説明

光学センサ付きの表面検出装置

【課題】スタイラスの変位を正確に測定すること。
【解決手段】位置測定装置に用いる表面検出装置は、測定すべきワークピースの表面を走査するためのチップ82をもつ長いスタイラス74を有する。スタイラスチップの横変位は、光源66から逆反射体(retroreflector)78にスタイラスに沿って通過するライトビームによって測定される。これは、ビームを反射して、ブームスプリッタ70を介して位置高感度検出器76に戻す。スタイラスは、キャリッジ72に縦変位のために設置される。その縦変位は、ビームスプリッタ70によって、第2の位置高感度検出器84に投光される他のライトビームによって測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、座標測定マシン(CMM)、スキャニングマシン、マシンツール、または測定ロボットなどのような位置測定装置に用いる表面検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
そのようなマシンは、ワークピースを測定するために用いられ、一般に、ワークピースが保持されるテーブルに対して3方向X,Y,およびZに移動可能なアームまたは他の部材を含む。基準位置に対する移動可能な部材の位置が測定できるように、それぞれのX,Y,Z方向における前記移動可能なアームまたは他の部材の動きは、マシンの変換器によって測定される。
【0003】
本発明が特に関係する表面検出装置は、ワークピースコンタクト用のチップ付きの長いスタイラスを有するアナログまたは測定プローブである。特許文献1に開示されているように、それは、使用中において、高速走査作業に用いる連節ヘッド(articulating head)に設置してもよい。そのヘッドは、マシンの移動可能な部材に設置されて、2つの直交する回転軸の周りにプローブスタイラスの軸を合わせることが可能なモータつまりアクチュエータを有する。これらの回転可能な軸に組み合わせられる各変換器は、位置合わせの方向を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,040,306号明細書
【特許文献2】米国特許第6,633,051号明細書
【特許文献3】米国特許第5,327,657号明細書
【特許文献4】欧州特許第566,719号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走査作業中に、マシンおよび/またはヘッドは、マシンコントローラからの指示にしたがって、スタイラスチップをワークピースの表面上を移動させて、ワークピースの表面の輪郭に関するデータを集める。マシンおよびヘッドの各変換器によってもたらされる信号、およびプローブスタイラスの寸法の情報から、走査される表面上の点の位置を評価することができる。しかしながら、これは、スタイラスが充分に堅くつくられていても必要とされる精度を有するだけであり、実際的ではない。
【0006】
我々の特許文献2(国際特許番号WO 00/60310に対応する)は、そのようなプローブを示す。それは、比較的柔軟性がある中空のスタイラスを含み、それは、スタイラスチップとワークピースの表面との接触の力、および加速中の慣性力を受けて曲がる。そのような曲がりによって生じるスタイラスチップの横変位(lateral displacement)を測定する光学システムが備えられる。そして、これは、マシンおよびヘッドの各変換器からの測定値と組み合わされる。
【0007】
光学システムは、中空のスタイラスに沿って通過するライトビームを含む。そして、そのビームは、チップあるいはその近くにおいて光学部品により反射されて、スタイラスに沿って戻る。スタイラスチップの横変位は、戻りビームの横つまり傾斜変位(tilting displacement)を引き起こし、それが位置高感度検出器によって測定される。
【0008】
特許文献2に示されるプローブは、スタイラスチップの横変位のみの測定が可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
位置測定装置に用いる表面検出装置であって、
プローブ本体と、
ワークピース検出用のスタイラスチップを有する長いスタイラスであって、前記スタイラスは、前記プローブ本体に交換可能に取付けられ、かつ縦変位のために前記プローブ本体に設置され、前記スタイラスチップには横変位が与えられる、スタイラスと、
前記縦変位を測定するための前記プローブ本体内の手段と、
前記交換可能なスタイラスに沿ってライトビームを投光することにより、前記チップの前記横変位を測定する光変換システムと、
を備える表面検出装置を提供する。
【0010】
いくつかの好適な実施形態において、スタイラスの縦変位を測定するための手段は、光学的である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】表面検出装置付き連節ヘッドの説明図である。
【図2A】表面検出装置の第1の実施形態の断面図である。
【図2B】表面検出装置の第1の実施形態の断面図である。
【図3】表面検出装置の第2の実施形態の断面図である。
【図4】表面検出装置用のスタイラスアセンブリの説明図である。
【図5】表面検出装置用の他のスタイラスアセンブリの説明図である。
【図6】表面検出装置用のさらに他のスタイラスアセンブリの説明図である。
【図7】表面検出装置用のさらに他のスタイラスアセンブリの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ、例として本発明の好適な実施形態を説明する。
【0013】
図1には、連節プローブヘッドが示されている。そのヘッドは、位置決め装置(不図示)に対するアタッチメントに適する第1のハウジング部10を備え、それは、シャフト14に第1の軸Z周りの回転を与えるモータつまりアクチュエータ12を含む。シャフト14に取り付けられる第2のハウジング部16は、第2のシャフト20に第2の直交軸X周りの回転を与えるモータつまりアクチュエータを含む。第2のシャフト20に取り付けられて、それと共に回転するハウジング24は、プローブ22とスタイラスアセンブリを備える表面検出装置用のサポートを含む。各角変換器は、軸XおよびZと関連して、回転運動を測定してコントローラにフィードバックする。
【0014】
図2Aおよび2Bは、プローブ22とスタイラスアセンブリ26を示す。プローブ22は、簡単に取り外しおよび交換可能されるように、既知のキネマチックマウント(kinematic mount)28を介してヘッドのハウジングつまりサポート24に交換可能に取り付けられる。同様に、スタイラスアセンブリ26は、キネマチックマウント30を介してプローブ22に交換可能に取り付けられ、その中に、各磁石によって同様に取り付けられる。よく知られているように、各キネマチックマウントは、プローブとスタイラスが正確に繰り返し可能な方法で位置決めされることを確保して、適確で繰り返し可能な測定を可能とする。プローブとスタイラスは、特許文献3および特許文献4に開示されているような自動プローブ/スタイラス交換装置によって、他のプローブやスタイラスと交換可能である。
【0015】
プローブ22は、垂直(各図面に見られる方位(orientation)、すなわち、スタイラスの縦方向に移動可能なキャリッジ32を含む。スタイラス26は、キネマチックマウント30を介してキャリッジ32に取り付けられる。キャリッジ32は、水平に延在する2つの平板スプリングつまり各ダイアフラム34を介して、プローブ22の相対的に固定される固定構造33に設置され、各ダイアフラム34は、垂直移動を許容し、XおよびY方向の横移動は拘束する。
【0016】
スタイラスアセンブリ26は、カーボンファイバーによって造られた長い中空管状のスタイラス36を含む。これは、横のX,Y方向にわずかな柔軟性(弾性的)があり、その剛性と重量は、高速走査状態において良好な動的パフォーマンスを与えるように設計される。それは、そのような走査中にワークピースに接するスタイラスチップ38を有する。各スタイラス36は、中空ではなくて、必要に応じて、適当なガラスなどのような中実の透明材料によって造ることができる。
【0017】
走査移動中に、スタイラスチップ38は、平板スプリング34によって許容される垂直移動を受けるであろう。それは、スタイラス36の曲がりによって許容される横のX,Y移動をも受ける。プローブ22は、これらの移動を測定するための各変換器を収容し、いま、それらについて説明する。
【0018】
プローブ22は、半導体レーザー(laser diode)または他の光源40を含む。これは、視準つまりレンズ42によって焦点が合わせられるライトビームを発生する。半導体レーザーは、レンズ42と関連してライトビームが中空スタイラス36に沿って軸方向に通過するように、位置合わせのために調整可能なクランプの上に設置される。半導体レーザー40とレンズ42の両方は、プローブ22の固定構造33上に備えられる。
【0019】
固定構造には、レンズ42によって放射されるライトビームを受けるために、ビームスプリッタ44も備えられている。それは、スタイラス36へ光の50%を通す。スタイラスチップ38の近くにて、レンズ46と鏡面50(ガラスシリンダー48に備わる)は逆反射体(retroreflector)として作用し、ライトビームを返してスタイラス36の長さに沿って戻す。戻るビームの50%は、ビームスプリッタ44によって、2次元位置高感度検出器52(プローブの固定構造33に設置される)に向かって、90°反射される。この配置は、特許文献2に開示されているものと同様である。特許文献2に開示されている他の配置のいくつかは代わりに用いることができ、その明細書は、参照することによってここに組み込まれる。
【0020】
スタイラスチップ38がXまたはY方向に横に反らされたときに、逆反射体46,50は、対応する方向のX,Yに対応する量だけ横変位される戻りビームを引き起こす。それは、位置高感度検出器52によって検出される。代わりに、特許文献2に示される配置のいくつかをもって、スタイラスチップ38の横変位が戻りビームの傾斜変位(tilting displacement)を引き起こすことができ、それもまた、位置高感度検出器52によってXおよびY方向において検出される。
【0021】
ミラー/レンズの組み合わせの間隔および焦点は、調整可能でもよい。これは、スタイラスの長さ、およびスタイラスチップ38が横に変位可能であることによってもたらされる量に応じて、プローブの”ゲイン”の調整、すなわち検出器52における戻りビームの変位量の整合を可能とする。
【0022】
半導体レーザー40およびレンズ42によって放射されるビームの他の50%は、第2の位置高感度検出器54に向かって横に反射される。これも、プローブの固定構造33に設置される。しかしながら、ビームスプリッタ44と位置高感度検出器54との間に、垂直方向に移動可能なキャリッジ32に設置されたレンズ56を通してビームが通過する。したがって、キャリッジの垂直の位置に応じて、検出器54上のビームの垂直の位置が反らされる。スタイラスアセンブリ26が長さ方向において剛体であるため、検出器54の出力は、スタイラスチップ38の縦の位置(Z)の直接的な測定量である。垂直の動きに対する検出器54の応答は、レンズ56の適切な選択によって増幅される。
【0023】
位置高感度検出器54は、単に、一次元検出器でもよい。しかしながら、検出器52と同様の二次元検出器を用いることがより便利であり、他の次元の出力は単に無視する。
【0024】
したがって、検出器52,54の出力は、連節ヘッドのハウジング24に対するスタイラスチップ38の三次元位置の直接的な表示を与える。これは、走査作業中におけるチップ位置を測定するために、既知の方法によって、ヘッド内の変換器および機械の出力と組み合わせることができる。
【0025】
例えば、CCDや他のカメラチップ(camera chip)、またはクワッドセル(quad cell)などの他の検出器を位置高感度検出器として用いることができる。
【0026】
図3は、他の実施形態の断面を示す。プローブ60は連節ヘッド62上に設置され、交換可能で運動学的に設置されるスタイラスアセンブリ64を有する。半導体レーザーつまり他の光源66、レンズ68、およびビームスプリッタ70は、プローブの相対的に固定される固定構造の上に設置されて、図2Aと同様にライトビームを発生する。図2Aと同様に、スタイラスアセンブリ64は、2つの平板スプリングつまり各ダイアフラム36を介して、垂直移動可能なキャリッジ72上に設置される。
【0027】
ライトビームの1つは、スタイラスアセンブリ64の中空管状のスタイラス74を通過し、逆反射されてスタイラスに戻されて、ビームスプリッタ70により、X,Y位置高感度検出器76に向かって方向付けられる。さらにまた、鏡背面(mirrored back surface)付きのGRINレンズ78によって逆反射体(retroreflector)が形成されることを除いて、これは図2Aおよび2Bと同様である。この配置は、前述したように、スタイラスチップ82のX,Yの反りを測定する。本実施形態においては、先の実施形態は逆に、キャリッジ72の垂直(Z)の動き(そして、スタイラスチップ82の動き)は、垂直移動可能なキャリッジ72上に設置された位置高感度検出器84によって測定される。
【0028】
したがって、さらに検出器76,84の出力は、ヘッド62に対するスタイラスチップのX,Y,およびZ方向の動きの直接的な測定量をもたらす。
【0029】
スタイラスチップの動きを測定するために、他の配置が予想できる。例えば、Z方向の動きは、キャリッジ32(図2A)または72(図3)の垂直の動きを許容する平板スプリング上に設置されたストレインゲージによって、測定することができる。あるいは、キャリッジと固定構造との間の垂直の動きを測定するために、他の変換器を備えることができる。あるいは、スタイラスを通るライトビームに沿う距離は、干渉的、つまりライトビームのフライトの時間によって計測することができる
ビームスプリッタ42または70、および検出器52,54または76,84の他の配置が予想できる。例えば、図3において、ビームスプリッタ70および検出器76は、X,Yの動きを測定するために、移動可能なキャリッジ72に共に設置することができる。そして検出器84は、プローブの相対的に固定される固定構造に設置され、これにより、ブームスプリッタ70の垂直の動きがライトビームを検出器84上にて垂直に動かして、スタイラスチップ82の垂直の動きを測定する。
【0030】
他の実施形態において、逆反射体を備える代わりに、図7に示すように、レンズ12付きのスタイラス36の底端部に半導体レーザーつまり他の光源40を設置してもよい。あるいは、それは実際にスタイラスチップ38内でもよい。そして、それはライトビームをスタイラスからビームスプリッタに向ける。半導体レーザーに対する電気的な接続は、スタイラスの側壁内に一体的に備えてもよい。
【0031】
図7に代わって、図2Aのようにプローブ本体内に位置する光源からの光を受けるために、検出器52は、任意的にレンズ120なしに、スタイラスの底端部またはスタイラスチップ内に配置してもよい。それは、その配置がスタイラスチップの横の動きのみを検出して、スタイラスの傾斜(tilting)に反応しない利点を有する。
【0032】
上記の実施形態は、走査作業中にワークピースに接するスタイラスチップを含んでいる。しかしながら、本発明は非接触チップにも有効であり、それは、例えば、容量的、誘導的、または光学的な非接触変換器を用いてワークピース表面を検知する。そして、検出器52,54または76,84は、例えば、走査移動の加速中または重力下における垂下中の内力によって生じるスタイラスの撓みを測定する。
【0033】
上記の実施形態において、図2Bおよび3は、スタイラスチップ38,82をスタイラス36,74の端部に設置するスタイラス延長部86を示す。それは、特別な測定タスクのためにより長いスタイラス要求される図示のものよりも長くてもよい。そのスタイラス延長部は、ほとんどの撓みがスタイラス36,74に生じるように、スタイラス36,74よりも堅くつくってもよい。あるいは、それは同様の堅さをもってもよい。いずれにしても、スタイラス36,74で測定される曲がりは、スタイラスと延長部の総合アセンブリ(total assembly)の曲がりに比例する。
【0034】
図4は、スタイラスアセンブリの他の実施形態を示し、それは、図2Bおよび3におけるスタイラスアセンブリ26,64と置き換えてもよい。中空の比較的柔軟性のスタイラス88は、前述したようなスタイラスチップ90を有する。スタイラス88内には、比較的堅いロッド92がある。一端94において、これは、そこに、つまりスタイラスチップ90の近くに取り付けられる。他端96は自由である。
【0035】
ロッドの自由端96には、何か適したデザインの逆反射体98が設置される。これは、先の実施形態のように、ビームスプリッタ44,70からのライトビームをそこに反射する。ロッド92は比較的堅いため、その自由端96の動きは、スタイラス88が曲がったときにチップ90の動きを許容する。
【0036】
あるいは、図5に示すように、ロッド92の自由端96上の第1の素子100と、プローブの固定構造上の第2の素子102と、を含むX,Y変換器があってもよい。このX,Y変換器は、容量的、誘導的(例えば、渦電流)、または光学的エンコーダであってもよい。
【0037】
図6は、他のスタイラスアセンブリを示す。それは、平板スプリングつまりダイアフラム106上に設置されたスタイラス104を有する。したがって、スタイラスアセンブリの有効な曲がりは、スタイラス104自体の曲がりに頼る代わりに、平板スプリング106(破線によって示される)の曲がりによってもたらされる。他の選択は、管状スタイラス104のZ方向における堅さを維持しつつ、その曲がりを許容するために、その設置点に近い局所的な穿孔によって、管状スタイラス104が弱められることになる。
【0038】
スタイラス104の上端部には、例えば、レンズ108とミラー110を含む適切な逆反射体が備わる。これは、先の実施形態のように、ビームスプリッタ44,70からのライトビームをそれに戻す。もしもレンズ108が省かれると、横変位の代わりに、傾斜変位されるが、それでもビームを同じ通路内に戻すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置測定装置に用いる表面検出装置であって、
プローブ本体と、
ワークピース検出用のスタイラスチップを有する長いスタイラスであって、前記スタイラスは、前記プローブ本体に交換可能に取付けられ、かつ縦変位のために前記プローブ本体に設置され、前記スタイラスチップには横変位が与えられる、スタイラスと、
前記縦変位を測定するための前記プローブ本体内の手段と、
前記交換可能なスタイラスに沿ってライトビームを投光することにより、前記チップの前記横変位を測定する光変換システムと、
を備えることを特徴とする表面検出装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−57671(P2013−57671A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−228071(P2012−228071)
【出願日】平成24年10月15日(2012.10.15)
【分割の表示】特願2008−508296(P2008−508296)の分割
【原出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(391002306)レニショウ パブリック リミテッド カンパニー (166)
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】