光スイッチ装置およびそれを備えた光集積回路装置
【課題】温度が変化しても共振波長を一定に保つことが可能な光スイッチ装置を提供する。
【解決手段】交流電源56は、光共振器の共振波長の元の共振波長からの波長シフトを検出するための交流電圧を電極41を介して光共振器3に印加する。光検出器51は、交流電圧が光共振器3に印加されたときの光導波路2の出力光の強度を検出する。交流アンプ52は、光検出器51から受けた出力光の強度を増幅する。同期検波回路53は、交流アンプ52によって増幅された出力光の強度を整流し、積分器55は、整流された出力光の強度を積分し、その積分した積分値に相当する直流電圧を光共振器3に印加する。積分器55は、光共振器3における波長シフトがなくなるまで直流電圧を繰返し印加し、波長シフトがなくなったときにキャパシタ552に蓄積された電荷によって生じる直流電圧を光共振器3に印加する。
【解決手段】交流電源56は、光共振器の共振波長の元の共振波長からの波長シフトを検出するための交流電圧を電極41を介して光共振器3に印加する。光検出器51は、交流電圧が光共振器3に印加されたときの光導波路2の出力光の強度を検出する。交流アンプ52は、光検出器51から受けた出力光の強度を増幅する。同期検波回路53は、交流アンプ52によって増幅された出力光の強度を整流し、積分器55は、整流された出力光の強度を積分し、その積分した積分値に相当する直流電圧を光共振器3に印加する。積分器55は、光共振器3における波長シフトがなくなるまで直流電圧を繰返し印加し、波長シフトがなくなったときにキャパシタ552に蓄積された電荷によって生じる直流電圧を光共振器3に印加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光スイッチ装置およびそれを備えた光集積回路装置に関し、特に、リング形状の光共振器を用いた光スイッチ装置およびそれを備えた光集積回路装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リング形状からなる光共振器が知られている(特許文献1)。この光共振器は、芯部と、光導波部とからなる。芯部は、球形状を有し、たとえば、金、銀、銅、アルミニウム、およびニッケルのいずれかからなる。そして、芯部は、光導波部の内周部に配置される。
【0003】
光導波部は、リング形状からなり、内周面が芯部の表面に接するように配置される。そして、光導波部は、たとえば、ガラス、石英、ポリメタクリル酸メチル(PMMA:Polymethyl Methacrylate)、酸化チタン(TiO2)、五酸化タンタル(Ta2O5)、シリコン(Si)およびシリコンカーバイド(SiC)のいずれかからなる。また、光導波部は、0.1〜1μmの厚みを有する。
【0004】
この光共振器は、光導波部の厚み方向に垂直な方向における光導波部の側面から光を入射し、その入射した光を時計回りおよび反時計回りに伝搬させることにより光共振する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−298846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の光共振器は、シリコン等の半導体材料からなる光導波部を備えているため、温度変動によって共振波長がシフトするという問題がある。シリコンを光導波部に用いた場合、温度が5℃変化すれば、共振波長は、0.3nmだけ長波長側へシフトする(図11参照)。共振器の性能指数であるQ値が4800である場合、この0.3nmの共振波長のシフトは、約85%の光出力強度の減少に相当する(図11参照)。
【0007】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、温度が変化しても共振波長を一定に保つことが可能な光スイッチ装置を提供することである。
【0008】
また、この発明の別の目的は、温度が変化しても共振波長を一定に保つことが可能な光スイッチ装置を備えた光集積回路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によれば、光スイッチ装置は、基板と、第1および第2の光導波路と、光共振器と、電極と、共振保障回路と、切換電圧印加回路とを備える。第1の光導波路は、入力光が伝搬させる。光共振器は、第1の光導波路に近接して基板上に配置され、リング形状からなる。第2の光導波路は、光共振器に近接して配置され、光共振器中を伝搬する光と同じ波長の出力光を伝搬させる。電極は、基板の面内方向における光共振器の両側面に接して配置される。共振保障回路は、光共振器の温度変動による光共振器の共振波長のシフトを検出し、その検出したシフトを相殺するための相殺電圧を電極に印加する。切換電圧印加回路は、光共振器を介した第1の光導波路から第2の光導波路への導波光の伝搬と不伝搬とを切換える切換電圧を電極に印加する。
【0010】
好ましくは、共振保障回路は、シフト検出回路と、相殺電圧印加回路とを含む。シフト検出回路は、光共振器の温度変動による光共振器の共振波長の温度変化前の値からのシフトを検出する。相殺電圧印加回路は、シフト検出回路によって検出されたシフトを抑制するための直流電圧からなる抑制電圧をシフトがなくなるまで電極に繰返し印加し、シフトがなくなったときの抑制電圧を相殺電圧として電極に印加する。
【0011】
好ましくは、シフト検出回路は、検出電圧印加回路と、光検出器と、整流回路とを含む。検出電圧印加回路は、光共振器の温度変動による共振波長のシフトを検出するための交流電圧からなるシフト検出電圧を電極に印加する。光検出器は、シフト検出電圧および抑制電圧が電極に印加されたときに第2の光導波路中を伝搬する出力光を検出し、その検出した出力光の強度を出力する。整流回路は、出力光の強度を整流する。そして、相殺電圧印加回路は、整流回路によって整流された出力光の強度を積分し、その積分した積分値からなる抑制電圧を電極に印加する。
【0012】
好ましくは、整流回路は、検出電圧印加回路が印加する交流電圧に同期して出力光の強度を整流する。
【0013】
好ましくは、電極は、第1および第2の電極を含む。第1の電極は、光共振器の内周壁面に接して配置される。第2の電極は、光共振器の外周壁面に接して配置される。そして、検出電圧印加回路は、シフト検出電圧を第1の電極に印加する。相殺電圧印加回路は、抑制電圧を第2の電極に繰り返し印加するとともに、シフトがなくなったときの抑制電圧を相殺電圧として第2の電極に印加する。切換電圧印加回路は、切換電圧を第1の電極に印加する。
【0014】
好ましくは、第2の電極は、光共振器の略半周分の外周壁面に接して配置される。
【0015】
好ましくは、切換電圧印加回路は、検出電圧印加回路がシフト検出電圧を第1の電極に印加するための導線と同じ導線を用いて切換電圧を第1の電極に印加する。
【0016】
好ましくは、光共振器は、光導波路と、第1および第2のクラッドとを含む。光導波路は、リング形状を有する。第1のクラッドは、基板の面内方向における光導波路の内周面に接して形成され、光導波路の比誘電率よりも大きい比誘電率を有する材料からなる。第2のクラッドは、基板の面内方向における光導波路の外周面に接して形成され、光導波路の比誘電率よりも大きい比誘電率を有する材料からなる第2のクラッドとを含む。
【0017】
好ましくは、光導波路は、シリコンからなる。第1および第2のクラッドの各々は、酸化シリコンの比誘電率よりも大きい比誘電率を有する材料からなる。
【0018】
好ましくは、第1および第2のクラッドの各々は、(Ba,Sr)TiO3からなる。
【0019】
好ましくは、第1および第2のクラッドの各々は、屈折率の温度依存性が光導波路を構成する材料の屈折率の温度依存性と逆極性である材料からなる。
【0020】
好ましくは、第1および第2のクラッドの各々は、透明ナノ粒子シリカを含むポリイミドからなる。
【0021】
好ましくは、切換電圧印加回路は、光共振器を介して第1の光導波路から第2の光導波路へ導波光を伝搬させるとき、0Vからなる切換電圧を電極に印加し、光共振器を介して第1の光導波路から第2の光導波路へ導波光を伝搬させないとき、0V以外の電圧からなる切換電圧を電極に印加する。
【0022】
また、この発明によれば、光集積回路装置は、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の光スイッチ装置を備える。
【発明の効果】
【0023】
この発明による光スイッチ装置においては、温度変動による光共振器の共振波長のシフトを検出し、その検出したシフトを相殺するための相殺電圧を光共振器に印加する。
【0024】
したがって、この発明によれば、温度が変動しても共振波長を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態による光スイッチ装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す光スイッチ装置の構造を示す斜視図である。
【図3】図1に示す共振保障回路のうち、交流電源を除く部分の回路図である。
【図4】図1に示す交流電源の回路図である。
【図5】図1に示す切換電圧印加回路の回路図である。
【図6】図3に示すオペアンプの回路図である。
【図7】図6に示す定電流源の回路図である。
【図8】印加電圧を変えたときの光共振器の出力光強度と波長との関係を示す図である。
【図9】印加電圧の極性を変えたときの光共振器の出力光強度と波長との関係を示す図である。
【図10】波長シフトと印加電圧との関係を示す図である。
【図11】出力光強度の温度依存性を示す図である。
【図12】光共振器の出力光強度と印加電圧との関係を示す図である。
【図13】光共振器の共振波長のずれを検出する方法を説明するための図である。
【図14】交流電圧、出力光および脈流のタイミングチャートである。
【図15】光共振器の共振波長の他のずれを検出する方法を説明するための図である。
【図16】交流電圧、出力光および脈流の他のタイミングチャートである。
【図17】光共振器の出力と波長との関係を示す概念図である。
【図18】図1に示す光スイッチ装置を用いた光集積回路装置の斜視図である。
【図19】図18に示す半導体基板、光導波路および光送受信部の斜視図である。
【図20】図19に示す光送受信部111の構成を示す斜視図である。
【図21】図20に示す2つの光スイッチ装置の2つの光共振器の平面図である。
【図22】図18に示す線XXII−XXII間における光集積回路装置の断面図である。
【図23】図18に示す光源の構成図である。
【図24】図18に示す光源の他の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0027】
図1は、この発明の実施の形態による光スイッチ装置の構成を示す概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による光スイッチ装置10は、光導波路1,2と、光共振器3と、電極4と、共振保障回路5と、切換電圧印加回路6と、導線7とを備える。
【0028】
光導波路1,2の各々は、シリコン(Si)からなり、直線状の形状を有する。そして、光導波路1,2の各々は、0.4〜1μmの幅および0.3μmの厚みを有する。
【0029】
光導波路1は、方向DR1に沿ってSi基板の表面に配置され、光導波路2は、方向DR1に直交する方向DR2に沿ってSi基板の表面に配置される。
【0030】
光共振器3は、光導波路31と、クラッド32,33とを含む。光導波路31は、リング形状のSiからなり、0.4μmの幅、0.3μmの厚みおよび15μmの直径を有する。
【0031】
クラッド32は、リング形状を有し、光導波路31の内周面に接して光導波路31の内側に配置される。そして、クラッド32は、たとえば、(Ba,Sr)TiO3からなり、1.5μmの幅および0.3μmの厚みを有する。
【0032】
クラッド33は、半円形の平面形状を有し、光導波路31の外周面に接して光導波路31の外側に配置される。そして、クラッド33は、たとえば、(Ba,Sr)TiO3からなり、1.5μmの幅および0.3μmの厚みを有する。
【0033】
このように、光共振器3は、リング形状のSiからなる光導波路31を(Ba,Sr)TiO3からなるクラッド32,33によって挟み込んだ構造からなる。
【0034】
そして、光共振器3は、光導波路31が光導波路1,2に近接するようにSi基板の表面に配置される。この場合、光導波路1,2と光導波路31との間隔は、0.1〜0.3μmである。
【0035】
電極4は、電極41,42からなる。電極41,42の各々は、たとえば、アルミニウム(Al)からなる。
【0036】
電極41は、リング形状を有し、光共振器3のクラッド32の内周面に接してクラッドの内側に配置される。
【0037】
電極42は、半円状の平面形状を有し、光共振器3のクラッド33の外周面に接してクラッド33の外側に配置される。
【0038】
共振保障回路5は、光検出器51と、交流アンプ52と、同期検波回路53と、積分器55と、交流電源56とを含む。
【0039】
光検出器51は、たとえば、pin構造のゲルマニウムダイオードからなり、光導波路2の一方端に近接して配置される。交流アンプ52は、光検出器51と、同期検波回路53との間に接続される。
【0040】
同期検波回路53は、交流アンプ52、抵抗54および交流電源56に接続される。
【0041】
抵抗54は、同期検波回路53に接続される。積分器55は、オペアンプ551と、キャパシタ552と抵抗54とからなる。オペアンプ551は、反転入力端子が抵抗54およびキャパシタ552に接続され、非反転入力端子が接地ノードに接続され、出力端子が電極4(=電極42)に接続される。キャパシタ552は、オペアンプ551の反転入力端子とオペアンプ551の出力端子との間に接続される。
【0042】
交流電源56は、発振回路からなり、導線7を介して電極4(=電極41)と接地ノードとの間に接続される。また、交流電源56は、同期検波回路53に接続される。
【0043】
切換電圧印加回路6は、導線7を介して電極4(=電極41)と接地ノードとの間に交流電源56に並列に接続される。
【0044】
光導波路1は、入力光を伝搬させるとともに、その入力光の一部を光結合によって光共振器3の光導波路31へ出射する。
【0045】
光導波路2は、光共振器3の光導波路31中を共振波長で伝搬する導波光の一部を受け、その受けた一部の導波光を出力光として伝搬させる。
【0046】
光共振器3は、共振保障回路5によって、光導波路31中を伝搬する導波光の共振波長における共振が保障される。そして、光共振器3は、切換電圧印加回路6から電極4(=電極41)を介して切換電圧VEX1(=0V)を受けると、共振波長で共振した導波光の一部を光導波路31から光導波路2へ伝搬させる。また、光共振器3は、切換電圧印加回路6から電極4(=電極41)を介して切換電圧VEX2(≠0V)を受けると、光導波路1中を伝搬する導波光と共振せず、光導波路1から光導波路2への光導波光の伝搬を遮断する。
【0047】
共振保障回路5において、光検出器51は、光導波路2から出力される出力光の強度を検出し、その検出した出力光の強度を交流アンプ52へ出力する。
【0048】
交流アンプ52は、光検出器51から出力光の強度を受け、その受けた出力光の強度を増幅して同期検波回路53へ出力する。
【0049】
同期検波回路53は、交流電源56からの交流電圧に同期して交流アンプ52からの出力を検波し、その検波した出力を抵抗54を介してオペアンプ551の反転入力端子へ出力する。
【0050】
積分器55は、同期検波回路53の出力を積分し、その積分値に相当する直流電圧からなる抑制電圧Vctlを電極4(=電極42)に印加する。
【0051】
交流電源56は、光共振器3の共振波長のシフトを検出するための交流電圧を生成し、その生成した交流電圧を同期検波回路53へ出力するとともに、その生成した交流電圧を電極4(=電極41)に印加する。
【0052】
切換電圧印加回路6は、切換電圧VEX1またはVEX2を生成し、その生成した切換電圧VEX1またはVEX2を導線7を介して電極4(=電極41)に印加する。
【0053】
図2は、図1に示す光スイッチ装置10の構造を示す斜視図である。図2を参照して、光スイッチ装置10は、基板11をさらに備える。基板11は、Si基板11Aと、SiO2膜11Bとからなる。
【0054】
光導波路1,2、光共振器3、共振保障回路5(光検出器51、交流アンプ52、同期検波回路53、抵抗54、積分器55および交流電源56)および切換電圧印加回路6は、基板11のSiO2膜11B上に配置される。そして、交流電源56および切換電圧印加回路6は、SiO2膜11Bに穴を開け、光導波路2の下側のSi基板11Aに低抵抗領域を形成することにより電極41に接続される。または、交流電源56および切換電圧印加回路6は、光導波路1,2、光共振器3、共振保障回路5(光検出器51、交流アンプ52、同期検波回路53、抵抗54、積分器55および交流電源56)および切換電圧印加回路6の全体に被着される層間絶縁膜(一般的には、SiO2膜)に穴を開け、金属(たとえば、Al)によって電極41に接続される。
【0055】
また、光検出器51は、金属膜(たとえば、Al)からなる導体CDT1をSiO2膜11B上に形成することにより交流アンプ52に接続され、交流アンプ52は、金属膜(たとえば、Al)からなる導体CDT2をSiO2膜11B上に形成することにより同期検波回路53に接続される。また、同期検波回路53は、金属膜(たとえば、Al)からなる導体CDT3をSiO2膜11B上に形成することにより交流電源56に接続される。抵抗54は、所定の抵抗値からなる多結晶シリコンをSiO2膜11B上に形成することにより作製される。さらに、積分器55は、金属膜(たとえば、Al)からなる導体CDT4をSiO2膜11B上に形成することにより電極42に接続される。
【0056】
このように、光スイッチ装置10は、基板11(=半導体基板)上に形成された集積回路からなる。
【0057】
図3は、図1に示す共振保障回路5のうち、交流電源56を除く部分の回路図である。図3を参照して、光検出器51は、フォトダイオード511,514と、抵抗512,513とからなる。フォトダイオード511,514の各々は、たとえば、pin構造のゲルマニウムからなる。
【0058】
フォトダイオード511および抵抗512は、電源ノードVDDと、接地ノードVSSとの間に直列に接続される。この場合、フォトダイオード511は、接地ノードVSSから抵抗512の方向へ電流が流れるように接続される。
【0059】
また、抵抗513およびフォトダイオード514は、電源ノードVDDと、接地ノードVSSとの間に直列に接続される。この場合、フォトダイオード514は、接地ノードVSSから抵抗513の方向へ電流が流れるように接続される。
【0060】
そして、直列に接続されたフォトダイオード511および抵抗512は、直列に接続された抵抗513およびフォトダイオード514と電源ノードVDDと、接地ノードVSSとの間で並列に接続される。
【0061】
光検出器51においては、フォトダイオード514は、暗電流を消去する機能を果たす。
【0062】
交流アンプ52は、抵抗521〜523,525,527と、オペアンプ524と、キャパシタ526,528とを含む。抵抗521は、光検出器51中のノードN1と、オペアンプ524の反転入力端子との間に接続される。抵抗522は、光検出器51中のノードN2と、オペアンプ524の非反転入力端子との間に接続される。抵抗523は、オペアンプ524の非反転入力端子と接地ノードVSSとの間に接続される。
【0063】
オペアンプ524は、抵抗521,522とキャパシタ526との間に接続される。抵抗525は、オペアンプ524の反転入力端子と、オペアンプ524の出力端子との間に接続される。
【0064】
キャパシタ526は、オペアンプ524の出力端子と抵抗527との間に接続される。抵抗527は、キャパシタ526と同期検波回路53との間に接続される。キャパシタ528は、ノードN3と接地ノードVSSとの間に接続される。
【0065】
オペアンプ524は、フォトダイオード511が検出した交流成分および直流成分からなる光出力を増幅し、その増幅した光出力を端子TM1から外部へ出力する。この端子TM1から出力された光出力は、光スイッチ装置10を用いた光集積回路装置において、同期信号またはバスラインの信号を生成するために用いられる。
【0066】
そして、キャパシタ526は、オペアンプ524の出力信号から交流成分のみを抽出し、抵抗527およびキャパシタ528は、スイッチングの超高周波成分を除去する。
【0067】
同期検波回路53は、p型MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ531と、n型MOSトランジスタ532と、インバータ533とを含む。p型MOSトランジスタ531は、ソースがノードN3およびn型MOSトランジスタ532のソースに接続され、ドレインが抵抗54およびn型MOSトランジスタ532のドレインに接続され、ゲートが端子TM2に接続される。この端子TM2は、交流電源56に接続され、交流電源56から出力された交流電圧を受ける。
【0068】
n型MOSトランジスタ532は、ソースがノードN3およびp型MOSトランジスタ531のソースに接続され、ドレインが抵抗54およびp型MOSトランジスタ531のドレインに接続され、ゲートがインバータ533の出力端子に接続される。
【0069】
インバータ533は、端子TM2とn型MOSトランジスタ532のゲートとの間に接続される。
【0070】
同期検波回路53は、交流電源56から正の電圧を受けると、p型MOSトランジスタ531およびn型MOSトランジスタ532の両方がオフされ、積分器55へ電流を出力せず、交流電源56から負の電圧またはゼロの電圧を受けると、p型MOSトランジスタ531およびn型MOSトランジスタ532の両方がオンされ、交流アンプ52によって増幅された電流を積分器55へ出力する。
【0071】
抵抗54は、p型MOSトランジスタ531およびn型MOSトランジスタ532のドレインとオペアンプ551の反転入力端子との間に接続される。
【0072】
光検出器51のフォトダイオード511は、光導波路2の出力光の強度を検出し、その検出した出力光の強度を示す交流電流を抵抗521を介してオペアンプ524へ出力する。
【0073】
そして、オペアンプ524は、フォトダイオード511からの交流電流を増幅し、その増幅した交流電流をキャパシタ526,528および抵抗527を介して同期検波回路53へ出力する。この場合、キャパシタ526は、交流電流成分のみを抽出する。
【0074】
そうすると、同期検波回路53は、交流電源56からの交流電圧が負またはゼロになった期間だけ交流アンプ52によって増幅された電流を抵抗54を介して積分器55へ出力し、交流電源56の交流電圧が正になった期間、交流アンプ52によって増幅された電流の積分器55への出力を停止する。すなわち、同期検波回路53は、交流アンプ52によって増幅された交流電流を整流し、その整流した電流(=脈流)を積分器55へ出力する。
【0075】
そして、積分器55は、同期検波回路53によって同期検波された脈流を積分し、その積分値に等しい直流電圧を電極4(=電極42)に印加する。
【0076】
図4は、図1に示す交流電源56の回路図である。図4を参照して、交流電源56は、p型MOSトランジスタ561,567と、n型MOSトランジスタ562,568と、抵抗563,565,569,570,572と、キャパシタ564,566と、ダイオード571とを含む。
【0077】
p型MOSトランジスタ561およびn型MOSトランジスタ562は、電源ノードVDDと接地ノードVSSとの間に直列に接続され、インバータを構成する。この場合、n型MOSトランジスタ562のソースは、接地ノードVSSに接続され、p型MOSトランジスタ561のソースは、電源ノードVDDに接続され、p型MOSトランジスタ561のドレインは、n型MOSトランジスタ562のドレインに接続される。
【0078】
p型MOSトランジスタ567およびn型MOSトランジスタ568は、電源ノードVDDと接地ノードVSSとの間に直列に接続され、インバータを構成する。この場合、n型MOSトランジスタ568のソースは、接地ノードVSSに接続され、p型MOSトランジスタ567のソースは、電源ノードVDDに接続され、p型MOSトランジスタ567のドレインは、n型MOSトランジスタ568のドレインに接続される。
【0079】
キャパシタ564は、ノードN4と、p型MOSトランジスタ567およびn型MOSトランジスタ568のゲートとの間に接続される。キャパシタ566は、p型MOSトランジスタ561およびn型MOSトランジスタ562のゲートと、ノードN5との間に接続される。
【0080】
抵抗563は、電源ノードVDDと、p型MOSトランジスタ567およびn型MOSトランジスタ568のゲートとの間に接続される。抵抗565は、電源ノードVDDと、p型MOSトランジスタ561およびn型MOSトランジスタ562のゲートとの間に接続される。
【0081】
抵抗569,570は、ノードN5と接地ノードVSSとの間に直列に接続される。ダイオード571は、抵抗569,570間のノードと出力端子OUT2との間に接続される。抵抗572は、出力端子OUT2と接地ノードVSSとの間に接続される。
【0082】
交流電源56は、p型MOSトランジスタ561,567、n型MOSトランジスタ562,568、抵抗563,565およびキャパシタ564,566によって発振して交流電圧(正確には、方形波交流電圧と直流との重畳された正の繰返し方形波電圧)を発生し、その発生した交流電圧を出力端子OUT1から同期検波回路53へ出力するとともに、その発生した交流電圧を出力端子OUT2から電極41に印加する。
【0083】
なお、ダイオード571は、切換電圧印加回路6と、交流電源56との干渉を防止するために設けられる。抵抗572は、出力端子OUT2の正電圧を放電する時定数を短くするために用いられる。
【0084】
図5は、図1に示す切換電圧印加回路6の回路図である。図5を参照して、切換電圧印加回路6は、p型MOSトランジスタ61と、n型MOSトランジスタ62と、ダイオード63と、抵抗64とを含む。
【0085】
p型MOSトランジスタ61およびn型MOSトランジスタ62は、電源ノードVDDと接地ノードVSSとの間に直列に接続され、インバータを構成する。この場合、p型MOSトランジスタ61は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインがn型MOSトランジスタ62のドレインに接続される。また、n型MOSトランジスタ62のソースは、接地ノードVSSに接続される。そして、p型MOSトランジスタ61およびn型MOSトランジスタ62のゲートは、入力端子INに接続される。
【0086】
ダイオード63は、p型MOSトランジスタ61およびn型MOSトランジスタ62のドレインと、出力端子OUTとの間に接続される。抵抗64は、出力端子OUTと接地ノードVSSとの間に接続される。
【0087】
切換電圧印加回路6は、p型MOSトランジスタ61およびn型MOSトランジスタ62によって構成されるインバータのしきい値電圧よりも高い電圧からなる入力信号を受けると、0Vからなる切換電圧VEX1を出力し、p型MOSトランジスタ61およびn型MOSトランジスタ62によって構成されるインバータのしきい値電圧よりも低い電圧からなる入力信号を受けると、電源電圧VDからなる切換電圧VEX2を出力する。
【0088】
なお、ダイオード63は、交流電源56との干渉を防止するために設けられる。抵抗64は、出力端子OUTの正電圧を放電する時定数を短くするために用いられる。
【0089】
図6は、図3に示すオペアンプ524の回路図である。図6を参照して、オペアンプ524は、p型MOSトランジスタ5241,5243〜5245,5249と、定電流源5242と、n型MOSトランジスタ5246,5247,5250と、キャパシタ5248とを含む。
【0090】
p型MOSトランジスタ5241および定電流源5242は、電源ノードVDDと、接地ノードVSSとの間に直列に接続される。この場合、p型MOSトランジスタ5241は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインが定電流源5242に接続され、ゲートが定電流源5242およびp型MOSトランジスタ5243,5249のゲートに接続される。
【0091】
p型MOSトランジスタ5243は、電源ノードVDDとノードN6との間に接続される。この場合、p型MOSトランジスタ5243は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインがノードN6に接続され、ゲートがp型MOSトランジスタ5241,5249のゲートに接続される。
【0092】
p型MOSトランジスタ5244およびn型MOSトランジスタ5246は、ノードN6と接地ノードVSSとの間に直列に接続される。この場合、p型MOSトランジスタ5244は、ソースがノードN6に接続され、ドレインがn型MOSトランジスタ5246のドレインに接続され、入力電圧Vinをゲートに受ける。また、n型MOSトランジスタ5246は、ソースが接地ノードVSSに接続され、ドレインがp型MOSトランジスタ5244のドレインに接続され、ゲートがp型MOSトランジスタ5244とn型MOSトランジスタ5246との間のノードN7と、n型MOSトランジスタ5247のゲートとに接続される。
【0093】
p型MOSトランジスタ5245およびn型MOSトランジスタ5247は、ノードN6と接地ノードVSSとの間に直列に接続される。この場合、p型MOSトランジスタ5245は、ソースがノードN6に接続され、ドレインがn型MOSトランジスタ5247のドレインに接続され、基準電圧Vrefをゲートに受ける。また、n型MOSトランジスタ5247は、ソースが接地ノードVSSに接続され、ドレインがp型MOSトランジスタ5245のドレインに接続され、ゲートがノードN7とn型MOSトランジスタ5246のゲートとに接続される。
【0094】
p型MOSトランジスタ5244,5245およびn型MOSトランジスタ5246,5247は、ミラー型の差動増幅器を構成し、Vin>Vrefであるとき、電圧V1をノードN8から出力し、Vin≦Vrefであるとき、電圧V2(>V1)をノードN8から出力する。
【0095】
キャパシタ5248は、ノードN8とノードN9の間に接続され、発振を防止するための位相補償の役割を果たす。p型MOSトランジスタ5249およびn型MOSトランジスタ5250は、電源ノードVDDと接地ノードVSSとの間に直列に接続される。
【0096】
この場合、p型MOSトランジスタ5249は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインがノードN9に接続され、ゲートがp型MOSトランジスタ5241,5243のゲートに接続される。また、n型MOSトランジスタ5250は、ソースが接地ノードVSSに接続され、ドレインがノードN9に接続され、ゲートがノードN8に接続される。
【0097】
キャパシタ5251は、ノードN9と接地ノードとの間の負荷寄生容量を表す。
【0098】
オペアンプ524は、入力電圧Vinを基準電圧Vrefと比較し、Vin>Vrefであるとき、ノードN8上の電圧V1を増幅して出力し、Vin≦Vrefであるとき、ノードN8上の電圧V2(>V1)を増幅して出力する。
【0099】
なお、図3に示すオペアンプ551も、図6に示すオペアンプ524の回路図と同じ回路図からなる。
【0100】
図7は、図6に示す定電流源5242の回路図である。図7を参照して、定電流源5242は、p型MOSトランジスタ5261〜5264と、n型MOSトランジスタ5265〜5269と、抵抗5270とを含む。
【0101】
p型MOSトランジスタ5261およびn型MOSトランジスタ5266は、電源ノードVDDと接地ノードVSSとの間に直列に接続される。
【0102】
この場合、p型MOSトランジスタ5261は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインがn型MOSトランジスタ5266のドレインに接続され、ゲートがノードN11に接続される。また、n型MOSトランジスタ5266は、ソースが接地ノードVSSに接続され、ドレインがp型MOSトランジスタ5261のドレインに接続され、ゲートがノードN11に接続される。
【0103】
n型MOSトランジスタ5265は、p型MOSトランジスタ5262〜5264のゲートと接地ノードVSSとの間に接続される。
【0104】
この場合、n型MOSトランジスタ5265は、ソースが接地ノードVSSに接続され、ドレインがp型MOSトランジスタ5262〜5264のゲートに接続され、ゲートがノードN10に接続される。
【0105】
p型MOSトランジスタ5262およびn型MOSトランジスタ5267は、電源ノードVDDと接地ノードVSSとの間に直列に接続される。
【0106】
この場合、p型MOSトランジスタ5262は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインがn型MOSトランジスタ5267のドレインに接続され、ゲートがp型MOSトランジスタ5263のゲートとn型MOSトランジスタ5265のドレインとに接続される。また、n型MOSトランジスタ5267は、ソースが接地ノードVSSに接続され、ドレインがp型MOSトランジスタ5262のドレインおよびn型MOSトランジスタ5268のゲートに接続され、ゲートがノードN11に接続される。
【0107】
p型MOSトランジスタ5263およびn型MOSトランジスタ5268は、電源ノードVDDとノードN11との間に直列に接続される。
【0108】
この場合、p型MOSトランジスタ5263は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインがn型MOSトランジスタ5268のドレインに接続され、ゲートがp型MOSトランジスタ5262,5264のゲートとn型MOSトランジスタ5265のドレインとに接続される。また、n型MOSトランジスタ5268は、ソースがノードN11に接続され、ドレインがp型MOSトランジスタ5263,5265のドレインおよびp型MOSトランジスタ5264のゲートに接続され、ゲートがノードN12に接続される。
【0109】
抵抗5270は、ノードN11と接地ノードとの間に接続される。p型MOSトランジスタ5264は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ゲートがp型MOSトランジスタ5262のゲートと、p型MOSトランジスタ5263のゲートおよびドレインと、n型MOSトランジスタ5265のドレインとに接続される。n型MOSトランジスタ5269は、ソースが接地ノードに接続され、ゲートがノードN11に接続される。
【0110】
上述したように、光スイッチ装置10は、半導体基板11A上に作製され、共振保障回路5および切換電圧印加回路6は、MOSトランジスタ、抵抗およびキャパシタによって構成されるので、半導体プロセスを用いることにより光スイッチ装置10を容易に製造できる。
【0111】
図8は、印加電圧を変えたときの光共振器3の出力光強度と波長との関係を示す図である。
【0112】
図8において、縦軸は、ピーク値で規格化された出力光強度を表し、横軸は、波長を表す。また、曲線k1は、光共振器3に印加する電圧が0Vであるときの出力光強度と波長との関係を示し、曲線k2は、1Vの電圧を光共振器3に印加したときの出力光強度と波長との関係を示し、曲線k3は、2Vの電圧を光共振器3に印加したときの出力光強度と波長との関係を示す。
【0113】
図8を参照して、光共振器3に印加する電圧を高くすると、出力光強度が最大になるピーク波長(=共振波長)は、短波長側へシフトする。
【0114】
図9は、印加電圧の極性を変えたときの光共振器3の出力光強度と波長との関係を示す図である。
【0115】
図9において、縦軸は、ピーク値で規格化された出力光強度を表し、横軸は、波長を表す。また、曲線k4は、光共振器3に印加する電圧が0Vであるときの出力光強度と波長との関係を示し、曲線k5は、+2Vの電圧を光共振器3に印加したときの出力光強度と波長との関係を示し、曲線k6は、−2Vの電圧を光共振器3に印加したときの出力光強度と波長との関係を示す。
【0116】
図9を参照して、光共振器3に印加する電圧の極性が正および負のいずれであっても、出力光強度が最大になるピーク波長(=共振波長)は、短波長側へシフトする。これは、正の電圧が光共振器3に印加されると、Siからなる光導波路31の表面に電子が誘起され、負の電圧が光共振器3に印加されると、Siからなる光導波路31の表面に正孔が誘起される。
【0117】
電子および正孔のいずれが誘起されても、Siの屈折率が低下するので、光導波路31の共振波長は、短波長側へシフトする。
【0118】
図10は、波長シフトと印加電圧との関係を示す図である。図10において、縦軸は、波長シフトを表し、横軸は、印加電圧を表す。
【0119】
図10を参照して、波長シフトは、印加電圧の増加に伴って直線的に大きくなる。そして、波長シフトは、1Vの印加電圧の変化に対して0.1nmだけ変化する。このように、光共振器3に印加する印加電圧を増加すれば、1Vの電圧増加に対して0.1nmの波長シフトが生じる。
【0120】
この発明の実施の形態においては、光共振器3の波長シフトは、1Vの電圧変化に対して0.1nmだけ生じるが、これは、クラッド32,33に比誘電率が390である(Ba,Sr)TiO3を用いているからであり、比誘電率が3.9のSiO2をクラッド32,33に用いた場合には、0.1nmの波長シフトを生じさせるためには、100Vの電圧を印加する必要がある。
【0121】
したがって、光共振器3のクラッド32,33を(Ba,Sr)TiO3によって構成することにより、光共振器3への印加電圧を低くできる。
【0122】
図11は、出力光強度の温度依存性を示す図である。図11において、縦軸は、出力光強度を表し、横軸は、波長を表す。
【0123】
図11を参照して、温度が15℃上昇すると、共振波長は、約1nmだけ長波長側へシフトする(20℃から35℃への変化参照)。これは、光共振器3の光導波路31を構成するSiの屈折率は、室温付近において、1.777×10−4[/K]の温度係数を有し、温度上昇によって大きくなるからである。
【0124】
このように、Siからなる光共振器3は、温度変動によって共振波長が変化する。
【0125】
図12は、光共振器3の出力光強度と印加電圧との関係を示す図である。図12において、縦軸は、出力光強度を表し、横軸は、電極42への印加電圧を表す。
【0126】
図12を参照して、最適な印加電圧Voptが光共振器3に印加された場合、光共振器3の共振波長は、導波光の波長に等しくなり、光共振器3は、共振波長で共振する。その結果、光共振器3の出力光強度は、最適な印加電圧Voptで最大になる。
【0127】
印加電圧が最適な印加電圧Voptよりも高い側および低い側のいずれへシフトしても、光共振器3の共振波長は、導波光の波長からずれる。その結果、光共振器3の出力光強度は、低下する。
【0128】
図13は、光共振器3の共振波長のずれを検出する方法を説明するための図である。図13において、縦軸は、出力光強度を表し、横軸は、電極42への印加電圧を表す。
【0129】
図13を参照して、標準動作温度において光共振器3は、共振波長で光共振しているものとし、この場合、共振保障回路5は、たとえば、10Vの直流電圧を光共振器3に印加しているものとする。そして、光共振器3は、最大値Imaxの出力光強度を有する出力光を出射する。
【0130】
その後、動作温度が標準動作温度よりも上昇し、光共振器3の共振波長が、導波光の波長λOSCから長波長側へシフトして波長λ1(>λOSC)になったとする。その結果、光共振器3は、最大値Imaxよりも低い出力光強度I1を有する出力光を出射する。
【0131】
この場合、共振波長のシフトを検出するために、光スイッチ装置10の交流電源56は、交流電圧VAC(正確には、交流電圧と直流との重畳された繰返し方形波電圧)を電極41に印加する。
【0132】
その結果、光共振器3は、10Vの直流電圧と交流電圧VACとが印加され、交流電圧VACに応じて、出力光Iout1を出力する。
【0133】
図14は、交流電圧、出力光および脈流のタイミングチャートである。光検出器51は、出力光Iout1を検出し、その検出した出力光Iout1を交流アンプ52へ出力する。交流アンプ52は、出力光Iout1を増幅し、その増幅した出力光Iout1を同期検波回路53へ出力する。
【0134】
同期検波回路53は、出力光Iout1を交流電源56からの交流電圧VACに同期して検波する。すなわち、同期検波回路53は、交流電圧VACがゼロ電圧のときのみ、交流アンプ52からの出力光Iout1を積分器55へ出力するので、出力光Iout1のうち、負の成分のみからなる脈流PFL1を積分器55へ出力する。
【0135】
そうすると、積分器55は、脈流PFL1を積分し、その積分した積分値に相当する直流電圧VDC1を電極42に印加する。
【0136】
この場合、脈流PFL1は、負の成分のみからなり、積分器55は符号反転積分するので、直流電圧VDC1は、最初に電極42に印加されていた直流電圧(=10V)よりも高くなる。その結果、光共振器3に印加される電圧は、10Vよりも増加するので、上述したように、光共振器3の共振波長は、波長λ1よりも短波長側へシフトして波長λ2(<λ1)になる。したがって、光共振器3の共振波長は、元の共振波長λOSC側へシフトする。
【0137】
図15は、光共振器3の共振波長の他のずれを検出する方法を説明するための図である。また、図16は、交流電圧、出力光および脈流の他のタイミングチャートである。図15において、縦軸は、出力光強度を表し、横軸は、電極42への印加電圧を表す。
【0138】
図15を参照して、直流電圧VDC1が光共振器3に印加され、光共振器3の共振波長が波長λ2になったとき、光共振器3は、出力光強度I2を有する出力光を出射するものとする。
【0139】
この状態で、交流電源56は、交流電圧VACを電極41に印加する。これによって、光共振器3は、直流電圧VDC1および交流電圧VACが印加される。そうすると、光共振器3は、交流電圧VACに応じて、出力光Iout2を出力する。
【0140】
図16を参照して、光検出器51は、出力光Iout2を検出し、その検出した出力光Iout2を交流アンプ52へ出力する。交流アンプ52は、出力光Iout2を増幅し、その増幅した出力光Iout2を同期検波回路53へ出力する。
【0141】
同期検波回路53は、出力光Iout2を交流電源56からの交流電圧VACに同期して検波する。すなわち、同期検波回路53は、交流電圧VACがゼロ電圧のときのみ、交流アンプ52からの出力光Iout2を積分器55へ出力するので、出力光Iout2のうち、正の成分のみからなる脈流PFL2を積分器55へ出力する。
【0142】
そうすると、積分器55は、脈流PFL2を積分し、その積分した積分値に相当する直流電圧VDC2を電極42に印加する。
【0143】
この場合、脈流PFL2は、正の成分のみからなり、積分器55は符号反転積分するので、直流電圧VDC2は、直流電圧VDC1よりも低くなる。その結果、光共振器3に印加される電圧は、直流電圧VDC1よりも減少するので、上述したように、光共振器3の共振波長は、波長λ2よりも長波長側へシフトして波長λ3(>λ2)になる。したがって、光共振器3の共振波長は、元の共振波長λOSC側へシフトする。
【0144】
その結果、光共振器3の共振波長は、光共振器3中の導波光の強度が図12に示す出力光強度と印加電圧との関係に沿って最大値Imaxに近づくように、徐々に元の共振波長λOSCに近づく。
【0145】
そして、光共振器3中の導波光の強度が最大値Imaxになると、光共振器3は、交流電圧VACに応じて、交流成分からなる出力光Ioutを出力しないので、共振保障回路5において、積分器55は、積分動作を停止し、出力光強度が最大値Imaxになったとき(=すなわち、光共振器3の共振波長と導波光の波長が等しくなったとき)にキャパシタ552に蓄積された電荷によって生じる直流電圧を電極42に印加し続ける。
【0146】
これによって、光共振器3は、動作温度が標準動作温度からずれても、常に共振状態を保持できる。
【0147】
なお、上記においては、光共振器3の温度上昇によって光共振器3の共振波長が元の共振波長λOSCから長波長側へシフトした場合の波長シフトを相殺する方法について説明したが、光共振器3の温度が低くなり、光共振器3の共振波長が元の共振波長λOSCから短波長側へシフトした場合にも、同様にして波長シフトが相殺される。この場合、光導波路31に印加される電圧を低くして光共振器3の共振波長を長波長側へシフトさせることにより、温度変動(=温度降下)による波長シフトが相殺される。
【0148】
このように、共振保障回路5は、光共振器3の共振波長が温度変動によって元の共振波長λOSCからシフトしたときの波長シフト分を光共振器3に印加する直流電圧によって相殺することを特徴とする。
【0149】
上述した直流電圧VDC1は、光共振器の共振波長が元の共振波長λOSCからずれたときの波長λ1を元の共振波長λOSCに近づけるために印加される直流電圧であり、直流電圧VDC2は、共振波長λOSCからずれたときの波長λ2を元の共振波長λOSCに近づけるために印加される直流電圧である。
【0150】
したがって、直流電圧VDC1,VDC2の各々は、光共振器3の共振波長の元の共振波長λOSCからの波長シフトを抑制する「抑制電圧」を構成する。
【0151】
また、最終的に出力光強度が最大値Imaxになったときに電極42に印加されている直流電圧は、温度変動によってシフトした共振波長λOSCからの波長シフトを相殺する電圧であるので、「相殺電圧」を構成する。
【0152】
光スイッチ装置10における光導波路1から光導波路2への導波光のスイッチング動作について説明する。
【0153】
光共振器3の光導波路31の直径をrとし、光導波路31の屈折率をnとし、共振波長をλOSCとすると、次式が成立する。
【0154】
2πr=sλOSC/n(sは正の整数)・・・(1)
【0155】
そして、共振保障回路5は、光共振器3の共振波長が温度変動によって元の共振波長からシフトした場合、光共振器3の光導波路31中を伝搬する導波光の波長が式(1)を満たす共振波長λOSCになるように、上述した方法によって、共振波長の波長シフトを相殺するための相殺電圧を光導波路31に印加する。
【0156】
したがって、相殺電圧が光導波路31に印加され、かつ、切換電圧印加回路6が0Vの切換電圧VEX1を電極41に印加した場合、光導波路31中を伝搬する導波光の波長は、共振波長λOSCになっているため、波長λOSCを有する光が共振光として光導波路31中を伝搬するとともに、一部が光導波路2中へ出射される。すなわち、光導波路1中の導波光は、光共振器3を介して光導波路2中へスイッチングされる。
【0157】
一方、相殺電圧が光導波路31に印加された状態で、切換電圧印加回路6が0V以外の電圧からなる切換信号VEX2を電極41に印加すると、光導波路31中を伝搬する導波光は、光導波路1中の光と共振せず、光導波路1中の導波光は、光共振器3を介して光導波路2中へスイッチングされない。
【0158】
したがって、この発明の実施の形態においては、光導波路1から光導波路2へ導波光をスイッチングする場合、0Vからなる切換電圧VEX1を電極41に印加し、光導波路1から光導波路2へ導波光をスイッチングしない場合、切換電圧VEX2(≠0V)を電極41に印加する。
【0159】
図17は、光共振器3の出力と波長との関係を示す概念図である。図17を参照して、光共振器3の光導波路31は、電圧が印加されていない場合(V=0)、共振波長λOSCの光と共振し、共振波長λOSCをピーク波長とする光を出力する。一方、光共振器3の光導波路31は、電圧Vkが印加されると、波長λkをピーク波長とする光を出力する。
【0160】
したがって、光共振器3の光導波路31は、電圧が印加されていない場合(すなわち、切換電圧VEX1=0V)、光導波路1中を伝搬する導波光と共振する。その結果、光共振器3は、光導波路2中へ光を出射する。
【0161】
一方、光共振器3は、切換電圧印加回路6から切換電圧VEX2=Vkが印加されると、光導波路1中を伝搬する導波光と共振せず、その導波光を光導波路2中へ出射しない。
【0162】
クラッド32,33の各々が1.5μm幅の(Ba,Sr)TiO3からなる場合、15℃の温度変化によってシフトする1nmの波長シフトを光導波路31に印加する電圧によって相殺するには、100Vの電圧を(Ba,Sr)TiO3に印加する必要がある。この場合、6.7×105V/cmの電界が(Ba,Sr)TiO3に印加される。
【0163】
一方、(Ba,Sr)TiO3の絶縁破壊電界は、7×105V/cmである。したがって、温度変化が15℃までの範囲においては、クラッド32,33の各々を(Ba,Sr)TiO3によって構成しても、温度変動による波長シフトを光導波路31への電圧印加によって相殺することができる。
【0164】
しかし、クラッド32,33の各々を酸化シリコン(SiO2)の比誘電率(=3.9)よりも大きい390の比誘電率を有する(Ba,Sr)TiO3によって構成した場合、15℃以上の温度変動による波長シフトを光導波路31に印加する電圧によって相殺することが困難である。
【0165】
そこで、この発明の実施の形態においては、好ましくは、光導波路31を構成する材料(=Si)の屈折率の温度依存性と逆極性の屈折率の温度依存性を有する材料によってクラッド32,33の各々を構成する。
【0166】
より具体的には、クラッド32,33の各々を透明ナノ粒子シリカを含むポリイミドによって構成する。
【0167】
これによって、光導波路31を構成するシリコンの共振波長の温度依存性が小さくなり、15℃以上の温度変化が生じても、光導波路31への電圧印加によって波長シフトを相殺できる。
【0168】
図18は、図1に示す光スイッチ装置10を用いた光集積回路装置の斜視図である。図18を参照して、光集積回路装置100は、光伝送部材110と、半導体基板120と、光源130と、光導波路101〜10i(iは正の整数)と、光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ij(jは2以上の整数)とを備える。なお、光集積回路装置100は、1cm角〜2cm角のサイズを有する。
【0169】
光伝送部材110は、平板形状を有し、シリコンナイトライド(SiN)、SiO2、シリコンオキシナイトライド(SiON)、レジストおよびプラスチック等の空気よりも大きい屈折率を有する透明材料からなる。
【0170】
半導体基板120は、たとえば、n型Siからなり、光伝送部材110の1つの平面に近接して配置される。光源130は、半導体基板120の1つの端面に配置される。
【0171】
光導波路101〜10iの各々は、光伝送部材110と同じ材料からなり、方向DR4において、半導体基板120の長さと同じ長さを有し、0.3mmから5mmの幅を有する。そして、光導波路101〜10iは、方向DR3において、半導体基板120の一主面上に所定の間隔で配置される。
【0172】
光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijは、半導体基板120上に2次元的に配置される。より具体的には、光送受信部111〜11jは、光導波路101に対応して設けられ、方向DR4において所定の間隔で配置される。また、光送受信部121〜12jは、光導波路102に対応して設けられ、方向DR4において所定の間隔で配置される。以下、同様にして光送受信部1i1〜1ijは、光導波路10iに対応して設けられ、方向DR4において所定の間隔で配置される。
【0173】
光伝送部材110は、光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijから入射された光を伝送する。光導波路101〜10iは、光源130から出射された光を方向DR4へ伝搬させる。光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijの各々は、後述する方法によって、光導波路101〜10i中を伝搬する光の一部を光伝送部材110中へ導くとともに、光伝送部材110中を伝送する光を検出する。光源130は、それぞれ、波長λ1,λ2,・・・,λm(mは正の整数)の離散的な波長を有する光Lg1〜Lgmまたは所定の波長範囲を有する連続光Lgcを発生し、その発生した光Lg1〜LgmまたはLgcを光導波路1〜i中へ出射する。
【0174】
図19は、図18に示す半導体基板120、光導波路101〜10iおよび光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijの斜視図である。図19を参照して、光送受信部111は、光スイッチ装置140,150,160と、光検出部170と、信号処理回路190とを含む。
【0175】
光スイッチ装置140,150,160の各々は、上述した光スイッチ装置10からなる。そして、図19においては、図面を見易くするために光スイッチ装置10の光共振器3の部分だけを図示している。
【0176】
光スイッチ装置140は、光送受信部111が対応する光導波路101に近接して配置される。光スイッチ装置150,160は、光スイッチ装置140から離れた位置に配置される。光検出部170は、たとえば、フォトダイオードからなり、光スイッチ装置150の下側に配置される。なお、図19においては、図示されていないが、光スイッチ装置160の下側にも、光検出部が配置されている。
【0177】
信号処理回路190は、光送受信部111が対応する光導波路101と光検出部170との間に配置される。
【0178】
なお、光送受信部112〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijの各々は、光送受信部111と同じ構成からなる。
【0179】
図20は、図19に示す光送受信部111の構成を示す斜視図である。なお、図20においても、図面を見易くするために、光スイッチ装置140,150,160の光共振器3の部分だけを図示している。
【0180】
図20を参照して、光送受信部111は、光スイッチ装置140,150,160、光検出部170および信号処理回路190に加えて、光検出部180をさらに含む。
【0181】
光検出部180は、フォトダイオードからなり、光スイッチ装置160の下側に配置される。光スイッチ装置140は、光出射窓141を有する。光出射窓141は、リング形状からなり、光スイッチ装置140の光共振器3の光導波路31と同じ直径および幅を有する。そして、光出射窓141は、光スイッチ装置140の光導波路31に接して光導波路31上に配置される。
【0182】
光スイッチ装置150は、光入射窓151を有し、光スイッチ装置160は、光入射窓161を有する。光入射窓151,161は、略四角形からなり、それぞれ、光スイッチ装置150,160の光導波路31に接して光導波路31上に配置される。
【0183】
なお、光送受信部112〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijの各々は、図20に示す光送受信部111と同じ構成からなる。
【0184】
図21は、図20に示す2つの光スイッチ装置150,160の2つの光共振器3の平面図である。図21を参照して、光スイッチ装置150,160の光共振器3は、光入射窓151と光入射窓161との配置位置が相互に90度ずれるように配置される。
【0185】
その結果、光1は、光入射窓161によって光スイッチ装置160の光共振器3中へ入射し、光スイッチ装置160の光共振器3中を矢印ARW2の方向へ伝搬する。また、光2は、光入射窓151によって光スイッチ装置150の光共振器3中へ入射し、光スイッチ装置150の光共振器3中を矢印ARW1の方向に伝搬する。さらに、光3は、光入射窓151,161によってそれぞれ光スイッチ装置150,160の光共振器3中へ入射し、光スイッチ装置150,160の光共振器3中をそれぞれ矢印ARW1,ARW2の方向へ伝搬する。
【0186】
このように、光スイッチ装置150に設けられた光入射窓151と、光スイッチ装置160に設けられた光入射窓161とを相互に90度ずらせて配置することによって、光伝送部材110中をあらゆる方向へ伝搬する光を光スイッチ装置150の光共振器3および/または光スイッチ装置160の光共振器3中へ入射させることができる。
【0187】
図22は、図18に示す線XXII−XXII間における光集積回路装置100の断面図である。図22を参照して、光伝送部材110は、光吸収部材1101を周囲に有する。光吸収部材1101は、光伝送部材110中を周囲へ伝搬して来た光を吸収する。これによって、光伝送部材110の周囲による光の反射が防止される。その結果、光伝送部材110中における光の干渉を防止して光通信を正確に行なうことができる。
【0188】
光導波路101〜10iは、半導体基板120の一主面に形成される。この場合、光導波路101〜10iの各々は、シリコン酸化膜1110によって囲まれており、1つの面が半導体基板120の一主面に略一致するように半導体基板120中に埋め込まれて半導体基板120の一主面に形成される。そして、シリコン酸化膜1110の膜厚は、1.5μmである。
【0189】
このように、光導波路101〜10iの周囲をシリコン酸化膜1110によって囲むことにより、光損失を低減して光を光導波路101〜10i中で伝搬させることができる。
【0190】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijは、光結合窓142,152をさらに含む。
【0191】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光結合窓142は、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijが対応する光導波路101〜10i上に光導波路101〜10iに接して形成される。
【0192】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光スイッチ装置140は、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光出射窓141および光結合窓142に接して光出射窓141と光結合窓142との間に形成される。
【0193】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光出射窓141は、光伝送部材110および光スイッチ装置140の光共振器3に接して、光伝送部材110と光スイッチ装置140の光共振器3との間に形成される。そして、光出射窓141は、光伝送部材110および光スイッチ装置140,150,160の光共振器3の屈折率よりも小さく、周囲の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料からなる。
【0194】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光入射窓151は、光伝送部材110および光スイッチ装置150の光共振器3に接して、光伝送部材110と光スイッチ装置150の光共振器3との間に形成される。そして、光入射窓151は、光伝送部材110および光スイッチ装置140,150,160の光共振器3の屈折率よりも小さく、周囲の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料からなる。
【0195】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光スイッチ装置150は、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光入射窓151および光結合窓152に接して光入射窓151と光結合窓152との間に形成される。
【0196】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光結合窓152は、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光スイッチ装置150の光共振器3および光検出部170に接して光スイッチ装置150の光共振器3と光検出部170との間に形成される。
【0197】
なお、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijは、光結合窓162をさらに含み、光スイッチ装置160、光入射窓161、光結合窓162および光検出部180は、図22に示す光スイッチ装置150、光入射窓151、光結合窓152および光検出部170と同じように配置される。
【0198】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光検出部170は、光導波路101〜10iと同じように、半導体基板120に埋め込まれて半導体基板120の一主面に形成される。
【0199】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる信号処理回路190は、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijが対応する光導波路101〜10iと、光検出部170との間において、半導体基板120の一主面に形成される。
【0200】
そして、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光出射窓141および光入射窓151,161と、光伝送部材110との間隔が0.2μmになるように、半導体基板120は、光伝送部材110に近接して配置される。
【0201】
光スイッチ装置140,150,160の光共振器3の光導波路31に電圧を印加しない場合、波長λOSCを有する光が共振光として光スイッチ装置140,150,160の光導波路31中を伝搬するとともに、一部が光伝送部材110中へ出射され、または光検出部170,180へ出射される。
【0202】
より具体的には、光スイッチ装置140の光導波路31に切換電圧印加回路6によって電圧を印加しない場合、波長λOSCを有する光が光結合窓142を介して共振光として光スイッチ装置140の光導波路31中を伝搬するとともに、一部が光出射窓141を介して光伝送部材110中へ出射される。また、光スイッチ装置150,160の光導波路31に切換電圧印加回路6によって電圧を印加しない場合、波長λOSCを有する光が光入射窓151,161を介して光スイッチ装置150,160の光導波路31中を伝搬するとともに、一部が光結合窓152,162を介して光検出部170,180へ出射される。
【0203】
光導波路101〜10iは、波長λ1〜λmの離散的な波長を有する光Lg1〜Lgmを伝搬させ、またはλ1〜λmの範囲の連続的な波長範囲の光を伝搬させるので、波長λ1〜λmのうちの1つの波長λk(k=1〜m)が共振波長λOSCになるように光スイッチ装置140,150,160の光導波路31に印加する電圧を決定する。
【0204】
図23は、図18に示す光源30の構成図である。図23を参照して、光源30は、レーザLS1〜LSmと、導波路300とを含む。導波路300は、レーザLS1〜LSmに接続されるとともに、光導波路1〜iに接続される。
【0205】
レーザLS1〜LSmは、それぞれ、波長λ1〜λmを有する光Lg1〜Lgmを発振し、その発振した光Lg1〜Lgmを導波路300へ出射する。導波路300は、レーザLS1〜LSmから受けた光Lg1〜Lgmを伝搬させ、光導波路1〜iへ導く。
【0206】
このように、光源30は、波長λ1〜λmを有する光Lg1〜Lgmを発生するとともに、その発生した光Lg1〜Lgmを光導波路1〜iへ導く。
【0207】
図24は、図18に示す光源30の他の構成図である。図24を参照して、光源30は、発光素子LSと、導波路310と、フィルタ320とを含む。導波路310は、導波路1〜iおよびフィルタ320に接続される。フィルタ320は、発光素子LSおよび導波路310に接続される。
【0208】
発光素子LSは、たとえば、紫外線励起蛍光発光素子からなり、連続波長の光を出射する。フィルタ320は、発光素子LSから出射された連続波長の光のうち、所定の波長範囲の光だけを導波路310へ通過させる。導波路310は、フィルタ320から受けた連続波長の光を導波路101〜10iに導く。
【0209】
この発明においては、光源30は、図23に示す構成および図24に示す構成のいずれかからなっていればよい。
【0210】
光集積回路装置100は、光導波路101〜10i、光スイッチ装置140,150,160、光検出器170,180および信号処理回路190を半導体プロセスを用いて半導体基板120の一主面に作製し、光導波路101〜10i、光スイッチ装置140,150,160、光検出器170,180および信号処理回路190を一主面に含む半導体基板120を光スイッチ装置140,150,160が接するように光伝送部材110と接触させることによって製造される。
【0211】
上記においては、光スイッチ装置140,150,160の光共振器3は、電気光学材料からなると説明したが、この発明においては、これに限らず、光スイッチ装置140,150,160の光共振器3は、磁気光学材料、熱光学材料、または電気・磁気または温度によって光学的屈折率が変化する材料からなっていてもよい。そして、光スイッチ装置140,150,160の光共振器3は、好ましくは、(Ba,Sr)TiO3、LiNbO3、Pb(Zr,Ti)O3、LiTaO3、BaTiO3、K(Ta,Nb)O3、ZnO、ADP(NH4H2PO4)、KDP(KH2PO4)、YIG(Y3Fe5O12)、BIG(Bi3F5O12)、GdPr2F5O12、MnBi、GaAs、GeおよびSiのいずれかからなる。
【0212】
光スイッチ装置140,150,160の光共振器3が磁気光学材料からなる場合、磁気が印加されていないときには、光共振波長は、光源の有するいずれの波長でもない波長に一致するように設計される。即ち、光共振波長は、光源波長が離散的な場合には、その離散的な波長のいずれでもない波長に設定され、また、ある一定範囲の連続的な波長を有する光を光源とする場合には、その波長範囲以外の波長に設定される。
【0213】
また、光スイッチ装置140,150,160の光共振器3が熱光学材料からなる場合、熱が印加されていないときには、光共振波長は、光源の有するいずれの波長でもない波長に一致するように設計される。即ち、光共振波長は、光源波長が離散的な場合には、その離散的な波長のいずれでもない波長に設定され、また、ある一定範囲の連続的な波長を有する光を光源とする場合には、その波長範囲以外の波長に設定される。
【0214】
上述したように、光集積回路装置100においては、光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijは、光伝送部材110を共用の光伝送路として用いて信号の送受信を行う。
【0215】
したがって、この発明によれば、任意の2つの光送受信部が通信を行うことができる。また、光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijを光伝送部材を介して任意に接続可能である。
【0216】
この発明においては、光検出器51、同期検波回路53および交流電源56は、「シフト検出回路」を構成する。
【0217】
また、この発明においては、積分器55は、「相殺電圧印加回路」を構成する。
【0218】
さらに、この発明においては、交流電源56は、「検出電圧印加回路」を構成し、同期検波回路53は、「整流回路」を構成する。
【0219】
さらに、この発明においては、電極41は、「第1の電極」を構成し、電極42は、「第2の電極」を構成する。
【0220】
さらに、この発明においては、光スイッチ装置140は、「第1の光スイッチ装置」を構成し、光スイッチ装置150,160は、「第2の光スイッチ装置」を構成する。
【0221】
さらに、この発明においては、光送受信部111〜11jに含まれるj個の光スイッチ装置140、光送受信部121〜12jに含まれるj個の光スイッチ装置140、・・・、および光送受信部1i1〜1ijに含まれるj個の光スイッチ装置40は、「i個の第1の光スイッチ装置群」を構成する。
【0222】
さらに、この発明においては、光送受信部111〜11jに含まれるj個の光スイッチ装置150,160、光送受信部121〜12jに含まれるj個の光スイッチ装置150,160、・・・、および光送受信部1i1〜1ijに含まれるj個の光スイッチ装置150,160は、「i個の第2の光スイッチ装置群」を構成する。
【0223】
さらに、この発明においては、光送受信部111〜11jに含まれるj個の光検出部170,180、光送受信部121〜12jに含まれるj個の光検出部170,180、・・・、および光送受信部1i1〜1ijに含まれるj個の光検出部170,180は、「i個の光検出部群」を構成する。
【0224】
さらに、この発明においては、光送受信部111〜11jに含まれるj個の信号処理回路190、光送受信部121〜12jに含まれるj個の信号処理回路190、・・・、および光送受信部1i1〜1ijに含まれるj個の信号処理回路190は、「i個の信号処理回路群」を構成する。
【0225】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0226】
この発明は、温度が変化しても共振波長を一定に保つことが可能な光スイッチ装置に適用される。また、この発明は、温度が変化しても共振波長を一定に保つことが可能な光スイッチ装置を備えた光集積回路装置に適用される。
【符号の説明】
【0227】
2 光導波路、3 光共振器、41 電極、51 光検出器、52 交流アンプ、53 同期検波回路、55 積分器、56 交流電源、552 キャパシタ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、光スイッチ装置およびそれを備えた光集積回路装置に関し、特に、リング形状の光共振器を用いた光スイッチ装置およびそれを備えた光集積回路装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リング形状からなる光共振器が知られている(特許文献1)。この光共振器は、芯部と、光導波部とからなる。芯部は、球形状を有し、たとえば、金、銀、銅、アルミニウム、およびニッケルのいずれかからなる。そして、芯部は、光導波部の内周部に配置される。
【0003】
光導波部は、リング形状からなり、内周面が芯部の表面に接するように配置される。そして、光導波部は、たとえば、ガラス、石英、ポリメタクリル酸メチル(PMMA:Polymethyl Methacrylate)、酸化チタン(TiO2)、五酸化タンタル(Ta2O5)、シリコン(Si)およびシリコンカーバイド(SiC)のいずれかからなる。また、光導波部は、0.1〜1μmの厚みを有する。
【0004】
この光共振器は、光導波部の厚み方向に垂直な方向における光導波部の側面から光を入射し、その入射した光を時計回りおよび反時計回りに伝搬させることにより光共振する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−298846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の光共振器は、シリコン等の半導体材料からなる光導波部を備えているため、温度変動によって共振波長がシフトするという問題がある。シリコンを光導波部に用いた場合、温度が5℃変化すれば、共振波長は、0.3nmだけ長波長側へシフトする(図11参照)。共振器の性能指数であるQ値が4800である場合、この0.3nmの共振波長のシフトは、約85%の光出力強度の減少に相当する(図11参照)。
【0007】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、温度が変化しても共振波長を一定に保つことが可能な光スイッチ装置を提供することである。
【0008】
また、この発明の別の目的は、温度が変化しても共振波長を一定に保つことが可能な光スイッチ装置を備えた光集積回路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によれば、光スイッチ装置は、基板と、第1および第2の光導波路と、光共振器と、電極と、共振保障回路と、切換電圧印加回路とを備える。第1の光導波路は、入力光が伝搬させる。光共振器は、第1の光導波路に近接して基板上に配置され、リング形状からなる。第2の光導波路は、光共振器に近接して配置され、光共振器中を伝搬する光と同じ波長の出力光を伝搬させる。電極は、基板の面内方向における光共振器の両側面に接して配置される。共振保障回路は、光共振器の温度変動による光共振器の共振波長のシフトを検出し、その検出したシフトを相殺するための相殺電圧を電極に印加する。切換電圧印加回路は、光共振器を介した第1の光導波路から第2の光導波路への導波光の伝搬と不伝搬とを切換える切換電圧を電極に印加する。
【0010】
好ましくは、共振保障回路は、シフト検出回路と、相殺電圧印加回路とを含む。シフト検出回路は、光共振器の温度変動による光共振器の共振波長の温度変化前の値からのシフトを検出する。相殺電圧印加回路は、シフト検出回路によって検出されたシフトを抑制するための直流電圧からなる抑制電圧をシフトがなくなるまで電極に繰返し印加し、シフトがなくなったときの抑制電圧を相殺電圧として電極に印加する。
【0011】
好ましくは、シフト検出回路は、検出電圧印加回路と、光検出器と、整流回路とを含む。検出電圧印加回路は、光共振器の温度変動による共振波長のシフトを検出するための交流電圧からなるシフト検出電圧を電極に印加する。光検出器は、シフト検出電圧および抑制電圧が電極に印加されたときに第2の光導波路中を伝搬する出力光を検出し、その検出した出力光の強度を出力する。整流回路は、出力光の強度を整流する。そして、相殺電圧印加回路は、整流回路によって整流された出力光の強度を積分し、その積分した積分値からなる抑制電圧を電極に印加する。
【0012】
好ましくは、整流回路は、検出電圧印加回路が印加する交流電圧に同期して出力光の強度を整流する。
【0013】
好ましくは、電極は、第1および第2の電極を含む。第1の電極は、光共振器の内周壁面に接して配置される。第2の電極は、光共振器の外周壁面に接して配置される。そして、検出電圧印加回路は、シフト検出電圧を第1の電極に印加する。相殺電圧印加回路は、抑制電圧を第2の電極に繰り返し印加するとともに、シフトがなくなったときの抑制電圧を相殺電圧として第2の電極に印加する。切換電圧印加回路は、切換電圧を第1の電極に印加する。
【0014】
好ましくは、第2の電極は、光共振器の略半周分の外周壁面に接して配置される。
【0015】
好ましくは、切換電圧印加回路は、検出電圧印加回路がシフト検出電圧を第1の電極に印加するための導線と同じ導線を用いて切換電圧を第1の電極に印加する。
【0016】
好ましくは、光共振器は、光導波路と、第1および第2のクラッドとを含む。光導波路は、リング形状を有する。第1のクラッドは、基板の面内方向における光導波路の内周面に接して形成され、光導波路の比誘電率よりも大きい比誘電率を有する材料からなる。第2のクラッドは、基板の面内方向における光導波路の外周面に接して形成され、光導波路の比誘電率よりも大きい比誘電率を有する材料からなる第2のクラッドとを含む。
【0017】
好ましくは、光導波路は、シリコンからなる。第1および第2のクラッドの各々は、酸化シリコンの比誘電率よりも大きい比誘電率を有する材料からなる。
【0018】
好ましくは、第1および第2のクラッドの各々は、(Ba,Sr)TiO3からなる。
【0019】
好ましくは、第1および第2のクラッドの各々は、屈折率の温度依存性が光導波路を構成する材料の屈折率の温度依存性と逆極性である材料からなる。
【0020】
好ましくは、第1および第2のクラッドの各々は、透明ナノ粒子シリカを含むポリイミドからなる。
【0021】
好ましくは、切換電圧印加回路は、光共振器を介して第1の光導波路から第2の光導波路へ導波光を伝搬させるとき、0Vからなる切換電圧を電極に印加し、光共振器を介して第1の光導波路から第2の光導波路へ導波光を伝搬させないとき、0V以外の電圧からなる切換電圧を電極に印加する。
【0022】
また、この発明によれば、光集積回路装置は、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の光スイッチ装置を備える。
【発明の効果】
【0023】
この発明による光スイッチ装置においては、温度変動による光共振器の共振波長のシフトを検出し、その検出したシフトを相殺するための相殺電圧を光共振器に印加する。
【0024】
したがって、この発明によれば、温度が変動しても共振波長を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態による光スイッチ装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す光スイッチ装置の構造を示す斜視図である。
【図3】図1に示す共振保障回路のうち、交流電源を除く部分の回路図である。
【図4】図1に示す交流電源の回路図である。
【図5】図1に示す切換電圧印加回路の回路図である。
【図6】図3に示すオペアンプの回路図である。
【図7】図6に示す定電流源の回路図である。
【図8】印加電圧を変えたときの光共振器の出力光強度と波長との関係を示す図である。
【図9】印加電圧の極性を変えたときの光共振器の出力光強度と波長との関係を示す図である。
【図10】波長シフトと印加電圧との関係を示す図である。
【図11】出力光強度の温度依存性を示す図である。
【図12】光共振器の出力光強度と印加電圧との関係を示す図である。
【図13】光共振器の共振波長のずれを検出する方法を説明するための図である。
【図14】交流電圧、出力光および脈流のタイミングチャートである。
【図15】光共振器の共振波長の他のずれを検出する方法を説明するための図である。
【図16】交流電圧、出力光および脈流の他のタイミングチャートである。
【図17】光共振器の出力と波長との関係を示す概念図である。
【図18】図1に示す光スイッチ装置を用いた光集積回路装置の斜視図である。
【図19】図18に示す半導体基板、光導波路および光送受信部の斜視図である。
【図20】図19に示す光送受信部111の構成を示す斜視図である。
【図21】図20に示す2つの光スイッチ装置の2つの光共振器の平面図である。
【図22】図18に示す線XXII−XXII間における光集積回路装置の断面図である。
【図23】図18に示す光源の構成図である。
【図24】図18に示す光源の他の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0027】
図1は、この発明の実施の形態による光スイッチ装置の構成を示す概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による光スイッチ装置10は、光導波路1,2と、光共振器3と、電極4と、共振保障回路5と、切換電圧印加回路6と、導線7とを備える。
【0028】
光導波路1,2の各々は、シリコン(Si)からなり、直線状の形状を有する。そして、光導波路1,2の各々は、0.4〜1μmの幅および0.3μmの厚みを有する。
【0029】
光導波路1は、方向DR1に沿ってSi基板の表面に配置され、光導波路2は、方向DR1に直交する方向DR2に沿ってSi基板の表面に配置される。
【0030】
光共振器3は、光導波路31と、クラッド32,33とを含む。光導波路31は、リング形状のSiからなり、0.4μmの幅、0.3μmの厚みおよび15μmの直径を有する。
【0031】
クラッド32は、リング形状を有し、光導波路31の内周面に接して光導波路31の内側に配置される。そして、クラッド32は、たとえば、(Ba,Sr)TiO3からなり、1.5μmの幅および0.3μmの厚みを有する。
【0032】
クラッド33は、半円形の平面形状を有し、光導波路31の外周面に接して光導波路31の外側に配置される。そして、クラッド33は、たとえば、(Ba,Sr)TiO3からなり、1.5μmの幅および0.3μmの厚みを有する。
【0033】
このように、光共振器3は、リング形状のSiからなる光導波路31を(Ba,Sr)TiO3からなるクラッド32,33によって挟み込んだ構造からなる。
【0034】
そして、光共振器3は、光導波路31が光導波路1,2に近接するようにSi基板の表面に配置される。この場合、光導波路1,2と光導波路31との間隔は、0.1〜0.3μmである。
【0035】
電極4は、電極41,42からなる。電極41,42の各々は、たとえば、アルミニウム(Al)からなる。
【0036】
電極41は、リング形状を有し、光共振器3のクラッド32の内周面に接してクラッドの内側に配置される。
【0037】
電極42は、半円状の平面形状を有し、光共振器3のクラッド33の外周面に接してクラッド33の外側に配置される。
【0038】
共振保障回路5は、光検出器51と、交流アンプ52と、同期検波回路53と、積分器55と、交流電源56とを含む。
【0039】
光検出器51は、たとえば、pin構造のゲルマニウムダイオードからなり、光導波路2の一方端に近接して配置される。交流アンプ52は、光検出器51と、同期検波回路53との間に接続される。
【0040】
同期検波回路53は、交流アンプ52、抵抗54および交流電源56に接続される。
【0041】
抵抗54は、同期検波回路53に接続される。積分器55は、オペアンプ551と、キャパシタ552と抵抗54とからなる。オペアンプ551は、反転入力端子が抵抗54およびキャパシタ552に接続され、非反転入力端子が接地ノードに接続され、出力端子が電極4(=電極42)に接続される。キャパシタ552は、オペアンプ551の反転入力端子とオペアンプ551の出力端子との間に接続される。
【0042】
交流電源56は、発振回路からなり、導線7を介して電極4(=電極41)と接地ノードとの間に接続される。また、交流電源56は、同期検波回路53に接続される。
【0043】
切換電圧印加回路6は、導線7を介して電極4(=電極41)と接地ノードとの間に交流電源56に並列に接続される。
【0044】
光導波路1は、入力光を伝搬させるとともに、その入力光の一部を光結合によって光共振器3の光導波路31へ出射する。
【0045】
光導波路2は、光共振器3の光導波路31中を共振波長で伝搬する導波光の一部を受け、その受けた一部の導波光を出力光として伝搬させる。
【0046】
光共振器3は、共振保障回路5によって、光導波路31中を伝搬する導波光の共振波長における共振が保障される。そして、光共振器3は、切換電圧印加回路6から電極4(=電極41)を介して切換電圧VEX1(=0V)を受けると、共振波長で共振した導波光の一部を光導波路31から光導波路2へ伝搬させる。また、光共振器3は、切換電圧印加回路6から電極4(=電極41)を介して切換電圧VEX2(≠0V)を受けると、光導波路1中を伝搬する導波光と共振せず、光導波路1から光導波路2への光導波光の伝搬を遮断する。
【0047】
共振保障回路5において、光検出器51は、光導波路2から出力される出力光の強度を検出し、その検出した出力光の強度を交流アンプ52へ出力する。
【0048】
交流アンプ52は、光検出器51から出力光の強度を受け、その受けた出力光の強度を増幅して同期検波回路53へ出力する。
【0049】
同期検波回路53は、交流電源56からの交流電圧に同期して交流アンプ52からの出力を検波し、その検波した出力を抵抗54を介してオペアンプ551の反転入力端子へ出力する。
【0050】
積分器55は、同期検波回路53の出力を積分し、その積分値に相当する直流電圧からなる抑制電圧Vctlを電極4(=電極42)に印加する。
【0051】
交流電源56は、光共振器3の共振波長のシフトを検出するための交流電圧を生成し、その生成した交流電圧を同期検波回路53へ出力するとともに、その生成した交流電圧を電極4(=電極41)に印加する。
【0052】
切換電圧印加回路6は、切換電圧VEX1またはVEX2を生成し、その生成した切換電圧VEX1またはVEX2を導線7を介して電極4(=電極41)に印加する。
【0053】
図2は、図1に示す光スイッチ装置10の構造を示す斜視図である。図2を参照して、光スイッチ装置10は、基板11をさらに備える。基板11は、Si基板11Aと、SiO2膜11Bとからなる。
【0054】
光導波路1,2、光共振器3、共振保障回路5(光検出器51、交流アンプ52、同期検波回路53、抵抗54、積分器55および交流電源56)および切換電圧印加回路6は、基板11のSiO2膜11B上に配置される。そして、交流電源56および切換電圧印加回路6は、SiO2膜11Bに穴を開け、光導波路2の下側のSi基板11Aに低抵抗領域を形成することにより電極41に接続される。または、交流電源56および切換電圧印加回路6は、光導波路1,2、光共振器3、共振保障回路5(光検出器51、交流アンプ52、同期検波回路53、抵抗54、積分器55および交流電源56)および切換電圧印加回路6の全体に被着される層間絶縁膜(一般的には、SiO2膜)に穴を開け、金属(たとえば、Al)によって電極41に接続される。
【0055】
また、光検出器51は、金属膜(たとえば、Al)からなる導体CDT1をSiO2膜11B上に形成することにより交流アンプ52に接続され、交流アンプ52は、金属膜(たとえば、Al)からなる導体CDT2をSiO2膜11B上に形成することにより同期検波回路53に接続される。また、同期検波回路53は、金属膜(たとえば、Al)からなる導体CDT3をSiO2膜11B上に形成することにより交流電源56に接続される。抵抗54は、所定の抵抗値からなる多結晶シリコンをSiO2膜11B上に形成することにより作製される。さらに、積分器55は、金属膜(たとえば、Al)からなる導体CDT4をSiO2膜11B上に形成することにより電極42に接続される。
【0056】
このように、光スイッチ装置10は、基板11(=半導体基板)上に形成された集積回路からなる。
【0057】
図3は、図1に示す共振保障回路5のうち、交流電源56を除く部分の回路図である。図3を参照して、光検出器51は、フォトダイオード511,514と、抵抗512,513とからなる。フォトダイオード511,514の各々は、たとえば、pin構造のゲルマニウムからなる。
【0058】
フォトダイオード511および抵抗512は、電源ノードVDDと、接地ノードVSSとの間に直列に接続される。この場合、フォトダイオード511は、接地ノードVSSから抵抗512の方向へ電流が流れるように接続される。
【0059】
また、抵抗513およびフォトダイオード514は、電源ノードVDDと、接地ノードVSSとの間に直列に接続される。この場合、フォトダイオード514は、接地ノードVSSから抵抗513の方向へ電流が流れるように接続される。
【0060】
そして、直列に接続されたフォトダイオード511および抵抗512は、直列に接続された抵抗513およびフォトダイオード514と電源ノードVDDと、接地ノードVSSとの間で並列に接続される。
【0061】
光検出器51においては、フォトダイオード514は、暗電流を消去する機能を果たす。
【0062】
交流アンプ52は、抵抗521〜523,525,527と、オペアンプ524と、キャパシタ526,528とを含む。抵抗521は、光検出器51中のノードN1と、オペアンプ524の反転入力端子との間に接続される。抵抗522は、光検出器51中のノードN2と、オペアンプ524の非反転入力端子との間に接続される。抵抗523は、オペアンプ524の非反転入力端子と接地ノードVSSとの間に接続される。
【0063】
オペアンプ524は、抵抗521,522とキャパシタ526との間に接続される。抵抗525は、オペアンプ524の反転入力端子と、オペアンプ524の出力端子との間に接続される。
【0064】
キャパシタ526は、オペアンプ524の出力端子と抵抗527との間に接続される。抵抗527は、キャパシタ526と同期検波回路53との間に接続される。キャパシタ528は、ノードN3と接地ノードVSSとの間に接続される。
【0065】
オペアンプ524は、フォトダイオード511が検出した交流成分および直流成分からなる光出力を増幅し、その増幅した光出力を端子TM1から外部へ出力する。この端子TM1から出力された光出力は、光スイッチ装置10を用いた光集積回路装置において、同期信号またはバスラインの信号を生成するために用いられる。
【0066】
そして、キャパシタ526は、オペアンプ524の出力信号から交流成分のみを抽出し、抵抗527およびキャパシタ528は、スイッチングの超高周波成分を除去する。
【0067】
同期検波回路53は、p型MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ531と、n型MOSトランジスタ532と、インバータ533とを含む。p型MOSトランジスタ531は、ソースがノードN3およびn型MOSトランジスタ532のソースに接続され、ドレインが抵抗54およびn型MOSトランジスタ532のドレインに接続され、ゲートが端子TM2に接続される。この端子TM2は、交流電源56に接続され、交流電源56から出力された交流電圧を受ける。
【0068】
n型MOSトランジスタ532は、ソースがノードN3およびp型MOSトランジスタ531のソースに接続され、ドレインが抵抗54およびp型MOSトランジスタ531のドレインに接続され、ゲートがインバータ533の出力端子に接続される。
【0069】
インバータ533は、端子TM2とn型MOSトランジスタ532のゲートとの間に接続される。
【0070】
同期検波回路53は、交流電源56から正の電圧を受けると、p型MOSトランジスタ531およびn型MOSトランジスタ532の両方がオフされ、積分器55へ電流を出力せず、交流電源56から負の電圧またはゼロの電圧を受けると、p型MOSトランジスタ531およびn型MOSトランジスタ532の両方がオンされ、交流アンプ52によって増幅された電流を積分器55へ出力する。
【0071】
抵抗54は、p型MOSトランジスタ531およびn型MOSトランジスタ532のドレインとオペアンプ551の反転入力端子との間に接続される。
【0072】
光検出器51のフォトダイオード511は、光導波路2の出力光の強度を検出し、その検出した出力光の強度を示す交流電流を抵抗521を介してオペアンプ524へ出力する。
【0073】
そして、オペアンプ524は、フォトダイオード511からの交流電流を増幅し、その増幅した交流電流をキャパシタ526,528および抵抗527を介して同期検波回路53へ出力する。この場合、キャパシタ526は、交流電流成分のみを抽出する。
【0074】
そうすると、同期検波回路53は、交流電源56からの交流電圧が負またはゼロになった期間だけ交流アンプ52によって増幅された電流を抵抗54を介して積分器55へ出力し、交流電源56の交流電圧が正になった期間、交流アンプ52によって増幅された電流の積分器55への出力を停止する。すなわち、同期検波回路53は、交流アンプ52によって増幅された交流電流を整流し、その整流した電流(=脈流)を積分器55へ出力する。
【0075】
そして、積分器55は、同期検波回路53によって同期検波された脈流を積分し、その積分値に等しい直流電圧を電極4(=電極42)に印加する。
【0076】
図4は、図1に示す交流電源56の回路図である。図4を参照して、交流電源56は、p型MOSトランジスタ561,567と、n型MOSトランジスタ562,568と、抵抗563,565,569,570,572と、キャパシタ564,566と、ダイオード571とを含む。
【0077】
p型MOSトランジスタ561およびn型MOSトランジスタ562は、電源ノードVDDと接地ノードVSSとの間に直列に接続され、インバータを構成する。この場合、n型MOSトランジスタ562のソースは、接地ノードVSSに接続され、p型MOSトランジスタ561のソースは、電源ノードVDDに接続され、p型MOSトランジスタ561のドレインは、n型MOSトランジスタ562のドレインに接続される。
【0078】
p型MOSトランジスタ567およびn型MOSトランジスタ568は、電源ノードVDDと接地ノードVSSとの間に直列に接続され、インバータを構成する。この場合、n型MOSトランジスタ568のソースは、接地ノードVSSに接続され、p型MOSトランジスタ567のソースは、電源ノードVDDに接続され、p型MOSトランジスタ567のドレインは、n型MOSトランジスタ568のドレインに接続される。
【0079】
キャパシタ564は、ノードN4と、p型MOSトランジスタ567およびn型MOSトランジスタ568のゲートとの間に接続される。キャパシタ566は、p型MOSトランジスタ561およびn型MOSトランジスタ562のゲートと、ノードN5との間に接続される。
【0080】
抵抗563は、電源ノードVDDと、p型MOSトランジスタ567およびn型MOSトランジスタ568のゲートとの間に接続される。抵抗565は、電源ノードVDDと、p型MOSトランジスタ561およびn型MOSトランジスタ562のゲートとの間に接続される。
【0081】
抵抗569,570は、ノードN5と接地ノードVSSとの間に直列に接続される。ダイオード571は、抵抗569,570間のノードと出力端子OUT2との間に接続される。抵抗572は、出力端子OUT2と接地ノードVSSとの間に接続される。
【0082】
交流電源56は、p型MOSトランジスタ561,567、n型MOSトランジスタ562,568、抵抗563,565およびキャパシタ564,566によって発振して交流電圧(正確には、方形波交流電圧と直流との重畳された正の繰返し方形波電圧)を発生し、その発生した交流電圧を出力端子OUT1から同期検波回路53へ出力するとともに、その発生した交流電圧を出力端子OUT2から電極41に印加する。
【0083】
なお、ダイオード571は、切換電圧印加回路6と、交流電源56との干渉を防止するために設けられる。抵抗572は、出力端子OUT2の正電圧を放電する時定数を短くするために用いられる。
【0084】
図5は、図1に示す切換電圧印加回路6の回路図である。図5を参照して、切換電圧印加回路6は、p型MOSトランジスタ61と、n型MOSトランジスタ62と、ダイオード63と、抵抗64とを含む。
【0085】
p型MOSトランジスタ61およびn型MOSトランジスタ62は、電源ノードVDDと接地ノードVSSとの間に直列に接続され、インバータを構成する。この場合、p型MOSトランジスタ61は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインがn型MOSトランジスタ62のドレインに接続される。また、n型MOSトランジスタ62のソースは、接地ノードVSSに接続される。そして、p型MOSトランジスタ61およびn型MOSトランジスタ62のゲートは、入力端子INに接続される。
【0086】
ダイオード63は、p型MOSトランジスタ61およびn型MOSトランジスタ62のドレインと、出力端子OUTとの間に接続される。抵抗64は、出力端子OUTと接地ノードVSSとの間に接続される。
【0087】
切換電圧印加回路6は、p型MOSトランジスタ61およびn型MOSトランジスタ62によって構成されるインバータのしきい値電圧よりも高い電圧からなる入力信号を受けると、0Vからなる切換電圧VEX1を出力し、p型MOSトランジスタ61およびn型MOSトランジスタ62によって構成されるインバータのしきい値電圧よりも低い電圧からなる入力信号を受けると、電源電圧VDからなる切換電圧VEX2を出力する。
【0088】
なお、ダイオード63は、交流電源56との干渉を防止するために設けられる。抵抗64は、出力端子OUTの正電圧を放電する時定数を短くするために用いられる。
【0089】
図6は、図3に示すオペアンプ524の回路図である。図6を参照して、オペアンプ524は、p型MOSトランジスタ5241,5243〜5245,5249と、定電流源5242と、n型MOSトランジスタ5246,5247,5250と、キャパシタ5248とを含む。
【0090】
p型MOSトランジスタ5241および定電流源5242は、電源ノードVDDと、接地ノードVSSとの間に直列に接続される。この場合、p型MOSトランジスタ5241は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインが定電流源5242に接続され、ゲートが定電流源5242およびp型MOSトランジスタ5243,5249のゲートに接続される。
【0091】
p型MOSトランジスタ5243は、電源ノードVDDとノードN6との間に接続される。この場合、p型MOSトランジスタ5243は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインがノードN6に接続され、ゲートがp型MOSトランジスタ5241,5249のゲートに接続される。
【0092】
p型MOSトランジスタ5244およびn型MOSトランジスタ5246は、ノードN6と接地ノードVSSとの間に直列に接続される。この場合、p型MOSトランジスタ5244は、ソースがノードN6に接続され、ドレインがn型MOSトランジスタ5246のドレインに接続され、入力電圧Vinをゲートに受ける。また、n型MOSトランジスタ5246は、ソースが接地ノードVSSに接続され、ドレインがp型MOSトランジスタ5244のドレインに接続され、ゲートがp型MOSトランジスタ5244とn型MOSトランジスタ5246との間のノードN7と、n型MOSトランジスタ5247のゲートとに接続される。
【0093】
p型MOSトランジスタ5245およびn型MOSトランジスタ5247は、ノードN6と接地ノードVSSとの間に直列に接続される。この場合、p型MOSトランジスタ5245は、ソースがノードN6に接続され、ドレインがn型MOSトランジスタ5247のドレインに接続され、基準電圧Vrefをゲートに受ける。また、n型MOSトランジスタ5247は、ソースが接地ノードVSSに接続され、ドレインがp型MOSトランジスタ5245のドレインに接続され、ゲートがノードN7とn型MOSトランジスタ5246のゲートとに接続される。
【0094】
p型MOSトランジスタ5244,5245およびn型MOSトランジスタ5246,5247は、ミラー型の差動増幅器を構成し、Vin>Vrefであるとき、電圧V1をノードN8から出力し、Vin≦Vrefであるとき、電圧V2(>V1)をノードN8から出力する。
【0095】
キャパシタ5248は、ノードN8とノードN9の間に接続され、発振を防止するための位相補償の役割を果たす。p型MOSトランジスタ5249およびn型MOSトランジスタ5250は、電源ノードVDDと接地ノードVSSとの間に直列に接続される。
【0096】
この場合、p型MOSトランジスタ5249は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインがノードN9に接続され、ゲートがp型MOSトランジスタ5241,5243のゲートに接続される。また、n型MOSトランジスタ5250は、ソースが接地ノードVSSに接続され、ドレインがノードN9に接続され、ゲートがノードN8に接続される。
【0097】
キャパシタ5251は、ノードN9と接地ノードとの間の負荷寄生容量を表す。
【0098】
オペアンプ524は、入力電圧Vinを基準電圧Vrefと比較し、Vin>Vrefであるとき、ノードN8上の電圧V1を増幅して出力し、Vin≦Vrefであるとき、ノードN8上の電圧V2(>V1)を増幅して出力する。
【0099】
なお、図3に示すオペアンプ551も、図6に示すオペアンプ524の回路図と同じ回路図からなる。
【0100】
図7は、図6に示す定電流源5242の回路図である。図7を参照して、定電流源5242は、p型MOSトランジスタ5261〜5264と、n型MOSトランジスタ5265〜5269と、抵抗5270とを含む。
【0101】
p型MOSトランジスタ5261およびn型MOSトランジスタ5266は、電源ノードVDDと接地ノードVSSとの間に直列に接続される。
【0102】
この場合、p型MOSトランジスタ5261は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインがn型MOSトランジスタ5266のドレインに接続され、ゲートがノードN11に接続される。また、n型MOSトランジスタ5266は、ソースが接地ノードVSSに接続され、ドレインがp型MOSトランジスタ5261のドレインに接続され、ゲートがノードN11に接続される。
【0103】
n型MOSトランジスタ5265は、p型MOSトランジスタ5262〜5264のゲートと接地ノードVSSとの間に接続される。
【0104】
この場合、n型MOSトランジスタ5265は、ソースが接地ノードVSSに接続され、ドレインがp型MOSトランジスタ5262〜5264のゲートに接続され、ゲートがノードN10に接続される。
【0105】
p型MOSトランジスタ5262およびn型MOSトランジスタ5267は、電源ノードVDDと接地ノードVSSとの間に直列に接続される。
【0106】
この場合、p型MOSトランジスタ5262は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインがn型MOSトランジスタ5267のドレインに接続され、ゲートがp型MOSトランジスタ5263のゲートとn型MOSトランジスタ5265のドレインとに接続される。また、n型MOSトランジスタ5267は、ソースが接地ノードVSSに接続され、ドレインがp型MOSトランジスタ5262のドレインおよびn型MOSトランジスタ5268のゲートに接続され、ゲートがノードN11に接続される。
【0107】
p型MOSトランジスタ5263およびn型MOSトランジスタ5268は、電源ノードVDDとノードN11との間に直列に接続される。
【0108】
この場合、p型MOSトランジスタ5263は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ドレインがn型MOSトランジスタ5268のドレインに接続され、ゲートがp型MOSトランジスタ5262,5264のゲートとn型MOSトランジスタ5265のドレインとに接続される。また、n型MOSトランジスタ5268は、ソースがノードN11に接続され、ドレインがp型MOSトランジスタ5263,5265のドレインおよびp型MOSトランジスタ5264のゲートに接続され、ゲートがノードN12に接続される。
【0109】
抵抗5270は、ノードN11と接地ノードとの間に接続される。p型MOSトランジスタ5264は、ソースが電源ノードVDDに接続され、ゲートがp型MOSトランジスタ5262のゲートと、p型MOSトランジスタ5263のゲートおよびドレインと、n型MOSトランジスタ5265のドレインとに接続される。n型MOSトランジスタ5269は、ソースが接地ノードに接続され、ゲートがノードN11に接続される。
【0110】
上述したように、光スイッチ装置10は、半導体基板11A上に作製され、共振保障回路5および切換電圧印加回路6は、MOSトランジスタ、抵抗およびキャパシタによって構成されるので、半導体プロセスを用いることにより光スイッチ装置10を容易に製造できる。
【0111】
図8は、印加電圧を変えたときの光共振器3の出力光強度と波長との関係を示す図である。
【0112】
図8において、縦軸は、ピーク値で規格化された出力光強度を表し、横軸は、波長を表す。また、曲線k1は、光共振器3に印加する電圧が0Vであるときの出力光強度と波長との関係を示し、曲線k2は、1Vの電圧を光共振器3に印加したときの出力光強度と波長との関係を示し、曲線k3は、2Vの電圧を光共振器3に印加したときの出力光強度と波長との関係を示す。
【0113】
図8を参照して、光共振器3に印加する電圧を高くすると、出力光強度が最大になるピーク波長(=共振波長)は、短波長側へシフトする。
【0114】
図9は、印加電圧の極性を変えたときの光共振器3の出力光強度と波長との関係を示す図である。
【0115】
図9において、縦軸は、ピーク値で規格化された出力光強度を表し、横軸は、波長を表す。また、曲線k4は、光共振器3に印加する電圧が0Vであるときの出力光強度と波長との関係を示し、曲線k5は、+2Vの電圧を光共振器3に印加したときの出力光強度と波長との関係を示し、曲線k6は、−2Vの電圧を光共振器3に印加したときの出力光強度と波長との関係を示す。
【0116】
図9を参照して、光共振器3に印加する電圧の極性が正および負のいずれであっても、出力光強度が最大になるピーク波長(=共振波長)は、短波長側へシフトする。これは、正の電圧が光共振器3に印加されると、Siからなる光導波路31の表面に電子が誘起され、負の電圧が光共振器3に印加されると、Siからなる光導波路31の表面に正孔が誘起される。
【0117】
電子および正孔のいずれが誘起されても、Siの屈折率が低下するので、光導波路31の共振波長は、短波長側へシフトする。
【0118】
図10は、波長シフトと印加電圧との関係を示す図である。図10において、縦軸は、波長シフトを表し、横軸は、印加電圧を表す。
【0119】
図10を参照して、波長シフトは、印加電圧の増加に伴って直線的に大きくなる。そして、波長シフトは、1Vの印加電圧の変化に対して0.1nmだけ変化する。このように、光共振器3に印加する印加電圧を増加すれば、1Vの電圧増加に対して0.1nmの波長シフトが生じる。
【0120】
この発明の実施の形態においては、光共振器3の波長シフトは、1Vの電圧変化に対して0.1nmだけ生じるが、これは、クラッド32,33に比誘電率が390である(Ba,Sr)TiO3を用いているからであり、比誘電率が3.9のSiO2をクラッド32,33に用いた場合には、0.1nmの波長シフトを生じさせるためには、100Vの電圧を印加する必要がある。
【0121】
したがって、光共振器3のクラッド32,33を(Ba,Sr)TiO3によって構成することにより、光共振器3への印加電圧を低くできる。
【0122】
図11は、出力光強度の温度依存性を示す図である。図11において、縦軸は、出力光強度を表し、横軸は、波長を表す。
【0123】
図11を参照して、温度が15℃上昇すると、共振波長は、約1nmだけ長波長側へシフトする(20℃から35℃への変化参照)。これは、光共振器3の光導波路31を構成するSiの屈折率は、室温付近において、1.777×10−4[/K]の温度係数を有し、温度上昇によって大きくなるからである。
【0124】
このように、Siからなる光共振器3は、温度変動によって共振波長が変化する。
【0125】
図12は、光共振器3の出力光強度と印加電圧との関係を示す図である。図12において、縦軸は、出力光強度を表し、横軸は、電極42への印加電圧を表す。
【0126】
図12を参照して、最適な印加電圧Voptが光共振器3に印加された場合、光共振器3の共振波長は、導波光の波長に等しくなり、光共振器3は、共振波長で共振する。その結果、光共振器3の出力光強度は、最適な印加電圧Voptで最大になる。
【0127】
印加電圧が最適な印加電圧Voptよりも高い側および低い側のいずれへシフトしても、光共振器3の共振波長は、導波光の波長からずれる。その結果、光共振器3の出力光強度は、低下する。
【0128】
図13は、光共振器3の共振波長のずれを検出する方法を説明するための図である。図13において、縦軸は、出力光強度を表し、横軸は、電極42への印加電圧を表す。
【0129】
図13を参照して、標準動作温度において光共振器3は、共振波長で光共振しているものとし、この場合、共振保障回路5は、たとえば、10Vの直流電圧を光共振器3に印加しているものとする。そして、光共振器3は、最大値Imaxの出力光強度を有する出力光を出射する。
【0130】
その後、動作温度が標準動作温度よりも上昇し、光共振器3の共振波長が、導波光の波長λOSCから長波長側へシフトして波長λ1(>λOSC)になったとする。その結果、光共振器3は、最大値Imaxよりも低い出力光強度I1を有する出力光を出射する。
【0131】
この場合、共振波長のシフトを検出するために、光スイッチ装置10の交流電源56は、交流電圧VAC(正確には、交流電圧と直流との重畳された繰返し方形波電圧)を電極41に印加する。
【0132】
その結果、光共振器3は、10Vの直流電圧と交流電圧VACとが印加され、交流電圧VACに応じて、出力光Iout1を出力する。
【0133】
図14は、交流電圧、出力光および脈流のタイミングチャートである。光検出器51は、出力光Iout1を検出し、その検出した出力光Iout1を交流アンプ52へ出力する。交流アンプ52は、出力光Iout1を増幅し、その増幅した出力光Iout1を同期検波回路53へ出力する。
【0134】
同期検波回路53は、出力光Iout1を交流電源56からの交流電圧VACに同期して検波する。すなわち、同期検波回路53は、交流電圧VACがゼロ電圧のときのみ、交流アンプ52からの出力光Iout1を積分器55へ出力するので、出力光Iout1のうち、負の成分のみからなる脈流PFL1を積分器55へ出力する。
【0135】
そうすると、積分器55は、脈流PFL1を積分し、その積分した積分値に相当する直流電圧VDC1を電極42に印加する。
【0136】
この場合、脈流PFL1は、負の成分のみからなり、積分器55は符号反転積分するので、直流電圧VDC1は、最初に電極42に印加されていた直流電圧(=10V)よりも高くなる。その結果、光共振器3に印加される電圧は、10Vよりも増加するので、上述したように、光共振器3の共振波長は、波長λ1よりも短波長側へシフトして波長λ2(<λ1)になる。したがって、光共振器3の共振波長は、元の共振波長λOSC側へシフトする。
【0137】
図15は、光共振器3の共振波長の他のずれを検出する方法を説明するための図である。また、図16は、交流電圧、出力光および脈流の他のタイミングチャートである。図15において、縦軸は、出力光強度を表し、横軸は、電極42への印加電圧を表す。
【0138】
図15を参照して、直流電圧VDC1が光共振器3に印加され、光共振器3の共振波長が波長λ2になったとき、光共振器3は、出力光強度I2を有する出力光を出射するものとする。
【0139】
この状態で、交流電源56は、交流電圧VACを電極41に印加する。これによって、光共振器3は、直流電圧VDC1および交流電圧VACが印加される。そうすると、光共振器3は、交流電圧VACに応じて、出力光Iout2を出力する。
【0140】
図16を参照して、光検出器51は、出力光Iout2を検出し、その検出した出力光Iout2を交流アンプ52へ出力する。交流アンプ52は、出力光Iout2を増幅し、その増幅した出力光Iout2を同期検波回路53へ出力する。
【0141】
同期検波回路53は、出力光Iout2を交流電源56からの交流電圧VACに同期して検波する。すなわち、同期検波回路53は、交流電圧VACがゼロ電圧のときのみ、交流アンプ52からの出力光Iout2を積分器55へ出力するので、出力光Iout2のうち、正の成分のみからなる脈流PFL2を積分器55へ出力する。
【0142】
そうすると、積分器55は、脈流PFL2を積分し、その積分した積分値に相当する直流電圧VDC2を電極42に印加する。
【0143】
この場合、脈流PFL2は、正の成分のみからなり、積分器55は符号反転積分するので、直流電圧VDC2は、直流電圧VDC1よりも低くなる。その結果、光共振器3に印加される電圧は、直流電圧VDC1よりも減少するので、上述したように、光共振器3の共振波長は、波長λ2よりも長波長側へシフトして波長λ3(>λ2)になる。したがって、光共振器3の共振波長は、元の共振波長λOSC側へシフトする。
【0144】
その結果、光共振器3の共振波長は、光共振器3中の導波光の強度が図12に示す出力光強度と印加電圧との関係に沿って最大値Imaxに近づくように、徐々に元の共振波長λOSCに近づく。
【0145】
そして、光共振器3中の導波光の強度が最大値Imaxになると、光共振器3は、交流電圧VACに応じて、交流成分からなる出力光Ioutを出力しないので、共振保障回路5において、積分器55は、積分動作を停止し、出力光強度が最大値Imaxになったとき(=すなわち、光共振器3の共振波長と導波光の波長が等しくなったとき)にキャパシタ552に蓄積された電荷によって生じる直流電圧を電極42に印加し続ける。
【0146】
これによって、光共振器3は、動作温度が標準動作温度からずれても、常に共振状態を保持できる。
【0147】
なお、上記においては、光共振器3の温度上昇によって光共振器3の共振波長が元の共振波長λOSCから長波長側へシフトした場合の波長シフトを相殺する方法について説明したが、光共振器3の温度が低くなり、光共振器3の共振波長が元の共振波長λOSCから短波長側へシフトした場合にも、同様にして波長シフトが相殺される。この場合、光導波路31に印加される電圧を低くして光共振器3の共振波長を長波長側へシフトさせることにより、温度変動(=温度降下)による波長シフトが相殺される。
【0148】
このように、共振保障回路5は、光共振器3の共振波長が温度変動によって元の共振波長λOSCからシフトしたときの波長シフト分を光共振器3に印加する直流電圧によって相殺することを特徴とする。
【0149】
上述した直流電圧VDC1は、光共振器の共振波長が元の共振波長λOSCからずれたときの波長λ1を元の共振波長λOSCに近づけるために印加される直流電圧であり、直流電圧VDC2は、共振波長λOSCからずれたときの波長λ2を元の共振波長λOSCに近づけるために印加される直流電圧である。
【0150】
したがって、直流電圧VDC1,VDC2の各々は、光共振器3の共振波長の元の共振波長λOSCからの波長シフトを抑制する「抑制電圧」を構成する。
【0151】
また、最終的に出力光強度が最大値Imaxになったときに電極42に印加されている直流電圧は、温度変動によってシフトした共振波長λOSCからの波長シフトを相殺する電圧であるので、「相殺電圧」を構成する。
【0152】
光スイッチ装置10における光導波路1から光導波路2への導波光のスイッチング動作について説明する。
【0153】
光共振器3の光導波路31の直径をrとし、光導波路31の屈折率をnとし、共振波長をλOSCとすると、次式が成立する。
【0154】
2πr=sλOSC/n(sは正の整数)・・・(1)
【0155】
そして、共振保障回路5は、光共振器3の共振波長が温度変動によって元の共振波長からシフトした場合、光共振器3の光導波路31中を伝搬する導波光の波長が式(1)を満たす共振波長λOSCになるように、上述した方法によって、共振波長の波長シフトを相殺するための相殺電圧を光導波路31に印加する。
【0156】
したがって、相殺電圧が光導波路31に印加され、かつ、切換電圧印加回路6が0Vの切換電圧VEX1を電極41に印加した場合、光導波路31中を伝搬する導波光の波長は、共振波長λOSCになっているため、波長λOSCを有する光が共振光として光導波路31中を伝搬するとともに、一部が光導波路2中へ出射される。すなわち、光導波路1中の導波光は、光共振器3を介して光導波路2中へスイッチングされる。
【0157】
一方、相殺電圧が光導波路31に印加された状態で、切換電圧印加回路6が0V以外の電圧からなる切換信号VEX2を電極41に印加すると、光導波路31中を伝搬する導波光は、光導波路1中の光と共振せず、光導波路1中の導波光は、光共振器3を介して光導波路2中へスイッチングされない。
【0158】
したがって、この発明の実施の形態においては、光導波路1から光導波路2へ導波光をスイッチングする場合、0Vからなる切換電圧VEX1を電極41に印加し、光導波路1から光導波路2へ導波光をスイッチングしない場合、切換電圧VEX2(≠0V)を電極41に印加する。
【0159】
図17は、光共振器3の出力と波長との関係を示す概念図である。図17を参照して、光共振器3の光導波路31は、電圧が印加されていない場合(V=0)、共振波長λOSCの光と共振し、共振波長λOSCをピーク波長とする光を出力する。一方、光共振器3の光導波路31は、電圧Vkが印加されると、波長λkをピーク波長とする光を出力する。
【0160】
したがって、光共振器3の光導波路31は、電圧が印加されていない場合(すなわち、切換電圧VEX1=0V)、光導波路1中を伝搬する導波光と共振する。その結果、光共振器3は、光導波路2中へ光を出射する。
【0161】
一方、光共振器3は、切換電圧印加回路6から切換電圧VEX2=Vkが印加されると、光導波路1中を伝搬する導波光と共振せず、その導波光を光導波路2中へ出射しない。
【0162】
クラッド32,33の各々が1.5μm幅の(Ba,Sr)TiO3からなる場合、15℃の温度変化によってシフトする1nmの波長シフトを光導波路31に印加する電圧によって相殺するには、100Vの電圧を(Ba,Sr)TiO3に印加する必要がある。この場合、6.7×105V/cmの電界が(Ba,Sr)TiO3に印加される。
【0163】
一方、(Ba,Sr)TiO3の絶縁破壊電界は、7×105V/cmである。したがって、温度変化が15℃までの範囲においては、クラッド32,33の各々を(Ba,Sr)TiO3によって構成しても、温度変動による波長シフトを光導波路31への電圧印加によって相殺することができる。
【0164】
しかし、クラッド32,33の各々を酸化シリコン(SiO2)の比誘電率(=3.9)よりも大きい390の比誘電率を有する(Ba,Sr)TiO3によって構成した場合、15℃以上の温度変動による波長シフトを光導波路31に印加する電圧によって相殺することが困難である。
【0165】
そこで、この発明の実施の形態においては、好ましくは、光導波路31を構成する材料(=Si)の屈折率の温度依存性と逆極性の屈折率の温度依存性を有する材料によってクラッド32,33の各々を構成する。
【0166】
より具体的には、クラッド32,33の各々を透明ナノ粒子シリカを含むポリイミドによって構成する。
【0167】
これによって、光導波路31を構成するシリコンの共振波長の温度依存性が小さくなり、15℃以上の温度変化が生じても、光導波路31への電圧印加によって波長シフトを相殺できる。
【0168】
図18は、図1に示す光スイッチ装置10を用いた光集積回路装置の斜視図である。図18を参照して、光集積回路装置100は、光伝送部材110と、半導体基板120と、光源130と、光導波路101〜10i(iは正の整数)と、光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ij(jは2以上の整数)とを備える。なお、光集積回路装置100は、1cm角〜2cm角のサイズを有する。
【0169】
光伝送部材110は、平板形状を有し、シリコンナイトライド(SiN)、SiO2、シリコンオキシナイトライド(SiON)、レジストおよびプラスチック等の空気よりも大きい屈折率を有する透明材料からなる。
【0170】
半導体基板120は、たとえば、n型Siからなり、光伝送部材110の1つの平面に近接して配置される。光源130は、半導体基板120の1つの端面に配置される。
【0171】
光導波路101〜10iの各々は、光伝送部材110と同じ材料からなり、方向DR4において、半導体基板120の長さと同じ長さを有し、0.3mmから5mmの幅を有する。そして、光導波路101〜10iは、方向DR3において、半導体基板120の一主面上に所定の間隔で配置される。
【0172】
光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijは、半導体基板120上に2次元的に配置される。より具体的には、光送受信部111〜11jは、光導波路101に対応して設けられ、方向DR4において所定の間隔で配置される。また、光送受信部121〜12jは、光導波路102に対応して設けられ、方向DR4において所定の間隔で配置される。以下、同様にして光送受信部1i1〜1ijは、光導波路10iに対応して設けられ、方向DR4において所定の間隔で配置される。
【0173】
光伝送部材110は、光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijから入射された光を伝送する。光導波路101〜10iは、光源130から出射された光を方向DR4へ伝搬させる。光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijの各々は、後述する方法によって、光導波路101〜10i中を伝搬する光の一部を光伝送部材110中へ導くとともに、光伝送部材110中を伝送する光を検出する。光源130は、それぞれ、波長λ1,λ2,・・・,λm(mは正の整数)の離散的な波長を有する光Lg1〜Lgmまたは所定の波長範囲を有する連続光Lgcを発生し、その発生した光Lg1〜LgmまたはLgcを光導波路1〜i中へ出射する。
【0174】
図19は、図18に示す半導体基板120、光導波路101〜10iおよび光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijの斜視図である。図19を参照して、光送受信部111は、光スイッチ装置140,150,160と、光検出部170と、信号処理回路190とを含む。
【0175】
光スイッチ装置140,150,160の各々は、上述した光スイッチ装置10からなる。そして、図19においては、図面を見易くするために光スイッチ装置10の光共振器3の部分だけを図示している。
【0176】
光スイッチ装置140は、光送受信部111が対応する光導波路101に近接して配置される。光スイッチ装置150,160は、光スイッチ装置140から離れた位置に配置される。光検出部170は、たとえば、フォトダイオードからなり、光スイッチ装置150の下側に配置される。なお、図19においては、図示されていないが、光スイッチ装置160の下側にも、光検出部が配置されている。
【0177】
信号処理回路190は、光送受信部111が対応する光導波路101と光検出部170との間に配置される。
【0178】
なお、光送受信部112〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijの各々は、光送受信部111と同じ構成からなる。
【0179】
図20は、図19に示す光送受信部111の構成を示す斜視図である。なお、図20においても、図面を見易くするために、光スイッチ装置140,150,160の光共振器3の部分だけを図示している。
【0180】
図20を参照して、光送受信部111は、光スイッチ装置140,150,160、光検出部170および信号処理回路190に加えて、光検出部180をさらに含む。
【0181】
光検出部180は、フォトダイオードからなり、光スイッチ装置160の下側に配置される。光スイッチ装置140は、光出射窓141を有する。光出射窓141は、リング形状からなり、光スイッチ装置140の光共振器3の光導波路31と同じ直径および幅を有する。そして、光出射窓141は、光スイッチ装置140の光導波路31に接して光導波路31上に配置される。
【0182】
光スイッチ装置150は、光入射窓151を有し、光スイッチ装置160は、光入射窓161を有する。光入射窓151,161は、略四角形からなり、それぞれ、光スイッチ装置150,160の光導波路31に接して光導波路31上に配置される。
【0183】
なお、光送受信部112〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijの各々は、図20に示す光送受信部111と同じ構成からなる。
【0184】
図21は、図20に示す2つの光スイッチ装置150,160の2つの光共振器3の平面図である。図21を参照して、光スイッチ装置150,160の光共振器3は、光入射窓151と光入射窓161との配置位置が相互に90度ずれるように配置される。
【0185】
その結果、光1は、光入射窓161によって光スイッチ装置160の光共振器3中へ入射し、光スイッチ装置160の光共振器3中を矢印ARW2の方向へ伝搬する。また、光2は、光入射窓151によって光スイッチ装置150の光共振器3中へ入射し、光スイッチ装置150の光共振器3中を矢印ARW1の方向に伝搬する。さらに、光3は、光入射窓151,161によってそれぞれ光スイッチ装置150,160の光共振器3中へ入射し、光スイッチ装置150,160の光共振器3中をそれぞれ矢印ARW1,ARW2の方向へ伝搬する。
【0186】
このように、光スイッチ装置150に設けられた光入射窓151と、光スイッチ装置160に設けられた光入射窓161とを相互に90度ずらせて配置することによって、光伝送部材110中をあらゆる方向へ伝搬する光を光スイッチ装置150の光共振器3および/または光スイッチ装置160の光共振器3中へ入射させることができる。
【0187】
図22は、図18に示す線XXII−XXII間における光集積回路装置100の断面図である。図22を参照して、光伝送部材110は、光吸収部材1101を周囲に有する。光吸収部材1101は、光伝送部材110中を周囲へ伝搬して来た光を吸収する。これによって、光伝送部材110の周囲による光の反射が防止される。その結果、光伝送部材110中における光の干渉を防止して光通信を正確に行なうことができる。
【0188】
光導波路101〜10iは、半導体基板120の一主面に形成される。この場合、光導波路101〜10iの各々は、シリコン酸化膜1110によって囲まれており、1つの面が半導体基板120の一主面に略一致するように半導体基板120中に埋め込まれて半導体基板120の一主面に形成される。そして、シリコン酸化膜1110の膜厚は、1.5μmである。
【0189】
このように、光導波路101〜10iの周囲をシリコン酸化膜1110によって囲むことにより、光損失を低減して光を光導波路101〜10i中で伝搬させることができる。
【0190】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijは、光結合窓142,152をさらに含む。
【0191】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光結合窓142は、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijが対応する光導波路101〜10i上に光導波路101〜10iに接して形成される。
【0192】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光スイッチ装置140は、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光出射窓141および光結合窓142に接して光出射窓141と光結合窓142との間に形成される。
【0193】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光出射窓141は、光伝送部材110および光スイッチ装置140の光共振器3に接して、光伝送部材110と光スイッチ装置140の光共振器3との間に形成される。そして、光出射窓141は、光伝送部材110および光スイッチ装置140,150,160の光共振器3の屈折率よりも小さく、周囲の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料からなる。
【0194】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光入射窓151は、光伝送部材110および光スイッチ装置150の光共振器3に接して、光伝送部材110と光スイッチ装置150の光共振器3との間に形成される。そして、光入射窓151は、光伝送部材110および光スイッチ装置140,150,160の光共振器3の屈折率よりも小さく、周囲の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料からなる。
【0195】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光スイッチ装置150は、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光入射窓151および光結合窓152に接して光入射窓151と光結合窓152との間に形成される。
【0196】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光結合窓152は、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光スイッチ装置150の光共振器3および光検出部170に接して光スイッチ装置150の光共振器3と光検出部170との間に形成される。
【0197】
なお、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijは、光結合窓162をさらに含み、光スイッチ装置160、光入射窓161、光結合窓162および光検出部180は、図22に示す光スイッチ装置150、光入射窓151、光結合窓152および光検出部170と同じように配置される。
【0198】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光検出部170は、光導波路101〜10iと同じように、半導体基板120に埋め込まれて半導体基板120の一主面に形成される。
【0199】
各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる信号処理回路190は、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijが対応する光導波路101〜10iと、光検出部170との間において、半導体基板120の一主面に形成される。
【0200】
そして、各光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijに含まれる光出射窓141および光入射窓151,161と、光伝送部材110との間隔が0.2μmになるように、半導体基板120は、光伝送部材110に近接して配置される。
【0201】
光スイッチ装置140,150,160の光共振器3の光導波路31に電圧を印加しない場合、波長λOSCを有する光が共振光として光スイッチ装置140,150,160の光導波路31中を伝搬するとともに、一部が光伝送部材110中へ出射され、または光検出部170,180へ出射される。
【0202】
より具体的には、光スイッチ装置140の光導波路31に切換電圧印加回路6によって電圧を印加しない場合、波長λOSCを有する光が光結合窓142を介して共振光として光スイッチ装置140の光導波路31中を伝搬するとともに、一部が光出射窓141を介して光伝送部材110中へ出射される。また、光スイッチ装置150,160の光導波路31に切換電圧印加回路6によって電圧を印加しない場合、波長λOSCを有する光が光入射窓151,161を介して光スイッチ装置150,160の光導波路31中を伝搬するとともに、一部が光結合窓152,162を介して光検出部170,180へ出射される。
【0203】
光導波路101〜10iは、波長λ1〜λmの離散的な波長を有する光Lg1〜Lgmを伝搬させ、またはλ1〜λmの範囲の連続的な波長範囲の光を伝搬させるので、波長λ1〜λmのうちの1つの波長λk(k=1〜m)が共振波長λOSCになるように光スイッチ装置140,150,160の光導波路31に印加する電圧を決定する。
【0204】
図23は、図18に示す光源30の構成図である。図23を参照して、光源30は、レーザLS1〜LSmと、導波路300とを含む。導波路300は、レーザLS1〜LSmに接続されるとともに、光導波路1〜iに接続される。
【0205】
レーザLS1〜LSmは、それぞれ、波長λ1〜λmを有する光Lg1〜Lgmを発振し、その発振した光Lg1〜Lgmを導波路300へ出射する。導波路300は、レーザLS1〜LSmから受けた光Lg1〜Lgmを伝搬させ、光導波路1〜iへ導く。
【0206】
このように、光源30は、波長λ1〜λmを有する光Lg1〜Lgmを発生するとともに、その発生した光Lg1〜Lgmを光導波路1〜iへ導く。
【0207】
図24は、図18に示す光源30の他の構成図である。図24を参照して、光源30は、発光素子LSと、導波路310と、フィルタ320とを含む。導波路310は、導波路1〜iおよびフィルタ320に接続される。フィルタ320は、発光素子LSおよび導波路310に接続される。
【0208】
発光素子LSは、たとえば、紫外線励起蛍光発光素子からなり、連続波長の光を出射する。フィルタ320は、発光素子LSから出射された連続波長の光のうち、所定の波長範囲の光だけを導波路310へ通過させる。導波路310は、フィルタ320から受けた連続波長の光を導波路101〜10iに導く。
【0209】
この発明においては、光源30は、図23に示す構成および図24に示す構成のいずれかからなっていればよい。
【0210】
光集積回路装置100は、光導波路101〜10i、光スイッチ装置140,150,160、光検出器170,180および信号処理回路190を半導体プロセスを用いて半導体基板120の一主面に作製し、光導波路101〜10i、光スイッチ装置140,150,160、光検出器170,180および信号処理回路190を一主面に含む半導体基板120を光スイッチ装置140,150,160が接するように光伝送部材110と接触させることによって製造される。
【0211】
上記においては、光スイッチ装置140,150,160の光共振器3は、電気光学材料からなると説明したが、この発明においては、これに限らず、光スイッチ装置140,150,160の光共振器3は、磁気光学材料、熱光学材料、または電気・磁気または温度によって光学的屈折率が変化する材料からなっていてもよい。そして、光スイッチ装置140,150,160の光共振器3は、好ましくは、(Ba,Sr)TiO3、LiNbO3、Pb(Zr,Ti)O3、LiTaO3、BaTiO3、K(Ta,Nb)O3、ZnO、ADP(NH4H2PO4)、KDP(KH2PO4)、YIG(Y3Fe5O12)、BIG(Bi3F5O12)、GdPr2F5O12、MnBi、GaAs、GeおよびSiのいずれかからなる。
【0212】
光スイッチ装置140,150,160の光共振器3が磁気光学材料からなる場合、磁気が印加されていないときには、光共振波長は、光源の有するいずれの波長でもない波長に一致するように設計される。即ち、光共振波長は、光源波長が離散的な場合には、その離散的な波長のいずれでもない波長に設定され、また、ある一定範囲の連続的な波長を有する光を光源とする場合には、その波長範囲以外の波長に設定される。
【0213】
また、光スイッチ装置140,150,160の光共振器3が熱光学材料からなる場合、熱が印加されていないときには、光共振波長は、光源の有するいずれの波長でもない波長に一致するように設計される。即ち、光共振波長は、光源波長が離散的な場合には、その離散的な波長のいずれでもない波長に設定され、また、ある一定範囲の連続的な波長を有する光を光源とする場合には、その波長範囲以外の波長に設定される。
【0214】
上述したように、光集積回路装置100においては、光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijは、光伝送部材110を共用の光伝送路として用いて信号の送受信を行う。
【0215】
したがって、この発明によれば、任意の2つの光送受信部が通信を行うことができる。また、光送受信部111〜11j,121〜12j,・・・,1i1〜1ijを光伝送部材を介して任意に接続可能である。
【0216】
この発明においては、光検出器51、同期検波回路53および交流電源56は、「シフト検出回路」を構成する。
【0217】
また、この発明においては、積分器55は、「相殺電圧印加回路」を構成する。
【0218】
さらに、この発明においては、交流電源56は、「検出電圧印加回路」を構成し、同期検波回路53は、「整流回路」を構成する。
【0219】
さらに、この発明においては、電極41は、「第1の電極」を構成し、電極42は、「第2の電極」を構成する。
【0220】
さらに、この発明においては、光スイッチ装置140は、「第1の光スイッチ装置」を構成し、光スイッチ装置150,160は、「第2の光スイッチ装置」を構成する。
【0221】
さらに、この発明においては、光送受信部111〜11jに含まれるj個の光スイッチ装置140、光送受信部121〜12jに含まれるj個の光スイッチ装置140、・・・、および光送受信部1i1〜1ijに含まれるj個の光スイッチ装置40は、「i個の第1の光スイッチ装置群」を構成する。
【0222】
さらに、この発明においては、光送受信部111〜11jに含まれるj個の光スイッチ装置150,160、光送受信部121〜12jに含まれるj個の光スイッチ装置150,160、・・・、および光送受信部1i1〜1ijに含まれるj個の光スイッチ装置150,160は、「i個の第2の光スイッチ装置群」を構成する。
【0223】
さらに、この発明においては、光送受信部111〜11jに含まれるj個の光検出部170,180、光送受信部121〜12jに含まれるj個の光検出部170,180、・・・、および光送受信部1i1〜1ijに含まれるj個の光検出部170,180は、「i個の光検出部群」を構成する。
【0224】
さらに、この発明においては、光送受信部111〜11jに含まれるj個の信号処理回路190、光送受信部121〜12jに含まれるj個の信号処理回路190、・・・、および光送受信部1i1〜1ijに含まれるj個の信号処理回路190は、「i個の信号処理回路群」を構成する。
【0225】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0226】
この発明は、温度が変化しても共振波長を一定に保つことが可能な光スイッチ装置に適用される。また、この発明は、温度が変化しても共振波長を一定に保つことが可能な光スイッチ装置を備えた光集積回路装置に適用される。
【符号の説明】
【0227】
2 光導波路、3 光共振器、41 電極、51 光検出器、52 交流アンプ、53 同期検波回路、55 積分器、56 交流電源、552 キャパシタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
入力光が伝搬させる第1の光導波路と、
前記第1の光導波路に近接して前記基板上に配置され、リング形状からなる光共振器と、
前記光共振器に近接して配置され、前記光共振器中を伝搬する光と同じ波長の出力光を伝搬させる第2の光導波路と、
前記基板の面内方向における前記光共振器の両側面に接して配置された電極と、
前記光共振器の温度変動による前記光共振器の共振波長の元の共振波長からのシフトを検出し、その検出したシフトを相殺するための相殺電圧を前記電極に印加する共振保障回路と、
前記光共振器を介した前記第1の光導波路から前記第2の光導波路への導波光の伝搬と不伝搬とを切換える切換電圧を前記電極に印加する切換電圧印加回路とを備える光スイッチ装置。
【請求項2】
前記共振保障回路は、
前記シフトを検出するシフト検出回路と、
前記シフト検出回路によって検出されたシフトを抑制するための直流電圧からなる抑制電圧を前記シフトがなくなるまで前記電極に繰返し印加し、前記シフトがなくなったときの抑制電圧を前記相殺電圧として前記電極に印加する相殺電圧印加回路とを含む、請求項1に記載の光スイッチ装置。
【請求項3】
前記シフト検出回路は、
前記シフトを検出するための交流電圧からなるシフト検出電圧を前記電極に印加する検出電圧印加回路と、
前記シフト検出電圧および前記抑制電圧が前記電極に印加されたときに前記第2の光導波路中を伝搬する前記出力光を検出し、その検出した出力光の強度を出力する光検出器と、
前記出力光の強度を整流する整流回路とを含み、
前記相殺電圧印加回路は、前記整流回路によって整流された前記出力光の強度を積分し、その積分した積分値からなる前記抑制電圧を前記電極に印加する、請求項2に記載の光スイッチ装置。
【請求項4】
前記整流回路は、前記検出電圧印加回路が印加する交流電圧に同期して前記出力光の強度を整流する、請求項3に記載の光スイッチ装置。
【請求項5】
前記電極は、
前記光共振器の内周壁面に接して配置された第1の電極と、
前記光共振器の外周壁面に接して配置された第2の電極とを含み、
前記検出電圧印加回路は、前記シフト検出電圧を前記第1の電極に印加し、
前記相殺電圧印加回路は、前記抑制電圧を前記第2の電極に繰り返し印加するとともに、前記シフトがなくなったときの抑制電圧を前記相殺電圧として前記第2の電極に印加し、
前記切換電圧印加回路は、前記切換電圧を前記第1の電極に印加する、請求項3に記載の光スイッチ装置。
【請求項6】
前記第2の電極は、前記光共振器の略半周分の外周壁面に接して配置される、請求項5に記載の光スイッチ装置。
【請求項7】
前記切換電圧印加回路は、前記検出電圧印加回路が前記シフト検出電圧を前記第1の電極に印加するための導線と同じ導線を用いて前記切換電圧を前記第1の電極に印加する、請求項5に記載の光スイッチ装置。
【請求項8】
前記光共振器は、
前記リング形状を有する光導波路と、
前記基板の面内方向における前記光導波路の内周面に接して形成され、前記光導波路の比誘電率よりも大きい比誘電率を有する材料からなる第1のクラッドと、
前記基板の面内方向における前記光導波路の外周面に接して形成され、前記光導波路の比誘電率よりも大きい比誘電率を有する材料からなる第2のクラッドとを含む、請求項7に記載の光スイッチ装置。
【請求項9】
前記光導波路は、シリコンからなり、
前記第1および第2のクラッドの各々は、酸化シリコンの比誘電率よりも大きい比誘電率を有する材料からなる、請求項8に記載の光スイッチ装置。
【請求項10】
前記第1および第2のクラッドの各々は、(Ba,Sr)TiO3からなる、請求項9に記載の光スイッチ装置。
【請求項11】
前記第1および第2のクラッドの各々は、屈折率の温度依存性が前記光導波路を構成する材料の屈折率の温度依存性と逆極性である材料からなる、請求項9に記載の光スイッチ装置。
【請求項12】
前記第1および第2のクラッドの各々は、透明ナノ粒子シリカを含むポリイミドからなる、請求項11に記載の光スイッチ装置。
【請求項13】
前記切換電圧印加回路は、前記光共振器を介して前記第1の光導波路から前記第2の光導波路へ前記導波光を伝搬させるとき、0Vからなる切換電圧を前記電極に印加し、前記光共振器を介して前記第1の光導波路から前記第2の光導波路へ前記導波光を伝搬させないとき、0V以外の電圧からなる切換電圧を前記電極に印加する、請求項1に記載の光スイッチ装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の光スイッチ装置を備える、光集積回路装置。
【請求項1】
基板と、
入力光が伝搬させる第1の光導波路と、
前記第1の光導波路に近接して前記基板上に配置され、リング形状からなる光共振器と、
前記光共振器に近接して配置され、前記光共振器中を伝搬する光と同じ波長の出力光を伝搬させる第2の光導波路と、
前記基板の面内方向における前記光共振器の両側面に接して配置された電極と、
前記光共振器の温度変動による前記光共振器の共振波長の元の共振波長からのシフトを検出し、その検出したシフトを相殺するための相殺電圧を前記電極に印加する共振保障回路と、
前記光共振器を介した前記第1の光導波路から前記第2の光導波路への導波光の伝搬と不伝搬とを切換える切換電圧を前記電極に印加する切換電圧印加回路とを備える光スイッチ装置。
【請求項2】
前記共振保障回路は、
前記シフトを検出するシフト検出回路と、
前記シフト検出回路によって検出されたシフトを抑制するための直流電圧からなる抑制電圧を前記シフトがなくなるまで前記電極に繰返し印加し、前記シフトがなくなったときの抑制電圧を前記相殺電圧として前記電極に印加する相殺電圧印加回路とを含む、請求項1に記載の光スイッチ装置。
【請求項3】
前記シフト検出回路は、
前記シフトを検出するための交流電圧からなるシフト検出電圧を前記電極に印加する検出電圧印加回路と、
前記シフト検出電圧および前記抑制電圧が前記電極に印加されたときに前記第2の光導波路中を伝搬する前記出力光を検出し、その検出した出力光の強度を出力する光検出器と、
前記出力光の強度を整流する整流回路とを含み、
前記相殺電圧印加回路は、前記整流回路によって整流された前記出力光の強度を積分し、その積分した積分値からなる前記抑制電圧を前記電極に印加する、請求項2に記載の光スイッチ装置。
【請求項4】
前記整流回路は、前記検出電圧印加回路が印加する交流電圧に同期して前記出力光の強度を整流する、請求項3に記載の光スイッチ装置。
【請求項5】
前記電極は、
前記光共振器の内周壁面に接して配置された第1の電極と、
前記光共振器の外周壁面に接して配置された第2の電極とを含み、
前記検出電圧印加回路は、前記シフト検出電圧を前記第1の電極に印加し、
前記相殺電圧印加回路は、前記抑制電圧を前記第2の電極に繰り返し印加するとともに、前記シフトがなくなったときの抑制電圧を前記相殺電圧として前記第2の電極に印加し、
前記切換電圧印加回路は、前記切換電圧を前記第1の電極に印加する、請求項3に記載の光スイッチ装置。
【請求項6】
前記第2の電極は、前記光共振器の略半周分の外周壁面に接して配置される、請求項5に記載の光スイッチ装置。
【請求項7】
前記切換電圧印加回路は、前記検出電圧印加回路が前記シフト検出電圧を前記第1の電極に印加するための導線と同じ導線を用いて前記切換電圧を前記第1の電極に印加する、請求項5に記載の光スイッチ装置。
【請求項8】
前記光共振器は、
前記リング形状を有する光導波路と、
前記基板の面内方向における前記光導波路の内周面に接して形成され、前記光導波路の比誘電率よりも大きい比誘電率を有する材料からなる第1のクラッドと、
前記基板の面内方向における前記光導波路の外周面に接して形成され、前記光導波路の比誘電率よりも大きい比誘電率を有する材料からなる第2のクラッドとを含む、請求項7に記載の光スイッチ装置。
【請求項9】
前記光導波路は、シリコンからなり、
前記第1および第2のクラッドの各々は、酸化シリコンの比誘電率よりも大きい比誘電率を有する材料からなる、請求項8に記載の光スイッチ装置。
【請求項10】
前記第1および第2のクラッドの各々は、(Ba,Sr)TiO3からなる、請求項9に記載の光スイッチ装置。
【請求項11】
前記第1および第2のクラッドの各々は、屈折率の温度依存性が前記光導波路を構成する材料の屈折率の温度依存性と逆極性である材料からなる、請求項9に記載の光スイッチ装置。
【請求項12】
前記第1および第2のクラッドの各々は、透明ナノ粒子シリカを含むポリイミドからなる、請求項11に記載の光スイッチ装置。
【請求項13】
前記切換電圧印加回路は、前記光共振器を介して前記第1の光導波路から前記第2の光導波路へ前記導波光を伝搬させるとき、0Vからなる切換電圧を前記電極に印加し、前記光共振器を介して前記第1の光導波路から前記第2の光導波路へ前記導波光を伝搬させないとき、0V以外の電圧からなる切換電圧を前記電極に印加する、請求項1に記載の光スイッチ装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の光スイッチ装置を備える、光集積回路装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−175743(P2010−175743A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17235(P2009−17235)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
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