説明

侵入者検知システム

【課題】より広範囲の監視領域において、より高い精度で侵入者を検知する侵入者検知システムを提供する。
【解決手段】侵入者検知システムであって、既存の電磁波の受信電圧変動を検出する第1の電磁波センサ1と、電磁波を送信するとともに、当該電磁波が物体に反射した反射波の受信電圧変動を検出する第2の電磁波センサ2と、を有し、前記第1の電磁波センサ1は、前記既存の電磁波の受信電圧変動が第1の閾値を超えた場合に、前記第2の電磁波センサ2を起動し、前記第2の電磁波センサ2は、前記反射波の受信電圧変動が第2の閾値を超えた場合に、侵入者を検知したと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を用いて侵入者を検知する侵入者検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅やオフィス等の屋内への侵入犯罪が増加している。これに伴って、セキュリティ関連商品・サービスへの注目が高まり、市場が拡大している。なかでも、異常が発生したことを最初に検知するセンサ分野は、セキュリティ関連商品の中で、重要な位置を占めている。
【0003】
現在、セキュリティ用途の侵入者検知機器としては、赤外線センサ、画像センサなどがある。赤外線センサには主に2種類あり、1つは送信機と受信機間で赤外線を送受信し、物体によって赤外線が遮られ送受信ができない場合に異常(侵入者)を検知するものである。もう1つの赤外線センサは、人や動物が発する熱(赤外線)を感知し、異常を検知するものである。
【0004】
画像センサは、カメラが撮像した画像(現画像と前画像)の差分を解析し、その差分値に変化があった場合に異常を検知する。画像センサは、近年の画像処理や画像認識技術の向上により、侵入者を精度良く検出する手段として注目を集めている。
【0005】
また、最近では、電磁波を利用した侵入者検知方法が研究されている。電磁波センサは、センサ自体が発信器を有するアクティブ電磁波センサと、発信器を持たずに既存の電磁波を利用して、当該電磁波の受信電圧の変動から侵入者を検知するパッシブ電磁波センサとがある。アクティブ電磁波センサについては、ドップラー効果による周波数差分または振幅差分から侵入者を検出するセンサや、FM−CW方式を利用したセンサが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−338231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
赤外線センサは、検知感度が高く多用されているが、直進性が強いという特性を有するため、屋内の障害物(壁、柱、など)によって死角が生じる場合がある。このため、複数の赤外線センサを設置しなければならず、コストが高くなってしまう。また、侵入者が発する赤外線(熱)を感知する赤外線センサでは、ペットなどの体温を人の侵入と誤検知してしまう場合がある。
【0007】
また、画像センサは、屋内を撮像することから、一般住居などのプライバシーに関わる場所では適用しにくい。また、画像センサは、赤外線センサと同様に、壁などに遮られた死角については画像を撮像できない。このため、複数の画像センサを設置しなければならず、コストが高くなってしまう。
【0008】
アクティブ電磁波センサは、電磁波を自ら発信するため、機器の消費電力を増大し、周囲の電磁環境に影響を及ぼす可能性がある。また、パッシブ電磁波センサは、侵入者がいない場合であっても、電磁波の発信側(テレビ放送局など)の出力の変化、あるいは屋外の環境の変化(車の通過など)によってアンテナ受信電圧が変動し、侵入者がいると誤検知してしまう場合がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、より広範囲な監視領域での検知が可能で、より信頼性の高い侵入者検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、侵入者検知システムであって、既存の電磁波の受信電圧変動を検出する第1の電磁波センサと、電磁波を送信するとともに、当該電磁波が物体に反射した反射波の受信電圧変動を検出する第2の電磁波センサと、を有し、前記第1の電磁波センサは、前記既存の電磁波の受信電圧変動が第1の閾値を超えた場合に、前記第2の電磁波センサを起動し、前記第2の電磁波センサは、前記反射波の受信電圧変動が第2の閾値を超えた場合に、侵入者を検知したと判定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電磁波を用いることにより、より広範囲な監視領域での検知が可能で、より信頼性の高い侵入者検知システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態が適用された侵入者検知システムの概略構成図である。本実施形態の侵入者検知システムは、監視対象となる室内(屋内)の所定の場所に設置され、室内に侵入した侵入者を電磁波によって検知する。図示する侵入者検知システムは、既存の電磁波を利用して異常を検知するパッシブ電磁波センサ1(第1の電磁波センサ)と、電磁波を自ら送信して侵入者を検知するアクティブ電磁波センサ2(第2の電磁波センサ)と、アクティブ電磁波センサ2が侵入者を検知したと判定した場合に所定の通知処理を行う通知部3とを有する。
【0014】
パッシブ電磁波センサ1は、受信アンテナ101と、周波数選択部102と、検波部103と、信号処理部104と、判定部105と、閾値設定部106とを備える。受信アンテナ101は、テレビやラジオなどの放送波、携帯電話基地局の電波、無線LAN(Local Area Network)など、室内に既に存在する電磁波を受信する。なお、受信アンテナ101のアンテナが指向性を有する場合、受信アンテナ101は、特定の範囲(アンテナ指向性の範囲)のみの電磁波を受信する。この場合、パッシブ電磁波センサ1は、当該範囲を監視する。受信アンテナ101のアンテナが無指向性の場合、受信アンテナ101は、室内の全方向の電磁波を受信する。この場合、パッシブ電磁波センサ1は、室内の全範囲を監視する。
【0015】
周波数選択部102は、周波数を変えながら受信アンテナ101が受信した電磁波の電圧強度を測定し、一定の強度がある周波数を設定する。検波部103は、受信アンテナ101が受信した電磁波を、ダイオードなどの整流作用によって電圧レベル(電圧値)に変換する。
【0016】
信号処理部104は、電圧レベルの時間変動の特徴量を算出する。判定部105は、信号処理部104が算出した特徴量と、閾値設定部106が設定した閾値とを比較し、特徴量が閾値を超える場合は異常が発生したと判定し、アクティブ電磁波センサ2を起動する。 閾値設定部106は、後述する閾値設定処理により、周囲の電波環境に最適な閾値(第1の閾値)を設定し、メモリまたは外部記憶装置などに記憶する。
【0017】
アクティブ電磁波センサ2は、送信アンテナ201aと、受信アンテナ201bと、電源制御部202と、送信波生成部203と、乗算部204と、検波部205と、信号処理部206と、判定部207と、閾値設定部208とを備える。
【0018】
電源制御部202は、パッシブ電磁波センサ1からの信号を受け付け、アクティブ電磁波センサ2のON/OFFの切り替えを制御する。送信アンテナ201aは、送信波生成部203が生成した電磁波を送信する。送信波生成部203は、特定の周波数の送信波を生成する。
【0019】
受信アンテナ201bは、物体から反射された反射波(電磁波)を受信する。なお、受信アンテナ201bのアンテナが指向性を有する場合、受信アンテナ201bは、特定の範囲のみの電磁波を受信する。この場合、アクティブ電磁波センサ2は、当該範囲を監視する。受信アンテナ101のアンテナが無指向性の場合、受信アンテナ101は、室内の全方向の電磁波を受信する。この場合、アクティブ電磁波センサ2は、室内の全範囲を監視する。
【0020】
乗算部204は、送信波生成部203が生成した送信波と、受信アンテナ201bで受信された電磁波とを乗算し、中間周波数を取得する。検波部205は、対応する受信アンテナ201bが受信した電磁波を、ダイオードなどの整流作用によって電圧レベル(電圧値)に変換する。
【0021】
信号処理部206は、電圧レベルの時間変動の特徴量を算出する。判定部207は、信号処理部206が演算した特徴量と、閾値設定部208が設定した閾値とを比較し、特徴量が閾値を超える場合は侵入者を検知したと判定する。閾値設定部208は、後述する閾値設定処理により、周囲の電波環境に最適な閾値(第2の閾値)を設定し、メモリまたは外部記憶装置などに記憶する。
【0022】
なお、侵入者検知システムは、少なくともCPUとメモリとを備えた汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。このコンピュータシステムにおいて、CPUがメモリ上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、侵入者検知システムの各機能が実現される。
【0023】
次に、侵入者検知システムの動作について説明する。
【0024】
図2は、パッシブ電磁波センサ1の動作を示すフローチャートである。なお、パッシブ電磁波センサ1は、常時起動しており、所定のタイミング(時間間隔)で図示する処理を繰り返し行うものとする。
【0025】
なお、侵入者検知システムの起動開始時に、パッシブ電磁波センサ1の周波数選択部102は、受信アンテナ101が受信する既存の電磁波の受信周波数をあらかじめ設定しておくものとする。すなわち、周波数選択部102は、あらかじめ登録された周波数を切り替えながら受信アンテナ101が受信した電磁波の電圧強度を測定し、一定の強度がある周波数を選択する。ある周波数における受信電圧が極端に低い場合や、受信電圧の安定性が悪い場合に、周波数選択部102が十分な受信強度のある周波数を設定することにより、システムの信頼性を維持することができる。設定される周波数には、テレビやラジオなどの放送波、携帯電話基地局の電波、無線LAN(Local Area Network)などの既存の電磁波の周波数が考えられる。
【0026】
検波部103は、受信アンテナ101が受信した電磁波(周波数選択部102が設定した周波数の電磁波)を検波し、ダイオードなどの整流作用によって受信電圧レベル(電圧値)に変換する(S11)。
【0027】
信号処理部104は、変換された受信電圧レベルに基づいて、受信電圧レベルの時間変動の特徴量を算出する(S12)。特徴量を算出する方法としては、例えば、受信電圧レベルの時間変化率の微分値(絶対値)を用いることができる。具体的には、検波部103がS11で検波した時刻をtとし、検波部103は所定の時間p毎に検波するものとすると、前回検波した時刻はt−pとなる。そして、検波した時点の時刻tにおける電圧レベルがV1で、前回の時刻t−pにおける電圧レベルがV2であるものとする。この場合、信号処理部104は、時刻tにおける電圧レベルV1と、時刻t−pにおける電圧レベルV2から時間微分値の絶対値を算出する。また、特徴量の算出に、フーリエ変換、ウェーブレット変換など波形解析に用いられる手法を適用することとしてもよい。
【0028】
そして、判定部105は、S12で算出した特徴量と、閾値設定部106が事前に設定した閾値とを比較し、特徴量が閾値を超えるか否かを判別する(S13)。特徴量が閾値を超えない場合(S13:NO)、S15に進む。特徴量が閾値を超える場合(S13:YES)、判定部105は、異常が発生したと判定し、アクティブ電磁波センサ2の電源制御部202に異常信号を出力し、アクティブ電磁波センサ2の電源をONにする(S14)。
【0029】
そして、所定の時間が経過した後(S15:YES)、S11に戻り、検波部103は、受信アンテナ101が受信した電磁波を検波し、電圧レベルに変換する。
【0030】
以上説明したように、パッシブ電磁波センサ1は、常時、既存の電磁波の受信電圧レベルを測定し、受信電圧レベルの時間変動の特徴量が閾値を超えるとアクティブ電磁波センサ2を起動させる。
【0031】
図3は、アクティブ電磁波センサ2の動作を示すフローチャートである。
【0032】
なお、アクティブ電磁波センサ2は、通常時においては電源OFFの停止状態であって、パッシブ電磁波センサ1からの異常信号を受信することにより、電源ONとなり、起動される。図示するフローチャートは、起動状態のアクティブ電磁波センサ2の処理である。
【0033】
まず、アクティブ電磁波センサ2の電源制御部202は、パッシブ電磁波センサ1から異常信号を受信し、当該センサの電源をONにする(S21)。これにより、送信波生成部203は、発振器(不図示)を用いて送信波を生成し、送信アンテナ201aから電磁波を送信する。送信アンテナ201aから送信された電磁波が物体(壁や家具、人など)に当たると、反射波が生じる。受信アンテナ201bは、送信アンテナ201aが送信した電磁波の反射波を受信する。
【0034】
そして、乗算部204は、受信アンテナ201bで受信した電磁波(反射波)と、送信波生成部203が生成した送信波と混合し、中間周波数に変換する(S22)。一般的に、静止物体からの反射波は、送信波に対して周波数が変化しないため中間周波数は0となる。一方、移動する物体からの反射波は、ドップラー効果により、送信波の周波数とは異なった周波数となるため、送信波と反射波の周波数の差分が中間周波数として検出される。 そして、検波部205は、乗算部204が変換した中間周波数を検波し、中間周波数を電圧レベル(電圧値)に変換する(S22)。
【0035】
そして、信号処理部206は、変換された電圧レベルの時間変動の特徴量を算出する(S23)。なお、特徴量を算出する方法については、パッシブ電磁波センサ1の特徴量の算出(図2:S12)と同様である。
【0036】
そして、判定部207は、S23で算出した特徴量と、閾値設定部208が事前に設定した閾値(第2の閾値)とを比較し、特徴量が閾値を超えるか否かを判別する(S24)。特徴量が閾値を超えない場合(S24:NO)、S26に進む。特徴量が閾値を超える場合(S24:YES)、判定部207は、侵入者を検知したと判定し、通知部3に検知信号を送出する。
【0037】
通知部3は、判定部207から検知信号を受け付けると、侵入者を検出したことこと通知する通知処理を行う(S25)。通知処理としては、例えば、通知部3が、警告音(アラーム)を出力することが考えられる。
【0038】
また、通知部3がインターネットなどのネットワーク4に接続可能な通信装置を備えている場合、通知部3は、検知信号を受け付けると、ネットワーク4を介して接続された警備会社どのシステム(不図示)に、異常が発生したことを通知することとしてもよい。また、通知部3は、検知信号を受け付けると、ネットワーク4を介してユーザの携帯電話(または会社の電話、パソコン)に発信し、または異常を通知するメールを送信することとしてもよい。この場合、通知部3には、あらかじめ通知先の電話番号やメールアドレスなどが設定されているものとする。
【0039】
また、通知部3が宅内の電子機器5(照明器具、テレビなどの家電製品、パソコンなど)と接続可能なポート(端子)を備えている場合、通知部3は、電子機器5を動作させる操作信号を送信する。例えば、電子機器5がテレビの場合、操作信号を受信したテレビは、画面に所定の警告画面を表示し、スピーカーからアラームを出力する。また、電子機器5がWEBカメラの場合、操作信号を受信したWEBカメラは、室内の状況の録画を開始する。また、電子機器5が照明器具の場合、照明が点灯される。通知部3を宅内の電子機器5と接続することにより、侵入者を威嚇して退散させ、侵入時の被害を抑えることができる。
【0040】
そして、電源制御部202は、S21でアクティブ電磁波センサ2の電源をONにしてからの経過時間が、あらかじめ定めた時間を越えたか否かを判別する(S26)。なお、電源制御部202は、タイマーなどにより、電源ON後の経過時間を監視しているものとする。経過時間があらかじめ定めた時間を越えない場合(S26:NO)、S22に戻り、以降の処理を繰り返し行う。一方、経過時間があらかじめ定めた時間を越えた場合(S26:YES)、電源制御部202は、アクティブ電磁波センサ2の電源をOFFにする(S27)。
【0041】
次に、パッシブ電磁波センサ1の閾値設定部106、およびアクティブ電磁波センサ2の閾値設定部208の処理について説明する。なお、ユーザは、侵入者検知システムの使用を開始する前に、事前に以下の処理を行ってそれぞれの閾値の設定をしておくものとする。
【0042】
まず、ユーザは、監視対象の室内(屋内)の任意の場所に、侵入者検知システムを設置する。そして、ユーザは、侵入者検知システムの操作ボタンなどの入力装置(不図示)に閾値設定指示(閾値設定モード)を入力する。閾値設定部106、208は、ユーザの閾値設定指示を受け付けると、ユーザに対して一定時間の静止および一定時間の移動を繰り返し行うよう指示する。
【0043】
例えば、閾値設定部106、208は、スピーカーやライトなどの出力装置(不図示)から、断続的に音や光を出力することにより、ユーザに指示することが考えられる。すなわち、ユーザは、音が鳴っている間や点灯時は室内を動き回り、音が鳴り止んだら時や消灯時には静止する。なお、ユーザは、閾値設定部106から移動指示が出された場合は、監視対象の室内をくまなく動き回るようにする。
【0044】
また、パッシブ電磁波センサ1およびアクティブ電磁波センサ2は、ユーザの閾値設定指示を受け付けると、図2および図3の処理を行い、ユーザが移動した際の電磁波の乱れ(電圧レベル、特徴量)を実測する。
【0045】
そして、閾値設定部106、208は、この実測結果に基づいて閾値を設定する。例えば、閾値設定部106、208各々は、移動時における特徴量の最大値を特定する。そして、閾値設定部106、208は、それぞれ特定した最大値より低い値(最大値のn%)を閾値に設定する。閾値設定部106、208は、侵入者検知システムが有するメモリまたは外部記憶装置に、設定した閾値を記憶する。なお、ユーザは、侵入者の検知感度を調整するために、閾値設定部が設定した閾値を変更できるものとする。
【0046】
以上説明した本実施形態の侵入者検知システムは、通常時においてはパッシブ電磁波センサ1のみを起動し、パッシブ電磁波センサ1が異常を検知するとアクティブ電磁波センサ2を起動する。すなわち、本実施形態の侵入者検知システムでは、通常時は電磁波を送信しないため、常時アクティブ電磁波センサ2を起動する場合と比べて、機器の消費電力を低減することができる。
【0047】
また、パッシブ電磁波センサ1は、室内の既存の電磁波の乱反射を利用して初期の異常を検知する。すなわち、パッシブ電磁波センサ1は、室外の環境の変化には反応せず、室内の環境の変化のみを検出できるため、初期の異常を検知する手段として、高い信頼性を有する。パッシブ電磁波センサ1は、侵入者を検知するための電磁波を発信しないため、通常時においては、ユーザは不要な電磁波を浴びることがなく、周囲の電波環境への影響も小さい。
【0048】
また、本実施形態では、パッシブ電磁波センサ1が初期の異常を検知し、その後アクティブ電磁波センサ2が電磁波を送受信して最終的な侵入者の有無を判別する。アクティブ電磁波センサ2は、電磁波パッシブ電磁波センサ1よりもセンシングの感度が高いため、最終的な侵入の判定に適している。そのため、初期検知をパッシブ電磁波センサ1が行い、最終判定をアクティブ電磁波センサ2が行う本実施形態では、侵入者の誤検知を低減し、侵入検知に対する信頼性および精度をより向上することができる。
【0049】
また、本実施形態の通知部3は、アクティブ電磁波センサ2が侵入者を検知すると、ネットワークを介して警備会社やユーザに通知し、また、屋内の電子機器5を起動して侵入者を威嚇する。これにより、侵入者が屋内に侵入した場合、迅速な対応をとることができ、被害の拡大を抑えることができる。
【0050】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
【0051】
図3は、本発明の第2の実施形態が適用された侵入者検知システムの概略構成図である。本実施形態の侵入者検知システムは、放送波や携帯電話などの既存の電磁波自身が、電磁環境の変化などにより変動する場合を考慮したものである。
【0052】
図示する侵入者検知システムは、周波数選択部102の替わりに周波数切替部107をパッシブ電磁波センサ1が有する点において、第1の実施形態の侵入者検知システムと異なる。その他は、第1の実施形態の侵入者検知システムと同様である。周波数切替部107は、所定の時間内(微小時間内)に受信アンテナ101の受信周波数を切り替える。これにより、受信アンテナ101は、所定の時間内に時分割で複数の周波数の電磁波を受信することができる。
【0053】
次に、本実施形態の侵入者検知システムの動作について説明する。
【0054】
本実施形態のパッシブ電磁波センサ1の検波部103は、周波数切替部107が受信周波数を切り替えることにより、受信アンテナ101が受信した複数の周波数の電磁波各々を、電圧レベルに変換する。なお、受信周波数の数がp個の場合、検波部103は、p個の電磁波をp個の電圧レベルに変換する。
【0055】
そして、信号処理部104は、変換された複数の受信電圧レベル各々に基づいて、受信電圧レベルの時間変動の特徴量をそれぞれ算出する。なお、特徴量を算出する方法については、第1の実施形態と同様である(図2:S12)。そして、判定部105は、複数の周波数の特徴量各々について、対応するそれぞれの事前に定めた閾値と比較し、閾値を越えるか否かを判別する。そして、全ての周波数の特徴量がそれぞれの閾値を超える場合、判定部105は、異常が発生したと判定し、アクティブ電磁波センサ2の電源制御部202に異常信号を出力し、アクティブ電磁波センサ2の電源をONにする。アクティブ電磁波センサ2の処理は、第1の実施形態と同様である。
【0056】
第2の実施形態のパッシブ電磁波センサ1では、複数の周波数の受信電圧レベルの時間変動を用いて異常を検知する。すなわち、第2の実施形態では、全ての周波数の受信電圧レベルの特徴量が、同時にそれぞれの閾値を超えた場合に、異常を検知する。これにより、侵入者検知システムの設置環境により、特定の周波数の受信電圧レベルが電磁波自身の変動により過剰に変動する場合であっても、誤検知を低減することができる。すなわち、受信電圧レベルの周波数依存性を低減し、異常検出の精度を高めることができる。
【0057】
また、第2の実施形態のパッシブ電磁波センサ1では、外部の電磁環境の乱れにより、特定の周波数の電磁波強度が弱く、異常の検知に十分な受信電圧レベルを得られない場合であっても、他の周波数の電磁波の受信電圧レベルを測定することで、異常を検知することができる。
【0058】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。
【0059】
図5は、本発明の第3の実施形態が適用された侵入者検知システムの概略構成図である。本実施形態は、既存の電磁波の周波数や、受信アンテナの設置場所などにより、侵入者による受信電圧レベルの変動が小さく、異常の検知に充分な受信電圧レベルを得られない場合を考慮したものである。
【0060】
図示する侵入者検知システムは、パッシブ電磁波センサ1が複数の受信アンテナ101a、101bを備え、また電力合成部108を備える点において、第1の実施形態の侵入者検知システムと異なり、その他は第1の実施形態の侵入者検知センサと同様である。なお、本実施形態では、パッシブ電磁波センサ1が2本の受信アンテナ101a、101bを備えるが、受信アンテナは3本以上であってもよい。
【0061】
次に、本実施形態の侵入者検知システムの動作について説明する。
【0062】
電力合成部108は、複数の受信アンテナ101a、101bが受信した電磁波の電力を合成する。なお、受信アンテナが受信する電磁波は、第1の実施形態と同様に、周波数選択部102により選択された周波数の電磁波である。そして、検波部103は、電力合成後の電磁波を電圧レベルに変換する。そして、侵入者検知システムは、第1の実施形態と同様の処理を行う(図2:S12〜S15)。ここで、複数の受信アンテナを用いて1つの周波数の電磁波を受信した場合、各受信アンテナで受信される電磁波に位相差が生じる。例えば、受信アンテナが振幅の等しい電磁波を受信した場合、電磁波の位相が180°反転していれば電力合成後の電圧レベルは0となり、電磁波の位相が同じであれば電力合成後の電圧レベルは2倍に増幅される。
【0063】
第3の実施形態では、各受信アンテナのアンテナ間距離によって生じる受信電磁波の位相差を利用することで、受信電圧レベルの反動幅を拡大することができる。これにより、侵入者検知システムの検知精度を向上させるとともに、周波数や受信アンテナの設置場所に起因する検知感度の低下を防止することができる。
【0064】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。
【0065】
図6は、本発明の第4の実施形態が適用された侵入者検知システムの概略構成図である。 図示する侵入者検知システムは、アクティブ電磁波センサ2が指向性を有する複数の受信アンテナ201b〜201eを備える点において、第3の実施形態の侵入者検知システム(図5参照)と異なり、その他は第3の実施形態の侵入者検知センサと同様である。
【0066】
アクティブ電磁波センサ2の複数の受信アンテナ201b〜201eは、それぞれが指向性を有する。そして、受信アンテナ201b〜201eは、各々の指向性で水平方向360°をカバーするように配置される。すなわち、1つの受信アンテナの指向性(半値角)が90°であれば、360°をカバーするのに必要な受信アンテナの本数は、4本となる。
【0067】
図7は、本実施形態の受信アンテナの指向性を、模式的に示したものである。本実施形態では、各受信アンテナ201b〜201eの指向性(半値角)が90°であるものを4本用いた場合を例に説明する。図示する例では、受信アンテナ201bの受信範囲を201b´、受信アンテナ201cの受信範囲を201c´、受信アンテナ201dの受信範囲を201d´受信アンテナ201eの受信範囲を201e´で示している。
【0068】
次に、本実施形態の侵入者検知システムの動作について説明する。
【0069】
まず、パッシブ電磁波センサ1は、第3の実施形態と同様に、受信電圧レベルの時間変動の特徴量を用いて異常を検知し、アクティブ電磁波センサ2を起動する。
【0070】
そして、アクティブ電磁波センサ2の各受信アンテナ各々201b〜201eは、それぞれの指向性の範囲の電磁波を受信する。そして、乗算部204は、受信アンテナが受信した電磁波各々について、送信波生成部203が生成した送信波と混合し、中間周波数に変換する。そして、検波部205は、乗算部204が変換した複数の中間周波数をそれぞれ検波し、複数の中間周波数を電圧レベル(電圧値)に変換する。
【0071】
そして、信号処理部206は、変換された複数の電圧レベルの時間変動の特徴量を算出する。なお、特徴量を算出する方法については、例えば、電圧レベルの時間変化率の絶対値を算出し、さらにその絶対値を所定の時間幅で加算する方法などが考えられる。
【0072】
図8は、侵入者が、図7に示す矢印5のように各受信アンテナ201b〜201eの周りを移動した場合の、前述の算出方法で算出した特徴量をグラフ化したものである。図示するように、侵入者の存在領域に応じて、各受信アンテナが受信した電磁波の特徴量が変化している。
【0073】
そして、判定部207は、算出した複数の特徴量と、閾値設定部208が事前に設定した閾値とを比較し、特徴量が閾値を超えるか否かを判別する。判定部207は、少なくとも1つの特徴量が閾値を超える場合、侵入者を検知したと判定する。そして、判定部207は、検知信号とともに、閾値を超えた受信アンテナの情報(例えば、受信アンテナの指向性範囲、場所情報など)を、通知部3に送出する。
【0074】
第4の実施形態では、アクティブ電磁波センサ2が備える4本の受信アンテナに対して、あらかじめ位置情報と対応した番号を割り振っておけば、信号処理部206で算出された特徴量から、異常が検出された受信アンテナを特定し、当該受信アンテナの指向性範囲内に侵入者が存在することを推定することができる。したがって、通知部3が受信アンテナの情報をネットワークを介して警備会社やユーザに通知することで、室内の侵入状況をより詳細に把握することができる。
【0075】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について説明する。
【0076】
本実施形態のアクティブ電磁波センサ2は、電子制御により指向性を変えることができる複数の受信アンテナを用いて、室内の侵入状況を把握する。
【0077】
図9は、本発明の第5の実施形態が適用された侵入者検知システムの概略構成図である。図示する侵入者検知システムは、アクティブ電磁波センサ2が電子制御により指向性を変えることができる複数の受信アンテナ201b、201cを備える点、および、位相制御部209を備える点において、第3の実施形態の侵入者検知システム(図5参照)と異なり、その他は第3の実施形態の侵入者検知センサと同様である。
【0078】
本実施形態の受信アンテナ201b、201cは、位相制御部209が各アンテナ素子に対する移相量(位相の変化量)を設定することにより、特定の方向から来る電磁波のみを受信することができる。すなわち、本実施形態の受信アンテナ201b、201cは、所定の時間内(微小時間内)に各アンテナ素子に対する移相量を変化させることにより、ビームスキャンのように常時指向性を変化させ、所定の時間内に時分割で複数の指向性範囲の電磁波を受信することができる。なお、本実施形態の全ての受信アンテナ201b、201cは、受信面を同一方向に向けているものとする。
【0079】
次に、本実施形態の侵入者検知システムの動作について説明する。
【0080】
まず、パッシブ電磁波センサ1は、第3の実施形態と同様に、受信電圧レベルの時間変動の特徴量を用いて異常を検知し、アクティブ電磁波センサ2を起動する。
【0081】
これにより、アクティブ電磁波センサ2の送信波生成部203は、送信波を生成し、無指向性の送信アンテナ201aから電磁波を送信する。位相制御部209は、受信アンテナが201b、201cが送信波の物体からの反射波を受信する際に、受信アンテナの位相を制御する。これにより、受信アンテナは、複数の特定方向の電磁波を受信する。
【0082】
そして、乗算部204は、受信アンテナが受信した複数の特定方向の電磁波各々について、送信波生成部203が生成した送信波と混合し、中間周波数に変換する。そして、検波部205は、乗算部204が変換した複数の中間周波数をそれぞれ検波し、複数の中間周波数を電圧レベル(電圧値)に変換する。
【0083】
そして、信号処理部206は、変換された複数の電圧レベルの時間変動の特徴量を算出する。なお、特徴量を算出する方法については、例えば、電圧レベルの時間変化率の絶対値を算出し、さらにその絶対値を所定の時間幅で加算する方法などが考えられる。また、信号処理部206は、算出した特徴量各々に対する位相制御情報を、位相制御部209から取得し、当該位相制御情報からデータの取得された室内での方向を推定する。
【0084】
そして、判定部207は、算出した複数の特徴量と、閾値設定部208が事前に設定した閾値とを比較し、特徴量が閾値を超えるか否かを判別する。判定部207は、少なくとも1つの特定方向の特徴量が閾値を超える場合、侵入者を検知したと判定する。そして、判定部207は、検知信号とともに、閾値を超えた受信アンテナの情報(位相制御情報など)を、通知部3に送出する。
【0085】
第5の実施形態では、受信アンテナをアレイ化し、給電の位相を制御することで、特定の方向から到来する反射波のみを検出することができる。また、本実施形態では、アンテナを同一面内に設置できるため、第4の実施形態と比較して、アクティブ電磁波センサ2の小型化が可能となる。
【0086】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。例えば、上記実施形態のアクティブ電磁波センサ2は、所定の時間が経過すると、電源をOFFし、停止状態になるものとした。しかしながら、パッシブ電磁波センサ1が、所定のタイミングでアクティブ電磁波センサ2に電源OFF信号を送信し、アクティブ電磁波センサ2を停止させることとしてもよい。
【0087】
また、本発明は、第1の実施形態から第5の実施形態を、任意に組み合わせた侵入者検知システムとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る侵入者検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】パッシブ電磁波センサの動作を示すフローチャートである。
【図3】アクティブ電磁波センサの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る侵入者検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る侵入者検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る侵入者検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図7】第4の実施形態の受信アンテナの指向性を模式的に示したものである。
【図8】第4の実施形態の受信電圧の変動例を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る侵入者検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0089】
1 パッシブ電磁波センサ
101 受信アンテナ
102 周波数選択部
103 検波部
104 信号処理部
105 判定部
106 閾値設定部
2 アクティブ電磁波センサ
201a 送信アンテナ
201b 受信アンテナ
203 送信波生成部
204 乗算部
205 検波部
206 信号処理部
207 判定部
208 閾値設定部
3 通知部
4 ネットワーク
5 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
侵入者検知システムであって、
既存の電磁波の受信電圧変動を検出する第1の電磁波センサと、
電磁波を送信するとともに、当該電磁波が物体に反射した反射波の受信電圧変動を検出する第2の電磁波センサと、を有し、
前記第1の電磁波センサは、前記既存の電磁波の受信電圧変動が第1の閾値を超えた場合に、前記第2の電磁波センサを起動し、
前記第2の電磁波センサは、前記反射波の受信電圧変動が第2の閾値を超えた場合に、侵入者を検知したと判定すること
を特徴とする侵入者検知システム。
【請求項2】
請求項1記載の侵入者検知システムであって、
前記第1の電磁波センサは、前記既存の電磁波の受信電圧の時間変化の特徴量を算出し、当該特徴量が第1の閾値を超えた場合に、前記第2の電磁波センサを起動し、
前記第2の電磁波センサは、前記反射波の受信電圧の時間変化の特徴量を算出し、当該特徴量が第2の閾値を超えた場合に、侵入者を検知したと判定すること
を特徴とする侵入者検知システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の侵入者検知システムであって、
前記第1の電磁波センサは、既存の複数周波数の電磁波の受信電圧変動をそれぞれ検出し、全ての周波数の受信電圧変動が第1の閾値を超えた場合に、前記第2の電磁波センサを起動すること
を特徴とする侵入者検知システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の侵入者検知システムであって、
前記第1の電磁波センサは、複数の受信アンテナが受信した既存の電磁波の電力を合成し、電力合成後の電磁波の受信電圧変動を検出すること
を特徴とする侵入者検知システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の侵入者検知システムであって、
前記第2の電磁波センサは、
指向性を有する複数の受信アンテナを、全方向の電磁波を受信できるように配置し、
前記受信アンテナ毎に前記反射波の受信電圧の時間変化の特徴量を算出し、少なくとも1つの受信アンテナの特徴量が第2の閾値を超えた場合に、侵入者を検知したと判定すること
を特徴とする侵入者検知システム。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の侵入者検知システムであって、
前記第2の電磁波センサは、指向性を有する複数の受信アンテナを備え、当該受信アンテナ各々のアンテナ素子に対する信号の位相を制御すること
を特徴とする侵入者検知システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の侵入者検知システムであって、
前記第2の電磁波センサが侵入者を検知したと判定した場合に、ネットワークを介して外部に通知する通知手段を、さらに有すること
を特徴とする侵入者検知システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の侵入者検知システムであって、
前記第2の電磁波センサが侵入者を検知したと判定した場合に、当該侵入者検知システムに接続された電子機器を作動させる通知手段を、さらに有すること
を特徴とする侵入者検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−140223(P2008−140223A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326782(P2006−326782)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】