説明

光学フィルム、光学フィルムの製造方法、光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置。

【課題】広範囲にわたり高いコントラスト比を有し、カラーシフトを抑制可能な光学フィルム、並びに光学フィルムの製造方法、該光学フィルムを用いた光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の光学フィルムは下記式(1)〜(6)を満たすことを特徴とする。
(1)150≦Re(550)≦400
(2)−100≦Rth(550)≦100
(3)0.1<Re(450)/Re(550)<0.95
(4)1.03<Re(650)/Re(550)<1.93
(5)0.4<(Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))<0.95
(6)1.05<(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))<1.90
(式(1)〜(6)中、Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲にわたり高いコントラスト比を有し、カラーシフトを抑制可能な光学フィルム、並びに光学フィルムの製造方法、該光学フィルムを用いた光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低電圧・低消費電力で小型化・薄膜化が可能など様々な利点からパーソナルコンピューターや携帯機器のモニター、テレビ用途に広く利用されている。このような液晶表示装置は液晶セル内の液晶分子の配列状態により様々なモードが提案されているが、従来は液晶セルの下側基板から上側基板に向かって約90°捩れた配列状態になるTNモードが主流であった。
一般に液晶表示装置は液晶セル、光学補償シート、偏光子から構成される。光学補償シートは画像着色を解消したり、視野角を拡大するために用いられており、延伸した複屈折フィルムや透明フィルムに液晶を塗布したフィルムが使用されている。しかしながら、大画面で様々な角度から見ることが想定されるテレビ用途の液晶表示装置は視野角依存性に対する要求が厳しく、さらなる視野角特性の向上の要請からIPS(In−Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、VA(Vertically Aligned)モードなど、TNモードとは異なる液晶表示装置が研究されている。特にIPSモードはコントラストが高く、視野角特性が良好であることから、比較的製造の歩留まりが高いことからTV用の液晶表示装置として着目されている。
【0003】
IPSモードにおいては、黒表示時の対角位斜め入射方向での僅かな光漏れが表示品質の低下の原因として顕在化してきた。この色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、液晶層と偏光板の間に複屈折特性を有する光学補償材料を配置することがIPSモードにおいても検討されている。例えばNzが0.4〜0.6であり、面内位相差が200〜350nmの位相差膜を用いることにより直交偏光板を斜めから見た場合の偏光軸交差角度の直交からのズレに基づく光漏れを抑える発明が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−4642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらこれらの方法はある波長域(例えば550nm付近の緑光)に対して光漏れを低減しているのみであり、それ以外の波長域(例えば450nm付近の青光、650nm付近の赤光)に対する光漏れは考慮していない。このため例えば黒表示をして斜めから観察すると、青色や赤色に着色するいわゆるカラーシフトの問題が解決されていなかった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、広範囲にわたり高いコントラスト比を有し、カラーシフトを抑制可能な光学フィルム、光学フィルムの製造方法、およびこの製造方法によって製造された光学フィルム、また、それらを用いた光学補償フィルム、偏光板、さらには液晶表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的は以下の〔1〕〜〔12〕の手段によって達成された。
〔1〕
下記式(1)〜(6)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
(1)150≦Re(550)≦400
(2)−100≦Rth(550)≦100
(3)0.1<Re(450)/Re(550)<0.95
(4)1.03<Re(650)/Re(550)<1.93
(5)0.4<(Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))<0.95
(6)1.05<(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))<1.90
(式(1)〜(6)中、Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
〔2〕
光学フィルムがセルロースアシレートを含むことを特徴とする〔1〕に記載の光学フィルム。
〔3〕
光学フィルムの膜厚が10〜300μmであることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の光学フィルム。
〔4〕
フィルムの長手方向または幅方向のいずれか一方を延伸させる延伸工程と、もう一方の方向を収縮させる収縮工程を含み、かつ、前記延伸工程および/または収縮工程前の膜厚と比較して、膜厚を増加させることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
〔5〕
加熱により収縮することによって膜厚を増加させることを特徴とする〔4〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔6〕
フィルムをテンタークリップによって把持、搬送し、該テンタークリップの搬送方向の間隔を狭めることで収縮させる収縮工程、およびこれと略直交する方向に該フィルムを延伸させる延伸工程を含むことを特徴とする〔4〕または〔5〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔7〕
フィルムをテンタークリップによって把持、搬送し、該テンタークリップの搬送方向の間隔を広げることで延伸する延伸工程、およびこれと略直交する方向に該フィルムを収縮させる工程を含むことを特徴とする〔4〕または〔5〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔8〕
〔4〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の製造方法で作成されたことを特徴とする光学フィルム。
〔9〕
〔1〕〜〔3〕、あるいは〔8〕のいずれかに記載の光学フィルムに、さらに下記式(7)を満たす光学異方性層を形成してなることを特徴とする光学補償フィルム。
(7)Re(550)=0〜200(nm)かつ|Rth(550)|=0〜300(nm)
〔10〕
〔1〕〜〔3〕、あるいは〔8〕のいずれかに記載の光学フィルム、〔9〕に記載の光学補償フィルムの少なくとも1つを含むことを特徴とする偏光板。
〔11〕
〔1〕〜〔3〕、あるいは〔8〕のいずれかに記載の光学フィルム、〔9〕に記載の光学補償フィルム、〔10〕に記載の偏光板、のいずれか1つを含むことを特徴とする液晶表示装置。
〔12〕
液晶セルがIPSモードである〔11〕に記載の液晶表示装置。
〔13〕
〔10〕に記載の偏光板と、下記式(8)を満たす光学フィルムを偏光板の保護フィルムとして有する偏光板と、IPSセルとを含む液晶表示装置。
(8)|Re(550)|=0〜10(nm)かつ|Rth(550)|=0〜25(nm)
【発明の効果】
【0008】
本発明は、本発明者らの鋭意検討の結果得られた知見に基づいて完成されたものであり、光学フィルムの面内のレターデーションと厚さ方向のレターデーションの波長分散を独立に制御し、その光学的な最適値を求め、液晶セル、特にIPSモードの液晶セルの黒状態の視角補償をほぼ全ての波長において可能にするものである。その結果、本発明の液晶表示装置は、黒表示時の斜め方向の光抜けが軽減され、視野角コントラストが著しく改善されている。また、本発明の液晶表示装置は、黒表示時の斜め方向の光抜けをほぼ全ての可視光波長領域で抑えることができるため、従来問題であった視野角に依存した黒表示時の色ずれが大きく改善されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、「45°」、「略平行」あるいは「略直交」とは、厳密な角度±5°未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。また、角度について、「+」は時計周り方向を意味し、「−」は反時計周り方向を意味するものとする。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380nm〜780nmのことをいう。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
【0010】
本明細書において「偏光板」とは、特に断らない限り、長尺の偏光板及び液晶表示装置に組み込まれる大きさに裁断された(本明細書において、「裁断」には「打ち抜き」および「切り出し」等も含むものとする)偏光板の両者を含む意味で用いられる。また、本明細書では「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体のことを意味するものとする。
【0011】
次に、本発明の光学フィルムについて、光学特性、原料、製造方法等について、より詳細に説明する。
【0012】
[光学フィルム]
本発明は下記式(1)〜(6)を満たすことを特徴とする光学フィルムに関する。
【0013】
(1)150≦Re(550)≦400
(2)−100≦Rth(550)≦100
(3)0.1<Re(450)/Re(550)<0.95
(4)1.03<Re(650)/Re(550)<1.93
(5)0.4<(Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))<0.95
(6)1.05<(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))<1.90
【0014】
(式(1)〜(6)中、Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【0015】
本発明は、入射光が法線方向とそれに対して傾いた斜め方向、例えば極角60度方向とで、レターデーションの波長分散が異なる光学特性をフィルムに持たせ、それを光学補償に積極的に用いることを特徴としている。本発明の範囲は、液晶層の表示モードによって限定されず、VAモード、IPSモード、ECBモード、TNモードおよびOCBモード等、いずれの表示モードの液晶層を有する液晶表示装置にも用いることができるが特にIPSモードにおいて好ましく用いることが出来る。
【0016】
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置に対し光学補償能を有する位相差フィルムとして有効に用いることができ、特にIPSモードの液晶表示装置の視野角コントラストの拡大、及び視野角に依存した色ずれの軽減に寄与する。本発明の光学フィルムは、観察者側の偏光板と液晶セルとの間に配置しても、背面側の偏光板と液晶セルとの間に配置してもよいし、双方に配置してもよい。例えば、独立の部材として液晶表示装置内部に組み込むこともできるし、また、偏光膜を保護する保護膜に、前記光学特性を付与して光学補償能を有する位相差フィルムとしても機能させて、偏光板の一部材として、液晶表示装置内部に組み込むこともできる。
【0017】
上記式(3)および式(4)は、Reの波長分散性を表わしており、波長が増加するに従い、Reは大きくなることを表している(逆分散性)。また、上記式(5)および(6)は、各波長B(450nm)、G(550nm)、R(650nm)におけるReとRthの関係を示しており、短波長側ほど大きく、波長が増加するにしたがって位相差が小さくなるような波長分散性を持つセル内の液晶を光学補償するため、Reの逆分散性(式3、4)が必要であり、またこのReがB、G、Rにおいて増加してゆく度合いよりもRthの波長分散の増加度合いが小さくなること表している。当該光学特性を有することにより、液晶ディスプレイ上での視野角の色味変化を抑制することが可能となり、本発明の効果が得られることを見出した。
【0018】
本発明の光学フィルムは、上記した様に、下記式(1)、(2)を満たす必要がある。
(1)150≦Re(550)≦400
(2)−100≦Rth(550)≦100
好ましくは、
(1−2)200≦Re(550)≦350
(2−2)−70≦Rth(550)≦70
であり、さらに好ましくは、
(1−3)230≦Re(550)≦320
(2−3)−30≦Rth(550)≦30
である。
【0019】
また本発明の光学フィルムは、下記式(3)〜(6)を満たす必要がある。
(3)0.1<Re(450)/Re(550)<0.95
(4)1.03<Re(650)/Re(550)<1.93
(5)0.4<(Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))<0.95
(6)1.05<(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))<1.90
の関係を満たしている。
好ましくは、
(3−2)0.2<Re(450)/Re(550)<0.9、
(4−2)1.05<Re(650)/Re(550)<1.9、
(5−2)0.5<(Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))<0.9
(6−2)1.1<(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))<1.8
である。
【0020】
(上記式(1)〜(6)、(1−2)、(2−2)、(1−3)、(2−3)、(3−2)〜(6−2)中、Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【0021】
(レターデーション測定)
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)はそれぞれ、波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)は、KOBRA 21ADH又はWR{王子計測機器(株)製}を用いて、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定する。
【0022】
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、フィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10°ステップで、それぞれその傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点についてのレターデーション値を測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
【0023】
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
【0024】
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
数式(1):
【0025】
【数1】

【0026】
上記のRe(θ)は、法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。数式(1)において、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
【0027】
数式(2):
【0028】
【数2】

【0029】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
【0030】
Rth(λ)は、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップでそれぞれその傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点についてのレターデーション値を測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
【0031】
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY & SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。
【0032】
主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0033】
また、光学フィルムの厚みに関しては、特に制限はないが、10〜300μm以下、好ましくは40〜250μmであり、より好ましくは60〜250μmであり、80〜200μmであることが特に好ましい。
【0034】
上記特性を満足する本発明の光学フィルムを主として構成するポリマー材料について、以下にて具体的に説明する。
【0035】
[光学フィルムの材料]
本発明の光学フィルムを形成する材料としては、光学的な透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるポリマーが好ましく、上述のReの波長分散、Rthの波長分散が、上述した式(3)〜(6)を満たす範囲であればどのような材料を用いても良い。例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の光学フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0036】
また、本発明の光学フィルムを形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
【0037】
更に、本発明の光学フィルムを形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。以下にセルロースアシレートについて詳細を説明する。
【0038】
[セルロースアシレート原料綿]
本発明の光学フィルムに用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、セルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0039】
[セルロースアシレート置換度]
次に上述のセルロースを原料に製造されるセルロースアシレートについて記載する。セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。セルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。
【0040】
上述のようにセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることが好ましい。さらには置換度が2.56〜3.00であることがより好ましく、2.75〜3.00であることが特に好ましい。
【0041】
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数3〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
【0042】
本発明の発明者が鋭意検討した結果、上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基が、実質的にアセチル基、プロピオニル基及びブタノイル基から選ばれる少なくとも2種類である場合においては、その全置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性が低下できることがわかった。より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、さらに好ましくは2.65〜3.00である。
【0043】
[セルロースアシレートの重合度]
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538に詳細に記載されている。特に、アシル置換基が、実質的にアセチル基のみからなり、平均重合度が180〜550であるセルロースアシレートを用いて本発明の透明フィルムを作製すると、良好な性能を発揮できる。
【0044】
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。2.0〜4.0であることが好ましく、2.0〜3.5であることがさらに好ましく、2.3〜3.3であることが最も好ましい。
【0045】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0046】
セルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布などが前述した範囲であることが好ましく、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
【0047】
[光学フィルムへの添加剤]
本発明の光学フィルム溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、レターデーション発現剤、レターデーション低減剤、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0048】
本発明の光学フィルムにおいては、レターデーションを増加させる化合物として、円盤状化合物または棒状化合物からなるレターデーション発現剤を好ましく用いることができる。
【0049】
(レターデーション発現剤)
本発明の光学フィルムは、とくにRthの波長分散の短波側を増大させ、順分散化するために、円盤状化合物または棒状化合物からなるレターデーション発現剤を1種以上含有していてもよい。レターデーション発現剤によって面内のレターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthを所望の値に近づけ、さらに、各波長におけるReおよびRthが式(3)〜(6)を満たす波長分散特性が良好となる。とりわけ、本発明においては、前述した光学フィルムの延伸操作によりReの波長分散を所望の範囲にすることが可能であるため、レターデーション発現剤はそのRe発現を助けるだけでなく、主としてRthの波長分散を所望の範囲の値に近づける助けとなる。Rthの波長分散を所望の範囲に近づけるとは、短波領域に吸収をもつ円盤状化合物または棒状化合物がフィルム中で略水平に配向することにより、短波領域のRthを長波側よりも相対的に上昇させることによると考察できる。
【0050】
上気短波領域のRthを長波側よりも相対的に上昇させるには、円盤状化合物または棒状化合物ともに好ましく用いることができるが、フィルム中で略水平に配向する能力の点から、円盤状化合物を用いることがより好ましい。
【0051】
レターデーション発現剤とは、本発明の光学フィルムに含有されるセルロースアシレート等のポリマー成分(以下「ポリマー成分」という場合がある)100質量部に対して1質量部の添加により、ReおよびRthの値をフィルム膜厚1ミクロンあたり0.11以上上昇させるものである。より好ましくはフィルム膜厚1ミクロンあたり0.2以上、さらに好ましくはフィルム膜厚1ミクロンあたり0.3以上レターデーションを上昇させるものである。
本発明において用いることができるレターデーション発現剤としては、棒状又は円盤状化合物からなるものを挙げることができる。上記円盤状又は棒状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
円盤状のレターデーション発現剤は、前記ポリマー成分100質量部に対して、0.05乃至30質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至20質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2乃至15質量部の範囲で使用することがさらに好ましく、0.5乃至10質量部の範囲で使用することが最も好ましい。
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、ポリマー成分100質量部に対して0.1乃至30質量部であることが好ましく、0.5乃至20質量部であることがさらに好ましい。
円盤状化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。
二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
棒状または円盤状化合物からなる前記レターデーション発現剤は可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0052】
(円盤状化合物)
以下に本発明にて好ましく用いられる円盤状化合物からなるレターデーション発現剤の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
本発明では、下記一般式(1)で表される化合物を円盤状化合物からなるレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。一般式(1)で表される化合物は、分子構造がトリアジン環を中心として回転対称性を有するので、レターデーション発現性が高く、かつ安価に製造可能であり、好ましい。
一般式(1)
【0053】
【化1】

【0054】
上記一般式(1)中:
1は、各々独立に、オルト位、メタ位およびパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環または複素環を表す。
1は、各々独立に、単結合または−NR3−を表す。ここで、R3は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。
【0055】
1が表す芳香族環は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。
1が表す芳香族環はいずれかの置換位置に少なくとも一つの置換基を有してもよい。前記置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基およびアシル基が含まれる。
【0056】
1が表す複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジルまたは4−ピリジル)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。
1がそれぞれ単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。
【0057】
【化2】

【0058】
一般式(1)中、X1は単結合または−NR3−を表す。R3は独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。
3が表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8がさらにまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ)およびアシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ)が含まれる。
【0059】
3が表すアルケニル基は、環状アルケニル基であっても鎖状アルケニル基であってもよいが、鎖状アルケニル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基を表すのがより好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがさらにまた好ましく、2〜6であることが最も好ましい。アルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様である。
3が表す芳香族環基および複素環基は、R1が表す芳香族環および複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基および複素環基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例にはR1の芳香族環および複素環の置換基と同様である。
【0060】
一般式(1)で表される円盤状化合物からなるレターデーション発現剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい。
また、一般式(1)で表される円盤状化合物からなるレターデーション発現剤と共にUV吸収剤を併用してもよい。UV吸収剤の使用量は一般式(1)で表される円盤状化合物からなるレターデーション発現剤100質量部に対して10質量部以下が好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。
【0061】
以下に本発明で使用される一般式(1)で表される円盤状化合物からなるレターデーション発現剤の具体例を示す。各例に示す複数のRは、同一の基を意味する。Rの定義は具体例番号と共に式の後に示す。
【0062】
【化3】

【0063】
(1)フェニル
(2)3−エトキシカルボニルフェニル
(3)3−ブトキシフェニル
(4)m−ビフェニリル
(5)3−フェニルチオフェニル
(6)3−クロロフェニル
(7)3−ベンゾイルフェニル
(8)3−アセトキシフェニル
(9)3−ベンゾイルオキシフェニル
(10)3−フェノキシカルボニルフェニル
(11)3−メトキシフェニル
(12)3−アニリノフェニル
(13)3−イソブチリルアミノフェニル
(14)3−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(15)3−(3−エチルウレイド)フェニル
(16)3−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(17)3−メチルフェニル
(18)3−フェノキシフェニル
(19)3−ヒドロキシフェニル
【0064】
(20)4−エトキシカルボニルフェニル
(21)4−ブトキシフェニル
(22)p−ビフェニリル
(23)4−フェニルチオフェニル
(24)4−クロロフェニル
(25)4−ベンゾイルフェニル
(26)4−アセトキシフェニル
(27)4−ベンゾイルオキシフェニル
(28)4−フェノキシカルボニルフェニル
(29)4−メトキシフェニル
(30)4−アニリノフェニル
(31)4−イソブチリルアミノフェニル
(32)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(33)4−(3−エチルウレイド)フェニル
(34)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(35)4−メチルフェニル
(36)4−フェノキシフェニル
(37)4−ヒドロキシフェニル
【0065】
(38)3,4−ジエトキシカルボニルフェニル
(39)3,4−ジブトキシフェニル
(40)3,4−ジフェニルフェニル
(41)3,4−ジフェニルチオフェニル
(42)3,4−ジクロロフェニル
(43)3,4−ジベンゾイルフェニル
(44)3,4−ジアセトキシフェニル
(45)3,4−ジベンゾイルオキシフェニル
(46)3,4−ジフェノキシカルボニルフェニル
(47)3,4−ジメトキシフェニル
(48)3,4−ジアニリノフェニル
(49)3,4−ジメチルフェニル
(50)3,4−ジフェノキシフェニル
(51)3,4−ジヒドロキシフェニル
(52)2−ナフチル
【0066】
(53)3,4,5−トリエトキシカルボニルフェニル
(54)3,4,5−トリブトキシフェニル
(55)3,4,5−トリフェニルフェニル
(56)3,4,5−トリフェニルチオフェニル
(57)3,4,5−トリクロロフェニル
(58)3,4,5−トリベンゾイルフェニル
(59)3,4,5−トリアセトキシフェニル
(60)3,4,5−トリベンゾイルオキシフェニル
(61)3,4,5−トリフェノキシカルボニルフェニル
(62)3,4,5−トリメトキシフェニル
(63)3,4,5−トリアニリノフェニル
(64)3,4,5−トリメチルフェニル
(65)3,4,5−トリフェノキシフェニル
(66)3,4,5−トリヒドロキシフェニル
【0067】
【化4】

【0068】
(67)フェニル
(68)3−エトキシカルボニルフェニル
(69)3−ブトキシフェニル
(70)m−ビフェニリル
(71)3−フェニルチオフェニル
(72)3−クロロフェニル
(73)3−ベンゾイルフェニル
(74)3−アセトキシフェニル
(75)3−ベンゾイルオキシフェニル
(76)3−フェノキシカルボニルフェニル
(77)3−メトキシフェニル
(78)3−アニリノフェニル
(79)3−イソブチリルアミノフェニル
(80)3−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(81)3−(3−エチルウレイド)フェニル
(82)3−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(83)3−メチルフェニル
(84)3−フェノキシフェニル
(85)3−ヒドロキシフェニル
【0069】
(86)4−エトキシカルボニルフェニル
(87)4−ブトキシフェニル
(88)p−ビフェニリル
(89)4−フェニルチオフェニル
(90)4−クロロフェニル
(91)4−ベンゾイルフェニル
(92)4−アセトキシフェニル
(93)4−ベンゾイルオキシフェニル
(94)4−フェノキシカルボニルフェニル
(95)4−メトキシフェニル
(96)4−アニリノフェニル
(97)4−イソブチリルアミノフェニル
(98)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(99)4−(3−エチルウレイド)フェニル
(100)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(101)4−メチルフェニル
(102)4−フェノキシフェニル
(103)4−ヒドロキシフェニル
【0070】
(104)3,4−ジエトキシカルボニルフェニル
(105)3,4−ジブトキシフェニル
(106)3,4−ジフェニルフェニル
(107)3,4−ジフェニルチオフェニル
(108)3,4−ジクロロフェニル
(109)3,4−ジベンゾイルフェニル
(110)3,4−ジアセトキシフェニル
(111)3,4−ジベンゾイルオキシフェニル
(112)3,4−ジフェノキシカルボニルフェニル
(113)3,4−ジメトキシフェニル
(114)3,4−ジアニリノフェニル
(115)3,4−ジメチルフェニル
(116)3,4−ジフェノキシフェニル
(117)3,4−ジヒドロキシフェニル
(118)2−ナフチル
【0071】
(119)3,4,5−トリエトキシカルボニルフェニル
(120)3,4,5−トリブトキシフェニル
(121)3,4,5−トリフェニルフェニル
(122)3,4,5−トリフェニルチオフェニル
(123)3,4,5−トリクロロフェニル
(124)3,4,5−トリベンゾイルフェニル
(125)3,4,5−トリアセトキシフェニル
(126)3,4,5−トリベンゾイルオキシフェニル
(127)3,4,5−トリフェノキシカルボニルフェニル
(128)3,4,5−トリメトキシフェニル
(129)3,4,5−トリアニリノフェニル
(130)3,4,5−トリメチルフェニル
(131)3,4,5−トリフェノキシフェニル
(132)3,4,5−トリヒドロキシフェニル
【0072】
【化5】

【0073】
(133)フェニル
(134)4−ブチルフェニル
(135)4−(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(136)4−(5−ノネニル)フェニル
(137)p−ビフェニリル
(138)4−エトキシカルボニルフェニル
(139)4−ブトキシフェニル
(140)4−メチルフェニル
(141)4−クロロフェニル
(142)4−フェニルチオフェニル
(143)4−ベンゾイルフェニル
(144)4−アセトキシフェニル
(145)4−ベンゾイルオキシフェニル
(146)4−フェノキシカルボニルフェニル
(147)4−メトキシフェニル
(148)4−アニリノフェニル
(149)4−イソブチリルアミノフェニル
(150)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(151)4−(3−エチルウレイド)フェニル
(152)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(153)4−フェノキシフェニル
(154)4−ヒドロキシフェニル
【0074】
(155)3−ブチルフェニル
(156)3−(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(157)3−(5−ノネニル)フェニル
(158)m−ビフェニリル
(159)3−エトキシカルボニルフェニル
(160)3−ブトキシフェニル
(161)3−メチルフェニル
(162)3−クロロフェニル
(163)3−フェニルチオフェニル
(164)3−ベンゾイルフェニル
(165)3−アセトキシフェニル
(166)3−ベンゾイルオキシフェニル
(167)3−フェノキシカルボニルフェニル
(168)3−メトキシフェニル
(169)3−アニリノフェニル
(170)3−イソブチリルアミノフェニル
(171)3−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(172)3−(3−エチルウレイド)フェニル
(173)3−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(174)3−フェノキシフェニル
(175)3−ヒドロキシフェニル
【0075】
(176)2−ブチルフェニル
(177)2−(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(178)2−(5−ノネニル)フェニル
(179)o−ビフェニリル
(180)2−エトキシカルボニルフェニル
(181)2−ブトキシフェニル
(182)2−メチルフェニル
(183)2−クロロフェニル
(184)2−フェニルチオフェニル
(185)2−ベンゾイルフェニル
(186)2−アセトキシフェニル
(187)2−ベンゾイルオキシフェニル
(188)2−フェノキシカルボニルフェニル
(189)2−メトキシフェニル
(190)2−アニリノフェニル
(191)2−イソブチリルアミノフェニル
(192)2−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(193)2−(3−エチルウレイド)フェニル
(194)2−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(195)2−フェノキシフェニル
(196)2−ヒドロキシフェニル
【0076】
(197)3,4−ジブチルフェニル
(198)3,4−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(199)3,4−ジフェニルフェニル
(200)3,4−ジエトキシカルボニルフェニル
(201)3,4−ジドデシルオキシフェニル
(202)3,4−ジメチルフェニル
(203)3,4−ジクロロフェニル
(204)3,4−ジベンゾイルフェニル
(205)3,4−ジアセトキシフェニル
(206)3,4−ジメトキシフェニル
(207)3,4−ジ−N−メチルアミノフェニル
(208)3,4−ジイソブチリルアミノフェニル
(209)3,4−ジフェノキシフェニル
(210)3,4−ジヒドロキシフェニル
【0077】
(211)3,5−ジブチルフェニル
(212)3,5−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(213)3,5−ジフェニルフェニル
(21
4)3,5−ジエトキシカルボニルフェニル
(215)3,5−ジドデシルオキシフェニル
(216)3,5−ジメチルフェニル
(217)3,5−ジクロロフェニル
(218)3,5−ジベンゾイルフェニル
(219)3,5−ジアセトキシフェニル
(220)3,5−ジメトキシフェニル
(221)3,5−ジ−N−メチルアミノフェニル
(222)3,5−ジイソブチリルアミノフェニル
(223)3,5−ジフェノキシフェニル
(224)3,5−ジヒドロキシフェニル
【0078】
(225)2,4−ジブチルフェニル
(226)2,4−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(227)2,4−ジフェニルフェニル
(228)2,4−ジエトキシカルボニルフェニル
(229)2,4−ジドデシルオキシフェニル
(230)2,4−ジメチルフェニル
(231)2,4−ジクロロフェニル
(232)2,4−ジベンゾイルフェニル
(233)2,4−ジアセトキシフェニル
(234)2,4−ジメトキシフェニル
(235)2,4−ジ−N−メチルアミノフェニル
(236)2,4−ジイソブチリルアミノフェニル
(237)2,4−ジフェノキシフェニル
(238)2,4−ジヒドロキシフェニル
【0079】
(239)2,3−ジブチルフェニル
(240)2,3−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(241)2,3−ジフェニルフェニル
(242)2,3−ジエトキシカルボニルフェニル
(243)2,3−ジドデシルオキシフェニル
(244)2,3−ジメチルフェニル
(245)2,3−ジクロロフェニル
(246)2,3−ジベンゾイルフェニル
(247)2,3−ジアセトキシフェニル
(248)2,3−ジメトキシフェニル
(249)2,3−ジ−N−メチルアミノフェニル
(250)2,3−ジイソブチリルアミノフェニル
(251)2,3−ジフェノキシフェニル
(252)2,3−ジヒドロキシフェニル
【0080】
(253)2,6−ジブチルフェニル
(254)2,6−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(255)2,6−ジフェニルフェニル
(256)2,6−ジエトキシカルボニルフェニル
(257)2,6−ジドデシルオキシフェニル
(258)2,6−ジメチルフェニル
(259)2,6−ジクロロフェニル
(260)2,6−ジベンゾイルフェニル
(261)2,6−ジアセトキシフェニル
(262)2,6−ジメトキシフェニル
(263)2,6−ジ−N−メチルアミノフェニル
(264)2,6−ジイソブチリルアミノフェニル
(265)2,6−ジフェノキシフェニル
(266)2,6−ジヒドロキシフェニル
【0081】
(267)3,4,5−トリブチルフェニル
(268)3,4,5−トリ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(269)3,4,5−トリフェニルフェニル
(270)3,4,5−トリエトキシカルボニルフェニル
(271)3,4,5−トリドデシルオキシフェニル
(272)3,4,5−トリメチルフェニル
(273)3,4,5−トリクロロフェニル
(274)3,4,5−トリベンゾイルフェニル
(275)3,4,5−トリアセトキシフェニル
(276)3,4,5−トリメトキシフェニル
(277)3,4,5−トリ−N−メチルアミノフェニル
(278)3,4,5−トリイソブチリルアミノフェニル
(279)3,4,5−トリフェノキシフェニル
(280)3,4,5−トリヒドロキシフェニル
【0082】
(281)2,4,6−トリブチルフェニル
(282)2,4,6−トリ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(283)2,4,6−トリフェニルフェニル
(284)2,4,6−トリエトキシカルボニルフェニル
(285)2,4,6−トリドデシルオキシフェニル
(286)2,4,6−トリメチルフェニル
(287)2,4,6−トリクロロフェニル
(288)2,4,6−トリベンゾイルフェニル
(289)2,4,6−トリアセトキシフェニル
(290)2,4,6−トリメトキシフェニル
(291)2,4,6−トリ−N−メチルアミノフェニル
(292)2,4,6−トリイソブチリルアミノフェニル
(293)2,4,6−トリフェノキシフェニル
(294)2,4,6−トリヒドロキシフェニル
【0083】
(295)ペンタフルオロフェニル
(296)ペンタクロロフェニル
(297)ペンタメトキシフェニル
(298)6−N−メチルスルファモイル−8−メトキシ−2−ナフチル
(299)5−N−メチルスルファモイル−2−ナフチル
(300)6−N−フェニルスルファモイル−2−ナフチル
(301)5−エトキシ−7−N−メチルスルファモイル−2−ナフチル
(302)3−メトキシ−2−ナフチル
(303)1−エトキシ−2−ナフチル
(304)6−N−フェニルスルファモイル−8−メトキシ−2−ナフチル
(305)5−メトキシ−7−N−フェニルスルファモイル−2−ナフチル
(306)1−(4−メチルフェニル)−2−ナフチル
(307)6,8−ジ−N−メチルスルファモイル−2−ナフチル
(308)6−N−2−アセトキシエチルスルファモイル−8−メトキシ−2−ナフチル
(309)5−アセトキシ−7−N−フェニルスルファモイル−2−ナフチル
(310)3−ベンゾイルオキシ−2−ナフチル
【0084】
(311)5−アセチルアミノ−1−ナフチル
(312)2−メトキシ−1−ナフチル
(313)4−フェノキシ−1−ナフチル
(314)5−N−メチルスルファモイル−1−ナフチル
(315)3−N−メチルカルバモイル−4−ヒドロキシ−1−ナフチル
(316)5−メトキシ−6−N−エチルスルファモイル−1−ナフチル
(317)7−テトラデシルオキシ−1−ナフチル
(318)4−(4−メチルフェノキシ)−1−ナフチル
(319)6−N−メチルスルファモイル−1−ナフチル
(320)3−N,N−ジメチルカルバモイル−4−メトキシ−1−ナフチル
(321)5−メトキシ−6−N−ベンジルスルファモイル−1−ナフチル
(322)3,6−ジ−N−フェニルスルファモイル−1−ナフチル
【0085】
(323)メチル
(324)エチル
(325)ブチル
(326)オクチル
(327)ドデシル
(328)2−ブトキシ−2−エトキシエチル
(329)ベンジル
(330)4−メトキシベンジル
【0086】
【化6】

【0087】
(331)メチル
(332)フェニル
(333)ブチル
【0088】
【化7】

【0089】
一般式(1)で表されるレターデーション発現剤は、ポリマー原料100質量部に対して、0.01乃至20質量部、好ましくは0.5乃至10質量部用いられる。この範囲でレターデーション発現剤を用いることにより、フィルムのレターデーションを適宜に制御することができる。0.01質量部未満の使用では、レターデーションの上昇が少なくレターデーションを制御することができない。20質量部を超えての使用は、レターデーション発現剤がポリマー原料と相溶せず、フィルム中で結晶化してしまう。
【0090】
(棒状化合物)
本発明では前述の円盤状化合物の他に、直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。
【0091】
本発明では、250nmよりも短波長側に吸収極大を有する棒状化合物をRthの順分散化に有利な化合物として使用するが、一方で棒状化合物の特性から、面内のレターデーションReを有利に発現するレターデーション発現剤として用いることも好ましい。レターデーション発現剤の機能の観点では、棒状化合物は、少なくとも一つの芳香族環を有することが好ましく、少なくとも二つの芳香族環を有することがさらに好ましい。
【0092】
棒状化合物は、直線的な分子構造を有することが好ましい。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造の角度が140度以上であることを意味する。
【0093】
棒状化合物としては、下記式(I)で表される化合物が好ましい。
【0094】
(I) Ar1 −L1 −Ar2
【0095】
式(I)において、Ar1 およびAr2 は、それぞれ独立に、芳香族基である。本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基を含む。アリール基および置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性へテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性へテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子または硫黄原子がさらに好ましい。芳香族性へテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、および1,3,5−トリアジン環が含まれる。芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0096】
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ)、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基(例、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、スルファモイル、アルキルスルファモイル基(例、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル)、ウレイド、アルキルウレイド基(例、N−メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N,N,N'−トリメチルウレイド)、アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル、オクチル、イソプロピル、s−ブチル、t−アミル、シクロヘキシル、シクロペンチル)、アルケニル基(例、ビニル、アリル、ヘキセニル)、アルキニル基(例、エチニル、ブチニル)、アシル基(例、ホルミル、アセチル、ブチリル、ヘキサノイル、ラウリル)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、ブチリルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ラウリルオキシ)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ)、アリールオキシ基(例、フェノキシ)、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニルアミノ基(例、ブトキシカルボニルアミノ、ヘキシルオキシカルボニルアミノ)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ)、アリールチオ基(例、フェニルチオ)、アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル)、アミド基(例、アセトアミド、ブチルアミド基、ヘキシルアミド、ラウリルアミド)および非芳香族性複素環基(例、モルホリル、ピラジニル)が含まれる。
【0097】
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、カルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、アルキル置換アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基およびアルキル基が好ましい。アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分およびアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基、スルファモイル、アルキルスルファモイル基、ウレイド、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基および非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分およびアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびアルコキシ基が好ましい。
【0098】
式(I)において、L1 は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることがさらにまた好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。
【0099】
アルケニレン基およびアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましく、2乃至8であることがより好ましく、2乃至6であることがさらに好ましく、2乃至4であることがさらにまた好ましく、2(ビニレンまたはエチニレン)であることが最も好ましい。
【0100】
組み合わせからなる二価の連結基の例を示す。
L−1:−O−CO−アルキレン基−CO−O−
L−2:−CO−O−アルキレン基−O−CO−
L−3:−O−CO−アルケニレン基−CO−O−
L−4:−CO−O−アルケニレン基−O−CO−
L−5:−O−CO−アルキニレン基−CO−O−
L−6:−CO−O−アルキニレン基−O−CO−
【0101】
式(I)の分子構造において、L1 を挟んで、Ar1 とAr2 とが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。棒状化合物としては、下記式(II)で表される化合物がさらに好ましい。
【0102】
(II) Ar1 −L2 −X−L3 −Ar2
【0103】
式(II)において、Ar1 およびAr2 は、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基の定義および例は、式(I)のAr1 およびAr2 と同様である。
【0104】
式(II)において、L2 およびL3 は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、1乃至8であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることがさらにまた好ましく、1または2(メチレンまたはエチレン)であることが最も好ましい。L2 およびL3 は、−O−CO−または−CO−O−であることが特に好ましい。
【0105】
式(II)において、Xは、1,4−シクロへキシレン、ビニレンまたはエチニレンである。以下に、式(I)で表される化合物の具体例を示す。
【0106】
【化8】

【0107】
【化9】

【0108】
【化10】

【0109】
【化11】

【0110】
【化12】

【0111】
【化13】

【0112】
【化14】

【0113】
【化15】

【0114】
【化16】

【0115】
具体例(1)〜(34)、(41)、(42)は、シクロヘキサン環の1位と4位とに二つの不斉炭素原子を有する。ただし、具体例(1)、(4)〜(34)、(41)、(42)は、対称なメソ型の分子構造を有するため光学異性体(光学活性)はなく、幾何異性体(トランス型とシス型)のみ存在する。具体例(1)のトランス型(1-trans)とシス型(1-cis)とを、以下に示す。
【0116】
【化17】

【0117】
前述したように、棒状化合物は直線的な分子構造を有することが好ましい。そのため、トランス型の方がシス型よりも好ましい。具体例(2)および(3)は、幾何異性体に加えて光学異性体(合計4種の異性体)を有する。幾何異性体については、同様にトランス型の方がシス型よりも好ましい。光学異性体については、特に優劣はなく、D、Lあるいはラセミ体のいずれでもよい。具体例(43)〜(45)では、中心のビニレン結合にトランス型とシス型とがある。上記と同様の理由で、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
【0118】
その他、好ましい化合物を以下に示す。
【0119】
【化18】

【0120】
【化19】

【0121】
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。棒状化合物は、文献記載の方法を参照して合成できる。文献としては、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J. Am. Chem. Soc., 113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J. Org. Chem., 40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
【0122】
(具体例のスペクトル測定)
前記のレターデーション制御剤(10-trans)の紫外・可視領域(UV−vis)スペクトルを測定した。レターデーション制御剤(10-trans)を、テトラヒドロフラン(安定剤(BHT)なし)に溶解し、濃度が10-5mol/dm3になるように調整した。このように調整した溶液を、測定機(日立製作所(株)製)で測定したところ、吸収極大を与える波長(λmax )は220nmであり、そのときの吸光係数(ε)は15000であった。同様に、レターデーション制御剤(29-trans)では、吸収極大を与える波長(λmax )は240nmであり、そのときの吸光係数(ε)は20000であった。同様に、レターデーション制御剤(41-trans)では、吸収極大を与える波長(λmax )は230nmであり、そのときの吸光係数(ε)は16000であった。
【0123】
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
【0124】
(その他のレターデーション発現剤)
上記以外にも、面内のレターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthを所望の値に近づけ、さらに、各波長におけるReおよびRthが式(3)〜(6)を満たす波長分散特性を持つことが可能なものであれば、限定されず本発明の光学フィルム中に添加することができる。
【0125】
[その他の添加剤]
(微粒子)
次に本発明において好ましく用いられる微粒子について記述する。
本発明においては、微粒子のことをマット剤とも称する。フィルム面のすべり性を改良するためには、フィルム表面に凹凸を付与することが有効であり、有機及び/又は無機物質の微粒子を含有させて、フィルム表面の粗さを増加させ、いわゆるマット化することで、フィルム同士のブロッキングを減少させる方法が知られている。更に本発明では光学フィルム中に存在していればよく、例えば光学フィルムの少なくとも片方の面上に微粒子が存在していてもよい。微粒子が存在することにより、偏光板加工時の偏光子と光学フィルム間の密着性が著しく向上する。これらの観点から本発明においては微粒子を添加して用いるのが好ましい。
【0126】
光学フィルムを偏光板保護フィルム用途の透明光学フィルムとして用いる場合、粗い表面にするためのマット化を抑えるほどヘイズのアップを抑制でき、透明性が保たれるために、その平均粒径や含有量は以下のような範囲が好適となる。
【0127】
本発明に使用するマット剤は、無機微粒子の場合、フィルム中における平均粒径が0.05μm〜3.0μmの微粒子が好ましく、より好ましくは0.05μm〜1.0μm、さらに好ましくは0.08μm〜0.50μm、特に好ましくは0.10μm〜0.30μmである。フィルム中における無機微粒子の平均粒径は、微粒子の平均一次粒径と後述する分散処理によって、所望のフィルム中平均粒径を選択することができる。本発明に使用するマット剤は、無機微粒子の場合、微粒子の平均一次粒径は0.005μm〜0.5μmの微粒子が好ましく、0.01μm〜0.2μmの微粒子がより好ましい。
【0128】
ポリマー微粒子はポリマー種を選択することにより、所望の屈折率を得ることが可能であり好ましい。更にポリマー微粒子はセルロースアシレートとの相溶性が高く、ポリマー微粒子を用いてフィルムを製膜したときのヘイズ・屈折・散乱を低く抑えることができるため、ポリマー微粒子をマット剤として使用する際は、無機微粒子をマット剤として使用するよりも、サイズの大きいグレードを選択することが好ましい。
【0129】
本発明に使用するマット剤は、ポリマーの場合、平均粒径0.1μm〜3.0μmの微粒子が好ましく、より好ましくは0.15μm〜2.0μm、さらに好ましくは0.2μm〜1.0μmである。
【0130】
本発明中に記載されるマット剤の平均粒径とは、フィルム中(フィルム面上に存在するマット剤を含む)の平均サイズのことであり、マット剤が凝集体または非凝集体にかかわらず、この粒径はフィルム表面および切片のSEM観察および/またはTEM観察によって得た粒子100個の円相当径の平均である。円相当径は撮影によって得られた粒子の投影面積を同じ面積を持つ円の直径に換算することで求めることができる。
【0131】
上記のマット剤平均粒径は、凝集性の粒子であれば、凝集体の平均大きさ(平均二次粒径)を意味し、溶液流延製膜法で製造するのであれば後述する分散処方によって、分散液中の粒子サイズとしてコントロールすることができる。非凝集性の粒子であれば、一粒子のサイズを測定した平均値を意味する。
【0132】
また、含有量は例えば、球形、不定形、無機微粒子、ポリマーのマット剤の種類を問わず、光学フィルムの固形分中0.03〜1.0質量%であり、より好ましくは0.05〜0.6質量%であり、更に好ましくは0.08〜0.4質量%である。
【0133】
本発明におけるマット剤を含有した光学フィルムの好ましいヘイズの範囲は4.0%以下であり、2.0%以下が更に好ましく、1.0%以下が特に好ましい。ヘイズを小さくするためには、添加する微粒子の分散を十分に行い、凝集粒子の数を少なくしたり、添加量を少なくするためにスキン層にだけ微粒子を使用したりする。ヘイズは日本電色工業(株)製1001DP型ヘイズ計を用いて測定できる。
【0134】
分散方法は特に限定されず常法を用いることができる。例えば、メディア分散器としてはアトライター、ボールミル、サンドミル、ダイノミルが挙げられる。メディアレス分散器としては超音波型、遠心型、高圧型などが挙げられる。分散には上記の分散装置を用いることが好ましいが、用いなくてもよい。
【0135】
マット剤のフィルムへの組み込み方法については特に限定はないが、ポリマーとマット剤の入った溶液を流延し製膜する方法と、製膜したフィルムにマット剤分散液を塗布する方法が挙げられる。マット剤のフィルム表面における分布を容易にコントロールできる点では、製膜したフィルムにマット剤分散液を塗布する方法が好ましく、コストの点ではポリマーとマット剤の入った溶液を流延し製膜する方法が好ましい。後述する重層流延法において流延製膜する方法も、マット剤のフィルム表面における分布をコントロールできる製膜法として好ましく用いることができる。
【0136】
ポリマーとマット剤の入った溶液を流延し製膜する方法の場合、ポリマー溶液を調整する際にマット剤を分散しても良いし、ポリマー溶液を流延する直前にマット剤分散液を添加混合しても良い。マット剤をポリマー溶液に分散するには、分散助剤として界面活性剤あるいはポリマーを少量添加しても良い。又、上記方法の他にマット剤層を製膜後塗設しても良い。この場合、マット剤層の形成にはバインダーを用いることが好ましい。本発明のマット剤を含有する層のバインダーとしては特に限定されず親油性バインダーでもよく又親水性バインダーでもよい。親油性バインダーとしては公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応型樹脂およびこれらの混合物を使用することができる。上記樹脂のTgは80℃〜400℃が好ましく、120℃〜350℃がより好ましい。上記樹脂の重量平均分子量は1万〜100万が好ましく、1万〜50万がより好ましい。
【0137】
上記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、酢酸ビニルとビニルアルコール、マレイン酸および/またはアクリル酸との共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート樹脂などのセルロース誘導体、環状ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレンブタジエン樹脂、ブタジエンアクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができる。
【0138】
マット剤を塗布によって、光学フィルムに組み込む場合には、従来公知の塗布方法[例えば、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター、ブレードコーター等]が好ましく利用できる。塗布の支持体となるフィルムの変形、塗布液の変質等が生じない温度で行うためには、温度10℃〜100℃の範囲で塗布することが好ましく、20℃〜80℃が更に好ましい。また、塗布速度は塗布液の粘度や塗布温度により適宜調整して決定するが、10m/分〜100m/分で行われるのが好ましく、20m/分〜80m/分が更に好ましい。
【0139】
上記のマット剤を含む塗布層は、これを適当な有機溶剤に溶解した塗布液を、セルロースアシレート等のポリマーを含有するフィルムに塗布し、乾燥することにより形成することができる。また、マット剤は、塗布液中に分散物の形で添加することもできる。使用される溶剤としては、水、塩素系溶媒(メチレンクロライド、クロロホルムなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸、蟻酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸などのメチル、エチル、プロピル、ブチルエステルなど)、芳香族炭化水素系(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、アミド系(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドンなど)が好ましい。
【0140】
上記のポリマーとマット剤の入った溶液を流延し製膜する方法および製膜したフィルムにマット剤分散液を塗布する方法の両方の方法においても、製造する光学フィルム中に含有されるマット剤微粒子の平均粒径は、凝集性のマット剤であればマット剤微粒子の平均一次粒径、マット剤微粒子の添加量、分散する溶媒の種類、分散する溶媒の添加量、分散方法、分散機の種類、分散機の大きさ、分散時間、分散機が分散液に与える単位時間あたりのエネルギー、ミキシング方法、バインダーの種類、バインダーの添加量、添加の順序および分散液仕込み量などの従来から知られている分散条件を変化させることによりコントロールすることができる。
【0141】
非凝集性のマット剤を用いる場合においても、凝集性のマット剤と同じく上記の分散条件をコントロールすることで、予期せぬ凝集を防ぐことが好ましい。
【0142】
微粒子を添加した光学フィルムの好ましい動摩擦係数は0.8以下であり、0.5以下が特に好ましい。光学フィルムの製膜及び加工における巻き取り時に、ツレや巻きシワを生じにくく、巻き姿が損なわれず、ツレやシワによる不均一な張力が光学フィルムにかからず、フィルム面に意図しない不均一な光学特性が発現するのを抑制できる点で、動摩擦係数は0.8以下が好ましい。動摩擦係数はJISやASTMが規定する方法に従い、鋼球を用いて測定できる。
【0143】
使用される微粒子の組成においては無機化合物や高分子化合物が用いられるが、特に制限はなく、これらの微粒子は2種以上まぜて用いることもできる。無機化合物には、例えば、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、シリコーン、硫酸バリウム、マンガンコロイド、硫酸ストロンチウムバリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウム等が挙げられ、さらに例えば湿式法やケイ酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラッグと硫酸により生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。また、粒径の比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕した後、分級(振動濾過、風力分級など)することによっても得られる。前述の無機化合物のうち、本発明の光学フィルムに添加する微粒子として、好ましくはケイ素を含む化合物や酸化ジルコニウムであるが、ケイ素を含むものが濁度が低くなる点、フィルムのヘイズを低下できるため更に好ましい。二酸化ケイ素微粒子は有機物により表面処理されているものが多く市販されているが、このようなものはフィルムの表面ヘイズを低下できるため特に好ましい。二酸化ケイ素微粒子の表面処理に用いられる好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどを挙げることができる。シリコーン微粒子は、特に3次元の網目構造を有するものが好ましく、さらに表面処理によりメチル基などのアルキル基が結合したものをより好ましく用いることができる。
【0144】
二酸化ケイ素微粒子の例としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)、エクセリカSE−5、SE−8、SE−15、SE−5V、SE−8V、SE−15K、UF−320、UF−310、UF−305(以上(株)トクヤマ製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0145】
シリコーンの例としては、例えば、XC99−A8808、トスパール120、130、145、2000B(以上GE東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0146】
又、高分子化合物(ポリマー微粒子)ではポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルコポリマーなどのフッ素樹脂、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、ポリアミド、塩素化ポリエーテル、澱粉等があり、またそれらの粉砕分級物もあげられる。あるいは又懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、または無機化合物を用いることができる。
【0147】
また以下に述べるような単量体化合物の1種又は2種以上の重合体である高分子化合物を種々の手段によって粒子としたものであってもよい。高分子化合物の単量体化合物について具体的に示すと、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸ジエステル、クロトン酸エステル、マレイン酸ジエステル、フタル酸ジエステル類が挙げられエステル残基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、2−クロロエチル、シアノエチル、2−アセトキシエチル、ジメチルアミノエチル、ベンジル、シクロヘキシル、フルフリル、フェニル、2−ヒドロキシエチル、2−エトキシエチル、グリシジル、ω−メトキシポリエチレングリコール(付加モル数9)などが挙げられる。
【0148】
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルなどが挙げられる。またオレフィン類の例としては、ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等を挙げることができる。
【0149】
スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、トリフルオロメチルスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなどが挙げられる。
【0150】
アクリルアミド類としては、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、プロピルアクリルアミド、ブチルアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、フェニルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドなど;メタクリルアミド類、例えば、メタクリルアミド、メチルメタクリルアミド、エチルメタクリルアミド、プロピルメタクリルアミド、tert−ブチルメタクリルアミド、など;アリル化合物、例えば、酢酸アリル、カプロン酸アリル、ラウリン酸アリル、安息香酸アリルなど;ビニルエーテル類、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなど;ビニルケトン類、例えば、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトンなど;ビニル異節環化合物、例えば、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルトリアゾール、N−ビニルピロリドンなど;不飽和ニトリル類、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;多官能性モノマー、例えば、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレートなど。
【0151】
更に、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキル(例えば、イタコン酸モノエチル、など);マレイン酸モノアルキル(例えば、マレイン酸モノメチルなど;スチレンスルホン酸、ビニルベンジルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、アクリロイルオキシメチルスルホン酸など);メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸など);アクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸など);メタクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸など);アクリロイルオキシアルキルホスフェート(例えば、アクリロイルオキシエチルホスフェートなど);が挙げられる。これらの酸はアルカリ金属(例えば、Na、Kなど)またはアンモニウムイオンの塩であってもよい。さらにその他のモノマー化合物としては、米国特許第3,459,790号、同第3,438,708号、同第3,554,987号、同第4,215,195号、同第4,247,673号、特開昭57−205735号公報明細書等に記載されている架橋性モノマーを用いることができ好ましい。このような架橋性モノマーの例としては、具体的にはN−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−(2−アセトアセトキシエトキシ)エチル)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0152】
これらの単量体化合物は単独で重合した重合体の粒子にして用いてもよいし、複数の単量体を組み合わせて重合した共重合体の粒子にして用いてもよい。これらのモノマー化合物のうち、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、スチレン類、オレフィン類が好ましく用いられる。また、本発明には特開昭62−14647号、同62−17744号、同62−17743号に記載されているようなフッ素原子あるいはシリコン原子を有する粒子を用いてもよい。
【0153】
これらの高分子化合物中で好ましく用いられる粒子組成としてポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート/メタクリル酸=95/5(モル比)、ポリ(スチレン/スチレンスルホン酸=95/5(モル比)、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸=50/40/10)などを挙げることができる。
【0154】
また、本発明の微粒子としては特開昭64−77052号、ヨーロッパ特許307855号に記載の反応性(特にゼラチン)基を有する粒子を使用することもできる。さらには、アルカリ性、又は酸性で溶解するような基を多量含有させることもできる。
【0155】
前述の高分子化合物のうち、本発明の光学フィルムに添加する微粒子として、好ましくはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルコポリマーなどのフッ素樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン及び塩素化ポリエーテルである。
【0156】
ポリテトラフルオロエチレンの例としては、例えば、ルブロンL−2、L−5、L−5F(以上ダイキン工業(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。ポリアミドの例としては、例えば、SP−500(東レ(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0157】
本発明に用いられる微粒子は、無機化合物としては二酸化ケイ素、シリコーン及び二酸化チタンが好ましく、高分子化合物としてはポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン及び塩素化ポリエーテルが好ましいが、更に好ましくは二酸化ケイ素、シリコーン及びポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂であり、特に好ましくは有機物により表面処理されている二酸化ケイ素及びシリコーンである。
【0158】
本発明において、微粒子添加の際に微粒子分散液を用いる場合は、該微粒子分散液は濾過することが望ましく、濾過後はストックタンクなどに停滞させることなく、送液ポンプを介すことなく導管で移送され、一方、導管で移送されてくるセルロースアシレート溶液とインラインミキサーで混合されることがより好ましい。それにより両液の停滞や、送液ポンプによる新たな凝集物の発生がなく好ましい。上記の濾過はインラインミキサーの直前に配置される濾過機で行うことが好ましい。濾過機の濾材としては、粒子充てん層、金網 (とくに畳折り網)、織布、ろ紙、多孔板 (ミクロポアーを含む) などが挙げられ、一定の絶対濾過精度で長期にわたって使用できるものであれば特に限定はないが、耐溶剤性や耐久性の観点から金属性が好ましく、ステンレス鋼がさらに好ましい。目詰まりの観点から、絶対濾過精度10〜100μmであることが好ましく、30〜60μmであることがより好ましく、これにより一定の絶対濾過精度での長期使用が可能となる。
【0159】
(劣化防止剤)
本発明の光学フィルムには公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、2,6−ジ−t−ブチル,4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤をすることが好ましい。
酸化防止剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加することが好ましい。
【0160】
(紫外線吸収剤)
本発明の光学フィルムには、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して0.0001〜1.0質量部が好ましく、0.001〜0.1質量部が更に好ましい。
【0161】
(剥離促進剤)
光学フィルムの剥離抵抗を小さくする添加剤としては界面活性剤に効果の顕著なものが多くみつかっている。好ましい剥離剤としては燐酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸あるいはカルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸あるいはスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が効果的である。また上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。以下に剥離剤を例示する。
【0162】
RZ−1 C8 17O−P(=O)−(OH)2
RZ−2 C1225O−P(=O)−(OK)2
RZ−3 C1225OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2
RZ−4 C1531(OCH2 CH2 5 O−P(=O)−(OK)2
RZ−5 {C1225O(CH2 CH2 O)5 2 −P(=O)−OH
RZ−6 {C1835(OCH2 CH2 8 O}2 −P(=O)−ONH4
RZ−7 (t−C4 9 3 −C6 2 −OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2
RZ−8 (iso−C9 19−C6 4 −O−(CH2 CH2 O)5 −P(=O)−(OK)(OH)
RZ−9 C1225SO3 Na
RZ−10 C1225OSO3 Na
RZ−11 C1733COOH
RZ−12 C1733COOH・N(CH2 CH2 OH)3
RZ−13 iso−C8 17−C6 4 −O−(CH2 CH2 O)3 −(CH2 2 SO3 Na
RZ−14 (iso−C9 192 −C6 3 −O−(CH2 CH2 O)3 −(CH2 4 SO3 Na
RZ−15 トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−16 トリ−t−ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−17 C1733CON(CH3 )CH2 CH2 SO3 Na
RZ−18 C1225−C6 4 SO3 ・NH4
【0163】
剥離剤の添加量はセルロースアシレート100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜2質量部が更に好ましく、0.1〜0.5質量部が最も好ましい。
【0164】
本発明の光学フィルム中には、さらに、フェニルサリチル酸、2−ヒドロキシベンゾフェノン、トリフェニルフォスフェート等の紫外線吸収剤や、色味を変えるためのブルーイング剤、酸化防止剤等が含有されていてもよい。
【0165】
また本発明の光学フィルム中には、後に述べるフィルムの延伸をする際に延伸性を向上させる目的で、公知の可塑剤であるジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル、トリブチルフォスフェート等のりん酸エステル、脂肪族二塩基エステル、グリセリン誘導体、グリコール誘導体等を含有してもよい。
【0166】
[製膜方法]
本発明の光学フィルムを製造する際、製造方法は、前述の式(1)〜(6)を満たす光学フィルムが得られるものであれば特に制限はなく、後に述べるような延伸工程、収縮工程、及び膜厚を増加させる工程を含むことを特徴とする本発明の、光学フィルムの製造方法を用いて製造することが好ましい。延伸工程以前の材料の調整方法、ポリマー原料をフィルムに成型する方法、乾燥方法、巻き取り方法などは公知の製膜方法を用いることができる。原料を加熱して溶融製膜してもよいし、原料を溶剤に溶かして溶液製膜しても良い。
【0167】
[溶融製膜]
本発明の光学フィルムは、溶融製膜で製造しても良い。原料となるポリマー、添加剤等の原料を加熱溶融させ、これを押出し射出成型によりフィルム化して製造しても良いし、加熱した2枚のプレートに原料を挟み込み、プレス加工してフィルム化して製造しても良い。
【0168】
加熱溶融の温度は、原料ポリマーが共に均一に溶融する温度であれば特に制限されない。具体的には融点又は軟化点以上の温度に加熱する。均一なフィルムを得るためには、ポリマー原料の融点よりも高い温度、好ましくは融点よりも5〜40℃高い温度、特に好ましくは融点よりも8〜30℃高い温度に加熱して溶融させることが好ましい。
【0169】
[溶液製膜]
本発明の光学フィルムはまた、ポリマー原料と添加剤などを溶剤に溶解し、溶液製膜することにより製造することも特に好ましい。特にフィルムの表面面状を良化する観点から溶液製膜は優れた製膜方法として用いることができる。溶液製膜の具体的な手法としては、金属板など表面平滑性のある支持基板の上にキャスティングする方法であれば特に限定はなく、ドープ溶液を直接支持基板上に展開して製膜しても良いし、ギーサを用いた流延方法やブレードを用いた各種のコーティング法等の方法を適宜用いて行うことができる。溶剤の乾燥は、使用される溶媒の沸点により室温又は加熱乾燥によって行うことができる。加熱乾燥は30〜200℃の温度範囲で、5分〜2時間程度、所定の乾燥状態に合わせて静止又は送風下で行うことができる。
【0170】
本発明の光学フィルムを溶液製膜する際には、ポリマー原料および添加剤などを有機溶媒に均一に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造できる。本発明の光学フィルムの主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0171】
[溶解工程]
本発明の光学フィルムの溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明における光学フィルム溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過などの各工程に関しては、公知のフィルムの溶解方法に準じることができる。
【0172】
[流延する工程及び剥離する工程]
次に、本発明の光学フィルムを溶液製膜により製造するフィルムの製造方法について述べる。本発明の光学フィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が好ましく用いられる。
流延する工程においては、まず、溶解機(釜)から調製されたドープ(ポリマー原料および添加剤などを加えた溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延することにより行う。
剥離する工程は、流延した後、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。
【0173】
[乾燥する工程、巻き取り工程]
乾燥する工程は、得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥することにより行う。
また、巻き取り工程は、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。
【0174】
[フィルムの残留溶剤量]
本発明の光学フィルムを溶液製膜によって得る場合、最終的な残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。なお、残留溶剤量は下記の式で表せる。
【0175】
残留溶剤量(質量%)={(M−N)/N}×100
【0176】
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0177】
次に、本発明の光学フィルムの製造方法について、より詳細に説明する。
【0178】
〔光学フィルムの製造方法〕
本発明の、光学フィルムの製造方法は、フィルムの長手方向または幅方向のいずれか一方を延伸する延伸工程と、もう一方の方向を収縮させる収縮工程を含み、かつ、前記延伸工程および/または収縮工程前の膜厚と比較して、膜厚を増加させる必要がある。
【0179】
[延伸工程、収縮工程]
本発明の、光学フィルムの製造方法において、延伸工程および収縮工程を行う際に延伸される方向と収縮される方向のバランスをとり、膜厚を増加させる必要がある。
延伸および収縮方法はゾーン法、ロール法、テンター法、など公知の方法で行なうことが出来る。クリップ間延伸法で行なっても良い。クリップ間延伸法とは、長方形のフィルムの両端をクリップのような固定部材で滑らないように固定し、フィルムを延伸する方法である。また、ロール法延伸も好ましい。ロール延伸は1段でも多段でも良い。パラレル配置でもよいしクロス配置でもよい。ロールは特に制限は無いが、ジャケットロール、エキスパンダロールが好ましく用いられる。
【0180】
膜厚を増加させる方法としては、加熱によりフィルムを収縮させることによることが好ましい。なお、膜厚の増加は、フィルムの収縮工程を伴う。本発明の製造方法に係る収縮工程には、膜厚の増加による収縮と、フィルムの延伸に伴う収縮との両方を含む。また、本発明の製造方法に係るフィルムとしては、セルロースアシレートフィルムが好ましい。
加熱により膜厚を増加させる際の加熱方法としては、延伸あるいは収縮時、延伸あるいは収縮ゾーンにおいて加熱した空気をフィルムにあてる方法が好ましく用いられる。 熱処理温度は特に制限されるものではなく、使用するフィルムの樹脂の種類、所望の収縮率により適宜、選択することになるが、フィルムとしてセルロースアシレートフィルムを使用した場合には、例えば、160〜200℃が好ましく、165〜195℃がより好ましく、170〜190℃が更に好ましい。
また、熱処理時間は、特に制限されるものではなく、使用するフィルムの樹脂の種類、所望の収縮率、熱処理温度により適宜、選択することになるが、例えば、上記熱処理温度の範囲である場合には、5〜60秒が好ましく、10〜50秒がより好ましく、15〜45秒が更に好ましい。
加熱は延伸(および/または延伸に伴う収縮)の前に行ってもよく、延伸(および/または延伸に伴う収縮)と同時に行っても良いし、別途延伸(および/または延伸に伴う収縮)の後に行ってもよい。以下、加熱によるフィルムの収縮を「膜厚を増加させる工程」ということがある。
【0181】
本発明の光学フィルムの製造方法において、光学フィルムを延伸、収縮させる際の引っ張り手法については上記のように特に限定されることはないが、所望のReおよびRthの光学性能およびこれらの波長依存性を理想のものにするには、下記の手法を適切な方法として用いることができる。
【0182】
(長手方向収縮/幅延伸)
すなわち、光学フィルムをテンタークリップによって把持、搬送し、該テンタークリップの搬送方向の間隔を狭めることで収縮させる収縮工程、およびこれと略直交する方向に該光学フィルムを延伸させる延伸工程を含むことが好ましい。この際、連続した長尺フィルムの延伸において、テンタークリップの長手方向の間隔が把持、搬送している間に狭くなる構造のテンターを用いて長手方向に収縮させ、幅方向に延伸させることが好ましい。
【0183】
(長手方向延伸/幅収縮)
また、光学フィルムをテンタークリップによって把持、搬送し、該テンタークリップの搬送方向の間隔を広げることで延伸する延伸工程、およびこれと略直交する方向に該光学フィルムを収縮させる工程を含むことが好ましい。この際、連続した長尺フィルムの延伸において、テンタークリップの長手方向の間隔が把持、搬送している間に広くなる構造のテンターを用いて長手方向に延伸させ、幅方向は収縮させることが好ましい。
【0184】
また、本発明の光学フィルムの製造方法においては、フィルムをガラス転移温度(Tg)付近の温度またはそれ以上の温度で加熱して軟化させる加熱工程を延伸操作と組み合わせても良いし、フィルムの見かけ上のTgを低下させるために適当な溶剤(有機溶剤や水を含む)や溶剤の蒸気を含ませたフィルムを延伸してもよい。
【0185】
また、本発明の光学フィルムの製造方法は、連続して長尺に製膜したフィルムを連続的に延伸操作することが生産性の観点から連続延伸が好ましいが、連続延伸である必要はない。すなわち製膜したフィルムを搬送して直接後についている延伸装置で延伸しても良いし、製膜したフィルムを一度巻き取り、再度延伸装置へ送り出して延伸しても良い。
【0186】
なお、上記のようなフィルムの長手方向または幅方向のいずれか一方を延伸する延伸工程と、もう一方の方向を収縮させる収縮工程と、フィルムの膜厚を増加させる工程、を具体的に行う延伸・収縮装置として、市金工業社製FITZ機などを好ましく用いることができる。この装置は(特開2001−38802号公報)に記載されている。
【0187】
(好ましい延伸倍率)
上記のように、本発明の光学フィルムの製造方法において、光学フィルムのReおよびRth波長分散を所望の状態にするには、フィルム幅方向にテンター延伸工程と、フィルム長手方向(機械搬送方向)に収縮させる工程と、膜厚を増加させる工程を経る方法が好ましい。もしくは、長手方向と幅方向を変えて、フィルム機械搬送方向(縦方向)に自由延伸する工程と、延伸と垂直方向(横方向)はネックインさせる工程と、膜厚を増加させる工程を経る方法も好ましい。
【0188】
このような方法によれば延伸倍率の高い側へポリマー鎖を配向させつつ、膜厚方向の屈折率を上昇させることでRth(550)を低下でき、所望の光学性能を達成できる。
以下の記載において、延伸・収縮倍率ならびに膜厚の変化率は、延伸工程および/または収縮工程前のフィルムに対する値である。
この方法における好ましい延伸方向(長手または幅方向)の倍率は1.05〜5.0倍、より好ましくは1.1〜4.0倍である。
【0189】
このときの延伸方向と垂直な方向(横方向)の延伸倍率は0.3〜1.0倍、より好ましくは0.35〜0.95倍である。(収縮のため、倍率が1より小さい。)
【0190】
さらに、増加させる膜厚の変化率は1.02〜2.0倍、より好ましくは1.04〜1.8倍である。(変化率が1より大きいのは膜厚が上昇していることを示す。)
【0191】
[延伸、収縮するフィルムのアスペクト比]
延伸、収縮時にフィルムを固定する固定部材間の距離をLとし、その固定部材間と垂直な方向をWとし、延伸時のフィルム形状のアスペクト比をL/Wとすると、アスペクト比は0.1以上10以下が好ましく、0.1以上8.0以下が更に好ましい。
【0192】
(延伸、収縮後の加熱処理)
本発明の光学フィルムの製造方法において、光学フィルムは延伸、収縮後に、延伸、収縮温度より10℃〜50℃高い温度で加熱処理を行ってもよい。プラスチック一般に行われているヒートセットといわれる工程であり、延伸により局所的に乱れた高分子鎖の配向度を上げることができる。この際にいわゆる高分子フィルムの結晶成長も促進することができ、本発明の光学フィルムの所望の光学性能を作り出すために好ましく用いることができる。上記の加熱処理の温度は延伸、収縮温度より10℃〜45℃高いことがより好ましく、延伸、収縮温度より10℃〜40℃高いことがさらに好ましい。延伸、収縮温度と加熱処理の温度の差が10℃より小さいと効果が小さく、延伸、収縮温度より50℃以上高いとフィルム内の結晶化が強く促進されるためフィルムのヘイズが上昇するなどの影響もあり好ましくない。
【0193】
[フィルムの膜厚]
本発明の光学フィルムの製造方法において、光学フィルムの延伸前の厚みは10μm以上300μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以上280μm以下、さらに好ましくは40μm以上250μm以下である。
延伸、収縮後の膜厚の増加の方法は特に限定されることはないが、たとえば、加熱により収縮させることによって膜厚を増加させることが好ましい。
また本発明の光学フィルムの少なくとも一方の面に加熱によって膜厚が収縮するフィルムを用い、これらによって本発明の光学フィルムの膜厚を増加させる方法を用いてもよい。
【0194】
[フィルムの幅]
本発明の光学フィルムの製造方法において、光学フィルムの延伸、収縮前の好ましいフィルム幅は5cm以上3m以下であり、より好ましくは8cm以上2.5m以下、さらに好ましくは10cm以上2m以下である。
【0195】
[延伸、収縮後のフィルムのヘイズ]
光学フィルムは透明であることが好ましく、特に延伸、収縮後の光学フィルムはヘイズが上昇しやすいので注意が必要である。ヘイズ値は0%以上2%以下、好ましくは0%以上1.6%以下、さらに好ましくは0%以上1.2%以下であることが好ましい。全光線透過率は85%以上であることが好ましい。ヘイズの測定は、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定することができる。
【0196】
本発明の光学フィルムは、上述した本発明の光学フィルムの製造方法を用いて作製されることが好ましい。
上記製造方法により、式(1)〜式(6)を満たす本発明の光学フィルムを製造することが可能となり、広範囲にわたり高いコントラスト比を有し、カラーシフトを抑制可能な光学フィルムが得られる。
【0197】
[光学補償フィルム]
本発明の光学補償フィルムは、上述の本発明の光学フィルムに更に下記式(7)をみたす光学異方性層を形成してなる。
【0198】
(7)Re(550)=0〜200(nm)かつ|Rth(550)|=0〜300(nm)
【0199】
光学異方性層は液晶性化合物またはポリマーフィルムからなるのが好ましい。
また、光学異方性層は、単層構造に限定されるものではなく、複数の層を積層した積層構造を有していてもよい。各層の素材は同種でなくてもよく、例えば、棒状液晶を用いた光学異方性層やディスコティック液晶を用いた光学異方性層を単独または組み合わせて用いても良い。また、ポリマーフィルムと液晶性化合物からなる光学異方性層の積層体であってもよい。また光学異方性層は、厚さを考慮すると、高分子の延伸フィルムの積層体よりも、塗布によって形成された層であるのが好ましい。
【0200】
(光学異方性層が液晶性化合物から形成された層を含む光学補償フィルム)
前記光学補償フィルムの作製に液晶性化合物を用いた場合は、液晶性化合物には多様な配向形態があるので、液晶性化合物を特定の配向状態に固定して作製した光学異方性層は、単層でまたは複数層の積層体により、所望の光学的性質を発現する。即ち、前記光学補償フィルムは、本発明の光学フィルムからなる支持体と該支持体上に形成された1層以上の光学異方性層とからなる態様であってもよい。かかる態様の光学補償フィルム全体のレターデーションは、光学異方性層の光学異方性によって調整することができる。液晶性化合物は、その分子の形状から、ディスコティック液晶性分子と棒状液晶性分子とに分類でき、これらの分子を有する化合物として、それぞれ、円盤状液晶化合物と棒状液晶化合物とに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがあり、いずれも使用することができる。前記光学補償フィルムの作製に液晶性化合物を使用する場合は、棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いることが好ましく、重合性基を有する棒状液晶化合物または重合性基を有する円盤状液晶性化合物を用いるのがより好ましい。
【0201】
(ポリマーフィルムからなる光学異方性層)
上記した様に、光学異方性層はポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびセルロースエステル(例、セルローストリアセーテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体あるいはポリマー混合物を用いてもよい。
【0202】
ポリマーフィルムの光学異方性は、延伸により得ることが好ましい。延伸は一軸延伸または二軸延伸であることが好ましい。具体的には、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、またはポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸、これらを組み合わせての二軸延伸が好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを用いて、二枚以上のフィルム全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることが最も好ましい。
【0203】
また、光学異方性層を形成するポリマーフィルムとして、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドポリエステルイミド、およびポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマー材料を用い、これを溶媒に溶解した溶液を基材に塗布し、溶媒を乾燥させてフィルム化する方法も好ましく用いることができる。この際、上記ポリマーフィルムと基材とを延伸して光学異方性を発現させて光学異方性層として用いる手法も好ましく用いることができ、本発明の透明フィルムは上記基材として好ましく用いることができる。また、上記ポリマーフィルムを別の基材の上で作製しておき、ポリマーフィルムを基材から剥離させたのちに本発明の透明フィルムと貼合し、あわせて光学異方性層として用いることも好ましい。この手法ではポリマーフィルムの厚さを薄くすることができ、50μm以下であることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
【0204】
[偏光板]
本発明の偏光板は、上記の本発明の光学フィルム、または上記の本発明の光学補償フィルムの少なくとも1つを含む。
また、本発明の光学フィルムを光学補償能を有する位相差フィルムとして用いた場合は、すでに偏光膜の両面を保護フィルムで貼りあわせて作製された偏光板に、粘着剤を介して光学補償能を有する位相差フィルムを貼りあわせてもよい。更に、本発明の光学フィルムを偏光板の保護フィルムとして、直接偏光膜と貼りあわせてもよい。これらの場合、例えばポリビニルアルコール系の偏光板を作製する方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。たとえば、光学フィルムの表面をアルカリ鹸化処理、プラズマ処理、コロナ放電処理などにより表面改変し、ポリビニルアルコールフィルム(PVA)を沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に貼り合わせる方法がある。
【0205】
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板はどの部位に配置してもよい。
図面を参照して本発明の偏光板の構造及び本発明の偏光板の使用形態の1形態について説明する。
図1は、本発明の偏光板の一例の断面構造を模式的に示す図である(説明のために液晶セル用ガラスも示した)。図1において、偏光子71の両面に保護膜72および73が設けられ、これらのうちの少なくとも一方が本発明の光学フィルムである。この偏光板70が、粘着剤層74を介して液晶セル用ガラス75に貼りあわされる。また図2は、本発明の偏光板の別の例の断面構造を模式的に示す図である。図2に示す形態の偏光板は、図1に示す偏光板70に更に後述するような機能層81が設けられた形態である。
【0206】
[機能層]
本発明の光学フィルムを偏光板の保護膜とし、液晶表示装置に用いる場合、表面に各種の機能層(図2の機能層81)を付与してもよい。それらは、例えば、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、防眩層、反射防止層、易接着層、光学補償層、配向層、液晶層帯電防止層、などである。本発明の光学フィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0207】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、上記の本発明の光学フィルム、上記の本発明の光学補償フィルム、上記の本発明の偏光板のいずれか少なくとも1つを含む。
本発明の液晶表示装置は、光学フィルム、光学補償フィルム、液晶セル、偏光板は密着していることが好ましく、密着させるためには公知の粘着剤や接着剤を用いることができる。
【0208】
また、本発明の液晶表示装置には、上記の光学フィルム、液晶セル、偏光板等の部材間にプリズムシート、拡散フィルムなどの各種光学フィルムを用いても良い。
【0209】
本発明の光学フィルム、およびこれを用いた光学補償フィルムや偏光板は、様々な表示モードの液晶表示装置に適用することができる。代表的な表示モードとして、VA(Vertically Aligned)、OCB(Optically Compensatory Bend)、IPS(In−Plane Switching)、TN(Twisted Nematic)、STN(Supper Twisted Nematic)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の物性良化したフィルムを用いたときの効果は、とくに大画面液晶表示装置で顕著であり、その点で大型TV用に用いられるVAモード、OCBモード、IPSモードの液晶表示装置に用いることが特に好ましい。
【0210】
とくに、IPSモードの液晶表示装置に本発明の光学フィルムを用いる場合は、液晶表示装置のバックライト側から視認側へ向かって順に、面内のレターデーションと厚み方向のレターデーションがともにほぼゼロである光学フィルム、IPS液晶セル、本発明の光学フィルム、を組み合わせて用いると、より好ましい表示性能を得ることが可能になる。
【0211】
また、光学フィルムの面内のレターデーションと厚み方向のレターデーションの好ましい値は液晶の厚み方向のレターデーション値、液晶および光学フィルムの平均屈折率nにより若干変化するが、目的に応じて最適化することが好ましい。
図3に、本発明の液晶表示装置の構成例を示す。
図3において、偏光子71の両面に保護膜72および73が設けられ、これらのうちの少なくとも一方が本発明の光学フィルムを有する。本発明の光学フィルムは、液晶セル側に設けられるのが好ましい。また、保護膜72上(観察者側)には、機能層81が設けられている。この偏光板70が、粘着剤層74を介して液晶セル用ガラス92上に貼りあわされている。液晶セル90は、液晶層91を液晶セル用ガラス92および93で挟み込んで形成され、光源側の液晶セル用ガラス93には、粘着剤層74’を介して偏光板70’が貼りあわされている。偏光板70’は、偏光子71’の両面に保護膜72’および73’が設けられてなる。本発明では、偏光板70または偏光板70’のいずれかまたは両方に本発明の光学フィルムを有していればよい。
【実施例】
【0212】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の記載において、延伸・収縮倍率ならびに膜厚の変化率は、延伸工程および/または収縮工程前、加熱によるフィルムの収縮前のフィルムに対する値である。
【0213】
[実施例1−1]
(セルロースアシレート溶液CA−1の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレートの溶液CA−1を調製した。なお、Ac=アセチル基である。
【0214】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(セルロースアシレート溶液CA−1組成)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Ac置換度2.81のセルロースアセテート 100.0質量部
TPP(トリフェニルフォスフェート) 7.8質量部
BDP(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0215】
(マット剤溶液MT−1の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液MT−1を調製した。
【0216】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(マット剤溶液MT−1組成)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアシレート溶液CA−1 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0217】
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液AD−1を調製した。さらに下記に示すレターデーション発現剤(化合物X)を用いた。
【0218】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(添加剤溶液AD−1組成)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のレターデーション発現剤(化合物X) 7.6質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液CA−1 12.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0219】
化合物X
【0220】
【化20】

【0221】
(セルロースアシレートフィルム試料101の作製)
上記セルロースアシレート溶液CA−1を94.6質量部、マット剤溶液MT−1を1.3質量部、添加剤溶液AD−1を2.3質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成でレターデーション発現剤のセルロースアシレートに対する質量比は1.0%であった。残留溶剤量30%でフィルムをバンド から剥離し、140℃で40分間乾燥させセルロースアシレートフィルムを製造した。出来あがったセルロースアシレートフィルム101の残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は100μmであった。
【0222】
(光学フィルム111の作製)
上記で得たセルロースアシレートフィルム101を、連続した長尺フィルムをテンタークリップの長手方向の間隔が把持、搬送している間に狭くなる構造のテンターを用いて幅方向に延伸する工程を持っている延伸装置に送り出し、フィルム温度を180℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に延伸を開始、フィルム長手方向は0.85倍収縮させ、テンタークリップにより幅方向を1.25倍延伸し、延伸後の膜厚125μmの光学フィルム111を得た。
【0223】
[実施例1−2]
【0224】
(光学フィルム112の作製)
上記で得たセルロースアシレートフィルム101を、実施例1−1と同様の延伸装置に送り出し、フィルム温度を190℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に延伸を開始、フィルム長手方向は0.85倍収縮させ、テンタークリップにより幅方向を1.25倍延伸し、延伸後の膜厚135μmの光学フィルム112を得た。
【0225】
[実施例1−3]
【0226】
(光学フィルム113の作製)
上記で得たセルロースアシレートフィルム101を、実施例1−1と同様の延伸装置に送り出し、フィルム温度を175℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に延伸を開始、フィルム長手方向は0.85倍収縮させ、テンタークリップにより幅方向を1.25倍延伸し、延伸後の膜厚115μmの光学フィルム113を得た。
【0227】
[実施例1−4]
【0228】
(光学フィルム114の作製)
上記で得たセルロースアシレートフィルム101を、実施例1−1と同様の延伸装置に送り出し、フィルム温度を170℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に延伸を開始、フィルム長手方向は0.85倍収縮させ、テンタークリップにより幅方向を1.25倍延伸し、延伸後の膜厚110μmの光学フィルム114を得た。
【0229】
上記の実施例にて得たフィルムを25℃60%RHの環境下で2時間以上調湿したのち、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、波長450nm,550nm,650nmにおいて3次元複屈折測定を行い、面内のレターデーションReおよび傾斜角を変えてReを測定することで得られる膜厚方向のレターデーションRthを求めたところ表1に示す光学性能であることがわかった。以下の実施例および比較例で述べるフィルムサンプルも同様に評価した。
【0230】
[実施例2]
【0231】
(光学フィルム211の作製)
実施例1で得たセルロースアシレートフィルム101を、連続した長尺フィルムをテンタークリップの長手方向の間隔が把持、搬送している間に広くなる構造のテンターを用いて長手方向に延伸する工程を持っている延伸装置に送り出し、フィルム温度を180℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に延伸を開始、フィルム長手方向は1.25倍延伸し、テンタークリップにより保持しながら幅方向を0.72倍収縮し、延伸後の膜厚130μm、表1に示す光学性能である光学フィルム211を得た。
【0232】
[実施例3]
(セルロースアシレート溶液CA−2の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレートの溶液CA−2を調製した。なお、Ac=アセチル基、Pro=プロピオニル基である。
【0233】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(セルロースアシレート溶液CA−2組成)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート
Ac置換度2.06+Pro置換度0.79 100.0質量部
TPP(トリフェニルフォスフェート) 7.8質量部
BDP(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0234】
(マット剤溶液MT−2の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液MT−2を調製した。
【0235】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(マット剤溶液MT−2組成)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアシレート溶液CA−2 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0236】
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液AD−2を調製した。さらに下記に示すレターデーション発現剤(化合物X;円盤状化合物(446))を用いた。
【0237】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(添加剤溶液AD−2組成)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のレターデーション発現剤(化合物X) 7.6質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液CA−2 12.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0238】
化合物X
【0239】
【化21】

【0240】
(セルロースアシレートフィルム試料301の作製)
上記セルロースアシレート溶液CA−2を94.6質量部、マット剤溶液MT−2を1.3質量部、添加剤溶液AD−2を2.3質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成でレターデーション発現剤のセルロースアシレートに対する質量比は1.0%であった。残留溶剤量30%でフィルムをバンド から剥離し、140℃で40分間乾燥させセルロースアシレートフィルムを製造した。出来あがったセルロースアシレートフィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は100μmであった。
【0241】
(光学フィルム311の作製)
上記で得たセルロースアシレートフィルム301を、実施例1−1と同様の延伸装置に送り出し、フィルム温度を160℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に延伸を開始、フィルム長手方向は0.84倍収縮させ、テンタークリップにより幅方向を1.25倍延伸し、延伸後の膜厚125μm、表1に示す光学性能である光学フィルム311を得た。
【0242】
[実施例4]
(セルロースアシレート溶液CA−3の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレートの溶液CA−3を調製した。なお、Ac=アセチル基である。
【0243】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(セルロースアシレート溶液CA−3組成)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Ac置換度2.92のセルロースアセテート 100.0質量部
TPP(トリフェニルフォスフェート) 7.8質量部
BDP(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0244】
(マット剤溶液MT−3の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液MT−3を調製した。
【0245】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(マット剤溶液MT−3組成)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアシレート溶液CA−3 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0246】
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液AD−3を調製した。さらに下記に示すレターデーション発現剤(化合物Y;棒状化合物(41))を用いた。
【0247】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(添加剤溶液AD−3組成)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のレターデーション発現剤(化合物Y) 7.6質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液CA−3 12.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0248】
化合物Y
【0249】
【化22】

【0250】
(セルロースアシレートフィルム試料401の作製)
上記セルロースアシレート溶液CA−3を94.6質量部、マット剤溶液MT−3を1.3質量部、添加剤溶液AD−3を2.3質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成でレターデーション発現剤Yのセルロースアシレートに対する質量比は1.0%であった。残留溶剤量30%でフィルムをバンド から剥離し、140℃で40分間乾燥させセルロースアシレートフィルムを製造した。出来あがったセルロースアシレートフィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は100μmであった。
【0251】
(光学フィルム411の作製)
上記で得たセルロースアシレートフィルム401を、実施例1−1と同様の延伸装置に送り出し、フィルム温度を180℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に延伸を開始、フィルム長手方向は0.70倍収縮させ、テンタークリップにより幅方向を1.32倍延伸する以外は実施例1−1の手法と同様の操作を行い、延伸後の膜厚140μm、表1に示す光学性能である光学フィルム411を得た。
【0252】
[比較例1]
【0253】
(比較試料001の作製)
実施例1−1で得たセルロースアシレートフィルム101を固定一軸延伸した。フィルム101の温度を180℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に延伸を開始、フィルム長手方向は1.00倍で固定保持し、テンタークリップにより幅方向を1.25倍延伸し、延伸後の膜厚92μm、表1に示す光学性能である比較例試料フィルム001を得た。
【0254】
[比較例2]
【0255】
(比較試料002の作製)
実施例1−1で得たセルロースアシレートフィルム101を固定一軸延伸した。フィルム101の、温度を180℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に延伸を開始、フィルム長手方向は1.00倍で固定保持し、テンタークリップにより幅方向を1.10倍延伸し、延伸後の膜厚95μm、表1に示す光学性能である比較例試料フィルム002を得た。
【0256】
[比較例3]
【0257】
(比較試料003の作製)
実施例4で得たセルロースアシレートフィルム401を固定一軸延伸した。フィルム401の、温度を180℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に延伸を開始、フィルム長手方向は1.00倍で固定保持し、テンタークリップにより幅方向を1.35倍延伸し、延伸後の膜厚72μm、表1に示す光学性能である比較例試料フィルム003を得た。
【0258】
表1に本発明の光学フィルムの組成および製膜方法、光学的な特性および液晶表示装置に実装した際の性能を示した。
【0259】
【表1】

【0260】
(偏光板加工)
以上の実施例で得られた本発明の光学フィルムサンプルおよび比較例で得られたサンプルを市販の偏光板(HLC2−5618、サンリッツ(株)製)と粘着剤を用いて貼り合わせ、位相差フィルム一体型偏光板に加工した。
【0261】
[実施例5]
(IPSパネルへの実装評価)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。次に、実施例1で作製した光学フィルム111の表面を1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルムの表面をケン化した。このアルカリ鹸化した光学フィルム111をポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光子の片側に貼り付けた。この際光学フィルム111の遅相軸と偏光子の透過軸が平行になるように配置した。保護フィルムとして市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フィルム(株)製)を同様にケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側(光学フィルムを貼り付けなかった側)に貼り付けた。このようにして、偏光板一体型位相差フィルムを作製した。同様の操作により実施例試料114、比較例試料001〜003についても偏光板一体型位相差フィルムを作製した。
【0262】
上記のようにして作製した偏光板一体型位相差フィルム、IPS型の液晶セル、市販の偏光板(HLC2−5618、サンリッツ(株)製)の順番に上から重ね合わせて粘着剤を用いて貼り合わせ、組み込んだ図4の層構成を持つ表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の透過軸を直交させ、上側の偏光板の透過軸は液晶セルの分子長軸方向と平行(すなわち光学補償層の遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルや電極・基板はIPSとして従来から用いられているものがそのまま使用できる。液晶セルの配向は水平配向であり、液晶は正の誘電率異方性を有しており、IPS液晶用に開発され市販されているものを用いることができる。液晶セルの物性は、液晶のΔn:0.099、液晶層のセルギャップ:3.0μm、プレチルト角:5度、ラビング方向:基板上下とも75度とした。図4において、保護タックとは保護フィルムを意味する。
【0263】
(パネルの色味視野角評価)
図4に示した層構成にて液晶表示装置に実装した各々のサンプルについて、画面を黒表示とした場合の方位角45度、極角60度からの斜め方向の色味変化を評価した。色味評価において、色味評価において、○は、色味変化(黄色味または赤味)が全く見られない、△は、極角60度で色味変化が見られるが、極角を60度から30度まで戻すと色味変化はなくなる、×は、いずれの極角でも明らかな色味変化があった、である。実施例にて作製した本発明の光学フィルム111および114を用いたサンプルはいずれも斜め方向見てもほとんど着色(色味変化)が無く、また光漏れが見られなかった。一方、比較例のサンプル001〜003を斜め方向から見たところ光漏れが顕著であり、漏れている光の着色(やや赤み傾向あり)が確認できた。また、画面を白表示とした際にも測定を行い、黒表示時とのコントラスト比を求めたところ、本発明の光学フィルムを用いた場合はいずれも優れたコントラスト比を有することがわかった。
【0264】
[実施例6]
(IPSパネルへの実装評価)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。次に、実施例1で作製した光学フィルム111の表面を1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルムの表面をケン化した。このアルカリ鹸化した光学フィルム111をポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光子の片側に貼り付けた。この際光学フィルム111の遅相軸と偏光子の透過軸が平行になるように配置した。保護フィルムとして、Re(550)=0nm、Rth(550)=0nmである、市販のセルローストリアセテートフィルム(ZRF80S、富士フイルム(株)製)を同様にケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側(光学フィルムを貼り付けなかった側)に貼り付けた。このようにして、偏光板一体型位相差フィルムを作製した。同様の操作により実施例試料114、比較例試料001〜003についても偏光板一体型位相差フィルムを作製した。
【0265】
上記のようにして作製した偏光板一体型位相差フィルム、IPS型の液晶セル、市販の偏光板(HLC2−5618、サンリッツ(株)製)の順番に上から重ね合わせて粘着剤を用いて貼り合わせ、組み込んだ図4の層構成を持つ表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の透過軸を直交させ、上側の偏光板の透過軸は液晶セルの分子長軸方向と平行(すなわち光学補償層の遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルや電極・基板はIPSとして従来から用いられているものがそのまま使用できる。液晶セルの配向は水平配向であり、液晶は正の誘電率異方性を有しており、IPS液晶用に開発され市販されているものを用いることができる。液晶セルの物性は、液晶のΔn:0.099、液晶層のセルギャップ:3.0μm、プレチルト角:5度、ラビング方向:基板上下とも75度とした。図4において、保護タックとは保護フィルムを意味する。
【0266】
(パネルの色味視野角評価)
図4に示した層構成にて液晶表示装置に実装した各々のサンプルについて、画面を黒表示とした場合の方位角45度、極角60度からの斜め方向の色味変化を評価した。色味評価において、色味評価において、○は、色味変化(黄色味または赤味)が全く見られない、△は、極角60度で色味変化が見られるが、極角を60度から30度まで戻すと色味変化はなくなる、×は、いずれの極角でも明らかな色味変化があった、である。実施例にて作製した本発明の光学フィルム111および114を用いたサンプルはいずれも斜め方向見てもほとんど着色(色味変化)が無く、また光漏れが見られなかった。一方、比較例のサンプル001〜003を斜め方向から見たところ光漏れが顕著であり、漏れている光の着色(やや赤み傾向あり)が確認できた。また、画面を白表示とした際にも測定を行い、黒表示時とのコントラスト比を求めたところ、本発明の光学フィルムを用いた場合はいずれも優れたコントラスト比を有することがわかった。
【0267】
以上のように、本発明の、ReおよびRthが所望の性能をもつ光学フィルムは、優れた広範囲にわたり高いコントラスト比を有し、色味変化を抑制可能な位相差フィルムとしても機能するフィルムを作製でき、これらを用いた偏光板、さらには液晶表示装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0268】
【図1】本発明の偏光板の一例の断面構造を模式的に示す図である。
【図2】本発明の偏光板の別の例の断面構造を模式的に示す図である。
【図3】本発明の液晶表示装置の構成例を示す図である。
【図4】実施例で採用された液晶パネルの層構成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0269】
70 偏光板
71 偏光子
72,73 保護膜
74 粘着剤層
75 液晶セル用ガラス
81 機能層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)〜(6)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
(1)150≦Re(550)≦400
(2)−100≦Rth(550)≦100
(3)0.1<Re(450)/Re(550)<0.95
(4)1.03<Re(650)/Re(550)<1.93
(5)0.4<(Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))<0.95
(6)1.05<(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))<1.90
(式(1)〜(6)中、Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【請求項2】
光学フィルムがセルロースアシレートを含むことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
光学フィルムの膜厚が10〜300μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
フィルムの長手方向または幅方向のいずれか一方を延伸させる延伸工程と、もう一方の方向を収縮させる収縮工程を含み、かつ、前記延伸工程および/または収縮工程前の膜厚と比較して、膜厚を増加させることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
加熱により収縮することによって膜厚を増加させることを特徴とする請求項4に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
フィルムをテンタークリップによって把持、搬送し、該テンタークリップの搬送方向の間隔を狭めることで収縮させる収縮工程、およびこれと略直交する方向に該フィルムを延伸させる延伸工程を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
フィルムをテンタークリップによって把持、搬送し、該テンタークリップの搬送方向の間隔を広げることで延伸する延伸工程、およびこれと略直交する方向に該フィルムを収縮させる工程を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1項に記載の製造方法で作成されたことを特徴とする光学フィルム。
【請求項9】
請求項1〜3、あるいは請求項8のいずれかに記載の光学フィルムに、さらに下記式(7)を満たす光学異方性層を形成してなることを特徴とする光学補償フィルム。
(7)Re(550)=0〜200(nm)かつ|Rth(550)|=0〜300(nm)
【請求項10】
請求項1〜3、あるいは請求項8のいずれかに記載の光学フィルム、請求項9に記載の光学補償フィルムの少なくとも1つを含むことを特徴とする偏光板。
【請求項11】
請求項1〜3、あるいは請求項8のいずれかに記載の光学フィルム、請求項9に記載の光学補償フィルム、請求項10に記載の偏光板、のいずれか1つを含むことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
液晶セルがIPSモードである請求項11に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
請求項10に記載の偏光板と、下記式(8)を満たす光学フィルムを偏光板の保護フィルムとして有する偏光板と、IPSセルとを含む液晶表示装置。
(8)|Re(550)|=0〜10(nm)かつ|Rth(550)|=0〜25(nm)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−26881(P2008−26881A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159247(P2007−159247)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】