作業車両
【課題】農業用トラクタ等、作業車両のデフロック装置の操作性を向上する。
【解決手段】デフロック装置37A,37Bを作動し又は解除するデフロック作動手段36、67を備え、車体の旋回動作を検出して作業機12を上昇し又は旋回内側の後輪3を制動するとともに、旋回動作から直進状態への旋回復帰時は作業機12を下降し旋回内側の制動を解除する旋回制御手段Sを備え、車体の旋回動作を検出すると作動状態のデフロック装置37A,37Bをデフロック解除側に切り替え、前記旋回復帰時にはデフロック装置37A,37Bを作動状態とする制御部Cを備える。
【解決手段】デフロック装置37A,37Bを作動し又は解除するデフロック作動手段36、67を備え、車体の旋回動作を検出して作業機12を上昇し又は旋回内側の後輪3を制動するとともに、旋回動作から直進状態への旋回復帰時は作業機12を下降し旋回内側の制動を解除する旋回制御手段Sを備え、車体の旋回動作を検出すると作動状態のデフロック装置37A,37Bをデフロック解除側に切り替え、前記旋回復帰時にはデフロック装置37A,37Bを作動状態とする制御部Cを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、前輪又は後輪を夫々の伝動系に差動機構を介して回転連動すると共にデフロック装置を備えた作業車両に関し、デフロック装置の入り切り連動の容易化を図る。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の作業車両には、前輪または後輪の伝動系に差動機構によるデフ作用をロックするデフロック装置を設け、このデフロック装置をコントローラの通電出力により、入切操作するものが知られている。例えば、特開平10−181374号公報では、湿田圃場での旋回時に前輪のデフロックを作動させて、旋回を円滑にする制御が示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平10-181374号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公報の制御装置は、前車輪を後車輪よりも高速伝動する前輪増速装置と、前車輪への連動のフロントデフを固定するフロントデフロックとを有し、該フロントデフを固定したのち前輪増速装置を高速位置に連継するもので、前輪高速伝動時の前輪デフロッククラッチ爪の破損を防止しようとするものである。代掻き作業など超湿田での旋回性能を向上させる制御であるが、ステアリングハンドルには、この操向角を検出するポテンショメータからなるステリングセンサが設けられ、その出力がコントローラへ入力され、例えば、ステアリングハンドル16の切角が0回転域の位置では車体6の直進位置Aとし、0.5回転(半回転)域の位置では自動的に前車軸に設ける差動機構をデフロックするオートデフロック位置とされる構成の開示がある。
【0004】
しかしながら、ステアリング操作に伴い旋回内側の後輪ブレーキを作動させる等の自動旋回制御の際のデフロックの解除や再度デフロック作動させる点について配慮がなく操作の煩雑さの課題を残すものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点を解決するために、この発明は次のような技術的手段を講じた。
即ち、エンジン(6)の回転動力をデフ装置(50F,50R)を介して左右の走行装置(2,3)へ伝達すると共に、車体に対し作業機(12)を昇降自在に備えた作業車両において、
デフ装置(50F,50R)の差動を制限するデフロック装置(37A,37B)を設けると共にこのデフロック装置(37A,37B)を作動し又は解除するデフロック作動手段(36、67)を備え、
車体の旋回動作を検出して作業機(12)を上昇し又は旋回内側の後輪(3)を制動するとともに、旋回動作から直進状態への旋回復帰時は作業機(12)を下降し旋回内側の制動を解除する旋回制御手段(S)を備え、
車体の旋回動作を検出すると作動状態のデフロック装置(37A,37B)をデフロック解除側に切り替え、前記旋回復帰時にはデフロック装置(37A,37B)を作動状態とする制御部(C)を備えた作業車両とした。
【0006】
前記構成によると、エンジン(6)の回転動力はデフ装置(50F,50R)を介して左右の走行装置(2,3)へ伝達され、デフロック作動手段(36、67)が操作されるとデフロック装置(37A,37B)が作動する。この際、旋回制御に連動して前記デフロックが解除され、または再度作動状態に復帰操作される。
【発明の効果】
【0007】
これにより、旋回制御手段(S)の動作に連動し、作業機(12)の自動上昇あるいは旋回内側後輪の制動を自動的に行なうほか、デフロック状態のデフ装置(50F,50R)を解除させると共に、所定旋回操作を終え再度直進状態に復帰するとデフロックが再び作動して作業を継続するため、オペレータの操作を軽減して操作性を向上することができる。またデフロック装置(37A,37B)の切り忘れを防止して操向操作性を損うことが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を図面に基づいて説明する。
トラクタ1は、図1に示すように、ホイール式走行装置を備えた四輪駆動車両であって、車体前部のエンジン取付フレーム4の中央上部にエンジン6を搭載し、このエンジン6の回転動力をミッションケース13内の伝動機構を介して、機体前部左右の前輪2,2と、機体後部左右の後輪3,3に伝達して走行する構成となっている。またハンドル7を左右に回転操作すると、パワーステアリング装置を介して前記左右前輪2,2が操舵される構成となっている。
【0009】
また機体の後部には、昇降シリンダ43により上下回動させるリフトアーム8,8が設けられている。このリフトアーム8,8の先端部と作業機装着用のロワーリンク9,9の中間部とがリフトロッド11,11により連結され、また、上部リンク10及びロワーリンク9,9の後端部に対地作業機(図例ではロータリ作業機12)が連結されていて、前記リフトアーム8,8を上下回動しロータリ作業機12を昇降させる構成となっている。
【0010】
エンジン6の回転動力は、図3に示すように、主クラッチ5aを経てミッションケース13に入力され、主クラッチ5aを経た動力は、前輪2,2及び後輪3,3を駆動する走行系動力と作業機系動力の二系統に分岐伝動される。前記走行系動力は前後進変速部5b、8段式の主変速部5c、高中低の3段式の副変速部5dからなる走行変速装置5eを経て所定に変速されてドライブピニオン軸5fから後輪デフ装置50Rのリングギヤに伝動され、左右の後輪3,3を駆動する構成である。また走行変速装置5eで変速された動力は、上記ドライブピニオン軸5fを分岐して取り出され、四WD切替装置5gを経由し、ミッションケース13の前側に取り出され、前輪伝動軸5hを経て前車軸ケース内の前輪デフ装置50Fのリングギヤに伝動され、左右の前輪2,2に伝達される。
【0011】
そして前記前後のデフ装置50F,50Rのデフ軸と出力軸間には、デフ作用をロックするデフロック装置37F,37Rを備え、このデフロック装置37F,37Rをデフロックシリンダ37f,37rにより入切操作する構成となっている。
【0012】
詳細には、図4に示すように後車軸78側のデフ装置50Rのデフロック装置37Rについて、ドライブピニオン軸5fのドライブピニオンは、デフ装置50Rのリングギヤ79に噛合し、デフピニオン軸80上のピニオン81,81、該ピニオン81,81に噛合する出力側ピニオン82l,82r、この出力側ピニオン82L,82Rにスプライン嵌合する左・右出力軸83l,83r等によって構成される。上記リングギヤ79とデフピニオン軸80に共締めされるデフケース部84をデフメタル85に軸受支持するが、このデフケース部84の端部にはクラッチ係合部84aを形成し、上記出力軸83Rにスプライン嵌合して軸方向に摺動自在にクラッチ爪形態のデフロッククラッチ86を設ける。
【0013】
上記デフロッククラッチ86はスラストニードル87を介してピストン88に連動し、該ピストン88外周のシリンダ89に油路90を経由して導入される圧油をこのピストン88の鍔状部88aで受ける構成である。この圧油によってピストン88がバネ91に抗して前進し、クラッチ係合部84aにデフロッククラッチ86を係合可能である。
【0014】
上記クラッチ係合部84aにデフロッククラッチ86を係合させると、リングギヤ79の回転が左・右出力軸83L,83Rに伝達され、左右出力軸回転は同一回転状態となる。なお、デフ装置50Fも同様の構成であり、前後のデフ装置50F,50Rの油圧シリンダ内に単一のデフロック制御弁36の作用で圧油が同時的に供給されたり、排出される構成である。夫々別々に制御弁を対応させる場合に比して構成を簡単化できるためコスト低減できる。
【0015】
なお、デフケース部84にリングギヤ79を支持構成するに当り、該リングギヤ79は左右のデフケース部84l,84rに挟んでボルト84a止めするようになし、上記左右のデフケース部84l,84rには右デフケース部84rを左デフケース部84lに嵌合しうるインロー部84bを形成している。従って、左右のデフケース部でリングギヤ79を挟んで固定することに伴う組付け上の芯ずれを防止できる。
【0016】
また、前記油路90は、ブレーキ機構92のハウジング92a部に形成させるものであり、このハウジング92a部中心箇所に円筒状のピストン89を形成するものであり、ピストン復帰バネ91はデフケースメタル94との間に構成できるものとなるから、デフロック装置50Rの出力軸83Rの軸心方向における長さを小さくでき、コンパクトに構成できるものである。
【0017】
92l,92rは左右の出力軸83l,83rを夫々制動するブレーキ装置、93は最終減速装置である。
作業機系動力は、前記主クラッチ5aへの駆動出力を分岐して取り出しPTO正逆切替装置5j及びPTO変速装置5kを経由して、ミッションケース13の後面部から後方に突出するPTO軸14に取り出され、ロータリ作業機12に伝達される構成である。
【0018】
また前記主変速部5cは、図2に示すように、変速レバー15グリップに備えた、変速アップスイッチ47及び変速ダウンスイッチ48の押込み操作で一段ずつ増減速操作し、副変速部5dは、同レバー15のシフト操作で高低に変速する構成となっている。
【0019】
次に、図5〜図7に基づきトラクタ1の油圧構成について説明する。
油圧ポンプ16から吐出した油圧は、リデュースバルブ17を介して、まず回路上手側で、ブレーキバルブ18を経由した左右のブレーキシリンダ19,19に分岐される。このブレーキシリンダ19,19の圧油の給排によって、前記ブレーキ機構92l,92rがブレーキ力を調整されて制動される構成である。
【0020】
また、同様に回路上手側から順に、前後のクラッチ制御弁21a,21bを経て前後進変速部5bの前後進切替用のクラッチシリンダ22に分岐され、前記主変速部5cの1−2速切替用の第一変速制御弁23を経て第一変速シリンダ24に分岐される。また前記主変速部5cの3−4速切替用の第二変速制御弁26を経て第二変速シリンダ27に分岐され、前記副変速部5dの高低切替用の副変速制御弁28を経て副変速シリンダ29に分岐され、前記四WD切替装置5gの二駆四駆切替用の二駆四駆切替制御弁31を経て二駆四駆切替シリンダ32に分岐される。
【0021】
更に、前記PTO変速装置5kの高低切替用のPTO変速制御弁33を経てPTO変速シリンダ34に分岐され、そして、デフロック制御弁36を経て前輪デフ装置50F用の前輪デフロックシリンダ37a、及び、後輪デフ装置50R用の後輪デフロックシリンダ37bに分岐される構成である。従って、単一のデフロック制御弁36をもって前・後輪デフロックシリンダに圧油を供給または排出させる構成である。
【0022】
また前記油圧ポンプ16からの油圧は、作業機制御用に取り出され、作業機水平制御用の水平制御弁39を経て水平シリンダ41に送られ、また、水平制御弁39を経由した油圧が作業機昇降制御弁42,42を経て左右の昇降シリンダ43に送られる構成である。なお符号13は戻り油タンクである。
【0023】
次に、図8と図9に基づいて、通信回線で接続された各コントローラ46,61から成る制御部Cの構成について説明する。
図8に示すように、走行用コントローラ46の入力側には、次のように各種スイッチ及びセンサが接続されている。即ち、前記主変速部5cを高速側に一段ずつ変速する変速アップスイッチ47、前記主変速部5c変速装置を低速側に一段ずつ変速する変速ダウンスイッチ48、前記副変速レバー15の変速位置を検出する変速レバー位置センサ49、前記主変速部5cの変速位置を検出する変速位置センサ51、エンジン回転数センサ52、主クラッチ5a用のクラッチペダル踏込スイッチ53、車速センサ54がそれぞれ接続されている。
【0024】
また走行用コントローラ46の出力側には、前記主変速部5cの変速用制御弁作動用のソレノイド56、前記前後進変速部5bの前後進切替用制御弁作動用のソレノイド57、メータパネル用コントローラ58がそれぞれ接続されている。
【0025】
また図9に示すように、作業機用コントローラ61の入力側には、作業機昇降レバー44のレバー位置を検出するレバー位置センサ62、ハンドル切れ角センサ63、ブレーキ踏込検出スイッチ(左)64、ブレーキ踏込検出スイッチ(右)66、前後輪のデフロック装置を同時に入切するデフロック入切スイッチ67、畔際の旋回時にロータリ耕耘装置12の昇降及びPTOクラッチの入切制御をする旋回制御入切スイッチ68が、それぞれ接続されている。
【0026】
また、作業機用コントローラ61の出力側には、作業機上昇制御弁用のソレノイド69、作業機下降制御弁用のソレノイド71、ブレーキバルブ18内の流量制御弁18aと切替制御弁18b作動用の各ソレノイド72s、72l、72r…、デフロック作動用制御弁のソレノイド73、前輪増速用制御弁のソレノイド74、前輪等速用制御弁のソレノイド76がそれぞれ接続されている。
【0027】
以上のように構成したトラクタ1の制御部Cでは、図10に示す制御プログラムの概要を示すフローチャートのように、各種制御が実行される。
トラクタ1の電源系が入とされると、まず各種センサや設定スイッチ類の検出値が読み込まれ(ステップ101)、続いてトラクタ1の変速制御(ステップ102)、前後輪のデフロック制御(ステップ103)、旋回制御(ステップ104)が実行される。
【0028】
なお、ステップ104の旋回制御の実行に当っては、コントローラ61(制御部C)に組み入れられた旋回制御手段Sに基づく。即ち、前記旋回制御入切スイッチ68の入操作に基づき、所定旋回状態を検出する検出手段の検出によって所定の油圧切替弁を操作させ、作業機上昇、旋回内側のブレーキ機構の制動、を自動的に行わせ、旋回動作から直進状態に復帰することを検出すると再び作業機下降、ブレーキ解除の各操作が行われる(旋回制御手段S)。
【0029】
また、ステップ103のデフロック制御に当っては、前記デフロック入切スイッチ67のON操作に基づきデフロック作動手段としてのデフロック制御弁36のソレノイドをONして圧油を供給してデフロックを作動させる。また、ソレノイドをOFFするとデフロックが解除される。
【0030】
前記トラクタ1の変速制御(ステップ102)の詳細について説明する。
前記主変速部5c及び副変速部5dからなる走行変速装置5eは1段から8段までの多段変速ができる構成で、変速レバー15により副変速部5cを高速あるいは低速に切り替え、変速レバー15の握り部に設けられている変速アップスイッチ47あるいは変速ダウンスイッチ48を1回ONすると、一段ずつ増減速される。
【0031】
また、走行変速装置5eが最高速、即ち8段に変速されている状態で、変速アップスイッチ47をONすると1段目に変速され、また、最低速、即ち1段に変速されている状態で、変速ダウンスイッチ48をONすると、8段目に変速されるようにし、変速操作の簡素化を図っている。
【0032】
また、前記変速アップスイッチ47及び変速ダウンスイッチ48を同時にONすると、1段〜8段までの何れの変速位置にあっても予め設定された中間位置、ここでは第4速に一挙に変速される。しかして、構成の簡素化及び操作の簡素化を図りながら、オペレータの意図した変速位置に迅速に移動することができる。
【0033】
図10のステップ103におけるデフロック制御の詳細について図11〜図15のフローチャートに基づき説明する。
図11に基づいて、デフロッククラッチ85がOFFのとき、即ちデフ装置50F,50R共に非作動状態のとき(ステップ201)、車速センサ54の検出、具体的には前車軸回転数Nfを検出し、この検出回転数Nfと予め設定した基準回転数Nsとを比較し(ステップ202)、所定回転数以上のときはデフロック制御弁36のソレノイドをOFF継続し(ステップ203)、ステップ202で所定回転数未満のときは、デフロックスイッチ67のON操作に基づき(ステップ204)、デフロック制御弁36のソレノイドがONされ、前後デフロック装置のシリンダ88に圧油が供給されて、デフロッククラッチ85をONして車輪の左右回転が同期するデフロック状態となす(ステップ205〜207)。このように構成すると、高速状態でのデフロックが牽制され、ハンドル操作に従って安全に操作できる。
【0034】
図12について説明する。図12ではデフロッククラッチ85がONのとき、即ちデフ装置50F,50R共に作動状態のとき(ステップ301)、車速センサ54の検出に基づき前車軸回転数Nfを検出し、この検出回転数Nfと予め設定した基準回転数Nsとを比較し(ステップ302)、所定回転数未満のときはデフロック制御弁36のソレノイドをON継続し(ステップ303)、ステップ302で所定回転数未満のときは、デフロックスイッチ67のOFF操作に基づき(ステップ304)、デフロック制御弁36のソレノイドがOFFされ、前後デフロック装置のシリンダ88から圧油が排出されて、デフロッククラッチ85をOFFする(ステップ305、306)。その後前車軸回転数Nfと所定回転数Nsとの対比がなされ(ステップ307)、所定回転未満に達するとデフロックスイッチ67操作を待ってデフロック制御弁21のソレノイドをONし、所定にデフロッククラッチ85をONとなす(ステップ308〜311)。このように構成すると、高速状態でのデフロックが牽制され、ハンドル操作に従って安全に操作できる。
【0035】
図13によると、圃場作業中であってデフロッククラッチがONの状態のとき(ステップ401)、ブレーキペダル操作によって左右片方の後輪が制動されると(ステップ402)、デフロック制御弁36のソレノイドがOFFされ、前後デフロック装置のシリンダ88に圧油が供給されて、デフロッククラッチ85をOFFしてデフロックを解除する(ステップ403〜405)。ついで上記ブレーキ操作が解除され(ステップ406)、デフロックスイッチ67がONされたときには(ステップ407)、ステップ408〜410の手順でデフロックがONされるものである。
【0036】
このように構成されると、旋回目的や方向修正で左右片側ブレーキあるいは両ブレーキ同時操作が行なわれると、デフロック状態を解除するから旋回半径を大きくしたり圃場を荒らすことを防止する。また、ブレーキ操作が解除されると自動的にデフロック状態に復帰することなく、デフロックスイッチ67操作を待ってデフロック状態とするものであるから、オペレータの認識に基づく操作となって誤操作を防止し得る。
【0037】
図14は上記図13に示すデフロック制御を改良したものである。すなわち、デフロック解除後は自動的に復帰してデフロックONとするのでなく、一旦デフロックスイッチ67操作を待つが、旋回制御モードの状態である場合には自動的にデフロック復帰させる構成である。図において、ステップ501からステップ506までの手順は図13におけるステップ401からステップ406と同じであるが、ステップ507で旋回制御モードであるか否かが判定される。旋回制御モードとはステアリングハンドル操作量などによって旋回動作を検出すると、自動的に作業機を上昇し旋回内側のブレーキを制動し、あわせて前輪の周速度を後輪の約2倍に増速するものである。なおこれら制御のうち単一動作をもってしてもよい。
【0038】
上記ステップ507で旋回制御モードであると判定されたときは自動的にデフロックがONとされ、ステップ507で旋回制御モードでないと判定されたときはデフロックスイッチ67操作を待ってデフロック状態に復帰する(ステップ511)。このように構成すると、自動旋回モードでは自動デフロック復帰をさせることができ、操作性の向上を図ることができる。なお、自動旋回モードではステアリングハンドル7が直進状態に復帰すると自動的に元の作業状態に復帰動する構成であり、この一環としてデフロック状態に復帰する構成となっている。
【0039】
図15は自動旋回モードの状態として、ステアリングハンドル7の切角加速度ωが所定以上であったり、ハンドル切角が所定標準以上のときは、旋回と判定し作業機上昇及び旋回内側後輪を制動すると共に、デフロックを解除動作させ、以後旋回復帰してハンドル切角が所定範囲に納まると作業機を自動降下させ旋回内側ブレーキを解除する。なお、旋回制御モードの選択スイッチは別途に配設されていて該スイッチ操作に基づき旋回制御モードとなる構成である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】トラクタの側面図。
【図2】変速レバー近傍の斜視図。
【図3】トラクタの伝動構成図。
【図4】後輪デフ装置部の断面図。
【図5】トラクタの油圧回路を示す図。
【図6】トラクタの油圧回路を示す図。
【図7】トラクタの油圧回路を示す図。
【図8】走行用コントローラの接続状態を示すブロック図。
【図9】作業機用コントローラの接続状態を示すブロック図。
【図10】制御フローチャート。
【図11】制御フローチャート。
【図12】制御フローチャート。
【図13】制御フローチャート。
【図14】制御フローチャート。
【図15】制御フローチャート。
【符号の説明】
【0041】
C 制御部(コントローラ)
S 旋回制御手段
1 トラクタ
2 前輪
3 後輪
5c 主変速部
5d 副変速部
6 エンジン
7 ハンドル
15 変速レバー
36 デフロック制御弁(デフロック作動手段)
67 デフロック入切スイッチ
68 旋回制御入切スイッチ
【技術分野】
【0001】
この発明は、前輪又は後輪を夫々の伝動系に差動機構を介して回転連動すると共にデフロック装置を備えた作業車両に関し、デフロック装置の入り切り連動の容易化を図る。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の作業車両には、前輪または後輪の伝動系に差動機構によるデフ作用をロックするデフロック装置を設け、このデフロック装置をコントローラの通電出力により、入切操作するものが知られている。例えば、特開平10−181374号公報では、湿田圃場での旋回時に前輪のデフロックを作動させて、旋回を円滑にする制御が示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平10-181374号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公報の制御装置は、前車輪を後車輪よりも高速伝動する前輪増速装置と、前車輪への連動のフロントデフを固定するフロントデフロックとを有し、該フロントデフを固定したのち前輪増速装置を高速位置に連継するもので、前輪高速伝動時の前輪デフロッククラッチ爪の破損を防止しようとするものである。代掻き作業など超湿田での旋回性能を向上させる制御であるが、ステアリングハンドルには、この操向角を検出するポテンショメータからなるステリングセンサが設けられ、その出力がコントローラへ入力され、例えば、ステアリングハンドル16の切角が0回転域の位置では車体6の直進位置Aとし、0.5回転(半回転)域の位置では自動的に前車軸に設ける差動機構をデフロックするオートデフロック位置とされる構成の開示がある。
【0004】
しかしながら、ステアリング操作に伴い旋回内側の後輪ブレーキを作動させる等の自動旋回制御の際のデフロックの解除や再度デフロック作動させる点について配慮がなく操作の煩雑さの課題を残すものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点を解決するために、この発明は次のような技術的手段を講じた。
即ち、エンジン(6)の回転動力をデフ装置(50F,50R)を介して左右の走行装置(2,3)へ伝達すると共に、車体に対し作業機(12)を昇降自在に備えた作業車両において、
デフ装置(50F,50R)の差動を制限するデフロック装置(37A,37B)を設けると共にこのデフロック装置(37A,37B)を作動し又は解除するデフロック作動手段(36、67)を備え、
車体の旋回動作を検出して作業機(12)を上昇し又は旋回内側の後輪(3)を制動するとともに、旋回動作から直進状態への旋回復帰時は作業機(12)を下降し旋回内側の制動を解除する旋回制御手段(S)を備え、
車体の旋回動作を検出すると作動状態のデフロック装置(37A,37B)をデフロック解除側に切り替え、前記旋回復帰時にはデフロック装置(37A,37B)を作動状態とする制御部(C)を備えた作業車両とした。
【0006】
前記構成によると、エンジン(6)の回転動力はデフ装置(50F,50R)を介して左右の走行装置(2,3)へ伝達され、デフロック作動手段(36、67)が操作されるとデフロック装置(37A,37B)が作動する。この際、旋回制御に連動して前記デフロックが解除され、または再度作動状態に復帰操作される。
【発明の効果】
【0007】
これにより、旋回制御手段(S)の動作に連動し、作業機(12)の自動上昇あるいは旋回内側後輪の制動を自動的に行なうほか、デフロック状態のデフ装置(50F,50R)を解除させると共に、所定旋回操作を終え再度直進状態に復帰するとデフロックが再び作動して作業を継続するため、オペレータの操作を軽減して操作性を向上することができる。またデフロック装置(37A,37B)の切り忘れを防止して操向操作性を損うことが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を図面に基づいて説明する。
トラクタ1は、図1に示すように、ホイール式走行装置を備えた四輪駆動車両であって、車体前部のエンジン取付フレーム4の中央上部にエンジン6を搭載し、このエンジン6の回転動力をミッションケース13内の伝動機構を介して、機体前部左右の前輪2,2と、機体後部左右の後輪3,3に伝達して走行する構成となっている。またハンドル7を左右に回転操作すると、パワーステアリング装置を介して前記左右前輪2,2が操舵される構成となっている。
【0009】
また機体の後部には、昇降シリンダ43により上下回動させるリフトアーム8,8が設けられている。このリフトアーム8,8の先端部と作業機装着用のロワーリンク9,9の中間部とがリフトロッド11,11により連結され、また、上部リンク10及びロワーリンク9,9の後端部に対地作業機(図例ではロータリ作業機12)が連結されていて、前記リフトアーム8,8を上下回動しロータリ作業機12を昇降させる構成となっている。
【0010】
エンジン6の回転動力は、図3に示すように、主クラッチ5aを経てミッションケース13に入力され、主クラッチ5aを経た動力は、前輪2,2及び後輪3,3を駆動する走行系動力と作業機系動力の二系統に分岐伝動される。前記走行系動力は前後進変速部5b、8段式の主変速部5c、高中低の3段式の副変速部5dからなる走行変速装置5eを経て所定に変速されてドライブピニオン軸5fから後輪デフ装置50Rのリングギヤに伝動され、左右の後輪3,3を駆動する構成である。また走行変速装置5eで変速された動力は、上記ドライブピニオン軸5fを分岐して取り出され、四WD切替装置5gを経由し、ミッションケース13の前側に取り出され、前輪伝動軸5hを経て前車軸ケース内の前輪デフ装置50Fのリングギヤに伝動され、左右の前輪2,2に伝達される。
【0011】
そして前記前後のデフ装置50F,50Rのデフ軸と出力軸間には、デフ作用をロックするデフロック装置37F,37Rを備え、このデフロック装置37F,37Rをデフロックシリンダ37f,37rにより入切操作する構成となっている。
【0012】
詳細には、図4に示すように後車軸78側のデフ装置50Rのデフロック装置37Rについて、ドライブピニオン軸5fのドライブピニオンは、デフ装置50Rのリングギヤ79に噛合し、デフピニオン軸80上のピニオン81,81、該ピニオン81,81に噛合する出力側ピニオン82l,82r、この出力側ピニオン82L,82Rにスプライン嵌合する左・右出力軸83l,83r等によって構成される。上記リングギヤ79とデフピニオン軸80に共締めされるデフケース部84をデフメタル85に軸受支持するが、このデフケース部84の端部にはクラッチ係合部84aを形成し、上記出力軸83Rにスプライン嵌合して軸方向に摺動自在にクラッチ爪形態のデフロッククラッチ86を設ける。
【0013】
上記デフロッククラッチ86はスラストニードル87を介してピストン88に連動し、該ピストン88外周のシリンダ89に油路90を経由して導入される圧油をこのピストン88の鍔状部88aで受ける構成である。この圧油によってピストン88がバネ91に抗して前進し、クラッチ係合部84aにデフロッククラッチ86を係合可能である。
【0014】
上記クラッチ係合部84aにデフロッククラッチ86を係合させると、リングギヤ79の回転が左・右出力軸83L,83Rに伝達され、左右出力軸回転は同一回転状態となる。なお、デフ装置50Fも同様の構成であり、前後のデフ装置50F,50Rの油圧シリンダ内に単一のデフロック制御弁36の作用で圧油が同時的に供給されたり、排出される構成である。夫々別々に制御弁を対応させる場合に比して構成を簡単化できるためコスト低減できる。
【0015】
なお、デフケース部84にリングギヤ79を支持構成するに当り、該リングギヤ79は左右のデフケース部84l,84rに挟んでボルト84a止めするようになし、上記左右のデフケース部84l,84rには右デフケース部84rを左デフケース部84lに嵌合しうるインロー部84bを形成している。従って、左右のデフケース部でリングギヤ79を挟んで固定することに伴う組付け上の芯ずれを防止できる。
【0016】
また、前記油路90は、ブレーキ機構92のハウジング92a部に形成させるものであり、このハウジング92a部中心箇所に円筒状のピストン89を形成するものであり、ピストン復帰バネ91はデフケースメタル94との間に構成できるものとなるから、デフロック装置50Rの出力軸83Rの軸心方向における長さを小さくでき、コンパクトに構成できるものである。
【0017】
92l,92rは左右の出力軸83l,83rを夫々制動するブレーキ装置、93は最終減速装置である。
作業機系動力は、前記主クラッチ5aへの駆動出力を分岐して取り出しPTO正逆切替装置5j及びPTO変速装置5kを経由して、ミッションケース13の後面部から後方に突出するPTO軸14に取り出され、ロータリ作業機12に伝達される構成である。
【0018】
また前記主変速部5cは、図2に示すように、変速レバー15グリップに備えた、変速アップスイッチ47及び変速ダウンスイッチ48の押込み操作で一段ずつ増減速操作し、副変速部5dは、同レバー15のシフト操作で高低に変速する構成となっている。
【0019】
次に、図5〜図7に基づきトラクタ1の油圧構成について説明する。
油圧ポンプ16から吐出した油圧は、リデュースバルブ17を介して、まず回路上手側で、ブレーキバルブ18を経由した左右のブレーキシリンダ19,19に分岐される。このブレーキシリンダ19,19の圧油の給排によって、前記ブレーキ機構92l,92rがブレーキ力を調整されて制動される構成である。
【0020】
また、同様に回路上手側から順に、前後のクラッチ制御弁21a,21bを経て前後進変速部5bの前後進切替用のクラッチシリンダ22に分岐され、前記主変速部5cの1−2速切替用の第一変速制御弁23を経て第一変速シリンダ24に分岐される。また前記主変速部5cの3−4速切替用の第二変速制御弁26を経て第二変速シリンダ27に分岐され、前記副変速部5dの高低切替用の副変速制御弁28を経て副変速シリンダ29に分岐され、前記四WD切替装置5gの二駆四駆切替用の二駆四駆切替制御弁31を経て二駆四駆切替シリンダ32に分岐される。
【0021】
更に、前記PTO変速装置5kの高低切替用のPTO変速制御弁33を経てPTO変速シリンダ34に分岐され、そして、デフロック制御弁36を経て前輪デフ装置50F用の前輪デフロックシリンダ37a、及び、後輪デフ装置50R用の後輪デフロックシリンダ37bに分岐される構成である。従って、単一のデフロック制御弁36をもって前・後輪デフロックシリンダに圧油を供給または排出させる構成である。
【0022】
また前記油圧ポンプ16からの油圧は、作業機制御用に取り出され、作業機水平制御用の水平制御弁39を経て水平シリンダ41に送られ、また、水平制御弁39を経由した油圧が作業機昇降制御弁42,42を経て左右の昇降シリンダ43に送られる構成である。なお符号13は戻り油タンクである。
【0023】
次に、図8と図9に基づいて、通信回線で接続された各コントローラ46,61から成る制御部Cの構成について説明する。
図8に示すように、走行用コントローラ46の入力側には、次のように各種スイッチ及びセンサが接続されている。即ち、前記主変速部5cを高速側に一段ずつ変速する変速アップスイッチ47、前記主変速部5c変速装置を低速側に一段ずつ変速する変速ダウンスイッチ48、前記副変速レバー15の変速位置を検出する変速レバー位置センサ49、前記主変速部5cの変速位置を検出する変速位置センサ51、エンジン回転数センサ52、主クラッチ5a用のクラッチペダル踏込スイッチ53、車速センサ54がそれぞれ接続されている。
【0024】
また走行用コントローラ46の出力側には、前記主変速部5cの変速用制御弁作動用のソレノイド56、前記前後進変速部5bの前後進切替用制御弁作動用のソレノイド57、メータパネル用コントローラ58がそれぞれ接続されている。
【0025】
また図9に示すように、作業機用コントローラ61の入力側には、作業機昇降レバー44のレバー位置を検出するレバー位置センサ62、ハンドル切れ角センサ63、ブレーキ踏込検出スイッチ(左)64、ブレーキ踏込検出スイッチ(右)66、前後輪のデフロック装置を同時に入切するデフロック入切スイッチ67、畔際の旋回時にロータリ耕耘装置12の昇降及びPTOクラッチの入切制御をする旋回制御入切スイッチ68が、それぞれ接続されている。
【0026】
また、作業機用コントローラ61の出力側には、作業機上昇制御弁用のソレノイド69、作業機下降制御弁用のソレノイド71、ブレーキバルブ18内の流量制御弁18aと切替制御弁18b作動用の各ソレノイド72s、72l、72r…、デフロック作動用制御弁のソレノイド73、前輪増速用制御弁のソレノイド74、前輪等速用制御弁のソレノイド76がそれぞれ接続されている。
【0027】
以上のように構成したトラクタ1の制御部Cでは、図10に示す制御プログラムの概要を示すフローチャートのように、各種制御が実行される。
トラクタ1の電源系が入とされると、まず各種センサや設定スイッチ類の検出値が読み込まれ(ステップ101)、続いてトラクタ1の変速制御(ステップ102)、前後輪のデフロック制御(ステップ103)、旋回制御(ステップ104)が実行される。
【0028】
なお、ステップ104の旋回制御の実行に当っては、コントローラ61(制御部C)に組み入れられた旋回制御手段Sに基づく。即ち、前記旋回制御入切スイッチ68の入操作に基づき、所定旋回状態を検出する検出手段の検出によって所定の油圧切替弁を操作させ、作業機上昇、旋回内側のブレーキ機構の制動、を自動的に行わせ、旋回動作から直進状態に復帰することを検出すると再び作業機下降、ブレーキ解除の各操作が行われる(旋回制御手段S)。
【0029】
また、ステップ103のデフロック制御に当っては、前記デフロック入切スイッチ67のON操作に基づきデフロック作動手段としてのデフロック制御弁36のソレノイドをONして圧油を供給してデフロックを作動させる。また、ソレノイドをOFFするとデフロックが解除される。
【0030】
前記トラクタ1の変速制御(ステップ102)の詳細について説明する。
前記主変速部5c及び副変速部5dからなる走行変速装置5eは1段から8段までの多段変速ができる構成で、変速レバー15により副変速部5cを高速あるいは低速に切り替え、変速レバー15の握り部に設けられている変速アップスイッチ47あるいは変速ダウンスイッチ48を1回ONすると、一段ずつ増減速される。
【0031】
また、走行変速装置5eが最高速、即ち8段に変速されている状態で、変速アップスイッチ47をONすると1段目に変速され、また、最低速、即ち1段に変速されている状態で、変速ダウンスイッチ48をONすると、8段目に変速されるようにし、変速操作の簡素化を図っている。
【0032】
また、前記変速アップスイッチ47及び変速ダウンスイッチ48を同時にONすると、1段〜8段までの何れの変速位置にあっても予め設定された中間位置、ここでは第4速に一挙に変速される。しかして、構成の簡素化及び操作の簡素化を図りながら、オペレータの意図した変速位置に迅速に移動することができる。
【0033】
図10のステップ103におけるデフロック制御の詳細について図11〜図15のフローチャートに基づき説明する。
図11に基づいて、デフロッククラッチ85がOFFのとき、即ちデフ装置50F,50R共に非作動状態のとき(ステップ201)、車速センサ54の検出、具体的には前車軸回転数Nfを検出し、この検出回転数Nfと予め設定した基準回転数Nsとを比較し(ステップ202)、所定回転数以上のときはデフロック制御弁36のソレノイドをOFF継続し(ステップ203)、ステップ202で所定回転数未満のときは、デフロックスイッチ67のON操作に基づき(ステップ204)、デフロック制御弁36のソレノイドがONされ、前後デフロック装置のシリンダ88に圧油が供給されて、デフロッククラッチ85をONして車輪の左右回転が同期するデフロック状態となす(ステップ205〜207)。このように構成すると、高速状態でのデフロックが牽制され、ハンドル操作に従って安全に操作できる。
【0034】
図12について説明する。図12ではデフロッククラッチ85がONのとき、即ちデフ装置50F,50R共に作動状態のとき(ステップ301)、車速センサ54の検出に基づき前車軸回転数Nfを検出し、この検出回転数Nfと予め設定した基準回転数Nsとを比較し(ステップ302)、所定回転数未満のときはデフロック制御弁36のソレノイドをON継続し(ステップ303)、ステップ302で所定回転数未満のときは、デフロックスイッチ67のOFF操作に基づき(ステップ304)、デフロック制御弁36のソレノイドがOFFされ、前後デフロック装置のシリンダ88から圧油が排出されて、デフロッククラッチ85をOFFする(ステップ305、306)。その後前車軸回転数Nfと所定回転数Nsとの対比がなされ(ステップ307)、所定回転未満に達するとデフロックスイッチ67操作を待ってデフロック制御弁21のソレノイドをONし、所定にデフロッククラッチ85をONとなす(ステップ308〜311)。このように構成すると、高速状態でのデフロックが牽制され、ハンドル操作に従って安全に操作できる。
【0035】
図13によると、圃場作業中であってデフロッククラッチがONの状態のとき(ステップ401)、ブレーキペダル操作によって左右片方の後輪が制動されると(ステップ402)、デフロック制御弁36のソレノイドがOFFされ、前後デフロック装置のシリンダ88に圧油が供給されて、デフロッククラッチ85をOFFしてデフロックを解除する(ステップ403〜405)。ついで上記ブレーキ操作が解除され(ステップ406)、デフロックスイッチ67がONされたときには(ステップ407)、ステップ408〜410の手順でデフロックがONされるものである。
【0036】
このように構成されると、旋回目的や方向修正で左右片側ブレーキあるいは両ブレーキ同時操作が行なわれると、デフロック状態を解除するから旋回半径を大きくしたり圃場を荒らすことを防止する。また、ブレーキ操作が解除されると自動的にデフロック状態に復帰することなく、デフロックスイッチ67操作を待ってデフロック状態とするものであるから、オペレータの認識に基づく操作となって誤操作を防止し得る。
【0037】
図14は上記図13に示すデフロック制御を改良したものである。すなわち、デフロック解除後は自動的に復帰してデフロックONとするのでなく、一旦デフロックスイッチ67操作を待つが、旋回制御モードの状態である場合には自動的にデフロック復帰させる構成である。図において、ステップ501からステップ506までの手順は図13におけるステップ401からステップ406と同じであるが、ステップ507で旋回制御モードであるか否かが判定される。旋回制御モードとはステアリングハンドル操作量などによって旋回動作を検出すると、自動的に作業機を上昇し旋回内側のブレーキを制動し、あわせて前輪の周速度を後輪の約2倍に増速するものである。なおこれら制御のうち単一動作をもってしてもよい。
【0038】
上記ステップ507で旋回制御モードであると判定されたときは自動的にデフロックがONとされ、ステップ507で旋回制御モードでないと判定されたときはデフロックスイッチ67操作を待ってデフロック状態に復帰する(ステップ511)。このように構成すると、自動旋回モードでは自動デフロック復帰をさせることができ、操作性の向上を図ることができる。なお、自動旋回モードではステアリングハンドル7が直進状態に復帰すると自動的に元の作業状態に復帰動する構成であり、この一環としてデフロック状態に復帰する構成となっている。
【0039】
図15は自動旋回モードの状態として、ステアリングハンドル7の切角加速度ωが所定以上であったり、ハンドル切角が所定標準以上のときは、旋回と判定し作業機上昇及び旋回内側後輪を制動すると共に、デフロックを解除動作させ、以後旋回復帰してハンドル切角が所定範囲に納まると作業機を自動降下させ旋回内側ブレーキを解除する。なお、旋回制御モードの選択スイッチは別途に配設されていて該スイッチ操作に基づき旋回制御モードとなる構成である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】トラクタの側面図。
【図2】変速レバー近傍の斜視図。
【図3】トラクタの伝動構成図。
【図4】後輪デフ装置部の断面図。
【図5】トラクタの油圧回路を示す図。
【図6】トラクタの油圧回路を示す図。
【図7】トラクタの油圧回路を示す図。
【図8】走行用コントローラの接続状態を示すブロック図。
【図9】作業機用コントローラの接続状態を示すブロック図。
【図10】制御フローチャート。
【図11】制御フローチャート。
【図12】制御フローチャート。
【図13】制御フローチャート。
【図14】制御フローチャート。
【図15】制御フローチャート。
【符号の説明】
【0041】
C 制御部(コントローラ)
S 旋回制御手段
1 トラクタ
2 前輪
3 後輪
5c 主変速部
5d 副変速部
6 エンジン
7 ハンドル
15 変速レバー
36 デフロック制御弁(デフロック作動手段)
67 デフロック入切スイッチ
68 旋回制御入切スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(6)の回転動力をデフ装置(50F,50R)を介して左右の走行装置(2,3)へ伝達すると共に、車体に対し作業機(12)を昇降自在に備えた作業車両において、デフ装置(50F,50R)の差動を制限するデフロック装置(37A,37B)を設けると共にこのデフロック装置(37A,37B)を作動し又は解除するデフロック作動手段(36、67)を備え、車体の旋回動作を検出して作業機(12)を上昇し又は旋回内側の後輪(3)を制動するとともに、旋回動作から直進状態への旋回復帰時は作業機(12)を下降し旋回内側の制動を解除する旋回制御手段(S)を備え、車体の旋回動作を検出すると作動状態のデフロック装置(37A,37B)をデフロック解除側に切り替え、前記旋回復帰時にはデフロック装置(37A,37B)を作動状態とする制御部(C)を備えた作業車両。
【請求項1】
エンジン(6)の回転動力をデフ装置(50F,50R)を介して左右の走行装置(2,3)へ伝達すると共に、車体に対し作業機(12)を昇降自在に備えた作業車両において、デフ装置(50F,50R)の差動を制限するデフロック装置(37A,37B)を設けると共にこのデフロック装置(37A,37B)を作動し又は解除するデフロック作動手段(36、67)を備え、車体の旋回動作を検出して作業機(12)を上昇し又は旋回内側の後輪(3)を制動するとともに、旋回動作から直進状態への旋回復帰時は作業機(12)を下降し旋回内側の制動を解除する旋回制御手段(S)を備え、車体の旋回動作を検出すると作動状態のデフロック装置(37A,37B)をデフロック解除側に切り替え、前記旋回復帰時にはデフロック装置(37A,37B)を作動状態とする制御部(C)を備えた作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−64385(P2007−64385A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251800(P2005−251800)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]