説明

作業車

【課題】従来より備えられる手動操作式の指令手段を有効利用して、構成の複雑化を招くことなく、旋回操作位置検出手段が異常であるときにも旋回を行えるようにすることが可能な作業車を提供する。
【解決手段】旋回操作具77の操作位置を検出する旋回操作位置検出手段80の検出値が設定適正範囲内である正常動作状態であるか前記適正出力範囲外である異常状態であるかを判別して、前記正常動作状態であると判別した場合には、旋回操作位置検出手段80の検出値に基づいて旋回制御を実行し、且つ、前記異常状態であると判別した場合には、旋回操作位置検出手段80の指令情報に基づく旋回制御の実行を停止して、被制御対象用指令手段の指令情報、及び、その指令情報と操作すべき旋回状態との関係を定めた旋回操作関係情報に基づいて、旋回操作手段57を制御する代替旋回制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の走行装置の走行状態を直進走行状態、右旋回走行状態及び左旋回走行状態に切り換え自在で、且つ、前記右旋回走行状態及び前記左旋回走行状態の夫々において旋回半径が異なる複数の旋回状態に切り換え自在な走行状態切換手段と、前記走行状態切換手段を前記直進走行状態、前記右旋回走行状態及び前記左旋回走行状態における前記複数の旋回状態の夫々に切り換える旋回操作手段と、直進指令位置、その直進指令位置の右側に連なる右旋回指令操作領域及び前記直進指令位置の左側に連なる左旋回指令操作領域を含む所定の操作範囲の全範囲にわたり正逆方向に移動操作自在な旋回操作具と、
前記旋回操作具の操作位置を検出する旋回操作位置検出手段と、前記旋回操作手段とは異なる他の被制御対象を制御する指令情報を指令する手動操作式の他被制御対象用指令手段と、前記旋回操作手段及び前記他の被制御対象を制御する制御手段とが設けられ、前記制御手段が、前記旋回操作位置検出手段の検出情報に基づいて、前記旋回操作具が前記直進指令位置に位置すると前記直進状態になり、前記旋回操作具が前記左旋回指令操作領域に位置すると前記左旋回状態でかつ前記旋回操作具がその左旋回指令操作領域において前記直進指令位置から離れる側に位置するほど旋回半径が小さい旋回状態になり、及び、前記旋回操作具が前記右旋回指令操作領域に位置すると前記右旋回状態でかつ前記旋回操作具がその右旋回指令操作領域において前記直進指令位置から離れる側に位置するほど旋回半径が小さい旋回状態になるように、前記旋回操作手段を制御する旋回制御、並びに、前記他被制御対象用指令手段の指令情報に基づいて、前記他の被制御対象を制御する他作業用制御を実行するように構成された作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車として、従来では、作業車の一例としてのコンバインに適用したものとして、次のように構成したものがあった。
すなわち、ポテンショメータにて構成される前記旋回操作位置検出手段が断線故障や短絡故障等の異常状態になった場合であっても、刈取作業を区切りのよい所まで継続して行うことを可能にすべく旋回操作具の指令に基づく旋回操作を行えるように、旋回操作具が前記所定の操作範囲内における右旋回側の設定位置及び左旋回側の設定位置まで移動操作されるとオン状態に切り換わる一対の検出スイッチと、その検出スイッチと前記旋回操作手段としての電磁制御弁とを電気的に接続する緊急用の電気配線とを備え、さらに、その電気配線に、前記旋回操作位置検出手段が正常に動作している間は前記検出スイッチによる電磁制御弁への切り換え指令が指令されないように電気的に遮断する断続手段、例えば、手動抜き差し自在なコネクタや電気的に入り切り自在な継電器等を備えるようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
そして、コンバイン等の作業車においては、前記旋回操作手段とは異なる他の被制御対象を制御するための手動操作式の他被制御対象用指令手段が設けられ、前記制御手段は、前記他被制御対象用指令手段の指令情報に基づいて他の被制御対象を制御する他作業用制御を実行するものであるが、従来では、このような他被制御対象用指令手段は、自己が担当する他作業用制御を実行するための専用の制御用の指令を指令する構成となっていた。
【0004】
例えば、前記他作業用制御として、前記他の被制御対象として脱穀装置における扱深さを変更調整するための扱深さ調節用モータを作動させる扱深さ調節処理を実行するものであるが、他被制御対象用指令手段として扱深さを調整するための扱深さ調節用のスイッチがある。又、扱深さ調節処理以外にも種々の他作業用制御を実行するものであり、前記他被制御対象用指令手段も種々設けられるが、それらの他被制御対象用指令手段は夫々自己が担当する他作業用制御を実行するための専用の制御用の指令を指令するものとなっていた。
【0005】
【特許文献1】特開2000−105620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来構成においては、前記検出スイッチ、前記電気配線、及び、前記コネクタ等は、前記旋回操作位置検出手段が正常に動作している間においては使用することがなく、無駄な装置となるので、それだけ作業車全体として構成が複雑となり、コスト高を招く不利があった。
【0007】
本発明の目的は、従来より備えられる手動操作式の指令手段を有効利用して、構成の複雑化を招くことなく、旋回操作位置検出手段が異常であるときにも旋回を行えるようにすることが可能な作業車を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業車は、左右一対の走行装置の走行状態を直進走行状態、右旋回走行状態及び左旋回走行状態に切り換え自在で、且つ、前記右旋回走行状態及び前記左旋回走行状態の夫々において旋回半径が異なる複数の旋回状態に切り換え自在な走行状態切換手段と、
前記走行状態切換手段を前記直進走行状態、前記右旋回走行状態及び前記左旋回走行状態における前記複数の旋回状態の夫々に切り換える旋回操作手段と、
直進指令位置、その直進指令位置の右側に連なる右旋回指令操作領域及び前記直進指令位置の左側に連なる左旋回指令操作領域を含む所定の操作範囲の全範囲にわたり正逆方向に移動操作自在な旋回操作具と、
前記旋回操作具の操作位置を検出する旋回操作位置検出手段と、
前記旋回操作手段とは異なる他の被制御対象を制御する指令情報を指令する手動操作式の他被制御対象用指令手段と、
前記旋回操作手段及び前記他の被制御対象を制御する制御手段とが設けられ、
前記制御手段が、
前記旋回操作位置検出手段の検出情報に基づいて、前記旋回操作具が前記直進指令位置に位置すると前記直進状態になり、前記旋回操作具が前記左旋回指令操作領域に位置すると前記左旋回状態でかつ前記旋回操作具がその左旋回指令操作領域において前記直進指令位置から離れる側に位置するほど旋回半径が小さい旋回状態になり、及び、前記旋回操作具が前記右旋回指令操作領域に位置すると前記右旋回状態でかつ前記旋回操作具がその右旋回指令操作領域において前記直進指令位置から離れる側に位置するほど旋回半径が小さい旋回状態になるように、前記旋回操作手段を制御する旋回制御、並びに、
前記他被制御対象用指令手段の指令情報に基づいて、前記他の被制御対象を制御する他作業用制御を実行するように構成されたものであって、その第1特徴構成は、
前記制御手段が、
前記旋回操作位置検出手段の検出値が設定適正範囲内である正常動作状態であるか前記適正出力範囲外である異常状態であるかを判別して、前記正常動作状態であると判別した場合には、前記旋回操作位置検出手段の検出値に基づいて前記旋回制御を実行し、且つ、前記異常状態であると判別した場合には、前記旋回操作位置検出手段の指令情報に基づく前記旋回制御の実行を停止して、前記被制御対象用指令手段の指令情報、及び、その指令情報と操作すべき旋回状態との関係を定めた旋回操作関係情報に基づいて、前記旋回操作手段を制御する代替旋回制御を実行するように構成されている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、前記制御手段は、前記旋回操作位置検出手段の検出値が設定適正範囲内である正常動作状態であるか前記適正出力範囲外である異常状態であるかを判別する。そして、前記正常動作状態であると判別した場合には旋回操作位置検出手段の検出値に基づいて前記旋回制御を実行するが、前記異常状態であると判別した場合には、前記旋回操作位置検出手段の指令情報に基づく前記旋回制御の実行を停止して、旋回操作手段とは異なる他の被制御対象を制御する指令情報を指令する手動操作式の他被制御対象用指令手段の指令情報、及び、その指令情報と操作すべき旋回状態との関係を定めた旋回操作関係情報に基づいて、前記旋回操作手段を制御する代替旋回制御を実行するのである。
【0010】
すなわち、前記旋回操作位置検出手段の検出値が設定適正範囲外である異常状態であれば、その検出値に基づいて旋回制御を行うことができないので、従来より作業車に備えられている前記他の被制御対象を制御する他作業用制御を実行するための手動操作式の他被制御対象用指令手段の指令情報を利用して、制御手段が旋回操作手段を制御することで旋回走行を行うことができる。そのとき、制御手段は、他被制御対象用指令手段の指令情報は前記他の被制御対象を制御するための情報であるから、その指令情報と操作すべき旋回状態との関係を定めた旋回操作関係情報に基づいて旋回操作手段を制御することになる。旋回操作関係情報は、他被制御対象用指令手段にて指令情報が指令されたときに、操作すべき旋回状態として複数の旋回状態のうちのどのような旋回状態とすべきかを定める情報である。
【0011】
このように従来より備えられている他被制御対象用指令手段を利用することで、異常状態の場合にだけ使用するような特別な異常対策用の装置等を備える必要がなく、構成の複雑化を招くことなく旋回操作を行うことが可能となるのである。その結果、圃場での作業の途中で旋回操作位置検出手段が異常になったような場合であっても、作業を区切りのよい所まで継続して行うようにしたり、あるいは、メンテナンス作業を行う場所まで車体を移動させることが可能である。
【0012】
従って、第1特徴構成によれば、従来より備えられる手動操作式の指令手段を有効利用して、構成の複雑化を招くことなく、旋回操作位置検出手段が異常であるときにも旋回を行えるようにすることが可能な作業車を提供できるに至った。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記旋回操作関係情報が、前記被制御対象用指令手段の指令情報として、左旋回に対応する指令情報が指令されると、前記左旋回状態でかつ前記複数の旋回状態のうちの旋回半径大側の旋回状態とし、且つ、前記被制御対象用指令手段の指令情報として、右旋回に対応する指令情報が指令されると、前記右旋回状態でかつ前記複数の旋回状態のうちの旋回半径大側の旋回状態とする関係に定められている点にある。
【0014】
第2特徴構成によれば、前記制御手段が前記代替旋回制御を実行すると、前記被制御対象用指令手段の指令情報として、左旋回に対応する指令情報が指令されると、前記左旋回状態でかつ前記複数の旋回状態のうちの旋回半径大側の旋回状態となる。又、前記被制御対象用指令手段の指令情報として、右旋回に対応する指令情報が指令されると、前記右旋回状態でかつ前記複数の旋回状態のうちの旋回半径大側の旋回状態となる。つまり、被制御対象用指令手段の指令情報に基づく旋回操作は、左旋回及び右旋回のいずれの方向に旋回する場合であっても、旋回半径大側の旋回状態で行われ、車体が緩やかに旋回することになる。
【0015】
前記代替旋回制御は、旋回操作位置検出手段が異常であるときに、旋回操作具とは異なる他被制御対象用指令手段の指令情報に基づいて実行されるものであり、他被制御対象用指令手段は本来、旋回を指令するものではないから、旋回方向を間違う等の操作ミスを起こすおそれがあり、又、前記代替旋回制御において予期しない急旋回が行われることは安全上好ましくない。そこで、被制御対象用指令手段の指令情報に基づく旋回操作が旋回半径大側の旋回状態で緩やかに旋回するようにすることで、仮に旋回方向を間違う等の操作ミスがあっても所望の方向とは反対方向に急激に旋回する等の不利のない状態で所望の進行方向に旋回させることが可能となる。尚、上記したような異常状態であるときには、車速を低速にした状態で走行することが一般的であるから、緩やかに旋回するようにしても旋回力の不足を感じるおそれはなく所望の旋回操作を行うことが可能である。
【0016】
従って、第2特徴構成によれば、所望の方向とは反対方向に急激に旋回する等の不利のない状態で、被制御対象用指令手段の指令情報に基づいて所望の進行方向に旋回させることが可能となる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成に加えて、植立穀稈を刈り取る刈取部と、その刈取部にて刈り取られた刈取穀稈を脱穀処理する脱穀部とが備えられ、且つ、
前記他の被制御対象として、前記刈取穀稈の脱穀部における扱深さを変更調整する扱深さ調節手段が備えられ、前記他被制御対象用指令手段として、扱深さを深扱き方向に変更する深扱き側操作指令を指令するオン状態と深扱き側操作指令を指令しないオフ状態とに切り換え自在な深扱きスイッチ、及び、扱深さを浅扱き方向に変更する浅扱き側操作指令を指令するオン状態と浅扱き側操作指令を指令しないオフ状態とに切り換え自在な浅扱きスイッチが備えられ、
前記制御手段が、
前記他の作業用制御として、前記深扱きスイッチの深扱き側操作指令に基づいて扱深さを深扱き方向へ変更しかつ前記浅扱きスイッチの浅扱き側操作指令に基づいて扱深さを浅扱き方向へ変更するように、前記扱深さ調節手段を制御する扱深さ調整処理を実行し、且つ、
前記旋回操作関係情報が、前記深扱きスイッチの深扱き側操作指令及び前記浅扱きスイッチの浅扱き操作指令のうちの一方を、前記左旋回に対応する指令情報とし、他方を、右旋回に対応する指令情報とする関係に定められている点にある。
【0018】
第3特徴構成によれば、前記制御手段は、前記他の作業用制御として、前記深扱きスイッチの深扱き側操作指令に基づいて扱深さを深扱き方向へ変更しかつ前記浅扱きスイッチの浅扱き側操作指令に基づいて扱深さを浅扱き方向へ変更するように、前記扱深さ調節手段を制御する扱深さ調整処理を実行する。そして、前記旋回操作位置検出手段の検出値が適正出力範囲外である異常状態であると判別して前記代替旋回制御を実行するときは、前記深扱きスイッチの深扱き側操作指令及び前記浅扱きスイッチの浅扱き操作指令のうちの一方が指令されると、前記左旋回に対応する指令情報が指令されたものとして前記旋回操作手段を制御し、前記深扱きスイッチの深扱き側操作指令及び前記浅扱きスイッチの浅扱き操作指令のうちの一方が指令されると、前記右旋回に対応する指令情報が指令されたものとして前記旋回操作手段を制御することになる。
【0019】
刈取穀稈を脱穀処理する脱穀部を備えた作業車では、扱深さ変更手段は標準的に装備されるものであり、しかも、その扱深さ変更手段を操作するための深扱きスイッチ及び浅扱きスイッチは、車体の運転操作をしている作業者が作業中に操作可能なように操縦部に設けられるものである。そこで、前記他被制御対象用指令手段として、深扱きスイッチ及び浅扱きスイッチを用いるようにしたので、作業者が運転操作しながら操作し易く、前記代替旋回制御を実行するときに旋回操作を指令し易いものとなる。
【0020】
ところで、他被制御対象用指令手段の指令に基づいて扱深さ調整処理を併行して実行することがあっても、例えば、車体が走行を停止している状態で所望の扱深さになるように予め調整した状態で車体を走行させながら代替旋回制御を実行することで、極力、所望の扱深さから大きく外れることがないようにすることが可能である。ちなみに、刈取作業中に旋回操作を行うのは、車体の向きを植立条に合わせるために短時間だけ旋回操作を行うことが多く、所望の扱深さから大きく外れるおそれは少ない。
【0021】
従って、第3特徴構成によれば、扱深さ変更手段を操作するための深扱きスイッチ及び浅扱きスイッチを用いて適切に代替旋回制御を実行することが可能な作業車を提供できるに至った。
【0022】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成に加えて、車体が走行状態であるか走行停止状態であるかを検出する走行状態検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、前記代替旋回制御として、
前記走行状態検出手段にて走行停止状態であることが検出されると、前記深扱きスイッチ及び前記浅扱きスイッチの指令に基づいて、前記扱深さ調整処理を併行して実行する形態で前記旋回操作手段を制御し、且つ、前記走行状態検出手段にて車体が走行状態であることが検出されると、前記深扱きスイッチ及び前記浅扱きスイッチの指令に基づいて、前記扱深さ調整処理を実行しない形態で前記旋回操作手段を制御するように構成されている点にある。
【0023】
第4特徴構成によれば、前記代替旋回制御を実行するときは、走行停止状態であるときは、深扱きスイッチ及び浅扱きスイッチの指令に基づいて扱深さ調整処理を併行して実行する形態で旋回操作手段を制御する。このように走行停止状態であるときは、旋回操作手段を操作させても車体は走行していないので実質的な旋回操作は行われないが、扱深さ調整処理を実行することができる。つまり、走行停止状態では、深扱きスイッチ及び浅扱きスイッチの指令に基づいて扱深さ調整処理を実行することになる。
【0024】
そして、車体が走行状態であるときは、深扱きスイッチ及び浅扱きスイッチの指令に基づいて、扱深さ調整処理を実行しない形態で旋回操作手段を制御するのである。このように車体が走行状態であるときは、車体の進行方向を所望の方向に調整すべく旋回操作手段を操作させることができるが、このとき深扱きスイッチ及び浅扱きスイッチの指令に基づく扱深さ調整処理は実行しないのである。
【0025】
従って、第4特徴構成によれば、異常が発生した箇所から特定の箇所まで車体を移動させるときに刈取部による刈取作業を行う必要がある場合、車体を停止させている状態で所望の扱深さになるように深扱きスイッチ及び浅扱きスイッチの指令に基づいて扱深さ調整処理を実行しておき、走行を開始したのちは深扱きスイッチ及び浅扱きスイッチの指令に基づいて旋回操作させることができる。そのことにより、作物列に沿うように車体の向きを変更すべく旋回操作しながら、且つ、扱深さを所望の扱深さに調整した状態で刈取作業を行ったのちに特定の箇所まで車体を移動させることが可能となるのである。
【0026】
本発明の第5特徴構成は、第3特徴構成又は第4特徴構成に加えて、前記刈取部にて刈り取られた刈取穀稈の稈長を検出する稈長検出手段が備えられ、
前記制御手段が、
前記稈長検出手段にて検出される稈長の検出結果に基づいて前記扱深さが適正扱深さになるように前記扱深さ変更手段を操作する自動扱き深さ制御を実行し、且つ、前記深扱きスイッチの深扱き側操作指令又は前記浅扱きスイッチの浅扱き操作指令が指令されると、前記自動扱深さ制御に優先して、前記扱深さ調整処理を実行するように構成されている点にある。
【0027】
第5特徴構成によれば、前記制御手段は、前記稈長検出手段にて検出される稈長の検出結果に基づいて前記扱深さが適正扱深さになるように前記扱深さ変更手段を操作する自動扱き深さ制御を実行するので、前記扱深さが常に適正扱深さに維持される状態で脱穀処理が良好に行われるものであるが、前記深扱きスイッチの深扱き側操作指令又は前記浅扱きスイッチの浅扱き操作指令が指令されると、前記自動扱深さ制御に優先して前記扱深さ調整処理を実行するので手動指令に基づく扱深さ調整処理を優先して行うことができる。
【0028】
そして、代替旋回制御を実行するときに、車体が走行中であっても、前記深扱きスイッチ及び前記浅扱きスイッチの指令に基づいて前記扱深さ調整処理を併行して実行する形態で前記旋回操作手段を制御する構成とした場合には、深扱きスイッチの深扱き側操作指令又は浅扱きスイッチの浅扱き操作指令の指令に基づいて旋回操作手段が制御されるが、扱深さ調整処理も併せて実行するので不必要に扱深さ操作手段が操作されることになる。しかし、このように不必要に扱深さ操作手段が操作されることがあっても、前記自動扱深さ制御を実行することにより、扱深さ操作手段が自動操作されて扱深さが適正扱深さに操作されることになる。
【0029】
従って、第5特徴構成によれば、代替旋回制御を実行しながら刈取作業を行うとき、前記扱深さ調整処理を併行して実行する形態とする場合であっても、扱深さを極力適正扱深さに維持した状態で刈取作業を行うことができる。
【0030】
本発明の第6特徴構成は、第3特徴構成〜第5特徴構成のいずれかに加えて、前記深扱きスイッチ及び前記浅扱きスイッチが、車速を変更するための変速操作レバーの握り部に手指にて操作可能な状態で設けられている点にある。
【0031】
第6特徴構成によれば、作業者は変速操作レバーを握り操作しながら、その握り部から手を離すことなく手指にて前記深扱きスイッチ及び前記浅扱きスイッチを操作することができる。
【0032】
従って、第6特徴構成によれば、扱深さ調節の変更指令や代替旋回制御の旋回用の指令を操作の煩わしさのない状態で良好に行うことができる。
【0033】
本発明の第7特徴構成は、第1特徴構成〜第6特徴構成のいずれかに加えて、前記異常状態であることを報知するための報知手段が設けられ、前記制御手段が、前記異常状態であることを判別すると前記報知手段を作動させる報知処理を実行するように構成されている点にある。
【0034】
第7特徴構成によれば、前記旋回操作位置検出手段の検出値が適正出力範囲外である異常状態であることが判別されると前記報知手段を作動させるようにしたから、作業者は、異常状態であることを認識することができ、他被制御対象用指令手段の指令による代替旋回制御に迅速に移行することができる。
【0035】
従って、第7特徴構成によれば、作業者が異常状態であることを認識して代替旋回制御による旋回操作を行う状態で迅速に移行することができ、異常状態であるのにもかかわらず、正常動作状態であると誤判断して作業を継続する等の不利がなく安全性を確保できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係る作業車の実施形態を作業車の一例としてのコンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置2、操縦部3等を備えた車体の前部に、稲や麦等の植立穀稈を刈り取って脱穀装置2に刈取穀稈として供給する刈取部4を横軸芯P周りで昇降自在に連結して構成されている。
【0037】
前記刈取部4は、植立穀稈を引き起こす引起し装置5、引き起こされた植立穀稈の株元を切断して刈取穀稈とする刈刃6、刈取穀稈を寄せ集めて後方へ搬送する補助搬送装置7、補助搬送装置7から受け取った刈取穀稈を搬送終端部において横倒れ姿勢に変更して脱穀装置2の脱穀フィードチェーン8に搬送する縦搬送装置9等を備え、昇降用シリンダC1の駆動により横軸芯P周りに昇降揺動するよう構成されている。
【0038】
前記縦搬送装置9は、穀稈の株元側を挟持搬送する株元搬送装置9a、穀稈の穂先側を係止搬送する穂先搬送装置9b及び穂先案内板9cから成り、刈取部4の揺動軸芯Pと同一軸芯周りで揺動自在に支持してあり、ギア式減速機構付き電動モータにて構成された扱深さモータ(扱深さ調節手段に相当)M1にて縦搬送装置9を揺動調節することによって、補助搬送装置7から縦搬送装置9に受け渡す際の刈取穀稈の稈長方向での支持位置を変更して脱穀装置2での扱深さを調節するように構成されている。つまり、前記扱深さモータM1によって縦搬送装置9が揺動調節されることにより、縦搬送装置9の補助搬送装置7からの刈取穀稈の受け取り支持位置が稈長方向に変更され、脱穀装置2の扱室における刈取穀稈の扱深さが変更調節できるよう構成されている。
【0039】
そして、前記扱深さモータM1による扱深さ調節箇所(補助搬送装置7から縦搬送装置9への刈取穀稈の受け渡し箇所)よりも穀稈搬送経路の下手側の検出箇所において、刈取穀稈の稈長を検出する稈長検出手段としての稈長検出センサSが備えられている。この稈長検出センサSは、刈取穀稈の穂先側箇所の存否を検出する穂先側センサS1及び刈取穀稈の株元側箇所の存否を検出する株元側センサS2を刈取穀稈の稈長方向に所定間隔を隔てる状態で並置して構成されている。尚、前記穂先側センサS1及び株元側センサS2のそれぞれは穀稈が接触すると揺動してオン作動するスイッチ式に構成されるものであり、穀稈が接触してオン作動したときに穀稈有りを検出し、穀稈が接触していないオフ状態のときに穀稈無しを検出するように構成されている。
【0040】
そして、図5に示すようにマイクロコンピュータを備えた制御装置64が備えられ、この制御装置64に前記稈長検出センサの検出情報が入力されており、制御装置64は、操縦部に備えられた自動扱深さ制御入切スイッチ83がオンされて自動扱深さ制御の入りが指令されると、穂先側センサS1と株元側センサS2との間に穀稈の穂先が位置する状態(図9参照)を適正扱深さ状態として、その適正扱深さ状態に維持されるように扱深さモータM1の作動を自動制御する自動扱深さ制御を実行するよう構成されている。
【0041】
又、図5及び図8に示すように、後述する車速変更用の変速レバー61の握り部には、その握り部を握った手指にて押し操作自在な状態で、深扱きスイッチSW1及び浅扱きスイッチSW2が上下方向に並置されて設けられ、これらの検出情報が制御装置64に入力されている。そして、制御装置64は、深扱きスイッチSW1が押し操作されると、それが押されている間、扱深さモータM1を浅扱き側に制御し、浅扱きスイッチSW2が押し操作されると、それが押されている間、扱深さモータM1を浅扱き側に制御する扱深さ調整処理を前記扱深さ制御に優先して実行するように構成されている。
【0042】
次に、コンバインの動力伝動系について説明する。図2に示すように、エンジンEの駆動力がベルト伝動装置を介して無段式の車速変速装置(以下、変速装置という)11に伝えられ、この変速装置11の変速後の出力がミッションケース10を介して、走行装置1を回転させるべく伝動されている。又、エンジンEの駆動力は、脱穀クラッチ12を介して脱穀装置2にも伝動されている。
【0043】
次に図3を参照しながら、ミッションケース内部の伝動機構について説明する。
ミッションケース10の上部において入力軸22が支持され、入力軸22に伝動ギヤ23,24がスプライン構造により固定されている。前記変速装置11の出力軸11cがミッションケース10の内部に挿入され、スプライン構造により伝動ギヤ24(入力軸22)に連結されている。又、ミッションケース10の上部に支持された副変速用伝動軸27に、高速ギヤ25及び低速ギヤ26が相対回転自在に外嵌され、伝動ギヤ23及び高速ギヤ25、伝動ギヤ24及び低速ギヤ26が咬合しており、シフト部材28がスプライン構造により副変速用伝動軸27に一体回転及びスライド自在に外嵌されている。これら伝動ギヤ23及び高速ギヤ25、伝動ギヤ24及び低速ギヤ26、シフト部材28により副変速装置が構成されており、シフト部材28を高速ギヤ25に咬合する状態と低速ギヤ26に咬合する状態とに切り換えることにより、入力軸22の動力が高低2段(低速及び高速位置)に変速されて、副変速用伝動軸27に伝達される構成となっている。
この副変速装置は、通常は、シフト部材28が高速ギヤ25に咬合する位置にスライド操作されて高速位置が設定されている。
【0044】
前記ミッションケース10の下部に直進用伝動軸29が支持され、直進用伝動軸29に伝動ギヤ31が固定され、この伝動ギア31は副変速用伝動軸27に固定の伝動ギヤ30と咬合している。又、直進用伝動軸29には、左右一対の出力ギア32R、32Lが相対回転自在に外嵌され、且つ、左右一対の咬合部33R、33Lがスプライン構造により直進用伝動軸29に一体回転及びスライド自在に外嵌されている。そして、右の出力ギヤ32Rと右の咬合部33Rの間で右のサイドクラッチ34が構成され、左の出力ギヤ32Lと左の咬合部33Lの間で左のサイドクラッチ34が構成されている。
【0045】
次に、右及び左のサイドクラッチ34について説明する。
直進用伝動軸29の右及び左側部の外面にスプライン部が形成されて、右の咬合部33R及び左の咬合部33Lが直進用伝動軸29のスプライン部に一体回転及びスライド自在に外嵌され、受け部材40が直進用伝動軸29のスプライン部に一体回転自在に外嵌されている。受け部材40及びバネ41により右及び左の咬合部33R,33Lが、右及び左の出力ギヤ32R,32Lの咬合側に付勢されている。右及び左の咬合部33R,33Lが右及び左の出力ギヤ32R,32Lに咬合することにより、右及び左のサイドクラッチ34の伝動状態となるのであり、直進用伝動軸29の動力が、右及び左のサイドクラッチ34を介して、右及び左の走行装置1に伝達される。
又、右及び左の出力ギヤ32R,32Lと右及び左の咬合部33R,33Lとの間に夫々形成された油室内に作動油を供給することで、右及び左の咬合部33R,33Lと右及び左の咬合部33R,33Lとが、バネ41の付勢力に抗してそれらが離間する側にスライド操作されて、右及び左のサイドクラッチ34がクラッチ切り状態(遮断状態)となり、前記作動油を排出すると、バネ41の付勢力により右及び左のサイドクラッチ34がクラッチ入り状態(伝動状態)となる。
【0046】
前記ミッションケース10の下部には、左右の伝動軸35が同一軸芯上に左右に並ぶ状態で支持され、左右の伝動軸35に固定された左右の伝動ギヤ36が右の出力ギヤ32R及び左の出力ギア32Lに咬合しており、左右の伝動軸35に固定された左右の伝動ギヤ37が、右及び左の車軸38に固定された伝動ギヤ39夫々に咬合している。右及び左の車軸38は右及び左の走行装置1のスプロケットが連結されている。
【0047】
そして、左右のサイドクラッチ34が共にクラッチ入り状態であれば、入力軸22の動力が、副変速用伝動軸27、伝動ギヤ30,31、直進用伝動軸29、右及び左のサイドクラッチ34、右及び左の出力ギヤ32R,32L、伝動ギヤ36、伝動軸35、伝動ギヤ37,39、右及び左の車軸38を介して、右及び左のクローラ走行装置1に伝達されると機体は直進状態で走行する伝動状態となる。
【0048】
次に、車体を旋回走行させるための旋回用の伝動系の構造について説明する。
ミッションケース10内に伝動軸44が支持され、伝動軸44に相対回転自在に外嵌された伝動ギヤ45が、右の咬合部33Rの外周のギヤ部に咬合しており、伝動軸44と伝動ギヤ45との間に緩旋回クラッチ46が備えられている。緩旋回クラッチ46は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態(入り状態)に操作され、作動油が排出されることで遮断状態(切り状態)に操作される。
【0049】
直進用伝動軸29に旋回クラッチケース47が相対回転自在に外嵌されて、伝動軸44に固定された伝動ギヤ48と旋回クラッチケース47の外周部の伝動ギヤ47aとが咬合している。旋回クラッチケース47は左右対称に構成されており、旋回クラッチケース47と右及び左の出力ギヤ32R,32Lとの間に右及び左の旋回クラッチ49が構成されている。右及び左の旋回クラッチ49は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作される。この右及び左の旋回クラッチ49は、摩擦板が互いに密になるように配置されており、作動油が排出されても右及び左の旋回クラッチ49が半伝動状態となるように構成されている。
【0050】
前記緩旋回クラッチ46が伝動状態に操作されると、直進用伝動軸29の動力が右の咬合部33R、伝動ギヤ45、緩旋回クラッチ46、伝動軸44及び伝動ギヤ48を介して、直進用伝動軸29と同方向の回転で直進用伝動軸29よりも低速の動力として、旋回クラッチケース47に伝達される。右又は左のサイドクラッチ34のうちのいずれかを遮断状態に操作し、右又は左の旋回クラッチ49のうちのサイドクラッチ34が遮断された側のものを伝動状態に操作すると、伝動状態となる旋回クラッチ49を介して直進用伝動軸29と同方向の回転で直進用伝動軸29よりも低速の動力が右又は左の出力ギヤ32R,32Lのいずれか一方に伝達され、それに対応する側の走行装置1に低速の動力が伝達される。そのとき、右又は左の出力ギヤ32R,32Lの他方のものは、直進用伝動軸29の動力がそのまま伝達される。
【0051】
前記伝動軸44には、伝動ギヤ52が相対回転自在に外嵌され、この伝動ギア52は、副変速用伝動軸27に一体回転自在に備えられた伝動ギヤ51が咬合している。そして、伝動軸44と伝動ギヤ52との間に逆転クラッチ53が備えられている。逆転クラッチ53は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作され、作動油が排出されることで遮断状態に操作され、又、この逆転クラッチ53は、作動油の供給圧を調整することで後述するような制動状態にも操作可能な構成となっている。
【0052】
前記逆転クラッチ53が伝動状態に操作されると、副変速用伝動軸27の動力が伝動ギヤ51,52、逆転クラッチ53、伝動軸44及び伝動ギヤ48を介して、直進用伝動軸29と逆方向の回転の動力として、旋回クラッチケース47に伝達される。右又は左のサイドクラッチ34のうちのいずれかを遮断状態に操作し、右又は左の旋回クラッチ49のうちのサイドクラッチ34が遮断された側のものを伝動状態に操作すると、伝動状態となる旋回クラッチ49を介して直進用伝動軸29とは逆方向の回転の動力が右又は左の出力ギヤ32R,32Lのいずれか一方に伝達され、それに対応する側の走行装置1に逆方向の回転動力が伝達される。そのとき、右又は左の出力ギヤ32R,32Lの他方のものは、直進用伝動軸29の動力がそのまま伝達される。
【0053】
又、作動油の供給圧を調整することで伝動軸44の回動を阻止するような操作圧に調整されると制動状態にすることができ、この制動状態では、伝動軸44及び伝動ギヤ48を介して、旋回クラッチケース47が制動状態となる。右又は左のサイドクラッチ34のうちのいずれかを遮断状態に操作し、右又は左の旋回クラッチ49のうちのサイドクラッチ34が遮断された側のものを伝動状態に操作すると、右又は左の出力ギヤ32R,32Lのうち、サイドクラッチ34が遮断されていない側のものが制動状態となり、反対側のものは直進用伝動軸29の動力がそのまま伝達される。
【0054】
従って、上記したようなミッションケース10内に備えられた伝動機構が、左右一対の走行装置の走行状態を直進走行状態、右旋回走行状態及び左旋回走行状態に切り換え自在で、且つ、前記右旋回走行状態及び前記左旋回走行状態の夫々において旋回半径が異なる複数の旋回状態に切り換え自在な走行状態切換手段100に相当する。
【0055】
次に、図5を参照しながら、走行変速用の静油圧式無段変速装置11の操作について説明する。
静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pが、中立位置N、中立位置Nから前進Fの高速側及び後進Rの高速側に無段変速自在に構成されており、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mが高低2段に変速自在に構成されている。静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pの斜板を操作する油圧シリンダ59、油圧シリンダ59に作動油を給排操作する制御弁60が備えられて、操縦部3に備えられた変速レバー61と制御弁60とが機械的に連係されている。これにより、変速レバー61を操作することによって、制御弁60が操作され油圧シリンダ59が作動して、変速レバー61の操作位置に対応する位置に静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pの斜板を操作する。
【0056】
静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板を操作する油圧シリンダ62、油圧シリンダ62に作動油を給排操作する電磁操作式の制御弁63が備えられている。そして、図示しない変速スイッチが備えられて、この変速スイッチを操作することによって、制御装置64により制御弁63が操作され油圧シリンダ62が作動して、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板が高速及び低速位置に操作される構成となっている。
【0057】
そして、機体の走行速度を検出するための左右の車軸の回転速度を検出する左右車軸回転センサー66R,66Lが備えられて、それら左右車軸回転センサー66R,66Lの検出値が制御装置64に入力されている。この実施形態では、前記左右車軸回転センサー66R,66Lは走行状態検出手段として機能する構成となっている。
【0058】
次に、右及び左のサイドクラッチ34(右及び左の咬合部33R,33L)、右及び左の旋回クラッチ49、緩旋回クラッチ46、逆転クラッチ53に作動油を給排操作する油圧ユニット57について説明する。
図4に示すように、前記油圧ユニット57には、右旋回制御弁67、左旋回制御弁68、リリーフ弁69、アンロード弁70、比例制御弁71、旋回切換制御弁72、超信地旋回用パイロット弁74が備えられている。そして、静油圧式無段変速装置11の出力軸11cにより駆動される油圧ポンプ56からの外部配管58が油圧ユニット57に接続され、右旋回制御弁67が直進用伝動軸29の油路29bを介して右のサイドクラッチ34及び右の旋回クラッチ49に接続され、左旋回制御弁68が直進用伝動軸29の油路29bを介して左のサイドクラッチ34及び左の旋回クラッチ49に接続されている。
【0059】
前記右旋回制御弁67及び左旋回制御弁68は、夫々、供給位置67a,68a及び排出位置67b,68bの2位置に切り換え操作自在な電磁操作式に構成されて、排出位置67b,68bに復帰付勢されている。アンロード弁70は遮断位置70a及び排出位置70bの2位置に切り換え操作自在な電磁操作式に構成されて、遮断位置70aに復帰付勢されている。右及び左旋回制御弁67,68と直進用伝動軸29の油路29bとの間から分岐した油路75に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72が直列的に接続されており、旋回切換制御弁72が伝動軸44の油路44aを介して緩旋回クラッチ46及び逆転クラッチ53に接続されている。
【0060】
前記比例制御弁71は電磁比例減圧弁にて構成され、後述するように制御装置64から供給される制御電流を変更調整することで作動油の流路下手側における前記各摩擦式油圧クラッチM(緩旋回クラッチ46、逆転クラッチ53)への供給圧を変更調整することが可能な構成となっている。
【0061】
旋回切換制御弁72は、緩旋回位置72a及び超信地旋回位置72cに操作自在なパイロット操作式に構成されて、緩旋回位置72aに復帰付勢されている。油路75から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁72に供給して超信地旋回位置72cに操作するように超信地旋回用パイロット弁74が構成されている。前記超信地旋回用パイロット弁74は、旋回切換制御弁72にパイロット作動油を供給する供給位置とパイロット作動油の供給を停止して旋回切換制御弁72を緩旋回位置72aに復帰させる停止位置の2位置に切り換え操作自在な電磁操作式に構成されて、停止位置に復帰付勢されている。
【0062】
右旋回制御弁67及び左旋回制御弁68、アンロード弁70、比例制御弁71、超信地旋回用パイロット弁74は、後述するように、制御装置64によって制御操作される。従って、この油圧ユニット57が旋回操作手段に対応する。
【0063】
そして、図5に示すように、直進指令位置Nに復帰付勢されており、その直進指令位置Nから右方向側の最大操作位置Rm及び左方向側の最大操作位置Lmにわたる旋回指令操作領域にわたり揺動操作自在な旋回指令具としての旋回レバー77が操縦部3に備えられて、旋回レバー77の操作位置を検出する旋回指令位置検出手段としてのポテンショメータからなる旋回レバーセンサ80が備えられ、この旋回レバーセンサ80の検出情報が制御装置64に入力されている。
【0064】
旋回レバー77は直進指令位置N及びそれに連なる旋回指令操作領域にわたり移動操作自在であり、旋回レバーセンサ80は旋回レバー77が旋回指令操作領域にて前記直進指令位置から最も離れる最大操作位置(Rm、Lm)へ移動するほど大きい目標旋回力に対応する検出情報を制御装置64に指令する構成となっており、前記旋回レバー77と前記旋回レバーセンサ80とにより操向指令手段200が構成される。従って、操向指令手段200は、最小目標値から最大目標値までの間の目標値を連続的に指令するように構成されている。
【0065】
又、旋回状態を低速回転旋回状態としての緩旋回状態、停止旋回状態としての信地旋回状態及び急旋回状態としての超信地旋回状態に切り換え指令するための旋回モードスイッチ78が操縦部3に備えられて、旋回モードスイッチ78の操作位置が制御装置64に入力されており、この旋回モードスイッチ78は緩旋回状態に対応する緩旋回位置、信地旋回状態に対応する信地旋回位置、超信地旋回状態に対応する超信地旋回位置に切り換え操作自在に構成されている。
【0066】
前記旋回レバー77が直進指令位置Nに操作されると、右及び左旋回制御弁67,68が排出位置67b,68bに操作され、アンロード弁70が排出位置70bに操作されて、右及び左のサイドクラッチ34、右及び左の旋回クラッチ49から作動油が排出され、右及び左のサイドクラッチ34が伝動状態に操作されて、右及び左の旋回クラッチ49が半伝動状態に操作される。右及び左旋回制御弁67,68が排出位置67b,68bに操作され、アンロード弁70が排出位置70bに操作されるから、油圧ポンプ56からの作動油はアンロード弁70を通してミッションケース10に戻される。
【0067】
これにより、入力軸22の動力が、副変速用伝動軸27、伝動ギヤ30,31、直進用伝動軸29、右及び左のサイドクラッチ34(右及び左の咬合部33R,33L)、右及び左の出力ギヤ32R,32L、伝動ギヤ36、伝動軸35、伝動ギヤ37,39、右及び左の車軸38を介して、右及び左のクローラ走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0068】
次に、旋回モードスイッチ78が緩旋回位置に操作されているときに旋回レバー77が旋回指令操作領域に操作された場合について説明する。
前記旋回モードスイッチ78が緩旋回位置に操作され、旋回レバー77が直進指令位置Nから右方向に操作されて不感帯を外れると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに切り換えられ、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)及び右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて伝動状態に操作される。
【0069】
この場合、左の旋回クラッチ49が半伝動状態であるので、左のサイドクラッチ34の動力が、左の出力ギヤ32L及び左の旋回クラッチ49から右の旋回クラッチ49を介して右の出力ギヤ32Rに伝達され、直進用伝動軸29と同方向の回転で直進用伝動軸29より少し低速の動力が右の出力ギヤ32Rに伝達される。これにより、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0070】
旋回レバー77が直進指令位置Nから右方向に操作されて不感帯を外れると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されるのとほぼ同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72を介して、緩旋回クラッチ46に作動油が供給され始めるのであり、旋回レバー77が不感帯を外れてから直進指令位置から離れる方向に右側に移動操作されるほど比例制御弁71により緩旋回クラッチ46の操作圧が昇圧操作される。
【0071】
旋回レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71により緩旋回クラッチ46の操作圧が昇圧操作されるのに伴って、直進用伝動軸29の動力が右の咬合部33R、伝動ギヤ45、緩旋回クラッチ46、伝動軸44、伝動ギヤ48、旋回クラッチケース47及び右の旋回クラッチ49を介して、直進用伝動軸29と同方向の回転で直進用伝動軸29よりも低速の動力が右の出力ギヤ32Rに伝達される。
【0072】
この場合、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力と、緩旋回クラッチ46からの動力とが、同時に右の出力ギヤ32Rに伝達される状態となるので、緩旋回クラッチ46の操作圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力が緩旋回クラッチ46からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。これにより、緩旋回クラッチ46の操作圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0073】
旋回レバー77の右側への移動操作量が大きくなり、緩旋回クラッチ46の操作圧が昇圧すると、緩旋回クラッチ46からの動力が左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力に打ち勝って、緩旋回クラッチ46からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。この状態において、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)を介して直進用伝動軸29の動力により駆動される左の出力ギヤ32Lよりも、緩旋回クラッチ46からの動力により右の出力ギヤ32Rが低速で駆動されることになり、機体は右に緩旋回する。このときの旋回状態が、旋回内側の走行装置が機体進行方向に旋回外側の走行装置よりも低速度で回動する低速回動旋回状態に対応する。
【0074】
前記旋回レバー77が直進指令位置Nから左方向に操作されて不感帯を外れると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに保持され、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)及び左の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)が遮断状態に操作され、左の旋回クラッチ49に作動油が伝動状態に操作される。これと同時に、前述した左側への旋回と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。又、旋回レバー77の右側への移動操作量が大きくなり、緩旋回クラッチ46の操作圧が高圧になると、右旋回操作と同様な操作が行われて、機体は左に緩旋回する。
【0075】
次に、旋回モードスイッチ78が信地旋回位置に操作されているときに旋回レバー77が旋回指令操作領域に操作された場合について説明する。
旋回モードスイッチ78が信地旋回位置に操作され、旋回レバー77が直進指令位置Nから右方向に操作されて不感帯を外れると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに切り換えられ、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)及び右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ49に作動油が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ49が半伝動状態であるので機体は緩やかに右に向きを変える。
【0076】
旋回レバー77が直進指令位置Nから右方向に操作されて不感帯を外れると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されるのとほぼ同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(超信地旋回位置72c)を介して、逆転クラッチ53に作動油が供給され始めるのであり、旋回レバー77が不感帯を外れてから直進指令位置から離れる方向に右側に移動操作されるほど比例制御弁71により逆転クラッチ53の操作圧が昇圧操作される。但し、このときに旋回レバー77が右方向に最大操作位置Rmまで操作されても、逆転クラッチ53の操作圧は、伝動軸44を逆転させるのではなく、伝動軸44の回転が停止する又は略停止する程度の操作圧となるように調整される。
【0077】
この場合、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力と、逆転クラッチ53を介して制動される伝動軸44の制動力とが、同時に右の出力ギヤ32Rに伝達される状態となるので、逆転クラッチ53の操作圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力が逆転クラッチ53の制動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。これにより、逆転クラッチ53の操作圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0078】
旋回レバー77の右側への移動操作量が大きくなり、逆転クラッチ53の操作圧が制動作用するように設定されている操作圧になると、その制動力が左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力に打ち勝って右の出力ギヤ32Rが制動状態となり、機体は右に信地旋回する。このときの旋回状態が、旋回内側の走行装置の回動が停止又は略停止する停止旋回状態に対応する。
【0079】
従って、旋回レバー77の操作に伴って比例制御弁71により逆転クラッチ53の操作圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸44、伝動ギヤ48、旋回クラッチケース47及び右の旋回クラッチ49を介して、右の出力ギヤ32Rに制動力が掛かる。つまり、伝動軸44に対してブレーキによって制動を掛ける状態と等しい擬似ブレーキ状態となる。
【0080】
旋回レバー77が直進指令位置Nから左方向に操作されて不感帯を外れると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)及び左の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)が遮断状態に操作され、左の旋回クラッチ49に作動油が伝動状態に操作される。これと同時に、前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。旋回レバー77の左側への移動操作量が大きくなり、逆転クラッチ52の操作圧が高圧になると、右旋回操作と同様な操作が行われて、機体は左に信地旋回する。
【0081】
次に、旋回モードスイッチ78が超信地旋回位置に操作されているときに旋回レバー77が旋回指令操作領域に操作された場合について説明する。
旋回モードスイッチ78が超信地旋回位置に操作され、旋回レバー77が直進指令位置Nから右方向に操作されて不感帯を外れると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに切り換えられ、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)及び右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ49が半伝動状態であるので、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0082】
旋回レバー77が直進指令位置Nから右方向に操作されて不感帯を外れると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されるのとほぼ同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(超信地旋回位置72c)を介して、逆転クラッチ53に作動油が供給され始めるのであり、旋回レバー77が直進指令位置から不感帯を外れて右側に移動操作されるほど比例制御弁71により逆転クラッチ53の操作圧が昇圧操作される。この超信地旋回状態では、旋回レバー77が右方向に最大操作位置Rmまで操作されると、逆転クラッチ53の操作圧は、逆転クラッチ53を完全に入り状態にして伝動軸44を直進用伝動軸29と逆方向に回転させるように調整される。
【0083】
旋回レバー77の操作に伴って比例制御弁71により逆転クラッチ53の操作圧が昇圧操作されるのに伴って、副変速用伝動軸27の動力が伝動ギヤ51,52、逆転クラッチ53、伝動軸44、伝動ギヤ48、旋回クラッチケース47及び右の旋回クラッチ49を介して、直進用伝動軸29と逆方向の回転の動力として右の出力ギヤ32Rに伝達される。
【0084】
この場合、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力と、逆転クラッチ53からの動力とが、同時に右の出力ギヤ32Rに伝達される状態となるので、逆転クラッチ53の操作圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力が逆転クラッチ53からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。これにより、逆転クラッチ53の操作圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0085】
そして、旋回レバー77の右側への移動操作量が大きくなり、逆転クラッチ53の操作圧が高圧になると、逆転クラッチ53からの動力が左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力に打ち勝って、逆転クラッチ53からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。この状態において、左の出力ギヤ32Lに対して、右の出力ギヤ32Rが逆方向に駆動されて、機体は右に超信地旋回する。このときの旋回状態が、旋回内側の走行装置を機体進行方向と逆方向に進行するように駆動する急旋回状態に対応する。
【0086】
次に、旋回レバー77が直進指令位置Nから左方向に操作された場合には、不感帯を外れると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに保持され、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)及び左の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)が遮断状態に操作され、左の旋回クラッチ49に作動油が伝動状態に操作される。これと同時に、前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。旋回レバー77の左側への移動操作量が大きくなり、逆転クラッチ53の操作圧が高圧になると、右旋回の場合と同様な操作が行われて、機体は左に超信地旋回する。
【0087】
ところで、前記旋回モードスイッチ78が緩旋回位置に操作されて緩旋回モードでの旋回を行っているとき、あるいは、旋回モードスイッチ78が信地旋回位置に操作されて信地旋回状態での旋回を行っているときに、旋回レバー77が不感帯を超えて右方向あるいは左方向に操作された旋回状態において、もう少し小さな半径で旋回する必要が生じることがある。
【0088】
そこで、このコンバインでは、図5に示すように、旋回レバー77の握り部に旋回状態切換スイッチ81が備えられている。例えば、緩旋回モードの場合、旋回レバー77を操作して旋回走行を行っている状態で旋回状態切換スイッチ81を押し操作すると、旋回切換制御弁72が緩旋回位置72aから超信地旋回位置72bに操作されて、上記したような信地旋回状態に切り換えることができる。この信地旋回状態は旋回レバー77の旋回状態切換スイッチ81を押し操作している間だけであり、旋回レバー77の旋回状態切換スイッチ81から手を離して戻し操作すると、旋回切換制御弁72が信地旋回位置72bから緩旋回位置72aに操作されて、機体は緩旋回状態に戻る。
【0089】
又、信地旋回状態の場合、旋回レバー77を操作して旋回走行を行っている状態で、旋回レバー77の旋回状態切換スイッチ81を押し操作すると、逆転クラッチ53への操作圧が変更調整されて超信地旋回状態になり機体は超信地旋回する。この超信地旋回状態は旋回レバー77の旋回状態切換スイッチ81を押し操作している間だけであり、旋回レバー77の旋回状態切換スイッチ81から手を離して戻し操作すると、信地旋回状態に戻り機体は緩旋回状態に戻る。
【0090】
そして、制御装置64は、旋回レバー77の旋回指令操作領域における操作位置と目標操作圧との関係を、前記旋回指令操作領域における直進指令位置から離れる方向への移動量が大になるほど大きくなり、且つ、前記旋回指令操作領域の全範囲にわたって、前記旋回指令操作領域における直進指令位置から離れる方向への移動量が大になるほど、旋回レバー77の操作位置の単位量あたりの変化に対する目標操作圧の変化量を大側に変化させる二次関数に対応する関係として定めて、この二次関数に対応する関係として定められる前記旋回指令操作領域における直進指令位置から離れる方向への移動量と目標操作圧との関係、及び、旋回レバー77の操作位置に基づいて、その旋回レバー77の操作位置に対応する目標操作圧を求めて、その目標操作圧になるように比例制御弁を制御するように構成されている。
【0091】
図6に示すように、前記3種類の旋回状態として、緩旋回状態では、旋回レバー77が最大操作位置にまで操作されたときに、左右一対の走行装置のうち旋回内側の走行装置の出力回転速度が反対側の走行装置の出力回転速度の約1/3の速度にまで減速される目標旋回状態が設定され(図6のラインL1参照)、信地旋回状態では、旋回中心側の走行装置の出力回転速度が零となるような目標速度比率が設定され(図6のラインL2参照)、超信旋回状態では、旋回内側の走行装置の出力回転速度が反対側の走行装置の駆動回転方向とは逆回転方向で反対側の走行装置の出力回転速度の約1/3の速度になるような目標速度比率が設定される(図6のラインL3参照)。
【0092】
そして、図7に示すように、予め実験等により、上記したような目標速度比率が得られるように旋回レバー77の操作位置と摩擦式油圧クラッチMの目標操作圧(具体的には、比例制御弁71に供給する目標電流)との相関関係が、操作位置の単位量あたりの変化に対する摩擦式油圧クラッチMの目標操作圧の変化量を大側に変化させる二次関数に対応する関係として定められ、制御装置64に記憶されている。
【0093】
説明を加えると、図7中のラインL4は、緩旋回状態並びに超信地旋回状態における旋回レバー77の操作位置と摩擦式油圧クラッチMの目標操作圧(比例制御弁71に供給する目標電流)との相関関係を示しており、図7中のラインL5は信地旋回状態における旋回レバー77の操作位置と摩擦式油圧クラッチMの目標操作圧(比例制御弁71に供給する目標電流)との相関関係を示している。そして、このラインL4においては、旋回レバー77を最大操作位置Lm,Rmにまで操作したときには、緩旋回状態の場合には、緩旋回クラッチ46が強い圧接力による完全な入り状態に操作され、超信地旋回状態の場合には、逆転クラッチ53が強い圧接力による完全な入り状態に操作されるような操作圧に設定されている。しかし、ラインL5においては、旋回レバー77を最大操作位置Lm,Rmにまで操作したときには、伝動軸44を逆転駆動するのではなく、旋回内側の走行装置1の回動が停止又は略停止する制動状態となるような操作圧に設定されている。
【0094】
従って、制御装置64は、旋回レバーセンサ80の検出情報に基づいて、旋回レバー77が直進指令位置Nに操作されると直進状態となり且つ旋回レバー77が右旋回指令操作領域及び左旋回指令操作領域の夫々において直進指令位置Nから離れる側に操作されるほど旋回半径が小さい旋回状態となるように油圧ユニット57を制御する旋回制御を実行するよう構成されている。
【0095】
又、制御装置64は、旋回レバーセンサ80の検出値が設定適正範囲内である正常動作状態であるか適正出力範囲外である異常状態であるかを判別して、前記正常動作状態であると判別した場合には、旋回レバーセンサ80の検出値に基づいて前記旋回制御を実行し、且つ、前記異常状態であると判別した場合には、旋回レバーセンサ80の指令情報に基づく前記旋回制御の実行を停止して、被制御対象用指令手段の指令情報、及び、その指令情報と操作すべき旋回状態との関係を定めた旋回操作関係情報に基づいて、前記旋回操作手段を制御する代替旋回制御を実行するように構成されている。
【0096】
そして、前記旋回操作関係情報が、前記被制御対象用指令手段の指令情報として、左旋回に対応する指令情報が指令されると、前記左旋回状態でかつ前記複数の旋回状態のうちの旋回半径大側の旋回状態とし、且つ、前記被制御対象用指令手段の指令情報として、右旋回に対応する指令情報が指令されると、前記右旋回状態でかつ前記複数の旋回状態のうちの旋回半径大側の旋回状態とする関係に定められている。
具体的には、前記旋回操作関係情報が、前記深扱きスイッチSW1の深扱き側操作指令及び前記浅扱きスイッチSW2の浅扱き操作指令のうちの一方を、前記左旋回に対応する指令情報とし、他方を、前記右旋回に対応する指令情報とする関係に定められている。
【0097】
さらに、制御装置64は、代替旋回制御として、左右車軸回転センサー66R,66Lにて走行停止状態であることが検出されると、深扱きスイッチSW1及び浅扱きスイッチSW2の指令に基づいて、前記扱深さ調整処理を併行して実行する形態で油圧ユニット57を制御し、且つ、左右車軸回転センサー66R,66Lにて車体が走行状態であることが検出されると、深扱きスイッチSW1及び浅扱きスイッチSW2の指令に基づいて扱深さ調整処理を実行しない形態で油圧ユニット57を制御するように構成されている。
【0098】
図5に示すように、操縦部3には各種の操縦用情報や作業用情報を表示するための表示パネル82が設けられ、この表示パネル82は文字情報からなるメッセージ情報を表示可能に設けられ、その表示内容は制御装置64にて制御する構成となっている。そして、制御装置57は、前記異常状態であることが検出されると、異常状態であることをこの表示パネル82に表示させるように作動を制御する構成となっている。従って、表示パネル82は前記異常状態であることを報知するための報知手段に対応する。
【0099】
以下、図10〜図13に示すフローチャートを参照しながら、制御装置64の制御について説明する。
先ず、旋回レバーセンサ80が正常に作動しているか否かを判別する(ステップ1)。具体的に説明すると、ポテンショメータにて構成される旋回レバーセンサ80による検出可能範囲は電源電圧が5〔ボルト〕であれば0〜5〔ボルト〕であるが、旋回レバーの操作位置を検出するための検出利用範囲は、それよりも狭い範囲、つまり、0.5〜4.5〔ボルト〕の範囲となるように設定している。従って、検出値が0.5〜4.5〔ボルト〕の範囲(設定適正範囲)内にあれば正常に動作していると判断し、検出値が0.5ボルト以下であったり、4.5ボルト以上である設定適正範囲外であれば、旋回レバーセンサ80が短絡故障あるいは断線故障している異常状態であると判断する。
【0100】
そして、旋回レバーセンサ80の検出値が正常であると判断すると、通常の旋回制御を実行する。すなわち、図11に示すように、旋回レバー77が直進指令位置Nの不感帯内にあれば、アンロード弁70を排出位置70aに切り換える(ステップ11,12)。又、左旋回制御弁68及び右旋回制御弁67は共に遮断状態に保持する(ステップ13,14)。旋回レバー77が直進指令位置Nから不感帯を外れると、その操作方向が右方向であれば右旋回制御弁67を供給位置67aに切り換え(ステップ15,16)、操作方向が左方向であれば左旋回制御弁68を供給位置68aに切り換え(ステップ15,17)、アンロード弁70を遮断位置70aに切り換える(ステップ18)。
【0101】
次に、旋回モードスイッチ78にて選択されている旋回モードに対応する図7に示すような相関関係と旋回レバーセンサ80の検出情報に基づいて、比例制御弁71に対する目標電流を演算にて求め、比例制御弁71に出力している出力電流が演算にて求めた目標電流になるように出力電流を調整する(ステップ19〜21)。
【0102】
そして、ステップ1において、旋回レバーセンサ80が故障している異常状態であると判断すると、旋回レバーセンサ80の検出値が異常であること、及び、深扱きスイッチSW1及び浅扱きスイッチSW2を操作することにより代替旋回制御を実行することが可能なことを表示パネル82に表示して、作業者に報知する報知処理を実行する(ステップ5)。尚、このとき、表示に併せてブザーを鳴動させるようにしてもよい。
【0103】
次に、代替旋回制御を実行する(ステップ6)。図12を参照しながら代替旋回制御について説明する。
すなわち、深扱きスイッチSW1がオンすると、前記左右車軸回転センサー66R,66Lのいずれもが零速又はそれに近い値に設定された設定値以下を検出して走行停止状態であることを検出すると(ステップ31,32)、深扱きスイッチSW1がオンしている間、扱深さが深扱き側へ変更するように扱深さモータM1を作動させ(ステップ33)、且つ、右旋回制御弁67を供給位置67aに切り換え、アンロード弁70を遮断位置70aに切り換える(ステップ34,35)。その結果、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)及び右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ49が伝動状態に操作され、機体は緩やかに右に向きを変える。この状態が、前記右旋回状態でかつ前記複数の旋回状態のうちの旋回半径大側の旋回状態に対応するものである。
【0104】
ステップ32において前記左右車軸回転センサー66R,66Lのいずれかが設定値を越えたことを検出して車体が走行状態であることが検出されると、扱深さモータM1の作動は実行せず、右旋回制御弁67を供給位置67aに切り換え、アンロード弁70を遮断位置70aに切り換え(ステップ32,34,35)、上述したように機体は緩やかに右に向きを変えることになる。
【0105】
そして、浅扱きスイッチSW2がオンすると、前記左右車軸回転センサー66R,66Lの検出情報に基づいて走行停止状態であることを検出すると、浅扱きスイッチSW2がオンしている間、扱深さが浅扱き側へ変更するように扱深さモータを作動させ(ステップ36,37,38)、且つ、左旋回制御弁68を供給位置68aに切り換え、アンロード弁70を遮断位置70aに切り換える(ステップ39,40)。その結果、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)及び左の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)が遮断状態に操作され、左の旋回クラッチ49に作動油が伝動状態に操作され、機体は緩やかに左に向きを変える。この状態が、前記左旋回状態でかつ前記複数の旋回状態のうちの旋回半径大側の旋回状態に対応するものである。
【0106】
ステップ37において前記左右車軸回転センサー66R,66Lのいずれかが設定値を越えたことを検出して車体が走行状態であることが検出されると、扱深さモータM1の作動は実行せず、左旋回制御弁68を供給位置68aに切り換え、アンロード弁70を遮断位置70aに切り換え(ステップ37,39,40)、上述したように機体は緩やかに左に向きを変えることになる。
【0107】
深扱きスイッチSW1及び浅扱きスイッチSW2が共にオフ状態であれば、アンロード弁70を排出位置70aに切り換え、左旋回制御弁68及び右旋回制御弁67は共に遮断状態に保持する(ステップ41,42,43)。
【0108】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0109】
(1)上記実施形態では、前記代替旋回処理として、走行停止状態であれば、前記深扱きスイッチ及び前記浅扱きスイッチの指令に基づいて、前記扱深さ調整処理を併行して実行する形態で前記旋回操作手段を制御し、且つ、走行状態であれば、前記深扱きスイッチ及び前記浅扱きスイッチの指令に基づいて、前記扱深さ調整処理を実行しない形態で前記旋回操作手段を制御する構成としたが、このような構成に代えて、走行状態であるか停止状態であるかにかかわらず、前記扱深さ調整処理を併行して実行する形態で前記旋回操作手段を制御する構成としてもよい。又、前記代替旋回処理として、メンテナンス作業を行う場所まで車体を移動させることだけを目的として刈取作業を行わない形式のものであれば、走行状態であるか停止状態であるかにかかわらず、前記扱深さ調整処理を実行しない形態で前記旋回操作手段を制御する構成としてもよい。
【0110】
(2)上記実施形態では、前記他被制御対象用指令手段として、他の被制御対象としての扱深さモータを制御する深扱きスイッチSW1と浅扱きスイッチSW2とを用いる構成としたが、このような構成に代えて、例えば、コンバインに備えられる穀粒排出用オーガを縦軸芯周りで右旋回及び左旋回を実行するオーガ旋回処理を指令するために設けられるオーガ右旋回指令スイッチ及びオーガ左旋回指令スイッチを用いるような構成としてもよい。そして、このようにオーガ右旋回指令スイッチ及びオーガ左旋回指令スイッチを他被制御対象用指令手段として利用する際には、前記代替旋回処理として、オーガの旋回操作処理を実行しない形態で前記旋回操作手段を制御する構成とすることが好ましい。又、上記実施形態と同様に、走行停止状態であれば、オーガ右旋回指令スイッチ及びオーガ左旋回指令スイッチの指令に基づいて、オーガの旋回操作処理を実行する形態で前記旋回操作手段を制御し、且つ、走行状態であれば、オーガ右旋回指令スイッチ及びオーガ左旋回指令スイッチの指令に基づいて、オーガの旋回操作処理を実行しない形態で前記旋回操作手段を制御する構成としてもよい。又、前記代替旋回処理として、メンテナンス作業を行う場所まで車体を移動させることを目的として穀粒排出のためのオーガの旋回作業を行わない形式のものであれば、走行状態であるか停止状態であるかにかかわらず、オーガの旋回操作処理を実行しない形態で前記旋回操作手段を制御する構成としてもよい。
【0111】
前記他被制御対象用指令手段としては、車体の左右傾斜角を右傾斜側及び左傾斜側に変更させるための一対の姿勢変更用指令スイッチを用いて左旋回及び右旋回を指令するような構成等、種々の制御用の操作具を用いることができる。
【0112】
前記他被制御対象用指令手段として、左旋回及び右旋回を指令するための一対のスイッチを用いる代わりに、1個のスイッチを用いて旋回を指令する構成とすることもできる。例えば、1個のスイッチが操作されて設定時間以上連続してオン状態に維持されると、左旋回を指令する構成とし、前記スイッチが前記設定時間よりも短い時間の間だけオン状態に切り換えることが間欠的に繰り返し行われると、右旋回を指令する構成とする等、種々の構成を用いることができる。
【0113】
さらに、前記他被制御対象用指令手段としては、スイッチに限らず、例えば、各種の制御用パラメータを変更するために設けられるポテンショメータを利用して代替旋回制御を行う構成とすることもできる。
説明を加えると、ポテンショメータは、操作ツマミを操作することにより設定操作領域内で操作自在に設けられ、且つ、操作ツマミを操作することで出力を変更調整可能なものに構成されるが、前記代替旋回制御において、設定操作領域の中間部に直進指令位置を設定し、設定操作領域のうちの直進指令位置よりも左側部分に左旋回指令領域を設定し、さらに、設定操作領域のうちの直進指令位置よりも右側部分に右旋回指令領域を設定して、直進指令位置にあれば直進状態を指令し、左旋回指令領域に操作されると左旋回を指令し、右旋回指令領域に操作されると右旋回を指令する構成とし、左旋回指令領域及び右旋回指令領域では、直進指令位置から離れる方向に操作されるほど、旋回半径が順次小となるような複数の旋回状態に順次切り換わる構成としてもよい。
【0114】
(3)上記実施形態では、前記深扱きスイッチ及び前記浅扱きスイッチが、車速を変更するための変速操作レバーの握り部に手指にて操作可能な状態で設けられている構成としたが、このような構成に代えて、前記深扱きスイッチ及び前記浅扱きスイッチが、変速操作レバーとは別に離間した状態で操縦部に備えられる構成でもよい。
【0115】
(4)上記実施形態では、変速レバーと車速変速装置とを機械的に連系させて、旋回レバーセンサが異常であることを判別しても、車速は車速変速装置にて変速可能な最大調整範囲の全範囲にわたり調整可能な構成としたが、このような構成に代えて次のように構成してもよい。
【0116】
すなわち、変速レバーの移動操作位置をポテンショメータにて検出して、変速レバーが移動操作位置の中間位置にある中立位置にあれば車速変速装置を中立状態に操作し、変速レバーが中立位置から一方側に移動操作されると前進側に増速され、他方側に移動操作されると後進側に増速されるように、車速変速装置を電気的なアクチュエータにより変速操作する構成とし、旋回レバーセンサが正常動作状態であるときは、変速レバーが前進側の最大操作位置まで移動操作されたときの車速を、機械的に変速操作可能な最大車速とするが、旋回レバーセンサが異常状態であるときは、変速レバーが前進側の最大操作位置まで移動操作されたときの車速を機械的に変速操作可能な最大車速よりも低速側に設定した設定車速に制限する構成とするものでもよい。
【0117】
(5)上記実施形態では、作業車としてコンバインを示したが、本発明はコンバイン以外の農作業車や他の作業車にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】コンバインの前部側面図
【図2】コンバインの伝動構造を示す概略図
【図3】伝動構成を示す図
【図4】油圧回路図
【図5】制御ブロック図
【図6】旋回レバー操作位置と目標速度比率との相関関係を示す図
【図7】旋回レバー操作位置と目標操作圧との相関関係を示す図
【図8】変速レバーの斜視図
【図9】刈取穀稈の搬送状態を示す図
【図10】制御動作のフローチャート
【図11】制御動作のフローチャート
【図12】制御動作のフローチャート
【符号の説明】
【0119】
1 走行装置
2 脱穀部
4 刈取部
57 旋回操作手段
64 制御手段
66R,66L 走行状態検出手段
77 旋回操作具
80 旋回操作位置検出手段
82 報知手段
100 走行駆動手段
M1 扱深さ調節手段
SW1 深扱きスイッチ
SW2 浅扱きスイッチ
S 稈長検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の走行装置の走行状態を直進走行状態、右旋回走行状態及び左旋回走行状態に切り換え自在で、且つ、前記右旋回走行状態及び前記左旋回走行状態の夫々において旋回半径が異なる複数の旋回状態に切り換え自在な走行状態切換手段と、
前記走行状態切換手段を前記直進走行状態、前記右旋回走行状態及び前記左旋回走行状態における前記複数の旋回状態の夫々に切り換える旋回操作手段と、
直進指令位置、その直進指令位置の右側に連なる右旋回指令操作領域及び前記直進指令位置の左側に連なる左旋回指令操作領域を含む所定の操作範囲の全範囲にわたり正逆方向に移動操作自在な旋回操作具と、
前記旋回操作具の操作位置を検出する旋回操作位置検出手段と、
前記旋回操作手段とは異なる他の被制御対象を制御する指令情報を指令する手動操作式の他被制御対象用指令手段と、
前記旋回操作手段及び前記他の被制御対象を制御する制御手段とが設けられ、
前記制御手段が、
前記旋回操作位置検出手段の検出情報に基づいて、前記旋回操作具が前記直進指令位置に位置すると前記直進状態になり、前記旋回操作具が前記左旋回指令操作領域に位置すると前記左旋回状態でかつ前記旋回操作具がその左旋回指令操作領域において前記直進指令位置から離れる側に位置するほど旋回半径が小さい旋回状態になり、及び、前記旋回操作具が前記右旋回指令操作領域に位置すると前記右旋回状態でかつ前記旋回操作具がその右旋回指令操作領域において前記直進指令位置から離れる側に位置するほど旋回半径が小さい旋回状態になるように、前記旋回操作手段を制御する旋回制御、並びに、
前記他被制御対象用指令手段の指令情報に基づいて、前記他の被制御対象を制御する他作業用制御を実行するように構成された作業車であって、
前記制御手段が、
前記旋回操作位置検出手段の検出値が設定適正範囲内である正常動作状態であるか前記適正出力範囲外である異常状態であるかを判別して、前記正常動作状態であると判別した場合には、前記旋回操作位置検出手段の検出値に基づいて前記旋回制御を実行し、且つ、前記異常状態であると判別した場合には、前記旋回操作位置検出手段の指令情報に基づく前記旋回制御の実行を停止して、前記被制御対象用指令手段の指令情報、及び、その指令情報と操作すべき旋回状態との関係を定めた旋回操作関係情報に基づいて、前記旋回操作手段を制御する代替旋回制御を実行するように構成されている作業車。
【請求項2】
前記旋回操作関係情報が、前記被制御対象用指令手段の指令情報として、左旋回に対応する指令情報が指令されると、前記左旋回状態でかつ前記複数の旋回状態のうちの旋回半径大側の旋回状態とし、且つ、前記被制御対象用指令手段の指令情報として、右旋回に対応する指令情報が指令されると、前記右旋回状態でかつ前記複数の旋回状態のうちの旋回半径大側の旋回状態とする関係に定められている請求項1記載の作業車。
【請求項3】
植立穀稈を刈り取る刈取部と、その刈取部にて刈り取られた刈取穀稈を脱穀処理する脱穀部とが備えられ、且つ、
前記他の被制御対象として、前記刈取穀稈の脱穀部における扱深さを変更調整する扱深さ調節手段が備えられ、前記他被制御対象用指令手段として、扱深さを深扱き方向に変更する深扱き側操作指令を指令するオン状態と深扱き側操作指令を指令しないオフ状態とに切り換え自在な深扱きスイッチ、及び、扱深さを浅扱き方向に変更する浅扱き側操作指令を指令するオン状態と浅扱き側操作指令を指令しないオフ状態とに切り換え自在な浅扱きスイッチが備えられ、
前記制御手段が、
前記他の作業用制御として、前記深扱きスイッチの深扱き側操作指令に基づいて扱深さを深扱き方向へ変更しかつ前記浅扱きスイッチの浅扱き側操作指令に基づいて扱深さを浅扱き方向へ変更するように、前記扱深さ調節手段を制御する扱深さ調整処理を実行し、且つ、
前記旋回操作関係情報が、前記深扱きスイッチの深扱き側操作指令及び前記浅扱きスイッチの浅扱き操作指令のうちの一方を、前記左旋回に対応する指令情報とし、他方を、右旋回に対応する指令情報とする関係に定められている請求項2記載の作業車。
【請求項4】
車体が走行状態であるか走行停止状態であるかを検出する走行状態検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、前記代替旋回制御として、
前記走行状態検出手段にて走行停止状態であることが検出されると、前記深扱きスイッチ及び前記浅扱きスイッチの指令に基づいて、前記扱深さ調整処理を併行して実行する形態で前記旋回操作手段を制御し、且つ、前記走行状態検出手段にて車体が走行状態であることが検出されると、前記深扱きスイッチ及び前記浅扱きスイッチの指令に基づいて、前記扱深さ調整処理を実行しない形態で前記旋回操作手段を制御するように構成されている請求項3記載の作業車。
【請求項5】
前記刈取部にて刈り取られた刈取穀稈の稈長を検出する稈長検出手段が備えられ、
前記制御手段が、
前記稈長検出手段にて検出される稈長の検出結果に基づいて前記扱深さが適正扱深さになるように前記扱深さ調節手段を操作する自動扱き深さ制御を実行し、且つ、前記深扱きスイッチの深扱き側操作指令又は前記浅扱きスイッチの浅扱き操作指令が指令されると、前記自動扱深さ制御に優先して、前記扱深さ調整処理を実行するように構成されている請求項3又は4に記載の作業車。
【請求項6】
前記深扱きスイッチ及び前記浅扱きスイッチが、車速を変更するための変速操作レバーの握り部に手指にて操作可能な状態で設けられている請求項3〜5のいずれか1項に記載の作業車。
【請求項7】
前記異常状態であることを報知するための報知手段が設けられ、
前記制御手段が、前記異常状態であることを判別すると前記報知手段を作動させる報知処理を実行するように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−81821(P2010−81821A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252238(P2008−252238)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】