説明

信号処理装置、タイミング同期回路、信号処理方法、及びタイミング同期方法

【課題】遅延を用いずにデータ信号とクロックとを同期させるタイミング同期回路を提供すること。
【解決手段】入力信号を立ち上がり又は立ち下がりタイミングでトグルするトグル回路と、クロックと前記トグル回路の出力信号とが入力され、当該トグル回路の出力信号を前記クロックの立ち上がり又は立ち下がりタイミングに同期させる第1同期回路と、前記トグル回路の出力信号と前記第1同期回路の出力信号とが入力され、入力された両出力信号の排他的論理和を出力する排他的論理和回路と、前記クロックと前記排他的論理和回路の出力信号とが入力され、当該出力信号を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させる第2同期回路と、を備える、タイミング同期回路が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、タイミング同期回路、信号処理方法、及びタイミング同期方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノート型のパーソナルコンピュータ(以下、ノートPC)等の情報処理装置は、ユーザが操作する本体部分と、情報が表示される表示部分とを接続するヒンジ部分に可動部材が用いられていることが多い。ところが、ヒンジ部分には多数の信号線や電力線が配線されており、配線の信頼性を維持する工夫が求められる。まず、考えられるのが、ヒンジ部分を通る信号線の数を減らすことである。そこで、本体部分と表示部分との間においては、パラレル伝送方式ではなく、シリアル伝送方式でデータの伝送処理が行われるようにする。シリアル伝送方式を用いると、信号線の本数が低減されると共に、さらに電磁妨害(EMI;Electro Magnetic Interference)が低減されるという効果も得られる。
【0003】
さて、シリアル伝送方式の場合、データは符号化されてから伝送される。その際、符号化方式としては、例えば、NRZ(Non Return to Zero)符号方式やマンチェスター符号方式、或いは、AMI(Alternate Mark Inversion)符号方式等が用いられる。例えば、下記の特許文献1には、バイポーラ符号の代表例であるAMI符号を利用してデータ伝送する技術が開示されている。また、同文献には、データクロックを信号レベルの中間値で表現して伝送し、受信側で信号レベルに基づいてデータクロックを再生する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−109843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ノートPCのような情報処理装置においては、上記の符号を用いるシリアル伝送方式を用いても、依然としてヒンジ部分に配線される信号線の本数が多い。例えば、ノートPCの場合、表示部分に伝送されるビデオ信号の他、LCDを照明するためのLEDバックライトに関する配線が存在し、これらの信号線を含めると数十本程度の信号線がヒンジ部に配線されることになる。但し、LCDは、Liquid Crystal Displayの略である。また、LEDは、Light Emitting Diodeの略である。
【0006】
こうした問題点に鑑み、直流成分を含まず、かつ、受信信号からクロック成分を容易に抽出することが可能な符号化方式(以下、新方式)が開発された。この新方式に基づいて生成された伝送信号は直流成分を含まないため、直流電源に重畳して伝送することができる。さらに、この伝送信号から極性反転周期を検出することにより、受信側でPLLを用いずにクロックを再生することが可能になる。そのため、複数の信号線を纏めることが可能になり、信号線の本数を減らすことができると共に、消費電力及び回路規模の低減が実現される。但し、PLLは、Phase Locked Loopの略である。
【0007】
上記新方式の伝送信号は、1つのビット値を複数の振幅レベルで表現した多値符号波形を有する。そのため、受信側では、それぞれ異なる閾値レベルが設定された複数のコンパレータを用いて各振幅レベルを検出する必要がある。また、受信側でクロック成分を抽出する際にも、伝送信号がゼロクロスするタイミングを検出するためにクロック検出用のコンパレータが用いられる。これらのコンパレータは、それぞれ異なる閾値レベルで振幅レベルの閾値判定を実施する。各コンパレータの出力は、伝送信号の振幅レベルが各閾値レベルを下から上へクロスするタイミングに合わせて立ち上がり、上から下へクロスするタイミングに合わせて立ち下がるパルスで表現されたパルス信号として得られる。
【0008】
理想的な伝送路であれば、上記新方式の伝送信号から得られる各コンパレータの出力は、クロック検出用のコンパレータから出力されるクロック成分のパルス信号(以下、検出クロック)とエッジが揃ったパルス信号(以下、データ信号)となる。しかし、高域遮断特性を持つ伝送路やフィルタ回路等を通過してきた伝送信号から得られるデータ信号のパルス幅は、検出クロックのパルス幅よりも狭いものとなる。特に、上記新方式に係る多値符号波形の伝送信号から振幅レベルを検出しようとする場合、絶対値が大きな閾値レベルを持つコンパレータから出力されたデータ信号のパルス幅は、検出クロックのパルス幅に比べて非常に狭いものとなる。
【0009】
その結果、検出クロックに含まれるパルスのエッジとデータ信号に含まれるパルスのエッジとが大きく離れてしまい、データ抽出時に誤りが発生してしまう。このような問題に対し、例えば、検出クロック又はデータ信号のいずれかを遅延させてパルスのエッジを揃え、パルスのエッジが揃った検出クロック及びデータ信号を用いてデータを抽出する方法が考えられる。しかし、集積回路内の遅延を正確にコントロールすることは非常に困難である。さらに、伝送信号の微妙なゆらぎ等により遅延のタイミングに影響が生じるため、正確に両パルスのエッジを揃えることは難しい。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、クロックとデータとを同期加算して得られる多値符号波形を持つ伝送信号から、より確実にデータを抽出することを可能にする、新規かつ改良された信号処理装置、タイミング同期回路、信号処理方法、及びタイミング同期方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、送信信号とクロックとを同期加算して得られる信号波形を有し、前記クロックの半周期毎に極性が反転する多値信号を受信する信号受信部と、前記信号受信部で受信された多値信号の振幅レベルがゼロクロスするタイミングを検出し、当該検出結果に基づいて前記クロックを再生するクロック再生部と、前記多値信号の振幅レベル間に設定された閾値レベルを前記信号受信部で受信された多値信号の振幅レベルが下から上へクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つデータ信号を生成するデータ信号生成部と、前記データ信号生成部で生成されたデータ信号と前記クロック再生部で再生されたクロックとを同期させて同期データ信号を生成する信号同期部と、前記クロック再生部で再生されたクロックに基づいて前記信号同期部で生成された同期データ信号からデータを抽出するデータ抽出部と、を備える、信号処理装置が提供される。
【0012】
さらに、前記信号同期部は、前記データ信号のパルスが立ち上がるタイミング又は立ち下がるタイミングでトグルするトグル信号を生成するトグル信号生成部と、前記トグル信号生成部で生成されたトグル信号を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させてトグル同期信号を生成するトグル同期信号生成部と、前記トグル信号生成部で生成されたトグル信号と前記トグル同期信号生成部で生成されたトグル同期信号との排他的論理和を出力する排他的論理和回路と、前記排他的論理和回路の出力信号を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させて前記同期データ信号を生成する同期データ信号生成部と、を含む。
【0013】
また、前記データ抽出部は、前記クロック再生部で再生されたクロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングで前記同期データ信号の振幅レベルをサンプリングし、当該サンプリング結果に基づいてデータを抽出するように構成されていてもよい。
【0014】
また、前記データ信号生成部は、複数の前記閾値レベルに対応する複数の前記データ信号を生成するための複数のコンパレータを有しており、前記信号同期部は、前記データ信号生成部が有する各コンパレータに設けられており、前記データ抽出部は、前記各コンパレータに設けられた前記信号同期部により生成される前記閾値レベル毎の同期データ信号に基づいてデータを抽出するように構成されていてもよい。
【0015】
また、前記信号同期部は、前記複数のコンパレータのうち、絶対値が大きい前記閾値レベルに対応するコンパレータに設けられていてもよい。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、入力信号を立ち上がり又は立ち下がりタイミングでトグルするトグル回路と、クロックと前記トグル回路の出力信号とが入力され、当該トグル回路の出力信号を前記クロックの立ち上がり又は立ち下がりタイミングに同期させる第1同期回路と、前記トグル回路の出力信号と前記第1同期回路の出力信号とが入力され、入力された両出力信号の排他的論理和を出力する排他的論理和回路と、前記クロックと前記排他的論理和回路の出力信号とが入力され、当該出力信号を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させる第2同期回路と、を備える、タイミング同期回路が提供される。
【0017】
また、前記クロックは、送信信号とクロックとを同期加算して得られる信号波形を有し、前記クロックの半周期毎に極性が反転する多値信号の振幅レベルがゼロクロスするタイミングに基づいて再生される再生クロックであり、前記入力信号は、前記多値信号の振幅レベル間に設定された閾値レベルを基準にして前記多値信号の振幅レベルを閾値判定し、前記閾値レベルを上回ったタイミングで立ち上がり、下回ったタイミングで立ち下がるパルス信号であり、前記第2同期回路の出力信号は、前記クロックを用いて前記データ信号のデータを抽出するために用いられるように構成されていてもよい。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、送信信号とクロックとを同期加算して得られる信号波形を有し、前記クロックの半周期毎に極性が反転する多値信号を受信する信号受信ステップと、前記信号受信ステップで受信された多値信号の振幅レベルがゼロクロスするタイミングを検出し、当該検出結果に基づいて前記クロックを再生するクロック再生ステップと、前記多値信号の振幅レベル間に設定された閾値レベルを前記信号受信ステップで受信された多値信号の振幅レベルが下から上へクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つデータ信号を生成するデータ信号生成ステップと、前記データ信号生成ステップで生成されたデータ信号と前記クロック再生ステップで再生されたクロックとを同期させて同期データ信号を生成する信号同期ステップと、前記クロック再生ステップで再生されたクロックに基づいて前記信号同期ステップで生成された同期データ信号からデータを抽出するデータ抽出ステップと、を有する、信号処理方法が提供される。
【0019】
さらに、前記信号同期ステップは、前記データ信号のパルスが立ち上がるタイミング又は立ち下がるタイミングでトグルするトグル信号を生成するトグル信号生成ステップと、前記トグル信号生成ステップで生成されたトグル信号を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させてトグル同期信号を生成するトグル同期信号生成ステップと、前記トグル信号生成ステップで生成されたトグル信号と前記トグル同期信号生成ステップで生成されたトグル同期信号との排他的論理和を算出する排他的論理和算出ステップと、前記排他的論理和算出ステップの算出結果を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させて前記同期データ信号を生成する同期データ信号生成ステップと、を含む。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、入力信号を立ち上がり又は立ち下がりタイミングでトグルするトグルステップと、クロック及び前記トグルステップの出力を入力とし、当該トグルステップの出力を前記クロックの立ち上がり又は立ち下がりタイミングに同期させる第1同期ステップと、前記トグルステップの出力及び前記第1同期ステップの出力を入力とし、入力された両出力の排他的論理和を算出する排他的論理和算出ステップと、前記クロック及び前記排他的論理和算出ステップの出力を入力とし、当該出力を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させる第2同期ステップと、を含む、タイミング同期方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、クロックとデータとを同期加算して得られる多値符号波形を持つ伝送信号から、より確実にデータを抽出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】パラレル伝送方式を採用した携帯端末の構成例を示す説明図である。
【図2】シリアル伝送方式を採用した携帯端末の構成例を示す説明図である。
【図3】新方式に係る携帯端末の機能構成例を示す説明図である。
【図4】AMI符号の信号波形を示す説明図である。
【図5】AMI符号をベースとする新方式の多値符号生成方法及び振幅判定方法の一例を示す説明図である。
【図6】AMI符号をベースとする新方式の多値信号(6値信号)について受信側で観測されるアイパターンを模式的に示した説明図である。
【図7】マンチェスター符号の信号波形を示す説明図である。
【図8】マンチェスター符号をベースとする新方式の多値符号生成方法及び振幅判定方法の一例を示す説明図である。
【図9】マンチェスター符号をベースとする新方式の多値信号(4値信号)について受信側で観測されるアイパターンを模式的に示した説明図である。
【図10】受信側で多値信号を閾値判定して得られるデータ信号とクロックとの間のパルス幅の違いを説明するための説明図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るタイミング同期回路の一構成例を示す説明図である。
【図12】受信側で多値信号を閾値判定して得られるデータ信号のパルス波形、及びクロックのパルス波形を模式的に示した説明図である。
【図13】同実施形態に係るタイミング同期方法に関し、タイミング同期回路において実行される信号処理の流れを示す説明図である。
【図14】同実施形態に係るタイミング同期回路の一構成例を示す説明図である。
【図15】受信側で多値信号を閾値判定して得られるデータ信号のパルス波形、及びクロックのパルス波形を模式的に示した説明図である。
【図16】同実施形態に係るタイミング同期方法に関し、タイミング同期回路において実行される信号処理の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
[説明の流れについて]
ここで、以下に記載する本発明の実施形態に関する説明の流れについて簡単に述べる。まず、図1を参照しながら、パラレル伝送方式を採用した携帯端末100の装置構成について簡単に説明する。この中で、パラレル伝送方式に関する問題点について指摘する。次いで、図2を参照しながら、シリアル伝送方式を採用した携帯端末130の装置構成について簡単に説明する。
【0025】
次いで、図3を参照しながら、上記の新方式に係る携帯端末130の機能構成について説明する。次いで、図4、図5を参照しながら、AMI符号をベースとした上記新方式に係る符号化方法について説明する。なお、AMIは、Alternate Mark Inversionの略である。また、図6を参照しながら、AMI符号をベースとする当該符号化方法により生成される多値信号の信号波形について説明する。次いで、図7、図8を参照しながら、マンチェスター符号をベースとした上記新方式に係る符号化方法について説明する。また、図9を参照しながら、マンチェスター符号をベースとする当該符号化方法により生成される多値信号の信号波形について説明する。
【0026】
次いで、図10を参照しながら、上記新方式の符号化方法で生成された多値信号を用いる場合の注意点及び本実施形態が課題とする技術的事項について説明する。次いで、図11を参照しながら、上記の新方式に係る多値符号からデータをより確実に抽出するために考案された本実施形態に係るタイミング同期回路の一構成について説明する。この中で、図12、図13を参照しながら、タイミング同期回路に入力される信号波形、及び当該タイミング同期回路で実行される処理の流れについても説明する。
【0027】
次いで、図14〜図16を参照しながら、上記の新方式に係る多値符号からデータをより確実に抽出するために考案された本実施形態に係るタイミング同期回路の構成、当該タイミング同期回路に入力される信号波形、及び当該タイミング同期回路で実行される処理の流れについて説明を補足する。最後に、本実施形態の技術的思想について纏め、当該技術的思想から得られる作用効果について簡単に説明する。
【0028】
(説明項目)
1:はじめに
1−1:パラレル伝送方式を採用した携帯端末100の装置構成
1−2:シリアル伝送方式を採用した携帯端末130の装置構成
1−3:新方式に係る携帯端末130の機能構成
1−3−1:AMI符号ベースの多値符号に係る符号化方法
1−3−2:AMI符号ベースの多値符号に係る復号方法
1−3−3:マンチェスター符号ベースの多値符号に係る符号化方法
1−3−4:マンチェスター符号ベースの多値符号に係る復号方法
2:実施形態
2−1:タイミング同期回路180の構成
2−1−1:回路構成
2−1−2:同期処理の流れ
2−2:タイミング同期回路190の構成
2−2−1:回路構成
2−2−2:同期処理の流れ
3:まとめ
【0029】
<1:はじめに>
まず、本発明の一実施形態に係る技術について詳細な説明をするに先立ち、同実施形態が解決しようとする課題について簡単に纏める。
【0030】
[1−1:パラレル伝送方式を採用した携帯端末100の装置構成]
まず、図1を参照しながら、パラレル伝送方式を採用した携帯端末100の装置構成について簡単に説明する。図1は、パラレル伝送方式を採用した携帯端末100の装置構成の一例を示す説明図である。図1には、携帯端末100の一例として携帯電話が模式的に描画されている。しかし、以下で説明する技術の適用範囲は携帯電話に限定されない。例えば、ノートPC等の情報処理装置や各種の携帯型電子機器にも適用可能である。
【0031】
図1に示すように、携帯端末100は、主に、表示部102と、液晶部104(LCD)と、接続部106と、操作部108と、ベースバンドプロセッサ110(BBP)と、パラレル信号線路112と、により構成される。但し、LCDは、Liquid Crystal Displayの略である。なお、表示部102を表示側、操作部108を本体側と呼ぶ場合がある。なお、ここでは説明の都合上、パラレル信号線路112を介して映像信号が伝送されるケースを例に挙げる。もちろん、パラレル信号線路112を介して伝送される信号の種類はこれに限定されず、例えば、制御信号や音声信号等もある。
【0032】
図1に示すように、表示部102には、液晶部104が設けられている。そして、液晶部104には、パラレル信号線路112を介して伝送された映像信号が入力される。そして、液晶部104は、入力された映像信号に基づいて映像を表示する。また、接続部106は、表示部102と操作部108とを接続する部材である。この接続部106を形成する接続部材は、例えば、表示部102をZ−Y平面内で180度回転できる構造を有する。また、この接続部材は、X−Z平面内で表示部102が回転可能に形成されていてもよい。この場合、携帯端末100は折り畳みできる構造になる。なお、この接続部材は、自由な方向に表示部102を可動にする構造を有していてもよい。
【0033】
ベースバンドプロセッサ110は、携帯端末100の通信制御、及びアプリケーションの実行機能を提供する演算処理部である。ベースバンドプロセッサ110から出力されるパラレル信号は、パラレル信号線路112を通じて表示部102の液晶部104に伝送される。パラレル信号線路112には、多数の信号線が配線されている。例えば、携帯電話の場合、この信号線数nは50本程度である。また、映像信号の伝送速度は、液晶部104の解像度がQVGAの場合、130Mbps程度となる。そして、パラレル信号線路112は、接続部106を通るように配線されている。
【0034】
つまり、接続部106には、パラレル信号線路112を形成する多数の信号線が配線されている。上記のように、接続部106の可動範囲を広げると、その動きによりパラレル信号線路112に損傷が発生する危険性が高まる。その結果、パラレル信号線路112の信頼性が損なわれてしまう。一方で、パラレル信号線路112の信頼性を維持しようとすると、接続部106の可動範囲が制約されてしまう。こうした理由から、接続部106を形成する可動部材の自由度、及びパラレル信号線路112の信頼性を両立させる目的で、シリアル伝送方式が携帯電話等に採用されることが多くなってきている。また、放射電磁雑音(EMI)の観点からも、伝送線路のシリアル化が進められている。
【0035】
[1−2:シリアル伝送方式を採用した携帯端末130の装置構成]
そこで、図2を参照しながら、シリアル伝送方式を採用した携帯端末130の装置構成について簡単に説明する。図2は、シリアル伝送方式を採用した携帯端末130の装置構成の一例を示す説明図である。図2には、携帯端末130の一例として携帯電話が模式的に描画されている。しかし、以下で説明する技術の適用範囲は携帯電話に限定されない。例えば、ノートPC等の情報処理装置や各種の携帯型電子機器にも適用可能である。また、図1に示したパラレル伝送方式の携帯端末100と実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0036】
図2に示すように、携帯端末130は、主に、表示部102と、液晶部104(LCD)と、接続部106と、操作部108とを有する。さらに、携帯端末130は、ベースバンドプロセッサ110(BBP)と、パラレル信号線路132、136と、シリアル信号線路134と、シリアライザ150と、デシリアライザ170とを有する。
【0037】
携帯端末130は、上記の携帯端末100とは異なり、接続部106に配線されたシリアル信号線路134を通じてシリアル伝送方式により映像信号を伝送している。そのため、操作部108には、ベースバンドプロセッサ110から出力されたパラレル信号をシリアル化するためのシリアライザ150が設けられている。一方、表示部102には、シリアル信号線路134を通じて伝送されるシリアル信号をパラレル化するためのデシリアライザ170が設けられている。
【0038】
シリアライザ150は、ベースバンドプロセッサ110から出力され、かつ、パラレル信号線路132を介して入力されたパラレル信号をシリアル信号に変換する。シリアライザ150により変換されたシリアル信号は、シリアル信号線路134を通じてデシリアライザ170に入力される。シリアル信号が入力されると、デシリアライザ170は、入力されたシリアル信号を元のパラレル信号に復元する。そして、デシリアライザ170は、パラレル信号線路136を通じてパラレル信号を液晶部104に入力する。
【0039】
シリアル信号線路134には、例えば、NRZデータが単独で伝送されるか、或いは、データ信号とクロック信号とが一緒に伝送される。また、シリアル信号線路134の配線数kは、図1の携帯端末100が有するパラレル信号線路112の配線数nよりも大幅に少ない(1≦k≪n)。例えば、配線数kは、数本程度まで削減することができる。そのため、シリアル信号線路134が配線される接続部106の可動範囲に関する自由度は、パラレル信号線路112が配線される接続部106に比べて非常に大きい。さらに、シリアル信号線路134は高い信頼性を有する。シリアル信号線路134を流れるシリアル信号には、通常、LVDS等の差動信号が用いられる。但し、LVDSは、Low Voltage Differential Signalの略である。
【0040】
以上、携帯端末130の装置構成について簡単に説明した。シリアル伝送方式を採用した携帯端末130の全体的な装置構成は概ね上記の通りである。しかしながら、接続部106に配線される信号線の本数をどの程度低減させることができるかは、シリアル信号線路134に流れる信号の形態に依存する。そして、この信号の形態を決定するのがシリアライザ150及びデシリアライザ170である。以下では、上記の新方式に係るシリアライザ150及びデシリアライザ170の機能構成について説明する。
【0041】
[1−3:新方式に係る携帯端末130の機能構成]
ここでは、図3を参照しながら、新方式に係る携帯端末130の機能構成について説明する。図3は、新方式に係る携帯端末130の機能構成例を示す説明図である。但し、新方式の技術的特徴はデータの符号化方法及び符号化データの伝送方法にある。そのため、携帯端末130の送信部を成すシリアライザ150の主な機能構成、及び携帯端末130の受信部を成すデシリアライザ170の主な機能構成のみを図3に示した。従って、その他の一般的な構成要素については記載を省略している点に注意されたい。
【0042】
図3に示すように、シリアライザ150は、主に、符号化部152と、ドライバ154と、重畳部156とを有する。また、デシリアライザ170は、主に、分離部172と、レシーバ174と、クロック抽出部176と、復号部178とを有する。そして、シリアライザ150とデシリアライザ170とは、同軸ケーブル160を通じて電気的に接続されている。なお、同軸ケーブル160は、シリアル信号線路134の一例である。
【0043】
パラレル信号線路132を通じてベースバンドプロセッサ110から送信データ及び送信クロックがシリアライザ150に送信されると、シリアライザ150に送信された送信データ及び送信クロックは符号化部152に入力される。符号化部152は、新方式の符号化方法を用いて送信データから多値符号を生成する。ここで言う多値符号とは、1つのビット値を複数の振幅レベルで表現した符号のことである。例えば、ビット値1を振幅レベル+3、+1、−1、−3の4値で表現し、ビット値0を振幅レベル+2、−2で表現した6値符号が上記多値符号の一例である。
【0044】
また、符号化部152により生成される多値符号は、送信クロックの半周期毎に極性(+/−)が反転するように構成されている。このような多値符号は、後述するように、AMI符号、マンチェスター符号、パーシャル・レスポンス符号等、バイポーラ符号やダイコード符号に送信クロックを同期加算することで生成することができる。但し、実際には信号処理にて同期加算を実施することは少ない。多くの場合、バイポーラ符号と送信クロックとを同期加算して得られる信号波形の振幅レベルと、送信データのビット値とを対応付けたテーブル等を用いて送信データから直接的に多値符号が生成される。さて、このようにして生成された多値符号は、ドライバ154により適切な振幅レベルに変換され、重畳部156に入力される。
【0045】
符号化部152で生成される多値符号は、送信クロックの半周期毎に極性反転する波形であるため、ほとんど直流成分を含まない。そのため、DC電源に多値符号を重畳して伝送したとしても、受信側で容易に多値符号を分離することができる。また、DC電源に多値符号を重畳して伝送することで、接続部106の配線数を1本程度まで削減するが可能になる。このような理由から、図3に例示したシリアライザ150には重畳部156が設けられており、重畳部156で多値符号にDC電源が重畳される。重畳部156でDC電源が重畳された多値符号(以下、重畳信号)は、同軸ケーブル160を通じて分離部172に入力される。
【0046】
同軸ケーブル160を通じて分離部172に入力された重畳信号は、分離部172においてDC電源と多値符号とに分離される。そして、分離部172により分離された多値符号は、レシーバ174を介してクロック抽出部176、及び復号部178に入力される。まず、クロック抽出部176において、入力された多値符号からクロック成分が抽出され、送信クロックが再生される。先に述べた通り、新方式に係る多値符号は、送信クロックの半周期毎に極性が反転する波形を有する。そのため、多値符号の振幅レベルがゼロクロスするタイミングを検出することで、PLLを用いずとも、その検出結果から送信クロックを再生することができるのである。
【0047】
このように、クロック抽出部176は、閾値レベル0に設定されたコンパレータ等を用いて多値符号の振幅レベルがゼロクロスするタイミングを検出し、送信クロックを再生する。なお、以下の説明において、クロック抽出部176で再生された送信クロックのことを検出クロックと呼ぶことにする。クロック抽出部176で再生された検出クロックは、表示部102の他の構成要素に向けて出力されると共に、復号部178に入力される。多値符号及び検出クロックが入力されると、復号部178は、多値符号の振幅レベルが所定の閾値レベルを上回るタイミング及び下回るタイミングを検出すると共に、その検出結果及び検出クロックを用いて当該多値符号の各振幅レベルを検出する。
【0048】
さらに、復号部178は、検出した多値符号の振幅レベルに基づいて送信データを復号する。復号部178で復号された送信データは、受信データとして表示部102の他の構成要素に向けて出力される。以上説明したように、新方式に係る携帯端末130は、1つのビット値を複数の振幅レベルで表現した多値符号を用いて送信データを伝送する。上記の通り、この多値符号はクロックの半周期毎に極性が反転する波形を有する。そのため、受信側で多値符号からクロック成分を抽出してPLLを用いずにクロックを再生することが可能になる。その結果、受信側にPLLを設けずに済む分だけ回路規模や消費電力を低減させることができるのである。
【0049】
(1−3−1:AMI符号ベースの多値符号に係る符号化方法)
ここで、図4、図5を参照しながら、AMI符号をベースとする新方式の多値符号を生成するための符号化方法について説明する。ここで説明する符号化方法は、上記の携帯端末130において符号化部152の機能により実現される。上記の通り、新方式の多値符号は、バイポーラ符号にクロックを同期加算して得られる信号波形を有する。ここでは、バイポーラ符号の一例としてデューティ100%のAMI符号を例に挙げる。
【0050】
(AMI符号の信号波形について)
まず、図4を参照しながら、AMI符号の波形について簡単に説明する。図4は、AMI符号の信号波形の一例を示す説明図である。但し、図中のAは任意の正数である。
【0051】
AMI符号は、ビット値0を電位0で表現し、ビット値1を電位A又は−Aで表現する符号である。但し、電位Aと電位−Aとは交互に繰り返される。つまり、電位Aでビット値1が表現された後、次にビット値1が現れた場合、そのビット値1は電位−Aで表現される。図4には、タイミングT1、…、T14においてビット値0、1、0、1、1、0、0、0、0、1、1、1、0、1が入力された場合に、AMI符号則に基づいて符号化することにより得られる信号波形が示されている。
【0052】
図4の例において、ビット値1は、タイミングT2、T4、T5、T10、T11、T12、T14に現れる。タイミングT2においてAMI符号の振幅レベルが電位Aである場合、タイミングT4における振幅レベルは極性が反転して電位−Aとなる。同様に、次にビット値1が現れるタイミングT5においてはAMI符号の振幅レベルが電位Aとなる。このように、AMI符号は、ビット値1に対応する振幅レベルがプラスとマイナスとで交互に反転する極性反転特性を有する。なお、ビット値0に対応するAMI符号の振幅レベルは全て電位0で表現される。
【0053】
上記のように、AMI符号は極性反転特性を有するため、DC成分を含まないという特徴がある。しかし、ビット値0に対応する電位0は連続して現れることがある。例えば、図4の例では、タイミングT6、…、T9で電位0が連続している。このように電位0が連続する期間が存在すると、その期間で振幅レベルに変化が無いため、AMI符号の受信波形からPLLを用いずにクロック成分を取り出すことが出来ない。こうした問題を受け、上記の新方式に係る多値符号を用いてデータ伝送する方法が考案された。
【0054】
(符号化方法について)
ここで、図5を参照しながら、上記新方式の符号化方法に関し、AMI符号をベースとする多値符号の生成方法について説明する。図5は、AMI符号をベースとする多値符号の生成方法を示す説明図である。なお、ここではAMI符号にクロックを同期加算して多値符号を生成する方法について説明するが、ビット値0、1と多値符号の各振幅レベルとを対応付ける符号則に基づいて送信データから多値符号の信号波形を直接生成するように構成されていてもよい。この場合、符号則は、テーブル等の形式で符号化部152により保持される。
【0055】
図5(C)には、新方式の符号化方法で生成されるAMI符号ベースの多値符号が示されている。この多値符号は、ビット値1を複数の電位−1、−3、1、3で表現し、ビット値0をこれらとは異なる複数の電位−2、2で表現したものである。また、この多値符号は、振幅レベルがクロックの半周期毎に極性反転し、連続して同じ電位とならないように構成されている。例えば、図5の例ではタイミングT6、…、T9においてビット値0が続く期間が存在するが、電位が−2、2、−2、2となっており、連続して同じ電位とならない。このような多値符号を利用することで、同じビット値が連続して現れても、振幅レベルがゼロクロスするタイミングを検出することでクロック成分を抽出することが可能になる。
【0056】
図5(C)の多値符号の信号波形は、例えば、同図(A)に示すAMI符号と同図(B)に示すクロックとを同期加算することにより得られる。図5に示すAMI符号の信号波形(A)は、図4に示したAMI符号と同じ信号波形である。また、図5(B)に示すクロックは、AMI符号の伝送速度をFbとしたとき、その半分の周波数Fb/2を持つものである。また、このクロック(B)は、AMI符号(A)よりも大きな振動幅を持つ。図5の例では、AMI符号(A)の振動幅が−1から+1であるのに対し、クロック(B)の振動幅は−2から+2に設定されている。より一般的には、クロック(B)の振幅レベルをAMI符号のN倍(N>1)に設定することが可能である。
【0057】
図5に示したAMI符号(A)とクロック(B)とをエッジを揃えて同期加算すると、同図(C)に示す多値符号が生成される。このとき、クロック(B)の振動幅がAMI符号(A)の振動幅よりも大きく設定されているため、1つのビット値を複数の振幅レベルで表現した多値符号が生成される。例えば、AMI符号(A)の振幅レベルをA1と表記し、クロック(B)の振幅レベルをA2と表記すると、多値符号(C)の振幅レベルA1+A2は、1+2=3、0+2=2、−1+2=1、1−2=−1、0−2=−2、−1−2=−3の6値となる。また、多値符号(C)の振幅レベルは、クロック(B)の半周期毎に極性反転する点にも注意されたい。
【0058】
上記の通り、新方式に係る多値符号(C)は、AMI符号(A)とクロック(B)とを同期加算することにより得られる。但し、ビット値0、1と多値符号(C)の振幅レベルとを直接対応付けるテーブル等を用いて、送信データから多値符号(C)を直接生成することも可能である。このようなテーブル等を用いると、例えば、ビット列0、1、0、1、1、0、…、1は、多値符号(C)の振幅レベル2、−1、2、−3、3、−2、…、−1に直接変換される。なお、いずれの方法を用いたとしても、送信データのビット値0が多値符号(C)の振幅レベル2、−2で表現され、ビット値1が振幅レベル3、1、−1、−3で表現される。
【0059】
以上、AMI符号(A)をベースに生成される新方式の多値符号(C)に係る符号化方法について説明した。次に、この多値符号(C)から元のデータを復号する方法について説明する。
【0060】
(1−3−2:AMI符号ベースの多値符号に係る復号方法)
ここでは、図5、図6を参照しながら、AMI符号ベースの多値符号(C)に関する復号方法について説明する。以下では、多値符号(C)からクロック成分を抽出する方法、多値符号(C)から各振幅レベルを検出する方法、検出した振幅レベルからデータを復号する方法について順次説明する。なお、ここで説明するクロック抽出処理は、クロック抽出部176の機能により実現される。また、振幅レベルの検出処理及びデータの抽出処理は、復号部178の機能により実現される。
【0061】
(クロック抽出方法について)
まず、図5を参照する。先に述べた通り、多値符号(C)は、クロックの半周期毎に振幅レベルの極性が反転する。従って、クロック抽出部176は、閾値レベルTH1(TH1=0)が設定されたコンパレータを用いて多値符号(C)の振幅レベルがゼロクロスするタイミングを検出することで、クロック成分を抽出することができる。例えば、多値符号(C)を閾値レベルTH1でコンパレートすると、多値符号(C)の振幅レベルが下から上へゼロクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へゼロクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つ検出クロックが得られる(図10を参照)。このようにして得られた検出クロックは復号部178に入力される。
【0062】
(振幅レベル検出方法及びデータ復号方法について)
図5に示すように、AMI符号ベースの新方式に係る多値符号(C)は、6つの振幅レベル3、2、1、−1、−2、−3を有する。そこで、これらの振幅レベルを検出するには、少なくとも4つの閾値レベルが必要になる。
【0063】
例えば、振幅レベル3、2の中間付近に閾値レベルTH3(TH3=2.5)が設定され、振幅レベル2、1の中間付近に閾値レベルTH2(TH2=1.5)が設定される。さらに、振幅レベル−1、−2の中間付近に閾値レベルTH4(TH4=−1.5)が設定され、振幅レベル−2、−3の中間付近に閾値レベルTH5(TH5=−2.5)が設定される。そして、各閾値レベルに対応するコンパレータが設けられ、多値信号(C)の振幅レベルが各閾値レベルをクロスするタイミングが検出される。
【0064】
例えば、多値符号(C)を閾値レベルTH2でコンパレートすると、閾値レベルTH2に対し、多値符号(C)の振幅レベルが下から上へクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つデータ信号が得られる。また、多値符号(C)を閾値レベルTH3でコンパレートすると、閾値レベルTH3に対し、多値符号(C)の振幅レベルが下から上へクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つデータ信号が得られる(図10を参照)。
【0065】
同様に、多値符号(C)を閾値レベルTH4でコンパレートすると、閾値レベルTH4に対し、多値符号(C)の振幅レベルが下から上へクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つデータ信号が得られる。そして、多値符号(C)を閾値レベルTH5でコンパレートすると、閾値レベルTH5に対し、多値符号(C)の振幅レベルが下から上へクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つデータ信号が得られる。
【0066】
各閾値レベルに関してデータ信号が得られると、復号部178は、これらデータ信号の組み合わせから多値符号(C)の振幅レベルを判定する。例えば、あるタイミングで閾値レベルTH3に対応するデータ信号の振幅レベルが1の場合、多値符号(C)の振幅レベルは3であると判定される。また、あるタイミングで閾値レベルTH3に対応するデータ信号の振幅レベルが0、閾値レベルTH2に対応するデータ信号の振幅レベルが1の場合、多値符号(C)の振幅レベルは2であると判定される。さらに、あるタイミングで閾値レベルTH2に対応するデータ信号の振幅レベルが0、検出クロックの振幅レベルが1の場合、多値符号(C)の振幅レベルは1であると判定される。
【0067】
同様に、あるタイミングで閾値レベルTH5に対応するデータ信号の振幅レベルが0の場合、多値符号(C)の振幅レベルは−3であると判定される。また、あるタイミングで閾値レベルTH5に対応するデータ信号の振幅レベルが1、閾値レベルTH4に対応するデータ信号の振幅レベルが0の場合、多値符号(C)の振幅レベルは−2であると判定される。さらに、あるタイミングで閾値レベルTH4に対応するデータ信号の振幅レベルが1、検出クロックの振幅レベルが0の場合、多値符号(C)の振幅レベルは−1であると判定される。このようにして得られた振幅レベルの判定結果は、復号部178においてビット値に変換される。
【0068】
先に述べた通り、多値符号(C)の振幅レベル3、1、−1、−3がビット値1に対応し、振幅レベル2、−2がビット値0に対応する。そこで、上記の判定結果に応じて、復号部178は、振幅レベル3、1、−1、−3をビット値1に変換し、振幅レベル2、−2をビット値0に変換する。その結果、多値符号(C)から送信データが復号される。AMI符号ベースの新方式に係る振幅レベル検出方法及びデータ復号方法は上記の通りである。但し、ここでは理想的な伝送路を想定して受信側で図5(C)に示すような多値符号(C)が受信されるものと仮定していた。このような仮定の下では、上記の方法により受信側で正しく振幅レベルが判定され、その判定結果に基づいて正しく送信データが復号される。
【0069】
しかしながら、実際には、伝送信号が高域遮断特性を持つ伝送路やフィルタ回路等の影響を受け、図6に示すような形状を持つアイパターンが観測される。図6に例示したアイパターンの特徴は、振幅レベルの絶対値が大きくなるに連れて先細りする波形にある。例えば、閾値レベルTH3が振幅レベルとクロスする点の間隔L3は、振幅レベルがゼロクロスする点の間隔L1よりも小さいことが分かる。このことは、図10に示すように、閾値レベルTH3でコンパレートして得られるデータ信号のパルス幅L3が検出クロックのパルス幅L1よりも狭いことに相当する。また、図中には明示していないが、閾値レベルTH2、TH4、TH5に対応するデータ信号のパルス幅L2、L4、L5についても同様のことが言える。
【0070】
このような先細りする波形の場合、閾値レベルTH2に対応するデータ信号のパルス幅L2よりも、閾値レベルTH3に対応するデータ信号のパルス幅L3の方が小さくなる。同様に、閾値レベルTH4に対応するデータ信号のパルス幅L4よりも、閾値レベルTH5に対応するデータ信号のパルス幅L5の方が小さくなる。つまり、閾値レベルの絶対値が大きいほど、検出クロックのパルス幅とデータ信号のパルス幅との差が大きくなる。この差が所定以上に大きくなると、検出クロックの立ち上がりタイミング、立ち下がりタイミングのいずれを用いてもデータ信号から正しく振幅レベルを抽出することが出来なくなり、結果としてビット値の復号結果に誤りが発生してしまう。
【0071】
これまで述べてきた通り、新方式に係るデータ伝送方法においては、多値符号(C)に利用が前提となる。しかし、多値符号(C)は、AMI符号(A)等の2値符号に比べ、振幅レベルの振動幅が大きい。そのため、伝送路で高域遮断の影響を受けた場合に、2値符号よりも多値符号の方が、絶対値の大きい振幅レベルを含む分だけ復号時に誤りが発生しやすい。このような伝送誤りに対する対策としては、多値符号(C)の多値数を低減させる方法、或いは、検出クロック又はデータ信号を遅延させてパルスのエッジを揃える方法が考えられる。
【0072】
しかし、多値符号(C)の多値数を4値程度まで減らすことが出来たとしても、2値符号に比べると復号時に誤りが発生する可能性は依然として高い。また、遅延を用いて検出クロックのエッジとデータ信号のエッジとを揃えようとしても、集積回路内の遅延を正確にコントロールすることは非常に難しい。さらに、伝送信号の微妙なゆらぎ等により遅延のタイミングに影響が生じるため、正確にエッジを揃えることは困難である。こうした問題点に鑑み、本件発明者は、多値符号(C)から抽出した検出クロックにデータ信号を適切にタイミング同期させるためのタイミング同期回路を考案した。このタイミング同期回路を用いることで、新方式に係るデータ伝送の確実性を向上させることができる。このタイミング同期回路の構成及び適用事例については後述する。
【0073】
(1−3−3:マンチェスター符号ベースの多値符号に係る符号化方法)
さて、新方式に係る符号化方法は、上記のAMI符号をベースとする他、パーシャル・レスポンス符号、マンチェスター符号、CMI(Coded Mark Inversion)符号等、様々なバイポーラ符号やダイコード符号をベースとすることも可能である。そこで、図7、図8を参照しながら、マンチェスター符号をベースとする新方式の多値符号を生成するための符号化方法について説明する。ここで説明する符号化方法は、上記の携帯端末130において符号化部152の機能により実現される。
【0074】
(マンチェスター符号の信号波形について)
まず、図7を参照しながら、マンチェスター符号の波形について簡単に説明する。図7は、マンチェスター符号の信号波形の一例を示す説明図である。但し、図中のAは任意の正数である。マンチェスター符号は、ビット値0を電位−AからAへの立ち上がり波形で表現し、ビット値1を電位Aから−Aへの立ち下がり波形で表現する符号である。
【0075】
一例として、図7には、タイミングT1、…、T6においてビット値1、0、0、1、1、1が入力された場合に、マンチェスター符号則に従って符号化することにより得られる信号波形が示されている。例えば、タイミングT1、T4、T5、T6で入力されるビット値1は、電位Aから−Aに立ち下がる波形で表現されている。また、タイミングT2、T3で入力されるビット値0は、電位−AからAに立ち上がる波形で表現されている。このように、マンチェスター符号の振幅レベルは電位−A又はAの2値で表現される。一方、先に説明したAMI符号の振幅レベルは電位−A、0、Aの3値で表現される。従って、AMI符号に比べてマンチェスター符号の方が取り得る振幅レベルの種類が少ない。
【0076】
(符号化方法について)
次に、図8を参照しながら、上記新方式の符号化方法に関し、マンチェスター符号をベースとする多値符号の生成方法について説明する。図8は、マンチェスター符号をベースとする多値符号の生成方法を示す説明図である。なお、ここではマンチェスター符号にクロックを同期加算して多値符号を生成する方法について説明するが、ビット値0、1と多値符号の各振幅レベルとを対応付ける符号則に基づいて送信データから多値符号の信号波形を直接生成するように構成されていてもよい。この場合、符号則は、テーブル等の形式で符号化部152により保持される。
【0077】
図8(C)には、新方式の符号化方法で生成されるマンチェスター符号ベースの多値符号が示されている。この多値符号は、ビット値1を電位3から−3への変化で表現し、ビット値0を電位1から−1への変化で表現したものである。また、この多値符号は、振幅レベルがクロックの半周期毎に極性反転し、連続して同じ電位とならないように構成されている。このような多値符号を利用することにより、振幅レベルがゼロクロスするタイミングを検出することでクロック成分を容易に抽出することが可能になる。
【0078】
図8(C)の多値符号の信号波形は、例えば、同図(A)に示すマンチェスター符号と同図(B)に示すクロックとを同期加算することにより得られる。図8に示すマンチェスター符号の信号波形(A)は、図7に示したものと同じ信号波形である。また、図8(B)に示すクロックは、マンチェスター符号の伝送速度Fbと同じ周波数Fbを持つものである。また、このクロック(B)は、マンチェスター符号(A)よりも大きな振動幅を持つ。図8の例では、マンチェスター符号(A)の振動幅が−1から+1であるのに対し、クロック(B)の振動幅は−2から+2に設定されている。より一般的には、クロック(B)の振幅レベルをマンチェスター符号のN倍(N>1)に設定することが可能である。
【0079】
図8に示したマンチェスター符号(A)とクロック(B)とをエッジを揃えて同期加算すると、同図(C)に示す多値符号が生成される。このとき、クロック(B)の振動幅がマンチェスター符号(A)の振動幅よりも大きく設定されているため、1つのビット値を複数の振幅レベルで表現した多値符号が生成される。例えば、マンチェスター符号(A)の振幅レベルをA1と表記し、クロック(B)の振幅レベルをA2と表記すると、多値符号(C)の振幅レベルA1+A2は、1+2=3、−1+2=1、1−2=−1、−1−2=−3の4値となる。また、多値符号(C)の振幅レベルは、クロック(B)の半周期毎に極性反転する点にも注意されたい。
【0080】
上記の通り、新方式に係る多値符号(C)は、マンチェスター符号(A)とクロック(B)とを同期加算することにより得られる。但し、ビット値0、1と多値符号(C)の振幅レベルとを直接対応付けるテーブル等を用いて、送信データから多値符号(C)を直接生成することも可能である。このようなテーブル等を用いると、例えば、ビット列1、0、0、1、1、1は、多値符号(C)の振幅レベル(3,−3)、(1,−1)、(1,−1)、(3,−3)、(3,−3)、(3,−3)に直接変換される。但し、(X,Y)は、振幅レベルX、Yが続けて現れることを意味する。なお、いずれの方法を用いたとしても、送信データのビット値0が多値符号(C)の振幅レベル(1、−1)で表現され、ビット値1が振幅レベル(3,−3)で表現される。
【0081】
以上、マンチェスター符号(A)をベースに生成される新方式の多値符号(C)に係る符号化方法について説明した。次に、この多値符号(C)から元のデータを復号する方法について説明する。
【0082】
(1−3−4:マンチェスター符号ベースの多値符号に係る復号方法)
ここでは、図8、図9を参照しながら、マンチェスター符号ベースの多値符号(C)に関する復号方法について説明する。以下では、多値符号(C)からクロック成分を抽出する方法、多値符号(C)から各振幅レベルを検出する方法、検出した振幅レベルからデータを復号する方法について順次説明する。なお、ここで説明するクロック抽出処理は、クロック抽出部176の機能により実現される。また、振幅レベルの検出処理及びデータの抽出処理は、復号部178の機能により実現される。
【0083】
(クロック抽出方法について)
まず、図8を参照する。先に述べた通り、多値符号(C)は、クロックの半周期毎に振幅レベルの極性が反転する。従って、クロック抽出部176は、閾値レベルTH1(TH1=0)が設定されたコンパレータを用いて多値符号(C)の振幅レベルがゼロクロスするタイミングを検出することでクロック成分を抽出することができる。例えば、多値符号(C)を閾値レベルTH1でコンパレートすると、多値符号(C)の振幅レベルが下から上へゼロクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へゼロクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つ検出クロックが得られる。このようにして得られた検出クロックは復号部178に入力される。
【0084】
(振幅レベル検出方法及びデータ復号方法について)
図8に示すように、マンチェスター符号ベースの新方式に係る多値符号(C)は、4つの振幅レベル3、1、−1、−3を有する。そこで、これらの振幅レベルを検出するには、少なくとも2つの閾値レベルが必要になる。
【0085】
例えば、振幅レベル3、1の中間付近に閾値レベルTH2’(TH2’=2)が設定され、振幅レベル−3、−1の中間付近に閾値レベルTH3’(TH3’=−2)が設定される。そして、各閾値レベルに対応するコンパレータが設けられ、多値信号(C)の振幅レベルが各閾値レベルをクロスするタイミングが検出される。このように、マンチェスター符号ベースの多値符号(C)は、AMI符号ベースの多値符号(C)に比べて多値数が少ない。そのため、振幅レベルの判定に用いる閾値レベルの種類が少なくて済む。また、マンチェスター符号ベースの多値符号(C)は、AMI符号ベースの多値符号(C)に比べて各振幅レベルの間隔を広くとることができる。そのため、閾値判定の際に誤判定が発生しにくくなる。
【0086】
例えば、多値符号(C)を閾値レベルTH2’でコンパレートすると、閾値レベルTH2’に対し、多値符号(C)の振幅レベルが下から上へクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つデータ信号が得られる。また、多値符号(C)を閾値レベルTH3’でコンパレートすると、閾値レベルTH3’に対し、多値符号(C)の振幅レベルが下から上へクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つデータ信号が得られる。
【0087】
各閾値レベルに関してデータ信号が得られると、復号部178は、これらデータ信号の組み合わせから多値符号(C)の振幅レベルを判定する。例えば、あるタイミングで閾値レベルTH2’に対応するデータ信号の振幅レベルが1の場合、多値符号(C)の振幅レベルは3であると判定される。また、あるタイミングで閾値レベルTH2’に対応するデータ信号の振幅レベルが0、検出クロックの振幅レベルが1の場合、多値符号(C)の振幅レベルは1であると判定される。
【0088】
同様に、あるタイミングで閾値レベルTH3’に対応するデータ信号の振幅レベルが0の場合、多値符号(C)の振幅レベルは−3であると判定される。また、あるタイミングで閾値レベルTH3’に対応するデータ信号の振幅レベルが1、検出クロックの振幅レベルが0の場合、多値符号(C)の振幅レベルは−1であると判定される。このようにして得られた振幅レベルの判定結果は、復号部178においてビット値に変換される。
【0089】
先に述べた通り、多値符号(C)の振幅レベル(3,−3)がビット値1に対応し、振幅レベル(1、−1)がビット値0に対応する。そこで、上記の判定結果に応じて、復号部178は、振幅レベル(3、−3)のパターンを検出してビット値1に変換し、振幅レベル(1、−1)のパターンを検出してビット値0に変換する。その結果、多値符号(C)から送信データが復号される。マンチェスター符号ベースの新方式に係る振幅レベル検出方法及びデータ復号方法は上記の通りである。但し、ここでは理想的な伝送路を想定して受信側で図8(C)に示すような多値符号(C)が受信されるものと仮定していた。このような仮定の下では、上記の方法により受信側で正しく振幅レベルが判定され、その判定結果に基づいて正しく送信データが復号される。
【0090】
しかしながら、実際には、伝送信号が高域遮断特性を持つ伝送路やフィルタ回路等の影響を受け、図9に示すような形状を持つアイパターンが観測される。図9に例示したアイパターンの特徴は、振幅レベルの絶対値が大きくなるに連れて先細りする波形にある。例えば、閾値レベルTH2’に注目すると、閾値レベルTH2’でコンパレートして得られるデータ信号のパルス幅L2は検出クロックのパルス幅L1よりも小さいことが分かる。
【0091】
また、図中には明示していないが、閾値レベルTH3’に対応するデータ信号のパルス幅L3についても同様のことが言える。パルス幅L1とL2(又はL3)との差が所定以上に大きくなると、検出クロックの立ち上がりタイミング、立ち下がりタイミングのいずれを用いてもデータ信号から正しく振幅レベルを抽出することが出来なくなり、結果としてビット値の復号結果に誤りが発生してしまう。この点については、マンチェスター符号ベースの多値符号(C)においても、上記のAMI符号ベースの多値符号(C)と同様である。このような問題を解決するために、本件発明者は、遅延を用いずにデータ信号のパルスと検出クロックのパルスとを同期させるタイミング同期回路を考案した。以下、このタイミング同期回路の構成及びその適用事例について説明する。
【0092】
<2:実施形態>
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、新方式に係る多値符号からデータを復号する際に、検出クロックとデータ信号とを同期させるためのタイミング同期方法に関する。特に、本実施形態は、多値符号から検出されたデータ信号のパルス幅が検出クロックのパルス幅より狭い場合においても、より確実にデータ信号と検出クロックとを同期させることが可能なタイミング同期回路180、190を提案するものである。
【0093】
なお、後述するタイミング同期回路180、190は、例えば、上記の携帯端末130が備える復号部178に設けられる。また、タイミング同期回路180は、正の閾値レベルを持つコンパレータから出力されたデータ信号が入力されるものである。一方、タイミング同期回路190は、負の閾値レベルを持つコンパレータから出力されたデータ信号が入力されるものである。
【0094】
[2−1:タイミング同期回路180の構成]
まず、図11〜図13を参照しながら、本実施形態に係るタイミング同期回路180の構成について説明する。図11は、本実施形態に係るタイミング同期回路180の回路構成例を示す説明図である。図12は、正の閾値レベルを用いて多値符号から検出クロック(CLK)及びデータ信号(DATA)を抽出する方法を示す説明図である。また、図13は、タイミング同期回路180を構成する各構成要素の入出力信号、及び当該各構成要素で実行される信号処理の内容を示す説明図である。
【0095】
(2−1−1:回路構成)
まず、図11を参照する。図11に示すように、タイミング同期回路180は、順序回路182、184、188、及び排他的論理和回路186により構成される。なお、順序回路182、184、188としては、例えば、Dフリップフロップ回路が用いられる。
【0096】
まず、順序回路182のCLK端子にはデータ信号が入力される。このデータ信号は、図12に示すように、受信した多値符号の振幅レベルが所定の閾値レベルを下から上へクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つ。また、先にも述べた通り、データ信号のパルス幅は、検出クロックのパルス幅よりも狭い。このようにパルス幅の狭いデータ信号から検出クロックに同期して確実にデータを抽出できるようにすることがタイミング同期回路180を設ける目的である。
【0097】
上記の通り、順序回路182のCLK端子にはデータ信号が入力される。また、順序回路182のQ端子から出力された信号は、極性が反転されて順序回路182のD端子に入力される。そのため、順序回路182のCLK端子にデータ信号(図13の「DATA」参照)が入力されると、順序回路182のQ端子から当該データ信号の立ち上がりタイミングでトグルするトグル信号(図13の「TOGGLE_DATA」参照)が出力される。順序回路182のQ端子から出力されたトグル信号は、順序回路184のD端子、及び排他的論理和回路186に入力される。
【0098】
また、順序回路184のCLK端子には極性反転された検出クロックが入力される。この検出クロックは、図12に示すように、受信した多値符号の振幅レベルが下から上へゼロクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へゼロクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つ。このように、順序回路184には、CLK端子に極性反転された検出クロックが入力され、D端子にトグル信号が入力される。そのため、順序回路184のQ端子からはトグル信号を検出クロックの立ち下がりタイミングに同期して得られるトグル同期信号(図13の「TOGGLE_SYN」参照)が出力される。順序回路184のQ端子から出力されたトグル同期信号は、排他的論理和回路186に入力される。
【0099】
上記の通り、排他的論理和回路186には、順序回路182のQ端子から出力されたトグル信号と、順序回路184のQ端子から出力されたトグル同期信号とが入力される。排他的論理和回路186では、これらトグル信号とトグル同期信号との間の排他的論理和が算出され、中間出力信号(図13の「MID_OUT」参照)として出力される。排他的論理和回路186から出力された中間出力信号は、順序回路188のD端子に入力される。また、順序回路188のCLK端子には、極性反転された検出クロックが入力される。そのため、順序回路188のQ端子からは中間出力信号を検出クロックの立ち下がりタイミングに同期して得られる同期データ信号(図13の「DATA_SYN」参照)が出力される。
【0100】
以上、本実施形態に係るタイミング同期回路180の回路構成、及び各構成要素の動作について説明した。タイミング同期回路180を設けることにより、図13に示すような同期データ信号を得ることができる。図13から明らかなように、同期データ信号は、検出クロックの立ち下がりタイミングに同期している。そのため、検出クロックの立ち下がりタイミングを利用して同期データ信号から確実にデータを抽出することが可能になる。
【0101】
(2−1−2:同期処理の流れ)
ここで、図13を参照しながら、上記のタイミング同期回路180におけるデータ信号と検出クロックとの間のタイミング同期処理の流れについて簡単に説明する。
【0102】
図13に示すように、まず、多値信号から抽出された検出クロック(CLK)とデータ信号(DATA)とがタイミング同期回路180に入力される。そして、入力されたデータ信号の立ち上がりタイミング(T1、T2)でトグルするトグル信号(TOGGLE_DATA)が生成される。次いで、検出クロックの立ち下がりタイミング(S1、S2)にトグル信号を同期してトグル同期信号(TOGGLE_SYS)が生成される。次いで、トグル信号とトグル同期信号との間で排他的論理和が算出され、中間出力信号(MID_OUT)が生成される。さらに、中間出力信号を検出クロックの立ち下がりタイミングに同期することで同期データ信号(DATA_SYN)が生成される。
【0103】
以上、タイミング同期回路180におけるタイミング同期処理の流れについて説明した。このようなタイミング同期処理により、検出クロックの立ち下がりタイミングに同期した同期データ信号が生成される。そのため、検出クロックの立ち下がりタイミングに基づいて同期データ信号からデータを確実に抽出することが可能になる。
【0104】
[2−2:タイミング同期回路190の構成]
次に、図14〜図16を参照しながら、本実施形態に係るタイミング同期回路190の構成について説明する。図14は、本実施形態に係るタイミング同期回路190の回路構成例を示す説明図である。図15は、負の閾値レベルを用いて多値符号から検出クロック(CLK)及びデータ信号(DATA)を抽出する方法を示す説明図である。また、図16は、タイミング同期回路190を構成する各構成要素の入出力信号、及び当該各構成要素で実行される信号処理の内容を示す説明図である。
【0105】
(2−2−1:回路構成)
まず、図14を参照する。図14に示すように、タイミング同期回路190は、順序回路192、194、198、及び排他的論理和回路196により構成される。なお、順序回路192、194、198としては、例えば、Dフリップフロップ回路が用いられる。
【0106】
まず、順序回路192のCLK端子には極性反転されたデータ信号が入力される。このデータ信号は、図15に示すように、受信した多値符号の振幅レベルが所定の閾値レベルを下から上へクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つ。但し、負の閾値レベルで閾値判定されたパルスであるため、データ区間でレベルが0(Low)、非データ区間でレベルが1(High)となっている点に注意が必要である。また、先にも述べた通り、データ信号のパルス幅は、検出クロックのパルス幅よりも狭い。このようにパルス幅の狭いデータ信号から検出クロックに同期して確実にデータを抽出できるようにすることがタイミング同期回路190を設ける目的である。
【0107】
上記の通り、順序回路192のCLK端子には極性反転されたデータ信号が入力される。また、順序回路192のQ端子から出力された信号は、極性が反転されて順序回路192のD端子に入力される。そのため、順序回路192のCLK端子に極性反転されたデータ信号(図16の「反転後データ信号」参照)が入力されると、順序回路192のQ端子から当該反転後データ信号の立ち上がりタイミングでトグルするトグル信号(図16の「TOGGLE_DATA」参照)が出力される。順序回路192のQ端子から出力されたトグル信号は、順序回路194のD端子、及び排他的論理和回路196に入力される。
【0108】
また、順序回路194のCLK端子には検出クロックが入力される。この検出クロックは、図15に示すように、受信した多値符号の振幅レベルが下から上へゼロクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へゼロクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つ。このように、順序回路194には、CLK端子に検出クロックが入力され、D端子にトグル信号が入力される。そのため、順序回路194のQ端子からはトグル信号を検出クロックの立ち上がりタイミングに同期して得られるトグル同期信号(図16の「TOGGLE_SYN」参照)が出力される。順序回路194のQ端子から出力されたトグル同期信号は、排他的論理和回路196に入力される。
【0109】
上記の通り、排他的論理和回路196には、順序回路192のQ端子から出力されたトグル信号と、順序回路194のQ端子から出力されたトグル同期信号とが入力される。排他的論理和回路196では、これらトグル信号とトグル同期信号との間の排他的論理和が算出され、中間出力信号(図16の「MID_OUT」参照)として出力される。排他的論理和回路196から出力された中間出力信号は、順序回路198のD端子に入力される。また、順序回路198のCLK端子には、検出クロックが入力される。そのため、順序回路198のQ端子からは中間出力信号を検出クロックの立ち上がりタイミングに同期して得られる同期データ信号(図16の「DATA_SYN」参照)が出力される。
【0110】
以上、本実施形態に係るタイミング同期回路190の回路構成、及び各構成要素の動作について説明した。タイミング同期回路190を設けることにより、図16に示すような同期データ信号を得ることができる。図16から明らかなように、同期データ信号は、検出クロックの立ち上がりタイミングに同期している。そのため、検出クロックの立ち上がりタイミングを利用して同期データ信号から確実にデータを抽出することが可能になる。
【0111】
(2−2−2:同期処理の流れ)
ここで、図16を参照しながら、上記のタイミング同期回路190におけるデータ信号と検出クロックとの間のタイミング同期処理の流れについて簡単に説明する。
【0112】
図16に示すように、まず、多値信号から抽出された検出クロック(CLK)と、極性反転されたデータ信号(反転後データ信号)とがタイミング同期回路190に入力される。そして、入力された反転後データ信号の立ち上がりタイミング(T1、T2)でトグルするトグル信号(TOGGLE_DATA)が生成される。次いで、検出クロックの立ち上がりタイミング(S1、S2)にトグル信号を同期してトグル同期信号(TOGGLE_SYS)が生成される。次いで、トグル信号とトグル同期信号との間で排他的論理和が算出され、中間出力信号(MID_OUT)が生成される。さらに、中間出力信号を検出クロックの立ち上がりタイミングに同期することで同期データ信号(DATA_SYN)が生成される。
【0113】
以上、タイミング同期回路190におけるタイミング同期処理の流れについて説明した。このようなタイミング同期処理により、検出クロックの立ち上がりタイミングに同期した同期データ信号が生成される。そのため、検出クロックの立ち上がりタイミングに基づいて同期データ信号からデータを確実に抽出することが可能になる。
【0114】
以上、本発明の一実施形態について説明した。本実施形態に係るタイミング同期方法を適用することにより、データ信号のパルス幅が検出クロックのパルス幅より狭い場合においても、検出クロックの立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジに同期してデータ信号のデータを確実に抽出することが可能になる。その結果、上記新方式に係る多値符号をデータ伝送に用いたとしても、伝送路等の高域遮断による影響を受けて伝送誤りが発生する確率を低減させることが可能になり、結果として伝送品質が向上する。
【0115】
<3:まとめ>
最後に、本実施形態の信号処理装置が有する機能構成と、当該機能構成により得られる作用効果について簡単に纏める。なお、この信号処理装置は、例えば、上記の携帯端末130のような携帯電話や、携帯ゲーム機、ノートPC、携帯情報端末等に搭載され得る。また、上記の携帯端末130のように、シリアライザ150、デシリアライザ170に相当する送信部、及び受信部の構成要素を有し、その間でデータ伝送する構成が含まれた電子機器に対して好適に用いられる。
【0116】
上記の情報処理装置の機能構成は次のように表現することができる。当該信号処理装置は、次のような信号受信部、クロック再生部、パルス信号生成部、信号同期部、及びデータ抽出部を有する。なお、上記の信号受信部は、例えば、上記の携帯端末130における分離部172、レシーバ174に対応する。また、上記のクロック再生部は、例えば、上記の携帯端末130におけるクロック抽出部176に対応する。さらに、上記のパルス信号生成部、信号同期部、データ抽出部は、例えば、上記の携帯端末130における復号部178に対応する。
【0117】
上記の信号受信部は、送信信号とクロックとを同期加算して得られる信号波形を有し、前記クロックの半周期毎に極性が反転する多値信号を受信するものである。また、上記のクロック再生部は、前記信号受信部で受信された多値信号の振幅レベルがゼロクロスするタイミングを検出し、当該検出結果に基づいて前記クロックを再生するものである。このように、クロックの半周期毎に極性が反転する信号をデータ伝送に用いることで、PLLを用いずに受信信号からクロックを再生することが可能になる。また、データ信号とクロックとを同期加算して得られる信号波形には、ほとんど直流成分を含まないため、DC電源等に重畳して伝送することが可能になる。その結果、データ伝送に用いる信号線と電源線を1本に纏めることが可能になり、配線数を低減することができる。
【0118】
上記のデータ信号生成部は、前記多値信号の振幅レベル間に設定された閾値レベルを前記信号受信部で受信された多値信号の振幅レベルが下から上へクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つデータ信号を生成するものである。上記の多値信号は、1つのビット値を複数の振幅レベルで表現した信号波形を有する。そのため、受信側では、受信した多値信号の各振幅レベルを判定し、その判定結果に基づいてデータ信号のデータを復号する必要がある。そこで、上記のデータ信号生成部は、予め振幅レベル間に設定された閾値レベルを基準にして閾値判定を実施する。さらに、上記のデータ信号生成部は、閾値判定の結果として、閾値レベルを上回る期間をパルスのHighレベル、下回る期間をパルスのLowレベルで表現したデータ信号を出力する。なお、データ信号は、閾値レベル毎に出力される。
【0119】
上記のようにしてデータ信号生成部で生成された閾値レベル毎のデータ信号は、上記の信号同期部に入力される。先に述べた通り、伝送路やフィルタ回路で高域遮断の影響を受けた多値信号から得られるデータ信号のパルス幅は、クロックのパルス幅よりも狭くなってしまう。パルス幅の差が所定以上の場合、クロックの立ち上がり又は立ち下がりタイミングに基づいてデータ信号からデータを抽出しようとしても、正しくデータを抽出することが難しい。そこで、本実施形態においては、上記の信号同期部を設け、前記データ信号生成部で生成されたデータ信号と前記クロック再生部で再生されたクロックとを同期させる。このとき、上記の信号同期部からは同期データ信号が出力され、上記のデータ抽出部に入力される。上記のデータ抽出部は、前記クロック再生部で再生されたクロックに基づいて前記信号同期部で生成された同期データ信号からデータを抽出するものである。同期データ信号はクロックに同期しているため、上記のデータ抽出部により正しくデータが抽出される。
【0120】
但し、上記のデータ信号とクロックとを同期させるには工夫が必要になる。例えば、データ信号又はクロックを遅延させて同期をとる方法も考えられるが、集積回路内の遅延を正確にコントロールすることは難しい。そこで、本件発明者は、上記の信号同期部の構成として、次のようなタイミング同期方法を考案した。このタイミング同期方法に係る上記の信号同期部は、主に次のようなトグル信号生成部、トグル同期信号生成部、排他的論理和回路、及び同期データ信号生成部を含む。
【0121】
上記のトグル信号生成部は、前記データ信号のパルスが立ち上がるタイミング又は立ち下がるタイミングでトグルするトグル信号を生成するものである。また、上記のトグル同期信号生成部は、前記トグル信号生成部で生成されたトグル信号を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させてトグル同期信号を生成するものである。さらに、上記の排他的論理和回路は、前記トグル信号生成部で生成されたトグル信号と前記トグル同期信号生成部で生成されたトグル同期信号との排他的論理和を出力するものである。そして、上記の同期データ信号生成部は、前記排他的論理和回路の出力信号を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させて前記同期データ信号を生成するものである。
【0122】
このような信号同期部の機能は、次のようなタイミング同期回路により実現される。当該タイミング同期回路は、入力信号を立ち上がり又は立ち下がりタイミングでトグルするトグル回路と、クロックと前記トグル回路の出力信号とが入力され、当該トグル回路の出力信号を前記クロックの立ち上がり又は立ち下がりタイミングに同期させる第1同期回路と、前記トグル回路の出力信号と前記第1同期回路の出力信号とが入力され、入力された両出力信号の排他的論理和を出力する排他的論理和回路と、前記クロックと前記排他的論理和回路の出力信号とが入力され、当該出力信号を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させる第2同期回路とで構成される。
【0123】
なお、上記のトグル回路は、先に示したタイミング同期回路180、190の順序回路182、192に相当する。また、上記の第1同期回路は、先に示したタイミング同期回路180、190の順序回路184、194に相当する。そして、上記の排他的論理和回路は、先に示したタイミング同期回路180、190の排他的論理和回路186、196に相当する。さらに、上記の第2同期回路は、先に示したタイミング同期回路180、190の順序回路188、198に相当する。
【0124】
また、前記データ抽出部は、前記クロック再生部で再生されたクロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングで前記同期データ信号の振幅レベルをサンプリングし、当該サンプリング結果に基づいてデータを抽出するように構成されていてもよい。正の閾値レベルを判定基準にして生成されたデータ信号に対しては、クロックの立ち下がりタイミングに同期した同期データ信号が得られるため、クロックの立ち下がりタイミングに基づいて同期データ信号の振幅レベルがサンプリングされる(図13を参照)。一方、負の閾値レベルを判定基準にして生成されたデータ信号に対しては、クロックの立ち上がりタイミングに同期した同期データ信号が得られるため、クロックの立ち上がりタイミングに基づいて同期データ信号の振幅レベルがサンプリングされる(図16を参照)。
【0125】
また、上記のデータ信号生成部について具体的に述べると、前記データ信号生成部は、複数の前記閾値レベルに対応する複数の前記データ信号を生成するための複数のコンパレータを有している。さらに、前記信号同期部は、前記データ信号生成部が有する各コンパレータに設けられている。そして、前記データ抽出部は、前記各コンパレータに設けられた前記信号同期部により生成される前記閾値レベル毎の同期データ信号に基づいてデータを抽出する。このように、上記の信号同期部は、各閾値レベルに対応するコンパレータ毎に設けられ、各データ信号に対応した同期データ信号を出力する。なお、正の閾値レベルに対応する信号同期部の構成(例えば、タイミング同期回路180)と負の閾値レベルに対応する信号同期部の構成(例えば、タイミング同期回路190)とで若干構成が異なる点に注意されたい。
【0126】
また、前記信号同期部は、前記複数のコンパレータのうち、絶対値が大きい前記閾値レベルに対応するコンパレータにだけ設けられていてもよい。先に述べた通り、データ信号のパルス幅とクロックのパルス幅との間の差は、閾値レベルの絶対値が大きいほど広がる。そのため、絶対値が大きい振幅レベルの判定値に誤りが生じやすい。一方で、消費電力や回路規模を少しでも低減させるには、全てのコンパレータに信号同期部を設けるのではなく、一部のコンパレータにだけ信号同期部を設ける方が有利である。このような場合、上記の理由から、絶対値が大きな閾値レベルを持つコンパレータに対して優先的に信号同期部を設けることが好ましい。
【0127】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0128】
例えば、上記説明の中ではAMI符号及びマンチェスター符号をベースとする新方式の多値符号を例に挙げたが、AMI符号と同様の特性を持つパーシャル・レスポンス符号をベースとした多値符号にも本実施形態の技術を適用することができる。また、PR(1,−1)、PR(1,0,−1)、PR(1,0,0,−1)、PR(1,0,…,0,−1)等で表現される種々のパーシャル・レスポンス符号に適用可能である。
【符号の説明】
【0129】
100、130 携帯端末
102 表示部
104 液晶部
106 接続部
108 操作部
110 ベースバンドプロセッサ
112、132、136 パラレル信号線路
134 シリアル信号線路
150 シリアライザ
152 符号化部
154 ドライバ
156 重畳部
160 同軸ケーブル
170 デシリアライザ
172 分離部
174 レシーバ
176 クロック抽出部
178 復号部
180、190 タイミング同期回路
182、184、188、192、194、198 順序回路
186、196 排他的論理和回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号とクロックとを同期加算して得られる信号波形を有し、前記クロックの半周期毎に極性が反転する多値信号を受信する信号受信部と、
前記信号受信部で受信された多値信号の振幅レベルがゼロクロスするタイミングを検出し、当該検出結果に基づいて前記クロックを再生するクロック再生部と、
前記多値信号の振幅レベル間に設定された閾値レベルを前記信号受信部で受信された多値信号の振幅レベルが下から上へクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つデータ信号を生成するデータ信号生成部と、
前記データ信号生成部で生成されたデータ信号と前記クロック再生部で再生されたクロックとを同期させて同期データ信号を生成する信号同期部と、
前記クロック再生部で再生されたクロックに基づいて前記信号同期部で生成された同期データ信号からデータを抽出するデータ抽出部と、
を備え、
前記信号同期部は、
前記データ信号のパルスが立ち上がるタイミング又は立ち下がるタイミングでトグルするトグル信号を生成するトグル信号生成部と、
前記トグル信号生成部で生成されたトグル信号を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させてトグル同期信号を生成するトグル同期信号生成部と、
前記トグル信号生成部で生成されたトグル信号と前記トグル同期信号生成部で生成されたトグル同期信号との排他的論理和を出力する排他的論理和回路と、
前記排他的論理和回路の出力信号を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させて前記同期データ信号を生成する同期データ信号生成部と、
を含む、信号処理装置。
【請求項2】
前記データ抽出部は、前記クロック再生部で再生されたクロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングで前記同期データ信号の振幅レベルをサンプリングし、当該サンプリング結果に基づいてデータを抽出する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記データ信号生成部は、複数の前記閾値レベルに対応する複数の前記データ信号を生成するための複数のコンパレータを有しており、
前記信号同期部は、前記データ信号生成部が有する各コンパレータに設けられており、
前記データ抽出部は、前記各コンパレータに設けられた前記信号同期部により生成される前記閾値レベル毎の同期データ信号に基づいてデータを抽出する、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記信号同期部は、前記複数のコンパレータのうち、絶対値が大きい前記閾値レベルに対応するコンパレータに設けられる、請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項5】
入力信号を立ち上がり又は立ち下がりタイミングでトグルするトグル回路と、
クロックと前記トグル回路の出力信号とが入力され、当該トグル回路の出力信号を前記クロックの立ち上がり又は立ち下がりタイミングに同期させる第1同期回路と、
前記トグル回路の出力信号と前記第1同期回路の出力信号とが入力され、入力された両出力信号の排他的論理和を出力する排他的論理和回路と、
前記クロックと前記排他的論理和回路の出力信号とが入力され、当該出力信号を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させる第2同期回路と、
を備える、タイミング同期回路。
【請求項6】
前記クロックは、送信信号とクロックとを同期加算して得られる信号波形を有し、前記クロックの半周期毎に極性が反転する多値信号の振幅レベルがゼロクロスするタイミングに基づいて再生される再生クロックであり、
前記入力信号は、前記多値信号の振幅レベル間に設定された閾値レベルを基準にして前記多値信号の振幅レベルを閾値判定し、前記閾値レベルを上回ったタイミングで立ち上がり、下回ったタイミングで立ち下がるパルス信号であり、
前記第2同期回路の出力信号は、前記クロックを用いて前記データ信号のデータを抽出するために用いられる、請求項5に記載のタイミング同期回路。
【請求項7】
送信信号とクロックとを同期加算して得られる信号波形を有し、前記クロックの半周期毎に極性が反転する多値信号を受信する信号受信ステップと、
前記信号受信ステップで受信された多値信号の振幅レベルがゼロクロスするタイミングを検出し、当該検出結果に基づいて前記クロックを再生するクロック再生ステップと、
前記多値信号の振幅レベル間に設定された閾値レベルを前記信号受信ステップで受信された多値信号の振幅レベルが下から上へクロスするタイミングで立ち上がり、上から下へクロスするタイミングで立ち下がるパルスを持つデータ信号を生成するデータ信号生成ステップと、
前記データ信号生成ステップで生成されたデータ信号と前記クロック再生ステップで再生されたクロックとを同期させて同期データ信号を生成する信号同期ステップと、
前記クロック再生ステップで再生されたクロックに基づいて前記信号同期ステップで生成された同期データ信号からデータを抽出するデータ抽出ステップと、
を有し、
前記信号同期ステップは、
前記データ信号のパルスが立ち上がるタイミング又は立ち下がるタイミングでトグルするトグル信号を生成するトグル信号生成ステップと、
前記トグル信号生成ステップで生成されたトグル信号を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させてトグル同期信号を生成するトグル同期信号生成ステップと、
前記トグル信号生成ステップで生成されたトグル信号と前記トグル同期信号生成ステップで生成されたトグル同期信号との排他的論理和を算出する排他的論理和算出ステップと、
前記排他的論理和算出ステップの算出結果を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させて前記同期データ信号を生成する同期データ信号生成ステップと、
を含む、信号処理方法。
【請求項8】
入力信号を立ち上がり又は立ち下がりタイミングでトグルするトグルステップと、
クロック及び前記トグルステップの出力を入力とし、当該トグルステップの出力を前記クロックの立ち上がり又は立ち下がりタイミングに同期させる第1同期ステップと、
前記トグルステップの出力及び前記第1同期ステップの出力を入力とし、入力された両出力の排他的論理和を算出する排他的論理和算出ステップと、
前記クロック及び前記排他的論理和算出ステップの出力を入力とし、当該出力を前記クロックの立ち下がり又は立ち上がりタイミングに同期させる第2同期ステップと、
を含む、タイミング同期方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−268385(P2010−268385A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120111(P2009−120111)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】