説明

作業車

【課題】 構造、設置部位などに工夫をこらし、その設置スペースが比較的小さく、比較的安価で耐圧強度が高いオイルクーラを備えた作業車を提供すること。
【解決手段】 バッテリー13の下方に配置されるオービットロールユニット15から排出されるオイルを冷却するためのU字状に折り曲げた円管状管体からなるオイルクーラ20を、該U字状管体が形成する平面が水平方向に向くようにフロントアクスルブラケット2上に配置されるエンジン始動用バッテリー13とオービットロールユニット15の間に配置する作業車である。オイルクーラ20を折れ曲がり形状の円管状パイプで構成することで、空冷用の表面積を大きくしながら、その設置スペースを最小限に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トラクタやスピードスプレイヤー等の作業車(以下、代表例であるトラクターで説明する)に関するものであり、特にその油圧系統の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、トランスミッション及びパワステアリング等の油圧回路で使用されるオイルはオイルクーラで冷却された後に再使用されるが、そのオイルクーラは一般にエンジン冷却水用ラジエータに内蔵されていた。また図8に示すように、オイルクーラ44はエンジン冷却用ラジエータ7の前でオービットロールユニット(パワステアリングユニット)15の上方に配置していた。その配置方法は支持板40に支持され、その形状は図9の正面図に示すようにフィンタイプのオイル流通箱41であり、オイル流通箱41はアッパータンクからロワータンクに流れる油を通す複数本のパイプと、パイプ外周に設けた冷却風接当用のフィンから成り、ラジエータ7を冷却するためのファン42の風が届く位置に配置されていた。
【0003】図8に示す側面視縦長型のオイルクーラ44は、その基部はフロントアクスルブラケット2に取り付けられており、フロントアクスルブラケット2に設けた基板40で支持されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術のオイルクーラ44は、その設置スペースが比較的大きく、限られた空間しかないボンネット10内で他の部材、装置の設置を制約することになっていた。
【0005】また、図8に示すフィンタイプのオイルクーラ44は構成が比較的複雑であり、高価な上に耐圧強度も小さいので、オイルクーラ保護用のチェックバルブを設置する必要がある。
【0006】そこで、本発明の課題は、構造、設置部位などに工夫をこらし、その設置スペースが比較的小さく、比較的安価で、耐圧強度が高いオイルクーラを備えた作業車を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は以下の構成により解決される。請求項1記載の発明は、前輪31を支持するフロントアクスルブラケット2と、該フロントアクスルブラケット2上に配置されるエンジン始動用バッテリー13と、該バッテリー13の下方に配置されるオービットロールユニット15を備えた作業車において、オービットロールユニット15から排出されるオイルを冷却するためのU字状に折り曲げた円管状管体からなるオイルクーラ20を、該U字状管体が形成する平面が水平方向に向くように前記バッテリー13とオービットロールユニット15の間に配置した作業車である。
【0008】請求項1記載の発明によれば、オイルクーラ20を折れ曲がり形状の円管状パイプで構成することで、空冷用の表面積を大きくしながら、その設置スペースを最小限に保つことができる。
【0009】請求項2記載の発明は、前輪31を支持するフロントアクスルブラケット2と、該フロントアクスルブラケット2上に配置されるエンジン冷却用ラジエータ7と、該ラジエータ7の下方に配置されるオービットロールユニット15を備えた作業車において、オービットロールユニット15から排出されるオイルを冷却するためのU字状に折り曲げた円管状管体からなるオイルクーラ20を、該U字状管体が形成する平面が鉛直方向を向くようにエンジン冷却用ラジエータ7の前側に配置した作業車である。
【0010】請求項2記載の発明によれば、U字形の円管状パイプで構成したオイルクーラ20は従来のフィンタイプのオイルクーラ44(図9)と比べて安価であるだけでなく、耐圧強度も一桁高いのでオイルクーラ保護用のチェックバルブを設置する必要がない。
【0011】請求項3記載の発明は、前記請求項2記載の発明のオイルクーラ20として、U字状に折り曲げた管体の少なくとも2つを、各U字状管体が形成する平面が同一平面上にあるように接続した構成からなるものである。
【0012】請求項3記載の発明によれば、前記U字形に曲げた2つの円管状パイプをアダプター24で接続することで、その大きさを大きくすることができ、容易にオイルクーラ20として機能する構成にすることができる。
【0013】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、オイルクーラ20を横置にすることにより、空冷用の表面積を大きくしながら、その設置スペースを最小限に保つことができ、また、ファン42によるエンジン冷却風の流れを防げない効果もある。
【0014】請求項2記載の発明によれば、U字形の円管状パイプで構成したオイルクーラ20は従来品に比べて安価であるだけでなく、耐圧強度も一桁高い。
【0015】また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、アダプター24を用いることで、安価な製造コストでクーラ面積を大きくすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態のトラクタの側面図を図1に、その先端部のボンネット10内部の要部の側面図を図2に示す。
【0017】トラクタ1の前輪31がフロントアクスルブラケット2などからなる車台に支持され、フロントアクスルブラケット2上にエンジン3、クラッチハウジング5、ミッションケース6等が搭載され、フロントアクスルブラケット2上に搭載されている装置はフロントグリル9を備えたボンネット10内に収納されている。
【0018】図2のボンネット10内部の詳細図に示すように、フロントアクスルブラケット2上にはエンジン3を冷却する冷却水が循環するラジエータ7と、エアコン(図示せず)のコンデンサ11、エンジン始動用のバッテリ13、クラッチハウジング(図示せず)、オービットロール(パワーステアリング)ユニット15、該オービットロールユニット15に接続するステアリングシャフト16などが搭載されている。
【0019】図2に示すようにオービットロールユニット15をラジエータ7の前方のフロントアクスルブラケット2の内側に配置し、オービットロールユニット15からジョイントシャフト23を介してステアリングシャフト16を伸ばした構成としている。
【0020】オービットロールユニット15から出たオイルはオイルクーラ20を経由してミッションケース6へ流れるが、本実施の形態ではオイルクーラ20を図3の平面図に示すように折れ曲がり形状の円管状パイプで構成し、バッテリー13を支持するサポート用プレート21の下部に横置きに設置する(図2参照)ことに特徴がある。
【0021】オイルクーラ20を折れ曲がり形状の円管状パイプで構成することで、空冷用の表面積を大きくすることができる。また、オイルクーラ20を横置にすることにより、その設置スペースを最小限に保つことができ、また、ファン42によるエンジン冷却風の流れを妨げない効果もある。
【0022】また、オイルクーラ20の前方と下方をネット22(図2)で囲むことで冷却風の流れを妨げることなく、フロントグリル9側から流れ込む冷却風に混入する塵埃などがオイルクーラ20の表面に付着するのをネット22で防ぐことができる。
【0023】ミッションケース6内に配設されたメインクラッチ用多板の潤滑用として利用され、大気開放の油圧回路で用いられるオイルクーラ20をU字形に曲げた円管状パイプで構成し、図8に示す直立型のフィンタイプのオイルクーラ44と同じ位置(ラジエータ7の前面で、エアコン用コンデンサー11の下部に配置)にパイプのU字形平面を縦方向に配置する構成(図4の正面図と図5の側面図に示す。)として、排出油を潤滑に利用しても良い。
【0024】このU字形の円管状パイプで構成したオイルクーラ20はフィンタイプのオイルクーラ44と比べて安価である。
【0025】また、円管状パイプからなるオイルクーラ20は耐圧200kg/cmであるのに対して従来のフィンタイプのオイルクーラ44は耐圧20kg/cmであり、図4に示すパイプ状のオイルクーラ20は図9R>9に示すフィンタイプのオイルクーラ44に比較して耐圧強度が高いのでオイルクーラ保護用のチェックバルブを設置する必要がない。
【0026】前記U字形に曲げた2つの円管状パイプをアダプター24で接続することで、その大きさを大きくすることができ、容易にオイルクーラ20として機能する構成にすることができる。
【0027】直線状の円管状パイプを単位長さ毎に連続的にU字形に折り曲げることもできるが、通常の配管ベンダーでは、図4に示す二つのU字形状パイプを繋ぎ合わせ形に一本のパイプで曲げることが不可能である。図4R>4に示す形状に連続した一本のパイプで曲げるためには特殊な治具等が必要となり、製作コストが高くなる。それに比較して図4に示すU字形に曲げた配管をアダプタ24で接続する構成は通常の設備での生産が可能であり、製作コストが掛からない利点もある。
【0028】また、図4、図5に示すようにオイルクーラ20はアクスルブラケット2の上面で支持させた構成とする。例えば正面視で上部開口コ字状断面のアクスルブラケット2の上面に略コ字状のプレート25を一体的に取り付け、該プレート25に板状プレート26を溶接又はボルト等で一体に取り付け、該板状プレート26にボルト27を介してオイルクーラ20のパイプ部を挟持し固定した。
【0029】図4、図5に示すようにパイプ状の油圧配管をオイルクーラ20として機能させる構成において、オービットロールユニット15のTポート15aからのオイルがオイルクーラ20に流れるようにした油圧回路を構成している。そのため、フロントアクスルブラケット2の上部に設置されているオービットロールユニット15の近くにオイルクーラ20を配置することにより、送油配管の取り回しが短くて済む利点がある。
【0030】ところで、一般にトラクタは種々な工具を常備しているが、その工具を入れる工具箱を配置するスペースは特に考えられておらず、従来は操縦席19の空きスペースなどに工具箱をむき出しで置くなどしていた。又は工具箱はキャビン床下のボックス内に入れていた。
【0031】しかし、必要な時に手軽に工具箱を取り出し、容易にその中の工具を使用できるようにしたトラクタが無かった。
【0032】そこで、工具箱を取り出して容易に工具を使用できるようにするために、本実施の形態では図6の側面図に示すように操縦席19の後ろのバックパネル18の前方のデッドスペースを利用して工具箱29を備え付けておく。
【0033】また図7に示すように工具箱29の前部を、バックパネル18に設けた取付フック28に引っかけ、後部を脱着用ラッチ30により固定できる構成とした。
【0034】また工具箱29の上面は蓋29aになっており、そのヒンジ部をバックパネル18側に設けておき、蓋の先端部はバネ式の開閉フック31を設けた。
【0035】こうして、工具箱29を工具なしで容易に脱着することが可能になり、操縦席19の後ろのデッドスペースが有効利用できる。
【0036】このように操縦席19後ろのスペースを有効利用し、大型のモンキやメガネレンチ等も収納可能となった。また、トラクタは種々な工具を常備しているが、その工具を入れる工具箱29を工具を用いないで容易に脱着することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態のトラクタの側面図である。
【図2】 図1のトラクタ先端部のボンネット内部の要部の側面図である。
【図3】 図1のトラクタのオイルクーラの平面図である。
【図4】 図1のトラクタ先端部のボンネット内部のエアコン用コンデンサーの下部に配置するオイルクーラの正面図である。
【図5】 図1のトラクタ先端部のボンネット内部のエアコン用コンデンサーの下部に配置するオイルクーラの側面図である。
【図6】 図1のトラクタの操縦席後部側の要部側面図である。
【図7】 図6の操縦席後部側に設ける工具箱の装着手順を説明する側面図である。
【図8】 従来技術のトラクタの先端部のボンネット内の主要部を示す側面図である。
【図9】 従来技術のフィンタイプのオイルクーラの正面図である。
【符号の説明】
1 作業車(トラクタ) 2 フロントアクスルブラケット
3 エンジン 5 クラッチハウジング
6 ミッションケース 7 ラジエータ
9 フロントグリル 10 ボンネット
11 コンデンサ 13 バッテリ
15 オービットロールユニット 15a Tポート
16 ステアリングシャフト(ユニット)
18 バックパネル 19 操縦席
20 オイルクーラ 21 サポート用プレート
22 ネット 23 ジョイントシャフト
24 アダプター 25、26 プレート
27 ボルト 29 工具箱
29a 蓋 28 取付フック
30 ラッチ 31 前輪
40 支持板 41 オイル流通箱
42 エンジン冷却用ファン 44 オイルクーラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 前輪31を支持するフロントアクスルブラケット2と、該フロントアクスルブラケット2上に配置されるエンジン始動用バッテリー13と、該バッテリー13の下方に配置されるオービットロールユニット15を備えた作業車において、オービットロールユニット15から排出されるオイルを冷却するためのU字状に折り曲げた円管状管体からなるオイルクーラ20を、該U字状管体が形成する平面が水平方向に向くように前記バッテリー13とオービットロールユニット15の間に配置したことを特徴とする作業車。
【請求項2】 前輪31を支持するフロントアクスルブラケット2と、該フロントアクスルブラケット2上に配置されるエンジン冷却用ラジエータ7と、該ラジエータ7の下方に配置されるオービットロールユニット15を備えた作業車において、オービットロールユニット15から排出されるオイルを冷却するためのU字状に折り曲げた円管状管体からなるオイルクーラ20を、該U字状管体が形成する平面が鉛直方向を向くようにエンジン冷却用ラジエータ7の前側に配置したことを特徴とする作業車。
【請求項3】 オイルクーラ20は、U字状に折り曲げた管体の少なくとも2つを、各U字状管体が形成する平面が同一平面上にあるように接続したことを特徴とする請求項2記載の作業車。

【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2003−11856(P2003−11856A)
【公開日】平成15年1月15日(2003.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−199553(P2001−199553)
【出願日】平成13年6月29日(2001.6.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】