説明

光デリバリ部品、及び、それを用いたレーザ装置

【課題】 熱による損傷を防止することができる光デリバリ部品、及び、それを用いたレーザ装置を提供する。
【解決手段】 光デリバリ部品100は、コア51及びクラッド52を有するデリバリファイバ50と、放熱部材60と、を備え、デリバリファイバ50は、放熱部材の一部である第1放熱部材60aに接続される第1光放出部50aと、放熱部材の他の一部である第2放熱部材60bに接続される第2光放出部50bとを有すると共に、少なくとも第2光放出部50bが曲げられており、第1光放出部50aは、第2光放出部50bよりもデリバリファイバ50における光の入力端58側に設けられると共に、第2光放出部50bよりも曲げ半径が大きくされることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱による損傷を防止することができる光デリバリ部品、及び、それを用いたレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザ装置は、加工機、医療機器、測定器の分野等において用いられ、増幅用光ファイバにおいて増幅された光が出力されるものである。このようなファイバレーザ装置においては、ダブルクラッドファイバから成る増幅用光ファイバにおいて増幅される信号光が、増幅用光ファイバのコアから出力され、増幅用光ファイバに接続されたシングルクラッドファイバから成るデリバリファイバのコアに入力されて、デリバリファイバにより所望の場所まで伝播されてから、出力される場合がある。
【0003】
しかし、増幅用光ファイバから出力される光としては、コアから出力される信号光の他に、クラッドから出力される余剰励起光があり、上述のように増幅用光ファイバにデリバリファイバが接続されている場合、この余剰励起光は、デリバリファイバのクラッドに入力する。また、増幅用光ファイバのコアを伝播する信号光と、デリバリファイバのコアを伝播する信号光とのモードフィールド径の不一致や、増幅用光ファイバとデリバリファイバとの接続における軸ずれ、角度ずれ等により、増幅用光ファイバから出力される信号光の一部が、デリバリファイバのクラッドに入力する場合がある。
【0004】
デリバリファイバのクラッドに入力するこれらの光は、デリバリファイバの被覆層に吸収されて、被覆層が焼損するといった問題が生じることがある。従って、デリバリファイバのクラッドに入力する光は、適切に放出されることが望ましい。
【0005】
下記特許文献1には、このようなクラッドに入力した光を放出する光ファイバの融着接続構造が記載されている。この融着接続構造においては、ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとが直線状に並べられて接続され、少なくともシングルクラッドファイバの融着点付近が高熱伝導性のブロックで覆われている。従って、ダブルクラッドファイバからシングルクラッドファイバのクラッドに光が入力し、この光の放射により、熱が発生する場合においても、この熱がブロックに吸収され、光ファイバの被覆の劣化を防止することができるとされている。
【0006】
また、下記特許文献2には、クラッドに入力した光を放出するレーザ伝達装置が記載されている。このレーザ伝達装置においては、光ファイバのクラッドが一部露出された部分が、所定の曲率で曲げられると共に、光透過部材で覆われ、さらに光透過部材に光吸収部材・冷却部材が設けられるというものである。この様な構成により、クラッドが露出した部分において、クラッドを伝播する光を略完全に除去できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−310277号公報
【特許文献2】特開2010−002608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように増幅用光ファイバからデリバリファイバに入力する光には、増幅用光ファイバのクラッドを伝播する励起光と、コアを伝播する信号光とがある。一般に励起光は、NA(開口数:Numerical Aperture)が大きい成分が多い光であり、信号光は、励起光と比べるとNAの比較的小さい成分が多い光である。そして、NAの小さい成分は、NAの大きい成分よりも直進性が良い。
【0009】
従って、特許文献1に記載の光ファイバの融着接続構造によれば、光ファイバが直線上に並べられているため、NAの小さい成分は、高熱伝導性のブロックで覆われている部分において放出されづらい。従って、高熱伝導性のブロックで覆われていない部分において、光ファイバが曲げられると、この部分でNAの小さい成分がクラッドから放出されて被覆層を損傷する虞がある。一方、特許文献2に記載のレーザ伝達装置においては、光ファイバが曲げられている部分において、光のNAの小さい成分とNAの大きい成分とが、一気に放出されて熱に変換されるため、発熱する場所が集中して、冷却部材が設けられる場合においても、光ファイバが熱により損傷する虞がある。
【0010】
そこで、本発明は、熱による損傷を防止することができる光デリバリ部品、及び、それを用いたレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光デリバリ部品は、コア及びクラッドを有するデリバリファイバと、放熱部材と、を備え、前記デリバリファイバは、前記放熱部材の一部に接続される第1光放出部と、前記放熱部材の他の一部に接続される第2光放出部とを有すると共に、少なくとも第2光放出部が曲げられており、前記第1光放出部は、前記第2光放出部よりもデリバリファイバにおける光の入力端側に設けられると共に、前記第2光放出部よりも曲げ半径が大きくされることを特徴とするものである。
【0012】
このような光デリバリ部品においては、デリバリファイバのクラッドにNAの小さな光とNAの大きな光とを有する光が入力すると、この光は、第1光放出部、第2放熱部の順に伝播する。NAの大きな光は、デリバリファイバのクラッドの外周面に対する入射角が小さく、クラッドから放出され易い。一方、NAの小さな光は、デリバリファイバのクラッドの外周面に対する入射角が大きく、クラッドから放出されづらい。従って、第1光放出部は、第2放熱部よりも曲げ半径が大きくされるため、クラッドに入力した光の内、比較的NAの大きな光が第1放出部から放出される。そして、第2光放出部は、第1光放出部よりも曲げ半径が小さいため、比較的NAの大きな光も比較的NAの小さな光も放出することができる。従って、第2光放出部においては、第1光放出部を通過した残りの光が放出される。そして、第1光放出部から放出される光により発生する熱は、放熱部材の一部から放熱され、第2光放出部から放出される光により発生する熱は、放熱部材の他の一部から放熱される。このようにNAの比較的大きな光と、NAの比較的小さな光を含む光とを異なる場所で放出して、それぞれ発熱させることにより、発熱する場所が集中することを防止でき、分散して発熱した熱をそれぞれ適切に放出することができる。従って、熱による損傷を防止することができる。
【0013】
また、前記第1光放出部は、直線状とされることが好ましい。
【0014】
第1光放出部を直線上とすることにより、NAの小さな光を適切に第2光放出部まで伝播させることができ、第1光放出部及び第2光放出部において、より適切に発生する熱を分散することができる。
【0015】
また、上記の様に前記第1光放出部が、直線状とされる場合においては、前記第2光放出部は、一定の曲げ半径とされることとしても良い。
【0016】
このような構成にすることにより、放熱部材における第2光放出部が接続される部分の形成が容易になる。例えば、放熱部材は、通常熱伝導の良いアルミ等をフライス盤等の金属加工機で加工して作成するが、第2放出部が一定の曲げ半径とされることにより、放熱部材における第2光放出部が接続される部分を一定の曲げ半径で加工することができ、加工が容易になる。従って、放熱部材を安価に抑えることが可能になる。とすることができる。
【0017】
或いは、上記の様に前記第1光放出部が、直線状とされる場合において、前記第2光放出部は、前記第1光放出部側から徐々に曲げ半径が小さくされることとしても良い。
【0018】
この場合においては、第2光放出部内において、NAの比較的大きな光からNAの比較的小さな光まで、順に徐々に放出される。従って、第1光放出部で放出されなかった比較的NAの大きな光が第2光放出部に伝播する場合においても、第2光放出部において、まずNAの比較的大きな光を放出して、次いで、比較的NAの小さな光を放出することができる。こうして、第2光放出部において、発熱する個所を更に分散することができ、熱による損傷をより適切に防止することができる。
【0019】
或いは、前記第1光放出部から前記第2光放出部にかけて、前記デリバリファイバの前記曲げ半径が徐々に小さくされることが好ましい。
【0020】
デリバリファイバの曲げ半径が徐々に小さくされることで、NAの比較的大きな光からNAの比較的小さな光まで、光を順に徐々に放出することができる。従って、発熱する個所を更に分散することができ、熱による損傷をより適切に防止することができる。
【0021】
また、前記放熱部材は、前記デリバリファイバと覆う光透過性の樹脂をさらに有し、前記第1光放出部及び前記第2光放出部の少なくとも一部において、前記クラッドが前記光透過性の樹脂で覆われることが好ましい。
【0022】
クラッドが光透過性の樹脂で覆われることで、デリバリファイバと離れた場所において、光を熱に変えることができる。従って、デリバリファイバをより適切に熱から保護することができる。
【0023】
また、前記デリバリファイバは、前記クラッドを覆う被覆層をさらに有し、前記第1光放出部及び前記第2光放出部の少なくとも一部において、前記クラッドが前記被覆層で覆われていることが好ましい。
【0024】
第1光放出部及び第2光放出部の少なくとも一部において、クラッドが被覆層で覆われるため、光デリバリ部品を組み立てる際、被覆層により、コア及びクラッドが折れることを防止することができる。特にデリバリファイバが小さな曲げ半径で曲げられている第2光放出部の少なくとも一部においては、クラッドが被覆層で覆われていれば、光デリバリ部品を組み立てる際における、コア及びクラッドの折れをより有効に防止することができる。
【0025】
さらに、デリバリファイバが被覆層を有する場合においては、前記放熱部材は、前記デリバリファイバを覆う樹脂をさらに有し、前記第1光放出部及び前記第2光放出部の少なくとも一部において、前記被覆層が前記樹脂で覆われ、前記被覆層及び前記樹脂は、共に光透過性であることが好ましい。
【0026】
被覆層及び樹脂が共に光透過性の樹脂であるため、被覆層における発熱を抑制でき、デリバリファイバと離れた場所において、光を熱に変えることができる。従って、デリバリファイバをより適切に熱から保護することができる。
【0027】
或いは、デリバリファイバが被覆層を有する場合においては、前記放熱部材は、前記デリバリファイバを覆う樹脂をさらに有し、前記第1光放出部及び前記第2光放出部の少なくとも一部において、前記被覆層が前記樹脂で覆われ、前記樹脂は、前記被覆層よりも熱伝導性に優れることが好ましい。
【0028】
被覆層を覆う樹脂が、被覆層よりも熱伝導性に優れるため、被覆層において発熱する場合においても、この熱を樹脂により、適切に伝導することができる。従って、この場合においても、デリバリファイバをより適切に熱から保護することができる。
【0029】
また、本発明のレーザ装置は、上記のいずれかに記載の光デリバリ部品と、コアとクラッドとを有し、光を出力する光ファイバと、を備え、前記光ファイバの出力端が前記デリバリファイバの入力端に接続されることを特徴とするものである。
【0030】
このようなレーザ装置においては、光ファイバから出力される出力光の一部が、デリバリファイバのクラッドに入力する場合においても、適切に光を放出し、この出力光にNAの大きな光と小さな光が含まれる場合においても、光の放出による熱を分散することができる。従って、信頼性の高いレーザ装置とすることができる。
【0031】
さらに、上記のレーザ装置は、励起光源を更に備え、前記光ファイバは、前記励起光源から出力される励起光により励起状態とされる活性元素が前記コアに添加される増幅用光ファイバであることとしても良い。
【0032】
このようなレーザ装置は、ファイバレーザ装置とされる。一般的に、増幅用光ファイバから出力される余剰励起光は、NAの大きな光とされ、増幅用光ファイバにおいて増幅される信号光は、NAが大きな光と小さな光を含む。従って、本発明のレーザ装置によれば、増幅用光ファイバから出力される余剰励起光が、デリバリファイバのクラッドに入力されたり、信号光の一部がクラッドに入力する場合においても、余剰励起光の多くは第1光放出部において放出され、クラッドに入力した信号光の多くは、第2光放出部から出力される。従って、クラッドに入力した励起光と信号光とを分散して熱に変換することができるので、信頼性の高いファイバレーザ装置とすることができる。
【0033】
或いは、上記のレーザ装置は、励起光源と、前記励起光により励起状態とされる活性元素がコアに添加される増幅用光ファイバと、を更に備え、前記光ファイバの入力端が前記増幅用光ファイバの出力端に接続されることとしても良い。
【0034】
このようなレーザ装置においても、増幅用光ファイバから出力される余剰励起光が光ファイバを介してデリバリファイバのクラッドに入力されたり、増幅用光ファイバから光ファイバを介して出力される信号光の一部がデリバリファイバのクラッドに入力する場合においても、余剰励起光の多くは第1光放出部において放出され、クラッドに入力した信号光の多くは、第2光放出部から出力される。従って、クラッドに入力した励起光と信号光とを分散して熱に変換することができるので、信頼性の高いファイバレーザ装置とすることができる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、本発明によれば、熱による損傷を防止することができる光デリバリ部品、及び、それを用いたレーザ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ装置を示す図である。
【図2】図1の増幅用光ファイバの長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図である。
【図3】図1の光デリバリ部品の拡大図である。
【図4】図3のデリバリファイバの長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図である。
【図5】図3のV−V線における断面の構造の様子を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る光デリバリ部品の拡大図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る光デリバリ部品の拡大図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係るレーザ装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る光デリバリ部品、及び、それを用いたレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザ装置を示す図である。
【0039】
図1に示すように、レーザ装置1は、ファイバレーザ装置であり、種光を出力する種光源10と、励起光を出力する励起光源20と、種光と励起光とが入力する増幅用光ファイバ30と、種光源10及び励起光源20と増幅用光ファイバ30とを接続するコンバイナ40と、増幅用光ファイバ30に一端が接続されているデリバリファイバ50を有する光デリバリ部品100と、を主な構成として備える。このレーザ装置は、種光源10から出力される種光が、増幅用光ファイバにより増幅されて出力されるものであり、MO−PA(Master Oscillator Power Amplifier)型のファイバレーザ装置とされる。
【0040】
種光源10は、例えば、レーザダイオードから成るレーザ光源や、ファブリペロー型やファイバリング型のファイバレーザ装置から構成されている。この種光源10から出力される種光は、特に制限されるものではないが、例えば、波長が1070nmのレーザ光とされる。また、種光源10は、コア、及び、コアを被覆するクラッドから構成される種光用ファイバ15に接続されており、種光源10から出力される種光は、種光用ファイバ15のコアを伝播する。種光用ファイバ15としては、例えば、シングルモードファイバが挙げられ、この場合、種光は種光用ファイバ15をシングルモード光として伝播する。なお、種光源10から出力される種光は、信号光とも呼ばれる。しかし、特に種光に信号が重畳されている必要はない。
【0041】
励起光源20は、複数のレーザダイオード21から構成され、上述のように種光の波長が1070nmの場合、例えば、波長が915nmの励起光を出力する。また、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21は、励起光用ファイバ22に接続されており、レーザダイオード21から出力される励起光は、励起光用ファイバ22を伝播する。励起光用ファイバ22としては、例えば、マルチモードファイバが挙げられ、この場合、励起光は励起光用ファイバ22をマルチモード光として伝播する。
【0042】
図2は、増幅用光ファイバ30の長手方向に垂直な断面の構造を示す図である。図2に示すように、増幅用光ファイバ30は、コア31と、コア31を被覆するクラッド32と、クラッド32を被覆する外側クラッド33と、外側クラッド33を被覆する被覆層34とから構成される。クラッド32の屈折率はコア31の屈折率よりも低く、外側クラッド33の屈折率はクラッド32の屈折率よりもさらに低くされている。コア31の直径は、例えば、15μmとされ、クラッド32の外径は、例えば、400μmとされる。このような、コア31を構成する材料としては、例えば、屈折率を上昇させるゲルマニウム等の元素、及び、励起光源20から出力される励起光により励起されるイッテルビウム(Yb)等の活性元素が添加された石英が挙げられる。このような活性元素としては、希土類元素が挙げられ、希土類元素としては、上記Ybの他にツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)等が挙げられる。さらに活性元素として、希土類元素の他に、ビスマス(Bi)やクロム(Cr)等が挙げられる。また、クラッド32を構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されていない純粋石英が挙げられる。また、外側クラッド33を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂やフッ素等が添加された石英が挙げられ、被覆層34を構成する材料としては、例えば、外側クラッド33が樹脂から成る場合における樹脂とは異なる紫外線硬化樹脂が挙げられる。
【0043】
コンバイナ40は、種光用ファイバ15及びそれぞれの励起光用ファイバ22と、増幅用光ファイバ30とを接続している。具体的には、コンバイナ40において、種光用ファイバ15のコアが、増幅用光ファイバ30のコア31に端面接続されている。さらにコンバイナ40において、それぞれの励起光用ファイバ22のコアが、増幅用光ファイバ30の一端において、クラッド32に端面接続されている。こうして、種光源10から出力される種光は、増幅用光ファイバ30のコア31に入力され、励起光源20から出力される励起光は、増幅用光ファイバ30のクラッド32に入力される。
【0044】
図3は、図1の光デリバリ部品100の拡大図である。図3に示すように、光デリバリ部品100は、放熱部材60とデリバリファイバ50とを備える。
【0045】
図4は、図3のデリバリファイバ50の長さ方向に垂直な断面の様子を示す図である。図4に示すように、デリバリファイバ50は、コア51と、コア51を被覆するクラッド52と、クラッド52を被覆する被覆層54とから構成される。コア51の直径は、例えば、増幅用光ファイバ30のコア31の直径と同様とされ、クラッド52の外径は、例えば、増幅用光ファイバ30のクラッド32の外径と同様とされ、被覆層54の外径は、例えば、増幅用光ファイバ30の被覆層34の外径と同様とされる。また、コア51の屈折率は、例えば、増幅用光ファイバ30のコア31と同様とされ、クラッド52の屈折率は、増幅用光ファイバ30のクラッド32と同様とされる。このような、コア51を構成する材料としては、例えば、屈折率を上昇させるゲルマニウム等の元素が添加された石英が挙げられ、クラッド52を構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されていない純粋石英が挙げられる。また、被覆層54を構成する材料としては、例えば、ウレタン系の紫外線硬化樹脂が挙げられる。
【0046】
このようなデリバリファイバ50は、図1、図3に示すように、光の入力端58側の被覆層54が所定の長さ剥離され、クラッド52が露出しており、光の入力端58が、増幅用光ファイバ30の出力端39と接続されている。そして、デリバリファイバ50は、被覆層54が剥離された部分を含む光の入力端58から所定の長さが第1光放出部50aとされ、入力端58側から第1光放出部50aに続く所定の長さが第2光放出部50bとされる。従って、本実施形態においては、第1光放出部50aにおける一部は、被覆層54が剥離されクラッド52が露出しており、他の一部は、被覆層54が剥離されていない。また、デリバリファイバ50の第2光放出部50bにおいては、被覆層54が全く剥離されていない。このように本実施形態の光デリバリ部品100においては、第1光放出部50aの一部、及び、第2光放出部50bが、クラッドが被覆層で覆われるため、光デリバリ部品100を組み立てる際、被覆54層により、コア及びクラッドが折れることを防止することができる。また、一般に光ファイバの曲げ半径が小さい個所においては、被覆層が剥離されていると、光ファイバの寿命が短くなる傾向があるが、このように被覆層54によりクラッド52が被覆されているので、デリバリファイバ50は、寿命が短くなることが防止されている。
【0047】
放熱部材60は、放熱部材60の一部を構成する第1放熱部材60aと、放熱部材60の他の一部を構成する第2放熱部材60bとから成る。
【0048】
図5は、図3のV−V線における断面の構造の様子を示す図である。図3、図5に示すように、本実施形態において、第1放熱部材60aは、凹状の第1収納部62aが形成された板状の第1基台61aと、第1収納部62aに充填された熱伝導性に優れる樹脂64とから構成される。第1基台61aを平面視する場合に、第1基台61aの外径は、略長方形の形状をしており、第1収納部62aも略長方形の形状をしている。また、第1基台61aには、第1収納部62aと連結するように、第1収納部62aの長手方向の両端部に、一対の溝部63aが形成されている。第1基台61aを構成する材料としては、特に限定されないが、アルミニウム等の金属や窒化アルミ等のセラミックを挙げることができる。また、樹脂64は、熱伝導性に優れる樹脂であることが好ましく、特に限定されないが、例えば、熱伝導性の高い材料を含有するシリコーンRTVゴム等を挙げることができる。
【0049】
また、第2放熱部材60は、凹状の第2収納部62bが形成された第2基台61bと、第2収納部62bに充填された熱伝導性に優れる樹脂64とから構成される。第2基台61bは、断面における形状が、図5に示す第1基台61aの断面における形状と略同様とされており、外形が第1基台61aが平面上において略直角に曲がった形状とされている。また、第2収納部62bの外形は、第1収納部62aが平面上において略直角に曲がった形状とされている。また、第2基台61bには、第2収納部62bの両端と連結するように、一対の溝部63bが形成されている。なお、本実施形態においては、第2基台61bの外形、及び、第2収納部62bの外形が略直角に曲がっているが、この角度は、特に限定されるものではない。
【0050】
そして、デリバリファイバ50の第1光放出部50aが、第1放熱部材60aに直線状に配置されて、増幅用光ファイバ30とデリバリファイバ50の接続点が、第1放熱部材60aの第1収納部62a内に配置される。さらに、デリバリファイバ50の第1光放出部50aにおける被覆層54が剥離された部分は、第1収納部62a内に配置されて、樹脂64で被覆される。さらに、デリバリファイバ50の第1光放出部50aにおける被覆層54が剥離されていない部分は、第1収納部62a内から第2放熱部材60b側の溝部63aにかけて配置される。従って、第1収納部62a内において、第1光放出部50aにおける被覆層54が剥離されている部分は、クラッド52が樹脂64で被覆され、被覆層54が剥離されていない部分は、被覆層54が樹脂64で被覆されている。こうして、第1光放出部50aは、第1放熱部材60aに接続されている。また、第1光放出部50aにおいて、被覆層54を覆う樹脂64が、被覆層54よりも熱伝導性に優れていることが好ましい。このような場合、被覆層54において発熱する場合においても、この熱を樹脂64により、適切に伝導することができ、デリバリファイバ50をより適切に熱から保護することができる。このような樹脂としては、被覆層54がウレタン系の樹脂である場合、上述のシリコーンRTVゴム等を挙げることができる。
【0051】
なお、デリバリファイバ50と接続されている増幅用光ファイバ30は、第1収納部62aからデリバリファイバ50が配置される側の溝部63aと反対側の溝部63aに配置されており、放熱部材60から導出されている。
【0052】
また、デリバリファイバ50の第2光放出部50bは、第2放熱部材60bにおいて、第1放熱部材60a側の溝部63bから第2収納部62b内に配置されて、さらに、第2収納部62bから第1放熱部材60a側と反対側の溝部63bに配置される。つまり、デリバリファイバ50の第2光放出部50bは、略直角に曲がった形状の第2基台61bに沿って曲げられて配置される。なお、本実施形態においては、第2光放出部50bは、一定の曲げ半径で略直角に曲げられて配置されている。また、第2光放出部50bにおいては、被覆層54が剥離されていないため、第2収納部62b内において、被覆層54が樹脂64で被覆されている。こうして、第2光放出部50bは、第2放熱部材60bに接続されている。また、第2光放出部50bにおいても、上述の第1光放出部50aと同様に、被覆層54を覆う樹脂64が、被覆層54よりも熱伝導性に優れていることが好ましい。このような場合、被覆層54において発熱する場合においても、この熱を樹脂64により、適切に伝導することができ、デリバリファイバ50をより適切に熱から保護することができる。そして、デリバリファイバ50の第2光放出部に続く部分が、放熱部材60の外に導出されている。なお、本実施形態においては、上述のように、第1光放出部50aが直線状であるため、第1光放出部50aの曲げ半径は、無限大と考えることができる。従って、第1光放出部50aは、第2光放出部50bよりも曲げ半径が大きくされる。なお、本実施形態においては、第2光放出部50bが略直角に曲がっているが、この角度は、特に限定されるものではない。
【0053】
また、本実施形態においては、デリバリファイバ50の増幅用光ファイバ30側と反対側の端部には何も接続されておらず、光が出力される出力端とされる。ただし、この出力端には、出力光の径を広げるためのガラスロッドから成るエンドキャップが接続されても良い。
【0054】
このようなレーザ装置1は、次のように動作する。
【0055】
まず、種光源10から種光が出力されると共に、励起光源20から励起光が出力される。このとき種光源10から出力される種光は、上述のように、例えば、波長が1070nmとされる。種光源10から出力された種光は、種光用ファイバ15のコアを伝播して、コンバイナ40に入力する。
【0056】
一方、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21から出力される励起光は、上述のように、例えば、波長が915nmとされる。それぞれのレーザダイオード21から出力された励起光は、励起光用ファイバ22を伝播しコンバイナ40に入力する。
【0057】
こうしてコンバイナ40に入力した種光は、増幅用光ファイバ30のコア31に入力して、コア31を伝播する。一方、コンバイナ40に入力した励起光は、増幅用光ファイバ30のクラッド32に入力して、クラッド32を主に伝播する。
【0058】
そして、増幅用光ファイバ30において、励起光がコア31を通過するときに、コア31に添加されている活性元素に吸収されて、活性元素を励起する。励起された活性元素は、誘導放出を起こし、この誘導放出により種光が増幅されて、出力光として増幅用光ファイバ30の出力端39から出力される。
【0059】
そして、増幅用光ファイバ30のコア31から出力した出力光は、デリバリファイバ50の入力端58からコア51に入力し、コア51を伝播して、デリバリファイバ50の出力端から出力される。
【0060】
ところで、上記の様に出力光が増幅用光ファイバ30のコア31からデリバリファイバ50のコア51に入力するときに、入力端58において、増幅用光ファイバ30のコア31とデリバリファイバ50のコア51との軸ずれ・角度ずれや、増幅用光ファイバ30とデリバリファイバ50のモードフィールドの不整合等により、出力光が漏えいして、漏れ光としてクラッド52に入力する場合がある。また、増幅用光ファイバ30において、活性元素に吸収されずに増幅用光ファイバ30の出力端39から出力される余剰励起光が、デリバリファイバ50のクラッド52に入力する場合がある。
【0061】
一般的に、励起光は比較的NAが大きな光から成り、種光が増幅された出力光は、NAが小さな光から大きな光まで含む。従って、上記の様に出力光や励起光がデリバリファイバ50のクラッド52に入力する場合、この光は、NAの大きな光から小さな光まで含む。
【0062】
そして、クラッド52に入力した光の内、NAの比較的大きな光は、クラッド52の外周面に対する入射角が小さいため、クラッド52の外周面から出力され易い。このため、このNAの比較的大きな光の少なくとも一部は、デリバリファイバ50の第1光放出部50aにおいてクラッド52から放出され熱に変化する。この熱は、第1放熱部材60aにおける樹脂64を伝導して、第1基台61aを介して外部に放出される。なお、上述のように、第1光放出部50aにおける被覆層54を覆う樹脂64が、被覆層54よりも熱伝導性に優れていれば、第1光放出部50aにおいて被覆層54が発熱する場合においても、この熱を樹脂64により、適切に伝導することができ、デリバリファイバ50をより適切に熱から保護することができる。
【0063】
一方、NAの比較的小さな光は、クラッド52の外周面に対する入射角が大きいため、直線状である第1光放出部50aにおいて、クラッド52から放出されづらく、第1光放出部50aを通過する。また、NAの比較的大きな光においても、一部の光は、第1光放出部50aを通過する。こうして、クラッド52を伝播する光の内、第1光放出部50aを通過した光は、第2光放出部50bまで伝播する。しかし、第2光放出部50bは、第1光放出部50aよりも曲げ半径が小さいため、NAの比較的小さな光もクラッド52から放出され易い。そのため、クラッド52を伝播する光の内、第2光放出部50bに到達した光の多くは、第2光放出部50bにおいて、クラッド52から放出される。なお、本実施形態においては、第2光放出部50bにおいては、クラッド52が被覆層54で覆われており、クラッド52から放出された光の一部が被覆層54で熱とされる。しかし、クラッド52に入力した光の内、一部の光は、第1光放出部50aにおいて、放出されているため、第2光放出部50bにおいて被覆層54で発生する熱量は、被覆層54を損傷するほど大きくない。さらに第2光放出部50bにおいて被覆層54は、第2放熱部材60bに接続されているため、被覆層54は熱による損傷を受けづらい。特に上述のように、第2光放出部50bにおける被覆層54を覆う樹脂64が、被覆層54よりも熱伝導性に優れていれば、第2光放出部50bにおいて被覆層54が発熱する場合においても、この熱を樹脂64により、適切に伝導することができ、デリバリファイバ50をより適切に熱から保護することができる。そして、被覆層54で発生した熱は、樹脂64を伝導して、第2基台61bを介して外部に放出される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の光デリバリ部品100によれば、デリバリファイバ50のクラッド52にNAの小さな光とNAの大きな光とを有する光が入力すると、この光は、第1光放出部50a、第2光放出部50bの順に伝播する。励起光のようなNAの大きな光は、デリバリファイバ50のクラッド52の外周面に対する入射角が小さく、クラッド52から放出され易い。一方、種光が増幅された出力光に含まれるNAの小さな光は、デリバリファイバ50のクラッド52の外周面に対する入射角が大きく、クラッド52から放出されづらい。従って、本実施形態の光デリバリ部品100においては、第1光放出部50aが、第2光放出部50bよりも大きな曲げ半径とされるため、クラッド52に入力した光の内、励起光や出力光の一部のような比較的NAの大きな光が第1光放出部50aから放出される。そして、第2光放出部50bは、第1光放出部50aよりも曲げ半径が小さいため、比較的NAの大きな光も比較的NAの小さな光も放出することができる。従って、第2光放出部50bにおいては、第1光放出部50aを通過した残りの光が放出される。そして、第1光放出部50aから放出される光により発生する熱は、第1放熱部材60aから放熱され、第2光放出部50bから放出される光により発生する熱は、第2放熱部材60bから放熱される。このようにNAの比較的大きな光と、NAの比較的小さな光を含む光とを異なる場所で放出して、それぞれ発熱させることにより、発熱する場所が集中することを防止でき、分散して発熱した熱をそれぞれ適切に放出することができる。従って、熱による損傷を防止することができる。
【0065】
従って、このような光デリバリ部品100を用いるレーザ装置1は、高い信頼性を有することができる。特に本実施形態のようにレーザ装置1が増幅用光ファイバ30を用いるファイバレーザ装置である場合においては、増幅用光ファイバ30から出力される余剰励起光が、デリバリファイバ50のクラッド52に入力されたり、種光が増幅された出力光の一部がクラッド52に入力する場合があるが、このような場合においても、余剰励起光の多くは第1光放出部50aにおいて放出され、クラッド52に入力した出力光の多くは、第2光放出部50bから出力される。従って、クラッド52に入力した励起光と信号光とを分散して熱に変換することができるので、信頼性の高いファイバレーザ装置とすることができる。
【0066】
また、本実施形態の光デリバリ部品100においては、第1光放出部50aが直線状とされるので、NAの小さな光を適切に第2光放出部50bまで伝播させることができ、第1光放出部50a及び第2光放出部50bにおいて、より適切に発生する熱を分散することができる。そして、第2光放出部50bが、一定の曲げ半径で曲げられているので、第2光放出部50bと接続される第2放熱部材60bを一定の曲げ変形で加工することができる。特に、第2基台61bが、アルミ等の熱伝導性の良い金属から成る場合、フライス盤等の金属加工機で加工が簡単になるため、第2収納部62bの形成も容易となり、安価に放熱部材60を製造することができる。
【0067】
なお、本実施形態のレーザ装置1においては、増幅用光ファイバ30とデリバリファイバ50との間に他の光ファイバが設けられても良い。この光ファイバは、コア及びクラッドを有し、例えば、種光用ファイバ15と同じ構成、或いは、コア及びクラッド及び外側クラッドを有するダブルクラッドファイバとされる。この光ファイバがダブルクラッドファイバである場合、このダブルクラッドファイバは、コアに活性元素が添加されないこと以外は、増幅用光ファイバ30と同様の構成とされれば良い。この場合、増幅用光ファイバ30の出力端が、光ファイバの入力端に接続され、光ファイバの出力端がデリバリファイバの入力端に接続されることになる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図6は、本発明の第2実施形態に係る光デリバリ部品101の拡大図である。
【0069】
本実施形態の光デリバリ部品101は、第1光放出部50aにおいて、デリバリファイバ50が直線状に配置される点は、第1実施形態における光デリバリ部品100と同様であるが、第2光放出部50bにおいて、デリバリファイバ50が、第1光放出部側から徐々に曲げ半径が小さくされて配置される点において、第1実施形態の光デリバリ部品100と異なる。そして、このデリバリファイバ50の曲げに沿うように、第1放熱部材60aの第1基台61a及び第2放熱部材60bの第2基台61bの外形が平面方向に曲げられており、これに伴い第1収納部62a及び第2収納部62bの外形が平面方向に曲げられている。
【0070】
本実施形態の光デリバリ部品101によれば、第2光放出部内において、NAの比較的大きな光からNAの比較的小さな光まで、順に徐々に放出される。従って、第1光放出部で放出されなかった比較的NAの大きな光が第2光放出部に伝播する場合においても、第2光放出部において、まずNAの比較的大きな光を放出して、次いで、比較的NAの小さな光を放出することができる。こうして、第2光放出部において、発熱する個所を第1実施形態の光デリバリ部品100よりも更に分散することができ、熱による損傷をより適切に防止することができる。
【0071】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図7を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図7は、本発明の第3実施形態に係る光デリバリ部品102の拡大図である。
【0072】
図7に示すように、本実施形態の光デリバリ部品102は、第1光放出部50aから第2光放出部50bにかけて、デリバリファイバ50の曲げ半径が徐々に小さくされている。従って、第1実施形態の光デリバリ部品100においては、第1光放出部50aにおいてデリバリファイバ50が直線状に配されているのに対し、本実施形態の光デリバリ部品102においては、第1光放出部50aにおいてデリバリファイバ50が曲げられている。
そして、このデリバリファイバ50の曲げに沿うように、第1放熱部材60aの第1基台61a及び第2放熱部材60bの第2基台61bの外形が平面方向に曲げられており、これに伴い第1収納部62a及び第2収納部62bの外形が平面方向に曲げられている。
【0073】
本実施形態の光デリバリ部品102によれば、デリバリファイバ50の曲げ半径が、第1光放出部50aから第2光放出部50bにかけて徐々に小さくされることで、NAの比較的大きな光からNAの比較的小さな光まで、光を順に徐々に放出することができる。従って、発熱する個所を第1実施形態の光デリバリ部品100と比べて更に分散することができ、熱による損傷をより適切に防止することができる。
【0074】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図8を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図8は、本実施形態に係るレーザ装置2を示す図である。
【0075】
図8に示すように、本実施形態のレーザ装置2は、第1実施形態における励起光源20と同様の構成の励起光源20a、20bと、増幅用光ファイバ30と、増幅用光ファイバ30の両端に設けられ、第1実施形態におけるコンバイナ40と同様の構成のコンバイナ40a、40bと、コンバイナ40aに接続される第1共振用ファイバ16と、第1共振用ファイバ16に接続され、第1実施形態における光デリバリ部品100と同様の構成の光デリバリ部品100aと、コンバイナ40bに接続される第2共振用ファイバ18と、第2共振用ファイバ18に接続され、第1実施形態における光デリバリ部品100と同様の構成の光デリバリ部品100bと、第1共振用ファイバ16に設けられる第1ミラーとしての第1FBG(Fiber Bragg Grating)71と、第2共振用ファイバ18に設けられる第2ミラーとしての第2FBG72と、を主な構成として備える。
【0076】
コンバイナ40aは、第1実施形態のコンバイナ40と同様にして、増幅用光ファイバ30の端部に設けられている。また、コンバイナ40bは、増幅用光ファイバ30のコンバイナ40aが設けられる端部と反対側の端部に設けられている。
【0077】
励起光源20aのそれぞれのレーザダイオード21は、第1実施形態と同様にして励起光用ファイバ22に接続されており、これらの励起光用ファイバ22は、コンバイナ40aにおいて、増幅用光ファイバ30のクラッド32に接続されている。従って、励起光源20aから出力される励起光は、コンバイナ40aを介して、増幅用光ファイバ30のクラッド32に入力する。
【0078】
また、第1共振用ファイバ16は、コア及びクラッドを有し、例えば、第1実施形態における種光用ファイバ15と同じ構成、或いは、コア及びクラッド及び外側クラッドを有するダブルクラッドファイバとされる。第1共振用ファイバがダブルクラッドファイバである場合、このダブルクラッドファイバは、増幅用光ファイバと同様の構成、或いは、コアに活性元素が添加されない構成とされる。第1共振用ファイバ16は、コンバイナ40aにおいて、増幅用光ファイバ30に接続され、増幅用光ファイバ30のコア31と第1共振用ファイバ16のコアとが結合している。また、第1共振用ファイバ16のコアには、第1FBG71が設けられており、第1FBG71は、増幅用光ファイバ30のコア31と結合している。第1FBG71は、増幅用光ファイバ30のコア31に添加されている活性元素が励起状態とされた場合に放出する自然放出光の一部の波長と同じ波長の光を反射し、反射率が、例えば100%とされる。また、第1共振用ファイバ16の増幅用光ファイバ30側と反対側には、光デリバリ部品100aのデリバリファイバ50の入力端58が接続されている。さらに光デリバリ部品100aのデリバリファイバ50には、終端部材17が接続されている。
【0079】
また、励起光源20bのそれぞれのレーザダイオード21は、第1実施形態と同様にして励起光用ファイバ22に接続されており、これらの励起光用ファイバ22は、コンバイナ40bにおいて、増幅用光ファイバ30のクラッド32に接続されている。従って、励起光源20bから出力される励起光は、コンバイナ40bを介して、増幅用光ファイバ30のクラッド32に入力する。
【0080】
また、第2共振用ファイバ18は、コア及びクラッドを有し、例えば、第1実施形態における種光用ファイバ15と同じ構成、或いは、コア及びクラッド及び外側クラッドを有するダブルクラッドファイバとされる。第2共振用ファイバがダブルクラッドファイバである場合、このダブルクラッドファイバは、増幅用光ファイバと同様の構成、或いは、コアに活性元素が添加されない構成とされる。そして、第2共振用ファイバ18は、コンバイナ40bにおいて、増幅用光ファイバ30に接続され、増幅用光ファイバ30のコア31と第2共振用ファイバ18のコアとが結合している。また、第2共振用ファイバ18のコアには、第2FBG72が設けられており、第2FBG72は、増幅用光ファイバ30のコア31と結合している。第2FBG72は、第1FBG71が反射する光と同じ波長の光を第1FBG71よりも低い反射率で反射する。第2FBGの反射率は、例えば30%とされる。また、第2共振用ファイバ18の増幅用光ファイバ30側と反対側には、光デリバリ部品100bのデリバリファイバ50の入力端58が接続されている。
【0081】
このように本実施形態のレーザ装置2は、増幅用光ファイバ30の前方側及び後方側の双方から励起光を入力する双方励起であって、第1、第2FBG71、72で共振を行うファブリペロー型のファイバレーザ装置とされる。
【0082】
このようなレーザ装置2においては、まず、励起光源20a、20bのそれぞれのレーザダイオード21から励起光が出力される。それぞれのレーザダイオード21から出力される励起光は、第1実施形態のレーザ装置1と同様に、例えば、波長が915nmとされる。そして、それぞれのレーザダイオード21から出力された励起光は、それぞれの励起光用ファイバ22を介して、増幅用光ファイバ30の前方側、及び、後方側からクラッド32に入力する。増幅用光ファイバ30のクラッドに入力した励起光は、クラッド32を主に伝播する。そして、コア31を通過するときにコア31に添加されている活性元素に吸収されて、活性元素を励起状態にする。
【0083】
こうして励起光により励起状態とされた活性元素から自然放出光が放出され、この自然放出光を元にして第1FBG71と第2FBG72との間で光の共振が起こる。共振する光は、第1FBG71及び第2FBG72の反射波長と同じ波長であり、この共振する光が、被増幅光として増幅用光ファイバ30において励起された活性元素の誘導放出により増幅される。そして、増幅された光の一部が、第2FBG72を透過して、出力光(信号光)として第2共振用ファイバから出力され、光デリバリ部品100bのデリバリファイバ50に入力する。このとき、第2共振用ファイバからデリバリファイバ50に光が入力するときに、励起光源20aから出力され、増幅用光ファイバ30において吸収されずに、増幅用光ファイバ30から出力される余剰励起光や、出力光がデリバリファイバ50のクラッド52に入力する場合がある。しかし、第1実施形態の光デリバリ部品100と同様にして、これらの光は、熱に変換される。そして、光デリバリ部品100bにおけるデリバリファイバ50のコア51を伝播する光は、デリバリファイバ50から出力される。
【0084】
また、励起光源20bから出力され、増幅用光ファイバ30において吸収されずに、増幅用光ファイバ30から出力される余剰励起光や、共振する光の一部が、第1FBG71を透過する場合がある。このような光は、第1共振用ファイバ16から出力され、光デリバリ部品100aのデリバリファイバ50に入力する。この場合においても、第1共振用ファイバ16からデリバリファイバ50に光が入力するときに、デリバリファイバ50のクラッド52に光が入力する場合がある。しかし、第1実施形態の光デリバリ部品100と同様にして、この光は、熱に変換される。そして、光デリバリ部品100aにおけるデリバリファイバ50のコア51を伝播する光は、終端部材17において熱に変換される。
【0085】
このように増幅用光ファイバ30から出力される光は、第1、第2共振用ファイバ16、18に入力するため、そのような観点において、本実施形態では、増幅用光ファイバの両端を出力端と考えることができ、光ファイバである第1、第2共振用ファイバ16、18の入力端が増幅用光ファイバ30の出力端に接続されているとすることができる。そして、第1、第2共振用ファイバ16、18は、増幅用光ファイバ30から出力される光を伝播、出力して、光デリバリ部品100a、100bのデリバリファイバ50の入力端に入力するため、第1、第2共振用ファイバ16、18の出力端がデリバリファイバ50の入力端58に接続されていると考えることができる。
【0086】
本実施形態のレーザ装置2によれば、第1、第2共振用ファイバ16、18から光が出力され、光デリバリ部品100a、100bのデリバリファイバ50のクラッド52に入力する場合においても、これらの光は第1光放出部50a、第2光放出部50bから出力される。従って、クラッド52に入力した光を分散して熱に変換することができるので、信頼性の高いレーザ装置とすることができる。特に本実施形態のレーザ装置2の様な双方励起型のファイバレーザ装置においては、増幅用光ファイバ30の両側から余剰励起光が出力される傾向があるため、本実施形態のレーザ装置2の様に、増幅用光ファイバの両側に光デリバリ部品100a、100bを配置することが好ましい。
【0087】
なお、本実施形態のレーザ装置2においては、光デリバリ部品100a、100bに代えて、第2実施形態、第3実施形態の光デリバリ部品101、102を用いても良い。
【0088】
以上、本発明について、第1〜第4実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
例えば、上記実施形態において、第1光放出部50aの一部において、被覆層54が剥離されたが、被覆層54の剥離は本質的なものではなく、被覆層54は、第1光放出部50a及び第2光放出部50bの全てに渡って剥離されても良く、剥離されていなくても良い。
【0090】
また、被覆層54は、光透過性の樹脂から構成されていても良い。この場合、被覆層54をウレタン系の樹脂で構成すれば良い。この場合、第1光放出部50a及び第2光放出部50bにおける被覆層54が剥離されていない場所において、クラッド52を伝播する光は、被覆層54を透過して放出されるので、クラッド52と離れた場所において発熱するためデリバリファイバ50を適切に保護することができる。
【0091】
更に、樹脂64が光透過性の樹脂であっても良い。この場合、第1光放出部50a及び第2光放出部50bにおいて、デリバリファイバ50から放出される光は、樹脂64を伝播しながら熱に変換されたり、樹脂64を伝播して第1基台61a、第2基台61bで熱に変換されたりする。また、上述のように被覆層54が光透過性の樹脂である場合、被覆層54を透過した光は、樹脂64を伝播しながら熱に変換されたり、樹脂64を伝播して第1基台61a、第2基台61bで熱に変換されたりする。このような光透過性の樹脂64としては、エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0092】
また、上記実施形態において、レーザ装置をファイバレーザ装置を例に説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、光ファイバを有しこの光ファイバから光を出力する固体レーザ装置に用いる光デリバリ部品として、上記実施形態の光デリバリ部品を用いても良い。
【0093】
また、上記実施形態において、レーザ装置1は、増幅用光ファイバ30の一方側から励起光を入力し、レーザ装置2は、増幅用光ファイバ30の双方から励起光を入力したが、レーザ装置1、2において、励起光は、増幅用光ファイバ30のどちらか一方から入力しても良く、双方から入力しても良い。
【0094】
また、第1基台61a、第2基台61bをより冷却する目的で、第1基台61a、第2基台61bにヒートシンク用のフィンが設けられても良く、第1基台61a、第2基台61bがヒートパイプが設けられても良い。
【実施例】
【0095】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0096】
(実施例1)
第1実施形態と同様の光デリバリ部品を作製した。図1のレーザ装置の構成でダブルクラッドファイバである増幅用光ファイバの出力端にシングルクラッドファイバであるデリバリファイバを接続して、端部から約20mmだけ被覆層を剥離した。次に、凹状の第1収納部が形成された金属製の板から成る第1基台、及び、凹状の第2収納部が形成された金属製の板から成り、平面状に曲がっている第2基台を準備した。そして、デリバリファイバを直線状に端部から約50mm第1基台に配置して、収容部に熱伝導性の樹脂を充填することでデリバリファイバの外周面をこの樹脂で覆った。さらに、デリバリファイバの第1基台に配置された部分に続く部分を、一定の曲げ半径80mmで長さ240mmに渡り、第2基台に配置して、収容部に光熱伝導性の樹脂を充填することでデリバリファイバの外周面をこの樹脂で覆った。
【0097】
次に、このデリバリファイバの端部から300Wの光を入力した。すると、デリバリファイバにおける第1基台に配置された直線状の部分の温度が68℃となり、第2基台に配置された部分の曲げ始めの部分の温度が約80℃となり、第2基台に配置された部分の曲げ終わり部分の温度が約40℃となった。
【0098】
(実施例2)
第2実施形態と同様の光デリバリ部品を作製した。デリバリファイバの第2基台に配置される曲げ始めの曲げ半径を160mmとして、曲げ終わりの半径を80mmとしたこと以外は、実施例1と同様にした。
【0099】
次に、このデリバリファイバの端部から実施例1と同様の強度の光を実施例1と同様の条件で入力した。すると、デリバリファイバにおける第1基台に配置された直線状の部分の温度が65℃となり、第2基台に配置された部分の曲げ始めの部分の温度が約60℃となり、第2基台に配置された部分の曲げ終わり部分の温度が約60℃となった。
【0100】
(比較例1)
第1基台に実施例1と同様にデリバリファイバを配置して、第2基台にデリバリファイバを配置しないこと以外は実施例1と同様にして光デリバリ部品を作製した。
【0101】
そして、このデリバリファイバの端部から約50Wの光を実施例1と同様の条件で入力した。すると、デリバリファイバにおける第1基台に配置された直線状の部分の温度が60℃となり、デリバリファイバの端部から約数十cm離れた場所において、デリバリファイバが曲がっている場所において、約100度となり、デリバリファイバの被覆層を損傷した。
【0102】
以上より、本発明によれば、デリバリファイバのクラッドに入力した光が分散して出力し、熱が発生する場所が分散する結果となった。従って、本発明の光デリバリ部品、及び、それを用いたレーザ装置は、熱による損傷を防止できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上説明したように、本発明によれば、熱による損傷を防止することができる光デリバリ部品、及び、それを用いたレーザ装置が提供される。
【符号の説明】
【0104】
1、2・・・レーザ装置
10・・・種光源
15・・・種光用ファイバ
16・・・第1共振用ファイバ
18・・・第2共振用ファイバ
20、20a、20b・・・励起光源
21・・・レーザダイオード
22・・・励起光用ファイバ
30・・・増幅用光ファイバ
31・・・コア
32・・・クラッド
33・・・樹脂クラッド
34・・・被覆層
39・・・出力端
40、40a、40b・・・コンバイナ
50・・・デリバリファイバ
50a・・・第1光放出部
50b・・・第2光放出部
51・・・コア
52・・・クラッド
54・・・被覆層
60・・・放熱部材
60a・・・第1放熱部材
60b・・・第2放熱部材
61a・・・第1基台
61b・・・第2基台
62a・・・第1収納部
62b・・・第2収納部
64・・・樹脂
71・・・第1ミラー(第1FBG)
72・・・第2ミラー(第2FBG)
100、100a、100b、101、102・・・光デリバリ部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア及びクラッドを有するデリバリファイバと、
放熱部材と、
を備え、
前記デリバリファイバは、前記放熱部材の一部に接続される第1光放出部と、前記放熱部材の他の一部に接続される第2光放出部とを有すると共に、少なくとも第2光放出部が曲げられており、
前記第1光放出部は、前記第2光放出部よりもデリバリファイバにおける光の入力端側に設けられると共に、前記第2光放出部よりも曲げ半径が大きくされる
ことを特徴とする光デリバリ部品。
【請求項2】
前記第1光放出部は、直線状とされることを特徴とする請求項1に記載の光デリバリ部品。
【請求項3】
前記第2光放出部は、一定の曲げ半径とされることを特徴とする請求項2に記載の光デリバリ部品。
【請求項4】
前記第2光放出部は、前記第1光放出部側から徐々に曲げ半径が小さくされることを特徴とする請求項2に記載の光デリバリ部品。
【請求項5】
前記第1光放出部から前記第2光放出部にかけて、前記デリバリファイバの前記曲げ半径が徐々に小さくされることを特徴とする請求項1に記載の光デリバリ部品。
【請求項6】
前記放熱部材は、前記デリバリファイバと覆う光透過性の樹脂をさらに有し、
前記第1光放出部及び前記第2光放出部の少なくとも一部において、前記クラッドが前記光透過性の樹脂で覆われる
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項7】
前記デリバリファイバは、前記クラッドを覆う被覆層をさらに有し、
前記第1光放出部及び前記第2光放出部の少なくとも一部において、前記クラッドが前記被覆層で覆われている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光デリバリ部品。
【請求項8】
前記放熱部材は、前記デリバリファイバを覆う樹脂をさらに有し、
前記第1光放出部及び前記第2光放出部の少なくとも一部において、前記被覆層が前記樹脂で覆われ、
前記被覆層及び前記樹脂は、共に光透過性である
ことを特徴とする請求項7に記載の光デリバリ部品。
【請求項9】
前記放熱部材は、前記デリバリファイバを覆う樹脂をさらに有し、
前記第1光放出部及び前記第2光放出部の少なくとも一部において、前記被覆層が前記樹脂で覆われ、
前記樹脂は、前記被覆層よりも熱伝導性に優れる
ことを特徴とする請求項7に記載の光デリバリ部品。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光デリバリ部品と、
コアとクラッドとを有し、光を出力する光ファイバと、
を備え、
前記光ファイバの出力端が前記デリバリファイバの前記入力端に接続される
ことを特徴とするレーザ装置。
【請求項11】
励起光源を更に備え、
前記光ファイバは、前記励起光源から出力される励起光により励起状態とされる活性元素が前記コアに添加される増幅用光ファイバであることを特徴とする請求項10に記載のレーザ装置。
【請求項12】
励起光源と、
前記励起光により励起状態とされる活性元素がコアに添加される増幅用光ファイバと、
を更に備え、
前記光ファイバの入力端が前記増幅用光ファイバの出力端に接続される
ことを特徴とする請求項10に記載のレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−215708(P2012−215708A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81108(P2011−81108)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】