説明

光学的に制御された不織布および複合材料

【課題】繊維の光学異方性を制御することにより、視野角によらず高いコントラストが得られ、また、透明性が高く、耐熱性に優れ、小さな線膨張率を持つ不織布および複合材料を得ること。
【解決手段】セルロース繊維等の水酸基を含有する繊維(a)にフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の芳香族化合物、脂環式化合物のうち少なくとも一種の環構造を有する光学異方性を制御する化合物(b)を導入した改質繊維(c)からなる不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸基を含有する繊維から成る不織布、及び該不織布に高分子樹脂を含浸させてなる複合材料及びその製造方法に関するものであり、特に該水酸基を含有する繊維に、光学異方性を制御する化合物が導入されていることを特徴とする不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ用基板としては一般にガラス板が広く用いられている。しかしながら、ガラス板は、薄肉化が困難であることや、割れ易い、曲げられない、比重が大きく軽量化に不向きなどの理由から、近年、その代替としてプラスチック素材が検討されている。例えば、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤及び硬化触媒を含むエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物からなる液晶表示装置用透明樹脂基板が開示されている(特許文献1)。
しかし、特許文献1に記載の樹脂基板はガラス板に比べ線膨張率が大きく、液晶表示素子の内、特に、アクティブマトリックス表示素子基板に用いると、その製造工程や使用環境下において反りや蒸着膜の割れ、アルミ配線の断線などの問題が生じ易く、これら用途への使用は困難であった。
【0003】
これに対し、透明性、耐熱性、小さな線膨張率を満足する樹脂基板が開示されている(特許文献2)。これはセルロース繊維を使用することで耐熱性を付与し、それを不織布構造として空隙を持たせ、該空隙に樹脂を含浸した複合材料とすることで線膨張率を小さくすることができ、繊維の径を一定以下に小さくすることで、更なる線膨張低減と優れた透明性を実現している。このプラスチック基板は液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、プラズマディスプレイ等に有用なディスプレイ用基板として有用とされている。
このうち偏光を利用する液晶ディスプレイ装置においては、白輝度を黒輝度で除したコントラスト比を高くすることや、視野角特性を制御することが求められている。これらの要求に対しては、基板の光学異方性の制御や位相差フィルムの活用によりなされる。特にコントラスト比を高く、且つ、斜めから見ても該コントラスト比の低減を極力抑えるという広視野角の両特性を実現するためには、基板を光学的に等方とすることが必要とされている。ここで、光学的に等方であるとは、光学フィルムの複屈折と厚みの積で表されるレターデーション値が小さく、理想的にはゼロであることを意味する。また、覗き見防止のために狭視野角が必要な場合は正面方向のレターデーション(Re(0°))は小さく、且つ、膜厚方向のレターデーション(Rth)を大きくすることが必要とされている。
【0004】
また、セルロースの持つ吸湿性を低減するためにセルロース繊維の水酸基を化学修飾剤との反応で化学修飾することにより、低熱膨張率で吸湿性の低い繊維強化複合材料が得られる方法が開示されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平6−337408号公報
【特許文献2】特開2006−316253公報
【特許文献3】特開2007−51266公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2で開示された方法で得られる基板は、極めて光学異方性が大きく、Rthは大きな値を持ったものであり、コントラスト比を、全ての視野角において十分に高くすることができないという課題がある。また、特許文献3に記載の方法では、繊維の光学異方性を大きく変化・制御することができないという課題がある。
そこで、本発明は、繊維の光学異方性を制御することにより、視野角によらず高いコントラストが得られ、また、透明性が高く、耐熱性に優れ、小さな線膨張率を持つ不織布および複合材料を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、
1.水酸基を含有する繊維(a)に光学異方性を制御する化合物(b)を導入した改質繊維(c)からなる不織布、
2.前記水酸基を含有する繊維(a)がセルロース繊維であることを特徴とする1に記載の不織布、
3.前記水酸基を含有する繊維(a)が、麻由来パルプ,バガス由来パルプ,ケナフ由来パルプ,竹由来パルプのうちの少なくとも1種を含有するセルロース繊維であることを特徴とする2に記載の不織布、
4.前記光学異方性を制御する化合物(b)が芳香族化合物、脂環式化合物のうち少なくとも1種の環構造を有することを特徴とする1から3のいずれかに記載の不織布、
5.前記光学異方性を制御する化合物(b)が芳香族化合物の環構造を有することを特徴とする4に記載の不織布、
6.前記芳香族化合物がフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の環構造を有することを特徴とする5に記載の不織布、
【0007】
7.前記改質繊維(c)の平均屈折率が1.55以上であることを特徴とする1から6のいずれかに記載の不織布、
8.前記改質繊維(c)の平均繊維径が2nm以上150nm以下であることを特徴とする1から7のいずれかに記載の不織布、
9.不織布内において平均繊維径100nm以下の改質繊維(c)の占める数分率が0.7以上であることを特徴とする1から8のいずれかに記載の不織布、
10.前記不織布の空孔率が20%以上95%以下であることを特徴とする1から9のいずれかに記載の不織布、
11.水酸基を含有する繊維(a)に、光学異方性を制御する化合物(b)を反応または吸着させることによって、光学異方性を制御する化合物(b)を導入した改質繊維(c)からなることを特徴とする1から10のいずれかに記載の不織布、
【0008】
12.非プロトン性極性溶媒を用いて、光学異方性を制御する化合物(b)を溶液とし、該溶液に、水酸基を含有する繊維(a)からなる不織布を浸漬することによって、光学異方性を制御する化合物(b)を導入した改質繊維(c)からなることを特徴とする11に記載の不織布、
13.1から12のいずれかに記載の不織布の空孔に、高分子樹脂(d)が充填されていることを特徴とする複合材料、
14.ヘイズ値が30%以下であり、0≦Re(0°)<25nm、且つ|Rth|<300nmであることを特徴とする13に記載の複合材料、
ここで、Re(0°)は複合材料の正面レターデーション値を、Rthは膜厚方向のレターデーション値である。
15.水酸基を含有する繊維(a)から成る不織布に、光学異方性を制御する化合物(b)との化学反応もしくは物理吸着の少なくとも1種の方法によって、該化合物(b)を導入し、次いで、該不織布の空孔に、高分子樹脂(d)を含浸して固化、ないし、モノマーあるいは硬化性樹脂先駆体を含浸させて重合硬化させる方法によって、高分子樹脂(d)を充填することを特徴とする13に記載の複合材料の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、繊維の光学異方性を制御することにより、視野角によらず高いコントラストが得られ、また、透明性が高く、耐熱性に優れ、小さな線膨張率を持つ不織布および複合材料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を用いることのできる実施形態について詳細に説明する。本発明の不織布は、水酸基を含有する繊維(a)に光学異方性を制御する化合物(b)を導入した改質繊維(c)からなることを特徴とする。ここで、本発明における不織布とは、「繊維を織ったり編んだりすることなく、繊維どうしを化学的方法、機械的方法または、それらの組み合わせにより、結合や組み合わせを行った構造物」という一般的定義に従うものとする。また、本発明における改質繊維(c)から成る不織布とは、改質繊維(c)を後述する方法によって成型したものを言う。
【0011】
[繊維(a)]
(水酸基を含有する繊維(a))
はじめに、本発明における水酸基を含有する繊維(a)について説明する。本発明における水酸基を含有する繊維(a)とは、「日本工業規格 繊維用語(原料部門)第1部:天然繊維 JIS L0204−1(1998)」及び「日本工業規格 繊維用語(原料部門)第2部:化学繊維 JIS L0204−2(2001)」に記載の各種繊維のうち、水酸基を含有する繊維であれば、特に限定されるものではない。本発明に用いることのできる繊維としては、例えば、綿、リネンおよび大麻のような天然セルロース繊維、キチン繊維、キトサン繊維、レーヨンおよびキュプラ(登録商標)のような再生セルロース繊維、ビニロンおよびエチレンビニルアルコール繊維のようなビニルアルコール単位を含む合成高分子繊維が挙げられる。
【0012】
(セルロース繊維)
本発明における水酸基を含有する繊維(a)は、セルロース繊維であることが好ましい。本発明にセルロース繊維を使用することで、特に高い耐熱性と低い線膨張を有する複合材料となる。さらにセルロース繊維は、叩解や高圧ホモジナイザー処理等の微細化処理技術によって繊維径を一定以下に小さくすることが比較的容易にできるため、更なる線膨張の低減と、光の透過方向に対して波長よりも充分に小さい長さの単位が分散することによる透明性の向上が可能となる。
【0013】
(微細セルロース繊維)
本発明における、水酸基を含有する繊維(a)は、麻由来パルプ,バガス由来パルプ,ケナフ由来パルプ,竹由来パルプのうちの少なくとも一種を含有するセルロース繊維であることが好ましい。麻由来パルプ,バガス由来パルプ,ケナフ由来パルプ,竹由来パルプとは、各々、麻系のアバカ(例えばエクアドル産またはフィリピン産のものが多い)、ザイサルや、バガス、ケナフ、竹等の原料を蒸解処理による脱リグニン等の精製工程を経て得られる精製パルプを意味する。また、本発明における、水酸基を含有する繊維(a)としては、該セルロース繊維に微細化処理を施すことにより得られる微細セルロース繊維であることが、特に好ましい。
麻由来パルプ,バガス由来パルプ,ケナフ由来パルプ,竹由来パルプは、いずれも元々極めて細い100nm以下の繊維径のミクロフィブリルを有すると同時に、ミクロフィブリル間に介在する水素結合やヘミセルロースの状態が、水含浸下で極めて分散され易い状態として存在していると考えられる。このため、100nm以下の繊維径を有する微細セルロース繊維となり易く、原料としての使用が極めて有効である。また、上述した精製パルプ以外であっても、微細セルロース繊維を産する原料であれば好適に使用することができる。さらには、表面層を構成する繊維は、複数種のセルロース繊維、例えば、微細化程度の異なるものや、原料の異なるものが混在していても構わない。
【0014】
[化合物(b)]
(光学異方性を制御する化合物(b))
次に、本発明における光学異方性を制御する化合物(b)ついて説明する。本発明における、光学異方性を制御する化合物(b)とは、水酸基を含有する繊維(a)の複屈折に起因する光学異方性を制御することが可能な化合物のことである。光学異方性を制御することが可能な化合物の特徴として、該化合物分子を形成する化学結合の種類によって生じる電子分布の偏り、すなわち分極率が大きな異方性を有することが挙げられる。一般に、分子には分極率が最大の方向と最小の方向があり、これら最大方向の分極率と最小方向の分極率の差が大きな化合物ほど、大きな分極率異方性を有することになる。
【0015】
(芳香族化合物、脂環式化合物)
本発明における、光学異方性を制御する化合物(b)は芳香族化合物、脂環式化合物のうち少なくとも1種の環構造を有するものが好ましい。環構造は炭素原子だけから形成される同素環式化合物であっても良く、炭素原子と窒素原子で形成されるピリジン環のように、2種以上の原子が組み込まれている複素環式化合物であっても良い。これらの化合物の中でも、芳香族化合物の環構造を有するものは、π電子によって分極率が増大するため、特に好ましく用いることができる。
例えばベンゼン環の場合、一分子当たり環の平行方向の分極率は123.1×10−25cm、垂直方向では63.5×10−25cmであり、分極率の差が大きい。芳香族化合物の環構造を有するものとして、他には、ナフタレン構造、ビフェニル構造、アントラセン構造、trans-スチルベン構造、ジフェニルアセチレン構造、ベンジリデンフェニルアミン構造、N,N’−ジベンジリデンヒドラジン構造、フルオレン構造等が挙げられる。これらは環構造全体にπ電子共役系が広がっているため、環構造の長軸方向での分極率が増大し、大きな分極率異方性を有する環構造として、本発明に好適である。
【0016】
(芳香族化合物の環構造)
さらに、本発明では、光学異方性を制御する化合物(b)の該芳香族化合物として、繊維への導入の際の立体障害が少なく紫外領域で吸収を持たないフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の環構造を有するものが特に好ましい。また、ナフチル基、ビフェニル基は、フェニル基よりも更に大きな分極率異方性を持つため、さらに好ましい。
化合物(b)は芳香族、脂環族等の一部を変性することにより、酸、アルコール、ハロゲン化物、酸無水物、及びイソシアナート化物とし、これらよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物(b)で繊維(a)の水酸基を化学修飾することにより、芳香族、脂環族等を導入することが好ましい。繊維(a)の水酸基に反応させる場合、改質制御を容易なものとするため、化合物(b)は一官能性であることが好ましいが、二官能性以上となってもよい。これらを公知の手法によりエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合などの化学結合、水素結合などの物理吸着のいずれか1種以上により導入する。該官能基と環構造の間のいわゆるスペーサー基は短い方が、繊維(a)の水酸基に反応もしくは吸着させた後の環構造の立体配置を制御しやすいので好ましい。スペーサー基の好ましい長さ(スペーサー基の内、官能基と環を結ぶ鎖の原子数)は4以下であり更に好ましくは2以下であり、より好ましくは好ましくは1以下であり、最も好ましくは0である。また化合物(b)の分子量は小さい方がやはり繊維(a)の水酸基に反応もしくは吸着させた後の環構造の立体配置を制御しやすいので好ましく、好ましい分子量は500以下であり、より好ましくは400以下であり、更に好ましくは400以下であり、最も好ましくは200以下である。
【0017】
化合物(b)の官能基が水酸基である場合、エーテル化することによりエーテル結合を与えることができる。また、水素結合により物理吸着させることもできる。このような化合物(b)としてはフェノール、ベンジルアルコール、メトキシフェノール、フェノキシフェノール、パラオキシ安息香酸エチル、ナフトール、フェニルフェノール、フェニルトリエトキシシラノール、ヒドロキシメチルアントラセン等が挙げられる。また、化合物(b)の官能基が、酸、酸無水物、塩化物である場合、エステル化することによりエステル結合を与えることができる。また、水素結合により物理吸着させることもできる。このような化合物(b)としては、安息香酸、ナフトエ酸、ジフェニル−4−カルボン酸等の酸、あるいはそれより誘導される酸無水物、塩化物等の化合物が挙げられる。
【0018】
エーテル化の場合は、繊維の水酸基をアルカリ金属アルコキシドあるいはフェノキシドとした上で化合物(b)としてハロゲン化物と反応させるウィリアムソン合成をする方法、繊維の水酸基を一旦エピクロロヒドリン等でエポキシ化した後にアニリン等のアミン基あるいは2−ナフトール、パラ−フェニルフェノール等の水酸基を含有する化合物(b)とエポキシ開環反応をする方法、フェニルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤をシラノール化した上で繊維の水酸基と水素結合を作った後に脱水縮合する方法等が挙げられる。
エステル化の場合、β−ナフトエ酸、ジフェニル−4−カルボン酸等の酸、酸無水物、塩化物等の化合物(b)を酸性触媒あるいは塩基性触媒存在下で行う方法が挙げられる。
ウレタン化反応はフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート、ビフェニルイソシアネート等のイソシアネート基を含有する化合物(b)と繊維(a)の水酸基と反応させ、ウレタン化繊維を得る。ウレタン化はイソシアネートの副反応を抑えるために絶乾繊維を乾燥窒素気流下で反応させるなどの水分を極力除去した状態で行うのが好ましい。塩基触媒としてピリジン等を少量添加しても良い。この内、生成した結合の安定の観点よりエーテル化結合やウレタン結合が好ましく、反応が容易に制御できる点からウレタン結合により化合物(b)を導入する方法が更に好ましい。
【0019】
いずれの反応においても繊維を処理する場合は通常の攪拌でよいが、不織布を処理する場合、攪拌は不織布が破壊されない条件とすることが好ましく、緩やかな攪拌や不織布が動きにくい反応装置とすることが好ましい。洗浄は、繊維を溶かさずに、化合物(b)を溶解することのできる、通常の有機溶媒が使用される。有機溶媒としては、例えばジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、メタノール、アルコール、イソプロパノール、2−エトキシエタノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテルなどが挙げられる。攪拌については上記反応時と同様の攪拌を行い、溶媒を数回置換して洗浄する。最後の溶媒については、セルロース不織布の製造方法の項で記述した抄紙後の溶媒置換と同様な手法で乾燥後の改質不織布の空孔率を調整することができる。
【0020】
乾燥は真空乾燥により行うのが好ましく、短時間にするために室温よりも高温環境下で行うのが好ましい。但し変色を避けるためにあまり過度に高温にしない温度で乾燥するのが好ましく、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下、最も好ましくは130℃以下である。乾燥時の皺の生成を防ぐ目的で熱プレスを使用または真空乾燥等と併用することも好ましい。
また、化合物(b)の官能基がイソシアネート基である場合、ウレタン化によりウレタン結合を与えることができる。このような化合物(b)としてはフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート、ビフェニルイソシアネート等が挙げられる。この内、特に高温領域での結合安定性の観点等により水素結合等による物理吸着よりも化学結合の方が好ましく、化学結合の中では、生成した結合の安定の観点よりエーテル化結合やウレタン結合が好ましい。
【0021】
[改質繊維(c)]
(改質繊維(c)の複屈折)
次に、本発明における光学異方性を制御する改質繊維(c)ついて説明する。一般に繊維は、その繊維軸方向と繊維径方向とで屈折率が異なるという複屈折性を有する。本発明において複屈折を低減し光学等方性不織布もしくは複合材料を得る場合、光学異方性を制御する化合物(b)が導入されている改質繊維(c)の複屈折、すなわち、繊維軸方向の屈折率と繊維径方向の屈折率との差が0.05以下であることが好ましい。該改質繊維(c)の繊維軸方向の屈折率と繊維径方向の屈折率との差が0.05以下であれば、複屈折と厚みの積で表されるレターデーションの値が小さく、特に膜厚方向のレターデーション(Rth)が小さくなるため、斜めから見てもコントラスト比の低減を極力抑えることができ、広視野角特性が要求されるディスプレイ基板として好ましい。更に好ましい複屈折は0.015以下であり、より好ましくは0.010以下であり、最も好ましくは0.005以下である。
【0022】
また、水酸基を含有する繊維(a)がセルロースである場合、例えば、ラミー(苧麻)の繊維軸方向の屈折率の範囲は1.595〜1.601、繊維径方向の屈折率の範囲は1.525〜1.534であり、両者の複屈折は0.061〜0.071である。該化合物(b)が例えばナフチル基を含有する場合、2位(β位)を変性することにより、酸(β−ナフトエ酸)、アルコール(2−ナフトール)、ハロゲン化物、酸無水物、及びイソシアナート化物(2−ナフチルイソシアネート)とし、ビフェニル基の場合、4位を同様に変性(ジフェニル−4−カルボン酸、パラ−フェニルフェノール、4−ビフェニリルイソシアネートなど)することにより、繊維に対して、環構造を効率的に立たせることができるので好ましい。
【0023】
一方、ナフチル基の1位(α位)、ビフェニル基の2位もしくは3位を変性した化合物を該繊維(a)に反応もしくは吸着させることによって、環構造の長辺を繊維軸に沿わさせることにより該改質繊維(c)の異方性を増大させ、得られた不織布もしくは複合材料の複屈折を上昇させ位相差付与複合材料を得ることもできる。
(改質繊維(c)の平均屈折率)
上記いずれに方法によっても環構造の導入により、該改質繊維(c)の平均屈折率が上昇する。好ましい改質繊維(c)の平均屈折率は1.55以上であり、更に好ましくは1.57以上でありより好ましくは1.58以上であり最も好ましくは1.59以上である。また、本発明における平均屈折率は、以下の方法で求めることができる。背景色を黒とし、スライドグラス上に切り出した繊維もしくは不織布を置き溶液を滴下し含浸する。これに斜め上より自然光を当て、その反射光を真上から観察して、繊維または不織布が最も黒くなる時の溶液組成の屈折率を繊維もしくは不織布の平均屈折率とする。また、測定は20℃で行い、溶液はトルエン(20℃でのナトリウムD線の屈折率1.497)と1−ブロモナフタレン(20℃での屈折率(20℃でのナトリウムD線の屈折率1.658)を用い、両者を混合することにより約0.01刻みの屈折率を持つ溶液を作成し、これらを用いる。
【0024】
(改質繊維(c)の平均繊維径)
さらに本発明では、改質繊維(c)の平均繊維径が2nm以上150nm以下の範囲にある微細繊維であることが好ましい。より好ましくは平均繊維径が3nm以上100nm以下、さらに好ましくは5nm以上70nm以下である。水酸基を含有する繊維(a)がセルロースの場合、平均繊維径が2nmよりも小さいセルロースミクロフィブリルの文献が存在しないため、現実的に作ることが不可能である。また、150nmよりも小さい場合、微細セルロース繊維間の交絡点密度が十分なものとなり、強度的に有利である。
本発明において平均繊維径とは、本発明における不織布を構成する繊維に対して実測した繊維径の平均値のことである。具体的には、織布の表面に関して、無作為に少なくとも2箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍相当以上30000倍以下の範囲で、繊維径がはっきりと認識できる倍率で行う。n’/nの測定の際と同様に、得られたSEM画像(例えば、図1と図2)に対し、画面に対し水平方向と垂直方向にラインを引き(例えば図1と図2の白線)、ラインに交差する繊維の個数と各繊維の繊維径を拡大画像から実測する。こうして2つのラインに交差するすべての繊維について繊維径の測定結果を用いて平均繊維径を算出する。さらに同じサンプルについて観察した別の同じ倍率のSEM画像についても同じように平均繊維径を算出し、合計2画像分の結果の平均値を対象とする試料の平均繊維径(nm)とする。
本発明の不織布は上述したように極めて微細な繊維径の繊維から構成されるため、大きな表面積を有する。窒素吸着によるBET法での比表面積として、好ましくは80m/g以上、より好ましくは100m/g以上、さらに好適な場合には140m/gの値を有する。
【0025】
(不織布内の改質繊維(c)の占める数分率)
本発明における改質繊維(c)からなる不織布、特に改質セルロース繊維からなる不織布においては、100nm以下の繊維径をもつ繊維の占める数分率が0.7以上であることが好ましい。本発明において100nm以下の繊維径をもつ繊維の占める数分率とは、本発明における不織布を構成する繊維に対する、繊維径が100nm以下となる繊維の比率のことである。具体的には、不織布の表面に関して、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍以上30000倍以下の範囲で、構成する繊維の繊維径がはっきりと判別できる程度の同じ倍率の画像として、表面の異なる部分につき少なくとも2枚撮影する。次に、撮影した各々の画像の全体に対し、まず縦横方向に直交に交差する2本の直線を無作為に定め、2本の直線に交差する繊維の交差点における繊維径をすべて測定したとき、交差している繊維の数nのうち繊維径が100nm以下である繊維の数n’の割合、n’/nを算出する。同一サンプルの異なる場所について撮影したSEM画像のうち、2枚について算出したn’/nの平均値を、100nm以下の繊維径をもつ繊維の占める数分率とする。
100nm以下の繊維径をもつ繊維の占める数分率は、より好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.85以上である。表面層の100nm以下の繊維径をもつ繊維の占める数分率が0.7よりも大きいと強度的に有利な改質セルロース紙となる。また該数分率が最大値である1.0の場合にも、当然好適に本発明における改質セルロース繊維からなる不織布となる。
【0026】
(空孔率)
本発明における、改質繊維(c)から成る不織布の空孔率は20%以上95%以下であることが好ましく、より好ましくは、空孔率が30%以上90%以下、さらに好ましくは、空孔率が40%以上80%以下である。空孔率が20%より大きいと、本発明における高分子樹脂(d)を含浸しやすくなり、また空孔率が95%より小さいと低線膨張率の観点で有利となる。
本発明において空孔率Pr(%)とは、水酸基を含有する繊維(a)から成る不織布の厚みと質量、および該繊維(a)の密度の値から求められる数値である。具体的には、本発明に用いる不織布の目付x(g/m)と膜厚y(μm)から、以下の式を用いて算出できる。
Pr={1−0.94x/(dy)} (%)
dは不織布を構成する繊維の固体密度(g/cm)であり、本発明におけるセルロースではd=1.50(g/cm)とした。
【0027】
[繊維の改質]
本発明における改質繊維(c)は、水酸基を含有する繊維(a)に、光学異方性を制御する化合物(b)を導入することで得られる。本発明において、繊維の改質は光学異方性を制御する化合物(b)を、繊維(a)が含有する水酸基への化学反応、もしくは物理吸着の少なくとも1種の方法によって導入することによって行うことができる。化合物(b)は、繊維叩解前、叩解後、抄紙工程中の乾燥繊維、湿潤繊維、スラリーあるいは液体中分散繊維で導入することができ、また、抄紙後の湿不織布状態(溶媒置換工程も含む)や乾燥工程後の不織布状態でも導入することができる。繊維に対して高濃度の化合物で化学反応もしくは物理吸着をさせたい場合には、抄紙後の不織布で改質を行うのが好ましく、より好ましくは乾燥工程を経た不織布で改質する。非水系処理を行う場合にも乾燥不織布に対して行う。
本発明においては繊維を溶媒に溶解、すなわち分子レベルでの媒体への分散させることなく、繊維(a)固体表面の水酸基に化合物(b)を導入することにより好ましく改質繊維(c)を得ることができる。改質は溶媒を使用しなくてもなし得るが、繊維(a)に対する処理中の溶媒の選択あるいは繊維の前処理により、繊維(a)への化合物(b)の浸透度を調整することができる。すなわちセルロースの場合、繊維は、浸透度に応じてマクロフィブリル表面、ミクロフィブリル表面、ナノフィブリル表面、あるいはナノフィブリル内部の水酸基に対し吸着ないし反応させることができる。セルロースの反応方法は公知の方法を採用できる。
【0028】
より均質あるいは高置換度のものを得たい場合等、繊維内部まで化合物(b)による改質を行う場合は、公知のマーセル化処理、アンモニア処理等により繊維を膨潤させた上で改質を行うことができる。特に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒を用いて化合物(b)溶液とし、これに繊維を浸漬することにより改質する方法を好ましく採ることができる。また繊維バルクとして熱的特性、力学特性などの初期物理的特性を維持したい場合など、繊維表面部分のみを改質したい場合は繊維に対しての貧溶媒に化合物(b)を溶解して反応溶液とすれば良い。
【0029】
[光学異方性の制御]
また、本発明における改質繊維(c)の異方性の制御度合いは、化合物(b)の異方性と繊維(a)への化合物(b)の導入量により調整することができる。該繊維(a)がセルロースの場合、最小単位であるグルコースユニットは3つの水酸基を持つ。その内、化合物がいくつの水酸基と反応したかを示す置換度(0〜3の数値で示される)によって、導入量を表現することができる。ここで、置換度は、反応前後の不織布の質量を測定することにより、次式の方法で算出することができる。
置換度=(不織布質量増分(g)/反応試薬分子量)/(反応前不織布質量(g)/反応前不織布を構成するモノマーの分子量)
なお、不織布がセルロースの時は反応前不織布を構成するモノマーの分子量は162である。
本発明により好適に用いられる芳香族のうち、例えばナフチル基やビフェニル基を化学結合により導入した場合、光学等方性の繊維を得る場合、好ましい置換度は0.3〜2.0であり、更に好ましくは0.5〜1.5でありより好ましくは0.7〜1.2であり、最も好ましくは0.8〜1.0である。この置換度は反応前後による質量変化、繊維のガスクロマトグラフィー、赤外分光法などにより測定される。
【0030】
[複合材料]
(高分子樹脂(d)による充填)
本発明において、改質繊維(c)から成る不織布の空孔は高分子樹脂(d)および/または液体により実質的に充填されることにより複合材料とすることができる。複合材料単独で取り扱う場合等には、高分子樹脂(d)で実質的に充填されることが好ましい。該高分子樹脂(d)で充填されずに残存する空孔がある場合、その空孔は樹脂中の気泡と等価であり、複合材料に光が透過する際に、気泡と樹脂の界面で散乱が生じるため、透明性に悪影響を及ぼす。本発明では、複合材料の10000倍相当の断面SEM画像において、空孔が目視で確認できない状態であれば「実質的に充填されている」とする。
【0031】
(高分子樹脂(d))
本発明における高分子樹脂(d)とは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂および樹脂硬化物より選択される少なくとも1種の樹脂である。熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等が挙げられる。
スチレン系樹脂とは、ビニル芳香族単量体の単独重合体または他の単量体との共重合体を言い、ビニル芳香族単量体としては、スチレン、αメチルスチレン、パラメチルスチレン等が挙げられ、中でもスチレンの単独重合体または他の単量体との共重合体が好ましい。単独重合体の場合には、連鎖に立体規則性のあるもの(アイソトロピック,シンジオタクチック)でもないもの(アタクチック)でも構わない。共重合可能な他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、酢酸ビニルなどが挙げられ、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体などは、その共重合比によって樹脂の屈折率を調整することが可能であるので好ましい。
【0032】
アクリル系樹脂とは、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t- ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル、より選ばれる1種以上の単量体を重合したものである。なかでも、メタクリル酸メチルの単独重合体または他の単量体との共重合体が好ましい。メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、他のメタリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アルキルエステル類、スチレン、ビニルトルエン、αメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類が挙げられる。また、トリシクロデシルメタクリレート等、脂環式アクリル樹脂も挙げられる。
【0033】
芳香族ポリカーボネート系樹脂とは、芳香族ジヒドロキシ化合物より誘導される芳香族ポリカーボネートであり、芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルフィド等のジヒドロキシアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホキシド等のジヒドロキシアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホン等のジヒドロキシアリールスルホン類、等を挙げることができる。これらの中で、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称、ビスフェノールA)が特に好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
芳香族ポリエステル系樹脂とは、特に制限されるものではないが、具体例を挙げると、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートまたはポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等である。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体などが挙げられる。具体的には、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ吉草酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸またはポリカプロラクトンなどが挙げられ、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体としては、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートまたはポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0035】
脂肪族ポリオレフィン系樹脂とは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー(エチレンアクリル酸系ポリマー塩や、スチレンスルフォン酸塩など)樹脂、およびそれらの共重合体や、マレイン酸などによる変性体などが挙げられる。
環状オレフィン系樹脂とは、ノボルネンやシクロヘキサジエン等、ポリマー鎖中に環状オレフィン骨格を含む重合体もしくはこれらを含む共重合体であり、その製造方法については特に限定されるものではない。環状オレフィン系樹脂とは、例えば、ノルボルネン骨格の繰返し単位、またはノルボルネン骨格とメチレン骨格の共重合体よりなるノルボルネン系樹脂が挙げられ、JSR製の「アートン」(登録商標)、日本ゼオン製の「ゼオネックス」(登録商標)および「ゼオノア」(登録商標)、三井化学製の「アペル」(登録商標)、チコナ製の「トーパス」(登録商標)等が挙げられる。具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されている。
【0036】
ポリアミド系樹脂とは、公知のポリアミド樹脂であれば特に限定されない。例えば、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリウンデカラクタム(ナイロン11)、ポリドデカラクタム(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン11T(H))、ポリドデカンテレフタルアミド(ナイロン12T)、およびこれらのうち少なくとも2種の異なったポリアミド形成成分を含むポリアミド共重合体、およびこれらの混合物などである。
【0037】
ポリフェニレンエーテル系樹脂とは、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、特公昭52−17880号公報に記載されてあるような2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。これらの中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、またはこれらの混合物である。
【0038】
また、本発明で使用できるポリフェニレンエーテル系樹脂は、全部又は一部が変性されたポリフェニレンエーテルであっても構わない。ここでいう変性されたポリフェニレンエーテルとは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたポリフェニレンエーテルを指す。ポリフェニレンエーテル系樹脂は耐熱性が高く、電気特性に優れているため、高耐熱用途、また電子部品として好適に使用することができる。
本発明においては、含浸する高分子樹脂(d)または液体の屈折率は、光学異方性を制御された繊維に近いことが好ましい。具体的には、該繊維の平均屈折率との差が0.1以下であることが好ましく、該繊維が例えばセルロースの場合は1.45以上1.70以下であることが好ましい。さらに好ましくは1.51以上1.64以下であり、とりわけ好ましくは、1.57以上1.62以下である。この範囲にあると、高分子樹脂(d)または液体の屈折率と光学異方性を制御された繊維の屈折率との差が小さくなるため、複合材料の透明性がより向上し、好ましい。
【0039】
本発明におけるモノマーとは、これら熱可塑性樹脂を構成する単量体のことを言う。これらの熱可塑性樹脂の数平均分子量は一般に1000以上、好ましくは5000以上500万以下、さらに好ましくは1万以上100万以下である。これらの熱可塑性樹脂は、単独ないし2種以上を混合して用いることができる。2種以上の熱可塑性樹脂を混合して用いる場合、その混合比によって樹脂の屈折率を調整することが可能であるので好ましい。本発明において高温における剛性や耐熱性を要求される場合は、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂が好ましく用いられる。これらは、常温では液状、半固形状又は固形状等であって常温下又は加熱下で流動性を示す比較的低分子量の物質を意味する。これらは硬化剤、触媒、熱又は光の作用によって硬化反応や架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融性の樹脂となり得る。また、本発明における樹脂硬化物とは、上記熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が硬化してなる樹脂を意味する。
【0040】
本発明において用いられる熱硬化性樹脂としては、特に制限されるものではないが、具体例を示すと、エポキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂等、その他工業的に供されている樹脂及びこれら樹脂2以上を混合して得られる樹脂が挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂、アリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂等は透明性を有するため、光学材料として使用する場合に好適である。
【0041】
上記エポキシ樹脂とは、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ樹脂中のエポキシ基の数としては、1分子当たり1個以上7個以下であることが好ましく、1分子当たり2個以上であることがより好ましい。ここで、1分子当たりのエポキシ基の数は、エポキシ樹脂中のエポキシ基の総数をエポキシ樹脂中の分子の総数で除算することにより求められる。上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、以下に示したエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらエポキシ樹脂は熱硬化性樹脂先駆体のエポキシ化合物であり、硬化剤を用いることにより、エポキシ樹脂の硬化物である硬化エポキシ樹脂が得られる。
【0042】
例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂及びこれらの水添加物や臭素化物等が挙げられる。
また、3,4−エポキシシクロへキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシシクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル等の脂環族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0043】
また、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数が2〜9(好ましくは2〜4)のアルキレン基を含むポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、へキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂及びこれらの水添化物等が挙げられる。また、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、m−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂及びこれらの水添化物等が挙げられる。
【0044】
また、グリシジル(メタ)アクリレートと、エチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。また、エポキシ化ポリブタジエン等の共役ジエン化合物を主体とする重合体又はその部分水添物の重合体における不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。また、エポキシ化SBS等のような、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック又はその部分水添物の重合体ブロックとを同一分子内にもつブロック共重合体における、共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。
【0045】
また、1分子当たり1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。また、上記エポキシ樹脂の構造中にウレタン結合やポリカプロラクトン結合を導入した、ウレタン変成エポキシ樹脂やポリカプロラクトン変成エポキシ樹脂等が挙げられる。上記変成エポキシ樹脂としては、例えば、上記エポキシ樹脂にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分を含有させたゴム変成エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、エポキシ樹脂以外に、少なくとも1つのオキシラン環を有する樹脂又はオリゴマーが添加されてもよい。また、フルオレン含有エポキシ樹脂、フルオレン含有アクリレート樹脂、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂など、フルオレン基を含有する熱硬化性樹脂および組成物、またはその硬化物も挙げられる。
【0046】
これらフルオレン含有エポキシ樹脂は、フルオレン基を分子内に含有することにより、屈折率が高く、また高耐熱であるため好適に用いられる。上記エポキシ樹脂の硬化反応に用いる硬化剤としては特に限定されず、従来公知のエポキシ樹脂用の硬化剤を用いることができ、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中で多く用いても着色しにくい点で酸無水物が好ましく使用される。
【0047】
また、本発明において用いられる光硬化性樹脂としては、例えば、潜在性光カチオン重合開始剤を含むエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記光硬化性樹脂を硬化させる場合には、光照射と同時に熱を加えてもよい。また本発明において熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂と併用して用いる硬化剤、硬化触媒は、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂の硬化に用いられるものであれば特に限定されない。硬化剤の具体例としては多官能アミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール樹脂が挙げられ、硬化触媒の具体例としてはイミダゾール等があげられ、これらは単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0048】
本発明におけるポリイミド系樹脂とは、特に限定されるものではないが、その主鎖骨格中にイミド基を含有する樹脂であり、熱可塑性および熱硬化性のポリイミド系樹脂のいずれも使用できる。具体的には、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリシロキサンイミド等が挙げられ、具体例としては、特許第2128568号、特許第2129731号、特許第2738453号、特許第2746555号、特許第2909844号、特許第3034838号、特許第1531563号、特許第1836437号、特許第2597214号、特許第2597215号、特許第2671162号、特許第1954016号、特許第2034676号、特許第2514313号、特許第2587810号、特許第2523682号、特許第2566250号、特許第2566251号等に記載されている。また熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂および樹脂硬化物を2種以上混合して得られる樹脂も使用しうる。
【0049】
高分子樹脂(d)または液体の屈折率を、光学異方性を制御された繊維の屈折率に近づけるため、2種類以上の樹脂の単量体を共重合させ、屈折率を調整し使用することや、2種類以上の樹脂や液体をブレンドさせて屈折率を調整し使用することも非常に有効である。また、用いる2種類以上の樹脂が相溶系であると、透明性が向上するため好ましい。相溶系である樹脂の組み合わせとしては、特に限定されるものではないがポリメタクリル酸メチル/スチレンーアクリロニトリル共重合体のブレンド等が挙げられる。また高分子樹脂(d)成分として、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂と硬化剤および硬化促進剤の組み合わせにより屈折率を制御することも非常に有効である。
この場合、2種類以上の樹脂、硬化剤、硬化促進剤を使用することもできる。例えば、特に限定されるものではないがビスフェノールA型エポキシ樹脂と水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂を混合することにより屈折率を調整すること等が有効である。また高分子樹脂(d)成分として熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂にシリカ、チタン、亜鉛などの金属アルコキシドをハイブリッド化させた有機−無機ハイブリッド材料も屈折率の制御に非常に有効である。
【0050】
本発明においては高分子樹脂(d)のアッベ数は、30以上70以下であることが好ましく、さらに好ましくはアッベ数40以上60以下である。この範囲にあると高分子樹脂(d)の屈折率波長依存性が小さくなるため、複合材料の透明性がより向上し好ましい。ここでいうアッベ数(vd)とは、屈折率の波長依存性、すなわち分散の度合いを示すもので、vd=(nD−1)/(nF−nC)で求めることができる。ここで、nD、nF、nCはそれぞれフラウンホーファーのD線である589.2nm、 フラウンホーファーのF線である486.1nm、フラウンホーファーのC線である656.3nmの光に対する屈折率である。アッベ数が小さい材料は波長によって屈折率が大きく変化する。
【0051】
(ヘイズ値およびレターデーション値)
本発明の複合材料は水酸基を含有する繊維(a)から成る不織布の空孔が高分子樹脂(d)で充填されている複合材料であって、該繊維(a)は光学異方性を制御する化合物(b)が導入されており、ヘイズ値が30%以下であり、0≦Re(0°)<25nm、且つ|Rth|<300nmであることが好ましい。ここで、Re(0°)は複合材料の正面レターデーション値を、Rthは膜厚方向のレターデーション値である。より好ましいヘイズ値は20%以下であり、更に好ましくは10%以下であり、最も好ましくは5%以下である。また、より好ましいRe(0°)は20nm以下であり、更に好ましくは10nm以下であり、最も好ましくは5nm以下である。また、より好ましい|Rth|は200nm以下であり、更に好ましくは100nm以下であり、最も好ましくは30nm以下である。このような複合材料は液晶ディスプレイ基板として用いたときに、視野角を問わずコントラスト比の高い好適な基板とすることができる。
本発明におけるヘイズ値とは、複合材料から任意に30mm四方に裁断したフィルムを評価試料とし、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH 2000)を用いて測定した、JIS K7361−1に準拠して複合材料のヘイズ値(%)を言う。
【0052】
本発明における正面レターデーション値(Re(0°))とは、複合材料から任意に30mm四方に裁断したフィルムを評価試料とし、位相差複屈折測定装置(王子計測機器社製 KOBRA−WR)を用いて測定することのできる、複合材料の正面レターデーション値(Re(0°),nm)を言う。具体的には、KOBRA−WRにおいて、波長589.2nmの光を該評価試料の法線方向に入射して測定することができる。
本発明における膜厚方向のレターデーション値(Rth)とは、複合材料から任意に30mm四方に裁断したフィルムを評価試料とし、位相差複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製 KOBRA−WR)を用いて測定することのできる、複合材料の膜厚方向のレターデーション値(Rth,nm)を言う。具体的には、KOBRA−WRにより判断される遅相軸を傾斜回転軸として、該評価試料の法線方向に対して+40°の傾斜方向から波長589.2nmの光を入射してレターデーション値(Re(40°))を測定し、さらに遅相軸を傾斜回転軸として、該評価試料の法線方向に対して−40°の傾斜方向から波長589.2nmの光を入射してレターデーション値(Re(−40°))を測定する。これらRe(40°)、Re(−40°)、および前述のRe(0°)、前述の複合材料の屈折率、さらに前述の膜厚の測定値をKOBRA−WRの解析ソフトに入力し、Rthを算出することができる。
【0053】
(厚み)
本発明における複合材料の厚みは好ましくは5μm以上5000μm以下であり、5μm以上5000μm以下の該複合材料は強度を保つことができ、耐熱性も高くすることが可能である上、該複合材料を使用したディスプレイ基板等の薄肉化および軽量化を向上させることができるため好ましい。さらに好ましくは20μm以上1000μm以下であり、とりわけ好ましくは30μm以上400μm以下である。複合材料の厚みは、異なる3点以上の箇所の断面SEM像もしくは光学顕微鏡像より測定できる。
本発明においては、複合材料を複数枚重ねて複合材料の積層体を得ることができる。該積層体に加熱プレス処理を施すことにより厚膜化することができ、厚みが10μm以上5000μm以下である本発明の複合材料を得ることができる。そのようにして得られる積層体は強度が高く好ましく、同じ厚みの単層体と比較し樹脂が浸透しやすいため、透明性、耐熱性、吸水性、線膨張性に優れ好ましい。好ましい積層の枚数としては2枚以上30枚以下であり、さらに好ましくは2枚以上20枚以下である。とりわけ好ましくは2枚以上10枚以下である。30枚以下であると柔軟性のある複合材料を得られ易くなる。
【0054】
(平均線膨張率)
本発明においては、複合材料の50〜150℃(昇温速度5℃/分)における平均線膨張率が0.5以上60ppm/℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは、1以上50ppm/℃以下であり、とりわけ好ましくは、2以上20ppm/℃以下である。この範囲にすることにより、例えば液晶ディスプレイ基板の用途に好ましく用いることができる。該基板等の用途において、樹脂に低線膨張率が求められる理由としては、必要な表面処理のプロセス温度から室温に冷却される過程において、温度変化による膨張あるいは収縮に追随しきれず表面処理された導電機能やガスバリア機能が破壊されることを防止するためや、使用時に生じる温度差によって反りや変形を防止するために必要である。また、フレキシブル基盤や電子基盤等、金属と貼り合わせて使用する用途では、貼り合わせる金属と線膨張率が同じであることが好ましく、5以上20ppm/℃以下にすることが好ましい。
本発明においては、複合材料のJIS K7361−1に定められる全光線透過率が60%以上であることが好ましく、さらに好ましくは75%以上であり、とりわけ好ましくは85%以上である。全光線透過率が60%以上である複合材料を得るためには、例えば全光線透過率が60%以上及び屈折率が1.45以上1.70以下である高分子樹脂または液体を用い、さらに平均繊維径が150nm以下である繊維からなる不織布を使用することにより達成することができる。複合材料の全光線透過率がこの範囲内にあると、ディスプレイ基板等光学材料として好ましく用いることができ好ましい。
【0055】
(複合材料中の不織布成分の割合)
本発明において複合材料を得る場合、不織布成分が0.1質量%以上99質量%以下であり、高分子樹脂(d)成分が1質量%以上99.9質量%以下である。吸水率の観点から不織布成分99質量%以下、高分子樹脂成分1質量%以上であることが好ましく、線膨張率および耐熱の観点から不織布成分が0.1質量%以上、高分子樹脂成分が99.9質量%以下であることが好ましい。より好ましい範囲は、不織布成分が0.2質量%以上80質量%以下であり、高分子樹脂成分が20質量%以上99.8質量%以下である。
さらに好ましい範囲は、不織布成分が10%以上60質量%未満であり、高分子樹脂成分が40質量%超90質量%以下である。とりわけ好ましい範囲は不織布成分が10質量%超50質量%以下、高分子樹脂成分が50質量%以上90質量%未満である。樹脂含量は、樹脂含浸前の不織布の質量と含浸後の複合材料の質量より求めることができ、また可溶な溶媒によって樹脂のみを取り除き、残った不織布の質量からも求めることができる。その他の方法としては、樹脂の比重と不織布を構成する改質繊維(c)の比重から求める方法や、NMRやIRを用いて樹脂や改質繊維(c)の官能基を定量し、求める方法がある。
また高分子樹脂のガラス転移温度が50℃以上であることが望ましく、さらに望ましくは100℃以上であり、とりわけ望ましくは150℃以上である。複合材料の耐熱性の観点から、ガラス転移温度が50℃以上であることが望ましい。本発明においては、高分子樹脂(d)の100μm厚みの成形体の全光線透過率が60%以上あることが好ましい。70%以上であると複合材料の透明性が向上し、好ましい。さらに好ましくは、80%以上、とりわけ好ましくは85%である。
【0056】
[複合材料の製造方法]
次に、本発明の複合材料の製造方法を詳細に説明する。本発明の複合材料は、水酸基を含有する繊維(a)から成る不織布を、光学異方性を制御する化合物(b)との化学反応もしくは物理吸着の少なくとも1種の方法によって該化合物(b)を導入し、次いで該不織布の空孔に高分子樹脂(d)を含浸して固化、ないし、モノマーあるいは硬化性樹脂先駆体を含浸して重合ないし硬化させ高分子樹脂(d)を充填することを特徴とする。
【0057】
(不織布の製造方法)
本発明に用いる水酸基を含有する繊維(a)として、セルロースを用いた場合の、セルロース不織布の製造方法を例に挙げて説明する。本発明に用いるセルロース不織布は、キャスト法により製膜することは本質的に可能であるが、100nm以下の繊維径をもつ繊維の占める数分率が0.7以上である微細セルロース繊維が0.05質量%以上0.5質量%以下の濃度となるように分散させた分散液を使用し、抄紙法にて製膜する方がその製膜方法の簡便さや、得られた繊維間の接触点(交絡点)の強度が十分に得られやすいことから好ましい。 ここで、分散液中の繊維が100nm以下の繊維径をもつ繊維の占める数分率が0.7以上の繊維であるかどうかは、上述した方法によって、製膜して得た不織布の面のSEM画像を解析することによって確認することができる。このような極めて微細なセルロース繊維を特に抄紙法で製膜する場合には、その添加量に応じて、セルロース繊維を凝集させる能力を持つイオン性化合物の添加により高い生産性でかつほぼ歩留まり100%で抄紙できる条件を見出すことができる。
【0058】
次に該分散液中における微細セルロース繊維の濃度は0.05質量%以上0.5質量%以下、好ましくは、0.1質量%以上0.4質量%以下、さらに好ましくは0.15質量%以上0.35質量%以下の範囲にあると地合い(膜質均一性)に優れた本発明のセルロース不織布を製膜することができる。分散液中の微細セルロース繊維の濃度が0.05質量%よりも高いと微細セルロース繊維自身が有する分散安定効果が得られやすく、地合いに優れた不織布が得られ易くなる。また、該濃度が0.5質量%よりも低いと分散液の粘度が適度に低くなり、製膜の際に分散液の均一なフィード(送り出し)がしやすくなることによって、膜厚の均一性に優れた不織布が得られ易くなる。
抄紙方法は、バッチ式の抄紙機は勿論、工業的に活用可能なすべての連続抄紙機を用いて実施することができる。特に、傾斜ワイヤー型抄紙機、長網式抄紙機、丸網式抄紙機によって好適に本発明の不織布を製造することができる。特に、後述する多層化抄紙の場合には、複数の異なる抄紙機を組み合わせるのも有効(例えば、下地層抄紙は傾斜ワイヤー型抄紙機、上地層抄紙では丸網式抄紙機を用いる等)である。抄紙の際の好ましい詳細な条件については後述する。
【0059】
また、抄紙の後、得られた湿紙は固形分率が6質量%以上30質量%以下の範囲に調整した後に有機溶媒あるいは水と有機溶媒の混合溶液と置換し、乾燥させることにより本発明のセルロース不織布を好適に得ることができる。ここで好ましくは、湿紙の固形分率が10質量%以上25質量%以下であると生産性と物性(特に通気抵抗度の制御)のバランスの面でより好適に本発明のセルロース不織布を製造することができる。湿紙の固形分率が6質量%よりも高いと湿紙としての自立性が十分なものとなり、工程上好ましく、次の溶剤への置換工程でも置換もスムーズに行うことができる。また、湿紙の固形分率が30質量%以下であれば溶剤置換の工程を経た後に不織布の空孔率が前記所定の範囲となり、本発明において高分子樹脂を含浸するのに好ましい。
【0060】
ここで、湿紙の固形分率が6質量%以上30質量%以下の範囲に制御するには、例えば抄紙の際のウェットサクションやドライサクション等のサクション圧力を適度にコントロールし、さらに抄紙後に湿紙に対し、プレスロール処理(プレス圧力で絞りの程度をコントロール)を行えばよい。
引き続いて、該固形分率範囲に制御された湿紙を有機溶媒あるいは水と有機溶媒の混合溶液と置換して乾燥させることにより本発明の不織布を得ることができる。乾燥は、ドラムドライヤーや乾燥室での大気圧下での乾燥を通常行うが、場合によっては加圧下あるいは真空下での乾燥を実施しても構わない。この際、物性の均一性を確保し、規定値範囲の通気抵抗度を実現させる目的により、湿紙状態の不織布は定長で乾燥させることがより好ましい。こうした置換工程を経ないで分散媒体が水の湿紙から乾燥して得られる不織布は極めて通気抵抗度の高い膜である。
【0061】
次に、本発明にかかるセルロース不織布の製造の各工程における詳細な条件について説明する。まず本発明では、100nm以下の繊維径をもつ繊維の占める数分率が0.7以上である微細セルロース繊維を使用するのが好ましいが、該微細セルロース繊維は、原料繊維を水または水と有機溶媒の混合溶媒に分散させた後、叩解処理を行って得られたものであるか、叩解処理を行った後に、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、グラインダー型微細化装置の中の少なくとも一つを用いてさらに微細化させることにより得られたものであること、または、こうして得られた2種類以上の微細セルロース繊維の混合物であることが好ましい。
【0062】
より具体的に説明すると、叩解処理工程においては、原料繊維を0.5質量%以上4質量%以下、好ましくは0.8質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上2.5質量%以下の固形分濃度となるように水または水と有機溶剤の混合溶液に分散させ、まずビーターやディスクリファイナー(ダブルディスクリファイナー)のような叩解装置でフィブリル化を促進させる。使用する分散溶媒は、安全性の観点から水であることがより好ましいがエチレングリコールやグリセリンのようなセルロースへの親和性の高い多価アルコール系の有機溶媒か場合によってはより疎水的な水に可溶な有機溶媒(例えば、エタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、n−ブタノール、エチルセロソルブ、アセトン、シクロヘキサノン等)を用いても構わない。叩解処理によりフィブリル化が進行すると同時に、均一なスラリーとなり、以下に記載する微細化処理において詰まりを発生しない状態となる。
【0063】
ここで、叩解の程度として、一般的に用いられる指標として、JIS P 8121で定義されるパルプのカナダ標準ろ水度試験方法(以下、CSF法)のCSF値(単位:ml)がある。一般的には、CSF値は数100mlのオーダーから、叩解を進めるに従い小さくなっていくことが知られている(一般的な製紙における叩解過程は、CSF値が数100mlからゼロ付近にまで低減していく過程の範囲であることが多い)。しかしながら、本発明で微細化処理の前処理としての叩解処理では、例えば、ディスクリファイナーのディスク間のクリアランスを極めて小さく(0.1mm以下)保って処理を進めていくと、CSF値は小さくなって一旦ゼロ近くまで低下した後に増大していく傾向があることを見出している。
【0064】
本発明では繊維分散体の叩解を進め、CSF値が降下していく過程のCSF値を***↓ml、さらに叩解を進めゼロ付近を通り、CSF値が増大する過程のCSF値を***↑mlというように区別して表記する。本発明では少なくともCSF値が100↓mlよりも叩解を進める、好ましくは0mlよりも叩解を進める、さらに好ましくは50↑mlよりも叩解を進めると、その後の微細化処理がし易く、微細化処理条件との組み合わせによって好適な微細セルロース繊維のスラリーを得ることができる。
さらに、上記叩解処理により得られたスラリーをそのまま微細化処理することにより、より好適な本発明で使用する微細化セルロース繊維のスラリーを得ることができる。ここで、微細化処理として有効なものには、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、グラインダー型微細化装置を挙げることができる。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、ニロ・ソアビ社(伊)のNS型高圧ホモジナイザー、(株)エスエムテーのラニエタイプ(Rモデル)圧力式ホモジナイザー、三和機械(株)の高圧式ホモゲナイザーなどを挙げる。これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。
【0065】
超高圧ホモジナイザーとしては、みづほ工業(株)のマイクロフルイダイザー、吉田機械興業(株)ナノマイザー、(株)スギノマシーンのアルティマイザーなどの高圧衝突型の微細化処理機を意味し、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。
グラインダー型微細化装置としては、(株)栗田機械製作所のピュアファインミル、増幸産業(株)のスーパーマスコロイダーに代表される石臼式摩砕型を挙げることができるが、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。いずれの場合でもスラリーを複数回数パスさせた条件で処理するのが好ましい。また、上述した微細化装置による微細化処理は複数の異なる装置での処理を組み合わせても構わない。
【0066】
上述した微細化処理においては、原料繊維がセルロースの場合は天然系セルロース繊維、再生セルロース繊維のいずれかを用いるが、天然系セルロース繊維を用いた方が容易に微細化が進行する点で好ましい。天然系セルロース繊維は、セルロースを含む天然原料を蒸解等の精製工程により処理して得られる精製セルロースを意味し、パルプシートとして加工されたものが使い易さの点で好ましい。
天然系セルロース繊維としては、木材(針葉樹及び広葉樹)由来の精製パルプの他に、非木材系セルロース繊維として、麻由来パルプ,バガス由来パルプ,ケナフ由来パルプ,竹由来パルプ、コットンリンターやコットンリントなどのコットン由来のセルロース、バロニアやシオグサなどの海草由来のセルロース、ホヤに含有されるセルロース、バクテリアの産生するセルロース等を挙げることができる。
【0067】
これらの中で、特に、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプのうちの少なくとも一種を選ぶと、極めて微細化が進行し易く、好適に本発明の微細セルロース繊維を生産することができる。麻由来パルプ,バガス由来パルプ,ケナフ由来パルプ,竹由来パルプのうちの少なくとも一種を原料として極めて高度に叩解処理を行った場合には、上述した微細化処理を施さなくとも本発明で使用する微細セルロース繊維として使用できる場合もある。
次に、上記工程により得られた微細化セルロース繊維のスラリーを微細セルロース繊維が0.05質量%以上0.5質量%以下の濃度となるように水または希釈し、分散させて抄紙用の分散液を調製する。この際の分散機としては、種々のタイプの攪拌羽根を装着したアジテータ、ディスパー型のミキサー、ディスクレファイナー(ダブルディスクレファイナーを含む)やビーター等の叩解装置等種々の装置を選択できるが、通常、乳化に使用する巻き込み型のホモミキサー(例として、特殊機化(株)のM型攪拌部を装着したT.K.ホモミキサー等)類のように微細繊維を撚糸してしまう効果のあるものは好ましくない。先に得た微細セルロース繊維のスラリー濃度が高いほど、分散の完全性を高めるために、より強固な分散条件(大きな回転数や長い処理時間)を設定する必要がある。
【0068】
本発明では、抄紙用の分散液中にはイオン性化合物が溶解していることが好ましい。元々セルロース固体の表面は水中でマイナスに帯電していることが知られており、特に微細セルロース繊維を使用する本発明においては、その分散液中ではセルロースは極めて大きな表面積を有する状態で分散している。分散液中の微細セルロース繊維の表面には電気2重層が形成されていて、その静電的反発力により分散液は安定化している。分散溶媒中にセルロース表面の電気2重層と静電的な相互作用をもつイオンが供給され、その量が電気2重層の表面電荷を中和する量以上となると、微細繊維は反発力を失い、凝集を起こすようになる。
【0069】
すなわち、イオン濃度を徐々に高めていくと、あるしきい濃度以上で凝集が進行するようになり、以降、イオン濃度の増大に伴い凝集の程度は大きくなり、初期には緩やかな会合体が形成(軟凝集)されるが、次第に強い凝集になり凝集体は締まった硬いもの(硬い凝集)となる。本発明ではイオン性化合物は、本発明で原料として使用する微細セルロース繊維の抄紙用分散液中での微細セルロース繊維の適度な凝集を誘起し、抄紙時の濾水性を向上させるために投入する。本発明で使用する繊維が微細セルロース繊維である場合は極めて微細な繊維であるため、イオン性化合物を添加することにより抄紙時の濾水時間が極めて長くなったりワイヤーや濾布への目詰まりや繊維の抜けを起こしたりすることを防ぎ、抄紙の生産性が高いものとなる。
【0070】
より具体的に、本発明で使用できるイオン性化合物を挙げると、水溶性の無機塩類、水溶性の有機系イオン性化合物、イオン性界面活性剤の3つのグループに分けることができる。
無機塩類としては、水中で解離し、イオン強度を有する化合物であれば何を用いても構わない。例として、塩酸および塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化アンモニウム、塩化銅(I)、塩化銅(II)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、二酸化塩素のような塩素系化合物、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムのような水酸化化合物、炭酸水および炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムのような炭酸塩類、硫酸および硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸銅、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硫酸アンモニウムのような硫酸塩類、硝酸および硝酸ナトリウム、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸銅(II)、硝酸銅(III)、硝酸アンモニウムのような硝酸塩類、リン酸、無水リン酸およびポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、かんすい、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三マグネシウム、リン酸アンモニウムのようなリン酸塩類、ホウ酸およびホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、ホウ酸リチウム、ホウ酸アンモニウムのようなホウ酸塩類、さらにはチオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩類、生石灰、アンモニア等を挙げることができる。
【0071】
有機系イオン性化合物としては、低分子化合物と高分子化合物の2種類に分類することができる。低分子化合物としては、有機酸およびその塩類あるいは有機塩基およびその誘導体類を挙げることができるが、より具体的には、酢酸および酢酸ナトリウムのような酢酸塩類、プロピオン酸およびプロピオン酸ナトリウムのようなプロピオン酸塩類、その他、酪酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、リンゴ酸、フマル酸のような各種有機酸とそれらの塩類、メチルアミンおよびジメチルアミン、トリメチルアミンのようなメチルアミン誘導体、エチルアミンおよびジエチルアミン、トリエチルアミンのようなエチルアミン誘導体、n−プロピルアミンおよびその誘導体、iso−プロピルアミンおよびその誘導体、sec−ブチルアミンおよびその誘導体、tert−ブチルアミンおよびその誘導体、アリルアミンおよびその誘導体、テトラメチルエチレンジアミンのような有機塩基およびその誘導体類を挙げることができる。
【0072】
また、高分子の有機系イオン性化合物としては、アクリル酸モノマー単位およびアクリル酸塩モノマー単位、メタクリル酸モノマー単位およびメタクリル酸塩モノマー単位のようなアニオン性のモノマー単位が分子鎖骨格中に含まれるアニオン系水溶性高分子、アクリル酸の有機アミノ誘導体エステル、メタクリル酸の有機アミノ誘導体エステル、エチレンイミン誘導体のようなカチオン性のモノマー単位が分子鎖骨格中に含まれるカチオン系水溶性高分子、あるいはアニオン性のモノマー単位とカチオン性のモノマー単位が両方、分子鎖骨格中に含まれる両性水溶性高分子を挙げることができる。
ここで、上述したアニオン性のモノマー単位あるいはカチオン性のモノマー単位は、その構造中に水中で解離し、イオンとなる性質をもつ置換基を含んでいればよく、また、高分子鎖におけるイオン性のモノマー単位以外のモノマー単位は、水溶性に寄与する構造であれば何であってもよい。このような条件を満たす高分子は組み合わせ等により多種多様のものが存在するため、具体例として限定することは困難であるが、代表的なものとして例示すれば、以下のような高分子を挙げることができる。
【0073】
カルボキシメチルセルロース(酸型、塩型の双方を含む)、ポリアクリル酸(酸型、塩型の双方を含む)、ポリメタクリル酸(酸型、塩型の双方を含む)、アルギン酸(酸型、塩型の双方を含む)、アクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合物(ダイヤニトリックス社、製品名:アクリパーズP−NS等)、ポリメタクリル酸ジメチルアミノエチル(ダイヤニトリックス社、製品名:ダイヤフロックKP201等)、アクリルアミド・アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物(ダイヤニトリックス社、製品名:ダイヤフロックAP825等)、アクリルアミド・アクリル酸ジメチルアミノエチル・アクリル酸3元共重合体(ダイヤニトリックス社、製品名:ダイヤフロックKA205等)、ポリビニルアミン(ダイヤニトリックス社、製品名:PVAM等)、N−ビニルホルムアミド・アクリロニトリル共重合体変性物(ダイヤニトリックス社、製品名:ダイヤフロックKP700等)、アミノ変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社、製品名:SM8704等)、メチルハイドロジェンポリシロキサン(東レ・ダウコーニング社、製品名:SM8707EX等)、部分ケン化ポバール、アクリルエステル・マレイン酸共重合物、スチレン・メタクリル酸共重合物、スチレン・マレイン酸共重合物、カチオン化でんぷん、カゼイン、イオン性基を有する天然多糖類(グアガム等)、ポリアミドポリアミン/エピクロロヒドリン組成物(荒川化学工業社、製品名:アラフィックスAF−100)等。
【0074】
イオン性界面活性剤として具体的には、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどのカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
イオン性化合物は上述した条件で製造した抄紙用分散液中に溶解させるが、添加のタイミングは、少なくとも、ワイヤーや濾布上で濾水が起こる直前までに分散液中に溶解、混合されなければならない。より具体的には、パルプ原料を叩解する直前または叩解処理の最中、叩解後微細化処理を行う直前または微細化処理の最中、希釈・分散し抄紙用分散液を調製する直前またはその最中、あるいは抄紙用分散液がワイヤーあるいは濾布上に投入される直前または送液の途中で添加する。添加するイオン性化合物の性状は粉末状であっても、予め水溶液として調製したものを添加しても構わない。
【0075】
次に、抄紙用分散液中へ添加するイオン性化合物の添加量は、上述したイオン性化合物の作用機構により、微細セルロース繊維の微細性と分散液中の繊維濃度(すなわち繊維の表面積の大きさ)に依存するため系によって異なるが、混合後の分散液中に存在するイオン性化合物の濃度範囲として、0.0001質量%以上2質量%以下、好ましくは0.0002質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.0003質量%以上1.0質量%以下である。分散液中のイオン性化合物の濃度が、0.0001質量%よりも多いとイオン性化合物が、微細セルロース繊維を十分なレベルにまで軟凝集させやすくなり、濾水性の改善がなされ、抄紙時間が短くなり繊維も抜けにくくなり歩留まりに優れる。また、イオン性化合物の濃度が2質量%以上でも該添加物による抄紙性の効果はあまり変わらない。
【0076】
次に、上述した工程により得られる抄紙用分散液を用いて抄紙を行うが、抄紙はワイヤーまたは濾布を用いて分散液中に分散している微細セルロース繊維の軟凝集体を濾過する工程であるため、ワイヤーあるいは濾布の目のサイズが重要である。本発明においては、本質的には、上述した条件により調製した抄紙用分散液を、該分散液中に含まれる繊維の歩留まり割合が70%以上、好ましくは、85%以上、さらに好ましくは95%以上で抄紙することのできるようなワイヤーあるいは濾布であればどんなものでも使用できる。ただし、微細セルロース繊維の歩留まり割合が70%以上であっても濾水性が高くないと抄紙に時間がかかり、著しく生産効率が悪くなるため、大気圧下25℃でのワイヤーまたは濾布の水透過量が、好ましくは0.005ml/cm・s以上、さらに好ましくは0.01ml/cm・s以上であると、生産性の観点からも好適な抄紙が可能となる。
【0077】
ここで、大気圧下25℃でのワイヤーまたは濾布の水透過量は次のようにして評価するものとする。バッチ式抄紙機(例えば、熊谷理機工業社製の自動角型シートマシーン)に評価対象となるワイヤーまたは濾布を設置するにおいて、ワイヤーの場合はそのまま、濾布の場合は、80〜120メッシュの金属メッシュ(濾水抵抗がほとんど無いものとして)上に濾布を設置し、抄紙面積がxcmの抄紙機内に十分な量(ymlとする)の水を注入し、大気圧下で濾水時間を測定する。濾水時間がzs(秒)であった場合の水透過量を、 y/(xz) (ml/cm・s) と定義する。
特に叩解後に微細化処理を実施して得られる微細セルロース繊維では、上記の条件を満たすワイヤーや濾布は限定されるが、極めて微細なセルロース繊維に対しても使用できるワイヤーとして、SEFAR社(スイス)製のTETEXMONODLW07−8435−SK010(PET製)、濾布として敷島カンバス社製NT20(PET/ナイロン混紡)を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0078】
これに対し、叩解処理を行った繊維でまず上記のワイヤーよりも目の粗いワイヤー上で下地層の抄紙を行うことにより、下地層としての湿紙がフィルターの役割を果たし、叩解後に微細化処理を実施して得られる微細セルロースを用いても歩留まり割合が70%以上で抄紙を実施することができる。この場合にも、下地層として使用する高度に叩解した繊維は一般の繊維よりは微細な繊維径、繊維長を有するものであるため、その目のサイズは細かなものが望ましい。具体的には150メッシュ以上、さらに好ましくは200メッシュ以上であると好適に2層化以上の多層抄紙を実施することができる。
さらに、乾燥した低目付の不織布上で抄紙を行う場合には、下地層として用いる該不織布そのものがフィルターの役割を果たすので、該不織布を乗せるワイヤーの目のサイズは該不織布の孔径サイズに応じて選定すればよい。すなわち、該不織布が目の粗いもので、微細セルロース繊維を濾別する能力を持たない場合には、その下に使用するワイヤーには、単層で本発明で使用する微細セルロース繊維を歩留まり70%以上で抄紙できる濾別性を有する上述したワイヤーあるいは濾布が必要となるが、本発明で使用する微細セルロース繊維を歩留まり70%以上で抄紙できる濾別性を下地層として使用する該不織布が有している場合には、当然ながらワイヤーは目の粗いもの(150メッシュ以下のもの)であって構わない。
【0079】
抄紙後、6質量%以上30質量%以下の固形分率範囲に調製した湿紙を有機溶媒あるいは水と有機溶媒の混合溶液に置換し、乾燥させることにより本発明のセルロース不織布を得ることができる。ここで、有機溶媒あるいは水と有機溶媒の混合溶液に置換する際の条件について記載する。該有機溶媒として、アルコール,ケトン,エーテル,芳香族化合物,炭化水素,環状炭化水素,環状炭化水素誘導体から選ばれる少なくともいずれか一つであることが好ましい。本発明では、湿紙中で形成されている極めて微細なネットワーク構造から乾燥により水または水を含む媒体が蒸発し、排除されていくが、この際にセルロースに対する表面張力の低い水または水を含む媒体では、水が蒸発する際に、水が満たされている微細セルロースで囲まれた領域で水は一体化されて周囲の繊維全体を引っ張りながら抜けていく。その結果、繊維間距離が縮まることになり、仮に平面方向に膜サイズを保ちつつ乾燥(定長乾燥)としても乾燥後の膜は膜厚方向に収縮し、不織布の空孔率が前記所定の範囲以下となり、本発明において高分子樹脂を含浸することができにくくなるため好ましくないことがある。
【0080】
これに対し、湿紙を有機溶剤または水と有機溶剤の混合溶液で置換するとネットワークを形成する繊維の近傍は水よりも表面張力の小さな溶媒で満たされることとなる。この場合には、溶媒含有率の高い状態ではネットワーク内部に溶媒が満たされているが、溶媒の蒸発と共に、比較的早期に、溶媒のセルロースに対する表面張力が高いために周囲の繊維の一部にばらばらに局在するようになり、以降、繊維表面に局在した溶媒が蒸発して排除されていく。この過程では、ネットワークを形成する微細繊維を収縮させる力は働かないため、元の湿紙中で形成されていたネットワークをそのままかあるいはそれに近い形に維持されて、乾燥が進行することになり、得られる不織布は空孔率の高い、通気性のある不織布となり、後に高分子樹脂を含浸しやすいものとなる。
【0081】
より具体的に使用できる置換溶媒として使用できる有機溶媒の例を示すと、アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、フェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールtert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の1,2−アルキルジオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン及びその誘導体類等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
エーテルとしては、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。炭化水素としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。環状炭化水素としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。環状炭化水素誘導体としては、シクロペンタノール、シクロペンタノン、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキサノンジメチルアセタール等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
上述した有機溶媒を水との混合溶液として使用する場合には、混合溶液中に占める有機溶媒の割合は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であると好適に本発明の不織布を製造することができる。置換溶媒として水と有機溶媒の混合溶液を用いる場合に、混合溶液に占める有機溶媒の割合が40質量%よりも高くすることにより、乾燥後に得られるセルロース不織布の空孔率が前記所定の範囲となり、本発明において高分子樹脂を含浸しやすくなるので好ましい。また、混合溶液における有機溶媒は2種以上のものを使用しても構わない。さらに、該有機溶媒は水に溶解していることが好ましいものの、場合によっては、完全に溶解しない有機溶媒を乳化させてエマルジョンとして使用しても構わない。
【0084】
湿紙を有機溶媒あるいは水と有機溶媒の混合溶媒で置換する方法に関しては、上述した溶剤置換法の基礎原理を損なわない方法であればどのような方法であっても構わない。例えば、抄紙により製膜した湿紙を、溶剤置換が充填されているディップ浴に浸漬し、一定時間、浴中に浸した後に引き上げて、場合によってはプレスロール等により溶剤含有率をコントロールした後に乾燥工程に渡してもよい。また、ワイヤー上で抄紙し、プレス処理で固形分率をコントロールした後にやはりワイヤー上で有機溶媒あるいは水と有機溶媒の混合溶媒を上部からシャワー状に均一に供給し、置換溶媒を湿紙内部に上から下へ透過させて置換させた後に乾燥工程へ渡すプロセスも有効である。あるいは、丸網式抄紙機を溶剤置換槽として利用するのも有効である。この場合には、溜め槽の内部に置換溶媒を充填し、丸網ドラムのワイヤー上に湿紙を乗せて槽内部の置換溶媒へ浸漬し、ドラム内部への溶媒の物質移動により置換を行う。当然これらの置換方法に限定される訳ではない。
【0085】
上記により得た置換溶媒を含む湿紙を乾燥させることにより本発明のセルロース不織布を得ることができる。ここで、乾燥後の本発明のセルロース不織布に対し、さらにカレンダー装置による平滑化処理を施す工程を含むことにより、上述した薄膜化が可能となり、広範囲の、膜厚/空孔率/強度の組み合わせを有する本発明のセルロース不織布を提供することが可能となる。カレンダー装置としては単一プレスロールによる通常のカレンダー装置の他に、これらが多段式に設置された構造をもつスーパーカレンダー装置を用いてもよい。これらの装置、およびカレンダー処理時におけるロール両側それぞれの材質(材質硬度)や線圧を目的に応じて選定することにより多種の物性バランスをもつ本発明のセルロース不織布を得ることができる。
【0086】
置換、乾燥後のセルロース不織布に対するカレンダー処理の作用原理には2通りが考えられる。まず、本発明のセルロース不織布の製造工程では、抄紙用原料として使用する微細セルロース繊維の繊維長に対し、製造時に使用するワイヤーや濾布の表面凹凸のピッチが大幅に長いため、得られる不織布の表面はワイヤーや濾布の凹凸が転写され易い。第一点としては、カレンダー処理は、この凹凸を平坦化させる効果を有する。第二点目として、一定空孔率を有する不織布のネットワーク構造そのものを押し潰す効果である。二番目の効果により不織布の空孔率は低減し、平均孔径も小さくなることになり、結果的に、通気抵抗度は増大し、引張り強度や突刺し強度が増大する。実際には、設定したカレンダー処理条件に応じて、上記一番目の効果と二番目の効果が混在し(種々の貢献率となって)、得られるセルロース不織布の構造や物性が決まる。また、エンボス加工を表面に施したカレンダー処理用金属ロールを使用して、任意の表面パターンにより凹凸を加えたセルロース不織布も本発明のセルロース不織布として好適に使用することができる。
【0087】
特に本発明のセルロース不織布を連続的に製膜するためには、上述したような抄紙、プレス処理、溶剤置換、そしてこの後に記載する乾燥や場合によってはカレンダー処理の各工程を連続的に実施する必要がある。この際、使用するワイヤーはエンドレス仕様のものを用いて全工程を一つのワイヤーで行うかあるいは途中で次工程のエンドレスワイヤーまたはエンドレスのフェルト布にピックアップして渡すあるいは転写させて渡すかあるいは、連続製膜の全工程または一部の工程を、濾布を使用するロールtoロールの工程とするかのいずれかをとり得る。本発明のセルロース不織布における連続製膜のプロセスイメージの一例を図3に示した
図3では、傾斜ワイヤー抄紙機で抄紙してワイヤー上で運ばれてくる湿紙を、プレス部1において次のワイヤー(ワイヤー2)上へプレス転写してさらに排気下である防爆エリア内へ運びプレス部2右でプレス処理を施し湿紙の固形分濃度を高める。その後に、ワイヤー上に乗った湿紙の上部から湿紙の性状を壊さない程度に有機溶媒をシャワーで散布し、ワイヤー2の下部で若干の減圧で吸引することにより、湿紙中へ有機溶媒を透過(置換)させつつ、水分を含んだ有機溶媒を回収系へ運ぶ。同時に、プレス部2左でプレス処理を行うことにより、有機溶媒含浸湿紙の固形分率を高めた後、ワイヤー上から有機溶媒含浸湿紙を剥がし、ドラムドライヤーによる定長乾燥工程へ送り出し、乾燥後、ロール状にセルロース不織布を巻き取るというものである。当然のことながら、製膜プロセスはこの内容に限定されるものではない。
【0088】
(高分子樹脂(d)の充填方法)
本発明においては、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布に対し、
(1)モノマーを含浸させて重合させる方法、
(2)熱硬化性樹脂先駆体ないし光硬化性樹脂先駆体を含浸させて硬化させる方法、
(3)高分子樹脂の溶液を含浸後乾燥させる方法、
(4)高分子樹脂である熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ脱泡後冷却する方法、
のいずれか一つの方法により不織布空隙に高分子樹脂(d)が充填された複合材料を製造する方法を用いることができる。
(1)モノマーを含浸させ重合させる方法とは、熱可塑性樹脂を構成する単量体であるメタクリル酸メチル等のモノマーを、不織布に含浸させ、熱処理等により上記モノマーを重合させることにより、不織布と高分子樹脂(d)からなる複合材料を得る製造方法であり、パーオキサイド等の有機過酸化物、または一般的にモノマーの重合に用いられる重合触媒を重合開始剤として用いることができる。重合触媒が不純物として複合材料の性能を損なうことが想定される場合には、キノン類のような重合禁止剤を一切含まない高純度のモノマーを含浸させ、重合開始剤を用いないで熱重合させることも有効である。
【0089】
また、(2)熱硬化性樹脂先駆体または光硬化性樹脂先駆体を含浸させ硬化させる方法とは、エポキシ樹脂(モノマーを含む)等の熱硬化性樹脂先駆体または光硬化性樹脂先駆体と硬化剤の混合物を、不織布に含浸させ、熱処理または光照射等により上記熱硬化性樹脂先駆体または光硬化性樹脂先駆体を硬化させることにより、不織布と高分子樹脂(d)である硬化エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の硬化物または光硬化性樹脂の硬化物からなる複合材料を得る製造方法である。エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂先駆体または光硬化性樹脂先駆体が室温で固体であり、不織布に含浸させることが困難な場合は、該先駆体を前もって熱処理し融解させておくことや、該先駆体を可溶な溶媒に溶解させた溶液を含浸させることも可能である。表面の平滑性を高める意味で、ある程度硬化反応が進行した段階で加熱プレス処理下で更に反応を進行させることも有効である。該加熱処理時にはある程度硬化反応が進行した複合材料を数枚積層させて処理することも厚膜化時(上述)には有効である。
また、(3)高分子樹脂(d)の溶液を含浸後乾燥させる方法とは、高分子樹脂である熱可塑性樹脂を溶解可能な溶媒に溶解し、不織布に含浸させ、乾燥させることにより、不織布と高分子樹脂からなる複合材料を得る製造方法である。
【0090】
また、(4)高分子樹脂(d)である熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ脱泡後冷却する方法とは、高分子樹脂である熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上または融点以上で熱処理することにより融解させ、不織布に含浸させ、脱泡後冷却することにより、不織布と高分子樹脂からなる複合材料を得る製造方法である。熱処理は加圧下で行うことが望ましく、真空加熱プレス機能を有する設備の使用が有効である。
該高分子樹脂(d)に芳香環を含有させることにより、改質繊維(c)の芳香環とのπ電子−π電子相互作用により該高分子樹脂の芳香環も一定方向に配向させることによる異方性制御相乗効果を付与することができる。更に高分子樹脂(d)に光学異方性を制御する化合物(b)を更にブレンドすることにより同様な相乗効果を付与することができる。
また、高分子樹脂(d)を充填するかわりに液体を含浸して別のシート等で挟み込むもしくは封入する方法により複合材料とすることもできる。
本発明においては、不織布として抄造法あるいは塗布法のような人工的製膜法により得られる厚みが5μm以上5000μm以下の範囲にある連続不織布を用いることができる。ここで、厚みは不織布強度の観点から5μm以上であり、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μmである。また、生産性や工程管理の面から500μm以下、好ましくは300μm、さらに好ましくは200μm以下である。
【0091】
本発明においては、上記連続不織布を用いて、さらに連続工程においてモノマーまたは溶融樹脂または樹脂溶液を含浸後、重合または硬化または乾燥させることにより、通常ロール状製品と呼ばれる連続成形体としても製造することができる。このように連続成形体を得ることは複合材料の生産性向上につながると同時に、Roll toRollのいわゆる半連続的ディスプレイデバイス製造プロセスにも対応できるようになるため、産業上極めて意味のあることである。
また、連続成形体である本発明の複合材料を複数層重ね合わせ、連続的あるいは半連続的に加熱プレス処理することにより、厚みが10μm以上5000μm以下である連続成形体の積層体を得ることができる。
【0092】
本発明における複合材料は、低線膨張率、耐熱性、透明性、低ヘイズ値、低リタデーション等の光学特性に優れ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイおよびタッチパネルや太陽電池の基板や前面板、カラーフィルター基板等に用いることができる。特に、これらディスプレイおよび太陽電池に用いられるガラス用途への本発明の複合材料の代替が可能になり、軽量化、柔軟性、割れにくいなどの効果が得られる。
液晶ディスプレイ等の透明電極用導電性基板は例えば以下のようにして得ることができる。まず、該透明基板の表面に酸化インジウム、酸化スズ、スズ−インジウム合金、酸化亜鉛−ガリウム、酸化亜鉛−アルミニウムの酸化膜等の半導体膜や、金、銀、パラジウムあるいはそれらの合金等の金属膜、半導体膜と金属膜との組み合わせを、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、反応プラズマ蒸着法、触媒化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法等の物理的もしくは化学的堆積法により形成する。
【0093】
必要に応じて水蒸気や酸素が該透明基板を透過することによって液晶ディスプレイ基板や有機EL素子等に性能劣化が生じることを防ぐため、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化アルミニウム等からなるガスバリア層を上述の物理的あるいは化学的堆積法により薄膜を形成したり、パーヒドロポリシラザン等のポリシラザン/有機溶媒溶液やアルコキシシラン/有機溶媒溶液のような他の塗布系シリカ材料の塗布後に加水分解と加熱焼成、すなわち3次元化反応に基づくバリア層を形成したり、塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリア性の高いポリマーの塗布によりガスバリア層を設けることができる。また、良好のガスバリア層を得るために有機物よりなる公知の平滑化層あるいは保護層をガスバリア層の内外に設けることができる。
【0094】
本発明の複合材料に上述の薄膜形成法により導電性金属酸化物をまたは金属メッシュ配線、金属ペーストなどにより導電処理を施した場合にはプラズマディスプレイ前面電磁波シールドとして用いることができる。また、防汚処理等の表面機能化処理、反射防止処理も同様な手法で付与できる。
本発明においては、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、各種目的に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は,樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。無機充填剤,酸化鉄等の顔料,ステアリン酸,ベヘニン酸,ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム,エチレンビスステアロアミド等の滑剤,離型剤,パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン,ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤,ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系熱安定剤等の酸化防止剤,ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤,難燃剤,帯電防止剤,有機繊維,ガラス繊維,炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤,着色剤、その他添加剤或いはこれらの混合物等が挙げられる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明の実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における測定方法および評価方法は次の通りである。
【0096】
[測定方法]
(1)繊維径100nm以下の繊維の占める数分率
不織布の表面に関して、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍以上30000倍以下の範囲で、構成する繊維の繊維径がはっきりと判別できる程度の同じ倍率の画像として、表面の異なる部分につき少なくとも2枚撮影する。次に、撮影した各々の画像の全体に対し、まず縦横方向に直交に交差する2本の直線を無作為に定め、2本の直線に交差する繊維の交差点における繊維径をすべて測定したとき、交差している繊維の数nのうち繊維径が100nm以下である繊維の数n’の割合、n’/nを算出する。同一サンプルの異なる場所について撮影したSEM画像のうち、2枚について算出したn’/nの平均値を、100nm以下の繊維径をもつ繊維の占める数分率とする。
(2)平均繊維径
不織布の表面に関して、無作為に少なくとも2箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍相当以上30000倍以下の範囲で、繊維径がはっきりと認識できる倍率で行う。n’/nの測定の際と同様に、得られたSEM画像(例えば、図1と図2)に対し、画面に対し水平方向と垂直方向にラインを引き(例えば図1と図2の白線)、ラインに交差する繊維の個数と各繊維の繊維径を拡大画像から実測する。こうして2つのラインに交差するすべての繊維について繊維径の測定結果を用いて平均繊維径を算出する。さらに同じサンプルについて観察した別の同じ倍率のSEM画像についても同じように平均繊維径を算出し、合計2画像分の結果の平均値を対象とする試料の平均繊維径(nm)とする。
【0097】
(3)膜厚
異なる3点以上の箇所の断面SEM像もしくは光学顕微鏡像より本発明に用いる不織布の厚み、および本発明の複合材料の厚み(μm)を測定した。
(4)空孔率
本発明に用いる不織布の目付x(g/m)と膜厚y(μm)から、以下の式を用いて算出した。
Pr={1−0.94x/(dy)} (%)
dは不織布を構成する繊維の固体密度(g/cm)であり、本発明におけるセルロースではd=1.50(g/cm)とした。
(5)置換度
反応前後の不織布の質量を測定することにより、次式の方法により置換度を算出した。
置換度=(不織布質量増分(g)/反応試薬分子量)/(反応前不織布質量(g)/反応前不織布を構成するモノマーの分子量)
なお、不織布がセルロースの時は反応前不織布を構成するモノマーの分子量は162である。
【0098】
(6)ヘイズ値
複合材料から任意に30mm四方に裁断したフィルムを評価試料とし、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH 2000)を用いて、JIS K7361−1に準拠して複合材料のヘイズ値(%)を測定した。
(7)平均屈折率
背景色を黒とし、スライドグラス上に切り出した繊維もしくは不織布を置き溶液を滴下し含浸する。これに斜め上より自然光を当て、その反射光を真上から観察して、繊維または不織布が最も黒くなる時の溶液組成の屈折率を繊維もしくは不織布の平均屈折率とした。測定は20℃で行った。
溶液はトルエン(20℃でのナトリウムD線の屈折率1.497)と1−ブロモナフタレン(20℃での屈折率(20℃でのナトリウムD線の屈折率1.658)を用い、両者を混合することにより約0.01刻みの屈折率を持つ溶液を作成し、これらを用いた。
(8)正面レターデーション値(Re(0°))
複合材料から任意に30mm四方に裁断したフィルムを評価試料とし、位相差複屈折測定装置(王子計測機器社製 KOBRA−WR)を用いて、複合材料の正面レターデーション値(Re(0°),nm)を測定した。具体的には、KOBRA−WRにおいて、波長589.2nmの光を該評価試料の法線方向に入射して測定した。
【0099】
(9)膜厚方向のレターデーション値(Rth)
複合材料から任意に30mm四方に裁断したフィルムを評価試料とし、位相差複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、複合材料の膜厚方向のレターデーション値(Rth,nm)を測定した。具体的には、KOBRA−WRにより判断される遅相軸を傾斜回転軸として、該評価試料の法線方向に対して+40°の傾斜方向から波長589.2nmの光を入射してレターデーション値(Re(40°))を測定し、さらに遅相軸を傾斜回転軸として、該評価試料の法線方向に対して−40°の傾斜方向から波長589.2nmの光を入射してレターデーション値(Re(−40°))を測定する。これらRe(40°)、Re(−40°)、および前述のRe(0°)、前述の複合材料の屈折率、さらに前述の膜厚の測定値をKOBRA−WRの解析ソフトに入力し、Rthを算出した。
【0100】
[製造例1]
セルロース原料としてアバカA’パルプ(東邦特殊パルプ株式会社製)を使用し、該パルプを固形分1.5質量%の水分散体(400L)とし、ディスクリファイナー装置としてラボリファイナー(相川鉄工株式会社製、商品名:SDR14型、加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmとして400Lのスラリーに対して、10分間叩解処理を進めた後、引き続いてクリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で叩解処理を続け、経時的にサンプリングを行い、サンプリングスラリーに対して、JIS P 8121で定義されるパルプのカナダ標準ろ水度試験方法(以下、CSF法)のCSF値を評価したところ、CSF値は経時的に減少していき、一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けると、増大していく傾向が確認された。クリアランスをゼロ近くとしてから100分間、上記条件で叩解処理を続け、CSF値で555↑mlの叩解スラリーを得た。得られた叩解スラリーを、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製、商品名:NS3015H)を用いて操作圧力100MPa下で10回の微細化処理を実施し、微細セルロース繊維の水分散体(固形分濃度:1.5質量%)、M1を得た。
【0101】
次にこのM1を、セルロース濃度が0.1質量%となるように水(イオン交換水)で希釈して500mlとし、さらにこの中にセルロースに対して1.0質量%相当量のポリエチレンイミン系のイオン性高分子凝集剤(ダイヤニトリクス社株式会社製、商品名:K409)を混入した後に、家庭用ミキサーを用いて5分間分散処理をまず行った。次に得られた分散液をさらにイオン交換水で希釈し固形分0.1質量%とし、ラボラトリーハイパワーミキサー(アズワン株式会社製、商品名:PM−203)を用いて室温、200rpmで10分間分散して抄紙用分散液を調製した。該抄紙用分散液に対し微細セルロースを大気圧下25℃における濾過で99%以上濾別する能力を有するPET/ナイロン混紡製の平織物(敷島カンバス社製、商品名:NT20、大気下25℃での水透過量:0.03ml/cm・s)を、以下で使用する角型金属製ワイヤーのサイズ(25cm×25cm)に揃えて裁断したものを濾布として、バッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製 自動角型シートマシーン)を用いて抄紙を行った。同抄紙機に組み込まれている角形金属製ワイヤー(25cm×25cm,80メッシュ)上に上述したPET製織物を設置し、その上から抄紙用分散液1000gを抄紙機へ注入し、サクション(減圧装置)大気圧に対する減圧度を4KPaとして抄紙を実施した。
【0102】
得られた濾布上に乗った湿潤状態の湿紙上にさらに同じ濾布をかぶせたものを、熊谷理機工業社製角型シートマシンプレスを用いて0.5MPaの圧力で1分間プレス処理し、湿紙の固形分が15質量%程度として、濾布/湿紙/濾布の3層の状態のままバット内に1Kgのイソブチルアルコールが混入された置換浴中に15分間浸漬(置換処理)し、一旦、上述のシートマシーンプレスで0.5MPaの圧力で1分間プレス処理を行った。さらにもう一度、新たにイソブチルアルコール1Kgをバット内に混入した置換浴中に浸漬させ、15分間静置した。次に、置換浴から取り出した濾布/湿紙/濾布の3層体をシートマシンプレスで0.5MPaの圧力で1分間プレス処理した後、3層体をそのまま表面温度が105℃に設定されたドラムドライヤー(熊谷理機工業社製)に貼り付けて約120秒間乾燥させた。得られた3層体からセルロース不織布を剥離させて、白色の地合い良好なセルロース不織布S1を得た。S1の目付は16g/m、膜厚は20μm、空孔率は51%であった。S1の表面の10000倍のSEM画像を図1に示した。図1を含めたS1の表面に関する2枚のSEM画像の写真の解析により、S1の表面における100nm以下の繊維の占める数分率は、0.92であり、平均繊維径は44nmであった。
【0103】
[製造例2]
セルロース原料としてアバカBパルプ(東邦特殊パルプ株式会社製)を使用し、ポリエチレンイミン系のイオン性高分子凝集剤(ダイヤニトリクス社株式会社製、商品名:K409)を無添加とした以外は製造例1と同様にして不織布S2を得た。S2の目付は16g/m、膜厚は20μm、空孔率は51%であった。S2の表面の10000倍のSEM画像の解析により、S2の表面における100nm以下の繊維の占める数分率は、0.75であり、平均繊維径は76nmであった。
【0104】
[実施例1]
500mLのテフロン(PFA)製ボトル(アズワン株式会社製)にN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬株式会社製 有機合成用、脱水、以下DMFと略す)を入れ、4−ビフェニルイソシアネート(Ardrich社製)を溶解させ、4.00質量%の4−ビフェニルイソシアネート反応液を調製した。該反応液15gにセルロース不織布S1を0.02g入れ、115℃の振蕩恒温油槽(タイテック株式会社製、商品名:Personal H−10にタイテック株式会社製、商品名:ThermoMinder SH−12を組み合わせた装置)中で2時間、速度35rpmで振蕩させた。該処理後の不織布をDMF(和光純薬株式会社製 特級)でよく洗浄した後、洗浄溶媒をイソブチルアルコール(和光純薬株式会社製 1級)に置換してさらに洗浄した。洗浄後の不織布を真空乾燥機に入れ、室温で約5時間減圧乾燥し、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布N1を得た。N1の置換度を前述の方法で測定した。測定結果をN1の作製条件とともに表1に示した。前述の方法で平均屈折率を測定すると1.61であった。また、背景色を黒とし、スライドガラス上に不織布N1を置き、屈折率1.61の液体を滴下し含浸したもの上に、もう一枚スライドガラスで置いた。これを更に偏光板で挟みクロスニコルとし、これに斜め上より自然光を当て、その反射光を真上から観察したところN1は黒色に見え、偏光漏れをほとんど起こしていないことを確認した。
【0105】
光学異方性を制御する化合物を導入した不織布N1に以下のようにして熱硬化性樹脂前駆体を含浸した。ビスフェノールA型エポキシ(旭化成エポキシ株式会社製、商品名:AER−250)49.7質量%、硬化剤として環状脂肪族酸無水物(新日本理化株式会社製、商品名:リカシッドMH−700G)48.8質量%、および硬化触媒(サンアプロ株式会社製、商品名:U−CAT 18X)1.5質量%を混合して熱硬化性樹脂前駆体含浸液を調製した。該含浸液を離型処理済PETフィルムの上に置いた不織布N1上に展開し、減圧下で気泡を除去しながら充分含浸させた。含浸処理後の不織布N1の上にもう1枚の離型処理済PETフィルムを載せ、圧縮板(鉄製30cm四方、質量8kg)に挟んで130℃の圧縮成型機(東邦マシナリー株式会社製油圧成形機、商品名:TD−37)に導入し、ほとんど圧力を掛けずに10分間保持した。次いで418Paの圧力を掛けて55分間保持し、熱硬化させることによって複合材料A1を得た。A1の膜厚50μmであった。前述の方法で測定したヘイズ値、Re(0°)、Rthを表1に示す。
【0106】
[比較例1]
不織布S1およびS2の平均屈折率を測定すると1.54であった。また、含浸液体の屈折率を1.54に変更した以外は実施例1と同様に偏光漏れを確認したところ、S1およびS2が白く見え偏光漏れがかなり起きていることを確認した。
該不織布S1をそのまま、熱硬化性樹脂前駆体含浸液としてビスフェノールA型エポキシ(旭化成エポキシ株式会社製、商品名:AER−250)49.7質量%、硬化剤として環状脂肪族酸無水物(新日本理化株式会社製、商品名:リカシッドMH−700G)48.8質量%、および硬化触媒(サンアプロ株式会社製、商品名:U−CAT 18X)1.5質量%を用いて実施例1と同様に含浸、熱硬化させ、複合材料C1を得た。前述の方法で測定したヘイズ値、Re(0°)、Rthを表1に示す。
【0107】
[実施例2]
2.05質量%の4−ビフェニルイソシアネート反応液を用いる以外は、実施例1と同じ原料と機器を用いることにより、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布bP2を得た。さらに、比較例1と同じ熱硬化性樹脂前駆体含浸液を用い、実施例1と同じ機器を用いて複合材料A2を得た。前述の方法で測定したヘイズ値、Re(0°)、Rthを表1に示す。
【0108】
[実施例3]
4.61質量%の4−ビフェニルイソシアネート反応液を用いる以外は、実施例1と同じ原料と機器を用いることにより、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布bP3を得た。bP3の置換度の測定結果を作製条件とともに表1に示した。さらに実施例2と同じ原料と機器を用いて複合材料A3を得た。前述の方法で測定したヘイズ値、Re(0°)、Rthを表1に示す。
【0109】
[実施例4]
3.04質量%の4−ビフェニルイソシアネート反応液を用いる以外は、実施例1と同じ原料と機器を用いることにより、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布bP4を得た。bP4の置換度の測定結果を作製条件とともに表1に示した。さらに実施例1と同じ原料と機器を用いて複合材料A4を得た。前述の方法で測定したヘイズ値、Re(0°)、Rthを表1に示す。
なお、実施例1〜4において、フーリエ赤外分光光度計(Varian社製、製品名: FTIR FTS575/UMA500)を用いて、本発明に用いる不織布のIRスペクトルをATR法(結晶:Ge)で測定した。得られたスペクトルにおいて、セルロース骨格のエーテル結合(νC−O:1060cm−1)に対する置換基(ベンゼン環:1530cm−1)のピーク面積比を算出した。ピーク面積の幅としては、ピークトップの波数±1.5cm−1とした。その結果、ピーク面積比=0.5364x置換度(決定係数R2=0.97)となったことを確認した。
【0110】
[実施例5]
2.05質量%の2−ナフチルイソシアネート反応液を用いる以外は、実施例1と同じ原料と機器を用いることにより、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布N2を得た。N2の置換度の測定結果を作製条件とともに表1に示した。さらに実施例1と同じ原料と機器を用いて複合材料A5を得た。前述の方法で測定したヘイズ値、Re(0°)、Rthを表1に示す。
【0111】
[実施例6]
3.32質量%の2−ナフチルイソシアネート反応液を用いる以外は、実施例1と同じ原料と機器を用いることにより、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布N2を得た。N2の置換度の測定結果を作製条件とともに表1に示した。さらに実施例1と同じ原料と機器を用いて複合材料A6を得た。前述の方法で測定したヘイズ値、Re(0°)、Rthを表1に示す。
【0112】
[実施例7]
2.66質量%の2−ナフチルイソシアネート反応液を用いる以外は、実施例1と同じ原料と機器を用いることにより、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布N3を得た。N3の置換度の測定結果を作製条件とともに表1に示した。さらに実施例1と同じ原料と機器を用いて複合材料A7を得た。前述の方法で測定したヘイズ値、Re(0°)、Rthを表1に示す。
【0113】
[実施例8]
得られたセルロース不織布S2に以下の2段階の反応によって光学異方性を制御する化合物を導入した。第1段の反応として、500mLのガラス製ボトル(アズワン株式会社製)にジメチルスルホキシド(和光純薬株式会社製 特級、以下DMSOと略す)および1規定の水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬株式会社製、以下NaOHaqと略す)を入れ、該混合液にセルロース不織布S2を入れて良く湿潤させた。S2が入った該混合液にエピクロロヒドリン(和光純薬株式会社製)を添加し、23.6質量%のエピクロロヒドリン反応液として調製し、25℃の振蕩恒温水槽(タイテック株式会社製、製品名:Personal 11にタイテック株式会社製、製品名:ThermoMinder SH−11を組み合わせた装置)中で6時間、速度120rpmで振蕩させた。該処理後の不織布をDMSOでよく洗浄した後、洗浄溶媒をエチルセルソルブ(和光純薬株式会社製 特級)に 置換してさらに洗浄した。洗浄後の不織布を真空乾燥機に入れ、室温で約5時間減圧乾燥し、エポキシ化不織布E1を得た。E1の置換度は0.76であった。
【0114】
第2段の反応として、500mLのガラス製ボトル(アズワン株式会社製)にDMF(和光純薬株式会社製 特級)および0.05規定のNaOHaq(和光純薬株式会社)を入れ、さらに蒸留水(和光純薬株式会社製)で希釈してpH11に調製した混合液に、エポキシ化不織布E1を入れて良く湿潤させた。該混合液と同組成のDMF−NaOHaqにアニリン(和光純薬株式会社製 特級)を添加し、9.5質量%のアニリン反応液を調製した。25℃の振蕩恒温水槽(タイテック株式会社製、製品名:Personal 11にタイテック株式会社製、製品名:ThermoMinder SH−11を組み合わせた装置)中で24時間、速度120rpmで振蕩させた。該処理後の不織布を40質量%DMF水溶液でよく洗浄した後、洗浄溶媒をDMFに置換してさらに洗浄した。洗浄後の不織布を真空乾燥機に入れ、室温で約5時間減圧乾燥し、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布EA1を得た。EA1の置換度を前述の方法で測定した。測定結果をEA1の作製条件とともに表3に示した。
【0115】
光学異方性を制御する化合物を導入した不織布EA1に以下のようにして高分子樹脂を含浸した。ビスフェノールA型エポキシ(旭化成エポキシ株式会社製、製品名:AER−250)19.9質量%、脂環式エポキシ(ダイセル化学工業株式会社製、製品名:セロキサイド 2021P)29.8質量%、硬化剤として環状脂肪族酸無水物(新日本理化株式会社製、製品名:リカシッドMH−700G)48.8質量%、および硬化触媒(サンアプロ株式会社製、製品名:U−CAT 18X)1.5質量%を混合して含浸液を調製した。該含浸液を離型処理済PETフィルムの上に置いた不織布N1上に展開し、減圧下で気泡を除去しながら充分含浸させた。含浸処理後の不織布N1の上にもう1枚の離型処理済PETフィルムを載せ、圧縮板(鉄製30cm四方、質量8kg)に挟んで130℃の圧縮成型機(東邦マシナリー株式会社製 油圧成形機 製品名:TD−37)に導入し、ほとんど圧力を掛けずに10分間保持した。次いで418Paの圧力を掛けて55分間保持し、熱硬化させることによって複合材料B1を得た。前述の方法で測定したヘイズ値、Re(0°)、Rthを表1に示す。
【0116】
[比較例2]
不織布をS2とした以外は比較例1と同様の実験を繰り返し、複合材料C2を得た。前述の方法で測定したヘイズ値、Re(0°)、Rthを表1に示す。
【0117】
[実施例9]
エポキシ化不織布E1への反応として、pH12に調製した17.5質量%の2−ナフトール反応液を用い、40℃の振蕩恒温水槽中で反応させること以外は、実施例8と同じ原料と機器を用いることにより、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布EN1を得た。EN1の置換度の測定結果を作製条件とともに表3に示した。さらに実施例1と同じ原料と機器を用いて複合材料B2を得た。前述の方法で測定したヘイズ値、Re(0°)、Rthを表1に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
[実施例10]
製造例2で得られたセルロース不織布S2に、以下のようにして光学異方性を制御する化合物を導入した。450mLのガラス製ボトル(アズワン株式会社製)にエチルセルソルブ(和光純薬株式会社製 特級)を入れ、2−ナフトール(和光純薬株式会社製 特級)を溶解させ、3.00重量%の2−ナフトール溶液を調製した。該溶液30mlにセルロース不織布S2を0.05g入れ、80℃の恒温水槽(アズワン株式会社製、商品名:TERMAL ROBOTR−2A)中で4時間保持した。該処理後の不織布を130℃のオーブンに入れて1時間乾燥させ、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布QN1を得た。該QN1を二分し、一方に対しては実施例8と同じ原料と機器を用いて複合材料D1を得た。またもう一方に対しては80℃に加温したエチルセルソルブに入れて2時間洗浄処理した後、真空乾燥機に入れ、室温で約5時間減圧乾燥した。得られた不織布をQN1’とし、実施例8と同じ原料と機器を用いて複合材料D1’を得た。D1およびD1’のそれぞれについて、前述の方法で測定したRe(0°)、Rthを表2に示す。
【0120】
[実施例11]
3.00重量%のβ−ナフトエ酸(関東化学株式会社製)溶液を用いる以外は、実施例10と同じ原料と機器を用いることにより、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布QN2およびQN2’を得た。さらに実施例8と同じ原料と機器を用いて複合材料D2およびD2’を得た。D2およびD2’のそれぞれについて、前述の方法で測定したRe(0°)、Rthを表2に示す。
【0121】
[実施例12]
3.00重量%の4−ヒドロキシビフェニル−4’−カルボン酸(Ardrich社製)溶液を用いる以外は、実施例10と同じ原料と機器を用いることにより、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布QbP1およびQbP1’を得た。さらに実施例8と同じ原料と機器を用いて複合材料D3およびD3’を得た。D3およびD3’ののそれぞれについて、前述の方法で測定したRe(0°)、Rthを表2に示す。
【0122】
[実施例13]
450mLのガラス製ボトル(アズワン株式会社製)にDMF(和光純薬株式会社製 特級)および製造例2で得られたセルロース不織布S2を入れ、80℃の恒温水槽(タイテック株式会社製)中で4時間保持した。該処理後の不織布を130℃のオーブンに入れて1時間乾燥させ、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布QD1を得た。さらに実施例8と同じ原料と機器を用いて複合材料D4を得た。前述の方法で測定したRe(0°)、Rthを表2に示す。
【0123】
[実施例14]
製造例2で得られたセルロース不織布S2に、以下のようにして光学異方性を制御する化合物を導入した。450mLのガラス製ボトル(アズワン株式会社製)にDMF(和光純薬株式会社製 特級)を入れ、2,6−ナフタレンジカルボン酸(Ardrich社製)溶解させ、1.50重量%の2,6−ナフタレンジカルボン酸溶液を調製した。該溶液にセルロース不織布S2を入れ、80℃の恒温水槽(タイテック株式会社製)中で4時間保持した。該処理後の不織布を130℃のオーブンに入れて1時間乾燥させた後、80℃に加温したDMFに入れて2時間洗浄処理した。該処理後の不織布を真空乾燥機に入れ、室温で約5時間減圧乾燥し、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布QN5を得た。さらに実施例8と同じ原料と機器を用いて複合材料D5を得た。前述の方法で測定したRe(0°)、Rthを表2に示す。
【0124】
[実施例15]
450mLのガラス製ボトル(アズワン株式会社製)にエチルセルソルブ(和光純薬株式会社製 特級)を入れ、フェニルトリエトキシシラン(アズマックス社製)を溶解させ、10.0重量%のフェニルトリエトキシシランを調製した。該溶液に製造例2において抄紙後の濾布上に乗った湿潤状態の湿紙上にさらに同じ濾布をかぶせたものを、熊谷理機工業社製角型シートマシンプレスを用いて0.5MPaの圧力で1分間プレス処理し、湿紙の固形分が15重量%程度としたセルロース不織布S2’を用い、湿紙/濾布の2層状態のまま入れ、80℃の恒温水槽(アズワン株式会社製、商品名:TERMAL ROBO TR−2A)中で4時間保持した。該処理後の湿紙/濾布の2層積層体を130℃のオーブンに入れて1時間乾燥させ、該2層積層体から濾布を剥がすことにより、光学異方性を制御する化合物を導入した不織布QP2を得た。該QP2を二分し、一方に対しては実施例8と同じ原料と機器を用いて複合材料D6を得た。またもう一方に対しては80℃に加温したエチルセルソルブに入れて2時間洗浄処理した後、真空乾燥機に入れ、室温で約5時間減圧乾燥した。得られた不織布をQP2’とし、実施例8と同じ原料と機器を用いて複合材料D6’を得た。D6およびD6’のそれぞれについて、前述の方法で測定したRe(0°)、Rthを表2に示す。
【0125】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の不織布表面をSEM画像で表した例
【図2】本発明の不織布表面をSEM画像で表した例
【図3】本発明のセルロース不織布における連続製膜のプロセスイメージ
【産業上の利用可能性】
【0127】
光学異方性の制御された繊維からなる不織布を高分子樹脂あるいは液体で充填した複合材料よりなる樹脂基板は、偏光を利用するディスプレイ装置、例えば液晶ディスプレイ装置に使用した際、コントラスト比の改善や制御された視野角特性を持つ基板もしくは位相差フィルムとして使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を含有する繊維(a)に光学異方性を制御する化合物(b)を導入した改質繊維(c)
からなる不織布。
【請求項2】
前記水酸基を含有する繊維(a)がセルロース繊維であることを特徴とする請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記水酸基を含有する繊維(a)が、麻由来パルプ,バガス由来パルプ,ケナフ由来パルプ,竹由来パルプのうちの少なくとも1種を含有するセルロース繊維であることを特徴とする請求項2に記載の不織布。
【請求項4】
前記光学異方性を制御する化合物(b)が芳香族化合物、脂環式化合物のうち少なくとも1種の環構造を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の不織布。
【請求項5】
前記光学異方性を制御する化合物(b)が芳香族化合物の環構造を有することを特徴とする請求項4に記載の不織布。
【請求項6】
前記芳香族化合物がフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の環構造を有することを特徴とする請求項5に記載の不織布。
【請求項7】
前記改質繊維(c)の平均屈折率が1.55以上であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の不織布。
【請求項8】
前記改質繊維(c)の平均繊維径が2nm以上150nm以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の不織布。
【請求項9】
不織布内において平均繊維径100nm以下の改質繊維(c)の占める数分率が0.7以上であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の不織布。
【請求項10】
前記不織布の空孔率が20%以上95%以下であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の不織布。
【請求項11】
水酸基を含有する繊維(a)に、光学異方性を制御する化合物(b)を反応または吸着させることによって、光学異方性を制御する化合物(b)を導入した改質繊維(c)からなることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の不織布。
【請求項12】
非プロトン性極性溶媒を用いて、光学異方性を制御する化合物(b)を溶液とし、該溶液に、水酸基を含有する繊維(a)からなる不織布を浸漬することによって、光学異方性を制御する化合物(b)を導入した改質繊維(c)からなることを特徴とする請求項11に記載の不織布。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の不織布の空孔に、高分子樹脂(d)が充填されていることを特徴とする複合材料。
【請求項14】
ヘイズ値が30%以下であり、0≦Re(0°)<25nm、且つ|Rth|<300nmであることを特徴とする請求項13に記載の複合材料。
ここで、Re(0°)は複合材料の正面レターデーション値を、Rthは膜厚方向のレターデーション値である。
【請求項15】
水酸基を含有する繊維(a)から成る不織布に、光学異方性を制御する化合物(b)との化学反応もしくは物理吸着の少なくとも1種の方法によって、該化合物(b)を導入し、次いで、該不織布の空孔に、高分子樹脂(d)を含浸して固化、ないし、モノマーあるいは硬化性樹脂先駆体を含浸させて重合硬化させる方法によって、高分子樹脂(d)を充填することを特徴とする請求項13に記載の複合材料の製造方法。


【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−274461(P2008−274461A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117464(P2007−117464)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】