説明

優れた歩行性および防音性能を有する床吸音材

【課題】優れた遮音・防音性を維持しつつ、直張り防音フローリング材の歩行性についても優れた特性を有する床吸音材を提供する。
【解決手段】遮水層7、該遮水層上に設けられた緩衝層6、およびドット状またはライン状の樹脂組成物8,9を含む床吸音材3であって、a)該遮水層7は、非熱融着繊維のスパンボンドからなり;b)該緩衝層6は、0〜50重量%の熱融着繊維、および50〜100重量%の非熱融着繊維からなり、ニードルパンチが施され、かつ熱融着繊維を配合する場合においては熱処理によって熱融着繊維が互いに熱融着した不織布層からなり;および該ドット状またはライン状の樹脂組成物8,9は、ドット状の場合には20〜400g/mまたはライン状の場合には40〜400g/mの割合で、該緩衝層または該遮水層のいずれか一層に存在する床吸音材3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた防音性能のみならず優れた歩行性を有する床吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
一戸建住宅やマンション等の集合住宅の居住空間における床材として、従来から樹脂タイル、畳、カーペット、木質系床材などが使われているが、近年、ダニの発生がなく、掃除もし易く、清潔であるため、特に木質系床材が汎用されてきている。この木質系床材を使用する場合、一戸建住宅や集合住宅において、騒音が下階へ伝わらないような配慮がなされてきている。このような騒音には、子供が飛び跳ねたり走り回ったりする際に生じる重衝撃音と、椅子の引きずりやスプーンの落下等により生じる軽衝撃音の2種の衝撃音がある。前者の重衝撃音は、主として建物の基本的構造体に依存して伝わるが、後者の軽衝撃音は床材の材質や構造に大きく依存して伝わることが知られている。出願人は、特にこの軽衝撃音の伝播に着目し、床材用緩衝部材として不織布を布設した場合に、その衝撃音が、その不織布層により空気中に拡散するものと発泡体部材に伝わるものとに分離することができ、その結果、音の衰弱効果をより向上させることを見出した(特許文献1)。
【0003】
また、従来の床材用不織布は非常に多数回のニードルパンチを行うので、不織布が硬くなり、しかも縦方向の繊維の絡みが増加して縦方向に音が伝播しやすくなり、その結果、遮音・防音性の低下や、さらに切削性が非常に悪い等の問題点があった。出願人は、特定配合量の熱融着繊維の積層体を特定の回数のニードルパンチを行い、熱処理を行うことにより、あるいは特定の単糸繊度の熱融着繊維と非熱融着繊維を特定配合量で積層し、ニードルパンチする等によりそれらの問題点が改善されることを見出した(特許文献2および特許文献3)。
【0004】
一戸建住宅やマンション等の集合住宅の居住空間にフローリングが汎用され、また、高齢者の居住空間のバリアフリー化が着目されるに伴い、種々のタイプの直張り防音フローリング材が製造販売されている。住宅性能評価機関等連絡協議会(評価協)では、直張り防音フローリング材の構造などを具体的に提案しており、その一環として平成19年10月3日に改定された(「遮音測定の結果による音環境に関する試験ガイドライン」の補足)の3.(2)

(以下、評価協ガイドラインと記載)より、直張り防音フローリング材については合計の厚さが16mm以下のものとの記載があり、このガイドラインに対応した直張り防音フローリング材の開発が必要とされている。通常、フローリングの厚さは9mm程度であるため、裏に張る床吸音材の厚さは7mm以下となる(非特許文献1)。
このような直張り防音フローリング材の評価協ガイドラインに対応し、優れた遮音・防音性を有しつつ、かつ歩行性についても優れた特性を有する床吸音材が市場において必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2715391号明細書
【特許文献2】特許第3106440号明細書
【特許文献3】特許第3653698号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「遮音測定の結果による音環境に関する試験ガイドライン」の補足、評価協(平成19年10月3日改定)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、直張り防音フローリング材において、優れた遮音・防音性を維持しつつ、評価協ガイドラインに対応し、かつ歩行性についても優れた特性を有する床吸音材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、床吸音材中に樹脂組成物よりなるドット粒またはラインを設けることにより、歩行性を含めた前記の特性の全てに優れた床吸音材が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、以下のような構成からなるものである。
(1) 遮水層、該遮水層上に設けられた緩衝層、およびドット状またはライン状の樹脂組成物を含む床吸音材であって、
a)該遮水層は、非熱融着繊維のスパンボンドからなり;
b)該緩衝層は、0〜50重量%の熱融着繊維、および50〜100重量%の非熱融着繊維からなり、ニードルパンチが施され、かつ熱融着繊維を配合する場合においては熱処理によって熱融着繊維が互いに熱融着した不織布層からなり;および
該ドット状またはライン状の樹脂組成物は、ドット状の場合には20〜400g/mまたはライン状の場合には40〜400g/mの割合で、該緩衝層または該遮水層のいずれか一層に存在することを特徴とする床吸音材。
(2) 該緩衝層が、単糸繊度が2.2〜22dtex(デシテックス)の熱融着繊維、および単糸繊度が2.2〜22dtexの非熱融着繊維からなる前記(1)に記載の床吸音材。
(3) 遮水層、該遮水層上に設けられた緩衝層、該緩衝層上に設けられた硬化層およびドット状またはライン状の樹脂組成物を含む床吸音材であって、
a)該遮水層は、非熱融着繊維のスパンボンドからなり;
b)該緩衝層は、0〜50重量%の熱融着繊維、および50〜100重量%の非熱融着繊維からなり、ニードルパンチが施され、かつ熱融着繊維を配合する場合においては熱処理によって熱融着繊維が互いに熱融着した不織布層からなり;および
c)該硬化層は、10〜100重量%の熱融着繊維、および0〜90重量%の非熱融着繊維からなり、ニードルパンチが施され、かつ熱処理によって熱融着繊維が互いに熱融着した不織布層からなり;および
該ドット状またはライン状の樹脂組成物は、ドット状の場合には20〜400g/mまたはライン状の場合には40〜400g/mの割合で、該緩衝層、該遮水層および該硬化層のいずれか一層に存在することを特徴とする床吸音材。
(4) 該緩衝層および該硬化層が各々独立して、単糸繊度が2.2〜22dtexの熱融着繊維、および単糸繊度が2.2〜22dtexの非熱融着繊維からなる前記(3)に記載の床吸音材。
(5) 直径50mmの面積に、上方から784Nの荷重を負荷した場合の沈み込み量が5mm以下である前記(1)または(2)に記載の床吸音材。
(6) 該緩衝層にドット状の樹脂組成物を含む前記(1)、(2)または(5)に記載の床吸音材。
(7) 該遮水層にドット状の樹脂組成物を含む前記(1)、(2)または(5)に記載の床吸音材。
(8) 直径50mmの面積に、上方から784Nの荷重を負荷した場合の沈み込み量が5mm以下である前記(3)または(4)に記載の床吸音材。
(9) 該緩衝層にドット状の樹脂組成物を含む前記(3)、(4)または(8)に記載の床吸音材。
(10) 該遮水層にドット状の樹脂組成物を含む前記(3)、(4)または(8)に記載の床吸音材。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、直張り防音フローリング材において、優れた遮音・防音性を維持しつつ、評価協ガイドラインに対応し、かつ歩行性についても優れた特性を有する床吸音材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の床吸音材の実施の一例を示す。
【図2】図2は、本発明の床吸音材を得るための工程の一部を示す。
【図3】図3は、緩衝層または遮水層上へのドット粒またはラインの配置を示す。
【図4】図4は、本発明の床吸音材を得るための2種のドット粒またはライン加工の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の床吸音材は、吸音および緩衝作用により防音機能を有し、図1に示すように、一般的に溝入フローリングに接着して、防音床材として使用される。その床吸音材の構造は、緩衝層への接着剤浸透を防止する「遮水層」、該遮水層上に設けられた、防音機能を持つ中間層の「緩衝層」と、必要に応じて該緩衝層上に設けられる、溝入フローリング接着における緩衝層への接着剤浸透および接着不良を防止する「硬化層」から構成され、そのいずれかの層に、歩行性能を向上させるために、防音床材の表面の歩行時の沈み量を低下させるドット状またはライン状の樹脂組成物(以下、ドット粒またはラインと記載)が設けられている。
また、本発明の床吸音材は、該緩衝層と遮水層とが一体とされ、硬化層を設ける場合には、硬化層と緩衝層と遮水層とが一体とされ、その上面は、熱融着繊維が加熱と圧着とによって平滑化され、フローリングの下面と接着一体化され、さらに、いずれかの層に、ドット粒またはラインを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明において、緩衝層、硬化層、遮水層等を構成する繊維は熱融着繊維、非熱融着繊維共々、合成繊維であればよく、例えばポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフイン系繊維等は代表的なものとして挙げることができるが、なかでも嵩高性、圧縮弾性、経済性等の点でポリエステル系繊維が好ましい。
【0015】
本発明において緩衝層に用いられる繊維の単糸繊度は2.2〜22dtex、より好ましくは3.3〜15dtexの範囲内のものが好ましい。2.2dtex以下になると繊維が細すぎて不織布層が形成されず、22dtex以上なると繊維が太いため強度が増し施工時のカット性に難が生ずる傾向がある。またカット長は10〜102mm、より好ましくは38〜64mm程度の範囲内が好ましい。これら単糸繊度、カット長にあっては、熱融着繊維と非熱融着繊維とが、共に同じ繊度同志、あるいは同じカット長同志で配合される必要はない。さらに、熱融着繊維および非熱融着繊維の各々は、複数の異なる繊度およびカット長を有する繊維で構成されてもよい。
【0016】
本発明において硬化層に用いられる繊維の単糸繊度は2.2〜22dtexが好ましく、より好ましくは2.2〜4.4dtexの範囲内のものであり、2.2dtex以下になると繊維が細すぎて不織布層が形成されず、22dtex以上なると繊維が太いため強度が増し施工時のカット性に難が生ずる傾向がある。またカット長は10〜102mm、より好ましくは38〜64mm程度の範囲内が好ましい。これら単糸繊度、カット長にあっては、熱融着繊維と非熱融着繊維とが、共に同じ繊度同志、あるいは同じカット長同志で配合される必要はない。さらに、熱融着繊維および非熱融着繊維の各々は、複数の異なる繊度およびカット長を有する繊維で構成されてもよい。
【0017】
本発明における緩衝層を構成する熱融着繊維と非熱融着繊維との配合割合は、熱融着繊維が0〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%であり、非熱融着繊維が50〜100重量%、より好ましくは70〜95重量%である。
また、本発明の硬化層を構成する熱融着繊維と非熱融着繊維との配合割合は熱融着繊維が10〜100重量%、より好ましくは30〜70重量%であり、非熱融着繊維が0〜90重量%、より好ましくは30〜70重量%である。
【0018】
本発明における硬化層と、緩衝層とは、それぞれ、ニードルパンチが施されてその形態を安定的に維持するものであり、また、硬化層と緩衝層との結合一体化にあたっては、硬化層と緩衝層とを積層し、ニードルパンチを施すことによって結合一体化することができる(以下、これを積層体という)。また、熱融着繊維を配合する場合には、熱処理により硬化層と緩衝層の熱融着繊維を互いに熱融着させることにより、より強固に結合一体化することができる。さらに、この積層体の強度を向上させる目的で、スプレー等によりアクリル系樹脂等を噴霧することも可能である。
【0019】
本発明にあっては、積層体の下面に遮水層が設けられるが、この遮水層は非熱融着繊維のスパンボンドからなるもので、通常0.05〜0.3mm程度の厚さを有し、積層体とは接着剤で接着される。
【0020】
本発明における積層体は直張り防音フローリング材となった状態において、遮水層を含めて2.0〜7.0mm、より好ましくは4.5〜7.0mm程度の厚さであり、硬化層を設ける場合は、積層体における硬化層は0.1〜0.7mm、より好ましくは0.2〜0.7mm程度であり、緩衝層は1.85〜6.0mm、より好ましくは4.25〜6.0mm程度の厚さである。
【0021】
本発明における積層体は、その表側の硬化層を介して、接着剤、通常、酢酸ビニル系接着剤によってフローリングの下面に接着される。
この接着作業にあたって、積層体はフローリングの形状に合せてカットされ接着剤が付与されて接着されるが、積層体における硬化層は、接着剤が積層体の内部(緩衝層)に浸透することを抑制し、かつ表面の毛羽立による接着不良を防止するように機能する。
【0022】
また積層体の下面に設けられた遮水層はコンクリートスラブ(床)と接着剤、通常ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤にて接着されて施工される。遮水層の存在により、積層体内部(緩衝層)に対する接着剤の浸透が防止されると共に、床下からの水分の浸透も効果的に防止される。
【0023】
また、本発明では、歩行性を向上させるためのドット粒またはラインが前記積層体内(硬化層、緩衝層)、遮水層のいずれか1層に設けられる。フローリング板上からの衝撃音伝播を少しでも低減できるように、ドット粒またはラインはできるだけフローリング板から離れた下方に配置されていることが好ましい。
【0024】
ドット粒またはラインの占有率は、その緩衝層平面につき、好ましくは1〜60%、より好ましくは3〜40%を有するように設けられる。
【0025】
ドット粒の場合には、その粒径および粒ピッチは、ドット粒形成に用いられる樹脂により、適宜選定されるが、通常、各々、1〜10mmおよび10〜300個/100cm、より好ましくは、3〜8mmおよび15〜200個/100cmの範囲内となるように配置される。また、ラインの場合には、そのラインの幅およびピッチは、ライン形成に用いられる樹脂により、適宜選定されるが、通常、各々、1〜10mmおよび3〜50mm、より好ましくは、3〜8mmおよび5〜30mmの範囲内となるように配置される。
【0026】
ドット粒またはラインの材質は、特に限定されるものではないが、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、SBRやNBR等のゴム系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などを使用できる。その中でもアクリル樹脂もしくはSBR樹脂が好ましい。
【0027】
また、これらのドット粒またはラインの付着量は、ドット粒の場合には、ドット粒形成に用いられる樹脂により、適宜選定されるが、通常、20〜400g/m、より好ましくは 40〜250g/mである。樹脂量が20g/m以下の場合、歩行時の沈み込み量が大きくなり歩行性能の改善がみられない。また、樹脂量が400g/m以上の場合、衝撃音が樹脂を介して伝播し防音性能が低下する。ラインの場合には、ライン形成に用いられる樹脂により、適宜選定されるが、通常、40〜400g/m、より好ましくは80〜300g/mである。樹脂量が40g/m以下の場合、歩行時の沈み込み量が大きくなり歩行性能の改善がみられない。また、樹脂量が400g/m以上の場合、衝撃音が樹脂を介して伝播し防音性能が低下する。
さらに、これらのドット粒またはラインの付着量は、これらの樹脂量と共に、ドット粒またはラインの高さとして規定することもでき、歩行性能の改善のためにその高さが約2〜約4mmの範囲であることが好ましい。
【0028】
本発明の床吸音材のドット粒またはラインにより奏される歩行性の向上は、その床吸音材の沈み込み量により評価される。具体的には、下記の方法により測定される。
沈み込み量評価方法
床面の直径50mmの面積に784Nの荷重負荷を掛けて沈み込む量を測定する。この方法はJASによる規格化も予定されていたもので、歩行感を評価する方法として広く採用されている。なお、直径50mmの面積に対する784Nの荷重負荷は、40N/cmに相当する。
【0029】
本発明の床吸音材は、沈み込み量評価方法、すなわち、上方から直径50mmの面積に784Nの荷重を負荷した場合の沈み込み量が5mm以下、より好ましくは4mm以下であり、硬化層、緩衝層、遮水層のいずれかにドット粒またはラインを含むことを特徴とする。
【0030】
その床吸音材の厚さも防音性能を決める要素であり、仕上げ工程で、フローリング板の硬さ、大きさ、溝等に応じて必要な床吸音材の厚さに変更される。
【0031】
本発明の床吸音材の製造方法としては、まず、1)硬化層と緩衝層が一体化した不織布2層体(積層体)を作成し、2)前記積層体または遮水層上に樹脂組成物よりなるドット粒またはラインを設け、次いで、3)接着剤を介して、この不織布2層体(積層体)と遮水層を重ね合わせ、ラミネート機で加熱溶融圧着して作製される(図2)。
また、前記の硬化層と緩衝層が一体化した積層体を形成することなく、その積層体に代えて、緩衝層のみから同様の手順により本発明の床吸音材が製造される。
【0032】
前記工程2)のドット粒またはラインは、例えば、図3aおよび図3bのようにドット粒またはラインとして、樹脂組成物を緩衝層上に直接的に配置(図4a)、または樹脂組成物を遮水層上に直接的に配置(図4b)後に、前記工程3)によりラミネート機で加熱溶融圧着して遮水層スパンボンドをラミネートして床吸音材が形成される。
【0033】
本発明におけるドット粒またはラインは、例えば以下に示すようにして製造することができる。すなわち、樹脂組成物をあらかじめ所望の発泡倍率、粘度が得られるまでオークスミキサーで撹拌する。そして発泡した組成物をドクターコーターを使用して、存在させるべき層またはそれに隣接する層にライン状に塗布し、乾燥することにより本発明のラインを製造できる。あるいは、機械撹拌発泡により発泡させた樹脂組成物を用いて、存在させるべき層またはそれに隣接する層上にロータリースクリーン法により塗布し、乾燥することにより本発明のドット粒またはラインを製造できる。このようにして製造されたドット粒またはラインは、ラミネート機で加熱溶融圧着することにより、存在させるべき層に設けられる。
【0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義される発明の思想および範囲内に入る他の態様も本発明に含まれる。
【実施例1】
【0035】
単糸繊度4.4dtex、カット長51mmの熱融着ポリエステル繊維が40重量%、単糸繊度2.2dtex、カット長51mmの非熱融着ポリエステル繊維が60重量%からなる50g/mの不織布層からなる硬化層と、単糸繊度4.4dtex、カット長51mmの熱融着ポリエステル繊維が25重量%、単糸繊度6.6dtex、カット長51mmの非熱融着ポリエステル繊維が75重量%からなる200g/mの不織布層からなる緩衝層が一体化した2層不織布(積層体)を作製した。これとは別に、アクリル樹脂組成物(固形分45重量%)をオークスミキサーを用いて、発泡倍率3.0となるように機械攪拌発泡させた。このときの粘度は25,000mPa.sであった。この発泡樹脂組成物を積層体の緩衝層側に厚さ210μmのスクリーンを用いてドット加工を施し、乾燥した。このときの平均粒径は3.8mm、ドット粒の占有面積は約23%、粒ピッチは7mmであった。その後、ホットメルト系接着剤を介して、非熱融着ポリエステル繊維からなる30g/mのスパンボンド不織布層からなる遮水層をラミネートし図4aに示す床吸音材を作製した。発泡樹脂組成物の付着量、ドット粒の高さおよび仕上げの厚さを表1のように設定して、サンプル番号1〜6の床吸音材を作製した。
【実施例2】
【0036】
硬化層を含まないこと以外は実施例1と同様にして、発泡樹脂組成物の付着量、ドット粒の高さおよび仕上げの厚さを表1に示すサンプル番号7の床吸音材を作製した。
【実施例3】
【0037】
硬化層、緩衝層、遮水層は実施例1と同様とし、SBR樹脂組成物を遮水層上に厚さ1mmのスクリーンを用いてドット加工を施し、乾燥した。このときの平均粒径は7mm、ドット占有面積は約4.2%、粒ピッチは30mmであった。その後、ホットメルト系接着剤を介して、硬化層と緩衝層が一体化した2層不織布(積層体)をラミネートして図4bに示す床吸音材を作製した。樹脂組成物の付着量、ドット粒の高さおよび仕上げの厚さを表1に示すサンプル番号8の床吸音材を作製した。
【実施例4】
【0038】
硬化層、緩衝層、遮水層は実施例1と同様とし、SBR樹脂組成物を積層体の緩衝層側に、ドクターコーターを用いてライン加工を施し、乾燥した。このときのライン幅は6mm、ラインピッチは30mm、ライン占有面積は約16.7%であった。樹脂組成物の付着量、ラインの高さおよび仕上げの厚さを表1のように設定して、サンプル番号9の床吸音材を作製した。
【0039】
比較例
また、比較例として、樹脂量が異なる以外は実施例1と同一の構造をもつ床吸音材(サンプル番号10〜13)、ならびにドット加工を行わなかった以外は実施例1と同一の構造をもつ床吸音材(サンプル番号14〜17)を作製した。
【0040】
試験例
床吸音材の歩行感および防音性能の評価
床吸音材の前記評価には、一般的に用いられる溝入フローリング材に実施例1〜4および比較例により得られた床吸音材を接着した防音床材を用いた。
歩行感の評価は、10名の評価者により、防音床材上を実際に歩行し、以下の方法でおこなった。
◎:10人中8人以上が歩行感が良いと判断
○:10人中6人若しくは7人が歩行感が良いと判断
△:10人中4人若しくは5人が歩行感が良いと判断
×:10人中3人以下が歩行感が良いと判断
また、防音床材の沈み込み量を前記の沈み込み量評価方法により測定した。
防音性能は、JIS規格JIS A 1418−1に準拠して、軽量床衝撃音レベル(LL値)を測定した。
これらの評価および測定方法により得られた各防音床材の評価結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例1により作製されたアクリル樹脂ドット粒を有するサンプル番号1〜3、5および6は、各々、同一の床吸音材の仕上げ厚さを有するドット粒を設けていないサンプル番号14〜17に比較して、防音性能は維持しつつ、歩行感は例えば、○から◎のように(サンプル番号1と14との比較)、全例において1段階以上、改善された。このことから、ドット粒を設けた場合に歩行感が明確に改善されることが判明した。
また、これらの実施例1により作製されたサンプルのうち、サンプル番号1および4の床吸音材が、防音性能を維持しつつ最も優れた歩行感を供することが明らかになった。
しかしながら、ドット粒の樹脂付着量が20g/m未満または400g/mを超える場合(サンプル番号10〜13)には防音性能を維持しつつ、かつ歩行感が改善されるという効果は観察されなかった。
【0043】
また、実施例2により作製された、アクリル樹脂ドット粒を有するが硬化層を有しないサンプル番号7と、これに対応するドット粒を有しないサンプル番号15との比較から明らかなように、実施例1と同様に、硬化層を有しない場合においても、防音性能を維持しつつ歩行感が改善できた。
さらに、遮水層上にアクリル樹脂に代えてSBR樹脂のドット粒を設けたサンプル番号8(実施例3)においても、サンプル番号16との比較から明らかなように、実施例1と同様に、防音性能を維持しつつ歩行感の改善が観察された。
【0044】
次に、上記の実施例3におけるドット粒に代えて、ライン加工した実施例4においても、防音性能を維持しつつ歩行感が改善できることが判明した。
【0045】
以上のように、ある特定範囲のドット、ライン加工を施すことにより、元の床吸音材の防音性能を維持しつつ、歩行感をより顕著に改善できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により、優れた遮音・防音性を維持しつつ、直張り防音フローリング材の歩行性についても優れた特性を有する床吸音材を供給することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1 防音床材
2 溝入りフローリング
3 床吸音材
4 溝
5 硬化層
6 緩衝層
7 遮水層
8 ドット粒
9 ライン
10 加熱ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮水層、該遮水層上に設けられた緩衝層、およびドット状またはライン状の樹脂組成物を含む床吸音材であって、
a)該遮水層は、非熱融着繊維のスパンボンドからなり;
b)該緩衝層は、0〜50重量%の熱融着繊維、および50〜100重量%の非熱融着繊維からなり、ニードルパンチが施され、かつ熱融着繊維を配合する場合においては熱処理によって熱融着繊維が互いに熱融着した不織布層からなり;および
該ドット状またはライン状の樹脂組成物は、ドット状の場合には20〜400g/mまたはライン状の場合には40〜400g/mの割合で、該緩衝層または該遮水層のいずれか一層に存在することを特徴とする床吸音材。
【請求項2】
該緩衝層が、単糸繊度が2.2〜22dtex(デシテックス)の熱融着繊維、および単糸繊度が2.2〜22dtexの非熱融着繊維からなる請求項1記載の床吸音材。
【請求項3】
遮水層、該遮水層上に設けられた緩衝層、該緩衝層上に設けられた硬化層およびドット状またはライン状の樹脂組成物を含む床吸音材であって、
a)該遮水層は、非熱融着繊維のスパンボンドからなり;
b)該緩衝層は、0〜50重量%の熱融着繊維、および50〜100重量%の非熱融着繊維からなり、ニードルパンチが施され、かつ熱融着繊維を配合する場合においては熱処理によって熱融着繊維が互いに熱融着した不織布層からなり;および
c)該硬化層は、10〜100重量%の熱融着繊維、および0〜90重量%の非熱融着繊維からなり、ニードルパンチが施され、かつ熱処理によって熱融着繊維が互いに熱融着した不織布層からなり;および
該ドット状またはライン状の樹脂組成物は、ドット状の場合には20〜400g/mまたはライン状の場合には40〜400g/mの割合で、該緩衝層、該遮水層および該硬化層のいずれか一層に存在することを特徴とする床吸音材。
【請求項4】
該緩衝層および該硬化層が各々独立して、単糸繊度が2.2〜22dtexの熱融着繊維、および単糸繊度が2.2〜22dtexの非熱融着繊維からなる請求項3記載の床吸音材。
【請求項5】
直径50mmの面積に、上方から784Nの荷重を負荷した場合の沈み込み量が5mm以下である請求項1または2記載の床吸音材。
【請求項6】
該緩衝層にドット状の樹脂組成物を含む請求項1、2または5記載の床吸音材。
【請求項7】
該遮水層にドット状の樹脂組成物を含む請求項1、2または5記載の床吸音材。
【請求項8】
直径50mmの面積に、上方から784Nの荷重を負荷した場合の沈み込み量が5mm以下である請求項3または4記載の床吸音材。
【請求項9】
該緩衝層にドット状の樹脂組成物を含む請求項3、4または8記載の床吸音材。
【請求項10】
該遮水層にドット状の樹脂組成物を含む請求項3、4または8記載の床吸音材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−174438(P2010−174438A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15433(P2009−15433)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000109037)ダイニック株式会社 (55)
【Fターム(参考)】