説明

光学物品の環状面上に塗膜層を形成する方法

本発明は光学物品の環状面上に少なくとも1層の塗膜を形成する方法に関しこれは:
低曲率半径r の第1主経線および高曲率半径R の第2主経線(r<R)および球面2から構成される環状面を持つ光学物品1を準備する;
環状面上に液状硬化性組成物の少なくとも2液滴2a、2bのそれぞれを、低曲率半径rの第1主経線上に中心を持ち頂角が40°までの2つの相対する扇形S1、S2内に置く;
前記の計量済みの量の液状硬化性組成物に圧力を加え光学物品の環状面上に広げる;
液状硬化性組成物を硬化する;および
少なくとも1層の被膜で塗膜された光学物品を回収する;
ことから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学物品、とくにめがねレンズまたはレンズ素材の環状面上に硬化性組成物の塗膜層を、それもとりわけ機能性塗膜層を形成する方法に関する。
【0002】
本発明による実施形態の一つにおいて塗膜層は硬化性接着剤塗膜組成物で、これによりさらなる塗膜層または積み重ね塗膜層がサポートから光学物品の環状面上に転写される。
【背景技術】
【0003】
めがねレンズまたはレンズ素材の少なくとも一つの面に幾つかの機能性被覆を塗膜し、めがねレンズまたはレンズ素材に追加的または改良した特性を与えることは技術的にはよく行われることである。かくて、一般的には有機ガラス素材で出来ためがねレンズまたはレンズ素材の少なくとも1つの面にめがねレンズまたはレンズ素材の表面から始めて順次、耐衝撃および/または接着用プライマー被覆、摩耗および/または耐スクラッチ被覆(一般にハードコートと呼ばれる)、反射防止被覆、および随意的に疎水性最終トップコートや、同様に偏光被覆および光変色または染色被覆のような他の被覆を塗膜することは通常行われることである。
【0004】
めがねレンズまたはレンズ素材の表面を被覆するための多くの手順および方法が提案されてきている。
米国特許第6562466号においてはレンズ素材の主表面に塗膜を転写する方法を開示し、これは必要量の硬化性接着剤をレンズ素材の主表面に置き、柔軟性のあるサポートで運ばれる塗膜を硬化性接着剤と接触させ、柔軟性のあるサポートに圧力を加えて接着剤を拡げ接着剤の均一な層をレンズ素材の主表面に形成させ、接着剤を硬化させてからサポートを取り外すことから構成され、このことによりレンズ素材の主表面に塗膜が貼り付いたレンズ素材が回収できる。
【0005】
米国特許出願第10/417525号においては上述の方法に類似した方法を開示している。
これらの方法は「塗膜転写方法」または塗膜転写が通常はレンズの背面に行われるので「背面処理(BST)」と称せられる。
【0006】
米国特許出願第10/750145号においては視認可能な境界線の無い塗膜光学物品を作る方法を開示し、次のもので構成される:
(i)少なくとも1つの仕上げはされているが未研磨の幾何学的に規定された主表面を持つ光学物品を準備する。
(ii)内側および外側面を備えた型部品を準備する。
(iii)前記光学物品の前記主表面、または型の内側表面に必要量の液状硬化性塗膜組成物を置く。
(iv)光学物品および型部品を互い方向に相対的に動かすことにより塗膜組成物を光学物品の主表面に接触、または型部品の内側表面と接触の何れかをさせる。
(v)型部品に圧力を掛けて液状硬化性塗膜組成物を前記主表面に拡げ主表面に液状硬化性塗膜組成物の均一な層を形成する。
(vi)液状硬化性塗膜組成物の層を硬化する。
(vii)型部品を引き離す。そして
(viii)目につく様な境界線のない塗膜した光学物品を回収する。
【0007】
この後者の方法を「加圧塗膜法」と称することにする。
液状硬化性コーティング組成物または接着剤の必要なまたは計量済みの量とは、塗膜すべき表面の全表面を覆う最終的な塗膜を形成するための、または塗膜を転写および接着するための十分な量を意味する。
【0008】
加圧塗膜方法および塗膜転写方法の双方において重要な要件は、加圧ステップにおいて硬化性組成物が光学物品の全表面域に一様に広がり、このため硬化後に光学物品の全表面を覆う、好ましくは均一厚みの塗膜層または接着剤中間層が形成されることである。
【0009】
付随して、硬化性組成物の量はできるだけ少量にするものとし、これにより光学物品の周縁から硬化性組成物が多量にはみ出すことを防ぎ物品の周縁から組成物を除去する余分の工程を防止する。
【0010】
上の加圧塗膜および転写塗膜方法において、硬化性組成物を光学物品の表面の中央に1滴、または表面中央の正方形の角に4滴、または中心に1滴および中央正方形の角に4滴の5滴を置くことが提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
出願者は、塗膜する光学物品の表面が環状面である場合には硬化性組成物を上のように光学物品の表面に無作為に1滴のみまたは4滴または5滴のパターンで置いたのでは硬化性組成物は光学物品の全表面域に均一に広がらず、このため硬化性組成物を恐らくは光学物品の周縁から溢れる結果となるほど多量に用いなくては最終光学物品に未塗膜部分を残すことを見いだした。
【0012】
本発明の目的は少なくとも1層の塗膜層を形成する方法を提供することにあり、ここでは必要量の液状硬化性組成物を光学物品、とりわけめがねレンズまたはレンズ素材の環状面に置き、圧力を加えて光学物品の全環状面に広げ、これにより硬化後に硬化性組成物が好ましくは均一厚みで、光学物品の表面の全表面を塗膜する硬化塗膜層を形成する。
【0013】
本発明のさらなる目的として、上記のような方法において使用される硬化性組成物の量が光学物品の周縁で硬化性組成物がオーバーフローすることを防止できるものである方法を提供することにある。
さらに本発明の目的は上記が加圧塗膜方法である方法を提供することにある。
さらに本発明の別の目的は上記が転写塗膜方法である方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上の目的およびこれから記述し以下で明らかとなることにしたがって、本発明による光学物品の環状面上に少なくとも1つの塗膜層を形成する方法は次のものから構成される:
− 低曲率半径r の第1主経線および高曲率半径R の第2主経線(r<R)で構成される環状面を持つ光学物品を準備する。
− 光学物品の前記環状面上に計量済みの量の液状硬化性組成物を置く。
− 前記計量済みの量の液状硬化性組成物に圧力を加え前記液状硬化性組成物を光学物品の環状面上に拡げる。
− 液状硬化性組成物を硬化させる。そして
− 少なくとも1層の被膜で塗膜された光学物品を回収する。
ここに、液状硬化性組成物を置く手順は環状面上に少なくとも2滴の液状硬化性組成物を、低曲率半径r の第1主経線上を中心として頂角が40°まで、好ましくは30°までの2つの対向する扇形のそれぞれ一方に1滴ずつ置くことを含む。
2つの液滴は低曲率半径の第1経線そのものに置かれることが好ましい。
【0015】
好ましい実施形態においては、2つの液滴は光学物品の周縁から2から20mmの範囲、好ましくは5から10mmの距離(液滴の端部から光学物品の周縁までの距離)に置かれてもいる。
液状硬化性組成物の液滴を追加して、なかでも3、4および5滴のパターンを形成するために用いることもある。
3滴のパターンでは追加液滴は環状面の中心に置かれることが好ましい。
【0016】
4滴パターンにおいては追加の2滴はそれぞれ上に規定した、しかし高曲率半径R の第2主経線上を中心とする2つの扇形のそれぞれ一方に1滴ずつに置かれることが好ましく、第2経線上がさらに好ましい。また、追加の2滴は光学物品の周縁から2から20mmの範囲、好ましくは5から10mmの距離に置かれることが好ましい。
【0017】
5滴パターンでは、追加液滴の内の2滴は4滴パターンの追加液滴と同様に置かれ、3番目の追加液滴は光学物品の中心に置かれることが好ましい。この5液滴パターンが本発明の方法として最も好ましいパターンである。
【0018】
液滴を扇形内に置くということは液滴が環状面と接触する面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは100%が対応する扇形内に位置しているということである。
【0019】
また、環状面の中心に置かれた追加液滴を除き、環状面の中心とそれぞれの液滴の端部との最小距離は10から20mmが好ましく15から25mmがなおよい。
硬化性組成物の液滴群は硬化性組成物の細い線により連結していてもよい。
細い線とは巾が最大でも液滴の寸法(円形の液滴の場合は直径)に等しい線を意味する。
【0020】
液状硬化性組成物を液滴パターンで置く場合に比べて液状硬化性組成物を細い線として置く場合は、液状硬化性組成物の注出を止めたり出したりすることにより生じる泡によりレンズの仕上がりが変わってしまう可能性を防止する。
1本以上の細い線を置くこともできる。
【0021】
細い線はレンズ表面の一方の高い環状側から別の高い環状側に延びる直線であることが好ましい。
本発明によるさらなる実施形態においては、液状硬化性組成物は低曲率半径の第1主経線に沿った細い線の形として置かれる。
実際、細い線状に置くパターンは液滴を一本の連続流れ線状に注出することと定義することもできる。
【0022】
上に示したとおり、硬化性組成物の量は塗膜処理の間にオーバーフローすることを防ぐために少量に抑えるべきであるが、環状面の全表面を被覆するのに十分な量でなくてはならない。
一般に、硬化性組成物の合計量は0.25g以下、好ましくは0.20gまたは0.12gである。
【0023】
通常、液滴は円形で硬化性組成物の液滴直径d に対する光学物品の直径Dの比率d/Dは0.005から0.3の範囲で、一般には0.01から0.15である。勿論この比率は液滴数および液状硬化性組成物の粘度によるもので、全硬化性組成物の量を低く抑えることを念頭におくと0.25g以下が好ましく、さらには0.20g以下がよい。
【0024】
液状硬化性塗膜組成物は一般に光学物品、とりわけめがねレンズまたはレンズ素材の光学および/または機械特性を改善するための機能性塗膜層を形成するために用いられるどの様な伝統的な液状硬化性塗膜組成物でもよく、例えば接着性および/または耐衝撃性を改善するためのプライマー塗膜、耐摩耗性および/または耐スクラッチ性塗膜(一般にハードコートと呼ばれる)、疎水性トップコートはもとより、偏光塗膜および光変色または染色塗膜の様な他の塗膜でもよい。
【0025】
とりわけ、液状硬化性組成物は転写塗膜法に用いるため液状硬化性接着剤組成物であってもよい。
耐衝撃性およびプライマー塗膜組成物として好まれるものはポリウレタンラテックスまたはアクリル系ラテックス組成物である。
好ましい耐摩耗性ハードコート組成物は1つ以上のエポキシシランおよび1つ以上の無機フィラー例えばコロイドシリカを含む。
【0026】
硬化性液状塗膜組成物は熱的に硬化することもまたは光照射、とりわけUV照射による硬化または両方も可能である。硬化性液状塗膜組成物はUV硬化性塗膜組成物で特にUV硬化耐摩耗性ハードコート組成物であることが好ましい。
【0027】
光学物品の環状面は剥き出し面、すなわちどの様な塗膜層も置かれていない面であってもまたはすでに1つ以上の機能性塗膜層、とりわけプライマー塗膜層で被覆された環状面であってもよい。
【0028】
光学物品、とりわけめがねレンズまたはレンズ素材の環状面は物品の背面であること、すなわち物品の用いられる面が使用者に最も近いことが好ましい。
【0029】
本発明の方法による加圧ステップは剛性の型部品でその内面、すなわち型部品の液状硬化性組成物と接触する面に塗膜する環状面の幾何学的形状を逆に複製するもの、または柔軟性のある型部品で圧力が加えられた場合に環状面の幾何学的形状を逆に複製するものを用いて都合よく実行される。
【0030】
当然、圧力は型部品の外側面に適用される。
加圧用柔軟性型部品は柔軟性のある薄片でよいが、塗膜する環状面の曲率、とりわけ背環状面より高いベース曲率であることが好ましい。
柔軟性のある薄片はどの様な適当な素材でもよいが、柔軟性プラスチック素材、特に熱可塑性素材でとりわけポリカーボネートが好ましい。
【0031】
柔軟性薄片の作用面、すなわち硬化性液状塗膜組成物と接触する薄片の面には型により整えられた起伏を持つこともあり、換言すると微細構造化されていることもあり最終レンズの表面にミクロ構造で伝えた特性を与えることもできる(例えば反射防止特性)。
微細構造化した型部品を得るための異なる技術についてはWO99/29494号に開示されている。
【0032】
柔軟性薄片を用いる場合、薄片はコーティングを施す光学物品の環状面の凹面であるとか凸面であるとかの一般的な形に一致する表面形状であるだけでよく、その表面が塗膜される光学物品の形状に厳密に対応する必要はない。かくて、同じ柔軟性薄片を異なる特定の形状の環状面を持つ光学物品に塗膜を施すのに用いることができる。一般に、柔軟性薄片は平行な2つの主表面を持ち従って均一な厚みを持つ。柔軟性薄片は球状であることが好ましい。
【0033】
柔軟性薄片の厚みは通常0.2から5mmで0.3から5mmが好ましい。柔軟性薄片はポリカーボネート製であることがさらに好ましく、この場合は厚みが0.5から1mmであることが好ましい。
柔軟性薄片は光透過性、特にUV光に対してそうであることが好ましく、かくて塗膜組成物をUV硬化することが可能になる。
【0034】
本発明によると、圧力は薄片の外側面に用いられ(すなわち薄片の塗膜組成物と接触していない側の面)、少なくとも組成物がゲル化するまで実質的に維持されることが好ましい。加圧およびその維持は薄片の外側面に位置する膨張膜を介してもたらすことができる。
【0035】
用いる圧力は普通10から350kPa(3.5kgf/cm)の範囲であるが、30から150kPaが好ましく、さらに30から100kPaがよい。
前に述べたとおり、柔軟性薄片の加圧は膨張膜を用いてもたらすことができる。
膨張膜はレンズまたはレンズ素材の表面形状にしたがって柔軟性薄片をレンズまたはレンズ素材に押し付けるために適当な流体の圧力により十分に変形するすべてのエラストマー素材から作ることができる。
【0036】
一般に、膨張膜の厚みは0.50mmから5mmの範囲で伸び率は100から800%、そしてデュロメーターはショアAで10から100である。
塗膜組成物が熱硬化される場合は、膨張膜の素材は硬化温度に耐える様に選択されるべきである。
塗膜組成物がUV硬化される場合には、透明な素材、例えば透明なシリコンゴムまたは他の透明ゴムまたはラテックスが選択されるべきである。UV光は型部品側から照射されることが好ましい。
【0037】
膨張膜により型部品に加えられる圧力は一般に10kPaから150kPaの範囲でレンズまたはレンズ素材および柔軟性薄片の寸法および曲率に因る。勿論、圧力は塗膜組成物が十分に硬化し塗膜がレンズまたはレンズ素材に対する必要な密着性が得られるまで柔軟性薄片およびレンズまたはレンズ素材に対し保持される必要がある。
【0038】
本発明の方法による柔軟性薄片は上に述べた膨張膜そのものであってもよく、とりわけ空気アキュムレーター装置の膨張膜であってもよい。その場合は勿論、柔軟性薄片は使われない。
膨張膜の場合も柔軟性薄片の場合と同様の圧力が使用される。
【0039】
薄片または膨張膜のいずれの場合でもプレコートし、例えば剥離塗膜を、塗膜レンズ素材の光学品位を保つための良好な光学面を示すこともできる。
柔軟性薄片の場合は、膨張膜の塗膜組成物と接するその表面に塗膜工程で塗膜に複製される微細構造またはパターンを含むことも可能である。
【0040】
型部品は面仕上げ、熱成形、真空熱成形、熱成形/圧縮、射出成形および射出/圧縮成型のような既知の方法を用いて得ることができる。
前に述べたとおり、環状面は半径RおよびrでR>rの2つの主経線を持ち、環状面を規定する半径Rおよびrにそれぞれ対応する2つのベース曲率BLRおよびBLrを計算することが可能である。
【0041】
ベース曲率(またはベース)は530/曲率半径(mm)の比として定義される。かくて、
【数1】

ここでRおよびrはmm表示である。
柔軟性型部品は球状でベース曲率BCであることが好ましい。
【0042】
環状面のベース曲率BLRおよびBLrならびに柔軟性型のベース曲率BC部は次の関係を満たすものとすることが好ましい。
BLR<BLr
a) BLr−BLR≦3.5 の場合
0<BC−BLR<3 }
|BC−BLr|<1 }
好ましくは
0.2<BC−BLR<2.5 }
|BC−BLr|<0.5 }
b) BLr−BLR>3.5 の場合
BLR<BC<BLr
【0043】
型部品の内側面は本発明による方法を実施中に環状面に転写される様に、塗膜層または積み重ね塗膜層を予め塗膜されている場合もある。勿論、型部品の内側面に積み重ね塗膜層が形成されている場合、それらは環状面に積み重ねられるべき順の逆順に置かれている。
【0044】
転写する塗膜層または積み重ね塗膜層は伝統的に光学分野で用いられてきたすべての塗膜層または積み重ね塗膜層、例えば反射防止塗膜層、耐摩耗性塗膜層、耐衝撃性塗膜層、疎水性トップコート、偏光性塗膜層、光変色性塗膜層、光電塗膜、電光変色性塗膜、染色塗膜層、ロゴなど印刷層またはこれらの塗膜層の2つ以上の積み重ねを含むことができる。
【0045】
積み重ね塗膜層の転写は次のもので構成されることが好ましい:
− 随意的に、疎水性トップコート、
− 反射防止積み重ね、通常は金属酸化物またはシリカのような無機素材を含む、
− ハードコート、好ましくは1つ以上のエポキシシランおよびコロイダルシリカのような1つ以上の無機フィラーを含む、
− 随意的に、衝撃強度プライマー、好ましくはポリウレタンラテックスまたはアクリルラテックス。
積み重ねのそれぞれの層は型部品の内側面に上記に列挙した順に置かれる。
【0046】
本発明による方法は「トップコート、反射防止塗膜、ハードコートおよびプライマーコート」で構成される全積み重ねを転写する場合にとりわけ興味深い。
通常反射防止膜の厚みは80nmから800nmの範囲で100nmから500nmが好ましい。
ハードコートの厚みは1から10マイクロメートルの範囲にあることが好ましいが、2から6マイクロメートルが好ましい。
プライマーコートの厚みは0.5から3マイクロメートルの範囲にあることが好ましい。
【0047】
一般に転写される塗膜層または積み重ね塗膜層の合計厚みは1から500μmであるが、50μm未満が好ましく、20マイクロメートル未満がさらに好ましく、10μm未満がなおさらよい。
本発明による方法が光学物品の環状面に塗膜層を転写するために用いられる場合、液状硬化性組成物は硬化性接着性組成物または接着剤でこれらは硬化後に転写された塗膜層と光学物品の環状面との間に接着性中間層を形成する。
【0048】
本発明によるさらなる実施形態において、型部品の内側面と光学物品の環状面との間に計量済みの量の液状硬化性組成物を置いた透明のフィルムを設けることもでき、これにより処理が完了したとき透明フィルムは物品の環状面に貼り付けられている。
【0049】
フィルムはすべての適切な透明素材で作られるが、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリエピスルフィドポリマー類およびコポリマー類ならびにこれらの混合物のような透明なプラスチック素材であることが好ましい。
一般に、透明フィルムは1mm以下の厚みであることが好ましく、500μm以下がより好ましく、さらには500μm以下がよい。
【0050】
転写フィルムの外側面、つまり硬化性組成物と接触することにならないフィルムの面には予め1つ以上の上に規定したような機能性塗膜層を設けることが可能でこれにより処理が完了した後に光学物品に1つ以上の機能性塗膜も同時に施されることになる。
【0051】
糊または接着剤はどの様な硬化性の糊または接着剤でもよいが、優先的には熱硬化性または光硬化性、とりわけUV硬化性の糊または接着剤で完成した光学物品の光学特性を損なうことなく塗膜を光学物品の光学面に接着できるものである。
糊の中に光変色性染料および/または顔料の様な幾つかの添加物を含ませることもできる。
【0052】
硬化性の糊または接着剤はポリウレタン化合物、エポキシ化合物、(メタ)アクリレート化合物のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシレート化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどであってもよい。
硬化性の糊または接着剤として好ましい化合物はアクリレート化合物の例えばポリエチレングリコールジアクリレート類、エトキシレート化ビスフェノールAジアクリレート類、種々の3官能基アクリレート類の例えば(エトキシレート化)トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートである。
【0053】
単官能基アクリレート類のイソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルチオエチルアクリレートなどもまた相応しい。
上記の化合物は単独でもまた組み合わせても使用できる。
硬化した場合、糊の層は均一の厚みであることが好ましい。相応しい糊はLoctite社から市販されている。
硬化後の糊の最終厚みは100μm未満が好ましく、80μm未満が好ましく、50μm未満が最も好ましいが通常は1から30μmである。
【0054】
光学物品は光学レンズを作るのに適したどの様な素材で作られていてもよいがプラスチック素材でとりわけジエチレングリコールビス−アリルカーボネートコポリマー(PPG工業のCR−39TM)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、ポリチオウレタン、およびポリエピスルフィド、これらの混合物を含むポリマーおよびコポリマー類、随意的に光変色性化合物から作られることが好ましい。また、光学物品用素材には淡い色が付いている場合もある。
【0055】
本発明による方法を用いて塗膜する光学物品の環状面は仕上げはされているが未研磨の面でもよい。一般に、その様な仕上げはされているが未研磨の面のRは0.05から1.5μm、好ましくは0.1から1.0μmである。光学物品がジエチレングリコールビス−アリルカーボネートポリマーでできている場合、仕上げはされているが未研磨の面の表面粗さRは通常約1.0μmであるが、一方光学物品がポリカーボネートでできている場合の仕上げはされているが未研磨の面の粗さは通常約0.5μmである。
【0056】
Rqは以下のようにして決定される:
表面の二乗平均平方根断面高さRq(2DRq)(前には粗さRqとも称した)を決定するためにTAYLOR HOBSON FTS(様式 Talysurf シリーズ2)のプロフィルメーター/粗度 測定システムが都合よく用いられる。
システムはレーザーヘッド(例えば、製品参照文献112/2033−541)および半径2mmの球形/円錐形ヘッドを持つ70mm長尺感触器(製品参照文献 112/1836)を含む。
システムは選択した部分の平面の2次元輪郭を測定し曲線 Z=f(x)を得る。この例では輪郭は20mmの間隔で得る。
この輪郭から多くの表面特性、とりわけその形、うねりおよび粗さがが引き出される。
従って、Rqを決定するために輪郭は2つの異なる処理、具体的には形状抽出および平均線抽出に対応するフィルター処理に掛けられる。
【0057】
この種のパラメータRqを決定する種々のステップは以下の通りである:
− 輪郭Z=f(x)の入手、
− 形状抽出、
− フィルター処理(平均線抽出)、および
− パラメータRの決定
【0058】
輪郭を入手するステップは先に述べたシステムの針を問題のレンズの表面上に走らせ、移動量xの関数として表面の高さZを蓄積する。
形状抽出ステップでは、先のステップで得られた輪郭を理想球面、つまりその球面に対して相対的に輪郭の差が最小となる球面と関連づける。ここで選定されたモードはLCアークモード(最適円弧抽出)である。
【0059】
これによりうねりおよび粗さに関する輪郭特性の見本曲線が得られる。
フィルター処理ステップは特定の波長に関する異常のみを記憶する。本例において、狙いは粗さに因る異常の波長より高い波長である異常な形、うねりを除去することである。ここでフィルターはガウシアンタイプのもので、用いた切り捨て(カットオフ)値は0.25mmである。
【0060】
は次の式を用いて得た曲線により決定される。
【数2】

ここにZnはフィルター処理中に計算された平均線に関する各点の代数差分Zである。
本発明による方法の適用に先だって環状面に前処理を施すことができる。前処理は例えばプラズマまたはコロナ放電の様な物理的なもの、または例えば溶剤処理またはNaOH処理の様な化学的なものでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
前述および他の目的のための本発明の特長および利点は今後の詳細な説明を添付図と併せて考慮した場合に当業者には直ちに明らかになるであろう。
次に図面、とりわけ図1を参照するが、ここには円形の周縁2を持つレンズ1が略図で示されている。レンズには低い曲率半径rの第1主経線および高い曲率半径Rの第2主経線を持つ環状面がある。
【0062】
本発明による塗膜形成方法においては、少なくとも2滴の液状硬化性組成物2a、2bがレンズ1の環状面の第1主経線r上に中心を持ち頂角αが40°まで、好ましくは30°までで向かい合った2つの扇形S1、S2内に置かれる。
図1に示すとおり、追加の液滴がもたらされる場合もありそれらは点線で示されている。
【0063】
これら追加の液滴は環状面の中心(液滴2c)および/または第2主経線R上に中心を持ち頂角α’が40°まで、好ましくは30°までで向かい合った2つの扇形S’1、S’2内(液滴2d、2e)に置かれる。
液滴2a、2b、2d、2eは経線rおよび/またはR上に、かつレンズの周縁部から4から20mmの範囲、好ましくは5から10mmの距離(液滴端から周縁部までの距離)に置かれることが好ましい。
【0064】
上記の置きパターンにより加圧塗膜方法および転写塗膜方法の双方においてレンズの環状面の全表面域を包含する塗膜を得ることが可能となり下に図2A、2Bおよび3A、3Bとの関連で開示したとおりである。
次の記述は液状硬化性組成物のUV硬化に関連して行われるが、熱硬化性塗膜組成物においても同様の装置および方法を用いることが可能である。
【0065】
図2Aに言及すると、レンズ素材1、例えば環状面レンズ素材をレンズ素材サポート2にその仕上げはされているが未研磨な幾何形状が規定された環状面1aが外側を向くように置く。
2、3、4または5液滴のUV硬化性液状塗膜組成物3をレンズ素材1の環状面1a(背面)に図1に関連して開示したパターンに従って置く。
薄い柔軟性薄片4、例えば球面の薄片を塗膜組成物の上に置く。
【0066】
次いで積み重ねたもの全体を膨張膜装置10の膜14の前に置く。
膨張膜装置10は流体アキュムレーター11、例えばエアーアキュムレーターを含み、これには流体口12、例えば空気口が備えられ、加圧流体源(非表示)に接続された加圧流体をアキュムレーターに導入したりまた加圧流体をアキュムレーターから放出したりする。アキュムレーター10の上面は光透過部分13、例えばUV透過石英ガラス部分で構成され、一方アキュムレーター10の下面は透明な石英ガラス13と位置が合うように透明な膨張膜14で構成される。
【0067】
図2Aに示したように、装置10はさらに膨張膜14が膨らむ際にこれを横方向に誘導するための案内装置15含む。より具体的には、この案内装置はアキュムレーター10の下面から外側に突き出た円錐台部分またはロート15で構成されその大きい方の基部は膨張膜14で塞がれ小さい方の基部は円形の開口部でその直径は少なくとも柔軟な薄片4と等しいが好ましくは幾分大きい(5mmまで大きい)。
【0068】
一般にロートの高さは10から50mmの範囲で10から25mmが好ましく、10から90°、好ましくは30から50°のテーパーを持つ。
最後に、光源、例えばUV光源16はアキュムレーター10の後方に透明石英板13の手前に設けられている。
通常、レンズ素材ホルダー2、レンズ素材1、塗膜組成物液滴3および柔軟性薄片4から構成されるアセンブリーは柔軟性薄片4の縁がロート15の小さい方の基部の開口平面の縁内にあるかこれから50mmまで、好ましくは20mmまで離れて配置される。
【0069】
図2Bに示すとおり、加圧流体例えば加圧空気は外部源(非表示)から入口12を介してアキュムレーター11の内部に導入される。アキュムレーター内の圧力の増加により膨張膜14が膨らみ、膜ガイド装置15のおかげで膜14は柔軟性薄片4を均一にレンズ素材1に向けて駆り立て、一方で塗膜組成物3を均一に広がらせる。
次いで塗膜組成物はUV硬化される。
【0070】
硬化ステップが完了した後、レンズ素材1はホルダー2から取り外され、柔軟性薄片4がはずされて環状面1aにコーティングを施されたレンズ素材1が回収される。
勿論、熱硬化方法の場合には光源およびアキュムレーターの上面の透明部分は必要ではない。
この場合には膨張膜もまた透明である必要はない。その他については装置は同じままである。
【0071】
図3Aおよび3Bは本発明による塗膜の転写が柔軟な型部品またはキャリアーを用いこれに膨張膜を用いてレンズ素材の表面に押し付けで行われる方法の概略図である。
図3Aは膜に加圧し膨らます前のレンズ素材、柔軟性キャリアーおよび膨張膜を現し、一方図3Bは膜に加圧し膨らました後の同じものを現している。
【0072】
図3Aに言及すると、環状面1aを持つレンズ素材1が環状面1aが外側を向くようにしてレンズ素材ホルダー2に装着されている。
液状透明接着剤3の液滴が上記で開示した配置パターンでレンズ素材1の環状面1a上に置かれる。
転写用塗膜5をその片面に持つ、例えば球面キャリアーの様な薄い柔軟性のあるキャリアー4が接着剤液滴3の上に、転写用塗膜5が接着剤液滴3と接触する様に置かれる。
【0073】
アセンブリー全体を膨張膜装置10の前面に据える。
膨張膜装置10は上に開示した様に、例えばエアーアキュムレーター11で、これには流体口12が備えられ、これは例えば加圧流体源(非表示)に接続され加圧流体をアキュムレーターに導入したりまたは加圧流体をアキュムレーターから放出したりする空気口である。アキュムレーター10の上面は光透過部分13、例えばUV透過石英ガラス部分で構成される。
【0074】
図3Bに示すとおり、圧縮空気の様な加圧流体が外部源(非表示)から入口12を介してアキュムレーター11内に導入される。アキュムレーター内の圧力増加により膨張膜14が膨らみ、膜ガイド装置15のおかげで膜14は柔軟性キャリアーを均一にレンズ素材1に向けて押し付けると同時に接着剤3を均一に広げる。
【0075】
次いで塗膜組成物はUV硬化される。
硬化ステップが完了した後、レンズ素材1はホルダー2から取り外され、柔軟性キャリアー4をはずして環状面1aに接着剤塗膜層3を介した接着による転写塗膜5を担ったレンズ素材1が回収される。
【0076】
(実施例1から5および比較例C1からC7)
それぞれの実施例において、ポリカーボネート(PC)製で直径70mmのレンズの背面の環状面には凸面柔軟性型部品(キャリアー)を用いて液状UV硬化性接着塗膜組成物Aが置かれ、拡げられ、硬化されることにより塗膜される。
【0077】
UV硬化性接着塗膜組成物A:
45wt%のビス(4−メタクリロイルチオエチル)スルフィド
30wt%のエトキシレート化ビスフェノール−Aジメタクリレート
25wt%のジエチレングリコールジアクリレート
3phrのIrgacure819(モノマー類100%に対し光開始剤3%)
【0078】
<a)柔軟性型部品上に保護および剥離塗膜の成膜>
保護および剥離塗膜を柔軟性型部品キャリアー(厚み0.5mmのPCキャリアー)の前側面(凸面)に塗工する。
柔軟性型部品(キャリアー):
厚み0.5mmのPCキャリアーでベース曲率6.40。
【0079】
保護および剥離塗膜(PRC塗膜)の配合は次の通りであった:
【表1】

【0080】
PRC塗膜は次のように置かれる:
石けん水を用いてPCキャリアーを洗浄し圧縮空気で乾燥する。次いでキャリアーの凸面は塗工速度600rpmで3秒間、および乾燥速度1200rpmで6秒間のスピンコーティングにより上記保護塗膜組成物を塗膜される。塗膜はFusionSystem H+bulbを1.524m/分(毎分5フィート)の速度で用いて硬化される。
PRC塗膜はBST処理中に転写されることはなく柔軟性型部品上にくっついている。その主要な機能の一つは柔軟性型部品から硬化した塗膜組成物Aが剥離することを助けることである。
【0081】
<b)塗膜処理>
UV硬化性接着塗膜組成物Aはレンズの背面の環状面上に本発明による方法(実施例1から5)および本発明の適用範囲外の方法(比較例C1からC7)を用いて置かれるが、これらは図3A〜3Bに関連して開示されたものと類似している。
処理に関する詳細なパラメータについては以下で説明する。
【0082】
<処理に関するパラメータ>
− 膜圧力(膜により型に加えられる圧力)
12psi(0.827バール)
− UV照射
キセノンランプRC742OEM システムによりUV強度は約1000mW/cmおよび220mJ/cmで5秒間のUV照射。
− 暴露時間
25秒
【0083】
次いで背環状面に硬化組成物Aを塗膜したレンズは柔軟性型部品から分離される。
硬化接着剤塗膜レンズを評価するために、レンズは96℃±3℃のBPI黒色染料の水性湯浴に45分間浸漬される。
この様な条件において硬化接着剤塗膜には薄く色がつくがPCレンズ基体にはつかない。
【0084】
転写の行われなかった部分(つまり硬化塗膜で覆われていない部分)は着色されず裸眼により視覚化される。
着色されていない部分は「非転写点(NTS)」として識別され、塗膜Aがレンズ表面のある部分には広がっていないことを意味する。
【0085】
環状面レンズ、キャリアー、接着剤塗膜組成物液滴パターンおよび接着剤転写の結果(転写またはNTS)に関する詳細なパラメータは表1に示されている。
NTSが見いだされなければレンズは良好である。
【0086】
【表2】

【0087】
図4から10の写真は液滴パターンが中央に1液滴のみまたは低曲率半径(高ベース曲率)の第1主経線上または付近に液滴がないような液滴パターンを用いた場合は大きな「非転写点」となり、一方少なくとも2液滴が第1主経線またはその付近の場合は「非転写点」のない良好な転写が得られることを示している。
【0088】
(実施例6および7)
直径70mmの進歩したポリカーボネートレンズ(ESSILOR AIRWEARTM)で指数2.5、度数は+1.25プラス円柱レンズ0.75で軸角度95°、したがってレンズの背面の曲率が BL=4.40および BL=5.10のレンズに積み重ねたHMC塗膜層および液状UV硬化性接着剤組成物(上でUV硬化性接着剤組成物 A と定義したもの)を0.5mm厚みのPCキャリアー(カーブは5.40ベース)を用いて塗膜した。
【0089】
柔軟性型部品の転写される多層塗膜(HMC)、液状UV硬化性接着剤組成物および転写工程に関するパラメータを以下に示す。
<a)多層塗膜した柔軟性型部品(キャリアー)>
厚み0.5mmPCキャリアー(5.40ベースカーブ)の前側面に多層塗膜を塗膜する。
実施例6、7において、多層塗膜は疎水性トップコート/反射防止塗膜/ハードコート/プライマーコート(HMC)で構成される。
<ステップ1:保護および離型塗膜>
【0090】
保護および離型塗膜の組成は以下の通りであった:
【表3】

【0091】
PCキャリアーは石けん水を用いて洗浄し圧縮空気で乾燥する。次いでキャリアーの凸面は上の保護塗膜組成物で塗工速度600rpmで3秒間、および乾燥速度1200rpmで6秒間スピンコート塗膜される。塗膜はFusion SystemH+ 電球を用いて1.524m/分(毎分5フィート)の速度で硬化される。
【0092】
<ステップ2:疎水性トップコートおよび反射防止(AR)塗膜>
保護塗膜を成膜した後のPCキャリアーは次のようにして真空塗膜される:
標準真空AR処理:真空AR処理は標準箱形塗工機内で公知の真空蒸着操作を用いて行われる。以下に示すのは型の上にVARを得るための手順の一つである。
1.表面にすでに保護塗膜を塗工したキャリアーを標準箱形塗工機内に搭載し室内を高真空レベルまで排気する。
2.キャリアーの表面に熱蒸着技術を用いて疎水性塗膜(薬品は Shin Etsu KP801 M)を2〜15nmの範囲の厚みまで蒸着する。
3.次いで高い反射率および低い反射率の素材のサブレイヤーの積み重ねから成る誘電体の多層AR塗膜を通常とは反対の順で蒸着する。この蒸着の詳細は次の通りである。
【0093】
交互にある反射率が低い層および高い層の光学的厚さを表に示す(型の表面から表示した順に蒸着される):
【表4】

【0094】
好ましい積み重ねは低屈折率素材がSiOで高屈折率素材がZrOである積み重ねである。
4層の反射防止積み重ねの蒸着が完了した時点で物理的な厚みが1〜50nmのSiOの薄膜層が蒸着される。この層は酸化物の反射防止積み重ねと後の時点で塗膜した型に成膜されるラッカーハードコートとの間の接着性を促進させるものである。
<ステップ3:ハードコート(HC)およびラテックスプライマー塗工>
【0095】
ハードコートの組成は次の通りである:
【表5】

【0096】
プライマーの組成は次の通り:
【表6】

【0097】
ステップ1およびステップ2の保護塗膜ならびにAR塗膜を成膜した後のPCキャリアーは次いでHC溶液を600rpm/1200rpmでスピンコートされ、80℃で10分間の前硬化がされ、ラッテクスプライマー溶液を再度同一速度でスピンコートされ80℃で1時間の後硬化がされる。
【0098】
カップリング剤は次のものを予め濃縮した溶液である:
【表7】

【0099】
<b)転写パラメータ>
− 光硬化性接着剤組成物:
前に規定した光硬化性組成物A 。
− 膜圧力(型に対して膜により加えられる圧力)
12psi(0.827バール)。
− UV照射
キセノンランプ/RC7420 OEMシステムによりUV強度約1000mW/cmおよび線量220mJ/cmで5秒間。
− 暴露時間
25秒
【0100】
一端AR塗膜レンズが得られると、レンズ背面のAR塗膜された面を裸眼で視覚的に検査する。
特に、レンズの背面を検査するがそれは面の反射色が全面にわたって同じかどうかを見るためである。
もしも白色度の高い部分(光の反射による)がある場合は、ARの転写が行われなかったことを意味しこの部分はNTS(非転写点)として識別される。
転写の結果を表2に示す。
【0101】
【表8】

【0102】
(実施例8〜12)
レンズは全てEssilorのPCVarilux ComfortTMレンズで、前側面カーブが5.50、加算指数が1.25で、+0.50球面および−2.00円筒に表面仕上げされ、背面カーブが−5.10/−6.90で直径が71mmである。HMCキャリアーは前側面カーブが6.40で直径68mmである。接着剤組成物は実施例1〜7までと同一であった。接着剤は図11に示す様に1線状流れパターンで低い曲率の第1の主経線に沿って一方の高環状側から他方の高環状側へEFDTM社のディスペンサーにより注出した。膨張膜装置内のアキュームレーター圧力は12psi(0.827バール)に設定された。UV照射は暴露時間が40秒であったことを除いて実施例1〜7と同一であった。非転写点結果は表3に示されている。
【0103】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明による方法で用いる好ましい液滴パターンの概略図である。
【図2A】本発明による加圧塗膜による実施形態の主ステップの概略図である。
【図2B】本発明による加圧塗膜による実施形態の主ステップの概略図である。
【図3A】本発明による転写塗膜による実施形態の主ステップの概略図である。
【図3B】本発明による転写塗膜による実施形態の主ステップの概略図である。
【図4A】本発明による硬化性組成物の5液滴パターンの概略図である。
【図4B】本発明による硬化性組成物の5液滴パターンで液状硬化性組成物の合計として0.12gを用いた転写塗膜方法を介して得たレンズの塗膜済み環状面の写真である。
【図4C】本発明による硬化性組成物の5液滴パターンで液状硬化性組成物の合計として0.15gを用いた転写塗膜方法を介して得たレンズの塗膜済み環状面の写真である。
【図5A】本発明の適用範囲外による硬化性組成物の5液滴パターンの概略図である。
【図5B】本発明の適用範囲外による硬化性組成物の5液滴パターンで液状硬化性組成物の合計量として0.12gを用いた転写塗膜方法を介して得たレンズの塗膜済み環状面の写真である。
【図5C】本発明の適用範囲外による硬化性組成物の5液滴パターンで液状硬化性組成物の合計量として0.15gを用いた転写塗膜方法を介して得たレンズの塗膜済み環状面の写真である。
【図6A】本発明による硬化性組成物の3液滴パターンの概略図である。
【図6B】本発明による硬化性組成物の3液滴パターンで液状硬化性組成物の合計量として0.12gを用いた転写塗膜方法を介して得たレンズの塗膜済み環状面の写真である。
【図6C】本発明による硬化性組成物の3液滴パターンで液状硬化性組成物の合計量として0.15gを用いた転写塗膜方法を介して得たレンズの塗膜済み環状面の写真である。
【図7A】本発明の適用範囲外による硬化性組成物の3液滴パターンの概略図である。
【図7B】図7Aの3液滴パターンで液状硬化性組成物の合計量として0.12gを用いた転写塗膜方法を介して得たレンズの塗膜済み環状面の写真である。
【図7C】図7Aの3液滴パターンで液状硬化性組成物の合計量として0.15gを用いた転写塗膜方法を介して得たレンズの塗膜済み環状面の写真である。
【図8A】本発明による液状硬化性組成物の4液滴パターンの概略図である。
【図8B】図8Aパターンで液状硬化性組成物の合計量として0.12gを用いた転写塗膜方法を介して得たレンズの塗膜済み環状面の写真である。
【図9A】本発明の適用範囲外による液状硬化性組成物の4液滴パターンの概略図である。
【図9B】図9Aパターンで液状硬化性組成物の合計量として0.12gを用いた転写塗膜方法を介して得たレンズの塗膜済み環状面の写真である。
【図10A】液状硬化性組成物の中央単液滴パターンの概略図である。
【図10B】図10Aの滴下パターンで液状硬化性組成物の合計量として0.12gを用いた転写塗膜方法を介して得たレンズの塗膜済み環状面の写真である。
【図10C】図10Aの滴下パターンで液状硬化性組成物の合計量として0.15gを用いた転写塗膜方法を介して得たレンズの塗膜済み環状面の写真である
【図11】液状硬化性組成物を細線置きするパターンの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学物品の環状面に少なくとも1つの塗膜層を形成する方法で:
低曲率半径rの第1主経線および高曲率半径Rの第2主経線(r<R)および球面から構成される環状面を持つ光学物品を準備する;
光学物品の前記環状面に計量済みの量の液状硬化性組成物を置く;
前記計量済みの量の液状硬化性組成物に圧力を加え前記液状硬化性組成物を光学物品の環状面上に広げる;
液状硬化性組成物を硬化する;および
少なくとも1層の被膜で塗膜された光学物品を回収する;
工程を有し、ここで液状硬化性組成物を置くステップは環状面に液状硬化性組成物の少なくとも2液滴のそれぞれを低曲率半径r の第1主経線上に中心を持ち頂角が40°までの2つの相対する扇形内に置くことを含む、光学物品の環状面に少なくとも1つの塗膜層を形成する方法。
【請求項2】
相対する扇形の頂角が30°までである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の少なくとも2液滴が第1主経線上に置かれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記の少なくとも2液滴が光学物品の縁から2から20mmの範囲に置かれる、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記の少なくとも2液滴が光学物品の縁から5から10mmの範囲に置かれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
液状硬化性組成物を置くステップが環状面の中心に追加の液状硬化性組成物の1液滴を置くか液滴を1線状流れで注出することを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
液状硬化性組成物を置くステップが液状硬化性組成物の追加の2液滴のそれぞれを、高曲率半径Rの第2主経線上に中心を持ち頂角が40°までの2つの相対する扇形内に置くことを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
相対する扇形の頂角が30°までである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
追加の2液滴が第2の主経線上に置かれる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
追加の2液滴が光学物品の縁から2から20mmの範囲に置かれる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
追加の2液滴が光学物品の縁から5から10mmの範囲に置かれる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
計量済みの液状硬化性組成物の量が0.25g以下、好ましくは0.20g以下である、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記圧力を加える工程が:
内側および外側の面を持つ型部品を準備する;
光学物品および型部品を互いの方向に相対的に移動し型部品の内側面を液状硬化性組成物と接触させる;および
型部品の外側面に圧力を加える;
工程を有する、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
型部品が柔軟性薄片である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
型部品の内側面が1層以上の追加塗膜を担い、このことにより前記1層以上の追加塗膜が処理完了の時点で光学物品の環状面に転写される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
塗膜層または複数の塗膜層が疎水性トップコート、反射防止塗膜、耐摩耗性塗膜、耐衝撃性塗膜、偏光性塗膜、光変色性塗膜、着色塗膜またはこれら塗膜の2つ以上の積み重ねを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記の少なくとも1層の塗膜の硬化後の厚みが100μm以下である、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
さらに:
透明なフィルムを型部品の内側面および計量済みの量の液状硬化性組成物を置いた光学物品の環状面の間に配置しこれにより処理が完了した後にフィルムが光学物品の環状面に接着されることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
透明フィルムの外側面が少なくとも1層の被膜で塗膜されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記の少なくとも1層の塗膜が疎水性トップコート、反射防止塗膜、耐摩耗性塗膜、耐衝撃性塗膜、偏光性塗膜、光変色性塗膜、着色塗膜またはこれら塗膜の2つ以上の積み重ねで構成される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
型部品が膨張膜である、請求項18から20のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−501989(P2008−501989A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513865(P2007−513865)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005986
【国際公開番号】WO2005/118268
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(594116183)エシロール アテルナジオナール カンパニー ジェネラーレ デ オプティック (69)
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL COMPAGNIE GENERALE D’ OPTIQUE
【Fターム(参考)】