説明

光モジュール

【課題】光電変換素子を内蔵するモジュール本体部のセラミック枠を用いた筺体から突出する光学窓付きの筒状部に、光コネクタ接続用のスリーブ部を取り付けて成る、光結合効率の劣化がない光モジュールを提供する。
【解決手段】光モジュール1は、光コネクタのフェルールをガイドするスリーブ部3が、光電変換素子を内蔵するモジュール本体部2のセラミック製の矩形枠6を用いた筺体から突出する筒状部9aに、取り付けられて成り、筒状部9aの根元に設けられた光学窓9bが中央からオフセットされた位置に設けられたものであって、筒状部9aが、光学窓9bのオフセット方向側より、該オフセット方向側と反対側が肉厚となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を送信及び/又は受信する光通信用の光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に用いられる光モジュールは、例えば、光コネクタのフェルールの挿入をガイドし後述のモジュール本体部に対して上記フェルールを整列させるスリーブ部と、電気信号を光信号に変換しスリーブ部に挿入される上記フェルール内の光ファイバへ送信するモジュール本体部と、を備える。
このモジュール本体部には、円筒状の金属製筺体を有するCANパッケージ型のものや、直方体状の筺体の両側からリードピン群が突出したバタフライパッケージ型のものが用いられる。
これらの形態についてのWiggle耐性を改善するために様々な提案がなされてきている(例えば、特許文献1,2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−109692号公報
【特許文献1】特開2005−156969号公報
【特許文献1】特開2005−10216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、上述のCANパッケージ型やバタフライパッケージ型の他に、セラミックパッケージ型というものが考えられている。
図6はセラミックパッケージ型の光モジュールの一例を示す図であり、図6(A)は断面図、図6(B)は後述のリッドの斜視図である。
図6(A)の光モジュール100は、セラミック製の矩形枠101aを筺体に用いたモジュール本体部101と、光コネクタが着脱可能に取り付けられるスリーブ部102とを備える。
【0005】
光モジュール100では、パッケージ本体部101内のLD(レーザダイオード)101bから出射された信号光は、実装面と平行な方向に出射された後、反射ミラー101cにより直交する方向に曲げられる。次いで、信号光は、モジュール本体部101を気密封止するために上部に設けられたリッド101dの光学窓を通って、スリーブ部材102内のファイバスタブ102aの端面に露出する光ファイバ端に入射され、光コネクタを経て外部に送信される。
また、光モジュール100は、図6(B)に示すように、リッド101dに円筒部101eが設けられており、この円筒部101eにスリーブ部材102が取り付けられる。
【0006】
図7は、図6の光モジュール100の光データリンクの筺体への固定形態を説明する図である。
図7(A)に示すように、光データリンクの筺体(以下、リンク筺体)200には、上下に凹所201が設けられており、該凹所201に光モジュール100のフランジ102bを挿入することで、光モジュール100はリンク筺体200に固定される。また、この固定状態において、光モジュール100の底部の放熱板101gはリンク筺体200内の放熱ブロック202に接触しており、LD101bからの熱は放熱板101g及び放熱ブロック202を介してリンク筺体200の外部へ放出されるようになっている。なお、光モジュール100は、放熱ブロック202と確実に接触するよう、押さえバネ203により放熱ブロック202の方向へ付勢されている。
【0007】
上述のような固定形態では、リンク筺体200の凹所201を形成する壁と光モジュール100のフランジ102bとの間に隙間を持たせるか、低圧入設計となる。そのため、光モジュール100のスリーブ部材102はリンク筺体200に対して完全に固定されない。
したがって、光コネクタが挿入される時や、Wiggle等の外部応力が加わった時に、図7(B)に示すように、光モジュール100のフランジ102bを支点として、モジュール本体部101が変位するので、パッケージ本体部101と放熱ブロック202との間でこじりが発生する。これにより、薄肉である光モジュール100の円筒部101eの根元P(図6(A)参照)に応力が加わり、リッド101dの形状が変形し光軸ズレが発生し、光結合効率が劣化するという問題がある。
【0008】
特許文献1〜3には、上述のような問題に対して、開示も示唆もされていない。
【0009】
本発明は、上述のような実情を鑑み、光電変換素子を内蔵するモジュール本体部のセラミック枠を用いた筺体から突出する光学窓付きの筒状部に、光コネクタ接続用のスリーブ部を取り付けて成る、光結合効率の劣化がない光モジュールを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の光モジュールは、光コネクタのフェルールをガイドするスリーブ部が、光電変換素子を内蔵するモジュール本体部のセラミック枠を用いた筺体から突出する筒状部に、取り付けられて成り、筒状部の根元に設けられた光学窓が中央からオフセットされた位置に設けられたものであって、筒状部が、光学窓のオフセット方向側より、該オフセット方向側と反対側が肉厚であることを特徴とする。
【0011】
筒状部の形状が、光学窓が中心にある円筒の上記オフセット方向側をDカットした形状や、光学窓が偏心された位置に設けられた円筒形状、光学窓が偏心された位置に設けられた楕円筒形状、光学窓が偏心された位置に設けられた角筒形状であるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光モジュールによれば、スリーブ部が取り付けられるモジュール本体部の筒状部が、光学窓のオフセット方向側より該オフセット方向側と反対側の方が肉厚であるため、筒状部付近に外力が加わった際にも、モジュール本体部の筺体は変形しないので、光結合効率の劣化がない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の光モジュールの一例を説明する図である。
【図2】図1の光モジュールのリッドを説明する図である。
【図3】リッドの他の例を説明する図である。
【図4】リッドの別の例を説明する図である。
【図5】リッドの別の例を説明する図である。
【図6】本発明の課題を説明する図である。
【図7】本発明の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1(A)は、本発明の光モジュールの一例の断面図、図1(B)は同部分断面斜視図、図2(B)は、図1の光モジュールのリッドの斜視図、図2(B)は同上面図である。図において、1は光モジュール、2はモジュール本体部、3はスリーブ部、4はスリーブ、5はジョイントスリーブ(Jスリーブ)、6は矩形枠、7はベース、8は金属リング、9はリッドである。
【0015】
図1(A),(B)に示すように、光モジュール1は、モジュール本体部2と、スリーブ部3とを備える。
モジュール本体部2の筺体は、セラミック製の矩形枠6の底部に、放熱性のよい金属から成るベース7が接続され、頂部に金属リング8を介してリッド9がシームシールにより接合されて成る。
モジュール本体部2の内部にはキャリア部材10を介して半導体レーザ素子(LD:Laser Diode)11が搭載され、また、LD11の温度調節を行う電子冷却器12の放熱板が、ベース7の面に平行に接するように搭載される。この他、集光レンズとしての非球面レンズ13及び反射ミラー14等の光学経路を形成する部品等が搭載される。
また、リッド9は、スリーブ部3が結合される筒状部9aを有し、筒状部9aの根元には光学窓9bが設けられており、該光学窓がガラス板9cで塞がれている。
スリーブ部3は、光ファイバケーブルに取り付けられた光コネクタのフェルールをガイドするもので、スリーブ4と、Jスリーブ5を有する。
【0016】
スリーブ4は、上記光コネクタが着脱可能に嵌合される形状で、スタブホルダ4aとスリーブシェル4bとから筒状の外形が構成されている。スタブホルダ4aは、ファイバスタブ4cを保持固定しており、該ファイバスタブ4cの外周に嵌合するようにフェルール位置決めのための割スリーブ4dが配されている。スリーブシェル4bは、光コネクタのフェルールを割スリーブ4d内にガイドすると共に割スリーブ4dを保護するものである。
【0017】
Jスリーブ5は、その嵌合部5aをリッド9の筒状部9aに嵌合し、モジュール本体部2内のLD11とスリーブ部材3内のファイバスタブ4cとの光軸方向(Z方向)の調心が行われた後、YAGレーザ溶接等により固定される。Jスリーブ5の接合部5bには、スリーブ部4のスタブホルダ4aの下端面が接合され、XY方向の調心が行われた後、YAGレーザ溶接等により固定される。
【0018】
上述の部材から構成された光モジュール1は、LD11から出射された信号光は、実装面と平行な方向に出射された後、非球面レンズ13を透過し、反射ミラー14により反射され、出射方向と直交する方向に曲げられる。そして、信号光は、リッド9の光学窓9bを通って、スリーブ4内のファイバスタブ4cの端面に露出する光ファイバ端面に入射され、光コネクタを経て外部に送信される。信号光の出射側と反対の背面側からはモニタ光が取り出されモニタ用のフォトダイオード(図示省略)で受光される。
【0019】
この光モジュール1では、リッド9の筒状部9aの根元に設けられた光学窓9bが、図2(A),(B)に示すように、リッド9の中央からオフセットされた位置に設けられている。これは、モジュール本体部2の下面と平行方向に出射された信号光を上面より取り出す構造を採用しつつ、高い光結合を得るために非球面レンズ13を使用する設計では、LD11の直近に非球面レンズ13を配置し位置調整する必要があるため、反射ミラー14を用いて信号光を上方に向けるまでの距離が長くなってしまい、リッド9の中央に光学窓9を設けられないからである。
【0020】
リッド9は、上述のように光学窓9bがリッド9の中央からオフセットされていると共に、筒状部9の形状が、光学窓9bを中心とした従来のものより肉厚の円筒であって、その光学窓9bのオフセット方向側がDカットされた形状となっている。言い換えれば、筒状部9は、光学窓9bのオフセット方向と反対方向側が、上記オフセット方向側に比べて肉厚となっている。
光モジュールが光データリンクに取り付けられた状態において、光コネクタが挿入される時や、Wiggle等の外部応力が加わった時には、筒状部9aの上記オフセット方向と反対方向側に大きな力が加わるが、この大きな力が加わる部分を上述のように肉厚としているので、リッド9の変形を抑制し光結合効率の劣化を防ぐことができる。
【0021】
また、リッド9の筒状部9aの上記オフセット方向側をDカットしたのは、すなわち、オフセット方向側を肉薄としたのは、シームシール時のローラー電極を当てるための平面部を確保するためである。
なお、Dカットの大きさは、リッド9の筒状部9aとスリーブ部3のJスリーブ5とを120°間隔で3方向よりYAGレーザ溶接できるように、Dカットの辺が120°以下になる設計(L<√3R、(辺の長さL、円筒直径R))が好ましい。
【0022】
図3は、リッドの他の例を説明する図であり、図3(A)は斜視図、図3(B)は上面図である。
図3のリッド15は、スリーブ部が取り付けられる筒状部15aの根元に設けられた光学窓15bが、図2のものと同様に、リッド15の中央からオフセットされた位置に設けられている。
しかし、筒状部15aの形状が、図2のものと異なり、光学窓15bのオフセット方向と反対方向側が肉厚となるように該光学窓15bが偏心された円筒形状となっている。
【0023】
このリッド15においても、光コネクタが挿入される時や、Wiggle等の外部応力が加わった時に大きな力が加わる筒状部15aの上記オフセット方向と反対方向側を上述のように肉厚としているので、リッド15の変形を抑制し光結合効率の劣化を防ぐことができる。
また、リッド15の筒状部15aの上記オフセット方向側が肉薄であるため、シームシール時のローラー電極を当てるための平面部を確保できる。
このリッド15では、図2のものに比べ、Dカット部分がないため、YAGレーザ溶接設計の自由度が向上する。
【0024】
図4は、リッドの別の例を説明する図であり、図4(A)は斜視図、図4(B)は上面図である。
図4のリッド16は、スリーブ部材が取り付けられる筒状部16aの根元に設けられた光学窓16bが、図2のものと同様に、リッド16の中央からオフセットされた位置に設けられている。
しかし、筒状部16aの形状が、図2のものと異なり、光学窓16bのオフセット方向と反対方向側が肉厚となるように該光学窓16bが偏心された楕円筒形状となっている。
【0025】
このリッド16においても、光コネクタが挿入される時や、Wiggle等の外部応力が加わった時に大きな力が加わる筒状部16aの上記オフセット方向と反対方向側を上述のように肉厚としているので、リッド16の変形を抑制し光結合効率の劣化を防ぐことができる。
また、リッド16の筒状部16aの上記オフセット方向側が肉薄であるため、シームシール時のローラー電極を当てるための平面部を確保できる。
このリッド16では、筒状部16aに取り付けられるスリーブ部のJスリーブに設けられたアイソレータの最適化のための、Jスリーブ部の回転方向の位置合わせが不要となる。
【0026】
なお、リッド16を用いる光モジュールでは、図1のスリーブ部3のJスリーブ5の嵌合部5aに相当する部分の形状が、リッド16の筒状部16aの楕円筒形状に合わせたものとなる。
【0027】
図5は、リッドの別の例を説明する図であり、図5(A)は斜視図、図5(B)は上面図である。
図5のリッド17は、スリーブ部材が取り付けられる筒状部17aの根元に設けられた光学窓17bが、図2のものと同様に、リッド17の中央からオフセットされた位置に設けられている。
しかし、筒状部17aの形状が、図2のものと異なり、光学窓17bのオフセット方向と反対方向側が肉厚となるように該光学窓17bが偏心された位置に設けられた角筒形状となっている。
【0028】
このリッド17においても、光コネクタが挿入される時や、Wiggle等の外部応力が加わった時に大きな力が加わる筒状部17aの上記オフセット方向と反対方向側を上述のように肉厚としているので、リッド17の変形を抑制し光結合効率の劣化を防ぐことができる。
また、リッド17の筒状部17aの上記オフセット方向側が肉薄であるため、シームシール時のローラー電極を当てるための平面部を確保できる。
このリッド17では、筒状部17aに取り付けられるスリーブ部のJスリーブに設けられたアイソレータの最適化のための、Jスリーブの回転方向の位置合わせが不要となるだけでなく、肉厚の部分を多く確保できるため、強度が高い。
【0029】
なお、リッド17を用いる光モジュールでは、図1のスリーブ部3のJスリーブ5の嵌合部5aに相当する部分の形状が、リッド17の筒状部17aの角筒形状に合わせたものとなる。
【符号の説明】
【0030】
1…光モジュール、2…モジュール本体部、3…スリーブ部、4…スリーブ、5…ジョイントスリーブ(Jスリーブ)、6…矩形枠、7…ベース、8…金属リング、9,15,16,17…リッド、9a,15a,16a,17a…筒状部、9b,15b,16b,17b…光学窓、11…LD、13…非球面レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コネクタのフェルールをガイドするスリーブ部が、光電変換素子を内蔵するモジュール本体部のセラミック枠を用いた筺体から突出する筒状部に、取り付けられて成り、前記筒状部の根元に設けられた光学窓が中央からオフセットされた位置に設けられた光モジュールであって、
前記筒状部は、前記光学窓のオフセット方向側より、前記オフセット方向側と反対側が肉厚であることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記筒状部の形状は、前記光学窓が中心にある円筒の前記オフセット方向側をDカットした形状であることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記筒状部の形状は、前記光学窓が偏心された位置に設けられた円筒形状であることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記筒状部の形状は、前記光学窓が偏心された位置に設けられた楕円筒形状であることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記筒状部の形状は、前記光学窓が偏心された位置に設けられた角筒形状であることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−41008(P2013−41008A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176451(P2011−176451)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】