換されて出力され、そして該制御信号値が入力された専用ポンプ用レギュレータ35は、専用ポンプ32への供給トルクを専用ポンプ分配トルクTDEにするべく作動するように構成されている。これにより、許容トルクTAの値が、該許容トルクTAと専用ポンプ要求トルクTEとの比率に応じて、第一、第二メインポンプ9、10への供給トルク(メインポンプ分配トルクTDM)と専用ポンプ32への供給トルク(専用ポンプ分配トルクTDE)とに分配されることになり、而して、第一、第二メインポンプ9、10に供給されるトルクと専用ポンプ36に供給されるトルクとを合計したトルクが、エンジンEから第一、第二メインポンプ9、10に供給可能なトルクとして予め設定される許容トルクTAの値を越えないように(本実施の形態では許容トルクTAの値と等しくなるように)制限されるトルク制限制御が行われるようになっている。
【0048】
一方、パワーアップ制御は、前述したようにパワーアップシステムON信号が入力された場合に実行される制御であるが、該パワーアップシステムON信号が入力されると、トルク制御部96は、許容トルクTAの値をそのままメインポンプ目標トルクとして出力すると共に、専用ポンプ要求トルクTEの値をそのまま専用ポンプ目標トルクとして出力する。これにより、メインポンプ制御用電磁比例減圧弁17は、第一、第二メインポンプ9、10への供給トルクを許容トルクTAにするための制御信号圧を、第一、第二レギュレータ14、15に対して出力する。一方、専用ポンプ用レギュレータ35は、専用ポンプ32への供給トルクを専用ポンプ要求トルクTEにするべく作動する。これにより、第一、第二メインポンプ9、10には、エンジンEから第一、第二メインポンプ9、10に供給可能なトルクとして予め設定される許容トルクTAが供給され、また、専用ポンプ32には、該専用ポンプ32が要求する専用ポンプ要求トルクTEが供給されることになり、而して、前述したトルク制限制御のように第一、第二メインポンプ9、10および専用ポンプ32への供給トルクが制限されることのないパワーアップ制御が行われるようになっている。
【0049】
尚、前記トルク制御部96に入力されるメインポンプ経時制限トルクTLは、第一、第二メインポンプ9、10を圧油供給源とする何れかの油圧アクチュエータ用操作具(本実施の形態では、ブーム用操作レバー、アーム用操作レバ、バケット用操作レバー、旋回用操作レバー、走行用操作レバー或いはペダル)が操作されて第一、第二メインポンプ9、10を作動させる場合に、エンジンEから第一、第二メインポンプ9、10への供給トルクを時間の経過と共に徐々に上昇させていくために設定される変数であって、トルク制御部96は、メインポンプ経時制限トルクTLがメインポンプ分配トルクTDM(トルク制限制御の場合)或いは許容トルクTA(パワーアップ制御の場合)よりも小さい(TL<TDM或いはTL<TA)場合は、該メインポンプ経時制限トルクTLを最小選択器101で選択して、メインポンプ制御用電磁比例減圧弁17に制御信号を出力するように構成されている。これにより、第一、第二メインポンプ9、10への供給トルクは、メインポンプ経時制限トルクTLを越えないように徐々に増加してメインポンプ分配トルクTDM或いは許容トルクTAに達するように制御されることになって、第一、第二メインポンプ9、10にかかる負荷が急激に増加してエンジンドロップを引き起してしまうことを回避できるようになっている。
【0050】
而して、トルク制御部96は、パワーアップシステム起動部90から入力されるパワーアップシステムOFF/ON信号に基づいて、第一、第二メインポンプ9、10に供給されるトルクと専用ポンプ32に供給されるトルクとの合計が、許容トルクTAの値を越えないように制限されるトルク制限制御と、第一、第二メインポンプ9、10に許容トルクTAを供給し、さらに専用ポンプ32にポンプ要求トルクTEを供給するパワーアップ制御との何れか一方のトルク制御が実行されることになるが、アキュムレータ36の蓄圧量が殆どなくて供給割合βが「0」の場合は、アキュムレータ36から専用ポンプ32にトルク供給はなされないため、事実上、パワーアップ制御は行えないことになる。つまり、アキュムレータ36に蓄圧されている場合のみパワーアップ制御を行えることになるが、該パワーアップ制御が可能であるか否かは、前記蓄圧量演算部62において演算されるアキュムレータ36の蓄圧量に基づいて判断されると共に、パワーアップ制御が可能な場合には制御装置16から報知手段86に報知の制御信号(例えば、モニターに表示、ランプ点灯等)が出力され、これによってオペレータに報知されるようになっている。
【0051】
尚、制御装置16には、前述した演算部や制御部の他にも、第二コントロールバルブ19や回収バルブ41、ドリフト低減弁29、アキュムレータチェックバルブ45、タンクチェックバルブ50等を制御するための各種制御部(図示せず)が設けられているが、これら制御部における制御については、個別に説明することなく、制御装置16の制御として説明する。
【0052】
次いで、ブーム用操作レバーの上昇側、下降側の操作に基づく制御装置16の制御について説明する。
まず、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合について説明すると、制御装置16は、前記トルク制御部96において実行されるトルク制限制御或いはパワーアップ制御に基づいて、メインポンプ制御用電磁比例減圧弁17に対し、第一、第二メインポンプ9、10に供給されるトルクが、前述したメインポンプ分配トルクTDM或いは許容トルクTAになるように制御信号を出力する。
【0053】
さらに、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合、制御装置16は、第二上昇側電磁比例減圧弁25に対し、ブーム用操作レバーの操作量に応じて設定される制御信号値を出力する。これにより、第二上昇側電磁比例減圧弁25からパイロット圧が出力されて、第二コントロールバルブ19が上昇側位置Xに切換り、而して、第二メインポンプ10の吐出油が、上昇側位置Xの第二コントロールバルブ19を経由してシリンダヘッド側油路20に流れて、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されるが、該第二コントロールバルブ19からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。
【0054】
さらに、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合、制御装置16は、前記第一コントロールバルブ制御部67において実行される制御に基づいて、第一上昇側電磁比例減圧弁23に対して制御信号を出力する。そして、該第一上昇側電磁比例減圧弁23に出力される制御信号値によって、第一コントロールバルブ18からブームシリンダ8への供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量にアシスト割合αを乗じた流量になるように制御される。
つまり、アシスト割合αが「1」の場合は、制御装置16から出力される制御信号によって第一上昇側電磁比例減圧弁23からパイロット圧が出力され、これにより第一コントロールバルブ18が上昇側位置Xに切換り、而して、第一メインポンプ9の吐出油が、上昇側位置Xの第一コントロールバルブ18を経由してシリンダヘッド側油路20に流れて、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されるが、該第一コントロールバルブ18からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。
また、アシスト割合αが「1」〜「0」の間(但し、「1」および「0」は含まず)の場合は、前述したアシスト割合αが「1」の場合と同様に、制御装置16から出力される制御信号によって第一上昇側電磁比例減圧弁23からパイロット圧が出力され、これにより第一コントロールバルブ18が上昇側位置Xに切換って、第一メインポンプ9の吐出油がブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されるが、該第一コントロールバルブ18からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量にアシスト割合αを乗じた流量、つまりアシスト割合αが低くなるほどブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量よりも少ない流量となるように制御される。
さらに、アシスト割合αが「0」の場合は、制御装置16から第一上昇側電磁比例減圧弁23に対して、第一コントロールバルブ18からブームシリンダ8への供給流量をゼロにするための制御信号が出力される。これにより、第一コントロールバルブ37は中立位置Nに保持され、而して、第一メインポンプ9からブームシリンダ8のヘッド側油室8aに圧油供給されないと共に、ネガティブコントロール流量制御によって、第一メインポンプ9の吐出流量は最小となるように制御されるようになっている。
【0055】
さらに、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合、制御装置16は、前記トルク制御部96において実行されるトルク制限制御或いはパワーアップ制御に基づいて、専用ポンプ用レギュレータ35に対し、専用ポンプ32に供給されるトルクが、前述した専用ポンプ分配トルクTDE或いは専用ポンプ要求トルクTEになるように制御信号を出力する。
【0056】
さらに、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合、制御装置16は、前記第三コントロールバルブ制御部70において実行される制御に基づいて、第三上昇側電油変換弁38に対して制御信号を出力する。そして、該第三上昇側電油変換弁38に出力される制御信号値によって、第三コントロールバルブ37からブームシリンダ8への供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量に供給割合βを乗じた流量になるように制御される。
つまり、供給割合βが「1」の場合は、制御装置16から第三上昇側電油変換弁38に対して出力される制御信号によって第三コントロールバルブ37が上昇側位置Xに切換り、而して、専用ポンプ32の吐出油が、上昇側位置Xの第三コントロールバルブ37を経由してシリンダヘッド側油路20に流れて、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されるが、該第三コントロールバルブ37からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。
また、供給割合βが「1」〜「0」の間(但し、「1」および「0」は含まず)の場合は、前述した供給割合βが「1」の場合と同様に、制御装置16から第三上昇側電油変換弁38に対して出力される制御信号によって第三コントロールバルブ37が上昇側位置Xに切換り、専用ポンプ32の吐出油がブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されるが、該第三コントロールバルブ19からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量に供給割合βを乗じた流量、つまり供給割合βが低くなるほどブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量よりも少ない流量となるように制御される。
さらに、供給割合βが「0」の場合は、制御装置16から第三上昇側電油変換弁38に対して、第三コントロールバルブ37からブームシリンダ8への供給流量をゼロにするための制御信号が出力される。これにより、第三コントロールバルブ37は中立位置Nに保持され、而して、専用ポンプ32からブームシリンダ8のヘッド側油室8aに圧油供給されないようになっている。
【0057】
さらに、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合、制御装置16は、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48に対し、ON位置Xに切換わるようON信号を出力する。これにより、アキュムレータチェックバルブ45は、アキュムレータ油路42からサクション油路33への油の流れを許容する状態になる。而して、アキュムレータ36に蓄圧された圧油がサクション油路33を経由して、専用ポンプ32の吸入側に供給される。
【0058】
また、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合、制御装置16から回収用電油変換弁44に制御信号は出力されず、回収用バルブ41は、回収油路40を閉じる閉位置Nに位置している。これにより、前述した第一、第二、第三コントロールバルブ18、19、37からの供給圧油がアキュムレータ油路42およびサクション油路33に流れてしまうことなく、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されるようになっている。
【0059】
次いで、ブーム用操作レバーがブーム上昇側に操作された場合に、前述した制御装置16の制御に基づいて実行されるブームシリンダ8への圧油供給について、アキュムレータ36の蓄圧量別に説明する。
【0060】
まず、アキュムレータ36の蓄圧量が充分であって蓄圧圧力ΔPが高設定圧PHに達している場合、供給割合βは「1」、アシスト割合αは「0」となるが、この場合は、前述したように、第二コントロールバルブ19および第三コントロールバルブ37は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量をブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給するように制御される一方、第一コントロールバルブ18は中立位置Nに保持される。これにより、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aには、第二メインポンプ10から最大(ブーム用操作レバーの操作量が最大のとき)で一ポンプ分の流量と、専用ポンプ32から最大で一ポンプ分の流量とが供給される。
【0061】
而して、アキュムレータ36の蓄圧量が充分の状態でブーム上昇側に操作された場合、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aには、第二メインポンプ10から供給される最大一ポンプ分の流量と専用ポンプ32から供給される最大一ポンプ分の流量とが合流して供給されることになって、作業部4の重量負荷に抗するブーム5の上昇であっても、ブーム用操作レバーの操作量に対応した所望の速度でブーム5を上昇せしめることができるが、この場合、専用ポンプ32は、アキュムレータ36に蓄圧された高圧の圧油を吸い込んで吐出するため、アキュムレータ36からトルク供給されることになり、而して、エンジンEからの供給トルクを殆ど必要としない状態で、ブームシリンダ8への圧油供給を行うことになる。
【0062】
これに対し、アキュムレータ36の蓄圧量が殆どなく蓄圧圧力ΔPが低設定圧PL以下の場合、供給割合βは「0」、アシスト割合αは「1」となるが、この場合は、前述したように、第一コントロールバルブ18および第二コントロールバルブ19は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量をブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給するように制御される一方、第三コントロールバルブ37は、中立位置Nに保持される。これにより、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aには、第一メインポンプ9から最大で一ポンプ分の流量と、第二メインポンプ10から最大で一ポンプ分の流量とが供給される。
【0063】
而して、アキュムレータ36の蓄圧量が殆どない状態でブーム上昇側に操作された場合、専用ポンプ32から圧油供給されない代わりに第一メインポンプ9から圧油供給され、これによりブームシリンダ8のヘッド側油室8aには、第二メインポンプ10から供給される最大一ポンプ分の流量と第一メインポンプ9から供給される最大一ポンプ分の流量とが合流して供給されることになり、よって、アキュムレータ36に蓄圧されていない状態であっても、アキュムレータ36に充分蓄圧されている場合と同様に、ブーム用操作レバーの操作量に対応した所望の速度でブーム5を上昇せしめることができる。
【0064】
また、アキュムレータ36の蓄圧圧力ΔPが高設定圧PHと低設定圧PLの間のとき、供給割合βおよびアシスト割合αは「1」〜「0」の間の値(但し、β=α−1)となるが、この場合、第三コントロールバルブ37は、該三コントロールバルブ37からヘッド側油室8aへの供給流量が、供給割合βが低くなるほどブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量よりも少なくなるように制御される。
一方、第一コントロールバルブ18は、該三コントロールバルブ18からヘッド側油室8aへの供給流量が、アシスト割合αが低くなるほど(つまり、蓄圧圧力ΔPが増加するほど)ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される吐出流量よりも少なくなるように制御される。
ここで、前記第三コントロールバルブ37からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量に供給割合βを乗じた流量であり、また、第一コントロールバルブ18からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量にアシスト割合αを乗じた流量であり、しかもアシスト割合αと供給割合βとを足すと「1」となる(α+β=1)ように設定されているから、第三コントロールバルブ37からの供給流量が減少するにつれて第一コントロールバルブ18からの供給流量が増加すると共に、第三コントロールバルブ37からの供給流量と第一コントロールバルブ18からの供給流量とを足すと、ブーム用操作レバーに応じて要求される流量になる。而して、専用ポンプ32および第一メインポンプ9から足して最大で一ポンプ分の流量がヘッド側油室8aに供給される。
また、第二コントロールバルブ19は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量をヘッド側油室8aに供給するように制御され、これにより、第二メインポンプ10から最大で一ポンプ分の流量がヘッド側油室8aに供給される。
【0065】
而して、アキュムレータ36の蓄圧圧力ΔPが高設定圧PHと低設定圧PLの間のときにブーム上昇側に操作された場合、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aには、第二メインポンプ10から供給される最大一ポンプ分の流量と、専用ポンプ32および第一メインポンプ9から供給される足して最大一ポンプ分の流量とが合流して供給されることになり、よって、アキュムレータ36の蓄圧量が変動しても、アキュムレータ36に充分蓄圧されている場合と同様に、ブーム用操作レバーの操作量に対応した所望の速度でブーム5を上昇せしめることができる。
【0066】
ところで、ブーム5の上昇時において、アキュムレータ36の蓄圧圧力ΔPが低設定圧PLを越えている場合は、前述したように、アキュムレータ36の蓄圧油が専用ポンプ32を介してブームシリンダ8に供給されることになるが、この場合、専用ポンプ32には、アキュムレータ36の高圧の蓄圧油によってトルクが供給されることになる。一方、ブーム5の上昇時にブームシリンダ8に圧油供給する第一、第二メインポンプ9、10は、エンジンEからトルク供給されることになるが、前述したように、トルク制御部96においてトルク分配制御が実行されている場合には、第一、第二メインポンプ9、10にはメインポンプ分配トルクTDMが供給され、また専用ポンプ32には専用ポンプ分配トルクTDEが供給される。これらメインポンプ分配トルクTDMおよび専用ポンプ分配トルクTDEは、エンジン回転数に応じてエンジンEから第一、第二メインポンプ9、10に供給できる許容トルクTAの値を、許容トルクTAと専用ポンプ要求トルクTEとの比率に応じて第一、第二メインポンプ9、10と専用ポンプ32とにそれぞれ分配したトルクであるから、第一、第二メインポンプ9、10に供給されるトルク(メインポンプ分配トルクTDM)と専用ポンプ32に供給されるトルク(専用ポンプ分配トルクTDE)とを合計すると、許容トルクTAの値と等しく(TA=TDM+TDE)なり、而して、第一、第二メインポンプ9、10への供給トルクと専用ポンプ32への供給トルクとの合計が、許容トルクTAを越えないように制限されることになる。
一方、トルク制御部96においてパワーアップ制御が実行されている場合には、第一、第二メインポンプ9、10には許容トルクTAが供給され、また専用ポンプ32には専用ポンプ要求トルクTEが供給される。前記許容トルクTAは、エンジン回転数に応じて設定されるエンジンEから第一、第二メインポンプ9、10に供給可能なトルクであり、また、専用ポンプ要求トルクTEは、ブーム用操作レバーの操作量およびアキュムレータ36の蓄圧量に応じて現時点の吐出圧で専用ポンプ32の出し得るトルクであるから、第一、第二メインポンプ9、10および専用ポンプ32には、前述したトルク制限制御のような制限が行われることなく供給可能なトルクが供給されることになる。
【0067】
次に、ブーム用操作レバーがブーム下降側に操作された場合の制御装置16の制御について説明するが、まず、前述したように、ブーム下降側に操作された場合に分担割合演算部65から出力されるアシスト割合αおよび供給割合βは、アキュムレータ36の蓄圧圧力ΔPに関わらず常に「1」となるように設定されている。
【0068】
扨、ブーム用操作レバーがブーム下降側に操作された場合、制御装置16は、第一、第二メインポンプ9、10を圧油供給源とするブームシリンダ8以外の油圧アクチュエータ用操作具(本実施の形態では、アーム用操作レバー、バケット用操作レバー、旋回用操作レバー、走行用操作レバー或いはペダル)が何れも操作されていないときには、メインポンプ制御用電磁比例減圧弁17に対し、第一、第二メインポンプ9、10への供給トルクを最小まで低減せしめるよう制御信号を出力する。尚、第一、第二メインポンプ9、10を圧油供給源とするブームシリンダ8以外の何れかの油圧アクチュエータ用操作具が操作されている場合は、アクセルダイヤル73で設定されたエンジン回転数に応じたトルクが第一、第二メインポンプ9、10に供給されるように、メインポンプ制御用電磁比例減圧弁17に対して制御信号を出力する。
【0069】
さらに、ブーム用操作レバーが下降側に操作された場合、制御装置16は、前記第一コントロールバルブ制御部67において実行される制御に基づいて、第一下降側電磁比例減圧弁24に対して制御信号を出力する。これにより、第一コントロールバルブ18が下降側位置Yに切換り、而して、ブームシリンダ8aのヘッド側油室8aからの排出油が、下降側位置Yの再生用弁路18dを経由してロッド側油室8bに供給されるが、その流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。また、第一コントロールバルブ18が下降側位置Yのときの第一メインポンプ9の吐出流量は、前述したように、ネガティブコントロール流量制御によって最小となるように制御される。
尚、第二コントロールバルブ19は、ブーム5の下降時には中立位置Nに保持され、而して、ブームシリンダ8に対する油給排を行わないと共に、第二メインポンプ9の吐出流量も、ネガティブコントロール流量制御によって最小となるように制御される。
【0070】
さらに、ブーム用操作レバーが下降側に操作された場合、制御装置16は、前記トルク制御部96において実行されるトルク制限制御に基づいて、専用ポンプ用レギュレータ35に対し、専用ポンプ32に供給されるトルクが、前述した専用ポンプ分配トルクTDEになるように制御信号を出力する。
【0071】
さらに、ブーム用操作レバーが下降側に操作された場合、制御装置16は、前記第三コントロールバルブ制御部70において実行される制御に基づいて、第三下降側電油変換弁39に対して制御信号を出力する。これにより、第三コントロールバルブ37が下降側位置Yに切換り、而して、専用ポンプ32の吐出油が、下降側位置Yの第三コントロールバルブ37を経由してシリンダロッド側油路21に流れて、ブームシリンダ8のロッド側油室8bに供給されるが、該第三コントロールバルブ37からロッド側油室8bへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。
【0072】
さらに、ブーム用操作レバーが下降側に操作された場合、制御装置16は、ドリフト低減弁用電磁比例減圧弁30に対し、ON位置Xに切換わるようON信号を出力する。これにより、ドリフト低減弁29は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの油排出を許容する状態になる。
【0073】
さらに、ブーム用操作レバーが下降側に操作された場合、制御装置16は、回収用電油変換弁44に対し、回収用バルブ41を開位置Xに切換えるよう制御信号を出力する。これにより、回収用バルブ41が回収油路40を開く開位置Xに切換り、而して、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出された油が、回収油路40を経由してアキュムレータ油路42およびサクション油路33に流れて、アキュムレータ36に蓄圧されると共に、専用ポンプ32の吸入側に供給されるようになっているが、該回収油路40の流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。さらにこのとき、制御装置16は、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48に対し、ON位置Xに切換るようON信号を出力する。これにより、殆ど圧力損失のない状態で回収油路40からアキュムレータ油路42に油を流すことができるようになっている。
【0074】
而して、ブーム5の下降時に、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出される油は、作業部4の有する位置エネルギーにより高圧となっていると共に、ピストン8cに作用する受圧面積の関係からロッド側油室8bへの供給量に対して略2倍の排出量となるが、該ヘッド側油室8aからの排出油は、回収油路40を経由してサクション油路33およびアキュムレータ油路42に流れる。そして、サクション油路33に流れた油は、専用ポンプ32の吸入側に供給され、該専用ポンプ32からロッド側油室8bに供給される一方、アキュムレータ油路42に供給された圧油はアキュムレータ36に蓄圧されて、前述したように、ブーム5の上昇時に専用ポンプ32からヘッド側油室8aに供給されることになる。而して、作業部4の有する位置エネルギーを、無駄にすることなく回収、再利用できるようになっている。
尚、ブーム5の下降時に、ヘッド側油室8aからの排出油のうち一部は、第一コントロールバルブ18の再生用弁路18dを経由してロッド側油室8bに供給される。
【0075】
叙述の如く構成された本形態において、アキュムレータ36は、ブーム5の下降時に、ブームシリンダ8から排出された油を蓄圧する一方、該アキュムレータ36に蓄圧された油は、ブーム5の上昇時に専用ポンプ32を介してブームシリンダ8に供給されることになり、而して、作業部4の有する位置エネルギーをアキュムレータ36を用いて有効に回収、再利用できることになるが、さらにこのものにおいて、各種油圧アクチュエータの圧油供給源であってエンジンEからトルク供給される第一、第二メインポンプ9、10、および前記アキュムレータ36からトルク供給される専用ポンプ32のトルク制御を行う制御装置16は、トルク制限制御とパワーアップ制御との何れか一方のトルク制御を選択して実行するように構成されている。そして、トルク制限制御が実行されている場合には、第一、第二メインポンプ9、10に供給されるトルクと専用ポンプ32に供給されるトルクとを合計したトルクが、エンジン回転数に応じてエンジンEから第一、第二メインポンプ9、10に供給可能なトルクとして予め設定される許容トルクTAの値を越えないように(本実施の形態では、許容トルクTAの値と等しくなるように)制限される一方、パワーアップ制御が実行されている場合には、上記トルク制限制御のような制限が行われることなく、第一、第二メインポンプ9、10および専用ポンプ32に供給可能なトルク、つまり第一、第二メインポンプ9、10には許容トルクTAが、専用ポンプ32には専用ポンプ要求トルクTEがそれぞれ供給されることになる。
【0076】
而して、トルク制限制御が実行されている場合には、エンジンEからトルク供給される第一、第二メインポンプ9、10とアキュムレータ36からトルク供給される専用ポンプ32とを同時に駆動させても、第一、第二メインポンプ9、10および専用ポンプ32に供給されるトルクの合計が、エンジンEから第一、第二メインポンプ9、10に供給可能な許容トルクTAの値を越えることなく、而して、トルク供給源としてエンジンEだけでなくアキュムレータ36が設けられている油圧ショベル1であっても、油圧ショベル1全体としての消費トルクの増加を抑えることができると共に、アキュムレータ36からトルク供給される分、エンジンEからの供給トルクを減らすことができて、省エネルギー化を確実に達成することができる。
【0077】
そのうえ、前記トルク制限制御において、第一、第二メインポンプ9、10および専用ポンプ32への供給トルクを制限するにあたり、許容トルクTAの値を、該許容トルクTAと専用ポンプ32に要求される専用ポンプ要求トルクTEとの比率に応じて第一、第二メインポンプ9、10と専用ポンプ32とに分配する構成になっているから、第一、第二メインポンプ9、10と専用ポンプ32とにバランス良くトルク配分できることになって、例えばブーム5の上昇と同時に、第一、第二メインポンプ9、10から圧油供給されるブームシリンダ8以外の油圧アクチュエータを作動させるような場合でも、複数の油圧アクチュエータを同時に動作せしめる連動操作を良好に行うことができ、作業性の向上に寄与できる。
【0078】
一方、パワーアップ制御が実行されている場合には、第一、第二メインポンプ9、10および専用ポンプ32にそれぞれ供給可能なトルクが供給されるから、エンジンEからの供給トルクとアキュムレータ36からの供給トルクとをフルに活用できることになって、大きなパワーの必要とする作業や作業速度を上げたいような場合であっても、充分に対応することができ、作業効率の向上に大きく貢献できる。
【0079】
しかも、前記パワーアップ制御は、オペレータが任意に操作するパワーアップスイッチ80の操作に基づいて実行される構成になっているから、作業中にパワー不足と感じたり作業速度が遅いと感じたりした場合に、パワーアップスイッチ80をON操作するだけでトルク制限制御からパワーアップ制御に切換ることになり、而して、オペレータの要望に応じて簡単且つ瞬時に油圧ショベル1のパワーアップを実現できることになる。
【0080】
また、前記パワーアップ制御は、アキュムレータ36に蓄圧されている場合のみ可能となるが、該パワーアップ制御が可能であることは、報知手段86によってオペレータに報知されることになるから、オペレータは、パワーアップ制御が可能であるか否かを容易に認識することができる。
【0081】
さらに、制御装置16は、運転状態判断部87において、油圧ショベル1の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であるか否かを判断し、パワーアップ制御に適した状態であると判断された場合はパワーアップ制御が実行される構成になっているから、運転状態に応じて自動的にパワーアップ制御が行われることになって、作業性、操作性の向上に大きく貢献できる。
【0082】
しかも、前記運転状態判断部87は、油圧ショベル1の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であるか否かの判断を、第一、第二メインポンプ9、10および専用ポンプ32から圧油供給される油圧アクチュエータの操作状態に基づいて行う、つまり、本実施の形態では、専用ポンプ32から圧油供給されるブームシリンダ8と、第一、第二メインポンプ9、10が圧油供給されるブームシリンダ8以外の油圧アクチュエータとを同時に動作せしめるべく連動操作した場合に、油圧ショベル1の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であると判断する構成になっているから、該判断を簡単、且つ的確に行うことができる。
また、前記油圧ショベル1の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であるか否かの判断を、第一、第二メインポンプ9、10および専用ポンプ32の吐出圧に基づいて行う、つまり、第一、第二メインポンプ9、10および専用ポンプ32が共に高吐出状態になった場合に、油圧ショベル1の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であると判断する構成であっても、同様に、簡単且つ的確な判断を行うことができる。
【0083】
さらに、本実施の形態において、前記運転状態判断部87の判断に基づいて自動的に行われるパワーアップ制御は、モード設定手段81により設定される油圧ショベル1の運転モードが予めパワーアップモードに設定されている場合にのみ実行される構成となっているため、例えば、オペレータが省エネルギーを重視して作業を行いたい場合等、オペレータが望まない場合に自動的にパワーアップ制御が実行されてしまうような不具合を回避でき、而して、オペレータの要望により柔軟に対応できる油圧ショベル1とすることができる。
【0084】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、上記実施の形態では、油圧ショベルの制御システムを例にとって説明したが、本発明は、トルク供給源としてエンジンとアキュムレータとが設けられている各種作業機械に実施できることは、勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】油圧ショベルの側面図である。
【図2】油圧制御システムの回路図である。
【図3】油圧制御システムの回路図である。
【図4】制御装置の入出力を示すブロック図である。
【図5】要求ポンプ容量演算部の制御手順を示すブロック図である。
【図6】分担割合演算部の制御手順を示すブロック図である。
【図7】第一コントロールバルブ制御部の制御手順を示すブロック図である。
【図8】第三コントロールバルブ制御部の制御手順を示すブロック図である。
【図9】専用ポンプ要求トルク演算部の制御手順を示すブロック図である。
【図10】運転状態判断部の制御手順を示すブロック図である。
【図11】他例における運転状態判断部の制御手順を示すブロック図である。
【図12】パワーアップシステム起動部の制御手順を示すブロック図である。
【図13】トルク制御部の制御手順を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0086】
4 作業部
8 ブームシリンダ
9 第一メインポンプ
10 第二メインポンプ
16 制御装置
32 専用ポンプ
36 アキュムレータ
80 パワーアップスイッチ
81 モード設定手段
86 報知手段
87 運転状態判断部
90 パワーアップシステム起動部
96 トルク制御部
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから供給されるトルクにより駆動するメインポンプと、アキュムレータから供給されるトルクにより駆動する専用ポンプとを設けてなる作業機械において、前記メインポンプおよび専用ポンプのトルク制御を行う制御装置を設けると共に、該制御装置は、メインポンプへの供給トルクと専用ポンプへの供給トルクとを合計したトルクが、エンジンからメインポンプに供給可能なトルクとして予め設定される許容トルクの値を越えないようにメインポンプおよび専用ポンプへの供給トルクを制限するトルク制限制御と、該制限を行うことなくメインポンプおよび専用ポンプに供給可能なトルクを供給するパワーアップ制御との何れか一方のトルク制御を選択して実行することを特徴とする作業機械における制御システム。
【請求項2】
制御装置は、オペレータが任意に操作するパワーアップ用操作具の操作に基づいて、パワーアップ制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の作業機械における制御システム。
【請求項3】
制御装置は、作業機械の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であるか否かを判断する運転状態判断手段を有すると共に、該運転状態判断手段の判断に基づいて、パワーアップ制御を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械における制御システム。
【請求項4】
運転状態判断手段による作業機械の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であるか否かの判断は、メインポンプおよび専用ポンプから圧油供給される油圧アクチュエータの操作状態に基づいて行うことを特徴とする請求項3に記載の作業機械における制御システム。
【請求項5】
運転状態判断手段による作業機械の運転状態がパワーアップ制御に適した状態であるか否かの判断は、メインポンプおよび専用ポンプの吐出圧に基づいて行うことを特徴とする請求項3に記載の作業機械における制御システム。
【請求項6】
運転状態判断手段の判断に基づくパワーアップ制御は、モード設定手段により設定される作業機械の運転モードが予めパワーアップモードに設定されている場合に実行されることを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載の作業機械における制御システム。
【請求項7】
制御装置は、アキュムレータの蓄圧状態に基づいてパワーアップ制御を行うことができるか否かを判断すると共に、該判断結果に基づいて報知手段に報知指令を出力することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の作業機械における制御システム。
【請求項8】
アキュムレータは、昇降する作業部の下降時に、該作業部を昇降せしめる油圧シリンダから排出される油を蓄圧する一方、該アキュムレータに蓄圧された油は、作業部の上昇時に専用ポンプを介して油圧シリンダに供給される構成であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の作業機械における制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−75365(P2008−75365A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257044(P2006−257044)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】