説明

光変調装置及びプロジェクター

【課題】光の利用効率に優れた光変調装置及びプロジェクターを提供する。
【解決手段】入射した光束を変調して画像を形成する光変調装置は、画像を構成する画素毎に変調部80Aがそれぞれ設けられた構成を有する。変調部80Aは、入射した光束を通過させる第1の位置または入射した光束を遮断する第2の位置に移動可能に構成されたシャッター88と、シャッター88を第1の位置または第2の位置に移動させる回路部86及び電極部87とを備える。シャッター88は、帯電された帯電部91〜94を備える。駆動手段は、帯電部91〜94との間で静電力を発生させる透明電極E1〜E4を有し、当該静電力でシャッター88を第1の位置または第2の位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調装置及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターにおいて、入射した光束を画像情報に応じて変調して画像を形成する光変調装置として、液晶を用いた光変調装置の他、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術により製造した光変調装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の光変調装置は、画素毎に微小なミラーが配設され、当該微小なミラーの入射角度を制御することにより、光源から出射された光束を光変調して画像を形成するDMD(米国テキサスインスツルメンツ社の商標)で構成されている。
そして、このようなMEMS技術により製造した光変調装置では、液晶の熱劣化等の問題が生じることがなく、長寿命化が図り易いという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−70091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光変調装置としてDMDを用いた場合には、光源から出射された光束を微小なミラーで反射させるため、その反射時に入射した光束の一部が微小なミラーによって吸収されてしまう。
すなわち、微小なミラーによって一部の光束が吸収された分、プロジェクターからの投影画像の輝度が低下することとなり、光源から出射された光束を効率的に利用することが難しい、という問題がある。
【0005】
本発明の目的は、光の利用効率に優れた光変調装置及びプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光変調装置は、入射した光束を変調して画像を形成する光変調装置であって、前記光変調装置は、前記画像を構成する画素毎に変調部がそれぞれ設けられ、前記変調部は、入射した光束を通過させる第1の位置または入射した光束を遮断する第2の位置に移動可能に構成されたシャッターと、前記シャッターを前記第1の位置または前記第2の位置に移動させる駆動手段とを備え、前記シャッターは、帯電された帯電部を備え、前記駆動手段は、前記帯電部との間で静電力を発生させる電極を有し、前記静電力で前記シャッターを前記第1の位置または前記第2の位置に移動させることを特徴とする。
【0007】
本発明では、光変調装置は、シャッター及び駆動手段を備える変調部を画素毎に設けた構成を有する。そして、この光変調装置は、電極によって帯電部に作用する電界を発生させ、静電力によりシャッターを第1の位置または第2の位置に位置付ける。このようにしてシャッターを第1の位置または第2の位置に位置付け、入射した光束の通過または遮断を切り替えることで光変調を実施し、画像を形成する。このように、光束の通過または遮断を切り替えるシャッターを用いて光変調を行うため、従来のDMDを用いて光変調を行う場合と比較して、画像を構成する光がミラー等で吸収されることがなく、光の利用効率を向上できる。
【0008】
本発明の光変調装置では、前記シャッターは、開口部を有し、前記開口部の開口方向に沿う回転軸を中心として回転可能に構成され、前記駆動手段は、前記静電力によって前記シャッターを回転させ、前記開口部を介して光束を通過させる前記第1の位置または前記開口部を除く部位にて光束を遮断する前記第2の位置に移動させることが好ましい。
本発明では、駆動手段は、回転軸を中心として回転可能なシャッターに力を加えることでシャッターを第1の位置または第2の位置に移動させるため、単にスライド移動させるシャッター等と比較して、弱い力で容易にシャッターを移動させることができる。
【0009】
本発明の光変調装置では、前記帯電部は、正に帯電した第1帯電部と、負に帯電した第2帯電部とを備え、前記第1帯電部と前記第2帯電部とが、前記シャッターを周方向に等分割した4以上の偶数の領域に隣り合うように配設されていることが好ましい。
本発明では、第1帯電部と第2帯電部とを、シャッターを周方向に等分割した4以上の偶数の領域に隣り合うように配設することで、第1の位置から第2の位置までのシャッターの回転角を小さくできる。これにより、シャッターの位置を速く第1の位置または第2の位置に安定させることができ、小さい力で容易に回転させることができる。例えば、4つの領域に設けた場合には、回転角を90度にすることができ、8つの領域に設けた場合には、回転角を45度にすることができる。
【0010】
本発明の光変調装置では、前記開口部は、周方向に均等な間隔で複数設けられ、前記回転軸を中心として回転対称となる位置に位置付けられていることが好ましい。
本発明では、複数の開口部を周方向に均等な間隔で設け、回転軸を中心として回転対称となる位置に位置付けることで、シャッターが回転方向のどちらに回転しても、バランスよく第1の位置または第2の位置に切り替えることができる。また、シャッターの回転方向を規制部材等により一方向に規制する必要がないことから、光変調装置の構成を簡素化できる。例えば、2つの開口部を180度回転対称となる位置に設けた場合には、開口部間で光束を遮光する構成であれば、シャッターが回転方向のどちらか一方に90度回転すれば、光束の通過または遮断を切り替えることができる。
【0011】
本発明の光変調装置では、前記シャッターは、誘電体で構成されていることが好ましい。
本発明では、シャッターを誘電体で構成することで、シャッターに帯電部を別個に設ける必要がないため、シャッターの構成を簡素化して、シャッターを容易に製造できる。
【0012】
本発明の光変調装置では、前記変調部は、前記シャッターに対して光路上流側に位置し、入射した光束を集光する集光レンズを備えることが好ましい。
本発明では、シャッターに対して光路上流側に集光レンズが位置していることで、シャッターは、第2の位置で入射した光束を遮断する際、集光レンズで集光された光束を遮断すればよいため、集光レンズを用いない構成と比較してシャッター自体を小型化できる。
【0013】
本発明の光変調装置では、前記シャッターは、光入射側の端面にミラーを備え、前記ミラーは、前記シャッターが前記第2の位置に移動した際に、入射した光束を反射させることが好ましい。
本発明では、シャッターが第2の位置に位置付けられた際に、シャッターで遮断された光束はシャッターの端面のミラーで反射されるため、シャッターの温度上昇を抑制できる。
【0014】
本発明のプロジェクターは、前述した本発明の光変調装置を備えることを特徴とする。
本発明では、プロジェクターが前述した本発明の光変調装置を備えるため、前述した本発明の光変調装置と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態におけるプロジェクターの概略構成を模式的に示す図。
【図2】本実施形態における光変調装置を模式的に示す正面図。
【図3】本実施形態における光変調装置を模式的に示す側面図。
【図4】本実施形態における回路部及び電極部の構成を示す回路図。
【図5】本実施形態におけるシャッターの構成を示す正面図。
【図6】本実施形態における変調部の動作を説明するための正面図。
【図7】本実施形態における変調部の動作を説明するための正面図。
【図8】本実施形態における変調部の動作を説明するための側面図。
【図9】本実施形態の光変調装置での階調制御を説明するための図。
【図10】本実施形態における変調部の第1の変形例を説明するための図。
【図11】本実施形態における変調部の第2の変形例を説明するための図。
【図12】本実施形態におけるプロジェクターの変形例を説明するための図。
【図13】変形例におけるカラーホイールの構造を表す正面図。
【図14】変形例の光変調装置での階調制御を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクターの構成〕
図1は、プロジェクター1の概略構成を模式的に示す図である。
プロジェクター1は、光源から出射された光束を変調して画像を形成し、該画像をスクリーン等の投射面上に投射する。このプロジェクター1は、図1に示すように、略直方体状の外装筺体2と、この外装筺体2内部に収納配置される光学ユニット3と、制御装置11とで概略構成される。
なお、具体的な図示は省略するが、外装筺体2内部には、光学ユニット3及び制御装置11の他、プロジェクター1の構成部材に外部からの電力を供給する電源ユニット、プロジェクター1内部を冷却する冷却ユニット等が配置されるものとする。
【0017】
光学ユニット3は、外装筺体2内部に配置され、画像を形成して投射する。この光学ユニット3は、図1に示すように、光源ランプ4A及びリフレクター4Bを有する光源装置4と、レンズアレイ5A,5B、及び重畳レンズ5Cを有する照明光学装置5と、ダイクロイックミラー6A,6B、及び反射ミラー6Cを有する色分離光学装置6と、入射側レンズ7A、リレーレンズ7C、及び反射ミラー7B,7Dを有するリレー光学装置7と、3つのフィールドレンズ8Aと、3つの光変調装置8R,8G,8B(赤色光側の光変調装置を8R、緑色光側の光変調装置を8G、青色光側の光変調装置を8Bとする)、及び色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム8Cを有する光学装置8と、投射光学装置としての投射レンズ9と、各光学部品4〜8を収納するとともに投射レンズ9を支持する光学部品用筐体10とを備える。
そして、光学ユニット3では、上述した構成により、光源装置4から出射され照明光学装置5を介した光束は、色分離光学装置6にてR,G,Bの3つの色光に分離される。また、分離された各色光は、フィールドレンズ8Aで各々略平行光とされ、各光変調装置8R,8G,8Bにてそれぞれ変調される。変調された各色光は、プリズム8Cにて合成されてカラー画像となり、投射レンズ9にてスクリーンに投射される。
制御装置11は、外装筺体2内部に配置され、プロジェクター1全体を制御する。具体的に、制御装置11は、光学ユニット3が備える光変調装置8R,8G,8Bを制御して、画像情報(画像信号)に基づく画像を光変調装置8R,8G,8Bに形成させる。
【0018】
〔光変調装置の構成〕
図2及び図3は、光変調装置8Rを模式的に示す図である。具体的に、図2は、光変調装置8Rの光入射側を部分的に平面視した正面図であり、図3は、図2に示す光変調装置8Rの側面図である。なお、以下、代表して光変調装置8Rについて説明するが、光変調装置8G,8Bについても同様の構成である。また、図2では、便宜上、図3に示すマイクロレンズ84,85は図示を省略している(以下の図6及び図7についても同様である)。
【0019】
光変調装置8Rは、図2及び図3に示すように、複数の変調部80A、支持部材81、複数の走査(ゲート)線82、及び複数の信号線83を備えている。なお、図3においては、便宜上、走査線82及び信号線83を省略している(以下の図8についても同様である)。
支持部材81は、光を透過させるガラス等の透光性材料で板状に構成されている。
この支持部材81には、複数の走査線82と、複数の信号線83とが形成されている。
【0020】
複数の走査線82は、支持部材81において、行方向(図2中、左右方向)に延びるようにそれぞれ形成され、列方向(図2中、上下方向)に並設されている。そして、複数の走査線82は、図1に示す制御装置11から出力される制御信号を、後述する回路部86に供給する。
複数の信号線83は、支持部材81において、列方向に延びるようにそれぞれ形成され、行方向に並設されている。そして、複数の信号線83は、制御装置11から出力される正または負の電位の駆動信号を回路部86に供給する。
【0021】
変調部80Aは、画像を構成する画素毎にそれぞれ設けられている。変調部80Aは、走査線82及び信号線83の各交差部に対応してマトリクス状に配されている。例えば、光変調装置8Rによって1024×768画素の画像を生成する場合には、光変調装置8Rは、1024×768個の変調部80Aを備える。
【0022】
変調部80Aは、図2及び図3に示すように、マイクロレンズ84,85(図3)と、回路部86と、電極部87と、シャッター88とを備える。
集光レンズとしての第1のマイクロレンズ84は、支持部材81の光入射側(後述するシャッター88に対して光路上流側)に配設され、フィールドレンズ8Aから出射された光束を焦点位置P(図8(A))に集光する。
第2のマイクロレンズ85は、支持部材81の光出射側に配設されている。より具体的に、第2のマイクロレンズ85は、焦点位置が第1のマイクロレンズ84の焦点位置Pに一致するように配設されている。そして、第2のマイクロレンズ85は、第1のマイクロレンズ84が集光した光束を略平行光として出射する。
【0023】
図4は、回路部86及び電極部87の構成を示す回路図である。
回路部86及び電極部87は、後述するシャッター88を駆動する駆動手段として機能する。
回路部86は、図4に示すように、コンデンサーC1と、トランジスターT1,T2とを有している。トランジスターT1は、PNP型トランジスターで構成され、トランジスターT2は、NPN型トランジスターで構成されている。
電極部87は、4つの透明電極E1〜E4によって構成されている。具体的に、透明電極E1〜E4は、ITO(Indium Tin Oxide)等の成膜後に透明な導電材料からなる導電膜によって構成されている。
【0024】
透明電極E1,E3は、図4に示すように、コンデンサーC1の一端を介して前述した信号線83と接続されている。また、透明電極E2,E4は、トランジスターT1,T2のコレクターを介してコンデンサーC1の他端と接続されている。トランジスターT1,T2のベースは、それぞれ前述した走査線82と接続されている。また、トランジスターT1,T2のエミッターは、GNDに接続(接地)されている。
これにより、透明電極E1,E3と透明電極E2,E4とで逆極性の電荷を付与できる構成となっている。
【0025】
なお、信号線83には、前述したように、制御装置11によって、画素毎に駆動信号として予め正または負の電位が与えられる。
走査線82は、制御信号としてのパルス信号をトランジスターT1,T2のゲートに供給し、トランジスターT1,T2の「ON(導通)」と「OFF(非導通)」とを切り替える。
【0026】
図5は、シャッター88の構成を示す正面図である。
シャッター88は、図5に示すように、円盤状に構成されており、中心位置から外れた位置に開口部88Aを有する。そして、シャッター88は、その略中心位置が、図3に示すように、支持部材81の光入射側の端面から開口部88Aの開口方向に沿って突出した回転軸81Aに接続し、回転軸81Aを中心として回転可能に軸支されている。
なお、本実施形態では、開口部88Aは、図5中に一点鎖線で示すように、シャッター88を周方向に等分割した4つの領域(領域A〜D)に交互に設けられている。つまり、シャッター88は、領域A〜Dのうち、一方の対向する領域B,D内にそれぞれ1つずつ、計2つ(偶数個)の開口部88Aを有する。なお、この2つの開口部88Aは、回転の中心位置に対して180度回転対称となる位置にそれぞれ設けられている。
【0027】
また、シャッター88は、予め帯電された帯電部91〜94を備えている。具体的に、図5に「+」、「−」で示すように、シャッター88の領域A,Cが正に帯電し、領域B,Dが負に帯電している。つまり、シャッター88は、正に帯電した帯電部(帯電部91,93)と、負に帯電した帯電部(帯電部92,94)とが、隣り合うように交互に配設されている。これら帯電部91〜94は、例えば、誘電体を組み合わせてシャッター88を構成することで形成できる。なお、前述した透明電極E1〜E4は、図5に破線で示すように、平面視で帯電部91〜94と重なる位置に配置され、透明電極E2と平面視で重なる位置に、前述したマイクロレンズ84の焦点位置Pが位置し、開口部88Aは、マイクロレンズ84によって集光された光束を通過させる大きさに形成されている。
【0028】
また、シャッター88は、図3に示すように、光入射側の端面にミラー88Bを有する。つまり、シャッター88は、光入射側の端面が反射面となっている。例えば、このミラー88Bは、シャッター88にアルミニウム等の光反射率の高い部材を成膜することで形成できる。
【0029】
〔光変調装置の動作〕
以下、光変調装置8Rの動作について説明する。
先ず、変調部80Aの動作について、図4を参照して説明する。
前述した走査線82は、通常時(シャッター88を動作させない時)はGND電位(基準電位)となっており、一組のトランジスターT1,T2は、ともに「OFF」となる。そして、シャッター88を動作させる際には、制御装置11によって走査線82に正負のパルス信号が挿入される。これによって、駆動信号の電位に応じてトランジスターT1,T2の一方が「ON」となる。
トランジスターT1,T2の一方が「ON」になると、コンデンサーC1には、信号線83の電圧に応じた極性で電荷が貯められる。このコンデンサーC1の電荷は、平面視でシャッター88と重なる位置の透明電極E1〜E4に伝えられ、電界が生じる。
変調部80Aは、このようにシャッター88に作用する電界を生じさせ、静電力によってシャッター88を移動する。
【0030】
図6及び図7は、変調部80Aの動作を説明するための正面図であり、図8は、その側面図である。具体的に、図6及び図8(A)は、透明電極E1,E3が負の電位、透明電極E2,E4が正の電位である場合を示し、図7及び図8(B)は、透明電極E1,E3が正の電位、透明電極E2,E4が負の電位である場合を示す。なお、図6(A)及び図7(A)は、透明電極E1〜E4の各極性を示し、図6(B)及び図7(B)は、シャッター88の領域A〜Dの各極性を示している。また、図中のハッチングが施されている部分が正の電位であることを示し、ハッチングが施されていない部分が負の電位であることを示している。
【0031】
透明電極E1,E3が負の電位であり、透明電極E2,E4が正の電位である場合には、図6に示すように、シャッター88は、正に帯電している第1帯電部としての帯電部91,93(領域A,C)が、負の電位である透明電極E1,E3に引き付けられ、負に帯電している第2帯電部としての帯電部92,94(領域B,D)が、正の電位である透明電極E2,E4に引き付けられることで、シャッター88がいずれかの方向に回転する。これにより、シャッター88が「ON」となり、開口部88Aの位置は、光束を透過させる位置で固定される。
【0032】
透明電極E1,E3が正の電位であり、透明電極E2,E4が負の電位である場合には、図7に示すように、帯電部91,93(領域A,C)が透明電極E2,E4に引き付けられ、帯電部92,94(領域B,D)が透明電極E1,E3に引き付けられて、シャッター88がいずれかの方向に回転する。これにより、シャッター88が「OFF」となり、開口部88Aの位置は、光束を遮断する位置で固定される。
【0033】
すなわち、シャッター88は、「ON」の状態の場合には、図6に示すように、平面視で開口部88Aが第1のマイクロレンズ84の焦点位置Pに重なり、図8(A)に示すように、第1のマイクロレンズ84にて集光された光束を、開口部88Aを介して通過させる第1の位置に位置付けられる。そして、開口部88Aを介して通過させた光束は、第2のマイクロレンズ85に入射し、第2のマイクロレンズ85で平行化されてプリズム8Cに出射される。
【0034】
また、シャッター88は、「OFF」の状態の場合には、図7に示すように、平面視で開口部88Aが第1のマイクロレンズ84の焦点位置Pに重ならず、第1のマイクロレンズ84によって集光された光束を遮断する第2の位置に位置付けられる。そして、図8(B)に示すように、シャッター88(開口部88Aを除く部位)によって遮断された光束は、ミラー88Bで反射され、フィールドレンズ8A側に戻される。
そして、光変調装置8Rは、このシャッター88により、以下のように画像の階調を制御して光変調を行う。
【0035】
図9は、光変調装置8Rでの階調制御を説明するための図である。図9(A)は、赤色光の階調を100%に制御する場合を示し、図9(B)は、赤色光の階調を50%に制御している場合を示し、図9(C)は、赤色光の階調を0%に制御している場合を示している。なお、図9(A)〜(C)の横軸は時間軸であり、縦軸は、シャッター88の状態を示している。
図9(A)に示すように、制御装置11の制御の下、単位時間あたりのシャッター88の状態を、常時「ON」とすることで、当該単位時間における赤色光の階調を100%とすることができる。図9(B)に示すように、「ON」の時間と「OFF」の時間を50%ずつとすることで、赤色光の階調を50%とすることができる。また、図9(C)に示すように、常時「OFF」とすることで、赤色光の階調を0%とすることができる。このように、光変調装置8Rでは、画像情報に応じて、「ON」と「OFF」とを時間変調すること、すなわち、「ON」と「OFF」の時間の比率を変化させることで、画像の階調を制御することができる。
以上のように、光変調装置8Rでの階調制御は、「ON」と「OFF」の二値によるパルス幅変調(PWM)で行うことができる。
【0036】
上述した実施形態では、以下の効果がある。
光変調装置8R,8G,8Bは、シャッター88と、回路部86及び電極部87とを備える変調部80Aが画素毎にそれぞれ設けられている。そして、光変調装置8R,8G,8Bは、透明電極E1〜E4によって帯電部91〜94に作用する電界を発生させ、静電力によりシャッター88を第1の位置または第2の位置に位置付ける。このようにしてシャッター88を第1の位置または第2の位置に位置付け、入射した光束の通過または遮断を切り替えることで、光変調を実施し、画像を形成する。
このことにより、従来のDMDを用いた場合と同様に、液晶の熱劣化等の問題が生じることがなく、長寿命化が図りやすい。
【0037】
回路部86及び電極部87によりシャッター88が第1の位置に移動されている場合には、シャッター88は、入射された光束を通過させる。回路部86及び電極部87によりシャッター88が第2の位置に移動されている場合には、入射された光束はシャッター88で遮断される。光変調装置8R,8G,8Bは、画像情報に応じて、第1の位置と第2の位置を時間変調するため、第1の位置を長くすれば画像の階調を高くでき、第2の位置を長くすれば画像の階調を低くできる。
このように、光変調装置8R、8G,8Bは、光変調にシャッター88を用いるため、従来のDMDを用いた場合と比較して、画像を構成する光がミラー等で吸収されることはなく、光の利用効率を向上できる。
また、静電力によってシャッター88を移動させるので、圧電素子の伸縮等によってシャッターを移動させる構成と比較して、消費電力を小さくできる。
【0038】
さらに、回転軸81Aを中心として回転可能なシャッター88に力を加えることでシャッター88を第1の位置または第2の位置に移動させるため、単にスライド移動させるシャッター等と比較して、弱い力で容易にシャッターを移動させることができる。
また、第1帯電部91,93と第2帯電部92,94とを、シャッター88を周方向に等分割した4つの領域に隣り合うように配設することで、第1の位置から第2の位置までのシャッター88の回転角を90度とすることができ、2つの領域に配設した場合(この場合は、回転角が180度となる)よりも小さくできる。これにより、シャッター88の位置を速く第1の位置または第2の位置に安定させることができ、小さい力で容易に回転させることができる。
さらに、2つの開口部を周方向に均等な間隔で回転軸81Aを中心として180度回転対称となる位置に設けることで、開口部88A間で光束を遮光する構成であるため、シャッター88が回転方向のどちらに回転しても、バランスよく第1の位置または第2の位置に切り替えることができる。また、シャッター88の回転方向を規制部材等により一方向に規制する必要がないことから、光変調装置8R,8G,8Bの構成を簡素化できる。
【0039】
また、シャッター88を誘電体で構成することで、シャッター88に帯電部91〜94を別個に設ける必要がないため、シャッター88の構成を簡素化して、シャッター88を容易に製造できる。
さらに、シャッター88に対して光路上流側にマイクロレンズ84が位置していることで、シャッター88は、第2の位置で入射した光束を遮断する際、マイクロレンズ84で集光された光束を遮断すればよいため、マイクロレンズ84を用いない構成と比較して、シャッター88自体を小型化できる。
また、変調部80Aは、入射した光束をマイクロレンズ84で集光し、集光された光束の通過または遮断をシャッター88によって切り替えるので、マイクロレンズ84により集光しない場合と比較して、光の利用効率をさらに向上させることができる。シャッター88が第1の位置に移動されている場合に、フィールドレンズ8Aから出射される光束を、マイクロレンズ84で無駄なく集光して開口部88Aを通過させることができるため、開口率略100%を実現することができる。
【0040】
さらに、シャッター88が第2の位置に位置付けられた際に、シャッター88で遮断された光束はシャッター88の端面のミラー88Bで反射されるため、シャッター88の温度上昇を抑制できる。
また、ミラー88Bで反射された光を光束の光路に戻している。これにより、シャッター88で遮断された光束を、リフレクター4Bまで戻して再度リフレクター4Bで反射させ、画像を形成する光として再利用できるので、光の利用効率をより向上できる。
【0041】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態における光変調装置8R,8G,8Bを構成する各部材の形状、位置等は、図示したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【0042】
図10は、変調部の第1の変形例を説明するための図である。具体的に、図10(A)は、変形例における各透明電極Tの極性を示し、図10(B)は、変形例におけるシャッター95の各領域Eの極性を示している。
この変形例における変調部80Bでは、図10(B)に示すように、シャッター95において、周方向に等分割した8つの領域Eをそれぞれ帯電させている。具体的に、シャッター95は、この8つの領域Eにおいて隣り合う領域の極性が逆になるように帯電されている。そして、開口部95Aは、負に帯電されている領域Eに設けられている。また、図10(A)に示すように、各領域Eに対応するように、透明電極Tが形成されている。
このように分割数を多く構成することで、前記実施形態よりもシャッター95が「ON」または「OFF」に切り替わる回転角を小さくできるので、より「ON」または「OFF」状態に速く安定させることができ、小さい力で容易に回転させることができる。
【0043】
図11は、変調部の第2の変形例を説明するための図である。
前記実施形態では、変調部80Aは、シャッター88を円盤状に形成し、シャッター88が、時計回りと反時計回りのどちらに回転しても「ON」または「OFF」に切り替わる構成であったが、変調部の構成は、これに限らない。この変形例における変調部80Cは、シャッター96が前述したシャッター88における領域の一つを欠いた円盤状に形成されている。つまり、円盤の一部が90度欠けた形状となっており、この欠けた部分が前述した実施形態の開口部88Aに対応している。なお、透明電極E1〜E4は、前記実施形態と同様の構成となっている。この欠けた部分における支持部材には、係止部材97が設けられており、「ON」から「OFF」に切り替える際の回転方向及び「OFF」から「ON」に切り替える際の回転方向を、互いに異なる一方向に規制している(「OFF」から「ON」が反時計回りで、「ON」から「OFF」が時計回り)。このように、シャッターの形状は、円盤状に限らず、回転方向についても規制されていてもよい。さらに、透明電極の数と、シャッターの帯電された領域の数とが一致していなくてもよく、シャッターにおいて、正に帯電された領域の数と、負に帯電された領域の数とが同じでなくてもよい。なお、本変形例では、シャッター96の回転角を90度に規制できるのであればよく、例えば、円盤の一部を180度欠いた形状でシャッターを構成し、係止部材を2つ設けた構成であってもよい。
【0044】
図12は、プロジェクターの変形例を説明するための図である。
前記実施形態では、RGB毎に3つの光変調装置8R,8G,8Bを用いる三板式のプロジェクター1に適用したが、これに限らず、図12に示すような単板式のプロジェクターに適用してもよい。
この変形例によるプロジェクターでは、照明光学装置5の後段に色切替光学装置12を設ける。色切替光学装置12は、円盤状に形成され、回転することにより照明光学装置5から出射された光束をR,G,Bの3つの色光に切り替えるカラーホイール13と、照明光学装置5から出射された光束をカラーホイール13近傍に集光する第1コンデンサーレンズ14と、カラーホイール13を透過した発散光を略平行光にする第2コンデンサーレンズ15とを備えて構成される。
【0045】
カラーホイール13は、図13(カラーホイール13正面図)に示すように、回転方向に沿って区切られた4つの扇形の領域に3つの透過型色フィルター16R,16G,16Bと1つの透光領域16Wを備えている。色フィルター16R、16G,16Bは、各々赤色、緑色、青色の光のみを透過させ、透光領域16Wは、照明光学装置5から出射された光束をそのまま通過させる。
このような構成を設けることで、図12に示すように、1つの光変調装置8Dによってプロジェクターを構成することができる。
【0046】
図14は、光変調装置8Dでの階調の制御を説明するための図である。横軸の「W」は透光領域16Wでの光束の光路上の時間を示し、「R」,「G」,「B」は、各々、色フィルター16R,16G,16Bが光束の光路上を占める時間(各色光の単位時間)を示す。図示するように、カラーホイール13の回転と同期させ、各色光の単位時間においてシャッターの「ON」の時間と「OFF」の時間とを時間変調することで、画像の階調を制御することができる。
【0047】
前記実施形態では、シャッター88を誘電体で構成することで帯電部91〜94を形成したが、これに限らない。例えば、シャッター88の端面に正または負に帯電しやすい膜を形成することで、シャッター88に帯電部を設けてもよい。
前記実施形態では、電極部87を透明電極E1〜E4で構成したが、入射した光束の通過を妨げない位置に設けるのであれば、透明でない電極であってもよい。例えば、各電極をリング状に形成し、リング内において光束を通過させる構成としてもよい。また、前記実施形態における各領域の一部を誘電体で構成し、他の部分を誘電体でない材料で構成してもよい。
前記実施形態では、回路部86及び電極部87によって駆動手段を構成したが、駆動手段は、静電力でシャッター88を回転する構成であれば、これに限らず、他の構成であってもよい。
前記実施形態では、回転式のシャッター88を例示したが、シャッターは、直線往復運動するスライド式であってもよい。
【0048】
前記実施形態では、マイクロレンズ84,85間の光束の出射側に支持部材81を配置し、入射側にシャッター88等を配置する構成としたが、これら位置関係は逆であってもよい。
前記実施形態では、支持部材81に回路部86及びシャッター88を支持したが、これらを支持する構成はこれに限らない。例えば、マイクロレンズ84,85を板状のマイクロレンズアレイのマイクロレンズで構成し、そのマイクロレンズアレイを支持部材81として代用することも可能である。
前記実施形態では、マイクロレンズ84,85を用いたが、これに限らず、マイクロレンズ84,85を省略してもよい。マイクロレンズ84,85を省略した場合には、光変調装置8R,8G,8Bを構成する部材を減らすことができ、製造コストを抑えることができる。
前記各実施形態では、ミラー88Bを成膜により形成するとしたが、シャッター自体をアルミニウム等の光反射部材で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の光変調装置は、光の利用効率を向上できるため、プロジェクター等の表示装置の光変調装置に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・プロジェクター、8D,8R,8G,8B・・・光変調装置、80A,80B,80C・・・変調部、81A・・・回転軸、84・・・マイクロレンズ(集光レンズ)、86・・・回路部(駆動手段)、87・・・電極部(駆動手段)、88,95,96・・・シャッター、88A,95A・・・開口部、88B・・・ミラー、91,93・・・帯電部(第1帯電部)、92,94・・・帯電部(第2帯電部)、E1,E2,E3,E4・・・透明電極(電極)、A,B,C,D,E・・・領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光束を変調して画像を形成する光変調装置であって、
前記光変調装置は、
前記画像を構成する画素毎に変調部がそれぞれ設けられ、
前記変調部は、
入射した光束を通過させる第1の位置または入射した光束を遮断する第2の位置に移動可能に構成されたシャッターと、
前記シャッターを前記第1の位置または前記第2の位置に移動させる駆動手段とを備え、
前記シャッターは、
帯電された帯電部を備え、
前記駆動手段は、
前記帯電部との間で静電力を発生させる電極を有し、前記静電力で前記シャッターを前記第1の位置または前記第2の位置に移動させる
ことを特徴とする光変調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調装置において、
前記シャッターは、
開口部を有し、前記開口部の開口方向に沿う回転軸を中心として回転可能に構成され、
前記駆動手段は、
前記静電力によって前記シャッターを回転させ、前記開口部を介して光束を通過させる前記第1の位置または前記開口部を除く部位にて光束を遮断する前記第2の位置に移動させる
ことを特徴とする光変調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光変調装置において、
前記帯電部は、
正に帯電した第1帯電部と、
負に帯電した第2帯電部とを備え、
前記第1帯電部と前記第2帯電部とが、前記シャッターを周方向に等分割した4以上の偶数の領域に隣り合うように配設されている
ことを特徴とする光変調装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光変調装置において、
前記開口部は、
周方向に均等な間隔で複数設けられ、前記回転軸を中心として回転対称となる位置に位置付けられている
ことを特徴とする光変調装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の光変調装置において、
前記シャッターは、誘電体で構成されている
ことを特徴とする光変調装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の光変調装置において、
前記変調部は、
前記シャッターに対して光路上流側に位置し、入射した光束を集光する集光レンズを備える
ことを特徴とする光変調装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の光変調装置において、
前記シャッターは、
光入射側の端面にミラーを備え、
前記ミラーは、
前記シャッターが前記第2の位置に移動した際に、入射した光束を反射させる
ことを特徴とする光変調装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の光変調装置を備えることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−113273(P2012−113273A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264676(P2010−264676)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】