説明

便座装置

【課題】便座ヒータ駆動部および便座ヒータの故障を検知して、故障の表示と機能の停止を確実に行い安全性の高い便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便座400と、便座400の温度を測定する温度測定部401と、発熱部450と、発熱部450を駆動するヒータ駆動部402と、ヒータ駆動部402の駆動状態を検知するヒータ駆動検知部407と、交流電圧を検知する交流電圧検知部513と、ヒータ駆動部を制御する制御部90を備え、制御部90は前記ヒータ駆動検知部407の出力と交流電圧検知部513の出力からヒータ駆動部402の異常および発熱部450の断線を検知することにより、発熱部450とヒータ駆動部402に異常が発生した場合、制御部90は異常を検知し、発熱部450を適切に制御し、安全を確保することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置の発熱部の異常検知に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の便座装置および衛生洗浄装置においては、使用者が冬場等気温が低い場合においても不快を感じることなく便座に着座することができるように、便座ヒータへの供給電力を入り切りするトライアックと、交流電圧のゼロ点を検出するゼロクロス検出回路と、ゼロクロス検出回路の出力によってトライアックを制御して便座ヒータを駆動するヒータ制御手段とを備えている。
【0003】
上記構成において、電源回路から電圧が印加されることにより便座ヒータが発熱する。そして、その熱が便座ケーシングに伝達される。それにより、便座ケーシングの温度が上昇し、使用者は快適に便座に着座することができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−320608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来の便座装置においては、トライアックが故障し場合、便座ヒータへの電力供給が切ることができなくなり、便座温度が過昇する恐れがあった。また便座ヒータが断線し、ヒータ線の断線部が便座の金属部に接触した場合、便座に電流が流れことにより使用者が不快を感じたり、身体へ損傷を受ける恐れもある。
【0005】
本発明の目的は、トライアックの故障および便座ヒータの断線を検知して、便座装置の機能を安全に停止する便座装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、便座と、便座の温度を測定する温度測定部と、発熱部と、発熱部を駆動するヒータ駆動部と、ヒータ駆動部の駆動状態を検知するヒータ駆動検知部と、交流電圧を検知する交流電圧検知部と、ヒータ駆動部を制御する制御部を備え、制御部は前記ヒータ駆動検知部の出力と交流電圧検知部の出力からヒータ駆動部の異常および発熱部の断線を検知することとしたものである。
【0007】
これによって、発熱部とヒータ駆動部に異常が発生した場合、制御部は異常を検知し、発熱部を適切に制御し、安全を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の便座装置は発熱部に係わる異常を検知することにより安全性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、金属材料を含む着座面を有する便座と、前記便座の温度を測定する温度測定部と、前記便座の前記着座面の裏面側に設けられる発熱部と、前記発熱部を駆動するヒータ駆動部と、前記ヒータ駆動部の駆動状態を検知するヒータ駆動検知部と、交流電圧を検知する交流電圧検知部と、前記ヒータ駆動部を制御する制御部を備え、前記制御部は前記ヒータ駆動検知部の出力と、前記前記交流電圧検知部の出力から、ヒータ駆動部の異常および発熱部の断線を検知することにより、発熱部とヒータ駆動部に異常が発生した場合、制御部は異常を検知して発熱部を適切に制御することが可能となり、便座装置の安全
を確保することが可能となる。
【0010】
第2の発明は、特に第1の発明において、制御部からの出力により異常表示を行う表示部を備えたことにより、発熱部とヒータ駆動部に異常が発生した場合、表示部により異常が報知されるため、使用者は便座装置の異常を認知することが可能となり、より安全性を向上するとともに、便座装置の点検修理および交換等の対応を適切に行うことができる。
【0011】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、ヒータ駆動部の異常および発熱部の断線検知時に制御部の出力により、発熱部へ供給される交流電源の両極を遮断する遮断部を備えたことにより、異常が発生した場合に発熱部の通電を遮断することにより便座が異常温度まで上昇することがなく、使用者が損傷を置けることがない。また、両極を遮断することで、発熱部が断線し、断線部分が便座の金属部に接触して絶縁が破壊された場合も、便座の金属部への漏電は完全に遮断され安全性を確保することができる。
【0012】
第4の発明は、特に第3の発明において、温度測定部の出力から便座の過昇を検知する過昇検知部を備え、前記過昇検知部が過昇を検知した場合は、制御部を介さずに遮断部を遮断することにより、ヒータ駆動部が故障し、かつ制御部も故障した場合であっても、発熱部への通電は遮断するため、安全性をより向上することができる。また、過昇検知部のための専用の遮断部を別に備える必要がなく、低コストで安全性の向上を実現できる。
【0013】
第5の発明は、特に第3または4の発明において、発熱部の絶縁不良を検知する絶縁破壊検知部を備え、前記絶縁破壊検知部が絶縁不良を検知した場合、制御部を介さず遮断部を遮断することにより、発熱部の断線等により、発熱部と便座の金属部が接触して絶縁不良が発生した場合であっても、発熱部への通電は遮断するため、安全性をより向上することができる。また、過昇検知部のための専用の遮断部を別に備える必要がなく、低コストで安全性の向上を実現できる。
【0014】
第6の発明は、特に第3〜5のいずれか1つの発明において、遮断部の接点は、便座装置が漏電した場合に作動する漏電遮断回路の接点を共用する構成とすることにより、専用の接点を別に備える必要がなく、低コストで安全性の向上を実現できる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
<1>便座装置の構成
図1は、便座装置100の構成を示す模式図である。便座装置100は、本体部200、便座部400を備える。
【0017】
図1に示すように、本体部200は、例えばマイクロコンピュータからなる制御部90、便座の温度を測定する温度測定部401、便座の過昇を検知する過昇検知部405、便座ヒータを駆動するヒータ駆動部402、ヒータ駆動部の状態を検知するヒータ駆動検知部407、便座の絶縁破壊を検知する絶縁破壊検知部403、過昇検知部405および絶縁破壊検知部403の検知信号によりヒータ駆動部402への通電を遮断する遮断回路406と両切り接点511を有するリレーなどからなる遮断部、設定や異常を表示する表示部514、使用者が便座の設定等を変更時に操作する操作部515、制御部等の回路のために、交流電源から直流電圧を生成する絶縁型の直流電源部408、便座装置の漏電を検出する零相変流器(以下ZCTと称する)409とZCTの出力に応じて漏電を検知する漏電検知部510の出力によりリレーなどからなる両切り接点511によりヒータ駆動部402への通電を遮断する漏電遮断回路512、両切り接点511の便座ヒータ450側
に配置された交流電圧を検出する交流電圧検出回路A513、両切り接点511の商用電源404側に配置された交流電圧検出回路B514を含む。
【0018】
また、便座部400は発熱部である便座ヒータ450およびサーミスタ401aを備える。温度測定部401は、サーミスタ401aから出力される温度信号に基づいて、便座温度を電圧へ変換し制御部90へ入力する。
【0019】
制御部90は、あらかじめ設定され記憶した便座設定温度や、操作部516からの入力に応じて、通電率切替信号をヒータ駆動部402へ入力したり、便座設定温度等を表示部515に表示したりする。ヒータ駆動部402は通電率切替信号に応じて、商用電源404からの電流を制御して、便座ヒータ450への通電を制御する。
【0020】
図2は便座400部の分解斜視図である。
【0021】
図2に示すように、便座部400は、主としてアルミニウムにより形成された略楕円形状の上部便座ケーシング410の内面側に、略馬蹄形状の便座ヒータ450を貼り付け、さらにサーミスタ401aを貼り付けた構造であり、合成樹脂により形成された略楕円形状の下部便座ケーシング420を備える。
【0022】
図3は、便座ケーシング410に便座ヒータ450を貼り付け内側から見た図であり、図4は、図3のA-A’での断面図である図5はB-B’での断面図である。
【0023】
以下、着座した使用者から見て前方側を便座部400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座部400の後部とする。
【0024】
図2および図3に示すように、便座ヒータ450は、前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成される。なお、便座ヒータ450は、略楕円形状を有してもよい。便座ヒータ450は、例えばアルミニウムからなる金属箔451、453の間に線状ヒータ460を挟み込んだ構成である。
【0025】
線状ヒータ460は、上部便座ケーシング410の形状に合わせて蛇行形状に配設される。線状ヒータ460の間隔は5mm程度である。
【0026】
線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、便座部400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。
【0027】
さらに、図3に示すように、蛇行形状の線状ヒータ460の経路中に熱応力緩衝部となる複数の折曲部が設けられる。
【0028】
さらに、図4に示すように、上部便座ケーシング410は、例えば厚さ1mmのアルミニウム板413により形成される。アルミニウム板413の上面には、表面化粧層411が形成される。また、アルミニウム板413の下面には、塗装膜414が形成される。塗装膜414は、例えば膜厚40μmおよび150℃の耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜であり、電気用品技術基準である1000Vで1分間以上の電気絶縁耐圧性能を十分確保することができる。
【0029】
なお、アルミニウム板413の代わりに、銅板、ステンレス板、アルミニウムめっき鋼板および亜鉛アルミニウムめっき鋼板のうちいずれかまたは複数を用いてもよい。
【0030】
塗装膜414の下面に粘着層452aを介して例えばアルミニウムからなる金属箔45
1が貼着される。金属箔451の膜厚は、例えば50μmである。金属箔451はPET層495a25μm、アルミ箔層451a25μmからなりPET層451aで強度を増す構造としている。
【0031】
線状ヒータ460は、断面円形の発熱線463a、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462により構成される。断面円形の発熱線463aの外周面がエナメル層463bおよび絶縁被覆層462で順に被覆される。発熱線463aおよびエナメル層463bによりエナメル線463が構成される。
【0032】
発熱線463aは、例えば0.16〜0.25mmの直径を有し、銅または銅合金からなる。本例では、発熱線463aとして、直径0.176mmの4%Ag−Cu合金からなる高抗張力型ヒータ線が用いられる。抵抗値は0.833Ω/mである。
【0033】
エナメル層463bは、例えば180〜300℃の耐熱性を有するポリエステルイミド(PEI)からなる。エナメル層463bの膜厚は、20μm以下であり、本例では12〜13μmである。また、エナメル層463bの材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0034】
絶縁被覆層462は、例えば260℃の耐熱性を有するパーフロロアルコキシ混合物(以下PFAと称する)等のフッ素樹脂からなる。絶縁被覆層462の厚みは、例えば0.1〜0.15mmである。PFAからなる絶縁被覆層462の形成は、押出し加工により行うことができる。 なお、絶縁被覆層462の材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0035】
線状ヒータ460の外径は、例えば0.46〜0.50mmである。線状ヒータ460の電力密度は、例えば0.95W/cmである。
【0036】
線状ヒータ460は、粘着層452bおよび例えばアルミニウムからなる金属箔453で覆うように金属箔451に取り付けられる。金属箔453の膜厚は、例えば50μmである。金属箔453はPET層495b25μm、453aアルミ箔層25μmからなりPET層495bで強度を増す構造としている。
【0037】
また、金属箔453と金属箔451を貼り付けた端面全周をコーティング材490でコーティングすることで、便座の内面側はPET層495bとコーティング材で充電部を覆うことができ、便座内部に水が入った場合でも、漏電等が起こらない構造となる。
【0038】
図5において絶縁破壊検知リード線476の端には接続端子477が接続され、金属箔451と453の間に挟まれて固定されている。接続端子477は金属製で451のアルミ層に接触しており導通がある。
【0039】
<2>ヒータ駆動検知部の構成および異常検知方法
〔2−1〕便座ヒータの制御方法
図6は図1の便座装置100の詳細な回路構成を示す模式図の各ブックの詳細な構成を表している。ヒータ駆動部402はトライアックから構成され、交流電圧検出回路A513は交流電圧のゼロクロスに同期した信号を出力する。制御部90より便座ヒータ460の制御信号が出力されると、便座ヒータ460はトライアックを介してスイッチング制御され、交流電圧404が印加される。トライアックは導通信号が出力されると、次のゼロクロス点まで導通を保持する素子である。
【0040】
図7は本発明の実施の形態における暖房便座制御におけるトライアックの制御パルスお
よび便座ヒータ印加電圧波形のタイムチャートである。斜線で示した部分が各制御状態での電圧が印加されている部分である。
【0041】
便座ヒータ460の通電は、ゼロクロス信号を受けて交流電圧を全区間通電する全波制御と、半区間通電する半波制御、ゼロクロス信号から一定時間遅れて交流電圧の一部を通電する位相制御の3つの制御方法で行う。
【0042】
全波制御および半波制御においては、交流電圧のゼロクロス点でトライアックへのゲートパルスが1個出力されると便座ヒータ460へは次のゼロ点までの半サイクル電圧が印加される。パルスが印加されないと、便座ヒータ460には電圧が印加されない。
【0043】
位相制御において、ゲートパルスはゼロクロス点より遅れて出力され、交流電圧はゲートパルス出力から次のゼロ点までの一部が印加される。ここでパルスが電圧の最大値を過ぎてから出力されると、低い電圧が印加され、また印加時間も短くなる。
【0044】
このように全波制御および半波制御は、急速に便座を加熱する場合に適した制御方法であり、位相制御は電圧の印加時間も短いことから、便座の温度が目標温度の近辺にあり、保温状態に保つ場合に適した制御方法である。
【0045】
〔2−2〕ヒータ駆動検知部構成
図8は便座ヒータ450各制御状態におけるヒータ駆動検知部407の出力信号を示したものである。ヒータ駆動検知部407は、ヒータ駆動部402のトライアックの両端に接続され、トライアックの導通状態を直流電源の信号に変換し、制御部90へ出力する。
【0046】
図8の太線の実線部分は、便座の各制御状態でのヒータ駆動検知部407の出力信号である。各段の左側は、トライアックと便座ヒータ460が正常時の波形、中央はトライアック短絡故障および便座ヒータ断線故障時の波形、右側はトライアック開放故障時の波形である。図から分かるように、正常時と波形が明らかに異なる場合のみ異常検知を行う。
【0047】
トライアック短絡故障および便座ヒータ断線故障検知は、便座ヒータ460の非通電時と位相制御時に行う。半波制御時には印加される電圧の正負により正常時の出力が異なるため、異常検知は行わない。
【0048】
トライアック開放故障検知は、全波制御時に行う。半波制御時には印加される電圧の正負により正常時の出力が異なるため、異常検知は行わない。
【0049】
〔2−3〕トライアック短絡故障および便座ヒータ断線故障検知方法
図9はトライアック短絡故障および便座ヒータ断線故障検知方法の詳細を示したものである。制御部90によりヒータ駆動検知部407の出力信号の入力を行う。ゼロクロス信号からT1、T2、T3時間経過後にヒータ駆動検知部407の出力信号のレベルを検出し、T1、T2、T3経過時のレベル検出値が3回とも一致した場合、半波1回分の入力確定値とする。このように異なるタイミングで複数回レベル検出を行っているのは、ノイズが交流電圧に対して周期的に発生した場合の誤判定防止のためである。T1、T2、T3の値を50Hzと60Hzとで異なった値に設定することで、どちらの場合においても、ヒータ駆動検知部407の出力信号の過渡的な状態を避け、安定した状態のレベル検出を行うことができる。
【0050】
半波2回分のレベル確定値を1組とする。正常時はHLまたはLHの組み合わせの連続であるので、あるサンプリング時間内で一定割合以上、LLまたはHHの組み合わせがあった場合、異常と判定する。判定は1組確定毎に最古の確定値を捨てる移動判定方式で行
う。判定周期は交流1サイクル毎となる。
【0051】
本実施の形態では、60組中70%の42組以上の場合、異常と判定している。60Hzの場合、異常発生から異常確定まで最短で0.7秒(42サイクル)となる。このようにノイズに強くかつ早く異常確定することができる。
【0052】
トライアック短絡故障および便座ヒータ断線故障が確定すると、制御部90により表示部515は所定の異常表示を行う。また制御部90は遮断回路406と両切り接点511からなる遮断部を作動させ、便座ヒータ460へ供給される交流電源の両極を遮断する。
【0053】
トライアックが短絡故障すると便座ヒータ460への通電が止まらなくなり便座の温度が過昇する。そのため過昇検知部405と併用するとさらに安全性が高まる。制御部90と過昇検知部405のどちらか一方が故障した場合でも、確実に便座ヒータ460への通電を停止させることができる。また故障していない場合でも、どちらか早く異常確定した方にて停止させることができる。またノイズによる誤判定防止のため、制御部90での異常確定時間を十分長くとって、異常表示のみを行い、過昇検知部405にて便座ヒータ460を停止させることも可能である。
【0054】
また同様に、便座ヒータが断線すると、断面が便座の金属部に接触して絶縁が破壊される場合がある。そのため絶縁破壊検知部403と併用するとさらに安全性が高まる。制御部90と絶縁破壊検知部403のどちらか一方が故障した場合でも、確実に便座ヒータ460への通電を停止させることができる。また故障していない場合でも、どちらか早く異常確定した方にて停止させることができる。またノイズによる誤判定防止のため、制御部90での異常確定時間を十分長くとって、異常表示のみを行い、絶縁破壊検知部403にて便座ヒータ460を停止させることも可能である。
【0055】
〔2−4〕トライアック開放故障検知方法
図10はトライアック開放故障検知方法の詳細を示したものである。ヒータ駆動検知部407の出力信号のレベル検出方法およびレベル確定方法は、前述のトライアック短絡故障および便座ヒータ断線故障検知方法と同様である。
【0056】
半波2回分のレベル確定値を1組とし、正常時はLLの組み合わせの連続であるので、あるサンプリング時間内で一定割合以上、HLまたはLHの組み合わせがあった場合、異常と判定する。判定は1組確定毎に最古の確定値を捨てる移動判定方式で行う。判定周期は交流1サイクル毎となる。
【0057】
本実施の形態では、60組中70%の42組以上の場合、異常と判定している。60Hzの場合、異常発生から異常確定まで最短で0.7秒(42サイクル)となる。
【0058】
トライアック開放故障が確定すると、制御部90により表示部514は所定の異常表示を行う。トライアック開放故障の場合、便座ヒータ460は通電すべき場合に通電されなくなるため便座は温まらないが、便座の過昇や絶縁破壊等の不安全はない。そのため制御部90は、遮断回路406を作動させず、交流電源の両極を遮断しない。所定の異常表示のみ行う。よって使用者は洗浄等、便座以外の機能は使用することが可能である。
【0059】
<3>各安全回路の構成
〔3−1〕絶縁破壊検知回路
図6に示すように、絶縁破壊検知部403は交流電源404から、両切り接点511、零相変流器(ZCT)409を経由した両極に接続され、その内部では両極は耐圧が600V程度の整流用ダイオード492のアノード側に接続され、これらのダイオードのカソ
ード側は電流制限用の抵抗493aと493bを介して接続され抵抗の接続点はダーリントンタイプフォトカプラ494のLEDのアノード側に接続される。そしてこのLEDのカソード側は便座400の絶縁破壊検知リード線476へ接続されている。整流用ダイオード2つを介して接続されることより、交流電源404のどちら側からか便座の絶縁が破壊した場合に検知線476へ電流がながれる。これは、ヒータ線460のどの部分で絶縁が破壊されても、交流のどちらかの極から必ず検知電流が流れるようにするためである。
【0060】
便座ヒータ450のヒータ線460の絶縁層である463aおよび462の絶縁が、経年変化や、局所発熱等により、便座ヒータ450のどこかで破壊した場合に、便座ヒータと検知線が導通すると、検知電流がながれ、フォトカプラ494がオンする。フォトカプラ494の出力はエミッタ設置されたPNPのトランジスタのベースに入力され、このPNPのトランジスタはオンし、このコレクタ出力は電源電圧になる。すると、このコレクタに抵抗を介して接続された遮断回路406内のラッチ回路を構成するNPNトランジスタ1およびNPNトランジスタ1がオンして、NPNトランジスタ1のベース電圧は電源電圧にラッチされる。そして、遮断回路406のNPN出力段トランジスタ1がオンして、定電圧源からZCTを介してNPN出力段トランジスタ1へ電流が流れる。すると、ZCTを通る電線の2本の間に漏電が起きた場合と同様にアンバランスが発生し、ZCTの出力に電圧が発生し、漏電検知部510が両切り接点511を遮断する。すると、便座ヒータ460への通電は停止する。
【0061】
もし、絶縁破壊したまま使用されてしまうとさらに、便座の紛体塗装の絶縁層や便座表面の絶縁層まで破壊し、使用者が感電する恐れがあり、本発明により未然に防ぐことができる。
【0062】
さらにNPN出力段トランジスタ2の出力は制御部90へ入力され制御部は遮断回路406が動作したことを表示部514に表示し、使用者は便座装置の異常を知ることができる。また、電流制限用の抵抗493a、493bはヒータ線460の抵抗値が非常に小さいため絶縁破壊時にヒータ線460を流れる電流がそのままフォトカプラ464のLEDに流れることでフォトカプラ494が壊れることを防ぐためのもので10kΩ以上の値である。また、フォトカプラ494のLEDに並列に1kΩ程度の保護抵抗を接続しても同様の効果がある。また、2つのダイオード492の間に制限抵抗493a、493bがあることで、ダイオードの1つがショート故障した場合でも、絶縁破壊検知部403で大電流が流れない用になっている。ここで、図6では2つのダイオード492とフォトカプラ494のLEDの極性を交流電源側をアノードとしたが、交流電源側へ電流が流れるように交流電源側をカソード側を接続してもよい。
【0063】
PNPのトランジスタのコレクタ出力に接続されたRCの時定数を3秒以上とすることにより、電気便座の絶縁耐圧試験1200V、3秒間の試験で、でダイオード492の耐圧を超えた電圧が印加されることダイオードにアバランシシェが発生し、ダイオードに逆電流が流れることで便座ヒータ=検知線間の絶縁が破壊しなくても検知電流が流れ、フォトカプラ494がオンしても、3秒間は遮断回路406が動作しないため、絶縁破壊検知回路が誤動作しなくなる。さらに、時定数を1分以上に延ばせば、1000V、1分間の絶縁耐圧試験でも誤動作しなくなる。
【0064】
また、フォトカプラのLEDと並列にダイオードを接続することで、LEDにかかる逆電圧をダイオードのVfに軽減でき、フォトカプラのLEDが破壊することはない。
【0065】
〔3−2〕過昇検知回路
便座温度の変化によって便座内面に貼り付けたサーミスタ401aの抵抗値が変化する。その抵抗値の変化を定電圧源と抵抗を備えた温度測定部401により、電圧信号へ変換
する。変換された信号電圧、過昇検知部405のコンパレータに入力される。コンパレータの他方の入力には、47℃相当に基準電圧が入力される。温度測定部401からの信号電圧が基準電圧を下回った場合に、過昇検知部405から信号が出力される。
【0066】
出力された信号は遮断回路406へ入力される。遮断回路406はトランジスタを2個組み合わせたラッチ回路を構成しており、一瞬でも過昇検知部405の出力が切り替わったことをラッチして便座装置の電源が切れるまで保持する。
【0067】
そして、遮断回路406のNPN出力段トランジスタ1がオンして、定電圧源からZCTを介してNPN出力段トランジスタ1へ電流が流れる。すると、ZCTを通る電線の2本の間に漏電が起きた場合と同様にアンバランスが発生し、ZCTの出力に電圧が発生し、漏電検知部510が両切り接点511を遮断する。すると、便座ヒータ460への通電は停止する。
【0068】
〔3−3〕漏電検知回路
漏電検知回路512は、ZCT409と漏電検知部510と両切り接点512を備えたリレーで構成されている。ZCT409は通過する交流電流の差を増幅して電圧として出力し、漏電検知部510はZCTの出力が閾値をこえるとリレーに出力し両切りの接点511をオフする。さらに、操作部515に漏電検知回路512のテストスイッチがあり、テストスイッチが押されると、制御部90は遮断回路406に電圧出力をする。また、ヒータ駆動検知回路407と交流電圧検出回路A513の出力により制御部90がヒータ駆動部402の異常および便座ヒータ450の断線を検知した場合も、同様に遮断回路406に電圧出力をする。
【0069】
遮断回路406はトランジスタを2個組み合わせたラッチ回路を構成しており、一瞬でも過昇検知部405の出力が切り替わったことをラッチして便座装置の電源が切れるまで保持する。
【0070】
そして、遮断回路406のNPN出力段トランジスタ1がオンして、定電圧源からZCTを介してNPN出力段トランジスタ1へ電流が流れる。すると、ZCTを通る電線の2本の間に漏電が起きた場合と同様にアンバランスが発生し、ZCTの出力に電圧が発生し、漏電検知部510は漏電検知回路512の両切り接点511を遮断する。
【0071】
〔3−4〕安全回路の表示
制御部は絶縁破壊検知回路、過昇検知部、漏電検知回路が動作したときに使用者に対して異常を表示部515に表示する。制御部がどの安全回路が動作したかを判定するために、双方向フォトカプラを備えた交流電圧検出回路A513と絶縁型のフォトカプラとそのLEDと並列にLEDを極性が逆にダイオードを接続した交流電圧検出回路B514、遮断回路406の出力、温度測定部の出力が制御部に入力される。
【0072】
交流電圧検出回路A513と交流電圧検出回路B514の出力は両切り接点511がオンの時に図11(a)、交流電源から電気便座が切り離された時に図11(b)、両切り接点511がオフの時図11(c)のように変化する。
【0073】
この変化によって、制御部は両切り接点511がオフしていることを判定し安全回路が動作したと判定する。次に、どの安全回路が働いているかについては、遮断回路406の出力が出ている場合は、絶縁破壊検知回路が動作、温度測定部の出力電圧が47℃以上であり、遮断回路406の出力がある場合は過昇検知部405が動作、遮断回路406および温度測定部401の出力電圧が47℃以下の場合は、漏電検知回路510が動作の判定をしてそれぞれの以上表示を行う。さらに、漏電テストが失敗した場合は、漏電テスト出
力を出しても、漏電検知回路が動作していない場合は漏電検知回路の故障の異常表示を行い、さらに便座装置の動作を停止することができ使用者が安全装置が壊れた状態で使用し続けることはない。
【0074】
また、この構成において、交流電圧検出回路A513、交流電圧検出回路B514の出力をワイアードオア回路で接続した波形は図12のようになり、制御部90のマイコンの1つの入力で商用電源が切り離されているか、両切り接点511が切り離されているか、正常であるかを判定することができる。これにより、両切り接点511が切り離されていることを、両切り接点511の通常接点側とは別にノーマルオープン側の接点を別途用意して、その接点に接点が切り替わったことを検出する場合に比べて、接点の数が少なく、商用電源から絶縁された制御部および表示部で異常表示を行うためより安全である。
【0075】
また、これらの交流電圧検出回路A513の出力信号は、交流電圧のゼロクロスに同期した波形であるので、制御部はゼロクロスに同期させて、任意の位相でトライアックをオンすることで、便座ヒータの電力をこまめに調整することができる。
【0076】
また、本実施の形態では、交流電圧検出回路A513に双方向のフォトカプラを用いているが、フォトカプラの入力側のLED、出力側のフォトトランジスタの間には基礎絶縁は必要なく、図13のような回路構成でもかまわない。それは、直流電源部が絶縁型の電源であるため、両切り接点511が切り離されれば、両切り接点511と直流電源の基礎絶縁が便座ヒータ等と商用電源の間で担保されるからである。
【0077】
また、本実施の形態では、交流電圧検出回路B514を設けているが、交流電圧検出回路B514がない場合でも、制御部90は直流電圧源が商用電源から切り離されてからその出力電圧が制御部が動作できなくなる電圧へ落ちるまでの既定の時間をカウントし、その出力電圧が落ちない場合は、商用電源が切り離されていないことがわかり判定し両切り接点511は切り離されたと判定することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、本発明にかかる便座装置は、発熱部に発生する異常を検知して安全性を確保することが可能となるので、ヒータを使用する他の暖房機器等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置の構成を示す模式図
【図2】本発明の実施の形態1における便座部の分解斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における便座ケーシングに便座ヒータ貼り付けた状態の平面図
【図4】(a)は図3におけるA-A’断面図(b)はC部の詳細を示す断面図
【図5】図3におけるB-B’断面図
【図6】図1における詳細な回路構成を示す模式図
【図7】ヒータ駆動部のトライアックの制御パルスと便座ヒータの印加電圧波形のタイムチャート
【図8】便座ヒータ各制御状態におけるヒータ駆動検知部の出力信号を示すタイムチャート
【図9】トライアック短絡故障および便座ヒータ断線故時の障検知信号の詳細を示すタイムチャート
【図10】トライアック開放故障時の検知信号の詳細を示すタイムチャート
【図11】交流電圧検出回路1と交流電圧検出回路Bの出力を示したタイムチャート
【図12】交流電圧検出回路A512と交流電圧検出回路B513の出力をワイアードオア回路で接続した波形を示すタイムチャート
【図13】交流電圧検出回路Aの別の回路構成を示す回路図
【符号の説明】
【0080】
90 制御部
100 便座装置
400 便座部(便座)
401 温度測定部
402 ヒータ駆動部
403 絶縁破壊検知部
405 過昇検知部
406 遮断回路(遮断部)
450 便座ヒータ(発熱部)
407 ヒータ駆動検知部
511 両切り接点(接点)
512 漏電遮断回路
515 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を含む着座面を有する便座と、前記便座の温度を測定する温度測定部と、前記便座の前記着座面の裏面側に設けられる発熱部と、前記発熱部を駆動するヒータ駆動部と、前記ヒータ駆動部の駆動状態を検知するヒータ駆動検知部と、交流電圧を検知する交流電圧検知部と、前記ヒータ駆動部を制御する制御部を備え、前記制御部は前記ヒータ駆動検知部の出力と、前記前記交流電圧検知部の出力から、ヒータ駆動部の異常および発熱部の断線を検知することを特徴とする便座装置。
【請求項2】
制御部からの出力により異常表示を行う表示部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
ヒータ駆動部の異常および発熱部の断線検知時に制御部の出力により、発熱部へ供給される交流電源の両極を遮断する遮断部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
温度測定部の出力から便座の過昇を検知する過昇検知部を備え、前記過昇検知部が過昇を検知した場合は、制御部を介さずに遮断部を遮断することを特徴とする請求項3に記載の便座装置。
【請求項5】
発熱部の絶縁不良を検知する絶縁破壊検知部を備え、前記絶縁破壊検知部が絶縁不良を検知した場合、制御部を介さず遮断部を遮断することを特徴とする請求項3または4に記載の便座装置。
【請求項6】
遮断部の接点は、便座装置が漏電した場合に作動する漏電遮断回路の接点を共用する構成の請求項3〜5のいずれか1項に記載の便座装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−61138(P2009−61138A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232334(P2007−232334)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】