説明

光反応器

【課題】光触媒活性材料及び光源からの光ができる限り完全に利用される光触媒反応を実施するための反応器を提供すること。
【解決手段】上記課題は、液体又はガス流の光触媒処理のための反応器であって、処理されるべき前記液体又はガス流が通過する管を含み、
その管内に、少なくとも1個の光源、少なくとも一種の光触媒活性材料を備える少なくとも1個の平面手段M1、及び前記少なくとも1個の光源より放射される放射線を反射する少なくとも1個の平面手段M2が配置され、
光源から射出される光が少なくとも1個の手段M2により光触媒活性材料で反射するように、少なくとも1個の平面手段M2の反射面と前記管の内壁との角度が0°以上にされていることを特徴とする反応器によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体又はガス流の光触媒処理のための反応器であって、処理されるべきその液体又はガス流が通過する管を含み、その管内に、少なくとも1個の光源、少なくとも一種の光触媒活性材料を備える少なくとも1個の平面手段M1、及び少なくとも1個の光源より放射される放射線を反射する少なくとも1個の平面手段M2が配置され、
光源から射出される光が少なくとも1個の平面手段M2により光触媒活性材料で反射するように、少なくとも1個の平面手段M2の反射面と前記管の内壁との角度が0°以上にされている反応器、
並びに、そのような反応器内で実施される、光照射による液体又はガス流の光触媒処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒反応、特に、液体又はガスの光触媒処理が実施される反応器は先行技術から知られている。
【0003】
US2001/0007507A1には、UV伝導板の側面が光触媒活性材料で被覆されたことを特徴とする、光触媒反応を実施するための反応器が記載されている。浄化されるべき液体又はガスがそれらの板の少なくとも1個に対して平行に配される。UV光源を用いて、その後、その板の端面から、紫外線がその板に平行に放射される。その板の二つの側面の間の合計の反射を用いて、この紫外線は触媒被覆を通って浄化されるべき液体又は浄化されるべきガスの方向に偏向する。その光が浄化されるべき媒体との接触部位までその板及び触媒被覆を通過しなければならないことのために、その光はますます強度を失い、そして光触媒活性が減少する。
【0004】
US5,683,589には、光触媒反応を実施するための反応器が開示されている。この反応器は、UV光源が内側の管に存在する、同心円状に配置された2個の管を含む。内側の管と外側の管の間の領域には孔を有する円錐形の薄板が配され、薄板上には光触媒が施されている。その薄板の円錐状の配置を用いて、その表面は紫外線で照射される。US5,683,589には、加えて、外側の管の内部が反射のために被覆され得ることが開示されている。その記載された配置では、外側の管の反射被覆の場合であっても、円錐状触媒薄板が相互に遮られるために、基本的にそのコーンの内面が照射され、その触媒表面は不十分に利用されるのみである。
【0005】
EP1946781A1には、液体及びガスの殺菌のための反応器が開示されている。その反応器は、その液体又は気体が通過する管からなる。光触媒活性材料を有する偏向板が、液体又は気体の流れ方向に対して70〜110°の角度でその管内に配置されている。その管の外側に、紫外線で偏向板を照射するUV光源が配置されている。EP1946781A1には、反応器内に配置される反射面が開示されていない。
【0006】
その反応器は、光触媒反応、特に、液体の光触媒浄化のための反応を実施するための先行技術に記載されており、浄化されるべき液体中で分解されるべき物質、光触媒活性材料、及び紫外線が十分に大きな程度でお互いに接触することを保証できないので、光触媒活性材料が完全に利用されないという不具合を有する。先行技術から知られる反応器構築の方法のために、例えば、UV光源から出る紫外線の全てが光触媒活性材料にあたることは不可能である。浄化されるべき液体流又はガス流から分解されるべき物質、光触媒活性材料、及び紫外線の間の接触が可能な限り激しいときのみ、分解されるべき物質に関して高い分解率が達成され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US2001/0007507A1
【特許文献2】US5,683,589
【特許文献3】EP1946781A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ、光触媒活性材料及び光源からの光ができる限り完全に利用される光触媒反応を実施するための反応器を提供することが本出願の目的である。更なる目的は、小さい大きさであっても、処理されるべき大量の流体を処理し得る反応器を提供することである。本発明によると、これは、発生した放射線、特に、紫外線が、反応器内に存在するできる限り全ての光触媒活性材料に到達することにより達成されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、液体又はガス流の光触媒処理のための反応器であって、処理されるべきその液体又はガス流が通過する管を含み、その管内に、少なくとも1個の光源、少なくとも一種の光触媒活性材料を備える少なくとも1個の平面手段M1、及び少なくとも1個の光源により放射される放射線を反射する少なくとも1個の平面手段M2が配置され、
光源から照射される光が少なくとも1個の手段M2により光触媒活性材料で反射するように、少なくとも1個の平面手段M2とその管の内壁との角度が0°以上にされていることを特徴とする反応器に係る本発明によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の特に好ましい実施の形態に係る反応器を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による反応器内で処理されるべきその液体又はガス流は、当業者に公知の全ての液体又は気体から選択することができる。
【0012】
それゆえ、本発明は、一実施の形態では、処理されるべき液体又はガス流が液体であることを特徴とする本発明に係る反応器に関する。加えて、本発明は、他の実施の形態では、処理されるべき液体又はガス流が気体であることを特徴とする本発明に係る反応器に関する。特に好ましくは、本発明に係る反応器内では、汚染物質含有水又は汚染物質含有ガスが処理される。特に好ましくは、その処理は浄化を含む。
【0013】
それゆえ、本発明によると、“流体、特に、液体又は気体の光触媒処理”が、妨害若しくは有毒物質が存在する廃水又は排気ガスが浄化される手段に好ましく採用される。本発明に係る反応器内では、廃水又は排気ガスが浄化される、すなわち、浄化後に妨害物質の濃度は以前より低下する。本発明の文脈において、処理されるべき汚染物質含有流は、例えば、製油所、製紙工場、鉱山、食品分野での、若しくは化学産業における工業プラント、スポーツ施設、飲食店、病院等の民間企業から生じ得るか、又は天然由来で生じ得る。処理されるべき汚染物質含有流としての排気ガスの場合では、それらはまた燃焼プラント又は内燃機関から生じ得る。一般に、廃水又は排気ガスから除去されなければならない妨害物質は、もしそれらが廃水若しくは排気ガス中に残留したままにした場合に、毒性作用、有害臭、廃水若しくは排気ガスの着色等のために妨害活性を示す有機又は無機物質から選択される。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態では、浄化は、有機酸、ハロゲン化有機物質、芳香族若しくは脂肪族有機物質、アミン、オリゴマー若しくはポリマー材料、アルコール、エーテル、エステル、糖、生分解性物質若しくは非生分解性物質、界面活性剤、アンモニア、一酸化炭素、窒素酸化物、塩、金属塩、重金属、及びこれらの混合物等の有機又は無機化合物の化学分解を介して進行する。
【0015】
好ましくは、有機化合物から選択される汚染物質含有流から本発明によって除去することができる物質は、有機酸、ハロゲン化有機物質、芳香族若しくは脂肪族有機物質、アミン、オリゴマー若しくはポリマー材料、アルコール、エーテル、エステル、糖、生分解性物質若しくは非生分解性物質、界面活性剤、一酸化炭素、窒素酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0016】
一般に、本発明に係る反応器は管を含む。一般に、この管は、円、多角形、楕円、非対称等の、当業者に公知の任意の基礎部(base)を有し得る。好ましい実施の形態では、本発明に係る反応器は、好ましくは、円形断面を有する管、すなわち、円筒である。また、本発明によると、2個以上のこれらの管が、お互いに隣接して、好ましくは並列に、例えば、管束として運転されることも可能である。本発明に係る反応器の特に好ましい実施の形態では、処理されるべき液体又はガス流はその反応器を連続的に流れる。
【0017】
反応器の直径は、通常、50mm〜500mmであり、好ましくは80mm〜300mmであり、特に好ましくは100mm〜200mmである。反応器の長さは、通常、処理されるべき液体又はガス流の量及び/又はその中に収容されるUV光源の長さに依存する。一般に、本発明に係る反応器の長さは10cm〜500cmであり、好ましくは40cm〜300cmである。本発明に係る反応器の直径及び長さは、反応器の十分に高い処理出力の達成を保証するために当業者により選択され得る。そのような複数の反応器は、処理されるべき流れの一定量を処理の所望の程度、特に、所望の清浄度まで処理するために、必要に応じて連続で及び/又は並列に接続され得る。
【0018】
一般に、本発明に係る反応器は、反応器を運転するために必要な供給部及び出口部等、運転のために必要な全ての接続を有する。特に、本発明に係る反応器は、処理されるべき液体又はガス流をその反応器へと供給する少なくとも1個の供給部を有する。加えて、本発明に係る反応器は、浄化された液体又はガス流が反応器から除去される少なくとも1個の出口部を有する。また、本発明に係る反応器は、圧力、温度、流速、pH、放射線強度等の種々の工程パラメータを決定するための測定器等、慣用され、且つ当業者に公知の他の装置を有し得る。
【0019】
一般に、本発明に係る反応器内で処理されるべき液体又はガス流は、反応器内においてできる限り完全な処理を可能とする、例えば、0.001m/s〜10m/s、好ましくは、0.01m/s〜0.1m/sの流速を有する。
【0020】
一般に、少なくとも1個の光源、好ましくはUV光源が、本発明による反応器内に、管の範囲内の任意に所望の場所で取り付けられている。好ましい実施の形態では、少なくとも1個の光源がその管の中央に、特に、その管に平行に配置される。本発明によれば、“管の中央”は、管の一方の側からみて管の直径の約40及び60%の空間に位置する領域を意味している。本発明の文脈では、“平行”は、管の長手方向に伸長するどの位置でも、管内に配置された光源が基本的に等しい管壁からの距離を有することを意味する。しかしながら、本発明によれば、光源と管壁の間の距離に対して最大10%までの偏差が存在し得る。これは、例えば、反応器内で、少なくとも1個の光源は完全に直線的には形成されていないか、或いは完全に平行に配向していない場合に生じ得る。
【0021】
本発明によれば、1個の光源又は2個以上の光源を用いることができる。
【0022】
本発明によれば、光触媒活性材料を活性化させるために好適な所望の波長範囲で放射線を放射する、当業者にとって公知の全ての光源、好ましくは、UV光源を用いることができる。本発明によれば、好ましく用いられる“紫外線”は、150〜400nmの波長を有する電磁放射線を意味すると解される。それゆえ、好ましい実施の形態では、波長150〜400nmの紫外線を放射するUV光源が用いられる。
【0023】
本発明によれば、また、光源は、紫外線だけでなく、200〜800nmの波長(λ)を有する光等の他の波長を有する電磁放射線もまた放射する、水銀中圧若しくは高圧ランプ、ブラックライトランプ、重水素若しくはキセノンランプ、昼光ランプ、又はこれらの混合ランプ等の光源を意味すると解される。
【0024】
本発明により使用される少なくとも1個のUV光源は、通常、365nmで、3mmの距離で測定された、0.01〜1000mW/cm2、好ましくは0.1〜500mW/cm2の光強度を有する。
【0025】
少なくとも1個のUV光源の形状は、本発明によれば限定されない。通常、少なくとも1個のUV源は、本発明に係る反応器の重要領域が、紫外線で、好ましくは完全に放射されるように形づくられる。好ましい実施の形態では、UV光源は、基礎部が円形、楕円形、多角形又は非対称形をとり得ることを特徴とする棒状形状である。特に好ましい実施の形態では、円形棒状形状のUV光源が用いられる。好ましい実施の形態では、UV光源は、UV光源を浄化されるべき汚染物質含有流から分離させると同時に紫外線に対して透過性である、石英、プラスチック又はこれらの組み合わせ等の少なくとも一種の材料で取り囲まれる。
【0026】
流体の光触媒処理のための、本発明に係る反応器は、少なくとも1個の光源に加えて、少なくとも一種の光触媒活性材料を備える少なくとも1個の平面手段M1もまた含む。
【0027】
本発明によれば、反応器は少なくとも1個の平面手段M1を含み、好ましくは、本発明に係る反応器は複数の平面手段M1を含む。本発明の文脈では、“平面”は、その対応する手段の幅及び長さがその高さと比較して有意に大きいことを意味するものと解する。
【0028】
反応器内に存在するその手段M1の数は、反応器の長さ、汚染の程度、及び処理されるべき流体の量及び/又は流速に依存する。好ましい実施の形態では、多くの手段M1が反応管内に、特に、お互いに平行に、2個の手段M1の間の距離が好ましくは0.1〜500cm、特に好ましくは1〜100cmであるような方法で配置される。
【0029】
本発明によると、平面手段M1には少なくとも一種の光触媒活性材料が設けられている。とり得る実施の形態では、少なくとも1個の平面手段M1は、球、モノリス、押出成形物又はペレット等の、当業者に公知の全ての形状の光触媒活性成形体の形状で存在するか、或いは、平面手段M1は、被覆等、その表面に少なくとも一種の対応する光触媒活性材料が設けられる。この実施の形態では、本発明によると、少なくとも1個の手段M1の表面全体に少なくとも一種の光触媒材料が設けられることが可能となる。加えて、本発明によると、少なくとも1個の手段M1の表面の一部のみに、例えば、その表面の5〜100%、好ましくは、50〜100%に、少なくとも一種の光触媒活性材料が設けられることもまた可能である。
【0030】
例えば、本発明に係る反応器では、表面が少なくとも部分的に光触媒活性材料で被覆された薄板、例えば、鉄、ステンレス鋼等の金属製の薄板が手段M1として使用される。加えて、光触媒材料で被覆されたハニカム又は発泡体もまた使用され得る。対応する平面手段を光触媒材料で被覆するための方法は、浸し塗り、吹付け塗り等、当業者にとって公知である。
【0031】
それゆえ、本発明はまた、表面の少なくとも一部が光触媒活性材料で被覆された薄板が手段M1として使用されることを特徴とする、本発明に係る反応器に関する。
【0032】
本発明によると、例えば、ペレット又は棒状の形態で光触媒活性材料が存在する空洞を形成する、金属線、プラスチック、ガラス若しくはセラミック織り又は編みの繊維布製等の、平坦な形状で構成された網状体を手段M1として用いることもまた可能である。反応器効率を増大させるために、支持布又は網自体に光触媒活性被覆を設けることができる。
【0033】
それゆえ、本発明は、好ましくは、光触媒活性モノリス、光触媒材料の含まれた押出成形物を有する網状体、又は光触媒材料で被覆されたハニカム若しくは発泡体が手段M1として用いられることを特徴とする、本発明に係る反応器に関する。
【0034】
さらなる好ましい実施の形態では、少なくとも1個の手段M1は孔を有する。この実施の形態では、本発明に係る反応器の運転において、処理されるべき液体又はガス流は手段M1を通って流れる。本発明に係るこの実施の形態における一実施例は、有孔の、少なくとも部分的に少なくとも一種の光触媒活性材料で被覆された薄板等、多孔性である。この実施の形態の好ましい実施例は、流路を備えた平板であり、その平板は、流路の配置が汚染物質含有流の流れを可能とするように、セラミック又は金属のハニカム体モノリスから切り出される。その平板は、好ましくは、少なくとも一種の光触媒活性材料を含むか、或いは少なくとも一種の光触媒活性材料で被覆される。この実施の形態のさらなる好ましい実施例は、光触媒活性材料であるセラミック、金属若しくはプラスチックの多孔性固体発泡体若しくはスポンジ製の平板であるか、或いは光触媒活性材料で被覆された多孔性固体発泡体若しくはスポンジ製の平板である。
【0035】
好ましい孔径及び孔数は、処理されるべき流体の量、汚染の程度及び流速に依存し、当業者によって容易に決定され得る。好ましい実施の形態では、その孔は0.1〜10mm、特に好ましくは1〜5mmの孔径を有する。好ましい実施の形態では、孔の容積は手段M1の合計容積に対して90%未満であり、特に好ましくは70%未満である。
【0036】
本発明によると、存在する少なくとも1個の手段M1は、通常、当業者にとって好適であると思える反応器内の任意の位置に配置され得る。好ましい実施の形態では、少なくとも1個の手段M1は、処理されるべき液体又はガス流の流れ方向に対して60〜130°、好ましくは80〜100°の角度で平面部が配置されている。本発明に係る反応器の好ましい実施の形態では、少なくとも1個の光源が反応管に対して平行に配置されるので、好ましい実施の形態では、少なくとも1個の手段M1は、少なくとも1個の光源に対して60〜130°、好ましくは80〜100°の角度で平坦部が配置されている。
【0037】
本発明に係る手段M1は、まっすぐな表面、又は凸面若しくは凹面等の湾曲した表面を有し得る。
【0038】
一般に、手段M1は、その最大の大きさが反応器の大きさによって定められることを特徴とする、任意の好適な大きさで存在し得る。特に好ましい実施の形態では、手段M1は反応器の直径に対応する大きさを有する。処理されるべき液体又はガス流の流れ方向に対する手段M1の上述の角度に関連して、特に好ましい実施の形態では、これは、少なくとも1個の手段M1が反応器の直径全体に亘って流れ方向に対して垂直に配置されることを意味する。反応器内におけるその少なくとも1個の手段のこの特に好ましい配置は、手段M1が処理されるべき液体又はガス流と十分に接触することを保証する。特に、この実施の形態では、処理されるべき液体又はガス流が少なくとも1個の手段M1を通って、好ましくは、上述の好ましい実施形態を通って流れ得ることが保証されるに違いない。
【0039】
それゆえ、好ましい実施の形態では、本発明は、処理されるべき液体又はガス流が少なくとも1個の手段M1を通って流れることを特徴とする、本発明に係る反応器に関する。
【0040】
本発明によると、一般に、変性若しくは未変性の二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)及びそれらの混合物からなる群から選択される金属酸化物又は半金属酸化物等、当業者に公知の全ての光触媒活性材料を用いることができる。好ましい実施の形態では、変性又は未変性の二酸化チタン(TiO2)が本発明に係る反応器内で光触媒活性材料として用いられる。
【0041】
本発明に係る反応器の好ましい実施の形態では、基本的にアナターゼ変性された変性又は未変性の二酸化チタンが用いられる。“基本的に”は、本発明の文脈では、当業者にとって公知のX線回折測定法に基づいて、少なくとも50%、特に好ましくは、少なくとも60%の二酸化チタンがアナターゼ変性されていることを意味する。二酸化チタンの残りの部分は非晶質の金属酸化物、板チタン石、ルチル変性二酸化チタン、又はこれらの混合物を含む。非常に好ましい実施の形態では、使用される二酸化チタンは、X線回折測定法により決定される、アナターゼ変性中に70%を超える量である。
【0042】
それゆえ、好ましい実施の形態では、本発明に係る反応器内で、二酸化チタンを、好ましくは上述の好ましい実施の形態で含む平面手段M1が用いられるか、或いは二酸化チタンで少なくとも部分的に被覆された薄板が用いられる。
【0043】
さらなる好ましい実施の形態では、光触媒活性材料がペレット又は棒状等の形態で存在する、平坦になるように作られた網状体が手段M1として用いられる。
【0044】
さらなる好ましい実施の形態では、光触媒材料の含まれている押出成形物を有する網状体、又は光触媒材料で被覆されたハニカム若しくは発泡体が、本発明に係る反応器中で手段M1として用いられる。
【0045】
例えば、棒状形状の二酸化チタン光触媒が本発明に係る反応器中で使用され得る。好ましくは、この棒状形状の二酸化チタン光触媒は、BET表面積、細孔容積、メジアン細孔径及び個々の触媒粒子の形状に関して特定の特徴を有する。これらの特定の特徴は、特にこれらの特徴の組み合わせは、特に高い活性、及びまた変わらず高い活性を伴って使用される光触媒の特に長い耐用年数をもたらす。
【0046】
棒状形状は、本発明の文脈によると、使用される光触媒が好ましくは楕円形又は円形の基礎部を有することを意味する。最大拡張でのこの円形の基礎部又は楕円形の基礎部の直径は、通常、0.2〜10mm、好ましくは0.5〜3.0mmである。棒状形状の二酸化チタン光触媒は、通常、0.5〜10mm、好ましくは0.8〜8mm、特に好ましくは1.0〜5.0mmの長さを有する。本発明に係る棒状形状光触媒の直径に対する長さの比は、通常0.05〜50、好ましくは、1.0〜10である。
【0047】
好ましく用いられる棒状形状光触媒は、光触媒活性材料として基本的に二酸化チタンを含む、すなわち、使用されるその光触媒は、通常、少なくとも90質量%の、好ましくは少なくとも95質量%の、特に好ましくは97質量%の二酸化チタンを含む。残りの部分は無機若しくは有機添加剤、又はこれらの混合物である。
【0048】
さらなる好ましい実施の形態では、二酸化チタン光触媒は、特に好ましくは、ナトリウム、カリウム、ジルコニウム、コバルト、亜鉛、鉄、銅、銀、金、パラジウム、白金、ガリウム、窒素、炭素、硫黄、フッ素、イッテルビウム、エルビウム、ツリウム、ネオジム及びこれらの混合物等の、元素の周期表(新IUPAC命名法)の第1、4、8、9、10、11、13、14、15族、又はランタノイドから選択される、少なくとも一種の添加剤を含む。好ましくは、また、上述の添加剤の二種以上の組み合わせで存在し得る。
【0049】
少なくとも一種の添加剤は、0.001〜5質量%、特に好ましくは0.01〜3質量%の量で、本発明により用いられる棒状形状の二酸化チタン光触媒中に存在する。もし、二種以上の上述の添加剤が、本発明により使用される光触媒中に同時に存在する場合、上述の定量的な細目をこの混合物に適用する。
【0050】
本発明により使用される棒状の二酸化チタン光触媒は、通常20〜200m2/gの、好ましくは30〜180m2/gの、特に好ましくは40〜150m2/gのBET表面積を有する。BET表面積は、例えば、DIN66131に指定されるように、当業者にとって公知の方法により決定される。
【0051】
本発明によって好ましく使用される棒状二酸化チタン光触媒は、通常0.1〜1.00ml/gの、好ましくは0.2〜0.7ml/gの、特に好ましくは0.25〜0.75ml/gの細孔容積を有する。細孔容積は、当業者にとって公知の方法により決定され得る。
【0052】
本発明によって好ましく用いられる棒状二酸化チタン光触媒は、通常、0.001〜0.050μmの、好ましくは0.005〜0.030μmの、特に好ましくは0.010〜0.025μmのメジアン細孔径を有する。そのメジアン細孔径は当業者にとって公知の方法により決定され得る。
【0053】
本発明によって使用される棒状二酸化チタン光触媒は、通常、当業者にとって公知の方法により製造され得る。好ましい実施の形態では、本発明によって好ましく使用される光触媒は、対応する量の二酸化チタンと少なくとも一種の結合剤、好ましくは、チロース、食用澱粉等の澱粉溶液、メチルセルロース等のセルロース等の糖誘導体、及び/又は、ステアリン酸等の少なくとも一種の脂肪酸、ポリエチレンオキシド等の高分子、及び希硝酸若しくは塩酸等の無機酸又は蟻酸等の有機酸等の少なくとも一種の酸から選択される、少なくとも一種の結合剤を混合することにより得られる。この混合物は、粉砕機(ground)等の慣用の装置で当業者にとって公知の方法により混合される。その後、結果として生じた混合物は対応する棒状光触媒を形成するために押し出し成形され得る。そうして、製造された押出成形物は、本発明に係る組み合わせのBET表面積、細孔容積及びメジアン細孔径を得るために、好ましくは最大120℃の温度で乾燥され、結果として生じた棒状体はその後好ましくは300〜500℃の温度で、大気雰囲気下で焼成される。
【0054】
本発明によって使用される二酸化チタンの製造の際に、チロースとステアリン酸のみの使用が、結果として生じる二酸化チタンが高い活性及び長期間に亘って高い活性を維持する高い安定性を伴う本発明に係る組み合わせを有するという効果をもたらす。
【0055】
また、本発明に係る反応器内には、放射線、好ましくは紫外線を反射する少なくとも1個の平面手段M2が配置されており、そしてこの少なくとも1個の平面手段M2の表面が管の内壁と0°以上の、好ましくは0°より大きい角度であることが、本発明の特徴である。二つの上述の構成部分が0°より大きい角度であるという設計は、管の滑らかな内壁に反射層が設けられているような方法では、少なくとも1個の手段M2が本発明に従って構成されないことを意味する。
【0056】
本発明に係る反応器内には、少なくとも1個の平面手段M2が好ましくは管の内部に取り付けられており、その反射表面は反応器の内壁に対して0°以上の、好ましくは0°より大きい上述の角度である。
【0057】
好ましい実施の形態では、本発明の少なくとも1個の平面手段M2の反射表面と反応器の内壁との間の角度は5〜85°、好ましくは20〜70°、特に好ましくは30〜50°である。
【0058】
放射線、好ましくは紫外線を、好ましくは完全に、反射することができる全ての平面手段を手段M2として本発明によって用いることができる。そのような手段M2は、例えば、金属、ガラス、プラスチック製等の薄板又は様々に成形された環状体であり、少なくとも部分的に反射物、好ましくはUV反射物で被覆されている。本発明に係る、特に好ましい手段M2は、金若しくは銀層で被覆された、鉄、ガラス、プラスチックの薄板又は環状体である。
【0059】
少なくとも1個の手段M2の表面は、真っすぐであるか、又は凸状若しくは凹状に湾曲し得る。反射面の形状及び角度を、(単一の又は複数の)光源からの光が手段M1の触媒表面全体に沿って可能な限り完全に、特に好ましくは、可能な限り均一に分配されるような方法で、平坦な光触媒活性手段M1の形状、大きさ及び/又は間隔に適応させなければならない。
【0060】
本発明に係る反応器内には、通常、少なくとも一つの光源により放射された放射線が手段M1上に十分な程度で反射されるように、十分な手段M2が配置される。好ましい実施の形態では、少なくとも1個の手段M2がそれぞれの手段M1に割り当てられ、手段M2は少なくとも1個の光源により放射された光放射線を対応する手段M1に反射する。手段M2の本発明によるこの配置により、本発明に係る反応器内では、その光源により放射された光放射線は首尾よく、好ましくは完全に光触媒活性材料へと偏向する。その流れ方向に見られる最初及び最後の手段M1の放射は、好ましい実施の形態ではそこから除外され得る。
【0061】
特に好ましい実施の形態では、本発明に係る反応器内では、手段M2は個々の手段M1に割り当てられる。手段M2は、好ましくは、それが反応器管の内壁と少なくとも一つの面で接触し、そしてさらなる二つの面で対応する手段M1、及び二番目の隣接する手段M2又は反応器管の終端と接触するような方法で配置される。すなわち、手段M2が二つの隣接する手段M1の間で、又は一つの手段M1と反応器管の終端の間でスペーサーとして作用する。手段M1の反射表面と対応するM2の間の角度は5〜85°、好ましくは20〜70°である。
【0062】
任意に、少なくとも一種の酸化剤が本発明に係る反応器に、特に、運転中に添加され得る。少なくとも一種の酸化剤の添加により、反応器の浄化性能はさらに上昇しうる。本発明に係る好適な酸化剤は液体又は気体であり、例えば、酸素や、空気、過酸化水素、オゾン、過酸化二硫酸塩、硝酸塩、硝酸、窒素酸化物、酸化塩素、塩素及びこれらの混合物等の酸素を含み得る混合物からなる群から選択される。特に、処理されるべき液体又はガス流の中のフェノール不純物の場合、酸化剤、特に、過酸化水素の添加が本発明に係る反応器の浄化性能の改良をもたらす。
【0063】
それゆえ、また、本発明は、少なくとも一種の酸化剤が浄化されるべき汚染物質含有流に添加されることを特徴とする、本発明に係る反応器に関する。
【0064】
本発明に係る反応器は、少なくとも一種の酸化剤を添加するための、弁、供給器、接続部等の当業者にとって公知の装置を有する。
【0065】
また、本発明は、光を照射することによる流体の光触媒処理方法に関し、本発明に係る反応器内でその方法を実施することを含む。液体又はガス流の光触媒処理のための、特に、有機及び/又は無機物質で汚染した排気ガス又は廃水の光触媒浄化のための方法は、当業者にとって基本的に公知である。
【0066】
好ましい実施の形態では、本発明は、処理されるべき液体又はガス流が汚染物質含有水であることを特徴とする、本発明に係るその方法に関する。
【0067】
さらなる好ましい実施の形態では、本発明は、少なくとも一種の酸化剤が処理されるべき液体又はガス流中に添加されることを特徴とする、本発明に係る方法に関する。
【0068】
本発明に係る反応器に関して記載されたことは、本発明に係る方法に関して適用する。
【0069】
本発明に係る方法は、通常、実施されるべきその処理に適切な温度で、例えば、水の光触媒浄化のためには4〜80℃、好ましくは15〜50℃の温度で実施される。他の工程パラメータは当業者にとって公知である。
【0070】
本発明の特に好ましい実施の形態を、図1を例に説明する。
【0071】
図1中、引用符号は以下の意味を有する:
1 管
2 UV光源
3 入口部
4 出口部
5 二酸化チタン棒を充填した網状体
6 反射体
7 管と反射体表面の間の角度
【実施例】
【0072】
実施例1
反応器は、長さ510mm及び幅168mmであり、8lの反応器容積を有する。ランプは、4.5kWの最大光量を有する中圧放射器である。ランプは薄暗いものでも良い。手段M1はPVDFインレー中に埋め込まれた1.5mmのTiO2棒である。活性表面積全体は3600cm2である。その棒は収縮性網状体で締め付けられている。10個の手段M1を使用する。手段M2は手段M1の間で外側の反応器壁に設置されており、放射光を反射し、28mmの高さ、底部で12mmの幅、及び頂部で8mmの幅である。11個の手段M2を使用する。手段M1間の距離は手段M2の厚さ(28mm)に等しい。反応器は直立型である。処理されるべき流体は、1m3/hの流速で50l容の貯蔵容器から手段M1を経由してその底部から頂部まで流れ、貯蔵容器へと戻る。処理されるべき流体を貯蔵容器で40℃未満に冷却する。貯蔵容器中で、受動的な空気交換が生じ得る。
【0073】
処理されるべき流体は、0.5g/lのジクロロ酢酸(DCA)を有する脱イオン水である。DCA溶液のpHを、pH3に調整する。流体の光触媒浄化は24時間の反応時間後におけるDCAの分解量(g/h)によって定義し、pH測定によって決定する。DCA溶液は、光照射することのない8時間を超えるポンプ輸送により反応器を通って循環する。循環後、ランプのスイッチを入れ、400Wの光量で照射した。24時間後の光触媒分解率は0.46gDCA/hである。
【0074】
実施例2
実施例1の反応器を使用する。処理されるべき流体は1.0g/lのジクロロ酢酸(DCA)を有する脱イオン水である。DCA溶液のpHをpH3に調整する。その流体の光触媒浄化は分解されるDCAの量(g/h)によって定義し、pH測定によって決定する。DCA溶液は光照射することなく8時間を超えるポンプ輸送により反応器を通って循環する。循環後、ランプのスイッチを入れ、400Wの光量で照射する。24時間後の光触媒分解率は0.81gDCA/hである。
【0075】
実施例3
実施例1の反応器を使用する。処理されるべき流体は2.2g/lのジクロロ酢酸(DCA)を有する脱イオン水である。DCA溶液のpHを3に調節する。流体の光触媒浄化は分解されるDCAの量(g/h)によって定義し、pH測定によって決定する。DCA溶液は光照射することなく8時間を超えるポンプ輸送により反応器を通って循環する。循環後、ランプのスイッチを入れ、400Wの光量で照射する。24時間後の光触媒分解柄率は1.70gDCA/hである。
【0076】
実施例4
実施例1の反応器を使用する。処理されるべき流体は2.2g/lのジクロロ酢酸(DCA)を有する脱イオン水である。DCA溶液のpHをpH3に調整する。流体の光触媒浄化は分解されるDCAの量(g/h)によって定義し、pH測定によって決定する。DCA溶液は光照射することなく8時間を超えるポンプ輸送により反応器を通って循環する。循環後、ランプのスイッチを入れ、400Wの光量で照射する。大気を貯蔵容器(10l/h)の気層に供給する。24時間後の光触媒分解率は2.41gDCA/hである。
【0077】
実施例5
実施例1の反応器を使用する。処理されるべき流体は2.2g/lのジクロロ酢酸(DCA)を有する脱イオン水である。DCA溶液のpHをpH3に調整する。流体の光触媒浄化は分解されるDCAの量(g/h)によって定義し、pH測定によって決定する。DCA溶液は光照射することなく8時間を超えるポンプ輸送により反応器を通って循環する。循環後、ランプのスイッチを入れ、800Wの光量で照射する。24時間後の光触媒分解率は4.64gDCA/hである。
【符号の説明】
【0078】
1 管
2 UV光源
3 入口部
4 出口部
5 二酸化チタン棒を充填した網状体
6 反射体
7 管と反射体表面の間の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又はガス流の光触媒処理のための反応器であって、
処理されるべき前記液体又はガス流が通過する管を含み、
前記管内に、少なくとも1個の光源、少なくとも一種の光触媒活性材料を備える少なくとも1個の平面手段M1、及び前記少なくとも1個の光源より放射される放射線を反射する少なくとも1個の平面手段M2が配置され、
光源から射出される光が少なくとも1個の手段M2により光触媒活性材料で反射するように、少なくとも1個の平面手段M2の反射面と前記管の内壁との角度が0°以上にされていることを特徴とする反応器。
【請求項2】
前記少なくとも1個の光源が前記管の中央に配置される請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記少なくとも1個の平面手段M1の平面が、処理されるべき前記液体又はガス流の流れ方向に対して60〜130°の角度で配置されている請求項1又は2に記載の反応器。
【請求項4】
処理されるべき前記液体又はガス流が前記少なくとも1個の平面手段M1を通過して流れる請求項1〜3の何れか1項に記載の反応器。
【請求項5】
変性又は未変性の二酸化チタン(TiO2)を光触媒活性材料として用いる請求項1〜4に記載の反応器。
【請求項6】
光触媒活性モノリス、光触媒物質含有押出成形物を有する網状体、又は光触媒物質で被覆されたハニカム若しくは成形体を手段M1として用いる請求項1〜5の何れか1項に記載の反応器。
【請求項7】
処理されるべき前記液体又はガス流に少なくとも一種の酸化剤を添加する請求項1〜6の何れか1項に記載の反応器。
【請求項8】
処理されるべき前記液体又はガス流が汚染物質含有液である請求項1〜7の何れか1項に記載の反応器。
【請求項9】
処理されるべき前記液体又はガス流が汚染物質含有ガスである請求項1〜7の何れか1項に記載の反応器。
【請求項10】
光照射による液体又はガス流の光触媒処理方法であって、請求項1〜9の何れか1項に記載の反応器内で実施する方法。
【請求項11】
処理されるべき前記液体又はガス流が処理されるべき水である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも一種の酸化剤を処理されるべき前記液体又はガス流に添加する請求項10又は11に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−504420(P2013−504420A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529222(P2012−529222)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063349
【国際公開番号】WO2011/032900
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】