説明

係止構造

【課題】 組み付け後に本体ケースや見返し部材に作用する外力によって弾性係止枠体が撓み変形で外れたり、弾性係止枠体及び係止突起部が破損したりするのを極力防止する。
【解決手段】 本体ケース2に係止突起部5を設け、見返し部材3に撓み変形自在で、且つ、係止孔7を有する弾性係止枠体6を設け、弾性係止枠体6の先端壁部6bが係止突起部5を乗り越え、係止孔7が係止突起部5の位置に一致する位置で弾性係止枠体6の撓み復帰変形により係止孔7に係止突起部5が入り込んで弾性係止枠体6が係止突起部5に係止する係止構造において、弾性係止部6の近接位置で、且つ、弾性係止部6の変移を規制する保護壁部10を設けた。保護壁部10は、裏カバー4に設けた先端保護壁部11と本体ケース2に設けた側方保護壁部12a,12bとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばベース体に係止突起を設け、組付体に係止突起が入り込む係止孔を有する弾性係止部材を設けた係止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の係止構造として、図4に示すような、メータ機器を構成するロアハウジング100とアッパハウジング101を係止するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この係止構造では、ロアハウジング100の外周面の適所に、係止突起部102が設けられている。アッパハウジング101の外周壁には、撓み変形自在な弾性係止部103が突設されている。弾性係止部103には、係止突起部102が入り込む係止孔104が形成されている。
【0003】
上記構成において、ロアハウジング100とアッパハウジング101とを所定の組付け位置に位置合わせして互いに近づけて、弾性係止部103の係止孔104が係止突起部102の位置に一致するようになっている。そして、弾性係止部103を弾性変形させることにより、係止孔104に係止突起部102が入り込むようになっている。これにより、弾性係止部103が係止突起部102に係止される。
【0004】
ところで、ロアハウジング100とアッパハウジング101の組み付け等によって組み立てられたメータ機器は、所定の場所まで搬送され、車両に組み付けされる。メータ機器の搬送や車両への組付け時等において、ロアハウジング100やアッパハウジング101に外力が作用し、その外力が弾性係止部103や係止突起部102に作用する場合がある。すると、その外力を弾性係止部103と係止突起部102間の係止力で受け止め、ロアハウジング100とアッパハウジング101間の組み付けを保持する。
【特許文献1】特開2001−63406号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の係止構造では、外力を弾性係止部103と係止突起部102間の係止力のみによって受けることになる。弾性係止部103と係止突起部102間の係止力は、弾性係止部103の曲げ剛性や弾性係止部103及び係止突起部102自体の部材強度に依存するため、曲げ剛性や部材強度を超える外力が作用すると、弾性係止部103が更に変形して係止突起部102との係止が外れたり、弾性係止部103や係止突起部102が破損してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、組み付け後にベース体や組付体に作用する外力によって弾性係止部が撓み変形して外れたり、弾性係止部及び係止突起部が破損したりすることを防止できる係止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、ベース体とこれに組み付ける組付体とのいずれか一方に係止突起部を設け、他方に撓み変形自在で、且つ係止孔を有する弾性係止部を設け、前記弾性係止部の前記係止孔が係止突起部の位置に一致する位置で前記弾性係止部の変形により前記係止孔に前記係止突起部が入り込んで前記弾性係止部が前記係止突起部に係止する係止構造において、前記弾性係止部の近接位置に配置され、且つ、前記弾性係止部の変移を規制する保護壁部を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の係止構造であって、前記保護壁部は、前記弾性係止部の前記先端壁部の外周端面に沿って配置された先端保護壁部を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の係止構造であって、前記保護壁部は、前記弾性係止部の側壁部の外周端面に沿って配置された側方保護壁部を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載された係止構造であって、前記保護壁部は、前記弾性係止部の厚さ寸法以上の高さに設定されたことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1又は請求項4記載の係止構造であって、前記保護壁部の少なくとも1部は、ベース体に組み付けされた他の組付体に設けられたことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5記載の係止構造であって、前記先端保護壁部を他の組付体4に設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載された係止構造であって、前記ベース体は、メータ機器の本体ケースであり、前記組付体は、メータの内容を明示する見返し部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、組み付け後のベース体や組付体に外力が作用し、その外力によって弾性係止部が係止突起部に対して相対的に変移しようとすると、弾性係止部に保護壁部が突き当たって弾性係止部の変移が規制される。つまり、ベース体や組付体に作用する外力を弾性係止部と係止突起部間の係止力によって受けると共に弾性係止部の変移を阻止する保護壁部によっても受ける。従って、弾性係止部の撓みや変形による外れや、ひいては弾性係止部及び係止突起部の破損を防止できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、弾性係止部の内で最も変移量の大きい先端壁部の変移を規制する。従って、弾性係止部の撓みや変形による外れ、弾性係止部及び係止突起部の破損などを防止できる。
【0016】
請求項3の発明によれば、弾性係止部の側壁部の変移を規制する。先端保護壁部と組み合わせることにより、弾性係止部の撓みや変形による外れや弾性係止部及び係止突起部の破損を確実に防止できる。
【0017】
請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3の発明の効果に加え、変移しようとする弾性係止部に対しその外周端面の厚み方向の全体が保護壁部に突き当たるため、弾性係止部の変移を規制できる。
【0018】
請求項5の発明によれば、請求項1〜請求項4の発明の効果に加え、ベース体や組付体に作用する外力を他の組付体にも分散できるため、外力によるベース体や組付体けへのダメージを軽減できる。
【0019】
請求項6の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、弾性係止部の内で最も変移量の大きい先端壁部に作用する外力を他の組付体に分散できるため、外力を他の組付体に分散できる。
【0020】
請求項7の発明によれば、本体ケースに見返し部材を組み付ける場合の係止構造に、請求項1〜請求項6の発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1〜図3は本発明の係止構造をメータ機器のケース本体に見返し部材を組み付ける係止構造に適用した実施の形態を示し、図1はケース本体2に見返し部材3を組み付け、弾性係止枠体6が係止突起部5に係止した状態を示す要部斜視図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図である。
【0023】
図1に示すように、メータ機器1は、メータ部品類が固定されたベース体である本体ケース2と、この本体ケース2のフロント側に組み付けされ、メータの内容を明示する組付体である見返し部材3と、本体ケース2のリア側に組み付けされた他の組付体である裏カバー4とを備えている。
【0024】
本体ケース2には、その外周面2aに係止突起部5が適所に突設されている。係止突起部5の後端側の面は、見返し部材3の係止方向Dに向かうに従って徐々に高くなるテーパ面5aに形成されている。係止突起部5の先端面は、垂直面5bとして形成されている。
【0025】
見返し部材3には、弾性係止部である弾性係止枠体6が適所に設けられている。弾性係止枠体6は、見返し部材3に一端側が固定された左右一対の側壁部6a,6aと、この一対の側壁部6a,6aの先端を連結する先端壁部6bとから方形枠形状を有し、見返し部材3の係止方向Dに突出されている。弾性係止枠体6には、一対の側面壁部6a,6aと先端壁部6bに囲まれた係止孔7が形成されている。係止孔7の開口寸法は、係止突起部5の平面寸法より若干だけ大きな寸法に設定されている。
【0026】
裏カバー4は、本体ケース2に図示しない係止手段により組み付けされている。裏カバー4には、本体ケース2の外周面2a上に延設された保護壁部10を構成する先端保護壁部11が設けられている。先端保護壁部11は、弾性係止枠体6の先端壁部6bの外周端面の形状に沿った凹溝11aを有し、先端壁部6bの近接位置に配置されている。具体的には、先端壁部6bと先端保護壁部11の互いの外周端面が互いに略当接する位置に配置されている。先端保護壁部11は、弾性係止枠体6の厚み寸法と同程度の高さ寸法を有する。
【0027】
保護壁部10は、上記した先端保護壁部11と側方保護壁部12a,12bから構成されている。側方保護壁部12a,12bは、本体ケース2に形成され、外周面2aの一部が他の面より一段高く設定されることによって形成されている。側方保護壁部12a,12bは、弾性係止枠体6の一対の側壁部6a,6aで、且つ、先端保護壁11が配置されていない近接位置に配置されている。具体的には、側方保護壁部12a,12bと各側壁部6a,6bの互いの外周端面が互いに略当接する位置に配置されている。この実施の形態では、先端保護壁部11と側方保護壁部12a,12bから成る保護壁部10は、弾性係止枠体6の外周端面の全域に亘って配置されている。
【0028】
上記構成において、本体ケース2と見返し部材3とを所定の組付け位置に位置合わし、互いに近づける。すると、弾性係止枠体6の撓み変形により先端壁部6bが係止突起部5に乗り上げる。これにより、弾性係止枠体6の係止方向Dの移動が許容される。弾性係止枠体6の係止方向Dへの移動が進み、弾性係止枠体6の係止孔7が係止突起部5の位置に一致すると、弾性係止枠体6が撓み復帰変形して係止孔7に係止突起部5が入り込む。これにより、弾性係止枠体6が係止突起部5に係止する。
【0029】
また、本体ケース2に見返し部材3を組み付けた後、又は、その前に本体ケース2に裏カバー4を組み付ける。本体ケース2に見返し部材3及び裏カバー4が組み付けされると、係止突起部5に弾性係止枠体6が係止すると共に、弾性係止枠体6の近接位置に保護壁部10の先端保護壁部11及び側方保護壁部12a,12bが配置される。
【0030】
このように組み付けされたメータ機器1に、本体ケース2や見返し部材3に外力が作用し、その外力によって弾性係止枠体6が変移しようとすると、弾性係止枠体6に保護壁部10の先端保護壁部11及び側方保護壁部12a,12bが突き当たり、弾性係止枠体6の変移が規制される。つまり、本体ケース2や見返し部材3に作用する外力を弾性係止枠体6と係止突起部5間の係止力によって受けると共に弾性係止枠体6の変移を阻止する保護壁部10によっても受ける。従って、弾性係止枠体6の撓み変形による外れや、弾性係止枠体6及び係止突起部5の破損を極力防止できる。
【0031】
この実施の形態では、先端保護部11によって弾性係止部6の内で最も変移量の大きい先端壁部6bの変移を規制する。従って、弾性係止枠体6の外れや弾性係止枠体6及び係止突起部5の破損を有効に防止できる。
【0032】
この実施の形態では、側方保護壁12a,12bによって弾性係止枠体6の側壁部6a,6aの変移を規制する。つまり、先端保護壁部11と側方保護壁12a,12bによって、弾性係止枠体6の撓み変形による外れや、弾性係止枠体6及び係止突起部5の破損を更に確実に防止できる。また、弾性係止枠体6の全周囲に配置された先端保護壁部11及び側方保護壁部12a,12bは、弾性係止枠体6への不用意な接触を防止するプロテクタとしても機能する。従って、作業者が意図しない不用意な弾性係止枠体6の係止解除を防止できる。
【0033】
この実施の形態では、弾性係止枠体6に対しその外周端面の厚み方向の全体が先端保護壁部11及び側方保護壁部12a,12bに突き当たる。そのため、弾性係止枠体6の変移を確実に規制できる。なお、実施の形態では、先端保護壁部11及び側方向保護壁部12a,12bは、弾性係止枠体6の厚み寸法と同程度の高さに設定されているが、弾性係止枠体6の厚み寸法より高く設定してもよい。弾性係止枠体6の厚み寸法より高ければ高いほど弾性係止枠体6の変形を有効に防止できる。
【0034】
この実施の形態では、先端保護壁部11は、本体ケース2及び見返し部材3以外の裏カバー4に設けたので、外力を裏カバー4に分散できるため、外力による本体ケース2及び見返し部材3へのダメージを軽減できる。特に、弾性係止枠体6の内で最も変移量の大きい先端壁部6bに作用する外力を裏カバー4に分散できるため、外力を裏カバー4に有効に分散できる。なお、この実施の形態では、保護壁部10の内の先端保護壁部11にみを裏カバー4に設けたが、保護壁部10の全体を裏カバー4に設けてもよい。
【0035】
なお、実施の形態によれば、ベース体が本体ケース2で、組付体が見返し部材3の場合を示したが、これら以外であっても本発明を適用できることはもちろんである。
【0036】
なお、実施の形態では、ベース体である本体ケース2に係止突起部5を、組付体である見返し部材3に弾性係止部である弾性係止枠体6を設けたが、見返し部材3に係止突起部5を、本体ケース2に弾性係止部である弾性係止枠体6を設けてもよい。
【0037】
なお、実施の形態では、弾性係止部である弾性係止枠体6の係止孔7は、上面に開口する貫通孔であるが、上面に開口しない孔として形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態を示し、ケース本体に見返し部材を組み付け、弾性係止枠体が係止突起部に係止した状態を示す要部斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を示し、図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を示し、図1のB−B線断面図である。
【図4】従来例の係止構造の係止前の斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 メータ機器
2 本体ケース(ベース体)
3 見返し部材(組付体)
4 裏カバー(他の組付体)
5 係止突起部
6 弾性係止枠体(弾性係止部)
6a 側壁部
6b 先端壁部
7 係止孔
10 保護壁部
11 先端保護壁部
12a,12b 側方保護壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース体とこれに組み付ける組付体とのいずれか一方に係止突起部を設け、他方に撓み変形自在で、且つ、係止孔を有する弾性係止部を設け、前記弾性係止部の前記係止孔が係止突起部の位置に一致する位置で前記弾性係止部の変形により前記係止孔に前記係止突起部が入り込んで前記弾性係止部が前記係止突起部に係止する係止構造において、
前記弾性係止部の近接位置に配置され、且つ、前記弾性係止部の変移を規制する保護壁部を設けたことを特徴とする係止構造。
【請求項2】
請求項1記載の係止構造であって、
前記保護壁部は、前記弾性係止部の前記先端壁部の外周端面に沿って配置された先端保護壁部を有することを特徴とする係止構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された係止構造であって、
前記保護壁部は、前記弾性係止部の側壁部の外周端面に沿って配置された側方保護壁部を有することを特徴とする係止構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載された係止構造であって、
前記保護壁部は、前記弾性係止部の厚さ寸法以上の高さに設定されたことを特徴とする係止構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載された係止構造であって、
前記保護壁部の少なくとも一部は、ベース体に組み付けされた他の組付体に設けられたことを特徴とする係止構造。
【請求項6】
請求項5記載の係止構造であって、
前記先端保護壁部を他の組付体に設けたことを特徴とする係止構造。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載された係止構造であって、
前記ベース体は、メータ機器の本体ケースであり、前記組付体は、メータの内容を明示する見返し部材であることを特徴とする係止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−21561(P2006−21561A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199240(P2004−199240)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】