説明

保護膜剥離方法および保護膜剥離装置

【課題】被加工物の被加工面と反対側の支持面に被覆された保護膜を容易に剥離することができる保護膜剥離方法および保護膜剥離装置を提供する。
【解決手段】被加工物の被加工面と反対側の支持面に被覆された保護膜を剥離する保護膜剥離方法であって、被加工物の被加工面側を被加工物保持手段によって保持する被加工物保持工程と、被加工物保持手段によって保持された被加工物の支持面に形成された該保護膜に加熱水蒸気を供給する水蒸気供給工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等のウエーハの被加工面と反対側の支持面に液状樹脂を被覆して固化させた保護膜を剥離する保護膜剥離方法および保護膜剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって多数の矩形領域を区画し、該矩形領域の各々にIC,LSI等のデバイスを形成する。このように多数のデバイスが形成された半導体ウエーハをストリートに沿って分割することにより、個々のデバイスを形成する。デバイスの小型化および軽量化を図るために、通常、半導体ウエーハをストリートに沿って切断して個々のデバイスに分割する前に、半導体ウエーハの裏面を研削して所定の厚さに形成している。
【0003】
半導体ウエーハの裏面を研削する研削装置は、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削手段と、該研削手段によって研削された被加工物を洗浄する洗浄手段と、を具備している。このような研削装置によってウエーハの裏面である被研削面を研削する場合には、被研削面と反対側の支持面(通常のウエーハにおいては表面、ウエーハの表面にサブストレート用のウエーハの一方の面が接合された所謂SOIウエーハの場合にはサブストレート用ウエーハの他方の面)に保護テープを貼着し、この保護テープ側をチャックテーブルに保持して被研削面を研削する。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
しかるに、ウエーハの被研削面と反対側の支持面に貼着する保護テープは厚みが不均一であり、このため研削加工されたウエーハの厚みに面内バラツキが発生する。特に、複数のウエーハを重ねて積層デバイスを構成する場合、個々の厚みのバラツキがデバイス全体のバラツキに累積されるという問題がある。
【0005】
上述した問題を解消するため本出願人は、紫外線を照射することによって硬化する液状樹脂を被加工物の被研削面と反対側の支持面に5〜10μmの厚みで塗布し、紫外線を照射して液状樹脂を硬化させて保護膜を形成し、この保護膜側を研削装置のチャックテーブルに保持した後、被加工物の被研削面を研削加工する方法を特願2009−143639号として提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−319829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、被加工物の支持面に液状樹脂を硬化させて形成した保護膜は、被加工物の支持面に密着しており、被加工物の被加工面を加工した後に除去しようとしても容易に剥離できないという問題がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、被加工物の被加工面と反対側の支持面に被覆された保護膜を容易に剥離することができる保護膜剥離方法および保護膜剥離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物の被加工面と反対側の支持面に被覆された保護膜を剥離する保護膜剥離方法であって、
被加工物の被加工面側を被加工物保持手段によって保持する被加工物保持工程と、
該被加工物保持手段によって保持された被加工物の支持面に形成された該保護膜に加熱水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、を含む、
ことを特徴とする保護膜剥離方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、被加工物の被加工面と反対側の支持面に被覆された保護膜を剥離する保護膜剥離装置において、
被加工物の被加工面側を保持する被加工物保持手段と、
該被加工物保持手段に保持された被加工物の支持面に形成された該保護膜に加熱水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、を具備している、
ことを特徴とする保護膜剥離装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明における保護膜剥離方法および保護膜剥離装置は、被加工物の被加工面側を被加工物保持手段によって保持し、該被加工物保持手段に保持された被加工物の支持面に形成された保護膜に水蒸気供給手段から加熱水蒸気を供給するので、保護膜は供給された加熱水蒸気によって軟化され密着性が低減せしめられ、被加工物の支持面から容易に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
【図2】図1に示す半導体ウエーハの被加工面と反対側の支持面である表面に保護膜を被覆する方法の説明図。
【図3】図1に示す半導体ウエーハの被加工面を研削する研削工程の説明図。
【図4】本発明に従って構成された第1の実施形態における保護膜剥離装置の一部を破断して示す斜視図。
【図5】図4に示す保護膜剥離装置のスピンナーテーブルを被加工物搬入・搬出位置に位置付けた状態を示す説明図。
【図6】図4に示す保護膜剥離装置のスピンナーテーブルを作業位置に位置付けた状態を示す説明図。
【図7】図4に示す保護膜剥離装置を用いて実施する保護膜剥離方法における水蒸気供給工程の説明図。
【図8】本発明に従って構成された第2の実施形態における保護膜剥離装置の断面図。
【図9】図8に示す保護膜剥離装置を用いて実施する保護膜剥離方法の説明図。
【図10】本発明に従って構成された第3の実施形態における保護膜剥離装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による保護膜剥離方法および保護膜剥離装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1には、被加工物としての半導体ウエーハが示されている。図1に示す半導体ウエーハ10は、例えば厚みが700μmのシリコンウエーハからなり、表面10aに複数のストリート101が格子状に配列されているとともに、該複数のストリート101によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。このように形成された半導体ウエーハ10は、裏面10bを研削して所定の厚み(例えば、100μm)に形成される。従って、半導体ウエーハ10は、裏面10bが被研削面となり、該被加工面と反対側の表面10aが支持面となる。
【0014】
上述した半導体ウエーハ10の裏面(被加工面)を研削して所定の厚みに形成するには、デバイス102を保護するために半導体ウエーハ10の表面10aに保護膜を被覆する。半導体ウエーハ10の表面10aに保護膜を被覆する方法の一例について図2を参照して説明する。
図2に示す保護膜被覆方法においては、先ず保護膜被覆装置2のスピンナーテーブル21に半導体ウエーハ10の裏面10b側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、スピンナーテーブル21上に半導体ウエーハ10を吸引保持する。従って、スピンナーテーブル21上に保持された半導体ウエーハ10は、図2の(a)に示すように被加工面と反対側の支持面である表面10aが上側となる。このようにしてスピンナーテーブル21上に半導体ウエーハ10を吸引保持したならば、図2の(a)に示すように液状樹脂供給ノズル22の噴出口221をスピンナーテーブル21上に保持された半導体ウエーハ10の中心部に位置付け、図示しない液状樹脂供給手段を作動して、液状樹脂供給ノズル22の噴出口221から紫外線を照射することによって硬化する液状樹脂200を所定量滴下する。この紫外線を照射することによって硬化する液状樹脂としては、例えば株式会社スリーボンドが製造販売する「30Y-763-24」「30Y-763-24」や、東京応化工業株式会社が製造販売する「BG-Trial8」等を用いることができる。なお、液状樹脂200の滴下量は、半導体ウエーハ10の支持面である表面10aに形成される保護膜の厚みが10〜30μmになるように設定されている。このようにして液状樹脂200を滴下したならば、液状樹脂供給ノズル22を退避される。次に、スピンナーテーブル21を図2の(a)において矢印21aで示す方向に300〜1000rpmの回転速度で所定時間(例えば1分間)回転する。この結果、図2の(b)に示すように半導体ウエーハ10の表面10aの中央領域に滴下された液状樹脂200は、遠心力によって外周部まで流動し半導体ウエーハ10の支持面である表面10aを被覆し、保護膜210を形成する。このようにして半導体ウエーハ10の支持面である表面10aに保護膜210を形成したならば、図2の(b)に示すように紫外線照射器からなる保護膜固化器23をスピンナーテーブル21の上方に位置付け、この保護膜固化器23から紫外線をスピンナーテーブル21に保持されている半導体ウエーハ10の支持面である表面10aに形成された保護膜210に照射することにより、保護膜210を固化せしめる(保護膜形成工程)。
【0015】
上述したように半導体ウエーハ10の支持面である表面10aに保護膜210を形成したならば、半導体ウエーハ10の裏面10bを加工する加工工程、例えば裏面10bを研削して半導体ウエーハ10を所定の厚み(例えば、100μm)に形成する研削工程を実施する。この研削工程を実施するには、図3に示すように研削装置3のチャックテーブル31上に半導体ウエーハ10の支持面である表面10aに保護膜210側を載置し、図示しない吸引手段を作動することによりチャックテーブル31上に半導体ウエーハ10を吸引保持する。従って、チャックテーブル31上に保持された半導体ウエーハ10は、裏面10bである被加工面が上側となる。このようにして、チャックテーブル31上に半導体ウエーハ10を吸引保持したならば、チャックテーブル31を図2の(a)において矢印31aで示す方向に例えば300rpmの回転速度で回転するとともに、研削ホイール32を矢印32aで示す方向に例えば6000rpmの回転速度で回転しつつ下方に研削送りして、研削ホイール32の研削砥石321を半導体ウエーハ10の被加工面である裏面10bに押圧せしめことにより、所定の厚み(例えば、100μm)に研削する。
【0016】
上述した研削工程を実施することにより、半導体ウエーハ10の厚みを所定の厚み(例えば、100μm)に形成したならば、半導体ウエーハ10の支持面である表面10aに被覆された保護膜210を剥離するが、この保護膜210は半導体ウエーハ10の支持面である表面10aに密着していて容易に剥離することができない。そこで、本発明においては、半導体ウエーハ10の被加工面側を被加工物保持手段によって保持し、半導体ウエーハ10の支持面である表面10aに形成された保護膜210に加熱水蒸気を噴射することに、より、保護膜210を軟化させて密着力を低減させる保護膜剥離方法を実施する。
【0017】
以下、保護膜剥離方法を実施するための保護膜剥離装置について説明する。
先ず、保護膜剥離装置の第1の実施形態について、図4乃至図7を参照して説明する。
図4乃至図7に示す保護膜剥離装置4は、被加工物の被加工面側を保持する被加工物保持手段41と、該被加工物保持手段41を包囲して配設された水受け手段42を具備している。被加工物保持手段41は、スピンナーテーブル411と、該スピンナーテーブル411を回転駆動する電動モータ412と、該電動モータ412を上下方向に移動可能に支持する支持機構413を具備している。スピンナーテーブル411は上面に配設された多孔性材料から形成された吸着チャック411aを具備しており、この吸着チャック411aが図示しない吸引手段に連通されている。従って、スピンナーテーブル411は、吸着チャック411aの上面である保持面に被加工物を載置し、図示しない吸引手段により負圧を作用せしめることにより吸着チャック411上にウエーハを吸引保持する。上記電動モータ412は、その駆動軸412aの上端が上記スピンナーテーブル411に連結される。上記支持機構413は、複数本(図示の実施形態においては3本)の支持脚413aと、該支持脚413aをそれぞれ連結し電動モータ412に取り付けられた複数本(図示の実施形態においては3本)のエアシリンダ413bとからなっている。このように構成された支持機構413は、エアシリンダ413bを作動することにより、電動モータ412およびスピンナーテーブル411を図5に示す上方位置である被加工物搬入・搬出位置と、図6に示す下方位置である作業位置に位置付ける。
【0018】
上記水受け手段42は、水受け容器421と、該水受け容器421を支持する3本(図2には2本が示されている)の支持脚422と、上記電動モータ412の駆動軸412aに装着されたカバー部材423とを具備している。洗浄水受け容器421は、図5および図6に示すように円筒状の外側壁421aと底壁421bと内側壁421cとからなっている。底壁421bの中央部には上記電動モータ412の駆動軸412aが挿通する穴421dが設けられおり、この穴421dの周縁から上方に突出する内側壁421cが形成されている。また、図4に示すように底壁421bには排液口421eが設けられており、この排液口421eにドレンホース424が接続されている。上記カバー部材423は、円盤状に形成されており、その外周縁から下方に突出するカバー部423aを備えている。このように構成されたカバー部材423は、電動モータ412およびスピンナーテーブル411が図6に示す作業位置に位置付けられると、カバー部423aが上記水受け容器421を構成する内側壁421cの外側に隙間をもって重合するように位置付けられる。
【0019】
図示の実施形態における保護膜剥離装置4は、上記スピンナーテーブル411に保持された被加工物の上面に加熱水蒸気を噴射する加熱水蒸気供給手段44を具備している。加熱水蒸気供給手段44は、スピンナーテーブル411に保持された被加工物の上面に向けて加熱水蒸気を噴射する水蒸気噴射ノズル機構440と、該水蒸気噴射ノズル機構440を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ445を備えている。水蒸気噴射ノズル機構440は、揺動軸部441と、該揺動軸部441に基端が接続され水平に延びる支持アーム442と、該支持アーム442の先端に接続され下方に向けて加熱水蒸気を噴出する水蒸気噴射ノズル443とからなっている。このように構成された水蒸気噴射ノズル機構440は、揺動軸部441および支持アーム442がパイプ材によって形成されており、揺動軸部441が上記水回収容器421を構成する底壁421bに設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設され、図5および図6に示すように加熱水蒸気供給源としての蒸気加熱手段446に接続されている。なお、蒸気加熱手段446は、水蒸気発生ボイラー447に接続されている。
【0020】
図4乃至図7に示す保護膜剥離装置4は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
上述した研削工程を実施することにより所定の厚み(例えば、100μm)に形成された半導体ウエーハ10は、被加工面である裏面10bがスピンナーテーブル411スピンナーテーブル411の吸着チャック411a上に載置され、図示しない吸引手段を作動することにより吸着チャック411a上に吸引保持される(被加工物保持工程)。従って、スピンナーテーブル411上に保持された半導体ウエーハ10は、支持面である表面10aに被覆された保護膜210が上側となる。なお、この被加工物保持工程を実施する際には、スピンナーテーブル411は図5に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けられており、水蒸気噴射ノズル機構440は図4および図5に示すようにスピンナーテーブル411の上方から離隔した待機位置に位置付けられている。
【0021】
研削加工後の半導体ウエーハ10がスピンナーテーブル411上に保持されたならば、半導体ウエーハ10の支持面である表面10aに被覆された保護膜210に加熱水蒸気を供給する水蒸気供給工程を実施する。この水蒸気供給工程は、被加工物保持手段41を構成する支持機構413を作動してスピンナーテーブル411を図6で示す作業位置に位置付けるとともに、図7に示すように加熱水蒸気供給手段44の電動モータ445を駆動して水蒸気噴射ノズル機構440の水蒸気噴射ノズル443をスピンナーテーブル411上に保持された半導体ウエーハ10の回転中心Cの上方に位置付ける。そして、スピンナーテーブル411を矢印Aで示す方向に例えば1000rpmの回転速度で回転しつつ加熱水蒸気供給手段44を作動して水蒸気噴射ノズル443から加熱水蒸気を噴射する。このとき、電動モータ445が駆動して水蒸気噴射ノズル機構440の水蒸気噴射ノズル443から噴出された加熱水蒸気がスピンナーテーブル411に保持された半導体ウエーハ10の回転中心Cに当たる位置から外周部に当たる位置までの所要角度範囲で揺動せしめられる。この結果、半導体ウエーハ10の表面10aに被覆された保護膜210は、噴射された加熱水蒸気によって軟化され密着性が低減せしめられる。
【0022】
上述した水蒸気供給工程を実施したならば、スピンナーテーブル411の回転を停止するとともに、加熱水蒸気供給手段44の作動を停止しての水蒸気噴射ノズル443を待機位置に位置付ける。そして、スピンナーテーブル411を図5に示す被加工物搬入搬出位置に位置付け、スピンナーテーブル411上に保持されている半導体ウエーハ10の表面10aに被覆された保護膜210を除去する。このとき、保護膜210は上述した水蒸気供給工程が実施されて軟化し密着性が低減されているので、極めて容易に剥離することができる。なお、水蒸気供給工程を実施した後、スピンナーテーブル411を高速回転し、その遠心力によって水蒸気供給工程が実施されて軟化し密着性が低減した保護膜210を除去するようにしてもよい。このようにして、半導体ウエーハ10の表面10aに被覆された保護膜210を除去したならば、スピンナーテーブル411に保持されている半導体ウエーハ10の吸引保持を解除し、半導体ウエーハ10を図示しない搬送機構によって次工程に搬送する。
【0023】
次に、保護膜剥離装置の第2の実施形態について、図8を参照して説明する。
図8に示す保護膜剥離装置5は、被加工物の被加工面側を保持する被加工物保持手段51と、該被加工物保持手段51に保持された被加工物の支持面に形成された保護膜に加熱水蒸気を供給する水蒸気供給手段58とからなっている。被加工物保持手段51は、吸引保持パッド52と、該吸引保持パッド52を支持するL字状の作動アーム53を具備している。吸引保持パッド52は、図8に示すように円盤状の基台521とパッド522とからなっている。基台521は適宜の金属材によって構成され、その上面中央部には支持軸部521aが突出して形成されており、この支持軸部521aが作動アーム53を構成する水平部532の先端部に装着される。支持軸部521aの上端には係止部521bが設けられており、この係止部521bが作動アーム53の水平部532に形成された係合部532aと係合するようになっている。なお、基台521の上面と作動アーム53を構成する水平部532との間には圧縮コイルばね54が配設され、基台521を下方に向けて付勢している。
【0024】
吸引保持パッド52を構成する基台521は、下方が開放された円形状の凹部521cを備えている。この凹部521cにポーラスなセラミックス部材によって円盤状に形成されたパッド522が嵌合されている。このようにして基台521の凹部521cに嵌合されたパッド522の下面は、被加工物を吸引保持する吸着面として機能する。吸引保持パッド52を構成する基台521に形成された円形状の凹部521cは、支持軸部521aに設けられた連通路521dを介して作動アーム53内に配設されたフレキシブルパイプ等の配管55に接続されている。なお、配管55は図示しない吸引手段に接続されている。従って、図示しない吸引手段が作動すると、配管55、連通路521d、基台521の凹部521cを介してパッド522の下面(吸着面)に負圧が作用せしめられ、該パッド522の下面(吸着面)に被加工物を吸引保持することができる。
【0025】
上記L字状の作動アーム53は、垂直部531と水平部532とからなっており、垂直部531の下端が昇降機構56に連結されている。昇降機構56は例えばエアピストン等からなっており、作動アーム53を図8において矢印56aで示すように上下方向に作動せしめる。また、作動アーム53の垂直部531と連結した昇降機構56は、正転・逆転可能な電動モータを含む旋回機構57に連結されている。従って、旋回機構57を正転方向または逆転方向に駆動することにより、作動アーム53は垂直部531を中心として揺動せしめられる。この結果、作動アーム53の水平部532は水平面内で作動せしめられ、この水平部532の先端部に装着される吸引保持パッド52が水平面内で作動せしめられる。
【0026】
上記水蒸気供給手段58は、上端に被加工物保持手段51の吸引保持パッド52を受け入れる円形状の開口581aを備えたパッド受け入れ容器581を具備している。このパッド受け入れ容器581の側壁581bには蒸気導入口581cが設けられており、該蒸気導入口581cが加熱水蒸気供給源としての蒸気加熱手段582に接続されている。なお、蒸気加熱手段582は、水蒸気発生ボイラー583に接続されている。
【0027】
図8に示す保護膜剥離装置5は以上のように構成されており、以下その作用について図9を参照して説明する。
上述した研削工程を実施することにより所定の厚み(例えば、100μm)に形成された半導体ウエーハ10は、図9の(a)に示すように被加工面である裏面10bを吸引保持パッド52の下面に位置付け、図示しない吸引手段を作動することにより、吸引保持パッド52の下面に半導体ウエーハ10を吸引保持する(被加工物保持工程)。従って、吸引保持パッド52の下面に保持された半導体ウエーハ10は、支持面である表面10aに被覆された保護膜210が下側となる。
【0028】
上述した被加工物保持工程を実施したならば、旋回機構57を作動して半導体ウエーハ10を保持した吸引保持パッド52を水蒸気供給手段58を構成するパッド受け入れ容器581の上方に位置付け、図9の(b)に示すように昇降機構56を作動して半導体ウエーハ10を保持した吸引保持パッド52を下降し、半導体ウエーハ10を保持した吸引保持パッド52の下部をパッド受け入れ容器581に挿入する。次に、蒸気加熱手段582から加熱水蒸気を蒸気導入口581cを介してパッド受け入れ容器581に供給する(水蒸気供給工程)。この水蒸気供給工程を数分間実施することにより、吸引保持パッド52の下面に保持された半導体ウエーハ10の支持面である表面10aに被覆された保護膜210は、パッド受け入れ容器581内に供給された加熱水蒸気によって軟化され密着性が低減せしめられる。
【0029】
上述した水蒸気供給工程を実施したならば、パッド受け入れ容器581への加熱水蒸気の供給を停止するとともに、昇降機構56を作動して半導体ウエーハ10を保持した吸引保持パッド52を上昇してパッド受け入れ容器581の上方に位置付け、吸引保持パッド52に保持されている半導体ウエーハ10の表面10aに被覆された保護膜210を除去する。このとき、保護膜210は上述した水蒸気供給工程が実施されて軟化し密着性が低減されているので、極めて容易に剥離することができる。このようにして、半導体ウエーハ10の表面10aに被覆された保護膜210を除去したならば、半導体ウエーハ10を次工程に搬送する。
【0030】
次に、保護膜剥離装置の第3の実施形態について、図10を参照して説明する。
図10に示す保護膜剥離装置50は、被加工物の被加工面側を保持する被加工物保持手段51と、該被加工物保持手段51に保持された被加工物の支持面に形成された保護膜に加熱水蒸気を供給する水蒸気供給手段59とからなっている。被加工物保持手段51は、上記図8に示す保護膜剥離装置5の被加工物保持手段51と実質的に同一の構成であるため、同一部材には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図10に示す保護膜剥離装置50の水蒸気供給手段59は、被加工物保持手段51を構成する吸引保持パッド52の移動経路の下側に配設された水蒸気噴射ノズル591を具備している。この水蒸気噴射ノズル591は、吸引保持パッド52に保持される被加工物の直径に対応した噴出口591aを備えており、この噴出口591aが加熱水蒸気供給源としての蒸気加熱手段592に接続されている。なお、蒸気加熱手段592は、水蒸気発生ボイラー593に接続されている。このように構成された保護膜剥離装置50は、上述した研削工程を実施することにより所定の厚み(例えば、100μm)に形成された半導体ウエーハ10の被加工面である裏面10bを吸引保持パッド52の下面に吸引保持し(被加工物保持工程)、水蒸気噴射ノズル591の上方を揺動することにより、水蒸気噴射ノズル591の噴出口591aから噴出される加熱水蒸気を吸引保持パッド52に保持されている半導体ウエーハ10の表面10aに被覆された保護膜210に噴射する。この結果、半導体ウエーハ10の表面10aに被覆された保護膜210は、噴射された加熱水蒸気によって軟化され密着性が低減せしめられ、容易に剥離することができる。
【符号の説明】
【0031】
2:保護膜被覆装置
3:研削装置
4:保護膜剥離装置
41:被加工物保持手段
411:スピンナーテーブル
44:加熱水蒸気供給手段
440:水蒸気噴射ノズル機構
5:保護膜剥離装置
51:被加工物保持手段
52:吸引保持パッド
50:保護膜剥離装置
58:水蒸気供給手段
59:水蒸気供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の被加工面と反対側の支持面に被覆された保護膜を剥離する保護膜剥離方法であって、
被加工物の被加工面側を被加工物保持手段によって保持する被加工物保持工程と、
該被加工物保持手段によって保持された被加工物の支持面に形成された該保護膜に加熱水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、を含む、
ことを特徴とする保護膜剥離方法。
【請求項2】
被加工物の被加工面と反対側の支持面に被覆された保護膜を剥離する保護膜剥離装置において、
被加工物の被加工面側を保持する被加工物保持手段と、
該被加工物保持手段に保持された被加工物の支持面に形成された該保護膜に加熱水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、を具備している、
ことを特徴とする保護膜剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−109394(P2012−109394A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256971(P2010−256971)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】