説明

作業機等の油圧制御回路

【課題】油圧制御ブロックを小さなブロックで分離可能にしてメンテナンスの能率を高める。
【解決手段】左側走行装置の駆動と制動を左操向クラッチシリンダ15Lと左走行ブレーキシリンダ18Lで制御し、右側走行装置の駆動と制動を右操向クラッチシリンダ15Rと右走行ブレーキシリンダ18Rで制御する回路であって、左操向クラッチシリンダ15Lと左走行ブレーキシリンダ18Lを制御する左クラッチ切換電磁弁14Lと左パイロット圧切換電磁弁16Lと左電磁比例弁17Lを一体に組み込んだ左油圧制御ブロック35Lと、右操向クラッチシリンダ15Rと右走行ブレーキシリンダ18Rを制御する右クラッチ切換電磁弁14Rと右パイロット圧切換電磁弁16Rと右電磁比例弁17Rを一体に組み込んだ右油圧制御ブロック35Rを各別の回路にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインやトラクタ等作業機の油圧操向制御ブロックの回路構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインの油圧操向制御回路は、例えば、特開2003−206907号公報に記載されている。
この油圧操向制御は、走行系油圧制御弁を一体に取り付ける走行系油圧制御ブロックと作業系油圧制御弁を一体に取り付ける作業系油圧制御ブロックとその他の油圧制御弁を一体に取り付けるその他制御用油圧制御ブロックで構成されている。
【特許文献1】特開2003−206907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の作業機等の油圧制御回路は、前記の如く、多くの油圧制御弁が組み込まれた大きな制御ブロック回路で構成されていた。
本発明では、油圧制御ブロックを小さなブロックで分離可能にしてメンテナンス等において取り扱いやすくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上述の如き課題を解決するために、以下のような技術的手段を講じる。
即ち、左側走行装置の駆動と制動を左操向クラッチシリンダ(15L)と左走行ブレーキシリンダ(18L)で制御し、右側走行装置の駆動と制動を右操向クラッチシリンダ(15R)と右走行ブレーキシリンダ(18R)で制御する油圧制御回路において、左操向クラッチシリンダ(15L)と左走行ブレーキシリンダ(18L)を制御する左クラッチ切換電磁弁(14L)と左パイロット圧切換電磁弁(16L)と左電磁比例弁(17L)を一体に組み込んだ左油圧制御ブロック(35L)と、右操向クラッチシリンダ(15R)と右走行ブレーキシリンダ(18R)を制御する右クラッチ切換電磁弁(14R)と右パイロット圧切換電磁弁(16R)と右電磁比例弁(17R)を一体に組み込んだ右油圧制御ブロック(35R)とを各別の回路構成にしたことを特徴とする作業機等の油圧制御回路とした。
【0005】
この構成で、左側走行装置の回転を制御する左操向クラッチシリンダ15Lと左走行ブレーキシリンダ18Lの制御は左油圧制御ブロック35Lで行い、右側走行装置の回転を制御する右操向クラッチシリンダ15Rと右走行ブレーキシリンダ18Rの制御は右油圧制御ブロック35Rで行う。
【発明の効果】
【0006】
この発明によると、左側走行装置が不調或は修理を要する場合には左油圧制御ブロック35Lを取り外して修理或は交換すれば良く、右側走行装置が不調或は修理を要する場合には右油圧制御ブロック35Rを取り外して修理或は交換すれば良く、従来の如く、多くの油圧制御弁が組み込まれた大きな制御ブロック回路の全体を分解して修理をする必要が無く、メンテナンスの能率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態をコンバインの油圧回路で説明する。
コンバインの油圧制御回路は、図1に示す如く、油タンク10から走行用油圧変速チャージ回路1を介して油圧ポンプ11により供給される圧油を、第一減圧弁12で所定の一次圧力に保持して走行系回路Tに向かう流れと、作業系回路Wに向かう流れに分岐する。
【0008】
第二減圧弁24を通して二次圧力に減圧した圧油は、左第一絞り8Lを介して左パイロット圧切換弁16Lへ向かう流れと右第一絞り8Rを介して右パイロット圧切換弁16Rへ向かう流れに分岐する。
【0009】
図2に示す如く、左パイロット圧切換弁16Lでは、左第二絞り7Lを通って左電磁比例弁17Lへ供給されさらに左走行ブレーキシリンダ18Lへ向かう流れと、左電磁比例弁17Lの供給側の圧油を左クラッチ切換電磁弁14Lに向かう流れに切換える。左走行ブレーキシリンダ18Lの戻り油は、左電磁比例弁17Lから油タンク10へ戻される。
【0010】
左クラッチ切換電磁弁14Lには、前記左第一絞り8Lを通った二次圧力の圧油が左チェック弁9Lを通って供給される。左クラッチ切換電磁弁14Lでは、左操向クラッチシリンダ15Lの一方へ圧油が供給されたり、左パイロット圧切換弁16Lのパイロット圧として左パイロット圧切換弁16Lを切り換えて前記左第二絞り7Lを通った圧油が左操向クラッチシリンダ15Lの他方へ供給されたりする。
【0011】
なお、第一減圧弁12の圧油供給側に電磁開閉バルブを介して油タンク10に通じるドレン油路を設け、走行系回路Tと作業系回路Wの油圧シリンダを使用しない場合にこの電磁開閉バルブを開いて圧油を直ちに油タンク10に戻すようにすれば、油圧ポンプ11の駆動負荷を軽減する。電磁開閉バルブを閉じて圧油を第一減圧弁12で高圧に保持すると、刈取昇降シリンダ28aとオーガ昇降シリンダ28bと左ローリングシリンダ28cと右ローリングシリンダ28dとピッチングシリンダ28eが使用可能になる。
【0012】
以上の左パイロット圧切換弁16Lと左電磁比例弁17Lと左クラッチ切換電磁弁14Lと左チェック弁9Lが一体の左油圧制御ブロック35Lとして組み込まれている。
また、図3に示す如く、右パイロット圧切換弁16Rでは、右第二絞り7Rを通って右電磁比例弁17Rへ供給されさらに右走行ブレーキシリンダ18Rへ向かう流れと、右電磁比例弁17Rの供給側の圧油を右クラッチ切換電磁弁14Rに向かう流れに切換える。右走行ブレーキシリンダ18Rの戻り油は、右電磁比例弁17Rから油タンク10へ戻される。
【0013】
右クラッチ切換電磁弁14Rには、前記右第一絞り8Rを通った二次圧力の圧油が右チェック弁9Rを通って供給される。右クラッチ切換電磁弁14Rでは、右操向クラッチシリンダ15Rの一方へ圧油が供給されたり、右パイロット圧切換弁16Rのパイロット圧として右パイロット圧切換弁16Rを切り換えて前記右第二絞り7Rを通った圧油が右操向クラッチシリンダ15Rの他方へ供給されたりする。
【0014】
以上の右パイロット圧切換弁16Rと右電磁比例弁17Rと右クラッチ切換電磁弁14Rと右チェック弁9Rが一体の右油圧制御ブロック35Rとして組み込まれている。
油圧ポンプ11から出た一次圧力の圧油がパイロット切換弁5と電磁切換え弁6を介して比例流量制御弁26に送られ、オーガ昇降シリンダ28bと左ローリングシリンダ28cと右ローリングシリンダ28dとピッチングシリンダ28eを制御する作業系回路Wに流れる。
【0015】
電磁切換え弁6を出た圧油は、第一パイロット弁19と第二パイロット弁20に送られる。
作業系回路Wには、別途に刈取用油圧変速チャージ回路2から送られる圧油が供給され、第一パイロット弁19と第二パイロット弁20と比例流量制御弁26に送られる。
【0016】
比例流量制御弁26に送られた圧油は、上昇用切換弁26a、下降用切換弁26b、リリーフ弁26eと、これら上昇用切換弁26aと下降用切換弁26bをパイロット圧によって可変調整する上昇用調整弁26cと下降用調整弁26dとにより制御された制御流の一方を第一パイロットチェック弁30aを介して刈取昇降シリンダ28aへ送油可能に接続すると共に、比例流量制御弁26の制御流の他方を第二パイロットチェック弁30bを介してオーガ昇降シリンダ28bへ送油可能に接続する。
【0017】
パイロット切換弁5から手動切換弁21を介して送られる圧油が、左ローリング切換電磁弁27cと右ローリング切換電磁弁27dとピッチング切換電磁弁27eへ送られる。
左ローリング切換電磁弁27cへ送られた圧油は、第三パイロットチェック弁30cと第二チェック付き絞り弁29cを介して左ローリングシリンダ28cへ送油可能に接続し、右ローリング切換電磁弁27dへ送られた圧油は、第四パイロットチェック弁30dと第三チェック弁付き絞り弁29dを介して右ローリングシリンダ28dへ送油可能に接続し、ピッチング切換電磁弁27eへ送られた圧油は、第五パイロットチェック弁30eと第五チェック付き絞り弁29eを介してピッチングシリンダ28eへ送油可能に接続している。
【0018】
図4は、左油圧制御ブロック35Lの底面図で、他の油圧制御ブロックと接合する油路接合端面36には油路が開口し、その油路接合端面36の油路を囲んでOリング用溝37を形成している。
【0019】
図5は、シリンダブロック38内に二つの左油圧シリンダ39と右油圧シリンダ40を縦に併設し、左油圧シリンダ39と右油圧シリンダ40に圧油を供給する左油路44と右油路45をシリンダ内の上端に設け、共通する一個のエア抜き用ニードル43に向けて左エア抜き穴41と右エア抜き穴42を設けている。この構成で、二個の左油圧シリンダ39と右油圧シリンダ40のエア抜きが一個のエア抜き用ニードル43で行えるので、製造コストが低減され、組立及びメンテナンスの作業性が良くなる。
【0020】
図6は、左ローリングシリンダ28cや右ローリングシリンダ28dやピッチングシリンダ28e等の複動油圧シリンダの伸び側に使われるチェック弁の断面図で、圧油が供給される油圧ブロック46にプラグ47とチェックボディ52で油圧シリンダに繋ぐアダプタ54を取り付けている。プラグ47とチェックボディ52の内部には、ボール50を受けるポペット49をポペット受け55に押圧する強い第一圧縮ばね48と、出口側からボール50を受けるボール抑え51を押圧する弱い第二圧縮ばね53とで押さえて戻り圧が無くてもボール50が浮き上がらないようにしている。このような構成で、戻り圧が弱くなってボール50が浮き上がってオイルが逆流しハンチングを起こすようなことが無い。
【0021】
図7は、前記図6のチェック弁の改良構造で、プラグ47に形成したネジ部57へ第二チェックボディ56を捻じ込むようにすることで、捻じ込み程度で第一圧縮ばね48のポペット49を押す力を調整するようにしている。
【0022】
図7と図8は、スリーブ80にパイロットスプール81をスライド可能に嵌合した構成で、パイロットスプール81の溝59に装着したOリング58がスリーブ80に出入りし易くするためにスリーブ80の孔端部に45°或は60°程度のカット面60を形成している。この構成は、前記の第一パイロットチェック弁30bや第二パイロットチェック弁30cや第三パイロットチェック弁30dで採用される。
【0023】
図10は、分流弁とリリーフ弁を一体化した構成を示している。第二油圧ブロック76に取り付ける左プラグ74と右プラグ75の中央に設ける分流弁スプール61を、左側は左分流ばね62と左オリフィスネジ64を内装する左オリフィススプール66と左ボール68と左ボール押え70と左ボール押えばね72で押圧し、右側は右分流ばね63と右オリフィスネジ65を内装する右オリフィススプール67と右ボール69と右ボール押え71と右ボール押えばね73で押圧している。
【0024】
左オリフィススプール66と右オリフィススプール67の外周には左Oリング77と右Oリング78を装着している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本コンバインの全体油圧回路図である。
【図2】走行用左油圧制御ブロック回路図である。
【図3】走行用右油圧制御ブロック回路図である。
【図4】左クラッチ切換電磁弁と左電磁比例減圧弁を一体的に組み込んだ左油圧制御ブロックの底面図である。
【図5】二連油圧シリンダのエア抜き部分の断面図である。
【図6】チェック弁の断面図である。
【図7】別実施例のチェック弁の断面図である。
【図8】パイロットチェック弁の断面図である。
【図9】パイロットチェック弁の部分拡大断面図である。
【図10】分流弁とリリーフ弁の一体化弁の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
14L 左クラッチ切換電磁弁
14R 右クラッチ切換電磁弁
15L 操向クラッチシリンダ
15R 右操向クラッチシリンダ
16L 左パイロット圧切換弁
16R 右パイロット圧切換弁
17L 左電磁比例弁
17R 右電磁比例弁
18L 左走行ブレーキシリンダ
18R 右走行ブレーキシリンダ
35L 左油圧制御ブロック
35R 右油圧制御ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左側走行装置の駆動と制動を左操向クラッチシリンダ(15L)と左走行ブレーキシリンダ(18L)で制御し、右側走行装置の駆動と制動を右操向クラッチシリンダ(15R)と右走行ブレーキシリンダ(18R)で制御する油圧制御回路において、左操向クラッチシリンダ(15L)と左走行ブレーキシリンダ(18L)を制御する左クラッチ切換電磁弁(14L)と左パイロット圧切換電磁弁(16L)と左電磁比例弁(17L)を一体に組み込んだ左油圧制御ブロック(35L)と、右操向クラッチシリンダ(15R)と右走行ブレーキシリンダ(18R)を制御する右クラッチ切換電磁弁(14R)と右パイロット圧切換電磁弁(16R)と右電磁比例弁(17R)を一体に組み込んだ右油圧制御ブロック(35R)とを各別の回路構成にしたことを特徴とする作業機等の油圧制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−76647(P2010−76647A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248412(P2008−248412)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】