説明

作業車両

【課題】操向ハンドルにステアリングスイッチを設けたコンバインにおいて、操向ハンドルの回動操作の際にステアリングスイッチに誤って接触して、走行機体が予想外の方向に旋回するという問題を解消する。
【解決手段】ステアリングスイッチの微調節操作の可否を選択操作するための選択調節スイッチを備える。旋回用HST式変速機構64と差動ギヤ機構86との間に配置された操向ブレーキ手段167及び操向クラッチ手段169は、選択調節スイッチの入り切り操作に連動して、旋回用HST式変速機構64から差動ギヤ機構86への動力伝達を許容したり阻止したりするように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンバイン等の農作業機やクレーン車等の特殊作業機のような作業車両に係り、より詳しくは、当該作業車両における走行機体を操向操作するための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、作業車両としてのコンバインにおいては、走行機体に搭載されたエンジンの動力を、直進用及び旋回用油圧駆動装置や差動機構を介して、左右の走行クローラに伝達するように構成されている。
【0003】
かかる構成のコンバインの一例が特許文献1に開示されている。特許文献1のコンバインでは、直進用油圧駆動装置の駆動出力量、すなわち走行機体の直進速度は、走行機体の操縦部に設けられた主変速レバーの操作量に応じて調節される。主変速レバーが中立位置にあれば、走行機体は直進しない。
【0004】
一方、旋回用油圧駆動装置の駆動出力量、すなわち走行機体の進行(旋回)方向及び旋回速度は、操縦部のうち操縦座席の前方に立設された丸型の操向ハンドルの回動方向及び回動操作量に応じて調節される。
【0005】
操向ハンドルのハンドルホイル部には、手動入力手段としての条合せスイッチが設けられている。条合せスイッチは、走行機体の進行方向を左右に微調節(微修正)操作するためのものであり、根元部を回動支点として左右傾動可能に構成されている。条合せスイッチを左右に傾動操作すると、走行機体が左右に微小旋回して、刈取部の分草体を圃場の植立穀稈列に沿わせる条合せが実行される。
【特許文献1】特開平9−248039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の記載によると、条合せスイッチは、ハンドルホイル部のうち右手側の握り部に設けられており、オペレータは、ハンドルホイル部を握ったままでも条合せスイッチを左右に傾動操作できる。
【0007】
しかし、特許文献1の構成では、操向ハンドルから手を離さずに操作し得る箇所に条合せスイッチが存在するため、操向ハンドルの操作中に、誤って条合せスイッチに接触するおそれがある。かかる事態が生ずると、操向ハンドルと条合せスイッチとの両方の操作にて走行機体が予想外の方向を向くことになり、走行時の安全性に欠けるという問題があった。
【0008】
そこで、本願発明は、操向ハンドルと手動入力手段とが共存するために生ずる不具合を解消することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この技術的課題を解決するため、請求項1の発明は、走行機体に搭載されたエンジンの動力を、直進用及び旋回用油圧駆動装置から差動機構を経由して、走行部に伝達するように構成されている一方、前記走行機体の進行方向を変更操作するための操向ハンドルを備えており、前記操向ハンドルには、前記走行機体の進行方向を微調節操作するための手動入力手段が設けられている作業車両であって、前記手動入力手段の微調節操作の可否を選択操作するための選択手段を備えており、前記旋回用油圧駆動装置と前記差動機構との間に配置された伝動切換機構が、前記選択手段の可否選択操作に連動して、前記旋回用油圧駆動装置から前記差動機構への動力伝達を許容したり阻止したりするように構成されているというものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載した作業車両において、前記走行機体に備わる作業部への動力伝達を継断するための作業クラッチを備えており、前記作業クラッチが切り状態のときは、前記選択手段が前記手動入力手段の微調節操作を許可する入り状態であっても、前記手動入力手段の微調節操作を無効にするように構成されているというものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した作業車両において、前記選択手段が前記手動入力手段の微調節操作を禁止する切り状態である場合において、前記操向ハンドルの回動操作位置が中立位置から外れているときは、前記伝動切換機構が前記旋回用油圧駆動装置から前記差動機構への動力伝達を許容するように構成されているというものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちいずれかに記載した作業車両において、前記選択手段が前記手動入力手段の微調節操作を許可する入り状態である場合において、前記操向ハンドルの回動操作位置が所定の回動角度範囲から外れているときは、前記手動入力手段の微調節操作を無効にするように構成されているというものである。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4に記載した作業車両において、前記所定の回動角度範囲を予め設定するための範囲設定器を更に備えているというものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によると、操向ハンドルに設けられた手動入力手段の微調節操作の可否を選択操作するための選択手段を備えているので、当該選択手段の切り操作にて手動入力手段の微調節操作を禁止しておけば、手動入力手段に誤って触れたりしても、走行機体の微小旋回動は実行されない。
【0015】
このため、操向ハンドルに手動入力手段を設けたもの(操向ハンドルを握ったままで手動入力手段を操作できるもの)でありながら、走行機体が不用意に予想外の方向を向くおそれを低減でき、走行安全性に優れるという効果を奏する。
【0016】
しかも、選択手段の切り操作にて手動入力手段の微調節操作を禁止しておけば、旋回用油圧駆動装置と差動機構との間に配置された伝動切換機構が旋回用油圧駆動装置から差動機構への動力伝達を阻止できるから、走行機体の直進安定性が向上するという効果をも奏する。
【0017】
請求項2の発明では、走行機体に備わる作業部への動力伝達を継断するための作業クラッチが切り状態のときは、選択手段が手動入力手段の微調節操作を許可する入り状態であっても、手動入力手段の微調節操作を無効にするように構成されている。
【0018】
「作業クラッチが切り状態のとき」というのは、路上走行や畦越え等の非作業状態のとき、すなわち、作業中以外のときに相当する。このため、請求項2のように構成すると、路上走行等の非作業時に、オペレータが選択手段を切りにするのを忘れたとしても、作業クラッチが切り状態である限り、手動入力手段による走行機体の微小旋回動が実行されることはない。従って、走行機体が不用意に予想外の方向に向くおそれを確実に抑制でき、走行安全性がより一層高まるという効果を奏する。
【0019】
請求項3の発明では、選択手段が手動入力手段の微調節操作を禁止する切り状態である場合において、操向ハンドルの回動操作位置が中立位置から外れているときは、伝動切換機構が旋回用油圧駆動装置から差動機構への動力伝達を許容するように構成されている。
【0020】
かかる構成を採用すると、選択手段を入り切り操作しなくても、操向ハンドルの回動操作の過程において、半ば自動的に旋回用油圧駆動装置から差動機構への動力伝達が可能な状態に切り換えできる。従って、オペレータの操作負担を軽減できるという効果を奏する。
【0021】
請求項4の発明では、選択手段が手動入力手段の微調節操作を許可する入り状態である場合において、操向ハンドルの回動操作位置が所定の回動角度範囲から外れているときは、手動入力手段の微調節操作を無効にするように構成されている。
【0022】
かかる構成を採用すると、例えば走行機体を方向転換(通常旋回)させる際に、手動入力手段に誤って触れたりしても、選択手段の入り切り状態に拘らず、手動入力手段による走行機体の微小旋回動は実行されない。従って、この点でもオペレータの操作負担を軽減できると共に、走行安全性の更なる向上に寄与できるという効果を奏する。
【0023】
請求項5の発明によると、手動入力手段の微調節操作を有効にするときの操向ハンドルの回動角度範囲を予め設定するための範囲設定器を更に備えているので、範囲設定器の操作にて、前述の回動角度範囲を任意且つ手軽に変更・調節できる。このため、操向ハンドルや手動入力手段の操作性向上に寄与できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を、作業車両としてのコンバインに適用した場合の図面(図1〜図13)に基づいて説明する。図1はコンバインの側面図、図2はコンバインの平面図、図3は刈取部における前部の概略平面図、図4は走行機体前部の正面説明図、図5は動力伝達系統のスケルトン図、図6はミッションケース内の動力伝達系統のスケルトン図、図7はコンバインの油圧回路図、図8は操作手段と油圧駆動装置との連結関係を模式的に示す説明図、図9は操縦部の平面図、図10は操向ハンドルの拡大平面図、図11は選択調節スイッチの概略説明図、図12はコントローラの機能ブロック図、図13は自動操向制御のフローチャートである。
【0025】
(1).コンバインの概略構造
まず、図1及び図2を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。
【0026】
実施形態における6条刈り用のコンバインは、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、圃場の植立穀稈C(未刈穀稈、図3参照)を刈り取りながら取り込む刈取部3が単動式の油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。
【0027】
走行機体1には、フィードチェーン7付きの脱穀部6と、脱穀後の穀粒を貯留するための穀粒タンク8とが横並び状に搭載されている。実施形態では、脱穀部6が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク8が走行機体1の進行方向右側に配置されている。刈取部3や脱穀部6は特許請求の範囲に記載した作業部に相当する。
【0028】
刈取部3と穀粒タンク8との間には操縦部9が設けられている。操縦部9内には、走行機体1の進行(旋回)方向及び旋回速度を変更操作するための丸型の操向ハンドル10や、オペレータが着座する操縦座席11等が配置されている。操縦部9の下方には、動力源としてのエンジン12が配置されている。エンジン12の前方には、当該エンジン12からの動力を適宜変速して左右両走行クローラ2に伝達するためのミッションケース13が配置されている。
【0029】
刈取部3は、バリカン式の刈刃装置14、6条分の穀稈引起装置15、穀稈搬送装置16及び分草体17(実施形態では7つ)を備えている。刈刃装置14は、刈取部3の骨組を構成する刈取フレーム5の下方に配置されている。穀稈引起装置15は刈取フレーム5の上方に配置されている。穀稈搬送装置16は穀稈引起装置15とフィードチェーン7の前端部との間に配置されている。分草体17は穀稈引起装置15の下部前方に突設されている。刈取部3にて刈り取られた刈取穀稈は、フィードチェーン7に受け継ぎ搬送され、脱穀部6にて脱穀処理される。
【0030】
脱穀部6の扱室には、刈取穀稈を脱穀処理するための扱胴18が内蔵されている。扱胴18の下方には、扱網やチャフシーブ等による揺動選別と唐箕ファンの風による風選別とを行うための選別装置20が配置されている。該選別装置20による選別を経て、走行機体1の下部にある一番受け樋(図示せず)に集められた精粒等の一番物は、一番コンベヤ及び揚穀コンベヤ(共に図示せず)を介して穀粒タンク8に集積される。
【0031】
枝梗付き穀粒等の二番物は、一番受け樋の後方にある二番受け樋及び還元コンベヤ(共に図示せず)を介して処理胴19に送られ、当該処理胴19にて再脱穀される。再脱穀後の二番物は選別装置20に戻されて再選別される。
【0032】
藁屑は、脱穀部6の後部に配置された吸引ファン(図示せず)に吸い込まれたのち、走行機体1の後部に形成された排出口から走行機体1の外部へ排出される。穀粒タンク8内の穀粒は、排出オーガ21を介して走行機体1の外部に搬出される。
【0033】
なお、フィードチェーン7の後端から排稈チェーン22(図2参照)に受け継がれた排稈は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、若しくは排稈カッタ(図示せず)にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0034】
図3に示すように、複数の分草体17のうち右端から数えて2番目の分草体17の下面側には、左方向に突出して図3の平面視で反時計回り方向に回動可能な触角レバー52付きの左操向センサ50と、右方向に突出して図3の平面視で時計回り方向に回動可能な触角レバー53付きの右操向センサ51とが配置されている。
【0035】
左右の操向センサ50,51は、各触角レバー52,53が圃場の植立穀稈C(未刈穀稈)に接触しているか否かを感知することにより、走行機体1が所定の方向(例えば後述する条方向等)に沿って走行しているか否かを検出する接触式(リミットスイッチ式)のものである。
【0036】
両触角レバー52,53の先端間の距離は、圃場における条方向(田植時の植え付け方向、図3のX方向参照)の株間隔Lより短く設定されている。このため、走行機体1を条方向(図3のX方向)に進行させる条刈りのときに、左右の操向センサ50,51がほぼ同時に植立穀稈Cを感知することはない。なお、条方向の株間隔Lは30cm前後であるのが一般的である。
【0037】
図3に示すように、穀稈引起装置15の下部前端側には、刈取部3内に取り込まれた刈取穀稈が通過したか否かを検出するための穀稈通過センサ54(実施形態では3つ)が2条分の穀稈通過箇所毎に配置されている。穀稈通過センサ54も、前述した左右の操向センサ50,51と同様な接触式(リミットスイッチ式)のものである。すなわち、各穀稈通過センサ54から穀稈通過箇所に向けて突出した感知体55が刈取穀稈に接触しているか否かを感知することにより、刈取部3内に搬送途中の刈取穀稈があるか否かを検出するというものである。
【0038】
なお、図2及び図3に示すように、6条分の穀稈引起装置15のうち左右両端に位置した穀稈引起装置15の裏面側には、刈取部3の対地高さ(圃場面に対する刈取部3の高さ)を検出するための超音波センサ56が、発信器の発信部(ホーン部)と受信器の受信部とを圃場面に向けた状態で取り付けられている。刈取部3の対地高さは、超音波センサ56の検出値から求められる。超音波センサ56の設置高さと刈刃装置14の設置高さとが異なる場合には、超音波センサ56の検出値を基にした所定の換算にて、刈取部3の対地高さが求められる。
【0039】
また、刈取フレーム5のうち回動中心に近い基端部には、刈取部3の対機体高さ(走行機体1に対する刈取部3の相対高さ)を検出するための昇降ポジションセンサ57が取り付けられている(図12参照)。刈取部3の対機体高さは、昇降ポジションセンサ57で検出された刈取フレーム5の昇降回動角度から求められる。
【0040】
(2).コンバインの動力伝達系統
次に、図4〜図6を参照しながら、コンバインの動力伝達系統について説明する。
【0041】
実施形態の自走自脱型コンバインでは、エンジン12からの動力をミッションケース13内の油圧駆動装置62等にて適宜変速し、ミッションケース13から左右外向きに突出した駆動出力軸24を介して左右の駆動輪25に出力するように構成されている。
【0042】
エンジン12は前後外向きに突出した出力軸60を備えている。エンジン12からの動力の一方は、出力軸60の前端から自在継手軸61及びミッションケース13の入力軸59を介してミッションケース13内の油圧駆動装置62に伝達される。
【0043】
ミッションケース13内には、エンジン12からの動力を変速するための油圧駆動装置62と、複数の変速段を有する副変速機構85と、左右一対の遊星ギヤ機構157等を有する差動ギヤ機構86とが内装されている(図6参照)。
【0044】
油圧駆動装置62は、第1油圧ポンプ150及び第1油圧モータ151からなる直進用HST式変速機構63と、第2油圧ポンプ152及び第2油圧モータ153からなる旋回用HST式変速機構64とを備えている。
【0045】
出力軸60から油圧駆動装置62に向かう動力は、第1油圧ポンプ150の直進用ポンプ軸65と第2油圧ポンプ152の旋回用ポンプ軸66とにそれぞれ伝達される。直進用HST式変速機構63においては、直進用ポンプ軸65に伝達された動力にて、第1油圧ポンプ150から第1油圧モータ151に向けて作動油が適宜送り込まれる。同様に、旋回用HST式変速機構64においては、旋回用ポンプ軸66に伝達された動力にて、第2油圧ポンプ152から第2油圧モータ153に向けて作動油が適宜送り込まれる。
【0046】
なお、旋回用ポンプ軸66上には、各油圧ポンプ150,152及び油圧モータ151,153に作動油を供給するためのチャージポンプ179が取り付けられている。このチャージポンプ179は、旋回用ポンプ軸66と連動可能で、且つエンジン12の回転動力にて駆動するように構成されている。
【0047】
直進用HST式変速機構63においては、操縦部9に配置された主変速レバー131(詳細は後述する)のシフト位置や操向ハンドル10の回動操作量に応じて、第1油圧ポンプ150における回転斜板180(図7参照)の傾斜角度を変更調節して、第1油圧モータ151への作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、第1油圧モータ151から左右に突出した直進用モータ軸67の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。
【0048】
第1油圧モータ151における直進用モータ軸67の回転動力は、従来から周知の歯車機構からなる副変速機構85に伝達される一方、プーリ・ベルト伝動系及び刈取クラッチ82を介して、後述するカウンタケース72から走行機体1の中央側に突出した同調入力軸75(図5参照)にも分岐して伝達される。
【0049】
副変速機構85は、操縦部9に配置された副変速レバー132(詳細は後述する)の操作にて、直進用モータ軸67からの回転動力(回転方向及び回転数)の調節範囲を低速、高速及び中立という3段階の変速段に切り換え可能に構成されている。なお、副変速機構85の構成要素であるブレーキ軸154には、湿式多板ディスク等の駐車ブレーキ手段155が設けられている。
【0050】
副変速機構85からの回転動力は、ブレーキ軸154に固着された副変速出力ギヤ156から差動ギヤ機構86に伝達される。差動ギヤ機構86は、左右一対の遊星ギヤ機構157と、これら遊星ギヤ機構157とブレーキ軸154との間に位置した中継軸158とを備えている。中継軸158の中央部に固着されたセンターギヤ159は、ブレーキ軸154の副変速出力ギヤ156と噛み合っている。中継軸158のうちセンターギヤ159を挟んで左右両側に固着されたサイドギヤ160は、各々対応するリングギヤ165(詳細は後述する)の外周面と噛み合っている。
【0051】
左右一対の遊星ギヤ機構157は左右対称状に形成されており、複数個の遊星ギヤ162を同一半径上に回転可能に軸支してなる左右一対のキャリヤ161を備えている。これら両キャリヤ161は、同一軸線上において適宜間隔を開けて相対向するように配置されている。
【0052】
左右両キャリヤ161の間に位置した太陽軸163の左右両側には太陽ギヤ部材164が回動可能に軸支されている。各太陽ギヤ部材164は、これに対応するキャリヤ161の各遊星ギヤ162と噛み合っている。太陽軸163における左右の端部は各キャリヤ161の回転中心部に位置した軸受けに回転可能に軸支されている。
【0053】
内周面の内歯と外周面の外歯とを有する左右一対のリングギヤ165は、その内歯を複数個の遊星ギヤ162に噛み合わせるようにして、太陽軸163と同心状に配置されている。各リングギヤ165は、キャリヤ161の外側面から左右外向きに突出した駆動出力軸24に、軸受けを介して回転可能に軸支されている。
【0054】
副変速機構85からの回転動力は、中継軸158における左右のサイドギヤ160を介して左右の遊星ギヤ機構157に伝達される。左右の遊星ギヤ機構157に伝達された回転動力は、各キャリヤ161の駆動出力軸24に同方向の同一回転数にて伝達される。
【0055】
他方、旋回用HST式変速機構64においては、操縦部9に配置された操向ハンドル10の回動操作量に応じて、第2油圧ポンプ152における回転斜板182(図8参照)の傾斜角度を変更調節して、第2油圧モータ153への作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、第2油圧モータ153から突出した旋回用モータ軸68の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。
【0056】
旋回用モータ軸68には旋回出力ギヤ166が回転可能に軸支されている。また、旋回用モータ軸68の先端部には、これと旋回出力ギヤ166とを制動する伝動切換機構としての操向ブレーキ手段167(詳細は後述する)が設けられている。
【0057】
第2油圧モータ153における旋回用モータ軸68の回転動力は、旋回用モータ軸68の旋回用出力ギヤ166から、操向クラッチ手段169を有するクラッチ軸168の伝動ギヤ170を介して、正転ギヤ171と逆転ギヤ172とに伝達される。正転ギヤ171は、太陽軸163回りに回転可能に軸支された左右一対の入力ギヤ173の一方(実施形態では右)と噛み合っている。逆転ギヤ172は他方の入力ギヤ173(実施形態では左)と噛み合っている。左右の入力ギヤ173は、それぞれ対応する太陽ギヤ部材164と一体的に回転するように構成されている。実施形態では、クラッチ軸168上の操向クラッチ手段169も伝動切換機構の一構成要素になっている。
【0058】
第2油圧モータ153の正回転(逆回転)により、正転ギヤ171及び右入力ギヤ173を介して、右太陽ギヤ部材164を所定回転数にて正回転(逆回転)させると、左太陽ギヤ部材164は、逆転ギヤ172及び左入力ギヤ173を介して、右太陽ギヤ部材164と同一回転数にて逆回転(正回転)する。そして、左右の太陽ギヤ部材164を介して左右の遊星ギヤ機構157に伝達された回転動力は、互いに逆方向の同一回転数にて左右のキャリヤ161の駆動出力軸24に伝達される。
【0059】
以上のことから分かるように、直進用モータ軸67や旋回用モータ軸68からの変速出力は、副変速機構85及び差動ギヤ機構86を経由して、左右の走行クローラ2の駆動輪25に伝達され、その結果、左右の走行クローラ2ひいては走行機体1の車速(走行速度)及び進行方向が決まる。
【0060】
すなわち、旋回用モータ軸68の駆動を停止させた状態で直進用モータ軸67を正又は逆回転方向に駆動させると、直進用モータ軸67からの回転動力は、副変速機構85及び差動ギヤ機構86を経由して、左右の走行クローラ2の駆動輪25に同方向の同一回転数にて伝達され、走行機体1は直進走行する。この場合、直進用モータ軸67(直進用HST式変速機構63)が正回転方向に駆動すれば走行機体1は前進し、逆回転方向に駆動すれば走行機体1は後退することになる。
【0061】
逆に、直進用モータ軸67の駆動を停止させた状態で旋回用モータ軸68を正又は逆回転方向に駆動させると、旋回用モータ軸68から差動ギヤ機構86を経由した回転動力にて、左右の走行クローラ2の駆動輪25のうち一方が前進回転、他方が後退回転して、走行機体1はその場でスピンターンする。
【0062】
また、直進用モータ軸67を駆動させつつ旋回用モータ軸68を駆動させると、左右の走行クローラ2の駆動速度に差が生じ、走行機体1は前進又は後退しながらスピンターン旋回半径より大きい旋回半径で左又は右に旋回する。このときの旋回半径は左右の走行クローラ2の駆動速度差に応じて決定される。
【0063】
なお、直進用ポンプ軸65及び旋回用ポンプ軸66とミッションケース13の入力軸59との間で動力を中継するファン軸174には、ラジエータ用の冷却ファン175が取り付けられている。実施形態では、ファン軸174から伝達ギヤ機構176を介して、直進用ポンプ軸65と旋回用ポンプ軸66との両方に動力伝達するように構成されている。
【0064】
また、実施形態では、ファン軸174から伝達ギヤ機構176を経由して直進用ポンプ軸65に伝達された動力を、当該直進用ポンプ軸65に取り付けられた車速定速クラッチ177、車速定速機構178及び直進用モータ軸67を介して、副変速機構85に直接伝達し得るように構成されている。このため、車速定速クラッチ177を入り状態にすると、エンジン12からの動力は、直進用HST式変速機構63を経由することなく、副変速機構85に直接伝達され、その結果、エンジン12の定回転駆動にて走行機体1が一定の車速で走行する。
【0065】
一方、エンジン12からの他の動力は、出力軸60の後端から、排出オーガ21とエンジン12の一側方に配置されたカウンタケース72という2つの方向に分岐して伝達される。
【0066】
出力軸60から排出オーガ21に向かう分岐動力は、排出クラッチ69を介して穀粒タンク8内の底コンベヤ70及び縦コンベヤ(図示せず)に伝達され、次いで、排出オーガ21内の排出コンベヤ(図示せず)に動力伝達される。
【0067】
出力軸60からカウンタケース72に向かう分岐動力は、脱穀クラッチ71を介してカウンタケース72の脱穀入力軸73に伝達され、この脱穀入力軸73から更に2つの方向に分岐して伝達される。
【0068】
脱穀入力軸73に伝達された動力の一部は、プーリ・ベルト伝動系を介して、扱胴6や処理胴19(図5では図示省略)の回転軸等に伝達され、扱胴6や処理胴19を回転駆動させる。脱穀入力軸73からの他の動力は、その中途部に設けられたべベルギヤ機構を介してカウンタケース72の定速回転軸74に伝達される。
【0069】
ここで、カウンタケース72は、前述した脱穀入力軸73及び定速回転軸74と、互いに定速回転軸74と平行状に延びる同調入力軸75、車速同調軸76、刈取伝動軸77及びFC入力軸78と、同調入力軸75と車速同調軸76とに関連させた刈取変速機構79と、定速回転軸74と車速同調軸76とに関連させた刈取定速機構80と、車速同調軸76とFC入力軸78とに関連させたFC変速機構81とを備えている。
【0070】
定速回転軸74に伝達された動力の一部は、プーリ・ベルト伝動系を介して、図示しない選別装置や排稈チェーン22(図5では図示省略)等に伝達される。定速回転軸74からの他の動力は、刈取部3が車速(走行速度)と同調して駆動しない場合に、刈取定速機構80を介して車速同調軸76に伝達され、この車速同調軸76から刈取伝動軸77を介して刈取部3の各装置14〜16に動力伝達される。
【0071】
一方、同調入力軸75には、直進用モータ軸67の回転動力の一部が作業クラッチとしての刈取クラッチ82を介して伝達される。同調入力軸75に伝わった回転動力は、刈取部3が車速と同調して駆動する場合に、ワンウェイクラッチ83及び刈取変速機構79を介して車速同調軸76に伝達され、車速同調軸76から刈取伝動軸77を介して刈取部3の各装置14〜16に動力伝達される。なお、ワンウェイクラッチ83は、直進用モータ軸67が正回転時のみ動力伝達するように構成されている。
【0072】
車速同調軸76に伝わった動力は、FC変速機構81及びFCクラッチ84を介してFC入力軸78に伝達され、このFC入力軸からの動力伝達にてフィードチェーン7が回行駆動するように構成されている。
【0073】
(3).コンバインの油圧回路構造
次に、図7を参照しながら、コンバインの油圧回路構造について説明する。
【0074】
図7に示すコンバインの油圧回路190は、前述したチャージポンプ179と、第1油圧ポンプ150における回転斜板180の傾斜角度を変更調節するための主変速シリンダ191と、主変速シリンダ191への作動油の供給を調節するための手動変速バルブ192と、第1油圧ポンプ150の出力を所定量減速するための電磁中立バルブ193とを備えている。
【0075】
チャージポンプ179と主変速シリンダ191とは主変速油路198を介して接続されており、主変速油路198中に、手動変速バルブ192及び電磁中立バルブ193が配置されている。手動変速バルブ192は、主に主変速レバー131にて切換操作可能に構成されている。電磁中立バルブ193は、主変速レバー131の中立操作に対応した電磁ソレノイド194の駆動にて自動的に切換作動する構成になっている。
【0076】
主変速レバー131の操作にて手動変速バルブ192を切換作動させると、主変速シリンダ191が伸縮作動して、第1油圧ポンプ150における回転斜板180の傾斜角度が変更され、第1油圧モータ151への作動油の吐出方向及び吐出量が変わる。その結果、第1油圧モータ151における直進用モータ軸67の回転方向及び回転数を無段階に変化させたり逆転させたりする直進変速動作が実行される。
【0077】
また、回転斜板180の角度調節動作にて手動変速バルブ192が中立復帰するフィードバック動作も実行可能になっている。すなわち、主変速レバー131を中立操作したときは、この操作に応じて回転斜板180を中立状態に戻すと共に、電磁ソレノイド194の励磁にて電磁中立バルブ193を自動的に切換作動させることにより、第1油圧ポンプ150の出力を略零にする。その結果、第1油圧モータ151における直進用モータ軸67の回転駆動が停止する。
【0078】
チャージポンプ179は、主変速油路198及びこれから分岐した副変速油路199を介して、第1油圧モータ151における回転斜板181の傾斜角度を変更調節するための副変速シリンダ196が接続されている。副変速油路199中には、後述する副変速レバー132の操作に対応して自動切換作動する電磁副変速バルブ195が配置されている。
【0079】
この場合、電磁副変速バルブ195の自動切換作動にて副変速シリンダ196を伸縮作動させると、第1油圧モータ151における回転斜板181の傾斜角度が強制的に変化して、第1油圧モータ151の出力が高速又は低速に選択的に切り換わる。
【0080】
電磁副変速バルブ195が中立状態のときは、油タンクでもあるミッションケース13に副変速シリンダ196が連通し、第1油圧モータ151における回転斜板181の傾斜角度を、第1油圧ポンプ150と第1油圧モータ151とをつなぐ閉回路197中の作動油だけで調節するように構成されている。
【0081】
コンバインの油圧回路190は、前述の構成に加えて、第2油圧ポンプ152における回転斜板182の傾斜角度を変更調節するための旋回シリンダ201と、旋回シリンダ201への作動油の供給を調節するための手動旋回バルブ202及び電磁自動操向バルブ203とを備えている。
【0082】
旋回シリンダ201は、主変速油路198及びこれから分岐した旋回油路200を介して、チャージポンプ179に接続されており、旋回油路200中に、手動旋回バルブ202及び電磁自動操向バルブ203が配置されている。手動旋回バルブ202は、主に操向ハンドル10にて切換操作可能に構成されている。電磁自動操向バルブ203は、左右の操向ソレノイド204,205の駆動にて自動的に切換作動する構成になっている。
【0083】
操向ハンドル10の回動操作にて手動旋回バルブ202を切換作動させると、旋回シリンダ201が伸縮作動して、第2油圧ポンプ152における回転斜板182の傾斜角度が変更され、第2油圧モータ153への作動油の吐出方向及び吐出量が変わる。その結果、第2油圧モータ153における旋回用モータ軸68の回転方向及び回転数を無段階に変化させたり逆転させたりする左右旋回動作が実行される。
【0084】
また、この場合も、回転斜板182の角度調節動作にて手動旋回バルブ202が中立復帰するフィードバック動作を実行可能になっている。すなわち、操向ハンドル10の回動操作位置が後述する中立位置N(図10参照)にあるときは、回転斜板182を中立状態に戻して第2油圧ポンプ152の出力を略零にすることにより、操向ハンドル10の回動操作による第2油圧モータ153の回転駆動が停止する。
【0085】
操向ハンドル10の回動操作位置が中立位置N(図10参照)にある場合は、手動旋回バルブ202が機能(切換作動)せず、走行機体1は操向ハンドル10の回動操作量に比例しての旋回動作を実行しない。
【0086】
かかる場合において、左右の操向ソレノイド204,205の励磁にて電磁自動操向バルブ203を自動的に切換作動させると、旋回シリンダ201が伸縮作動して、第2油圧ポンプ152における回転斜板182の傾斜角度が変更され、第2油圧モータ153への作動油の吐出方向及び吐出量が変わる。その結果、第2油圧モータ153における旋回用モータ軸68の回転方向及び回転数を変更する進行方向修正動作が実行される。
【0087】
他方、実施形態では、主変速レバー131を中立位置以外の位置に傾動操作した状態で操向ハンドル10を中立位置N以外の位置に回動操作すると、主変速レバー131の操作方向及び操作量に比例して第1油圧ポンプ150ひいては第1油圧モータ151の出力を正逆方向に増減させると共に、主変速レバー131の操作量に比例して第2油圧ポンプ152ひいては第2油圧モータ153の出力も変更するように構成されている。
【0088】
この場合は、主変速レバー131を高速側に操作するほど走行機体1の旋回半径が小さくなり、走行機体1が、車速に関係なく、常に操向ハンドル10の回動操作量に応じた大きさの旋回半径で左又は右に旋回する設定になっている。
【0089】
また逆に、操向ハンドル10の回動操作量に比例して、各油圧ポンプ150,151ひいては各油圧モータ152,153の出力を変更するようにも構成されている。この場合は、操向ハンドル10の回動操作量が大きいほど小さな旋回半径で走行機体1が左又は右に旋回し、且つ旋回半径が小さいほど走行機体1の車速が減速する設定になっている。
【0090】
なお、主変速レバー131が中立位置にあるときは、操向ハンドル10を回動操作しても、手動旋回バルブ202を中立状態に維持して第2油圧ポンプ152の出力を略零にすることにより、第2油圧モータ153の回転駆動を阻止するように構成されている。
【0091】
ところで、油圧回路190は、前述の構成に加えて、刈取変速機構79の構成要素である刈取変速スライダ(図示せず)を作動させるための刈取変速シリンダ206と、刈取定速機構の構成要素である切換スライダ(図示せず)を作動させるための刈取定速シリンダ207と、脱穀クラッチ71を入り切り作動させるための脱穀シリンダ208と、車速定速クラッチ177を入り切り作動させるための車速定速シリンダ209と、操向ブレーキ手段167を入り切り作動させるためのブレーキシリンダ216及び操向クラッチ手段169を入り切り作動させるためのクラッチシリンダ217とを備えている。
【0092】
チャージポンプ179には、刈取変速シリンダ206、刈取定速シリンダ207、脱穀シリンダ208、車速定速シリンダ209、及びブレーキシリンダ216とクラッチシリンダ217との組が、カウンタ油路218を介してそれぞれ並列状に接続されている。
【0093】
カウンタ油路218のうちチャージポンプ179と刈取変速シリンダ206との間には刈取変速バルブ210が配置されており、チャージポンプ179と刈取定速シリンダ207との間には刈取定速バルブ211が配置されている。
【0094】
また、チャージポンプ179と脱穀シリンダ208との間には脱穀バルブ212が配置されており、チャージポンプ179と車速定速シリンダ209との間には車速定速バルブ213が配置されている。
【0095】
ブレーキシリンダ216及びクラッチシリンダ217の組と、チャージポンプ179との間には、両シリンダ216,217への作動油の供給を調節するための電磁直進バルブ214が配置されている。電磁直進バルブ214は、操向ハンドル10や副変速レバー132の中立位置操作に対応した直進ソレノイド215の駆動にて自動的に切換作動する構成になっている。
【0096】
この場合、直進ソレノイド215の励磁にて電磁直進バルブ214を自動的に切換作動させると、ブレーキシリンダ216及びクラッチシリンダ217が伸縮作動する。
【0097】
ブレーキシリンダ216の伸縮作動は、操向ブレーキ手段167を入り切り作動させ、その結果、第2油圧モータ153の旋回用モータ軸68が制動したり制動解除したりする。
【0098】
一方、クラッチシリンダ217の伸縮作動は、操向クラッチ手段169を入り切り作動させ、その結果、旋回用モータ軸68から正転ギヤ171及び逆転ギヤ172(図6参照)への動力伝達が継断される。
【0099】
すなわち、操向ハンドル10及び副変速レバー132の少なくとも一方を中立位置に操作した状態では、操向ブレーキ手段167や操向クラッチ手段169の作用にて、旋回用HST式変速機構64から差動ギヤ機構86への動力伝達が阻止され、操向ハンドル10及び副変速レバー132の両方を中立位置以外の位置に操作した状態では、旋回用HST式変速機構64から差動ギヤ機構86への動力伝達が許容されるのである。
【0100】
(4).操作手段と油圧駆動装置との連結構造
次に、図8を参照しながら、操作手段と油圧駆動装置との連結構造について説明する。
【0101】
操縦部9に配置された主変速レバー131は、中継リンク機構219を介して、後述するステアリングコラム90(図9参照)内に配置された機械的切換手段220に連動連結されている。また、操向ハンドル10を下方から支持するハンドル軸92も機械的切換手段220に連動連結されている。
【0102】
実施形態の機械的切換手段220は、
1.主変速レバー131を中立位置以外の位置に傾動操作した状態で、操向ハンドル10を中立位置N(図10参照)以外の位置に回動操作すると、その回動操作量が大きいほど小さな旋回半径で走行機体1が左又は右に旋回し、且つ旋回半径が小さいほど走行機体1の車速(前進及び後退時の旋回速度)が減速する、
2.主変速レバー131を前進及び後退のいずれの方向に傾動操作した場合でも、操向ハンドル10の回動操作方向と走行機体1の旋回方向とが一致する(操向ハンドル10を右に回せば走行機体1は右旋回し、操向ハンドル10を左に回せば走行機体1は左旋回する)、
3.主変速レバー131が中立位置にあるときは操向ハンドル10を操作しても機能しない、
という各種動作を実行するために、主変速レバー131や操向ハンドル10からの操作力を適宜変換して、ステアリングコラム90の下端部に回動可能に配置された縦長の二重軸221に伝達するように構成されている。
【0103】
なお、機械的切換手段220自体は本願発明と直接的に関係しないので詳述しないが、必要であれば特開2002−274421号公報等を参照されたい。
【0104】
機械的切換手段220に関連付けられた二重軸221は、互いに独立して回動可能な直進用外筒軸222と旋回用内軸223とにより縦長同心状に形成されている。直進用外筒軸222は、ミッションケース13の一側面から外向きに突出した直進用回動軸225に、直進用リンク機構224を介して連動連結されている。一方、旋回用内軸223は、ミッションケース13の他側面から外向きに突出した旋回用回動軸227に、旋回用リンク機構226を介して連動連結されている。
【0105】
ここで、直進用回動軸225は、直進用HST式変速機構63における第1油圧ポンプ150の回転斜板180の傾斜角度を調節するためのものであり、直進用HST式変速機構63の変速出力を調節する調節部として機能する。旋回用回動軸227は、旋回用HST式変速機構64における第2油圧ポンプ152の回転斜板182の傾斜角度を調節するためのものであり、旋回用HST式変速機構64の変速出力を調節する調節部として機能する。
【0106】
直進用リンク機構224は、ミッションケース13の上面にブラケット228を介して固定された支持筒229に回動可能に挿入された横支軸230、直進用外筒軸222に突設された直進用回動アーム231と横支軸230の一端(実施形態では右端)に固着された直進用第1揺動アーム232とをつなぐ直進用中継杆233、並びに、横支軸230の他端(実施形態では左端)に固着された直進用第2揺動アーム234と直進用回動軸225に取り付けられた直進用操作アーム235とをつなぐ直進用連動杆236とを備えている。
【0107】
直進用中継杆233の一端部(実施形態では前端部)は、直進用外筒軸222側の直進用回動アーム231に、縦向きの枢着ピン237にて回動可能に枢着されている。直進用中継杆233の他端部(実施形態では後端部)は、横支軸230側の直進用第1揺動アーム232に、左右横向きの枢着ピン238を介して回動可能に枢着されている。
【0108】
直進用連動杆236の一端部(実施形態では上端部)は、横支軸230側の直進用第2揺動アーム234に、左右横向きの枢着ピン239にて回動可能に枢着されている。直進用連動杆236の他端部(実施形態では下端部)は、直進用回動軸225側の直進用操作アーム235に、前後横向きの枢着ピン240を介して回動可能に枢着されている。
【0109】
主変速レバー131を中立位置から前方に傾動操作した場合は、中継リンク機構219を介して機械的切換手段220が直進用外筒軸222及び直進用回動アーム231を旋回用内軸223回りの矢印SA方向に一体的に回動させることにより、直進用中継杆233が前方に引っ張られて(移動して)、直進用第1揺動アーム232、横支軸230及び直進用第2揺動アーム234が横支軸220回りの矢印SB方向に一体的に回動する。
【0110】
そして、直進用第2揺動アーム234が矢印SB方向への回動移動にて直進用連動杆236を引き上げることにより、直進用操作アーム235ひいては直進用回動軸225が矢印SC方向(前進増速方向(又は後退減速方向))に回動する。その結果、走行機体1は主変速レバー131の前向き傾動操作量に比例して前進動作を実行する。
【0111】
反対に、主変速レバー131を中立位置から後方に傾動操作した場合は、中継リンク機構219を介して機械的切換手段220が直進用外筒軸222及び直進用回動アーム231を矢印SD方向に一体的に回動させることにより、直進用中継杆233が後方に移動して、直進用第1揺動アーム232、横支軸230及び直進用第2揺動アーム234が先ほどとは逆の矢印SE方向に一体的に回動する。
【0112】
そして、直進用第2揺動アーム234が矢印SE方向への回動移動にて直進用連動杆236を押し下げることにより、直進用操作アーム235ひいては直進用回動軸225が矢印SF方向(後退増速方向(又は前進減速方向))に回動する。その結果、走行機体1は主変速レバー131の後ろ向き傾動操作量に比例して後退動作を実行する。
【0113】
一方、旋回用リンク機構226は、横支軸230における支持筒229からの突出部位に回動可能に被嵌された回動筒241、旋回用内軸223に突設された旋回用回動アーム242と回動筒241に突設された略棒状の旋回用第1揺動アーム243とをつなぐ旋回用中継杆244、並びに、回動筒241に突設された旋回用第2揺動アーム245と旋回用回動軸227に取り付けられた旋回用操作アーム246とをつなぐ旋回用連動杆247とを備えている。
【0114】
旋回用中継杆244の一端部(実施形態では前端部)は、旋回用内軸223側の旋回用回動アーム242に、縦向きの枢着ピン248にて回動可能に枢着されている。旋回用中継杆244の他端部(実施形態では後端部)は、回動筒241側の旋回用第1揺動アーム243に、左右横向きの枢着ピン249を介して回動可能に枢着されている。
【0115】
旋回用連動杆247の一端部(実施形態では上端部)は、回動筒241側の旋回用第2揺動アーム245に、左右横向きの枢着ピン250にて回動可能に枢着されている。旋回用連動杆247の他端部(実施形態では下端部)は、旋回用回動軸227側の旋回用操作アーム246に、前後横向きの枢着ピン251を介して回動可能に枢着されている。
【0116】
例えば主変速レバー131を前傾させた状態で操向ハンドル10を左方向に回動操作した場合は、ハンドル軸92を介して機械的切換手段220が旋回用内軸223及び旋回用回動アーム242を矢印TA方向に一体的に回動させることにより、旋回用中継杆244が前方に引っ張られて、旋回用第1揺動アーム243、回動筒241及び旋回用第2揺動アーム245が横支軸230回りの矢印TB方向に一体的に回動する。
【0117】
そして、旋回用第2揺動アーム245が矢印TB方向への回動移動にて旋回用連動杆247を引き上げることにより、旋回用操作アーム246ひいては旋回用回動軸227が矢印TC方向(前進左旋回方向)に回動する。その結果、走行機体1は操向ハンドル10の左方向への回動操作量に比例して左旋回動作を実行する。
【0118】
この場合、直進用リンク機構224は、機械的切換手段220の作用により、操向ハンドル10の左方向への回動操作量に比例して直進用回動軸225を矢印SF方向(前進減速方向)に回動させ、そのときの旋回半径に対応して走行機体1の前進旋回速度を減速させる。
【0119】
反対に、主変速レバー131を前傾させた状態で操向ハンドル10を右方向に回動操作した場合は、ハンドル軸92を介して機械的切換手段220が旋回用内軸223及び旋回用回動アーム242を矢印TD方向に一体的に回動させることにより、旋回用中継杆244が後方に移動して、旋回用第1揺動アーム243、回動筒241及び旋回用第2揺動アーム245が先ほどとは逆の矢印TE方向に一体的に回動する。
【0120】
そして、旋回用第2揺動アーム245が矢印TE方向への回動移動にて旋回用連動杆247を押し下げることにより、旋回用操作アーム246ひいては旋回用回動軸227が矢印TF方向(前進右旋回方向)に回動する。その結果、走行機体1は操向ハンドル10の右方向への回動操作量に比例して右旋回動作を実行する。
【0121】
この場合も、直進用リンク機構224は、機械的切換手段220の作用により、操向ハンドル10の右方向への回動操作量に比例して直進用回動軸225を矢印SF方向(前進減速方向)に回動させ、そのときの旋回半径に対応して走行機体1の前進旋回速度を減速させる。
【0122】
なお、主変速レバー131を後傾させた状態で操向ハンドル10を左右に回動操作した場合は、旋回用リンク機構226及び直進用リンク機構224の動作がそれぞれ前記態様の逆になる。すなわち、前進左旋回時の両リンク機構226,224の動作は後退右旋回時のそれと同じである一方、前進右旋回時の両リンク機構226,224の動作は後退左旋回時のそれと同じに設定されている。
【0123】
(5).操縦部内の各種操作手段の構成
次に、主として図9〜図11を参照しながら、操縦部9内に配置された各種操作手段について説明する。
【0124】
操縦部9における操縦座席11の前方には、縦長のステアリングコラム90と、このステアリングコラム90から左右横向きに延びるフロントパネル体91とが配置されている。ステアリングコラム90から上向きに突出したハンドル軸92(図9及び図10参照)には、走行機体1の進行(旋回)方向及び旋回速度を変更操作するための丸型の操向ハンドル10が取り付けられている。
【0125】
操向ハンドル10の回動操作位置が中立位置N(直進位置ともいう、図10参照)にあるときは、油圧回路190の手動旋回バルブ202が中立状態に維持され、手動旋回バルブ202を介しての旋回シリンダ201への作動油の供給が停止する。このため、走行機体1は操向ハンドル10の回動操作量に比例しての旋回動作を実行しない。
【0126】
この場合、後述する主変速レバー131及び副変速レバー132を中立位置以外の位置に操作していれば、油圧回路190の電磁直進バルブ214が切換作動して、操向ブレーキ手段167の作用にて、第2油圧モータ153の旋回用モータ軸68にブレーキを掛けると共に、操向クラッチ手段169の作用にて、旋回用モータ軸68から差動ギヤ機構86に向けての動力伝達が遮断される。
【0127】
そうすると、直進用モータ軸67からの回転動力のみが、副変速機構85及び差動ギヤ機構86を経由して、左右の走行クローラ2の駆動輪25に同方向の同一回転数にて伝達されるので、走行機体1の直進安定性に優れている。
【0128】
操向ハンドル10の回動操作位置が中立位置Nから外れているときは、手動旋回バルブ202の切換作動にて旋回シリンダ201に作動油が供給され、走行機体1が操向ハンドル10の回動操作量に比例しての旋回動作を実行する。
【0129】
言うまでもないが、操向ハンドル10から手を離せば、図示しないバネ等の復帰手段の作用にて、操向ハンドル10は中立位置Nまで自動的に復帰する。
【0130】
実施形態では、操向ハンドル10の回動可能範囲が中立位置Nを挟んで左右に約135°ずつの角度範囲に設定されている(図10参照)。
【0131】
ステアリングコラム90内には、操向ハンドル10の回動操作位置(回動操作量でもよい)を検出するための回動検出手段としての回動位置センサ93や、操向ハンドル10が中立位置Nにあるか否かを検出するための直進センサ99がハンドル軸92に関連させて設けられている。実施形態の回動位置センサ93は、ロータリエンコーダ式又はロータリポテンショメータ式のものである。
【0132】
操向ハンドル10における略環状のハンドルホイル部94の内側には、液晶表示装置96等を有するセンターパネル体95が配置されている。なお、センターパネル体95はステアリングコラム90にのみ固定されていて、操向ハンドル10には連結していないので、操向ハンドル10を回動操作しても、センターパネル体95ひいては液晶表示装置96は動かず、常にオペレータから画面が見易い状態になっている。
【0133】
ハンドルホイル部94における左右一方(実施形態では右側)にある握り部の上面には、手動入力手段としてのステアリングスイッチ100が設けられている。このステアリングスイッチ100は、前後及び左右方向(十字方向)に操作可能に構成されたいわゆる十字方向型スイッチである。
【0134】
実施形態のステアリングスイッチ100は、これを前方に押し操作している間、枕地(畦際)での走行機体1の方向転換に必要な高さ位置まで刈取部3を強制上昇させる強制リフト動作を実行し、後方に押し操作している間は、刈取部3を所定の刈高さ位置に強制下降させる強制セット動作を実行し得るように構成されている。
【0135】
かかる前後方向の押し操作は、操向ハンドル10の回動操作位置が中立位置Nにあるときにのみ許容される。すなわち、この状態のときにステアリングスイッチ100を前又は後ろに押し操作すれば、強制リフト動作や強制セット動作が実行される。
【0136】
一方、ステアリングスイッチ100を左又は右に押し操作している間は、左又は右の操向ソレノイド204,205の励磁により油圧回路190の電磁自動操向バルブ203(図8及び図12参照)が切換作動して、走行機体1を左又は右に微小旋回(微修正)させ得るように構成されている。
【0137】
詳細は後述するが、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作は原則として、後述する選択調節スイッチ260(図9及び図11参照)が入り状態のときに許容され、選択調節スイッチ260が切り状態のときは、当該操作が無効になる(機能しない)。
【0138】
すなわち、選択調節スイッチ260が切り状態のときにステアリングスイッチ100を左又は右に押し操作しても、走行機体1は左又は右に微小旋回(微修正)しない。
【0139】
ここで、「ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作を無効にする(機能しない)」とは、ステアリングスイッチ100を左又は右に押し操作したときに、油圧回路190の電磁自動操向バルブ203を中立状態に維持することと、ステアリングスイッチ100の左右方向の押し操作自体を不能にすることとを含んだ表現(意味)である。
【0140】
実施形態では、選択調節スイッチ260が切り状態であれば、油圧回路190の電磁自動操向バルブ203を中立状態に維持するように構成されている。
【0141】
言うまでもないが、ステアリングスイッチ100から手指を離せば、当該ステアリングスイッチ100は自らの中立位置に自動復帰する。
【0142】
なお、ハンドルホイル部94における他方(実施形態では左側)の握り部の上面には、警笛102(ホーン、図12参照)を鳴らす操作を行うためのホーンスイッチ103が設けられている(図9及び図10参照)。
【0143】
左右のフロントパネル体91上には、操作用の各種スイッチ類及び設定用のダイヤル類が複数配置されている。例えば左側のフロントパネル体91上には、自動刈高さスイッチ104、刈高さ設定ダイヤル105、選別調節ダイヤル106、及び自動操向スイッチ107等が配置されている。自動刈高さスイッチ104は、刈取部3を所定の刈高さ位置に維持する自動刈高さ制御の入り切りを操作するためのものである。刈高さ設定ダイヤル105は、自動刈高さ制御時の刈高さ位置を設定操作するためのものである。選別調節ダイヤル106は、選別装置20における穀粒の選別状態を調節操作するためのものである。
【0144】
自動操向スイッチ107は、走行機体1を圃場の植立穀稈C列に沿わせて走行させる自動操向制御の入り切りを操作するためのものである。なお、実施形態の自動操向スイッチ107は、後述する選択調節スイッチ260が切り状態であれば、自動操向スイッチ107が入り状態であっても自動操向制御を実行しない設定になっている。
【0145】
右側のフロントパネル体91上には、自動車速スイッチ108、自動水平スイッチ109、傾斜設定ダイヤル110、及び自動扱ぎ深さスイッチ111等が配置されている。自動車速スイッチ108は、エンジン12の過負荷時に車速を減速して刈取部3や脱穀部6の回転駆動を一定に保持する自動車速制御の入り切りを操作するためのものである。自動水平スイッチ109は、走行機体1を左右水平な姿勢に維持する自動水平制御の入り切りを操作するためのものである。傾斜設定ダイヤル110は、走行機体1の左右傾斜角度を設定操作するためのものである。自動扱ぎ深さスイッチ111は、脱穀部6に対する刈取穀稈の扱ぎ深さ位置を所定位置に維持する自動扱ぎ深さ制御の入り切りを操作するためのものである。
【0146】
なお、いずれのスイッチ104,107,108,109,111も、1回の押下で1つのONパルス信号を発するプッシュスイッチ(モーメンタリスイッチ)であり、ノンロックタイプのものである。各スイッチ104,107,108,109,111を1回押下して入り操作したときは、その上方にあるスイッチランプ114,117,118,119,121が点灯し、もう1回押下して切り操作したときは、スイッチランプ114,117,118,119,121が消灯するように構成されている。
【0147】
操縦座席11の一側方(実施形態では左側)には、前後に長いサイドパネル体130が配置されている。このサイドパネル体130上には、前方から順に、選択手段としての選択調節スイッチ260、主変速レバー131、副変速レバー132及びクラッチレバー133が配置されている。
【0148】
選択調節スイッチ260は基本的に、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作の可否を選択操作するためのものである。
【0149】
実施形態の選択調節スイッチ260は、摘み261の回転操作にて所定の回路への切換を実行するロータリ式のスイッチになっている。この場合、摘み261の回転操作位置は、図11の左端(OFF)から右端(常時ON)までの範囲で3つの段階に変更し得るように構成されている。
【0150】
刈取クラッチ82が入り状態の場合において、オペレータが摘み261を図11の左端の「OFF」表示に合わせると、選択調節スイッチ260は切り状態となり、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作が無効になる(機能しない)。
【0151】
摘み261を図11の右端の「常時ON」表示に合わせると、選択調節スイッチ260は常時入り状態となり、操向ハンドル10の回動操作に拘らず、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作が常に許容される。
【0152】
従って、かかる状態で、操向ハンドル10とステアリングスイッチ100との両方を操作すれば、油圧回路190の手動旋回バルブ202と電磁自動操向バルブ203との両方が切換作動して、操向ハンドル10の回動操作量に応じた旋回動作量と、ステアリングスイッチ100の押し操作量に応じた微小旋回動作量との総和の分だけ、走行機体1の左右方向への旋回動作が実行される。
【0153】
「OFF」表示と「常時ON」表示との間の摘み設定範囲では、摘み261の回転操作位置を左側から右側まで連続的(アナログ的)又は段階的(デジタル的)に変更できる。
【0154】
当該範囲内での摘み261の回転操作位置は、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作を許容する(有効にする)ときの操向ハンドル10の回動限度を示すものである。
【0155】
この場合、操向ハンドル10の回動操作位置が中立位置Nから左右に所定設定角度の範囲内(図10に示す設定領域AS内)にあれば、ステアリングスイッチ100の左右方向の押し操作が許容される。そして、操向ハンドル10の回動操作位置が設定領域ASから外れていれば、ステアリングスイッチ100の左右方向の押し操作が無効になる。
【0156】
実施形態の設定領域ASは、中立位置Nを挟んで左右に0°〜20°ずつ(計0°〜計40°)の角度範囲に設定可能になっている。
【0157】
以上の説明から明らかなように、実施形態の選択調節スイッチ260は、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作の可否を選択する機能だけではなく、当該押し操作を許容するときの操向ハンドル10の回動限度を予め設定する機能をも有している。換言すると、実施形態の選択調節スイッチ260は、特許請求の範囲に記載した範囲設定器としても機能するものである。また、「選択調節スイッチ260が入り状態のとき」とは、摘み261を「常時ON」表示に、又は摘み設定範囲内に合わせている状態を意味している。
【0158】
ところで、選択調節スイッチ260に関しては、作業クラッチとしての刈取クラッチ82が切り状態であれば、選択調節スイッチ260の入り切り状態に拘らず、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作を無効にするように設定されている。
【0159】
刈取クラッチ82が切り状態のときというのは、クラッチレバー133をガイド溝135における左右溝部135aの左端位置に傾動させたときであり、クラッチレバー133をかかる位置に傾動させておくのは、路上走行や畦越え等の非農作業状態のとき、すなわち、刈取脱穀作業中以外のときである。
【0160】
このため、路上走行等の非農作業時に、ステアリングスイッチ100を誤って左右方向に押し操作したりしても、刈取クラッチ82を入りにしない限り、ステアリングスイッチ100による走行機体1の微小旋回動は実行されない。
【0161】
サイドパネル体130上のうち選択調節スイッチ260の近傍には、オペレータの注意を喚起するための選択調節スイッチランプ262が設けられている。この選択調節スイッチランプ262は、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作を許容する状態で点灯し、かかる押し操作が無効になる状態で消灯するように構成されている。
【0162】
他方、サイドパネル体130上にある主変速レバー131は、走行機体1の前進、停止、後退及びその車速を無段階に変更操作するためのものである。主変速レバー131は、サイドパネル体130における平面視クランク状のガイド溝134に沿って前後傾動可能に構成されている。
【0163】
主変速レバー131をほぼ垂直な姿勢の中立位置(停止位置)から前方に倒すと、走行機体1は前進する。主変速レバー131の前方への倒れ角度が大きいほど、走行機体1の前進速度が速くなる。反対に、主変速レバー131を中立位置から後方に倒すと、走行機体1は後退する。主変速レバー131の後方への倒れ角度が大きいほど、走行機体1の後退速度が速くなる。
【0164】
副変速レバー132は、作業状態に応じて油圧駆動装置62の副変速機構85を変更操作して、油圧駆動装置62の出力及び回転数を、低速、高速及び中立という3段階の変速段に設定保持するためのものである。副変速レバー132も前後傾動可能に構成されている。
【0165】
クラッチレバー133は、刈取部3の動力継断操作用のレバーと脱穀部6の動力継断操作用のレバーとを1本で兼ねたものであり、サイドパネル130における平面視略L字状のガイド溝135に沿って左右及び前後方向に傾動可能に構成されている。
【0166】
実施形態のクラッチレバー133は、ガイド溝135における左右溝部135aの左端位置に傾動させると刈取クラッチ82及び脱穀クラッチ71(図6参照)が共に切り状態となり、左右溝部135aの右端位置(前後溝部135bの後端位置でもある)に傾動させると脱穀クラッチ71のみが入り状態となり、前後溝部135bの前端位置に傾動させると両クラッチ82,71とも入り状態となるように構成されている。
【0167】
(6).制御手段の構成
次に、図12を参照しながら、走行機体1の条合せ動作や自動操向制御を実行するための構成について説明する。
【0168】
詳細は図示していないが、制御手段としてのマイクロコンピュータ等のコントローラ140は、各種演算処理や制御を実行するための中央処理装置(CPU)、制御プログラムやデータを記憶させるための読み出し専用メモリ(ROM)、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるための随時読み書き可能メモリ(RAM)、タイマ機能としてのクロック、各入出力系機器(センサやアクチュエータ等)とデータのやり取りをする入出力インターフェイス(図示せず)等を備えている。
【0169】
コントローラ140の入力インターフェイスには、操向ハンドル10の回動検出手段としての回動位置センサ93、直進センサ99、手動入力手段としてのステアリングスイッチ100、ホーンスイッチ103、主変速レバー131、副変速レバー132、クラッチレバー133、自動刈高さスイッチ104、刈高さ設定ダイヤル105、選別調節ダイヤル106、自動操向スイッチ107、自動車速スイッチ108、自動水平スイッチ109、傾斜設定ダイヤル110、自動扱ぎ深さスイッチ111、コンバイン全体の電源を入り切り操作するための電源スイッチ136、左右の操向センサ50,51、左右の超音波センサ56、昇降ポジションセンサ57、及び選択手段としての選択調節スイッチ260等がそれぞれ接続されている。
【0170】
他方、コントローラ140の出力インターフェイスには、電磁自動操向バルブ203を切換作動させるための左右の操向ソレノイド204,205、電磁直進バルブ214を切換作動させるための直進ソレノイド214、刈取クラッチアクチュエータを駆動させるための刈取駆動回路137、脱穀シリンダ208を駆動させるための脱穀駆動回路138、油圧シリンダ4を駆動させるための昇降駆動回路139、各スイッチランプ114,117,118,119,121、選択調節スイッチランプ262、液晶表示装置96、及び警笛102(ホーン)等がそれぞれ接続されている。
【0171】
(7).自動操向制御の態様
次に、図13に示すフローチャートを参照しながら、走行機体1の自動操向制御の一例について説明する。ここで、主変速レバー131は中立位置以外の位置に、副変速レバー132は低速位置に傾動操作されているものとする。
【0172】
まず、スタートに続いて、クラッチレバー133がガイド溝135における前後溝部135bの前端位置(刈取部3への動力継ぎ位置)にあるか否か、すなわち、刈取クラッチ82が入り状態か否かを判別する(ステップS1)。
【0173】
クラッチレバー133がガイド溝135における前後溝部135bの前端位置以外の位置にあり、刈取クラッチ82が切り状態になっているときは(S1:NO)、路上走行等の非農作業中であるから、後述するステップS4へ移行する。
【0174】
クラッチレバー133がガイド溝135における前後溝部135bの前端位置にあり、刈取クラッチ82が入り状態になっているときは(S1:YES)、刈取脱穀作業中(農作業中)である。そこで、次のステップS2において、回動位置センサ93の検出値と選択調節スイッチ260の回転操作位置とを読み込んでから、次いで、選択調節スイッチ260が入り状態か否かを判別する(ステップS3)。
【0175】
ステップS3において、選択調節スイッチ260が切り状態のとき(摘み261を「OFF」表示に合わせた状態、S3:YES)は、次いで、操向ハンドル10のハンドル軸92に関連して設けられた直進センサ99が入り状態か否かを判別する(ステップS4)。
【0176】
直進センサ99が入り状態であれば(S4:YES)、操向ハンドル10は中立位置Nにある(回動操作していない)ので、油圧回路190の電磁直進バルブ214を自動的に切換作動させ、操向ブレーキ手段167の入り作動にて第2油圧モータ153の旋回用モータ軸68にブレーキを掛けると共に、操向クラッチ手段169の切り作動にて旋回用モータ軸68から差動ギヤ機構86に向けての動力伝達を遮断する(ステップS5)。換言すると、操向ブレーキ手段167及び操向クラッチ手段169の作用にて、旋回用HST式変速機構64から差動ギヤ機構86への動力伝達を阻止する状態にする。
【0177】
そして、主変速レバー131の傾動操作量に基づき油圧回路190の手動変速バルブ192を作動させて、直進用HST式変速機構63からの回転動力にて走行機体1の直進動作を実行し(ステップS6)、その後リターンする。
【0178】
一方、直進センサ99が切り状態であれば(S4:NO)、操向ハンドル10を回動操作しているので、油圧回路190の電磁直進バルブ214を自動的に切換作動させ、操向ブレーキ手段167の切り作動にて旋回用モータ軸68をブレーキ解除すると共に、操向クラッチ手段169の入り作動にて旋回用モータ軸68から差動ギヤ機構86に向けての動力伝達を可能にする(ステップS7)。換言すると、操向ブレーキ手段167及び操向クラッチ手段169の作用にて、旋回用HST式変速機構64から差動ギヤ機構86への動力伝達を許容する状態にする。
【0179】
そして、操向ハンドル10の回動操作量に基づき油圧回路190の手動旋回バルブ202を作動させて、走行機体1の左右方向への旋回動作を実行し(ステップS8)、その後リターンする。
【0180】
ステップS3に戻り、選択調節スイッチ260が入り状態のとき(摘み261を「常時ON」表示に又は摘み設定範囲内に合わせた状態、S3:YES)は、走行機体1の条合せ動作や自動操向制御を実行する場合であるから、ステップS7の場合と同様に、油圧回路190の電磁直進バルブ214を自動的に切換作動させ、操向ブレーキ手段167及び操向クラッチ手段169の作用にて、旋回用HST式変速機構64から差動ギヤ機構86への動力伝達を許容する状態にする(ステップS9)。
【0181】
次いで、回動位置センサ93にて検出された操向ハンドル10の回動操作位置が、中立位置Nを挟んで左右に所定設定角度の範囲内(図10に示す設定領域AS内)にあるか否かを判別する(ステップS10)。
【0182】
ステップS10において、操向ハンドル10の回動操作位置が設定領域ASから外れているときは(S10:NO)、前述のステップS8に移行する。すなわち、操向ハンドル10の回動操作量に基づき油圧回路190の手動旋回バルブ202を作動させて、走行機体1の左右方向への旋回動作を実行し、その後リターンする。
【0183】
ステップS10において、操向ハンドル10の回動操作位置が設定領域AS内にあるときは(S10:YES)、操向ハンドル10を回動操作していない状態であるから、次いで、ステアリングスイッチ100を左又は右方向に操作したか否かを判別する(ステップS11)。
【0184】
ステアリングスイッチ100を左方向に操作したときは(S11:左)、油圧回路190の電磁自動操向バルブ203を自動的に切換作動させて、走行機体1を左方向に微小旋回させる条合せ動作を実行し(ステップS12)、その後リターンする。また、ステアリングスイッチ100を右方向に操作したときは(S11:右)、油圧回路190の電磁自動操向バルブ203を自動的に切換作動させて、走行機体1を右方向に微小旋回させる条合せ動作を実行し(ステップS13)、その後リターンする。
【0185】
ステアリングスイッチ100を左右いずれの方向にも操作していないときは(S11:OFF)、次いで、操縦部9内の自動操向スイッチ107が入り状態か否かを判別する(ステップS14)。
【0186】
自動操向スイッチ107が切り状態であれば(S14:NO)、前述のステップS4に戻り、その後、主変速レバー131の傾動操作量に基づく走行機体1の直進動作(ステップS6)、又は操向ハンドル10の回動操作量に基づく走行機体1の左右方向への旋回動作(ステップS8)を実行し、リターンする。
【0187】
自動操向スイッチ107が入り状態であれば(S14:YES)、コントローラ140は走行機体1が自動操向可能な状態(直進状態)にあると判断し、以後のステップにおいて、左右の操向センサ50,51の検出情報に応じて走行機体1を圃場の植立穀稈C列に沿わせて走行させる自動操向制御を実行する(ステップS15〜S18)。
【0188】
この場合は、まずステップS15において、左操向センサ50のみが入り状態か否かを判別する。左操向センサ50に関して上記条件を満たしているときは(S15:YES)、油圧回路190の電磁自動操向バルブ203を切換作動させて、走行機体1の左方向への微小旋回動作を実行し(ステップS16)、その後リターンする。
【0189】
左操向センサ50に関して上記条件を満たしていないときは(S15:NO)、次いで、右操向センサ51のみが入り状態か否かを判別する(ステップS17)。右操向センサ51に関して上記条件を満たしているときは(S17:YES)、油圧回路190の電磁自動操向バルブ203を切換作動させて、走行機体1の右方向への微小旋回動作を実行し(ステップS18)、その後リターンする。
【0190】
右操向センサ51に関して上記条件を満たしていないときは(S17:NO)、そのまま待機するためにステップS15に戻る。そして、上述のような制御を繰り返すのである。かかる制御態様から分かるように、実施形態では、ステアリングスイッチ100の左右方向の押し操作(条合せ動作)が走行機体1の自動操向制御に優先して処理される。
【0191】
以上の説明から明らかなように、実施形態のコンバインによると、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作の可否を選択操作するための選択調節スイッチ260を備えているので、選択調節スイッチ260を切り操作しておけば、ステアリングスイッチ100を誤って左右方向に押し操作したりしても、当該ステアリングスイッチ100は機能せず、走行機体1の微小旋回動が実行されない。
【0192】
このため、操向ハンドル10のハンドルホイル部94を握ったままでステアリングスイッチ100を操作できるものでありながら、走行機体1が不用意に予想外の方向を向くおそれを低減でき、走行安全性に優れている。
【0193】
しかも、選択調節スイッチ260を切り操作しておけば、操向ブレーキ手段167及び操向クラッチ手段169の作用にて、旋回用HST式変速機構64から差動ギヤ機構86への動力伝達を阻止できるから、操向ハンドル10を回動操作していない状態では、走行機体1の直進安定性が向上する。
【0194】
実施形態では、刈取クラッチ82が切り状態ならば、選択調節スイッチ260の入り切り状態に拘らず、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作が無効になる。
【0195】
このため、例えば路上走行等の非農作業時に、オペレータが選択調節スイッチ260を切りにしておくのを忘れたとしても、刈取クラッチ82が切り状態である限り、ステアリングスイッチ100による走行機体1の微小旋回動は実行されない。従って、走行機体1が不用意に予想外の方向に向くおそれを確実に抑制でき、走行安全性がより一層高まるのである。
【0196】
また、選択調節スイッチ260が切り状態である場合において、操向ハンドル10の回動操作位置が中立位置Nから外れているときは、操向ブレーキ手段167及び操向クラッチ手段169の作用にて、旋回用HST式変速機構64から差動ギヤ機構86への動力伝達が許容される。
【0197】
このため、選択調節スイッチ260を操作しなくても、操向ハンドル10の回動操作の過程において、半ば自動的に旋回用HST式変速機構64から差動ギヤ機構86への動力伝達が可能な状態に切り換えできる。従って、オペレータの操作負担を軽減できる。
【0198】
更に、選択調節スイッチ260が入り状態である場合において、操向ハンドル10の回動操作位置が設定領域ASから外れているときは、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作が無効になる。
【0199】
このため、例えば圃場の枕地(畦際)で走行機体を方向転換(通常旋回)させる際に、ステアリングスイッチ100に誤って触れたりしても、選択調節スイッチ260の入り切り状態に拘らず、ステアリングスイッチ100による走行機体1の微小旋回動は実行されない。従って、この点でもオペレータの操作負担を軽減できると共に、走行安全性の更なる向上に寄与できる。
【0200】
実施形態の選択調節スイッチ260は、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作の可否を選択する機能だけではなく、当該押し操作を許容する(有効にする)ときの操向ハンドル10の回動限度を予め設定する機能をも有しているから、前記押し操作が機能するときの操向ハンドル10の回動限度を、選択調節スイッチの回転操作にて任意且つ手軽に変更・調節できる。このため、操向ハンドル10やステアリングスイッチ260の操作性向上に寄与できる。
【0201】
(8).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば本願発明は、前述のコンバインに限らず、トラクタ等の農作業機やクレーン車等の特殊作業用車両のような作業車両に対して広く適用できる。
【0202】
また、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作の可否を選択する機能を有する選択手段と、当該押し操作を許容するときの操向ハンドル10の回動限度を予め設定する機能を有する範囲設定器とは、それぞれ別々に設けてもよい。
【0203】
更に、選択手段は、ステアリングスイッチ100における左右方向の押し操作の可否のみを選択操作するものでもよく、この場合は、例えばプッシュスイッチであったり、モーメンタリスイッチであったりしてもよい。
【0204】
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】刈取部における前部の概略平面図である。
【図4】走行機体前部の正面説明図である。
【図5】動力伝達系統のスケルトン図である。
【図6】ミッションケース内の動力伝達系統のスケルトン図である。
【図7】コンバインの油圧回路図である。
【図8】主変速レバー及び操向ハンドルと油圧駆動装置との連結関係を模式的に示す説明図である。
【図9】操縦部の平面図である。
【図10】操向ハンドルの拡大平面図である。
【図11】選択調節スイッチの概略説明図である。
【図12】コントローラの機能ブロック図である。
【図13】自動操向制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0206】
1 走行機体
2 走行部としての走行クローラ
9 操縦部
10 操向ハンドル
11 操縦座席
12 エンジン
13 ミッションケース
60 出力軸
62 油圧駆動装置
63 直進用HST式変速機構
64 旋回用HST式変速機構
65 直進用ポンプ軸
66 旋回用ポンプ軸
67 直進用モータ軸
68 旋回用モータ軸
72 カウンタケース
85 副変速機構
86 差動ギヤ機構
90 ステアリングコラム
92 ハンドル軸
93 回動検出手段としての回動位置センサ
94 ハンドルホイル部
99 直進センサ
100 手動入力手段としてのステアリングスイッチ
130 サイドパネル体
140 制御手段としてのコントローラ
150 第1油圧ポンプ
151 第1油圧モータ
152 第2油圧ポンプ
153 第2油圧モータ
167 伝動切換機構としての操向ブレーキ手段
169 伝動切換機構としての操向クラッチ手段
179 チャージポンプ
190 油圧回路
214 電磁直進バルブ
215 直進ソレノイド
216 ブレーキシリンダ
217 クラッチシリンダ
218 カウンタ油路
260 選択手段としての選択調節スイッチ
261 摘み
262 選択調節スイッチランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に搭載されたエンジンの動力を、直進用及び旋回用油圧駆動装置から差動機構を経由して、走行部に伝達するように構成されている一方、前記走行機体の進行方向を変更操作するための操向ハンドルを備えており、前記操向ハンドルには、前記走行機体の進行方向を微調節操作するための手動入力手段が設けられている作業車両であって、
前記手動入力手段の微調節操作の可否を選択操作するための選択手段を備えており、前記旋回用油圧駆動装置と前記差動機構との間に配置された伝動切換機構が、前記選択手段の可否選択操作に連動して、前記旋回用油圧駆動装置から前記差動機構への動力伝達を許容したり阻止したりするように構成されている、作業車両。
【請求項2】
前記走行機体に備わる作業部への動力伝達を継断するための作業クラッチを備えており、
前記作業クラッチが切り状態のときは、前記選択手段が前記手動入力手段の微調節操作を許可する入り状態であっても、前記手動入力手段の微調節操作を無効にするように構成されている、請求項1に記載した作業車両。
【請求項3】
前記選択手段が前記手動入力手段の微調節操作を禁止する切り状態である場合において、前記操向ハンドルの回動操作位置が中立位置から外れているときは、前記伝動切換機構が前記旋回用油圧駆動装置から前記差動機構への動力伝達を許容するように構成されている、請求項1又は2に記載した作業車両。
【請求項4】
前記選択手段が前記手動入力手段の微調節操作を許可する入り状態である場合において、前記操向ハンドルの回動操作位置が所定の回動角度範囲から外れているときは、前記手動入力手段の微調節操作を無効にするように構成されている、請求項1〜3のうちいずれかに記載した作業車両。
【請求項5】
前記所定の回動角度範囲を予め設定するための範囲設定器を更に備えている、請求項4に記載した作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−141999(P2008−141999A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332131(P2006−332131)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】