説明

先行車両の位置検出方法及び位置検出装置並びにデータフィルタリング方法

【課題】先行車両の位置データの算出精度を向上することができる位置検出方法及び位置検出装置を提供する。
【解決手段】自車両1に対する先行車両2の位置を検出する方法であって、車間距離情報riと横位置情報Li,Riからなる一次データセットを取得する工程と、一次データセットの車間距離情報riに対して線形回帰処理を行い、得られた線形回帰線との差が所定の閾値以下の車間距離情報riとこれに対応する横位置情報Li,Riとからなる二次データセットを取得する線形回帰処理工程と、この二次データセットの横位置情報Li,Riに対してクラスタリング処理を行い、最大のクラスタに含まれる横位置情報Li,Riとこれに対応する車間距離情報riとからなる三次データセットを取得するクラスタリング処理工程と、この三次データセットを用いて現在時刻t0における車間距離と横位置とを算出する位置情報算出工程とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車両の位置検出方法及び位置検出装置並びにデータフィルタ方法に係り、特に、先行車両の位置データとして車間距離情報と横位置情報とを用いる位置検出方法及び位置検出装置、並びにこの位置検出方法で使用可能なデータフィルタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ACC(Adaptive Cruise Control)やLSF(Low Speed Follower)等の運転支援システムでは、カメラ等の撮像手段やレーダで先行車両を測定し、この測定データから自車両に対する先行車両の位置データを算出している。位置データには、例えば、自車両と先行車両との車間距離情報と、自車両に対する先行車両の横位置情報とが含まれる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、一般に、このような位置データ算出処理では、位置データの信頼性を向上させるため、種々のデータスクリーニング処理を用いて、測定データからノイズデータを取除く処理が行われている。これにより、運転支援システムの精度を向上させることができる。
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0244034号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に、後続車(自車両)と先行車両との間の車間距離及びこれらの相対速度の変化量は大きいが、横位置及び横方向の相対速度はあまり変化しない。このため、車間距離情報と横位置情報はデータ処理上の統計的性質が異なる。具体的には、車間距離情報は比較的時間依存性が大きく、横位置情報は時間依存性が小さい。したがって、従来のデータスクリーニング処理では、ノイズデータを十分に排除することができず、比較的大きなエラー成分を含む位置データが算出されてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、先行車両の位置データの算出精度を向上することができる位置検出方法及び位置検出装置を提供することを目的としている。
また、本発明は、時間依存性を有する情報とこの情報よりも時間依存性が小さい情報との組み合わせからなるデータから精度よく効率的にノイズデータを除去することことができるデータフィルタリング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、自車両に対する先行車両の車間距離及び横位置を検出する位置検出方法であって、現在時刻から所定時間前までの車間距離に関する複数の車間距離情報と、この車間距離情報に対応する横位置に関する横位置情報と、の組み合わせからなる第1の位置データを取得する工程と、第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報に対して線形回帰処理を行い、得られた線形回帰線との差が所定の閾値以下の車間距離情報とこれに対応する横位置情報とからなる第2の位置データを取得する線形回帰処理工程と、この第2の位置データに含まれる横位置情報に対してクラスタリング処理を行い、最大のクラスタに含まれる横位置情報とこれに対応する車間距離情報とからなる第3の位置データを取得するクラスタリング処理工程と、この第3の位置データを用いて現在時刻における車間距離と横位置とを算出する位置情報算出工程と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、時間依存性が比較的大きい車間距離情報については、現在時刻から所定時間前までの複数の情報に対して線形回帰処理を行うことにより、ノイズデータを除去する。一方、時間依存性がそれほど大きくない横位置情報については、現在時刻から所定時間前までの複数の情報に対してクラスタリング処理を行うことにより、ノイズデータを除去する。このように、本発明では、車間距離情報及び横方向情報の統計的性質に応じてデータフィルタリング処理を行うので、効率的に精度よくノイズデータの除去を行うことができる。これにより、本発明では、先行車両の位置検出の精度を向上することができる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、位置情報算出工程では、第3の位置データに含まれる車間距離情報に対して線形回帰処理を行うことにより現在時刻における車間距離を算出し、第3の位置データに含まれる横位置情報を平均化処理することにより横位置を算出する。
このように構成された本発明によれば、ノイズデータを除去した位置データに基づいて、時間依存性を有する車間距離情報については線形回帰処理を適用して、現在時刻の車間距離を算出し、時間依存性が大きくない横位置情報については平均化処理を適用して、現在時刻の横位置を算出することができる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、第1の位置データを取得する工程の後に、第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報が時間依存性を有するか否かを判定する判定工程を備え、この判定工程で、第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報が時間依存性を有すると判定した場合に、線形回帰処理工程を行い、判定工程で、第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報が時間依存性を有しないと判定した場合に、第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報に対してクラスタリング処理を行い、最大のクラスタに含まれる車間距離情報とこれに対応する横位置情報とからなる第2の位置データを取得する工程を行う。
【0011】
このように構成された本発明によれば、車間距離情報が必ずしも大きな時間依存性を有するとは限らないので、車間距離情報が大きな時間依存性を有する場合に、線形回帰処理を適用し、車間距離情報が大きな時間依存性を有しない場合には、横位置情報と同様に、クラスタリング処理を適用する。
【0012】
また、上記の目的を達成するために、本発明は、自車両に対する先行車両の車間距離及び横位置を検出する位置検出装置であって、現在時刻から所定時間前までの車間距離に関する複数の車間距離情報とこの車間距離情報に対応する横位置に関する横位置情報との組み合わせからなる第1の位置データを取得する位置データ取得手段と、第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報に対して線形回帰処理を行い、得られた線形回帰線との差が所定の閾値以下の車間距離情報とこれに対応する横位置情報とからなる第2の位置データを取得する第1スクリーニング手段と、この第2の位置データに含まれる横位置情報に対してクラスタリング処理を行い、最大のクラスタに含まれる横位置情報とこれに対応する車間距離情報とからなる第3の位置データを取得する第2スクリーニング手段と、この第3の位置データを用いて現在時刻における車間距離と横位置とを算出する位置情報算出手段と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
また、本発明において好ましくは、位置情報算出手段は、第3の位置データに含まれる車間距離情報に対して線形回帰処理を行うことにより現在時刻における車間距離を算出し、第3の位置データに含まれる横位置情報を平均化処理することにより横位置を算出する。
【0014】
また、本発明において好ましくは、第1スクリーニング手段は、第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報が時間依存性を有するか否かを判定し、第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報が時間依存性を有する場合に、線形回帰処理を行って第2の位置データを取得し、第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報が時間依存性を有しない場合に、第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報に対してクラスタリング処理を行い、最大のクラスタ数を有するクラスタに含まれる車間距離情報とこれに対応する横位置情報とからなる第2の位置データを取得する。
【0015】
また、上記の目的を達成するために、本発明は、時間依存性を有する時間依存情報とこの時間依存情報よりも時間依存性が小さい非時間依存情報との組み合わせからなるデータのフィルタリング方法であって、現在時刻から所定時間前までの複数の時間依存情報とこの時間依存情報に対応する非時間依存情報との組み合わせからなる第1のデータを取得する工程と、第1のデータに含まれる複数の時間依存情報に対して線形回帰処理を行い、得られた線形回帰線との差が所定の閾値以下の時間依存情報とこれに対応する非時間依存情報とからなる第2のデータを取得する工程と、この第2の位置データに含まれる非時間依存情報に対してクラスタリング処理を行い、最大のクラスタ数を有するクラスタに含まれる非時間依存情報とこれに対応する時間依存情報とからなる第3の位置データを取得する工程と、この第3の位置データを用いて現在時刻における時間依存情報と非時間依存情報とを算出する工程と、を備えたことを特徴としている。
【0016】
このように構成された本発明によれば、時間依存性を有する時間依存情報については、現在時刻から所定時間前までの複数の情報に対して線形回帰処理を行うことにより、ノイズデータを除去し、一方、時間依存性がそれほど大きくない非時間依存情報については、現在時刻から所定時間前までの複数の情報に対してクラスタリング処理を行うことにより、ノイズデータを除去する。このように、本発明では、時間依存性の大きさに応じてデータフィルタリングを行うので、効率的に精度よくノイズデータの除去を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の先行車両の位置検出方法及び位置検出装置によれば、先行車両の位置データの算出精度を向上することができる。また、本発明のデータフィルタリング方法によれば、時間依存性を有する情報とこの情報よりも時間依存性が小さい情報との組み合わせからなるデータから精度よく効率的にノイズデータを除去することことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態による先行車両の位置検出装置及び位置検出方法について説明する。
図1は先行車両の位置検出の説明図、図2は位置検出装置の構成図、図3は位置検出処理を行うための位置データ(初期データ)の時間変動を表すグラフ、図4は位置検出処理のフローチャート、図5はデータスクリーニング処理(クラスタリング処理)の一例を示すグラフ、図6は横位置情報のクラスタリング処理の一例を示すグラフである。
【0019】
まず、図1及び図2により本実施形態の位置検出装置10の概略構成を説明する。
位置検出装置10は、車両1に搭載されており、カメラ11と、コントローラ12とを有する。
カメラ11は、車両1の車幅方向中央の軸線3上に配置され、軸線3に沿って車両前方を撮像するように車両1に固定されている。具体的には、カメラ11は、バックミラー近傍に配置されている。このカメラ11は、単一のCCDカメラであり、所定角度範囲の撮像範囲4の画像を所定サンプリング時間T毎に撮像し、コントローラ12に送出している。本実施形態では、サンプリング時間Tは0.1秒である。ただし、サンプリング時間Tは、これに限らず、設計に応じて任意である。
【0020】
コントローラ12は、CPU,メモリ及び入出力装置等を有するマイクロコンピュータであり、カメラ11からの車両前方画像に基づいて、自車両1と先行車両2との間の軸線3に沿った距離である車間距離(レンジ)情報rと、軸線3に対する先行車両2の横方向距離を表す横位置(ラテラル位置)情報L,Rとを算出するようになっている。横位置情報L,Rは、それぞれ先行車両2の左端位置,右端位置を表す。
【0021】
コントローラ12は、この自車両1に対する先行車両2の車間距離情報rと横位置情報L,Rとからなる位置データをサンプリング時間T毎に演算する。そして、コントローラ12は、現在時刻t0から所定時間前までの車間距離情報rと横位置情報L,Rに基づいて、現在時刻t0の車間距離reと横位置Le,Reからなる位置データを算出し、この位置データを車両1の運転支援システムに提供している。
【0022】
次に、図3乃至図6に基づいて、コントローラ12の位置検出処理について説明する。
コントローラ12は、サンプリング時間T毎にカメラ11から送られてくる画像データに基づいて、既知のアルゴリズム(例えば、米国特許出願公開第2005/0244034号明細書参照)により、リアルタイム処理で先行車両2の車間距離情報rと横位置情報L,Rとからなる位置データ(初期位置データ)を演算し、内部メモリに記憶していく。したがって、本実施形態では、0.1秒毎に位置データが内部メモリに蓄積されていく。以下、この位置データを初期位置データという。
【0023】
車間距離情報rは、通常は比較的大きな時間依存性を有しており、本発明の時間依存情報に相当し、横位置情報L,Rは、通常は車間距離情報rよりも時間依存性が小さく、本発明の非時間依存情報に相当する。
なお、本実施形態では、位置データを算出するための測定データがカメラ11による画像データであるが、これに限らず、レーザレーダや他のレーダによる測定データであってもよい。
【0024】
図3は、上記アルゴリズムによりコントローラ12が演算した車間距離情報r(図3(A))と横位置情報L,R(図3(B))の位置データ(初期位置データ)の時間変化を示している。図3は、現在時刻t0から約2秒前までの初期位置データの時間変化を示している。なお、図3(A)の丸印が車間距離情報rを表し、図3(B)の丸印が横位置情報L、三角印が横位置情報Rを表している。図3に示す初期位置データはノイズ成分を含んでおり、コントローラ12は、図3に示す初期位置データに基づいて、図4に示す位置検出処理を行って、現在時刻t0の位置データ(re,Le,Re)を算出する。
【0025】
コントローラ12は、図4に示す位置検出処理を、所定時間毎に繰り返し行う。すなわち、コントローラ12は、カメラ11からの画像データに基づいて、初期位置データを演算し、これを内部メモリに蓄積した時点で位置検出処理を行う。
まず、コントローラ12は、内部メモリに記憶された初期位置データのうち、現在時刻t0から所定時間(本実施形態では1.5秒)前までの初期位置データを内部メモリから読み込む(ステップS1)。
【0026】
ステップS1で、コントローラ12は、時間ti(i=0,−1,−2,・・・,−14)、すなわち現在時刻t0を含め連続する15個のサンプリング時間における初期位置データ(車間距離情報ri、横位置情報Li,Ri)を読み込む。図3では、領域a(車間距離情報ri),領域b(横位置情報Li),領域c(横位置情報Ri)で囲まれたデータが取得する初期位置データを表している。
【0027】
次いで、コントローラ12は、15個の車間距離情報riのデータスクリーニング処理(前処理)を行う(ステップS2)。この処理は、時系列的に連続性がなく他の数値群と大きさのレベルが異なる明らかなノイズデータを除去するためのものである。
ステップS2では、コントローラ12は、まず15個の車間距離情報riをクラスタリング処理(例えば、K平均法)する。図5に、一例として図3の例の車間距離情報riをクラスタリング処理した結果を示す。図5は、分類された複数のクラスタ毎のデータ数を表している。
【0028】
コントローラ12は、分類された複数のクラスタのうち、車間距離情報riを少数しか含まず、且つ、他のクラスタとの距離が大きいクラスタに含まれる車間距離情報riをノイズデータとして除去する。図5の例では、クラスタC1,C3が除去される。
また、コントローラ12は、ノイズデータとして除去した車間距離情報riに対応する横位置情報Li,Riも同時に除去する。車間距離情報riと横位置情報Li,Riとが対応するとは、これらが同じ測定時間(サンプリング時間)に測定された情報であることを意味する。
【0029】
図3の例では、他の情報から隔離した時間t-13,t-9の車間距離情報r-13,r-9(黒丸印)が除去される。また、これに伴い、対応する横位置情報L-13,L-9,R-13,R-9が除去される。これにより、位置データ取得手段としてのコントローラ12は、13個の情報セットからなる一次データセット(第1の位置データ)を取得し、内部メモリに記憶する。図3の例では、一次データセットに、車間距離情報ri、横位置情報Li,Ri(i=0,−1,−2,−3,−4,−5,−6,−7,−8,−10,−11,−12,−14)が含まれる。
【0030】
なお、本実施形態では、クラスタリング処理としてK平均法を採用しているが、これに限らず、他のクラスタリング手法を採用してもよい。
また、本実施形態では、データスクリーニング処理(前処理)としてクラスタリング処理を行っているが、これに限らず、明らかなノイズ成分を除去できれば他の処理方法を行ってもよい。
さらに、本実施形態では、データスクリーニング処理(前処理)を行っているが、必ずしもこの処理を行わなくてもよい。
【0031】
次いで、第1スクリーニング手段としてのコントローラ12は、車間距離情報分析処理(ステップS3−S5)を一次データセットに対して行う。この処理では、コントローラ12は、車間距離情報riが所定以上の時間依存性を有するか否かを判定する(ステップS3)。
そして、コントローラ12は、車間距離情報riが時間依存性を有すると判断した場合は線形回帰処理(ステップS4)を行い、車間距離情報riが時間依存性を有しないと判断した場合はクラスタリング処理(ステップS5)を行う。このように、本実施形態では、車間距離情報riのデータの性質に応じて、データスクリーニング処理を変更しており、これにより先行車両2の位置検出の精度を向上することが可能となる。
【0032】
ステップS3では、コントローラ12は、まず一次データセットの車間距離情報riに線形回帰処理(例えば、最小二乗法による処理)を行う。次に、コントローラ12は、この線形回帰処理で得られた線形回帰線(例えば、図3の線d)に対する車間距離情報riの標準偏差を算出する。
そして、コントローラ12は、車間距離情報riの標準偏差が所定の閾値以下の場合、車間距離情報riが時間依存性を有すると判定する(ステップS3;A)。一方、コントローラ12は、車間距離情報riの標準偏差が所定の閾値を越える場合、車間距離情報riが時間依存性を有しないと判定する(ステップS3;B)。
なお、上記閾値は、実験等により算出されたものであり、予めコントローラ12の内部メモリに記憶されている。
【0033】
ステップS4では、コントローラ12は、一次データセットの車間距離情報riのうち、線形回帰線dからの偏差が所定閾値を越えるものをノイズ成分として除去する。また、コントローラ12は、ノイズ成分として除去した車間距離情報riに対応する横位置情報Li,Riも除去する。なお、この偏差の閾値は、実験等から算出したものであり、コントローラ12の内部メモリに予め記憶されている。
図3の例では、時間t-4の車間距離情報r-4(破線円で囲まれた黒丸)が除去される。また、これに伴い、時間t-4の横位置情報L-4,R-4も除去される。これにより、コントローラ12は、除去されずに残った12個の車間距離情報riとこれに対応する横位置情報Li,Riを二次データセット(第2の位置データ)として取得する。図3の例では、二次データセットに、車間距離情報ri、横位置情報Li,Ri(i=0,−1,−2,−3,−5,−6,−7,−8,−10,−11,−12,−14)が含まれる。
【0034】
ステップS5では、コントローラ12は、一次データセットの車間距離情報riをクラスタリング処理(例えば、K平均法)を行う。そして、コントローラ12は、分類された複数のクラスタのうち、最大のクラスタ(データ数が最大のクラスタ)に含まれる車間距離情報ri以外をノイズデータとして除去する。これにより、コントローラ12は、除去されなかった最大のクラスタに含まれる車間距離情報riとこれに対応する横位置情報Li,Riを二次データセットとして取得する。
【0035】
次いで、第2スクリーニング手段としてのコントローラ12は、横位置情報解析処理(ステップS6)を二次データセットに対して行う。
ステップS6では、コントローラ12は、二次データセットの横位置情報Li,Riに対して、ステップS5と同様なクラスタリング処理(例えば、K平均法)を行い、ノイズデータを除去する。図6(A),(B)は、図3の例に対応する二次データセットの横位置情報Li,Riをクラスタリング処理した結果を示している。図6は、分類したクラスタ毎のデータ数を表している。この例では、横位置情報LiでクラスタC4(L-11)、横位置情報RiでクラスタC7(R-3)が除去される。
【0036】
また、クラスタC4(L-11)に対応する横位置情報R-11及び車間距離情報r-11、クラスタC7(R-3)に対応する横位置情報R-3及び車間距離情報r-3も除去される。
これにより、コントローラ12は、車間距離情報ri、横位置情報Li,Ri(i=0,−1,−2,−5,−6,−7,−8,−10,−12,−14)からなる三次データセット(第3の位置データ)を取得する。
【0037】
次いで、位置情報算出手段としてのコントローラ12は、三次データセットに基づいて、現在時刻t0の車間距離re及び横位置Le,Reを算出する(ステップS7)。
ステップ7では、コントローラ12は、三次データセットの車間距離情報riに対して線形回帰処理を行う。線形回帰処理により算出された線形回帰線により、コントローラ12は、現在時刻t0における先行車両2と自車両1との車間距離reを算出する。すなわち、現在時刻t0における線形回帰線の値が車間距離reとして算出される。車間距離情報は時間依存性を有するので、これを単に平均化処理するよりも線形回帰処理することにより、算出される車間距離の精度を向上させることができる。
また、コントローラ12は、三次データセットの横位置情報Li,Riをそれぞれ平均化処理し、先行車両2の左右の横位置Le,Reを算出する。なお、横位置の算出において、横位置情報Li,Riを平均化処理するのではなく、横位置情報Li,Riの中央値を選択し、これを横位置Le,Reとしてもよい。
【0038】
なお、本実施形態のステップ7では、三次データセットの車間距離情報riに対して線形回帰処理を行っているが、これに限らず、ステップS5を行った場合は三次データセットの車間距離情報riを平均化処理して、現在時刻t0における車間距離reを算出してもよい。
【0039】
以上のように、本実施形態の先行車両の位置検出装置10では、車間距離情報と横位置情報の統計的性質の相違に応じて、車間距離情報には線形回帰処理を適用してノイズデータを除去し、さらにデータの精度を高めるために、横位置情報にはクラスタリング処理を適用してノイズデータを除去している。これにより、本実施形態では、カメラ11からの画像データに基づいて演算された元データである初期位置データを、効果的にフィルタリング処理することができ、最終的に得られる現在時刻の位置情報の精度を極めて向上させることが可能となる。
【0040】
次に、図7乃至図9に、本実施形態の位置検出装置10による位置検出結果を示す。
この例は、先行車両2と自車両1との車間距離を約32秒間にわたって検出したものである。この例では、先行車両2は、測定開始時に自車両1の約22m前方に位置しているが、その後徐々に自車両1に接近していき、約10秒後以降、自車両1の約3m前方を走行している。
【0041】
また、測定の精度を確認するために、位置検出装置10以外に車両1に装備したレーザレーダによっても車間距離を測定している。なお、この例では、レーザレーダは、カメラ11よりも約2m前方に設置されているので、位置検出装置10による位置検出データとレーザレーダによる位置検出データとの間には約2mの差異が生じる。
図7は、初期位置データ(「RWA」と表記)と、初期位置データに基づいて算出した本実施形態の位置データ(「Tracking」と表記)と、レーザレーダによる位置測定データ(「Radar」と表記)の3つの位置検出データの時間変化を示している。
【0042】
図7から、初期位置データ(RWA)及び本実施形態による位置データ(Tracking)は、約2mの差をもってレーザレーダによる位置測定データに沿っていることが分かる。しかしながら、初期位置データ(RWA)は、約1m−2mの急激な車両進行方向の時間変動を含んでいる。これらは測定に起因するノイズデータである。これに対して、本実施形態による位置データ(Tracking)では、初期位置データ(RWA)のような急激な時間変動が上記ノイズフィルタリング処理により除去されていることが分かる。
【0043】
また、図8は、レーザレーダによる位置測定データと本実施形態による位置データ(Tracking)の相関図である。各プロットは、データ測定時間毎の車間距離を表しており、横軸成分がレーザレーダによる位置測定データの大きさ、縦軸成分が本実施形態による位置データ(Tracking)の大きさを表している。また、図8の直線は、有効範囲におけるプロットの線形回帰線である。測定の前後方向位置の相違から線形回帰線は、約2mオフセットしている。
図9は、図8と同様な、レーザレーダによる位置測定データと初期位置データ(RWA)の相関図である。
【0044】
図8及び図9から、本実施形態による位置データ(Tracking)は、初期位置データ(RWA)よりもレーザレーダによる位置測定データとの相関度合が高く、線形回帰線との偏差が小さいことが分かる。
以上のように、図7乃至図9から、本実施形態により、効果的なノイズフィルタリング処理を行うことができ、これにより検出位置データの精度を向上させることが可能であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態による先行車両の位置検出の説明図である。
【図2】本発明の実施形態による位置検出装置の構成図である。
【図3】本発明の実施形態により位置検出処理を行うための位置データ(初期データ)の時間変動を表すグラフである。
【図4】本発明の実施形態による位置検出処理のフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態によるデータスクリーニング処理(クラスタリング処理)の一例を示すグラフである。
【図6】本発明の実施形態による横位置情報のクラスタリング処理の一例を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態による位置検出データと他の方法による位置検出データの時間変動を表すグラフである。
【図8】本発明の実施形態による位置検出データとレーザレーダによる位置測定データとの相関図である。
【図9】本発明の実施形態による位置検出データを算出するための初期データ(RWA)とレーザレーダによる位置測定データとの相関図である。
【符号の説明】
【0046】
1 車両
2 先行車両
3 軸線
4 撮像範囲
10 位置検出装置
11 カメラ
12 コントローラ
L,R 横位置情報
r 車間距離情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に対する先行車両の車間距離及び横位置を検出する位置検出方法であって、
現在時刻から所定時間前までの前記車間距離に関する複数の車間距離情報と、この車間距離情報に対応する前記横位置に関する横位置情報と、の組み合わせからなる第1の位置データを取得する工程と、
前記第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報に対して線形回帰処理を行い、得られた線形回帰線との差が所定の閾値以下の車間距離情報とこれに対応する横位置情報とからなる第2の位置データを取得する線形回帰処理工程と、
この第2の位置データに含まれる横位置情報に対してクラスタリング処理を行い、最大のクラスタに含まれる横位置情報とこれに対応する車間距離情報とからなる第3の位置データを取得するクラスタリング処理工程と、
この第3の位置データを用いて現在時刻における車間距離と横位置とを算出する位置情報算出工程と、を備えたことを特徴とする先行車両の位置検出方法。
【請求項2】
前記位置情報算出工程では、前記第3の位置データに含まれる車間距離情報に対して線形回帰処理を行うことにより現在時刻における車間距離を算出し、前記第3の位置データに含まれる横位置情報を平均化処理することにより横位置を算出することを特徴とする請求項1に記載の先行車両の位置検出方法。
【請求項3】
前記第1の位置データを取得する工程の後に、前記第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報が時間依存性を有するか否かを判定する判定工程を備え、
この判定工程で、前記第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報が時間依存性を有すると判定した場合に、前記線形回帰処理工程を行い、
前記判定工程で、前記第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報が時間依存性を有しないと判定した場合に、前記第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報に対してクラスタリング処理を行い、最大のクラスタに含まれる車間距離情報とこれに対応する横位置情報とからなる第2の位置データを取得する工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の先行車両の位置検出方法。
【請求項4】
自車両に対する先行車両の車間距離及び横位置を検出する位置検出装置であって、
現在時刻から所定時間前までの前記車間距離に関する複数の車間距離情報とこの車間距離情報に対応する前記横位置に関する横位置情報との組み合わせからなる第1の位置データを取得する位置データ取得手段と、
前記第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報に対して線形回帰処理を行い、得られた線形回帰線との差が所定の閾値以下の車間距離情報とこれに対応する横位置情報とからなる第2の位置データを取得する第1スクリーニング手段と、
この第2の位置データに含まれる横位置情報に対してクラスタリング処理を行い、最大のクラスタに含まれる横位置情報とこれに対応する車間距離情報とからなる第3の位置データを取得する第2スクリーニング手段と、
この第3の位置データを用いて現在時刻における車間距離と横位置とを算出する位置情報算出手段と、を備えたことを特徴とする先行車両の位置検出装置。
【請求項5】
前記位置情報算出手段は、前記第3の位置データに含まれる車間距離情報に対して線形回帰処理を行うことにより現在時刻における車間距離を算出し、前記第3の位置データに含まれる横位置情報を平均化処理することにより横位置を算出することを特徴とする請求項4に記載の先行車両の位置検出装置。
【請求項6】
前記第1スクリーニング手段は、前記第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報が時間依存性を有するか否かを判定し、前記第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報が時間依存性を有する場合に、前記線形回帰処理を行って前記第2の位置データを取得し、前記第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報が時間依存性を有しない場合に、前記第1の位置データに含まれる複数の車間距離情報に対してクラスタリング処理を行い、最大のクラスタ数を有するクラスタに含まれる車間距離情報とこれに対応する横位置情報とからなる第2の位置データを取得することを特徴とする請求項4に記載の先行車両の位置検出装置。
【請求項7】
時間依存性を有する時間依存情報とこの時間依存情報よりも時間依存性が小さい非時間依存情報との組み合わせからなるデータのフィルタリング方法であって、
現在時刻から所定時間前までの複数の時間依存情報とこの時間依存情報に対応する非時間依存情報との組み合わせからなる第1のデータを取得する工程と、
前記第1のデータに含まれる複数の時間依存情報に対して線形回帰処理を行い、得られた線形回帰線との差が所定の閾値以下の時間依存情報とこれに対応する非時間依存情報とからなる第2のデータを取得する工程と、
この第2の位置データに含まれる非時間依存情報に対してクラスタリング処理を行い、最大のクラスタ数を有するクラスタに含まれる非時間依存情報とこれに対応する時間依存情報とからなる第3の位置データを取得する工程と、
この第3の位置データを用いて現在時刻における時間依存情報と非時間依存情報とを算出する工程と、を備えたことを特徴とするデータフィルタリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−30404(P2010−30404A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194014(P2008−194014)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】