説明

作業機

【課題】 運転キャビンの窓外面に対する塵埃の付着を効果的に抑制して、運転キャビン内で座席に搭座する運転者の前方視界を良好に確保できるようにする。
【解決手段】 運転キャビン5の窓面に沿う方向に圧縮エアーを吹き出すように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転キャビンを備えた作業機において、キャビンの窓を通しての視認性を保つように、窓外面に対する塵埃や汚れの付着を除去または抑制するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインのように多量の粉塵やワラ屑などが舞う環境下での作業では、運転キャビンの窓外面に大量の塵埃が付着することがあり、キャビン内部から窓を通して外部を見ながら作業を行う際に、外部状況を視認し難い状況が生じることがある。
このため従来では、運転キャビンの前面、あるいは側面にワイパーを付設して、付着した塵埃を掻きおとすように構成していた(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−18551号公報(段落番号〔0010〕、及び、図1,図2)
【特許文献2】特開2005−53449号公報(段落番号〔0018〕、〔0021〕、及び、図7,図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に示される技術を採用すれば、運転キャビンの窓外面に付着した塵埃をワイパーで掻きおとすことにより窓外部を視認することが可能となるが、これらの特許文献1及び2に記載された技術によっても、次のような技術的課題がある。
すなわち、特許文献1,2に記載のように、窓外面に付着した塵埃をワイパーで掻きおとす構造のものでは、塵埃の量がそれほど多くない状況下では支障なく用いることができる。しかしながら、塵埃の量が極端に多くなると、ワイパーに作用する負荷が大きくなって掻き落としが良好に行われなくなったり、また、ワイパーの届かない範囲に付着した大量の塵埃が窓の透過可能な範囲の面積を極端に狭めてしまうという問題がある。
ワイパーの届かない範囲は、それほど明確には見える必要はないが、全く見えないほどに塵埃が付着してしまうと、どうしても視野が狭くなってしまうため、時々人為的に窓を拭いて必要な視野を確保したり、ワイパーが動き易い状況とするように堆積塵埃を除去するなど、相当の人手を掛ける必要が生じていた。
【0005】
本発明は、運転キャビンの窓外面に対する塵埃の付着を効果的に抑制して、運転キャビン内で座席に搭座する運転者の視界を良好に確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明における作業機の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
【0007】
〔解決手段1〕
本発明の技術手段の一つは、請求項1に記載したように、運転キャビンの窓面に沿う方向に圧縮エアーを吹き出すように構成したことである。
【0008】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
窓面に沿って吹き出された圧縮エアーが、窓面に付着しようとする塵埃を効果的に吹き飛ばすため、窓面に対する塵埃の付着を抑制することができる。
また、圧縮エアーの吹き出し範囲を広く設定することで、窓面の広範囲にわたって塵埃の付着を抑制することが可能となる。
例えば、圧縮エアーの向きを下向きに設定すれば、下方から窓面付近に舞い上がってきた塵埃を圧縮エアーにより押えることができ、窓面の視界を確保することができる。
したがって、塵埃量が多い場合にも、窓面の広範囲にわたって塵埃の付着を抑制し、広い視界を良好に保つことが可能となる。
【0009】
〔解決手段2〕
本発明の技術手段の一つは、請求項2に記載したように、運転キャビンの窓面に向けて圧縮エアーを吹き付けるように構成したことである。
【0010】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
窓面に向けて吹き出された圧縮エアーが、窓面に付着しようとする塵埃、あるいは付着した塵埃を効果的に吹き飛ばすため、窓面に対する塵埃の付着を抑制及び除去することができる。
したがって、塵埃量が多い場合にも、塵埃の付着を抑制あるいは除去し、視界を良好に保つことが可能となる。
【0011】
〔解決手段3〕
本発明の技術手段の一つは、請求項3に記載したように、運転キャビンの窓面に対する除塵用の圧縮エアーの吹き出し方向を変化させるように構成したことである。
【0012】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
窓面に沿って圧縮エアーを吹き出すように設けて、窓面に付着しようとする塵埃を効果的に吹き飛ばすため、窓面に対する塵埃の付着を抑制することができる。
また、圧縮エアーの吹き出し範囲を広く設定することで、窓面の広範囲にわたって塵埃の付着を抑制することが可能となる。
そして、窓面に対する除塵用の圧縮エアーの吹き出し方向を変化させるようにしたことにより、その変化させる方向が窓面に沿う方向であれば、圧縮エアーの吹き出しノズルの使用本数が少なくても、窓面の広範囲にわたって圧縮エアーを吹き出すことができる。
前記圧縮エアーの吹き出し方向を変化させる方向が窓面に向かう方向であれば、圧縮エアーを窓面に沿う方向と向かう方向との両方向で吹き出し、塵埃の付着の抑制と、付着した塵埃の除去とを効果的に行うことが可能となる。
したがって、塵埃量が多い場合にも、窓面の広範囲にわたって塵埃の付着を抑制あるいは除去し、広い視界を良好に保つことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔作業機の全体構成〕
図1及び図3に、作業機の一例である自脱型コンバインの一例の前部を示している。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1,1に支持された機体フレーム2に、刈取前処理装置3を昇降自在に装備し、脱穀装置4、運転キャビン5、原動部6、グレンタンク7等を搭載して構成された周知の構造のものである。
【0014】
刈取前処理装置3と運転キャビン5とが、機体フレーム2の前端部に左右に並設されている。そして、図3に示すように、運転キャビン5の右側面には作業者が乗り降りする箇所を開閉するための扉5Aが設けられているとともに、前面上部は、前方及び前方の下方に対して視界を確保するように、全面が透明板で構成されている。
また、扉5Aの下部の前側で運転キャビン5の前面側と連なる隅角部分には、図3乃至図5に示すように、樹脂製の透明カバーTを右前方下方を作業者が目視できるように設置している。
【0015】
〔吹き出し除塵装置の構成〕
前記運転キャビン5は、その窓外面に対して圧縮エアーを吹き出す吹き出し除塵装置8を装備している。
この吹き出し除塵装置8は、前記原動部6に設けられたエンジンで駆動されるコンプレッサーや、コンプレッサーから供給される圧縮エアーを所定圧に調整する調圧弁などから構成される圧縮気体発生装置80と、その圧縮気体発生装置80側から供給される圧縮エアーを運転キャビン5の窓面に対して吹き出す吹き出しノズル82と、その吹き出しノズル82に圧縮エアーを導くための気体導管81とから構成されている。
【0016】
図1〜図3に示すように、圧縮気体発生装置80に連通接続されている気体導管81は、前記運転キャビン5の天井部の周囲に配設され、その気体導管81の複数箇所に吹き出しノズル82が配設されている。
つまり、運転キャビン5の前方側の前部窓50の上側と、運転キャビン5の右横側部の扉5Aに設けられた右横窓51の上側と、右横側部の後方の右横後窓52の上側と、運転キャビン5の左横側部に設けられた左横窓53の上側と、運転キャビン5の後方側の窓部に設けられた後方窓54の上側との夫々の箇所に、吹き出しノズル82が配設されている。
【0017】
この吹き出しノズル82は、総て各窓50,51,52,53,54の夫々に対してほぼ平行な方向に吹き出し方向を向けて、かつ、各窓50,51,52,53,54の夫々の面方向に沿って所定角度αの拡がり傾向を有した状態で吹き出すように構成してある。
この吹き出しの所定角度αは、吹き出し対象の窓の面積等に応じて各ノズル毎に適宜設定すればよい。
【0018】
吹き出しノズル82からの圧縮エアーの吹き出しは、作業中、常時吹き出すように設定してもよいが、圧縮気体発生装置80からの気体供給経路に制御可能な開閉弁を介装するなどして、吹き出し時間と休止時間とを設定し、間歇的に吹き出すように設定してもい。また、その吹き出し時間の間隔を塵埃の量に応じて人為的に変更できるように構成してもよい。
【0019】
〔その他〕
図4は、乗降用ステップ20の構造を示す。
この乗降用ステップ20は、機体フレーム2の下部に設けられた固定ブラケット21に連結した平行リンク機構22により、図1及び図4に示す下降位置Dと、運転キャビン5の床面と同程度にまで上昇した上昇位置Uとに位置変更自在に構成されており、その昇降動作は油圧シリンダ23の伸縮動作で行えるように構成されている。
【0020】
〔別実施形態の1〕
図5及び図6は、吹き出し除塵装置8の実施形態を示している。
この実施形態の構造では、吹き出しノズル82の構造が前述の実施形態のものとは異なり、次のように構成されている。
図5に示すように、運転キャビン5の右横窓51に対する吹き出しノズル82を、その噴出口83が横軸心x1周りで揺動駆動されるように構成し、右横窓51に沿う方向で所定角度範囲を往復揺動しながら塵埃の付着抑制を行うように構成されている。
【0021】
図5及び図6に示すように、運転キャビン5の前部窓50に対する吹き出しノズル82を、その噴出口83が前後向きの横軸心x2周りで揺動駆動されるノズル管84に多数形成してあり、そのノズル管84もノズル管84の長手方向の軸心y周りで回動するように構成してある。 したがって、この構造によれば圧縮エアーの吹き出し方向を、前部窓50に対して、その窓面に沿う方向で所定角度範囲を往復揺動しながら塵埃の付着抑制を行う状態と、窓面に向けて吹き出す状態とに変化させることができるように構成されている。
【0022】
〔別実施形態の2〕
前述の実施形態の構造において、吹き出しノズル82の配設位置を、天井側に設けるものに限らず、下方側から、もしくは横側方から圧縮エアーを吹き出すことができるように、運転キャビン5の下部や、支柱部分に設けてもよい。
【0023】
〔別実施形態の3〕
図3に示した実施形態のもののように、天井側に固定の吹き出しノズル82を配設した構造において、任意の窓部では、この吹き出しノズル82を用いずに従来のワイパーを配設するようにしてもよい。
また、吹き出しノズル82が設けられている窓部に、さらに従来のワイパーを付加して併用するようにしてもよい。
【0024】
〔別実施形態の4〕
前記図3に示した天井側に固定の吹き出しノズル82を配設した構造のものと、前記図5に示した噴出口83の位置を変化させる構造のものとを、各窓部において適宜振り分けて用いたり、同一の窓部で併用して用いてもよい。
【0025】
〔別実施形態の5〕
本発明の作業機としては、上述の実施形態で示したコンバインに限らず、多くの塵埃が舞う作業環境で使用される各種のキャビン付き作業機であってもよく、例えば、農用トラクターや建設機械などが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】コンバイン前部の側面図
【図2】コンバイン前部の平面図
【図3】運転キャビンの斜視図
【図4】乗降ステップの説明図
【図5】運転キャビンの斜視図
【図6】吹き出しノズルの別実施形態を示す説明図
【符号の説明】
【0027】
5 運転キャビン
5A 扉
8 吹き出し除塵装置
80 圧縮気体発生装置
81 気体導管
82 吹き出しノズル
83 噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転キャビンの窓面に沿う方向に圧縮エアーを吹き出すように構成した作業機。
【請求項2】
運転キャビンの窓面に向けて圧縮エアーを吹き付けるように構成した作業機。
【請求項3】
運転キャビンの窓面に対する除塵用の圧縮エアーの吹き出し方向を変化させるように構成した作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−80961(P2008−80961A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263174(P2006−263174)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】