説明

光偏向装置、光学走査装置、及び画像形成装置

【課題】使用環境や組付時の応力等による結像性能への影響が低減される光偏向装置、光学走査装置、及びこれらを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】レーザビームを偏向する反射面を有する単結晶シリコンからなるプレート部材61を、プレート部材61の被支持部74の挟持面にならって当接部5の角度を変えるように回転可能に構成された当接部材2を有する固定具1により固定する、あるいは、略球体状の弾性部材12を介して固定具11により固定する、もしくは、プレート部材61に弾性部材22を一体化してそれを固定具21で固定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LBPやデジタル複写機、デジタルFAX等の画像形成装置において、レーザビームを用いて光書き込みを行う光偏向装置、光学走査装置、及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学走査装置には、揺動するミラーを具備した光偏向装置を用いたものが様々提案されている。これら様々な提案の中には揺動するミラーを接着固定しているものがある(例えば、特許文献1参照)。また、トーションバネ(ねじりバネ)の両端部にネジ止め用の孔が設けられているものがある(例えば、特許文献2参照)。また、揺動するミラーをバネ固定しているものがある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−179053号公報
【特許文献2】特開平09−329758号公報
【特許文献3】特開2002−244071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例では以下のような欠点があった。特許文献1の例では揺動するミラーの材質は絶縁基板を用いており、例として水晶基板が挙げられている。特許文献2の例では揺動するミラーの材質はTi-Ni系の形状記憶合金を用いており、また、特許文
献3の例ではステンレス板を用いている。ミラーを共振駆動する光学走査装置では、ミラーは以下の特性を有することが望ましい。(1)共振周波数が高い。(2)走査角が大きい。(3)駆動時にミラーがたわみにくい。(4)可能な限り小型。(5)高い信頼性。これら観点を考
慮すると、(1)軽量かつ引っ張り強度が強い。(2)さび難く、溶け難い。(3)理論上金属疲
労が無く、耐久性に優れている。(4)半導体プロセスによって製造することにより容易に
精度の良い加工が可能。以上の長所を持っている単結晶シリコンが材質としてより好適である。しかし、特許文献1で示されているように単結晶シリコンを接着固定すると、樹脂からなる接着剤では水分・温度に対する影響を受けやすいため、高温高湿環境などにおいて接着剤部分が膨張し、結果としてミラー姿勢が崩れ、結像性能が悪化してしまう。また、高温高湿環境から常温常湿に戻した後も、接着剤が元の形状に戻るとは限らない。熱履歴による接着剤の変形が残ると、崩れたミラーの姿勢が戻らず、結像性能は悪化したままであり、光学走査性能を低下させてしまう恐れがある。材質に単結晶シリコンを用いた場合、単結晶シリコンは脆性材であるため非常に割れや欠けを生じやすい。そのため、特許文献2や特許文献3で示されるように、ネジやバネによって固定した場合には、その応力により単結晶シリコンが割れて破損しやすい。なぜならば、ネジやバネによってかかる荷重は当接面に対し必ずしも等分布荷重とはならず偏りが生じるためで、その局部的な荷重が単結晶シリコンに破損を生じさせるためである。さらに、ネジやバネが単結晶シリコンに接してから単結晶シリコンの位置が固定されるまでの間に、厳密に言うと垂直方向以外の荷重も発生する。その応力により単結晶シリコンの位置が所望の位置からずれてしまう。
【0005】
本発明は、使用環境や組付時の応力等による結像性能への影響が低減される光偏向装置、光学走査装置、及びこれらを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る光偏向装置は、レーザビームを反射する反射面を有するとともに共振振動により揺動して前記反射面の角度を変えるように構成された可動子と、前記可動子を揺動可能に支持するねじりバネと、前記ねじりバネの前記可動子を支持する側とは反対側に設けられた被支持部と、を備えた、単結晶シリコンから成るプレート部材と、前記被支持部を挟持することにより前記プレート部材を保持する支持部材と、を備えた光偏向装置において、前記支持部材は、前記プレート部材の前記被支持部の一方の面に当接する第1支持部材と、前記プレート部材の前記被支持部の他方の面に当接する当接部と略球面状の表面を有する略球状部とを備えた当接部材、前記略球面状の表面と摺動自在に接触するとともに前記略球状部を収容可能な収容凹面を有し前記当接部材を回転自在に保持する球受部、及び前記当接部材の前記当接部を前記プレート部材の前記被支持部の他方の面に押し付ける付勢力を発生させるバネ部、を備え、前記当接部材の前記当接部を前記他方の面に押し付けながら前記第1支持部材に固定される第2支持部材と、を有することを特徴とする。
【0007】
あるいは、上記目的を達成するために、本発明に係る光偏向装置は、レーザビームを反射する反射面を有するとともに共振振動により揺動して前記反射面の角度を変えるように構成された可動子と、前記可動子を揺動可能に支持するねじりバネと、前記ねじりバネの前記可動子を支持する側とは反対側に設けられた被支持部と、を備えた、単結晶シリコンから成るプレート部材と、前記被支持部を挟持することにより前記プレート部材を保持する支持部材と、を備えた光偏向装置において、前記支持部材は、前記プレート部材の前記被支持部の一方の面に当接する第1支持部材と、前記プレート部材の前記被支持部の他方の面に当接する弾性部材、及び前記弾性部材を前記他方の面に押し付ける付勢力を発生させるバネ部、を備え、前記他方の面との間で前記弾性部材を圧縮させながら前記第1支持部材に固定される第2支持部材と、を有し、前記弾性部材における前記プレート部材の前記被支持部の他方の面及び前記第2支持部材との接触面の少なくとも一方は、略球面状であることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る光学走査装置は、レーザビームを発する光源と、前記レーザビームを偏向する上記の光偏向装置と、前記光偏向装置によって偏向されたレーザビームを、感光体上に結像する結像光学系と、前記光源と前記支持部材と前記結像光学系とを一体に保持する光学箱と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、上記の光学走査装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用環境や組付時の応力等による結像性能への影響が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光偏向装置を具備した画像形成装置の構成を示す断面図。
【図2】本発明の光偏向装置を具備した光学走査装置の構成を示す斜視図。
【図3】本発明の光偏向装置の一部の構成を示す斜視図。
【図4】本発明の光偏向装置の動作を説明する図。
【図5】本発明の光偏向装置を示す斜視図及び組立工程を説明する図。
【図6】本発明の光偏向装置の重要部品の斜視図及び断面図。
【図7】本発明の光偏向装置の組立工程を説明する断面図。
【図8】本発明の光偏向装置を示す斜視図及び組立工程を説明する図。
【図9】本発明の光偏向装置の組立工程を説明する断面図。
【図10】本発明の光偏向装置の重要部品の斜視図。
【図11】本発明の光偏向装置を示す斜視図及び組立工程を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施例に限定する趣旨のものではない。
【0013】
<実施例1>
図1は、本発明の光学走査装置を備えた画像形成装置の構成を示す断面図である。画像
情報に基づいて変調されたレーザビームLは、光学箱31から出射し、感光ドラム32面上を
走査されて潜像を形成する。この潜像は、一次帯電器33によって一様に帯電している感光ドラム32面上に形成されており、現像器34によって可視像化される。感光ドラム32面上に形成された画像は、転写帯電ローラ35によって転写材36に転写された後、定着器37で熱定着され、排紙ローラ38等によって装置外に出力される。
【0014】
図2は、上記画像形成装置に具備された光学走査装置の構成を示す斜視図である。本発
明の光学走査装置は、概略、光源と、該光源が発したレーザビームを偏向する光偏向装置と、偏向されたレーザビームを感光体上に結像する結像光学系と、を備える。これら光源、光偏向装置、及び結像光学系は、光学箱31によって一体的に保持される。すなわち、光源としてのレーザユニット(光源装置)41から取り出されたコリメート光は、光偏向装置42によって偏向走査される。その後、コリメート光は、Fθレンズ43、折り返しミラー44を順に経由し、最終的に感光ドラム32表面に到達する(一点鎖線)。また、コリメート光は、Fθレンズ43により、感光ドラム32幅内で最適に絞り込まれたビームに成形され、走査される。これと共に、走査ビームの一部は、BDミラー45により反射されてBDセンサ46により光検知される。BDセンサ46は出力信号を発し、BDセンサ46からの出力信号を基準に走査回毎の書き込み信号を同期させる。これにより、ビームの書き込み位置ズレが防止される。また、光偏向装置42の反射面の倒れ誤差による感光ドラム32上の副走査方向(光軸及びビ
ームの走査方向と直角をなす方向、転写材36の送り方向)のビーム位置ずれを防止するた
めに、シリンドリカルレンズ47を用いている。シリンドリカルレンズ47は、レーザユニット41から取り出されたビームを、光偏向装置42の反射面上において副走査方向に圧縮して結像した線像とする。これに加えて、光偏向装置42の反射面と感光ドラム32面上は副走査方向では共役関係とする。
【0015】
図3は、本発明の光学走査装置に具備された光偏向装置42の構成の一部を示す斜視図で
ある。プレート部材(素子)61は、単結晶シリコンのウェハをエッチング加工して製作されている。プレート部材61は、2つの可動子62,63を備える。これら可動子62,63は、ねじりバネ64,65によってそれぞれ支持されている。一方の可動子(駆動子)63には棒状の永久磁
石(マグネット)66が接着固定されており、他方の可動子(反射子)62の表面はアルミ等が蒸着されている。このアルミ等が蒸着された表面は、レーザビームを反射するのに好適な反射膜となっている。レーザビームは矢印La(二点鎖線)で示すように偏向される。これら2つの可動子62,63やねじりバネ64,65等からなるプレート部材61は、複数の固有振動モードを有しており、本実施例では走査周期に応じた基本周波数と基本周波数の2倍の周波数の振動モードを有する。これら振動モードでは、2つの可動子62,63が揺動軸Oまわりにねじり振動する。
【0016】
アクチュエータ67は、鉄心(コア)68に巻線(コイル)69を周回させたものである。光偏向装置42の駆動時は、巻線69に通電することにより、巻線69と可動子63に実装された永久磁石66との間でローレンツ力が生じ、可動子63を回動させるトルクが働く。電流をプレート部材61の振動モードに合わせて変調させることにより、プレート部材61の可動部が共振振
動する。ここで可動部とは可動子62,63、ねじりバネ64,65からなる部分を指す。
【0017】
図4は、本発明の光学走査装置に具備された光偏向装置42の動作を説明するグラフであ
る。上記光偏向装置42は、プレート部材61の複数の固有振動数(基本と2倍)を重ね合わせて駆動される。レーザビームの偏向走査に用いられる可動子62の振幅角度をθ、時間をtとすると、下記の式で表される挙動を示す。
θ(t)=A1sin(ωt)+A2sin(2ωt+φ)+A3 [数式1]
なお、数式1において、A1:基本周波数(基本波)における振幅、A2:基本周波数の2
倍(倍波)における振幅、ω:基本周波数、φ:基本波と倍波の位相差、A3:静的な角度誤差、例えば可動子62が振動していない時の姿勢の角度誤差である。なお、図4ではφ=0,A3=0である。
図4は、2つの可動子62,63が同じ方向へ同位相で振動する基本波成分と、2つの可動子62,63が互い違いに逆位相で且つ基本波の2倍の周波数で振動する倍波成分と、これら2
成分を重ね合わせた可動子62の実際の挙動である合成波の3つを示めす。
ここで各パラメータを適切に設定することにより、1周期内のある範囲において数式2
として近似可能な部分が合成波形に現れる。なお、数式2において、k,α:いずれも定数
である。
θ(t)≒kt+α [数式2]
この範囲では数式3の関係が成り立つので、可動子62は略等角速度で振動することとな
り、図3におけるレーザビームLaはある時間範囲では略等角速度で偏向走査される。
dθ(t)/dt=k [数式3]
【0018】
図5(a)は、本発明の光偏向装置42の斜視図であり、図5(b)は、その分解斜視図である。光偏向装置42は、ホルダ70に対しアクチュエータ67が組み付けられており、固定具1によ
りプレート部材61がホルダ70に固定されている。プレート部材61は、ねじりバネ65が可動子63等を揺動可能に支持する側とは反対側に、固定部(被支持部)72を備える。ホルダ70は、プレート部材61の固定部72の一方の面が当接される座面74を有している。ホルダ70は、光学箱31に固定される。これらは図5(b)の一点鎖線や矢印Bで示すように組み立てられる
。すなわち、プレート部材61は、固定部72が第1支持部材としてのホルダ70の座面74と第2支持部材としての固定具1とにより挟まれることで、固定され保持される。固定具1は、穴4をホルダ70の係止部73に掛けることでホルダ70に固定される。
【0019】
図6を参照して、固定具1の構造を説明する。図6(a)は、固定具1の斜視図である。固定
具1は、当接部材としての当接球2と、当接球2を保持する保持部としての球受部7と、当接球2をプレート部材61の固定部72に押し付ける付勢力を発生させるバネ部3と、を備える。当接球2は、全体の概略形状は略球体状であり、一部切り落とされて部分的に平面部が形
成されたような構成となっている。かかる平面部が、プレート部材61の固定部72における他方の面に当接する当接部5となる。また、当接部5を除いた部分が略球状部8となる。当
接球2の材料は、例えばステンレスや樹脂製等である。球受部7には、略球状部8の形状に
対応した略球面状の収容凹面を有し、略球状部8を収容可能に構成された凹部10が設けら
れている。当接球2の略球状部8と球受部7の凹部10とは、互いに滑らかに摺動自在に接触
する構成となっている。これにより、当接球2は、球受部7に対して回転自在に保持されることになる。当接球2は、バネ部3の弾性変形可能な範囲内において、球受部7とともに、
傾いたり、回転や旋回、揺動等の変位が可能であり、種々の姿勢に変化可能である。また、当接球2は、略球状部8と凹部10との摺動により、球受部7に対して矢印Cで示すように任意の方向に回転可能である。図6(b)は、図6(a)の図中一点鎖線を矢印D方向から見た断面
図である。また、図中iとjは、当接球2が球受部7からはずれないような寸法に設計されている。すなわち、当接球2の略球状部8が凹部10の開口縁部にしっかりと引っ掛かるように、iに十分な厚みを持たせている。さらに、図には示していないが、当接球2は、当接部5
の当接面が図中に示した座標のy-z平面と略平行となるように保持される構造となってい
る。当接部5を平行状態に保つ構造としては、特に限定されるものではないが、例えば、
球受部7の凹部10の一部に出っ張りを設け、その出っ張りに対して隙間を持った逃げ部を
当接球2の略球状部8に形成する構造が挙げられる。これにより、当接部5の当接面は座標y-z平面と略平行に保たれ、かつ当接球2は前述の隙間分だけ自由に回転する。
【0020】
次に、図7を参照して、固定具1によってプレート部材61を固定する過程を説明する。図7は、光偏向装置42を図5(a)の図中矢印A-A方向から見た断面図である。図7(a)は、固定具1がプレート部材61に当接する直前の状態を示す。図7(b)は、固定具1がプレート部材61に当接した瞬間の状態を示す。図7(c)は、固定具1がプレート部材61を固定した後の状態を
示す。まず、プレート部材61の固定部72を座面74に対して位置決めする。位置決めの方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、座面74に固定部72を突き当てる突き当て形状(計3箇所)を設けて位置決めする方法が考えられる。あるいは、治具を用いて
プレート部材61とホルダ70を正確に位置決めした状態で、座面74と固定部72の位置を決める方法が考えられる。図7(a)に示すように、当接球2は当接部(平面部)5の当接面が任意の角度で保持されているため、必ずしもプレート部材61の固定部72の他方の面と平行でない。この姿勢のまま、図7(b)に示すように、当接球2の当接部5がプレート部材61の固定部72と接触すると、当接球2は球受部7に対して滑らかに回転し、当接部5の当接面がプレート
部材61の固定部72の他方の面と平行になる。最終的には、図7(c)に示すように、当接部5
がプレート部材61の固定部72に面接触し、矢印mに示すように、固定部72に対して垂直方
向に荷重を加え固定する。よって、プレート部材61の固定部72に局所的に強い応力を与えることなく、プレート部材61の固定部72に対して座標y,z方向に荷重をほとんど与えるこ
となく固定できる。すなわち、当接球2の球受部7に対する回転によって、プレート部材61の平面度や各部材の取付精度等の各種の寸法誤差が吸収され、プレート部材61を精度よく安定的に保持することが可能となる。
【0021】
本実施例1では、単結晶シリコンからなるプレート部材61を、プレート部材61の被支持
部74の挟持面にならって当接部5の角度を変えるように回転可能に構成された当接球2を有する固定具1で固定している。これにより、ネジやバネで直接プレート部材61を固定する
場合と比べ、局所的な応力による割れ・欠け及びプレート部材61の位置ズレを防ぐことが出来、より安定した組立が可能となる。また、従来例と比して、水分・温度に対してミラーの組立後の寸法安定性が高くなる。なお、固定部72を2つの当接面で挟持し、当接面に
垂直な規制面等は特に設けていないが、単結晶シリコンであるプレート部材61は、軽量であるため、振動や衝撃に対して当接面に沿った方向の位置ズレ等を十分に抑制して固定することができる。
【0022】
<実施例2>
図8を参照して、本発明の実施例2の光偏向装置42について説明する。図8(a)は光偏向装置42の斜視図であり、図8(b)はその分解斜視図である。実施例1と説明の重複する部分に
ついては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0023】
光偏向装置42は、ホルダ70に対しアクチュエータ67が組み付けられており、固定具11が、略球体状の弾性部材12を介してプレート部材61をホルダ70に固定している。これらは、図8(b)の一点鎖線や矢印Fで示すように組み立てられる。すなわち、プレート部材61は、
固定部(被支持部)72が弾性部材12とホルダ70の座面74により挟まれることで、固定され保持される。固定具11は、穴14をホルダ70の係止部73に掛けることでホルダ70に固定される。実施例1と異なるところは、第2支持部材としての固定具11が、弾性部材12を介してプレート部材61を第1支持部材としてのホルダ70との間で挟持固定していることである。
【0024】
次に図9を参照して、固定具11によりプレート部材61を固定する過程を説明する。図9は、光偏向装置42を図8(a)の図中一点鎖線を矢印E-E方向から見た断面図である。図9(a)は
、弾性部材12がプレート部材61に当接する直前の状態を示す。図9(b)は、弾性部材12がプレート部材61に当接した瞬間の状態を示す。図9(c)は、固定具11が弾性部材12を介してプレート部材61を固定した後の状態を示す。
【0025】
図9(a)に示すように、弾性部材12は略球体形状であり、弾性部材12の弾性係数は固定具11の板バネ部9の弾性係数より小さい。また、弾性部材12の材料としては、熱可塑性樹脂
、エラストマー等が例示できる。固定具11には、弾性部材12の位置決めのために凹面13が設けてあり、弾性部材12を保持している。図中Gは、矢印Kから見た固定部72の弾性部材12が接触する箇所をハッチングで示している。図9(a)では、弾性部材12はプレート部材61に接していないので、ハッチングで示す箇所はない。図9(b)は弾性部材12が固定部72に当接した瞬間であり、図中Gに示すように、1点で接する。図9(b)から図9(c)に移行する過程
において、弾性部材12とプレート部材61が接する面積は、図9(b)のGで示した一点を中心
に円状(放射状)に拡がり、最終的には図9(c)のGのようになる。
【0026】
本実施例は、固定具11及びプレート部材61に接触する弾性部材12の少なくとも一方の接触面が、略球面状であることを特徴とするものである。弾性部材12は、略球面状の接触面が相手面の角度にかかわらず点接触するとともに弾性変形を生じる。これにより、プレート部材61の平面度や各部材の取付精度等の各種の寸法誤差が吸収され、プレート部材61を精度よく安定的に保持することが可能となる。したがって、下記変形例1,2のような構成
であっても本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0027】
<変形例1>
図10を参照して、実施例2の変形例1について説明する。図10は、固定具11の斜視図である。本変形例は、弾性部材12が固定具11に一体化された構成となっている。すなわち、図10に示すように、実施例2の固定具11と弾性部材12とが、弾性部16とバネ部17が一体に形
成された固定具15に置き換えられている。この場合、弾性部16としては、紫外線硬化型樹脂、エポキシ樹脂、エラストマー等が考えられる。
【0028】
<変形例2>
図11を参照して、実施例2の変形例2について説明する。図11(a)は、光偏向装置42の斜
視図であり、図11(b)は、その分解斜視図である。本変形例は、図11(a)及び図11(b)に示
すように、弾性部材12をプレート部材61に一体化した構成となっている。本構成では、プレート部材61の固定部72に半球状の弾性部22を設けたものとなっている。弾性部材22の弾性係数は、必ずしも固定具21の板ばね部23より小さい必要はない。弾性部22としては、弾性部16と同様、紫外線硬化型樹脂、エポキシ樹脂、エラストマー等が考えられる。
【0029】
実施例2では、よりシンプルかつ安価な構成により、実施例1と同様の効果を得られる。なお、上記各実施例ではプレート部材61をホルダ70に固定する構成としたが、光学箱31に直接固定する構成としてもよい。さらに、上記各実施例の固定具1,11,15,21は、ネジ等によってホルダ70に固定される構成としてもよい。その他、上記各実施例の各部の形状及び構造は、本発明を実施するに当たっての具体例の一部を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0030】
1…固定具。2…当接球。3…バネ部。5…当接部。7…球受部。8…略球状部。9…板バネ
部。10…凹部。12…弾性部材。61…プレート部材。62…可動子(反射子)。63…可動子(駆動子)。64…ねじりバネ(内バネ)。65…ねじりバネ(外バネ)。70…ホルダ。72…固定部。74…座面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを反射する反射面を有するとともに共振振動により揺動して前記反射面の角度を変えるように構成された可動子と、前記可動子を揺動可能に支持するねじりバネと、前記ねじりバネの前記可動子を支持する側とは反対側に設けられた被支持部と、を備えた、単結晶シリコンから成るプレート部材と、
前記被支持部を挟持することにより前記プレート部材を保持する支持部材と、
を備えた光偏向装置において、
前記支持部材は、
前記プレート部材の前記被支持部の一方の面に当接する第1支持部材と、
前記プレート部材の前記被支持部の他方の面に当接する当接部と略球面状の表面を有する略球状部とを備えた当接部材、前記略球面状の表面と摺動自在に接触するとともに前記略球状部を収容可能な収容凹面を有し前記当接部材を回転自在に保持する球受部、及び前記当接部材の前記当接部を前記プレート部材の前記被支持部の他方の面に押し付ける付勢力を発生させるバネ部、を備え、前記当接部材の前記当接部を前記他方の面に押し付けながら前記第1支持部材に固定される第2支持部材と、
を有することを特徴とする光偏向装置。
【請求項2】
レーザビームを反射する反射面を有するとともに共振振動により揺動して前記反射面の角度を変えるように構成された可動子と、前記可動子を揺動可能に支持するねじりバネと、前記ねじりバネの前記可動子を支持する側とは反対側に設けられた被支持部と、を備えた、単結晶シリコンから成るプレート部材と、
前記被支持部を挟持することにより前記プレート部材を保持する支持部材と、
を備えた光偏向装置において、
前記支持部材は、
前記プレート部材の前記被支持部の一方の面に当接する第1支持部材と、
前記プレート部材の前記被支持部の他方の面に当接する弾性部材、及び前記弾性部材を前記他方の面に押し付ける付勢力を発生させるバネ部、を備え、前記他方の面との間で前記弾性部材を圧縮させながら前記第1支持部材に固定される第2支持部材と、
を有し、
前記弾性部材における前記プレート部材の前記被支持部の他方の面及び前記第2支持部材との接触面の少なくとも一方は、略球面状であることを特徴とする光偏向装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、
前記第2支持部材に一体化されており、
前記プレート部材の前記被支持部の他方の面との接触面が略球面状であることを特徴とする請求項2記載の光偏向装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、
前記プレート部材に一体化されており、
前記第2支持部材との接触面が略球面状であることを特徴とする請求項2記載の光偏向装置。
【請求項5】
前記弾性部材の弾性係数は、前記第2支持部材の前記バネ部の弾性係数より小さいことを特徴とする請求項2〜4のいずれか記載の光偏向装置。
【請求項6】
レーザビームを発する光源と、
前記レーザビームを偏向する請求項1〜5のいずれか記載の光偏向装置と、
前記光偏向装置によって偏向されたレーザビームを、感光体上に結像する結像光学系と、
前記光源と前記支持部材と前記結像光学系とを一体に保持する光学箱と、
を有することを特徴とする光学走査装置。
【請求項7】
請求項6記載の光学走査装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−276634(P2010−276634A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126038(P2009−126038)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】